JPH1068058A - 溶射方法 - Google Patents
溶射方法Info
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- JPH1068058A JPH1068058A JP22404996A JP22404996A JPH1068058A JP H1068058 A JPH1068058 A JP H1068058A JP 22404996 A JP22404996 A JP 22404996A JP 22404996 A JP22404996 A JP 22404996A JP H1068058 A JPH1068058 A JP H1068058A
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- thermal
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Abstract
(57)【要約】
【課題】基材に対する溶射被膜の密着性の向上に有利な
溶射方法を提供する。 【解決手段】基材に溶射したときに体積膨張が可能な物
質を含む溶射材を基材に溶射する。この物質としては、
マルテンサイト変態する鋼系粉末を採用できる。溶射被
膜2の冷却に伴う体積収縮が、体積膨張で吸収され、剥
離の要因となり得る溶射被膜2の残留引張応力が緩和さ
れる。
溶射方法を提供する。 【解決手段】基材に溶射したときに体積膨張が可能な物
質を含む溶射材を基材に溶射する。この物質としては、
マルテンサイト変態する鋼系粉末を採用できる。溶射被
膜2の冷却に伴う体積収縮が、体積膨張で吸収され、剥
離の要因となり得る溶射被膜2の残留引張応力が緩和さ
れる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は密着性を向上させ得
る溶射方法に関する。
る溶射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、溶射材を基材に溶射して溶射
被膜を形成する溶射方法が知られている。これにより耐
摺動性、耐摩耗性等の向上に貢献できる。例えば特公昭
54−42855号公報には、溶湯を急冷して白銑を形
成し、その白銑を100メッシュ以上の大きさに粉砕し
た鋳鉄粉末を溶射材として用い、この溶射材を基材に溶
射処理し、これにより炭化鉄を主体とする溶射被膜を得
る方法が開示されている。
被膜を形成する溶射方法が知られている。これにより耐
摺動性、耐摩耗性等の向上に貢献できる。例えば特公昭
54−42855号公報には、溶湯を急冷して白銑を形
成し、その白銑を100メッシュ以上の大きさに粉砕し
た鋳鉄粉末を溶射材として用い、この溶射材を基材に溶
射処理し、これにより炭化鉄を主体とする溶射被膜を得
る方法が開示されている。
【0003】ところで溶射方法では、基材に対する溶射
被膜の密着性を高めるため、従来より種々の方策が採用
されている。例えば、溶射処理に先立って基材の表出面
にブラスト処理する方策、基材を予熱して溶射被膜の応
力を緩和する方策である。
被膜の密着性を高めるため、従来より種々の方策が採用
されている。例えば、溶射処理に先立って基材の表出面
にブラスト処理する方策、基材を予熱して溶射被膜の応
力を緩和する方策である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら近年、溶
射被膜の密着性の向上が一層要請されている。上記した
方策だけでは、基材に対する溶射被膜の密着性の向上に
は限界がある。本発明は上記した実情に鑑みなされたも
のであり、基材に対する溶射被膜の密着性の向上を図る
のに有利な溶射方法を提供することを課題とする。
射被膜の密着性の向上が一層要請されている。上記した
方策だけでは、基材に対する溶射被膜の密着性の向上に
は限界がある。本発明は上記した実情に鑑みなされたも
のであり、基材に対する溶射被膜の密着性の向上を図る
のに有利な溶射方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は溶射方法につ
いて長年にわたり鋭意開発を進めている。そして、基材
に溶射された溶射材が基材上で冷却される際に体積膨張
する物質を溶射材に含ませ、その溶射材を溶射すれば、
基材に対する密着性が向上することを知見し、試験で確
認し、本発明方法を完成した。
いて長年にわたり鋭意開発を進めている。そして、基材
に溶射された溶射材が基材上で冷却される際に体積膨張
する物質を溶射材に含ませ、その溶射材を溶射すれば、
基材に対する密着性が向上することを知見し、試験で確
認し、本発明方法を完成した。
【0006】密着性が向上する理由は、体積膨張により
溶射被膜が圧縮状態になり易いため、密着力の低下の要
因となる残留引張応力の緩和を図り得るためと推察され
る。なお上記した特公昭54−42855号公報に係る
技術では、白銑組成であるため、溶射粉末が凝固して溶
射被膜となる際にチル化するため凝固収縮率が大きいも
のである。
溶射被膜が圧縮状態になり易いため、密着力の低下の要
因となる残留引張応力の緩和を図り得るためと推察され
る。なお上記した特公昭54−42855号公報に係る
技術では、白銑組成であるため、溶射粉末が凝固して溶
射被膜となる際にチル化するため凝固収縮率が大きいも
のである。
【0007】本発明に係る溶射方法は、溶射材を基材に
溶射して溶射被膜を形成する溶射方法であって、溶射材
は、基材に溶射された溶射材が基材上で冷却される際に
体積膨張する物質を含むことを特徴とするものである。
溶射して溶射被膜を形成する溶射方法であって、溶射材
は、基材に溶射された溶射材が基材上で冷却される際に
体積膨張する物質を含むことを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明方法によれば、溶射材の凝
固→冷却の際に体積膨張する物質を溶射材に含むことに
より、溶射被膜における残留応力を「引張応力」から
「圧縮応力」へシフトする形態であることが好ましい。
本発明方法で用いる体積膨張する物質としては、溶射後
の冷却の際にマルテンサイト変態する鋼系を採用でき
る。従って溶射粉末の粒子は、臨界冷却速度以上の速度
で冷却することが好ましい。
固→冷却の際に体積膨張する物質を溶射材に含むことに
より、溶射被膜における残留応力を「引張応力」から
「圧縮応力」へシフトする形態であることが好ましい。
本発明方法で用いる体積膨張する物質としては、溶射後
の冷却の際にマルテンサイト変態する鋼系を採用でき
る。従って溶射粉末の粒子は、臨界冷却速度以上の速度
で冷却することが好ましい。
【0009】マルテンサイト変態における体積膨張量は
一般的に炭素量に依存すると考えられている。鋼系の炭
素量としては溶射粉末の種類によっても相違するもの
の、重量比で、上限値が1.5%、1.8%程度にで
き、下限値が0.2%程度、0.3%程度にできる。本
発明方法では、溶射材は、鋼系粉末と非鋼系粉末との混
合粉末で形成することができる。鋼系粉末の量は、鋼系
粉末の炭素含有量、要請される体積膨張量等の要因に応
じて適宜選択するものの、溶射材を100%としたと
き、体積比で鋼系粉末は20〜60%、特に35〜50
%にできる。
一般的に炭素量に依存すると考えられている。鋼系の炭
素量としては溶射粉末の種類によっても相違するもの
の、重量比で、上限値が1.5%、1.8%程度にで
き、下限値が0.2%程度、0.3%程度にできる。本
発明方法では、溶射材は、鋼系粉末と非鋼系粉末との混
合粉末で形成することができる。鋼系粉末の量は、鋼系
粉末の炭素含有量、要請される体積膨張量等の要因に応
じて適宜選択するものの、溶射材を100%としたと
き、体積比で鋼系粉末は20〜60%、特に35〜50
%にできる。
【0010】ところで文献(日本鉄鋼協会、鉄の熱処
理、改訂5版、63頁)によれば、マルテンサイト変態
における鋼系の体積膨張量をVa 〔%〕とすると、Va
〔%〕=1.69×%Cで表わされると報告されてい
る。%Cは、鋼系に含まれる重量比での炭素量を意味す
る。また溶射被膜に生成される残留引張応力が、主とし
て、回復域以下の温度領域における冷却に起因するもの
と考えた場合には、回復域以下の温度領域における溶射
被膜の体積収縮量と、マルテンサイト変態が生じたとき
における鋼系の体積膨張量との双方を考慮する必要があ
る。
理、改訂5版、63頁)によれば、マルテンサイト変態
における鋼系の体積膨張量をVa 〔%〕とすると、Va
〔%〕=1.69×%Cで表わされると報告されてい
る。%Cは、鋼系に含まれる重量比での炭素量を意味す
る。また溶射被膜に生成される残留引張応力が、主とし
て、回復域以下の温度領域における冷却に起因するもの
と考えた場合には、回復域以下の温度領域における溶射
被膜の体積収縮量と、マルテンサイト変態が生じたとき
における鋼系の体積膨張量との双方を考慮する必要があ
る。
【0011】溶射被膜全体が鋼系である場合には、本発
明者による試算によれば次のようになる。即ち、融点を
TM とすれば、鋼の場合、一般的には回復温度はTM /
2≒620℃と考えられる。そのため、約600°C以
下の温度領域における溶射被膜の体積収縮量と、マルテ
ンサイト変態が生じたときにおける鋼系の体積膨張量と
の双方を考慮する必要がある。この事情を考慮すれば、
実質的には溶射被膜の体積膨張の割合〔%〕は、 鋼系溶射被膜における体積膨張の割合〔%〕= マルテンサイト変態が生じたときにおける鋼系の体積膨張量−600°C以下 で溶射被膜が体積収縮する量 =1.69×%C−600×14.5×10-6×100 =1.69×%C−0.87……(1) この(1)式に基づけば、鋼系の炭素量が重量比で1%
のときには、溶射被膜の体積膨張の割合は、1.69×
1%−0.87=0.82%と試算することができる。
明者による試算によれば次のようになる。即ち、融点を
TM とすれば、鋼の場合、一般的には回復温度はTM /
2≒620℃と考えられる。そのため、約600°C以
下の温度領域における溶射被膜の体積収縮量と、マルテ
ンサイト変態が生じたときにおける鋼系の体積膨張量と
の双方を考慮する必要がある。この事情を考慮すれば、
実質的には溶射被膜の体積膨張の割合〔%〕は、 鋼系溶射被膜における体積膨張の割合〔%〕= マルテンサイト変態が生じたときにおける鋼系の体積膨張量−600°C以下 で溶射被膜が体積収縮する量 =1.69×%C−600×14.5×10-6×100 =1.69×%C−0.87……(1) この(1)式に基づけば、鋼系の炭素量が重量比で1%
のときには、溶射被膜の体積膨張の割合は、1.69×
1%−0.87=0.82%と試算することができる。
【0012】なお上記した試算は、あくまでも目安とし
ての試算であり、無視している因子もあるため、実際の
膨張量とは一致しないこともある。更に本発明方法で用
いる溶射材としては粉末状の形態が好ましいが、場合に
よっては棒状、線状のものも採用できる。マルテンサイ
ト変態の促進を考慮し、溶射材には炭素の他に焼入性倍
数が高いMn、Cr、Ni、Mo、Si等の合金元素を
含ませることができる。
ての試算であり、無視している因子もあるため、実際の
膨張量とは一致しないこともある。更に本発明方法で用
いる溶射材としては粉末状の形態が好ましいが、場合に
よっては棒状、線状のものも採用できる。マルテンサイ
ト変態の促進を考慮し、溶射材には炭素の他に焼入性倍
数が高いMn、Cr、Ni、Mo、Si等の合金元素を
含ませることができる。
【0013】本発明方法では、必要に応じて次の方策を
採用することもできる。即ち、体積膨張が溶射粉末のマ
ルテンサイト変態に基づく場合には、溶射粉末のマルテ
ンサイト変態を促進すべく、熱伝導率が高い基材を選択
したり、基材を強制冷却したり、基材に到達した溶融状
態の溶射粉末を冷却ガス等で強制冷却する方策を採用す
ることもできる。
採用することもできる。即ち、体積膨張が溶射粉末のマ
ルテンサイト変態に基づく場合には、溶射粉末のマルテ
ンサイト変態を促進すべく、熱伝導率が高い基材を選択
したり、基材を強制冷却したり、基材に到達した溶融状
態の溶射粉末を冷却ガス等で強制冷却する方策を採用す
ることもできる。
【0014】
(実施例1)実施例1について比較例と共に説明する。
この例は、Cu合金の溶射被膜を形成する場合を対象と
する。このCu合金はアルミニウムブロンズ合金であ
り、その組成は重量比でCu−10%Al−0.4%Z
n−1%Feである。文献(理科年表)によれば、この
アルミニウムブロンズ合金の熱膨張率は16×10-6/
Kである。
この例は、Cu合金の溶射被膜を形成する場合を対象と
する。このCu合金はアルミニウムブロンズ合金であ
り、その組成は重量比でCu−10%Al−0.4%Z
n−1%Feである。文献(理科年表)によれば、この
アルミニウムブロンズ合金の熱膨張率は16×10-6/
Kである。
【0015】上記したCu合金の粉末(平均粒径40〜
50μm)を用い、基材としての円筒(材質:JIS
AC8A)の表出面に溶射処理を実行した。この溶射処
理は超音速ガスフレーム溶射とも呼ばれるHVOF(Hi
gh Velocity Oxigen Fuel)処理であり、通常のプラズマ
溶射処理に比較して、粉末は高速(一般的には、プラズ
マ溶射処理の場合に比し数倍と言われている)で飛行す
ると共に、粉末粒子の溶融温度が低い溶射処理である。
一般的に、HVOF溶射処理で形成した溶射被膜の気孔
率は低いため溶射被膜が緻密であり、基材に対する溶射
被膜の密着力も強い。
50μm)を用い、基材としての円筒(材質:JIS
AC8A)の表出面に溶射処理を実行した。この溶射処
理は超音速ガスフレーム溶射とも呼ばれるHVOF(Hi
gh Velocity Oxigen Fuel)処理であり、通常のプラズマ
溶射処理に比較して、粉末は高速(一般的には、プラズ
マ溶射処理の場合に比し数倍と言われている)で飛行す
ると共に、粉末粒子の溶融温度が低い溶射処理である。
一般的に、HVOF溶射処理で形成した溶射被膜の気孔
率は低いため溶射被膜が緻密であり、基材に対する溶射
被膜の密着力も強い。
【0016】この溶射被膜の密着強度は、剪断法で測定
したところ60MPaであった。一方、溶射被膜の表面
における残留応力は引張応力で約40MPaと大きいこ
とがX線残留応力測定法にて測定された。このような溶
射被膜を旋盤にて加工した結果、溶射被膜に剥離が発生
した。以上が比較例である。これに対し本実施例によれ
ば、マルテンサイト変態を起こすための粉末として、重
量比で、Fe−1%C−12%Cr−1%Si合金の鋼
系粉末(平均粒径40〜50μm)を用いた。そして、
下記で述べる試算で求めた配合割合、即ち体積比で鋼系
粉末:Cu合金粉末=40:60の配合割合で、上記し
たCu合金粉末に鋼系粉末を混合し、本実施例に係る溶
射粉末を得た。なお鋼系粉末においてCr量はマルサン
サイト変態の促進を意図している。
したところ60MPaであった。一方、溶射被膜の表面
における残留応力は引張応力で約40MPaと大きいこ
とがX線残留応力測定法にて測定された。このような溶
射被膜を旋盤にて加工した結果、溶射被膜に剥離が発生
した。以上が比較例である。これに対し本実施例によれ
ば、マルテンサイト変態を起こすための粉末として、重
量比で、Fe−1%C−12%Cr−1%Si合金の鋼
系粉末(平均粒径40〜50μm)を用いた。そして、
下記で述べる試算で求めた配合割合、即ち体積比で鋼系
粉末:Cu合金粉末=40:60の配合割合で、上記し
たCu合金粉末に鋼系粉末を混合し、本実施例に係る溶
射粉末を得た。なお鋼系粉末においてCr量はマルサン
サイト変態の促進を意図している。
【0017】この溶射粉末を用いてHVOF溶射処理し
たところ、溶射被膜における残留応力は引張応力で約1
0MPaとかなり低減していた。また加工した時、溶射
被膜における剥離の発生はなくなった。従って溶射被膜
の密着性が向上していることが確認された。本実施例に
よれば、鋼系粉末の配合割合の決定は次のようにして行
った。即ち、上記したCu合金の融点をTM とすると、
TM /2≒400℃となる。そのため、Cu合金の溶射
被膜の体積収縮率は0.62%と推定される。溶射被膜
のCu合金の体積収縮量とマルテンサイト変態が発生し
たときにおける鋼系の体積膨張量とを相殺して、溶射被
膜における体積変化を実質的に0にするためには、xを
鋼系粉末の体積率、yをCu合金粉末の体積%とすると x{1.69×%C)−0.87}−(y×0.62%)=0 …… x+y=100 …… を解けば実質的に、x=43%、y=57%とな
る。
たところ、溶射被膜における残留応力は引張応力で約1
0MPaとかなり低減していた。また加工した時、溶射
被膜における剥離の発生はなくなった。従って溶射被膜
の密着性が向上していることが確認された。本実施例に
よれば、鋼系粉末の配合割合の決定は次のようにして行
った。即ち、上記したCu合金の融点をTM とすると、
TM /2≒400℃となる。そのため、Cu合金の溶射
被膜の体積収縮率は0.62%と推定される。溶射被膜
のCu合金の体積収縮量とマルテンサイト変態が発生し
たときにおける鋼系の体積膨張量とを相殺して、溶射被
膜における体積変化を実質的に0にするためには、xを
鋼系粉末の体積率、yをCu合金粉末の体積%とすると x{1.69×%C)−0.87}−(y×0.62%)=0 …… x+y=100 …… を解けば実質的に、x=43%、y=57%とな
る。
【0018】そこで本実施例では、上記した溶射粉末に
占める鋼系粉末の割合が前述したように約40%となる
ように、鋼系粉末をCu合金粉末に添加した溶射粉末を
得ている。なお試算上では溶射被膜の体積変化は0であ
るが、実際では0ではなく、上記のように残留引張応力
が小さいものの約10MPaであった。その理由として
は、鋼系粉末に包含されているCrによる%Cの固定、
マルテンサイト変態に伴う残留オーステナイトの存在の
ためと推察される。
占める鋼系粉末の割合が前述したように約40%となる
ように、鋼系粉末をCu合金粉末に添加した溶射粉末を
得ている。なお試算上では溶射被膜の体積変化は0であ
るが、実際では0ではなく、上記のように残留引張応力
が小さいものの約10MPaであった。その理由として
は、鋼系粉末に包含されているCrによる%Cの固定、
マルテンサイト変態に伴う残留オーステナイトの存在の
ためと推察される。
【0019】上記した実施例1における溶射処理におけ
る溶射条件、加工条件は基本的には次のようにした。 (A)溶射条件:プロピレン=40リットル/min 酸素 =45リットル/mm エア =80リットル/min 溶射被膜の膜厚=0.5〜0.8mm (B)加工条件:回転数=1000rpm 切り込み量=0.05mm/rev 刃具材質=BN系 本実施例では前述したように溶射処理としてHVOF処
理が採用されている。この処理は、前述したように、通
常のプラズマ溶射処理に比較して、溶射粉末は高速で飛
翔すると共に、溶射粉末の溶融温度が比較的低目であ
る。そのため溶射粉末が基材に衝突する際には、溶射粉
末の粒子が基材に急激に衝突し易くなり、溶射粉末の粒
子の偏平化が促進され、基材に逃熱する度合が高くな
り、これによりマルテンサイト変態が促進され易くなる
と推察される。また冶金の分野では、焼入加熱温度が過
剰に高温であると、かえって焼きがはいりにくくなり、
残留オーステナイトが増加し易いと考えられている。こ
の点HVOF溶射処理が採用されている本実施例によれ
ば、溶射粉末の溶融温度が比較的低目であるため、焼入
処理が進行し易く、マルテンサイト変態の促進、残留オ
ーステナイトの低減に有利であると考えられる。 (実施例2)実施例2について比較例と共に説明する。
この例はNi−Cr合金の溶射被膜を形成する場合であ
る。溶射粉末を構成するNi合金の組成は、重量比で、
Ni−15%Cr−1%C−2%Siである。文献によ
れば、このNi−Cr合金の熱膨張率は約13×10-6
/Kである。
る溶射条件、加工条件は基本的には次のようにした。 (A)溶射条件:プロピレン=40リットル/min 酸素 =45リットル/mm エア =80リットル/min 溶射被膜の膜厚=0.5〜0.8mm (B)加工条件:回転数=1000rpm 切り込み量=0.05mm/rev 刃具材質=BN系 本実施例では前述したように溶射処理としてHVOF処
理が採用されている。この処理は、前述したように、通
常のプラズマ溶射処理に比較して、溶射粉末は高速で飛
翔すると共に、溶射粉末の溶融温度が比較的低目であ
る。そのため溶射粉末が基材に衝突する際には、溶射粉
末の粒子が基材に急激に衝突し易くなり、溶射粉末の粒
子の偏平化が促進され、基材に逃熱する度合が高くな
り、これによりマルテンサイト変態が促進され易くなる
と推察される。また冶金の分野では、焼入加熱温度が過
剰に高温であると、かえって焼きがはいりにくくなり、
残留オーステナイトが増加し易いと考えられている。こ
の点HVOF溶射処理が採用されている本実施例によれ
ば、溶射粉末の溶融温度が比較的低目であるため、焼入
処理が進行し易く、マルテンサイト変態の促進、残留オ
ーステナイトの低減に有利であると考えられる。 (実施例2)実施例2について比較例と共に説明する。
この例はNi−Cr合金の溶射被膜を形成する場合であ
る。溶射粉末を構成するNi合金の組成は、重量比で、
Ni−15%Cr−1%C−2%Siである。文献によ
れば、このNi−Cr合金の熱膨張率は約13×10-6
/Kである。
【0020】この溶射粉末(平均粒径40〜50μm)
を、基材としての円筒(材質:AC8A)の外周面に溶
射処理(HVOF)した。溶射被膜の密着強度について
は、剪断法で測定したところ75MPaであった。一
方、溶射被膜の表面の残留応力は引張応力であり、65
MPaとかなり大きかった。このようして形成した溶射
被膜について、前述同様に旋盤にて外周加工を施した結
果、溶射被膜の剥離が発生した。以上が比較例である。
を、基材としての円筒(材質:AC8A)の外周面に溶
射処理(HVOF)した。溶射被膜の密着強度について
は、剪断法で測定したところ75MPaであった。一
方、溶射被膜の表面の残留応力は引張応力であり、65
MPaとかなり大きかった。このようして形成した溶射
被膜について、前述同様に旋盤にて外周加工を施した結
果、溶射被膜の剥離が発生した。以上が比較例である。
【0021】これに対し本実施例によれば、鋼系粉末と
して、重量比で、Fe−1.2%C−5%Cr−1%S
i合金の粉末(平均粒径40〜50μm)を用いた。そ
して下記で述べる試算で求めた配合割合、即ち、体積比
で鋼系粉末:Ni−Cr合金粉末=40:60の配合割
合で、上記した鋼系粉末をNi−Cr合金粉末に混合
し、本実施例に係る溶射粉末を得た。
して、重量比で、Fe−1.2%C−5%Cr−1%S
i合金の粉末(平均粒径40〜50μm)を用いた。そ
して下記で述べる試算で求めた配合割合、即ち、体積比
で鋼系粉末:Ni−Cr合金粉末=40:60の配合割
合で、上記した鋼系粉末をNi−Cr合金粉末に混合
し、本実施例に係る溶射粉末を得た。
【0022】この溶射粉末を用い、前述同様の円筒の外
周面に溶射処理(HVOF)した。溶射被膜の残留応力
は引張応力であり約12MPaとかなり低減していた。
更に溶射被膜を加工した時にも、溶射被膜の剥離はなく
なった。なお溶射条件や加工条件は実施例1に基づい
た。本実施例では鋼系粉末の配合割合は前述したように
40%としているが、この配合割合は次のようにして決
定した。即ち、Ni−Cr合金の融点をTM とすると、
TM /2≒550℃となる。Ni−Cr合金の溶射被膜
の場合、体積収縮率は0.72%である。
周面に溶射処理(HVOF)した。溶射被膜の残留応力
は引張応力であり約12MPaとかなり低減していた。
更に溶射被膜を加工した時にも、溶射被膜の剥離はなく
なった。なお溶射条件や加工条件は実施例1に基づい
た。本実施例では鋼系粉末の配合割合は前述したように
40%としているが、この配合割合は次のようにして決
定した。即ち、Ni−Cr合金の融点をTM とすると、
TM /2≒550℃となる。Ni−Cr合金の溶射被膜
の場合、体積収縮率は0.72%である。
【0023】ここで、鋼系粉末のマルテンサイト変態に
おける体積膨張量とNi−Cr合金の体積収縮量とを相
殺して、溶射被膜の体積変化を実質的にゼロにするため
の鋼系粉末の体積%をxとし、Ni−Cr合金粉末の体
積率をyとすると、 x{(1.69×1.2)−0.87}−y×0.72=0…… x+y=100 …… を解けば実質的に、x=39、y=61となる。従
って溶射粉末に占める鋼系粉末の配合割合を前述したよ
うに40%とした。
おける体積膨張量とNi−Cr合金の体積収縮量とを相
殺して、溶射被膜の体積変化を実質的にゼロにするため
の鋼系粉末の体積%をxとし、Ni−Cr合金粉末の体
積率をyとすると、 x{(1.69×1.2)−0.87}−y×0.72=0…… x+y=100 …… を解けば実質的に、x=39、y=61となる。従
って溶射粉末に占める鋼系粉末の配合割合を前述したよ
うに40%とした。
【0024】なお試算上では体積変化は0であるが、実
際では0ではなく上記のように残留引張応力が小さいも
のの約12MPaであった。その理由としては、前述同
様に、鋼系粉末に包含されているCrによる%Cの固
定、マルテンサイト変態に伴う残留オーステナイトの存
在のためと推察される。 (適用例)図1〜図3は適用例を示す。この例では内燃
機関のアルミ合金系のピストン1にリング溝11を形成
している。リング溝11は、傾斜角θ1をもつ傾斜面1
1aと、底面11cをもつ。そして溶射ガン4により溶
射粉末を矢印A1方向に噴出して、ピストン1のリング
溝11に溶射被膜2を形成する。その後、溶射被膜2を
バイトで切削加工してピストンリング溝3を形成する。
際では0ではなく上記のように残留引張応力が小さいも
のの約12MPaであった。その理由としては、前述同
様に、鋼系粉末に包含されているCrによる%Cの固
定、マルテンサイト変態に伴う残留オーステナイトの存
在のためと推察される。 (適用例)図1〜図3は適用例を示す。この例では内燃
機関のアルミ合金系のピストン1にリング溝11を形成
している。リング溝11は、傾斜角θ1をもつ傾斜面1
1aと、底面11cをもつ。そして溶射ガン4により溶
射粉末を矢印A1方向に噴出して、ピストン1のリング
溝11に溶射被膜2を形成する。その後、溶射被膜2を
バイトで切削加工してピストンリング溝3を形成する。
【0025】ピストンリング溝3は、ピストンリングと
摺動する摺動面31、32と、底面33とをもつ。図3
(a)は切削加工する前の溶射被膜2の積層構造を模式
的に示し、図3(b)は切削加工で形成した摺動面3
1、32をもつピストンリング溝3付近の積層構造を模
式的に示す。図3(b)から理解できるように、溶射粉
末の粒子は衝突に伴い偏平化され易いので、ピストンリ
ング溝3の摺動面31、32の単位面積において、各粉
末粒子の性質を複合化し易い。従って溶射被膜の密着性
を図り得る効果ばかりか、摺動特性を一層向上させる効
果も期待できる。
摺動する摺動面31、32と、底面33とをもつ。図3
(a)は切削加工する前の溶射被膜2の積層構造を模式
的に示し、図3(b)は切削加工で形成した摺動面3
1、32をもつピストンリング溝3付近の積層構造を模
式的に示す。図3(b)から理解できるように、溶射粉
末の粒子は衝突に伴い偏平化され易いので、ピストンリ
ング溝3の摺動面31、32の単位面積において、各粉
末粒子の性質を複合化し易い。従って溶射被膜の密着性
を図り得る効果ばかりか、摺動特性を一層向上させる効
果も期待できる。
【0026】更に図3(a)から理解できるように、溶
射被膜2のうち基材に接近している側の方が溶射被膜2
の熱が基材に逃熱され易いので、通常の形態では、溶射
被膜2の表面側よりも、溶射被膜2のうち基材との境界
側でマルテンサイト変態が促進され易いと考えられる。
故に、溶射被膜2と基材との境界領域における体積膨張
を期待でき、境界領域における密着力の向上に貢献でき
ると考えられる。
射被膜2のうち基材に接近している側の方が溶射被膜2
の熱が基材に逃熱され易いので、通常の形態では、溶射
被膜2の表面側よりも、溶射被膜2のうち基材との境界
側でマルテンサイト変態が促進され易いと考えられる。
故に、溶射被膜2と基材との境界領域における体積膨張
を期待でき、境界領域における密着力の向上に貢献でき
ると考えられる。
【0027】上記した図1〜図3に示す適用例では溶射
被膜に切削加工を施しているが、溶射被膜に切削加工を
施すことなく、溶射被膜をそのまま利用する形態でも良
い。またマルテンサイト変態が終了するMf 点が室温以
下のときには、溶射処理の後に、基材に積層した溶射被
膜を室温以下の低温度に冷却することにより、溶射被膜
内の残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させる
サブセロ処理を実行することもできる。この場合にはド
ライアイス、液体窒素、アンモニア、フレオン等の冷却
媒体を採用できる。
被膜に切削加工を施しているが、溶射被膜に切削加工を
施すことなく、溶射被膜をそのまま利用する形態でも良
い。またマルテンサイト変態が終了するMf 点が室温以
下のときには、溶射処理の後に、基材に積層した溶射被
膜を室温以下の低温度に冷却することにより、溶射被膜
内の残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させる
サブセロ処理を実行することもできる。この場合にはド
ライアイス、液体窒素、アンモニア、フレオン等の冷却
媒体を採用できる。
【0028】(付記)上記した記載から次の技術的思想
も把握できる。 ○請求項1において、溶射材は鋼系粉末と非鋼系粉末と
の混合粉末で形成されており、溶射材を100%とした
とき、体積比で鋼系粉末は20〜60%、特に35〜5
0%含まれていることを特徴とする溶射方法。 ○請求項1において、溶射材は鋼系粉末と非鋼系粉末と
の混合粉末で形成されており、重量比で鋼系粉末は0.
3〜1.8%の炭素を含むことを特徴とする溶射方法。
も把握できる。 ○請求項1において、溶射材は鋼系粉末と非鋼系粉末と
の混合粉末で形成されており、溶射材を100%とした
とき、体積比で鋼系粉末は20〜60%、特に35〜5
0%含まれていることを特徴とする溶射方法。 ○請求項1において、溶射材は鋼系粉末と非鋼系粉末と
の混合粉末で形成されており、重量比で鋼系粉末は0.
3〜1.8%の炭素を含むことを特徴とする溶射方法。
【0029】
【発明の効果】本発明方法によれば、密着性低下の要因
となり得る残留引張応力を溶射被膜において低減できる
ため、基材に対する溶射被膜の密着性を向上させ得る。
従って溶射被膜の長寿命化に有利である。更に体積膨張
する物質がマルサンサイト変態する鋼系である場合に
は、マルサンサイト変態した相は硬質相として機能で
き、溶射被膜の耐摩耗性の向上を期待できる。
となり得る残留引張応力を溶射被膜において低減できる
ため、基材に対する溶射被膜の密着性を向上させ得る。
従って溶射被膜の長寿命化に有利である。更に体積膨張
する物質がマルサンサイト変態する鋼系である場合に
は、マルサンサイト変態した相は硬質相として機能で
き、溶射被膜の耐摩耗性の向上を期待できる。
【0030】また一般論では残留応力は耐摩耗性に対し
てはマイナスの方向に作用すると考えられている。この
点本発明方法によれば、溶射被膜における残留引張応力
を低減できるため、この意味においても耐摩耗性の確保
に有利である。
てはマイナスの方向に作用すると考えられている。この
点本発明方法によれば、溶射被膜における残留引張応力
を低減できるため、この意味においても耐摩耗性の確保
に有利である。
【図1】適用例を示す構成図である。
【図2】ピストンリング溝付近の断面図である。
【図3】溶射被膜の内部を模式的に示す構成図である。
図中、1はピストン、11はリング溝、3はピストンリ
ング溝を示す。
ング溝を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中野 敬章 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内 (72)発明者 恒川 浩一 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内
Claims (1)
- 【請求項1】溶射材を基材に溶射して溶射被膜を形成す
る溶射方法であって、 前記溶射材は、前記基材に溶射された溶射材が前記基材
上で冷却される際に体積膨張する物質を含むことを特徴
とする溶射方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP22404996A JPH1068058A (ja) | 1996-08-26 | 1996-08-26 | 溶射方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP22404996A JPH1068058A (ja) | 1996-08-26 | 1996-08-26 | 溶射方法 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH1068058A true JPH1068058A (ja) | 1998-03-10 |
Family
ID=16807798
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP22404996A Pending JPH1068058A (ja) | 1996-08-26 | 1996-08-26 | 溶射方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPH1068058A (ja) |
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| DE10256063A1 (de) * | 2002-11-30 | 2004-06-17 | Mahle Gmbh | Verfahren zum Beschichten von Kolbenringen für Verbrennungsmotoren |
| US8636873B2 (en) | 2007-03-19 | 2014-01-28 | Tokyo Electron Limited | Plasma processing apparatus and structure therein |
| WO2020090103A1 (ja) * | 2018-11-02 | 2020-05-07 | 日産自動車株式会社 | 溶射被膜 |
-
1996
- 1996-08-26 JP JP22404996A patent/JPH1068058A/ja active Pending
Cited By (5)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| DE10256063A1 (de) * | 2002-11-30 | 2004-06-17 | Mahle Gmbh | Verfahren zum Beschichten von Kolbenringen für Verbrennungsmotoren |
| US7341648B2 (en) | 2002-11-30 | 2008-03-11 | Mahle Gmbh | Method for coating piston rings for internal combustion engine |
| US8636873B2 (en) | 2007-03-19 | 2014-01-28 | Tokyo Electron Limited | Plasma processing apparatus and structure therein |
| WO2020090103A1 (ja) * | 2018-11-02 | 2020-05-07 | 日産自動車株式会社 | 溶射被膜 |
| JPWO2020090103A1 (ja) * | 2018-11-02 | 2021-11-25 | 日産自動車株式会社 | 溶射被膜 |
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