【発明の詳細な説明】
レトロウィルス遺伝子療法ベクター及びそれに基く治療方法
1.序 説
本発明は、遺伝子治療ベクター及び方法に向けられ、そして広範囲の哺乳類標
的細胞中に対象のいづれかの遺伝子を効果的に伝達することができる新規の種々
の組換えレトロウィルスベクターを提供する。本発明の組換えレトロウィルスベ
クターにより形質導入される細胞は所望の遺伝子生成物を長期間、高いレベルで
発現することができる。従って、そのような形質導入された細胞は、一定のタン
パク質又は他のポリペプチドの生成を永久的に増大し又は付加することが治療的
に所望される広範囲の種類の疾病の処置に有用である。選択可能マーカーを欠い
ている本発明の好ましいベクターが、記載されており、そしてそれは、マーカー
遺伝子生成物、たとえば抗生物質の同時生成が所望されないか又は許容できない
疾病の処置における体細胞遺伝子療法のために特に有用である。
2.発明の背景
哺乳類細胞を遺伝子的に構築するための多くの方法が存在する。多量の種々の
ポリペプチドを生成する必要性及び細胞における種々の遺伝子欠損を是正する必
要性を包含するいくつかの理由のために哺乳類細胞を遺伝子的に構築することに
多大の興味が存在する。前記方法は外来性遺伝子の発現の効率、レベル及び全遺
伝子構築工程の効率のような要因に関してお互い劇的に異っている。
特に有用であることがわかっている哺乳類細胞を遺伝子的に構築する1つの方
法は、レトロウィルスベクターによる。レトロウィル
スベクター及びそれらの使用は、多くの出版物、たとえばMann,など.、Cell 3
3:153-159(1983)及び Cone and Mulligan,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81 : 6349
-6353(1984)に記載されている。レトロウィルスベクターは、レトロウィルスを
遺伝子的に操作することによって生成される。
レトロウィルスは RNAウィルスであり;すなわち、そのウィルスゲノムは RNA
である。しかしながら、このゲノム RNAは、形質導入された細胞の染色体 DNA中
に安定して且つ効果的に組込まれる DNAコピー中に逆転写される。この安定して
組込まれた DNAコピーは、プロウィルスとして言及され、そしていづれか他の遺
伝子として娘細胞により受け継がれる。図1に示されるように、野生型レトロウ
ィルスゲノム及びプロウィルス DNAは3種の Psi遺伝子、すなわち gag, pol及
び env遺伝子を有し、それらは2つの長い末端反復(LTR)配列を端に有する。 ga g
遺伝子は内部構造(ヌクレオカプシド)タンパク質をコードし; pol遺伝子は
RNA指図された DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)をコードし;そして env遺伝子
はウィルスエンベロープ糖タンパク質をコードする。5′及び3′LTR は、ビリ
オン RNAの転写及びポリアデニル化を促進するように作用する。
ゲノムの逆転写(tRNAプライマー結合部位)及び粒子中へのウィルス RNAの効
果的なエンキャプシド化(Psi部位)のために必要な配列が5′LTRに隣接する。Mu
lligan,R.C.,Experimental Manipulation of Gene Expression,M.Inoue(ed)
,155-173(1983);Mann,R.,など.、Cell,33:153-159(1983); Cone,R.D.
and R.C.Mulligan,Proceedings of the National Academy of Sciences ,U.S.
A.,81:6349-6353(1984)。
エンキャプシド化(又は感染性ビリオン中へのレトロウィルス RNAのパッケー
ジング)のために必要な配列がウィルスゲノムに不在
である場合、ゲノム RNAのエンキャプシド化を妨げる cis作用性欠損がもたらさ
れる。しかしながら、その得られる変異体は、すべてのビリオンタンパク質の合
成をまだ指図することができる。Mulligan及び協同研究者は、それらの Psi配列
が欠失されているレトロウィルスゲノム、及び染色体中に安定して組込まれた変
異体ゲノムを含む細胞系を記載する。Mulligan,R.C.,Experimental Manipulat ion of Gene Expression
,M.Inouye(ed),155-173(1983);Mann,R.,など.
、Cell,33:153-159(1983);Cone,R.D.and R.C.Mulligan,Proceedings of the National Academy of Sciences
,U.S.A.,81:6349-6353(1984)。利用で
きるレトロウィルスベクター及びそれらの使用に対するさらなる詳細は、特許及
び特許出版物、たとえばヨーロッパ特許出願 EPA 0178220、アメリカ特許第 4,4
05,712号、Gilboa,Biotechniques 4:504-512(1986)(N2レトロウィルスベ
クターを記載する)に見出され得る。それらの特許及び出版物の技法は、引用に
より本明細書に組込まれる。
レトロウィルスベクターは、そのレトロウィルスベクターが標的細胞を“感染
”し、そして標的細胞ゲノム中に組込むその高い効能のために、哺乳類細胞を変
性するために特に有用である。さらに、レトロウィルスベクターは、そのベクタ
ーが広範囲の種及び組織からの哺乳類細胞を感染することができるレトロウィル
スに基づかれているので、ひじょうに有用である。
哺乳類細胞のゲノム中に挿入するレトロウィルスベクターの能力が、ヒト及び
動物における遺伝子疾患の遺伝子療法への使用のためにそれらを特に有望な候補
体にした。遺伝子治療は典型的には、(1)新規の遺伝子材料を患者の細胞にイ
ンビボで付加し、又は(2)身体から患者の細胞を除去し、その細胞中に新規の
遺伝子材料を付加し、そしてそれらを身体中に再導入すること、すなわちインビ
トロ遺伝子療法を包含する。レトロウィルスベクターを用いて種々の細胞におけ
る遺伝子療法をいかに実施するかについての議論は、たとえば1989年9月19日に
発行されたアメリカ特許第 4,868,116号及び1990年12月25日に発行されたアメリ
カ特許第 4,980,286号(上皮細胞)、1989年8月10日に公開されたWO89/07136(
肝細胞)、1990年7月25日に公開されたEP第 378,576号(線維芽細胞)、及び198
9年7月15日に公開されたWO89/05345 及び1990年6月28日に公開されたWO90/0
6997(内皮細胞)に見出され得、そしてそれらの開示は引用により本明細書に組込
まれる。
遺伝子療法の種々の技法のために有用であるためには、適切なレトロウィルス
ベクターは、これまで利用できたことがない特定の特徴を必要とする。“患者”
の細胞のゲノム中へのレトロウィルスベクターの組込みのための選択を必要とす
るそのレトロウィルスベクターを使用することは通常、実施可能ではないので、
遺伝子療法における患者の細胞のインビボ遺伝子操作への使用のために前記ベク
ターのそれらの特定の必要条件のための必要な主要源が存在する。たとえば、典
型的なレトロウィルスベクター、たとえばWilliams,など.、Nature 310:476-
480(1984)に記載されるMSV DHFR−NEO は、遺伝子的に変性された細胞を検出す
るための適切なマーカーとしてネオマイシン耐性を使用する。従って、そのよう
なネオマイシン耐性レトロウィルスベクターに関しては、患者はインビボ遺伝子
療法を通して細胞の遺伝子修復をもたらすために、高レベルのネオマイシンに暴
露されることが必要とされるであろう。さらに、インビボ及びインビトロ遺伝子
療法においては、ヒト遺伝子体細胞治療を受ける細胞においてマーカー遺伝子の
遺伝子生成物を生成することは所望されない。たとえば、サラセミアを治癒する
ためにヘモグロビン遺伝子置換を受ける血液細胞において高レベルのネオマイシ
ンホスホトランスフェラーゼを生成する治療的理由は存在しない。従って、ゲノ
ム中に効果的に組込み、所望するレベルの対象の遺伝子生成物を発現し、そして
マーカー生成物、たとえば抗体の同時生成又は発現を伴わないで高力価で生成さ
れるレトロウィルスベクターを開発することが所望される
造血細胞を包含する疾病のための効果的遺伝子治療を開発するための努力にお
ける相当の進行にもかかわらず、多くの実質的な技術的障害が存在する。第1に
、ネズミ造血幹細胞中への遺伝子の効果的移行を可能にする種々の形質導入法が
開発されて来たが、大きな動物の再構成細胞中への効果的な遺伝子移行を達成す
ることはまだ不可能である。どの程度この問題(たとえば、不十分な力価、宿主
範囲)がベクターに関連しているのか、又は適切な標的細胞の増殖及び/又は効
果的な移植を得るための最適な条件に関する知識の欠乏の結果に関連しているの
かは、現在のところ不明である。第2の主要な技術的障害は、挿入された遺伝子
の造血細胞における高レベルの構成的なインビボ発現を得るための適切なシグナ
ルを有するレトロウィルスベクターの開発に関する。多くのグループが形質導入
された骨髄細胞により再構成されたマウスにおいて遺伝子の発現を示して来たが
、他のものは困難性を経験して来た(10−12)。全体的に、インビボでの遺伝子
発現のために重要なベクター企画の特徴に関する少数の一般的な原現が現われて
来た。特に、ベクター主鎖、挿入された遺伝子、ウィルス力価、形質導入法にお
ける差異のために、異なったベクターの性能を直接的に比較し、そして造血細胞
における遺伝子発現をインビボで最とも決定的にもたらすベクター企画の特徴を
決定することは不可能であった。さらに、少数の研究が、長期間(たとえば移植
受容体の寿命の間)、移行された遺伝子の発現する能力、すなわち造血細胞を包
含する疾病のための遺伝子
療法の明白に重要な目的を試験して来た。
3.発明の要約
本発明は、体細胞遺伝子療法に使用され得る新規の種類のレトロウィルスベク
ターに向けられる。本発明のレトロウィルスベクターは、対象の遺伝子のための
挿入部位を含み、そして広範囲の種類のトランスフェクトされた細胞型において
所望するレベルのコードされたタンパク質を発現することができる。
本発明の1つの観点において、対象のレトロウィルスに由来する5′LTR 及び
3′LTR 及び対象の遺伝子のための挿入部位を、操作可能的な組合せで含んで成
るレトロウィルスベクターが供給され、そしてここで、前記ベクターにおける g ag
, env又は pol遺伝子の少なくとも1つが不完全又は欠陥性である。前記ベク
ターは好ましくは、スプライスドナー部位及びスプライス受容体部位を含み、こ
こで前記スプライス受容体部位は、対象の遺伝子が挿入される部位から上流に位
置している。また、前記ベクターは所望には、挿入部位中に挿入されるヌクレオ
チド配列の転写体が生成されるように機能的に位置する gag転写プロモーターを
含み、そしてここで前記転写体は gag5′未翻訳領域を含む。本発明の好ましい
ベクターは選択可能マーカーを欠いており、従って、マーカー遺伝子生成物、た
とえば抗生物質薬物マーカーは同時生成され又は同時発現されないので、ヒト体
細胞遺伝子療法においてそれらをより所望のものにする。
本発明のベクターに組込まれる対象の遺伝子は、対象のホルモン、酵素、受容
体又は薬物を生成するいづれかの遺伝子であり得る。
レトロウィルスベクターは、ヒト又は動物体細胞遺伝子療法のために広範囲の
種類の細胞型に使用され得る、本明細書に定義される
ような、一定のパッケージング細胞と組合して、最とも適切に使用される。
本発明の特に好ましいレトロウィルスベクターは、図2c及び3に示されるよ
うに“MFG”として本明細書において定義され、そしてプラスミドがそれを含み
、そして特に、プラスミド MFGは ATCC NO.68,754の認識特徴を有する。
本発明はまた、上記ベクターに類似するが、しかし対象の種々の遺伝子の発現
を制御するために非−LTR エンハンサー及びα−グロビン転写プロモーター配列
をさらに含んで成るレトロウィルスベクターにも向けられる。本発明のこの観点
は特に、サイトメガロウィルスからのエンハンサー配列の使用を提供する。エン
ハンサー配列が3′LTR から欠失され、従ってゲノム中へのベクターの組込みに
基づいて5′LTR の不活性化をもたらすベクターもまた供給される。α−グロビ
ンプロモーター含有ベクターα−SGC が特に供給され、そして特に、図4に示さ
れるもの、及びそれを含むプラスミド及び特に、ATCC NO.68,755の認識特徴を
有するプラスミドα−SGCが供給される。
4.図面の簡単な説明
図1は野生型ネズミ白血病ウィルス(レトロウィルス)ゲノムの概略図である
。
図2はレトロウィルスベクターの概略図であり、個々は本発明において有用な
組換えゲノムを有する。図2aは pLJであり、そして図2bは pEmであり、図2
cは MFGであり、そして図2dはα−SGC である。
図3はレトロウィルスベクターMFGの概略図である。
図4はレトロウィルスベクターα−SGC の概略図である。
図5は TPAの発現を遺伝子的に増大された内皮細胞によりライニングされた合
成移植片のイヌ中への移植後の開存性を示す柱状グラフである。
図6は第VIII因子ポリペプチドの図である。図6bはレトロウィルスベクター
を生成するために種々の構造体に使用される制限酵素部位を示す第VIII因子cDNA
の図である。図6cは垂直線として示される欠失された領域を有する、レトロウ
ィルスベクター中に挿入された第VIII因子cDNAの欠失誘導体の図である。図6d
はHindIIIと PstI部位との間のBドメインの拡大された図である。H鎖及びL
鎖の結合部でのヌクレオチド配列がライン上に示され、そしてその対応するアミ
ノ酸番号がライン下に示される。
図7はアセンブルされた最終レトロウィルスベクター、すなわち MFG−第VIII
因子の図である。
図8はα−SGC−LacZ組換えレトロウィルスの図である。
図9(a)及び9(b)は本発明の MFGベクターの構成の概略図を示す。
図10は tPA遺伝子の変性、その変性を促進するために使用されるオリゴヌクレ
オチド及びその変性された tPA遺伝子の MFGベクター中への挿入を示す概略図で
ある。
図11.ヒトアデノシンデアミラーゼ(huADA)をコードするレトロウィルスベク
ターの構造体。(A)MFG−由来の組換えレトロウィルス。MFGベクターはMo−Mu
LVに由来する。その5′領域は位置1035で NarI部位に拡張し、従ってψ要素(M
ann R.など.、Cell,33:153-159,(1983))、スプライスドナー(SD)及び gag
コード配列を保持する。gagの開始コドンは、SmaIリンカーの挿入により変異誘
発されている。その5′フラグメントは、env mRNAの生成のために必要なスプラ
イス受容体(SA)を含む NdeI(+5401)−Nla
III(+5780)フラグメントに連結される。点変異(A−C)が、ヒト ADAコー
ド配列が挿入されている(huADA cDNA(□)内のNcoI+74から AccI+1324まで
)env開始コドンを包含する NcoI部位中に NlaIII部位を転換した。Daddona,P.
E.,など.、J.Biol.Chem. 259:12101-12106,(1984)。Mo−LTR/B2ベクター
は、B2変異(位置+160 でのGからA)を含む、PEM-ADA ベクター(Wilson,J
.M.など.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:439-443,(1990))の 1274bp HindIII
− PvuIフラグメントを、MFGのHindIII−Pvu Iフラグメントに連結することに
よって構成された。MPSVエンハンサーは、3′MPSV−LTR プラスミド(P.Robbins
,Pittsburgh,PAから提供された)からの 385bpの対応するフラグメントにより
3′Mo−MuLV LTRの NheI−SacIフラグメントを置換することによって MFG中
にクローン化され、MPSV−Enh 構造体が生成される。MPSVE−EnhB2 はMPSV−Enh
及び PEM−ADA 構造体に類似して由来した。MPSV−LTR 構造体においては、pC6
63neoRプラスミド(Ostertag,W.,など.、J.gen.Virol. 67:1361-1371,(1986
))からの6014bpの BanII−NheIフラグメントが、MFGベクターからの2694bpのBa
nII−NheIフラグメントにより置換された。Fr−Enh 構造体を生成するためには
、MFGの 450bpの NheI−KpnIフラグメントが、pFr−SV(X)プラスミド (Holla
nd,など.、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84:8662-8666,(1987))からのその対
応する NheI−KpnIフラグメントにより置換された。Mo−MuLV LTR(□)、MPS
V配列(□)、Friend配列(□)。
(B)αG−SGC ベクター:pHSGに由来するαG−SGC ベクターは、3′LTR
において gagの一部及びエンハンサー欠失を担持する(Guild,など.、J.Virol.
,62:3795-3801,(1988))。このベクターにおいて、huADA発現は、ヒトサイト
メガロウィルス(CMV)エン
ハンサー(□)(SpeI+154−NcoI+515 フラグメント)(Boshart,M.など.、Cell
,41:521-530,(1985))、及びα−グロビンプロモーター(□)(PstI−57
0−NcoI+37フラグメント)(Braelle,F.E.,Cell,12:1085-1095,(1977))の
制御下にある。
(C)組換えレトロウィルスにより感染されたNIH 3T3細胞の DNA分析:標準
条件(セクション 11.1を参照のこと)下でのNIH 3T3細胞の感染の後、ゲノム D
NAがNheIにより消化され、そしてhuADA cDNAプローブを用いてサザンブロット
により分析された。個々のレーンは10μgのゲノム DNAにより負荷された。細胞
当たりのプロウィルスのコピー数が、Phosphorimagerにより測定されるようにし
て、個々のレーン下で示される。左のレーンにおいては、コピー対照は、Mo−LT
R ベクターの細胞当たり1つのコピーに対応する。
図12.末梢血液細胞におけるヒト ADA発現の分析:
(A) BMT 後5〜7ヵ月でのhADA発現の分析。血液サンプルが採血される時は
、個々のベクターについて移植の後の日数で示される。hADA活性が IEFにより測
定された(セクション 11.1を参照のこと)。個々のサンプルのすぐ上の数は個
々の動物を示す。個々の受容体に注入される細胞の数が上記に示され、そして2
×105〜4.5×106個の細胞に及ぶ。ゲル上の低いバンドは、ネズミ内因性ADA(mAD
A)の活性を示し、そして上部バンドはヒトADA(huADA)の活性を示す。対照サンプ
ルは非移植マウスから調製された。イタリック体の数は、図13において詳細に試
験されたマウスを示す。
(B) BMT 後5〜7ヵ月で huADAを発現するマウスの割合。ADA比活性(r)
は、コンピューター濃度計により図12Aに基づいて測定されるマウス ADA酵素に
対するヒトの強度の比を示す。n1はr>1である場合のマウスの数を示し、そ
してn2は1<r≦1/4である場合のマウスの数を示す。Nは分析されるマウ
スの合計数を
示す。
(C) PBC 5〜7における及び BMT後12〜14ヵ月後のヒト ADA発現の比較。血
液サンプルが矢印により示されるように、移植後、2つの明確な時点で採血され
、そして図12Aに記載されるように ADA活性について分析された。個々のマウス
はそれらの数(#)により示される。矢印はmADA及び huADA活性を示す。個々の
サンプル下に示される ADA比活性は、マウス酵素バンドに対するヒトの強度の比
として決定される。第1の欄に示される%は、個々のベクターについて、BMT後
5〜7ヵ月で測定される元の活性(100%)に比較しての BMT後12〜14ヵ月での平
均のhADA活性を示す。(n)は平均活性を計算するために使用されるマウスの数
を表わす。
図13.BMT後12〜14ヵ月での造血細胞画分における huADA発現の定量化。
(A)個々のマウスの造血細胞画分における huADA活性の分析。それらの数に
より示される動物を殺害し、細胞画分を収穫し、そして huADA活性を個々の画分(a)
において IEFにより決定した。酵素活性が合計タンパク質1μg/プロウィ
ルスコピー当たりに発現される任意単位で報告される。“0”=検出できない h
uADA活性;“nd”=測定されなかった。
(B)合計タンパク質1μg/プロウィルスコピー当たりの平均ヒト活性。平
均 huADA活性があらゆる画分(a)におけるあらゆる組換えベクターについて示さ
れる。Mo−LTR 及び個々の他のベクター間での huADA活性の標準化された差異の
統計学的な有意性が記載されるようにして示される(b)。
(C)細胞当たりの平均プロウィルスコピー数。DNAがすべての動物の個々の
細胞画分から単離され、そして huADAプローブを用いてサザンブロット法により
分析された。個々のサンプルのために、
正確なコピー数が、細胞当たり1つのコピーを有することが知られている細胞ク
ローンを対照として取ることにより、Phosphorimagerを用いて決定された。細胞
当たりの平均のプロウィルスコピー数及びその統計学的分析(b)が個々の細胞画
分(a)におけるあらゆる組換えベクターについて示される。
(D)合計タンパク質1μg当たりの平均ヒト ADA活性。平均のhADA活性がプ
ロウィルスコピー数とは無関係に個々のベクターについて決定された。Mo−LTR
及び個々の他のベクター間のhADA活性の差異の有意性が示される。
(a):BM、分別されていない骨髄;脾臓、分別されていない脾臓;Bリンパ
球、脾臓性Bリンパ球;Tリンパ球、脾臓性Tリンパ球;Mac,BMに由来するマ
クロファージ。
(b)星印(★)によりマークされる個々の棒は、1)プールされたBM及び脾
臓サンプル;2)Bリンパ球;3)Tリンパ球;4)マクロファージから製造さ
れた分布が、その対応する“Mo−LTR 分布”に比較される場合、統計学的に有意
な差異(P<0.05)を示す(Student-Fischer's t 試験)ことを示唆する。
平均±SDを計算するために使用されるマウスの数(n)は、個々のベクターの
下に示され、そして図13Aにおいて詳細に分析されるマウスに由来する。
図14は、Moloneyネズミ白血病ウィルス(“MoMuLV”)(配列番号5)、MFGベクタ
ー(配列番号6)及び MFG−Sベクター(配列番号7)についての DNA配列の比
較を提供する。MoMuLVのヌクレオチド 320−643 が個々の線の上部で示されてい
る。細胞表面 gagタンパク質のための推定上の CTG開始コドン及び細胞質 gagタ
ンパク質のための ATG開始コドンは大文字で示される。gag読み取り枠は下線に
より示される。“X”は、ヌクレオチドが未変化であることを示
し、そして“−”は、ヌクレオチドが欠失されたことを示す。MFG及び MFG−S
を区別するヌクレオチド置換はボックスにより示される。MFG及び MFG−Sの両
者は、MoMuLVに存在しない gag ORFの ATGに続いてリンカー挿入を有する。
図15はレトロウィルスベクター MFG−Sの構造を示す。SA=スプライス受容体
、SD=スプライスドナー、ψ=パッケージングシグナル。この図は一定の比例に
縮小して描かれていないことを注目すること。
図16はベクター MFG−Sの環状の制限地図である。
図17は8045BPのベクター MFG−S(配列番号7)の DNA配列である。
5.発明の詳細な記載
本発明はいくつかのレトロウィルスベクターを提供する。提供されるレトロウ
ィルスベクターは、(1)興味あるレトロウィルスに由来する5′及び3′LTR
、前記 LTRのための好ましいレトロウィルス源は Maloneyネズミ白血病ウィルス
である、及び(2)興味ある遺伝子のための挿入部位を含む。本発明のレトロウ
ィルスベクターは完全な gag, env又は pol遺伝子のいづれも含まず、その結果
、レトロウィルスベクターは標的細胞において独立した複製をすることができな
い。好ましいレトロウィルスベクターは gagコード配列の一部を含み、好ましく
はその部分的 gagコード配列は、レトロウィルスベクターに位置するよう配置さ
れるスプライスドナー部位及びスプライス受容体部位を含んで成り、その結果、
そのスプライス受容体部位は興味ある遺伝子のための挿入部位に隣接し、そして
その上部に位置する。対象のベクターの特に好ましい態様においては、転写プロ
モーターは、 gagプロモーターから開始される転写体
が未翻訳の5′gag 配列、及び前記ベクターにおける挿入部位中に挿入される核
酸配列から生成される転写体を含むよう配置される。興味あるベクターは好まし
くは、選択可能マーカーを含まない。そのようなベクターの好ましい態様は、“
MFG”として命名されるベクターである。
本発明のもう1つの観点は、3′LTR における機能的エンハンサー要素を欠い
ているレトロウィルスベクターを提供することであり、それにより、標的生物の
ゲノム中への組込みに基づいて5′LTRを不活性化する。
本発明のもう1つの観点は、実質的に上記のようなレトロウィルスベクターを
提供することであるが、しかしベクターの挿入部位中に挿入される遺伝子の発現
を制御するために gagプロモーターを用いる代わりに、ヒトαグロビン遺伝子転
写プロモーターが使用される。レトロウィルスベクターα−SGC が特に開示され
る。
本発明のもう1つの観点は、興味ある遺伝子の発現を高めるためにαグロビン
転写プロモーターを用いてレトロウィルスベクターにおける LTRに位置しないエ
ンハンサー配列を用いることである。エンハンサー配列がαグロビン転写プロモ
ーターの上流に配置されるベクターが特に興味の対象である。本発明のもう1つ
の観点は、そのような非−LTR エンハンサー含有ベクターにおけるサイトロメガ
ロウィルスに由来するエンハンサー配列に関する。
本発明のもう1つの観点は、レトロウィルスベクターにおける挿入部位中に挿
入される発現のための遺伝子を含むレトロウィルスベクターの構造体を提供する
ことである。対象のレトロウィルスベクター中への挿入のための遺伝子は、種々
のホルモン、酵素、受容体又は他の薬物のいづれかを含む。本発明は特に、MFG
及びα−SGC のクローニング部位中に(個々に)挿入される TPA及び第VIII因子
か
ら成る遺伝子構造体を提供する。
野生型レトロウィルスゲノムは、細胞中に新規の遺伝子を導入することができ
るベクターとして使用するために Cone and Mulligan,前記により変性された。
図2に示されるように、 gag, pol及び env遺伝子がすべて除去され、そして n eo
遺伝子をコードする DNAフラグメントがそれらの位置に挿入された。 neo遺伝
子は優性の選択可能マーカーとして作用する。組換えゲノムの一部を存続するレ
トロウィルス配列は、LTRS,tRNA結合部位及び Psiパッケージング部位を含む。
Cepko,C.など.、Cell,37:1053-1062(1984)。
発現のための外来性遺伝子の挿入のための部位を含む多くのレトロウィルスベ
クターを教授する他に、本発明はまた、レトロウィルスベクターが挿入のための
部位中に挿入される遺伝子、すなわち外来性遺伝子又は発現のための遺伝子を含
む遺伝子構造体を提供する。本発明のベクターへの包含のための外来性遺伝子は
、種々のタンパク質をコードすることができる。興味あるタンパク質は、種々の
ホルモン、成長因子、酵素、リンホカイン、サイトキン、受容体及び同様のもの
を包含する。用語“外来性遺伝子”は、外来性遺伝子を含むレトロウィルスベク
ターが挿入され得る細胞に対して内因性の核酸配列を包含する。遺伝子疾病を有
する個人において不在であるか、少量で生成されるか又は変異形で生成されるポ
リペプチドをコードするそれらの遺伝子が、発現のための遺伝子として使用する
ために特に興味あるものである。さらに、外来性遺伝子によりコードされるタン
パク質により誘発される組織的な効果を提供するために標的細胞からの分泌のた
めのポリペプチドをコードする外来性遺伝子を使用することが興味あるものであ
る。興味ある特定の外来性遺伝子は、ヘモグロビン、インターロイキン−1、イ
ンターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インター
ロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−7、インターロイキ
ン−8、インターロイキン−9、インターロイキン−10、インターロイキン−11
、等、GM−CSF,G−CSF,M−CSF、ヒト成長因子、インスリン、第VIII因子、
第IX因子、tPA,LDL受容体、腫瘍壊死因子、PDGF,EGF,NGF,IL−1ra,EPO,β
−グロビン及び同様のもの、並びにそれらのタンパク質の生物学的活性ムテイン
をコードするものを包含する。レトロウィルスベクター中への挿入のための発現
のための遺伝子は種々の種からのものであり得るが、しかしながら、興味ある遺
伝子のための好ましい種源は、興味ある外来性遺伝子を含むレトロウィルスベク
ターが挿入される予定であるそれらの種である。
本発明のレトロウィルスベクターは典型的には、パッケージング細胞系中に核
酸配列をトランスフェクトすることによって使用される。パッケージング細胞系
は、それをベクターに転換する間、レトロウィルスから欠失されたウィルス遺伝
子機能を含む。従って、ベクター挿入部位中に挿入された発現のための遺伝子を
有するか又は有さない本発明のレトロウィルスベクターは、所望する遺伝子構造
体を含むトランスフェクトされた感染性ウィルス粒子を生成するためにパッケー
ジング細胞系中に存在することができる。理想的には、パッケージング細胞系は
、高い力価の組換えレトロウィルスを生成することができる。好ましいパッケー
ジング細胞系は、Psi−2,Psi−Am,Psi−CRIP及び Psi−CRE を含むが、但し
これだけには限定されない。Psi−2が、レトロウィルスベクター MFG及びα−S
GC と共に使用するために特に好ましい。
Mulligan及び共同研究者により記載される Psi−2細胞系は、Moloneyネズミ
白血病ウィルス(Mo−MuLV)クローニングである NIH 3T3内皮細胞をpMOV−Psi
によりトランスフェクトすることによっ
て創造された。pMOV−Psi はすべてのウィルス遺伝子生成物を発現するが、しか
しウィルスゲノムのエンキャプシド化のために必要である Psi配列を欠いている
。pMOV−Psi は、マウス(及び近縁のゲッ歯類)細胞上においてのみ存在する受
容体を認識するエコトロピックウィルスエンベロープ糖タンパク質を発現する。
もう1つの細胞系は、Psi−2−様パッケージング細胞系である Psi−am系で
ある。それらの Psi−am細胞系は変性されたpMOV−Psi−ゲノムを含み、ここで
エコトロピックエンベロープ糖タンパク質はアンフォトロピックウィルス 4070A
に由来するエンベロープ配列により置換されている(Hartley and Rowe,1976,J ournal of Virology
,19:19-25)。結果として、それらはアンフォトロピック
宿主範囲での組換えウィルスの生成のために有用である。Psi−am細胞系を製造
するために使用されるレトロウィルスは、広範囲の哺乳類宿主範囲(アンフォト
ロピック宿主範囲)を有し、そしてヒト細胞を感染するために使用され得る。組
換えゲノムが Psiパッケージング配列を有する場合、Psi−am細胞系は感染性レ
トロウィルス粒子中に組換えレトロウィルスゲノムをパッケージすることができ
る(Cone and Mulligan,1984,Proceedings of the National Academy of Scien ces
,USA,81:6349-6353)。
2種の他のパッケージング細胞系が Psi−CRIP及び Psi−CRE として知られて
いる。それらの細胞系は、それぞれアンフォトロピック及びエコトロピック宿主
範囲を有する高い力価の組換えレトロウィルスを安定して生成するクローンを単
離するために有用であることが示されている。それらの細胞系は、Danos and Mu
lligan,1988,Proceedings of the National Academy of Sciences , USA,85
:6460-6464 ; 及び1988年9月1日に出願されたアメリカ特許出願第07/239,54
5 号に記載されている。前記文献及び特許出願の技法
は引用により本明細書に組込まれる。Psi−CRIP及び Psi−CRE は、ブダペスト
条約下で、それぞれ受託番号 CRL9808及び CRL9807として American Type Cultu
re Collection,Rockville,MDに寄託された。
MFGは、2種の損なわれていないオーバーラップする読み取り枠、又は細胞表
面及び細胞質 gag−pol ポリタンパク質の両者のアミノ末端タンパク質をコード
する ORFを保持する。それらの ORFは、複製−コンピテントウィルスの形成を導
びくパッケージング細胞系に存在するウィルス構造コード配列を伴って組換え出
来事のための標的領域を提供する。このすでにかけ離れた可能性を最小にするた
めに、MFG gag ORFが、可能な組換え出来事を破壊するような手段で変異誘発さ
れ得る。従って、本発明の好ましいレトロウィルスベクターは、細胞表面細胞質
gagポリペプチドのための開始コドンから下流に挿入される停止コドンを有する
MFGベクターである。MFG−Sと称するこの MFGベクターの特定の態様は、セク
ション12における例により十分に説明される。
本発明はまた、遺伝子発現のための部位中に挿入される発現のための遺伝子を
有するレトロウィルスベクターも包含する。種々の遺伝子を組込む種々のベクタ
ーが、セクション6〜12における例により特別に記載される。
本発明の特定の態様においては、セクション7における例により記載されるよ
うに、ヒト組織タイププラスミノーゲン活性化因子(tPA)のための遺伝子を担持
する MFG及びα−SGC レトロウィルスベクターが構成され、そて標的内皮細胞を
効果的に形質導入し、そして高レベルの tPAの持続される発現を指図するために
使用される。セクション9における例により記載される関連する態様においては
、ヒト第VIII因子のための遺伝子を担持する MFGベクターが構成され
、そして内皮細胞を効果的に形質導入し、そして第VIII因子の発現を指図するた
めに使用される。
本発明の組換えレトロウィルスベクターは、インビボで細胞の形質導入を達成
することができる。たとえば、セクション10に十分に記載されるように、ベクタ
ーα−SGC−LacZは、インビボでネズミ血管内皮細胞を効果的に形質導入し、イ
ンビボでのLacZ遺伝子生成物の維持された発現をもたらす。従って、本発明は、
遺伝子治療ベクター、及び標的細胞、たとえば血管内皮細胞の現場形質導入のた
めの方法を提供する。
本発明のもう1つの観点は、本発明の組換えレトロウィルスベクターによる造
血細胞の形質導入、及びそのようなベクターによる遺伝子治療を通しての広範囲
の種類の血液学的疾病及び障害の処置に関し、ここで前記疾病及び障害は次のも
のを包含するが、但しそれらだけには限定されない:貧血、溶血性疾患、赤血球
代謝疾患、異常ヘモグロビン症、サラセミア、好中球機能疾患、白血球減少症、
赤血球増加症、骨髄増殖性疾患、白血症、リンパ腫、好酸性疾患、血漿細胞疾患
、血液凝固疾患及び同様のもの。
セクション11における例により記載される本発明のこの観点の特定の態様にお
いては、興味ある遺伝子を担持する種々の MFG−由来の組換えレトロウィルスベ
クターが構成され、そして骨髄に存在する造血幹細胞を形質導入するために使用
される。そのようなベクターにより形質導入された細胞は、興味ある移行された
遺伝子によりコードされる生成物を生成する種々の造血細胞型により特徴づけら
れる完全な造血システムを再生するために骨髄移植法に使用され得る。セクショ
ン11に開示される出願者の骨髄移植研究結果は、多くの異なった MFG−由来のベ
クターが造血幹細胞を形質導入することができ、そして骨髄移植受容体のほぼ寿
命の間、そのような形質導
入された幹細胞から生成されるほとんどの造血細胞系における所望する遺伝子生
成物の高レベルの発現を指図することを示唆する。その結果はまた、ベクター企
画中に組込まれる特定のウィルス LTRの選択が遺伝子発現レベルに影響を及ぼす
ことも示唆する。
セクション11に示される結果の観点においては、本発明の組換えレトロウィル
スベクターは、形質導入された骨髄細胞に由来する造血細胞において遺伝子の長
期の維持された発現を明確に提供することができる。形質導入後、1年以上、す
べての造血系における有意なレベルの遺伝子発現を検出する能力は、この時が骨
髄移植受容体の正常な寿命に近いので、有意である。それらの結果はまた、LTR
に基づくベクターによる遺伝子発現の不活性又は遮断を示して来たこれまでの研
究の場合、ウィルス LTRの利用以外のベクター企画の特定の特徴が以前に推定さ
れたよりも発現における観察される問題に一層寄与することができることも強く
示唆する。セクション11に記載されるMPSV−LTR、又はMFG−ADA のB2誘導体の
いづれかにより供給される発現の絶対的に大きな改良は、異なった細胞系におけ
る発現及び観察される発現レベルにおける変動について試験される少数の動物を
考慮して、評価することはいく分困難であるけれども、そのデータは、それらの
ベクターが改良された発現を付与し、そしてその改良が、ほとんどすべての造血
系において存在することにおいて、一般的であると思われることを明確に示唆す
る。
従って、本発明はまた、下記段階を包含する、患者の造血細胞における欠陥遺
伝子により特徴づけられる血液学的疾病を処理するための方法も提供し、ここで
前記段階は、ドナーからの HLA−同一性の同種骨髄細胞を単離し;ベクター挿入
部位で欠陥遺伝子に対応する正常な遺伝子を含むように構築された本発明の組換
えレトロウィルスベクターにより前記ドナー骨髄細胞を形質導入し;生存細胞の
適切な集団を生成するために前記形質導入されたドナー骨髄細胞を培養し;適切
な方法を用いて、たとえばシクロホスファミドの投与により(すなわち4日間、
1日当たり50mg)、又は全身照射により又はシクロホスファミド又は当業界にお
いて良く知られている他の化学療法剤と組合しての全身照射により、患者の免疫
システムを破壊し;そしてそれに続いて、適切な量の形質導入されたドナー骨髄
細胞(Kg体重当たり)約2〜6×108個の形質導入されたドナー骨髄細胞)を患
者に、投与のいづれか適切な経路により、たとえば静脈内注入により投与するこ
とを含んで成る。
本発明のさらにもう1つの観点は、血管手術への使用のための改良された血管
移植片に向けられる。合成血管移植片に関する主な問題は、移植片の閉塞及び不
全を導びく、移植片領域における血塞形成、並びに心筋梗塞及び死を誘発するそ
れらの傾向である。合成血管移植片は、この固有の血栓形成性のために、自己由
来の伏在静脈、現在では血管手術方法、たとえば冠状バイパス手術において選択
される材料に相当する長期の開存性を決っして達成したことはない。この問題は
、マイクロ血管移植片に関して、及び移植片のための利用できる伏在静脈を有さ
ない患者においては、一層手に負えない。
本発明は、閉塞性血栓の形成を阻止する改良された内皮形成性血管移植片を提
供する。より特定には、本発明の改良された血管移植片は、血栓崩壊剤又は抗血
栓剤、たとえば組織タイプのプラスミノーゲン活性化因子(tPA)のための遺伝子
を担持する組換え MFGレトロウィルスベクターにより遺伝子的に形質導入されて
いる内皮細胞により予備供給される。そのような予備供給された血管移植片は、
移植片の内腔をライニングする形質導入された内皮細胞により、局部的に、高レ
ベルの血栓崩壊剤又は抗血栓剤を生成し、従って、血
栓形成を阻害する。セクション8における例により十分に記載される、本発明の
この観点の特定の態様においては、組換えレトロウィルスベクター MFG−tPA が
イヌ内皮細胞を形質導入するために使用され、そしてその形質導入された内皮細
胞が、試験動物中に大動脈−腸骨バイパスとして移植片を移植する前、合成血管
移植片の内腔表面を内皮形成するために使用される。MFG−tPA−形質導入内皮細
胞を供給された移植片は、対照の内皮細胞により供給された移植片に比べて血栓
形成を実質的に阻害することができ、そして従って、改良された好都合な割合を
示す。従って、そのような改良された抗血栓性血管移植片は、手術工程、たとえ
ば冠状バイパス手術に使用され、そて移植材料のための自己由来の血管系を利用
するための必要性を排除できる。種々の合成移植片材料、たとえばポリマー性移
植片材料(たとえばポリテトラフルオロエチレン)、テフロン及び同様のもの(
但し、これらだけには限定されない)は当業界において知られており、、本発明
の改良された移植片を調製するために使用され得る。好ましくは、合成移植片材
料は、遺伝子的に変性された内皮細胞により移植片の内腔をライニングする前、
フィブリン溶解性的に阻害されたフィブリン接着剤により予備被覆される。内皮
形成された合成血管移植片についての最近の論議については、たとえば Zillaな
ど.、1994,J.Vasc.Surg.19:540-548 000Ahlsweds and Williams,1994,
Arterioscler.Thromb.14:25-31 を参照のこと。
従って、移植片の内腔表面上に、血栓崩壊性又は抗血栓性タンパク質、たとえ
ばヒト組織型プラスミノーゲン活性化因子を生成するために遺伝子的に変性され
た自己由来の内皮細胞のライニングを含んで成る改良された合成血管移植片が提
供され、ここで前記内皮細胞はベクター挿入部位で血栓崩壊性又は抗血栓性タン
パク質のため
のコード配列を含むように構築された、本発明の組換えレトロウィルスベクター
により親内皮細胞を形質導入することによって、移植片の移植の前、変性されて
いる。
本発明のレトロウィルスベクターは、広範囲の種類の細胞タイプ、たとえば上
皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、内皮細胞、筋原細胞、星状細胞、リンパ細胞、腸
間膜細胞及び同様のものに使用され得るが、但しこれらだけには限定されない。
次の特許及び特許出版物に開示される細胞型が特に興味あるものである:1989年
9月19日に発行されたアメリカ特許第 4,868,116号及び1990年12月25日に発行さ
れたアメリカ特許第 4,980,286号(上皮細胞)、1989年8月10日に公開された P
CT/US89/00422、WO89/07136(肝細胞)、1990年7月25日に公開されたEP第 378
,576号(線維芽細胞)、及び1989年6月15日に公開された PCT/US88/04383、W
O89/05345 及び1990年6月28日に公開されたWO/90/06997(内皮細胞)(これら
の開示は引用により本明細書に組込まれる)。
本発明のベクターは、種々の医学的状態、たとえば癌、遺伝子的基礎の疾病、
心肺疾患、内分泌上の疾患及び同様の状態に使用されるが、但しこれらだけには
限定されない。
本発明は次の例により示されるが、それらの例は本発明を限定するものではな
い。
6.例: MFG及びα−SGC レトロウィルス遺伝治療用ベクターの構成
6.1.材料及び方法
6.1.1.MFGベクター前駆体の構成
6.1.1.1.pMOV−Psi の構成
プラスミドpMOV Psiを次の通りに構成した:3種の精製された DNAフラグメン
トを、pMOV Psi−を構成するために一緒に連結した。
第1のフラグメントは、pMOV Psi+を XhoIにより完全に消化し、続いて、EcoR I
による部分的消化により得られた。Chumakov,I.など.、Journal of Virolog y
,42: 1088-1098(1982)。MuLVにおいて 2.0Uでの XhoI部位から延び、3′L
TR、3′マウスフランキング配列、pBR322のすべてを通して、そしてEcoR I部位
で終わるフラグメントを、電気泳動分離の後、アガロースゲルから精製した。Vo
gelstein,B.and D.Gillespie,Proceedings of the National Academy of Sci ences ,USA
,761 : 615-619(1979)。第2のフラグメントは、6 PMOV Psi+をBal
Iにより完全に消化し、続いて5′マウスフランキング配列及び5′LTR を通し
てpBR322におけるBalI部位から、MuLVの 0.7Uに位置する BalI部位まで延び
るフラグメントを精製することによって得られた。次に、HindIIIリンカー(共
同研究)を、T4 DNAリガーゼによりこのフラグメントにブラント−連結し、その
フラグメントを過剰のHindIII及びEcoRIにより消化した。LTR−含有フラグメン
トを、電気泳動分離の後、アガロースゲルから精製した。最終連結反応に存在す
る第3のフラグメントを、MuLVの gag /pol 領域がpSV2中にサブクローン化され
ているpSV2 gag /pol から得た。Mulligan,R.C.and P.Berg,Science ,209 :
1422-1427(1980)。pSV2− gag /pol を XhoI及びHindIIIにより完全に消化し
、そしてHindIII部位(MuLVの 1.0UでPstI部位から変えられた)からMuLVの 2
.0UでのXhoI部位まで延びるフラグメントを、電気泳動分離に続いてアガロー
スゲルから精製した。次に、それらの3種の DNAフラグメントを、リガーゼ緩衝
液(50mMのトリス−HCl〔pH 7.8〕、10mMの MgCl2、20mMのジチオトレイトール
、1.0mMの ATP、50μg/mlのウシ血清アルブミン)において、50μg/mlの合
計 DNA濃度で等モル量で混合し、そしてT4 DNAリガーゼと共に15℃で18時間イン
キュベートした。E.コリ HB101を連
結された DNAによりトランスフェクトし、そして耐アンピシリン性トランスフェ
クタントを得た。多くの形質転換体から得られたプラスミド DNAを、適切な制限
エンドヌクレアーゼによる消化及びアガロースゲルを通しての電気泳動により所
望する構造体についてスクリーンした。Davis,R.W.など.、Methods in Enzymo
logy,65 : 404-411(1980)。
染色体中に安定して組込まれる Psi変異体を含む細胞系を、XG PRTを発現でき
るSV40ハイブリッドベクターによるpMOV−Psi 及びpSV2gptの同時トランスフェ
クションにより製造した。Mulligan,R.C.and P.Berg,Science ,209 : 1422-
1427(1980)。この方法で得られた gpt+コロニーからの細胞をクローン化し、そ
して3種の系統: Psi−1,Psi−2及び Psi−3に確立した。
6.1.1.2.pLJの構成
pLJの特徴は、Korman,A.J.など.、Proceedings of the National Academy o f Sciences
.USA,84 : 2150(1987)に記載される。このベクターは次の2種
の遺伝子を発現することができる:興味ある遺伝子及び優性の選択可能マーカー
、たとえば neo遺伝子。前記興味ある遺伝子を5′LTR に対して遠位のBamHI/
SmaI/SalIクローニング部位中に直接的な配向でクローン化し、そして neo遺
伝子をクローニング部位であるよりも3′側である(クローニング部位の3′側
に位置する)内部プロモーター(SV40からの)に対して遠位に位置する。pLJか
らの転写は次の2つの部位で開始される:1)興味ある遺伝子の発現を担持する
5′LTR 及び2) neo遺伝子の発現を担当する内部SV40プロモーター。pLJの構
造体は図2aに示される。
ベクター pLJは図2aに示される。pLJにおいては、興味ある遺伝子材料が5
′LTR のすぐ後に挿入される。この遺伝子材料の発現
は LTRから転写され、そして neo遺伝子の発現は内部SV40プロモーターから転写
される。
6.1.1.3.pEmの構成
この単純なベクターにおいては、野生型ウィルスの gag, pol及び envのため
の完全なコード配列が、発現される唯一の遺伝子である興味ある遺伝子により置
換されている。pEmベクターの成分は下記に記載される。5′フランキング配列
、5′LTR 及び 400bpの隣接する配列(BamH I部位まで)はpZIPからである。3
′フランキング配列及び LTRもまたPZIPであるが;しかしながら、3′LTR から
150bp上流の Cla I部位を合成BamH Iリンカーにより連結し、そしてベクターに
存在するBamHIクローニング部位の他の半分を形成する。pBR322のHindIII /Eco RI
フラグメントがプラスミド主鎖を形成する。このベクターは、Moloneyネズミ
白血病ウィルスの株からクローン化された配列に由来する。類似するベクターが
、骨髄増殖性肉腫ウィルスに由来する配列から構成されている。pEmの構造は図2
6に示される。
選択可能マーカーを有さないベクターはまた、興味ある遺伝子材料により種々
の細胞型、たとえば内皮細胞を形質導入するためにも使用され得る。そのような
ベクターは、そのようなマーカーが存在する、前で記載されたベクターの基本的
に単純化されたものである。ベクターpEmは図2bに示されており;示されるよ
うに、ベクターの主成分は5′及び3′LTR、及びそれらの2つの LTR間に挿入
される興味ある遺伝子材料である。
6.1.2.MFGベクターの構成
ATCC受託番号 68754自体の特徴を有する MFGベクターは、pEmベクターに由来
するが、しかしパッケージング細胞系における組換えゲノムのエンキャプシド化
を高めるためにMMLVからの gag配列の10
38個の塩基対、及びスプライス受容体及び転写開始を含む MOV−9に由米する 3
50個の塩基対を含む。MOV−9配列に直接続いて、 Nco I及びBamH I部位を含む1
8個の塩基対のオリゴヌクレオチドが存在し、そして前記オリゴヌクレオチドは
適切な部位による遺伝子の便利な挿入を可能にする。MMLV LTRは転写を制御し、
そしてその得られるmRNAは生来の gag転写体の確実な5′未翻訳領域、続いて挿
入された遺伝子の読み取り枠を含む。MFGの構造は図2cに示される。MFGのより
詳細な地図は図13に提供される。MFGの構成についての詳細は図9(a)及び9
(b)に提供される。
MFGを、半−GAG レトロウィルスベクター(半−GAG は、Bender,など.、J.V irol.
61 : 1639-1646 に記載される)の5′LTR 含有 Xho I/NdeIフラグメン
トに、 Xho I/BamHI H4 ヒストンプロモーターフラグメントに連結することに
よって構成した。レトロウィルスベクター pEmを Nde I及びBamH Iにより消化し
、そして3′LTR 含有フラグメントを、適切な配向で2つの LTRを含み、そして
また、ベクターのウィルス部分内にH4フラグメントを含む中間のレトロウィル
スベクターを生成するために、H4フラグメントにすでに連結される半−GAG フ
ラグメントに連結した。次に、前記の中間ベクターを、 Nde Iによる消化により
線状化し、そしてそのベクターの pB322部分における Nde I部位をポリメラーゼ
によりフィルインし、そして連結により破壊した。ベクターを続いて Xho Iによ
り消化し、そしてその Xho I部位を NdeIリンカーに連結した。ベクターを続い
て、BamHIにより切断し、そして両 LTR及びpBR322配列を含む大きなフラグメン
トを精製した。
Xho I及びBamH Iを有し、そして次の配列:
を有するリンカーを合成し、そして環状のベクター、すなわち図2c,3及び9
(a)〜9(b)に示されるような MFGを形成するために、明確にされた中間ベ
クター上のBamHI部位及び pMOV9からの Nde I/XbaIフラグメント〔NdeI端の
次のスプライス受容体部位を含む〕の両者に連結した。ベクター MFGを含むプラ
スミドは、American Type Culture Collectionに寄託され、そして受託番号68,7
54を有する。
6.1.3.α−SGC ベクターの構成
α−SGC ベクター(ATCC受託番号68755)は、tPA遺伝子の発現を調節するために
α−グロビン遺伝子からの転写プロモーター配列を利用する。前記プロモーター
要素を含む 600塩基対のフラグメントはさらに、確実なα−グロビンmRNAの転写
開始及び5′未翻訳領域を含む。サイトロメガロウィルスからの転写エンハンサ
ーを含む 360個の塩基対のフラグメントに続いて、αグロビンプロモーターが存
在し、そして前記フラグメントはこの要素からの転写を増強するために使用され
る。さらに、MMLVエンハンサーを、3′LTR から欠失する。この欠失は、感染に
基づいて5′LTR に移行され、そして要素の転写活性化を実質的に不活性化する
。α−SGC の構造は図2dに示される。α−SGC のより詳細な説明は図4に提供
される。α−SGC ベクターを含有するプラスミドはAmerican Type Culture Coll
ectionに寄託され、そして受託番号68,755を有する。次の例は、内皮細胞を用い
る本発明のレトロウィルスベクターを用いる例を提供する。他の細胞型、たとえ
ば上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞及び他のものもまた、制限なしに適切であるこ
とが理解されるであろう。
7.例:内皮細胞におけるヒト組織プラスミノーゲン活性化因子の高められた発
現に影響を及ぼすためへの MFG及びα−SGC ベク
ターの使用
組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)は、血液凝集体のフィブリン溶解性を
促進する内皮細胞により通常分泌されるタンパク質である。ヒト tPAをコードす
る組換えレトロウィルスベクターを構成し、そして形質導入された内皮細胞から
治療的に適切なタンパク質の高められた供給を示すために、イヌ内皮細胞を形質
導入するために使用した。
7.1.材料及び方法
7.1.1.tPAをコードする MFG及びα−SGC ベクターの構成
組換えレトロウィルスベクター中へのクローニングのための tPA遺伝子の変性
は図10に示される。ヒト子宮 tPAのコード配列は、Integrated Genetics Inc.F
ramigham MAから得られた、pUCに基づくプラスミドの SalI DNAフラグメント内
に含まれた。 SalIフラグメントを、塩基対6での S FaNI部位及び元のcDNAの
塩基対2090での BglII部位に SalIリンカーを配置することによって誘導した。
そのコード配列は、塩基対13から塩基対1699まで及ぶ。
この元のクローンから、セクション6.1.に記載される MFG及びα−SGC ベクタ
ー中に直接的にクローン化され得るフラグメントを得た。 SalIフラグメントを
まず、合成 Bam HIリンカーの付加によ Bam HIフラグメントに転換し、そして
次に、制限酵素 BglIIにより消化し、109個の塩基対のBamH I〜BglIIフラグメン
ト及び1975個の塩基対の BglII〜BamH Iフラグメントを得た。tPAコード配列の
ミッシングする 100個の塩基対及び翻訳開始コドンを再び創造するために、2つ
の 104個の塩基対のオリゴヌクレオチドを化学的に合成し、そしてアニールし、
5′端で NcoI部位及び3′端で BglII部位を有するフラグメントを創造した。
このオリゴヌクレオチドを、1975個の塩基対の部分的 tPA遺伝子の BglII部位上
に連結し、
元の分子と同一のコード配列を有する2079個の塩基対の tPA遺伝子を創造した。
但し、前記 tPA遺伝子は NcoI〜BamHIフラグメントとして容易に得ることがで
きる。それを MFG及びα−SGC ベクター中に直接挿入した(前記得られるベクタ
ーはそれぞれ 68727及び 68729のATCC受託番号を与えられた)。それらの操作は
標準の分子生物学的技法(Molecular Cloning-A Laboratory Manual,T.Maniatis
,E.F.Frisch,and J.Sambrook)に従って実施され、そして図2に示される。
7.1.2.MFG−tPA 及びα−SGC−tPA 生成細胞系の調製
MFG−tPA 及びα−SGC−tPA をコードする組換えウィルスを生成する細胞系を
、アンフォトロピック宿主範囲の組換えレトロウィルスを生成できる、Danos an
d Mulliganの Psiパッケージング細胞系から製造した〔Proc.Natl.Acad.Sci.U.S
.A.85:6460(1988)〕。10μgの特定化された DNA及び1μgのプラスミド p
SV2neoを同時沈殿せしめ、そして標準のリン酸カルシウムトランスフェクション
法によりパッケージング細胞上にトランスフェクトした。安定してトランスフェ
クトされたクローンを、800μg/mlのG418を含む選択培地においての14日間の
培養の後に単離した。24時間の培養物の上清液を、個々のクローンの集密的細胞
単層から得、そして NIH 3T3細胞を感染せしめるために使用した。
その培養上清液を、24時間の暴露の後に除去し、そして 3T3細胞を通常の培地
により再供給し、そしてさらに72時間、増殖せしめた。新鮮な培地を6時間、そ
れらの細胞上に配置し、そしてそれらの上清液を、ヒト tPAに対して特異的な市
販のELISA(Immunobind-5,American Diagnostica Inc.,N.Y.,N.Y.)によりヒ
ト tPAについてアッセイした。このスクリーンから、MFG−tPA 組換えウィルス
又はα−SGC−tPA 組換えウィルスのいづれかを生成するパッケー
ジング細胞系のクローンを選択し、そしてそれぞれ、MFG 68及びα−SGC 22と命
名した。
7.1.3.標的の内皮細胞及び MFG−tPA 及びα−SGC−tPA ベクターによる形質導
入
イヌ内皮細胞を、T.J.Hunter S.P.Schmidt,W.V.Sharp,(1983)Trans.Am.Soc .Artif.Intern.Organs
29 : 177 に記載されるように、コラゲナーゼ消化により
外部頸静脈の10cm部分から単離した。細胞を、5%血漿由来のウマ血清、50μg
/mlの内皮細胞増殖因子及び 100μg/mlのヘパリンを含むM199培地を有する、
フィブロネクチン被覆された組織培養皿上で増殖せしめた。細胞培養物の純度を
、Von Willebrands Factorの存在及び平滑筋細胞特異的α−アクチンの不在につ
いての免疫組織化学アッセイにより決定した。
形質導入の前日、内皮細胞を、ヘパリンを含まない培地に 5.5×103個の細胞
/cm2で供給した。次の日、内皮細胞を、8μg/mlのポリブレンを添加された
個々の生成細胞系に由来する組換えウィルスを含む上清液に24時間、暴露した。
ウィルス上清液を除去し、細胞に通常の培地を与え、そして増殖を、分析の前、
さらに48時間、進行せしめた。
高分子量ゲノム DNA及び全 RNAを、標準の技法(Molecular Cloning-A Laborat ory Manual
,T.Maniatis,E.F.Fritsch,and J.Sambrook)により、内皮細胞の
培養物から単離した。前記 DNA及び RNAを、完全なtPA cDNAフラグメントから調
製された32P−ラベルされた DNAプローブによるハイブリダイゼーション分析に
より分析した。標準技法が、電気泳動分離、フィルタートランスファー、ハイブ
リダイゼーション、洗浄及び32P−ラベリングのために使用された(Molecular C
loning-A Laboratory Manual ,T.Maniatis,E.F.Fritsch,and J.Sambrook)。
形質導入されたイヌ内皮細胞におけるヒ
ト tPAの生成は、種特異的免疫細胞学的染色により示された。形質導入された細
胞を、3%ホルムアルデヒドに室温で10分間、固定し、そして次に、0.1% Trit
on X−100 において5分間、透過せしめた。次に、固定された細胞単層を、ヒ
ト tPAに対するネズミモノクローナル抗体と共に、次にアルカリホスファターゼ
接合のヤギ抗−マウス抗体と共に、及び最後に、アルカリホスファターゼに対し
て特異的な色彩試薬と共に連続的にインキュベートした。この方法は特に、ヒト
tPAを発現するそれらの細胞を染色し、そして従来の光顕微鏡により可視化され
得る。さらに、形質導入された細胞からの tPA分泌を集密的細胞単層から決定し
た。新鮮な培地を細胞上に6時間、配置し、除去し、そして遠心分離により透明
にし、そしてヒト tPAの量を市販のELISA(Immunobind-5,American Diagnostics
)により決定した。
7.2.結 果
形質導入方法の効能を、擬似形質導入された又は MFG−tPA により形質導入さ
れた細胞集団の免疫細胞学的染色により示した。図5に示されるように、MFG 68
から収穫されたウィルス上清液への細胞の1回の暴露の後、実質的に全ての細胞
は、ヒト tPAを合成しない対照の細胞とは対照的に、ヒト tPAを合成する。これ
は、形質導入された細胞に対していづれのタイプの選択をも伴わないで達成され
た。
免疫学的アッセイを行ない、形質導入された培養物から分泌される tPAの量を
決定した。下記に示されるように、MFG 68又はα−SGC 22のいづれかからの組換
えウィルスにより形質導入された細胞は多量のヒト tPAを分泌した。類似する条
件下で、培養物中のヒト内皮細胞は典型的には、約1ngの tPAを分泌する〔Hans
s,M.,and D.Collen(1987)J.Lab.Clin.Med.109 : 97-104〕。
内皮細胞がMFG 68及びα−SGC 22からの組換えウィルスにより形質導入された
ことについてのさらなる確認として、DNA及び RNAを形質導入された細胞から単
離し、そして放射性ラベルされた tPA遺伝子に対するハイブリダイゼーションに
より分析した。DNA分析のオートラジオグラムを行なった。ハイブリダイゼーシ
ョンは感染されていない対照においては検出されなかったが、しかし適切な分子
量の単一のハイブリダイズする種が、2つの組換えベクターにより感染された細
胞に見られた。これは、遺伝子情報がそれらの形質導入された細胞のゲノムに移
行されたことを示す。
それらの細胞から単離された全 RNAのハイブリダイゼーション分析は、タンパ
ク質及び DNA結果を確証する。再び、ハイブリダイゼーションは対照細胞におい
ては検出されなかったが、しかし形質導入された細胞に由来する RNAにおいては
、適切なサイズのハイブリダイズするバンド見られる。MFG 68及びα−SGC 22組
換えウィルス生成細胞からの RNAはまた、対照として示される。
8.例: MFG−tPA−形質導入された内皮細胞により供給された血管移植片のイ
ンビボ抗血栓活性
8.1.材料及び方法
内皮細胞を、体重20〜25Kgの成長した雌の雑種犬の外部頸静脈から酵素的に収
穫し、そして実験室において培養し、そして例7に記載されるようにして純度に
ついて分析した。個々の動物から単離さ
れた細胞の半分を、前記セクションに記載されるようにして、MFG−tPA 組換え
ウィルスを生成するMFG 68細胞系からの上清液への暴露により形質導入した。他
の半分を擬似形質導入した。個々の集団に対して行なわれた増殖曲線は、増殖特
徴において差異を示さなかった。ELISA測定を、個々のバッチの形質導入された
細胞に由来する培養上清液に対して行ない、tPAが増強された細胞から分泌され
ることを確認した。次に、それらの細胞を、十分な数の細胞を得るために、約1
週間、実験室において増殖した。
細胞が単離された個々の動物のために、発泡性テフロン(W.L.,Gore and Asso
ciates,Inc.Flagstaff,AZ)から製造された2つの血管移植片を細胞により供
給した。1つの移植片を擬似形質導入された細胞により供給し、そして他の移植
片を形質導入された細胞により供給し、高レベルの tPAを分泌せしめた。0.4cm
×14cmの大きさの個々の移植片を、1.5μg/cm2のフィブロネクチン(Sigma Che
mical Corp.,St.Louis Mo)により予備被覆し、そして次に、2200,000個の内皮
細胞/cmにより供給した。次に、移植片を、培養物中においてさらに72時間イン
キュベートした。移植の前、末端を個々の移植片から切断し、そして細胞被覆面
積を確かめるために調べた。
細胞が収穫された同じイヌに麻酔をかけ、そして前記供給された移植片の部分
10cmを、大動脈−腸骨バイパスとして移植した。個々のイヌは2つの対側性移植
片を受け;1つは対照細胞により供給され、そして他は高レベルの tPAを分泌す
るよう形質導入された細胞により供給された。移植に続いて、移植片の性能を、
超音波により移植片の位置を捜し当て、そしてドプラー測定(Accuson,Inc.)に
より移植片を通しての血流流を評価するB−モードスキャナーにより毎日モニタ
ーした。血栓の形成を減じるための薬物は動物には投
与されなかった。
8.2.結 果
6匹の異なった動物における移植片性能の結果を分析した。その結果は図5に
示される。上記の移植片モデルは、ひじょうに厳重なモデルであり、そして閉塞
性凝集体形成により急速な移植片の機能不全を導びく。通常の移植片の機能は空
白の棒により示され、そして機能不全になりつつあるが、しかしまだ、機能的で
ある移植片は斜線の棒により示される。最初の動物においては、対照の移植片及
び増強されたレベルの tPAを分泌する形質導入された細胞によりライニングされ
た移植片(実験)は、移植の後24時間で凝集体の形成により機能不全になった。
すべての他の5匹の動物においては、高められたレベルの tPAを分泌する形質導
入された細胞によりライニングされた移植片は、単に擬似形質導入された細胞に
よりライニングされた移植片よりも長く機能した。この差異は24時間〜数ヵ月と
変化した。それらの結果は、治療効果が MFG−形質導入された内皮細胞によりイ
ンビボで達成され得ることを示す。
9.例:内皮細胞においてヒト第XIII因子を生成するためへの MFGベクターの
使用
9.1.材料及び方法
9.1.1.MFG/第XIII因子ベクターの構成
内皮細胞を、変性されたヒト第XIII因子遺伝子を含むレトロウィルスベクタ
ー、すなわちMFG(ATCC受託番号68726)により細胞を形質導入することによってヒ
ト第VIII因子を生成するために遺伝子的に増強した。変性された第XIII因子のc
DNAは、A1,A2,A3,C1及びC2ドメインのためのコード配列のすべて
を含むが、しかしながら、Bドメインはアミノ酸 743〜1648を欠失されている。
Bドメインの除去及び変性された第XIII因子遺伝子のレトロウィルスベク
ター MFG中への挿入は、下記に詳細に記載され、そして図7に示される。
5′及び3′未翻訳配列を有さない十分な長さのcDNAを、制限部位 NcoI(5
′)と XhoI(3′)との間に挿入されるプラスミドベクターにおいて得た。B
ドメインの除去のために、第XIII因子cDNAを、Bドメインの5′及び3′の両
側上に配列をつなぐ4個のフラグメントにおけるプラスミドベクター中にサブク
ローン化した。第VIII因子のcDNAの第1のフラグメントを、プラスミドベクター
pUC9における制限部位 SalIと PstIとの間にサブクローン化した。プラスミド
ベクターを、SalI及び PstIにより切断し、そして5′側のホスフェートをウ
シ腸ホスファターゼを用いて除去した。1591塩基対の XhoI(ヌクレオチド7263
)〜NdeI(ヌクレオチド5672)フラグメント、及び 359塩基対の NdeI(ヌク
レオチド5672)〜pstI(ヌクレオチド5313)フラグメント(十分な長さのcDNA
からの)を単離し、そして SalI/PstIにより消化されたプラスミドベクター
により連結した。
同じ翻訳読み取り枠においてアミノ酸 742〜1649を連結するBドメインをコー
ドする配列の大部分を除去するために、4種のオリゴヌクレオチドを、168個の
塩基対をカバーする5′側HindIII部位及び3′側 PstI部位により合成した。
それらのオリゴヌクレオチドは、アミノ酸 742、続いてL鎖の活性化ペプチドの
第1アミノ酸であるアミノ酸1649をコードするオリゴヌクレオチド2427でのHind
III部位からヌクレオチド5313での PstI部位まで拡張する。プラスミドベクタ
ーpUC9を制限酵素HindIII及びPstIにより消化し、そして5′側のホスフェート
をウシ腸ホスファターゼを用いて除去した。オリゴヌクレオチドを、4種の別々
の鎖として合成し、キナーゼ処理し、アニーリングし、そしてプラスミドベクタ
ーのHindIII部位と
PstI部位との間に連結した。
サブクローン化されたHindIII/PstIオリゴヌクレオチドを、プラスミドベク
ターpUC F8における PstI/XhoIフラグメントに並置した。このプラスミドを
生成するために、新規のポリリンカーを、使用される制限酵素部位5′SamI−B
amHI−XhoI−PstI−HindIII−Asp 718−NcoI−HpaI3′をコードする新規
のポリリンカーを有するpUC9プラスミド主鎖中に挿入した。プラスミドベクター
を制限酵素BamHI及びHindIIIにより消化し、そして5′側のホスフェートをウ
シ腸ホスファターゼにより除去した。PstI/XhoIサブクローンの部分的な Pst
I/BamHI消化物を用いて、3′側の第XIII因子フラグメントを単離し、そし
てサブクローン化されたオリゴヌクレオチドの PstI/HindIII消化物を用いて
、H鎖及びL鎖機能フラグメントを単離した。それらを、BamHI及びHindIII部
位間のプラスミドベクターpUC FB中に連結した。
ヌクレオチド2427及び7205間に第VIII因子配列を含むこのサブクローンを Asp
718及びHindIIIにより、消化し、そして5′側ホスフェートをウシ腸ホスファ
ターゼを用いて除去した。制限酵素部位Asp718(ヌクレオチド1961)及びHindIII
(ヌクレオチド2427)間に第VIII因子をコードするフラグメントを単離し、そし
てプラスミドベクター中に連結し、ヌクレオチド1961からヌクレオチド7205での
翻訳停止コドンまでの第XIII因子配列を含むサブクローン(pF8 3′デルタ)
を生成した。
変性された第XIII因子遺伝子を含むレトロウィルスベクターの構成を、レト
ロウィルスベクターMFGの制限部位 NcoI及びBamHI間に第XIII因子遺伝子を挿
入することによって行なった。第XIII因子サブクローンpF8 3′デルタをSmaI
により消化し、そしてオリゴヌクレオチドリンカーを用いて BglII部位に転換し
た。Asp 718/
BglIIフラグメントを3′第VIII因子サブクローンから単離し、そして翻訳の開
始のための ATGを含む5′第VIII因子フラグメントを、NcoI(ヌクレオチド151
)/Asp 718フラグメント(ヌクレオチド1961)として単離した。レトロウィル
スベクター MFGを NcoI及びBamHIにより消化し、そして5′側ホスフェートを
ウシ腸ホスファターゼを用いて除去した。第VIII因子フラグメントをレトロウィ
ルスベクター中に連結し、最終の第VIII因子レトロウィルス構造体を得た。
図6を参照のこと。
9.1.2.MFG/第VIII因子生成細胞系の調製
レトロウィルス粒子を生成する細胞系を、Bestwickなど.(Proc.Natl.Acad.Sci .USA 85
: 5404-5408(1988))により記載されるようにして、等数のエコトロピッ
クパッケージング細胞 Psi CRE及びアンフォトロピックパッケージング細胞CRIP
中へのレトロウィルスベクター MFG/第VIII因子のトランスフェクションにより
生成した。2種の宿主範囲のパッケージング細胞間に生じる重感染の程度をモニ
ターするために、生物学的活性の第VIII因子の生成を、Kabi Diagnostica Coate
st for Factor VIII,Helena Laboratories,Beaumont,Texasを用いて測定し、
そしてウィルス RNAの生成を RNAドットブロット分析により測定した。トランス
フェクション後21日で、トランスフェクトされたパッケージング細胞の混合物を
、アンフォトロピックパッケージング細胞系Psi CRIP−HIS と共に同時培養した
。CRIP HISパッケージング細胞系は、前に記載されたCRIPパッケージング細胞系
の変異体である。CRIP HISパッケージング細胞系は、Psi CRIPパッケージング細
胞系と同一であるが、但しレトロウィルスエンベロープ遺伝子はpSV2−HIS プラ
スミド DNA、すなわち異なった優性の選択可能マーカー遺伝子による同時トラン
スフェクションにより細胞中に導入された。パッケージング細胞系を、形質導入
粒子
の同種アンフォトロピックレトロウィルス原液を単離するために1:1の比で培
養した。アンフォトロピックパッケージング細胞系CRIP HISの重感染は、変性さ
れたヒト第VIII因子遺伝子を効果的に形質導入する組換えレトロウィルスを生成
する安定した細胞系、すなわちHIS 19の生成を導びいた。レトロウィルス導入性
細胞系の抗生物質選択は、高い力価の組換えレトロウィルスを生成する細胞系を
単離するために必要とされなかった。その細胞系のゲノム DNAが、生成細胞系に
存在するレトロウィルスベクターの組込まれたコピーの数を決定するためにサザ
ンブロットハイブリダイゼーション分析により特徴づけられた。レトロウィルス
生成細胞系におけるコピー数は約 0.5であり、従って平均50%のCRIP−HIS パッ
ケージング細胞は変性された第VIII因子遺伝子を有するレトロウィルスベクター
のコピーを含む。レトロウィルスベクター及び変性された第VIII因子遺伝子は損
なわれておらず、従って、パッケージング細胞系における DNAのいづれの欠失又
は再配置をも有さない。レトロウィルスベクターのコピー数は、レトロウィルス
生成細胞系の連続した継代で一定して存続する。最高の力価の組換えレトロウィ
ルスを得るために、HIS 19が、ヒスチジンを含まない選択培地において3継代、
続いて完全なDMEM培地において4継代、伝えられた。レトロウィルス粒子の生成
のために、HIS 19を、10cmの細胞培養皿に5×105〜1×106個の細胞で接種され
た。接種後48時間で、すなわち約70%の集密度で、新鮮な培地(DMEM+10%ウシ
血清)を、形質導入のための組換えレトロウィルスの源として、24時間後、収集
のためのプレート上に添加した。
9.1.3.内皮細胞の形質導入
変性された第VIII因子遺伝子を、頸静脈から単離されたイヌ内皮細胞中に形質
導入した。内皮細胞を、5%血漿由来の血清(ウマ)、
100μg/mlのヘパリン、及び50μg/mlの内皮細胞増殖因子を含む完全M199培
地に3×105個の細胞/10cm皿で4〜6時間、接種した。次に、細胞を、5%血
漿由来の血清及び 100μg/mlの内皮細胞増殖因子を含むM199培地(これは、形
質導入工程の効率に悪影響を及ぼすヘパリンを含まない)において一晩インキュ
ベートした。細胞を、新鮮なウィルス上清液及びポリブレン(8μg/ml)に24
時間、暴露した。ウィルス上清液の除去の後、細胞を、約70%〜80%の集密度に
増殖するために、5%血漿由来の血清、100μg/mlの内皮細胞増殖因子を含むM
199培地中に添加した。その時点で、培地を、5%の加熱不活性化されたウシ胎
児血清(66℃で2時間の加熱)及び50μg/mlのECGFを含むM199培地に変えた。
24時間のインキュベーションに続いて、培地を集め、そしてKabi Coatestにより
生物学的活性第VIII因子についてアッセイした。
9.2.結果:内皮細胞のインビトロ形質導入
このレトロウィルス生成細胞系により、50%〜75%の内皮細胞を、サザンブロ
ット分析により決定されるようにして形質導入した。第VIII因子を、組換えレト
ロウィルスへの1回の暴露によりこの頻度で形質導入し、そして形質導入された
細胞の抗生物質選択は伴わなかった。形質導入された内皮細胞は、組換えレトロ
ウィルスゲノムの完全なコピー及び変性された第VIII因子遺伝子(いづれの欠失
又は再配置をも含まない)を含む。遺伝子的に増強された内皮細胞からの生物学
的活性第VIII因子の生成の速度は、400ng/5×106個の細胞/24時間であった。
10.例:内皮のインビボ形質導入
前記例に記載されるようにして製造された組換えレトロウィルスの標準原液を
用いて、内皮細胞のインビボ形質導入を示すデータを、ここに記載されるように
して生成した。このアプローチは、動脈
表面に対する一定の損傷が小片の内皮細胞を除去し、そしてこの露出された部分
が欠損部の端からの新しい内皮細胞の増殖により22時間以内で治癒する、以前に
公開された観察(Reidy MA,Schwartz SM,Lab Invest 44 : 301-308(1981))に基
づかれている。細胞分裂は、組換えレトロウィルスによる効果的な形質導入のた
めの必要条件であり、そして針金による内皮の損傷は、内皮細胞増殖を誘発する
可能性ある多くの方法の1つである。本発明の方法は、内皮細胞増殖を誘発する
ために一定の損傷の Reidy's技法を用い、次に組換えレトロウィルスベクターを
含む上清液に直接的に増殖細胞を暴露する。本発明の初期実験は、この方法が内
皮細胞を都合良く形質導入することの能力を提供し、従って、新規の遺伝子配列
の好都合な導入のための組織培養技法の必要性を実質的に回避する。
この方法は次の2つの手術工程を必要とする:第1の工程は血管表面を傷つけ
ることから成り(本明細書においては右腸骨動脈について記載されている)、そ
して内皮細胞の増殖を誘発する。第2の工程は、遠位の動脈樹からの血液の流れ
を妨げながら、血管表面上で複製を受ける細胞に組換えレトロウィルスを供給す
ることを含んで成る。実施の単純さのために、前記工程は腸骨動脈について記載
されている。
10.1.材料及び方法
インビボでの遺伝子移行を示すために、本発明者は、α−SGC ベクター(図2
d及び4)に基づく改良されたベクターを有する、1987年(Price J.Turner D.
Cepko C.1987 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84 : 156160)に出版されたマーカー遺
伝子概念を使用した。β−ガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子をα−SGC
ベクター中に挿入し、図8に示されるα−SGC−LacZベクターを生成した。この
組換え構造体をCripパッケージング細胞系中に移行し、そして高い
力価のα−SGC−LacZ組換えレトロウィルスを生成するt Crip細胞のクローンを
、例9に記載されるようにして単離した。α−SGC−LacZ組換えレトロウィルス
の原物を、インビボ形質導入のために使用した。
実験動物(ウサギ)に麻酔をかけ(ケタミン/キシラジン)、両方の鼠径部の
毛をそり、そして準備し、そして動物を手術テーブル上に置いた。左右の垂直な
鼠径部の切開を通して、通常の、表面の及び深在の大腿部動脈を露出した。右側
上に(傷つけられた側)、通常の大腿部動脈から離れた小さな枝を縛り、単離さ
れた動脈部分からの流出が内部の腸骨動脈を通してのみ生じることを確保する。
必要なら、鼠径靭帯を分割し、そして血管を腹膜後腔に従がえ、すべての横の枝
の完全な制御を確かめた。右側の表面の大腿部動脈(SFA)を、その深在開始下約
1.5cmで3−0の絹により縛り、SFAの制御を SFA/深在結合部で得、そして横の
動脈切開を行なった。血管壁との接触を確保するために弾性を提供するようそれ
自体二重にされた細い針金(20ゲージの血管内カテーテルのスタイレットを使用
した)を、通常の大腿部及び腸骨動脈の逆方向に通し、一定の損傷を生成した。
針金を除き、20ゲージの血管カテーテルを動脈切開により挿入し、そして次の手
術工程でのすぐの接近のために下にある筋肉に固定した。切開は層に近く、そし
て動物は回復した。
20時間後、α−SGC−LAC−Zベクターの生成体から収穫され、そして8μg/
mlの最終濃度にポリブレンにより補充された、組換えウィルス含有上清液を、イ
ンビボ形質導入のために使用した。動物を再び麻酔をかけ、そして両切開を滅菌
した環境で再び行なった。前に露出された右の腸骨血管に障害を与えないで傷つ
けられた部分上の右の腸骨血管を制御するために、#3の FogartyTMバルーン塞
栓切除用カテーテルを左の表面大腿部動脈に動脈切除を通して挿
入し、大動脈分岐に通し、そしてバルーンをふくらませ、血流を中断した。右の
大腿深動脈を閉塞した。組換えレトロウィルスを含む上清液(10ml)を、右の S
FAに前もって配置された血管カテーテルを通して手動注入により導入した。上清
液は右の通常の大腿部動脈から右の外部腸骨動脈に及び右の内部腸骨動脈中に逆
方向型式で流れた。右の内部腸骨動脈を通り過ぎることによって、上清液のため
の開放性流出を可能にし、そして十分の10mlの上清液を徐々に注入することがで
きる。今日まで行なわれた実験において、上清液は4〜8分間、血管壁に暴露さ
れて来た。次に、右及び左側からカテーテルを除き、止血を行ない、そして切開
部を閉じた。
10〜14日後、動物に麻酔をかけ、その後、殺害した。麻酔の後及び露出の前、
開存性を遠位血管の直接的な触診により評価した。腎下大動脈及び下大静脈を手
術により露出し、カニューレ挿入し、そしてその下部の先端の血管を、生理学的
圧力(90mmhg)で、ヘパリン化されたリンガーラクテート(2U/ml)によりフ
ラッシュした。ネンブタールの致死量を投与し、そして動脈を、0.1Mのカコジ
レート中、0.5%のグルタルアルデヒド溶液において10分間、灌流下で固定した
。大動脈及び両腸骨動脈を連続して切除し、そして1mMの MgCl2を含むリン酸緩
衝溶液(PBS)によりすすいだ。次に、血管を、x−gal 基質において37℃で1〜1
.5 時間インキュベートすることによりlacZ活性について染色した。反応が完結
した後、x−gal 溶液を洗浄し、そして PBSにより交換した。
10.2.結 果
2種の実験がこの方法により完結された。両実験は、細胞質パターンでの選択
的な濃い青色の染色により可視化されるように、動脈の表面上の細胞においての
lacZ遺伝子生成物の現場発現により示されるように成功したインビボ形質導入を
示した。Reidyなど.によ
り記載される損傷及び増殖のパターンと矛盾しない濃く染色された青色細胞が、
針金により傷つけられ、α−SGC−LacZ組換えレトロウィルスに暴露され、固定
され、そしてlacZ活性のために染色された外部腸骨動脈の断片の表面上に見出さ
れる。
11.例:いくつかの組換え MFG−ADA レトロウィルスベクターにより形質導入さ
れた造血幹細胞によるヒトアデノシンデアミナーゼのインビボ発現
同じ遺伝子生成物、ヒトアデノシンデアミナーゼ(huADA)、及び転写制御配列
において特に異なる同じベクター主鎖をコードするいくつかの異なった MFG−基
礎のベクターを構成し、そしてネズミ造血幹細胞を効果的に形質導入するそれら
の能力について評価した。形質導入された幹細胞を、骨髄移植実験、及び移植に
続いて、種々の造血細胞による huADAの長期のベクター介在発現に使用した。
11.1.方法及び材料
11.1.1.組換えレトロウィルスベクター及びレトロウィルス生成細胞の生成
αG−SGC ベクターを除くすべての組換えレトロウィルス構造体は、図11Aに
記載されるレトロウィルスベクターMFG(MFG/Mo−LTR)に基づかれている。生成
されるすべての新規構造体を、DNA配列決定により確かめた。レトロウィルス生
成細胞系を、Danos and Mulligan,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:6460-6
464 により前で記載されたように、アンフォトロピックパッケージング細胞系ψ
CRIP中に、プラスミドpSV2−Neo により個々のレトロウィルスプラスミドを同時
トランスフェクトすることによって生成した。細胞を有さない上清液を、1mg/
mlでのG418(Gibco BRL,Grand Island,NY)の存在下での10日間の選択の後に収
穫し、そしてψCRE 細胞を感染せしめるために使用した。αG−SGC 生成体を、
CRE細胞中へ
の直接的なトランスフェクションの後に単離した。限界希釈により得られるベク
ター当たり25個のクローンを、サザンブロット分析により高い力価についてスク
リーンした。5×105個の NIH 3T3細胞を、8μg/mlのポリブレン(Sigma Che
mical Co.,St.Louis,MO)の存在下で、ウィルス生成クローンからの24時間の
上清液 0.5mlにより感染せしめることによって、滴定を行なった。ゲノム DNAを
サザンブロット分析のために抽出し、標的の集団に組込まれるプロウィルスコピ
ーの数を定量化した。選択されたウィルス生成細胞系におけるB2変異の存在及
び感染された 3T3細胞へのその伝達を確かめるために、Mo−MuLVヌクレオチド72
−92及び 470−490 に対応する PCRプライマーを用いて、400bpのフラグメント
を増幅し、次にそれを配列決定した(fmolTMDNA Sequencing System,Promega,
Madison,WI)。ψCRE ウィルス生成細胞からの上清液及び移植受容体からの血
漿を、移動アッセイ(Wiosonなど.、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:439-44
3)に基づいて複製−コンピテントウィルスの存在について試験した。本研究にお
いては、Hartman and Mulligan,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8047-8051
により記載されるようにして、サルモネラ チピムリム(Salmonella typhimuri
m)ヒスチジノールデヒドロゲナーゼを発現する組換えレトロウィルスゲノムを検
出できるよう、アッセイを改良した。
ゲノム DNAを、Seifなど.、1991,Methods Mol.Cell.Biol.2:216-217 に
記載されるようにして調製し、そして NheI又はEc1136II(プロウィルス構造の
ために)及び NcoI又はBamHI(プロウィルス組込みパターンのために)により
消化した。ハイブリダイゼーションフィルターを、hADA cDNAの 721bpの32P−
ラベルされたBamHI−BglIIフラグメントによりプローブした(Multiprime DNA
Labeling System,Amersham)。コピー数を、プロウィルスの単一
コピーにより感染された細胞系に生成されるバンドの強度に比較して、Phosphor
imager(Fuji Bio-Imaging,Fuji Medical Systems,Stamford CT)に基づいて決
定した。不均等な負荷を考慮して、バンドシグナルを、ネズミ内因性 ADAバンド
に対して標準化した。
11.1.2.組換えレトロウィルスベクターによるネズミ骨髄細胞の形質導入及び形
質導入された細胞のマウス中への移植
骨髄(BM)細胞を、Kg体重当たり 150mgの5−フルオロウラシルの静脈内注入
の後6日で、(Wilsonなど.、前記)(Jackson Laboratories,Bar Harbor,ME)に
より前で記載されるようにして、C57BL/6J雄マウスの脛骨及び大腿骨から得た
。形質導入を、10%(v/v)WEHI−3B上清液及び4μg/mlのポリブレンの存
在下で、BM細胞を、ψCRE 生成体の単層上で48時間、同時培養することによって
達成した。非付着性細胞を収穫し、そしてマウス当たり2×105〜4.5×106個の
生存細胞を、尾の静脈を通して、全身体を照射された(11Gy)同系の雌宿主中に
注入した。移植されたマウスを、移植後12〜14ヵ月で殺害し、そして末梢血液、
EM、脾臓、脾臓由来のB及びTリンパ球及びBM由来のマクロファージのサンプル
を、プロウィルスの存在及び酵素発現の存在について分析した。B及びT細胞を
、それぞれ10μg/mlのリポ多糖類(LPS)及び2μg/mlのコンカナバリンA(Si
gma)による72時間の刺激の後に収穫した。85%以上の細胞は、FACS分析により決
定される場合、B又はTリンパ球であった。BM細胞を、20%(v/v)のL929細
胞上清液を含む培地において培養した。10〜11日後に収穫された細胞の95%以上
は、形態学的分析により決定される場合、マクロファージであった。
11.1.3.アデノシンデアミナーゼ活性
アイソザイム−比活性を、Wilsonなど.、前記に記載されるようにして、非変
性等電点電気泳動(IEF)(Multiphor II,Electropho
resis System,Pharmacia LKB,Piscataway,NJ)により細胞溶解物において検出
した。全タンパク質濃度を、Bio-Radタンパク質アッセイ(Bio-Rad,Melville,N
Y)を用いて個々のサンプルについて決定した。固定された量の全タンパク質を、
IEFゲル上に負荷した(末梢血液細胞(PBC)のためには 300μg、BMのためには15
0μg、脾臓、マクロファージ及びBリンパ球のためには 120μg、Tリンパ球
のためには75μg)。12分間の染色反応の後、ゲルを固定し、そして個々のバン
ドの比色強度を、コンピューター化されたデンシトメーター(Computing Densito
meter,Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)を用いて定量化した。
11.2.結 果
11.2.1.ヒトアデノシンデアミナーゼをコードする組換えレトロウィルスの生成
MFGレトロウィルスベクター中へのヒト DNA配列の挿入も、ウィルスエンベロ
ープ ATGにより通常支配されるサブゲノムウィルス転写体と同一の転写体におい
て一定の位置でADA cDNAの開始 ATGコドンを配置するために行なった。選択マー
カーはベクターには存在しない。Bowtell and 協同研究者(Botwelなど.、1987
,Mol.Biol.Med.4:229-250 ; Botwellなど.、1988,J.Virol.62:2464-24
73)及びOstertag(Beck-Engeserなど.、1991,Hum.Gene Therapy 2:61-70)に
よる研究は、ベクターにおける骨髄増殖性ウィルス(MPSV)LTRの転写活性を示し
た。本発明者は、Mo−MLV LTRSの代わりに、MPSVのエンハンサー(3′MoLV LTR
に位置する)又は5′及び3′の両 MoMLV LTRのいづれかを有する MFG-ADA の
誘導体を生成した。さらに、前の研究は、Moloney Friend Virusエンハンサー配
列の実質的に新規の性質を示唆した(Hollandなど.、1987,Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 84:8662-8666 ; Boszeなど.、1988,EMB
O 5:1615-1623 ; Thiesenなど.、1988,J.Virol.62:614-618)。従って、MF
G−ADA 誘導体は、類似するFriendエンハンサー配列により置換されたMo−MLV
エンハンサー配列により生成された。本発明者はまた、B2と命名された、ウィ
ルスtRNA一次結合部位に突然変異を担持する MFG−ADA MPSVエンハンサー配列の
MPSV LTR含有誘導体及び MFG−ADA の誘導体も生成した(Barklisなど.、1986,
Cell 47:391-397 ;Weiherなど.、1987,J.Virol.61:2742-2746)。最後に、
LTR−基礎のベクター、及び挿入された遺伝子の発現のために内部プロモーター
を用いるベクターの比較を提供するために、本発明者はαSGC−ADA を生成した
。このベクターは、ヒトαグロビンプロモーター及び CMVエンハンサー配列から
成るハイブリッド転写要素を利用し、そして3′LTR にエンハンサー配列の欠失
を担持する。上記構造体の個々の正確な構造は、セクション 11.1.1.に記載され
ている。
上記ベクターのすべてを、ψCRE パッケージング細胞系にパッケージングした
。個々のベクターのために、約25個のクローン化されたパッケージング細胞系を
、ウィルス生成について試験し、そして最高のコピー数で正しいプロウィルス構
造を伝達する特定の細胞系を、のちでの使用のためにサザンブロット分析により
選択した。B2変異を保持しており、そしてそれを NIH 3T3細胞に伝達すること
ができる、Mo−LTR/B2及びMPSV−Enh/B2構造体のためのウィルス生成細胞クロ
ーンを選択するために、本発明者は、PCRにより増幅し、そして生成体及び感染
された細胞の両者にB2差異を包含する 400bpのフラグメントを配列決定した。
前記変異はウィルス生成細胞クローンの半分〜1/4に示され、そしてそれが生
成体細胞に存在する場合、標的細胞に伝達されることが示された。2つの構造体
の個々についての5〜7個のクローンの PCR分析の後、高い力価
のクローンを同定した。
個々のベクターを示す選択された生成体細胞から得られたウィルスにより感染
された NIH 3T3細胞から単離された DNAのサザンブロットが図11Cに示される。
そのデータは、正しいプロウィルス構造が高い効率で細胞に伝達されたすべての
場合に存在することを示唆する。NIH 3T3細胞の形質導入についてのすべてのウ
ィルスの伝達効率は、細胞当たり 0.7〜3.6 の範囲のプロウィルスのコピーであ
った。それらのウィルス生成クローンを用いて、例 11.2.2.及び 11.2.3.に記載
される実験を行なった。
11.2.2.組換え MFG−ADA ベクターにより形質導入されたネズミ骨髄移植受容体
におけるヒトアデノシンデアミナーゼの検出及び定量化
形質導入された造血幹細胞に由来する細胞におけるヒトアデノシンデアミナー
ゼ(huADA)発現をインビボで調査するために、マウスを、セクション 11.1.2.に
記載されるようにして、組換えウィルス生成細胞と共に同時培養された 2.5×105
〜4.5×106個のBM細胞により移植した。15〜18匹のマウスを、構造体当たり移
植した。ベクター介在の遺伝子発現を評価することにおける第1の段階は、セク
ション 11.1.3.に記載されるアッセイを用いて、移植後5〜7ヵ月で、再構成さ
れた動物の末端血液細胞(PBC)における huADA酵素活性を分析することを包含し
た(図12)。このアッセイにおいてはヒト ADA活性は、ネズミ ADA活性から容易
に分離され得、そして2つの活性の相対レベルは現場ラベルされた反応生成物の
強度のデンシトメトリー測定により評価され得る。このアッセイは、酵素活性の
量に比例したシグナルを生成する。
組換え MFG−ADA ベクターにより形質導入された細胞により再集団化されたマ
ウスにおいて、93匹の移植された動物のうち90匹が h
uADAを発現した。それらの移植された動物の83%(77/93)において、huADAの
発現のレベルは、内因性ネズミADA(mADA)発現のレベルに等しいか又はそれ以上
であった。それらのマウスの14%(13/93)において、huADAのレベルはネズミ
ADAの1/4〜3/4の程度で存在した。わずか3%(3/93)の動物が検出可
能なレベルで huADAを発現しなかった。αG−SGC−感染された細胞により再構
成されたマウスにおいて、11匹のうちわずか4匹のマウスがネズミ酵素に接近し
たレベルで huADAを発現し、そして6匹はより低いレベルで huADAを発現した(
図12)。このベクターからの huADAを発現するマウスの低い%は、たぶん、それ
らの動物の組織に検出されるプロウィルスの低いコピー数によるものである。そ
れらの研究におけるマウスからマウスに観察されるネズミ活性に対するヒト活性
の平均比に基づけば、データは、Mo−MLV LTR よりもむしろMPSV LTRを利用する
MFG−ADA 誘導体が他の構造体よりも適度に多い量の酵素を生成した(約2倍)
ことを示唆する。しかしながら、このデータは、プロウィルスの DNAコピー数に
おける実質的な差異は考慮していない。
11.2.3.骨髄移植に続いて種々の造血細胞系によるヒトアデノシンデアミナーゼ
の長期のインビボ発現
骨髄移植の後7ヵ月で末梢血液において有意な遺伝子発現を示した骨髄移植片
受容体の高い頻度に基づいて、少数の動物を、移植後、長期間(1年以上)で多
くの異なった造血細胞型におけるベクター発現についてさらに試験した。それら
の研究の第1段階は、末梢血液における酵素発現についてこれまで分析されたマ
ウス再分析することであった。図12Bに示されるように、2つの時点(個々の I
EFゲルトラック下に示される)でのヒト及びマウス酵素の相対量の比較は、huAD
A発現におけるいづれかの有意な低下が時間と共に生
じたかどうかについてはほとんど示唆しない。異なったベクターによりラベルさ
れたボックスに示されるように、7ヵ月で観察される発現の約80%が、1年後、
持続する。αSGC−ADA 処理された細胞により移植されたマウスにおいては、発
現におけるわずかに一層の有意な低下が観察された。
次の一連の実験においては、異なった造血細胞型における huADAの発現を、個
々の細胞集団を分別し、そして酵素活性及びプロウィルスのコピー数を定量化す
ることによって試験した。この分析は、(i)MFG−ADA;(ii)MFG−ADA(+B2)
;(iii)MFG−ADA(Friendエンハンサー);(iv)MFG−ADA(MPSV−LTR);又は(
v)α−SGC−ADA のいづれかにより形質導入された細胞により移植された3〜
5匹の動物を包含した。酵素及び DNA分析にゆだねられる細胞集団は、完全な骨
髄、完全な脾臓及び分別されたマクロファージ、Tリンパ球、及びBリンパ球を
包含した。いくつかの異なった手段で発現され、得られたすべてのデータの編集
は図13に示される。パネルAは個々のマウスを表わすデータを示し、そして他の
パネルは平均値を示す。
集合的には、データは次の通りに要約され得る:
1.異なったウィルスにより達成れる平均プロウィルスコピー数:
図13のパネルCは、有意な割合の異なった造血細胞集団が移植後1年以上でさ
え、プロウィルス配列を担持することを示す。α−SGC−ADA 動物を除いて、少
数の細胞がプロウィルスを担持しているように見える場合、他のベクターの個々
はすべての系統において比較できるプロウィルスコピー数(0.2〜0.7 のコピー/
細胞)を生成した。誤差の棒は、マウスからマウスにわたって、プロウィルスコ
ピー数に有意な変動が存在することを示す。特定の形質導入された
幹細胞クローンが異なった系統に不均等に寄与し、コピー数における観察される
変動を引き起こすことが可能である。
2.異なったウィルスにより達成される huADAの平均発現レベル:
図13、パネルDに示される結果は、平均して、異なったベクターにより異なっ
た造血細胞系に達成される、著しく類似するレベルの遺伝子発現が存在すること
を示唆する。この結論は、試験されるベクターが、かなりの程度、遺伝子発現の
組織特異性を示さず、そして従って、発現が特定の細胞系に必要とされ、さらに
他の細胞において許容される種々の用途のために十分に有用であることを示唆す
るために、ひじょうに重要である。
図13、パネルB及びDに示される結果は、すべてのベクターが異なった造血細
胞系に遺伝子発現を生成せしめるが、MoLTR−B2、及び MFG−ADA のMPSV−LTR
誘導体の両者は、親の MFG−ADA ベクターに関して、ほとんどの系統に高レベル
の遺伝子発現を生成せしめるように思えることを示す。マウスからマウスにわた
っての発現レベルの有意な変動、及び試験される比較的少数の動物のために、デ
ータの統計学的分析を提供することは重要であった。図13のパネルB及びDに示
されるように、星印で示される棒は、親の MFG−ADA ベクターについての値に関
して統計学的に有意である値を示す。このデータは、B2及びMPSV LTR誘導体の
みが MFG−ADA ベクターに関して発現の有意な差異を示すことを示唆する。B2
ベクターの場合、有意性は、マウスからマウスにわたって観察される発現レベル
の広い変動のために、Tリンパ球系のためには確立され得ない。同様に、統計学
的有意性は、MFG−ADA のMPSV−LTR 誘導体の場合、マクロファージ系のために
は確立され得ない。
図13、パネルAに提供されるデータを表わすのに有用なもう1つ
の手段は、mgタンパク質当たりのプロウィルスコピー数当たりよりもむしろ、mg
タンパク質当たりの個々の系統における発現のレベルを考慮することである。デ
ータのこの表示は個々のベクターの全体の性能の評価に、たぶん最とも関連して
いる。なぜならば、それはベクターの固有の発現能力及びベクターの細胞を形質
導入する能力の両者を考慮するからである。興味あることには、個々のベクター
(αSGC−ADA ベクターを除く)により達成される比較できるプロウィルスコピ
ー数のために、図13、パネルDにおけるデータは、パネルBに示されるデータに
ひじょうに類似している。再び FFG−ADA マウスに関する遺伝子発現における統
計学的に有意な差異がB2及びMPSV−LTR ベクターの両者に関して観察された。
パネルBに提供されるデータとは対照的に、マクロファージにおけるB2ベクタ
ーの発現は、MFG−ADA により達成される発現とは有意に異ならなかった。
12.例:改良された安全性特徴を有する MFGベクター誘導体
MFG−Sベクターは、相同の組換え出来事を通して複製−コンピテントウィル
スの形成の可能性をより一層、最小にするように企画された FGFベクターの誘導
体である。特に、MFGは、細胞表面及び細胞質 gag−pol ポリタンパク質の両者
のアミノ末端部分をコードする2種の損なわれていないオーバーラップする読み
取り枠(“ORF”)を保持する。それらの ORFは、複製−コンピテントウィルスの
形成を導びくことができるパッケージング細胞系に存在する、ウィルス構造コー
ド配列と共に組換え出来事のための標的領域を提供する。このすでに遠隔の可能
性を最小にするために、MFG−Sベクターを、3種の特定の突然変異が ORFを破
壊するためにウィルス gag領域中に導入され、そしてそれにより、いづれかの適
切なサイズの細胞表面又は細胞質 gag−関連ポリペプチドのいづれかの発現の可
能
性を最小にできるように構成した。
MFG−Sレトロウィルスベクターを生成するために、MFGレトロウィルスベクタ
ーへの特定の突然変異が、図14に MFG及び MFG−Sの DNA配列の直接的な比較に
より示される。それらは、ヌクレオチド1256でのAのTへの変化及びヌクレオチ
ド1478でのCのTへの変異である。それらの突然変異は、細胞表面又は細胞質 g
agポリペプチドのための開始コドンから下流に停止コドンを創造し、そしてそれ
ぞれ、その対応する gag−関連 ORFを84及び15のヌクレオチドに減じる。第3の
突然変異は、ヌクレオチド1273でTをAに変える DNA配列に構築された。この変
化は、ORFに影響を及ぼさないが、しかしパッケージング機能のために理論的に
重要であるステムループを保持するヌクレオチド1252とペアーリングする塩基の
ための可能性を保持する補足的な変化である。
MFG−Sレトロウィルスの顕著な特徴及びヌクレオチド位置によるそれらの所
在が下記表IIに列挙される。
図15は、MFG−Sレトロウィルスベクターの構造特徴を示す。その MFG−Sベ
クターは、次の部分から成る:(1)5′LTR、及びヌクレオチド1039で NarI
部位に延長する下流の配列(NarIは NdeI部位に転換された)を含むMo−MuLV DN
Aフラグメント;(2)レトロウィルス配列のヌクレオチド位置 626でのSmalリ
ンカー;(3)位置5401での NdeI部位からヌクレオチド位置5674での XbaI部
位まで延びるMo−MuLV DNAフラグメント;(4)NcoI部位(CTAGACTTGCCATGGCG
CGATC)を含む合成二本鎖 DNAフラグメント;(5)ヌクレオチド位置7672で Cl
aI(BamHI部位に転換されている)部位から3′LTR まで延びるMo−MULVフラ
グメント;及び(6)pBR322細菌プラスミド配列。ヌクレオチド置換は、MFG−
SベクターにおけるMo−MuLV配列の位置1256,1273及び1478で合成された。それ
らのヌクレオチド位置はベクターのHindIII部位に関する(図17における MFG−
Sの完全なヌクレオチド配列を参照のこと)。MFGのプロウィルス転写単位は、
5′端上にマウスゲノム配列の 396個のヌクレオチド及び3′端上に 697個のヌ
クレオチドを有する。cDNA配列は、ユニーク NcoI部位とBamHI部位との間に挿
入され得る。フランキングマウスゲノム及びプロウィルス配列は、pBR322のHind
III部位とEcoRI部位との間にクローン化される。pBR322におけるBamHI部位は
排除された。
図16は、MFG−Sベクターの環状制限地図を提供する。図18は、 MFGベクター
の制限地図を表の形で提供する。
13.生物学的寄託
1991年10月3日、出願者は、American Type Culture Collection,Rockville
,Md.,USA(ATCC)に、本明細書においてATCC受託番号第 68726号として記載さ
れる、第VIII因子挿入体を有するプラスミド MFG、本明細書においてATCC受託番
号第 68727号として記載される、tPA挿入体を有するプラスミド MFG、本明細書
においてATCC受託番号第 68728号として与えられる第VIII因子として与えられる
、第VIII因子挿入体を有するプラスミドα−SGC、及び本明細書においてATCC受
託番号第 68729号として与えられる、tPA挿入体を有するプラスミドα−SGC を
寄託した。1991年10月9日、出願者は、American Type Culture Collection,Ro
ckville,MD.,USA(ATCC)に、
本明細書においてATCC受託番号第 68754号として記載されるプラスミド MFG及び
ATCC受託番号第 68755として記載されるプラスミドα−SGC を寄託した。それら
の寄託は、特許手続きのために及びブダペスト条約下での規定のために、微生物
の寄託の国際認識に基づくブダペスト条約の規定下で行なわれた。これは、寄託
の日から30年間、生存培養物の維持を確かにする。生物は、ブダペスト条約の条
件下でATCCにより入手可能にされ、そして出願者と適切なアメリカ特許の発行に
基づいて制限されない利用性を確かにするATCCとの間での合意に従う。寄託され
た菌株の利用性は、特許法に従っていづれかの政府の権威下で許可される権利に
違反して本発明を実施するための許可として解釈されるものではない。
当業者は、本明細書に特別に記載される本発明の特定の態様の多くの同等物を
認識し、又は日常の実験を用いて確かめることができる。そのような同等物は、
次の請求の範囲に包含される予定である。
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願及び出版物は、引用により本明
細書に組込まれる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 リビアー,イザベル
アメリカ合衆国,マサチューセッツ
02114,ボストン,ウエスト シーダー
ストリート 90
(72)発明者 コーエン,ローレンス ケー.
アメリカ合衆国,カリフォルニア 94611,
オークランド,キャボット ドライブ
5670
(72)発明者 ギルド,ブラッド
アメリカ合衆国,マサチューセッツ
01742,コンコード,リバーデール ロー
ド 109
(72)発明者 レイフィールド,ローリ エフ.
アメリカ合衆国,カリフォルニア 94123,
サンフランシスコ,ビーチ ストリート
#5 2249
(72)発明者 ロビンズ,ポール
アメリカ合衆国,ペンシルバニア 15216,
マウント レバノン,オーバールック ド
ライブ 527
(72)発明者 マリガン,リチャード シー.
アメリカ合衆国,マサチューセッツ
01773,リンカーン,サンディ ヒル ロ
ード 2