JPH10296535A - 刃物及びその製造方法 - Google Patents

刃物及びその製造方法

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JPH10296535A
JPH10296535A JP18998097A JP18998097A JPH10296535A JP H10296535 A JPH10296535 A JP H10296535A JP 18998097 A JP18998097 A JP 18998097A JP 18998097 A JP18998097 A JP 18998097A JP H10296535 A JPH10296535 A JP H10296535A
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Isao Fuwa
勲 不破
Masahiro Ikegami
正弘 池上
Noboru Kusano
昇 草野
Riichi Hamada
利一 濱田
Kiyouichirou Nakayama
享一良 中山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高荷重環境下でも使用することができるもの
とする。 【解決手段】 鋼製の台金1と、この台金1に金属層3
を介して接合固着された超硬合金製の刃先チップ2とか
らなる刃物である。上記金属層3は台金1の熱膨張率と
刃先チップ2の熱膨張率との中間の熱膨張率を有する金
属で形成された高強度金属部32と、刃先チップ2と台
金1との接合域の端部に位置するとともに靱性が上記金
属部32より大となっている高靱性金属部31とからな
る。溶接接合の際の冷却時に問題となる熱応力を金属層
32の熱膨張率の選定によって小さくし、さらに応力が
集中することになる接合域端部では高靱性金属からなる
金属層31を、他の部分では強度的な要求を満たす高強
度金属からなる金属層32を介在させることによって接
合域端部でのクラックの発生のしやすさを抑制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は台金とこの台金に接
合された超硬合金製の刃先チップとからなる刃物及びそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼製の台金に超硬合金製の刃先チップを
接合した刃物では、一般に銀ろう等のろう材を用いて台
金への刃先チップの接合を行っているが、このように刃
先チップをろう付けした刃物では、ろう付け時の熱で台
金が鈍ってしまうことによる硬度低下があるほか、荷重
負荷が大である場合、刃先チップが脱落してしまうこと
がある。
【0003】このために特開昭63−43789号公報
や特開平4−52181号公報に示されているように、
電子ビームやレーザービーム等の高エネルギービームに
よる溶融溶接によって台金に刃先チップを取り付けたも
のが提供されている。この場合、上記ろう付けによるも
のに比して、かなり大きな荷重がかかる場合にも問題を
生じることがないものとなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、高エネルギー
ビームで刃先チップを接合したものにおいても、荷重の
レベルが大きい場合、刃先チップと台金との接合域の端
部において応力集中によりクラックが発生することがあ
り、このためにさらなる改善が求められているのが現状
である。
【0005】本発明はこのような点に鑑み為されたもの
であり、その目的とするところは高荷重環境下でも使用
することができる刃物とこの刃物を容易に製造すること
ができる製造方法とを提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】しかして本発明に係る刃
物は、鋼製の台金と、この台金に金属層を介して接合固
着された超硬合金製の刃先チップとからなる刃物であ
り、上記金属層は台金の熱膨張率と刃先チップの熱膨張
率との中間の熱膨張率を有する金属で形成された高強度
金属部と、刃先チップと台金との接合域の端部に位置す
るとともに靱性が上記金属部より大となっている高靱性
金属部とからなることに特徴を有している。溶接接合の
際の冷却時に問題となる熱応力を金属層の熱膨張率の選
定によって小さくし、さらに応力が集中することになる
接合域端部では高靱性金属からなる金属層を、他の部分
では強度的な要求を満たす高強度金属からなる金属層を
介在させることによって接合域端部でのクラックの発生
のしやすさを抑制したものである。
【0007】この場合、金属層における高強度金属部と
高靱性金属部とは同一元素を含む同系金属で形成して
も、構成元素の異なる異種金属で形成してもよいが、前
者の場合、高強度金属部と高靱性金属部との間の接合性
がよく、欠陥を少なくすることができ、この場合、高強
度金属部を鉄−ニッケルを主成分とする合金、高靱性金
属部を高強度金属部よりもニッケル含有量が大の金属を
好適に用いることができる。そして後者の場合、高強度
金属部と高靱性金属部とに夫々より適切な材料を使用す
ることができる。
【0008】また、金属層を高強度金属部から接合域端
部の高靱性金属部にかけて硬さが漸次変化しているもの
とすると、高強度金属部と高靱性金属部との境界部に応
力が集中してしまうことを避けることができるために、
さらに好ましい結果を得ることができ、また金属層の高
強度金属部を台金側から刃先チップ側にかけて熱膨張率
が漸次変化しているものとすると、接合時の冷却時に発
生する熱応力をさらに低減することができる。
【0009】そして本発明に係る刃物の製造方法は、鋼
製の台金に金属層を介して超硬合金製の刃先チップを溶
接固着するにあたり、刃先チップと台金との接合域の端
部と他の部分とにおいて強度及び靱性が異なるように金
属層を形成することに特徴を有している。溶接時に強度
及び靱性の調整を行うために、強度と靱性との設定を容
易に行うことができる。
【0010】この時、金属層を鉄−ニッケルを主成分と
する金属からなるものとするとともに、刃先チップと台
金との接合域の端部におけるニッケル含有量が他の部分
よりも大となるように金属層を形成すると、溶接時にニ
ッケル含有量の調整を行って接合域端部と他の部分とで
ニッケル含有量を異ならせることを、つまりは強度と靱
性とを異ならせることを容易に行うことができる。
【0011】また、台金と刃先チップとの接合部におい
て少なくとも一方に開先を形成するとともに接合域の端
部となるところの開先を他の部分より大きくしておき、
次いでニッケルまたはニッケル合金を溶加材として加え
つつ上記開先部分で溶接を行うと、接合域端部では溶加
材の比率、つまりニッケル含有量が高くなるために、接
合域端部と他の部分とでニッケル含有量を異ならせるこ
とを更に容易に行うことができる。
【0012】また、台金における刃先チップ接合面とこ
の接合面にコーナーを介して連続する面とにニッケルメ
ッキを施し、次いで台金の上記刃先チップ接合面に刃先
チップを台金とニッケルメッキとの加熱溶融で溶接して
も、接合域端部ではコーナー及びコーナーを介した他の
部分のニッケルメッキにおけるニッケルが、接合域端部
のニッケル含有量を増やすために、接合域端部と他の部
分とでニッケル含有量を異ならせることを更に容易に行
うことができる。
【0013】台金における刃先チップ接合面で且つ刃先
チップと台金との接合域の端部となるところに凹部を形
成し、次いで台金における上記凹部を含む刃先チップ接
合面にメッキや溶射によるニッケル層を設け、この後、
台金の上記刃先チップ接合面に刃先チップを台金とニッ
ケル層との加熱溶融で溶接するようにしても、凹部のと
ころでニッケルの量が接合域端部にニッケル含有量の多
い合金層を形成することになるために、接合域端部と他
の部分とでニッケル含有量を異ならせることを更に容易
に行うことができる。
【0014】台金と刃先チップとの接合面の少なくとも
一方にニッケルやニッケル合金から成るニッケル層を形
成するとともに接合域の端部となるところのニッケル層
のニッケル含有量を他の部分のニッケル層のニッケル含
有量より多くしておき、次いで台金と刃先チップとを接
合部の台金と上記ニッケル層との加熱溶融で溶接するよ
うにしてもよい。
【0015】更に、台金と刃先チップとの接合面の少な
くとも一方にニッケルやニッケル合金から成るニッケル
層を形成するとともに接合域の端部となるところのニッ
ケル層の厚みを他の部分のニッケル層の厚みより大とし
ておき、次いで台金と刃先チップとを接合部の台金と上
記ニッケル層との加熱溶融で溶接しても、接合域端部に
ニッケル含有量の多い合金層を形成することができ、こ
の時、メッキや溶射によるニッケル層の形成の後にシェ
ービングや切削によってニッケル層の厚みを調整すれ
ば、求める厚み分布のニッケル層を容易に得ることがで
きる。
【0016】台金と刃先チップとの接合面間にニッケル
やニッケルを含む金属からなる薄板を介在させるととも
に該薄板における台金と刃先チップとの接合域の端部と
なるところを台金より外部に突出させておき、次いで台
金と刃先チップとを接合部の台金と上記薄板との加熱溶
融で溶接しても、やはり接合域端部と他の部分とでニッ
ケル含有量を異ならせることを容易に行うことができ
る。
【0017】鋼製の台金に金属層を介して超硬合金製の
刃先チップを溶接固着するにあたり、刃先チップと台金
との接合域の端部と他の部分とにおいて構成元素の異な
る異種金属で金属層を形成する場合には、きわめて強度
の高い高強度金属部と極めて靱性の高い高靱性金属部と
を容易に形成することができる。この時、台金と刃先チ
ップの接合域の端部に高靱性金属を、接合域の他の部分
に高強度金属を配し、高強度金属を溶融させることで台
金と刃先チップとを接合溶接するとともに該高強度金属
の溶融熱で端部の高靱性金属を溶かすならば、高靱性金
属の融点が高強度金属の融点よりもかなり低い場合に
も、高靱性金属に突沸が生じることを温度コントロール
を必要とすることなく防ぐことができる。
【0018】また、台金と刃先チップの接合域の端部に
高靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配し
て、端部の高靱性金属を溶かして台金と刃先チップとを
接合域端部で接合溶接した後、高強度金属を溶融させる
ことで台金と刃先チップとを接合溶接するならば、応力
が集中しやすい接合域端部の溶接を先に行うことから、
高強度金属部の溶接時及び溶接後の冷却時に発生する熱
応力を高靱性金属部で緩和することができる。
【0019】台金と刃先チップの接合域の端部に高靱性
金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、端部
の高靱性金属を溶かして高強度金属を台金もしくは刃先
チップに仮止めし、しかる後に刃先チップと台金とを相
対させて溶接するならば、金属層の材料供給が容易とな
る上に、刃先チップのセッティングを安定的に且つ簡単
に行うことができる。
【0020】台金と刃先チップの接合域の端部に高靱性
金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、端部
の高靱性金属の台金もしくは刃先チップへの係止により
高強度金属を同時に仮止めし、しかる後に刃先チップと
台金とを相対させて溶接する場合にも、金属層の材料供
給が容易となる上に、刃先チップのセッティングを安定
的に且つ簡単に行うことができる。
【0021】台金と刃先チップの接合域の端部に高靱性
金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、高靱
性金属と高強度金属とを同時に溶融させることで台金と
刃先チップとを接合溶接するとともに該高強度金属と高
靱性金属との配置境界部で両者を溶融混合させるなら
ば、高強度金属部から接合域端部の高靱性金属部にかけ
て硬さが漸次変化している金属層を容易に得ることがで
きる。
【0022】また、台金と刃先チップの接合域の端部に
高靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配する
とともに上記高靱性金属と高強度金属との間にこの両者
の中間的特性を有する中間特性金属を配して、これら金
属を加熱溶融させることで台金と刃先チップとを接合溶
接する場合にも、高強度金属部から接合域端部の高靱性
金属部にかけて硬さが漸次変化している金属層を容易に
得ることができる。
【0023】さらに、台金と刃先チップの接合域の端部
に高靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配す
るとともに上記高強度金属を熱膨張率が異なる複数層で
形成し、上記高靱性金属及び高強度金属を加熱溶融させ
ることで台金と刃先チップとを接合溶接するならば、台
金側から刃先チップ側にかけて熱膨張率が漸次変化して
いる高強度金属部を容易に得ることができる。
【0024】WC粉末に6〜20%Co粉末を混合した
ものを刃先チップ側に、WC粉末に40〜60%Co粉
末を混合したものを台金側に配するとともに接合域端部
にCu粉末を配して、これら粉末を加熱して焼結するこ
とで台金と刃先チップとを接合溶接しても、台金側から
刃先チップ側にかけて熱膨張率が漸次変化している高強
度金属部を容易に得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の一例につい
て説明すると、図1に示す刃物は丸鋸刃であり、該丸鋸
刃は鋼製(限定するものではないが、たとえばSK5等
の炭素鋼製)の台金1と、台金1の周縁から外周方向に
突出する突部10の片側の切欠部に固着された超硬合金
製(限定するものではないが、たとえばタングステンカ
ーバイトWCとコバルトCoとの焼結合金製)の刃先チ
ップ2とから形成されている。図1における刃先チップ
2は片側が切れ刃となったタイプのものを示している
が、図2は刃先チップ2の両側に切れ刃を設けたタイプ
のものを示している。
【0026】そしてこれら刃先チップ2は台金1に金属
層3を介して接合されている。該金属層3は全域にわた
って均質なものではなく、接合域の端部が靱性の高い高
靱性金属部31、他の部分が高靱性金属部31よりも靱
性は低いものの強度が高い高強度金属部32で形成され
ているとともに、高強度金属部32は、台金1の熱膨張
率と刃先チップ2の熱膨張率との中間の熱膨張率を有す
るもので形成されている。なお、高靱性及び高強度は、
両金属部31,32の相対的な比較のもとでの表現であ
り、絶対的なものを指すものではない。
【0027】このような高靱性金属部31と高強度金属
部32とは、同一元素を含む同系金属で形成しても、構
成元素の異なる異種金属で形成してもよいが、同系金属
で形成した場合、高強度金属部32と高靱性金属部31
との間の接合性がよく、欠陥を少なくすることができ
る。同系金属で形成する場合は、鋼(SK5)とニッケ
ル(Ni)とを溶融させた鉄−ニッケル(Fe−Ni)
を主成分とする合金で金属層3を形成するものを好適に
用いることができる。この場合、ニッケル含有量の差に
よって高強度のものと高靱性のものとを得ることがで
き、高強度金属部32ではニッケル含有量を少なくし、
高靱性金属部31ではニッケル含有量を多くする。たと
えば、高靱性金属部31はFe−30〜60%Ni−
0.1〜0.5%C、高強度金属部32はFe−20〜
30%Ni−0.4〜0.6%C(いずれも超硬合金の
成分であるコバルトCoを含んでいてもよい)とするの
である。
【0028】ニッケル含有量が少ない高強度金属部32
は耐力が高く、塑性変形しにくいのに対して、ニッケル
含有量が多い高靱性金属部31は耐力が低くて塑性変形
しやすいという特性を有している。従って上記刃物は、
接合域の端部を除く部分が高強度金属部32となってい
るために接合部全体としての耐力が高く、容易に塑性変
形することがなく、刃物としての機能を満足させること
ができるものとなる。そして、溶接時の熱残留応力と外
部荷重による応力が集中しやすい接合域の端部について
もニッケル含有量の少ない高強度金属部32としている
と、高強度金属部32の靱性の低さ故にクラックが発生
してしまうことが多いのであるが、接合域の端部はニッ
ケル含有量が多くて靱性が高い高靱性金属部31として
いるために、クラックが生じることがないものである。
【0029】しかも、金属層3の高強度金属部の熱膨張
率を、刃先チップ2の熱膨張率とこれよりも大きい台金
1の熱膨張率との中間の値となるようにしているため
に、刃先チップ2の台金1への接合のための溶接時及び
その冷却時における熱応力が金属層3によって緩和され
るものであり、熱応力が原因でクラックが生じたり刃先
チップ2が外れたりしてしまうことがないものである。
【0030】なお、Fe−Ni合金は、ニッケル含有量
が多くなるほど硬度が低下して靱性が大となり、ニッケ
ル含有量が少なくなるほど硬度が高くなって塑性変形し
にくくなるのに対して、熱膨張率はニッケル含有量が3
0%程度の時にもっとも小さくなることから、金属層
3、特に高強度金属部32をFe−Ni合金で形成する
場合、単にニッケル含有量を少なくして硬度を高くすれ
ばよいというものではないことに注意しなくてはならな
い。
【0031】上記のようなニッケル含有量の異なる金属
部31,32からなる金属層3を介して台金1に刃先チ
ップ2を取り付けたものは、台金1への刃先チップ2の
溶接接合を次のようにすることで得ることができる。す
なわち、鋼製の台金1の刃先チップ2の接合を行う接合
面に図3に示すように開先を形成して刃先チップ2を突
き合わせ、溶加金属5を加えながらレーザビーム8を照
射して溶加金属5と台金1の開先部分の両方を加熱溶融
させて、図4に示すように溶加金属5と台金1の開先部
の金属の混合合金が金属層3を構成するように溶接する
と共に、この時、接合域の端部においては、ニッケル含
有量の高い金属、例えば純ニッケルを溶加金属5として
用い、他の部分では例えばFe−40〜50%Ni合金
を溶加金属5として用いるのである。溶接時にニッケル
含有量の異なる溶加金属5を用いてニッケル含有量の調
整を行うことから、同系金属からなるものの接合域端部
と他の部分とでニッケル含有量が異なるために強度と靱
性とが異なる金属部31,32を形成することを容易に
行うことができる。
【0032】図5に示すように、台金1に形成する開先
部のうち、接合域端部となるところの開先を他の部分よ
り大きくしておいてもよい。この場合、ニッケルまたは
ニッケル合金からなる単一の溶加金属5を用いただけ
で、開先が大きい部分ではニッケル含有量が多くなるた
めに、接合域端部と他の部分とでニッケル含有量が異な
る(強度と靱性とが異なる)金属部31,32を形成す
ることができる。
【0033】図6に示すように、台金1における刃先チ
ップ2の接合面とこの接合面にコーナーを介して連続す
る面とにたとえば100〜300μmの厚みのメッキに
よるニッケル層6を設けておき、次いで接合面に刃先チ
ップ2を当ててレーザービームの照射によって台金1と
ニッケル層6とを加熱溶融させることで金属層3を形成
して刃先チップ2を溶接してもよい。接合域の端部にお
いてはコーナー及びコーナーを介した他の部分のニッケ
ル層6におけるニッケルが図7に示すようにニッケル含
有量の多い高靱性金属部31を構成することになるもの
であり、この場合、ニッケル量を接合域端部と他の部分
とで異なるようにするための調整作業を全く必要としな
い上にレーザービームを照射させて加熱溶融させるだけ
で、接合域端部に他の部分よりもニッケル含有量が多い
高靱性金属部31を形成することができるために、更に
製造が容易となる。溶融のための加熱はレーザービーム
のほか、電子ビームやプラズマビーム、アークなどで行
ってもよい。
【0034】ニッケル層6の厚みは溶接溶融部として形
成される金属層3(金属部31,32)の組成がおおむ
ね前述のような組成となるように溶融部の幅に応じて設
定する。たとえば溶融部の幅が1mmの場合、メッキに
よるニッケル層6の厚みを250μmとすれば、溶融部
の組成はおおよそFe−25%Ni−0.6%Cとな
る。ニッケル層6は溶射によって形成してもよく、この
場合、ニッケル層6の厚みは400〜700μm、溶接
ビード幅のおよそ2/3とするのが好ましい。
【0035】なお、接合域端部に位置するコーナー部分
のニッケル層6を利用して接合域端部の高靱性金属部3
1のニッケル含有量を多くするために、図8に示すよう
に台金1の端面が刃先チップ2の端面より突出していて
台金1のコーナーが接合域端部から離れている時には接
合域端部にニッケル含有量の多い高靱性金属部31を形
成することはできない。従って、コーナーが刃先チップ
2の端面とほぼ同じところに位置するように、もしくは
コーナーが刃先チップ2の端面よりも突出しないところ
に位置するようにしておく。丸鋸の場合について説明し
たが、これに限るものではなく、図9及び図10はバイ
トの場合を示している。
【0036】ニッケル層6を溶射で形成する場合には、
図11に示すように、刃先チップ2側に形成してもよ
く、この時、接合域端部となるところに形成したニッケ
ル層6のニッケル含有量を他の部分より多くしておけ
ば、該刃先チップ2を台金1に当接させてレーザービー
ム照射による加熱溶融で接合を行うことで、ニッケル含
有量の異なる金属部31,32を形成することができ
る。ニッケル含有量が接合域端部で多くなっているニッ
ケル層6を溶射で形成することは、該ニッケル層6を台
金1側に設けることで行ってもよいのはもちろんであ
る。
【0037】上記ニッケル層6に代えて、図12に示す
ように、ニッケルまたはニッケル合金からなる薄板60
を刃先チップ2と台金1との間に介在させて該薄板60
と台金1とを加熱溶融させることで刃先チップ2の接合
を行ってもよく、この時、薄板60として接合域端部か
ら長手方法あるいは幅方向にはみ出る大きさのものを用
いることで、接合域端部にニッケル含有量の多い高靱性
金属部31を形成することができる。薄板60としては
0.05〜0.4mmの厚みのものを好適に用いること
ができるとともに、はみ出させる長さは0.1〜0.5
mmぐらいが適当であるがこれに限るものではない。
【0038】金属層3のニッケル含有量を接合域端部に
おいて異ならせることは、ニッケル層6や薄板60の厚
みを変更することで行ってもよい。図13及び図14は
台金1における接合域端部となるところに凹部15(た
とえば深さ0.1〜2mm、幅0.2〜2mmのもの)
を設けておき、この後、メッキによるニッケル層6を形
成すると、図15に示すように、メッキの成長は凹部1
5を埋めるとともにこの凹部15において厚みが大きく
なることから、刃先チップ2と台金1との接合域を溶融
溶接すれば、接合域端部にニッケル含有量が多い高靱性
金属部31を形成することができる。
【0039】もちろん、ニッケル層6の厚みを図16に
示すように、接合域端部において最も厚く、接合域端部
から離れるに従って厚みが減るようにしておいても良
く、このようなニッケル層6は図17に示すように、予
め必要とする厚みよりも厚いニッケル層6をメッキや溶
射等の手段で形成しておき、次いでニッケル層6に対し
てシェービング、切削等の加工を施すことで、図16に
示すように刃先チップ2と台金1との間の隙間が所定値
以下に、且つ接合域端部でのニッケル層6の厚みが他の
部分より厚くなるようにすることで得ることができる。
【0040】金属層3における高強度金属部32と高靱
性金属部31とを同一元素を含む同系金属で形成する場
合、Fe−Ni系金属(Ni単体を含む)のほか、コバ
ール合金(Fe−29%Ni−17%Co合金)とこれ
よりNi含有量が高いFe−Ni−Co合金を用いるこ
とができるが、これらに限定されるものではなく、組成
比の違いで強度と靱性についての特性が変わる金属であ
ればよい。また、接合域端部に設ける高靱性金属部31
の領域は0.1〜0.5mm程度とすれば、応力の集中
を緩和することができるが、この値にしても限定するも
のではない。
【0041】金属層3における高強度金属部32と高靱
性金属部31とを構成元素の異なる異種金属で形成する
場合には、同一元素を含む同系金属で形成する場合より
も、高強度金属部32の強度をより高く、高靱性金属部
31の靱性をより高くすることが各金属部31,32の
材料選択によって容易に行うことができる。たとえば、
高強度金属部32はコバール合金(Fe−29%Ni−
17%Co合金)、Ti、W、Mo、Fe−42%Ni
合金等で形成して、高靱性金属部31はCu、Ag、A
g−Cu合金、Al、Au、Pb、Pb−Sn等で形成
する。高靱性金属部31を非常に軟質な金属で形成する
ことができるために、接合域端部の靱性の向上が高いレ
ベルで可能となる。この時の高靱性金属部31は0.1
〜1.0mmほどの長さとするのがよい。
【0042】構成元素が異なる金属部31,32からな
る金属層3を介して台金1に刃先チップ2を取り付ける
ことは、鋼製の台金1の刃先チップ2の接合を行う接合
面に図3に示すように開先を形成して刃先チップ2を突
き合わせ、溶加金属5を加えながらレーザビーム8を照
射して溶接するにあたり、接合域の端部と他の部分とで
異なる溶加金属5を用いて該溶加金属5を溶融して供給
することで各金属部31,32を形成して溶接を行うこ
とができる。この時、高強度金属部32を先に形成し、
次いで高靱性金属部31を形成する。また、台金1や刃
先チップ2の一部を溶融させてもよく、特に金属部31
または金属部32として鉄Feを含む材料を用いる場合
は、台金1の金属層3と接する部分を積極的に溶融させ
て溶加金属5の溶融物と混合させることで合金化を図る
ようにしてもよい。
【0043】台金1と刃先チップ2との間に図18に示
すように高靱性金属部31と高強度金属部32との各材
料3a,3bを介在させておき、レーザービームなどの
照射でこれら材料3a,3bを溶融させて台金1への刃
先チップ2の接合を行ってもよい。この時、高強度金属
部32の材料3bとしてチタンTi、高靱性金属部31
の材料3aとして銅Cuを用いる場合のように、材料3
bの融点に比して材料3aの融点がかなり低い場合、レ
ーザービームの照射を材料3bに対してのみ行い、融点
が低い材料3aは材料3bのレーザービーム照射による
溶融の余熱で溶融させると、材料3a,3bに対してレ
ーザービームの照射条件の変更といった入熱条件の制御
を行わなくても、融点が低い材料3aの突沸による飛散
を招いたりすることなく溶接を行うことができる。
【0044】高靱性金属部31の材料3aとしてさらに
融点が低いもの、たとえばAg−Cuろう、Pb−Sn
はんだなどを用いる場合には、図19に示すように、台
金1と刃先チップ2との間に高強度金属部32の材料3
b(たとえばFe−Ni合金)のみを介在させておき、
該材料3bを加熱溶融させて刃先チップ2の溶接を行っ
た直後に接合域端部に材料3aを供給して材料3bの溶
融の予熱で材料3aを溶融させるようにしてもよい。
【0045】材料3bとしてNi、材料3aとしてCu
を用いる場合には、台金1と刃先チップ2との間に図2
0に示すように各材料3a,3bを介在させておいて、
レーザービームを材料3bと台金1との接触部分を積極
的に溶融させて、台金1と材料3bとの混合による合金
化を行い、そして該溶融の予熱で材料3aを溶融させる
ようにしてもよい。
【0046】図21あるいは図22に示すように、台金
1と刃先チップ2との溶接をレーザービーム8の照射等
によって高靱性金属部31において行い、その後に高強
度金属部32を形成して溶接接合を行うようにしてもよ
い。応力が集中しやすい接合域端部を軟質の高靱性金属
部31で先に溶接しておくために、高強度金属部32に
よる刃先チップ2の溶接接合時と溶接後の冷却時に生じ
る熱応力を緩和することができる。
【0047】台金1と刃先チップ2との間に配した材料
3a,3bを溶融させて刃先チップ2の溶接接合を行う
場合には、図23に示すように、材料3aを加熱溶融さ
せることで材料3a及び材料3bを台金1に仮止めし、
この状態で刃先チップ2を台金1に相対させて溶接を行
うと、材料3a,3bの供給及び刃先チップ2の安定し
たセッティングが容易となる。台金1側にではなく、刃
先チップ2側に材料3a,3bを材料3aの溶融で仮止
めしてもよい。また材料3a,3bの仮止めは図24や
図25に示すように材料3aに対する曲げ加工や、台金
1あるいは刃先チップ2と材料3aとの凹凸係合や圧入
などによって行ってもよい。
【0048】金属層3は高靱性金属部31と高強度金属
部32の2種の金属で構成するのではなく、さらに多種
の金属で構成するようにしてもよい。この場合、図26
に示すように高強度金属部32と高靱性金属部31との
境界部分に両金属部32,32の中間の特性(硬さ)を
有する金属部33を配置するのが好ましい。たとえば高
靱性金属部31をNi、高強度金属部32をコバール合
金(Fe−29%Ni−17%Co合金)で形成する場
合には、金属部33をFe−Ni合金(Ni含有量の多
いものが好ましい)で形成する。また、高靱性金属部3
1をCu、高強度金属部32をTiで形成する場合に
は、金属部33をAg−Cu合金で形成する。また、高
靱性金属部31をFe−80〜90%Ni合金、高強度
金属部32をFe−42%Ni合金で形成する場合、金
属部33をFe−42〜80%Ni合金で形成する。高
強度金属部32と高靱性金属部31との境界部分での硬
さや熱膨張率の急激な変化を金属部33を介在させるこ
とで無くすことができるために、上記境界部での応力集
中を防止することができるものであり、接合強度や接合
信頼性を高めることができる。
【0049】なお、高強度金属部32から接合域端部の
高靱性金属部31にかけて硬さを漸次変化させるにあた
って金属部33を形成する場合、その材料は必ずしも必
要としない。図27に示すように、高靱性金属部31の
材料3aとしてNiを、高強度金属部32の材料3bと
してFe−42%Ni合金を用いる場合、両材料3a,
3bの境界部分を加熱して両材料3a,3bを溶融混合
させることで、金属部31,32間に中間的特性の金属
部33を形成することができるからである。
【0050】さらには金属層3における高強度金属部3
2に関しては、複数層で形成してもよい。この場合、高
強度金属部32の熱膨張率を台金1側から刃先チップ2
側にかけて漸次変化させる(小さくする)ことができる
ために、台金1と高強度金属部32との境界部分におけ
る熱膨張率の差を小さくすると同時に、高強度金属部3
2と刃先チップ2との境界部分における熱膨張率の差を
小さくすることができるものであり、熱膨張率の差が大
きい部分を無くすことができるために、溶接接合時や溶
接後の冷却時に発生する熱応力を低減することができ、
接合強度や接合信頼性を向上させることができる。
【0051】高強度金属部32は図28に示すように3
層で形成したり、図29に示すように2層で形成したり
することができるが、3層で形成する場合、たとえば台
金1側の層32aをFe−10〜25%Ni合金(熱膨
張率:10〜15×10-6)、刃先チップ2側の層32
cをFe−25〜30%Ni合金(熱膨張率:6〜10
×10-6)、中間層をFe−22〜27%Ni合金(熱
膨張率:8〜12×10-6)で形成することができる。
また、図29に示すように、2層で形成する場合、台金
1側の層32aをFe−40〜45%Ni合金(熱膨張
率:7〜10×10-6)、刃先チップ2側の層32cを
Fe−38〜40%Ni(熱膨張率:5〜8×10-6
合金で形成することができる。いずれにしても、このよ
うに複数層で高強度金属部32を形成する場合には、加
熱溶融をレーザービームなどの照射によるのではなく、
図29に示すように、通電加熱で行うのが好ましい。相
互に接触している各界面のみが溶融するために、層間が
混じりあって熱膨張率の傾斜特性が崩れてしまうという
ことがない。
【0052】図30は台金1と刃先チップ2との間に純
Niである厚み0.45mmnの材料32’を配し、材
料32’の台金1側の厚み0.2mmと台金1の厚み
0.8mmの合計1mmをレーザービームや電子ビー
ム、アーク等で加熱して溶融混合させることで、Fe−
20%Ni合金の層32aを形成し、次いで、材料3
2’の残り0.25mmの厚さと上記の層32aの材料
32’側の厚み0.75mmの合計1mmをレーザービ
ームや電子ビーム、アーク等で加熱して溶融混合させる
ことで、Fe−40%Ni合金の層32cを形成すると
ともに、この時、刃先チップ2の層32cとの界面部を
わずかに溶融させることで金属層3と溶接するようにし
たものを示している。単一の材料32’しか使用しない
ものの、熱膨張率の傾斜特性を備えた高強度金属部32
を得ることができる。なお、高靱性金属部31の溶接は
高強度金属部32における上記の第1の溶接の前に行っ
てもよいし、第1の溶接または第2の溶接と同時に行っ
てもよいし、第2の応接の後に行ってもよい。
【0053】図31はWC粉末に6〜20%Co粉末を
混合した層32aを刃先チップ2側に配するとともにW
C粉末に40〜60%Co粉末を混合した層32cを台
金1側に配し、さらに接合域端部にCu粉末からなる材
料3aを配して、これら粉末を台金1と刃先チップ2間
のパルス通電加熱によって焼結することで台金1への刃
先チップ2の接合溶接を行ったものを示している。この
場合、粉末の混合比を変えるだけで必要とする熱膨張率
の層を得ることができる。ちなみに、WC粉末に6〜2
0%Co粉末を混合したものを焼結すれば、6〜8×1
-6の熱膨張率のものを得ることができ、WC粉末に4
0〜60%Co粉末を混合したものを焼結すれば、8〜
12×10-6の熱膨張率のものを得ることができる。焼
結のための加熱はパルス通電でなく、レーザービーム、
電子ビーム、プラズマビーム、アークなどで行ってもよ
い。
【0054】さらに、上記で示したいくつかの製造方法
を組み合わせてもよいのはもちろんである。
【0055】
【発明の効果】以上のように本発明の刃物は、鋼製の台
金と超硬合金製の刃先チップとの間の金属層を台金の熱
膨張率と刃先チップの熱膨張率との中間の熱膨張率を有
する金属で形成された高強度金属部と、刃先チップと台
金との接合域の端部に位置するとともに靱性が上記金属
部より大となっている高靱性金属部とからなるものと
し、溶接接合の際の冷却時に問題となる熱応力を金属層
の熱膨張率の選定によって小さくしている上に、応力が
集中することになる接合域端部では高靱性金属からなる
金属層を介在させ、他の部分では強度的な要求を満たす
高強度金属からなる金属層を介在させるために、強度的
要求を満たしながらも接合域端部でのクラックの発生の
しやすさを抑制することができる。
【0056】この時、金属層における高強度金属部と高
靱性金属部とを同一元素を含む同系金属で形成すれば、
高強度金属部と高靱性金属部との間の接合性がよく、欠
陥を少なくすることができるために接合信頼性を高くす
ることができる。特に高強度金属部を鉄−ニッケルを主
成分とする合金、高靱性金属部を高強度金属部よりもニ
ッケル含有量が大の金属を用いると、台金と金属層との
間の境界部分を両者の溶融物が混合した合金とすること
ができるために、良好な結果を得ることができる。
【0057】また、金属層における高強度金属部と高靱
性金属部とを構成元素の異なる異種金属で形成した時に
は、高強度金属部と高靱性金属部とに夫々より適切な材
料を使用することができるために、特に高靱性金属部を
非常に軟質な金属で形成することができるために、応力
集中緩和効果を高くすることができる。そして、金属層
を高強度金属部から接合域端部の高靱性金属部にかけて
硬さが漸次変化しているものとすることで、複数種の金
属部で金属層を形成する際の問題、つまり高強度金属部
と高靱性金属部との境界部に応力が集中してしまうこと
を避けることができ、接合強度及び接合信頼性を高める
ことができる。
【0058】さらに金属層の高強度金属部を台金側から
刃先チップ側にかけて熱膨張率が漸次変化しているもの
とすることで、接合時の冷却時に発生する熱応力をさら
に低減することができるために、接合強度及び接合信頼
性を高めることができる。また本発明に係る刃物の製造
方法は、鋼製の台金に金属層を介して超硬合金製の刃先
チップを溶接固着するにあたり、刃先チップと台金との
接合域の端部と他の部分とにおいて強度及び靱性が異な
るように金属層を形成するものであり、溶接時に強度及
び靱性の調整を行うために、金属層の各部での強度と靱
性との設定を容易に行うことができる。
【0059】この時、金属層を鉄−ニッケルを主成分と
する金属からなるものとするとともに、刃先チップと台
金との接合域の端部におけるニッケル含有量が他の部分
よりも大となるように金属層を形成すると、溶接時にニ
ッケル含有量の調整を行って接合域端部と他の部分とで
ニッケル含有量を異ならせることを、つまりは強度と靱
性とを異ならせることを容易に行うことができ、従って
上記の刃物の製造が容易となる。
【0060】さらに、台金と刃先チップとの接合部にお
いて少なくとも一方に開先を形成するとともに接合域の
端部となるところの開先を他の部分より大きくしてお
き、次いでニッケルまたはニッケル合金を溶加材として
加えつつ上記開先部分で溶接を行うと、接合域端部では
溶加材の比率、つまりニッケル含有量が高くなるため
に、接合域端部と他の部分とでニッケル含有量を異なら
せることを更に容易に行うことができる。
【0061】また台金における刃先チップ接合面とこの
接合面にコーナーを介して連続する面とにニッケルメッ
キを施し、次いで台金の上記刃先チップ接合面に刃先チ
ップを台金とニッケルメッキとの加熱溶融で溶接しても
よく、この場合も接合域端部ではコーナー及びコーナー
を介した他の部分のニッケルメッキにおけるニッケル
が、接合域端部のニッケル含有量を増やすために、接合
域端部と他の部分とでニッケル含有量を異ならせること
を更に容易に行うことができる。
【0062】台金における刃先チップ接合面とこの接合
面にコーナーを介して連続する面とにニッケルメッキを
施し、次いで台金の上記刃先チップ接合面に刃先チップ
を台金とニッケルメッキとの加熱溶融で溶接しても、接
合域端部ではコーナー及びコーナーを介した他の部分の
ニッケルメッキにおけるニッケルが、接合域端部のニッ
ケル含有量を増やすために、接合域端部と他の部分とで
ニッケル含有量を異ならせることを更に容易に行うこと
ができる。
【0063】台金における刃先チップ接合面で且つ刃先
チップと台金との接合域の端部となるところに凹部を形
成し、次いで台金における上記凹部を含む刃先チップ接
合面にメッキや溶射によるニッケル層を設け、この後、
台金の上記刃先チップ接合面に刃先チップを台金とニッ
ケル層との加熱溶融で溶接するようにしても、凹部のと
ころでニッケルの量が接合域端部にニッケル含有量の多
い合金層を形成することになるために、接合域端部と他
の部分とでニッケル含有量を異ならせることを更に容易
に行うことができる。
【0064】台金と刃先チップとの接合面の少なくとも
一方にニッケルやニッケル合金から成るニッケル層を形
成するとともに接合域の端部となるところのニッケル層
のニッケル含有量を他の部分のニッケル層のニッケル含
有量より多くしておき、次いで台金と刃先チップとを接
合部の台金と上記ニッケル層との加熱溶融で溶接するよ
うにしてもよい。接合域端部の合金層をニッケル含有量
の多いものとすることができる。
【0065】更に、台金と刃先チップとの接合面の少な
くとも一方にニッケルやニッケル合金から成るニッケル
層を形成するとともに接合域の端部となるところのニッ
ケル層の厚みを他の部分のニッケル層の厚みより大とし
ておき、次いで台金と刃先チップとを接合部の台金と上
記ニッケル層との加熱溶融で溶接しても、接合域端部に
ニッケル含有量の多い合金層を形成することができ、こ
の時、メッキや溶射によるニッケル層の形成の後にシェ
ービングや切削によってニッケル層の厚みを調整すれ
ば、求める厚み分布のニッケル層を容易に得ることがで
きる。
【0066】台金と刃先チップとの接合面間にニッケル
やニッケルを含む金属からなる薄板を介在させるととも
に該薄板における台金と刃先チップとの接合域の端部と
なるところを台金より外部に突出させておき、次いで台
金と刃先チップとを接合部の台金と上記薄板との加熱溶
融で溶接しても、やはり接合域端部と他の部分とでニッ
ケル含有量を異ならせることを容易に行うことができ
る。
【0067】鋼製の台金に金属層を介して超硬合金製の
刃先チップを溶接固着するにあたり、刃先チップと台金
との接合域の端部と他の部分とにおいて構成元素の異な
る異種金属で金属層を形成する場合には、きわめて強度
の高い高強度金属部と極めて靱性の高い高靱性金属部と
を容易に形成することができ、従って実質的強度の極め
て高い刃物を容易に製造することができる。
【0068】この時、台金と刃先チップの接合域の端部
に高靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配し
て、高強度金属を溶融させることで台金と刃先チップと
を接合溶接するとともに該高強度金属の溶融熱で端部の
高靱性金属を溶かすと、高靱性金属の融点が高強度金属
の融点よりもかなり低い場合にも、高靱性金属に突沸が
生じることを温度コントロールを必要とすることなく防
ぐことができ、特性の大きくことなる金属を溶融させて
溶接するにもかかわらず製造が容易となる。
【0069】また、台金と刃先チップの接合域の端部に
高靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配し
て、端部の高靱性金属を溶かして台金と刃先チップとを
接合域端部で接合溶接した後、高強度金属を溶融させる
ことで台金と刃先チップとを接合溶接すると、つまりは
応力が集中しやすい接合域端部の溶接を先に行うと、高
強度金属部分の溶接時及び溶接後の冷却時に発生する熱
応力を高靱性金属部で緩和することができるために、高
強度金属部に上記熱応力でクラックが発生したりするこ
とがなく、溶接強度を確保することができる。
【0070】台金と刃先チップの接合域の端部に高靱性
金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、端部
の高靱性金属を溶かして高強度金属を台金もしくは刃先
チップに仮止めし、しかる後に刃先チップと台金とを相
対させて溶接すると、金属層の材料供給が容易となる上
に、刃先チップの安定したセッティングを簡単に行うこ
とができ、従って製造が容易となる。
【0071】台金と刃先チップの接合域の端部に高靱性
金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、端部
の高靱性金属の台金もしくは刃先チップへの係止により
高強度金属を同時に仮止めし、しかる後に刃先チップと
台金とを相対させて溶接する場合にも、金属層の材料供
給が容易となる上に、刃先チップの安定したセッティン
グを簡単に行うことができる。
【0072】台金と刃先チップの接合域の端部に高靱性
金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、高靱
性金属と高強度金属とを同時に溶融させることで台金と
刃先チップとを接合溶接するとともに該高強度金属と高
靱性金属との配置境界部で両者を溶融混合させると、高
強度金属部から接合域端部の高靱性金属部にかけて硬さ
が漸次変化している金属層を容易に得ることができる。
【0073】また、台金と刃先チップの接合域の端部に
高靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配する
とともに上記高靱性金属と高強度金属との間にこの両者
の中間的特性を有する中間特性金属を配して、これら金
属を加熱溶融させることで台金と刃先チップとを接合溶
接する場合にも、高強度金属部から接合域端部の高靱性
金属部にかけて硬さが漸次変化している金属層を容易に
得ることができる。
【0074】さらに、台金と刃先チップの接合域の端部
に高靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配す
るとともに上記高強度金属を熱膨張率が異なる複数層で
形成し、上記高靱性金属及び高強度金属を加熱溶融させ
ることで台金と刃先チップとを接合溶接するならば、台
金側から刃先チップ側にかけて熱膨張率が漸次変化して
いる高強度金属部を容易に得ることができる。
【0075】WC粉末に6〜20%Co粉末を混合した
ものを刃先チップ側に、WC粉末に40〜60%Co粉
末を混合したものを台金側に配するとともに接合域端部
にCu粉末を配して、これら粉末を加熱して焼結するこ
とで台金と刃先チップとを接合溶接しても、台金側から
刃先チップ側にかけて熱膨張率が漸次変化している高強
度金属部を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る刃物を示しており、(a)は正面
図、(b)は拡大斜視図である。
【図2】同上の刃先チップの形状が異なるものにおける
拡大斜視図である。
【図3】同上の刃物の製造途中の状態を示すもので、
(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図4】同上の刃物の溶接後の状態を示す側面図であ
る。
【図5】同上の他例における製造途中の状態を示す斜視
図である。
【図6】同上の刃物の他の製造方法における製造途中の
状態を示す斜視図である。
【図7】同上の溶接後の状態を示す斜視図である。
【図8】不適な台金の形状を示す斜視図である。
【図9】同上の他の刃物の製造途中の状態を示す斜視図
である。
【図10】同上の溶接後の状態を示す斜視図である。
【図11】同上の刃物の別の製造方法を示すもので、
(a)は製造途中の状態を示す斜視図、(b)は溶接後の状態
を示す斜視図である。
【図12】同上の刃物のさらに別の製造方法を示すもの
で、(a)及び(b)は製造途中の状態を示す斜視図、(c)は
溶接後の状態を示す斜視図である。
【図13】同上の刃物の異なる製造方法を示すもので、
(a)〜(d)は製造順で示す断面図である。
【図14】同上の他例を示すもので、(a)は製造途中の
状態を示す斜視図、(b)は溶接後の状態を示す斜視図で
ある。
【図15】同上の凹部におけるメッキの成長過程を示す
断面図である。
【図16】同上の刃物の他の製造方法における製造途中
の状態を示す斜視図である。
【図17】同上における製造途中の状態を示す斜視図で
ある。
【図18】同上の刃物の他の製造方法を示す側面図であ
る。
【図19】さらに他の製造方法を示すもので、(a)(b)は
共に側面図である。
【図20】別の製造方法を示すもので、(a)(b)は共に側
面図である。
【図21】異なる製造方法を示すもので、(a)(b)は共に
斜視図である。
【図22】他の製造方法を示すもので、(a)及び(b)は製
造途中の状態を示す斜視図、(c)は溶接後の状態を示す
斜視図である。
【図23】さらに他の製造方法を示すもので、(a)は製
造途中の状態を示す斜視図、(b)は溶接後の状態を示す
斜視図である。
【図24】同上の他例における製造途中の状態を示す斜
視図である。
【図25】同上のさらに他例における製造途中の状態を
示すもので、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図26】刃物の製造方法の一例を示すもので、(a)は
製造途中の状態を示す斜視図、(b)は溶接後の状態を示
す斜視図である。
【図27】同上の他例を示すもので、(a)は製造途中の
状態を示す斜視図、(b)は溶接後の状態を示す斜視図で
ある。
【図28】刃物の製造法の他例を示す斜視図である。
【図29】同上のさらに他例を示すもので、(a)は製造
途中の状態を示す斜視図、(b)は溶接後の状態を示す斜
視図である。
【図30】同上の別の例を示すもので、(a)は製造途中
の状態を示す斜視図、(b)は第1溶接工程後の状態を示
す斜視図、(c)は第2溶接工程後の状態を示す斜視図で
ある。
【図31】同上のさらに別の例を示すもので、(a)は製
造途中の状態を示す斜視図、(b)は溶接後の状態を示す
斜視図である。
【符号の説明】
1 台金 2 刃先チップ 3 合金層 31 高靱性金属部 32 高強度金属部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 草野 昇 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 濱田 利一 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 中山 享一良 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼製の台金と、この台金に金属層を介し
    て接合固着された超硬合金製の刃先チップとからなる刃
    物であり、上記金属層は台金の熱膨張率と刃先チップの
    熱膨張率との中間の熱膨張率を有する金属で形成された
    高強度金属部と、刃先チップと台金との接合域の端部に
    位置するとともに靱性が上記金属部より大となっている
    高靱性金属部とから成ることを特徴とする刃物。
  2. 【請求項2】 金属層における高強度金属部と高靱性金
    属部とが同一元素を含む同系金属であることを特徴とす
    る請求項1記載の刃物。
  3. 【請求項3】 金属層における高強度金属部が鉄−ニッ
    ケルを主成分とする合金であり、高靱性金属部が高強度
    金属部よりもニッケル含有量が大の金属であることを特
    徴とする請求項2記載の刃物。
  4. 【請求項4】 金属層における高強度金属部と高靱性金
    属部とが構成元素の異なる異種金属であることを特徴と
    する請求項1記載の刃物。
  5. 【請求項5】 金属層は高強度金属部から接合域端部の
    高靱性金属部にかけて硬さが漸次変化しているものであ
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載
    の刃物。
  6. 【請求項6】 金属層の高強度金属部は台金側から刃先
    チップ側にかけて熱膨張率が漸次変化しているものであ
    ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載
    の刃物。
  7. 【請求項7】 鋼製の台金に金属層を介して超硬合金製
    の刃先チップを溶接固着するにあたり、刃先チップと台
    金との接合域の端部と他の部分とにおいて強度及び靱性
    が異なるように金属層を形成することを特徴とする刃物
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 金属層を鉄−ニッケルを主成分とする金
    属からなるものとするとともに、刃先チップと台金との
    接合域の端部におけるニッケル含有量が他の部分よりも
    大となるように金属層を形成することを特徴とする請求
    項7記載の刃物の製造方法。
  9. 【請求項9】 台金と刃先チップとの接合部において少
    なくとも一方に開先を形成するとともに接合域の端部と
    なるところの開先を他の部分より大きくしておき、次い
    でニッケルまたはニッケル合金を溶加材として加えつつ
    上記開先部分で溶接を行うことを特徴とする請求項8記
    載の刃物の製造方法。
  10. 【請求項10】 台金における刃先チップ接合面とこの
    接合面にコーナーを介して連続する面とにメッキや溶射
    によるニッケル層を設け、次いで台金の上記刃先チップ
    接合面に刃先チップを台金とニッケル層との加熱溶融で
    溶接することを特徴とする請求項8記載の刃物の製造方
    法。
  11. 【請求項11】 台金における刃先チップ接合面で且つ
    刃先チップと台金との接合域の端部となるところに凹部
    を形成し、次いで台金における上記凹部を含む刃先チッ
    プ接合面にメッキや溶射によるニッケル層を設け、この
    後、台金の上記刃先チップ接合面に刃先チップを台金と
    ニッケル層との加熱溶融によって溶接することを特徴と
    する請求項8記載の刃物の製造方法。
  12. 【請求項12】 台金と刃先チップとの接合面の少なく
    とも一方にニッケルやニッケル合金から成るニッケル層
    を形成するとともに接合域の端部となるところのニッケ
    ル層のニッケル含有量を他の部分のニッケル層のニッケ
    ル含有量より多くしておき、次いで台金と刃先チップと
    を接合部の台金と上記ニッケル層との加熱溶融によって
    溶接することを特徴とする請求項8記載の刃物の製造方
    法。
  13. 【請求項13】 台金と刃先チップとの接合面の少なく
    とも一方にニッケルやニッケル合金から成るニッケル層
    を形成するとともに接合域の端部となるところのニッケ
    ル層の厚みを他の部分のニッケル層の厚みより大として
    おき、次いで台金と刃先チップとを接合部の台金と上記
    ニッケル層との加熱溶融によって溶接することを特徴と
    する請求項8記載の刃物の製造方法。
  14. 【請求項14】 メッキや溶射によるニッケル層の形成
    の後にシェービングや切削によってニッケル層の厚みを
    調整し、しかる後に台金と刃先チップとを接合部の台金
    と上記ニッケル層との加熱溶融によって溶接することを
    特徴とする請求項13記載の刃物の製造方法。
  15. 【請求項15】 台金と刃先チップとの接合面間にニッ
    ケルやニッケルを含む金属からなる薄板を介在させると
    ともに該薄板における台金と刃先チップとの接合域の端
    部となるところを台金より外部に突出させておき、次い
    で台金と刃先チップとを接合部の台金と上記薄板との加
    熱溶融によって溶接することを特徴とする請求項8記載
    の刃物の製造方法。
  16. 【請求項16】 鋼製の台金に金属層を介して超硬合金
    製の刃先チップを溶接固着するにあたり、刃先チップと
    台金との接合域の端部と他の部分とにおいて構成元素の
    異なる異種金属で金属層を形成することを特徴とする請
    求項7記載の刃物の製造方法。
  17. 【請求項17】 台金と刃先チップの接合域の端部に高
    靱性金属を配するとともに接合域の他の部分に高強度金
    属を配して、高強度金属を溶融させることで台金と刃先
    チップとを接合溶接するとともに該高強度金属の溶融熱
    で端部の高靱性金属を溶かすことを特徴とする請求項1
    6記載の刃物の製造方法。
  18. 【請求項18】 台金と刃先チップの接合域の端部に高
    靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、
    端部の高靱性金属を溶かして台金と刃先チップとを接合
    域端部で接合溶接した後、高強度金属を溶融させること
    で台金と刃先チップとを接合溶接することを特徴とする
    請求項16記載の刃物の製造方法。
  19. 【請求項19】 台金と刃先チップの接合域の端部に高
    靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、
    端部の高靱性金属を溶かして高強度金属を台金もしくは
    刃先チップに仮止めし、しかる後に刃先チップと台金と
    を相対させて溶接することを特徴とする請求項16記載
    の刃物の製造方法。
  20. 【請求項20】 台金と刃先チップの接合域の端部に高
    靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、
    端部の高靱性金属の台金もしくは刃先チップへの係止に
    より高強度金属を同時に仮止めし、しかる後に刃先チッ
    プと台金とを相対させて溶接することを特徴とする請求
    項16記載の刃物の製造方法。
  21. 【請求項21】 台金と刃先チップの接合域の端部に高
    靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配して、
    高靱性金属と高強度金属とを同時に溶融させることで台
    金と刃先チップとを接合溶接するとともに該高強度金属
    と高靱性金属との配置境界部で両者を溶融混合させるこ
    とを特徴とする請求項16記載の刃物の製造方法。
  22. 【請求項22】 台金と刃先チップの接合域の端部に高
    靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配すると
    ともに上記高靱性金属と高強度金属との間にこの両者の
    中間的特性を有する中間特性金属を配して、これら金属
    を加熱溶融させることで台金と刃先チップとを接合溶接
    することを特徴とする請求項16記載の刃物の製造方
    法。
  23. 【請求項23】 台金と刃先チップの接合域の端部に高
    靱性金属を、接合域の他の部分に高強度金属を配すると
    ともに上記高強度金属を熱膨張率が異なる複数層で形成
    し、上記高靱性金属及び高強度金属を加熱溶融させるこ
    とで台金と刃先チップとを接合溶接することを特徴とす
    る請求項16記載の刃物の製造方法。
  24. 【請求項24】 WC粉末に6〜20%Co粉末を混合
    したものを刃先チップ側に、WC粉末に40〜60%C
    o粉末を混合したものを台金側に配するとともに接合域
    端部にCu粉末を配して、これら粉末を加熱して焼結す
    ることで台金と刃先チップとを接合溶接することを特徴
    とする請求項23記載の刃物の製造方法。
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