JPH1053856A - アルミニウム材料への溶射方法 - Google Patents

アルミニウム材料への溶射方法

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JPH1053856A
JPH1053856A JP8224523A JP22452396A JPH1053856A JP H1053856 A JPH1053856 A JP H1053856A JP 8224523 A JP8224523 A JP 8224523A JP 22452396 A JP22452396 A JP 22452396A JP H1053856 A JPH1053856 A JP H1053856A
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solder layer
aluminum
thermal spray
spray coating
spraying
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JP8224523A
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Kenji Miyai
研二 宮井
Shinji Yamamoto
真二 山本
Akihiro Kuroda
明浩 黒田
Harunobu Suzuki
晴信 鈴木
Fumikazu Kimata
文和 木俣
Yoshitaka Yotsuya
剛毅 四谷
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Suzuki Motor Corp
Original Assignee
Suzuki Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、従来の処理方法と比べて基材に対
する溶射皮膜の密着強さを向上させ、信頼性が高い溶射
皮膜を得ることが可能なアルミニウム材料への溶射方法
を提供することにある。 【解決手段】 本発明のアルミニウム材料への溶射方法
では、アルミニウム基材2の表面にZnハンダ層3を超
音波ハンダ付法によって形成し、その後、このZnハン
ダ層3の表面に溶射材料を溶射して溶射皮膜4を形成し
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関のピスト
ン、シリンダその他アルミニウム材料により作られてい
る製品に溶射皮膜(特にアルミニウムを主成分とした合
金もしくはアルミニウムを主成分としてセラミックスを
分散させたもの)を形成する場合に適用されるアルミニ
ウム材料への溶射方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、耐摩耗性などが要求されるア
ルミニウム材料の表面に各種の溶射法によって硬質層の
溶射皮膜を形成する表面改質方法が提案されている。こ
の溶射皮膜は、主にアンカー効果でアルミニウム材料と
の密着強さを確保しており、溶射皮膜の密着強さを向上
させるため、アルミニウム材料表面を溶射前に粗面化し
ている。
【0003】このような溶射の前処理としては、ブラス
ト処理法や化学的腐食法により、アルミニウム基材の表
面を粗面化する処理方法が用いられている。その中で
も、ブラスト処理法は、図12に示す如く、ブラストノ
ズル51から所定圧の圧縮空気でブラスト材52をアル
ミニウム基材53の表面に吹き付けることにより、当該
アルミニウム基材53の表面を粗らしている。
【0004】また、図13に示す如く、ブラスト処理法
や化学的腐食法によりアルミニウム基材53の表面を粗
面化した後、溶射ガン54にて溶射材料を溶射して溶射
皮膜55を形成する場合、通常、溶射フレーム56がア
ルミニウム基材53の表面に対して垂直となるように溶
射した時に密着強さが最大となり、角度をつけるに従っ
て密着強さは低下する。しかし、図14に示すようなシ
リンダスリーブ57に溶射皮膜58を形成する場合、円
筒径によっては十分な溶射距離が得られなかったり、溶
射フレーム60で直接基材表面をあぶることになって、
基材への入熱が過度になされるため、皮膜の密着強さは
低下するが、従来の溶射法では、出力を低くしたり、あ
るいは内径溶射ガン59でも角度θをつけて溶射されて
いる。特に、アルミニウム合金を基材とする場合には、
鉄系基材に自溶合金を溶射した後に拡散処理し、密着強
さを向上させるような効果的な後処理が無かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、アルミニウ
ム材料は、その表層に酸化膜が形成されるため、溶射皮
膜との界面において反応等による強固な密着が望めず、
アンカー効果による密着強さのみとなり、溶射皮膜が基
材表面より剥がれやすかった。一方、図12のブラスト
処理法で粗面化したアルミニウム基材53の表面に溶射
皮膜55を形成する場合にあっては、図15および図1
6で示す如く、ブラスト材52がアルミニウム基材53
の表面にささり込んだり、あるいは隙間61が生じたり
するので、溶射皮膜55の密着強さが低下するという不
具合を有していた。また、図14のシリンダスリーブ5
7に溶射皮膜58を形成する場合にあっては、使用する
内径溶射ガン59に角度θをつけたり、出力を低く抑え
て溶射すると、溶融粒子が基材にぶつかる力が弱くなる
ので、溶射皮膜58の密着強さが低下してしまい、それ
により溶射皮膜58の信頼性が劣っていた。
【0006】本発明はこのような実状に鑑みてなされた
ものであって、その目的は、従来の処理方法と比べて基
材に対する溶射皮膜の密着強さを向上させ、信頼性が高
い溶射皮膜を得ることが可能なアルミニウム材料への溶
射方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記従来技術の有する課
題を解決するために、請求項1の発明の要旨は、アルミ
ニウム基材の表面にハンダ層を超音波ハンダ付法によっ
て形成し、その後、このハンダ層の表面に溶射材料を溶
射して溶射皮膜を形成するアルミニウム材料への溶射方
法にある。
【0008】また、請求項2の発明の要旨は、アルミニ
ウム基材の表面にハンダ層を超音波ハンダ付法によって
形成し、次いで、このハンダ層を形成したアルミニウム
基材を予熱し、その後、このハンダ層の表面に溶射材料
を溶射して溶射皮膜を形成するアルミニウム材料への溶
射方法にある。
【0009】さらに、請求項3の発明の要旨は、アルミ
ニウム基材の表面にハンダ層を超音波ハンダ付法によっ
て形成し、次いで、このハンダ層の表面に溶射材料を溶
射して溶射皮膜を形成し、その後、ハンダ層および溶射
皮膜を形成したアルミニウム基材に熱処理を施すアルミ
ニウム材料への溶射方法にある。
【0010】また、請求項4の発明の要旨は、上記ハン
ダ層を形成するハンダが、AH−Z95A(Znー5w
t%Al)である請求項1〜請求項3のいずれか一に記
載のアルミニウム材料への溶射方法にある。
【0011】さらに、請求項5の発明の要旨は、上記ハ
ンダ層が100μm以下の厚さに形成されている請求項
1〜請求項3のいずれか一に記載のアルミニウム材料へ
の溶射方法にある。
【0012】また、請求項6の発明の要旨は、上記溶射
皮膜が、AlーSi系、AlーAg系、AlーCu系お
よびその複合系材料を用いて形成されている請求項1〜
請求項3のいずれか一に記載のアルミニウム材料への溶
射方法にある。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態
に基づいて詳細に説明する。
【0014】図1は、本発明に係る実施の形態のアルミ
ニウム材料への溶射方法を示している。同図のアルミニ
ウム材料から作られる製品1は、アルミニウム基材2の
表面にZnハンダ層3が超音波ハンダ付法によって形成
されているとともに、該Znハンダ層3の表面に溶射皮
膜4がプラズマ溶射法(この溶射法に限定されない)な
どによって形成された三層構造となっている。
【0015】超音波ハンダ付法には、図2に示すような
超音波ハンダ付装置5を使用した。この超音波ハンダ付
装置5は、超音波振動子6にて発生させた超音波を超音
波ホーン7および振動板8を介してタンク9内のハンダ
10浴中に伝達して印加するように構成されている。
【0016】上記溶射皮膜4は、次の各工程を経てアル
ミニウム基材2に形成される。 (1) まず、製品1を構成するアルミニウム基材2を
用意する。そして、このアルミニウム基材2を超音波ハ
ンダ付装置5のタンク9内のハンダ10浴中に浸漬す
る。この状態で、超音波振動子6等によってハンダ10
浴中に超音波を印加させると、該超音波にて引き起こさ
れるキャビテーションが、ハンダ10浴中に浸漬された
アルミニウム基材2の表面の酸化皮膜を破壊して、活性
な金属表面とハンダ10とが速やかに合金化し、当該ア
ルミニウム基材2の表面にZnハンダ層3を形成させて
いる。使用したZnハンダは、JISのアルミニウム用
ハンダAH−Z95A(Znー5wt%Al)である
が、その他にアルミニウム用ハンダとしてZnーCd
系、ZnーSn系、CdーSn系等を用いても構わな
い。上記超音波ハンダ付けは、温度410゜Cに保持し
たハンダ10浴中に温度250゜Cに予熱した試料(後
述する)を浸漬して30秒間にわたりハンダ10浴中で
さらに予熱した後、発振周波数が18.6KHzで20
0Wの超音波を5秒間以上印加するという条件で行っ
た。この条件で超音波ハンダ付けを行うと、アルミニウ
ム基材2の表面に50μmの厚さのZnハンダ層3が形
成された。
【0017】(2) しかる後、上記Znハンダ層3の
表面に金属又は金属酸化物の溶射材料を溶射法により溶
射して溶射皮膜4を形成した。溶射法としてはプラズマ
溶射法を用い、下記の表1で示す条件により溶射を行っ
た。プラズマ溶射は、陰極とノズル陽極の間の直流アー
クによって、送給される作動ガスが熱せられて、プラズ
マジェットとなって、ノズルから噴出する。溶射材料の
粉末粒子はプラズマジェットによって加熱ー加速され
て、基材表面に吹き付けられ、皮膜となる。また、溶射
皮膜4の密着強さを調査するため、Al系材料としてA
lーSi溶射皮膜を形成し、Fe系材料としてFeーC
r溶射皮膜を形成した。その他に、Ni系、セラミック
ス、サーメット等の耐摩耗性が高い材料を溶射すること
ができる。なお、本実施の形態の溶射方法では、Znハ
ンダ層3を形成したアルミニウム基材2に対して直ちに
溶射を施したが、予熱をしてから溶射すれば、Znハン
ダ層3が軟化して密着性をさらに向上させることが可能
になる。
【0018】
【表1】
【0019】超音波ハンダ付けによるZnハンダ層3の
効果を調査するため、6種類の試料を作製した。図3、
図5および図7はフッ酸でエッチングしてある。 ・試料1(図3および図4参照): AC4C基材2a
+超音波ハンダ付けによるZnハンダ層3a(超音波印
加時間が5秒間)+AlーSi溶射皮膜4a ・試料2(図5および図6参照): AC4C基材2b
+超音波ハンダ付けによるZnハンダ層3b(超音波印
加時間が10秒間)+AlーSi溶射皮膜4b ・試料3(図7および図8参照): AC4C基材2c
+超音波ハンダ付けによるZnハンダ層3c(超音波印
加時間が15秒間)+AlーSi溶射皮膜4c ・試料4(図15および図16参照): AC4C基材
53+ブラスト処理(#46アルミナグリッド、3kg
f/cm2 )+AlーSi溶射皮膜55 ・試料5: AC4C基材+超音波ハンダ付けによるZ
nハンダ層(超音波印加時間が10秒間)+FeーCr
溶射皮膜 ・試料6: AC4C基材+ブラスト処理(#46アル
ミナグリッド、3kgf/cm2 )+FeーCr溶射皮
【0020】好ましい超音波印加時間は、超音波出力や
ワークの形状および大きさその他の因子によって変化す
る。以下に、本実施の形態の溶射方法での超音波印加時
間による皮膜性状の違いを試料1〜3によって示す。図
3および図4で示す印加時間5秒のZnハンダ層3a
は、AC4C基材2aの表面の酸化膜の破壊が不十分で
あり、密着強さ試験においても、一部基材2aとZnハ
ンダ層3aとの界面で剥離した。図5〜図8で示す印加
時間10秒,15秒のZnハンダ層3b,3cは、AC
4C基材2b,2cの表面の酸化膜を破壊し、AC4C
基材2b,2cに深く入り込んでいる。密着強さ試験で
は、AC4C基材2b,2cとZnハンダ層3b,3c
との界面で剥離するものはなく、Znハンダ層3b,3
cとAlーSi溶射皮膜4b,4cとの界面で剥離し
た。試料1では、ZnハンダによるAC4C基材2aの
表面の酸化膜の破壊が不十分であっても、後述の表2か
ら判るように、試料4よりも溶射皮膜4aの密着強さが
高いことから、溶射皮膜4の密着強さを向上させるに
は、超音波Znハンダ付け時の超音波印加時間tがt≧
5秒であれば良いことになる。しかし、アルミニウム基
材2の表面における酸化層の破壊状況および密着強さの
結果から考えると、好ましくはt≧10秒と言える。な
お、超音波印加時間の上限は特にないが、長い時間印加
しても別段効果が良くなるわけではないので、経済性を
考慮する必要がある。
【0021】Znハンダ層3の厚さは、ハンダ10浴中
から試料を引き抜く速度によって制御することが可能で
ある。このZnハンダ層3の厚さは、アルミニウム基材
2とZnハンダ層3の密着強さおよびZnハンダ層3と
溶射皮膜4の密着強さには影響を及ぼさないが、Znハ
ンダ層3があまり厚いと経済性が悪くなり、全体の強度
も低下するため、100μm以下が好ましい。Znハン
ダ層3は、最低でも数μmの厚さに形成される。この数
μmから10数μm程度あれば、溶射皮膜4等の密着強
さに十分効果がある。すなわち、Znハンダ層3の厚さ
を100μm以下にすると、必要以上のハンダの持ち出
しや熱処理時間を抑えることができ、コストダウンが図
れる。
【0022】上記試料1〜6の密着強さを調査した結果
を下記の表2に示す。表2より、超音波ハンダ付けによ
るZnハンダ層を設けたAlーSi溶射皮膜およびFe
ーCr溶射皮膜の試料1〜3、5は、ブラスト処理を行
ったAlーSi溶射皮膜およびFeーCr溶射皮膜の試
料4、6に対して、密着強さが大きく改善されているこ
とが判る。その中でも、FeーCr溶射皮膜のように、
AC4C基材と熱膨張係数の違う材料に対しては、その
効果が大きかった。したがって、上記溶射皮膜4が表面
に形成されたアルミニウム基材2に対し、所定の表面研
磨加工などを施せば、耐摩耗性を向上させた製品1が得
られることになる。
【0023】
【表2】
【0024】図9は、他の本発明に係る実施の形態のア
ルミニウム材料への溶射方法を示している。本実施の形
態のアルミニウム材料への溶射方法においては、Znハ
ンダ層3を形成したアルミニウム基材2を150゜C以
上に予熱し、その後に、溶射ガン11から溶射フレーム
12をアルミニウム基材2およびZnハンダ層3の表面
に対して所定の角度θで溶射して溶射皮膜4を形成する
点と、溶射皮膜4がAlーSi系の他にAlーAg系、
AlーCu系およびその複合系材料を用いた点を除き、
上記発明の実施の形態とほぼ同様であり、説明を省略す
る。
【0025】溶射法としては、上記発明の実施の形態と
同様、プラズマ溶射を用い、下記の表3で示す条件によ
り溶射を行った。
【0026】
【表3】
【0027】また、溶射皮膜4の密着強さを調査するた
め、AlーSi溶射皮膜を形成した以下の試料を作製し
た。ここで、基材2の表面と溶射フレーム12との角度
をθとする。 ・試料1: AC4C基材2+超音波ハンダ付けによる
Znハンダ層3+予熱+AlーSi溶射皮膜4(θ=4
5deg) ・試料2: AC4C基材2+超音波ハンダ付けによる
Znハンダ層3+予熱+AlーSi溶射皮膜4(θ=4
5deg)+熱処理 ・比較試料3: AC4C基材+ブラスト処理(#46
アルミナグリッド、3kgf/cm2 )+AlーSi溶
射皮膜(θ=45deg) ・比較試料4: AC4C基材2+超音波ハンダ付けに
よるZnハンダ層3+AlーSi溶射皮膜4(θ=90
deg) ・比較試料5: AC4C基材2+超音波ハンダ付けに
よるZnハンダ層3+予熱+AlーSi溶射皮膜4(θ
=90deg) ・比較試料6: AC4C基材+ブラスト処理(#46
アルミナグリッド、3kgf/cm2 )+AlーSi溶
射皮膜(θ=90deg)
【0028】上記試料1では、溶射角度θが45deg
となっているため、予熱なしでは溶融粒子がZnハンダ
層3に打ち込まれず、溶射皮膜が形成されなかった。と
ころが、AC4C基材2を150゜C以上に予熱した後
に溶射すると、溶射皮膜4が形成された。これは、Zn
ハンダが熱により軟化し、溶融粒子が打ち込みやすくな
ったからである。比較試料4は、溶射角度θが90de
gとなっているため、AC4C基材2への熱の伝導性も
良く、溶融粒子も打ち込まれやすい。したがって、予熱
なしでも十分に溶射皮膜4を形成できた。
【0029】また、上記試料2では、溶射皮膜4の形成
後、皮膜側へのハンダの拡散を促すために熱処理を行っ
た。この熱処理では、370゜Cで4時間保持した後に
空冷を行っている。本熱処理条件は、あらかじめ予備実
験を行って選定した。この予備実験によると、ハンダの
融点以上で熱処理すると、当該ハンダの溶融により、Z
nハンダ層3に気孔が発生した。気孔の発生は、強度低
下をもたらす要因として好ましくない。したがって、熱
処理は融点以下で行うこととし、本実験ではZnー5w
t%Alハンダの融点381゜C以下の370゜Cで行
った。AC4C基材にT6処理を行う場合、あらかじめ
熱処理によりハンダ層を拡散させて消失させた後に行う
必要がある。これはハンダ層が残っていると、前述した
ように、ハンダ層に気孔が生じるからである。熱処理時
間は、拡散の度合いを支配する因子であるが、要求する
密着性能およびハンダ層の厚さによって決定する。AC
4C基材にT6処理を行わない場合、ハンダ層をすべて
拡散させる必要はなく、要求性能に応じて皮膜内にハン
ダ層が存在してもよい。
【0030】なお、Znハンダ層3の厚さは、上記発明
の実施の形態で説明したと同様の理由から100μm以
下が好ましい。また、熱処理によりZnハンダ層3をす
べて拡散させたい場合、ハンダ層が厚いと長い時間熱処
理する必要があり、経済性および生産性が低くなり、好
ましくない。さらに、本実施の形態では、アルミニウム
合金基材に超音波Znハンダ付けをし、AlーSi溶射
皮膜を形成する場合について説明したが、ハンダの種類
はZn以外にもZn−Cd系、Zn−Sn系、Cd−S
n系等のアルミニウム用ハンダを用いてもよく、基材や
皮膜によって他のハンダ層を選択しても良い。それに伴
って、予熱・熱処理条件なども種々に変えることができ
る。
【0031】上記試料1〜6の密着強さを調査した結果
を下記の表4に示す。溶射角度による密着強さの低下に
ついて、表4より比較試料6と比較試料3を比べると、
90degでは3.6kgf/mm2 であったのが、4
5degでは1.5kgf/mm2 と半分以下になって
いることが判る。ハンダ層の効果について、試料1は、
ブラスト処理した比較試料3および比較試料6と比べて
密着強さが高く、90degで溶射した比較試料6の密
着強さの約1.5倍の密着強さを示した。予熱の効果に
ついて、比較試料4と比較試料5を比べると、予熱を加
えた比較試料5より密着強さは劣るが、予熱なしの比較
試料4と同等であり、予熱することによって溶射角度の
影響を低く抑えることができることが判った。熱処理の
効果について、試料1と試料2を比較すると、さらに熱
処理により密着強さが向上していることが判る。このと
き、試料1では、剥離がZnハンダ層3と溶射皮膜4の
界面であったが、熱処理すると溶射皮膜内での剥離とな
ったことから、Znハンダ層3の溶射皮膜4への拡散等
によりZnハンダ層3と溶射皮膜4の界面での密着強さ
が向上したことが判る。
【0032】
【表4】
【0033】本発明は、ハンダが付く基材を用いれば、
溶射皮膜の材質は問わずに密着強さ向上の効果を有する
が、本実施の形態で示したようなアルミニウム合金系基
材2に対して超音波ハンダ付けによりZnハンダ層3を
形成し、その後にアルミニウムを主成分とする溶射皮膜
4を形成すれば、その効果が大きくなる。また、本実施
の形態では、アルミニウム基材上にAl系皮膜を形成し
たが、耐摩耗の用途で用いられる部材・部位では、多く
の場合にビッカース硬さで200〜300HV位の中程
度の硬さ、すなわちJIS AC4CやAC8A等の実
用アルミニウムの硬さを少し上回る程度で十分であり、
必ずしもセラミックスや金属間化合物、高融点金属等の
高硬度および高耐熱性を必要としない場合も多い。その
ような場合、JIS AC4CやAC8A、ADC材等
の実用アルミニウム表面にAl−Si系やAl−Ag
系、Al−Cu系等の皮膜を形成することによって、実
用に耐える部材となり得る。
【0034】図10および図11は、さらに他の本発明
に係る実施の形態のアルミニウム材料への溶射方法を示
している。本実施の形態のアルミニウム材料への溶射方
法では、Znハンダ層3の表面にアルミニウムを主成分
とする合金もしくはセラミックスを分散させた溶射皮膜
4を形成する点と、該溶射皮膜4を形成した後に熱処理
を施すことによりハンダを溶射皮膜4側にも拡散させて
いる点を除き、上記発明の実施の形態とほぼ同様であ
り、説明を省略する。なお、図10において、13aは
皮膜側へのハンダ拡散層、13bは基材側へのハンダ拡
散層を示している。また、図11において、Kはハンダ
層が消失した拡散領域であり、K1 は皮膜側拡散領域、
2 は基材側拡散領域を示している。
【0035】次に、熱処理の効果を調査するため、以下
の試料を作製した。溶射皮膜4は、下記の表5で示した
条件により、Al系材料としてAl−Si溶射皮膜を形
成した。その他の溶射皮膜に関連する事項は、図9で示
す発明の実施の態様と同様である。また、熱処理として
は、既述した理由から370゜Cで4時間保持した後に
空冷を行った。これにより、Znハンダ層3は、図10
中のハンダ拡散層13b,13aに示す如く、基材側と
皮膜側にすべて拡散した。 ・試料1: AC4C基材2+超音波ハンダ付けによる
Znハンダ層3+AlーSi溶射皮膜4+熱処理 ・試料2: AC4C基材2+超音波ハンダ付けによる
Znハンダ層3+AlーSi溶射皮膜4 ・比較試料3: AC4C基材+ブラスト処理(#46
アルミナグリッド、3kgf/cm2 )+AlーSi溶
射皮膜
【0036】
【表5】
【0037】本熱処理条件は、既述の理由から、熱処理
を融点以下で行うこととしたが、熱処理温度を下げる
と、拡散させるための時間が長くなるので、ハンダの融
点以下でなるべく高い温度がよい。AC4C基材にT6
処理を行う場合、図11に示す如く、あらかじめ熱処理
によりハンダ層を拡散させて消失させた後に行う必要が
ある。これはハンダ層が残っていると、前述したよう
に、ハンダ層に気孔が生じるからである。熱処理時間
は、拡散の度合いを支配する因子であるが、要求する密
着性能およびハンダ層の厚さによって決定する。特に限
定されない。AC4C基材にT6処理を行わない場合、
ハンダ層をすべて拡散させる必要はなく、要求性能に応
じて皮膜内にハンダ層が存在してもよい。
【0038】上記試料1〜3の密着強さを調査した結果
を下記の表6に示す。表6より、試料1は、試料2、試
料3に比べて、AlーSi溶射皮膜4の密着強さが向上
していることが判る。これは、熱処理によりZnハンダ
層3のハンダが皮膜側にも拡散したためである。
【0039】
【表6】
【0040】以上、本発明の実施の形態につき述べた
が、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではな
く、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更が可能で
ある。
【0041】
【発明の効果】上述の如く、本発明に係るアルミニウム
材料への溶射方法は、アルミニウム基材の表面にハンダ
層を超音波ハンダ付法によって形成し、その後、このハ
ンダ層の表面に溶射材料を溶射して溶射皮膜を形成して
いるので、ブラスト処理を施した従来の方法よりもアル
ミニウム基材に対して高い皮膜の密着強さが得られ、こ
の密着強さの向上によって溶射皮膜の信頼性を高めるこ
とができる。このため、本発明の溶射方法により表面に
溶射皮膜が形成されているアルミニウム基材は、優れた
耐摩耗性を有しているので、シリンダスリーブなどのエ
ンジン部品に適用することができる。
【0042】また、他の本発明に係るアルミニウム材料
への溶射方法は、アルミニウム基材の表面にハンダ層を
超音波ハンダ付法によって形成し、次いで、このハンダ
層を形成したアルミニウム基材を予熱し、その後、この
ハンダ層の表面に溶射材料を溶射して溶射皮膜を形成し
ているので、より一層溶射皮膜の密着強さの向上を図る
ことができるとともに、径の大きさや深さによりブラス
ト処理が難しく、安定した品質を保ちにくい円筒形状等
のアルミニウム基材の場合でも、超音波ハンダ付工程を
管理にすることで再現性良く処理できる。
【0043】さらに、他の本発明に係るアルミニウム材
料への溶射方法は、アルミニウム基材の表面にハンダ層
を超音波ハンダ付法によって形成し、次いで、このハン
ダ層の表面に溶射材料を溶射して溶射皮膜を形成し、そ
の後、ハンダ層および溶射皮膜を形成したアルミニウム
基材に熱処理を施しているので、ハンダを溶射皮膜に拡
散させてアルミニウム基材に対する溶射皮膜の密着強さ
をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る溶射方法により、ア
ルミニウム基材に形成された溶射皮膜を示す断面図あ
る。
【図2】上記アルミニウム基材の表面にZnハンダ層を
形成する超音波ハンダ付装置を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る溶射方法において、
超音波印加時間が5秒でのアルミニウム基材に形成され
た溶射皮膜を示す断面図である。
【図4】図3における溶射皮膜の状態を説明する100
倍の顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施の形態に係る溶射方法において、
超音波印加時間が10秒でのアルミニウム基材に形成さ
れた溶射皮膜を示す断面図である。
【図6】図5における溶射皮膜の状態を説明する100
倍の顕微鏡写真である。
【図7】本発明の実施の形態に係る溶射方法において、
超音波印加時間が15秒でのアルミニウム基材に形成さ
れた溶射皮膜を示す断面図である。
【図8】図5における溶射皮膜の状態を説明する100
倍の顕微鏡写真である。
【図9】他の本発明の実施の形態に係る溶射方法によ
り、アルミニウム基材に溶射フレームを溶射している状
態を示す断面図である。
【図10】さらに他の本発明の実施の形態に係る溶射方
法により、アルミニウム基材に形成された溶射皮膜を示
す断面図ある。
【図11】図10におけるハンダ層を消失させたアルミ
ニウム基材に形成された溶射皮膜を示す断面図ある。
【図12】従来の溶射方法において、アルミニウム基材
の表面をブラストによって粗面化している状態を示す断
面図である。
【図13】従来の溶射方法によって、粗面化したアルミ
ニウム基材の表面に溶射フレームを溶射している状態を
示す断面図である。
【図14】従来の溶射方法において、内系溶射ガンから
溶射フレームをシリンダスリーブの内周面に溶射してい
る状態を示す断面図である。
【図15】図12において、粗面化したアルミニウム基
材の表面に溶射フレームを溶射して溶射皮膜を形成した
状態を示す断面図である。
【図16】図15における溶射皮膜の状態を説明する1
00倍の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
2 アルミニウム基材 3 Znハンダ層 4 溶射皮膜 5 超音波ハンダ付装置 11 溶射ガン 12 溶射フレーム 13a,13b ハンダ拡散層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 晴信 静岡県浜松市高塚町300番地 スズキ株式 会社内 (72)発明者 木俣 文和 静岡県浜松市高塚町300番地 スズキ株式 会社内 (72)発明者 四谷 剛毅 静岡県浜松市高塚町300番地 スズキ株式 会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム基材の表面にハンダ層を超
    音波ハンダ付法によって形成し、その後、このハンダ層
    の表面に溶射材料を溶射して溶射皮膜を形成することを
    特徴とするアルミニウム材料への溶射方法。
  2. 【請求項2】 アルミニウム基材の表面にハンダ層を超
    音波ハンダ付法によって形成し、次いで、このハンダ層
    を形成したアルミニウム基材を予熱し、その後、このハ
    ンダ層の表面に溶射材料を溶射して溶射皮膜を形成する
    ことを特徴とするアルミニウム材料への溶射方法。
  3. 【請求項3】 アルミニウム基材の表面にハンダ層を超
    音波ハンダ付法によって形成し、次いで、このハンダ層
    の表面に溶射材料を溶射して溶射皮膜を形成し、その
    後、ハンダ層および溶射皮膜を形成したアルミニウム基
    材に熱処理を施すことを特徴とするアルミニウム材料へ
    の溶射方法。
  4. 【請求項4】 上記ハンダ層を形成するハンダが、AH
    −Z95A(Znー5wt%Al)であることを特徴と
    する請求項1〜請求項3のいずれか一に記載のアルミニ
    ウム材料への溶射方法。
  5. 【請求項5】 上記ハンダ層が100μm以下の厚さに
    形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の
    いずれか一に記載のアルミニウム材料への溶射方法。
  6. 【請求項6】 上記溶射皮膜が、AlーSi系、Alー
    Ag系、AlーCu系およびその複合系材料を用いて形
    成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のい
    ずれか一に記載のアルミニウム材料への溶射方法。
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