JPH10194755A - 光学素子成形用型 - Google Patents

光学素子成形用型

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JPH10194755A
JPH10194755A JP28797A JP28797A JPH10194755A JP H10194755 A JPH10194755 A JP H10194755A JP 28797 A JP28797 A JP 28797A JP 28797 A JP28797 A JP 28797A JP H10194755 A JPH10194755 A JP H10194755A
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ion
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Masamichi Hijino
Hiroaki Negishi
広明 根岸
Natsue Momiyama
奈津江 籾山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高硬度で、ガラスとの離型性がよく、また膜
剥離が生じにくい、耐久性の高い光学素子成型用型を得
る。 【解決手段】 型母材2の少なくとも成形面3にイオン
プレーティング法により窒化クロム層を形成し、この窒
化クロム層に酸素イオンをイオン注入することにより、
少なくともその表面を酸化クロム層とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス光学素子を
プレス成形するための光学素子成形用型に関する。
【0002】
【従来の技術】レンズ、プリズム等のガラス光学素子を
プレス成形するための成形用型には、硬度が高いこと、
耐熱性が高いこと、ガラスとの離型性がよいことなどの
特性が求められる。
【0003】このような成形用型としては従来、特開昭
60−246230号公報、特開昭61−183134
号公報、特開平1−301864号公報、特開昭63−
123822号公報が知られている。
【0004】特開昭60−246230号公報に記載の
成形用型は、超鋼合金製の型母材の成形面表面にスパッ
タ法により貴金属膜を形成している。特開昭61−18
3134号公報に記載の成形用型は、タングステンカー
バイトなどの型母材の表面にイオンビームスパッタ法に
よりダイヤモンド薄膜やダイヤモンド状炭素薄膜を形成
している。特開平1−301864号公報には、SiC
やSi34などの型母材の表面にCVD法によりダイヤ
モンド結晶、グラファイト結晶およびアモルファス状カ
ーボンの混合物よりなる薄膜を形成している。さらに、
特開昭63−123822号公報に記載の成形用型は、
ステンレス鋼からなる金属製の型母材の表面に真空蒸着
法によりクロム単体膜を形成し、その上にイオンプレー
テイング法により、窒化クロム膜や炭化クロム膜を形成
している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記特開昭60−24
6230号公報に記載の貴金属型は、耐熱性が高く、ガ
ラスとの離型性もよいが、極めて柔らかいために成形面
表面に傷や変形を生じやすいという問題点がある。
【0006】また、上記特開昭61−183134号公
報や特開平1−301864号公報に記載のダイヤモン
ド薄膜等の炭素を主成分とする型は、ガラスとの離型性
がよいが、成形を数百回以上繰り返して行うと型母材上
に形成した薄膜の一部が剥離してしまい、耐久性の点で
問題点がある。
【0007】また、上記特開昭63−123822号公
報に記載の窒化クロム膜は、硬度が高いので変形や傷が
生じることは少ないが、ガラスとの離型性が悪いために
ガラスが融着してしまい、耐久性の点で問題点がある。
【0008】本発明は、上記問題点を解決するためにな
されたものであって、成形面に変形や傷が生じにくく、
ガラスとの離型性が良く、ガラスの融着を生じない、耐
久性の高い光学素子成形用型を提供することを課題とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1に記載の発明は、ガラス光学素子のプレス
成形に用いる光学素子成形用型であって、型母材の少な
くとも成形面に窒化クロム層を形成し、この窒化クロム
層に酸素イオンをイオン注入することにより、少なくと
もその表面を酸化クロム層とした。
【0010】(作用)上記型母材の少なくとも成形面に
形成した窒化クロム層は、硬度が高いため傷が付きにく
く、変形を生じることもないという利点を有するが、ガ
ラスとの離型性が悪いため、これを成形面の最表層に形
成した場合には、ガラスが融着してしまい、耐久性の点
で問題点が生じる。
【0011】そこで、本発明では成形面の表面部分は、
ガラスとの離型性のよい酸化クロム層とした。上記酸化
クロムは標準生成エネルギーがマイナスの値であり、か
つ、その絶対値が大きいので、他の元素と化合物を作り
にくいという特性を有する。そのため、プレス成形時に
ガラスとの融着を生じにくく、離型性もよいという利点
を有するものである。従って、窒化クロム層と酸化クロ
ム層とを成形用型の成形面に形成することにより、高硬
度で、かつ、ガラスとの離型性がよい成形用型となる。
【0012】ところで、上記酸化クロム層を従来と同様
にイオンビームスパッタ等の一般的な成膜方法により形
成した場合には、窒化クロム層と酸化クロム層との間に
生じる界面の存在によって密着性が著しく低下すること
となる。従って、成形時に容易に膜剥離が生じて耐久性
が悪くなる。
【0013】そこで、本発明では上記酸化クロム層を、
上記窒化クロム層に酸素イオンをイオン注入することに
より形成した。イオン注入法により形成した酸化クロム
層は成形面の表面から深さ方向にむけて酸素密度が徐々
に減少するように傾斜的に分布してるため、窒化クロム
層との間に界面が存在せず高い密着性を示すことにな
る。従って、界面で膜剥離や破壊が生じることがなく、
高い耐久性を有する成形用型となる。
【0014】ここで、イオン注入とは、添加を目的とす
る粒子を超高真空中でイオン化し、数keVないし数1
00keVの電圧を加えて上記イオンを加速して固体基
板、つまり型母材に衝突させることにより、バルクとは
異なった特定の性質を有する表面層を形成する手法であ
る。上記型母材に衝突したイオンが基板中に侵入する
と、基板原子との衝突を繰り返してエネルギーを損失す
る。その結果、注入したイオンは上記型母材内に停止す
る。
【0015】このときの注入イオンの侵入深さは、固体
基板の密度、注入するイオンの種類、注入量、加速エネ
ルギーなどの注入条件の違いにより異なるが、通常のイ
オン注入の場合は0.01〜1μm程度である。本願発
明においては、酸素イオンの注入量は特に限定されるも
のではないが、1×1015〜1×1019ions/cm
2の範囲が好ましい。その理由は、1×1015ions
/cm2未満では成形面の表面の酸素濃度が低いために
ガラスとの離型性が低下し、逆に1×1019ions/
cm2を越えるとイオン注入時に成形面がスパッタリン
グされた状態と同じになり、表面粗さが悪くなるためで
ある。
【0016】請求項2に記載の発明は、ガラス光学素子
のプレス成形に用いる光学素子成形用型であって、型母
材の少なくとも成形面にクロムイオンをイオン注入して
クロムイオン注入層を形成し、その後、少なくともその
表面を酸化クロム層とした。
【0017】(作用)上述したように酸化クロム層はガ
ラスとの離型性がよく、成形用型の成形面に形成するも
のとして好適なのものである。しかし、上記型母材の表
面に直接酸化クロム層を形成した場合では、型母材に対
する酸化クロム層の密着性が弱く、プレス成形時に容易
に剥離する。
【0018】そこで、本発明では、はじめに型母材の少
なくとも成形面にクロムイオンをイオン注入してクロム
イオン注入層を形成した。このクロムイオン注入層にお
いては、成形面の表面から深さ方向にむけてクロム密度
が徐々に減少するように傾斜的に分布してるため、型母
材との間に界面が存在せず高い密着性を示すことにな
る。
【0019】また、本発明では、上記クロムイオン注入
層を形成した後に、少なくとも成形面の表面に酸化クロ
ム層を形成した。酸化クロム層とクロムイオン注入層と
は同質の成分で構成されているため密着性が高い。従っ
て、酸化クロム層の形成方法を特に限定する必要はな
く、PVD法やCVD法等の公知の手法で形成すること
ができるが、さらに密着性を向上させるためには、酸素
のイオン注入や熱酸化が好ましい。
【0020】請求項3に記載の発明は、ガラス光学素子
のプレス成形に用いる光学素子成形用型であって、型母
材の少なくとも成形面にクロムイオンおよび窒素イオン
をイオン注入して窒化クロム層を形成し、その後、少な
くともその表面を酸化クロム層とした。
【0021】(作用)このように構成することにより、
上記請求項2に記載の発明の有する作用効果に加え、成
形面の硬度を高くすることが可能となる。なお、クロム
イオンあるいは窒素イオンのイオン注入は、同時に行っ
てもよいし、はじめにクロムイオンを注入し、その後に
窒素イオンを注入するようにしてもよい。
【0022】請求項4に記載の発明は、ガラス光学素子
のプレス成形に用いる光学素子成形用型であって、型母
材の少なくとも成形面にクロム層を形成するとともに、
クロムイオン、窒素イオン、または不活性ガスイオンか
ら選ばれた少なくとも1つ以上のイオンをイオン注入し
てイオン注入層を形成し、その後、少なくともその表面
を酸化クロム層とした。
【0023】(作用)本発明では、型母材の少なくとも
成形面にクロム層を形成しつつ、同時にクロムイオン、
窒素イオン、または不活性ガスイオンから選ばれた少な
くとも1つ以上のイオンをイオン注入してイオン注入層
を形成する。
【0024】この手法は、イオンビーム促進蒸着(IB
ED、Ion Beam Enhanced Deposition)、ダイナミック
ミキシング、あるいはイオンビームアシスト蒸着(IB
AD、Ion Beam Assisted Deposition)と呼ばれるもの
であり、膜形成とイオン注入とを同時に行う表面被覆法
である。この方法によれば、イオン注入により形成され
つつあるクロム原子を混合しながら膜形成を行うので、
クロム層と型母材との間の界面が存在せず、また、クロ
ム層を非晶質化することができる。さらには、成膜処理
時間を短縮することも可能となる。
【0025】このとき形成されるイオン注入層の特性
は、注入するイオンの運動エネルギー、電流密度、基板
温度、イオンビームの方向などによって決定される。ま
た、膜形成とイオン注入との同時処理といっても、実際
にはイオン注入が先行するのが一般的である。そのこと
により、先に注入されたイオンで型母材をクリーニング
し、また、準安定改質層に起因した界面反応を促進さ
せ、型母材に対するクロム層の密着性をさらに向上する
ことが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。図1には、本発明の成形用型の概
念図を示す。この成形用型1は、型母材2と、成形時に
ガラスと接触する成形面3と、この成形面3の反対側に
設けた成形装置取り付け部4から構成される。上記成形
面3は、研削、切削、研磨、エッチング処理等の公知の
手段によって上記光学素子の面形状に対応した所望の形
状に加工された後、後述の処理を施される。
【0027】また、本発明の実施の形態の説明におい
て、上記成形面3の形状は、光学機能面の曲率半径R=
150mm、直径φ=5mm、肉厚t=2mmのガラス
レンズに対応した形状ととなっている。。 (第1の実施の形態)本発明の第1の実施の形態につい
て説明する。本実施の形態の成形用型は、焼結WCを型
母材とし、この型母材を所定の形状に加工した後に、成
形面に表面粗さRmax=0.02μmとなるように鏡
面研磨を施した。そして、この成形面にイオンビームス
パッタ法により窒化クロム膜を形成した。上記イオンビ
ームスパッタ法については、公知の技術であるので詳細
な説明を省略するが、主要な成膜条件は以下の通りであ
る。
【0028】すなわち、Cr2Nからなる板状部材をタ
ーゲットとし、このターゲットと上記成形用型を真空容
器内に配置する。つぎに成形用型を500℃に加熱する
とともに、上記真空容器内に分圧1×10-4Torrの
アルゴン(Ar)ガスと、分圧7×10-4Torrの窒
素(N2)ガスを導入し、加速電圧900V、アノード
電流0.4A、および加速電流47mAで上記ターゲッ
トをスパッタリングして、上記型母材の成形面上に窒化
クロムの薄膜を2000オングストロームの膜厚で形成
した。
【0029】このようにして窒化クロム膜を形成した成
形用型を8本製作し、そのうち各2本づつに対して次の
3条件で、イオン注入装置を用いてイオン注入を行い、
実施例1ないし3とした。イオン注入装置についても公
知の装置であるので、詳細な説明を省略する。なお、残
りの2本は比較用の成形用型(以下、比較用型1とい
う)とし、窒化クロム薄膜を形成後に大気中で700℃
において、60分加熱して、その表面に酸化処理を施し
た。
【0030】(実施例1) 注入条件1;注入イオン:質量分離を行った酸素イオン
16+)、注入量:3×1017ions/cm2、イオ
ンエネルギー:15keV。
【0031】(実施例2) 注入条件2;注入イオン:質量分離を行った酸素イオン
16+)、注入量:5×1017ions/cm2、イオ
ンエネルギー:15keV。
【0032】(実施例3) 注入条件3;注入イオン:質量分離を行った酸素イオン
16+)、注入量:1×1018ions/cm2、イオ
ンエネルギー:25keV。
【0033】上記実施例1ないし3の成形用型の成形面
の表面粗さを測定したところ、Rmax=0.02μm
であり、鏡面研磨後の表面粗さと同じであった。これに
対して、上記比較用型1の表面粗さはRmax=0.1
μmであり、鏡面研磨後と比較して悪くなっていた。
【0034】また、上記実施例1の成形用型の成形面を
XPS(X-ray photospectroscopy、X線光電子分光
法)により測定し、成形面での深さ方向でのクロム元素
および酸素元素の存在比率を求めた。結果を図2に示
す。図2において、縦軸は各元素の存在比率(単位、a
t%)であり、横軸は酸化クロムのエッチッグレートか
ら換算した表面からの深さ(単位、オングストローム)
である。図2によれば、成形用型の成形面表面近傍は、
クロム元素と酸素元素の混合層を形成しており、また、
300オングストローム付近から深いことろでは元素比
率が傾斜的に変化していることが確認された。
【0035】また、上記XPSの測定データを用いて、
クロム元素と酸素元素との結合状態を分析したところ、
Cr−O結合が認められ、酸化クロムが存在することも
確認された。さらに、上記実施例1の成形用型の成形面
をX線回折装置により測定したところ、結晶を示すピー
クを確認できなかった。
【0036】次に、上記各成形用型をプレス成形装置に
装着し、フリント系光学ガラスLaSF03(軟化点S
p=687℃、ガラス転移点Tg=610℃)をプレス
成形して、耐久性の試験を行い表1に示す結果を得た。
これによると、比較用型1は500回の成形により成形
面にガラスが融着するとともに膜剥離を生じて成形不能
となった。
【0037】
【表1】
【0038】これに対して、上記実施例1ないし3の成
形用型は10000回以上使用しても上述したような不
具合は生じなかった。また、10000回の成形に使用
した後の成形用型の成形面を光学顕微鏡や走査型電子顕
微鏡(SEM)で観察したが、ガラスの融着、膜剥離、
傷やクラックなどの欠陥、ガラス中に存在するPbOの
還元析出物であるPbなどは認められなかった。さら
に、成形したガラスレンズについても表面粗さ、面精
度、形状精度、透過率を測定したが、所望の値を満足す
るものであった。また光学機能面へのPbの析出や、成
形時のガス残りといった問題も生じていなかった。
【0039】なお、これらの結果は、同一条件で製造し
た2本の成形型について同様であった。この第1の実施
の形態の変形例として、酸素イオンを注入中、あるいは
注入後に上記成形用型を加熱処理してもよい。この場
合、注入した酸素イオンは増速拡散効果により分布の広
がり効果を生みだし、型母材に対するより深い侵入が実
現される。その結果、酸化クロム層の窒化クロム層に対
する密着性をさらに向上させることができるとともに、
熱安定性が向上する。また、加熱処理しない成型用型と
同じ深さまで酸素イオンを注入するためには、より低い
注入条件で実現できるので、表面を粗くするようなこと
もない。
【0040】また、型母材としては焼結WC以外に、S
iC、TiC、TaC、BN、TiN、AlN、Si3
4、SiO2、Al23、ZrO2、W、Ta、Mo、
サーメット、サイアロン、ムライト、WC−Co合金な
どから選択されたものであってもよい。
【0041】さらに、窒化クロム層を形成するに際し、
ターゲットにはCr2Nに変えてCrNやCrN2を用い
てもよく、形成方法として、イオンビームスパッタ法に
変えてCVD法、真空蒸着法などの一般的な成膜方法を
用いてもよい。
【0042】第1の実施の形態に係る成形用型を製造す
るに際しては、窒化クロム層に対して酸素イオンを注入
するので、型母材と窒化クロム層との密着性が向上す
る。また、成形面の表面は非晶質になっているので、結
晶粒の脱落やクラックの発生なども防止される。 (第2の実施の形態)本発明の第2の実施の形態につい
て説明する。本実施の形態の成形用型は、焼結SiCを
型母材とし、この型母材を所定の形状に加工した後に、
この型母材の表面にCVD法により多結晶のSiC膜を
形成し、その後成形面に鏡面研磨を施した。
【0043】このようにして多結晶SiC膜を形成した
成形用型を6本製作し、そのうち各2本づつに対して次
の各条件でイオン注入装置を用いてイオン注入を行い、
実施例4または5とした。なお、残りの2本は比較用の
成形用型(以下、比較用型2という)であり、イオン注
入を行わなかった。
【0044】(実施例4)注入条件4によりクロムイオ
ンを注入し、その後、注入条件5により酸素イオンを注
入した。
【0045】注入条件4;注入イオン:質量分離を行っ
たクロムイオン(52Cr+)、注入量:2×1018io
ns/cm2、イオンエネルギー:60keV。 注入条件5;注入イオン:質量分離を行った酸素イオン
16+)、注入量:1×1018ions/cm2、イオ
ンエネルギー:25keV。
【0046】(実施例5)上記注入条件4によりクロム
イオンを注入し、その後、注入条件6により窒素イオン
を注入し、さらにその後、注入条件7により酸素イオン
を注入した。
【0047】注入条件6;注入イオン:質量分離を行っ
た窒素イオン(14+)、注入量:2×1018ions
/cm2、イオンエネルギー:35keV。 注入条件7;注入イオン:質量分離を行った酸素イオン
16+)、注入量:1×1018ions/cm2、イオ
ンエネルギー:25keV。
【0048】上記実施例4または5の成形用型について
も、成形面の表面粗さ、XPS測定、クロム元素と酸素
元素との結合状態分析を行い、第1の実施の形態に係る
成型用型と同様に、良好な結果が得られた。
【0049】また、フリント系光学ガラスLaSF03
をプレス成形しての耐久性試験などを行い、表1に示す
結果を得た。これによると、比較用型2は10回の成形
により成形面にガラスが融着し成形不能となった。これ
に対して、上記実施例4または5の成形用型はいずれも
10000回以上使用しても上述したような不具合は発
生せず、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察で
も、上記第1の実施の形態と同様に良好であった。さら
に、成形したガラスレンズの表面粗さや形状精度などに
ついても上記第1の実施の形態と同様に良好であった。
【0050】この第2の実施の形態の変形例として、酸
素イオンを注入するのに変えて、上記成形用型を加熱処
理してもよい。この場合、簡単に成形用型を作成するこ
とが可能となる。また、上記実施例5においては、クロ
ムイオンを注入後に酸素イオンを注入するようにした
が、これらのイオンを同時に注入するようにしてもよ
い。
【0051】第2の実施の形態に係る成形用型を製造す
るに際し、薄膜を形成しないので、膜剥離を生じること
がない。 (第3の実施の形態)本発明の第3の実施の形態につい
て説明する。本実施の形態の成形用型は、第1の実施の
形態と同様に焼結WCを型母材とし、この型母材を所定
の形状に加工した後に成形面に鏡面研磨を施した。この
成形用型を6本製作し、良く洗浄してから、イオン源を
2つ有する複合型のイオンビームスパッタ装置に順次装
着した。この複合型イオンビームスパッタ装置の一方の
イオン源は、比較的低エネルギー用のイオン源であり、
金属クロムからなるターゲットに向けて設けられ、他方
のイオン源は、比較的高エネルギー用のイオン源であ
り、上記成形用型の成形面に直接向けて設けられてい
る。
【0052】本実施の形態においては、上記低エネルギ
ーイオン源により上記ターゲットをスパッタリングして
上記成形面上にクロム元素を積層しつつ、同時に上記高
エネルギーイオン源により種々のイオンを成形面にイオ
ン注入してダイナミックミキシングを行い、その後、成
形面に酸素イオンを注入した。なお、上記ダイナミック
ミキシングを行うイオンの種類により次に示すように実
施例6ないし8とし、各実施例では、同一条件で2本の
成形用型を作成した。
【0053】(実施例6) 注入条件8;注入イオン:質量分離を行ったクロムイオ
ン(52Cr+)、注入量:5×1016ions/cm2
イオンエネルギー:100keV。
【0054】注入条件9;注入イオン:質量分離を行っ
た酸素イオン(16+)、注入量:1×1018ions
/cm2、イオンエネルギー:25keV。(実施例
7) 注入条件10;注入イオン:アルゴンイオン(40
+)、注入量:5×101 6ions/cm2、イオンエ
ネルギー:60keV。
【0055】注入条件11;上記注入条件9と同じ。 (実施例8) 注入条件12;注入イオン:質量分離を行った窒素イオ
ン(14+)、注入量:5×1016ions/cm2、イ
オンエネルギー:60keV。
【0056】注入条件13;上記注入条件9と同じ。 上記実施例6ないし8の成形用型についても、成形面の
表面粗さ、XPS測定、クロム元素と酸素元素との結合
状態分析を行い、第1の実施の形態と同様に良好な結果
が得られた。特に、ダイナミックミキシング後の成形面
の表面粗さはRmax=0.02μmで、鏡面研磨後の
表面粗さに対して劣化は認められなかった。
【0057】また、フリント系光学ガラスLaSF03
をプレス成形しての耐久性試験などを行い、表1に示す
結果を得た。これによれば、上記実施例6ないし8の成
形用型はいずれも10000回以上使用しても上述した
ような不具合は発生せず、光学顕微鏡や走査型電子顕微
鏡での観察結果も、上記第1の実施の形態と同様に良好
であった。さらに、成形したガラスレンズの表面粗さや
形状精度などについても上記第1の実施の形態と同様に
良好であった。
【0058】この第3の実施の形態の変形例として、酸
素イオンを注入するのに変えて、上記成形用型を加熱処
理してもよい。この場合、簡単に成形用型を作成するこ
とが可能となる。また、上記実施例5においては、クロ
ムイオンを注入後に酸素イオンを注入するようにした
が、これらのイオンを同時に注入するようにしてもよ
い。
【0059】第3の実施の形態に係る成形用型は、ダイ
ナミックミキシングによりクロム層を形成したので、ク
ロム層と型母材との密着性が向上し、ガラスとの離型性
のみならず耐久性も向上した成形用型となる。また、膜
形成とイオン注入とを併用しつつ同時に行うことによ
り、成膜時間を短縮することが可能となる。
【0060】さらに、以上のような形態により実施され
る本発明は、その他にも本発明の要旨を逸脱しない範囲
で種々の変形実施が可能である。以上、本発明の実施形
態に基づいて説明したが本明細書中には以下の発明が含
まれる。すなわち、 (1) ガラス光学素子のプレス成形に用いる光学素子
成形用型において、少なくとも上記ガラスとの接触部が
非晶質の酸化クロム層であることを特徴とする光学素子
成形用型。 (2) 上記(1)の光学素子成形用型であって、少な
くとも成形面にイオン注入層を有する。 (3) 上記(1)の光学素子成形用型であって、上記
酸化クロム層は、イオン注入により形成する。 (4) 上記(2)の光学素子成形用型であって、上記
イオン注入するイオンは、少なくとも酸素イオン含む。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、製造するに際しイオン
注入を行うとともに、成形面の少なくとも表面に酸化ク
ロム層を形成したので、高硬度で、ガラスとの離型性が
よく、また膜剥離を生じにくい、従って極めて耐久性の
高い光学素子成型用型となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 発明の実施の形態に係る成型用型の概念図で
ある。
【図2】 実施例1に係る成型用型の成形面の、酸素元
素とクロム元素との深さ方向の存在比率を示すデータで
ある。
【符号の説明】
1 成型用型 2 型母材 3 成形面 4 成形装置取り付け部

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス光学素子のプレス成形に用いる光
    学素子成形用型において、型母材の少なくとも成形面に
    窒化クロム層を形成し、この窒化クロム層に酸素イオン
    をイオン注入することにより、少なくともその表面を酸
    化クロム層としたことを特徴とする光学素子成形用型。
  2. 【請求項2】 ガラス光学素子のプレス成形に用いる光
    学素子成形用型において、型母材の少なくとも成形面に
    クロムイオンをイオン注入してクロムイオン注入層を形
    成し、その後、少なくともその表面を酸化クロム層とし
    たことを特徴とする光学素子成形用型。
  3. 【請求項3】 ガラス光学素子のプレス成形に用いる光
    学素子成形用型において、型母材の少なくとも成形面に
    クロムイオンおよび窒素イオンをイオン注入して窒化ク
    ロム層を形成し、その後、少なくともその表面を酸化ク
    ロム層としたことを特徴とする光学素子成形用型。
  4. 【請求項4】 ガラス光学素子のプレス成形に用いる光
    学素子成形用型において、型母材の少なくとも成形面に
    クロム層を形成するとともに、クロムイオン、窒素イオ
    ン、または不活性ガスイオンから選ばれた少なくとも1
    つ以上のイオンをイオン注入してイオン注入層を形成
    し、その後、少なくともその表面を酸化クロム層とした
    ことを特徴とする光学素子成形用型。
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