【発明の詳細な説明】
ヘモグロビンによって造血を刺激する方法
本出願は、RosenthalおよびGerberの1994年3月8日に出願された出願番号第08/
208,740号の一部継続出願である。
発明の分野
本発明は、ヘモグロビンの適切な量を投与することによって、造血を刺激する
新規な方法に関する。
発明の背景
造血は、骨髄中で行われる血液細胞産生の過程である。骨髄中の幹細胞は、循
環血液中に認められる種々の細胞型の全てに対する前駆細胞である。これらの幹
細胞は、致死量照射された動物において長期間で全ての造血細胞系統を再居住(r
epopulate)させるそれらの能力によって、機能的に同定される(Nicola,N.A.(1
993)、Application of Basic Science to Hematopoiesis and the Treatment of
Disease,E.D.Thomas and S.K.Carter編、Raven Press,NY)。一連の複雑な
調節事象を通して、幹細胞は、多くの細胞型(少なくとも赤血球、白血球、リン
パ球、血小板(platelets、thrombocytes)、単球、マクロファージ、マスト細
胞、好塩基球、好酸球、B-リンパ球およびT-リンパ球を含む)へ分化する。何百
万の各型の新しい血液細胞が日々産生され、循環血液中に放出されて、破壊され
た血液細胞と交換され、恒常性が維持される。(Nathan,D.G.(1992)、Cecil Te
xtbook of Medicine,J.B.Wyngaarden,L.H.SmithおよびJ.C.Bennett編、W.B.Sa
unders Co,Philadelphia,817-836頁)。
異なる細胞型の産生は、感染あるいは失血のような外因性刺激に応じて調節さ
れ得る。例えば、感染中には、白血球(leukocytes)は、末梢貯蔵物から、例え
ば、血管壁の縁に沿って動員され(いわゆる脱辺縁趨向過程(the process of de
marginalization))、骨髄での白血球産生増大が伴う(Bagby,G.C.(1992)、Ce
cil Textbook of Medicine,J.B.Wyngaarden,L.H.Smith,およびJ.C.Bennette
編、W.B.Saunders Co,Philadelphia,914-920頁)。月経、外傷、あるいは外科
手術による失血のような急性失血は貧血を生じ、血液は、赤血球、ヘモグロビン
、あるいは全血容積が欠乏する(ヘマトクリット<40%、ヘモグロビン<12 g/dl
、赤血球<4×106/ul、あるいは平均細胞容積<80 fl;Nathan,D.G.(1992)、C
ecil Textbook of Medicine,J.B.Wyngaarden,L.H.SmithおよびJ.C.Bennett編
、W.B.Saunders Co,Philadelphia,817-836頁)。赤血球量(総赤血球(総数、
総重量、あるいは総容積のいずれか)は、組織に酸素を送達する器官として作用
する。赤血球量および赤血球産生速度は、身体組織での酸素供給および需要に密
接に結び付く。赤血球産生は、低い組織間酸素圧により刺激される。貧血状態に
より、組織中の酸素レベルの低下が生じる(低酸素圧)。腎臓の低酸素圧は腎臓
実質によって感知され、腎臓からのエリスロポエチンの放出を刺激する。エリス
ロポエチンは、赤血球量の変化から生じる低酸素圧に応じて産生される赤血球形
成の主要な調節ホルモンである。(Erslev,A.J.(1990)、Hematology,W.J.Will
iams,E.Beutler,A.J.Erslev、およびM.A.Lichtman編、McGraw-Hill,Inc.New
York,389-407頁)。
特定の循環細胞型の他の欠乏もまた生じ得る。白血球減少症(多くの異なる白
血球集団のいずれか1つが減少することを示す一般的な用語である)は、脱辺縁
趨向過程の脱カップリングおよび前駆骨髄細胞系から分化した細胞の交換速度の
結果であり得る(Bagby,G.C.(1992)、Cecil Textbook of Medicine,J.B.Wynga
arden,L.H.SmithおよびJ.C.Bennett編、W.B.Saunders Co.,Philadelphia,914
-920頁)。好中球減少症(循環好中球の<2×109細胞/リットルの減少)は、
重篤な細菌感染の危険性を非常に増大する(Kaplan,M.E.(1992)、Cecil Textbo
ok of Medicine,J.B.Wyngaarden,L.H.SmithおよびJ.C.Bennett編、W.B.Saunde
rs Co.,Philadelphia,907-914頁)。血小板減少症は、循環血小板レベルの約
<100,000/μlの減少と定義される(Shuman,M.(1992)、Cecil Textbook of Medi
cine,J.B.Wyngaarden,L.H.Smith、およびJ.C.Bennett編、W.B.Saunders Co.,
Philadelphia,987-999頁)。低循環血小板は、根底にある多くの状態の結果で
あり得る。これらの状態としては、例えば、骨髄損傷、化学毒性剤の使用、化学
療法剤あるいは放射線療法剤による骨髄抑制、重金属中毒、溶血尿毒症症候群、
HIV感染症、結核、再生不良貧血、血栓性血小板減少性紫斑病、ならびに特発性
血小板減少性紫斑病、白血病、および骨髄線維症のような免疫疾患が挙げられる
。これらの血小板減少症は、生涯治療が必要な調節されない出血を生じ得る(Sh
uman,M.(1992)、Cecil Textbook of Medicine,J.B.Wyngaarden,L.H.Smith,お
よびJ.C.Bennett編、W.B.Saunders Co.,Philadelphia,987-999頁)。
造血におけるこれらの各障害は、骨髄分化過程のアップレギュレーションをも
たらし得る。このアップレギュレーションは、欠乏細胞集団を再供給する。しか
し、造血におけるいくつかの障害はかなり重篤なので、治療介入が必要とされる
。
広範囲の血球減少症(任意の所定の血液細胞型の循環集団の減少)は、限られ
た数の治療様式によってのみ治療され得る。例えば、好中球減少症の管理は、一
般的に、好中球減少症に至る根底疾患症状の治療に限定される。このような疾患
は、フェルティー症候群、脊髄異形成、脾機能冗進、ある種のガン、および例え
ば毒性化学療法薬あるいは毒素から生じる骨髄損傷を包含する。血液中の好中球
レベルを増加するように特に設計された治療法はほとんど存在しない。これらの
治療法は、以下の(1)から(4)である:
(1)炭酸リチウム治療法(けれども、これは、重大な毒性を有すること
が見出された)
(2)免疫抑制療法(典型的には、好中球減少症が自己免疫性好中球破壊
に起因する患者の治療に対して取り入れられる)
(3)骨髄移植法(成功すれば有効であるが、重大な死に関連する)、お
よび
(4)好中球輸注法(経費がかかり、そして血流中での好中球半減期が非
常に短いので、十分な期間維持されなければ有効ではない)(Kaplan,M.E.(199
2)、Cecil Textbook of Medicine,J.B.Wyngaarden,L.H.SmithおよびJ.C.Benne
tt編、W.B.Saunders Co,Philadelphia,907-914頁)。
血小板減少症の治療は、典型的には血小板注入である。任意のヒト由来血液産
物からの注入のような血小板注入は、感染因子の伝染の重大な危険性を有する。
さらに、血小板輸注は、多重同種異系抗体の形成を引き起し得る。この抗体は、
輸注された血小板を破壊するばかりではなく、患者の内因性血小板集団の破壊を
もたらす。
貧血は、腎不全、肝臓疾患、内分泌異常、パルボウイルス、エプスタインバー
ウイルス、あるいはC型肝炎ウイルスのような、貧血の根底に存在する原因を治
療することにより解決され得る。しかし、赤血球の直接形成は、限られた数の治
療によってしか刺激され得ない。治療は、鉄、ヘミン(鉄供給源)あるいはエリ
スロポエチン、天然または組換え産生造血増殖因子の投与を包含する。鉄療法あ
るいはヘミン療法の有効性は、これらの化合物中の鉄の生物学的利用能が乏しい
こと、および赤血球形成を増強するために要求される高投与量の毒性によって制
限される。さらに、鉄療法は、単純な鉄欠乏によらない貧血には有用ではない。
エリスロポエチン療法は、内因性鉄貯蔵物を動員することに有効ではないようで
あり、単に赤血球前駆細胞の産生を増強するだけであるため制限される。これら
の鉄貯蔵物の動員なしには、赤血球形成は維持され得ない。例えば、慢性腎不全
誘導性貧血の患者を透析するための組換えエリスロポエチンの通常投与は、持続
的な赤血球形成をもたらし、ヘマトクリットを増加させる。しかし、この状況で
継続される赤血球形成は、しばしば鉄欠乏をもたらし、そのためこの治療様式の
7)。
多くの血球減少症治療のための最も期待できる治療様式は、造血増殖因子の投
与に集中する。好中球減少症は、GM-CSFあるいはG-CSF(それぞれに、顆粒球-マ
クロファージコロニー刺激因子および顆粒球刺激因子)の投与により治療されて
きた。上記のように、慢性腎不全による貧血は、エリスロポエチンによって治療
されてきた。
しかし、造血系は複雑であり、持続増強される造血は、増殖因子、阻害剤、お
よびレセプター間の複雑な相互作用である。今日まで、少なくとも20の増殖因子
が認められた(Nicola,N.A.(1993)、Application of Basic Science to Hemato
poiesis and the Treatment of Disease,E.D.ThomasおよびS.K.Carter(編)、
Raven Press,NY)。これは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF
)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-
CSF)、幹細胞因子(SCF)、エリスロポエチン(EPO)、およびインターロイキ
ン1-13(IL1からIL7)を包含する(Quesenberry,P.J.(1990)、Hematology,W.
J.Williams,E.Beutler,A.J.Erslev,およびM.A.Lichtman(編)、McGraw-Hill
,Inc.New York,129〜147頁; Nicola,N.A.(1993)、Application of Basic Sci
ence to Hematopoiesis and the Treatment of Disease,E.D.ThomasおよびS.K
.Carter編、Raven Press,NY)。
これらの多くの増殖因子はクローン化され、組換え発現されている。これらは
、G-CSF(Souza,L.M.,米国特許第4,810,643号)、M-CSF(Clark,S.C.およびW
ong,G.G.,米国特許第4,868,119号)、IL-3(Blasdale,J.H.C.,EP355093)、エ
リスロポエチン(Lin,米国特許第4,703,008号)、幹細胞因子(Zsebo,K.M.ら、
PCT/US90/05548)、およびGM-CSF(Deeley M.ら、米国特許第5,023,676号)を包
含する。これらのみあるいは組み合わせでの投与は、インビトロおよびインビボ
の両方で有意な造血をもたらした(Mertelsmann,R.H.(1993)、Application of B
asic Science to Hematopoiesis and the Treatment of Disease,E.D.Thomasお
よびS.K.Carter(編)、Raven Press,NY; Williams,米国特許第5,032,396号;Z
seboら PCT/US90/05548;Gillis,S.米国特許第5,199,942号;Donahue,R.E.,
米国特許第5,198,417号)。これらの増殖因子のうちエリスロポエチンは、1つ
の細胞系統、赤血球系統に対して選択される造血調節因子として作用する点で異
例である。ほとんどの造血増殖因子は、特異的ではなく、異なる範囲で複数の造
血細胞系に影響を及ぼす。ほとんどの造血増殖因子は、体内の複数の部位で産生
され、多くは局所で作用するが、まれに循環中に認められる(Nicola,N.A.(199
3)、Application of Basic Science to Hematopoiesis and the Treatment of D
isease,E.D.ThomasおよびS.K.Carter(編)、Raven Press,NY)。造血増殖因
子は極少量で存在し、人工培養系および馴化培地以外には検出が困難である。さ
らに、造血増殖因子はもっぱら造血細胞系の増殖および/または分化を調整する
ように作用する。本発明の発明者らは、驚くべきことに、その主要機能が体内で
の酸素輸送であり、赤血球中に高濃度で認められるヘモグロビンが、精製されて
低用量で投与されるとき、造血増殖因子として作用することを見出した。
初期の研究者らは、無細胞ヘモグロビンの投与後に造血の刺激があったことを
示唆した(Hooperら、(1920)Am.J.Physiol.53: 263-282; Naswitis,K.(1922)
Dtsch.med.Wochenschrift 48: 187-188; Furukawa,K.(1922)Klin.Wochensc
hrift 1:723-725; Amberson(1937)Biol.Revs.12:48-86; Ferrari,R.(1932)Ar
ch.Sci.Biologiche 27:25-40; HawkinsおよびJohnson(1939)Am.J.Physiol
.126:326-336)。これらの研究者達は、溶解赤血球から放出されたヘモグロビ
ンが、造血組織に対する直接作用あるいは赤血球形成に要求されるなんらかの物
質の供給、あるいはその両作用による赤血球形成の増強を担う主要な造血因子で
あることを示唆した(Amberson(1937)Biol.Revs.1248-86および本明細書中の参
考文献)。Ambersonら((1949)J.Appl.Physiol.1:469-489)は後に、粗ヘモグ
ロビン溶液の投与後に5人中3人の患者で、網状赤血球数およびヘマトクリット
(両方とも赤血球形成の指標である)の増加を認めた。しかし、初期の研究で使
用された粗ヘモグロビンの投与は、腎障害、過敏症をもたらし、そして死に関わ
り得る(Ambersonら(1949)J.Appl.Physiol.,1:469-489)。ヘモグロビン投与
のこれらの毒性効果は、ヘモグロビン標品中の支質あるいはエンドトキシンのよ
うな夾雑要素、あるいはヘモグロビン自身の特性に起因し得る(DeVenutoら(19
79)Surg.Gyn.Obstet.149: 417-436;Sunder-Plassmannら(1975)Europ.J.
Intensive Care Med.1: 37-42; Feolaら(1990)Biomat.Art.Cell,Art.Org
.18:233-249)。未処理ヒトヘモグロビン四量体は、2つのαサブユニットおよ
び2つのβサブユニットから構成される。四量体は、赤血球外であれば、2つの
α/β二量体に解離し、腎臓内に通過し得、高用量では腎不全を引き起こし得る
。低投与量で投与されたときには、非架橋ヘモグロビンは、非常に速く分台で体
内から清浄される。粗精製赤血球標品からの支質は過敏症を生じさせた。従って
、ヘモグロビン投与が赤血球形成をもたらし得る事実があったとしても、安全お
よび有効に投与され得るヘモグロビン溶液は存在しなかった。
粗ヘモグロビン溶液の投与による赤血球形成の増強は、溶血による貧血が、同
様の程度の失血貧血よりも著しい赤血球過形成および網状赤血球形成に関連する
ことの観察に一致する(Erslev,A.J.(1990)、Hematology,W.J.Williams,E.B
eutler,A.J.Erslev,およびM.A.Lichtman(編)、McGraw-Hill,Inc.New York
,389-407頁)。
1970年代後半に、多くの研究室の研究で、ヘミンによるマウス赤白血病細胞お
よび正常骨髄細胞の治療が、転写レベルでヘモグロビン合成を増大したことが実
証された(Ross,J.およびSautner,D.(1976)Cell 8:513; Dabney,B.J.およびBe
audet,A.L.(1977)Arch.Biochem.Biophys 179:106; Porter,P.N.ら(1979)Exp
.Hematol.7:11)。ヘミンは、酸化ヘムの塩化物塩であり、一方、ヘモグロビ
ンは、各グロビンサブユニットのヘムポケットに還元ヘムを有する。より最近で
は、Monetteおよび共同研究者は、ヘミンが、インターロイキン3と相乗作用して
、インビトロおよびインビボ(マウスでの)において赤血球前駆細胞の増殖を促
進することを示した。一連の研究報告(Holden,S.A.ら(1983)Exp.Hematol.11:
953-960; Monette,F.C.ら(1984)Exp.Hematol.12:782-787; Monette,F.C.お
よびSigounas,G.(1988)Exp.Hematol.16:727-729; Monette,F.C.(1989)Ann.
NY Acad.Sci.554:49-58)で、Monetteは、ヘミンが原始骨髄赤血球前駆細胞の増
殖および/または分化を直接および細胞特異様式で増加させることかできること
を明白に実証した。KappasおよびAbrahamもまた、インビトロにおける赤血球前
駆細胞増殖のヘミン投与との強化作用を観察した(PCT公開PCT/US91/05283)。
しかし、どの研究者も赤血球形成の刺激における遊離ヘモグロビンの役割を調査
も示唆もしなかったし、これらの研究のいずれもが、ヘモグロビン自身が、生物
学的に利用可能な鉄の単なる送達以上に赤血球形成効果を有し得ることを示唆し
なかった。
実際に、ヘモグロビンの赤血球形成効果は、非常に多い量のヘモグロビンが投
与されたときのみに認められた。例えば、Feolaら((1992)Surg.Gyn.Obstet.1
74:379-386)は、高容積のウシヘモグロビン溶液(患者の総血液容積の25%、約1
7〜35グラムのウシヘモグロビン、あるいは体重1kgあたり合計1.75gヘモグロビ
ン)を、血管閉塞あるいは形成不全発症での鎌型赤血球の幼児に投与した。5〜1
3歳の範囲の9人の患者のグループでは、末梢網状赤血球が3日後に3.7±3.9%か
ら49±6.5%に増加し、そして血液ヘモグロビンが1週間後に6.34±2.0 g/dlか
ら10.6±1.3 g/dlに増加した。しかし、Feolaらは、ヘモグロビン治療と同時に
抗生物質および抗マラリア剤を投与し、根底に存在する感染症の治療を介入させ
た場合のみが赤血球形成をもたらし得た。さらに、このような大量での任意のヘ
モ
グロビン(特に非ヒト由来ウシヘモグロビン)の投与により、予測されない、そ
して望ましくない免疫学的影響を生じ得る。Feolaらは、免疫学的反応が、ウシ
由来ヘモグロビン溶液の反復投与の際に進展するかどうかを決定するために、さ
らなる調査が必要であることを言明している。ヘモグロビンの高用量投与は、単
に生物学的に利用可能な鉄の供給源として働き得、従って、貧血の単なる鉄療法
と有意に異ならない。本発明の発明者らは、驚くべきことに、組換えヘモグロビ
ンの低用量投与が、同様に造血を十分にもたらすことを見出した。
発明の要旨
本発明は、治療に有効な量のヘモグロビンの投与を包含する、哺乳動物におけ
る造血を刺激する方法に関する。好ましくは、治療に有効な量のヘモグロビンは
、低投与量ヘモグロビンであって、好ましくは、<約1 gヘモグロビン/kg体重
、より好ましくは、<約100 mgヘモグロビン/kg体重、最も好ましくは、<約10
mgヘモグロビン/kg体重である。
本発明は、ヘモグロビン、好ましくは組換え法によるヘモグロビン、より好ま
しくはE.coli発現由来のヘモグロビン、最も好ましくは変異(ヘモグロビン四
量体の2つのαあるいは2つのβ、あるいは任意のαおよび任意のβのサブユニ
ットを連結している)を含むヘモグロビン、の純粋溶液の投与による哺乳動物で
の造血刺激を提供する。
本発明の別の実施態様は、有効量のヘモグロビンの投与による造血刺激を包含
する、血球減少症を罹患する哺乳動物の治療に関する。
本発明のさらなる実施態様は、有効量のヘモグロビンの投与による造血刺激を
包含する、貧血あるいは貧血様状態を罹患する哺乳動物の治療に関する。
本発明の別の実施態様は、他の造血増殖因子と組み合わた有効量のヘモグロビ
ンの投与による造血刺激または血球減少症の治療を包含する。他の造血増殖因子
には、エリスロポエチン、骨形態形成タンパク質(BMP)、血小板由来増殖因子
(PDGF)、IL-3あるいはIL-11のようなインターロイキン、G-CSFあるいはGM-CSF
のようなコロニー刺激因子、あるいは幹細胞因子が包含されるが、これらに限定
されない。
本発明のさらなる実施態様は、単独または他の造血増殖因子と組み合わせた有
効量のヘモグロビンの投与による、悪液質を罹患した哺乳動物の治療に関する。
本発明の別の実施態様は、ガン細胞の増殖を増強し、そのことにより化学療法
あるいは放射線療法に対するガン細胞の易損性を増大することによる、化学療法
あるいは放射線療法の治療様式の強化作用のための、単独あるいは他の造血増殖
因子と組み合わせた有効量のヘモグロビンの投与である。
本発明のさらなる実施態様は、前駆幹細胞あるいは血液細胞の半ビボ拡大(exv
ivo expansion)に使用される、細胞培養培地への添加物としてのヘモグロビンの
使用を包含する。
本発明のさらなる実施態様は、赤血球前駆細胞の半ビボ拡大を増強するための
、細胞培養培地への添加物としてのヘモグロビンの使用を包含する。
さらなる実施態様では、ヘモグロビンは、血液成分の半ビボ拡大を増強するた
めに、細胞培養培地への添加物として、他の増血因子と組み合わせて使用される
。
さらなる実施態様では、ヘモグロビンは、増血前駆細胞の増殖を増強するため
に、細胞培養培地への添加物として、他の増血因子と組み合わせて使用される。
別の実施態様では、ヘモグロビンは、骨髄損傷後の造血刺激のために、単独あ
るいは他の増殖因子と組み合わせて使用される。
さらなる実施態様では、ヘモグロビンは、貧血を罹患する哺乳動物における造
血刺激のために、単独あるいは他の増殖因子と組み合わせて使用される。
本発明の別の重要な実施態様は、本発明の方法局面で有用な、有効量のヘモグ
ロビンを含有する薬学的組成物である。
本発明の他の特徴および利点は、以下に記載の好ましい実施態様および請求の
範囲から明白である。
他に定義されていなければ、本明細書に使用されている全ての技術用語および
科学用語は、一般的に当業者に理解されるような意味を有する。本明細書に記載
のものと類似あるいは同等のいずれかの方法および材料が本発明の実施あるいは
試験に使用され得るが、好ましい方法および材料がまさに記載されている。他に
記載されていなければ、本明細書で使用あるいは考慮される技術は、当業者に周
知の標準的な方法論である。材料、方法、および実施例は例示であって、限定は
意図されない。
「造血」は、本発明の目的のために、前駆細胞からの血液細胞の形成および発
達、ならびにこれらの血液細胞の前駆細胞の形成過程に関する一般用語である。
血液細胞は、赤血球、網状赤血球、単球、好中球、巨核球、好酸球、好塩基球、
B-細胞、マクロファージ、顆粒球、マスト細胞、血小板、および白血球を包含す
るが、これらに限定されない。前駆細胞は、赤芽球コロニー群形成単位(BFU-E
)、赤芽球コロニー形成単位(CFU-E)、巨核球コロニー形成単位(CFU-Meg)、
顆粒球-マクロファージコロニー形成単位(CFU-GM)、マクロファージコロニー
形成単位(CFU-M)、顆粒球コロニー形成単位(CFU-G)、顆粒球-赤芽球-マクロ
ファージ-巨核球コロニー形成単位(CFU-GEMM)、単球コロニー形成単位(CFU-M
)、好酸球コロニ-形成単位(CFU-Eo)、脾コロニー形成単位(CFU-S)、好塩基
球コロニー形成単位(CFU-B)、多能性幹細胞、全能性幹細胞、骨髄系幹細胞、
リンパ系幹細胞を包含するが、これらに限定されない。「赤血球形成」は、添付
の請求の範囲の目的のために、赤血球形成に導く造血経路の部分として定義され
る。「血小板形成」は、添付の請求の範囲の目的のために、血小板形成に導く造
血経路の部分として定義される。「白血球形成」は、添付の請求の範囲のために
、白血球形成に導く造血経路の部分として定義される。血液循環の他の細胞の形
成過程もまた同様に定義され、接尾辞「poiesis」あるいは「poietic」の使用に
よって区別される。
添付の請求の範囲の目的のために、「有効量のヘモグロビン」とは、欠乏血液
細胞についての治療を必要とする哺乳動物あるいは血液細胞の細胞培養物に投与
されるときに、血液細胞あるいは前駆細胞を増加させるのに十分な量の、天然由
来あるいは組換え産生ヘモグロビンである。前駆細胞の増加は、所定容積あたり
の総細胞数の増加であり得、例えば、細胞培養物では、このような増加は、目的
のコロニー形成単位の統計学的に有意な増加によって測定され得る。一方、血液
循環では、増加は、総細胞数、個々の細胞の大きさ、あるいは、特に赤血球細胞
に対しては、個々の細胞のヘモグロビン含有量の増加を意味し得る。例えば、赤
血球細胞については、この増加は、基準レベル(処置前に測定される目的の細胞
型の大きさあるいは濃度)より少なくとも6%の増加、より好ましくは基準レベル
を10%上回る増加、さらに好ましくは基準レベルを20%上回る増加、最も好ましく
はインビボにおける本質的に正常なレベルへの増加である。細胞のインビトロ培
養物については(例えば、半ビボ拡大、細胞培養など)、増加は、細胞の絶対数
、特定細胞の大きさ、あるいは培養系における細胞増殖速度の増加を意味し得る
。これらの増加は、ヘモグロビン投与の1日以内に生じ得るが、数ヶ月までの反
復および/または継続のヘモグロビン治療投与が行われ得る。造血を増強するた
めに投与されねばならないヘモグロビン量は、当業者の臨床医によって容易に決
定され、根底に存在する血球減少状態の原因、個々の患者の特徴、投与モードな
どに依存する。さらに、「血球減少状態」あるいは「血球減少症」は、任意の循
環血液細胞型の数、容積、機能性、あるいは分布における臨床的に有意な減少と
して定義される。血球減少症は、少なくとも貧血、血小板減少症、好中球減少症
、および白血球減少症を包含することが意図される。
「悪液質」とは、慢性疾患の経過中に生じる一般的な体重損失および消耗を包
含することが意図され、慢性疾患の治療に使用された化学療法あるいは放射線療
法の毒性影響(例えば、3'-アジド-3'-デオキシチミジン(AZT)の毒性効果あるい
はガン状態を治療するために使用された放射線療法)から、あるいは情緒障害の
結果として生じる。
図面の簡単な説明
図1は、AZTの0.01、0.1、1、および10 uMの存在下で増殖した正常BDF1マウス
骨髄の培養物への1 uM、0.01 uM、あるいは0.1 nMのヘモグロビン添加10日後の
細胞培養物中に計数されたBFU-Eコロニー数を示す。
図2は、0.4 U/mlのEPOおよび/または0.01 uMのAZTの存在下で増殖した重症
複合免疫不全症(SCID)マウス骨髄細胞の培養物へのヘモグロビン無添加および
1 uMヘモグロビン添加10日後の両方における、細胞培養物中に計数されたBFU-E
コロニー数を示す。
図3は、AZTの0.01、0.1、1、および10 uMの存在下で増殖したヒト骨髄の培養
物への1 uM、0.01 uM、あるいは0.1 nMのヘモグロビン添加10日後の細胞培養物
中に計数されたBFU-Eコロニー数を示す。
図4は、下記の(1)から(7)のいずれかを投与した3週後のBDF1マウスにおける
赤芽球コロニー群形成単位を示すグラフである:
(1)処置なし、コントロールと示す;
(2)経口AZT、AZTと示す;
(3)経口AZT、および1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、AZT+EPOと示す
;
(4)経口AZT、および1週間に3回の0.5mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+0.5
mg/kg Hbと示す;
(5)経口AZT、および1週間に3回の1 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+1 mg
/kg Hbと示す;
(6)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の0
.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+0.5 mg/kg Hbと示す;
(7)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の1
mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+1 mg/kg Hbと示す。
AZTは、十分なAZT効果を確認するために、実験前5週間、コントロール以外の全
マウスに投与した。
図5は、下記の(1)から(7)のいずれかを投与した3週後の正常BDF1マウスにお
けるヘマトクリット(パーセント)を示す:
(1)処置なし、コントロールと示す;
(2)経口AZT、AZTと示す;
(3)経口AZT、および1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、AZT+EPOと示す
;
(4)経口AZT、および1週間に3回の0.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+0.
5 mg/kg Hbと示す;
(5)経口AZT、および1週間に3回の1 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+1 mg
/kg Hbと示す;
(6)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の0
.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+0.5 mg/kg Hbと示す;
(7)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の1
mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+1 mg/kg Hbと示す。
AZTは、十分なAZT効果を確認するために、実験前5週間、コントロール以外の全
マウスに投与した。
図6は、正常BDF-1マウスにおける細胞数のグラフである。白血球数は黒の斑
点を付けた部分、赤血球数は縞の部分として示す。細胞は、下記の(1)から(7)の
いずれかを投与した3週後に計数した:
(1)処置なし、コントロールと示す;
(2)経口AZT、AZTと示す;
(3)経口AZT、および1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、AZT+EPOと示す
;
(4)経口AZT、および1週間に3回の0.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+0.
5 mg/kg Hbと示す;
(5)経口AZT、および1週間に3回の1 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+1 mg
/kg Hbと示す;
(6)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の0
.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+0.5 mg/kg Hbと示す;
(7)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の1
mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+1 mg/kg Hbと示す。
AZTは、十分なAZT効果を確認するために、実験前5週間、コントロール以外の全
マウスに投与した。
図7は、下記の(1)から(7)のいずれかを投与した3週後のSCIDマウスにおける
赤芽球コロニー群形成単位(BFU-E)数を示すグラフである:
(1)処置なし、コントロールと示す;
(2)経口AZT、AZTと示す;
(3)経口AZT、および1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、AZT+EPOと示す
;
(4)経口AZT、および1週間に3回の0.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+0.
5 mg/kg Hbと示す;
(5)経口AZT、および1週間に3回の1 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+1 mg
/kg Hbと示す;
(6)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の0
.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+0.5 mg/kg Hbと示す;
(7)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の1
mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+1 mg/kg Hbと示す。
AZTは、十分なAZT効果を確認するために、実験前5週間、コントロール以外の全
マウスに投与した。
図8は、SCIDマウスにおける細胞数のグラフである。白血球数は黒の斑点を付
けた部分、赤血球数は縞の部分として示す。細胞は、下記の(1)から(7)のいずれ
かを投与した3週後に計数した:
(1)処置なし、コントロールと示す;
(2)経口AZT、AZTと示す;
(3)経口AZT、および1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、AZT+EPOと示す
;
(4)経口AZT、および1週間に3回の0.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+0.
5 mg/kg Hbと示す;
(5)経口AZT、および1週間に3回の1 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+1 mg
/kg Hbと示す;
(6)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の0
.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+0.5 mg/kg Hbと示す;
(7)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の1
mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+1 mg/kg Hbと示す。
AZTは、十分なAZT効果を確認するために、実験前5週間、コントロール以外の全
マウスに投与した。
図9は、下記の(1)から(7)のいずれかを投与した3週後の正常BDF1マウスの体
重を示す:
(1)処置なし、コントロールと示す;
(2)経口AZT、AZTと示す;
(3)経口AZT、および1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、AZT+EPOと示
す;
(4)経口AZT、および1週間に3回の0.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+0.
5 mg/kg Hbと示す;
(5)経口AZT、および1週間に3回の1 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+1 mg
/kg Hbと示す;
(6)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の0
.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+0.5 mg/kg Hbと示す;
(7)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の1
mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+1 mg/kg Hbと示す。
AZTは、十分なAZT効果を確認するために、実験前5週間、コントロール以外の全
マウスに投与した。
図10は、下記の(1)から(7)のいずれかを投与した3週後のSCIDマウスの体重
を示す:
(1)処置なし、コントロールと示す;
(2)経口AZT、AZTと示す;
(3)経口AZT、および1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、AZT+EPOと示す
;
(4)経口AZT、および1週間に3回の0.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+0.
5 mg/kg Hbと示す;
(5)経口AZT、および1週間に3回の1 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+1 mg
/kg Hbと示す;
(6)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の0
.5 mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+0.5 mg/kg Hbと示す;
(7)経口AZT、1週間に3回の10ユニットのEPO皮下注射、および1週間に3回の1
mg/kgヘモグロビンの静脈注射、AZT+EPO+1 mg/kg Hbと示す。
AZTは、十分なAZT効果を確認するために、実験前5週間、コントロール以外の全
マウスに投与した。
図11は、移植用骨髄採取の前、3週間にわたり、0.5あるいは1.0 mg/kg体重
のいずれかのヘモグロビンの静脈注射、10ユニット/マウスのEPO、EPOおよび0.
5あるいは1.0 mg/kg体重のいずれかのヘモグロビン、あるいはAZTのみで処置さ
れたBDF1から採取された骨髄注入8日後の照射マウスにおいて計数された脾コロ
ニー形成単位数を示すグラフである。AZTは、十分なAZT効果を確認するために、
実験前5週間および処置の間、コントロール以外の全マウスに投与した。
図12は、0.1あるいは1 uM AZTとの7日間のプレインキュベーション、その
後のヘモグロビンあるいはヘモグロビンおよびAZTとの7日間インキュベーショ
ン後にヒト骨髄細胞の液体培養物中で計数された赤血球数を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、本質的に純粋なヘモグロビン、好ましくは組換え産生されたヘモグ
ロビン、最も好ましくは二量体に解離しない組換えヘモグロビンの、治療に有効
な量の投与を包含する、哺乳動物における造血を刺激する方法に関する。
哺乳動物ヘモグロビンは、一般に、2つのαグロビンサブユニット(α1、α2)
および2つのβグロビンサブユニット(β1、β2)から構成される四量体である。
α1およびα2間またはβ1およびβ2間で配列差異は存在しない。サブユニットは
、ファンデルワールス力、水素結合、およびデオキシHb(酸素を有さないヘモグ
ロビン)については塩架橋によって、非共有結合により会合されている。四量体
ヘモグロビンは、α1β1およびα2β2二量体に解離し、これが腎濾過によって血
流から除去されることは公知である。非改変型哺乳動物ヘモグロビン二量体のこ
の腎濾過は、腎不全および死に至らしめ得る。ヘモグロビン二量体は、組織へ容
易に溢出し得、そして循環系から損失され得、従って、「非二量体化(non-dimer
izing)」ヘモグロビンが本発明に好ましいとされ得る。このような二量体ヘモグ
ロビンは、細胞培養物において使用され得る。ヘモグロビンの血管内保持は、例
えば、Hoffman,S.J.およびNagai,K.、米国特許第5,028,588号、Hoffmanら、WO90
/13645、および1991年11月8日に出願されたAnderson,Dらの米国特許出願番号第7
89,179号の教示のように四量体のサブユニットの遺伝子融合によって、あるいは
、1つの四量体内あるいは2つ以上の四量体間での化学架橋によって改良された
(特に、Bonhard,L.およびKothe,N.,米国特許第4,777,244号;Bonhard,K.およ
びBoysen,U.,米国特許第4,336,248号;Bonsen,Pら、米国特許第4,001,
401号、第4,053,590号、および第4,001,200号;Bucci,E.ら、米国特許第4,584,1
30号;Feller,W.ら、米国特許第4,920,194号;Feola,M.ら、PCT公開番号PCT/US
90/07442;Garllck,R.L.ら、PCT公開番号PCT/US91/07155;Ilan,E.ら、欧州特許
公開EP 0361719;Iwasaki,K.ら、米国特許第4,670,417号および欧州特許EP 02064
48号;Kluger,R.およびWodzinska,J.ら、PCT公開番号PCT/CA92/00221および米国
特許第5,250,665号;Kothe,N.ら、米国特許第3,525,272号;Morris,K.C.ら、米
国特許第4,061,736号;Pepper,D.S.およびMcDonald,S.L.、欧州特許公開EP 0459
788;Scannon,P.J.、米国特許第4,473,496号;Sehgal,L.R.ら、米国特許第4,826
,811号;Tye,R.W.、米国特許第4,529,719号;Walder,J.A.、米国特許第4,598,06
4号および第4,600,531号、およびIlan,E.、欧州特許EP 0361719)。これらの形
態いずれもにおいて、ヘモグロビンのα1β1二量体およびα2β2二量体への解離
が阻まれ、よって、タンパク質の血管内保持が増大され、腎毒性が減少し、イン
ビボにおける治療用途に対するヘモグロビンの適性が改良される。
ヘモグロビンは、多くの天然および組換え供給源から容易に入手される。例え
ば、屠殺ウマは非常に多量のヘモグロビン含有血液を産し、近年では通常安価な
肥料として販売されている。さらに、特定の種あるいは系統の動物が、特別の使
用に特に適したヘモグロビンを産生するのであれば、これらの生産動物は、必要
とされる血液を供給するために、この目的のために特に繁殖され得る。トランス
ジェニック動物が、非内因性ヘモグロビンを発現し得るように作出され得る(Lo
gan,J.S.ら、PCT公開PCT/US92/05000)。ヒト血液は、ヒト血液バンクから回収
されるが、一定満了期日後には廃棄されなければならない。
天然および組換え供給源からのヘモグロビンは、種々の技法によって解離を阻
むように化学的に改変されている。これらの方法のいずれもが、本発明に適した
ヘモグロビンを調製するために使用され得る。このような改変の例は、特に、Iw
ashita,Y.ら、米国特許第4,412,989号、Iwashita,Y.およびAjisaka,K.、米国特
許第4,301,144号、Iwashita,K.ら、米国特許第4,670,417号、Nicolau,Y.-C.、米
国特許第4,321,259号、Nicolau,Y.-C.およびGersonde,K.、米国特許第4,473,563
号、Wong,J.T.、米国特許第4,710,488号、Wong,J.T.F.、米国特許第4,650,786号
、Bonhard,K.ら、米国特許第4,336,248号、Walder,J.A.、米国特許第4,598,064
号、
Walder,J.A.、米国特許第4,600,531号、ならびにAjisaka,K.およびIwashita,Y.
、米国特許第4,377,512号において見いだされる。一般的に、ヘモグロビンのこ
れらの化学的改変は、ヘモグロビン分子の1つ以上のアミノ酸残基を、α/β二
量体を化学的に連結する、あるいはヘモグロビンの立体構造を改変する(例えば
、ジホスフォグリセリン酸結合部位での結合による)、あるいは、二量体を連結
して同時に酸素結合特性を改変するいずれかの試薬によって、化学的に改変ある
いは反応させることを包含する。グロビン鎖の化学重合、グリコシル化、および
PEG化(pegylation)、および/またはリポソームあるいは細胞膜中への包膜化の
ような改変もまた考慮される。
動物供給源からの抽出に加えて、所望の天然に存在するかあるいは変異体のヘ
モグロビン(本明細書で定義されている)サブユニットをコードする遺伝子がク
ローン化され得、適切な発現ベクター中に配置され得、そして生物(例えば、微
生物、動物、あるいは植物)、または、培養された動物あるいは植物の細胞また
は組織中に挿入され得る。これらの生物は、標準的な組換えDNA技術を用いて作
出され得る。ヒトαおよびβグロビン遺伝子は、それぞれに、Liebhaberら、Pro c .Natl.Acad.Sci.USA
77;7053-7058(1980)およびMarottaら、Journal of Bi ologlcal Chemistry
,252;5040-5053(1977)によってクローン化および配列決定
された。野生型および変異体のαおよびβグロビンの両方の発現、およびヘモグ
ロビンへの組み立てのための技術は、Hoffman,S.J.およびNagai,K.、米国特許第
5,028,588号およびHoffmann,S.J.ら、PCT/US90/02654、Townes,T.M.およびMcCun
e,S.L.、PCT/US91/09624、Logan,J.Sら、PCT/US92/05000、ならびにRausch,C.W.
およびFeola,M.、欧州特許出願第87116556.9号に記載されている。個々のグロビ
ン鎖はグロビン鎖の改変型と再調和させられ、同様に半合成ヘモグロビンを合成
する(Luisiら、Nature 320;555-556(1986)およびNagaiら、Nature 329;858-860
(1987))。
組換えDNA発現により産生されたヘモグロビンは、それ自身が容易な改変を導
き、感染因子を含まず、無限供給的に産生され得るので、最も好ましい。グロビ
ン遺伝子に対して部位特異的変異誘発の標準技術(Kruseら、Biotechniques 6;3
38-339(1988)およびZollerら、Methods in Enzymology 100;468-500(1987)が、
部位特異的変異誘発技術の最近の例である)を適用することにより、生じるグロ
ビン鎖中のいずれかのアミノ酸あるいはアミノ酸の組み合わせが、付加、欠失、
または変化され得る。いずれものヘモグロビンあるいはそれらのフラグメントが
、生物学的活性を変えるために改変され得る。例えば、改変型ヘモグロビンある
いはヘモグロビンフラグメントは、酸素親和性を変化し得たか、あるいはより有
効な造血増殖因子として働き得る(HoffmannおよびNagai、米国特許第5,028,588
号;Hoffmannら、米国特許出願第07/789,179号)。
添付の請求の範囲の目的のために、「ヘモグロビン」は、1つ以上の四量体で
構成されるヘモグロビンあるいはヘモグロビン様タンパク質を意味する。各四量
体は、以下で構成される:(a)2つのαグロビン様および2つのβグロビン様ポ
リペプチド、(b)1つのジ-αグロビン様および2つのβグロビン様ポリペプチド
、(c)2つのαグロビン様および1つのジ-βグロビン様ポリペプチド、(d)1つ
のジ-αグロビン様および1つのジ-βグロビン様ポリペプチド、(e)1つの融合
α/βグロビン様ポリペプチドおよび別個のαおよびβグロビン様ポリペプチド
、(f)2つの融合α/βグロビン様ポリペプチド、(g)αグロビン様および/また
はβグロビン様グロビンのより高い程度の多量体、例えば、4つのαグロビン様
サブユニット。αあるいはβグロビンの前の接頭辞「ジ-」は、1つのα(ある
いはβ)サブユニットのC末端が、第二のα(あるいはβ)サブユニットのN末端
に、直接あるいは1つ以上のアミノ酸のペプチドリンカーを介して連結されるこ
とを意味し;用語「ペプチド結合」は、両方の可能性を包含することが意図され
る。ジ-αグロビン様ポリペプチドは、好ましくはβグロビンとともに折り畳み
、そしてヘムを取り込んで、機能的なヘモグロビン様タンパク質を形成すること
ができる。ジ-βグロビン様ポリペプチドもまた同様に定義される。
1つのヘモグロビン四量体のグロビンサブユニット(天然あるいは組換え起源
のいずれでもある)は、別の四量体のグロビンサブユニットに架橋あるいは遺伝
子融合され得る。ヘモグロビンは、4つより多いグロビンサブユニットあるいは
ドメインを含む場合に多量体であるといわれる。従って、用語「多量体の」は、
八量体ヘモグロビン(2連結四量体)、および組換えあるいは天然に存在するよ
り高度の多量体を包含する。多量体ヘモグロビンは、係属PCT出願Andersonら、P
CT公開番号PCT/US92/09752の「多量体ヘモグロビンの調製および使用」に教示さ
れている。
「遺伝子融合ヘモグロビン」は、少なくとも1つの「遺伝子融合グロビン様ポ
リペプチド」を有するヘモグロビン様タンパク質であり、後者は、同じかあるい
は異なり得る2つ以上のグロビン様ドメインを含む。
「α/βグロビン様疑似二量体」を提供することもまた可能であり、そこでは
αグロビン様配列が、ペプチド結合によってβグロビン様配列に接続される。こ
の「α/βグロビン様ポリペプチド」ならびにジ-αおよびジ-βグロビン様ポリ
ペプチドは、まとめて「疑似二量体グロビン様ポリペプチド」あるいは「ジグロ
ビン」と称される。さらに、ジ-α、ジ-β、あるいはα/βグロビン様ポリペプ
チドを含むヘモグロビン様タンパク質は、「疑似四量体」である。
ヒトαグロビン様ドメインあるいはポリペプチドは、天然ヒトαグロビンある
いは1つ以上の置換、欠損、あるいは挿入により天然配列とは異なるその変異体
である。この変異体は、ヒトαグロビンと実質的に相同(以後に定義される)で
あり、なお四量体ユニットを形成し得る。βグロビン様ドメインあるいはポリペ
プチドもまた、同様に定義される。動物ヘモグロビンあるいはそれらの変異体の
サブユニット、およびヒトαあるいはβグロビンと実質的に相同であるヒトヘモ
グロビンあるいはそれらの変異体の主要でない成分は、用語「ヒトαあるいはβ
グロビン様ドメインあるいはポリペプチド」によって包含される。αおよびβグ
ロビン様ポリペプチドは、まとめて「グロビン」と称される。便宜的に、用語「
ポリペプチド」は、単位鎖、あるいはより長いポリペプチド鎖のドメインのこと
である。好ましくは、グロビン様ドメインあるいはポリペプチドはヘムを取り込
む能力を有する。
ポリペプチドが実質的にα(あるいはβ)グロビンに相同であるかどうかの決
定では、配列類似性が重要であるが、唯一の基準ではない。配列類似性は、従来
のアルゴリズムにより決定され得、典型的には、最良に一致させるために少数の
ギャップを導入させる。好ましくは、αグロビン様ポリペプチド(あるいはそれ
らのドメイン)は、野生型ヒトαグロビンと少なくとも約75%配列同一性を有す
る。しかし、より少ない配列同一性のポリペプチドもなお、見込みから期待され
るよりも多くの配列同一性を有し、そしてまたαグロビンの特徴的な高次構造お
よび同様の生物学的活性を有する場合、αグロビンと「実質的に相同」であると
考えられる。比較によると、Artemiaのヘム結合ドメインは、一次配列類似性は
せいぜい27%であるが、ミオグロビンと相同であると考えられる。保存残基の周
辺のヘム結合ドメインおよび他のヘモグロビンにおいて保存された(すなわち、
ヘム接触またはらせんセグメントの相互関係の決定に関与する)残基の並置は、Altemia
ドメインが、それぞれ対応のターンを有する従来のグロビンヘリックスA
からH、および種々の保存グロビンファミリー残基を有することを示唆した。さ
らに、セリンプロテアーゼ阻害剤の中には、30%程度の配列相同性のメンバーペ
アが存在する、相同であると認識されたタンパク質ファミリーがある。
ヒトヘモグロビンの何百もの変異体が公知であり、αおよびβの両鎖に影響し
、ヘモグロビンの酸素結合および他の特性に対するこれらの変異の多くの影響は
、公知である。ヒトαおよびβグロビンそれ自身は、84の位置で異なる。グロビ
ン配列の種間の変化は、広範囲に研究されてきた。Dickerson,Hemoglobin Stru cture ,Function,Evolution and Pathology
ch.3(1983)は、1982年に、60の既
知の脊椎動物αグロビンが、141位置のうち23位置に同一残基を有し、一方、66
の脊椎動物βグロビンについては、146位置のうち20位置が同一であると考えら
れることを報告した。60の脊椎動物ミオグロビンは、これもまたグロビンファミ
リーに属し、153位置中27の不変アミノ酸を有する。哺乳動物のみを考慮すると
、αおよびβ両グロビンアミノ酸の約35%が不変である。不変位置は分子の活性
中心(ヘムの割れ目およびサブユニット間接触)の周りに集まる。可変アミノ酸
のうちいくつかは、考慮される種の小さなフラクションのみに対する共通配列か
ら分岐している。ヒトαグロビンと他の相同な脊椎動物αグロビンとの間の全相
違数は、以下の通りである:アカゲザル(4)、ウシ(17)、カモノハシ(39)、ニワ
トリ(35)、ヒトζ(胚)(61)、コイ(71)、およびサメ(88)。無脊椎動物グロビン
については、相同ファミリー内の不一致は、以下を包含する:ヤツメウナギ(113
)、軟体動物(124)、Glycera(アカボウフラ(marine bloodworm))(124)、およびCh ironomus
(ユスリカ(midge))(131)。ヒトβグロビンと他の相同脊椎動物βグロ
ビンと間の相違は、以下を包含する:アカゲザル(8)、ヒトδグロビン(10)、ウ
シ
βグロビン(25)、ウシγグロビン(33)、ヒトγグロビン(39)、ヒトε(胚)グロ
ビン(36)、カモノハシ(34)、ニワトリ(45)、サメ(96)、ヤツメウナギ(123)、軟
体動物(127)、Glycera(125)、およびChironomus(128)。
これらの相違の多くは誤解読(misleading)であり得る−可変アミノ酸は、1つ
のアミノ酸の別の機能的に等価なアミノ酸への「保存的置換」のみを示し得る。
「保存的置換」は、グロビン様ポリペプチド(あるいはドメイン)がヘムを取り
込み、そしてαおよびβグロビンサブユニットと会合して四量体(あるいは疑似
四量体)ヘモグロビン様タンパク質を形成する能力を損なわない置換である。以
下の手段が、保存的置換(および欠失あるいは挿入)を同定するために使用され
得る:
(a)ヘモグロビン変異体におけるデータ(何百も超えるこのような変異
体か存在する);
(b)脊椎動物(特に哺乳動物)αグロビンおよびβグロビン中の配列変
化におけるデータ;
(c)脊椎動物(特に哺乳動物)ミオグロビン中の配列変化におけるデー
タ;
(d)脊椎動物および無脊椎動物グロビン間の、あるいは無脊椎動物グロ
ビン中の、配列変化におけるデータ;
(e)ヒトヘモグロビンおよび他の実質的に相同なタンパク質の三次元構
造における、このような構造における配列変化の影響を推定するための分子モデ
リングソフトウェアと結びつけられたデータ;および
(f)相同タンパク質ファミリーのメンバー間のアミノ酸変化の頻度にお
けるデータ(グロビンファミリーに限定されない)。例えば、SchulzおよびSchi
rmer,Principles of Protein Structure(Springer-Verlag: 1979)の表1〜2、
およびCreighton,Proteins Structure and Molecular Properties(W.H.Freem
an:1983)の図3〜9を参照のこと。
(a)〜(d)からのデータは、同族タンパク質中の変化部位での相当の変異を決定す
るのに最も有用であるが、分子中の他の類似部位での相当の変異を同定するのに
もまた有用であり得る。カテゴリー(f)のデータに基づいて、以下の交換基が同
定され得、その中ではアミノ酸置換は頻繁に保存性である:
I.小さな脂肪族の非極性あるいはわずかに極性である残基−Ala、Ser
、Thr、(Pro、Gly)
II.負帯電残基およびそれらのアミド−Asn、Asp、Glu、Gln
III.正帯電残基−His、Arg、Lys、
IV.大きな脂肪族の非極性残基−Met、Leu、Ile、Val、(Cys)
V.大きな芳香族残基−Phe、Tyr、Trp。
3つの残基はタンパク質構造におけるそれらの特別の役割のために括弧に入れ
てある。Glyは側鎖のない唯一の残基であり、鎖に対してフレキシビリティーを
与える。Proは、異例の幾何学配置を有し、鎖を堅固に束縛する。Cysは、ジスル
フィド結合に関与し得、タンパク質を特定の折り畳みに保持する。Schulzおよび
Schimerが上記のIおよびIIを合わせたことに注目されたい。Tyrは、その水素結
合ポテンシャルのために、Ser、Thrなどとなんらかの関連性を有することにもま
た注目されたい。従って、上述の供給源のいずれかから得られる上述のヘモグロ
ビンのいずれもが、そのヘモグロビンが精製形態であれば、本発明に適している
と考慮される。
ヘモグロビンの精製は、当該分野で周知である技術を使用して達成され得る。
例えば、ヘモグロビンは、過日採取されたヒト赤血球から、赤血球の溶血、その
後のカチオン交換クロマトグラフィー(Bonhard,K.ら、米国特許第4,439,357号
)、アニオン交換クロマトグラフィー(Tayot,J.L.ら、欧州特許公開第0132178
号)、アフィニティークロマトグラフィー(Hsia,J.C.、欧州特許第0231236 B1
号)、微細多孔性膜を通しての濾過(Rabiner,S.F.ら、(1967)J.Exp.Med.126
:1127-1142)、半精製ヘモグロビンの脱酸素溶液加熱による夾雑物の沈澱(Este
p,T.N.、PCT公開PCT/US89/014890,Estep,T.N.、米国特許第4,861,867号)、多
価イオンおよびポリサルフェート添加による夾雑物の沈澱(Simmonds,R.S.およ
びOwen,W.P.、米国特許第4,401,652号)、あるいは亜鉛によるヘモグロビン自身
の沈澱、その後の再懸濁(Tye,R.W.、米国特許第4,473,494号)によって、単離
され精製され得る。ヘモグロビンはまた、他の供給源、例えば、ウシ血液から精
製され得、そして上記のいずれかの方法によって、あるいは微細多孔性膜濾過、
限外濾過、および最終的にイオン交換クロマトグラフィー(Rausch,C.W.およびF
eola,M.、EP 0 277289 B1)によって、あるいは限外濾過のみ(Kothe,N.およびE
ichentopf,B.、米国特許第4,562,715号)によって処理され得る。トランスジェ
ニック動物中で産生された組換えヘモグロビンは、等電点クロマトグラフィーに
よって精製され(Townes,T.M.およびMcCune,PCT公開PCT/US/09624);酵母で産生
されたものは、イオン交換クロマトグラフィーにより精製された(Hoffman、S.J
.およびNagai,K.米国特許第5,028,588号およびHoffmanら、WO90/13645)。組換
えヘモグロビンを精製する特に好ましい方法は、1994年7月22日に出願された係
属特許出願WO95/03322の「ニッケルを含まないヘモグロビンおよびこのようなヘ
モグロビンの生成方法」;1991年11月8日に出願されたWO90/135645の「ヘモグロ
ビンおよびその類似物の細菌および酵母での産生」;および1994年11月14日に出
願されたPCT/US94/13034の「ヘモグロビンの精製」;およびLookerら(1994)Meth
ods in Enzymology 231:364-374に記載されている。
多くの異なる供給源から多くの異なる方法によって、明らかにヘモグロビンが
精製されたが、二量体形成に対してもまた安定化させる純粋ヘモグロビン溶液が
入手可能になったのはごく最近である。1960年代後半における高度に均一化され
た微細および限外濾過膜、および高選択性クロマトグラフィーカラムおよび架橋
化学物質の導入以前は、いわゆる精製あるいは支質非含有ヘモグロビンの全てが
、実際には細胞成分を夾雑し、二量体形成に供せられた(Winslow,W.M.(1992)H emoglobin-based Red Cell Substitutes
,The Johns Hopkins University Press
,Baltimore,242頁)。ヘモグロビン中のこれらの夾雑物、および/または非架
橋あるいは他の安定化ヘモグロビンの二量体化は、悪心、嘔吐、筋痛、腎毒性、
補体活性化、発熱反応、および徐脈に至らせた(Winslow,W.M.(1992)Hemoglob in-based Red Cell Substitutes
,The Johns Hopkins University Press,Baltim
ore,242頁)。適切に精製された化学架橋ヘモグロビンでさえも、なおウイルス
を保有し得、少量の非架橋ヘモグロビンを保持し得、あるいは少量の潜在的に毒
性の非反応架橋リンカーを有し得る。結果として、好ましいヘモグロビンは、組
換え由来のヘモグロビンであり、より好ましくは、二量体形成に対して安定化す
るための変異を少なくとも含むE.coli産生ヘモグロビン、最も好ましくは、二
量体形成に対して安定にするための変異、および1991年11月8日に出願された係
属特許出願WO90/135645の「ヘモグロビンおよびその類似物の細菌および酵母で
の産生」に記載されている酸素親和性を変えるための変異を含むE.coli産生ヘ
モグロビン(rHb1.1と称される)であり、そして1994年11月14日に出願された係
属特許出願PCT/US94/13034の「ヘモグロビンの精製」あるいは1991年11月8日に
出願された係属特許出願WO90/135645の「ヘモグロビンおよびその類似物の細菌
および酵母での産生」に記載されている方法を使用して産生および精製される。
上述のいずれかの供給源由来のおよび上述のいずれかの方法によって精製され
た、上述のいずれかの形態の精製ヘモグロビンは、単独あるいは他の成分と組み
合わせて、下記の(1)から(8)に有用であり得る:
(1)造血を刺激すること;
(2)血球減少症(例えば、貧血あるいは血小板減少症)を罹患する哺乳
動物を治療すること;
(3)悪液質、特に、血球減少症関連の悪液質、例えば、AIDSあるいはAID
SのためのAZT治療に関連した悪液質を罹患する哺乳動物を治療すること;
(4)血球減少症、特に貧血あるいは血小板減少症を罹患する哺乳動物を
治療するために、薬学的組成物中の活性成分として作用させること;
(5)単独あるいは薬学的組成物中の一部としてのいずれかで、他の造血
因子と組み合わせて、血球減少症、特に貧血あるいは血小板減少症を罹患する哺
乳動物を治療すること;
(6)血球減少症関連の悪液質、例えば、AIDSあるいはAIDSのためのAZT治
療に関連した悪液質を罹患する哺乳動物を治療するために、薬学的組成物中の活
性成分として作用させること;
(7)単独あるいは薬学的組成物中の一部としてのいずれかで、他の造血
因子と組み合わせて、血球減少症関連の悪液質、例えば、AIDSあるいはAIDSのた
めのAZT治療に関連した悪液質を罹患する哺乳動物を治療すること;
(8)細胞培養培地への添加物としての一成分として、単独あるいは他の
造血因子と組み合わせて、血液細胞および前駆細胞の半ビボ拡大を増強あるいは
刺激すること。
本発明は、造血刺激、貧血治療、血球減少症治療、悪液質治療、血液細胞の半
ビボ拡大、および細胞培養刺激のためのこのような処方物および薬学的組成物を
提供する。本発明の組成物は、治療を必要とする哺乳動物の治療における使用の
ための従来の固体あるいは液体の薬学的処方物(例えば、錠剤、カプセル、カプ
レット、注射あるいは経口投与用溶液)中に取り入れられ得る。本発明の処方物
は、生理学的および/または薬学的および/または治療的に有効な量の本発明の
ヘモグロビンを、活性成分として単独、あるいは他の活性あるいは不活性因子と
組み合わせて含有する。例えば、非経口治療組成物は、0.1%と90%との間(重量
/容積)のヘモグロビンを含有する滅菌等張生理食塩水を含む。好ましいヘモグ
ロビン溶液は、1%〜15%(重量/容積)のヘモグロビン、最も好ましくは7%〜10%
(重量/容積)のヘモグロビンを含有する。さらに、生理学的に受容可能な溶液
はまた、0〜200 mMの1種以上の生理学的緩衝液、0〜200 mMの1種以上の非還元
炭化水素、0〜200 mMの1種以上のアルコールあるいはポリアルコール、0〜200
mMの1種以上の生理学的に受容可能な塩、および0〜1%の1種以上の界面活性剤
を含有し、そして約pH6.6-7.9である。より好ましくは、生理学的に受容可能な
溶液は、0〜150 mMの1種以上の塩化物塩、0〜50 mMの1種以上の非還元糖、お
よび0〜0.5%の界面活性剤(例えば、TweenTM(ポリソルベート80))を含有する。
さらにより好ましくは、生理学的に受容可能な溶液は、0〜150 mM NaCl、0〜10
mMリン酸ナトリウム、0〜50 mMスクロース、および0〜0.1%界面活性剤(例えば
、TweenTM(ポリソルベート80))、pH6.6-7.8を含有する。最も好ましくは、生理
学的に受容可能な薬学的組成物は、5 mM Naリン酸塩、150 mM NaCl、および0.06
% TweenTM80、pH 6.8-7.2を含有する。他の成分は、必要であれば添加され得る
。他の成分としては、例えば、還元剤、抗酸化剤、抗細菌剤、膠質浸透圧剤(例
えば、アルブミンあるいはポリエチレングリコール)、ならびに他の生理学的に
受容可能な塩および糖が挙げられる。生理学的に受容可能な還元剤は、亜ジチオ
ン酸塩、第一鉄塩(例えば、ピロリン酸第一鉄)、ホウ酸水素ナトリウム、αト
コフェロール、およびアスコルビン酸塩あるいはその塩を包含するが、これらに
限定されない。最も好ましい生理学的に受容可能な還元剤は、アスコルビン酸ナ
トリウムである。代替の適切な処方物は、5〜7%ヘモグロビン(150 mM NaCl、
5 mMリン酸ナトリウム、pH 7.4中)である。
患者に提供される薬剤の治療有効量は、0.0001μMと1mMとの間のヘモグロビン
血中濃度を提供するのに十分である量である。体重1kgあたり1.7 gヘモグロビ
ンより多くを注射したFoelaら(1992)Surg.Gyn.Obstet.174:379-386に比較し
て、本発明の方法は、低用量のヘモグロビン、典型的には、患者の体重1 kgあた
り1 ngから1 gのヘモグロビンで造血を生じさせる。投与量は、0.001〜1000 mg
ヘモグロビン/kg体重、より好ましくは0.01 mg〜100 mgヘモグロビン/kg体重
、最も好ましくは1 mg〜10 mgヘモグロビン/kg体重であり得る。
必要な有効量は、複数のカプセル、錠剤、注射など、あるいはそれらの組み合
わせの投与によって達せられ得るので、各投与量形態の個別用量中に含有される
活性成分の単位含有量が、本質的に有効量を構成する必要はないことが理解され
る。
本発明による各処方物は、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、充填剤、塩
、および当該分野に周知の他の物質を包含する不活性構成成分を付加的に含み得
、その選択は、利用される投与量形態、治療される症状、当業者の決定に従って
達成されるべき特定の目的、およびこのような添加物の特性に依存する。
本発明の薬学的組成物は、経口、エアロゾル、経皮吸収、経粘膜吸収、あるい
は注射のような、任意の従来の手段によって患者に投与され得る。非経口投与が
好ましく、特に静脈内あるいは動脈内投与が好ましい。
ヘモグロビン投与は、分から週の期間で生じ得る;しかし、通常のタイムコー
スは、最大造血効果を得、血球減少症経過を改善するために、数週間のコースに
わたる。典型的な投与レジメは、1週から10週であり得、より好ましくは4週か
ら9週であり得、最も好ましくは6週から8週であり得る。
ヘモグロビン投与量は、1週につき1〜7回、より好ましくは1週につき2〜
5回、最も好ましくは1週につき3回の頻度で投与され得る。
本発明の方法は、哺乳動物の血球減少症の治療に有用である。血球減少症は、
循環血液細胞のいずれかが減少する状態である。各血球減少症は、循環血液細胞
レベルの種々の減少により特徴づけられ、広範囲に定義され得る。例えば、用語
「貧血」は、血液が、赤血球、ヘモグロビン、あるいは総容積において欠乏状態
にある状態のことである。貧血は、ヘモグロビン(g/dl)、ヘマトクリット(赤
血球により占められる血液容積パーセント)、あるいは赤血球数(赤血球数×106
/μl)のいずれかと「正常」値との比較によって、通常決定される。これらの
正常値は、健常集団における値の平均値±2標準偏差として任意に設定される(
表1)。
しかし、これらの正常範囲は、高地住居者、および人種および性別の差異に関し
て調整されなければならない。貧血は、脱水によって隠され得る。ここでは、血
漿容積の減少により見かけ上正常なヘモグロビン濃度が得られる。そして同様に
、貧血は、血漿容積増加によって模倣され得る(例えば妊娠中)。従って、貧血
の診断は、指針としての公表値を使用して行われ得るが、当該分野の臨床医によ
って決定されなければならない。同様に、好中球減少症および血小板減少症のよ
うな他の血球減少症も、定義するのは困難である。例えば、好中球減少症は一般
的に、循環好中球数が2.0×109/リットル未満であるとき生じると考えられるが
、しかし、この正常範囲は、数種集団群においては減少する。血小板減少症は、
血小板数<100,000/マイクロリットルとして定義される。さらにまた、この数
は血小板減少症診断の指針であって、最終診断は、当該分野の臨床医によって行
われなければならない。
血球減少症は、一連の根底に存在する状態の結果として生じ得る。例えば、多
くのAIDS患者は、疾患自身の経過または疾患の管理に必要とされる治療介入の結
果として貧血を発症する。AIDS患者への慢性AZT投与は、抗代謝物として作用し
、正常な造血を崩壊させる。本発明は、AZT治療で誘発された血球減少症を回復
させ、そしてさらに、AZT治療、AIDS疾患、あるいは消耗に至る他の疾患のいず
れかに起因する付随悪液質を軽減するのに、特に有用である。
慢性腎不全では、エリスロポエチン産生が不十分であり、周縁赤血球減少症お
よび症徴慢性貧血に至る。慢性腎不全による貧血の透析患者への組換え造血増殖
因子エリスロポエチンの通常投与は、持続性の赤血球形成およびヘマトクリット
増加をもたらす。しかし、この疾患状態におけるエリスロポエチンの継続治療は
鉄欠乏を生じ、このためこの治療様式の長期有効性が制限され得る。経口あるい
は静脈鉄投与療法は、これらの鉄貯蔵物を補給し得るが、透析中の何人かの貧血
慢性腎不全患者は、経口鉄を吸収し得ないか、あるいは副作用により摂取できな
い。静脈鉄デキストラン投与がこれら特定の屈折性症例において試みられ得るが
、このような投与はアナフィラキシーショックを導き得る。
血球減少症に至り得る他の疾患は、肝疾患、内分泌障害(例えば甲状腺低下症
)、脊髄異形成症候群、鉄芽球性貧血、鎌型赤血球貧血、サラセミア、特定の薬
物、環境、あるいは工業毒性、自己免疫障害(例えば慢性関節リウマチ)、ガン
、化学療法および放射線療法などを包含するが、これらに限定されない。これら
の血球減少症のいずれもが、本発明のヘモグロビンの低用量投与によって軽減さ
れる。
さらに、本発明は、精製ヘモグロビン溶液が培養培地に添加されるとき、血液
成分の半ビボ拡大を増強するために有用である。細胞培養へのヘモグロビンの添
加は、上記の薬学的組成物の一部あるいは異なる緩衝溶液の一部としてであり得
る。血液成分、特に赤血球細胞系の半ビボ拡大は、まず骨髄、循環血液、脾臓、
あるいは胎児肝臓から前駆細胞を採取し、その細胞を適切な培地で生育し、そし
て適切な増殖因子を用いて分化および増殖を誘導することにより実行され得る(
Tsukamoto,A.ら、米国特許第5,061,620号;Palsson,B.O.ら、PCT公開PCT/US93/0
1803;Emerson,S.G.ら、PCT公開PCT/US91/09173;Boyse,E.A.ら、PCT公開PCT/US
88/04044;Shih,C.-C.、PCT公開PCT/US93/01852;Sardonini,C.ら、PCT公開PC
T/US93/02043)。採取および拡大後、造血細胞は、例えば骨髄移植後に、患者に
再注入され得るか、あるいは造血細胞は、サラセミアあるいは鎌型赤血球貧血の
ような、遺伝的誤差を修復するように遺伝的に調整され得、続いて患者に再注入
され得る。増殖因子は相乗様式で作用するので、ヘモグロビンを一連の可能な増
殖因子に添加することにより、以前に可能であったよりも、より多くの系でより
大きな細胞増殖および分化が可能になる。
本発明はまた、化学療法あるいは放射線療法の治療様式を強化するために有用
である。増殖因子は、白血球前駆細胞をサイクル中に誘導し、化学療法剤あるい
は放射線療法により感受性にするために使用されてきた(Mertelsmann,R.H.(199
3)、Application of Basic Science to Hematopoiesis and the Treatment of D
isease,E.D.ThomasおよびS.K.Carter(編))。化学療法あるいは放射線療法の介
入前、同時、あるいは直後のいずれかにおけるガン患者のヘモグロビンによる治
療は、細胞毒性因子が化学療法あるいは放射線療法の形態のいずれであろうとも
、細胞毒性因子の致死性を増大する。
さらに、本発明は、ヘモグロビンの単独あるいは他の増殖因子との組み合わせ
ての培養培地への添加により、培養中の前駆細胞の増殖の増強に有用である。こ
の方法によって増殖されたこれらの前駆細胞は、次に、診断、さらなる増殖因子
の産生、およびインビボでの造血の理解のために有用なモデル系の開発に使用さ
れ得る。前駆細胞の増殖は、当該分野で周知であり、Tsukamoto,A.ら、米国特許
第5,061,620号;Palsson,B.O.ら、PCT公開PCT/US93/01803;Emerson,S.G.ら、PC
T公開PCT/US91/09173;Boyse,E.A.ら、PCT公開PCT/US88/04044;Shih,C.-C.、PC
T公開PCT/US93/01852;Sardonini,C.ら、PCT公開PCT/US93/02043;Cipolleschi,
M.G,ら、(1993)Blood 82:2031-2037、Abraham,N.G.ら(1991)Acta Haematol.86:
189-193;Chertkov,J.L.ら、(1992)J.Lab.Clin.Med.119:412-419に記載され
るようにして達成され得る。
本発明はまた、付加的な造血因子の使用を考慮する。これらは、精製ヘモグロ
ビンと組み合わせて投与されるとき、いずれの治療化合物のみよりもより大きな
程度で造血を刺激する。このような付加的な造血因子の例は、顆粒球-マクロフ
ァージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CS
F)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、幹細胞因子(SCF)、エリスロポエチ
ン(EPO)、およびインターロイキン1-13(IL-1からIL13)を包含するが、これ
らに限定されない(Souza,L.M.、米国特許第4,810,643号;Clark,S.C.およびWon
g,G.G.、米国特許第4,868,119号;Blasdale,J.H.C.、欧州特許第EP 355093号;Q
uesenberry,P.J.、Hematology,W.J.Williams,E.Beutler,A.J.Erslev,およびM.
A.Lichtman(編)1990、McGraw-Hill,Inc.New York,129〜147頁;Lin、米国特許
第4,703,008号;Zsebo.K.M.ら、PCT/US90/05548;Nicola,N.A.(1993)、Applicat
ion of Basic Science to Hematopoiesis and the Treatment of Disease,E.D.T
homasおよびS.K.Carter(編)、Raven Press,NY;Deeley M.ら、米国特許第5,023
,676号)。
他の付加的な造血因子と組み合わせた精製ヘモグロビンの投与は、最大治療効
果を達成するために、同じ投与処方物にまとめて、あるいは分けて個別に投与さ
れ得る。至適投与レジメは、当該分野の臨床医によって決定され得る。
特定の実施態様の上述の記載は、本発明の一般的な性質を明示するので、他者
は、最新の知識を適用することにより、一般的な概念から逸脱することなく、こ
のような特定の実施態様のような種々の適用を容易に改変および/または調整し
得、従って、このような調整および改変は、開示の実施態様の範囲内に包含され
るべきであり、そして包含されることが意図される。本明細書に使用されている
語法および用語は、記述を目的とし限定を目的としないことは理解されるべきで
ある。
実施例
以下の実施例は、本発明の特定の実施態様を記載することによって提供される
が、いかなるようにも本発明の範囲を限定することは意図されない。
実施例1
精製組換えヘモグロビンでの処置による正常(BDF1)マウスから採取した
赤芽球コロニー群刺激単位(BFU-E)の増殖の増強
1993年7月23日に出願された係属特許出願番号第08/097273号「ニッケル非含有
ヘモグロビンおよびこのようなヘモグロビンを生成する方法」に記載のように、
ヘモグロビンを調製および処方した。骨髄は、正常BDF1マウス(8〜12週齢、Cha
rles River,Wilmington,DE)から採取した。これらの研究において使用した骨
髄培養方法は、以前に記載されており(Abraham,N.ら(1989)Blood 74:139-144)
、当該分野で周知である。簡単には、骨髄赤血球コロニー(赤芽球コロニー群形
成単位−BFU-E)を、0.4 U/mlエリスロポエチンを含有する1.12%メチルセルロー
ス中で5日間増殖させた。精製組換えヘモグロビンの3つの濃度(1uM、10nM、
および0.1nM)を、0.01、0.1、1、および10 uMのAZTで処理した異なる培養物に
添加した。全ての培養は、3点平行で行い、全般に9〜12回の測定を各ポイント
について行った。BFU-E増殖を3日目に評価した。
図1に見られるように、AZTは、正常BDF1マウスにおいて、用量依存様式でBFU
-Eコロニー形成を阻害する。1 uM濃度のヘモグロビンは、1 uM未満のAZT濃度で
これらの効果を逆転し得た(図1)。10および100 uMに等しいかあるいはそれよ
り濃いヘモグロビン濃度では、このアッセイで測定可能なBFU-Eレベルを超える
増加を生じたので、従って報告していない。
実施例2
精製組換えヘモグロビンによるBFU-E増殖の増強-SCIDマウス骨髄
骨髄単核BFU-Eを、SCIDマウス(重症複合免疫不全症マウス、8〜12週齢、Taco
nic Farms,Germantown,NY)から採取し、実施例1において上述したように増
殖させた。1 uM濃度のrHb1.1が、0.1 uM AZTの効果を逆転し得た(図2)。
実施例3
精製組換えヘモグロビンによるBFU-E増殖の増強−ヒト骨髄培養物
実施例1に記載の実験を、正常ボランティアから採取した正常ヒト骨髄を利用
した以外は、正確に実施例1に記載のように実施した。実施例1に記載の実験に
おけるように、培養系に添加された1 uM組換え精製ヘモグロビンは、1 uM未満の
AZT濃度のAZT毒性を逆転し得た。このインビトロ実験の結果を図3に示す。
実施例4
インビボにおけるBFU-E赤血球形成の増強−正常(BDF-1)マウス
骨髄中のBFU-E細胞は、赤血球の初期前駆細胞である。BFU-E細胞に対するrHb1
.1の効果を、適切な処置を施した後のマウス骨髄におけるBFU-Eを測定すること
により評価した。正常BDF1マウスを、飲料水中でAZT(2.5mg/ml)を5週間投与
することにより貧血にした。正常コントロール(正常BDF1マウス8〜12週齢、Cha
rles River,Wilmington,DE)を、同期間、飲料水にAZTを添加しないで飼育し
た。組換えヒトエリスロポエチン(EPO、Toyoba,Osaka Japan)あるいは組換え
ヘモグロビンのいずれかによる処置、またはそれらの2つの処置の組み合わせに
よる処置を、AZTに曝してから5週後に開始した。マウスには、3週間の治療薬
投与スケジュールの間AZTを継続投与した。体重および血液指標は、規定の方法
によって決定した。1グループ当たり4〜12匹のマウスからなるマウスのグルー
プを使用した。これらのグループは以下の通りである:
(1)正常コントロール、
(2)AZT処置動物
(3)AZT/EPO(10 U/マウス)
(4)AZT/EPO/0.5 mg組換え精製ヘモグロビン/kg体重
(5)AZT/EPO/1.0 mg組換え精製ヘモグロビン/kg体重
(6)AZT/0.5 mg組換え精製ヘモグロビン/kg体重
(7)AZT/1.0 mg組換え精製ヘモグロビン/kg体重。
マウスにエリスロポエチンを与える場合、10ユニットの組換えヒトエリスロポエ
チン(Toyobo,Osaka,Japan)(約500 U/kg、ヒトにおけるAZT誘発貧血の治療
に使用されるエリスロポエチンの通常投与量と等価)を1週間に3回皮下投与し
た。またマウスには、ヘモグロビンを、1週間に3回、0.5あるいは1.0 mg/kgの
いずれかの用量で静脈内で与えた。組換えヘモグロビン溶液は、リン酸緩衝化生
理食塩水、pH 7.4中で調製した。
5週間後、AZT処置マウスは、顕著な貧血、血小板減少症、および白血球減少
症を示した。ヘモグロビン投与は、BFU-Eの増加をもたらした(図4)。図4に
見られるように、組換えヘモグロビンは、AZT処置の正常BDF1マウスにおいて、B
FU-E数を有意に増加させた。この細胞型の刺激は、これらのモデルにおいてEPO
によっては見られなかった。この知見は、AZT処置後の初期赤血球前駆細胞に対
するEPOの最小効果を示す以前の研究(Abraham,N.(1989)Blood 74:139-144)と
一致する。
実施例5
精製組換えヘモグロビンでの処置による
インビボにおけるヘマトクリットの増加−正常(BDF-1)マウス
ヘマトクリット(充填赤血球容積の全血容積に対する割合)を、実施例4に記
載のように処置したマウスにおいて測定した。ヘモグロビンは、10 U/マウスで
投与されたEPO単独よりも、ヘマトクリット抑制のより実質的な逆転を生じた。
そしてこの2つの因子を一緒に添加したとき、ヘモグロビンは、外因的に投与さ
れたEPOとは独立して作用するようであった。図5に見られるように、赤血球形
成の増強は、ヘマトクリットの増加として表された。
AZT誘発貧血マウスでは、ヘマトクリットは約20%にまで減少した;5 mmol Hb/
L RBC、あるいは0.005 mmol Hb/ml RBCが存在し、マウスの総血液容積が3 mlで
あると仮定すると、約20%(0.6 ml)の血液容積が赤血球である。この0.6 mlのR
BCは、0.003 mmolのHbあるいは0.012 mmolのFeを含有する。総量で9 ug Hb/g 体
重を投与し、マウスの体重が200 gであると仮定すると、マウスは、総量で0.028
umolのHbあるいは0.1125 umolのFeを受容した。しかし、Hbのこの投与は、ヘマ
トクリットの約40%までの予想外の上昇をもたらした(最も優れない場合におい
て、AZT+Hb、1.0)。ヘマトクリットは、20%から40%への約二倍になり(総血液
容積が3 mlと仮定すると、0.6 mlから1.2 ml)、これは、3 umlのHbの合成を必
要とし、120 umolのFeを必要とする。従って、ヘモグロビンは、単に鉄供給源と
して作用したのではなく、実際に赤血球形成因子として作用した。
実施例6
精製組換えヘモグロビンでの処置による
インビボにおける細胞数の増加−正常(BDF-1)マウス
白血球数および赤血球数の両方を、実施例4に記載のように処置したマウスに
おいて測定した。ヘモグロビンは、10 U/マウスで投与されたEPO単独よりも、血
球数抑制のより実質的な逆転を生じた。そしてこの2つの因子を一緒に添加した
とき、ヘモグロビンは、外因的に投与されたEPOとは独立して作用するようであ
った。図6に見られるように、この造血増強は、両細胞型の数の増加として表さ
れた。このことは、低投与量ヘモグロビン投与の広範囲に及ぶ造血効果を示す。
実施例7
インビボにおけるBFU-E赤血球形成の増強−SCIDマウス
骨髄中のBFU-E細胞は、赤血球の初期前駆細胞である。BFU-E細胞に対するrHb1
.1の効果を、適切な処置を施した後のマウス骨髄におけるBFU-Eを測定すること
により評価した。SCIDマウスを、飲料水中でAZT(2.5 mg/ml)を5週間投与する
ことにより貧血にした。SCIDマウスは、AIDSにおける感染因子HIV-1に感染した
ヒトに認められる免疫不全症のモデルとして、以前に使用されている(Aldrovan
di,G.M.ら(1993)Nature 363:732-6)。正常コントロール(正常BDF1マウス8〜
12週齢、Charles River,Wilmington,DE)を、同期間、飲料水にAZTを添加しな
いで飼育した。組換えヒトエリスロポエチン(EPO、Toyoba,Osaka Japan)ある
いは組換えヘモグロビンのいずれかによる処置、またはそれらの2つの処置の組
み合わせによる処置を、AZTに曝してから5週後に開始した。マウスには、3週
間の治療薬投与スケジュールの間AZTを継続投与した。体重および血液指標は、
規定の方法によって決定した。1グループ当たり4〜12匹のマウスからなるマウ
スのグループを使用した。これらのグループは以下の通りである:
(1)正常コントロール、
(2)AZT処置動物
(3)AZT/EPO(10 U/マウス)
(4)AZT/EPO/0.5 mg組換え精製ヘモグロビン/kg体重
(5)AZT/EPO/1.0 mg組換え精製ヘモグロビン/kg体重
(6)AZT/0.5 mg組換え精製ヘモグロビン/kg体重
(7)AZT/1.0 mg組換え精製ヘモグロビン/kg体重。
マウスにエリスロポエチンを与える場合、10ユニットの組換えヒトエリスロポエ
チン(Toyobo,Osaka,Japan)(約500 U/kg、ヒトにおけるAZT誘発貧血の治療
に使用されるエリスロポエチンの通常投与量と等価)を1週間に3回皮下投与し
た。またマウスには、ヘモグロビンを、1週間に3回、0.5あるいは1.0 mg/kgの
いずれかの用量で静脈内で与えた。組換えヘモグロビン溶液は、リン酸緩衝化生
理食塩水、pH 7.4中で調製した。
5週間後、AZT処置マウスは、顕著な貧血、血小板減少症、および白血球減少
症を示した。投与量0.5あるいは1 mg/kg体重で投与したヘモグロビンは、SCID
マウスにおいてBFU-Eの増加をもたらした(図7)。
実施例8
精製組換えヘモグロビンでの処置による
インビボにおける細胞数の増加−SCIDマウス
白血球数および赤血球数の両方を、実施例7に記載のように処置したマウスに
おいて測定した。ヘモグロビンは、10 U/マウスで投与されたEPO単独よりも、血
球数抑制のより実質的な逆転を生じた。そしてこの2つの因子を一緒に添加した
とき、ヘモグロビンは、外因的に投与されたEPOとは独立して作用するようであ
った。図8に見られるように、この造血増強は、両細胞型の数の増加として表さ
れた。このことは、低投与量ヘモグロビン投与の広範囲に及ぶ造血効果を示す。
実施例9
AZT誘発体重減少(悪液質)に対するヘモグロビンの影響−正常マウス
造血抑制に加えて、AZT毒性の別の発現は体重減少(悪液質)である。これは
、しばしばAIDS患者で発現される所見である。悪液質は、AIDSの臨床結果に関す
る確実な予後指標と考えられる(Huangら、(1998)Clin.Chem.,34:1957-1959)
。体重を、実施例4に記載のように処置したマウスについて測定した。図9に見
られるように、AZTは、BDF-1マウスにおいて有意な体重抑制を誘発し、一方ヘモ
グロビンのみが、このAZT毒性の発現を軽減し得た。
実施例10
AZT誘発体重減少(悪液質)に対するヘモグロビンの影響−SCIDマウス
造血抑制に加えて、AZT毒性の別の発現は体重減少(悪液質)である。これは
、しばしばAIDS患者で発現される所見である。悪液質は、AIDSの臨床結果に関す
る確実な予後指標と考えられる(Huangら、(1998)Clin.Chem.,34:1957-1959)
。体重を、実施例7に記載のように処置したマウスについて測定した。図10に
見られるように、AZTは、SCIDマウスにおいて有意な体重抑制を誘発し、一方ヘ
モグロビンのみが、このAZT毒性の発現を軽減し得た。
実施例11
脾コロニー形成単位(CFU-S)決定
ヘモグロビンが、方向付けられた赤血球前駆細胞(CFU-E、BFU-E)とは異なる
レベルで作用するかどうかを評価するために、本発明者らは、極初期の方向付け
られていない前駆細胞である脾コロニー形成単位(CFU-S)に対するヘモグロビ
ンの影響を評価した。これらの細胞は、本質的に赤血球、骨髄、およびリンパ球
系統を生じ、致死量照射された動物の減損骨髄を再居住させることが示されてい
る(van Zantら、(1984)J.Exp.Med.159:679-685;Reincke,U.ら(1985)Exp.
Hematol.13:545-553)。減損骨髄の再居住は、CFU-Sによって示される多能性幹
細胞の存在の指標である。脾コロニーは、8.5 Gy照射マウスに、正常マウス由来
、あるいは実施例4に記載のようにEPO、ヘモグロビンによる処置、あるいは
その組み合わせ処置によってさらに処置したAZT処置マウス由来の2×105骨髄細
胞を静脈注射した8日後に、計数した。図11に見られるように、5および10 mg
/kgのヘモグロビンは、致死量照射され、続けてAZTに加えて精製組換えヘモグロ
ビンを与えたマウス由来の骨髄を注入したマウスにおいて形成されるCFU-S数を
有意に増加した。より低い用量レベルである0.5 mgヘモグロビン/kg体重は、よ
り高い用量ヘモグロビンよりも良好に作用した。このことは、最大効果は、予想
外にも低用量であることを示唆する。理論に束縛されないが、ヘモグロビンが全
血循環の再居住を刺激する能力は、低レベルヘモグロビンの投与が、直接前駆細
胞において作用するか、あるいは間接に造血を増強することを示す。
実施例12
ヒト由来赤血球液体懸濁培養での
AZT誘発毒性に対する組換えヘモグロビンの影響
ヒト骨髄細胞は、健常ヒトボランティアの背部腸骨稜から吸引によって採取し
た。単核細胞(MNC)を、Ficoll-Histopaqueによるヘパリン処理骨髄試料の濃度勾
配遠心分離によって単離した。単離MNCを、10%胎児ウシ血清(FBS)を添加した
ハンクスの平衡塩類溶液中で洗浄した(ハンクスの平衡塩類溶液およびFBSは、
両方ともGibco/BRL(Grand Island,New York)から購入した)。
約4.0×107MNCを、T-25フラスコ中で少なくとも2時間、5% CO2、37℃で、最
少培地(McCoy's 5A培地および栄養素、Gibco/BRL)中でインキュベートし、単
球およびマクロファージを接着させた。造血前駆細胞(CD34+)の濃縮のために
、単核非接着細胞をペレット化し、そして2% FBSおよび0.1% アジ化ナトリウム
を添加した1 mlの冷却リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に再懸濁し、続いて、2
00μlの抗CD34モノクローナル抗体を添加した。氷上暗所における1時間のイン
キュベーション後に、細胞を冷却PBSで2回洗浄して過剰の抗体を除去し、5 ng/
mlのヨウ化プロピジウム(propidium iodide)を含有するMcCoy's 5A培地に栄養
素を加えたもの3 ml中に再懸濁した。次に、CD34+細胞をFACStar instrument(B
ecton-Dickson,Mountain View,California)を用いる細胞選別によりポジティ
ブ選択した。トリプトファンブルー染色によって測定したところ、CD34+細胞の
純度
は99%を超え、生存率は96%を超えた。
細胞は、15% FBSおよびα-メルカプトエタノール(0.1 mM)を富化した補充Mc
Coy's 5A培地中で培養した。精製CD34+細胞(1 ml当たり1.7×104〜2.0×104細
胞)を、ヒト組換えエリスロポエチン(2 U/ml)、幹細胞因子(SCF)(7 ng/ml
)、およびヒト組換えIL-3(100 U/ml)、ならびに0.1uMあるいは1 uMのいずれ
かのAZTの存在下で、24ウエル培養皿中で培養した。7日のインキュベーション
後、これらの細胞を洗浄し、そしてAZT非含有培地、10-6M組換えヘモグロビン、
10-6M組換えヘモグロビン/0.1 uM AZT、あるいは10-6M組換えヘモグロビン/1
uM AZT中に再懸濁した。さらに14日のインキュベーション後に、個々のウエルか
ら生存細胞を計数して、表現型を判定した。全ての実験は3点平行で行った。14
日間培養した細胞の生存率は、トリプトファンブルー染色によって測定したとこ
ろ、95%を超えた。
最初の単離非接着MNCおよび14日インキュベーション後の培養細胞を、フロー
サイトメトリーにより分析した。IgG1-フルオレセインイソチオシアネート(FIT
C)、およびIgG2b-フィコエリトリンを、正確な分析を確実にするために、負の
コントロールとして使用した。細胞(105)を、2% FBSおよび0.1 %アジ化ナトリ
ウムを含有する冷却PBS 50 ml中で、4℃で暗所において、5μlグリコホリンA-F
ITC(赤血球マーカー)とともにインキュベートした。60分間のインキュベーシ
ョン後、細胞をPBSで2回洗浄した。次に、細胞を、1%パラホルムアルデヒドを
含有するPBSに再懸濁し、二重蛍光分析用の溶解プログラムを使用することによ
り、FACStar instrument(Becton-Dickinsin)を用いて分析した。
図12に見られるように、AZTは、液体懸濁培養におけるヒト赤血球増殖を、
用量依存様式で阻害した。1 uMのヘモグロビンは、これらの影響を軽減し得た。
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