JPH10242571A - 歪多重量子井戸構造およびその製造方法 - Google Patents

歪多重量子井戸構造およびその製造方法

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JPH10242571A
JPH10242571A JP3888297A JP3888297A JPH10242571A JP H10242571 A JPH10242571 A JP H10242571A JP 3888297 A JP3888297 A JP 3888297A JP 3888297 A JP3888297 A JP 3888297A JP H10242571 A JPH10242571 A JP H10242571A
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quantum well
well structure
ingaas
layer
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JP3888297A
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Manabu Mitsuhara
学 満原
Matsuyuki Ogasawara
松幸 小笠原
Hideo Sugiura
英雄 杉浦
Mamoru Oishi
護 大石
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NTT Inc
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Nippon Telegraph and Telephone Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】井戸層に圧縮歪を有するInGaAs、障壁層
にInGaAsまたはInGaAsPを用いる歪多重量
子井戸構造において、+1.2%よりも大きな歪量の井
戸層を用いた場合においても良質な結晶が得られる素子
構造とその製造方法を提供する。 【解決手段】InP基板上に、基板の格子定数に対し+
1.2%以上の圧縮歪を有するInGaAsからなる井
戸層と、基板の格子定数に対する歪量が±0.2%以内
で、膜厚が15nm以上のInGaAsもしくはInG
aAsPからなる障壁層とを少なくとも積層した歪多重
量子井戸構造とする。薄膜の成長温度を480℃以上、
540℃以下の範囲となし、障壁層を成長する際のV族
原料ガスの総供給量を、井戸層を成長させる際のV族原
料ガスの総供給量の2倍以上とする工程を含む歪多重量
子井戸構造の製造方法とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体レーザ、光
増幅素子、光変調素子などの活性層に用いられる歪多重
量子井戸構造およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、半導体レーザの活性層に圧縮
歪を加えた井戸層を有する歪多重量子井戸構造を用いる
ことにより、発振しきい電流の低減、発振線幅の狭線幅
化、変調周波数の高速化など、レーザ特性が著しく改善
されることが数多く報告されている。さらに、井戸層の
圧縮歪量を増大させることができれば、オージェ再結合
による非発光再結合の低減効果や微分利得の増大効果の
ため、さらに発振しきい電流や変調周波数等においてレ
ーザ特性が向上する(アイ イー イー イー ジャーナル
オブ カンタム エレクトロニクス29巻1544頁〔W.W.
Lui et al.,IEEE J.Quantum Electron.,29(199
3)1544.〕、アイ イー イー イー ジャーナル オブ カ
ンタム エレクトロニクス30巻500頁〔S.Seki et al.,
IEEEJ.Quantum Electron.,30(1994)500.〕)。
また、InP基板上のInGaAsを井戸層とする多重
量子井戸レーザでは、井戸層の歪量を増加させることに
より、波長1.7μm以上でのレーザ発振も可能とな
る。歪多重量子井戸構造において、井戸層の圧縮歪量を
増加させる場合、歪多重量子井戸構造の膜厚が一定値
(臨界膜厚)を超えると、歪応力の増大によりミスフィ
ット転移が発生し、これに伴い非発光中心となる欠陥が
発生することが知られている。ミスフィット転移の発生
を抑制するために、歪補償多重量子井戸構造が提案され
た。これは、井戸層の圧縮歪に対し、障壁層に引張歪を
掛け、多重量子井戸構造全体としての歪応力を低減し、
これによりミスフィット転移の発生を抑えようとするも
のである。このミスフィット転移による格子緩和では、
結晶成長が層状に進行する、いわゆる2次元成長が前提
になっているが、基板となる層と成長層との格子定数の
差が大きい場合、結晶成長は3次元的な島状に進行(3
次元成長)することが知られている(アプライド フィ
ジックス レター60巻2249頁〔M.Gendry et al.,Appl.
Phys.Lett.60(1992)2249.〕)。このため、歪量子井
戸構造において、井戸層の歪量を大きくした場合、井戸
層と障壁層の格子定数の差も大きくなるため、ミスフィ
ット転移の他に3次元成長による積層欠陥の発生が起き
る。歪補償多重量子井戸構造では、井戸層と障壁層の格
子定数の差がさらに大きくなるため、歪量の大きな井戸
層に対して用いることは困難である。実際、InGaA
s井戸層とInGaAs障壁層を用いた歪補償多重量子
井戸構造では、井戸層および障壁層の歪量の絶対値を+
1.25%以上にするとホトルミネセンス発光強度の劣
化が起きることが知られている(ジャーナル オブ クリ
スタル グロース 145巻371頁〔T.Tsuchiya et al.,
J.Cryst.Growth 145(1994)371.〕)。上記3次元成
長による積層欠陥の発生に関して、InP基板上のIn
GaAsおよびInGaAsPからなる歪多重量子井戸
構造では、井戸層の歪量を増加させた場合、井戸層と障
壁層間において、障壁層の組成分離に基づく界面の揺ら
ぎが起こり、これにより非発光中心となる欠陥が発生す
るため、ホトルミネセンス発光強度低下などの光学特性
の劣化が起きることが知られている。(ジャーナルオブ
クリスタル グロース 132巻231頁〔U.Bangert et a
l.,J.Cryst.Growth 132(1993)231.〕)。特に、In
GaAsを多重量子井戸構造の構成層に用いた場合に
は、この界面の揺らぎが顕著になる。この界面の揺らぎ
を抑制するには、成長温度の低減が有効であることが知
られている(ジャーナル オブ クリスタル グロース153
巻71頁〔A.Ponchet et al.,J.Cryst.Growth 153(1
995)71.〕)。これまで、InP基板上のInGaAs
およびInGaAsPの成長には、有機金属気相成長法
(MOVPE法)、有機金属分子線エピタキシー法(M
OMBE法)、およびガスソース分子線エピタキシー法
(GSMBE法)が主に用いられてきた。有機金属分子
線エピタキシー法、ガスソース分子線エピタキシー法の
良質な結晶が得られる成長温度は、有機金属気相成長法
に対し、約100℃低いため、上述した歪InGaAs
層を含む多重量子井戸構造における界面の揺らぎの抑制
に適した成長法である。上記のように、大きな歪量の井
戸層を有する多重量子井戸構造において、良質の結晶を
得るためには、界面の揺らぎの原因となる組成分離を抑
制する必要がある。InP基板上のInGaAsP層に
おいて、成長温度の低減によって組成分離を抑制しよう
とすると、470℃以下の成長温度が必要となる(ジャ
ーナルオブ クリスタル グロース 155巻1頁〔R.R.La
pierre et al.,J.Cryst.Growth 155(1995)1.〕)。
ホトルミネセンス発光の強度の大きさ、あるいは故意に
不純物ドーピングを行わない場合のホール測定における
移動度の大きさなどで評価される膜質は、InGaAs
Pではその組成および成長温度により異なる。上述した
ように、有機金属分子線エピタキシー法およびガスソー
ス分子線エピタキシー法では、有機金属気相成長法に対
し、約100℃低い成長温度で良質の結晶成長が可能で
ある。しかし、有機金属分子線エピタキシー法あるいは
ガスソース分子線エピタキシー法を用いても、InGa
Asについて良質の結晶を得るためには、480〜54
0℃の成長温度が必要である(アプライド フィジック
ス レター 67巻3676頁〔P.Thiagarajan et al.,App
l.Phys.Lett.67(1995)3676.〕)。このため、井戸層
にInGaAsを用いた歪多重量子井戸構造において、
成長温度を470℃以下にすることで界面の揺らぎを抑
制した結晶を得ることはできるが、成長温度が470℃
以下ではInGaAs層の結晶性が劣化するため、良好
なホトルミネセンス発光強度のInGaAs井戸層を有
する歪多重量子井戸構造は、470℃以下の成長温度で
は作製することは困難である。このため、InGaAs
の結晶性向上のためには480℃以上の成長温度が必要
であるが、上述したように歪InGaAs井戸層を有す
る多重量子井戸構造において、界面の揺らぎを抑制する
ためには成長温度を下げる必要がある。これまで、この
2つの要因の妥協点として、InGaAs井戸層の歪量
が決定されてきた。これまで、報告されている圧縮歪I
nGaAs井戸層を有する多重量子井戸構造を活性層と
する半導体レーザは、井戸層数4の場合、井戸層の歪量
+1.2%以下のものがほとんどである。InP基板上
のInGaAsPにおける組成分離は、成長時のV族供
給量を増大させることにより抑制されることが知られて
いる(ジャーナル オブ クリスタル グロース 155巻1頁
〔R.R.Lapierre et al.,J.Cryst.Growth 155(199
5)1.〕)。しかしながら、InGaAsPでは成長時の
V族供給量を増加させると、膜中に取り込まれる不純物
が増加するなどの膜質の劣化が起きる。有機金属分子線
エピタキシー法によるInP成長の例では、成長時のV
族原料ガスであるホスフィンの供給量を2倍にすること
で、膜中の炭素濃度が3倍以上になることが報告されて
いる(ジャーナル オブ クリスタル グロース 105巻135
頁〔J.L.Benchimol et al.,J.Cryst.Growth 105
(1990)135.〕)。InGaAsにおいても成長時のV族
供給量増加により、取り込まれる不純物濃度が増加する
ことが容易に推測される。このため、InGaAs井戸
層を用いた歪多重量子井戸構造において、井戸層と障壁
層間の界面の揺らぎを抑制するために、成長時のV族供
給量を増加させても、InGaAs井戸層が劣化するた
め、良質の歪多重量子井戸構造は得られない。上述した
ように、現在報告されているInP基板上の圧縮歪In
GaAsを井戸層とする歪多重量子井戸構造を用いた半
導体レーザでは、井戸層数4の場合、井戸層の歪量が+
1.2%以下のものがほとんどであり、井戸層歪量が+
1.2%以上で低い発振しきい値電流、長いレーザ素子
寿命となるような歪多重量子井戸構造の活性層を得るこ
とは困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来技術にお
いては、井戸層に圧縮歪を有するInGaAs、障壁層
にInGaAsまたはInGaAsPを用いる歪多重量
子井戸構造では、+1.2%以上の井戸層歪量で、良質
の結晶を得られないという問題があった。また、これま
で歪量+1.2%以上のInGaAsを井戸層に用いた
場合に、良質な結晶が得られる障壁層の歪量および膜厚
についても明らかにされていなかった。半導体レーザ等
の光半導体装置の性能向上および機能向上のためには、
圧縮歪を有するInGaAsを井戸層に用いた歪多重量
子井戸構造において、+1.2%よりも大きな歪量の井
戸層が必要であり、この場合に良質な結晶が得られる素
子構造およびその製造方法が求められていた。
【0004】本発明の目的は、上記従来技術における問
題点を解消し、井戸層に圧縮歪を有するInGaAs、
障壁層にInGaAsまたはInGaAsPを用いる歪
多重量子井戸構造において、+1.2%よりも大きな歪
量の井戸層を用いた場合においても良質な結晶が得られ
る素子構造およびその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的を達成
するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構
成とするものである。すなわち、本発明は請求項1に記
載のように、InP基板上に、該基板の格子定数に対し
+1.2%以上の圧縮歪を有するInGaAsからなる
井戸層と、上記基板の格子定数に対する歪量が±0.2
%以内で、膜厚が15nm以上のInGaAsもしくは
InGaAsPからなる障壁層とを少なくとも積層して
構成した歪多重量子井戸構造とするものである。また、
本発明は請求項2に記載のように、請求項1に記載の歪
多重量子井戸構造を作製する方法であって、V族原料と
して水素化合物を用いる有機金属分子線エピタキシー
法、もしくはガスソース分子線エピタキシー法を用い
て、InP基板上に、該基板の格子定数に対し圧縮歪を
有するInGaAsからなる井戸層と、InGaAsも
しくはInGaAsPからなる障壁層とを交互に結晶成
長させて多重量子井戸構造を作製する際に、該多重量子
井戸構造を構成している上記障壁層を成長させる際のV
族原料ガスの総供給量を、上記井戸層を成長させる際の
V族原料ガスの総供給量の2倍以上とする工程を含む歪
多重量子井戸構造の製造方法とするものである。また、
本発明は請求項3に記載のように、請求項2に記載の歪
多重量子井戸構造の製造方法において、該歪多重量子井
戸構造を構成する薄膜の成長温度を480℃以上、54
0℃以下とする歪多重量子井戸構造の製造方法とするも
のである。
【0006】本発明の歪多重量子井戸構造は、請求項1
に記載のように、InP基板上の圧縮歪+1.2%以上
のInGaAs井戸層を用いる歪多重量子井戸構造にお
いて、InGaAsまたはInGaAsPからなる障壁
層の歪量を±0.2%以内、膜厚を15nm以上とする
ものである。従来の圧縮歪+1.2%以上のInGaA
s井戸層を用いた歪多重量子井戸構造においては、障壁
層の歪量および膜厚に関する制約はなかったが、本発明
では障壁層の歪量および膜厚を制約することにより、ミ
スフィット転位と3次元成長が共に発生しない範囲に設
定することが可能となり、良質な結晶の歪多重量子井戸
構造を実現することができ、良好なホトルミネセンス発
光が得られる効果がある。また、本発明の歪多重量子井
戸構造の製造方法は、請求項2に記載のように、V族原
料に水素化合物を用いる有機金属分子線エピタキシー
法、またはガスソース分子線エピタキシー法を用いて、
InP基板上に、歪InGaAsを井戸層とする歪多重
量子井戸構造を成長させる場合において、InGaAs
またはInGaAsPからなる障壁層を成長させる際の
V族原料ガスの総供給量を、InGaAs井戸層を成長
させる際のV族原料ガスの総供給量の2倍以上とするこ
とにより、組成分離を抑制して、井戸層と障壁層間の界
面の揺らぎがなく、良好なホトルミネセンス特性が得ら
れる効果がある。さらに、請求項3に記載のように、本
発明の歪多重量子井戸構造の成長温度として、480℃
以上、540℃以下の範囲に調整することにより、歪I
nGaAs層を含む多重量子井戸構造における界面の揺
らぎの制御に適した結晶成長を行うことができ、ホトル
ミネセンス特性に優れた歪多重量子井戸構造を作製でき
る効果がある。本発明の歪InGaAs井戸層を用いた
歪多重量子井戸構造において、障壁層の歪量および膜厚
をミスフィット転移と3次元成長がともに発生しない範
囲に設定することにより、良質の歪多重量子井戸構造を
得ようとするものである。また、本発明は有機金属分子
線エピタキシー法またはガスソース分子線エピタキシー
法を用いてInGaAsまたはInGaAsPを成長す
る際に、V族原料の供給量を増加させることにより組成
分離が抑制できるという性質を利用して、圧縮歪InG
aAsを井戸層、InGaAsまたはInGaAsPを
障壁層とする歪多重量子井戸構造を、井戸層と障壁層間
の界面の揺らぎがなく、良好なホトルミネセンス特性が
得られるように、480℃〜540℃の温度範囲で薄膜
の成長を行う歪多重量子井戸構造の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を例
示し、さらに詳細に説明する。 〈実施の形態1〉図1は、本実施の形態に係る歪多重量
子井戸構造の基本構造を示す模式図である。図におい
て、n型InP(n−InP)基板10上に、n−In
Pバッファ層11(膜厚200nm)、基板に格子整合
するInGaAsPガイド層12(バンドギャップ波長
1.3μm、膜厚100nm)、InGaAs井戸層1
4とInGaAs障壁層13からなる歪多重量子井戸構
造、基板に格子整合する InGaAsPガイド層15
(バンドギャップ波長1.3μm、膜厚100nm)お
よびInPキャップ層16(膜厚100nm)から構成
されている。図1では、井戸層の数が4、障壁層の数が
5の場合の歪多重量子井戸構造を示している。請求項1
に関する実施の形態として、2μm帯の発光波長を有す
る歪多重量子井戸構造に適用した例について、図1を引
用して説明する。井戸層として、圧縮歪+1.65%、
膜厚11.5nmのInGaAs、障壁層として膜厚が
18.5nmのInGaAsを用いた。結晶成長は、有
機金属分子線エピタキシー法で行い、成長温度は510
℃である。この歪多重量子井戸構造における発光波長
は、2.05μmであった。図2は、本実施の形態の歪
多重量子井戸構造のホトルミネセンス発光強度の障壁層
歪量に対する変化を示す図である。横軸に、障壁層歪量
(%)をとり、縦軸に歪多重量子井戸構造のホトルミネ
センス(PL)発光強度(任意目盛)をとった。引張歪
をマイナス(−)に、圧縮歪をプラス(+)にとってあ
る。まず、引張歪の場合、ホトルミネセンス発光強度
は、障壁層の歪量が0(格子整合)から−0.2%ま
で、ほぼ一定である。しかし、歪量が−0.2%よりさ
らに小さくなると、ホトルミネセンス発光強度は急激に
減少し、歪量が−0.23%で、ほとんど発光が見られ
なくなる。一方、圧縮歪(+)の場合、ホトルミネセン
ス発光強度は障壁層の歪量が0(格子整合)から大きく
なるにしたがい減少するが、+0.2%までは50%程
度の緩やかな減少を示す。しかし、歪量が+0.2%よ
り、さらに大きくなると、ホトルミネセンス発光強度は
急激に減少し、歪量が+0.27%では、ほとんど発光
が見られなくなる。つまり、良好なホトルミネセンス発
光を得るためには、障壁層歪量を−0.2%から+0.2
%の範囲にする必要がある。障壁層歪量が−0.2%よ
り小さい場合に、ホトルミネセンス発光強度が減少する
のは、井戸層と障壁層間の大きな歪量の差に起因する3
次元成長が起きたためであると考えられる。また、障壁
層の歪量が+0.2%より大きい場合、ホトルミネセン
ス発光強度が減少するのは、多重量子井戸構造全体の圧
縮歪応力の増大により、ミスフィット転移が発生したた
めであると考えられる。図3は、本実施の形態における
歪多重量子井戸構造のホトルミネセンス発光強度の障壁
層膜厚に対する変化を示す図である。横軸に障壁層の膜
厚(nm)をとり、縦軸に歪多重量子井戸構造のホトル
ミネセンス(PL)発光強度(任意目盛)をとった。障
壁層の歪量は、すべての試料において−0.04%であ
る。ホトルミネセンス発光は、障壁層の膜厚が10nm
の場合は、ほとんど見られない。ホトルミネセンス発光
強度は、障壁層の膜厚を大きくするにしたがい増大する
が、15nm以上では一定となる。つまり、良好なホト
ルミネセンス発光を得るためには、障壁層膜厚を15n
m以上とする必要がある。障壁層の膜厚が小さい場合
に、ホトルミネセンス発光強度が劣化するのは、次の
(数1)式で表わされる歪多重量子井戸構造における平
均の歪量が増大することにより、ミスフィット転移が発
生するためであると考えられる。
【0008】
【数1】
【0009】〔式中、ε(well)は井戸層の歪量、ε(bar
rier)は障壁層の歪量、hは井戸層の膜厚、Hは障壁層
の膜厚を表わす〕。一方、障壁層膜厚が大きい場合に
は、上記(数1)式で表わされる歪多重量子井戸構造に
おける平均の歪量を小さくすることができるため、ミス
フィット転移の発生を抑制することができ、良好なホト
ルミネセンス発光が得られるものと考えられる。しか
し、多重量子井戸構造を半導体光デバイスに用いる場
合、障壁層膜厚には上限が存在する。このことを、半導
体レーザを例にとり説明する。多重量子井戸構造を用い
た半導体レーザの発振しきい値電流は、井戸層における
光強度分布(光閉じ込め係数)を大きくすることにより
低減することができる。ところが、障壁層膜厚が大きい
場合には、井戸層における光閉じ込め係数が低下するた
めに発振しきい値電流の増大が起こる。このため、一般
に半導体レーザに用いられる多重量子井戸構造の障壁層
膜厚の上限は25nm程度である。
【0010】〈実施の形態2〉図1に示す歪多重量子井
戸構造を用いて、請求項2および請求項3に記載の歪多
重量子井戸構造の作製方法について説明する。以下の説
明は、V族原料にアルシン(AsH3)、ホスフィン
(PH3)等の水素化合物、III族原料にトリメチルイン
ジウム(TMIn)トリエチルガリウム(TEGa)等
の有機金属を原料とする有機金属分子線エピタキシー法
(MOMBE法)を用いた場合を示す。図4は、図1の
歪多重量子井戸構造において、InGaAs井戸層14
成長時のV族原料(アルシン)供給量を1.2×10~4
Torr(mmHg)で一定にして、InGaAs障壁層13
成長時のV族原料(アルシン)供給量を変えたときの歪
多重量子井戸構造のホトルミネセンス発光強度の変化を
示したものである。ここで示すV族原料供給量とは、V
族原料ガスを成長室に導入した際の真空度を、基板成長
位置にある真空ゲージにより測定した値である。井戸層
の歪量は+1.65%、障壁層の歪量は−0.05%で一
定である。歪多重量子井戸構造の成長温度は510℃で
ある。図4に示すように、障壁層を井戸層と同じV族原
料供給量1.2×10~4Torrで成長したときは、全くホ
トルミネセンス発光が見られなかった。これに対し、障
壁層成長時のV族原料供給量を井戸層成長時の2倍以上
の2.7×10~4Torrに増加させた場合は、ホトルミネ
センス発光が見られ、さらに、4.0×10~4Torrまで
増加させると、著しいホトルミネセンス発光強度の増大
が見られた。これに対し、井戸層成長時のV族原料供給
量を障壁層と同様に増大させた場合、ホトルミネセンス
発光強度の著しい減少が確かめられた。例えば、障壁層
成長時のV族原料供給量を4.0×10~4Torrに固定し
て、井戸層成長時のV族原料供給量を1.2×10~4To
rrから1.5倍の1.8×10~4Torrにした場合、PL
強度は1/15となった。このように、井戸層と障壁層
成長時のV族原料供給量を共に増大させても、良好なホ
トルミネセンス発光の歪多重量子井戸構造は得られな
い。本実施の形態で示すように、良好なホトルミネセン
ス発光の歪多重量子井戸構造を得るためには、障壁層成
長時のV族原料供給量を井戸層成長時の少なくとも、2
倍以上にする必要がある。本実施の形態では、障壁層と
してInGaAs、成長法として有機金属分子線エピタ
キシー法を用いた場合について述べたが、障壁層として
はInGaAsに限られる訳ではなく、InGaAsP
についても上記と同様の効果があることを確認してい
る。また、有機金属分子線エピタキシー法と同様の成長
温度領域を有し、III族原料が固体金属からなるガスソ
ース分子線エピタキシー法を用いた場合においても、上
記と同様の効果が得られることは明らかである。また、
本実施の形態では、有機金属分子線エピタキシー法を用
いて、成長温度が510℃で歪多重量子井戸構造の製造
を行った場合を示したが、有機金属分子線エピタキシー
法、またはガスソース分子線エピタキシー法のいずれの
成長法を用いた場合も、480℃未満の成長温度ではI
nGaAs井戸層の膜質は劣化する。また、540℃を
超えた高い成長温度では表面からV族抜けが起きるた
め、良質の歪多重量子井戸構造を形成することはできな
い。
【0011】〈実施の形態3〉次に、図5に示す構造の
半導体レーザを作製した具体例を挙げる。図5におい
て、2×1018/cm3なるn−InP基板50に、有
機金属分子線エピタキシー法により、Snをドープした
n−InPバッファ層51、基板に格子整合するノンド
ープInGaAsPガイド層52(バンドギャップ波長
1.3μm、膜厚100nm)、4層のInGaAs井
戸層54(膜厚11.5nm)と、5層のInGaAs
障壁層53(膜厚19nm)からなる多重量子井戸層、
基板に格子整合するノンドープInGaAsPガイド層
55(バンドギャップ波長1.3μm、膜厚100n
m)、BeをドープしたInPキャップ層56(膜厚
1.5μm)、およびBeをドープしたInGaAsコ
ンタクト層57(膜厚300nm)を順次積層した。I
nGaAs井戸層54は、歪量+1.65%、成長時の
V族原料(アルシン)供給量は1.2×10~4Torrであ
り、InGaAs障壁層53は、歪量−0.05%で、
成長時のV族原料(アルシン)供給量は、井戸層54成
長時の3.3倍の4.0×10~4Torrである。また、成
長温度は510℃とした。上記図5に示す構造の半導体
レーザを、活性層幅1.5μm、共振器長600μmの
電流ブロック型埋込レーザにした場合、これまで4層の
InGaAs井戸層を用いた多重量子井戸構造では報告
されていない2.05μmという長波長での発振波長
を、しきい値電流45mAで得られた。このように、歪
量+1.65%、膜厚11.5nmのInGaAs井戸層
を用いて、長波長でのレーザ発振を実現できたのは、本
発明による良好な結晶性の歪多重量子井戸構造を作製で
きたためであると考えられる。
【0012】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の歪多重量
子井戸構造を用いれば、従来、作製が困難だった歪量が
+1.2%以上のInGaAsを井戸層とする歪多重量
子井戸構造を容易に作製することが可能となり、高圧縮
歪のInGaAs井戸層を有する歪多重量子井戸構造を
適用した半導体光素子の長波長化、半導体レーザの発振
電流の低しきい値化を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1で例示した歪多重量子井
戸構造を示す模式図。
【図2】本発明の実施の形態1で例示した歪多重量子井
戸構造のホトルミネセンス発光強度の障壁層歪量に対す
る変化を示す図。
【図3】本発明の実施の形態1で例示した歪多重量子井
戸構造のホトルミネセンス発光強度の障壁層膜厚に対す
る変化を示す図。
【図4】本発明の実施の形態2で例示した歪多重量子井
戸構造のホトルミネセンス発光強度の障壁層成長時時の
V族供給量に対する変化を示す図。
【図5】本発明の実施の形態3で例示した歪多重量子井
戸構造を適用した半導体レーザの構成を示す模式図。
【符号の説明】
10…n−InP基板 11…n−InPバッファ層 12…InGaAsPガイド層 13…InGaAs障壁層 14…InGaAs井戸層 15…InGaAsPガイド層 16…InPキャップ層 50…n−InP基板 51…n−InPバッファ層 52…InGaAsPガイド層 53…InGaAs障壁層 54…InGaAs井戸層 55…InGaAsPガイド層 56…InPキャップ層 57…InGaAsコンタクト層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大石 護 東京都新宿区西新宿三丁目19番2号 日本 電信電話株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】InP基板上に、該基板の格子定数に対し
    +1.2%以上の圧縮歪を有するInGaAsからなる
    井戸層と、上記基板の格子定数に対する歪量が±0.2
    %以内で、膜厚が15nm以上のInGaAsもしくは
    InGaAsPからなる障壁層とを少なくとも積層して
    なることを特徴とする歪多重量子井戸構造。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の歪多重量子井戸構造を作
    製する方法であって、V族原料として水素化合物を用い
    る有機金属分子線エピタキシー法、もしくはガスソース
    分子線エピタキシー法を用いて、InP基板上に、該基
    板の格子定数に対し圧縮歪を有するInGaAsからな
    る井戸層と、InGaAsもしくはInGaAsPから
    なる障壁層とを交互に結晶成長させて多重量子井戸構造
    を作製する際に、該多重量子井戸構造を構成している上
    記障壁層を成長させる際のV族原料ガスの総供給量を、
    上記井戸層を成長させる際のV族原料ガスの総供給量の
    2倍以上とする工程を含むことを特徴とする歪多重量子
    井戸構造の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項2に記載の歪多重量子井戸構造の製
    造方法において、該歪多重量子井戸構造を構成する薄膜
    の成長温度を480℃以上、540℃以下とすることを
    特徴とする歪多重量子井戸構造の製造方法。
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