JPH0854060A - 溶射方法、溶射層を摺動面とする摺動部材の製造方法、ピストンおよびピストンの製造方法 - Google Patents
溶射方法、溶射層を摺動面とする摺動部材の製造方法、ピストンおよびピストンの製造方法Info
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Abstract
材の製造方法およびピストンを提供する。 【構成】摺動部材の製造方法は、構造材料で作られた本
体部1の少なくとも一部表面に粒状の溶射材を少なくと
も部分的に溶融状態で摺動面に対して平行もしくは斜め
方向に吹きつけ、溶射材を摺動面を含む方向に堆積させ
て溶射層2を形成し、次に溶射層2の堆積方向に研削も
しくは切削して溶射層の堆積断面を摺動面とする。ピス
トンは、リング溝3より幅広の幅広溝11を持つピスト
ン本体1と、この幅広溝11内にその外周面に対して斜
め方向から溶射され溶射材の溶融温度の低い成分が多く
なったが下方溶射層21と外周面に対して垂直方向に溶
射され溶射材の溶融温度の高い成分が多くなった幅広溝
11の深さ方向に堆積した上方溶射層22からなる溶射
層2と、この上方溶射層22の積層方向に研削もしくは
切削して形成されたリング溝3とを持つ。
Description
る溶射方法、耐摩耗性に優れた摺動面をもつ摺動部材の
製造方法および耐摩耗性に優れたリング溝をもつピスト
ンおよびピストンの製造方法に関する。
ング溝部はアルミニウム製ピストンにとって熱的に厳し
い。特に近年の排気ガス清浄規制に伴い、ディーゼルエ
ンジンのオイル消費を抑え、且つ燃焼温度の高温化が要
求されている。この動きは、ピストンリングおよびピス
トンに益々厳しいものであり、上記の方法においても限
界に近い状況にある。すなわち、ピストンリング溝とり
わけトップリング溝では十分なオイル潤滑や冷却が期待
できないため、ピストンリングとの間で摩耗が生じる。
グ溝部に溶射により耐熱・耐摩耗層を形成して対応しよ
うとする試みが検討されてきた。溶射は基材を選ばず、
しかも溶射材の自由度が高いため、多数の耐摩耗材の溶
射が報告されている。ところで、自動車用ディーゼルエ
ンジンのピストンリング溝は入口が2mm程度で奥行き
が5mmという矩形の溝であるため、直進的な溶射フレ
ームでは溶射角度が極端に小さくなり、溝形状に沿った
溶射層の被覆は困難である。
では図17に示すように溝上端部を面取りして、溶射角
度を確保する方法を考案している。この方法では溝下面
には溶射層が形成されるが、上面は盛金により修復する
ため、プロセスが複雑化し、しかも溝全面が処理されて
いないため、局部的な凝着や摩耗の発生が懸念される。
さらに、溶射角度が被処理面に垂直でないため、溶射皮
膜の密着強度の低下や溝奥に跳ね返り粒子が堆積しポー
ラス層の形成など皮膜品質が劣化することが懸念され
る。
点を解決するもので、従来の溶射で形成された摺動面よ
り耐磨耗性が高くかつ安定した、溶射層を摺動面とする
摺動部材の製造方法およびピストンを提供することを目
的とする。
溶射粒子からなる溶射材を溶射面に対して斜めに溶射す
ると溶融温度の低い溶射粒子が優先的に溶射面に付着し
溶射材の組成とは異なり溶融温度の低い溶射粒子の組成
が高い溶射層が得られることを発見した。そして溶射面
に対する溶射角度を変化させることにより溶射層の組成
を幾分変えられることを確認した。
するとき、溶射される個々の溶射材粒子は被溶射体に衝
突し、薄い円板状に押しつぶされて被溶射体表面に溶着
することに着目した。そしてこれら薄い円板状に押しつ
ぶされて堆積して形成された溶射層の堆積方向と直角方
向、即ち、個々の溶射材粒子の円板状に広がる方向の面
が通常摺動面として利用されていることに気が付いた。
そこで溶射層の積層方向に切断して得られる切断面に着
目した。そして積層された個々の溶射材粒子の耐脱落
性、切断面の単位表面積に表出する個々の溶射材粒子の
数等から考慮し、溶射層の積層方向に切断して得られる
切断面の耐磨耗性が優れかつ摩擦係数が安定していると
考えた。本発明者はかかる仮説を実験により確認した。
ものである。本発明の溶射方法は、溶射材を溶射層を形
成すべき基材表面に溶射して該基材表面に溶射層を形成
する溶射方法であって、該溶射材は溶融温度の異なる2
種類以上の溶射粒子からなり、該溶射層を形成すべき該
基材表面と溶射方向とのなす溶射角度を溶射初期におい
て小さくその後溶射角度を大きくし、該基材表面に近い
該溶射層の下方部分を該基材表面より遠い該溶射層の上
方部分より溶融温度の低い溶射粒子で形成された材質の
割合を多く溶融温度の高い溶融粒子で形成された材質の
割合を少なくした溶射層を形成することを特徴とする。
部材の製造方法は、構造材料で作られた本体部の少なく
とも一部表面に粒状の溶射材を少なくとも部分的に溶融
状態で吹きつけて堆積させた溶射層を形成する溶射工程
と、得られた溶射層を研削もしくは切削してその形成面
を摺動面とする摺動面形成工程と、からなる溶射層を摺
動面とする摺動部材の製造方法であって、前記溶射工程
は前記溶射材を形成される前記摺動面に対して平行もし
くは斜め方向から吹きつけ、前記溶射材を形成される前
記摺動面を含む方向に堆積させる工程であり、前記摺動
面形成工程は堆積した前記溶射材を堆積方向に研削もし
くは切削して前記溶射材の堆積断面を摺動面とする工程
である、ことを特徴とする。
面と摺接する外周面に少なくとも1個のリング溝をもつ
ピストンであって、該外周面に該リング溝より幅広の幅
広溝を持つピストン本体と、該ピストン本体の該幅広溝
内に該外周面と直交する方向に溶射され溶射材が幅広溝
の深さ方向に堆積した溶射層と、該溶射層の積層方向に
研削もしくは切削して形成されたリング溝とを持つこと
を特徴とする。
内周面と摺接する外周面に少なくとも1個のリング溝を
もつピストンの製造方法であって、ピストン本体の該外
周面に該リング溝より幅広の幅広溝を形成する幅広溝形
成工程と、溶融温度の異なる2種類以上の溶射粒子から
なる溶射材を該幅広溝を形成する面に対して溶射角度の
低い斜め方向に溶射し溶融温度の低い溶射粒子で形成さ
れた材質の割合が多い下方溶射層を形成する第1溶射工
程と、該下方溶射層の上に該第1溶射工程より溶射角度
の高い方向に溶射し該下方溶射層より溶融温度の低い溶
射粒子で形成された材質の割合が少ない上方溶射層を形
成する第2溶射工程と、該上方溶射層内に該リング溝を
形成するリング溝形成工程とからなることを特徴とす
る。
の異なる2種類以上の溶射粒子からなる溶射材を使用
し、溶射角度を変えるだけで形成される溶射層の組成割
合を変えることができる。これにより、例えば、基材に
接する溶射層の下方部分には基材と親和性の良い材料の
割合を高くし、上方部分には、溶射層に期待される特性
をもつ材料の割合を高くした溶射層が得られる。
製造方法は、摺動部材の本体部の摺動面を形成しようと
する表面に溶射材を堆積して溶射層を形成する。その後
得られた溶射層の積層方向に摺動面を形成し、摺動部材
を得る方法である。摺動面には溶射により円板状に堆積
する個々の溶射材の端面が表出している。このため摺動
面に表出する一個の溶射材の面積は狭い。すなわち、摺
動面はより多くの数の溶射材により形成されている。従
って、この摺動面は特定の一個あるいは数個の溶射材の
摩擦特性が現れにくく、全体の溶射材の平均した摩擦特
性が現れる。このため、摩擦係数が安定する。
ように配列している。すなわち、摺動面を形成する個々
の溶射材の他端は摺動面より遠い内部に位置している。
このため摺動面を形成する個々の溶射材は摺動面より脱
落しにくい。このため脱落に起因する摩耗が少ない。ま
た、摺動面に表出する一個の溶射材の面積が狭いため、
摺動により作用する一個の溶射材への応力も小さくな
る。このため一層溶射材の脱落が少なくなる。このため
耐摩耗性が優れている。
り、本発明のピストンのリング溝の耐摩耗性は極めて優
れている。本発明のピストンの製造方法は、前記した本
発明の溶射方法をピストンの製造方法に使用したもの
で、同一の溶射材を使用して下方溶射層と上方溶射層を
形成できる。そして上方溶射層にリング溝を形成するこ
とにより、例えば、ピストン本体と一体性が高くかつ耐
磨耗性の高いリング溝とすることができる。
形成されたトップリング溝をもつAl合金製のピストン
およびその製造方法に関する。このピストンは図1にピ
ストンの先端側部の拡大断面を示すように、Al合金製
のピストン本体1とこのピストン本体1の先端部を一周
するように溶射で形成された溶射層2とこの溶射層2に
形成されたトップリング溝3とからなる。ピストン本体
1は、工程を模式的に示す図2に示すように、その先端
外周部には外周面を一周する断面台形状の溝11をも
つ。この溝11は、図1に明示するように、トップリン
グ溝3より深くかつ巾広に形成されている。本実施例で
は、深さがトップリング溝3の深さより少なくとも0.
1mm深く、底辺の巾もトップリング溝3の底辺より両
側に少なくとも0.1mm広げた巾広のものとしてい
る。また、溝11の斜面の角度は、側面に対して75°
の傾斜としている。
トン本体1の側面に対して垂直方向に溶射材を吹き付
け、溝11を埋めたものである。粒子状の溶射材は半溶
融状態で溝11の底面に衝突し底面に沿って薄い円板状
に広がって凝着する。そして次々に溶射材が衝突堆積
し、図1の破線で示すように、溝11の深さ方向に堆積
し、溶射層2を形成する。
て形成したものである。トップリング溝3は、図1に示
すように、相対向し深さ方向に延びる対向面31、32
と底面33とで区画されている。対向面31、32は溶
射材の堆積方向に延び、対向面31、32には各溶射材
の薄い側面が堆積した状態で表出している。これに対し
て、底面33は溶射材が広がった方向と平行で、底面3
3には、溶射材が円板状に広がった状態で表出してい
る。
示せず)が介装され、トップリングと摺接する。トップ
リングはシリンダ壁面と摺接し、シリンダ壁とピストン
との間の気密性を高める作用をする。そしてピストンの
往復動により、トップリングは、トップリング溝3の対
向面31、32に交互に当接する。本実施例のピストン
では、このトップリング溝3の対向面31、32が溶射
材の堆積断面となっている。すなわち、摺動面となる対
向面31、32には、溶射により円板状に堆積する個々
の溶射材の端面が表出している。このため対向面31、
32に表出する一個の溶射材の面積は狭い。すなわち、
対向面31、32はより多くの数の溶射材により形成さ
れている。従って、これらの対向面31、32は特定の
一個あるいは数個の溶射材の摩擦特性が現れにくく、全
体の溶射材の平均した摩擦特性が現れる。このため、摩
擦係数が安定する。
対して立つように配列している。すなわち、対向面3
1、32を形成する個々の溶射材の他端は対向面31、
32より遠い内部に位置している。このため対向面3
1、32を形成する個々の溶射材は対向面31、32よ
り脱落しにくい。このため脱落に起因する磨耗が少な
い。また、対向面31、32に表出する一個の溶射材の
面積が狭いため、摺動により作用する一個の溶射材への
応力も小さくなる。このため一層溶射材の脱落が少なく
なる。このため耐磨耗性が優れたものとなる。
溝3を形成する部分のみを溶射層2で形成した。しかし
他のリング溝をトップリング溝3と同じように溶射層に
形成することもできる。本実施例のピストンではトップ
リング溝3とピストン本体1の間の溶射層2の最も薄い
部分を0.1mmとしている。これはピストン本体1が
アルミニウム合金で作られているためで、例えば、ピス
トン本体が鉄合金製であれば、溶射層の最低厚さはもっ
と薄くても良い。また、溶射層を形成するためのピスト
ン本体に設けられた溝11の傾斜面の溝角度を本実施例
では75°としている。この溝角度θは密着力を維持す
るため、また跳ね返り粒子による皮膜のポーラス化防止
のため75°以下であれば問題ないが、望ましくは60
°以下が良い。しかし溝角度が小さくなるとそれだけ溝
11は開口部が広くなり溝11の断面積が増大し、必要
とする溶射量も増大することになる。
は、耐摩耗性と耐熱性を有する他、厚膜化に耐えるよう
に内部応力が緩和できるものであり、しかも加工性に優
れたものであるのが好ましい。このような要求特性を満
たす溶射材としては、溶射後の組成比で、5〜40wt
%の炭化物と5〜50wt%のAl合金を含み、残部が
マトリックスを形成する炭素鋼とするのが好ましい。
維持するための材料であり、靱性と加工性の両立を図る
ため必要な材料である。炭素鋼は溶射時の脱炭を考慮し
て0.3wt%以上の炭素を含むものが好ましい。参考
までに炭素鋼中の炭素量と溶射された溶射層の硬さの関
係線図を図3に示す。図3より炭素量0.3wt%でニ
レジスト合金(Hv:140〜150)より高い硬度の
ものとなる。なお、より好ましくは炭素量0.5wt%
が良い。炭素鋼中の02 量は0.5wt%以下ならば何
でもよいが、望ましくは0.2wt%以下が良好であ
る。これらの要求を満たすものとしてはマルテンサイト
系ステンレス鋼、工具鋼なども含まれるがコストを考慮
すると通常の炭素鋼で十分である。
(Hv≒1000程度)、相手材のピストンリング(窒
化処理;Hv=800〜1100、Crメッキ;Hv=
700〜900)を攻撃しないCr炭化物(Cr
3 C2 :Hv1300)、Mo炭化物(Mo2 C:Hv
1200)、Fe炭化物(Fe3 C:Hv800〜12
00、FeCrC:Hv800〜1100)、Ta炭化
物(TaC:Hv1800)がこのましい。なお、硬質
の炭化物、例えばTi炭化物(TiC:Hv320
0)、V炭化物(V4 C3 :Hv2800)、Nb炭化
物(NbC:Hv2400)、W炭化物(WC:Hv2
400)等も使用できる。
t%)と溶射層摩耗量(μm)およびリング材摩耗量
(μm)の関係線図を図4に示す。図4中、FeCr複
合炭化物としてはFe−60wt%Cr−10wt%C
を用いた。評価試験は図5に示すように、Al合金基材
に炭化物の添加量を変えた鉄鋼材を溶射した溶射層を形
成し、この溶射層にピストンリング材を荷重60kgで
押しつけ、回転数160rpmで60分間回転させ、溶
射層およびリング材の摩耗量を求めたものである。な
お、リング材としては17%Crステンレス鋼を窒化し
たものを用いた。なお、図4にはニレジスト鋳鉄に対す
る摩耗量を帯状の斜線で示した。図4に示すように5%
以上の炭化物の添加により、摩耗量が減少していること
が分かる。一方、相手攻撃性は比較的軟質のFeCr複
合炭化物は少ないのに対し、TiCは相手材の窒化層を
摩耗させ著しい摩耗に到らしていることが分かる。
緩和すなわち熱膨張率の違いによる応力を緩和する効果
を付与する働きをする。実際、溶射層の熱膨張率はAl
の添加量に比例して基材のアルミニウムに近づき、複合
則が成り立つ。更にAl合金の添加は加工性に著しく良
好な影響を与える。即ち、図6に示すように、Alの1
0wt%以上の添加で刃具の摩耗は急激していく。これ
はAlが異種金属として溶射層中の炭素鋼や炭化物の間
に存在するため、切り粉が微細になり、また、異種材の
断続的存在により、加工応力の低下が生じ、このため加
工性が向上するものと予想される。
作用をするが、逆に溶射層の耐摩耗性を低下させる。参
考までに図7にAl合金(Al−Si合金)の添加量と
摩耗量の関係線図を示す。Al合金の添加量が増すと磨
耗量も比例して多くなるのが判る。特に、50wt%を
越えると一段と磨耗量の増加がみられる。これらより、
Al合金の添加量は50wt%以下がよい。
材の形状の関係(a)と本発明の溶射層の摺動面と個々
の溶射材の形状の関係(b)とを模式的に示す。従来で
は(a)に示すように、摺動面は溶射層の堆積面に平行
な面となっていた。即ち溶射層は堆積する際、燐片状
(偏平率は1:10以上)に堆積するため、実質的に幾
種類かの粉末を混合して溶射した場合、少数の特定の粉
末が摺動面を形成する。したがって、摺動面を形成する
組成は、粉末の分散状態により、偏った組成となってし
まい、摩耗特性にばらつきが多くなる。これに対し本発
明の摺動面では、(b)に示すように、溶射堆積方向に
垂直な面を摺動面としている。このため摺動面には異種
材の出現確立が高くなり、複合させて高い摩擦特性を出
す場合に最適となる。
溶射層の摺動面の磨耗量の比較結果を図9に示す。これ
らの摩耗試験も前記したLFW1磨耗試験を採用したも
ので、Al合金基材に20wt%のFe−Cr炭化物
(Fe−60Cr−10C)と20wt%Al合金(A
l−20Si)を配合した炭素鋼(Fe−0.8wt%
C)を溶射して溶射層を形成し、従来例の摺動面は堆積
面と平行に研磨した面を採用し、本発明の摺動面は堆積
面に対して垂直に切断した垂直面とした。そして摩擦試
験は、前記したのと同じ、17%Crステンレス鋼を窒
化したリングを相手材とし、これら2種類の摺動面にそ
れぞれ荷重60kgで押しつけ、回転数160rpmで
60分間回転させ、溶射層の摩耗量を求めたものであ
る。
して垂直な面を摺動面とするものは、従来の溶射層の堆
積表面に水平な面を摺動面とするものに比較し、溶射層
摩耗量が少なく、摩耗量のばらつきも少ないのがわか
る。さらに、ピストンリング溝の他の摩擦特性として摩
耗とともに重要な凝着性を調査した。凝着試験は雰囲気
温度をピストン作動温度(250℃)にして、実用のピ
ストンリングをそのまま繰り返し溶射層に押しつける試
験である。結果を図10に示す。本発明の溶射層の堆積
表面に対して垂直な面を摺動面とするものは、従来の溶
射層の堆積表面に水平な面を摺動面とするものに比較
し、凝着発生面積が少なく、耐凝着性にすぐれている。
なお、本発明の耐凝着性は従来のニレジスト鋳鉄耐摩環
よりも優れたものである。この優れた特性は、前記した
ように、積層した積層面が多数表出しているため、凝着
現象が生じ難いものと考えられる。
について検討した。この欠陥は溶射時に発生する比較的
大きな空洞、あるいは溶射堆積時、加工時等に生じる部
分的な欠落に起因するものである。これらの欠陥は無け
れば無い程好ましいが完全になくすことも困難である。
図11に溶射時に生じる欠陥の量と摩耗の関係を調べた
結果を示す。欠陥面積率が増加していくと摩耗も増加し
ていく傾向がみられた。評価は乾燥雰囲気(潤滑なし)
にて滑り摩耗試験にて行った。潤滑無しでの試験のた
め、潤滑下の摩耗評価結果とは大きく異なっている。欠
陥が10%程度以上になると摩耗は増加傾向に転じる。
このため欠陥は8%以下が好ましい。なお、摩耗量の多
い試料の摩耗面を見ると、溶射層の欠陥(脱落)が多く
見られ、このためこの溶射層の欠陥(脱落)が摩耗をよ
り促進したものと考えられる。
ついてピストンのトップリング溝に適用した実施例につ
いて説明した。しかし、本発明はピストンのトップリン
グ溝にのみ適用されるものではなく、耐摩耗性を必要と
する摺動面をもつ多くの機械要素、部品に適用できる。
また、溶射層を形成する母材もアルミニウムに限られる
ものではなく、鉄鋼材その他、他の多くの構造材を母材
とすることができる。溶射材の種類も相手材の材質、使
用条件により適宜選択できる。 (実施例2)本実施例は、ピストン本体に接している部
分の溶射層の材料組成とリング溝を形成する部分の溶射
層の材料組成がことなる溶射層をもつAl合金製のピス
トンおよびその製造方法に関する。なお、実施例1のピ
ストンと同一部分を示す符号については本実施例のピス
トンでも同一の符号を使用して説明する。
部の拡大断面を示すように、Al合金製のピストン本体
1とこのピストン本体1の先端部を一周するように溶射
で形成された溶射層2とこの溶射層2に形成されたトッ
プリング溝3とからなる。ピストン本体1は、その先端
外周部に外周面を一周する断面台形状の溝11をもつ。
この溝11は、開口部の幅8.3mm、深さ5mm、底
面の幅2.5mmで、トップリング溝3より深くかつ巾
広に形成され、溝11の斜面の角度は、側面に対して6
0°の傾斜としている。
対して30°の角度で斜め方向から溶射された下方溶射
層21と溝11の底面上および両側の下方溶射層21上
に底面に対して垂直方向に溶射された上方溶射層22と
からなる。トップリング溝3はこの上方溶射層22を研
削して形成したものである。本実施例では溶射材として
は平均粒径40μmの炭素鋼90重量部と平均粒径40
μmのアルミ合金10重量部を配合した混合粉を使用し
た。
た。下方溶射層21は図13に示すように、溝11の底
面と一方の斜面をマスキング材4で覆い、他方の斜面上
にこの斜面に対して図のαの角度で溶射ガンより溶射し
て形成した。対向する一方の斜面も同様にして形成し
た。その後マスキング材を使用せず、底面に直角に溶射
して上方溶射層22を形成したものである。下方溶射層
21の成分組成は、アルミ合金38重量%と炭素鋼62
重量%とからなっていた。一方、上方溶射層22の成分
組成は、溶射材の成分組成に近いアルミ合金15重量%
と炭素鋼85重量%とからなっていた。
トップリング溝と同様、図12に示すように、相対向し
深さ方向に延びる対向面31、32と底面33とで区画
されている。対向面31、32は溶射材の堆積方向に延
び、対向面31、32には各溶射材の薄い側面が堆積し
た状態で表出している。これに対して、底面33は溶射
材が広がった方向と平行で、底面33には、溶射材が円
板状に広がった状態で表出している。
ストンと同様に、このトップリング溝3の対向面31、
32が溶射材の堆積断面となっている。すなわち、摺動
面となる対向面31、32には、溶射により円板状に堆
積する個々の溶射材の端面が表出している。このため対
向面31、32に表出する一個の溶射材の面積は狭い。
すなわち、対向面31、32はより多くの数の溶射材に
より形成されている。従って、これらの対向面31、3
2は特定の一個あるいは数個の溶射材の摩擦特性が現れ
にくく、全体の溶射材の平均した摩擦特性が現れる。こ
のため、摩擦係数が安定する。
対して立つように配列している。すなわち、対向面3
1、32を形成する個々の溶射材の他端は対向面31、
32より遠い内部に位置している。このため対向面3
1、32を形成する個々の溶射材は対向面31、32よ
り脱落しにくい。このため脱落に起因する磨耗が少な
い。また、対向面31、32に表出する一個の溶射材の
面積が狭いため、摺動により作用する一個の溶射材への
応力も小さくなる。このため一層溶射材の脱落が少なく
なる。このため耐磨耗性が優れたものとなる。
プリング溝3が形成されている上方溶射層22は下方溶
射層21を介してピストン本体1に保持されている。こ
の下方溶射層21を形成するアルミ合金成分は38重量
%と上方溶射層22を形成するアルミ合金成分の15重
量%より多く、ピストン本体1のアルミ合金と近い成分
組成となっている。このため、ピストン本体1と下方溶
射層21との親和性が高い。また、両者の熱膨張の差も
少ない。下方溶射層21と上方溶射層22とは成分組成
が異なるが元々同一の溶射材を用いて形成されたもので
あり、両者はより一体性が高い。このため上方溶射層2
2はピストン本体1より確実に保持されることになり、
ピストン本体1と上方溶射層22との間に比較的大きな
熱膨張の差がある場合でも、この差は下方溶射層21に
より緩和され、ピストン本体1と下方溶射層21および
上方溶射層22との間に亀裂等の不都合が生じにくい。
射面に対する溶射方向の角度αを変えた時の実施例2で
使用した溶射材の炭素鋼とアルミ合金の付着率の関係を
図14に、得られる溶射層中のアルミ合金の組成との関
係を図15に示す。図14より、本実施例で使用した炭
素鋼とアルミ材のように大きく溶融温度の異なる混粉を
溶射材とする場合、溶射角度により付着率が異なる。こ
のため、図15に示すように溶射で形成された溶射層中
の成分組成が大きく変化する。
化の大きさから考え、下方溶射層を形成する第1溶射工
程の溶射角度は15°〜45°程度が好ましい。また当
然に第2溶射工程の溶射角度は90°に近い角度が好ま
しい。図16に本実施例2の変形例を示す。この変形例
では、第1溶射工程で溶射方向を溝11の接線方向に溶
射しつつ、ピストン−本体1を回転しながら溶射し、ま
た、少しずつ溝11と垂直になるように溶射して溝11
を形成する斜面および底面の全面に下方溶射層21を形
成したものである。上方溶射層22は実施例2と同様に
底面と垂直に溶射して形成した。トップリング溝3は上
方溶射層22内に形成した。
近い程アルミ合金の組成割合が高い傾斜材となってい
る。そして下方溶射層21と上方溶射層22との境界は
実質的に存在しない程に一体化されている。従って本変
形例はトップリング溝3を形成する上方溶射層22がよ
り確実に溝11に保持されることになる。実施例2で
は、溶融温度の異なる2種類以上の溶射粒子からなる溶
射材を使用した。このような溶射材を使用し、溶射層形
成面に対して斜め方向に溶射すると完全には溶解してい
ない粒子が溶射層形成面に衝突しその形成面に補足され
ずに跳ね返って飛散するためと考えられる。従って溶融
温度の異なる2種類以上の溶射粒子を使用し、溶射条件
を適当に調節し一部の粒子が未溶融状態とし、溶射層形
成面に斜め方向に溶射することにより、未溶融粒子の成
分の付着率が悪くなる。このため得られる溶射層は未溶
融粒子の成分の割合が少なくなる。
粒子とは、溶射条件で溶融温度が異なる事を意味する。
具体的には、溶融点の異なる2種類以上の溶射粒子、粒
子径が異なり、実質的に大きな径の粒子の中央部が未溶
融となるような粒子径の異なる2種類以上の溶射粒子を
言う。なお、溶射材を構成する溶融温度の異なる2種類
以上の溶射粒子として、目的に合わせ色々組み合わせる
ことができる。
断面図。
を形成する過程を模式的に示す図。
線図。
リング材磨耗量の関係を示す線図。
た溶射層の研削刃具の磨耗量の関係を示す線図。
た溶射層の磨耗量の関係を示す線図。
面とを模式的に示す拡大断面図。
面をもつ溶射層の磨耗量を示す図。
動面をもつ溶射層の凝着発生面積を示す図。
耗量の関係を示す線図。
大断面図。
模式図。
率の関係を示す線図。
れる溶射層中のアルミ合金の組成割合を示す線図。
部分の拡大断面図。
を模式的に示す図。
ップリング溝
Claims (4)
- 【請求項1】溶射材を溶射層を形成すべき基材表面に溶
射して該基材表面に溶射層を形成する溶射方法であっ
て、 該溶射材は溶融温度の異なる2種類以上の溶射粒子から
なり、該溶射層を形成すべき該基材表面と溶射方向との
なす溶射角度を溶射初期において小さくその後溶射角度
を大きくし、該基材表面に近い該溶射層の下方部分を該
基材表面より遠い該溶射層の上方部分より溶融温度の低
い溶射粒子で形成された材質の割合を多く溶融温度の高
い溶融粒子で形成された材質の割合を少なくした溶射層
を形成することを特徴とする溶射方法。 - 【請求項2】構造材料で作られた本体部の少なくとも一
部表面に粒状の溶射材を少なくとも部分的に溶融状態で
吹きつけて堆積させた溶射層を形成する溶射工程と、得
られた溶射層を研削もしくは切削してその形成面を摺動
面とする摺動面形成工程と、からなる溶射層を摺動面と
する摺動部材の製造方法であって、 前記溶射工程は前記溶射材を形成される前記摺動面に対
して平行もしくは斜め方向から吹きつけ、前記溶射材を
形成される前記摺動面を含む方向に堆積させる工程であ
り、 前記摺動面形成工程は堆積した前記溶射材を堆積方向に
研削もしくは切削して前記溶射材の堆積断面を摺動面と
する工程である、 ことを特徴とする溶射層を摺動面とする摺動部材の製造
方法。 - 【請求項3】シリンダ内周面と摺接する外周面に少なく
とも1個のリング溝をもつピストンであって、 該外周面に該リング溝より幅広の幅広溝を持つピストン
本体と、 該ピストン本体の該幅広溝内に該外周面と直交する方向
に溶射され溶射材が幅広溝の深さ方向に堆積した溶射層
と、 該溶射層の積層方向に研削もしくは切削して形成された
リング溝とを持つことを特徴とするピストン。 - 【請求項4】シリンダ内周面と摺接する外周面に少なく
とも1個のリング溝をもつピストンの製造方法であっ
て、 ピストン本体の該外周面に該リング溝より幅広の幅広溝
を形成する幅広溝形成工程と溶融温度の異なる2種類以
上の溶射粒子からなる溶射材を該幅広溝を形成する面に
対して溶射角度の低い斜め方向に溶射し溶融温度の低い
溶射粒子で形成された材質の割合が多い下方溶射層を形
成する第1溶射工程と該下方溶射層の上に該第1溶射工
程より溶射角度の高い方向に溶射し該下方溶射層より溶
融温度の低い溶射粒子で形成された材質の割合が少ない
上方溶射層を形成する第2溶射工程と該上方溶射層内に
該リング溝を形成するリング溝形成工程とからなること
を特徴とするピストンの製造方法。
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