JPH111014A - サーマルヘッド - Google Patents

サーマルヘッド

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JPH111014A
JPH111014A JP10623698A JP10623698A JPH111014A JP H111014 A JPH111014 A JP H111014A JP 10623698 A JP10623698 A JP 10623698A JP 10623698 A JP10623698 A JP 10623698A JP H111014 A JPH111014 A JP H111014A
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JP
Japan
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heat
protective film
thermal head
carbon
recording
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JP10623698A
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English (en)
Inventor
Junichi Yoneda
純一 米田
Makoto Kashiwatani
誠 柏谷
Tonpei Noshita
敦平 埜下
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】使用に伴う、発熱素子の抵抗値変化や保護膜の
摩耗劣化が少なく、長期に渡って、高画質な感熱記録画
像を安定して記録することができるサーマルヘッドを提
供する。 【解決手段】加熱履歴を与えられることにより抵抗値を
あらかじめ所定値だけ変化させられた発熱素子と、前記
加熱履歴の付与後に形成された、炭素を主成分とする保
護膜とを有することにより、前記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種のプリンタ、
プロッタ、ファックス、レコーダ等に記録手段として用
いられる感熱記録を行うためのサーマルヘッドの技術分
野に属する。
【0002】
【従来の技術】超音波診断画像の記録に、フィルム等を
支持体として感熱記録層を形成してなる感熱材料を用い
た感熱記録が利用されている。また、感熱記録は、湿式
の現像処理が不要であり、取り扱いが簡単である等の利
点を有することから、近年では、超音波診断のような小
型の画像記録のみならず、CT診断、MRI診断、X線
診断等の大型かつ高画質な画像が要求される用途におい
て、医療診断のための画像記録への利用も検討されてい
る。
【0003】周知のように、感熱記録は、感熱材料の感
熱記録層を加熱して画像を記録する、発熱抵抗体と電極
とを有する発熱素子が一方向(主走査方向)に配列され
てなる発熱体(グレーズ)が形成されたサーマルヘッド
を用い、グレーズを感熱材料(感熱記録層)に若干押圧
した状態で、両者を前記主走査方向と直交する副走査方
向に相対的に移動しつつ、MRIやCT等の画像データ
供給源から供給された記録画像の画像データに応じて、
グレーズの各画素の発熱素子にエネルギーを印加して発
熱させることにより、感熱材料の感熱記録層を加熱して
発色させて画像記録を行う。
【0004】感熱記録画像において、記録画像の濃度ム
ラは、仕上り画像の品質低下を招き、高画質な画像記録
を要求される用途では、大きな問題となる。特に、前述
のような医療用途では高画質の画像が要求され、しか
も、濃度ムラは画像観察の障害となり、診断のミスにも
つながる重大な問題となる。そのため、このようなサー
マルヘッドには、経時的な劣化が少なく、濃度ムラ等の
ない高画質な感熱記録画像を長期に渡って記録できるこ
とが要求される。ここで、サーマルヘッドの経時劣化の
大きな原因として、発熱による発熱素子の特性変化、お
よびグレーズの摩耗や腐食(腐食摩耗)が挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】サーマルヘッドの発熱
素子は、通常、発熱抵抗体や発熱抵抗体に通電する一対
の電極等を有して構成されるが、発熱素子の抵抗値は、
発熱時間および発熱エネルギーに応じて変化し、例え
ば、抵抗値が低下するに応じて発熱量は大きくなり、抵
抗値が下がった分だけ供給エネルギーに対する発熱素子
の温度が増加して、画像濃度が高くなってしまう。感熱
記録装置に装着されたサーマルヘッドの各発熱素子の加
熱履歴(行った画像記録に対してどの程度の割合で発熱
したか=総発熱量)は、当然それぞれの発熱素子で異な
るので、抵抗値の変化量も各発熱素子毎に異なる。その
ため、画像記録を行うに従って、各発熱素子の抵抗値変
化量に差が生じ、この差に応じて、記録画像に濃度ムラ
が生じてしまう。
【0006】一方、前述のように、サーマルヘッドはグ
レーズを感熱材料に押圧して、両者を相対的に移動しつ
つ、記録を行う。そのため、サーマルヘッドには、発熱
素子等を保護するため、グレーズの表面に保護膜が形成
されている。従って、感熱記録時に感熱材料と接触する
のは、この保護膜で、発熱体は、この保護膜を介して感
熱材料を加熱し、これにより感熱記録が行われる。保護
膜の材料には、通常、耐摩耗性を有するセラミック等が
用いられているが、保護膜の表面は、感熱記録時には加
熱された状態で感熱材料と慴接するため、記録を重ねる
にしたがって摩耗劣化する。
【0007】保護膜の摩耗が進行すると、感熱画像に濃
度ムラが生じると共に、保護膜としての強度が保てなく
なるため、発熱体等を保護する機能が損なわれ、最終的
には、画像記録ができなくなる状態に陥る(ヘッド切
れ)。特に、前述の医療用途のように、高品質で、かつ
高画質な多階調画像が要求される用途においては、ポリ
エステルフィルム等の高剛性の支持体を使用する感熱フ
ィルムを用い、さらに、記録温度やサーマルヘッドの押
圧力を高く設定する方向にあるため、通常よりもサーマ
ルヘッドの保護膜にかかる力や熱が大きく、摩耗や腐食
(腐食による摩耗)が進行し易くなっている。
【0008】このようなサーマルヘッドの保護膜の摩耗
を防止し、耐久性を向上する方法として、保護膜の性能
を向上する技術が数多く検討されており、中でも特に、
耐摩耗性や耐蝕性に優れた保護膜として、炭素を主成分
とする保護膜(以下、カーボン保護膜とする)が知られ
ている。例えば、特公昭61−53955号公報には、
保護膜として、ビッカーズ硬度が4500kg/mm2以上の
カーボン保護膜を有することにより、優れた耐摩耗性と
共に、保護膜を十分に薄くして優れた応答性も実現した
サーマルヘッドが開示されている。また、特開平7−1
32628号公報には、下層のシリコン系化合物層と、
その上層のダイヤモンドライクカーボン層との2層構造
の保護膜を有することにより、保護膜の摩耗および破壊
を大幅に低減し、高画質記録が長期に渡って可能なサー
マルヘッドが開示されている。
【0009】このようなカーボン保護膜は、非常に硬度
が高く、また、化学的にも安定である。そのため、感熱
材料との摺接に対する耐摩耗性や耐蝕性という点では優
れた特性を発揮する。しかしながら、これらのカーボン
保護膜を有するだけでは、前述の発熱素子の抵抗値の経
時変化による記録ムラは解決できない。また、経時的な
劣化が少なく、高画質な感熱記録画像を長期に渡って記
録するためには、カーボン保護膜の性状が良好であるこ
とも重要である。
【0010】本発明の目的は、使用に伴う、発熱素子の
抵抗値変化や保護膜の摩耗劣化が少なく、長期に渡っ
て、高画質な感熱記録画像を安定して記録することがで
きるサーマルヘッドを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明のサーマルヘッドは、加熱履歴を与えられる
ことにより抵抗値をあらかじめ所定値だけ変化させられ
た発熱素子と、前記発熱素子に前記加熱履歴を与えた後
に形成された、炭素を主成分とする保護膜とを有するこ
とを特徴とするサーマルヘッドを提供する。
【0012】また、前記炭素を主成分とする保護膜の発
熱素子側に、下層保護膜として、セラミックを主成分と
する保護膜を少なくとも1層有するのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明のサーマルヘッドに
ついて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に
説明する。
【0014】図1に、本発明のサーマルヘッドを利用す
る感熱記録装置の一例の概略図が示される。図1に示さ
れる感熱記録装置(以下、記録装置とする)10は、例
えばB4サイズ等の所定のサイズのカットシートである
感熱材料(以下、感熱材料Aとする)に感熱記録を行う
ものであり、感熱材料Aが収容されたマガジン24が装
填される装填部14、供給搬送部16、サーマルヘッド
66によって感熱材料Aに感熱記録を行う記録部20、
および排出部22を有して構成される。
【0015】このような記録装置10においては、マガ
ジン24から感熱材料Aを1枚引き出し、記録部20ま
で感熱材料Aを搬送して、サーマルヘッド66を感熱材
料Aに押圧しつつ、発熱体(グレーズ)の延在方向すな
わち主走査方向(図1および図2において紙面と垂直方
向)と直交する副走査方向に感熱材料Aを搬送して、記
録画像(画像データ)に応じて各発熱素子を発熱するこ
とにより、感熱材料Aに感熱記録を行う。
【0016】感熱材料Aは、透明なポリエチレンテレフ
タレート(PET)フィルムなどの樹脂フィルムや紙等
を支持体として、その一面に感熱記録層を形成してなる
ものである。このような感熱材料Aは、100枚等の所
定単位の積層体(束)とされて袋体や帯等で包装されて
おり、図示例においては、所定単位の束のまま感熱記録
層を下面として記録装置10のマガジン24に収納さ
れ、一枚づつマガジン24から取り出されて感熱記録に
供される。
【0017】マガジン24は、開閉自在な蓋体26を有
する筐体であり、感熱材料Aを収納して記録装置10の
装填部14に装填される。装填部14は、記録装置10
のハウジング28に形成された挿入口30、案内板32
および案内ロール34,34、停止部材36を有してい
る。マガジン24は、蓋体26側を先にして挿入口30
から記録装置10内に挿入され、案内板32および案内
ロール34に案内されつつ、停止部材36に当接する位
置まで押し込まれることにより、記録装置10の所定の
位置に装填される。また、装填部14には、マガジンの
蓋体26を開閉するための、図示しない開閉機構が設け
られている。
【0018】供給搬送手段16は、装填部14に装填さ
れたマガジン24から感熱材料Aを1枚取り出して、記
録部20に搬送するものであり、吸引によって感熱材料
Aを吸着する吸盤40を用いる枚葉機構、搬送手段4
2、搬送ガイド44、および搬送ガイド44の出口に位
置する規制ローラ対52を有する。搬送手段42は、搬
送ローラ46と、この搬送ローラ46と同軸のプーリ4
7a、回転駆動源に接続されるプーリ47bならびにテ
ンションプーリ47cと、この3つのプーリに張架され
るエンドレスベルト48と、搬送ローラ46とローラ対
を成すニップローラ50とを有して構成され、吸盤40
によって枚葉された感熱材料Aの先端を搬送ローラ46
とニップローラ50とによって挟持して、感熱材料Aを
搬送する。
【0019】記録装置10において記録開始の指示が出
されると、前記開閉機構によって蓋体26が開放され、
吸盤40を用いた枚葉機構がマガジン24から感熱材料
Aを一枚取り出し、感熱材料Aの先端を搬送手段42
(搬送ローラ46とニップローラ50とから成るローラ
対)に供給する。このローラ対に感熱材料Aが挟持され
ると、吸盤40による吸引は開放され、感熱材料Aは、
搬送ガイド44によって案内されつつ搬送手段42によ
って規制ローラ対52に搬送される。なお、記録に供さ
れる感熱材料Aがマガジン24から完全に排出された時
点で、前記開閉手段によって蓋体26が閉塞される。
【0020】搬送ガイド44による搬送手段42から規
制ローラ対52までの距離は、感熱材料Aの搬送方向の
長さより若干短く設定されている。搬送手段42による
搬送で感熱材料Aの先端が規制ローラ対52に至るが、
規制ローラ対52は最初は停止しており、感熱材料Aの
先端はここで一旦停止して位置決めされる。この感熱材
料Aの先端が規制ローラ対52に至った時点で、サーマ
ルヘッド66(グレーズ)の温度が確認され、サーマル
ヘッド66の温度が所定温度であれば、規制ローラ対5
2による感熱材料Aの搬送が開始され、感熱材料Aは、
記録部20に搬送される。
【0021】記録部20は、サーマルヘッド66、プラ
テンローラ60、クリーニングローラ対56、ガイド5
8、サーマルヘッド66を冷却するヒートシンク67、
冷却ファン76およびガイド62を有する。サーマルヘ
ッド66は、例えば、最大半切サイズまでの画像記録が
可能な、約300dpiの記録(画素)密度の感熱記録
を行うもので、感熱材料Aへの感熱記録を行う発熱素子
が一方向(主走査方向)に配列されるグレーズ(発熱
体)が形成されてなるものである。このサーマルヘッド
66には、冷却のためのヒートシンク67が固定され
る。また、サーマルヘッド66は、支点68aを中心に
回動自在な支持部材68に支持されている。このサーマ
ルヘッド66のグレーズについては、後に詳述する。な
お、本発明のサーマルヘッド66の幅(主走査方向)、
解像度(記録密度)、記録階調等には特に限定は無い
が、幅は5cm〜50cm、解像度は6dot/mm(約150d
pi)以上、記録階調は256階調以上であるのが好ま
しい。
【0022】プラテンローラ60は、感熱材料Aを所定
位置に保持しつつ所定の画像記録速度で図中の矢印方向
に回転し、主走査方向と直交する副走査方向(図2中の
矢印X方向)に感熱材料Aを搬送する。クリーニングロ
ーラ対56は、弾性体である粘着ゴムローラ(図中上
側)と、通常のローラとからなるローラ対であり、粘着
ゴムローラが感熱材料Aの感熱記録層に付着したゴミ等
を除去して、グレーズへのゴミの付着や、ゴミが画像記
録に悪影響を与えることを防止する。
【0023】図示例の記録装置10において、感熱材料
Aが搬送される前は、支持部材68は上方に回動して、
サーマルヘッド66のグレーズとプラテンローラ60と
が接触する直前の待機位置となっている。前述の規制ロ
ーラ対52による搬送が開始されると、感熱材料Aは、
次いでクリーニングローラ対56に挟持され、さらに、
ガイド58によって案内されつつ搬送される。感熱材料
Aの先端が記録開始位置(グレーズに対応する位置)に
搬送されると、支持部材68が下方に回動して、グレー
ズとプラテンローラ60とで感熱材料Aが挟持されて、
記録層にグレーズが押圧された状態となり、感熱材料A
はプラテンローラ60によって所定位置に保持されつ
つ、プラテンローラ60等によって副走査搬送される。
この搬送に伴い、グレーズの各発熱素子を記録画像に応
じて加熱することにより、感熱材料Aに感熱記録が行わ
れる。
【0024】感熱記録が終了した感熱材料Aは、ガイド
62に案内されつつ、プラテンローラ60および搬送ロ
ーラ対63に搬送されて排出部22のトレイ72に排出
される。トレイ72は、ハウジング28に形成された排
出口74を経て記録装置10の外部に突出しており、画
像が記録された感熱材料Aは、この排出口74を経て外
部に排出され、取り出される。
【0025】図2に、サーマルヘッド66のグレーズ
(発熱体)の概略断面図を示す。図示例において、グレ
ーズは、基板80の上(図示例のサーマルヘッド66
は、上から感熱材料Aに押圧されるので、図2中では下
となる)に形成されるグレーズ層(畜熱層)82、その
上に形成される発熱抵抗体84、その上に形成される電
極86、およびその上に形成される保護膜等を有して構
成される。図示例においては、好ましい態様として保護
膜が2層構成を有するもので、発熱抵抗体84および電
極86(発熱素子)を覆って形成される、セラミックを
主成分とする下層保護膜88と、下層保護膜88の上に
上層保護膜として形成される、炭素を主成分とする保護
膜、例えばカーボン保護膜90(好ましくは、DLC保
護膜=Diamond Like Carbon 保護膜)とから保護膜が構
成される。
【0026】本発明に用いられるサーマルヘッド66
は、発熱素子がカーボン保護膜90の形成前に加熱履歴
が与えられてなるものであること、およびカーボン保護
膜90を有すること以外は、基本的に公知のサーマルヘ
ッドと同様の構成を有するものである。従って、それ以
外の層構成や各層の材料には特に限定はなく、公知のも
のが各種利用可能である。具体的には、基板80として
は耐熱ガラスやアルミナ、シリカ、マグネシアなどのセ
ラミックス等の電気絶縁性材料が、グレーズ層82とし
ては耐熱ガラスやポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂等が、
各種利用可能である。さらに、発熱抵抗体84および電
極86も、材料等に限定はなく、公知のサーマルヘッド
に用いられるものが各種利用可能である。具体的には、
発熱抵抗体84としては、例えば、ニクロム(Ni-Cr)、
タンタル、窒化タンタル、酸化ルテニウム、ポリシリコ
ン等の発熱抵抗体が例示され、電極86としてはアルミ
ニウム、金、銀、銅等の導電性材料が、各種利用可能で
ある。
【0027】ところで、前述のように、サーマルヘッド
の発熱素子は、加熱履歴に応じてその抵抗値が変化する
が、感熱記録装置に装着されたサーマルヘッドの各発熱
素子毎の加熱履歴は当然それぞれで異なるので、抵抗値
の変化量も各発熱素子毎に異なり、経時と共に発熱素子
の抵抗値変化量に差が生じ、その差に応じて、記録画像
に濃度ムラが生じてしまう。
【0028】図3に、空打ち、すなわち感熱材料Aに記
録を行わないで一定の発熱エネルギー(145mJ/mm2
を供給した際における、サーマルヘッドの発熱素子の抵
抗値の変化と発熱時間との関係の1例のグラフを示す。
なお、記録を行う場合には、感熱材料Aによる放熱効果
によってグレーズの温度がある程度以上には上昇しない
ため、空打ちの場合より抵抗値の変化速度は遅くなる。
図3に示されるように、一定の発熱エネルギーを供給し
た場合、サーマルヘッドの発熱素子の抵抗値変化は、発
熱時間の対数にほぼ比例する。言い換えれば、発熱素子
の抵抗値変化は、初期は大きいが、時間の経過すなわち
総発熱量が増加するに従って指数関数的に減少する。
【0029】従って、未使用のサーマルヘッドの全発熱
素子に一定の発熱エネルギーを所定時間供給する等の方
法で、全発熱素子に所定の、例えば均一な加熱履歴を与
え、予め、発熱素子の抵抗値を所定量、例えば均一な量
だけ変化させておくことにより、それ以降の抵抗値変化
を大幅に減少して、各発熱素子毎の抵抗値変化の差を小
さくすることができる。本発明のサーマルヘッド66
は、全発熱素子(発熱抵抗体84および電極86)に所
定の加熱履歴を与えることにより、予め発熱抵抗体84
をアニールして結晶化させ、全発熱素子に均一の抵抗値
変化を生じさせ、その抵抗値を安定させた発熱素子を有
する。これにより、感熱記録で生じる各発熱素子毎の抵
抗値変化の差を小さくし、濃度ムラのない高画質な感熱
画像記録を、長期に渡って安定して行うことができる。
なお、この加熱履歴の付与は、カーボン保護膜90の形
成前に行われる。
【0030】本発明の記録装置10において、サーマル
ヘッド66の各発熱素子に予め与える抵抗値の変化量
(加熱履歴量)には特に限定はなく、ユーザの使用によ
って生じ得る抵抗値の変化量が、記録装置10が目的と
する寿命まで所定画質の画像が確保できる所定範囲とな
るように、例えば、図3のグラフ等を用いて決定すれば
よい。言い換えれば、濃度ムラになる抵抗変化量と所定
画質を維持したい時間との関係から、予め与える抵抗値
の変化量、すなわち発熱エネルギーとそれを与える時間
とを決定すればよい。なお、サーマルヘッド66の各発
熱素子の抵抗値を予め変化させることは、サーマルヘッ
ドの劣化にもつながるので、変化量は、これを加味して
決定する必要がある。
【0031】通常、発熱素子の抵抗値変化は最大でも3
〜5%程度であるので、使用による抵抗値の安定性と劣
化とのバランス、後述する生産性や生産効率等を考慮す
ると、発熱素子に予め与える抵抗値の変化は、0.1%
〜5%、特に、0.5%〜2%とするのが好ましい。
【0032】サーマルヘッド66の発熱素子に抵抗値変
化を生じさせるための加熱履歴を与える際のサーマルヘ
ッドの温度(表面温度)、例えば、加熱履歴を与えるた
めの前記空打ちで供給する発熱エネルギーには特に限定
はない。しかしながら、この際のサーマルヘッドの温度
が低いと、感熱記録で生じる抵抗値変化の低減効果を十
分に発現できるだけの抵抗値変化を生じさせるまでに非
常に長い時間がかかり、生産性や生産効率等の点で極め
て不利であり、また、現実的ではない。ただし、加熱履
歴を付与する際の温度の上限は、使用するサーマルヘッ
ドの耐熱温度に応じる。また、その際の加熱履歴を与え
る時間は、サーマルヘッドの温度(これを実現する発熱
エネルギー)と目的とする抵抗値変化量とに応じて、前
述した図3に示すような抵抗値変化と発熱時間との関係
のグラフ等を作成して決定すればよい。
【0033】サーマルヘッドのグレーズには、一般的
に、真空蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition) 、
スパッタリング等のいわゆる薄膜形成技術およびフォト
エッチング法を用いて形成される薄膜型発熱素子と、ス
クリーン印刷などの印刷ならびに焼成によるいわゆる厚
膜形成技術およびエッチングを用いて形成される厚膜型
発熱素子とが知られているが、本発明に用いられるサー
マルヘッド66は、いずれの方法で形成されたものであ
ってもよい。
【0034】前述のように、図示例のサーマルヘッド6
6は、好ましい態様として、カーボン保護膜90と下層
保護膜88の2層構成の保護膜を有する。このような下
層保護膜を有することにより、耐摩耗性、耐蝕性、耐腐
食摩耗性等の点でより好ましい結果を得ることができ、
より耐久性が高く、長寿命のサーマルヘッドを実現でき
る。本発明のサーマルヘッド66に形成される下層保護
膜88としては、サーマルヘッドの保護膜と成り得る耐
熱性、耐蝕性および耐摩耗性を有するものであれば、公
知のものが各種利用可能であるが、好ましくは、セラミ
ックスを主成分とする下層保護膜88が例示される。
【0035】具体的には、窒化珪素(Si3N4) 、炭化珪素
(SiC) 、酸化タンタル(Ta2O5) 、酸化アルミニウム(Al2
O3) 、サイアロン(SiAlON)、ラシオン(LaSiON)、酸化珪
素(SiO2)、窒化アルミニウム(AlN) 、窒化ホウ素(BN)、
酸化セレン(SeO) 、窒化チタン(TiN) 、炭化チタン(Ti
C) 、炭窒化チタン(TiCN)、窒化クロム(CrN) 、および
これらの混合物等が例示される。中でも特に、成膜の容
易性や製造コストなどの製造適正、機械的摩耗と化学的
摩耗による摩耗のバランス等の点で、窒化珪素、炭化珪
素、サイアロン等は好適に利用される。また、下層保護
膜には、物性調整のため、後述する半金属や金属等の微
量の添加物が含まれてもよい。下層保護膜88の形成方
法には特に限定はなく、前述の厚膜形成技術や薄膜形成
技術等を用いて、公知のセラミックス膜(層)の形成方
法で形成される。
【0036】下層保護膜88の厚さには特に限定はない
が、好ましくは0.5μm〜50μm程度、より好まし
くは2μm〜20μm程度である。下層保護膜88の厚
さを上記範囲とすることにより、耐摩耗性と熱伝導性
(すなわち記録感度)とのバランスを好適に取ることが
できる等の点で好ましい結果を得る。また、下層保護膜
88は多層構成でもよい。下層保護膜88を多層構成と
する際には、異なる材料を用いて多層構成としてもよ
く、あるいは、同じ材料で密度等の異なる層を有する多
層構成であってもよく、あるいは、その両者を有するも
のであってもよい。
【0037】なお、本発明のサーマルヘッドは、このよ
うな下層保護膜88を有するものに限定はされず、保護
膜が、後述するカーボン保護膜90のみの一層構成であ
ってもよい。
【0038】本発明のサーマルヘッド66は、発熱抵抗
体84等を保護する保護膜として、カーボン保護膜90
を有する。なお、図示例のサーマルヘッド66において
は、炭素を主成分とする保護膜として、カーボン(DL
C)保護膜90を用いているが、本発明においてはこれ
に限定されず、炭素を主成分とする保護膜は、50at
m%超の炭素を含有するカーボン保護膜であれば良く、
好ましくは炭素および不可避的不純物からなるカーボン
保護膜、さらに好ましくは不可避的不純物の含有量が極
めて少ないまたは全く含まない高純度のカーボン保護
膜、例えばDLC保護膜が良い。ここで、不可避的不純
物としては、アルゴン(Ar)などのようにプロセスに
使用するガスや酸素のように真空チャンバー内の残ガス
などが挙げられるが、これらのガス成分の混入はできる
だけ少ないほうが好ましく、2atm%以下とするのが
よく、より好ましくは0.5atm%以下とするのが良
い。
【0039】本発明において、炭素を主成分とするカー
ボン保護膜を形成する炭素以外の添加成分としては、水
素、窒素、フッ素などの物質や、Si、Ti、Zr、H
f、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wなどの半金属や金
属が好適に例示される。添加成分が水素、窒素およびフ
ッ素などの物質である場合には、炭素を主成分とするカ
ーボン保護膜中のこれらの含有量が50atm%未満で
あるのが好ましく、添加成分が上述したSiおよびTi
等の半金属や金属である場合には、炭素を主成分とする
カーボン保護膜中のこれらの含有量が20atm%以下
であるのが好ましい。以下の説明では、炭素を主成分と
する保護膜として、カーボン保護膜90を代表例として
説明するが、その説明はその他の炭素を主成分とする保
護膜にも適用可能であることはいうまでもないことであ
る。
【0040】カーボン保護膜90は、非常に硬度が高
く、また、化学的にも安定であるため、これを有するこ
とにより、感熱記録による保護膜の摩耗や腐食摩耗を好
適に防止して、長期に渡って高い信頼性を有するサーマ
ルヘッド66を実現できる。ここで、本発明のサーマル
ヘッド66においては、このカーボン保護膜90は、発
熱素子に前述の加熱履歴を与えた後に形成されたもので
ある。
【0041】前述のように、本発明のサーマルヘッド6
6は、全発熱素子に加熱履歴を与えて、あらかじめ抵抗
値変化を生じさせることにより、感熱記録による抵抗値
変化を低減した発熱素子を有するものである。このよう
な操作は、通常、サーマルヘッドが完成した後に行われ
る。しかしながら、本発明者らの検討によれば、このよ
うな高温で加熱履歴を与えると、カーボン保護膜90の
変質や部分的な脱離が生じてしまい、適正な感熱記録が
できなくなってしまう。
【0042】これに対し、本発明のサーマルヘッド66
は、前記発熱素子への加熱履歴の付与後に形成されたカ
ーボン保護膜90を有することにより、変質や部分的な
脱離のない良好かつ適正な性状で、かつ耐摩耗性や化学
的安定性に優れた保護膜によって、長期に渡って高い信
頼性を有するサーマルヘッド66を実現している。しか
も、加熱履歴の付与された発熱素子を有することにより
抵抗値変化による濃度ムラも極めて少ないのは前述のと
おりである。なお、前述の下層保護膜88の形成は、前
記発熱素子に加熱履歴を与える前でも後でもよい。
【0043】本発明のサーマルヘッド66において、カ
ーボン保護膜90の硬度は高いほど良好であり、サーマ
ルヘッドの保護膜として十分な硬度を有すればよいが、
好ましくはピッカーズ硬度で2000kg/mm2以上、より
好ましくは2500kg/mm2以上、特に好ましくは300
0kg/mm2以上である。カーボン保護膜90の硬度を上記
範囲とすることにより、耐摩耗性等の点で好ましい結果
を得ることができる。
【0044】さらに、カーボン保護膜90の厚さにも特
に限定はなく、図示例のように、下層保護膜88を有す
る場合には、好ましくは、0.1μm〜5μm、より好
ましくは、1μm〜3μmである。また、下層保護膜8
8を有さない場合には、好ましくは、1μm〜20μ
m、より好ましくは、2μm〜10μmである。カーボ
ン保護膜90の厚さを上記範囲とすることにより、耐摩
耗性と熱伝導性とのバランス等の点で、好ましい結果を
得ることができる。
【0045】このようなカーボン保護膜90の形成方法
には特に限定はなく、公知の厚膜形成技術や薄膜形成技
術で形成されるが、好ましくは、炭化水素ガスを反応ガ
スとして用いるプラズマCVDによって硬質カーボン膜
を形成する方法、および焼結カーボン材やグラッシーカ
ーボン材等のカーボン材をターゲット材とするスパッタ
リングによって硬質カーボン膜を形成する方法が例示さ
れる。
【0046】図4に、カーボン保護膜90を形成する
(プラズマ)CVD装置の概念図を示す。CVD装置1
00は、基本的に、真空チャンバ102と、ガス導入部
104と、プラズマ発生手段106と、基板ホルダ10
8と、基板バイアス電源110とを有して構成される。
【0047】真空チャンバ102は、プラズマ発生用の
磁場が影響を受けないようにSUS304等の非磁性材
料で形成されるのが好ましい。また、カーボン保護膜9
0を形成に用いられる真空チャンバ102は、排気手段
を有し、かつ、初期排気の到達圧力で2×10-5Torr以
下、好ましくは5×10-6Torr以下、さらに、成膜中は
1×10-4Torr〜1×10-2Torrを達成するシール性を
有するのが好ましい。真空チャンバ102に取り付けら
れる排気手段112としては、ロータリーポンプ、メカ
ニカルブースタポンプ、ターボポンプを組み合わせた排
気手段が好適に例示され、また、ターボポンプの代わり
にディフュージョンポンプやクライオポンプを用いた排
気手段も好適に利用される。排気手段112の排気能力
や台数は、真空チャンバ102の容積や成膜に使用する
ガスの種類や流量等に応じて適宜選択すればよい。ま
た、排気速度を調整するために、バイパス配管を用いた
配管の排気抵抗の調整や、オリフィスバルブを設けてそ
の開口度調整等の方法で、排気速度を調整可能なように
構成してもよい。
【0048】真空チャンバ102において、プラズマや
プラズマ発生用の電磁波によってアークが発生する箇所
は、絶縁性部材で覆ってもよい。絶縁性部材としては、
MCナイロン、テフロン(PTFE)、PPS(ポリフ
ェニレンスルフィド)、PEN(ポリエチレンナフタレ
ート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等が利
用可能である。なお、PENやPET等を用いる場合に
は、絶縁性部材からの脱ガスで真空度を低下する場合が
あるので、このような材料を用いる場合には、注意が必
要である。
【0049】CVD装置100は、2つのガス導入部1
04を有する。ガス導入部104aは、プラズマ発生用
のガスを導入する部位で、他方、ガス導入部104b
は、反応ガスを導入する部位で、共に、導入部がOリン
グ等で真空シールされたステンレス製のパイプ等を用い
て、真空チャンバ102内にガスを導入する。また、ガ
スの導入量は、マスフローコントローラ等の公知の方法
で制御される。両ガス導入部104は、基本的にガスを
真空チャンバ102内のプラズマ発生領域の近傍に拭き
出すように構成される。また、吹き出し位置、特に反応
ガスのガス導入部104bの吹き出し位置は、膜厚分布
にも影響するので、基板(サーマルヘッド66のグレー
ズ)の形状等に合わせて最適化するのが好ましい。
【0050】カーボン保護膜90を形成するためのプラ
ズマ発生用のガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオ
ン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスが
用いられるが、中でも特に、価格および入手の容易性の
点で、アルゴンガスが好適に用いられる。他方、カーボ
ン保護膜90を形成するための反応ガスとしては、メタ
ン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、ベンゼ
ン等の炭化水素化合物のガスが例示される。なお、ガス
導入部104aおよびガス導入部104bは、共に、用
いるガスに応じてマスフローコントローラのセンサを調
整(校正)する必要がある。
【0051】カーボン保護膜90(カーボン保護膜9
0)を形成するプラズマCVDにおいて、プラズマ発生
手段としては、直流グロー放電、高周波放電、直流アー
ク放電、マイクロ波ECR放電等が利用可能であり、特
に、直流アーク放電およびマイクロ波ECR放電はプラ
ズマ密度が高く、高速成膜に有利である。図示例のCV
D装置100は、マイクロ波ECR放電を利用するもの
であり、プラズマ発生手段106は、マイクロ波電源1
14、磁石116、マイクロ波導波管118、同軸変換
器120、誘電体板122、放射状アンテナ124等を
有して構成される。
【0052】直流グロー放電は、基板−電極間に負の直
流電圧を印加することによりプラズマを発生させる。直
流グロー放電に用いる直流電源は、1kW〜10kW程
度のもので、カーボン保護膜90の形成に必要にして十
分な出力を有するものを適宜選択すればよい。また、ア
ーク防止等の点で、2kHz〜20kHzにパルス変調
した直流電源も好適に利用可能である。高周波放電は、
マッチングボックスを介して電極に高周波電圧を印加す
ることにより、プラズマを発生させる。その際には、マ
ッチングボックスによってインピーダンス整合を行い、
高周波電圧の反射波が入射波に対して25%以下となる
ように調整する。高周波放電を行う高周波電源として
は、工業用の13.56MHzで、1kW〜10kW程
度の範囲で、カーボン保護膜90の形成に必要にして十
分な出力を有するものを適宜選択すればよい。また、パ
ルス変調した高周波電源も使用可能である。
【0053】直流アーク放電は、熱陰極を使用してプラ
ズマを発生させる。熱陰極としては、タングステン、ホ
ウ化ランタン(LaB6)等が利用可能である。また、ホロ
ーカソードを用いた直流アーク放電も利用可能である。
直流アーク放電に用いる直流電源としては、1kW〜1
0kW程度、10A〜200A程度の範囲で、カーボン
保護膜90の形成に必要にして十分な出力を有するもの
を適宜選択すればよい。
【0054】マイクロ波ECR放電は、マイクロ波とE
CR磁場とによってプラズマを発生させるものであり、
前述のように、図示例のCVD装置100は、このマイ
クロ波放電によってプラズマを発生させる。マイクロ波
電源114としては、工業用の2.45GHzで、1k
W〜3kW程度の範囲で、カーボン保護膜90の形成に
必要にして十分な出力を有するものを適宜選択すればよ
い。また、ECR磁場発生には、所望の磁場を形成でき
る永久磁石や電磁石を適宜用いればよく、図示例におい
ては、Sm-Co 磁石を磁石116として用いている。例え
ば、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合には、E
CR磁場は875G(Gauss) になるので、プラズマ発生
領域の磁場が500G〜2000Gとなる磁石を用いれ
ばよい。真空チャンバ102内へのマイクロ波の導入
は、マイクロ波導波管118、同軸変換器120、誘電
体板122等を用いて行われる。なお、磁場の形成状態
やマイクロ波の導入路は、カーボン保護膜90の膜厚分
布に影響を与えるので、カーボン保護膜90の膜厚が均
一になるように最適化するのが好ましい。
【0055】基板ホルダ108は、クランプや治具等の
公知の固定手段によって、ヒートシンク67を有するサ
ーマルヘッド66、ヒートシンク67を有さないサーマ
ルヘッド66、サーマルヘッド66から取り外されたグ
レーズを含む部位等を保持して、成膜の基板となるグレ
ーズを放射状アンテナ124に対向して固定するもので
ある。また、必要に応じて、プラズマ発生手段106に
対して、グレーズを回転や移動可能に構成してもよい。
基板(グレーズ表面)と放射状アンテナ124(プラズ
マ発生部)との距離には特に限定はなく、20mm〜20
0mm程度の範囲で、膜厚分布が均一になる距離を選択設
定すればよい。なお、カーボン保護膜90を形成する際
には、必要に応じて成膜領域を規制するためのマスクを
用いてもよい。この際には、例えば、SUS304やア
ルミニウム等の金属やテフロン等の樹脂からなる板状の
マスク部材を作製し、これを用いて非成膜部をマスキン
グすればよい。
【0056】プラズマCVDでカーボン膜を得るために
は、基板に負のバイアス電圧を印加しながら成膜を行う
必要がある。基板バイアス電源110は、このバイアス
電圧を印加するためのものである。特に限定はないが、
カーボン保護膜90は電気抵抗値が高いため、高周波電
圧の自己バイアス電圧を使用するのが好ましい。自己バ
イアス電圧は、プラズマ中で高周波電圧を印加した時に
生じる負の直流成分で、カーボン膜の生成の際には、通
常、−100V〜−500V程度が用いられる。高周波
電源は工業用の13.56MHzで、1kW〜5kW程
度のものから適宜選択すればよい。また、高周波電圧を
基板に印加する際には、基板と高周波電源との間にイン
ピーダンスを整合するマッチングボックスを使用するの
が好ましい。マッチングボックスは、手動制御でも自動
制御でもよく、既製品が各種利用可能である。さらに、
高周波電圧の自己バイアス電圧以外にも、2kHz〜2
0kHzにパルス変調した直流電源も利用可能である。
この場合も、印加電圧は−100V〜−500V程度で
ある。
【0057】本発明においては、カーボン保護膜90の
密着性を良好にするために、カーボン保護膜90の形成
に先立ち、基板(グレーズ)の表面すなわち図示例にお
いては下層保護膜88の表面をプラズマでエッチングす
るのが好ましい。エッチングの方法としては、前記プラ
ズマ発生手段106によってプラズマを発生しつつ、マ
ッチングボックスを介して高周波電圧を印加する方法
や、高周波電圧によって直接プラズマを発生させて、そ
のプラズマを利用してエッチングを行う方法が例示され
る。高周波電源としては、工業用の13.56MHz
で、1kW〜5kW程度のものから適宜選択すればよ
い。また、エッチングの強さは、基板に印加されるバイ
アス電圧を目安にすればよく、−100V〜−500V
の範囲で、適宜最適化を計ればよい。
【0058】図5に、カーボン保護膜90を形成するた
めのスパッタリング装置の概念図を示す。スパッタリン
グ装置130は、基本的に、真空チャンバ132と、ガ
ス導入部134と、スパッタリング手段136と、基板
ホルダ138とを有して構成される。
【0059】カーボン保護膜を形成するスパッタリング
を行うための真空チャンバ132、これに取り付けられ
る排気手段140、さらには排気速度の調整手段として
は、基本的に、前記CVD装置100と同様のものや構
成が好適に例示される。
【0060】ガス導入部134は、プラズマを発生する
ためのガスを導入するもので、前記ガス導入部104と
同様、Oリング等で真空シールされたステンレス製のパ
イプ等を用いて、導入量をマスフローコントローラ等の
公知の方法で制御して、真空チャンバ132内にガスを
導入する。なお、ガスは真空チャンバ132内のプラズ
マ発生領域の近傍に拭き出すように構成される。また、
吹き出し位置は、発生するプラズマの分布に影響を与え
ないように最適化するのが好ましい。カーボン保護膜9
0を作製するためのプラズマ発生用のガスとしては、例
えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセ
ノン等の不活性ガスが用いられるが、中でも特に、価格
および入手の容易性の点で、アルゴンガスが好適に用い
られる。
【0061】スパッタリングでは、カソード142にス
パッタリングするターゲット材144を配置し、カソー
ド142を負電位にすると共に、ターゲット材144の
表面にプラズマを発生させることにより、ターゲット材
144(その原子)を弾き出して、対向して配置した基
板の表面(図示例ではサーマルヘッドのグレーズ表面=
下層保護膜88の表面)に付着させ、堆積することによ
り成膜する。スパッタリング手段136は、このカソー
ド142、ターゲット材144の配置部、シャッタ14
6、直流電源152等を有するものである。
【0062】ターゲット材144の表面にプラズマを発
生する際には、直流電源152のマイナス側を直接カソ
ード142に接続し、−300V〜−1000V程度の
直流電圧を印加する。直流電源152の出力としては、
1kW〜10kW程度の範囲であり、カーボン保護膜9
0の形成に十分な出力を有するものを適宜選択すればよ
い。なお、カソード142の形状は、カーボン保護膜9
0が形成される基板の形状等に応じて適宜決定すればよ
い。また、アーク防止等の点で、2kHz〜20kHz
にパルス変調した負の直流電源も好適に利用可能であ
る。また、プラズマの発生には、高周波電源も利用可能
である。高周波電源を用いる場合には、マッチングボッ
クスを介してカソード142に高周波電圧を印加するこ
とにより、プラズマを発生させる。その際には、マッチ
ングボックスによってインピーダンス整合を行い、高周
波電圧の反射波が入射波に対して25%以下となるよう
に調整する。高周波電源としては、工業用の13.56
MHzで、1kW〜10kW程度の範囲で、カーボン保
護膜90の生成に必要にして十分な出力を有するものを
適宜選択すればよい。
【0063】ターゲット材144は、In系ハンダや機
械的な固定手段を用いて直接カソード142に固定して
もよいが、通常は、無酸素銅やステンレス等からなるバ
ッキングプレート154をカソード142に固定し、そ
の上にターゲット材144を前述のようにして張り付け
る。また、カソード142およびバッキングプレート1
54は水冷可能に構成され、これにより、間接的にター
ゲット材144も水冷される。なお、カーボン保護膜9
0を形成するために用いられるターゲット材144とし
ては、焼結カーボン材、グラッシーカーボン材等が好適
に例示される。また、その形状は、基板の形状に応じて
適宜決定すればよい。
【0064】カーボン保護膜90の形成は、カソード1
42の内部に永久磁石や電磁石等の磁石148を配置
し、ターゲット材144表面に磁場を形成してプラズマ
を閉じ込めてスパッタリングを行うマグネトロンスパッ
タリングも好適に利用可能である。このマグネトロンス
パッタリングは、成膜速度が早い点で好ましい。永久磁
石や電磁石の形状や位置、数、生成する磁場の強さ等は
形成するカーボン保護膜90の厚さや膜厚分布、ターゲ
ット材144の形状等に応じて適宜決定される。また永
久磁石として Sm-Co磁石や Nd-Fe-B磁石等の高磁場が発
生可能な磁石を用いれば、プラズマを十分閉じ込めるこ
とができる等の点で好ましい。
【0065】基板ホルダ138は、前記CVD装置10
0の基板ホルダ108と基本的に同じものであり、サー
マルヘッド66を固定して、グレーズ82をカソード1
42に対して対向して固定するものである。基板とター
ゲット材144との距離には特に限定はなく、20mm〜
200mm程度の範囲で、膜厚分布が均一になる距離を選
択設定すればよい。
【0066】また、カーボン保護膜90を得るために、
基板(図示例では下層保護膜88)に負のバイアス電圧
を印加しながら成膜を行う。バイアス電源150は、こ
のためのものである。バイアス電圧には特に限定はない
が、前記CDVと同様に、高周波電圧の自己バイアス電
圧を使用するのが好ましい。また、高周波電源として
も、前記CVDと同様のものが利用可能であり、マッチ
ングボックスの使用が好ましいのも同様である。さら
に、高周波電圧の自己バイアス電圧以外にも、2kHz
〜20kHzにパルス変調した直流電源も利用可能であ
る。この場合も、印加電圧は−100V〜−500V程
度である。
【0067】カーボン保護膜90を形成する際には、カ
ーボン保護膜90と下層(下層保護膜88)との密着性
を向上するために、カーボン保護膜90の形成に先立
ち、下層保護膜88の表面をプラズマでエッチングする
のが好ましい。エッチングの方法は、プラズマを発生さ
せ、マッチングボックスを介して基板に高周波電圧を印
加する方法や、高周波電圧によって直接プラズマを発生
させて、そのプラズマを利用する方法が例示される。プ
ラズマの発生や高周波電源は、前述のものを利用すれば
よい。また、エッチングの強さは、基板に印加されるバ
イアス電圧を目安にすればよく、通常、−100V〜−
500Vの範囲で、適宜最適化を図ればよい。
【0068】以上、本発明のサーマルヘッドについて詳
細に説明したが、本発明は上述の例に限定されず、各種
の改良や変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0069】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明
をより詳細に説明する。 [実施例1] <加熱履歴の付与>基となるサーマルヘッドとして、京
セラ社製 KGT-260-12MPH8を用いた。このサーマルヘッ
ドには、グレーズの表面に保護膜として厚さ11μmの
窒化珪素膜(Si3N4)が形成されている。従って、本実施
例では、この窒化珪素膜が下層保護膜88となる。この
サーマルヘッドの全発熱素子に、145mJ/mm2の発熱エ
ネルギーを90分、連続的に供給し、全発熱素子に加熱
履歴を与えた。この加熱履歴によって、サーマルヘッド
の発熱素子の抵抗値は、全発熱素子の平均で約1.5%
減少した。
【0070】このようにして加熱履歴を与えたサーマル
ヘッドのグレーズ表面に、図4に示される(プラズマ)
CVD装置100を用いてカーボン保護膜90を形成
し、図2に示されるグレーズを有する本発明のサーマル
ヘッド66を作成した。なお、CVD装置100の詳細
は以下のとおりである。
【0071】a.真空チャンバ102 排気手段112として、排気速度が1500L(リット
ル)/分のロータリーポンプ、同12000L/分のメ
カニカルブースタポンプ、および同3000L/秒のタ
ーボポンプを、それぞれ1台ずつ有する、SUS304
製で容積が0.5m3の真空チャンバ102を使用した。
なお、ターボポンプの吸引部にオリフィスバルブを配置
して、開口度を10〜100%まで調整できるように構
成してある。
【0072】b.ガス導入部104 最大流量100〜500[sccm]のマスフローコントロー
ラと、直径6ミリのステンレス製パイプを用いて構成し
た。ステンレス製パイプと真空チャンバ102との接合
部は、Oリングによって真空シールした。プラズマ発生
用ガスとしては、アルゴンガスを用いた。
【0073】c.プラズマ発生手段106 発振周波数2.45GHz、最大出力3.0kWのマイ
クロ波電源114を用いるマイクロ波ECRプラズマ発
生装置とした。マイクロ波は、マイクロ波導入管118
で真空チャンバ102近傍まで導き、同軸変換器120
で変換後、真空チャンバ102内の放射状アンテナ12
4に導入した。誘電体板122は、幅800mm×高さ2
00mmの矩形のものを用いた。なお、マイクロ波は、マ
イクロ波導入管118の途中で4分割し、誘電体板12
2の4か所から真空チャンバ102内に導入した。さら
に、磁石116として、Sm-Co 磁石を複数個、誘電体板
122の形状に合わせて配置することでECR用磁場を
形成した。
【0074】d.基板ホルダ108 基板(すなわち、サーマルヘッド66のグレーズ)をプ
ラズマ発生部に対向して保持し、基板と放射状アンテナ
124との距離が50mm〜150mmの間で調整可能な構
成を有する。また、エッチング用の高周波電圧が印加で
きるように、基板によるサーマルヘッドの保持部分を浮
遊電位にした。
【0075】e.基板バイアス電源110 基板ホルダ108に、マッチングボックスを介して基板
バイアス電源110として高周波電源を接続した。高周
波電源は、周波数13.56MHzで、最大出力は3k
Wである。また、この高周波電源は、自己バイアス電圧
をモニタすることにより、−100V〜−500Vの範
囲で高周波出力が調整可能に構成されている。また、こ
のCVD装置100では、この基板バイアス手段110
で基板エッチング手段を兼ねている。
【0076】<サーマルヘッド66の作製>前述のよう
に加熱履歴を付与したサーマルヘッド66のグレーズ8
2が放射状アンテナ124に対向するように、真空チャ
ンバ102内の基板ホルダ108にサーマルヘッドを固
定した。基板(グレーズ表面)と放射状アンテナ124
との距離は100mmとした。また、サーマルヘッドのカ
ーボン保護膜の形成部以外(すなわち、グレーズ以外)
には、あらかじめマスキングを施しておいた。サーマル
ヘッドを固定後、真空チャンバ102内の圧力が5×1
-6Torrになるまで真空排気した。真空排気を継続しな
がら、ガス導入部104aによってアルゴンガスを導入
し、ターボポンプに設置したオリフィスバルブによっ
て、真空チャンバ102内の圧力が1.0×10-3Torr
になるように調整した。次いで、マイクロ波電源114
を駆動してマイクロ波を4か所からそれぞれ400Wず
つ真空チャンバ102内に導入し、マイクロ波ECRプ
ラズマを発生させ、さらに、基板バイアス電源110を
駆動して、基板に高周波バイアス電圧を印加し、自己バ
イアス電圧−200Vで2分間、下層保護膜88(窒化
珪素膜)のエッチングを行った。エッチング終了後、自
己バイアス電圧による高周波バイアス電圧の印加を継続
しながら、真空チャンバ102内の圧力が3.0×10
-3Torrとなるようにメタンガスを導入してプラズマCV
Dを行い、厚さ1μmのカーボン保護膜90を有するサ
ーマルヘッド66を作製した。さらに、全く同様にし
て、厚さ2μmおよび3μmのカーボン保護膜90を形
成したサーマルヘッドも作製した。なお、カーボン保護
膜90の膜厚は、あらかじめ成膜速度を求めておき、所
定の膜厚となる成膜時間を算出して、成膜時間で制御し
た。
【0077】<性能評価>このようにして作製したサー
マルヘッドと、感熱材料(富士フイルム社製 ドライ画
像記録用フィルムCR−AT)とを用いて、画像記録テ
ストを行った結果、正常な感熱画像記録が行えることが
確認できた。
【0078】[比較例1]前記実施例1において、発熱
素子への加熱履歴の付与と、カーボン保護膜の形成とを
逆にした以外は、すなわち、カーボン保護膜を形成した
後に発熱素子への加熱履歴の付与を行った以外は、全く
同様にして、カーボン保護膜の膜厚が1μm、2μmお
よび3μmの3種のサーマルヘッドを作成した。加熱履
歴の付与による発熱素子の抵抗値は全発熱素子の平均で
約1.5%減少した。このようなサーマルヘッドを用い
て実施例1と同様の画像記録テストを行った結果、画像
に著しいスジ状のムラが発生した。また、各サーマルヘ
ッドのグレーズの表面を光学顕微鏡で確認したところ、
カーボン保護膜が熱で変質している様子が見られた。以
上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【0079】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、保護膜の腐食や摩耗が極めて少なく、しかも感
熱記録による発熱素子の抵抗値変化が極めて少なく、十
分な耐久性および経時安定性を有し、長期に渡って濃度
ムラの無い高画質の感熱記録を安定して行うことができ
るサーマルヘッドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のサーマルヘッドを利用する感熱記録
装置の一例の概念図である。
【図2】 本発明のサーマルヘッドの発熱素子の構成を
示す概略図である。
【図3】 サーマルヘッドの発熱素子の抵抗値の変化と
発熱時間(対数)との関係の一例を示すグラフである。
【図4】 本発明のサーマルヘッドのカーボン保護膜を
形成する(プラズマ)CVD装置の一例の概念図であ
る。
【図5】 本発明のサーマルヘッドのカーボン保護膜を
形成するスパッタリング装置の一例の概念図である。
【符号の説明】
10 (感熱)記録装置 14 装填部 16 供給搬送手段 20 記録部 22 排出部 24 マガジン 66 サーマルヘッド 80 基板 82 グレーズ層 84 発熱抵抗体 86 電極 88 下層保護膜 90 カーボン保護膜 100 (プラズマ)CVD装置 102,132 真空チャンバ 104,134 ガス導入部 106 プラズマ発生手段 108,138 基板ホルダ 110 基板バイアス電源 112,140 排気手段 114 マイクロ波電源 116 磁石 118 マイクロ波導入管 120 同軸変換器 122 誘電体板 124 放射状アンテナ 130 スパッタリング装置 136 スパッタリング手段 142 カソード 144 ターゲット材 146 シャッタ 148 磁石 150 バイアス電源 152 直流電源 154 バッキングプレート

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加熱履歴を与えられることにより抵抗値を
    あらかじめ所定値だけ変化させられた発熱素子と、前記
    発熱素子に前記加熱履歴を与えた後に形成された、炭素
    を主成分とする保護膜とを有することを特徴とするサー
    マルヘッド。
  2. 【請求項2】前記炭素を主成分とする保護膜の発熱素子
    側に、下層保護膜として、セラミックを主成分とする保
    護膜を少なくとも1層有する請求項1に記載のサーマル
    ヘッド。
JP10623698A 1997-04-16 1998-04-16 サーマルヘッド Pending JPH111014A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6441839B1 (en) 1999-10-29 2002-08-27 Kyocera Corporation Thermal head
JP2007276199A (ja) * 2006-04-04 2007-10-25 Tdk Corp サーマルヘッド及び印画装置

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