JPH10508199A - 新しいプロテインキナーゼ(npk−110) - Google Patents

新しいプロテインキナーゼ(npk−110)

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JPH10508199A
JPH10508199A JP8514323A JP51432396A JPH10508199A JP H10508199 A JPH10508199 A JP H10508199A JP 8514323 A JP8514323 A JP 8514323A JP 51432396 A JP51432396 A JP 51432396A JP H10508199 A JPH10508199 A JP H10508199A
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マンデルコー,エックハルト
マンデルコー,エヴァ−マリア
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マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フェルデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー.
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、タウタンパク質をはじめとする微小管結合タンパク質(MAP)の微小管への結合に不可欠な位置をリン酸化する新規なニューロンプロテインキナーゼ(NPK)をコードするDNA配列に関する。本発明はまた、前記MAP上の、前記NPKによってリン酸化されるセリンまたはトレオニン残基、並びに前記残基を含むエピトープ;前記プロテインキナーゼに特異的に結合する抗体;前記プロテインキナーゼに対する阻害物質を含有する医薬組成物、特に、アルツハイマー病および癌の治療用の医薬組成物;診断用キット;そして、アルツハイマー病および癌を検出するためのin vitro診断方法にも関する。

Description

【発明の詳細な説明】 新しいプロテインキナーゼ(NPK-110) 本発明は、微小管への結合に決定的な役割を果たす位置でタウ タンパク質お よびその他の微小管結合タンパク質(MAPs)をリン酸化する、新規ニューロンプ ロテインキナーゼをコードするDNA配列に関するものである。本発明はさらに セリンまたはトレオニン残基および上記MAPsにおいて上記NPK によってリン酸化 される上記残基を含むエピトープ、特にアルツハイマー病およびガンの治療のた めの、上記プロテインキナーゼに対する阻害剤を含む薬剤組成物、診断キット並 びにアルツハイマー病およびガンの検出のためのin vitroの診断法に関するもの である。 微小管結合タンパク質(MAPs)は、神経突起の成長をつかさどる微小管ネット ワークの広範な動力学および再編成を調節すると考えられている(Hirokawaによ る最近の総説(1994)参照)。いくつかの方面からの証拠は、今までのところ未 知の方式による、プロテインキナーゼとフォスファターゼとの働きでバランスが 保たれるMAPsのリン酸化の状態が、これらの事象を調整する上で決定的な役割を 果していることを示唆している。哺乳動物の脳におけるMAP の一種であるタウタ ンパク質(Clevelandら,1977)は、in vivo においていくつかの部位でリン酸化 され(Butler & Shalanski 1986; Watanabeら,1993)、in vitroにおいて数多く のプロテインキナーゼの基質となる(Lee,1993; Goedert,1993; Mandelkow & Mandelkow,1993; Anderton,1993 による総説参照)。アルツハイマー病におけ るニューロンの変性に際して、タウ タンパク質は凝集して特徴的な神経繊維上 の障害の主な繊維成分であるペアードヘリカルフィラメント(PHFs)となる。こ れらの凝集物から単離されたタウ は幾つかの生化学上の変化を示すが、その中 で最も顕著なのは過剰なリン酸化である(Grundke-Iqbal ら,1986; Brion ら, 1991; Ksiezak-Redingら,1992; Goedert ら,1992)。報告されているリン酸化 部位の異常のほとんどは Ser/Thr-Pro配列であり(Lee ら,1991; Biernat ら, 1992; Lichtenberg-Kraag ら,1992; Gustkeら,1992; Watanabeら,1993)、プ ロリン特異的キナーゼ(Drewesら,1992; Mandelkowら,1992; Hangerら,199 2; Vulliet ら,1992; Baumann ら,1993; Paudelら,1993; Kobayashi ら,199 3)または対応するフォスファターゼ(Drewesら,1993; Gongら,1994)の調節異 常を示唆している。「正常」なタウ と過剰にリン酸化された「病的」な形態と を区別する、リン酸化依存抗体がいくつかの研究室で調製された(Kondo ら,19 88; Leeら,1991; Mercken ら,1992; Greenberg ら,1992)。これらすべての 抗体は Ser/ Thr-Pro タイプのエピトープに対して特異的であることが示されて いる(Lee ら,1991; Biernatら,1992; Lichtenberg-Kraagら,1992; Langら, 1992; Watanabeら,1993)。 タウ の微小管結合領域(図1)は、それぞれがイソ型タイプに依存する 313 残基の三つまたは四つの偽反復(pseudorepeat)を含んでいる(Leeら,1989; Go edert ら,1989; Himmler ら,1989)。おそらくこの領域はペアードヘリカルフ ィラメントの構成ブロックを形成している(Knodo ら,1988; Wischik ら,1988 ; Ksiezak-Reding & Yen,1991; Wille ら,1992)。それはこの反復に接する領 域に濃縮している14−16 Ser/Thr-Proのモチーフのいずれをも含まない。しかし 、それは脳組織抽出物によってリン酸化をうける主たる部位の一つであることが 判明した(Gustkaら,1992)、最初の反復中の配列KIGS中の保存されたセリン残 基(Ser 262)を含んでいる。この部位はまた、アルツハイマーPHF-タウ ではリ ン酸化されているが、「正常」なタウ または胎児タウ ではリン酸化されてい ないことも判明した(Hasegawaら,1992)。今のところ、これがタウ の反復領 域中で見出されている唯一の異常なリン酸化部位である。 最近、部位特異的突然変異誘発法が用いられ、この部位におけるタウ のリン 酸化がタウ の微小管結合能力を著しく低下させる一方、Ser/Thr-Pro モチーフ のリン酸化はごく僅かの影響しか及ぼさないことが示された(Biernat ら,1993 )。これがタウ をSer 262 でリン酸化する能力をもったニューロン組織内のプ ロテインキナーゼを検索する端緒を開いた。本発明の背景にある技術的な問題は 、決定的な意味をもつヒトタウ タンパク質のセリン262 のリン酸化によってア ルツハイマー病の発病の原因となるプロテインキナーゼおよびこれに対応するヌ クレオチド配列を提供することであった。 この技術的問題に対する解決は、本発明の請求の範囲中に示した実施態様を提 供することによって達成されている。 したがって、本発明、タウ、MAP4、MAP2およびMAP2c 中のKXGS型配列モチーフ をリン酸化し得る、ニューロンプロテインキナーゼ(NPK)またはその機能性断片 をコードするDNA配列であって、 (a) 表6でMARK-1として記載されたアミノ酸配列をコードする、 (b) 表6でNARK-2として記載されたアミノ酸配列をコードする、または、 (c) (a)若しくは(b)のDNAとハイブリダイズする、 ことを特徴とする前記DNA配列に関する。 「DNA配列」という用語はゲノムDNAまたはcDNA、半合成または合成 DNAなど、いかなるDNA配列をも含む。 驚くべきことに、これまでの当該分野のキナーゼのどれもが、上記リン酸化に 関連した生物学的および病理学的な効果を説明するのに十分な程度にタウ の反 復領域中にある四つのKXGSモチーフのリン酸化を媒介していないことが判明した 。これは、アルツハイマー病の発病の指標となるセリン残基262 について特にあ てはまることである。これに対し、本発明はアルツハイマー病の発病にとって欠 くことのできないアミノ酸残基のリン酸化に必要とされる上記の明確にされた性 質をもつ、新規プロテインキナーゼをコードするDNA配列を提供する。上記プ ロテインキナーゼは、本出願を通し、NPK、MARK-1またはMARK-2とも呼ばれる。 本出願において用いられているアミノ酸残基の番号はヒトタウ イソ型中の最長 のものであるh タウ 40 の配列に準じて与えられている(441 残基、Goedert ら ,1989)。 さらに、好ましい実施態様において、本発明は、ニューロンプロテインキナー ゼ(NPK)が、 (a) SDS-PAGEによって測定した見かけの分子量が110kD である、 (b) ヒトタウ タンパク質のセリン残基262,293,305,324および356 をリ ン酸化する、並びに (c) アミノ酸配列 KLDTFCGSPPYAAPELFQGKDRWMNVGHEEEELKPYAEP(K)SSRQNIPRC RNNI を有する、 ことによって特徴づけられるDNA配列に関する。 本発明のDNA配列の好ましい実施態様においては、NPK は、 (d) ホスファターゼPP-2A により不活性化される、 (e) タウ 関連の微小管結合タンパク質(MAPs)であるMAP2、MAP2c およびM AP4の以下のセリンまたはトレオニン残基 MAP2/MAP2c:S37,S1536,S1676,S1707,S1792,S1796,S1799 MAP4 :T829,T873,T874,T876,S899,S903,S928,S941,S1073 をリン酸化する、 (f) タウ,MAP4,MAP2およびMAP2c の微小管からの解離を引き起こす、 ことによってさらに特徴づけられる。 本発明とともに明らかにされたもう一つの驚くべき知見は、NPK がタウ 以外 の微小管結合タンパク質をリン酸化することによって、これらのタンパク質を微 小管から解離させることである。これによって上記微小管の不安定化、すなわち 微小管の動力学的な不安定性の増大がひきおこされ、これにひきつづき細胞増殖 、細胞分化または細胞の退化などについての影響が生じる。したがって本発明の NPK は、タウ または他のMAPsのリン酸化を通じて脳内微小管の動力学的状態お よび再編成を調節する能力をもつ。上に述べられた知見はガンの発生において本 発明のキナーゼがもつ役割について重要な意味をもっている。 ガンは本質的に制御を受けない細胞増殖であると考えられているのはこのため である。それゆえに、多くの抗ガン剤は微小管に傷害を与えることによって細胞 分裂および細胞増殖を阻害する。一方、「ガン遺伝子」は多くの場合、その細胞 内の調節に損傷が生じたキナーゼである。本発明のNPK と同一または相同のキナ ーゼの脱調節は、さまざまなタイプの細胞の微小管の安定性に重大な影響をもた らしうる。微小管は細胞分裂に重要な役割を演じるので、上記NPK の脱調節はこ れによって制御を受けない細胞分裂および正常細胞のガン細胞への変化をもたら しうる。また、上記NPK の脱調節は、分裂への刺激を受けつつ、ニューロン(こ れは分裂を行わない)などの、分裂後の最終的に分化した細胞を生じさせうる。 この「非正常」な刺激はニューロンを直接アポトーシス(したがってアルツハイ マー的な状態)へと導きうる。それは分化の段階からみて、ニューロンは分裂す ることができないからである。 本発明のDNA配列のさらに好ましい実施態様においては、NPK を、 (a) 脳抽出物をホモジナイズしてから遠心し、 (b) 工程(a)で得られた上清をリン酸セルロースによるクロマトグラフィーに 供し(その際、NPK 活性画分は200から400mM のNaClで溶出される)、 (c) 工程(b)で得られた活性画分を硫酸アンモニウムで沈殿させ、沈殿生成物 を透析し、 (d) 工程(c)で得られた透析物をQ−セファロース(Pharmacia)で陰イオン交 換クロマトグラフィーに供してNPK 活性画分を溶出させ(その際、上記NPK 活性 画分は約0.2M NaCl で単一ピークとして溶出する)、活性画分を透析し、 (e) Mono S HR 10/10(Pharmacia)で陽イオン交換クロマトグラフィーを行い 、 (f) Mono Q HR 5/5 でクロマトグラフィーを行い(その際、NPK活性画分は約 250 mM NaCl で溶出する)、 (g) Superdex G-200によるゲルろ過クロマトグラフィーを行い、(その際、N PK 活性は見かけの分子量100kD をもつものとして溶出する)、 (h) APTセルロースによるアフィニティクロマトグラフィーを行い、(その際 、NPK 活性画分はSDS-PAGEにより見かけの分子量約110kDをもつものとして溶出 する)、 その際、NPK 活性の活性を、放射性標識ATP の存在下でヒト成人タウ のアミ ノ酸残基 255から267 を含むペプチドをインキュベートし、該ペプチドに取り込 まれた放射能を測定することによって行う、 工程によって、脳組織から得ることができる。 ある実施態様において見かけの分子量110kD をもつ本発明のこのNPK(NPK-110 )がどのように単離されるかの詳細については実施例1において提供されている 。しかし、当業者は、上に述べられた技術上の知識から上記詳細をいかに補うべ きかを理解できるであろう。 本発明のNPK はいかなる脊椎動物の脳からも得ることができるであろう。好ま しい実施態様では、NPK は哺乳動物の脳から得られる。 本発明はまた、本発明のDNA配列に相補的なRNA配列に関するものである 。 特に好ましい実施態様では、上記の哺乳動物脳はヒトまたはブタの脳である。 本発明はさらに、DNA配列によってコードされるポリペプチドまたはその機 能性断片若しくは誘導体に関するものである。上記ポリペプチド、断片または誘 導体は翻訳後修飾または化学的修飾を受けるうる。本明細書を通して、NPK また はMARK(1または2)という用語もまた、特に示さなくてもそのような断片また は誘導体を含む。 本発明はさらに、NPK-110 によってリン酸化される、タウ 関連の微小管結合 タンパク質(MAPs)であるMAP2、MAP2c およびMAP4の以下のセリンまたはトレオ ニン残基、 MAP2/MAP2c:S37,S1536,S1676,S1707,S1792,S1796,S1799 MAP4 :T829,T873,T874,T876,S899,S903,S928,S941,S1073 および、上記リン酸化セリンまたはトレオニン残基を含むエピトープに関するも のである。 本発明はさらに、本発明のNPK に特異的に結合する抗体に関するものである。 上記抗体は血清由来またはモノクローナル抗体のどちらでもよい。所望のエピ トープに対するモノクローナルおよびポリクローナル抗体の作製は、当業者には よく知られている(たとえば Harlow と Lane,Antibodies,A Laboratory Man ual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,1988参照)。さら に、上記抗体は天然のものでも、または当業者によく知られている技術によって 得られるキメラ抗体など遺伝子操作によって得られるものでもよい。さらに、こ こで用いられる抗体という用語は、特異的なエピトープに結合する能力を保存し た Fab、F(ab)2、またはFVフラグメントのような、抗体のフラグメントを示すも のとしても用いられる。 さらにまた、本発明はMAP2、MAP2c およびMAP4の以下のリン酸化セリンまたは トレオニン残基、 MAP2/MAP2c:S37,S1536,S1676,S1707,S1792,S1796,S1799 MAP4 :T829,T873,T874,T876,S899,S903,S928,S941,S1073 を含むエピトープに特異的に結合する抗体に関するものである。 また、上記抗体はポリクローナル若しくはモノクローナル抗体、または結合特 異性を保持するそれらのフラグメントであってよい。 好ましい実施態様においては、本発明の抗体はモノクローナル抗体またはその フラグメント若しくは誘導体である。 本発明のさらに好ましい実施態様では、上記抗体はポリクロナール抗体または そのフラグメント若しくは誘導体である。 本発明はさらに必要により薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤と 組み合わせた、本発明のNPK の特異的な阻害剤を含む医薬組成物に関するもので ある。 「本発明のNPK の特異的阻害剤」という用語は、本発明のプロテインキナーゼ の酵素作用を特異的に阻害する基質を表わす。プロテインキナーゼなどの酵素に 対する阻害剤およびその作用様式は当業者にはよく知られている。例えば、その ような阻害剤は酵素の触媒領域に結合して、その基質を変化させるのを不可能に させうる。 上記医薬組成物は、患者の必要に応じて、当該症例に詳しい医師によって適当 であると判断された経路および投与量に従って、患者に投与することができる。 薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤は当業者にはよく知られており 、投与の経路または患者の特定の病気の状態に応じて製剤することができる。 好ましい実施態様においては、本発明はアルツハイマー病の治療のための医薬 組成物に関するものである。 また、上記医薬組成物は、患者の必要に応じて、当該症例を扱っている医師に よって適当であると判断された経路および投与量に従って、患者に投与すること ができる。 さらに、好ましい実施態様においては、本発明の医薬組成物はガンの治療に用 いることができる。上で指摘したように、本発明のNPK の脱調節は、微小管結合 タンパク質を発現しているさまざまなタイプの細胞を、最終的に上記細胞の悪性 形質転換をもたらす経路へと導き得る。したがって、NPK 阻害剤の薬学的に有効 な量は上記悪性形質転換のプロセスを停止および/または逆行させるであろう。 投与すべき阻害剤の量はそれぞれの症例を扱っている医師によって決められるで あろう。 本発明の医薬組成物のさらに好ましい実施態様では、上記阻害剤は、本発明の 抗体、本発明のNPK の脱リン酸化を行い得るホスファターゼ、好ましくはホスフ ァターゼPP-2A、上記NPK の活性化キナーゼの阻害剤、セリン262 残基を含むタ ウ 由来のペプチドあるいはMAP2、MAP2c 若しくはMAP4のセリンまたはトレオニ ン残基、 MAP2/MAP2c:S37,S1536,S1676,S1707,S1792,S1796,S1799 MAP4 :T829,T873,T874,T876,S899,S903,S928,S941,S1073 を少なくとも一つを含む、MAP2、2CまたはMAP4由来のペプチドである。 ここで用いられる「セリン262 残基を含むタウ 由来のペプチドおよびMAP2、 2CまたはMAP4のセリンまたはトレオニン残基、 MAP2/MAP2c:S37,S1536,S1676,S1707,S1792,S1796,S1799 MAP4 :T829,T873,T874,T876,S899,S903,S928,S941,S1073 のすくなくとも一つを含むMAP2、2CまたはMAP4由来のペプチド」という用語は、 セリン残基262(タウ)または、(MAP)MAP2、MAP2c およびMAP4の上に記した他の 残基を含むエピトープに関して、タウ タンパク質またはMAP2、2Cおよび 4タン パク質の天然のコンフォメーションを三次元構造において再構成できるようなペ プチドを表わしている。これらのペプチドは本発明のNPK の天然の基質(すなわ ちタウ またはタウ 関連のMAPs)に類似するであろうが、NPK に関連するいか なる生物学的効果をも示しえないであろう。単にエピトープのみよりなる、また はこれに接する付加的アミノ酸を含む上記ペプチドの合成は当業者にはよく知ら れている。 本発明はさらに、 (a) 本発明のNPK; (b) 本発明の抗体またはフラグメント若しくは誘導体;および/または (c) 上に述べたタウ、MAP2、MAP2c またはMAP4のリン酸化しうるセリンまた はトレオニンを含むペプチド を含む診断組成物に関するものである。 上記診断組成物は、たとえばアルツハイマー病若しくはガンまたはこれらの発 病の検出に用いることができる。本発明の抗体は、異常、とりわけ上記疾病の指 標となる本発明のNPK の高濃度またはレベル、すなわち上記NPK の高度の活性化 を検出するために用いることができる。組成物とともに投与されるNPK を内部対 照として用いることができる。一方、上に述べたペプチドは、本発明のNPK の異 常な活性を検出するための基質として用いることができる。診断組成物中に含ま れたNPK 活性もまた、内部対照として用いることができる。 上に列挙された及びMAP4、MAP2またはMAP2c に含まれるリン酸化されたセリン 残基に特異的に結合する抗体は、ガンの指標となる、これら微小管結合タンパク 質の異常なリン酸化状態またはパターンの検出のために用いることができる。 診断組成物のさらなる応用は以下のごとくである。一つの実施態様では、上記 診断組成物は上に述べたエピトープの一つに対して産生された本発明の抗体を含 みうる。例をあげれば、ある標本のアルツハイマーまたはガンと関連した病態は 、上記標本を上記エピトープの一つまたはそれ以上を認識する抗体によって処理 することにより検出しうるかもしれない。抗体−エピトープ(ハプテン)複合体 は本発明の抗体に対して作製し、当業者には既知の方法によって標識した第二の 抗体を用いて可視化することができる(例えば既出、Harlowと Lane 参照)。 本発明のさらに他の実施態様に於いて、上記診断組成物は、上に掲げたエピト ープおよび本発明の抗体より構成される。上記抗体による標本の処理は、もし上 記標本に対する上記抗体の結合が、参照標本として用いられた、上記エピトープ に対する上記抗体の結合において生じるならば、対応する患者の病態に関して結 論を下しうるであろう。 さらに他の実施態様においては、診断組成物は上にあげたエピトープ、本発明 のNPK および本発明の抗体を含みうる。キナーゼ活性は、本発明のエピトープの リン酸化と比較した標本のリン酸化についてモニターすることができる。NPK 活 性の定量値から、上記標本中に含まれるタウ タンパク質またはMAP2,2Cまたは 4 のリン酸化状態及び患者の病状を推測することができる。例えば、キナーゼ活 性は、同一の反応に酵素的変換に際して視覚的に検知しうる基質類似体を含ませ ることによって推論することができる。そのような基質類似体は当業界にあって 広く使用されている。一方、標本中のリン酸化されたタウ タンパク質またはMA P2、2Cまたは4 の量は、本発明のキナーゼで処理後、リン酸化エピトープに対し て作製された本発明の抗体を用いるとともに診断組成物によって提供される量の 抗体−エピトープ複合体の量を内部標準として用いるか、または例えば当業者に はよく知られている放射性トレーサー法によって、NPK によりタウ タンパク質 またはMAP2、2Cまたは4 にとり込まれたリン酸の量を定量することによって検出 することができる。 しかしながら、診断原理について詳しい、本分野の専門家は容易に上に述べた 化合物を異なる様式で組み合わせたり、または組成物を第二または第三の、標識 または無標識の抗体、または酵素および基質によって補充することができる。こ れらの実施態様もまた本発明に含まれる。 さらに別の実施態様では、本発明は、患者から単離した脳脊髄液の検査または 神経組織の生検(例えば嗅上皮)の実施および本発明のNPK の存在を上記組織に ついて検査することを含むアルツハイマー病の in vitro の診断および/または 追跡のための方法に関するものである。 本発明はさら、患者から単離した脳脊髄液の検査または神経組織の生検の実施 および本発明のNPK の非生理的な量の存在または上記NPK の非生理的な活性を、 上記組織について検査することを含む、アルツハイマー病のin vitroの診断およ び/または追跡のための方法に関するものである。 上記生検に適当な神経組織の例は嗅上皮である。 本発明の方法は、例えば本発明の診断組成物、とくに上記NPK に対する抗体を 用いて実施することができる。したがって、本発明の好ましい実施態様において 、本発明のNPK は、上記NPK に対して特異的に結合する本発明の抗体によって検 出される。 さらに本発明は、タウ 関連の微小管結合タンパク質(MAPs)MAP2、MAP2c お よびMAP4の部位、 MAP2/MAP2c:S37,S1536,S1676,S1707,S1792,S1796,S1799 MAP4 :T829,T873,T874,T876,S899,S903,S928,S941,S1073 のリン酸化セリンまたはトレオニン残基の存在、または本発明のNPK またはNPK 特異的フォスファターゼの非生理的な量の存在を適当な組織または体液について 検査することを含む、ガンまたはガンの発生のためのin vitroの診断方法に関す るものである。セリンまたはトレオニン残基のリン酸化状態は、非生理的なもの であるべきことが理解される。そのようなリン酸化状態を決定するための方法は 、PCT/EP 92 02 829に詳細に述べられており、これは本発明に参照することによ りとり入れられている。 上記リン酸化セリンまたはトレオニン残基の検査は上記リン酸化残基または上 記残基を含むエピトープを特異的に検出する抗体を用いて実施することができる 。 標本中のNPK の量は、これに対して特異的な抗体を用いて測定するか、または 適当な基質、例えば上にあげた非リン酸化状態にあるセリンまたはトレオニン残 基を含むペプチドまたは非リン酸化状態にあるMAP2、MAP2c、MAP4のいずれかを 用いてその活性を測定することによって測定できる。タンパク質のリン酸化状態 を測定する方法はPCT/EP 92 02 829に詳細に述べられている。例えばPP-2A、PPI またはカルシニューリン(calcineurin)などのフォスファターゼの活性は、基質 、例えば本発明の診断組成物中に含まれている、本発明のNPK を用意することに よって検査することができる。 本発明のこのin vitroの方法を実施するための適当な組織または体液は脳脊髄 液、血液、組織(たとえば肝臓または皮膚)の生検試料である。 本発明のさらに別の目的は、正常なMAP2、MAP2c またはMAP4を本発明のNPK で 処理し、部位、 MAP2/MAP2c:S37,S1536,S1676,S1707,S1792,S1796,S1799 MAP4 :T829,T873,T874,T876,S899,S903,S928,S941,S1073 においてリン酸化されたタンパク質へとin vitroで変換する方法を提供すること である。ここで上記リン酸化状態はガンまたはガンの発生の指標となるものであ る。上記MAPsのリン酸化を許す条件は、本出願によって提供される一般的な教示 に従って決定することができる。リン酸化されたMAPsは次いで特異的な抗体によ って確認できる。上記in vitroの方法の結果は、ガンの発生に対して一層の洞察 を深めることを可能にするであろう。 さらに、上に述べた部位において、正常なもののリン酸化MAP タンパク質への 変換を阻害する阻害剤を試験することができる。これら“阻害剤”は、例えばエ ピトープを遮断することにより、リン酸化されるエピトープに特異的であるか、 またはそれらが本発明のNPK の生物活性を阻害またはかく乱するかぎり、本発明 のNPK のプロテインキナーゼのさまざまなドメインに対して特異的なものであり うるだろう。別のタイプの阻害は、上記MAPsまたは上記NPK に対するホスファタ ーゼの敵対的作用、または上記NPK の活性化キナーゼの阻害である。さらに、本 発明の方法によって生産されたMAP は、in vitroおよびin vivo における微小管 構造への結合の研究に、これを通じてガンの背景をなす分子的基礎の解明に貢献 することができる。 さらに本発明は、本発明のMAP のリン酸化セリンまたはトレオニン残基、また は上記残基を含むエピトープをガンまたはガンの発生の指標となる特異的な抗体 を得るために用いることに関連している。上記抗体を得るための方法は当業者に はよく知られている。すなわち、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体の産 生は標準の方法を用いて行うことができる(例えば既出、Harlow and Lane参照 )。抗体産生のためにオリゴまたはポリペプチドが用いられる場合には、エピト ープを含むペプチドを、たとえばウシ血清アルブミンまたはKeyhole Limpetヘモ シアニンなどの、上記エピトープに対する免疫応答を誘導または増強することの できる適当なキャリヤー分子と結合させることが好ましい。ハプテン(エピトー プを含むかまたはエピトープそのもの)とキャリヤーとの結合の方法は当業者に はよく知られている(既出、Harlow and Lane)。目的とする抗体を産生させるた めに適当であればどのような動物をこのために用いてもよいこともまた理解され るべきである。 図の説明 図1:タウ(中枢神経組織中最大のイソ型 h タウ 40,Goedertら,1989)、 四つの反復を含む構築物 K18、およ脳由来のキナーゼ活性によってリン酸化され るいくつかの部位(Gustkeら,1992)を示す。N末端近傍の斜線を施した部分は 選択的スプライシングがあるために存在しない場合がありうる挿入部であり、1 〜4で表示された囲み部分は、4つの反復を表わし、そのうち反復2は存在しな い場合がある。ほとんどのリン酸化部位は反復の外側にあるセリン−プロリンま たはトレオニン−プロリンモチーフにあるが、脳のキナーゼ活性は反復中の二部 位、セリン262 およびセリン356 をもリン酸化する。 図2:ブタ脳からのNPK110の単離。 (A)組織抽出物をホスホセルロース(カラム)にかけ、0.15−1M NaClで段階 的に溶出した。斜線棒グラフは溶出物の全タンパク質量を示し、非斜線棒グラフ はタウ構築物 K18を基質として測定した活性を示す。(B)0.35−0.5M NaCl で溶 出した成分の硫安沈殿を行い、沈殿を透析し、これを Q-Sepharoseカラムにかけ る。黒丸はタンパク質濃度、白丸は活性プロフィールを示す。濃度勾配組成は右 軸に示される。(C)Q-Sepharoseの8−15分画を透析し、これをSP-Sepharoseカラ ムにかける。(D)SP-Sepharoseカラムから得られた12−16分画を透析し、これをM ono Q HR 5/5 カラムにかける。(E)Mono Qカラムから得られた9−11分画をSupe rdex 200ゲルろ過カラムにかける。右軸に分子量マーカーの溶出位置を示した。 図3:ATP-Sepharose を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる NPK 110 の最終的精製(SDS-PAGE、レーン1−3)およびゲル内(in-gel)リン酸化 でみたその性質(オートラジオグラフィー、レーン4−6)。ゲルろ過カラムの 最も活性の強い分画(レーン1)をATP アフィニティーカラムにかけた。キナー ゼは5mM ATPによって特異的に溶出された(レーン2,3)。銀染色ゲルは約110k Dalの見かけの分子量をもつ幅広の(不鮮明な)バンドおよび95kDalの第二の鮮 明なバンドを与える。レーン4−6はレーン1−3のサンプルのゲル内リン酸化 のオートラジオグラムである。基質として、タウ(5μM)をゲルマトリックス中に 重合させた。再生およびg−32P ATP とのインキュベーション後、110kDal バン ドのみがタウに対するキナーゼ活性をもつことが明らかに示される。 図4:NPK110による野生型タウおよび構築物 K18(微小管結合領域)のリン酸 化。H タウ40(10μM、レーン1,2)および K18(20μM、レーン3,4)を5 μU/mlのNPK110および2mM g−32P ATP を用いて37℃で2時間リン酸化した。ア リコートを7−20%の SDS濃度勾配ゲルで電気泳動した:レーン1,2、リン酸 化前とリン酸化後のh タウ40、レーン3,4、リン酸化前とリン酸化後の K18。 レーン2,4において、リン酸化によりわずかな分子量の変化が生じることに注 目。右側は同一のゲルのオートラジオグラフである。 リン酸化されたh タウ40および K18がレーン2および4に示される。 図5:NPK110によってリン酸化された野生型タウ(hタウ 40)および構築物K18 の、トリプシン分解リン酸化ペプチドマップ。30μg のタウを0.5μU のNPK110 を用いて37℃で2時間リン酸化した。(A)4−反復をもつ全長のタウ(hタウ 40) 、(B)構築物K18(MT 結合領域、全長タウの244-372 残基)、(C)より顕著なスポ ットの図。左上のスポット1はセリン262 ;右上のスポット2はセリン356、ス ポット3(スポット1の下)はセリン305、スポット4(常に重なりのある二連 スポットの一部)はセリン324を含み、スポット5はセリン293(このトリプシン 分解ペプチドCGSKはおそらくそのサイズが小さいため、HPLCカラムからは回収さ れなかったが、スポットは部位特異的変異導入によって固定できる。)。(D)(A) 及び(B)に示されたリン酸化ペプチドに由来する同一量のカウント(10,000cpm)の 混合物。(C)に示されたリン酸化部位の同定は、HPLCによる精製の2次元分析を 行い、ペプチドを配列決定した(表1に列挙した)。精製した各ペプチドの10,0 00cpm を同定を確実なものとするために(A)に示されたリン酸化ペプチドの5000c pm アリコートとの組み合わせによって分析した。 図6:セリン262 のリン酸化によるタウの微小管との結合の消失。(A)タウの タキソールで安定化した微小管(30μM)への結合は実施例2に於いて後に述べら れるような共沈試験によって測定した。NPK110(最終濃度 8.5μU/ml)により、 全長の野生型タウ(‘wt’h タウ40)およびセリン262 がアラニンに変った変異型 (A262)(10μM)を前もって37℃で2時間リン酸化した。曲線は非直線的減衰によ って得られた(Biernat ら,1993)。リン酸化によって野生型のタウの結合は完 全に消失する(黒丸)のに反し、A262変異型はその親和性に減少があるとはいえ 結合する(三角)。比較のため、非リン酸化タウの結合も示した(白丸)。 (B)NPK110によるリン酸化中の、微小管に結合したタウの遊離。h タウ40(10μ M)をタキソールで安定化した微小管(30μM)とともにインキュベートした。t= 0(ゼロ分)に於いて、NPK110を最終濃度10μU/mlとなるように加え、アリコー トを1から20時間にわたって試料を分取し、これを遠心分離した。タウをペレッ トおよび上清につき、SDS ゲルのデンシトメトリーによって測定した(黒丸)。 とりこまれたリン酸はゲル小片のCerenkov計数により測定し(白丸)、右縦軸に 示した。微小管の非存在下におけるタウのリン酸化はより速やかに進行すること が示される(四角)。 図7:微小管の暗視野(darkfield)ビデオ検鏡およびセリン262 のリン酸化の タウに対する影響。微小管(5μM チューブリン)を2.5μM タウ(イソ型h タ ウ40)および10μU/mlのNPK110の存在下でウニ精子軸糸上で凝集させた。A.AT P 非存在下20分、B.ATP 存在下20分。Aにおいては微小管は連続的に成長し、 Bにおいては、セリン262 のリン酸化が起り得、その結果、微小管の不安定化お よび短小化が生じる。バーの長さ=10μm。 図8:暗視野(darkfield)顕微鏡法によって測定した、非リン酸化およびNPK11 0−リン酸化タウの軸糸上に凝集した微小管の長さへの影響。それぞれの条件に おいて、500から600 の微小管陽性の末端を測定した;平均長を時間に対してプ ロットした。チューブリン濃度は5μM である。タウの添加なしには、この濃度 においては微小管が観察されないことに注目すべきである。タウの濃度はすべて の場合につき2.5μM である。対照実験に於いてはATP を除外した(‘-ATP’)。 (A)NPK110によりあらかじめリン酸化されたタウは微小管の成長を促進しない (黒丸)が、あらかじめリン酸化された点変異をもつ変異型A262は促進する(三 角、図6Bの時間経過解離結合試験(time resolved bindin assay)と一致をみ せる)。(B)チューブリンおよびタウを10μU/ml(最終濃度)のNPK110とともに 2mMのATP の存在下(黒丸)または非存在下(白丸)において、4℃で混合した 。t=0(ゼロ分)において、温度を37℃に上昇させた。ATP 非存在下のもとで 、野生型のタウが存在すると、微小管は連続的に成長する(白丸);同一の結果 は変異型セリン262 −アラニンについて得られた(三角)。しかし、ATP および 野生型のタウが共に存在すると、初期に成長をみせるがその後縮小する(黒丸) 。(C-E)Bにおける対応する曲線の5分および30分における微小管の長さのヒス トグラム。各試料は5分後20μm 近傍に顕著なピークを示す(白丸)。Mg-ATPが 存在しない(C)かまたはセリン262 がアラニンに変異すると(E)、30分おいて分布 はより広く、より長い方へと移行する。これとは対照的にタウのリン酸化は、30 分のインキュベーションで微小管の平均の長さを明らかに減少させる(D)。 図9:(A)脳抽出物、(B)NPK110、(C)PKC または(D)PKA によってそれぞれリン 酸化した、野生型タウ(hタウ 40)および構築物K18 のトリプシン分解リン酸ペプ チドマップ。スポットの番号は図5と同様である(スポット1:セリン262 、スポット2:セリン356、スポット3:セリン305、スポット4:セリン324、 スポット5:セリン293)。右側のパネルは、各キナーゼで反応させた全長のタウ の対応する二次元リン酸化アミノ酸の分析を示す。 図10:タウ−微小管相互作用に対する、異なるリン酸化部位の影響を示す図。 セリン/トレオニン−プロリンモチーフの大多数は反復ドメインをはさむ領域に あるが、これらはタウの結合に対してごく僅かの影響しか与えない。反復ドメイ ンはセリン−プロリンではない、いくつかのリン酸化可能部位、特に四つのKXGS モチーフを含んでいる。これらの中で、最初のKIGSモチーフのセリン262 は微小 管の結合に対して圧倒的に大きな影響力をもつ。 図11:NPK-110 によってリン酸化された組換えMAP2c のリン酸化ペプチドマッ プ。各ペプチドは以下のリン酸化残基を含む:I=セリン1707、II=セリン1676 、III=セリン37およびセリン1536、IV=セリン1792、セリン1796およびセリン1 799(残基の番号はAlbalaら,1993に従う)。 図12:NPK-110 によってリン酸化されたMAP4融合タンパク質のリン酸化ペプチ ドマップ。各ペプチドは以下のリン酸化残基を含む:I=トレオニン829、II= セリン941、III=セリン928、IV=トレオニン=873、トレオニン874 およびトレ オニン876、V=セリン899 およびセリン903、VI=セリン1073、VII=セリン928 (残基の番号はWestら,1991)に従う)。 図13:暗視野顕微鏡法によって測定した、非リン酸化およびNPK-110 リン酸化 MAP4、MAP2およびMAP2c の軸糸上に凝集した微小管の長さへの効果。各条件につ き、500〜600 の微小管陽性末端を測定した;平均の長さを時間に対してプロッ トした。チューブリン濃度は5μM であり、MAP 濃度は1μM である。MAP の添 加なしには、この濃度では微小管が観察されない点に注目すべきである。 (a) チューブリンおよびMAP4を10μU/mlのNPK-110(2mMのMg-ATPの存在下(黒 丸)または非存在下(白丸)での最終濃度)とともに4℃で混合した。t=0( ゼロ分)で温度を37℃に上昇させた。ATP 非存在、MAP4存在下で、微小管は連続 的に成長する(白丸)。しかし、MAP4とATP とが共に存在すると、初期には成長 するが、MAP4がリン酸化され、微小管から遊離し、微小管が不安定化するために 、やがて縮小する(黒丸)。 (b) MAP2を用いる以外は(a)と同様の実験で、結果は同様である。 (c) MAP2c を用いる以外は(a)と同様の実験で、結果は同様である。 図14:成人および胎児のヒト組織の、MARKのcDNAプローブを用いたノーザ ンブロット。 左:成人組織 レーン1:膵臓(Pa) レーン2:腎臓(Ki) レーン3:筋肉(Mu) レーン4:肝臓(Li) レーン5:肺 (Lu) レーン6:胎盤(Pl) レーン7:脳 (Br) レーン8:心臓(H ) 右:胎児組織 レーン9:腎臓(Ki) レーン10:肝臓(Li) レーン11:肺 (Lu) レーン12:脳 (Br) 図15:p110 MARK によるリン酸化の影響下における,組換え野生型MAP2c およ び点変異型MAP2c のタキソールで安定化した微小管(30μM チューブリン二量体 )への結合。白丸:非リン酸化野生型MAP2c。結合はかたく(Kdは約0.25μM)ほ ぼ17μM のリガンドまたは2チューブリン二量体あたり約1MAP2c 分子で飽和す る。黒丸:あらかじめp110 MARK(2.5mU/ml ;1U は30℃で1分間にMAR2c に転 移する1μmol のリン酸化に対応する)で2時間リン酸化を行った野生型MAP2c 。基本的に結合が見られないことに注目すべきである。黒および白四角:あらか じめp110 MARK(2.5mU/ml)で2時間リン酸化を行ったMAP2cA319 およびMAP2cA350 。これらの変異型において、第一または第二の反復中のKXGSモチーフ中のセリン 319 またはセリン350 はアラニンへと点変異している。微小管への親和性は化学 量論的には野生型のMAP2c と同様のままである一方、著しく低下(Kd=7μ M)している。三角:p110MARK(2.5mU/ml)で2時間あらかじめリン酸化を行った MAP2cA319/A350。この変異型ではセリン319、350 の双方がアラニンへと変異し ている。結合は非リン酸化タンパク質と同様であり、二つのKXGSモチーフはもは やリン酸化可能ではないので、リン酸化に対する感受性が失われたことを示して いる。 図16:暗視野顕微鏡法で測定した、非リン酸化およびp110 MARK リン酸化MAP4 (A)、MAP2(B)、MAP2c(C)および点変異型MAP2c の、自己凝集した微小管の長さへ の効果。各条件につき、500から800 の微小管陽性末端を分析し、平均の長さを 時間に対してプロットした。すべての場合につき、チューブリン濃度は10μM で あり、MAP4およびMAP2の濃度は1μM、MAP2c の濃度は2μM である。対照実験 においてはATP は除去した(‘-ATP’)。 A、B及びCにおける白丸:MAP をATP の非存在下で2.5mU/mlのp110 MARK( 最終濃度)とともに30分間プレインキュベーションした。10μM のチューブリン の添加によって微小管は凝集し、30分以内に平均の微小管の長さは約20μm にま で増大した。これとは対照的にATP が存在すると、自己凝集は起きず、MAP のリ ン酸化が微小管の形成を防止したことが示される。凝集核の存在下での凝集(see ded nucleation)を促すため、軸糸(10−100fM)を添加しても、長さ約2μm の短 い微小管が観察されるのみだった(A、B、Cにおける白三角)。 A、BおよびCにおける黒丸:チューブリンおよびMAP を2.5mU/mlのp110MARK (最終濃度)とともに、4℃で混合し、温度を直ちに37℃に上昇させた(このた めはじめMAP はリン酸化されない)。三つの場合すべてについて微小管の成長は 促進されたが、微小管の最終的な平均の長さは、非リン酸化MAP について観察さ れるものの約半分であるに留まった(白丸と比較せよ)。 D:MAP2c のリン酸化部位点変異の効果。 すべてのタンパク質を上述のようにリン酸化した(30分のプレインキュベーシ ョンによって)。三角:野生型MAP2c、黒丸:MAP2cA319(最初の反復中のKXGSの KXGAへの変異)、四角:MAP2cA350(第二の反復中のKXGSのKXGAへの変異)、黒 四角:MAP2cA319/A350(第一および第二の反復中のKXGSのKXGAへの変異)。 実施例により本発明を説明する。 実施例で述べられているタウタンパク質については、E.coli内で発現させた組 換えヒトタウタンパク質を用いた。cDNAクローンをM.Goedert(Goedert ら, 1989)に述べられた方法に従って調製し、pET 発現ベクターの変種を用いて発現 させた(Studier ら,1990)。タウの熱安定性およびMono S FPLC を利用してタ ンパク質の精製を行った(Hagestedt ら,1989)。構築物K18 はイソ型タウの4 反復に由来するもので、微小管結合領域、残基244 から372 を含んでいる(Biern atら,1993)。変異型‘A262’は最長のヒトのイソ型に由来する。単一の残基セ リン262 は常法によってアラニンへと変えた。リン酸セルロースによって精製さ れたチューブリン(PC−チューブリン)は、ブタ脳からMandelkow ら,1985の方 法に従って調製した。プロテインキナーゼAの触媒サブユニット(ウシ心臓から の単離、活性はケンプチド(Kemptide)を基質として 27nU/μl、カゼインを基質 として100pU/μl)はPromega より購入し、プロテインキナーゼC(ラット脳より 単離。活性はヒストンH1を基質として80pU/μl)はBoehringer Mannheim より購 入した。 実施例1 プロテインキナーゼNPK110の精製と性質 すべての操作は4℃で行った。新鮮なブタの脳(約1kg)を近隣の屠殺場から 取得し、1リットルの緩衝液A(5mM EGTA、100mM NaF、1mM PMSF、1mM ベンズ アミジン、1mM Na3VO4、1mM DTT、0.1% Brij-35を含む、50mM Tris、pH8.5)中 に均質化した。均質化物を氷上に保ち研究室に運び、1時間30,000g で遠心分離 した。上清をさらに超遠心にかけて(50,000g 30分)清澄化し、pHを6.8に調節 し、若干の引圧のもとで緩衝液B(50mM MES pH 6.8、2mM EGTA、50mM NaF、1mM PMSF、1mM ベンズアミジン、1mM Na3VO4、1mM DTT、0.1% Brij-35)で平衡化し た150ml Whatman P11 を含むブラナー漏斗にローディングした。リン酸セルロー スは 500mlの緩衝液Bで洗浄し、0.15M-1M NaCl を含む緩衝液Bの各 150mlを用 い段階的に溶出した(図2A)。各画分について基本的にDrewesら,1992に述べ られているように、四つの微小管結合反復よりなるタウ構築物(K18) のリン酸化によって、活性のスクリーニングを行った。活性のある画分を硫安分 画によって分画した。30%から50%飽和の間で得られた沈澱を氷上において緩衝 液Aに対して一夜透析した。透析液(約50ml)を超遠心によって清澄化し、スー パーループ(Superloop)(Pharmacia)を用いて陰イオン交換カラム(Q-Sepharose HR,Pharmacia,80 ×16mm)にローディングした。カラムを 100mlの緩衝液Aで 洗浄し、0−0.5M NaCl の段階的勾配で溶出したのち(図2B、流速5ml/分、 分画サイズ、7ml)、活性画分(約40ml)を緩衝液Bに対して透析し、陽イオン 交換カラム(SP-Sepharose HR,Pharmacia,60×16mm)にローディングした(図 2C、流速4ml/分、分画サイズ、7ml)。0−0.5M NaCl によって溶出後、活 性画分(約40ml)を一まとめにし、Sephadex G25カラム(300×26mm)上で緩衝液 を緩衝液Aに交換し、Mono Q HR 5/5 カラム(Pharmacia)にローディングして濃 度勾配の急なNaCl勾配によって溶出した(図2D、流速 0.5ml/分、分画サイズ 、1ml)。活性のある画分(2−3ml)をCentricon 30ミクロコンセントレータ ー(Amicon)で2倍に濃縮し、緩衝液A(pH7.8、150mM NaClおよび10%グリセ ロールを含む)で平衡化したゲルろ過カラム(Superdex 200,Pharmacia,300×16 mm)にローディングし、前記緩衝液Aで溶出した。流速は 0.2ml/分、分画サイ ズは2mlとした。該カラムはマーカータンパク質キット(Pharmacia)を用いて予 めキャリブレーションしておいた。活性画分を集め、Sephadex G25 カラム(100 ×16mm)上で緩衝液を緩衝液C(40mM β−グリセロリン酸化、10mM MgCl2、2mM EGTA、1mM ベンズアミジン、0.2mM DTT、0.1% Brij-35)に交換した。G-25カラ ムから得られたタンパク質のプールを 0.1ml/分で ATP-Sepharoseカラム(Upst ate Biotechnology Inc.,Lake Placid,USA,15×5mm)にローディングした。 このカラムを5mlの緩衝液Cで洗浄し、5mMのMgATP を含む2mlの緩衝液Cで溶 出した。溶出液を濃縮し Mono Q PC 1.6/5カラム(‘Smart’系、Pharmacia)を用 いてATP および緩衝液成分を除去し、250mM NaCl、1mM EG 0、0.2mM DTT、1mM ベンズアミジンおよび0.03% Brij-35 を含む25mM Tris-HCl、pH7.4によって溶出 した。活性画分を50%(v/v)のグリセロールと混合し、−20℃で保存した。この条 件のもとで活性は少なくとも1か月保持される。 これら6段階のクロマトグラフィーの使用によって、ブタ脳組織抽出物からの セリン 262−リン酸化活性の約一万倍の精製が実現した。図2に詳しく示されて いるように、リン酸セルロース(A)、Q-およびSP-SepharoseおよびMono Q(B 、C、D)を用いたイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過(E)および最後 に固相化した ATPを用いたアフィニティークロマトグラフィーが採用された。組 織抽出物中のこのキナーゼの活性は〜0.2mU/mgであり、アフィニティー精製した キナーゼの活性は〜2U/mg(1Uは1分間に1μmol のリン酸化を転移する)であ った。酵素の分子量はゲルろ過によればほぼ90−100kDal であったが、活性のピ ークの幅は広く、しばしば著しいテーリング(裾野の広がり)を示した(図2E) 。SDS ゲルでは、見かけの分子量は約110kDal であった(図3)。この酵素はゲ ル内で変性状態から復元することができる。タウがもし基質としてゲルマトリッ クス中に重合化することかてきた場合、ゲルをγ-32P-ATPとともにインキュベー トすれば、銀染色して観察される主要でない混入成分が検出可能な活性を持たな い一方で、110kDal のバンドはオートラジオグラフィー上顕著となった(図3、 レーン4−6)。NPK110によるリン酸化後、完全長タウおよび構築物K18 のいず れもがSDS-PAGEに於いて小さくはあるが明瞭な移動度の変化を示した(図4、レ ーン1−4)。最終的にとりこまれたリン酸化の量は、幾分か酵素濃度および活 性に依存するところはあるが1モルのタウあたり約1.8〜2.5 モルであり、この レベルのリン酸化は約2時間のリン酸化によって達成される。リン酸化反応はつ ぎのように行った。 リン酸化反応は 2mM ATP、5mM MgCl2、2mM EGTA、1mM DTT、 0.1mM PMSF、0.0 3% Brij-35 を含む40mM Hepes、pH7.2 中で行われた。キナーゼ調製物の抽出物 または粗分画のスクリーニングを行う場合には、50mM のNaF または1μM のオ カダ酸(okadaic acid)(LC Services,Woburn,MA,USA)を含ませた。反応は95 ℃に熱することで停止させた。リン酸化は SDSゲル(Steiner ら,1990)または リン酸セルロースペーパーディスク(Gibco)(Casnellie 1991)上でアッセイし た。ゲル内(In-gel)リン酸化アッセイはGeahlen ら,1986の方法に従って実施 した。 タウに対するNPK110の特異性はリン酸化タンパク質のトリプシン消化およびこ れに続く二次元薄層電気泳動およびクロマトグラフィーによって調べた(図5) 。 組換え完全長4反復タウ(図5A)および4反復断片K18(図5B)から得られ るリン酸化のパターンを比較すれば、ほとんどのリン酸化ペプチドが反復ドメイ ンから生じるのは明らかである。これは双方のサンプルの混合物の分析によって 確認される(図5D)。第二のアプローチにおいて、トリプシン消化物をHPLCに よって分析した(データ示さず)。より詳細には、これらのアプローチは以下の ように実施した。 リン酸化反応にひき続いて、試料を0.5M NaCl/10mM DTT中で煮沸および遠心分 離することによってキナーゼを除去した。タウタンパク質は上清に留まり、これ を15%TCA で沈殿させた。システイン残基は過ギ酸処理によって修飾した(Hirs ,1967)。タンパク質は0.1mM CaCl2存在下で、1:10−1:20(w/w)の比率の酵 素の二度の添加のもとに、トリプシン(Promega、シークエンシンググレード) による消化を一夜行った。セルロースの薄層プレート(Macherey & Nagel,Duren ,FRG)を用いて、リン酸化ペプチドの二次元マッピングをBoyle ら,1991に従っ て行った。簡単に言えば、一次元目の電気泳動はギ酸(88%)/酢酸/水(50/15 6/1794)、中pH1.9で、二次元目のクロマトグラフィーはn−ブタノール/ピリジ ン/酢酸/水(150/100/30/120)中で行った。配列決定によるリン酸化部位のマ ッピングのために、組換えヒトタウ(200μg、クローンh タウ40)をNPK110および32 P-ATP(100Ci/mol)を用いて2時間リン酸化した。リン酸化の停止は短時間の 熱処理によって行なった。タンパク質は6M 尿素および2mM DTTと共にインキュ ベーションし、システインはビニルピリジン(Tarrら,1983)または過ギ酸処理 によりブロックした。10mMの重炭酸アンモニウムに対して透析を行った後、タン パク質を凍結乾燥し、0.1mM CaCl2の存在下でトリプシン(1:20)により消化 した。ペプチドの分離はμRPC C2/C18 SC 2.1/10カラム(‘Smart’系、Pharmaci a)を用いたHPLCを二度繰り返して実施した。消化物は酢酸(5%(v/v)によって 酸性にし、10mM 酢酸アンモニウム中のアセトニトリル勾配を用いてHPLCによっ て分画した(流速0.1ml/分、0−25%の勾配で2時間、25-50%の勾配で20分の 溶出)。ペプチドは 214、254 および280nm の紫外線吸収で検出し、とり込まれ たリン酸化はシンチレーションカウンター(Hewlett-Packard TriCarb 1900 CA) により、Cerenkov放射(radiation)として測定した。この勾配によって得 られる通り抜け(Flowthrough)画分および放射性のピークはさらにTFA 中のアセ トニトリル勾配を用いて精製した(流速0.1ml/分、0%アセトニトリル/0.075 % TFAから66%アセトニトリル/0.05% TFAへの勾配で60分間の溶出)。ペプ チドの配列分析は477Aパルス液相シークエンサーおよび120AオンラインPTH アミ ノ酸分析機(Applied Biosystems)を用いて行った。リン酸化セリンは気相シー クエンシングにより、デヒドロアラニンのジチオスレイトール付加物として同定 された(Meyerら,1991)。 これによりいくつかの標識ペプチドが生じ、これらはリン酸化ペプチドシーク エンシングおよびリン酸化アミノ酸分析によって直接に分析された。リン酸化ア ミノ酸分析:消化試料の一部を6N HCl 中で部分加水分解(110℃、60分)し、p H1.9 およびpH3.5 おける二次元電気泳動によって分析した(Boyleら,1991)。 リン酸化ペプチドシークエンシングの結果は表1にまとめた。表1: NPK110によってリン酸化したh タウ40のHPLCによって得られたトリプシン消化 リン酸化ペプチド。配列は主要な放射性のピークについてのものである。表中の データは二度目の精製を行った後に得られたカウント数、物質の量、星印を付し たリン酸化残基(S- エチルシステインとして同定された)を含む配列、リン酸 化部位(h タウ40に準拠した番号)である。第二の反復からはトリプシン消化リ ン酸化ペプチドCGSKはHPLCによって検出されず(おそらく分子量が小さいことと 、親水性のため)、したがってリン酸化ペプチドマッピングおよび部位特異的突 然変異誘発によって同定しなければならないことに注目せねばならない。 放射性の大部分はリン酸化セリン262 を含むペプチド中に見出された。セリン 356(第四の反復のKIGSモチーフ中のもの)およびセリン324(第三の反復のKCGS モチーフ中のもの)もまた放射性標識されることがわかった。これら精製したペ プチドの二次元解析によって、図5Cに示されたスポットの同定が可能となった 。これはセリン262(スポット1)がNPK110のタウに対する主な標的であり、セ リン356(スポット2)がこれに続くことを明らかに示している。スポット3は セリン305 をスポット4はセリン324(第3の反復のKCGSモチーフ中)を、スポ ット5はセリン293(第2の反復のKCGSモチーフ中)を含むペプチドとして同定 された。対応するトリプシン消化ペプチド(291CGSK)は、おそらく分子量が小さ いことと、親水性であるために、逆相HPLCクロマトグラフィーによって直接に単 離することができなかった。したがってこれは、すべての四つのKXGSモチーフ中 のセリン(セリン262,293,324,356)がアラニンに変換されたK18 の点変異型 を用いた、部位特異的突然変異誘発によって同定された。NPK110によるリン酸化 後、スポット3(セリン305)のみを認めることができる一方、スポット1,2, 4および5は失われた。これによって、スポット5がセリン293 であると同定さ れた(データ示さず)。 実施例2 タウ- 微小管結合および動的不安定性 さきにセリン262 のリン酸化はタウと微小管の相互作用を著しく低下させるこ とを示した。すなわち解離定数が増加するだけではなく、化学量論的には低下す る。これらの観察を裏付けるものとして、NPK110によるタウのリン酸化後に同様 な結果が得られた。実際には、図6Aは結合の低下はより著しいものですらある ことを示している。すなわちNPK110は用いうる濃度範囲内で微小管の結合を完全 に失わせる。結合があまりに弱いものとなるために、もはや解離定数および化学 量論の値を求めることができない。言葉をかえれば、NPK110はタウの微小管への 結合の消失を有効に惹起する。結合の研究は以下のように行った。 結合の研究は、30μl の試料のタキソールで安定化した微小管(30μM)および タウの共沈澱を超遠心分離(Beckman TL100)を用いて測定することによって実施 した。ペレットおよび上清の一部をSDS-PAGEおよびクーマシーブルー染色によっ てアッセイした。乾燥ゲルのスキャンデンシトメトリーを用いて、タンパク質を 定量した。(詳細についてはGustkeら,1992参照)。 この結果が正しいものであることを確認するために、点変異(セリン262 をア ラニンに)をタウに導入し、この部位がもはやリン酸化されないようにした。こ の場合、変異型のNPK110とのインキュベーションによって、親和性および化学量 論にはある程度の低下(約25%、図6A)はあったものの、微小管結合能力は大 体において変わらないままだった。これはこの分野におけるこれまでの知見を二 点にわたって確認するものである。すなわち(i)セリン262 のリン酸化は微小 管へのタウの親和性を制御する主たるスイッチである。(ii)キナーゼによって リン酸化される他の部位は、結合に対し、小さいながらも認めうる効果をもつ( すなわち、主として反復2、3、および4のKXGSモチーフのなかのセリン)。 次の疑問は、微小管はタウをNPK110によるリン酸化から守るか?もしこれが本 当であれば、タウは一たび微小管と結合すれば、微小管への高い親和性を保持す るであろう。この点に答えるために、タキソールで安定化した微小管をまずタウ で飽和し、次いでNPK110とともにインキュベーションした。図6Bに示すように 、タウはリン酸化に伴って徐々に微小管から遊離する。このように微小管はキナ ーゼによるタウのリン酸化を遅らせはするが、リン酸化を妨げることはない。 タウの一つの重要な機能は、微小管を安定化し、その動的な不安定性を抑止す ることである(Drechselら,1992)。したがって、タウが微小管との結合を失っ た場合には、安定した微小管が動的な状態となることが期待されるであろう。こ の効果は鞭毛の軸糸を凝集核とした個々の微小管のビデオ暗視野顕微鏡法によっ て明らかにすることができる(図7)。実験は以下のように行った。 軸糸上に凝集した微小管のビデオ検鏡は基本的に既述の方法に従って行った( Trinczekら,1993)。要点を述べれば、5μM のPC−チューブリン、2.5 μM の タウ(非リン酸化またはリン酸化)および少量のウニ精子の軸糸(10-100fM)を 、3mM MgCl2、2mM EGTA、1mM GTPおよび1mMのDTT を含む50mM Na-Pipes、pH 6.9 中で混合した。1.0 μl のサンプルをスライド上にとり、18×18mmのカバー ガラスで覆い、密封し、温度制御した気流中で5秒以内に37℃に加温した。 気流によって37℃という一定温度が保たれた。軸糸上に凝集した微小管は加温後 2.5、5、10、15、20、25および30分の時点で記録した。それぞれの条件および 時点で、一サンプルの3から5の軸糸および10−20の実験につき解析し、500 − 600 の微小管陽性の末端の長さを測定した。平面内にはっきりと存在する微小管 のみを観察の対照とした。溶液の深さは3−4μm であり焦点深度は1〜2μm であった。 図8Aの実験において、チューブリンの濃度(5μM)は、微小管が自ら集合で きず、(非リン酸化の)タウの添加によって成長するように選択した。NPK 110 によってリン酸化されたタウは成長を助けない一方、変異型セリン262-アラニン は成長を助けた。言いかえれば、セリン262 がリン酸化されたタウは、変異型が 相互作用を行うのとは対照的に微小管と相互作用を行わないので、“非タウ”と して振る舞う。さらに劇的なのはキナーゼの影響のもとに、微小管が非動的な挙 動から動的な挙動へと変化を遂げることである。図8Bの実験において、微小管 はタウの存在のもとで軸糸から外へと成長(grow off exonemes)させ、約50μm に増大した平均の長さを20分間にわたって記録した。平行して行った実験ではAT P とともにNPK110を添加した(また、対照としてATP 抜きの実験を行った)。対 照実験(ATP 抜き)では、微小管は連続的に成長することができ、動的な不安定 性はほとんど示さなかった(図8B、白丸)。ATP 添加のもとでは、平均の長さ は20μm までの増加にとどまり、タウの漸次的リン酸化およびこれに伴う微小管 の動的な性質のためにやがてふたたび減少した(黒丸)。変異型セリン262-アラ ニンを用いると、微小管はキナーゼ及びATP が存在する場合でも正常に成長した (三角)。これらの結果を図8C−Dに長さのヒストグラムとしてまとめた。集 合の開始後、初期には微小管は短く、その長さはむしろ揃っている(5分経過時 における白丸のピーク)が、そのまま成長を続けた場合には、微小管は長く、ま た長さの分布は広くなる(図8Cおよび8Eの黒丸)。しかしながら、キナーゼ にセリン262 をリン酸化させると(すなわち、キナーゼ、ATP、およびセリン262 をもつ野生型タウが存在すると)、微小管は短いままである(図8Dの白丸) 。 実施例3 タウの反復ドメインをリン酸化する他のキナーゼ タウは、機能、標的、その他いくつかの規準によって分類される多くのキナー ゼによってリン酸化されうる。アルツハイマー病に対して診断上の対象となるあ る種のプロリン特異的キナーゼ(これらによって抗体反応が誘発されるため)は 反復をはさむ領域をリン酸化するが、タウ- 微小管結合にはほとんど影響しない ようである。これとは反対に、反復領域をリン酸化するキナーゼは、タウの反復 がこの機能に関与していると考えられているので、微小管結合に影響をもつこと が期待されるが、事実、これがNPK110についてこれまで発表されている結果によ って支持されているのである。そこで、ではこのキナーゼは、タウのこの反復ド メインをリン酸化する他のキナーゼとどう違うかという疑問が生ずる(表2)。表2: リン酸化部位およびタウの反復およびその近傍の領域に影響を与えるキナーゼ のまとめ(非プロリン特異的キナーゼおよび部位のみを挙げた)。主要な部位は xで、主要でない部位は(x)で表わした。結果は異なる方法によって得られた 点を留意すべきである:(1)タウのリン酸化とこれに続くタンパク質消化、ペプ チドの分離、およびリン酸化ペプチドの配列決定(Steinerら,1990,Steiner,1 993,Gustke ら,1992,Scott ら,1993)。(2)配列決定と組み合わせたリン酸化 ペプチドの質量スペクトル分析(Hasegawaら,1992,Watanabeら,1993)。(3) 合成ペプチドのリン酸化(Correas ら,1992)。(4)配列決定と組み合わせたリ ン酸化ペプチドの二次元マッピング(本報告)。これらのデータは反復ドメイン K18 から得られるものなので、反復以外のリン酸可能化部位についての情報を含 まない。 たとえばPKA は主として反復の外にあるセリン214、セリン409 およびセリン4 16 をリン酸化するが、その他主要ではない部位としては反復内のセリン324 お よびセリン356 が含まれる(Scott ら,1993;Steiner,1993)。セリン262 はリ ン酸化部位の一つではないので我々の観察からも言えるように、微小管結合に大 きな効果をもつとは期待されないであろう。PKC 部位には反復3中のKCGSモチー フが含まれる(Correas ら,1992,Steiner,1993)が、これも我々の知る限り、 微小管結合には大きな影響をもたない。これまでに発表されている部分精製した キナーゼ活性(Biernat ら,1993)は4つのKXGSモチーフのすべてをリン酸化し た。そして最後に脳抽出物由来のキナーゼ活性はセリン262 およびセリン356 と ともにセリン/トレオニン−プロリンモチーフをもリン酸化するが、報告されて いる微小管結合への強い効果はセリン262 によるものである。これらの研究に用 いられた戦略は、リン酸化されたタウからタンパク質分解断片を生じさせ、次い でこれをHPLCによって分離し、シークエンシングによって同定するというもので ある。これは通常回収が常に直線的とは限らず、異なる部位におけるリン酸化の 相対量の判断を困難とする、多数のペプチドを生じさせる。 このような不確実さがあるために、異なる方法によってリン酸化部位を検討す ることを目ざした。リン酸化ペプチドはHPLCおよびシークエンシングによってだ けではなく、より明確な相対的寄与を提示する薄層セルロースプレート上での二 次元マッピングによっても解析した。全長の4反復タウおよび反復ドメイン(K18 )を脳抽出物NPK110、PKC およびPKA によってリン酸化した。これはタウの反復 ドメインのリン酸化部位の比較を可能にし、各キナーゼによるh タウ40の中のこ のリン酸化の程度を明らかにした。この結果は図9に示されるが、ここではK18 由来のリン酸化ペプチドは図5に従って標識される。他のキナーゼによって生じ るリン酸化ペプチドのスポットは、各試料をNPK110によってリン酸化されたK18 試料とともに分析することによって同定された(データ示さず)。 図9Aに示されたパターンは脳抽出物によって全長のタウおよびK18 をリン酸 化することによって得られた。全長のタウについてはスポット1(セリン262)の みが明瞭に見られ、スポット2(セリン356)はやっと認められる程度である。こ れはK18 のリン酸化パターンにおいてむしろ一層目につく。 NPK110によるK18 のリン酸化を調べると、脳抽出液を用いた場合と類似したペ プチドパターンが得られる(図9Aと9Bを比較されたい)。すなわち最も顕著 なスポットはセリン262 およびセリン356 を含むスポット1および2である一方 、 セリン305(スポット3)、セリン324(スポット4)、およびセリン293(スポ ット5)は顕著ではない。これはNPK110がセリン262 の主要なキナーゼとして働 くことを確認するものである。これとは対照的に、従来のキナーゼの活性(Bier nat ら,1993)の再検討は、これまでのところばらつきの多い結果を与えている 。これがNPK110と同じセリンをリン酸化するとは言え、加重(weighting)に違い があり、また脳抽出物のキナーゼの活性は少なくとも10倍低い。これはさきに述 べたように、タウをこのキナーゼと長時間インキュベーションを行ってもタウの 微小管への結合を部分的にしか抑制しないのかを説明する。 図9Cに見られるように、PKC はK18 のセリン305(スポット3)、セリン324 (スポット4)およびセリン293(スポット5)のみをかなりの程度にリン酸化 する。不鮮明なスポット(スミア)および最左端のスポット(矢印)は、これら がタウ構築物を加えなかった対照実験でも見られる(データ示さず)ことから、 タウに由来するリン酸化ペプチドではない。残る2つのスポットは同定できなか った:右上のスポット(星印)の位置はセリン262(スポット1)ともセリン356 (スポット2)とも一致しない。このパターンを全長タウから得られたパターン と比較すると、PKC の主なリン酸化部位は反復ドメインの外側にあることがわか る。セリン305(スポット3)のみがこのパターンでかすかに認めうる(右上の スポットは対照実験(示さず)で確認されたように、K18 由来の右上のスポット (星印)とは対応しないことに注意)。 全長タウおよび構築物K18 をリン酸化するために精製PKA を用いると(図9D )、主としてセリン356(スポット2)、セリン305(スポット3)、セリン324 (スポット4)およびセリン293(スポット5)が見出される。セリン262(スポ ット1)はごくわずかしかリン酸化されない部位である。全長タウのリン酸化( 図9D、左パネル)も同様なスポットを与え、さらにタウの反復領域の外側の部 位のスポットも生じさせる。これらの結果はこれまでに得られているデータと概 略に於いて一致する(Scott ら,1993,Steiner,1993)。これらの部位のいくつ かはさきに発表された(Biernat ら,1993)“35/41 kDal”キナーゼを用いても 認めることができた。その後の実験によって41kD成分はPKA の触媒サブユニット であることがわかった(H.Hilz,Hamburg より得たPKA に対する抗体の使 用による。データ示さず)。これはデータ中の重複を一部説明するものである。 PKC は主としてセリン305、セリン293 およびセリン324(後者はCorreas ら,19 92と一致する)をリン酸化するが、セリン262はリン酸化しない(図9C)。 実施例4 キナーゼNPK110によりリン酸化されるMAP2およびMAP4の部位 MAP2およびMAP4は、微小管と結合する3または4の内部反復の領域で高い相同 性を示すことからタウと、同じMAP ファミリーに属する二つの微小管結合タンパ ク質である(詳細についてはChapin & Bulinski,1992 参照)。MAP2は脳、それ も主としてニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントに選択的に存在する。 タウ同様、MAP2は異なるスプライシングをうけるために、異なる形態として発現 することがある(Kindlerら,1990);すなわち第二の反復が欠けている場合があ る(これが“古典的”MAP2である);さらに残基152-1514の領域(すなわち1830 残基のうちの1363残基)が欠けていることがある(467 残基のタンパク質となり 、この形態は通常MAP2c と呼ばれる)。ここで述べたリン酸化実験は大腸菌で発 現させた組換えMAP2c を用いて行ったものである(表3)。 MAP4は広く(あらゆる組織に)存在するMAP であり、おそらく有糸分裂に関与 している。これもまたいくつかのスプライシングのイソ型として存在する(West ら,1991)。リン酸化実験はC−末端の496 残基(反復ドメインを含む)を含み 大腸菌で発現させた組換えMAP4構築物を用いて行った(表4)。 リン酸化の方法は実施例2で述べたものと同一である。MAP2およびMAP4を放射 性ATP を用いてNPK110によってリン酸化し、リン酸化されたタンパク質をトリプ シンによって消化し二次元リン酸化ペプチドマッピングによって分析した(MAP2 c につき図11、MAP4構築物につき図12)。次いでペプチドを二つのHPLC勾配カラ ムによって精製した。精製した放射性ペプチドについて配列決定し(リン酸化残 基の同定のため)、二次元のリン酸化ペプチドマッピングによって同定した。 微小管との相互作用に対するリン酸化の効果: NPK110によるMAP2およびMAP4のリン酸化の効果はタウの場合と同じであった。 すなわち、微小管との親和性は数倍低下し、微小管の動的な不安定性は増大した 。これは例えば問題とするMAP、キナーゼNPK110、およびATP(リン酸化に必要) の存在下における微小管の平均の長さの減少によって示すことができる。図13は MAP4、MAP2およびMAP2c についての例を示す。微小管の集合は0分で始まる。白 丸はATP の非存在下(リン酸化がない)における平均の長さの増大を示す。黒丸 はATP の存在(したがってリン酸化されたMAP)のもとでは、平均の長さは対照の 約半分に過ぎないことを示す。 新規なNPK-110 の生物学的意義は以下のごとくまとめられる。 NPK-110 はタウ、MAP2、MAP2c およびMAP4の反復ドメインに対する効率のよい キナーゼである。これはタウ中の4つのKXGSモチーフのすべてをリン酸化するが 、第1と第4(セリン262 およびセリン356 )のリン酸化が最も著しい。この点 でこのキナーゼは脳抽出物由来のキナーゼ活性についての従来の知見(Gustkeら ,1992,および図9参照)を再現するものである。このキナーゼの最も劇的な効 果は、これがタウの微小管への結合を実質的に除去することであり(図6B)、 これが微小管からのタウの放出をもたらし、またこれがビデオ顕微鏡によって観 察されるように、安定な微小管を動的に不安定なものへと変えることである。こ れらの効果は、セリン262-アラニン点変異によって示されるように、主としてセ リン262 のリン酸化に依存している。これらの性質から、NPK110はニューロンの 微小管の集合状態を制御する酵素の有力な候補と考えられる。これらはまた、微 小管に結合しかつこれを安定化するタウの能力の欠損が微小管の崩壊および軸索 輸送の停止につながると考える、“アルツハイマー病のタウ仮説”とも符合する 。これは微小管からのタウの脱離によっても、あるいは新たに合成されたタウの 微小管への結合の阻害によっても生じうるが、いずれの場合にもリン酸化が原因 となっている。この模式に従えば、NPK110の活性を低下させるかまたはその可能 な 活性化カスケードを断つような介入はアルツハイマー病の治療にとって適切であ ろう。 KXGSモチーフはタウの反復中だけではなく、ニューロンMAP2および普遍的に存 在するMAP4(詳細はChapin & Bulinski,1992 参照)などの他のMAP にも保存さ れている点がさらに注目される。したがって、NPK-110 は異なるMAP およびおそ らく他のタンパク質にも影響を与える、より一般的な働きをもつ可能性がある。 予想しうる一つの役割は、ガンの発生へのNPK-110 の関与であろう。 実施例5 本発明のNPK のさらなる特性決定cDNAクローンについての説明 脳のp110MARKペプチドの配列から得られた縮重オリゴヌクレオチドを用いたラ ット脳のcDNAライブラリーのスクリーニングによって9個のクローンが得ら れ、この配列を決定した。これらは相互に70%の相同性をもつ、小さくとも二つ の異なる遺伝子に由来する、小さくとも二つの異なるキナーゼをコードする。ペ プチドの配列は、5'末端(5'または5prime であるべき。5'-primeのprime は余 分なので削除)が欠けている、MARK-1(NPK-110 に対応)と名付けた大きい方の クローンと完全に一致する(コードされたタンパク質のモル分子量は約90kDal) 。小さい方のcDNA、MARK-2は81kDalのタンパク質をコードする。上記cDN Aライブラリーのスクリーニングのためのオリゴヌクレオチドの設計のために適 当なペプチドは表5に示した。同定されたクローンのアミノ酸配列は表6に示し た。相同性 相同的配列のためのデータベースの検索により関連はするが同一ではない二つ の配列が得られた。 MMKEM(X70764)は、機能が未知の推定のプロテインキナーゼをコードするマウ スcDNAであり(Inglis ら、1993)、MARK-1と73%、MARK-2と96%の相同性 を示す。 HUMP78A(MB0359)は、未発表のヒトcDNA配列であり、MAPK-1と73%、MARK- 2とは69%の相同性を示す。すべてのキナーゼは酵母Saccharomyces cerevisiae 由来のKIN1およびKIN2タンパク質との低い相同性(約25%)を示す(Levin ら, 1987,1990)。組織分布 Northernブロット(図14)からわかるように、MARK-1 および MARK-2 mRN Aは胎児および成人組織に普遍的に発現している。発現は筋肉、脳および胎児の (成人ではなく)腎臓でもっとも高い。活性化 脳から調製したp110/MARK は大腸菌で発現させたMARKよりも少なくとも 100倍 活性が高い。活性はSer および/またはThr 残基におけるMARK自体のリン酸化に 依存する。それはフォスファターゼ2Aによる脱リン酸化後、すべての活性が失 われるからである。 cDNAの配列予定から得られる、予想される分子量は90kDであるが、p110/M ARK のリン酸化により SDSゲル上の見かけ分子量は110kD であることが示された 。見かけの分子量におけるこの移動はリンタンパク質についてしばしば見うけら れる。 標的 p110MARKは、タウタンパク質ばかりでなく、関連したMAP、たとえば、MAP2 あるいはMAP2c(ニューロンのMAPは、大部分細胞体樹状コンパートメントに封入 されている。)、ならびにMAP4(遍在するMAP)もリン酸化し、このことから、 酵素の機能が広範囲に及んでいることがわかる。主要なリン酸化部位は、これら のMAPのいずれも類似しており、反復ドメインのKXGSモチーフ中のセリンである 。リン酸化の効果にも共通点があり、すなわち、MAPの微小管結合能力が強度に 低減し、その結果、微小管の安定性が損なわれる(例については、図15、16 を参照のこと)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07K 1/14 C07K 16/40 14/47 C12N 1/21 16/40 9/12 C12N 1/21 C12P 21/08 9/12 C12Q 1/42 C12P 21/08 1/48 Z C12Q 1/42 A61K 37/48 1/48 37/02 //(C12N 1/21 C12R 1:19) (C12N 9/12 C12R 1:19) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U G),AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,B Y,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES ,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG, KP,KR,KZ,LK,LR,LT,LU,LV,M D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL ,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK, TJ,TM,TT,UA,UG,US,UZ,VN (72)発明者 マンデルコー,エヴァ−マリア ドイツ連邦共和国 ディー−22607 ハン ブルグ バロン−フォート−シュトラーセ 212エー (72)発明者 ビエールナット,ジャセック ドイツ連邦共和国 ディー−20459 ハン ブルグ ツォイハウスシュトラーセ 12 (72)発明者 ドリュース,ゲラルド ドイツ連邦共和国 ディー−20257 ハン ブルグ レリンガーシュトラーセ 53

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.タウ、MAP4、MAP2およびMAP2c中のKXGS型配列モチーフをリン酸化し得るニ ューロンプロテインキナーゼ(NPK)またはその機能性断片をコードするDN A配列であって、 (a) 表6でMARK-1として記載したアミノ酸配列をコードする、 (b) 表6でMARK-2として記載したアミノ酸配列をコードする、また は (c) (a)もしくは(b)のDNAとハイブリダイズする、 ことを特徴とする前記DNA配列。 2.NPKが、 (a) SDS-PAGEによって測定した見かけの分子量が110kDである、 (b) ヒトタウタンパク質のセリン残基262、293、305、3 24および356をリン酸化する、並びに、 (c) アミノ酸配列: を有する、 ことによってさらに特徴づけられる、請求項1に記載のDNA配列。 3.NPKが、 (d) ホスファターゼPP−2Aによって不活性化される、 (e) タウ関連の微小管結合タンパク質(MAP)であるMAP2、MAP2c、 MAP4の以下のセリンまたはトレオニン残基 MAP2/MAP2c:S37、S1536、S1676、S1707、S1792、S1796、S1799 MAP4:T829、T873、T874、T876、S899、S903、S928、S941、S1073 をリン酸化する、 (f) タウ、MAP4、MAP2およびMAP2cの微小管からの解離を引き起こ す、 ことによってさらに特徴づけられる、請求項1または2に記載のDNA配列。 4.NPKを、 (a)脳抽出物をホモジナイズしてから遠心し、 (b)工程(a)で得られた上清をリン酸セルロースによるクロマトグ ラフィーに供し(その際、NPK活性画分は200−400mM NaClで溶出する )、 (c)工程(b)で得られた活性画分を硫酸アンモニウムで沈殿させ、 沈殿生成物を透析し、 (d)工程(c)で得られた透析物をQ−セファロース(ファルマシア (Pharmacia))で陰イオン交換クロマトグラフィーに供して、NPK活性画分 を溶出させ(その際、上記NPKの活性画分は約0.2M NaClで単一のピークと して溶出する)、活性画分を透析し、 (e)Mono S HR 10/10(ファルマシア)で陽イオン交換クロマトグラ フィーを行い、 (f)Mono Q HR 5/5でクロマトグラフィーを行い(その際、NPK活 性画分は約250mM NaClで溶出する)、 (g)スーパーデックス(Superdex)G-200によるゲル濾過クロマトグ ラフィーを行い(その際、NPK活性画分は見かけの分子量100kDをもつもの として溶出する)、 (h)ATPセルロースによるアフィニティクロマトグラフィーを行い( その際、NPK活性画分はSDS-PAGEにより見かけの分子量約110kDをもつもの として溶出する)、 その際、NPK活性の測定を、放射標識ATPの存在下でヒト成人タ ウのアミノ酸残基255−267を含むペプチドをインキュベートし、該ペプチ ドに取り込まれた放射能を測定することによって行う、 各工程によって脳組織から得ることができる、請求項1から3のいずれか1項 に記載のDNA配列。 5.NPKが哺乳動物の脳から得られたNPKである、請求項1から4のいずれ か1項に記載のDNA配列。 6.前記の哺乳動物の脳がヒトあるいはブタの脳である、請求項5に記載のDN A配列。 7.請求項1から6のいずれか1項に記載のDNA配列によってコードされるポ リペプチドまたはその機能性断片。 8.請求項7に記載のポリペプチドによってリン酸化を受けるセリンあるいはト レオニン残基であって、タウ関連の微小管関連タンパク質(MAP)であるMAP2、M AP2cおよびMAP4の以下のアミノ酸の位置 MAP2/MAP2c: S37、S1536、S1676、S1707、S1792、S1796、S1799 MAP4: T829、T873、T874、T876、S899、S903、S928、S941、S1073 に位置しているセリンまたはトレオニン残基。 9.請求項8に記載のセリンまたはトレオニン残基を含むエピトープ。 10.請求項7に記載のポリペプチドまたはその断片に対して特異的に結合する抗 体。 11.請求項9に記載のエピトープに特異的に結合する抗体。 12.モノクローナル抗体、またはその誘導体もしくは断片である、請求項10ま たは11に記載の抗体。 13.ポリクローナル抗体、またはその誘導体もしくは断片である、請求項10ま たは11に記載の抗体。 14.請求項7に記載のポリペプチドまたはその断片に対して特異的な阻害物質を 、必要に応じて、製剤上許容される担体および/または希釈剤との組み合わせで 含有する医薬組成物。 15.アルツハイマー病治療用の請求項14に記載の医薬組成物。 16.癌治療用の請求項14に記載の医薬組成物。 17.前記阻害物質が請求項10から13のいずれか1項に記載の抗体;請求項7 に記載のポリペプチドまたはその断片を脱リン酸しうるホスファターゼ、好まし くは、ホスファターゼPP-2A;請求項7に記載のポリペプチドの活性化キナーゼ の阻害物質;Ser262残基を含むタウ由来のペプチド;または請求項8に記載のセ リンまたはトレオニン残基の少なくとも1つを含むMAP4あるいはMAP2/MAP2c由来 のペプチドである、請求項11から13のいずれか1項に記載の医薬 組成物。 18. (a)請求項7に記載のポリペプチド、 (b)請求項10から13のいずれか1項に記載の抗体、および/または (c)請求項2(e)に記載のセリン残基を含むペプチド、 を含む診断用組成物。 19.アルツハイマー病をin vitroで診断および/または監視する方法であって、 患者からの脳脊髄液単離物を検定するか、または、神経組織(たとえば、嗅上皮 )の生検を行って、請求項7に記載のポリペプチドまたはその断片がこの組織に 存在するかどうかを調べる工程を含んでなる前記の方法。 20.アルツハイマー病をin vitroで診断および/または監視する方法であって、 患者からの脳脊髄液単離物を検定するか、または、神経組織の生検を行って、請 求項7に記載のポリペプチドまたはその断片の非生理学的な量、または活性がこ の組織に存在するかどうかを調べる工程を含んでなる前記の方法。 21.NPKの検出を、請求項10、12または13のいずれかに記載の抗体によ って行う請求項19または20に記載の方法。 22.癌または癌の発病をin vitroで診断する方法であって、タウ関連の微小管結 合タンパク質(MAP)であるMAP2、MAP2cおよびMAP4の以下の位置 MAP2/MAP2c: S37、S1536、S1676、S1707、S1792、S1796、S1799 MAP4: T829、T873、T874、T876、S899、S903、S928、S941、S1073 のリン酸化されたセリンもしくはトレオニン残基の存否について、または、請 求項7に記載のポリペプチドもしくはその断片、または、該ポリペプチドもしく はその断片に対して特異的なホスファターゼが非生理学的な量存在するかについ て適当な組織または体液を検定する方法。 23.正常なMAP2、MAP2cまたはMAP4を、請求項7に記載のポリペプチドまたはそ の断片で処理することによって、位置: MAP2/MAP2c: S37、S1536、S1676、S1707、S1792、S1796、S1799 MAP4: T829、T873、T874、T876、S899、S903、S928、S941、S1073 がリン酸化されたタンパク質にin vitroで転化する方法であって、このリン酸 化の状態が癌あるいは癌の発病を表示する、前記の方法。 24.癌または癌の発病を表示する特異的抗体を生成するための、請求項8に記載 のMAPのリン酸化されたセリンもしくはトレオニン残基、または、請求項9に記 載の前記残基を含むエピトープの使用。 25.請求項1から6のいずれか1項に記載のDNA配列と相補的なRNA配列。
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