JPH10280110A - アルミニウム部材の表面硬化方法 - Google Patents

アルミニウム部材の表面硬化方法

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JPH10280110A
JPH10280110A JP9106637A JP10663797A JPH10280110A JP H10280110 A JPH10280110 A JP H10280110A JP 9106637 A JP9106637 A JP 9106637A JP 10663797 A JP10663797 A JP 10663797A JP H10280110 A JPH10280110 A JP H10280110A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面の凹凸やブローホールの発生を抑制する
ことができ,かつ,高い効率で処理することができるア
ルミニウム部材の表面硬化方法を提供すること。 【解決手段】 高密度エネルギービーム1の照射によっ
てアルミニウム部材2の表層のみを融点以上に加熱して
溶融部21となし,次いで溶融部21を急冷凝固させて
表面硬化層22を形成する方法であって,溶融部21の
深さDは100μm以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,表面に硬化層を形成してアルミ
ニウム部材の表面を硬化する方法に関する。
【0002】
【従来技術】近年,例えば自動車用部材においては,そ
の軽量化の要求に対応すべく,重量面で有利なアルミニ
ウム合金を素材に用いたアルミニウム部材が適用されて
きている。そして,例えば摺動部分を有する部材にアル
ミニウム部材を適用する場合には,その摺動部分の耐摩
耗性を向上させることが必要であり,従来より種々の対
策が講じられている。
【0003】部材の耐摩耗性を向上させるには,その表
面特性を改質することが重要である。従来のアルミニウ
ム部材の表面改質方法としては,陽極酸化処理,めっ
き,コーティング,熱処理などの方法がある。このう
ち,熱処理による方法は,他の方法に比べて比較的簡便
であるため種々の方法が提案されている。例えば,特公
平7−37660号公報には,鋳造品の機械的性質を改
善する熱処理方法が提案されており,その一部を,表面
改質に利用することができる。
【0004】即ち,上記公報に示された方法において
は,まず,高密度エネルギーを照射することにより,所
望部分を溶融・再凝固させて鋳造組織の微細化を図り,
次いで,T6処理(溶体化,焼入れ,時効処理)等の熱
処理を行い,上記微細化部分の熱処理効果を向上させる
方法である。
【0005】この従来の方法のうち,上記高密度エネル
ギー照射による溶融・再凝固処理は,単に組織を微細化
させるだけでなく,その微細化による硬度の向上や,材
質によってはいわゆる焼入れ効果による硬化をも得るこ
とができる。そのため,部材全体の熱処理(T6処理
等)を省略して,上記高密度エネルギーの照射による溶
融・再凝固処理だけを行い,部分的に表面硬化処理を行
うことができる。
【0006】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来のア
ルミニウム部材の表面硬化方法においては,次の問題が
ある。即ち,上記従来の高密度エネルギーの照射により
組織を微細化する方法においては,その表面が波打って
凹凸が生じてしまったり,周囲のガスを巻き込んでブロ
ーホールを生じてしまう。部材表面に凹凸が生じた場合
には,摺動面としてそのまま使用することが困難であ
る。また,ブローホールが生じた場合には,その熱処理
部分の強度が低下してしまい,十分な表面硬化が得られ
ないだけでなく,ブローホールが表面に露出すると,表
面精度が非常に悪くなってしまう。
【0007】上記ブローホールの防止のためには,アル
ミニウム部材を予熱しておき,溶融後の冷却スピードを
低下させ,巻き込んだガスを十分に放出した後に凝固す
るよう工夫することが必要である。また,上記凹凸を改
善するためには,その後に切削加工等の仕上げ工程を追
加することが必要である。これらのブローホールや凹凸
に対する対策は,処理時間の増加,工程の増加,さらに
は上記予熱による熱歪みの発生や硬度向上効果の低下等
の品質面における不具合を招いてしまう。
【0008】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてな
されたもので,表面の凹凸やブローホールの発生を抑制
することができ,かつ,高い効率で処理することができ
るアルミニウム部材の表面硬化方法を提供しようとする
ものである。
【0009】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,高密度エネルギ
ービームの照射によってアルミニウム部材の表層のみを
融点以上に加熱して溶融部となし,次いで該溶融部を急
冷凝固させて表面硬化層を形成する方法であって,上記
溶融部の深さは100μm以下であることを特徴とする
アルミニウム部材の表面硬化方法にある。
【0010】本発明において最も注目すべきことは,ア
ルミニウム部材の表層のみ,具体的には表面から100
μm以下の極表層のみを積極的に溶融部となし,これを
急冷凝固させて表面硬化層となすことである。そして,
その加熱源としては上記高密度エネルギービームを用い
ることである。
【0011】上記溶融部の深さが100μmを超える場
合には,表層のみを溶融させる効果が薄れ,表面の凹凸
の発生やブローホールの発生のおそれがある。一方,溶
融部の深さは20μm以上であることが好ましい。20
μm未満の場合には得られる表面硬化層の厚みが薄いた
め硬度向上効果が薄れるという問題がある。
【0012】また,上記高密度エネルギービームとして
は,例えばレーザービーム,電子ビーム等の高密度エネ
ルギーがある。本発明では,これらを総称して高密度エ
ネルギービームという。また,本発明において対象とす
るアルミニウム部材としては,例えば,ADC12,A
C8B,A4032,ADC6,AC7A,A2024
等のアルミニウム合金よりなる部材がある。
【0013】次に,本発明の作用につき説明する。本発
明においては,高密度エネルギービームの照射によって
アルミニウム部材を加熱する。そのため,アルミニウム
部材の表層は,非常に急速に加熱され,極めて短時間に
上記溶融部を形成することができる。即ち,高密度エネ
ルギービームによる加熱は,その投入エネルギーが非常
に大きいため,アルミニウム部材の内部に熱伝導する速
度よりも速い速度で極表層のみを加熱,溶融させること
ができる。
【0014】そして,本発明においては,上記溶融部を
深さ100μmの範囲の極表層に限定して形成する。そ
のため,溶融部形成時には,従来のように溶融金属の流
動に伴って周囲のガスを巻き込むということがなく,ま
た,表面が波打つこともない。したがって,ブローホー
ルや表面の凹凸の発生を防止することができる。そし
て,極表層のみが溶融状態にあるため,溶融前よりも平
坦になるというレベリング効果を得ることもできる。
【0015】次に,上記溶融部は,高密度エネルギービ
ームとアルミニウム部材との相対的な移動等によって溶
融部への高密度エネルギービームの照射を止めることに
より,急速に自己放冷される。即ち,上記のごとく溶融
部は極表層のみであり,その周囲の部材内部は十分に低
温状態に維持されている。それ故,高温状態の溶融部
は,その周囲への熱伝導によって急速に冷却される。
【0016】そして,上記溶融部は,上記の急速な冷却
によって,非常に微細な組織状態で表面硬化層として凝
固する。また,アルミニウム部材の素材の種類によって
は上記急冷によって表面硬化層が過飽和固溶体状態とな
るため,析出硬化による硬度向上効果も付与される。こ
のように硬化された表面硬化層の形成により,アルミニ
ウム部材の表面は,耐摩耗性にも優れた表面に改質され
る。
【0017】また,本発明においては,上記高密度エネ
ルギービームの照射によって,短時間のうちに100μ
m以下の深さの極表面のみを溶融部となし,次いで極短
時間のうちに上記表面硬化層を形成する。そのため,熱
処理時間を非常に短くすることができ,高い効率で処理
することができる。また,上記のごとく,ブローホール
や表面の凹凸の発生を防止することができ,しかも,処
理部分以外への熱伝導が少ないため熱歪みの発生も防止
することができ,アルミニウム部材を高品質に維持する
ことができる。
【0018】したがって,本発明によれば,表面の凹凸
やブローホールの発生を抑制することができ,かつ,高
い効率で処理することができるアルミニウム部材の表面
硬化方法を提供することができる。
【0019】次に,請求項2の発明のように,上記高密
度エネルギービームの照射時間は,0.5msec以下
(5/10000秒以下)であることが好ましい。これ
により,上記溶融部の深さを容易に100μm以下に制
御することができる。それ故,上記のごとく,ブローホ
ールや表面の凹凸を防止することができ,高い品質を維
持しつつ表面硬化を図ることができる。また,照射時間
の短縮は熱処理時間に直接的に影響し,さらなる処理の
高効率化を図ることもできる。
【0020】また,請求項3の発明のように,上記高密
度エネルギービームは,上記アルミニウム部材に対して
相対的に円状又は楕円状に複数回周回移動させながら照
射し,かつ,第2周回目以降の高密度エネルギービーム
の照射は,第1周目の照射により形成された上記溶融部
が凝固する前に行うことが好ましい。
【0021】即ち,高密度エネルギービームとアルミニ
ウム部材との相対的な周回移動を非常に高速とすること
により,円状又は楕円状の照射部分全体を溶融部分とな
す。これにより,アルミニウム部材に対してはあたかも
円状又は楕円状の熱源を投入した状態となり,高密度エ
ネルギービーム照射開始点と終了点の境界をなくすこと
ができる。それ故,溶融部が冷却されて形成される表面
硬化層も境界部の凹凸がないきれいな仕上がりにするこ
とができると共に,凝固後の再溶融・再凝固による硬度
低下もない。
【0022】また,請求項4の発明のように,上記高密
度エネルギービームは,その相対的な移動方向と90度
をなす方向に所定距離だけ揺動させながら照射すること
もできる。これにより,高密度エネルギービームの径よ
りも広い所定幅を有する表面硬化層を容易に形成するこ
とがでる。即ち,線状ではなく,面状の表面硬化層を容
易に得ることができる。
【0023】また,請求項5の発明のように,上記高密
度エネルギービームはレーザビームであり,かつ,上記
アルミニウム部材には,上記高密度エネルギービーム照
射の前に,予めレーザビーム吸収性を向上させるための
表面処理を施すことが好ましい。これにより,表面の反
射率の高いアルミニウム部材においても,方向性に優れ
たレーザービームを有効に利用することができる。ま
た,上記表面処理としては,ショットブラスト処理,ヤ
スリがけ,ブラシがけ,サンドペーパがけ,カーボン被
膜の形成等がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
実施形態例1 本発明の実施形態例にかかるアルミニウム部材の表面硬
化方法につき,図1を用いて説明する。本例のアルミニ
ウム部材の表面硬化方法は,図1(A)に示すごとく,
高密度エネルギービーム1の照射によってアルミニウム
部材2の表層のみを融点以上に加熱して溶融部21とな
し,次いで溶融部21を急冷凝固させて表面硬化層22
を形成する方法である。そして,溶融部21の深さDは
100μm以下としたものである。
【0025】即ち,本例は,図1(A)(B)に示すご
とく,ADC12の材質よりなるアルミニウム部材2の
所望部分20を表面硬化させるものである。上記高密度
エネルギービーム1としては,出力200WのYAGレ
ーザーを用いた。また,アルミニウム部材2の加熱時間
の調整は,高密度エネルギービーム1に対してアルミニ
ウム部材2を図1矢印方向へ移動させることにより行っ
た。具体的には,高密度エネルギービーム1の相対的な
移動速度(加工速度)を15m/分に設定した。
【0026】そして,上記条件により処理されるアルミ
ニウム部材2は,図1に示すごとく,高密度エネルギー
ビーム1の照射によって,所望部分20において溶融部
21が急速に形成される。このとき,高密度エネルギー
ビーム1の出力と加工速度を上記値に設定していること
により,溶融部21の深さDは,約50μmに止まる。
【0027】次いで,アルミニウム部材10の移動によ
って高密度エネルギービーム1の照射から開放された溶
融部21は,急速に自己放冷して凝固し,表面硬化層2
2となる。この表面硬化層22は,上記溶融部21が急
冷によって微細化されると共に過飽和固溶体となって形
成される。そのため,表面硬化層22は,微細化による
硬化と析出硬化とによって母材よりも高硬度の層とな
る。
【0028】そして,アルミニウム部材2は,この表面
硬化層22の形成によって,耐摩耗性が格段に向上す
る。また,上記のごとく,溶融部21の深さDを100
μm以下とすることにより,これよりも深い溶融部を形
成した場合のように周囲のガスを巻き込んでブローホー
ルを形成したり,表面を波立たせて凹凸を発生させるこ
ともない。したがって,生産効率を低下するような切削
等の仕上げ加工を追加する必要もない。
【0029】実施形態例2 本例は,実施形態例1において形成された表面硬化層2
2の硬度向上効果を定量的に評価した例である。評価
は,図2に示すごとく,上記アルミニウム部材2におけ
る表面硬化層22形成部分における,表面からの距離に
対する断面硬度の推移を測定した。また,比較のため,
表面硬化層22を形成していない部分についても同様に
断面硬度の測定を行った。
【0030】測定結果を図2に示す。同図は,横軸に表
面から深さ方向の距離(mm)を,縦軸に硬度(Hv)
をとった。同図より知られるごとく,表面硬化層22を
形成した部分の硬度分布E2は,比較部分の硬度分布C
2に比べて,極表層部分において急激な硬度向上が見ら
れる。この結果から,実施形態例1の表面硬化方法によ
り得られた表面硬化層22は,耐摩耗性の向上に寄与し
得る優れた高硬度層となることがわかる。
【0031】実施形態例3 本例は,図3〜図5に示すごとく,実施形態例1のアル
ミニウム部材の表面硬化方法を,自動車の自動変速機3
00における,摺動部を有するアルミニウム部材3に適
用した具体例である。本例のアルミニウム部材3は,図
3,図4に示すごとく,シールリング6を介してドラム
7を装着するセンターサポートである。
【0032】このセンターサポート3は,図5に示すご
とく,上記3つのシールリング6を遊嵌させるための3
つのシール溝31を有している。また,これらシール溝
31の間には,作動油8を供給するための2つの油溝3
4を設けてある。また,センターサポート3は固定部材
であり,一方,ドラム7は,ケース79(図3,図4)
に回転自在に支持された回転部材である。
【0033】また,センターサポート3は,回転するド
ラム7に対して作動油8を油溝34から供給する。この
とき,シールリング6は,作動油8の圧力によってそれ
ぞれ押圧される。そして,2つの油溝34から供給され
る作動油8の圧力が同等の場合には,図5に示すごと
く,3つのシールリング6はそれぞれドラム内壁71に
当接し,さらに両端の2つのシールリング6はそれぞれ
のシール溝31の側壁311,314に当接する。ま
た,2つの油溝34から供給される作動油8の圧力に差
がある場合には,中央のシールリング6もシール溝31
の側壁312又は313に当接する。
【0034】この作動油供給状態においては,シールリ
ング6はドラム7との当接によりドラム7に追従して回
動する。一方,センターサポート3は上記のごとく固定
している。そのため,センターサポート3のシール溝3
1の4箇所の側壁311〜314は,シールリング6と
摺動する面となる。本例は,このセンターサポート3に
おけるシール溝31の4箇所の側壁311〜314の表
面硬度を向上させるものである。
【0035】また,本例においては,側壁311〜31
4の表面硬化処理を行う前に,シール溝31の側壁全体
に対してショットブラスト処理を施した。そして,側壁
311〜314の表面硬化処理を行うに当たっては,図
6,図8に示すごとく,センターサポート3をその軸を
中心として回転可能にセットして,レーザービーム装置
から発射するレーザービーム1を照射することにより行
う。
【0036】まず,センターサポート3の先端側のシー
ル溝31の側壁311を表面硬化させる場合には,図6
に示すごとく,レーザービーム1を反射するための反射
ミラー59を用いて行う。処理条件は,センターサポー
ト3の回転数を100回転/分とすることにより加工速
度を15m/分とした。また,レーザービーム1の出力
は200Wとした。また,レーザービーム1の照射時間
は,センターサポート3の1回転分の時間となることを
目標に調整した。
【0037】そして,上記条件による熱処理を,レーザ
ービーム1の照射位置を側壁311における径方向にお
いて若干ずらして合計3回行った。これにより,図7に
示すごとく,深さ約50μm,幅約0.3mmの表面硬
化層22が3箇所形成された。なお,レーザービーム1
の照射から表面硬化層22が形成されるまでの作用は実
施形態例1と同様である。また,中央のシール溝31に
おける側壁312を表面硬化させる場合についてはこの
側壁311の場合と同様に行った。
【0038】次に,センターサポート3の後端側のシー
ル溝31の側壁314を表面硬化させる場合には,図8
に示すごとく,反射ミラーを用いることなく直接レーザ
ービーム1を照射して行った。その他の条件は上記側壁
311の処理の場合と同様とした。これにより,図9に
示すごとく,側壁314においても,上記と同様の3本
の表面硬化層22からなる表面硬化部分が形成された。
【0039】また,中央のシール溝31における側壁3
13を表面硬化させる場合についてはこの側壁314の
場合と同様に行った。なお,本例においては,レーザー
ビーム1の照射をセンターサポート3の1回転分だけ照
射することを目的に行ったが,その照射開始点と照射終
了点は若干重なった。そのため表面硬化層22の表面に
は微妙な跡が残ったが,実用上の問題はない。
【0040】以上の一連の表面硬化処理によって形成さ
れた各表面硬化層22は,高硬度化するだけでなく,そ
の表面が非常に平坦となり,かつブローホール等の品質
不良も発生していなかった。そのため,本例におけるセ
ンターサポート3は,切削加工等の仕上げ処理を行うこ
となくそのまま上記側壁311〜314を摺動面とする
ことができる。
【0041】即ち,本例においては,耐摩耗性に優れた
摺動面を有し,かつ形状等の品質に優れたアルミニウム
部材3を,短時間で得ることができる。また,本例にお
けるセンターサポート3は,上記のごとく耐摩耗性が向
上するため,従来なら鋼部材しか適用できなかった高出
力タイプの自動変速機にも適用できるようになった。そ
の他は実施形態例1,2と同様の効果が得られた。
【0042】実施形態例4 本例は,実施形態例3において,レーザービーム1とセ
ンターサポート3との相対速度(加工速度)を大きくし
たものである。具体的には,センターサポート3の回転
数を350回転/分として加工速度を65m/分とし
た。これにより,レーザービーム1のビーム径が約0.
5mmであるため,レーザービーム照射部分の加熱時間
は約0.5msecとなった。また,レーザービーム1
の出力は,加工速度の増大に対応して800Wに上げ
た。
【0043】上記条件により,実施形態例2と同様に表
面硬化層22を形成した結果,各表面硬化層22の深さ
は約50μmにおさまり,また,その表面状態は実施形
態例3と同等以上に平滑な面となった。本例においては
この表面状態を定量的に評価するため,表面粗さの測定
を行った。測定結果の一例を図10に示す。
【0044】図10は,横軸に測定距離を50倍でと
り,縦軸に粗さを100倍でとったものである。同図よ
り知られるごとく,表面硬化層22形成部分E4は,他
の部分と比べて凹凸がなくなり,非常に平滑な面になっ
ていることがわかる。その他は実施形態例1〜3と同様
の効果が得られる。
【0045】実施形態例5 本例は,実施形態例3において,レーザービーム1とセ
ンターサポート3との相対速度(加工速度)をさらに大
きくしたものである。そして,レーザービーム1は,セ
ンターサポート3に対して円状に複数回周回移動させな
がら照射し,かつ,第2周回目以降の高密度エネルギー
ビームの照射は,第1周回目の照射により形成された溶
融部21が凝固する前に行った。
【0046】具体的には,まずセンターサポート3の回
転数を3000回転/分として加工速度を470m/分
とした。これにより,センターサポート3の1回転,即
ちレーザービーム1の相対的な1周回転の時間は約20
msecとなる。また,レーザービーム1の出力は,加
工速度の増大に対応して,1.8KWに上げた。そし
て,このような条件の下,レーザービーム1を照射しな
がらセンターサポート3を25回転させた。
【0047】上記条件による処理においては,レーザー
ビーム1の相対的な周回移動が上記のごとく非常に高速
であるため,第1周回目において形成された溶融部が凝
固する前に2周回目以降のレーザービーム1の照射が行
われる。そのため,溶融部21の先端と後端とが溶融状
態でつながってリング状の溶融部が形成され,次いでリ
ング状に表面硬化層が形成される。
【0048】その結果,得られた表面硬化層22は,実
施形態例3,4の場合と異なり,レーザービーム1の照
射開始点と照射終了点の位置が全く分からないほどに滑
らかに仕上がった。したがって,本例によれば,円状に
表面硬化層を形成する場合において,継ぎ目のない極め
て滑らかな面に仕上げることができ,摺動面としての適
性をさらに向上させることができる。その他は,実施形
態例1〜4と同様の効果が得られる。
【0049】実施形態例6 本例は,図11に示すごとく,実施形態例5において,
レーザービーム1を,その相対的な移動方向Aと90度
をなす方向に所定距離だけ揺動させながら照射した例で
ある。具体的には,図11に示すごとく,センターサポ
ート3の側壁314を処理する場合を例にとって説明す
ると,レーザービーム1をセンターサポート3の回転の
半径方向に2mm幅Sだけ80Hzの周波数で揺動させ
る。また,加工速度,レーザービーム1の出力等の他の
条件は実施形態例5と同様にした。そして,このような
条件の下,レーザービーム1を照射しながらセンターサ
ポート3を50回転させた。
【0050】上記条件の下での処理により,図11,図
12に示すごとく,センターサポート3には,幅約2m
m,深さ約50μmのリング状の溶融部21が形成さ
れ,次いで同様のサイズのリング状の表面硬化層22が
形成された。また,この表面硬化層22の表面は,実施
形態例5と同様にレーザービーム1の照射開始点及び照
射終了点が分からないほどに滑らかとなっていた。
【0051】そして,本例によれば1度の処理によって
広い幅の表面硬化層を得ることができ,処理工程の削減
を図ることができる。その他は,実施形態例1〜5と同
様の効果が得られる。
【0052】
【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,表面の
凹凸やブローホールの発生を抑制することができ,か
つ,高い効率で処理することができるアルミニウム部材
の表面硬化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,表面硬化層の形成過程
を示す説明図。
【図2】実施形態例2における,表面硬化層の硬度の測
定結果を示す説明図。
【図3】実施形態例3における,自動変速機の全体構成
を示す説明図。
【図4】実施形態例3における,自動変速機の要部を拡
大した説明図。
【図5】実施形態例3における,センターサポートにお
ける摺動面を示す説明図。
【図6】実施形態例3における,センターサポートへの
レーザービームの照射状態を示す説明図。
【図7】実施形態例3における,形成された表面硬化層
を断面からみた説明図。
【図8】実施形態例3における,センターサポートへの
レーザービームの照射状態を示す説明図。
【図9】実施形態例3における,形成された表面硬化層
を断面からみた説明図。
【図10】実施形態例4における,表面硬化層の表面粗
さ測定結果を示す説明図。
【図11】実施形態例5における,レーザービームの照
射状態を示す説明図。
【図12】実施形態例5における,形成された表面硬化
層を断面からみた説明図。
【符号の説明】
1...高密度エネルギービーム(レーザービーム), 2...アルミニウム部材, 3...センターサポート(アルミニウム部材), 31...シール溝, 311〜314...側壁, 34...油溝, 6...シールリング, 7...ドラム, 71...ドラム内壁, 8...作動油,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横山 剛 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エイ・ダブリュ株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高密度エネルギービームの照射によって
    アルミニウム部材の表層のみを融点以上に加熱して溶融
    部となし,次いで該溶融部を急冷凝固させて表面硬化層
    を形成する方法であって,上記溶融部の深さは100μ
    m以下であることを特徴とするアルミニウム部材の表面
    硬化方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記高密度エネルギ
    ービームによる上記加熱の時間は,0.5msec以下
    であることを特徴とするアルミニウム部材の表面硬化方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記高密度エ
    ネルギービームは,上記アルミニウム部材に対して相対
    的に円状又は楕円状に複数回周回移動させながら照射
    し,かつ,第2周回目以降の高密度エネルギービームの
    照射は,第1周回目の照射により形成された上記溶融部
    が凝固する前に行うことを特徴とするアルミニウム部材
    の表面硬化方法。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2において,上記高密度エ
    ネルギービームは,その相対的な移動方向と90度をな
    す方向に所定距離だけ揺動させながら照射することを特
    徴とするアルミニウム部材の表面硬化方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項において,
    上記高密度エネルギービームはレーザビームであり,か
    つ,上記アルミニウム部材には,上記高密度エネルギー
    ビーム照射の前に,予めレーザビーム吸収性を向上させ
    るための表面処理を施すことを特徴とするアルミニウム
    部材の表面硬化方法。
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