JPH11129092A - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ

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JPH11129092A
JPH11129092A JP29741697A JP29741697A JPH11129092A JP H11129092 A JPH11129092 A JP H11129092A JP 29741697 A JP29741697 A JP 29741697A JP 29741697 A JP29741697 A JP 29741697A JP H11129092 A JPH11129092 A JP H11129092A
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宏一 青木
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敦夫 小埜田
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政男 鎌田
Hitoshi Nishimura
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】フラックス中に必須成分として多量に含有され
るSi,Mnの原料粉及びNiの原料粉についても見直
し、成分の偏析や外皮部肉厚の不均一が極力なく、さら
には帯鋼の合わせ目のシーム溶接を行う高能率な連続的
製造方法によっても優れた溶接性能が得られるフラック
ス入りワイヤを提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.40〜1.20%、
Si:5〜12%、Mn:19〜42%、残部Feから
なり、かつ、Si≧11.89−2.92C−0.07
7Mnを満たし、または、これに加えて、Si≧8.3
C+0.14Mnを満たし、粒径が212μm以下の鉄
系Si−Mn合金粉、または比透磁率(μ)≦1.10
の原料粉からなるフラックスを製鋼外皮内に充填してな
ることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラック
ス入りワイヤ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼構造物の製造に
使用するガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイ
ヤに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、船舶、橋梁、圧力容器等を初めと
する溶接鋼構造物の製造分野においては、ガスシールド
アーク溶接用フラックス入りワイヤ(以下、フラックス
入りワイヤという。)の使用量が増加している。図4に
市販フラックス入りワイヤの代表的な断面構造例を示し
たが、外皮部に隙間がないシームレスタイプ(図4
(a)、(b))と外皮部1に隙間3がある巻き締めタ
イプ(図4(c)、(d))とに大別できる。特にシー
ムレスタイプのものは、製造過程で高温度で行う脱水素
処理が出来、また使用中にも吸湿しないのでワイヤの持
つ水素量が低く、耐割れ性や耐気孔性に優れている。外
皮素材は伸線加工性が良好な軟鋼が一般的であり、内部
のフラックスはその使用目的、用途に応じてスラグ形成
剤、脱酸剤、合金剤、鉄粉及びその他アーク安定剤等種
々の原料粉からなる。ワイヤ径は溶接能率及び溶接作業
性の観点から細径(ワイヤ径:2.0mm以下)のもの
が使用されている。
【0003】フラックス入りワイヤは、軟鋼及び490
N/mm2 級高張力鋼用、590N/mm2 級高張力鋼
用、低温用鋼用など種々市販されている。さらに、これ
らフラックス入りワイヤは全姿勢用、すみ肉用、高溶着
用など用途に応じて組成の異なるフラックスが充填され
ている。全姿勢用は良好な溶接作業性が得られるように
TiO2 を主体とするスラグ系、高溶着用は鉄粉を主体
とするメタル系、すみ肉用は耐プライマ性向上を考慮し
てスラグ形成剤をやや少な目にした中間タイプのものが
一般的である。これら充填フラックスに共通する点は軟
鋼外皮を用いているために、フラックス中に溶接金属の
機械的性質を確保するために必要な多量のSi、Mnの
原料粉を含有していることにある。Si、Mnの原料粉
の割合が多いことは、それら原料粉の特性がフラックス
入りワイヤの生産性及び溶接性能に重要な影響をおよぼ
す。
【0004】フラックス入りワイヤに含有されるSi、
Mnは脱酸剤及び合金剤として必須の成分であり、溶接
金属の機械的性質(強度、靱性等)の確保とともに、脱
酸反応で生成したSiO2 、MnOは溶融スラグ組成の
主要成分となりビード形成にも寄与する。仮にワイヤ長
手方向にSi、Mnの偏析があると、溶接金属中への歩
留まりが変化して強度、靱性にばらつきが生じるばかり
でなく、ビード形状やスラグ剥離性などの溶接作業性が
劣化する。
【0005】また、Si、Mnの原料粉の特性はワイヤ
の製造工程における伸線加工性にも影響し、後記するよ
うに原料粉の影響で外皮部肉厚の均一性が損なわれた場
合には断線発生の原因となる他、溶接中、アークが不安
定になりスパッタが多発するなど溶接作業性が劣化す
る。即ち、本来均一であるべき外皮部肉厚の変動が大き
くなったり、フラックス原料が外皮部に噛み込んでいる
と、ワイヤの溶融状態(溶滴移行性)が乱れ、アーク不
安定やスパッタの発生量が多くなる。
【0006】さらに、低水素化に有利なシームレスタイ
プのフラックス入りワイヤを、特公平4−72640号
公報、特公平4−62838号公報及び特開平5−31
594号公報等の提案に見られるように、帯鋼を管状体
に成形する段階でフラックスを充填した後、帯鋼の合わ
せ目のシーム溶接を行い連続的に能率よく製造しようと
した場合、フラックス中に磁性を持つ原料粉が含有され
ているとシーム溶接部に融合不良や溶接スパッタ(この
時のスパッタはフラックス中にも落下混入する)等が発
生しやすくなり、フラックス入りワイヤの製造歩留まり
の低下のみならずワイヤ溶接中に安定した溶融状態が得
られにくくなる。従って、Si、Mnの原料粉はSi、
Mnの偏析や外皮部肉厚の均一性を損なうことなく、か
つ、非磁性であることが好ましい。
【0007】また、高張力鋼用や低温用鋼用のフラック
ス入りワイヤなどのようにフラックス中にSi、Mnと
ともにNiが含有されている場合、Niの偏析があると
Si、Mnとの相乗作用により溶接金属の顕著な強度変
化や靱性低下をもたらす。しかも、Niが強磁性体であ
ることは帯鋼の合わせ目のシーム溶接性を損ない生産性
低下とともに、フラックス入りワイヤとしての溶接性能
を悪くする。従って、Niの原料粉についても生産性及
び溶接性能に充分に配慮したものを用いる必要がある。
しかしながら、従来のフラックス入りワイヤにおいて
は、基本的なワイヤ成分として必須のSi、Mnの原料
粉及び溶接金属の強度、靱性の確保に有効なNiの原料
粉の影響に着目して溶接性能の一層の向上を図った検討
が充分になされていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、フ
ラックス中に必須成分として多量に含有させるSi、M
nの原料粉及びNiの原料粉についても見直し、成分の
偏析や外皮部肉厚の不均一が極力なく、さらには帯鋼の
合わせ目のシーム溶接を行う高能率な連続的製造方法に
よっても優れた溶接性能が得られるフラックス入りワイ
ヤを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、 (1) 重量%で、C :0.40〜1.20%、S
i:5〜12%、Mn:19〜42%、残部Feからな
り、かつ、Si≧11.89−2.92C−0.077
Mnを満たし、粒径が212μm以下の鉄系Si−Mn
合金粉を含むフラックスを鋼製外皮内に充填してなるこ
とを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入
りワイヤ。
【0010】(2) 重量%で、C :0.40〜1.
20%、Si:5〜12%、Mn:19〜42%、残部
Feからなり、かつ、Si≧11.89−2.92C−
0.077Mn及びSi≦8.3C+0.14Mnを満
たし、粒径が212μm以下の鉄系Si−Mn合金粉を
含み、比透磁率(μ)≦1.10の原料からなるフラッ
クスを鋼製外皮内に充填してなることを特徴とするガス
シールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
【0011】(2) 重量%で、C :0.30〜1.
20%、Si:5〜12%、Mn:19〜42%、N
i:30%以下、残部Feからなり、かつ、Si≧1
1.89−2.92C−0.077Mn−0.062N
iを満たし、粒径が212μm以下の鉄系Si−Mn−
Ni合金粉を含むフラックスを、鋼製外皮内に充填して
なることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラッ
クス入りワイヤ。
【0012】(4) 重量%で、C :0.30〜1.
20%、Si:5〜12%、Mn:19〜42%、N
i:30%以下、残部Feからなり、かつ、Si≧1
1.89−2.92C−0.077Mn−0.062N
i及びSi≦8.3C+0.14(Mn+Ni)を満た
し、粒径が212μm以下の鉄系Si−Mn−Ni合金
粉を含み、比透磁率(μ)≦1.10の原料粉からなる
フラックスを鋼製外皮内に充填してなることを特徴とす
るガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにあ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、上記限定した組成及び
粒径の鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−N
i合金粉をフラックス原料として用いることを基本とす
る。フラックス入りワイヤに含有させるSi、Mnの原
料としては、従来よりJIS規格に規定されたSi粉、
Mn粉、フェロシリコン、フェロマンガン、シリコマン
ガンなどの合金粉が主に用いられている。フラックス入
りワイヤの製造時、入手した各原料の成分、粒度構成は
厳密に管理されるが、原料種類毎、また原料の製造ロッ
ト単位毎にその成分範囲及び粒度構成には差異が生じて
いる。従って、上記数種類のSi、Mnの原料粉を組み
合わせて配合するよりも、目標成分と同じ成分を持った
単一の鉄系Si−Mn合金粉を予め用意して、これをS
i、Mnの原料として配合する方がワイヤ中のフラック
ス成分及びフラックス充填率が安定する。
【0014】さらに、本発明で用いる鉄系Si−Mn合
金粉はSi及びMnの含有量を、従来一般的に用いられ
ているシリコマンガン(JIS G2304−198
6)の組成に比較して格段に少なくし、かつ、その粒径
も細粒のものにした。これによりSi、Mnの品位の低
い粒子がフラックス中に充分均一に分布出来るようにし
た。これらによりワイヤ長手方向のSi、Mnの分布が
非常に均一になったことは溶着金属試験(JIS Z
3313)及び溶接作業性試験により充分に確認出来
た。
【0015】なお、ワイヤ成分としてSiとMnの含有
量の関係が常に一定であることは、特に低温用鋼用ワイ
ヤによる溶接金属の機械的性質やすみ肉用ワイヤによる
水平すみ肉溶接のスラグ被包性の安定化をもたらした。
また、鉄系Si−Mn合金粉のFe成分を高くしたこと
は、溶接金属の機械的性質面から同一のSi、Mn含有
量のワイヤを設計する場合、そのFe成分の割合だけフ
ラックス充填率を高くすることが出来るようになり、溶
着速度やアーク安定性の向上という効果をもたらした。
この高充填率化による効果は、特に非磁性のフラックス
原料が必要な帯鋼の合わせ目のシーム溶接を行う高能率
な連続的製造方法によるフラックス入りワイヤにおいて
発揮された。
【0016】Niの原料粉としては、従来からJIS規
格に規定されたフェロニッケル粉、またはNi粉などが
一般的に用いられている。本発明ではフラックス入りワ
イヤに必須成分であるSi、Mnを含む上記限定した単
一の鉄系Si−Mn−Ni合金粉を用いる。これにより
フラックス中及び溶接金属のSi、Mn及びNiの関係
にばらつきがなくなり、溶接金属の機械的性質が安定し
た。また、鉄系Si−Mn−Ni合金粉についても非磁
性化の面から限定した組成のものを用いることにより、
従来困難であった帯鋼の合わせ目のシーム溶接を行う高
能率な連続的製造方法により製造するフラックス入りワ
イヤにNiを含有させることが出来るようになった。
【0017】次に、図5に模式的に拡大して示したよう
なワイヤ長手方向断面の観察で見られる外皮部1の肉厚
減少部分5やフラックス原料粉6が外皮部に噛み込んだ
部分7は、フラックス部が伸線加工の進行にともない外
皮部から連続的な押し圧力を受け、順次圧縮され堅く締
まった状態となり、フラックス原料の個々の粒子の自由
な移動が妨げられ、外皮部の延びに対するフラックス部
の追従性を保持出来なくなったことによって生じる。こ
のような外皮部肉厚の変化は、シームレスタイプでフラ
ックス充填率が高くなったり、金属粉の含有量の多いメ
タル系ワイヤにおいて特に生じやすい。
【0018】これに対し、本発明で用いる鉄系Si−M
n合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉には、フラッ
クス部の追従性を良好にして外皮部肉厚の均一性を高め
るために伸線加工中に破砕しやすくなる特性を与えた。
Si、Mn及びCの下限設定とともに、特にSiの下限
をC、Mnとの関係で規制した組成に限定することによ
って非常に脆い鉄合金となり、しかも、原料製造中の通
常の機械的粉砕の衝撃により個々の粒子に微小な亀裂
(ひび割れ)が生じるようになり、伸線加工中の破砕性
が容易になることを見いだした。
【0019】図1に本発明によるフラックス入りワイヤ
を伸線加工の中間段階で採取して観察したワイヤ長手方
向断面のフラックス充填状態を模式的に示した。外皮部
肉厚の均一性は良好で、フラックス原料の噛み込みは見
られない。フラックス部2に分布する鉄系Si−Mn合
金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉8(拡大図)に
注目すると、その大部分の粒子が破砕された状態、或い
は粒子に亀裂が見られ、この破砕性が外皮部1の伸びに
対するフラックス部2の追従性を良好にするように作用
する。
【0020】即ち、フラックス充填後、一般にダイス群
あるいはロール群により伸線加工されるが、ワイヤが縮
径される毎にフラックス部は押し圧力を受け、このとき
非常に脆い鉄合金粉であればその粒子は押し圧力に抗し
きれず破砕される。また、粒子に元々亀裂が入っている
原料粉であることは、さらに破砕性に効果的である。伸
線加工中、縮径毎にこの破砕挙動が繰り返される結果、
鉄合金粉自身及び周囲近傍のフラックス粒子を移動しや
すくし、細径段階まで外皮部1の延びに対するフラック
ス部2の追従性が良好となり、外皮部肉厚の均一性が保
たれる。
【0021】さらに、本発明では実質的に非磁性の鉄系
Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉を用
いることにより、前記各公報の提案に記載された帯鋼の
合わせ目のシーム溶接に係わる問題点を解決した。伸線
加工中の破砕性に対しては、上記鉄合金粉のSi、Mn
を増加させること、特にSiの増加が有効であったが、
Siの増加は非磁性化には相反する作用を持つために、
破砕性と非磁性という両特性を備えた組成範囲に限定し
た。
【0022】なお、前記特公平4−62838号公報及
び特開平5−31594号公報には非磁性で鉄含有量の
多いFe−Mn系合金粉を用いたフラックス入りワイヤ
が記載されている。しかし、その実施例からも明らかな
ようにフラックス入りワイヤに必要な所定量のSiは、
別種の原料粉から含有させるものであり、本発明による
フラックス入りワイヤのように単一の鉄系Si−Mn合
金粉を用いることによりフラックス成分の偏析防止及び
伸線加工中の破砕効果による溶接性能改善という技術思
想は何等開示されていない。
【0023】以下に、本発明のフラックス入りワイヤに
含有させる鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−
Ni合金粉の限定理由について説明する。Cは鉄合金粉
の伸線加工中の破砕性を良好にし、また非磁性化にも有
効に作用する成分である。鉄系Si−Mn合金粉のCが
0.40%未満では伸線加工中に破砕しにくく外皮部肉
厚が不均一になりやすく溶接作業性が劣化する。一方、
Cが1.20%を超えても鉄合金粉の破砕性及び非磁性
化に対する効果はほとんど変わらず、むしろフラックス
入りワイヤのC含有量が過剰になり、スパッタ発生や溶
接金属の強度過大などの悪影響が出るので上限を1.2
0%に限定した。なお、鉄系Si−Mn−Ni合金粉に
おいては、Niにより破砕性及び非磁性化が促進される
ので、Cの下限を0.30%にまで拡大することが出来
る。
【0024】Siは脱酸剤及び合金剤としての役割以外
に、鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合
金粉の伸線加工中の破砕性を良好にするために不可欠
で、5%以上必要である。Siが5%未満では破砕効果
が充分に発揮されず外皮部肉厚が不均一になる。一方、
Siが12%を超えても破砕性に対する効果はほとんど
変わらないことと、フラックス入りワイヤのSi含有量
が過剰になり、溶接金属の強度過大や靱性低下の原因と
なるので上限を12%に限定した。なお、Siは破砕性
及び非磁性化の面からC、Mn及びNiの含有量との関
係において規制される。
【0025】鉄系Si−Mn合金粉の場合、Si≧1
1.89−2.92C−0.077Mn(式)を満た
す組成であれば、その溶解製造過程における粉砕工程の
衝撃により大部分が粒子状に粉砕され、かつ、各粒子に
亀裂(ひび割れ)が生じることになり、伸線加工中の破
砕性が良好で、外皮部肉厚が不均一にならず、アークが
安定しスパッタ発生量も低減する。
【0026】他方、鉄系Si−Mn合金粉が非磁性であ
るためには、Si≦8.3C+0.14Mn(式)に
より規制される。つまり、C、Mnの増加は鉄合金粉の
オーステナイト化傾向を高めるが、Siはフェライト形
成能が高い成分であり磁性化の方に働く。この式を満
たすSiの範囲においては、フェライト量がほとんど消
失し、振動試料型磁力計により測定した非透磁率(μ)
が1.10以下となった。比透磁率(μ)が1.10以
下という値は磁性を僅かに帯びる性質を有する限界値で
あって実質的に非磁性と言える。前記帯鋼の合わせ目の
シーム溶接をともなうフラックス入りワイヤの製造に用
いてもシーム溶接部に溶接欠陥が全く発生しないで、良
好な溶接結果が得られる。即ち、本発明によるフラック
ス入りワイヤに用いる鉄系Si−Mn合金粉が伸線加工
中の破砕性が良好で、かつ非磁性という特性を持つため
には、C及びMnの含有量によって適正なSiの範囲の
ものを選択しなければならない。
【0027】図2に鉄系Si−Mn合金粉を用いて試作
した軟鋼及び490N/mm2 級鋼用の全姿勢用フラッ
クス入りワイヤに含有させた鉄系Si−Mn合金粉のS
i含有量が、外皮部肉厚の均一性に及ぼす影響について
調査結果を示した。フラックス中に含有させた鉄系Si
−Mn合金粉の割合は45%で、その組成はC:0.5
6〜0.60%、Mn:31.5〜32.5%で、Si
は3.2〜13.0%の範囲で変化させた。フラックス
は充填率15%、ワイヤ径は1.2mmである。ワイヤ
の試作方法、外皮部肉厚の均一性の測定方法は、後記実
施例1の場合に同じで、ワイヤ断面構造はシームレスタ
イプである。
【0028】本発明のフラックス入りワイヤに用いる鉄
系Si−Mn合金粉のSi含有量は図中の斜線部に限定
される。式は伸線加工中の破砕性を良好にするSiの
下限を求めたものであり、これよりもSiの含有量を多
くすることにより外皮部肉厚が非常に均一になる。な
お、式は非磁性にするためのSiの上限を求めたもの
である。図3は後記実施例における本発明を含む全姿勢
用フラックス入りワイヤによる外皮部肉厚の均一性とス
パッタ発生量の関係を示した図である。外皮部肉厚の均
一性が損なわれる(測定したT2/T1の最小値が小さ
くなること)とスパッタ発生量が多くなることがわか
る。
【0029】Mnは脱酸剤及び合金剤として含有させる
が、鉄系Si−Mn合金粉及びSi−Mn−Ni合金粉
の伸線加工中の破砕性及び非磁性化のために19%以上
必要である。Mnが42%を超えても破砕性及び非磁性
化への効果が変わらないことと、鉄合金中の残部として
のFe成分を多くして高充填率のフラックス入りワイヤ
設計が可能なように上限を42%に限定した。Niは特
に溶接金属の強度及び低温靱性向上に効果的な成分であ
る。また、上記C、Si及びMnを限定した鉄系Si−
Mn合金粉の組成に、Niを30%以下の範囲で含有さ
せた鉄系Si−Mn−Ni合金粉は伸線加工中の破砕性
が良好で、かつ、実質的な非磁性化も確保出来る。これ
を用いたフラックス入りワイヤは外皮部肉厚の均一性及
び帯鋼の合わせ目のシーム溶接性が良好であることを確
認した。
【0030】なお、Niは合金粉の伸線加工中の破砕性
及び非磁性化にも有効に作用し、上記鉄系Si−Mn合
金粉において破砕性が良好になるために規制した式
は、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn−
0.062Ni(式)となり、また、非磁性化のため
に規制した式は、Si≦8.3C+0.14(Mn+
Ni)(式)となり、Si量の範囲を拡大出来る。鉄
系Si−Mn−Ni合金粉または鉄系Si−Mn−Ni
合金粉の残部は、実質的にFeからなる。このFe成分
はフラックス中に鉄粉を含有させた場合と同様に溶着速
度やアーク安定性の向上効果をもたらす。
【0031】なお、鉄合金粉の伸線加工中の破砕性に効
果を示すP(溶接金属を脆化させる危険性があるので、
0.4%以下が好ましい)、また、通常の溶接金属の脱
酸あるいは機械的性質の調整成分としてのAl、Ti、
B、Mo、Cr、V及びNbなどを破砕性及び非磁性化
を損なわない範囲で含有させることが出来る。また、S
やNについては溶接金属の耐割れ性あるいは靱性面から
は出来るだけ少ない方がよいが、硬化肉盛用フラックス
入りワイヤに用いる場合のN、あるいは水平すみ肉溶接
におけるスラグ剥離性やビード形状の改善に効果的なS
の積極的な添加も可能である。
【0032】鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn
−Ni合金粉の粒径は212μm以下に限定した。粒径
が212μm以下の細粒であれば、フラックス中に粒子
が充分均一に分布しフラックス成分の偏析防止に効果的
で、溶接時のSi、Mnの作用及び溶接金属への歩留り
が安定する。また、このような細粒にすることによって
合金粉の溶解製造時の機械的粉砕による衝撃によって個
々の粒子に十分な亀裂(ひび割れ)を与えることが出来
るようになり、伸線加工時の破砕性が良好になる。一
方、粒径が212μmを超えて粗粒のものを用いた場
合、フラックス中に粒子を充分に均一に分布させること
が出来ず偏析しやすくなり、また伸線加工の縮径1回毎
の破砕効果が小さくなりフラックス部の追従性が不充分
で外皮部肉厚の不均一が生じやすくなる。なお、粒径2
12μm以下において、仕上がりワイヤ径、充填フラッ
クス中の含有量及びフラックス充填率、フラックスの充
填方式などを考慮して最適な粒径のものを選択すること
が好ましい。
【0033】本発明によるフラックス入りワイヤは、上
記限定した鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn
−Ni合金粉を、ワイヤ成分として必要なSi、Mnの
所定量を満足するように含有させるが、伸線加工中の破
砕効果により外皮部肉厚の均一化を充分に図るためには
概略、フラックス中に10%以上含有することが好まし
い。この場合、ワイヤに必要なSi、Mn及びNiの所
定量の大部分を前記限定した鉄系Si−Mn合金粉また
は鉄系Si−Mn−Ni合金粉から含有させ、他のS
i、Mn及びNiの原料を少量合わせて用いたフラック
ス入りワイヤ、鉄系Si−Mn合金粉と鉄系Si−Mn
−Ni合金粉の両方を用いたフラックス入りワイヤにお
いても本発明の効果は充分に発揮できる。
【0034】本発明によるフラックス入りワイヤは、鉄
系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉
以外に、TiO2 、SiO2 、ZrO2 及びAl23
などのスラグ形成剤、NaやKなどのアーク安定剤、A
l、Ti、Mg、Cr、Mo及びCuなどの脱酸剤、あ
るいは合金剤、鉄粉(帯鋼の合わせ目のシーム溶接を行
う連続的製造方法においては不可)などをフラックス入
りワイヤの用途に応じて含有する。フラックス充填率は
10〜25%の範囲が好ましい。フラックス充填率が1
0%未満では目的とする溶接性能や高溶着性が得られに
くく、一方、25%を超えると外皮部の肉厚が薄くなり
過ぎて細径化が困難となる。鋼製外皮は、フラックス充
填後の伸線加工性の点からフラックス入りワイヤに一般
的に用いられている軟鋼が好ましいが、C、Si、Mn
の調整やAl、Ti、B、Ni、Moなどを含む合金鋼
を用いることも可能である。以下に、実施例により本発
明をさらに詳細に説明する。
【0035】
【実施例1】表1に示した軟鋼製鋼管(S1、S2)を
所定の充填率が得られる充填径にまで縮径して、これに
振動充填方式で一方の端口からフラックスを充填後、ロ
ール群及び孔ダイス群により伸線を行った。ワイヤ径
3.5mmで脱水素処理及び加工硬化緩和のための中間
焼鈍と銅めっき処理を行い、表5に示した組成のシーム
レスタイプのフラックス入りワイヤ(記号:W1〜W
9、W13、W14、ワイヤ径1.2mm)を試作し
た。また、表1に示した軟鋼製帯鋼(S3)をU形に成
形し、このU形内にフラックスを供給した後、両端部を
突き合わせて管状体にし、引き続きロール群及び孔ダイ
ス群により伸線を行い、図4(d)に示したワイヤ断面
構造で表5に示した組成のフラックス入りワイヤ(記
号:W10〜W12、ワイヤ径1.2mm)を試作し
た。
【0036】
【表1】
【0037】フラックスのSi、Mn及びNiの原料粉
を表2、表3及び表4に示した。表6に試作ワイヤの長
手方向断面観察による外皮部肉厚の均一性の調査結果及
び溶接試験結果を示した。外皮部肉厚の均一性は、図5
に示したようにワイヤ長さ20mm(任意の連続しない
3箇所から採取)について連続的に50倍で写真撮影
し、この観察写真を用いて平均的な肉厚T1に対する肉
厚が最も薄くなっている部分の肉厚T2の比率(T2/
T1の最小値)によって評価した。フラックス原料の噛
み込みについても同様にT1とT2を測定し、(T2/
T1)が0.90未満の場合をフラックス原料の噛み込
み発生有りとした。溶接試験は下向溶接と水平すみ肉溶
接でアーク状態を観察し、下向溶接でスパッタ発生量を
測定した。溶接条件は溶接電流260A、アーク電圧3
0V、溶接速度40cm/min、チップ・母材間距離
25mm、シールドガスCO2 ガス(流量20L/mi
n)である。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】試作ワイヤはW1〜W7が全姿勢用、W8
とW9がすみ肉用、W10〜W14が高溶着用で、それ
ぞれ本発明と比較例とを対比させた。全姿勢用ワイヤの
場合、本発明のW1とW2及びW5とW6は外皮部肉厚
の変動が小さく、アークが安定し、スパッタ発生量も少
ない。W3は用いた鉄系Si−Mn合金粉(SM10)
のC及びSiが低過ぎるために、W4及びW7は従来原
料(Fe−Si粉、Fe−Mn粉、シリコマンガン、N
i粉)を用いたために、それぞれ伸線加工中の破砕効果
がなく、外皮部肉厚が不均一で本発明ワイヤに比較して
アークの安定性が劣り、スパッタ発生量が多い。すみ肉
用ワイヤの場合、本発明のW8は外皮部肉厚の変動が小
さく、アークが安定し、スパッタ発生量も少ない。
【0044】W9は用いた鉄系Si−Mn合金粉(SM
12)のMn及びSiが低過ぎるために、外皮部肉厚が
不均一で本発明ワイヤに比較してアークの安定性が劣
り、スパッタ発生量が多い。高溶着用ワイヤの場合、本
発明のW10は外皮部肉厚の変動が小さく、アークが安
定し、スパッタ発生量も少ない。W11は用いた鉄系S
i−Mn合金粉(SM11)のSiが低過ぎるために、
W12及びW14は従来原料(Fe−Si粉、Fe−M
n粉、Ni粉)を用いたために、それぞれ伸線加工中の
破砕効果がなく、外皮部肉厚が不均一で本発明ワイヤに
比較してアークの安定性が劣り、スパッタ発生量が多
い。
【0045】
【実施例2】表1に示した軟鋼製帯鋼を管状体に成形す
る段階でフラックスを供給した後、管状体の相対するエ
ッジ面を高周波誘導加熱によりシーム溶接して、引き続
き連続的にロール群によりワイヤ径3.5mmまで縮
径、銅めっき処理した。以後、孔ダイス群により伸線を
行い、表7に示した組成のシームレスタイプのフラック
ス入りワイヤ(記号:W15〜W26、ワイヤ径1.2
mm)を試作した。シーム溶接は管状体の外径21.7
mm、入熱量140KVA、周波数520KHZ、溶接
速度30m/min、また途中で加工硬化緩和のための
中間焼鈍を実施した。フラックスのSi、Mn及びNi
の原料粉は表3及び表4に示した。
【0046】
【表7】
【0047】表8にシーム溶接時の管状体エッジ面への
フラックスの磁着状況、試作ワイヤの長手方向断面の外
皮部肉厚の均一性の調査結果及び溶接試験結果を示し
た。外皮部肉厚の均一性の測定方法、溶接試験条件は実
施例1に同じである。試作ワイヤはW15〜W21及び
W26が全姿勢用、W22〜W25がすみ肉用である。
本発明の全姿勢用ワイヤW15〜W21及びすみ肉用ワ
イヤW22〜W25は、いずれも外皮部肉厚の変動が小
さく、アークが安定し、スパッタ発生量も少ない。これ
に対し、W26は比較例で、用いた鉄系Si−Mn合金
粉(SM10)に磁性があり管状体エッジ面へのフラッ
クスの磁着が多く、また伸線加工中の破砕性も悪い組成
であるために仕上げ伸線中に断線が発生し、外皮部肉厚
の均一性、アークの安定性、スパッタ発生量とも本発明
ワイヤに比較して劣る。
【0048】
【表8】
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のガスシー
ルドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、組成及び粒
径を限定した鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−M
n−Ni合金粉を用いることによって、ワイヤ中に充填
されたフラックス成分の偏析がなく、また、伸線加工中
の破砕効果により外皮部肉厚を極めて均一に出来るた
め、安定した溶接金属の機械的性質と共に、アーク状態
(溶滴移行性)が安定しスパッタ発生量の低減を含む溶
接作業改善が出来る。さらに、上記鉄合金粉のFe成分
の含有量を多くし、かつ非磁性となる組成に限定するこ
とは、帯鋼の合わせ目のシーム溶接を行う高能率な連続
的製造方法で製造するシームレスタイプのフラックス入
りワイヤの品質を一層高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフラックス入りワイヤのワイヤ方向の
断面状態例を示す図である。
【図2】本発明を含むフラックス入りワイヤに用いた鉄
系Si−Mn合金粉中のSi量の効果を示す図である。
【図3】本発明を含むフラックス入りワイヤにおける外
皮部肉厚とスパッタ発生量の関係を示す図である。
【図4】フラックス入りワイヤの断面構造例を示す図で
ある。
【図5】フラックス入りワイヤの長手方向の断面状態例
を示す図である。
【符号の説明】
1 外皮部 2 フラックス部 3 外皮部の隙間 4 シーム溶接部 5 外皮部肉厚の減少部分 6 フラックス原料 7 フラックス原料の噛み込み部分 8 鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni
合金粉
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西村 均 東京都中央区築地三丁目5番4号 日鐵溶 接工業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.40〜1.20%、 Si:5〜12%、 Mn:19〜42%、 残部Feからなり、 かつ、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn
    を満たし、 粒径が212μm以下の鉄系Si−Mn合金粉を含むフ
    ラックスを鋼製外皮内に充填してなることを特徴とする
    ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.40〜1.20%、 Si:5〜12%、 Mn:19〜42%、 残部Feからなり、 かつ、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn
    及びSi≦8.3C+0.14Mnを満たし、粒径が2
    12μm以下の鉄系Si−Mn合金粉を含み、比透磁率
    (μ)≦1.10の原料粉からなるフラックスを鋼製外
    皮内に充填してなることを特徴とするガスシールドアー
    ク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. 【請求項3】 重量%で、 C :0.30〜1.20%、 Si:5〜12%、 Mn:19〜42%、 Ni:30%以下、 残部Feからなり、 かつ、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn
    −0.062Niを満たし、粒径が212μm以下の鉄
    系Si−Mn−Ni合金粉を含むフラックスを鋼製外皮
    内に充填してなることを特徴とするガスシールドアーク
    溶接用フラックス入りワイヤ。
  4. 【請求項4】 重量%で、 C :0.30〜1.20%、 Si:5〜12%、 Mn:19〜42%、 Ni:30%以下、 残部Feからなり、 かつ、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn
    −0.062Ni及びSi≦8.3C+0.14(Mn
    +Ni)を満たし、粒径が212μm以下の鉄系Si−
    Mn−Ni合金粉を含み、比透磁率(μ)≦1.10の
    原料粉からなるフラックスを鋼製外皮内に充填してなる
    ことを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス
    入りワイヤ。
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WO2018043268A1 (ja) * 2016-08-30 2018-03-08 株式会社神戸製鋼所 溶接用フラックス入りシームレスワイヤ

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