JPH1018052A - 硬質めっき皮膜被覆部材とその製造方法 - Google Patents

硬質めっき皮膜被覆部材とその製造方法

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JPH1018052A
JPH1018052A JP16779696A JP16779696A JPH1018052A JP H1018052 A JPH1018052 A JP H1018052A JP 16779696 A JP16779696 A JP 16779696A JP 16779696 A JP16779696 A JP 16779696A JP H1018052 A JPH1018052 A JP H1018052A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐磨耗性を保持しつつ、耐食性にも優れる複
合めっき皮膜に変成させるのに有効な技術を提案する。 【解決手段】 電気めっき法によって施工した鋼鉄製基
材表面のクロムめっき皮膜に対し、その表面にリン酸と
クロム酸を主成分とする水溶液を塗布、スプレーもしく
はこの水溶液中にクロムめっき皮膜を浸漬して引き上げ
た後、350 〜550℃, 0.3 〜3 hrの条件で加熱する。こ
のことによって、基材表面のクロムめっき皮膜中および
その表面にガラス質酸化クロムを充填, 被覆した複合め
っき皮膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐食性および耐磨
耗性に優れる硬質めっき皮膜被覆部材とそれの製造方法
に関するものである。なお、本発明は、電気めっき法に
よって形成される硬質クロムめっきを代表的実施例とす
るが、その他、Ni, Cu, Zn, SnおよびFeめっき皮膜およ
びそれらの合金めっき皮膜を複合化する場合にも適用が
可能である。
【0002】
【従来の技術】一般に、電気めっき法によって形成され
る金属皮膜には、Ni, Cu, Zn, Sn, Cr, Cd, Cu, Fe, A
g, Au, Pt, Pb, Pd, Rhなどがあり、それぞれの金属が
具える特有の物理化学的性質に適合した分野で使用され
ている。たとえば、Ni, Cu, Zn,Sn, Cdなどは主として
鉄鋼部材の防錆, 防食用として、また、Ag, Au, Pt, P
d,Rhなどの貴金属類は装飾用として広く採用されてい
る。これらのなかにあって、クロムのめっき皮膜は非常
に硬いため、耐磨耗用皮膜として古くから用いられ、各
種の機械構造部材に適用され、現在でもなお、有用な電
気めっき法による耐磨耗性皮膜としての地位を保ってい
る。
【0003】かかるクロムめっきは、その皮膜の硬さ
が、めっき浴の組成やめっき条件によっても変化する
が、通常、ビッカース硬さで 800〜1100の範囲にあり、
しかも鏡面研磨することによって美しい金属光沢を示す
ので、その優れた耐磨耗性とも相伴って、商品価値の高
い工業製品として賞用されている。
【0004】しかし、このクロムめっき皮膜も、その表
面を光学顕微鏡で観察すると、無数の微細な気孔や亀裂
があり、その大部分は基材金属表面に達している場合も
少なくないことがわかっている。この微細な気孔や亀裂
は、ピストンロッドやピストンリングなどのような潤滑
油が存在する環境下では、潤滑油の溜まり部分となって
良好な潤滑性能を発揮する点で好都合である。その反
面、こうしたクロムめっき皮膜を海水や工業用水などの
環境下で使用すると、その気孔や亀裂内に海水や工業用
水の浸入を許すことになる。その結果、内部へ浸入した
水を電解質としてクロムめっき皮膜が陰極, 基材の鉄鋼
が陽極となる局部電池を構成し、基材から鉄が溶出し、
これが赤さびとなってクロムめっき皮膜上に発生するた
め、耐食性皮膜として利用できないという欠点があっ
た。
【0005】この対策として、従来、 アンダーコートとして、Ni, Cuなどのめっきを施し
た後、クロムめっきを形成する方法、 クロムめっき皮膜を数回に分けて施工し、その都
度、めっき浴から引き上げて水洗後めっき皮膜を研磨
し、再びめっき処理を施すことによって、該めっき皮膜
中に発生する微細な気孔や亀裂が連続的に成長しないよ
うにする方法、 などが採用されている。しかし、これらの対策にもかか
わらず、なお、クロムめっき皮膜の耐食性は十分でな
く、海水中はもちろん、工業用水中においてもしばしば
赤さびの発生とともにめっき皮膜の剥離現象が発生して
いるのが実情である。
【0006】一方、各種の表面処理皮膜に発生した気孔
や亀裂に起因する障害を防止するため、クロム酸 (Cr
O3) を主成分とする薬剤による封孔処理や硬質皮膜形成
処理などの方法も提案されている。例えば、 金属製基材の表面に施工した溶射皮膜上に、CrO3
しくはCrO3を主成分とし、これにSiO2, Al2O3 などの微
粒子を加えた薬剤による封孔処理を行う技術として、特
開昭59−205480号公報, 特開昭61−194187号公報, 特開
昭63−487 号公報, 特開平3−63565 号公報などに開示
の方法が提案されている。 また、鋼鉄製基材に、CrO3を化学変化させて微細な
Cr2O3 からなる硬質皮膜を形成する技術として、特開昭
59−9171号公報, 特開昭61−52374 号公報, 特開昭63−
126682号公報, 特開昭63−317680号公報, 特開平3 −70
595 号公報に開示の方法などが提案されている。
【0007】しかし、これらの既知技術はいずれも、溶
射皮膜または鋼鉄基材の表面自体を処理対象としたもの
であって、クロムめっき皮膜を改質する技術ではない。
しかも、これらの既知技術をクロムめっき皮膜の改良に
適用しても、 a.CrO3をCr2O3 に化学変化させるための加熱処理の影
響を強く受け、クロムめっき皮膜の硬さが著しく低下す
る、 b.Cr2O3 とクロムめっき皮膜の密着性が弱く比較的容
易に剥離する欠点がある、 c.硬質Crめっき皮膜が保有している亀裂部にCr2O3
充填しても、海水や工業用水の内部への浸入を完全に防
止できないため、期待するほどの耐食性の向上は認めら
れない、 などの問題を抱えている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
した従来クロムめっき皮膜が有する上述した欠点を補う
ことのできる技術の確立を図ることにあり、優れた耐磨
耗性を保持しつつ、耐食性にも優れる硬質めっき皮膜に
変成させるのに有効な技術を提案するところにある。即
ち、このような目的を実現するために開発した本発明の
考え方を整理して述べると、 (1) 硬質クロムめっき皮膜に発生している微細な気孔や
亀裂内に、耐食性および耐磨耗性に優れたガラス質酸化
クロム微粒子を充填することによって、水分などの腐食
性成分の内部侵入を防止する。 (2) 硬質クロムめっき皮膜の微細な亀裂内に、ガラス質
酸化クロムの微粒子 (0.01〜1.0 μm ) を充填し、それ
だけでなくさらにこのめっき皮膜の表面にはガラス質酸
化クロムの薄膜をも被覆形成することによって、水分の
内部侵入をより一層確実に防ぐようにするとともに、該
ガラス質酸化クロムの微粒子および薄膜によって耐磨耗
性を向上させる。 (3) 一般に、硬質クロムめっき皮膜は 350℃以上の温度
に曝されると軟化する欠点がある。そのために Al2O3,
SiO2などを添加した封孔剤を加熱して使用する (従来技
術) と、硬質クロム皮膜がめっき処理時に吸蔵した水素
ガスを放出して軟化するために耐磨耗性が低下する。 この点に関し、発明者らの研究によると、CrO3にリン酸
を添加することによって、これを加熱処理時のエネルギ
ーによってガラス質に変化させると、水素ガスの放出を
最小限に止めることができ、耐磨耗性の低下を防ぐのに
有効であることがわかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】このような知見の下に上
掲の目的を実現する方法として、本発明では、クロムめ
っき皮膜に発生している微細な気孔や亀裂に対し、腐食
原因となる水分等の内部侵入を防止するため、次のよう
な手段を採用することにした。 (1) 電気めっき法によって施工した鋼鉄製基材表面のク
ロムめっき皮膜に対し、直接、または一旦研磨した後、
その表面にリン酸とクロム酸を主成分とする水溶液を塗
布、スプレーもしくはこの水溶液中にクロムめっき皮膜
を浸漬して引き上げた後、350 〜550 ℃, 0.3 〜3 hrの
条件で加熱する方法。 (2) リン酸とクロム酸を主成分とする水溶液の塗布, ス
プレーもしくは浸漬の各操作と加熱の操作とを複数回
(3〜10回) 繰り返すことによって、該クロムめっき皮
膜の微細な気孔や亀裂内部へガラス質酸化クロムを充填
するだけでなく、余剰のガラス質酸化クロムをめっき皮
膜の表面にも薄く被覆する方法。
【0010】即ち、本発明要旨構成を列挙して述べる
と、下記のとおりである。 (1) 本発明は、金属製基材の表面に、金属・合金めっき
皮膜を設けると共に、このめっき皮膜の気孔や亀裂内に
ガラス質酸化クロム微粒子を充填すめことによって形成
される複合めっき皮膜を、被覆してなる硬質めっき皮膜
被覆部材である。 (2) また本発明は、金属製基材の表面に、金属・合金め
っき皮膜を設けると共に、このめっき皮膜の気孔や亀裂
内にガラス質酸化クロム微粒子が充填すると同時にその
表面には 0.1〜20μmの厚さのガラス質酸化クロム層を
形成することによって得られる複合めっき皮膜を、被覆
してなる硬質めっき皮膜被覆部材である。 (3) なお、本発明においては、上記金属・合金めっきと
して、Cr, Ni, Cu, Zn, SnおよびFeのうちから選ばれる
いずれか1種の金属またはその合金のめっきを用いるこ
とが好ましく、上記ガラス質酸化クロム微粒子として
は、リン酸とクロム酸を主成分とする水溶液を塗布、ス
プレーもしくはこの水溶液中に浸漬した後、 350〜550
℃, 0.3〜3時間の加熱をすることによって生成させた
ものであることが好ましい。 (4) 次に本発明の上記部材は、金属製基材の表面に3〜
500 μm 厚の金属・合金めっきを施し、次いでこのめっ
き表面に直接または研磨したのちリン酸とクロム酸を主
成分とする水溶液を塗布、スプレーもしくはその水溶液
中に浸漬したのち、 350〜550 ℃の温度で 0.3〜3時間
加熱することにより、前記金属・合金めっき皮膜の亀裂
内に、ガラス質酸化クロムの微粒子を充填して複合めっ
き皮膜を形成することによって製造するか、 (5) 金属製基材の表面に3〜500 μm 厚の金属・合金め
っきを施し、次いでこのめっき表面に直接または研磨し
たのちリン酸とクロム酸を主成分とする水溶液を塗布、
スプレーもしくは液中に浸漬したのち、 350〜550 ℃の
温度で 0.3〜3時間加熱することにより、前記金属・合
金めっき皮膜の亀裂内に、ガラス質酸化クロムの微粒子
を生成充填すると同時に、そのめっき皮膜表面にも厚さ
0.1〜20μm の該ガラス質酸化クロムの層を生成被覆す
ることによって製造する。 (6) なお、本発明製造方法においては、上記金属・合金
めっきとして、Cr, Ni, Cu, Zn, SnおよびFeのうちから
選ばれるいずれか1種の金属またはその合金のめっきを
用いること、上記水溶液の塗布、スプレーもしくは該水
溶液中への浸漬、加熱の各操作を複数回繰り返すことに
よって、金属・合金めっき皮膜の気孔や亀裂内にガラス
質酸化クロムを充填または被覆すること、そして、上記
水溶液は、リン酸, クロム酸の他にさらに、酸化亜鉛,
尿素, 酸化アルミニウムおよび珪砂のうちから選ばれる
いずれか1種以上を添加したものを用いることが好まし
い方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の耐食性と耐磨耗性の両方
に優れる硬質のクロムめっき複合皮膜の作用機構につい
て具体的に説明する。 (1) 硬質クロムめっき皮膜の性状 一般に、クロムめっき皮膜は、下記のようなめっき浴中
に被処理物 (金属製基材) を陰極として通電することに
よって形成する。 しかし、形成されたクロムめっき皮膜は非常に硬く、耐
磨耗性に優れているものの、その表面には微細な気孔や
亀裂が多数発生し、そのうちの多数のものが基材に直接
達するような開口亀裂もある。とくに、海水や工業用水
はもとより、酸, アルカリなどの水溶液は、この開口亀
裂を通して内部へ侵入し、基材表面に達することによっ
て、この基材金属が腐食され、赤さびを発生し、最終的
にはクロムめっき皮膜の局部的剥離に至ることとなる。
【0012】そこで本発明では、このクロムめっき皮膜
の表面に、直接または研磨したのち、下記の組成になる
リン酸とクロム酸を主成分とする水溶液を塗布、スプレ
ーもしくはこの水溶液中に浸漬することによって、めっ
き皮膜にある亀裂内に下記のような、リン酸・クロム酸
等の成分を侵入させる。 CrO3 : 20 〜 40 wt% H3PO4 : 30 〜 60 wt% H2O : 10 〜 30 wt% なお、上記水溶液中にはさらに、酸化亜鉛, 尿素, 酸化
アルミニウム, 珪砂をそれぞれ 0.5〜3.0 wt%添加して
もよく、また、上記CrO3に代えてクロム酸アンモン(N
H4)2CrO4, 重クロム酸アンモン(NH4)2Cr2O7 を用いても
よい。さらに、H3PO4 に代えて重合リン酸, 縮合リン酸
などを用いても差し支えない。
【0013】その後、水溶液を塗布等の処理をしたクロ
ムめっき皮膜を、 350〜550 ℃の温度で 0.3〜3 hr加熱
すると、次に示すような反応によって、ガラス質状の酸
化クロムが加熱残渣物として亀裂内とその表面に生成す
ることになる。すなわち、CrO3は酸素を放出してCr2O
3(酸化クロム) となる一方、H3PO4 は水分を放出してガ
ラス状物質となる。その結果、上記水溶液から析出した
Cr2O3 はきわめて微細 (0.01〜1.0 μm )で硬く、耐食
性と耐磨耗性にも優れ、また、ガラス状となったリン酸
はクロムめっき皮膜との密着性を向上させるとともに、
外部から気孔や亀裂内に侵入する腐食性成分、特に水溶
液の侵入を防止する作用を示す。この点、従来技術の化
学緻密化法によるCr2O3 のみであれば、どうしても水溶
液の浸入を防止することができないが、本発明によれ
ば、リン酸の変性によるガラス状物質がCr2O3 粒子同士
を結合させる一方、水の浸入径路を完全に遮断する作用
を発揮する。
【0014】なお、CrO3とリン酸を主成分とする薬剤を
塗布, スプレー, 浸漬などを行った後、これを加熱する
操作を複数回繰り返すと、クロムめっき皮膜の亀裂内部
へのCr2O3 とガラス状物質の充填にとどまらず余剰のガ
ラス質酸化クロムがクロムめっき皮膜の表面を覆うよう
になる。このような処理が施された硬質のクロムめっき
皮膜は、その表面が硬質のCr2O3 粒子を含むガラス質酸
化クロムに覆われているため、この皮膜によって耐磨耗
性を維持することとなる。
【0015】図1は、本発明に係る耐食性と耐磨耗性を
兼ね備えた皮膜の断面構造を示したものである。ここで
1は鋼鉄製基材、2はクロムめっき皮膜、3はクロムめ
っきに存在している貫通気孔 (亀裂) 、4は該気孔部,
即ち亀裂内に充填されたガラス質酸化クロム微粒子であ
り、5はクロムめっき皮膜の表面を覆っているガラス質
酸化クロムの層を示している。なお、この断面構造から
明らかなように、上記ガラス質酸化クロム層は、その微
粒子のクロムめっき皮膜の亀裂内にも完全に充填された
状態になっているので、極めて高い密着性を発揮する。
【0016】本発明において好ましいクロムめっき皮膜
の厚さとは、3〜500 μm がよい。その理由は、3μm
より薄い皮膜では、あまりにも気孔や亀裂が多いうえ、
被処理体皮膜としての耐力 (使用環境で負荷される機械
的圧力) が低いため、実用に乏しく、また、500 μm よ
り厚い皮膜では、めっき時間に長時間を要し経済的でな
いからである。
【0017】クロムめっき皮膜上に被覆するガラス質酸
化クロム層の厚さは 0.1μm〜20μmの範囲がよい。そ
の理由は、 0.1μmより薄いとクロムめっき皮膜の亀裂
内への充填によって耐食性は向上するものの、耐磨耗性
に乏しいからであり、一方、20μm以上の厚さではその
処理に長時間を要するため、生産コストの上昇となるの
で適当でないからである。
【0018】本発明において、クロムめっき皮膜の気孔
や亀裂内にガラス質酸化クロムが完全に充填されておれ
ば、めっき皮膜表面の被覆はリン酸を除いた酸化クロム
のみの組成であっても耐磨耗性は十分である。本発明で
は、前述の基本的作用以外に、次に示すような実際上の
有用な作用を有する。すなわち、一般のクロムめっき皮
膜は、350 ℃以下では高い硬度を有しているが、それ以
上の高温に曝すと軟化する現象がある。本発明にかかる
処理でも、リン酸を含むクロム酸水溶液を塗布, スプレ
ーもしくはその水溶液中に浸漬した後に、 350〜550 ℃
×0.3 〜3時間の加熱処理を施すことにしている。そう
すると、前者と同じようにクロムめっき皮膜自体は軟化
する可能性がある。
【0019】そこで発明者らは、この点についての研究
を行った。従来技術によるCrO3を主成分とする電解液を
用いて得られたクロムめっき皮膜 (ビッカース硬さ950)
は、単に 500℃×1hの熱処理を施しただけで、硬さは58
0 に低下した。しかし、同じクロムめっき皮膜を本発明
方法に従って、リン酸を含むクロム酸水溶液を使って同
じ 500℃×1hの熱処理を施したところ、硬さは 710を
示し、硬さの低下は無視できる程度に収まった。その原
因については十分には解明したわけではないが、次のよ
うに考えている。それは、クロムめっき皮膜の硬さは、
めっき時に吸蔵された水素ガス、めっき金属の内部
応力の発生に起因しているが、両者とも高温になるにし
たがってその影響力が低下してくることが明らかであ
る。これが硬さの低下を招いているものと思われる。
(高温になるとめっき皮膜は水素ガスを放出するととも
に内部応力も解放される) この点、本発明方法のようにリン酸を含むクロム酸水溶
液を使って処理することによって、クロムめっき皮膜の
全体がガラス質状の酸化クロム微粒子による充填, それ
による被覆が行われる結果、そのガラス質物質によって
水素ガスの放出が妨げられ、そのことによって、硬さの
低下率がゆるやかになる結果と考えられる。
【0020】さらに本発明を微量の炭素質を含む複合ク
ロムめっき皮膜を適用すると、クロムめっき皮膜そのも
のの硬さが上昇する現象が見られるが、その理由は次の
ように考えられる。一般に、微量の炭素質を含む複合ク
ロムめっき皮膜は、蓚酸, クエン酸, リンゴ酸などの有
機酸を含む電解液から得られる。従って、このクロムめ
っき皮膜は微量の炭素を含有しているのが普通である。
そこで、このようなクロムめっき皮膜に対して本発明方
法にかかる処理を施すと、クロムめっき皮膜中の炭素と
クロムとが反応してCr23C6, Cr7C3, Cr3C2などの硬質の
炭化クロム微粒子が生成し、そのためにめっき皮膜の硬
さが上昇する。これに伴って皮膜の耐磨耗性も一段と向
上する。たとえば、発明者らの研究によれば、ビッカー
ス硬さ900 の蓚酸液から得られた複合クロムめっき皮膜
を 550℃×1hの条件で本発明方法に従う処理を行うと、
そのめっき皮膜の硬さは1800に上昇するという結果が得
られている。つまり、蓚酸を含む電解液から得られるク
ロムめっき皮膜に形成されている亀裂, ピンホール中
に、本発明にかかるガラス質酸化クロム微粒子が充填さ
れることによって、上述した硬度低下という欠点を補う
ことができるとともに、複合クロムめっき中の炭素とク
ロムの反応を促して硬質の炭化クロムを析出させ、さら
にガラス質物質の生成によって高度な耐磨耗性を発揮さ
せることが可能となるのである。
【0021】
【実施例】
実施例1 この実施例では、鋼製基材の表面にめっき被覆したクロ
ムめっき皮膜に対し、その亀裂, ピンホール中にガラス
質酸化クロム微粒子を充填, 被覆処理したものについ
て、このめっき皮膜被覆部材の耐食性を塩水噴霧試験に
より調査した。 (1) 本発明例の複合皮膜 CrO3を主成分とする電解液から得られた硬質クロムめっ
き皮膜被覆部基材 ((SS400) 30μm, 50μm を、以下の
水溶液中に浸漬した後引き上げて、480 ℃×1hの熱処理
を5回繰り返して複合めっき皮膜としたものを用いた。 CrO3 : 35wt% H3PO4 : 40wt% H2O : 25wt% (2) 比較例のめっき皮膜 上記の硬質クロムめっき皮膜 (30μm, 50μm)だけをそ
のまま (無処理) 用いた。 (3) 試験結果 試験結果を表1に示した。この結果から明らかなよう
に、比較例の無処理クロムめっき皮膜 (No.3, 4 )は、
皮膜の亀裂部分を通って塩化ナトリウムが侵入して基材
の炭素鋼を腐食し、これがめっき皮膜の表面に赤さびと
して多量に認められた。これに対し本発明の処理を施し
ためっき皮膜 (No. 1 , 2 ) は、30μm ,50μm 厚とも
全く赤さびの発生は認められなかった。すなわち、クロ
ムめっき皮膜の亀裂, ピンホール内にガラス質酸化クロ
ムが充填された結果、塩化ナトリウムの侵入が阻止さ
れ、優れた耐食性を発揮したものと考えられる。
【0022】
【表1】
【0023】実施例2 この実施例では、本発明にかかる処理を施して得られた
微量の炭素質を含む複合めっき皮膜の耐磨 耗性を調査
した。 (1) 本発明例の皮膜 基材(SS400) (50 ×50×5 mmt)の表面に、CrO3を主成分
とする電解液および蓚酸を含む電解液を用いて、それぞ
れの液から50μm 厚の硬質クロムめっき皮膜を形成した
後、実施例1と同じ本発明方法にかかる処理を施して複
合めっき皮膜とした。 (2) 比較例の皮膜 比較例の皮膜として、無処理の前記硬質クロムめっき皮
膜のみのものを用いた。 (3) 磨耗試験方法 大越式磨耗試験装置を用い、相手材としてSiCを分散さ
せた回転子 (直径40mm) を2kgf/cm2 の圧力で皮膜面に
押しつけ、1 分間15mの速度で回転させ、回転長さが40
0mに達したとき試験を中止し、試験前後の重量減少量を
測定することによって、耐磨耗性を比較した。なお、磨
耗試験温度は25℃と 400℃の2条件とした。
【0024】(5) 試験結果 その試験結果を表2に取りまとめた。硬質クロムめっき
皮膜は、加熱処理によって硬さが低下するため、磨耗試
験前の皮膜はすべてビッカース硬さ計によって皮膜硬さ
を測定した。その結果、本発明例の皮膜のうち、CrO3
主成分とする電解液から得られる皮膜 (No.1, 2)は、無
処理のもの(No.5, 6) に比較するとビッカース硬さで24
0 程度軟化している。しかし、表面に形成される硬質の
酸化クロム粒子を含むガラス質皮膜の効果によって、耐
磨耗性の低下は認められない。また、 400℃の磨耗試験
では本発明の皮膜 (No.2) のほうがはるかに重量減少量
が少なくなっており、高い温度雰囲気下で優れた耐磨耗
性を発揮することがわかる。この原因は、比較例の皮膜
(No.6) が 400℃で軟化するのに対して、本発明の皮膜
は軟化程度が少ないうえ、ガラス質酸化クロムの存在に
よるものと思われる。
【0025】
【表2】
【0026】さらに、蓚酸を含む電解液から得られる硬
質クロムめっき皮膜は、加熱処理を行うことにより硬化
する性質をもっているため、本発明のガラス質酸化クロ
ム皮膜の形成処理を施工する温度(480℃×1hの熱処理を
5回繰返し) を履歴することによって、硬質クロムめっ
き皮膜中に微細なクロム炭化物の微粒子が生成されると
ともに、ガラス質酸化クロム微粒子との共存効果によっ
て、25℃, 400 ℃とも磨耗減少量が非常に少なくなって
いることがわかる。
【0027】実施例3 この実施例では、実施例2の磨耗試験実施後の皮膜を対
象にして、その耐食性を調査した。すなわち、磨耗試験
後の皮膜表面には、SiCを含む回転子との接触によっ
て、すべての試験片皮膜 (表2の試験片No.1〜8)に摩擦
痕が生成している。この試験片皮膜を実施例1の塩水噴
霧試験と同条件にて腐食試験を行った。この結果、比較
例の試験片皮膜 (表2のNo.5〜8)は、総て全面にわたっ
て赤さびの発生が認められたが、本発明の複合めっき皮
膜 (表2のNo.1〜4)は、全く赤さびの発生はなかった。
この原因は、本発明にかかる処理を施すことによって硬
質クロムめっき皮膜では、その表面に形成されているガ
ラス質酸化クロム皮膜が機械的に除去されても、赤さび
の発生源となるクロムめっき皮膜の亀裂にはガラス質酸
化クロムの微粒子が充填されているため、塩水の浸入防
止に有効に寄与していることがうかがえる。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ク
ロムめっき皮膜を有する部材について、この部材表面に
形成した気孔や亀裂を有する該クロムめっき皮膜を、リ
ン酸とクロム酸を主成分とする水溶液を塗布等したのち
加熱することによって、ガラス質酸化クロムの微粒子を
生成させてこれを該気孔や亀裂中に充填すると同時に、
さらには皮膜表面に一定の厚さで被覆することで、従来
から欠点とされていた硬質クロムめっき皮膜の耐食性を
他の性質 (硬度) を犠牲にすることなく向上させること
ができるとともに、耐磨耗性も一段と向上させることが
できる。この結果、耐食性と耐磨耗性が要求される機械
構造物あるいは部材に対する硬質クロムめっき皮膜の適
用分野が拡大される。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼鉄製基材の表面に形成されたクロムめっき皮
膜上に、リン酸とクロム酸を主成分とする処理液によっ
てガラス質酸化クロム皮膜を形成した部材の部分断面図
である。
【符号の説明】
1 鋼鉄製基材、 2 クロムめっき皮膜 3 クロムめっき皮膜に発生している貫通気孔 (亀裂) 4 ガラス質酸化クロム微粒子 5 ガラス質酸化クロム皮膜

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製基材の表面に、金属・合金めっき
    皮膜を設けると共に、このめっき皮膜の気孔および亀裂
    内にガラス質酸化クロム微粒子を充填することによって
    形成される複合めっき皮膜を、被覆してなる硬質めっき
    皮膜被覆部材。
  2. 【請求項2】 金属製基材の表面に、金属・合金めっき
    皮膜を設けると共に、このめっき皮膜の気孔および亀裂
    内にガラス質酸化クロム微粒子が充填すると同時にその
    表面には 0.1〜20μmの厚さのガラス質酸化クロム層を
    形成することによって得られる複合めっき皮膜を、被覆
    してなる硬質めっき皮膜被覆部材。
  3. 【請求項3】 上記金属・合金めっきが、Cr, Ni, Cu,
    Zn, SnおよびFeのうちから選ばれるいずれか1種の金属
    またはその合金のめっきであることを特徴とする請求項
    1または2に記載の硬質めっき皮膜被覆部材。
  4. 【請求項4】 上記ガラス質酸化クロム微粒子は、リン
    酸とクロム酸を主成分とする水溶液を塗布、スプレーも
    しくは該水溶液中に浸漬した後、 350〜550℃, 0.3 〜
    3時間の加熱をすることによって生成させたものである
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の部材。
  5. 【請求項5】 金属製基材の表面に3〜500 μm 厚の金
    属・合金めっきを施し、次いでこのめっき表面にリン酸
    とクロム酸を主成分とする水溶液を塗布、スプレーもし
    くはその水溶液中に浸漬したのち、 350〜550 ℃の温度
    で 0.3〜3時間加熱することにより、前記金属・合金め
    っき皮膜の亀裂内に、ガラス質酸化クロムの微粒子を充
    填して複合めっき皮膜を形成することを特徴とする硬質
    めっき皮膜被覆部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 金属製基材の表面に3〜500 μm 厚の金
    属・合金めっきを施し、次いでこのめっき表面にリン酸
    とクロム酸を主成分とする水溶液を塗布、スプレーもし
    くはその水溶液中に浸漬したのち、 350〜550 ℃の温度
    で 0.3〜3時間加熱することにより、前記金属・合金め
    っき皮膜の気孔および亀裂内に、ガラス質酸化クロムの
    微粒子を充填すると同時に、そのめっき皮膜表面にも厚
    さ 0.1〜20μm の該ガラス質酸化クロムの層を被覆する
    ことを特徴とする硬質めっき皮膜被覆部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 上記金属・合金めっきが、Cr, Ni, Cu,
    Zn, SnおよびFeのうちから選ばれるいずれか1種の金属
    またはその合金のめっきであることを特徴とする請求項
    5または6記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 上記水溶液の塗布、スプレーもしくは該
    水溶液中への浸漬、加熱の各操作を複数回繰り返すこと
    によって、金属・合金めっき皮膜の気孔および亀裂内に
    ガラス質酸化クロム微粒子を充填またはめっき皮膜表面
    に被覆することを特徴とする請求項5または6記載の製
    造方法。
  9. 【請求項9】 上記水溶液は、リン酸, クロム酸の他に
    さらに、酸化亜鉛,尿素, 酸化アルミニウムおよび珪砂
    のうちから選ばれるいずれか1種以上を添加したものを
    用いることを特徴とする請求項5または6記載の製造方
    法。
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