JPH1042861A - 乳酸非資化性キラー酵母 - Google Patents

乳酸非資化性キラー酵母

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JPH1042861A
JPH1042861A JP8205092A JP20509296A JPH1042861A JP H1042861 A JPH1042861 A JP H1042861A JP 8205092 A JP8205092 A JP 8205092A JP 20509296 A JP20509296 A JP 20509296A JP H1042861 A JPH1042861 A JP H1042861A
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silage
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宏子 北本
Sadahiro Omomo
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 サイレージの好気的変敗を防止するために有
用な、乳酸を資化しないキラー酵母を得ること。 【解決手段】 PEPCK遺伝子を欠損する乳酸非資化
性キラー酵母、破壊されたPEPCK遺伝子を有する、
宿主に乳酸非資化性を与えるプラスミド(このプラスミ
ドは、PEPCK遺伝子のBamHI部位にマーカー遺
伝子が挿入されているプラスミドであるか、またはPE
PCK遺伝子のBglII断片が欠失されて、代わりに
マーカー遺伝子が挿入されているプラスミドである)、
および上記キラー酵母を用いるサイレージの好気的変敗
を防止する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サイレージの好気
的変敗を防止するための乳酸非資化性キラー酵母、その
酵母の作出のために用いられるプラスミド、およびその
酵母を用いるサイレージの変敗防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】サイレージは、草を乳酸発酵して保存性
を高めた反芻家畜の飼料である。サイレージの保存性の
ためには「酸性」および「嫌気」の両条件が必要であ
る。この一方が崩れた場合、サイレージは変質する。
【0003】サイロが開封されると、サイレージは好気
的条件に曝される。この好気条件により、好気性微生物
が乳酸および水溶性炭水化物をCO2ガスに分解し、タ
ンパク質およびアミノ酸をアミン、アミド、およびアン
モニアに分解し、そして呼吸熱を発生し、その結果、温
度およびpHが上昇する。酵母およびカビ(糸状菌)は
サイレージ中の乳酸を資化することによりpHを上昇さ
せる。その結果腐敗の原因となる細菌類が急増し、サイ
レージを腐敗させる。変敗飼料は栄養価および家畜の嗜
好性が低下するため、家畜飼養上大きな問題となってい
る。
【0004】このようなサイレージの好気的変敗は、酵
母の乳酸代謝が第一の原因であると考えられる。サイロ
開封時にサイレージ中に乳酸資化性酵母が105細胞/
g(乾燥重量)以上存在すると好気的変敗が急速に進む
が、乳酸資化性酵母が存在しない場合、乳酸非資化性酵
母の数がそれ以上存在しても好気的変敗は起こらないこ
とが報告されている(Jonsson, A.およびG. Pahlow, An
im. Res. Dev. 20(1984)7)。
【0005】本発明者は、キラー酵母を用いて、変敗の
原因となる乳酸資化性の野生酵母類の増殖を抑制するこ
とによりサイレージの好気的変敗を防止することを提案
した。キラー酵母には、それ自身が生産するタンパク性
物質により他の酵母の生育を抑制する作用がある。この
キラー酵母をサイレージに用いた場合の模式図を図1に
示す。しかし、このキラー酵母自体もまた乳酸資化性で
あり、サイレージのpHを上昇させ得ることが分かった
(J. Dairy Sci., 76(1993)803-811)。従って、サイレ
ージの好気的変敗を防ぐための具体的な方法がないのが
現状である。
【0006】好気条件下における酵母の糖代謝の略図を
図2に示す。酵母の乳酸代謝系では、乳酸が乳酸デヒド
ロゲナーゼ(LDH)によってピルビン酸に変換され、
TCAサイクルを通って炭酸ガスと水に分解される。従
って、LDH活性を失った酵母は乳酸を炭素源として利
用できない。しかし、LDHには複数のアイソザイムが
存在しており、LDHの欠損株を作製することは困難で
ある。
【0007】他方、酵母は、グルコースを炭素源とした
場合は、解糖系、TCAサイクルを経てエネルギーを得
る。乳酸を炭素源とした場合、菌体が生育するにはグル
コースを再合成して細胞骨格を合成する必要がある。こ
のグルコースの再合成は解糖系の逆行であり、糖新生系
として知られている。糖新生系は、オキサロ酢酸からホ
スホエノールピルビン酸を生成するホスホエノールピル
ビン酸カルボキシキナーゼ(以下、PEPCKと称す
る)によって制御される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このPEP
CKに注目し、PEPCKの作用を破壊させることによ
り糖新生系をブロックし、乳酸を炭素源として生育しな
いキラー酵母を得、サイレージの好気的変敗を防止する
ことを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、PEPCK遺
伝子を欠損する乳酸非資化性キラー酵母を提供する。
【0010】好ましい実施態様では、上記キラー酵母
は、K. lactisである。
【0011】好ましい実施態様では、上記乳酸非資化性
キラー酵母は遺伝子工学的に得られる。
【0012】本発明はまた、乳酸非資化性キラー酵母を
作製する方法を提供する。この方法は、PEPCK遺伝
子をクローニングする工程;PEPCK遺伝子を改変す
る工程;および上記改変PEPCK遺伝子をキラー酵母
に導入する工程を包含する。
【0013】本発明はまた、宿主に乳酸非資化性を与え
るプラスミドを提供する。このプラスミドは改変された
PEPCK遺伝子を有する。
【0014】好ましい実施態様では、上記改変されたP
EPCK遺伝子は、該PEPCK遺伝子のBamHI部
位にマーカー遺伝子が挿入されることにより得られる。
【0015】別の好ましい実施態様では、上記改変され
たPEPCK遺伝子は、該PEPCK遺伝子のBglI
I断片が欠失されて、代わりにマーカー遺伝子が挿入さ
れることにより得られる。
【0016】本発明はまた、サイレージの好気的変敗を
防止する方法を提供する。この方法は、上記乳酸非資化
性キラー酵母をサイレージに添加する工程を包含する。
【0017】好ましい実施態様では、上記方法は、サイ
レージにさらにラクトースを添加する工程を包含する。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明は、サイレージの好気的変
敗を防止するための乳酸非資化性キラー酵母を提供す
る。本発明における「乳酸非資化性」酵母とは、厳密に
言うと乳酸を炭素源として生育できない酵母である。こ
の酵母は、糖新生系がブロックされているが乳酸→TC
A回路は働くので自らは乳酸を資化し得るが、乳酸を炭
素源として生育することができない。
【0019】キラー酵母とは、他の酵母の生育を選択的
に抑制するタンパク性(糖タンパク質もまた包含する)
のキラートキシンを生産する酵母をいう。本発明で用い
られるキラー酵母は、サイレージの好気的変敗に関わる
野生酵母類の増殖を抑制する菌株であればいずれでも用
いられ得る。例えば、K1タイプキラー酵母菌株、Kluyv
elomyces lactis IFO1267株、Hansenula mrakii IFO089
5株、Hansenula mrakii IFO0897株などが挙げられる。
好ましくは、K. lactis IFO1267株およびHansenula mra
kii IFO0897株が用いられ、この2株は、野生酵母類に
関して幅広いスペクトルを有し、そしてキラー活性が共
に酸性側で強く働く。最も好ましくは、K.lactis IFO12
67株が用いられる。その理由は以下の通りである。この
K. lactisIFO1267株は、キラースペクトルの幅が広いだ
けでなく、即効性である。さらに、このK. lactis IFO
1267株は、ラクトースを資化および発酵する。K. lacti
sIFO 1267株は、炭素源としてラクトースを用いること
により、ラクトース非資化性酵母に対するキラー活性が
増大することが知られている(J. Dairy Sci. 76(1993)
803-811)。他方、酵母の多くはラクトースを炭素源と
して利用できない。サイレージの詰め込み時にラクトー
スとラクトース資化性キラー酵母を添加すれば、ラクト
ースによる乳酸菌の活性化が期待され、同時に野生酵母
の増殖を選択的に抑制することが可能であると考えられ
る。
【0020】以下、本発明をK. lactis IFO1267株を例
にして説明する。まずPEPCK遺伝子のクローニング
を行う。Saccharomyces cerevisiaeのPEPCK遺伝子
PCK1の塩基配列(R. Stuckaら、Nucleic Acids Re
s. 16(1988)10926)に基づいてPCRで拡大したプロー
ブを用い、K. lactis IFO1267株のゲノミックサザンハ
イブリダイゼーションを行う。得られたバンドを切り出
して、これを酵母pYC型ベクターに挿入したプラスミ
ドをPCK1欠損S. cerevisiaeに形質転換する。これ
により、乳酸を唯一の炭素源とする培地に生育する形質
転換体が得られる。この形質転換体はPEPCK活性を
回復する。S. cerevisiaeで相補したことにより、このD
NA断片はK. lactis IFO1267株のPEPCK遺伝子Kl
PCK1を含むことが確認される。
【0021】次に、PEPCK遺伝子破壊を行う。PE
PCK遺伝子破壊は、以下のようにして行われ得る。上
記のようにクローニングしたPEPCK遺伝子KlPC
K1を、挿入、欠失などの変異を生じさせて遺伝子とし
て働き得ないように改変する。この改変遺伝子を保有す
るプラスミド(PEPCK遺伝子破壊用プラスミド)を
作製し、これをK. lactisに遺伝子導入する。この遺伝
子の導入は、例えば、スフェロプラスト法、酢酸リチウ
ム法、エレクトロポーレーション法、パーティクルガン
法などのいずれの公知の方法によっても行われ得る。改
変遺伝子を導入すると、PEPCK遺伝子の部分で染色
体相同組換えが起こり、その結果遺伝子破壊を生じる。
得られた形質転換酵母は乳酸を炭素源として利用し得な
い。
【0022】PEPCK遺伝子破壊用プラスミドとして
は、pKP1およびpKP2の2つのプラスミドが挙げ
られる。この両プラスミドは、K. lactisのPEPCK
遺伝子の内部にマーカー遺伝子が挿入されているプラス
ミドである。pKP1は、PEPCK遺伝子のBamH
I部位にマーカー遺伝子が挿入されている挿入型プラス
ミドである。pKP2は、PEPCK遺伝子のBglI
I断片が欠失されて、代わりにマーカー遺伝子が挿入さ
れている欠失型プラスミドである。本発明で用いられ得
るマーカー遺伝子としては、例えば、抗生物質G418
耐性、セルレニン耐性、シクロヘキシミド耐性、または
エチオニン耐性遺伝子が挙げられるが、これらに限定さ
れない。これらのPEPCK遺伝子破壊用プラスミドを
用いることにより、安定した遺伝子破壊が得られ得る。
【0023】上記のようにして得られたPEPCK欠損
キラー酵母は、乳酸を炭素源として生育しないが、キラ
ー活性および糖を炭素源とした生育は元のキラー酵母と
変わりがない。従って、このキラー酵母を用いることに
より、サイレージの好気的変敗は十分に防止され得る。
【0024】本発明によるサイレージの好気的変敗を防
止する方法は、上記の乳酸非資化性キラー酵母をサイレ
ージに添加する工程を包含する。サイレージは、酸性お
よび嫌気条件下で調製され得るので、乳酸非資化性キラ
ー酵母は、サイレージの調製開始時に添加され得る。好
ましくは、上記サイレージに、乳酸非資化性キラー酵母
とラクトースとを添加する工程を包含する。サイレージ
の酸性および嫌気条件を維持するために、ラクトースお
よびラクトース資化性キラー酵母は、サイレージの調製
開始時に同時に添加され得る。多くの野生酵母はラクト
ース非資化性である。従って、サイレージの詰め込み時
にラクトースとラクトース資化性キラー酵母とを添加す
れば、ラクトースによる乳酸菌の活性化が期待され、同
時に野生酵母の増殖を選択的に抑制し得る。
【0025】本発明に従えば、サイレージの好気的変敗
が好都合に防止され得る。キラー酵母の乳酸発酵が抑制
されるため、好気的変敗の原因となる野生酵母類の増殖
は、乳酸非資化性キラー酵母によって適切に抑制され得
る。キラー酵母に加えてラクトースをサイレージに添加
することにより、キラー酵母のキラー活性が強まり、そ
して乳酸菌の活動が活性化され得る。
【0026】以下、本発明を実施例によって説明する
が、本発明は実施例に限定されない。
【0027】
【実施例】
(実施例1 K. lactis IFO1267株PEPCK遺伝子の
クローニング)プローブは、S. cerevisiaeのPEPC
K遺伝子PCK1の塩基配列(R. Stuckaら、Nucleic A
cids Res. 16(1988)10926)に基づいて、S. cerevisia
e YNN27株ゲノムDNAをテンプレートとし、プライマー1
5' ATAGGGCCCATGTCCCCTTCTAAAATGAATGCTA 3'およびプ
ライマー2 5' CGCAAGCTTCTAACATGTTTCGTTTACTCGAATT
3'を用いてPCRにより作製した。作製したプローブを
用い、常法に従って(Sambrook et al., Molecular Clo
ning: A Laboratory Manual 第2版 (1989) ColdSpring
Harbor Laboratory Press)、ECL direct nucleic aci
d labelling anddetection system (Amersham) により
K. lactis IFO1267株のゲノミックサザンハイブリダイ
ゼーションを行った。得られたバンドを切り出して、プ
ラスミドベクターBluescriptII KS+(ストラタジーン社
製)にライゲーションした。PCK1をプローブとし
て、コロニーハイブリダイゼーション(DIG標識核酸検
出キット;ベーリンガーマンハイム製:Colliquium 2(1
992)8)でPCK1と相同性の高い遺伝子断片KlPC
K1がサブクローニングされたプラスミドを含むコロニ
ーをスクリーニングした。KlPCK1を切り出して、
これを酵母pYC型ベクターに挿入したプラスミドをP
CK1欠損S. cerevisiaeに酢酸リチウム法(Ito, H.,
Fukuda, Y., Murata, K.およびKimura, A., Journal of
Bacteriology 153(1983)163)で形質転換した。形質転
換株を乳酸カルシウム(0.5g/L)を炭素源として
含有する最少培地に接種して増殖させたところ、この株
は、乳酸を唯一の炭素源とする培地で生育した。さら
に、得られた形質転換株の酵素活性を測定した。この形
質転換株を、グルコースを炭素源とした培地(イースト
ナイトロジェンベースw/oアミノ酸6.7g/L)に
おいて30℃で二夜振盪培養し、次いで滅菌水で洗浄し
た。この菌体を、PEPCK遺伝子の発現を誘導する条
件である、エタノール(2%w/v)を炭素源とした培
地(イーストナイトロジェンベースw/oアミノ酸6.
7g/L)中で培養し、次に菌体をガラスビーズで破砕
した後遠心分離して、細胞抽出液を得た。コントロール
として、エタノールの代わりにグルコースを用いた培地
中での培養もまた行った。得られた細胞抽出液中のタン
パク質量をプロテインアッセイキット(BioRad)を用い
て定量した。細胞抽出液中のPEPCK活性はJavier P
ereaおよびCarlos Gancedo, Arch Microbiol 132(1982)
141-143に記載の方法の改法に従い、以下のように測定
した。イミダゾール溶液(pH7.0)(100mM
イミダゾール、100mMNaHCO3、4mM Mn
Cl2、および4mM グルコースを含有する)283
8μL、還元グルタチオン溶液(1μmol還元グルタチ
オン、1μmolADP、0.5μmolNADH、および0.
1μmolPEPを含有する)100μL、リンゴ酸デヒド
ロゲナーゼ(ベーリンガー127248)4μL(4.
8u)、およびヘキソキナーゼ(ベーリンガー1271
75)8μL(2.4u)を30℃で3分間混合した。
次いで、この混合液に50μLの細胞抽出液を添加し、
PEPCK活性を、340nmでの吸光度を30℃で3
0分間経時的に測定することにより得た。この形質転換
体はPEPCK活性を回復した。S. cerevisiaeで相補
したことにより、このDNA断片はK. lactis IFO1267株の
PEPCK遺伝子KlPCK1を含むことが分かった。
【0028】(実施例2 PEPCK遺伝子破壊用プラ
スミドの構築)PEPCK遺伝子破壊用プラスミドを以
下のように構築した。実施例1により得られたK. lacti
s IFO1267株由来のPEPCK遺伝子KlPCK1をコ
ードする約4.8Kb EcoRIゲノムフラグメント
を、あらかじめマルチクローニング部位内のBamHI
部位を欠失させた、またはもとのままのプラスミドベク
ターBluescript II KS+(ストラタジーン社製)のEc
oRI部位にサブクローン化した。次に、これらの組換
えプラスミドを挿入断片内のBamHI部位(上記Ec
oRIフラグメント内に1ヶ所存在する)またはBgl
II部位(同フラグメント内に2ヶ所存在する)で切断
し、そこにプラスミドpYCDE−ΔG11(T. Ogata
ら, J. Gen. Appl. Microbiol., 39(1993)285-294)中
の、Saccharomyces cerevisiae由来のADH1プロモー
ターおよびEscerichia coli由来のカナマイシン耐性遺
伝子(APT2)を含む3.4KbのBamHI断片を
挿入することにより、pKP1およびpKP2を得た。
図3に示すように、前者はマーカー遺伝子としてのAP
T2フラグメントがK. lactis由来のフラグメントに挿
入された形になっており、また後者はK. lactis由来の
フラグメントの一部が欠失してAPT2フラグメントで
置換された形となっている。
【0029】(実施例3 遺伝子破壊用プラスミドをキ
ラー酵母K. lactisへの導入)実施例2で構築したプラ
スミドDNAを、エレクトロポーレーション法は、Manu
el Sanchezら, Appl. Environ. Microbiol., 59(1993)2
087-2092に記載の方法の改法に従い、K. lactis IFO126
7株に形質転換した。すなわち、試験管内で菌体をYE
D培地5mLにおいて30℃で一夜振盪培養し、次いで
この菌体を300mL容三角フラスコ中でYED培地3
0mLにおいて30℃で3.5時間振盪培養した。次い
でこの菌体を冷水で2回洗浄した後、YED、25mM
DTT(YED780mL、1M DTT 20μL)
を含む培地で30℃で30分間、100rpmで振盪し
た。得られた菌体を冷水で2回、次いでエレクトロポー
レーション緩衝液(1mM Tris HCl(pH7.
5)、270mMスクロース、および1mM LiOA
cを含有する)で洗浄し、そしてこのエレクトロポーレ
ーション緩衝液200μLに懸濁した。この懸濁液に実
施例1で構築したプラスミドDNA1μLを添加し、氷
上で15分間静置した。細胞/DNA混合液を、4KV
/cm(200V/0.5mm)、16mSの条件でエ
レクトロポーレーションにかけた。処理した菌体を1m
LのYPD培地中に懸濁して氷上で15分間静置し、次
いで30℃で6時間インキュベートした後、G418
(0.1mg/mL)および寒天(20g/L)を含む
YPD培地上に広げ、30℃で72時間インキュベート
した。出現したG418耐性コロニーを、乳酸カルシウ
ム(5g/L)を含有する最少寒天培地(イーストナイ
トロジェンベースw/oアミノ酸6.7g/L、寒天2
0g/L)にレプリカし、そこで生育しない形質転換株
を選択した。形質転換実験の結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】これらの形質転換体の中から各シリーズに
ついて1株ずつ選択し、それらを遺伝子破壊が導入され
た候補株として、以下でより詳細な検討を実施した。
【0032】(実施例4 形質転換体の特徴付け) 1)ゲノムサザン解析:実施例3で導入された改変PE
PCK遺伝子の存在様式を調べる目的で下記のようにサ
ザン解析を実施した。2種の形質転換体および野生株K.
lactis IFO1267株から抽出したゲノムDNA各10μg
ならびに形質転換に使用した2種のプラスミドDNA各
10ngを、EcoRIで切断後アガロースゲル電気泳
動し、ペルオキシダーゼで標識したPEPCK遺伝子を
含む約4.8Kb EcoRIフラグメントをプローブ
として、常法に従って(Sambrooket al., Molecular Cl
oning: A Laboratory Manual 第2版 (1989) Cold Spri
ng Harbor Laboratory Press)、ECL direct nucleic a
cid labelling and detection system (Amersham) によ
りサザン解析を実施した。図4に示すように、形質転換
体由来のゲノムDNAは、それぞれ遺伝子破壊に使用し
たプラスミドDNAと同じハイブリダイゼーションパタ
ーンを示し、このことから、遺伝子破壊用プラスミド内
の挿入フラグメントがK. lactisゲノムに導入前の形態
を維持して導入されていることが確認された。
【0033】2)染色体解析:導入された改変遺伝子の
染色体上の位置を、以下の手順で検討した。野生株およ
び2種の形質転換体について、2×109細胞/mLの
プロトプラストを含むアガロースプラグを、1%低融点
ゲル(BioRad 162-0102)、15cmのウエルに充填
し、パルスフィールド電気泳動装置(BioRad社製、CHEF
-DRII)を用いて、9〜10℃、130Vで、パルス時
間100秒で16時間、次いでイニシャルパルス時間1
80秒およびファイナルパルス時間360秒で51時
間、そしてパルス時間360秒で6時間電気泳動した。
電気泳動後、PEPCK遺伝子を含む4.8Kb Ec
oRIフラグメントまたはAPT2遺伝子を含む3.4
Kb BamHIフラグメントをプローブとして上記
1)のようにサザン解析した。図5に示すように、AP
T2遺伝子を含むフラグメントは、形質転換体由来のゲ
ノムDNAではPEPCK遺伝子を含むフラグメントと
同じ1番染色体にハイブリダイズしたが、野生株由来の
DNAにはハイブリダイズしなかった。この結果および
上記1)の結果から、APT2遺伝子フラグメントによ
る挿入または欠失(置換)がK.lactisゲノムのPEPC
K遺伝子内に導入されていることが確認された。
【0034】3)PEPCK活性の測定:試験管内での
PEPCK遺伝子フラグメント中の挿入または欠失(置
換)の、キラー酵母K.lactis宿主のPEPCK遺伝子の
発現に及ぼす影響を、形質転換体の産生するPEPCK
活性を測定することにより検討した。PEPCK活性
は、上述の実施例1と同様にして測定した。以下の表2
に示すように、野生株に比較して形質転換株ではPEP
CK活性はほとんど発現されなかった。
【0035】
【表2】
【0036】4)炭素源資化性:PEPCK遺伝子破壊
の乳酸資化性に及ぼす影響を下記のように調べた。2種
の形質転換体および野生株を乳酸またはラクトース(そ
れぞれ20g/L)を炭素源として含有する最少培地に
接種して、増殖させた。この結果を図6に示す。図中、
▲は野生株の乳酸培地培養、●は野生株のラクトース培
地培養、△は形質転換体の乳酸培地培養、そして○は形
質転換体のラクトース培地培養を表す。図6に示すよう
に、糖であるラクトースを含有する培地中では、形質転
換体は野生株と同様に増殖した。一方、乳酸を炭素源と
して含有する培地中では、野生株は良好な増殖を示すの
に対して、形質転換体は増殖しなかった。また形質転換
体をYPD培地中で非選択条件下で約20世代培養した
後、乳酸非資化性およびG418耐性の形質について調
べたところ、それぞれの株は両形質を安定に100%維
持していた。これらの結果は、形質転換体ゲノム中のP
EPCK遺伝子破壊によりこれらの株の乳酸資化性が失
われ、また遺伝子破壊が安定に維持されていることを示
唆した。
【0037】5)キラー活性の確認:形質転換体および
野生株のキラー活性を、検定菌としてSaccharomyces ce
revisiae IFO0304株を使用して、緩衝化メチレンブルー
培地(ペプトン20g/L、酵母エキス10g/L、グ
ルコース20g/L、メチレンブルー0.3g/L、寒
天20g/L、1/10McIlvaine緩衝液(McIlvaine,
T.C., J. Biol. Chem. 49(1921)183))上で25℃2日
間好気的に培養した後観察することにより確認した。図
7に示すように、形質転換体のキラー活性は宿主である
野生株と同程度に維持されていることが確認された。
【0038】
【発明の効果】本発明に従えば、サイレージの好気的変
敗が好都合に防止され得る。キラー酵母の乳酸発酵が抑
制されるため、好気的変敗の原因となる野生酵母類の増
殖は、乳酸非資化性キラー酵母によって適切に抑制され
得る。キラー酵母に加えてラクトースをサイレージに添
加することにより、キラー酵母のキラー活性が強まり、
そして乳酸菌の活動が活性化され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、サイレージの好気的変敗およびキラー
酵母による防止を示す模式図である。
【図2】図2は、好気条件における酵母の糖代謝を示す
模式図である。
【図3】図3は、遺伝子破壊用プラスミド中の挿入フラ
グメントの構造を示す模式図である。
【図4】図4は、形質転換体および野生株ゲノムDNA
内での改変PEPCK遺伝子の存在状態を調べるための
サザン解析を示す電気泳動写真である。
【図5】図5は、形質転換体および野生株染色体におけ
る改変PEPCK遺伝子の存在位置を調べるためのサザ
ン解析を示す電気泳動写真である。
【図6】図6は、形質転換体および野生株のラクトース
および乳酸を炭素源とした場合の増殖を示すグラフであ
る。
【図7】図7は、形質転換体および野生株の検定菌に対
するキラー活性を示す生物形態写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:645)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホスホエノールピルビン酸カルボキシキ
    ナーゼ(PEPCK)遺伝子を欠損する乳酸非資化性キ
    ラー酵母。
  2. 【請求項2】 前記キラー酵母が、K. lactisである、
    請求項1に記載の乳酸非資化性キラー酵母。
  3. 【請求項3】 前記乳酸非資化性キラー酵母が遺伝子工
    学的に得られる、請求項1に記載の乳酸非資化性キラー
    酵母。
  4. 【請求項4】 乳酸非資化性キラー酵母を作製する方法
    であって、以下の工程を包含する、方法:PEPCK遺
    伝子をクローニングする工程;PEPCK遺伝子を改変
    する工程;および該改変PEPCK遺伝子をキラー酵母
    に導入する工程。
  5. 【請求項5】 宿主に乳酸非資化性を与えるプラスミド
    であって、改変されたPEPCK遺伝子を有する、プラ
    スミド。
  6. 【請求項6】 前記改変されたPEPCK遺伝子が、該
    PEPCK遺伝子のBamHI部位にマーカー遺伝子が
    挿入されることにより得られる、請求項5に記載のプラ
    スミド。
  7. 【請求項7】 前記改変されたPEPCK遺伝子が、該
    PEPCK遺伝子のBglII断片が欠失されて、代わ
    りにマーカー遺伝子が挿入されることにより得られる、
    請求項5に記載のプラスミド。
  8. 【請求項8】 請求項1に記載のキラー酵母をサイレー
    ジに添加する工程を包含する、サイレージの好気的変敗
    を防止する方法。
  9. 【請求項9】 前記サイレージにさらにラクトースを添
    加する工程を包含する、請求項8に記載の方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001004291A1 (en) * 1999-07-09 2001-01-18 Pioneer Hi-Bred International, Inc. Non-lactate-assimilating yeast for improving aerobic stability of silage
WO2003067997A1 (en) * 2002-02-14 2003-08-21 Sa Majesté La Reine Du Chef Du Canada Mixed starter culture and uses thereof
JP2017537980A (ja) * 2014-11-24 2017-12-21 ダンスター フェルマン アーゲー 乾草防腐剤及び乾草の保存方法

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