【発明の詳細な説明】
細胞傷害性Tリンパ球刺激およびHCV曝露診断用C型肝炎ウイルスコアペプチ
ド発明の背景 発明の分野
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)のコアタンパク質に由来するペプチド
に関する。該ペプチドは、免疫化宿主体内で細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応
答を惹起するペプチドである。本発明はまた、HCV感染の予防および治療用ワ
クチンおよび患者体内でHCV曝露を検出する診断方法に関する。関連技術の説明
C型肝炎ウイルスは非経口的後天性非A非B型肝炎のほとんどの症例の原因で
あるばかりでなく、散発性集団後天性急性ウイルス性肝炎、原因不明の慢性肝炎
、特発性肝硬変、およびおそらくは肝細胞癌のかなりの症例の原因でもある(2
、18、37、54)。このウイルスは、これらの医学上重要な問題となってい
る慢性感染症および慢性肝疾患を引き起こす傾向がある。したがって、このウイ
ルスによる感染を防御するワクチンおよび患者のHCV曝露度を評価する診断方
法が強く求められている。
HCVは1重らせんのプラスセンスRNAウイルスであり(10)、フラビウ
イルス科に分類されている(8、28)。このウイルスの構造タンパク質は、ヌ
クレオカプシドを形成するコアと2つのエンベロープ糖タンパク質E1およびE
2とから成る。これらのエンベロープタンパク質は配列が非
常に変化しやすく(33)、HIV−1の研究で示されているようにCTLクロ
ーンは異なるHCV単離株を識別するので(46、63、64)、該エンベロー
プタンパク質による免疫化はHCVの場合には最適な手段でないと考えられる。
予想されるエンベロープ糖タンパク質のアミノ酸配列変異性が大きいのに対し、
HCVのコアタンパク質は異なる単離株群間での配列保存性が大きく(33)、
ワクチンによるCTL誘導の見地から特に興味深いものである。コアタンパク質
配列が保存されているので、曝露を受けた者の体内でのCTLによるHCVコア
タンパク質ペプチド認識を測定することによりHCV曝露を判定する診断方法の
ターゲット(target)としてもこのタンパク質が好適である。
関連する動物ペスチウイルス同様、HCV感染も急性非伝染性疾患ならびに慢
性肝疾患、肝硬変、および肝細胞癌につながる慢性感染症を引き起こす。肝疾患
の慢性化機構と病因はいずれも不明である。E2タンパク質中に見つかっている
高変異性領域に起因する慢性感染症を説明する免疫回避機構が提案されている(
29、70)。通常は1つの配列が優勢であるが、この高変異性領域に含まれる
複数配列を同一の患者から同時に取得することができる。ワイナーら(Weiner e
t al.)は、免疫選択下では優勢配列が経時的に変化すること、およびこのウイ
ルスの主要中和エピトープがこの高変異性領域であることを示唆している(71
)。チンパンジーにおける実験的接種とチャレンジ実験でも、感染後に効果的な
保護抗体応答が増強するということを証明することはできな
かった(23、53)。
したがって、HVC感染においてT細胞応答を確認すること、および免疫なら
びに病因とそのT細胞応答との関係を決定することが重要である。T細胞エピト
ープはこのウイルスの非構造的成分に存在すると考えられるので表面抗原と同じ
免疫圧を受けていない可能性があるため、重要なワクチン添加物となる可能性が
ある。
細胞傷害性Tリンパ球はある種のウイルス感染に対するin vivo防御を媒介す
ることがわかっている(19、51、52)。感染が慢性化することおよび病理
組織学的所見からみて、おそらくHCVは肝細胞中では直接的な細胞傷害性(ま
たは細胞溶解性)を示さないと思われる。過去の研究で、CD8+のCTLはH
CVタンパク質内のエピトープを認識すると報告されている(38、60)。ワ
クチンとなりうる物質にCTLエピトープを加えると、表面糖タンパク質のみか
ら製造されたワクチンに見られる問題の一部が解決されるかもしれない。
クラスIとクラスIIのMHC分子はT細胞に作用して、外来抗原プロセシン
グ後のタンパク質のポリペプチド断片を認識させる(3、26、56、59、6
6、73)。とくにクラスIのMHC分子は、内因的に合成された、感染性ウイ
ルスのタンパク質を含む、タンパク質から切断されたペプチドを集めて、提示し
、CD8+のCTLに対しウイルス感染細胞から防御する免疫監視機構を働かせ
る。したがって、細胞内で合成されたウイルスタンパク質であれば、細胞表面上
でインタクトの状態で発現されない場合でも、上記CTLのターゲットになりう
る。合成ペプチドワクチンは、全タンパク質や減弱または死滅ウイルス免疫原よ
りも、好ましくない免疫応答の発生頻度が低いという長所がある(4)。発明の概要
本発明の一部は、HCVのコアタンパク質のCTLエピトープに相当するペプ
チドに存する。該ペプチドはMHC分子に結合したHCV感染細胞の表面に提示
されるHCVの断片である。
該ペプチドはワクチン接種手順の一部として免疫原として使用することもでき
るし、診断または予後判定手段として使用することもできる。前者の用途におい
ては、該ペプチドをワクチンとして処方し、HCV感染の予防または治療を行う
対象に投与する。該診断および予後判定用途においては、ペプチドを患者由来の
免疫細胞と接触させることができる。次いで、ペプチドに対する免疫細胞の応答
を測定する。図面の簡単な説明
図1は、HCVコアタンパク質のアミノ酸配列からT細胞エピトープを予想す
るための両親媒性アルゴリズムによって選択された一連の11種類のペプチドを
示す。該合成ペプチドの配列はHCV−H単離株に基づくものである。公知配列
(29、32、48、70)と異なる残基は下線付きで示す。
図2A〜2Cは、C7特異的CTLが表現型、MHC拘束、および高度(fine)
特異性を有しているかどうかを重複ペプチドを用いて調べた結果を示す。vHV
C#4免疫脾臓細胞由来の短期CTL株を10μMのC7で再刺激したもの、な
らびに照射処理した同系生殖脾臓細胞、およびコンカナバリンA(サイトカイン
源)で刺激した脾臓細胞の培養上清の1:10希釈物をエフェクター(effector
)として用いた。図2A〜2Cに示した実験でのペプチド非存在下での細胞溶解
率は7%未満であった。ターゲット細胞をペプチド(10μM)の存在下で感作
した。エフェクター/ターゲット比は100/1とした。データはSE5%未満
のサンプル3つの平均であり、少なくとも2つの独立した実験の代表値である。
図2Aは、C7特異的H−2dCTLの表現型を示す。抗L3T4(GK1.
5)(抗CD4)または抗Lyt2.2(2.43)(抗CD8)モノクローナ
ル抗体(培養上清)の1:4希釈物の存在下、または抗体の非存在下で、6時間
にわたりCTL測定を行なった。18NeoをC7(10μM)の存在下で感作
した。
図2Bは、H−2d株におけるCTLに対するC7提示の原因であるMHCク
ラスI分子を示す。各トランスフェクタントは、H−2dに由来するクラスI分
子(T4.8.3、Dd;T1.1.1、Ld;およびB4III2、Kd)1個
だけを発現するか何も発現しない(L28)。各ケースにおけるペアレント細胞
はDAP3L細胞(H−2k)である。
図2Cは、C7特異的ネズミH−2Dd拘束CTLの高度特異性を示す。CT
L活性は、既知濃度の下記の配列番号1〜8でC7にそれぞれ含まれる重複デカ
ペプチド、ならびにHLA−A2モチーフノナペプチドC7A2(図1参照)お
よび全長C7ペプチドの存在下、H−2d3T3繊維芽細胞ターゲット細胞株1
8Neo上で測定した。
図3は、HCV感染患者におけるC7特異的ヒトCTLのHLA拘束を示す。
慢性C型肝炎患者(表4の番号7)のC7特異的ヒトCTL活性を、抗HLAク
ラスI(W6/32、IgG2a)または抗HLAクラスIIDR(L−243
、IgG2a)を1:4で希釈したものとともに、あるいは抗体なしの状態で、
10μMのC7の存在下で自己ターゲット細胞に対する細胞傷害性について調べ
た。「材料および方法」で述べたようにして、PBLをマイトマイシンC処理P
BLとペプチドC7で2回刺激した。ペプチドの非存在下での細胞溶解率は5%
未満であった。データはSEが5%未満のサンプル3つの平均であり、少なくと
も2つの独立した実
験の代表値である。
図4は、ヒトCTLがHLA−A2によって提示されたC7のノナマーセグメ
ントを認識することを示したデータである。慢性C型肝炎患者#7および急性C
型肝炎患者#8のPBL(表4)を、「材料および方法」で述べたようにしてin
vitroでマイトマイシンC処理自己PBLおよびペプチドC7で2回刺激し、ペ
プチドC7、ノナマーペプチドC7A2(DLMGYIPLV)の存在下または
非存在下で、100:1のエフェクター/ターゲット比で下記ターゲットに対す
る作用を測定した。すなわち、自己EBV形質転換Bリンパ芽球様細胞(#7の
場合、HLA−A1,A2,B51,Bw4,Bw6)または#8にとっては自
己ConA芽球標的(#8の場合、A2,B51)(自己細胞は*で示す)、同
種間EBV形質転換Bリンパ芽球様細胞(HLA−A24,31,B51,54
,w4,w6,Cw1;またはHLA−A26,w33,B12,15,Cw3
)、C1R細胞株(39)(HLA−A−neg,B−neg.,Cw4,DR
8,DPw4,DQ3)をHLA−A2.1でトランスフェクトしたもの(C1
R−A2)(39)またはトランスフェクトしないもの(C1R)をターゲット
とした。データはいずれもSEM<5%の培養物3つの平均であり、少なくとも
2つの独立した実験の代表値である。
図5は、1994年4月5日の時点でゲンバンク(GENBANK)に登録さ
れているHCV−コアタンパク質の配列、および実施例で用いたHCV−H配列
(FDA)を示す。
太文字で示したアミノ酸残基は配列ごとに異なる残基を示す。発明の詳細な説明
本発明のペプチドは、HCVビリオンのコアタンパク質の配列に由来するアミ
ノ酸配列を持つ。HCVの単離株が幾つか得られており、これら全単離株のコア
タンパク質のアミノ酸配列が>95%同一であることが認められた(33)。幾
つかのHCV単離株のコアタンパク質のアミノ酸配列を図5に示す。本出願の実
施例において使用しているHCV−H単離株を,最上の行に示す(FDA)。こ
の配列の並びは、コアタンパク質のC末端配列が、単離株の間で顕著に異なって
いることを示している。
実施例においてより詳しく説明するが、コアタンパク質配列の変換は、ペプチ
ドワクチンおよび診断試薬の設計において利点がある。本発明のペプチドによる
免疫に応答して誘導されるCTLは遊離ビリオンよりもむしろ感染した細胞を攻
撃する。細胞により内因的に合成される全てのタンパク質のフラグメントがMH
C分子に結合してその細胞表面に提示(display)されてるので、コアタ
ンパク質がビリオン粒子の表面に局在していないということは問題ではない。
さらに、内因的タンパク質がMHCにより提示されるためのプロセシングのメ
カニズムについては、タンパク質のランダムな分解により得られる線状対応性(c
ollinear)を持つペプチドはいずれもプロセシングの初期に産生されるらしいこ
とが予測される。個体により発現される特定のMHC複合体は、その個体の細胞
表面に実際に見られる特定のペプチドを選択する役割を果たしているようである
(26)。従って、HLA−A11ハプロタイプを持つ個人は、ある特定のタン
パク質のペプチドを提示する時に、HLA−A2ハプロタイプを持つ個人が提示
するものとは異なったペプチドを提示する可能性が高い。
ある特定のMHCハプロタイプに結合するペプチドの選択を説明する特定のル
ールは充分には確定していない。しかし、構造−結合関係について知られている
ことが、MHCハプロタイプに結合するペプチドについての「モチーフ(mot
ifs)」にまとめられている。これまでに文献に掲載されたモチーフの表がブ
ラウン大学(Providence,RI)のGabriel MeisterとDr.Anne DeGrootにより編
纂されており、それを表1に示す。
以下に述べるように、C7ペプチドはまずCTL活性の実際のテストにより見
いだされ、後にHLA−A2結合モチーフと一致する配列を持つことが見いださ
れた。C7ペプチドはHLA−A2ハプロタイプを持つ集団においてのみ有用で
あることが期待される。しかし、この集団はヒトの集合の40−50%を占め、
意義のある大きさの集団である。
さらに、追加的HLAタイプについての結合モチーフを含むペプチドは、実施
例1および2に使用されるペプチド中に確認され得る。例えば、C1、C2、C
4、C6およびC8ペプチド(図1参照)は、それぞれヒトHLA−A68、H
LA−A68、HLA−A68、HLA−B8およびHLA−B27に対する結
合モチーフを持っている。これらのペプチドの有用性を決定するために、それぞ
れについてCTL活性を検査し、陽性結果が出た場合、そのペプチドはCTL応
答を起こすために有効であり、対応するMHC(ヒト被検者におけるHLA)ハ
プロタイプを持つ被検者に対する診断試薬として使用できることが確認される。全般的な実験材料と方法
マウス。 Balb/cマウスとC57BL6マウスは、日本チャールスリバ
ーラボラトリーズ社(東京、日本)より購入した。使用したマウスは、8週齢で
あった。
組換えワクシニアウイルス。 HCVの構造遺伝子である、C、E1及びE2
並びにNS2(H株HCV(H)のFDAの単離体(24))が発現している組
換えワクシニアウイ
ルス(vHCV#4)を、Chakrabartiらの方法(9)により作製し、HCVコ
ア特異的CTLを産生させるために、マウスの免疫に使用した。Bernard Moss博
士、NIAID、NIHより供与されたvSC8(大腸菌lacZ遺伝子を含む組換えワ
クシニアウイルス)は、(9)に記載され、マウスの免疫のための対照ワクシニ
アとして使用した。
ペプチド合成と精製。 HCV(H)の予想されるアミノ酸配列(24)(未
刊行)に従って、(31)記載のポリプロピレンメッシュ「ティーバッグ」中で
、固相ペプチド合成の同時マルチペプチド法により、HCVコアペプチドを調製
した。C18 Sep−Pakカラム(ウォーターズ社、ミルフォード、MA)
での逆相クロマトグラフィーにより、ペプチドを脱塩し、HPLCにより精製し
、分析した。
CTLの産生。 107PFUの組換えワクシニアウイルスで、マウスを静脈
内免疫した。4〜6週間後、完全T細胞培地(CTM;10%FCS、2mM
L−グルタミン、100U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプト
マイシン及び5×10-5M 2−MEを含む、RPMI1640とEHAA培地
の1:1混合液)中、24ウエルの培養プレート内の免疫脾臓細胞(5×106
/ml)をインビトロで、ペプチド又はvHCV#4を感染(1時間、37℃)
10:1のmoi)させた照射同系脾臓細胞(2.5×106/mlウエル、培
養前に3回洗浄)及び10% ConA上清を含む培地(ラットT Stim;
コラボラティブ リサーチ社、ベッドフォード、MA)で6日間刺激し、7日目
に照射同系脾臓細胞(2.5×106/mlウエル)とペプチドで再び刺激し、
8日目と11日目に10%のラットTStimの添加とフレッシュなCTMで0
.5mlの培地の交換を行った。培養の7日目又は14日目で、CTLアッセイ
でのエフェクターとして刺激細胞を使用した。
CTLアッセイ。 インビトロでの二次CTLの細胞溶解活性を、51Cr標識
ターゲットを用いる6時間のアッセイを使用する既報(62、67)に従って測
定した。CTLのペプチド特異性を試験するために、エフェクターと51Cr標識
ターゲットを種々の濃度のペプチドと混合した。特異的な51Cr放出パーセント
を、100×〔(実験上の放出−自発的放出)/最大放出−自発放出)〕として
計算した。最大放出は、5%Triton−X100の添加により溶解した細胞
の上清から決定した。自発放出は、エフェクター細胞の添加なしにインキュベー
トしたターゲット細胞から決定した。18Neo(H−2d;クラスI MHC+
、クラスII MHC-ネオマイシン耐性遺伝子をトランスフェクトした3T3線
維芽細胞(62))及びEL4胸腺腫細胞(H−2b)をターゲットとして使用
した。
抗体によるCTL応答の阻害。 抗L3T4(抗−CD4、IgG2b(72
))又は抗Lyt2.2(抗−CD8(58))をそれぞれ含むハイブリドーマ
GK1.5又は2.43の培養上清を、指示された濃度でCTLアッセイの96
ウエルのプレートに添加した。
クラスI MHCトランスフェクタント。 Dd、Ldを
有するマウスL細胞トランスフェクタント(21、41、43、45)は、Davi
d Margulies博士、NIAIDより供与された。Kdを発現しているトランスフェクタ
ントは、Abastadoらによって作製され(1)、Keiko Ozato博士(NICHD)より供与
された。すべてのトランスフェクタント細胞株を、抗−H−2Dd、抗−H−2
Kd及び抗−H−2LdmAbの適当なパネルを用いるFACS分析により試験を
行い、本明細書に記載の機能的な研究を行う前に、それらの発現型を確認した。
HLA−A2.1でトランスフェクトしていない(ClR)又はHLA−A2.
1でトランスフェクトした(ClR−A2)(39)ヒトCIR細胞株(39)
(HLA−A−neg、B−neg.、Cw4、DR8、DPw4、DQ3)は
、Victor Engelhard博士、バージニア大学より供与されたものである。実施例1:HCVコアタンパク質におけるCTLエピトープの同定
HCV−H単離体のコアタンパク質の予想されるアミノ酸配列に基づいて、H
CVコア配列の72.3%をカバーし、T細胞エピトープの可能性のある両親媒
性(amphipathicity)に基づいて選ばれた、一連のオーバーラップする11残基
のペプチドを合成した(13、17、40)。選択に使用したコンピュータープ
ログラムのFORTRAN情報コードは、参考文献75の追加として刊行されて
いる。HCV−Hのコア領域の予想されるアミノ酸配列と他の公知の単離体(3
2、36、65)との比較により、公知の配列と比べて、該ペプチドの3個が1
又は2個の残基に置換を有することが明らかになった(図1)。マウスにおいて
ペプチドに特異的なCTLを作製するために、組換えワクシニアウイルスで免疫
したマウスの脾臓細胞を、インビトロでペプチドを用いて刺激した。vHCV#
4で免疫したBALB/cマウスは、ペプチドC7に対するCTL応答を発現し
たが、他のどのペプチドにも応答しなかった(表2)。H−2bマウスは、試験
したどのペプチドにも応答を示さなかった。
HCV−Hコア領域を発現する107PFUの組換えワクシニアウイルス(vH
CV#4)で、マウスを静脈内初回免疫した。「材料と方法」で記載のように、
インビトロでConA上清(IL−2)の存在下、10μMのペプチド又はペプ
チドなしで、免疫脾臓細胞を13日間再び刺激した。BALB/cCTLに対し
てはneo遺伝子でトランスフェクトした3T3線維芽細胞(18Neo、H−
2dクラスI 陽性、クラスII 陰性)及びC57BL/6CTLに対してはE
L4(H−2b)に対して、CTL活性を測定した。ターゲ
ットを10μMの各ペプチド又はペプチドなしで6時間増感した。エフェクター
/ターゲット(E:T)比100:1,5000ターゲット細胞/ウエル。ペプ
チドの非存在下での溶解は、BALB/c及びC57BL/6では<5%であっ
た。データは、<5%のSEを有する三連の試料の平均であり、少なくとも2つ
の独立した実験を代表する。
コアタンパク質に対するCTLの特異性は、インビボで初回免疫したリンパ球
、インビトロでの再刺激及びCTLアッセイでのターゲット細胞における発現の
段階で説明された(表3)。コア遺伝子を発現している組換えワクシニアウイル
ス(vHCV#4)のみが、C7に特異的なCTLを産生するためにマウスを初
回免疫することができたが、対照ワクシニアウイルス(vSC8)はできなかっ
た(表3)。免疫脾臓細胞を刺激するために使用したペプチドの濃度の滴定によ
り、H−2適合ターゲット細胞に対する有意な殺傷性を誘導するための免疫脾臓
細胞の刺激には、C7は1〜10μMのペプチドの濃度が必要であることがわか
った。
CTLは、インビトロでのペプチドを用いる刺激により産生するので、それら
は、単にペプチドではなく、内因性に合成されたコアタンパク質の処理産物を認
識することを確認することが重要である。H−2d(BALB/c)により拘束
されたCTLは、内因性にコアを発現しているvHCV#4感染同系ターゲット
細胞(18Neo細胞、ネオマイシン耐性遺伝子でトランスフェクトしたBAL
B/c 3T3線維
芽細胞)、並びにC7の存在下で18Neo細胞を殺傷することができたが、対
照ターゲットであるvSC8(対照ワクシニアウイルス)を感染した18Neo
又はC7の非存在下で18Neoを殺傷することができなかった(表3)。従っ
て、これらのCTLは、外因性のペプチドばかりでなく、内因性に合成されたH
CVコアタンパク質の処理産物にも特異的であった。
挿入されたウイルス遺伝子産物に特異的なCTLを初回免疫したり、刺激する
ための組換えワクシニアウイルスの能力を用いて、BALB/c(H−2d)マ
ウスにおけるHCVコアに特異的なCTLを作製した。非免疫脾臓細胞又は免疫
脾臓細胞をインビトロで、C7を10μM(又は指示された濃度で)、又はワク
シニア(vSC8)感染照射同系脾臓細胞を用いて再刺激し、100:1のE/
T比率で、ペプチド(C7 10μM;C8 10μM)の存在下又は非存在下
、ワクシニアウイルス感染18Neo(1時間、37℃、10:1のmoi、使
用前に3回洗浄)及び18Neoに対する試験を行った。vHCV#4,HCV
−Hのコア及びエン
ベロープを発現している組換えワクシニアウイルス;vSC8,対照ワクシニア
ウイルス;18Neo,BALB/c3T3線維芽細胞,H−2d。データは、
<5%のSEを有する三連の試料の平均であり、少なくとも2つの独立した実験
を代表する。
*vHCV#4免疫細胞,「材料と方法」及び参考文献(61)に記載のように
、C7 100μM及び10%ConAの上清で2回再刺激された。
抗−CD8モノクローナル抗体を用いてC7に特異的なCTLを処理すると、
ターゲット細胞に対する細胞傷害活性を減少させたり、又は全く失わせるが、抗
−CD4抗体はそうではなかった(図2A)。これらのデータより、C7を認識
するエフェクター細胞は、通常のCD8+CD4-(Lyt2+L3T4-)CTL
であることが明らかである。BALB/cにおいてH−2d拘束ペプチド特異的
CTLに対して、クラスIIではなくクラスIを発現している18Neo細胞をタ
ーゲットとして使用した。これらの事実プラスH−2bではなくH−2dへのM
HCの拘束という事実は、Lyt2+CD8+エフェクターT細胞に予想されるよ
うに、これらのCTLは、クラスI MHC拘束性であることが明らかとなった
。
H−2dにおいてC7の提示にどの分子が特異的に必要であるかを決定するた
めに、Dd、Ld又はKd分子を発現しているトランスフェクタントを使用した。
ターゲットを51Crで標識して、ペプチドの存在下、エフェクター細胞と共に培
養した。T4.8.3.(Dd)がC7を提示することがわかった(図2b)が
、Ld又はKdはCTLにC7を提示しなかった。従って、Ddがこのペプチドを
提示するために必要かつ十分条件であった。
滴定研究において、C7は、0.03〜30μM間の濃度でCTLによる溶解
のターゲット細胞を増感させた(図2c)。1μMを超える濃度のC7の存在下
で、溶解はプラトーに達していった。クラスI MHC分子拘束性を有するCD
8+T細胞による同じ16残基のペプチドの認識により、MHC分子によるペプ
チドの一部の提示を再提示することができる(20、25、55)。より詳細に
ペプチドマッピングを開始するために、クラスI MHC分子は、この場合では
Ddを含んでおり、8〜10残基の長さのペプチドを提示する傾向があるという
発見に基づき(15、22、26)、C7内の各9残基ずつオーバーラッピング
するオーバーラッピングデカペプチドを7個すべて(図2Cの図面の説明中の配
列を参照)、並びにHLA−A2モチーフに対応するノナペプチドC7A2(図
1と以下の結果を参照)を合成した。これらの中で、C7−A10(LMGYI
PLVGA)のみが、全長のC7ペプチドよりも活性が高かった(図2C)。C
7−G10及びC7−P10Mオーバーラッピングデカペプチドのいずれも活性
がなかったことから、これらのオーバーラッピングデカペプチド中に含まれるノ
ナペプチドはいずれも最適応答に十分でないと結論する。従って、デカペプチド
C7−A10は、これらのDd拘束CTLによる認識にとって最適のペプチドで
あるように考えられる。興味深いことには、このペプチドはDdから遊離した内
因性のペプチドにより明確にされたようなDdモチーフを含んでいなかった(1
5)(下記参照)。
H−2dマウスにおいて、HCVコアタンパク質を発現している同系ターゲッ
ト細胞、並びにペプチドC7(HCVのコア内129〜144残基)の存在下で
インキュベートしたターゲットを殺傷する能力を有するネズミCTLを誘導した
が、H−2dマウスでは誘導しなかった。H−2dは、C7に対する免疫応答(I
r)遺伝子応答体ハプロタイプであるが、H−2dは応答体ではないと結論する
。3つのH−2dクラスI分子のいずれにC7が存在するかを決定するために、
Kd、Ld又はDdを発現しているL細胞(H−2k)トランスフェクタントを使用
し、C7ペプチドは、効果的なペプチド提示のためにDd分子を必要とすること
がわかった。興味深いことに、αヘリックスとして折り畳まれたときに両親媒性
の側面において類似している点を除いては配列の著しい類似性を共有しない、本
発明のC7(又はより具体的にはC7−A10)、HCV NS5由来のペプチ
ドP17(60)、並びにHIV−1gp160由来のP18(63)及びHP
53(61)を、同じMHC分子が提示することがわかった。これら4つのペプ
チドの中で、P18のみが、Ddから溶離した内因性のペプチド、XGPX〔K
/R/H〕XXX(X)〔L/I/F〕、配列番号:9(15)により限定され
る明確なDd結合モチーフを有する。従って、Ddに結合する他のモチーフも同様
に存在しているにちがいない。該新規のDd結合ペプチドの同定は、該新規なモ
チーフの特徴付けにおいて、助けとなるであろう。Dd結合に明確なモチーフを
限定するには不十分なホモロジーが存在しているけれども、各ペプチドに対する
Dd結合に含まれる残基の分析(63)は、Dd特異性にとって構造的な必要性に
新しい光を注ぐかもしれない。
最大の殺傷性を得るためには、インビトロでの二次的にC
TLを刺激したり、ターゲットを増感させるために必要なペプチドの濃度は、C
7及びC7−A10両方とも1〜30μMであることが明らかであった。この結
果より、Ddモチーフを有するDdにより拘束されたHIV−1gp160の免疫
優性CTL決定基であるP18(62)と比較して、これらのペプチドは、H−
2Ddに中程度の親和性のみを有して結合することが示唆される。C7又はC7
−A10の修飾は、どちらがより高い親和性で結合したり、より効果的に刺激す
るDdモチーフにより近いかを明らかにすることができるであろう(5〜7)。
また、C7は、CTLの非存在下、直接細胞に対する毒性はなかった。実施例2 HCVに暴露したヒト患者の同定
ネズミCTLについてのエピトープを同定した我々は、HCV血清陽性の患者
から得たT細胞によってもそれが認識されるかどうかを知りたかった。8名のH
CV−血清陽性患者、2名の慢性B型肝炎患者、および2名の健常人から得たP
BLを、in vitroで刺激し、10μMのペプチドとインキュベートした、自己E
BV−形質転換細胞またはConA芽細胞の溶解について試験した(表4)。
ヒトCTL。我々は8名を選択した。これらの患者は香川医科大学、医科セン
ター(香川県、日本)の患者で、抗−C100−3(HCV Abテスト、Or
tho Diagnostic Systems)または推定(putative)コア
、NS3、NS4のHCVタンパク質(C22、C33およ
びC100−3抗原)に特異的な第二世代の酵素免疫アッセイ(EIA)テスト
(Abbott Laboratories、North Chicago,I
L)により検出されるHCV特異的血清抗体、および5’−非コーディング領域
に基づいて得られる外部および内部(ネステッド(nested))の2組のプ
ライマーを用いる二重ポリメラーゼチェーンリアクション法により検出される血
清HCV RNAを持っ患者であった(49)。HCV以外の肝臓ウイルスにも
感染していることが血清学的検査により検出された患者は試験より除外した。我
々は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)血清値の上昇(>1年の間80
から450IU/L)を示す7名の慢性C型肝炎患者と、最近発症した急性C型肝炎を持
ち、血清ALT値が高く(1054 IU/L)、PCRでHCV陽性および第二世代の
EAIで血清陽性と出たが、以前に肝炎の臨床的既往のない1名の患者(#8)
を試験した(表4)。ラジオイムノアッセイ検査(HBsAgおよびHBeAgに陽性、Ab
bott Laboratories,North Chicago、IL)で検出された慢性B型肝炎(非C型)
を持つ患者2名、およびHCVおよびHBsAgに対して血清陰性の2名の健常人も
試験した。
PBLをin vitroでマイトマイシンC−処置PBLおよび各ペプチド10μMで
刺激し、「材料と方法」に記載するようにE/T比100:1で、対応するペプ
チド(10μM)の存在下または不在下で自己標的(target)細胞についてテス
トした。標的に対するペプチドの毒性は観察されなかった。2名の慢性肝炎患者
および2名の健常人は、C7に対して応答しなかった(<4%)。PBLからの
ConA芽細胞標的を患者No.2、5および8で使用した。データは、SE<5
%の3つのサンプルの平均であり、少なくとも2つの独立した実験の代表値であ
る。
*HCV RNA+および第二世代のEIAにより陽性。
#PBLはin vitroで2回刺激した。
¶HLA−A2.1陽性
ヒトのアッセイにおいては、エプスタイン−バールウイルス(EBV)形質転
換によるドナー末梢血液リンパ球(PBL)に由来する細胞系(12)または以
前に記述されるように(61)自己PBLより作製したConA芽細胞を、ペプ
チド(10μM)の存在下またはvHCV#4による感染後のいづれかにおいて
、標的として使用した(61)。PBLをリンパ球分離培地(LeucoPREP,Becto
n Dickinson,Mountain View,CA)上で分離した。このPBL(24穴培養プレー
トに4×106/ml)を、day 1 およびday 8に加える10μMのペプチド、day 2、day
9およびday 12に新鮮なCTMとともに添加した50単位/mlのヒトrIL2(Cetus Corp.
,Emeryville,CA)の存在下において、同一ドナーのマイトマイシンC-処理PB
L(24穴培養プレートに2×106/ml)により刺激した。培養のday 8またはday 15
において、この刺激されたPBLを効果細胞(effector)として使用し、0.1 mCi
の51Crにより一晩標識した標的細胞のEBV形質変換細胞系またはConA芽細
胞においてテストした。6時間51Cr放出アッセイを上述のように行った。
2名の患者(#7と#8)のPBLは、C7の存在下で特異的に標的細胞を殺
したが、他のペプチドの存在下または培地のみでは殺さなかった。テストしたペ
プチドの内、他の4
名の患者に認識されたものはなかった。逆に、4名のHCV−血清陰性ドナーか
らのPBLは、C7の存在下で標的を殺さなかった(表4)。急性および慢性の
肝炎を持つ患者も、vHCV#4に感染し内因性のHCVコアタンパク質を発現する標
的細胞に対して細胞毒性活性を示した。
これらの2名のドナーの内の1名について、我々は効果細胞の表現型を検査す
ることができた。慢性肝炎に罹患する反応患者#7のCTL活性は抗HLAクラ
スI(W6/32、IgG2a)によりブロックされたが、抗HLAクラスII DR(L-243、IgG
2a)によってはブロックされなかった(図3)。したがって、これらは通常の抗原
特異的HLAクラスI拘束CD8+CTLであることが期待される。患者#7お
よび#8についてHLAのタイプ分けを行ったところ、それぞれHLA−A1、
A2、B51、Bw4、Bw6とHLA−A2、B51であった。さらに、我々
は、C7ペプチド配列が、DLMGYIPLVの配列を持つHLA−A2−結合
モチーフを含んでいることに注目した(22、34)。これらの患者のCTLに
よるC7の認識が、HLA−A2によるこのノナマー配列の提示によるものかを
知るために、我々は対応するノナマーペプチドを合成してC7A2と命名し、こ
れと完全長の16−マー(16-mer)、つまりC7の患者#7および#8のCTLに
よる認識を、HLA−A2を共有するあるいは共有しない標的細胞についてテス
トした(図4)。CTLはC7あるいはノナマーC7A2の存在下で、自己標的
細胞を殺し、またHLA−A2によりトランスフェクトしたHLA−A−および
−
B−陰性細胞系のC1Rも殺したが、トランスフェクトされていないC1Rまた
はHLA−A2を欠く自己標的細胞は殺さなかった(図4)。従って、C7ペプ
チドは、HCVに感染した急性および慢性肝炎患者のヒトCTLに対してHLA
−A2により提示されるHLA−A2モチーフ−陽性ノナマーを含んでいると我
々は結論する。
これらのデータは、このペプチドは、あるネズミMHCハプロタイプにおいて
認識されるが、ヒトMHC分子に関連しても認識され得ることを示している。同
じ16残基のペプチドがマウスおよびヒトの両方のクラスI MHC分子を持つ
異なったT細胞により認識されるということは、広く認識される同じ部位を複数
の(multiple)クラスI分子が提示する可能性、あるいは異なってはいるが部分的
に重複するペプチド部位を異なったMHC分子が提示する可能性が考えられる得
ることを示している(20、25、55)。
これらの可能性を区別するために、我々は該16残基ペプチドに沿った7つの
重複するデカペプチドを用いてネズミC7エピトープのファインマッピング(fi
ne mapping)を行った(図2c参照)。16−マーと同等かそれ以上の活性を示しめ
した唯一のペプチドはC7−A10であった。実際に、このデカペプチドは、ネ
ズミCTLについて最小のペプチドと考えられる。何故ならば、C7−A10内
に含まれる2つのノナペプチドは、活性のかなり低い重複するペプチドC7−G
10およびC7−P10Mのいづれか一つにも含まれているからである。(16
−マー全体が同じ条件下でプロセシング
を受けて活性型になるので、これらの他のデカペプチドがプロセシングの失敗に
より不活性であるといることは考えにくい。)。一方、HLA−A2により拘束
されるヒト応答の場合において、我々は少なくとも一つのノナマーエピトープが
ペプチドDLMGYIPLVであることを確認しており、これは2および9位に
アンカー残基を持つHLA−A2結合モチーフを含んでいる(22、34)。こ
のペプチドは、HCVコアタンパク質のこの部分において最小のHLA−A2−
拘束CTLエピトープを構成している。しかし、H−2dマウスはこのノナマー
ペプチドに応答せず(図2c)、このノナマーを含むC7−G10とC7−V1
0にごく弱く応答する(図2c)のみであるため、マウスとヒトに認識される最
小エピトープは同一であるはずはなく、緊密にオーバーラップしているはずであ
る。実際、ヒトエピトープの1残基を除く全ての残基が、ネズミエピトープ内に
含まれている。マウスおよびヒトにより認識されるためのC7のコア残基の類似
性は著明である。
最近のHCV配列についての多様な報告から、いくつかの単離株の比較ができ
る((11、29、42、48、70)、(33)における総説))。高度な多
様性を持つエンペロープ糖タンパクE1及びE2に比較して、コアタンパク質は
良く保存されている。このHCVエンベロープタンパクの超多様性は、ヒトおよ
びマウスの両方において主要な中和抗体ドメインであるとともにCTLの決定基
であるHIV−1エンペロープタンパクV3ループの場合において示唆されてい
るように(12、27、50、57、62)、これらの表面タンパク質が、変異
の免疫学的選択圧(immunologic selective pressure for variation)の下にお
かれている可能性を示唆している。しかし、HCV単離株のグループ(報告され
ているHCV配列全てを比較することにより広くさらに分類される)内において
は、このコアは95%から100%の配列の一致をしめしている(33)。
CTLがウイルスの成長をブロックし得るとする多くの証拠がある(19、3
5、44、47、51、52、68、69)。非常に良く保存されているために
、HCVコアタンパク質からのペプチド、これはクラスIMHC分子によってマ
ウスとヒトの両方のCD8+CD4-CTLに対して提示されるが、HCVに対し
て広い効果を示すワクチンの成分として有用である可能性があり、特にHLA−
A2が最も優勢なヒトクラスI分子であり、米国人口の約46%に存在すること
を考えるとそうである。また、我々の研究所の一つにおけるC型肝炎の日本人患
者の小規模な予備的サンプリングにおいて23名中15名がHLA−A2+であ
った。
ヒトの集合におけるこのようなHLA−A2ハプロタイプの優勢は、HCV単
離株におけるC7ペプチドの強い保存性とともに、多くのHCV株への暴露また
はこれによる感染を検出するために、ヒト集合の大きな割合を占める部分におい
てペプチドC7が診断試薬として有用であることを示している。
HLA−A2−陽性、HCV感染患者において考えられ
る肝炎の臨床経過とこのペプチドに対する応答の相関性について感染患者を評価
するすることが重要となろう。このような分析から、予後予測のための価値をも
つ情報が得られるかもしれない。HCVに感染した患者におけるC7−特異的C
TLの存在は、患者がウイルスを急速に消失していくかあるいは慢性肝炎に進展
していくかについての情報を与えるかもしれない。この情報は、これからの治療
を計画するために有用であろう。
HIV−1タンパクgp160と逆転写酵素についての我々の以前の経験にお
いて、ネズミCTLにより認められるエピトープはヒトCTLによっても認めら
れた(12、30、62)。この所見は、マウスにおけるCTLエピトープを検
出する本方法が、ヒトHCVレトロウイルス感染に対するワクチンおよび診断試
薬として一般的に有用であることを意味している点で重要である。実施例3:本発明のペプチドを用いる付加的な診断方法
ペプチド試薬に対して特異的なCTLによる、標的細胞の特異的な溶解の測定
に加えて、CTLの、抗原認識に関わる他の活性が測定できる。例えば、CTL
の抗原活性化に応答して分泌されるサイトカインが測定できる。測定に特に好適
なサイトカインはγ−インターフェロンである。特定のサイトカインの測定方法
は、当技術分野でよく知られている。サイトカインのイムノアッセイとサイトカ
イン依存性細胞株の増殖の測定が、二つの好ましい測定形態(formats)である
。
さらに、患者からのPBLをEBVを用いて形質転換する工程を除くことによ
り、実施例2に記載の方法を変更することができる。ウイルスを用いての形質転
換は実験的な目的でなされ、増殖可能な細胞株が確立される。臨床での測定目的
のためには、短期間のうちに、形質転換せずにPBLを十分な数まで培養するこ
とができる。EBVにより形質転換されたBリンパ芽球(B-lymphoblastoid)細
胞の代わりに、自己由来の、コンカナバリンA刺激化PBL芽細胞(blasts)を
標的として用いることができる。また、抗原特異的CTLの応答としてのγ−イ
ンターフェロンの分泌の測定には、標的は不要である。実施例4:医薬組成物としてのペプチドの処方
本発明のペプチドは、薬学的に許容できるあらゆる担体、アジュバント又は希
釈剤と混合することができる。好ましくは、本発明の医薬組成物は、静脈注射、
皮下注射、筋内注射又は皮内注射のために調製される。このような処方において
は、50〜500μgの範囲の用量を供給する濃度として溶解される。溶媒とし
ては無菌の生理食塩水又は薬学的に許容できるあらゆる溶媒が使用できる。
アジュバントに関しては、ペプチド及びタンパク質全体のいずれにも、フロイ
ントの不完全アジュバント(皮下注射、筋内注射又は皮内注射用)、及びQS2
1を用いることができる。タンパク質全体の初回免疫のアジュバントとして、ア
ラム(Alum)も用いることができる。
Deres,K.(デレス、ケー)ら、Nature 342:561-564(1989)に記載されたよう
に、脂質の尾と結合させることによりペプチドを修飾することができる。
さらに、静脈注射のためには、タンパク質の分解に対する耐性を付与する修飾
をペプチドに行っても良い。修飾の典型例としては、ペプチドのカルボキシル末
端をアミド化することである。これらのペプチド誘導体を完成させる方法は、当
技術分野でよく知られている。実施例5:HCV感染防御用ワクチンとしてのペプチドの投与
当該技術分野の典型的なワクチン投与プロトコールの一部として、実施例3に
説明されたコアタンパク質及びペプチドを投与できる。被験者はまずHCVのコ
アタンパク質の投与により初回免疫され、次いで、ペプチドの投与により追加免
疫される。全タンパク質(Whole Whole protein)の投与は注射、好ましくは筋
内注射又は皮下注射により実施される。
直接注射することに加えて、Takehashi(タケハシ)ら(74)に記載され、
同時係属出願中の08/031,494号にあるように、ペプチドを自己由来のPBMCと
2時間インキュベートし、インキュベートされた細胞を照射し、そして静脈内に
再び注入することによってもペプチドを投与することができる。
HCVコアタンパク質は、タンパク質全体を発現する組換えベクターにより得
ることができる。組換えベクターは特に限定されるものではないが、ベクターの
好ましい態様としては、HCVコアタンパク質をコードしているDNAを、ワク
シニアウイルスベクターから発現するものが挙げられる。実施例1に記載のvH
CV#4ベクターは特に好ましい。組換えベクターは静脈注射又は皮内注射によ
り投与される。その代わりに、患者の細胞をベクターで形質転換することが可能
であり、その形質転換された細胞を患者に注入すること又は皮下に移植すること
も可能である。
初回免疫後しばらくの後、好ましくは1〜2週間後に、本発明に記載のペプチ
ドで患者をさらに免疫する。ペプチドは、かかるCTLの応答を測定するあらゆ
る公知の方法により決定され、免疫されたペプチドに応答するCTLを導くのに
十分な量が投与される。実施例2に記載された方法はすべて適用できる。典型的
には、ペプチドは50〜500μgの量が投与される。追加免疫を繰り返し行う
ことができる。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1996年4月5日
【補正内容】
英文明細書第5〜6頁補正
各トランスフェクタントは、H−2dに由来するクラスI分子(T4.8.3、
Dd;T1.1.1、Ld;およびB4III2、Kd)1個だけを発現するか何
も発現しない(L28)。各ケースにおけるペアレント細胞はDAP3L細胞(
H−2k)である。
図2Cは、C7特異的ネズミH−2Dd拘束CTLの高度特異性を示す。CT
L活性は、既知濃度の下記の配列番号2〜8でそれぞれC7に含まれる重複デカ
ペプチド、ならびにHLA−A2モチーフノナペプチドC7A2(図1参照)お
よび全長C7ペプチドの存在下、H−2d3T3繊維芽細胞ターゲット細胞株1
8Neo上で測定した。
図3は、HCV感染患者におけるC7特異的ヒトCTLのHLA拘束を示す。
慢性C型肝炎患者(表4の番号7)のC7特異的ヒトCTL活性を、抗HLAク
ラスI(W6/32、IgG2a)または抗HLAクラスIIDR(L−243
、IgG2a)を1:4で希釈したものとともに、あるいは
抗体なしの状態で、10μMのC7の存在下で自己ターゲット細胞に対する細胞
傷害性について調べた。「材料および方法」で述べたようにして、PBLをマイ
トマイシンC処理PBLとペプチドC7で2回刺激した。ペプチドの非存在下で
の細胞溶解率は5%未満であった。データはSEが5%未満のサンプル3つの平
均であり、少なくとも2つの独立した実験の代表値である。
図4は、ヒトCTLがHLA−A2によって提示されたC7のノナマーセグメ
ントを認識することを示したデータである。慢性C型肝炎患者#7および急性C
型肝炎患者#8のPBL(表4)を、「材料および方法」で述べたようにしてin
vitroでマイトマイシンC処理自己PBLおよびペプチドC7で2回刺激し、ペ
プチドC7、ノナマーペプチドC7A2(DLMGYIPLV)の存在下または
非存在下で、100:1のエフェクター/ターゲット比で下記ターゲットに対す
る作用を測定した。すなわち、自己EBV形質転換Bリンパ芽球様細胞(#7の
場合、HLA−A1,A2,B51,Bw4,Bw6)または#8にとっては自
己ConA芽球標的(#8の場合、A2,B51)(自己細胞は*で示す)、同
種間EBV形質転換Bリンパ芽球様細胞(HLA−A24,31,B51,54
,w4,w6,Cw1;またはHLA−A26,w33,B12,15,Cw3
)、C1R細胞株(39)(HLA−A−neg,B−neg.,Cw4,DR
8,DPw4,DQ3)をHLA−A2.1でトランスフェクトしたもの(C1
R−A2)(39)またはトランスフェ
クトしないもの(C1R)をターゲットとした。データはいずれもSEM<5%
の培養物3つの平均であり、少なくとも2つの独立した実験の代表値である。
図5は、1994年4月5日の時点でゲンバンク(GENBANK)に登録さ
れているHCV−コアタンパク質の配列、および実施例で用いたHCV−H配列
、配列番号22〜26、を示す。太文字で示したアミノ酸残基は配列ごとに異な
る残基を示す。発明の詳細な説明
本発明のペプチドは、HCVビリオンのコアタンパク質の配列に由来するアミ
ノ酸配列を持つ。HCVの単離株が幾つか得られており、これら全単離株のコア
タンパク質のアミノ酸配列が98〜99%同一であることが認められた(33)
。幾つかのHCV単離株のコアタンパク質のアミノ酸配列を図5に示す。本出願
の実施例において使用しているHCV−H単離株を,最上の行に示す(FDA)
。この配列の並びは、コアタンパク質のC末端配列が、単離株の間で顕著に異な
っていることを示している。
実施例においてより詳しく説明するが、コアタンパク質配列の変換は、ペプチ
ドワクチンおよび診断試薬の設計において利点がある。
英文明細書第23頁補正
C7−G10及びC7−P10Mオーバーラッピングデカペプチドのいずれも活
性がなかったことから、これらのオーバーラッピングデカペプチド中に含まれる
ノナペプチドはいずれも最適応答に十分でないと結論する。従って、デカペプチ
ドC7−A10は、これらのDd拘束CTLによる認識にとって最適のペプチド
であるように考えられる。興味深いことには、このペプチドはDdから遊離した
内因性のペプチドにより明確にされたようなDdモチーフを含んでいなかった(
15)(下記参照)。
H−2dマウスにおいて、HCVコアタンパク質を発現している同系ターゲッ
ト細胞、並びにペプチドC7(HCVのコア内129〜144残基)の存在下で
インキュベートしたターゲットを殺傷する能力を有するネズミCTLを誘導した
が、H−2bマウスでは誘導しなかった。H−2dは、C7に対する免疫応答(I
r)遺伝子応答体ハプロタイプであるが、H−2bは応答体ではないと結論する
。3つのH−2dクラスI分子のいずれにC7が存在するかを決定するために、
Kd、Ld又はDdを発現しているL細胞(H−2k)トランスフェクタントを使用
し、C7ペプチドは、効果的なペプチド提示のためにDd分子を必要とすること
がわかった。興味深いことに、αヘリックスとして折り畳まれたときに両親媒性
の側面において類似している点を除いては配列の著しい類似性を共有しない、本
発明のC7(又はより具体的にはC7−A10)、HCV NS5由来のペプチ
ドP17(6
0)、並びにHIV−1gp160由来のP18(63)及びHP53(61)
を、同じMHC分子が提示することがわかった。これら4つのペプチドの中で、
P18のみが、Ddから溶離した内因性のペプチド、XGPX〔K/R/H〕X
XX(X)〔L/I/F〕、配列番号:9(15)により限定される明確なDd
結合モチーフを有する。従って、Ddに結合する他のモチーフも同様に存在して
いるにちがいない。該新規のDd結合ペプチドの同定は、該新規なモチーフの特
徴付けにおいて、助けとなるであろう。Dd結合に明確なモチーフを限定するに
は不十分なホモロジーが存在しているけれども、各ペプチドに対するDd結合に
含まれる残基の分析(63)は、Dd特異性にとって構造的な必要性に新しい光
を注ぐかもしれない。
最大の殺傷性を得るためには、インビトロでの二次的にCTLを刺激したり、
ターゲットを増感させるために必要なペプチドの濃度は、C7及びC7−A10
両方とも1〜30μMであることが明らかであった。この結果より、Ddモチー
フを有するDdにより拘束されたHIV−1gp160の免疫優性CTL決定基
であるP18(62)と比較して、これらのペプチドは、H−2Ddに中程度の
親和性のみを有して結合することが示唆される。
英文明細書第32頁補正
さらに、静脈注射のためには、タンパク質の分解に対する耐性を付与する修飾
をペプチドに行っても良い。修飾の典型例としては、ペプチドのカルボキシル末
端をアミド化することである。これらのペプチド誘導体を完成させる方法は、当
技術分野でよく知られている。実施例5:HCV感染防御用ワクチンとしてのペプチドの投与
典型的なワクチン投与プロトコールの一部として、実施例4に説明されたコア
タンパク質及びペプチドを投与する。被験者はまずHCVのコアタンパク質の投
与により初回免疫され、次いで、ペプチドの投与により追加免疫される。全タン
パク質(Whole protein)の投与は注射、好ましくは筋内注射又は皮下注射によ
り実施される。
直接注射することに加えて、Takehashi(タケハシ)ら著、International Imm
unology,5:849-857,1993に記載され、同時係属出願中の08/031,494号にあるよう
に、ペプチドを自己由来のPBMCと2時間インキュベートし、インキュベート
された細胞を照射し、そして静脈内に再び注入することによってもペプチドを投
与することができる。
HCVコアタンパク質は、タンパク質全体を発現する組換えベクターにより得
ることができる。組換えベクターは特に限定されるものではないが、ベクターの
好ましい態様としては、HCVコアタンパク質をコードしているDNAを、ワク
シニアウイルスベクターから発現するものが挙げられる。実施例1に記載のvH
CV#4ベクターは特に好ましい。組換えベクターは静脈注射又は皮内注射によ
り投与される。その代わりに、患者の細胞をベクターで形質転換することが可能
であり、その形質転換された細胞を患者に注入すること又は皮下に移植すること
も可能である。
初回免疫後しばらくの後、好ましくは1〜2週間後に、本発明に記載のペプチ
ドで患者をさらに免疫する。ペプチドは、かかるCTLの応答を測定するあらゆ
る公知の方法により決定され、免疫されたペプチドに応答するCTLを導くのに
十分な量が投与される。
請求の範囲
1.配列番号:4、配列番号:10、及び配列番号:17からなる群より選ばれ
るアミノ酸配列を有する精製ペプチド、並びに担体を含有し、該精製ペプチドは
哺乳動物において細胞傷害性Tリンパ球応答を刺激する有効量存在する組成物。
2.該精製ペプチドのアミノ酸配列が配列番号:4である請求項1記載の組成物
。
3.該精製ペプチドのアミノ酸配列が配列番号:10である請求項1記載の組成
物。
4.該精製ペプチドのアミノ酸配列が配列番号:17である請求項1記載の組成
物。
5.該担体がアジュバントQS21である請求項1〜4いずれか記載の組成物。
6.該担体が、照射をうけた(irradiated)自己由来の末梢血単核細胞を含有す
る請求項1〜4いずれか記載の組成物。
7.該ペプチドが、50〜500μgの範囲の投与量を与える量存在する請求項
1〜6いずれか記載の組成物。
8.該哺乳動物がヒトである請求項1〜7いずれか記載の組成物。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,
LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,MN,M
W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD
,SE,SI,SK,TJ,TT,UA,US,UZ,
VN
(72)発明者 フェインストーン,ステファン
アメリカ合衆国 ワシントン,ディーシー
2008 エヌ.ダブリュー.,キャシード
ラル アベニュー 3021
(72)発明者 白井 陸訓
香川県木田郡三木町池戸1239−2