JPH11199257A - 強化ガラス板、ガラス板の冷却方法および冷却装置 - Google Patents

強化ガラス板、ガラス板の冷却方法および冷却装置

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JPH11199257A
JPH11199257A JP16552798A JP16552798A JPH11199257A JP H11199257 A JPH11199257 A JP H11199257A JP 16552798 A JP16552798 A JP 16552798A JP 16552798 A JP16552798 A JP 16552798A JP H11199257 A JPH11199257 A JP H11199257A
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JP
Japan
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glass plate
glass sheet
main stress
reference point
cooling
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JP16552798A
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English (en)
Inventor
Yasuzane Kato
保真 加藤
Atsushi Nagata
淳 永田
Shigeyuki Seto
茂之 瀬戸
Satoshi Yoshida
聡 吉田
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AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】板厚が薄いガラス板であっても、法規を充分に
満たす破砕が得られる強化ガラス板を得る。 【解決手段】帯状領域Aの最大主応力差σa が120k
g/cm2 以下、帯状領域Aの幅La が10〜30mm
で、平均表面圧縮応力が1000〜1300kg/cm
2 の範囲にある、板厚が2.3〜3.5mmの強化ガラ
ス板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強化ガラス板と、
その強化ガラス板を得るためのガラス板の冷却方法およ
び冷却装置に関する。特に、自動車用リヤガラスのよう
な大面積で複曲面を有する板厚の薄い強化ガラス板と、
板厚の薄いガラス板を強化処理するための冷却方法およ
び冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用の窓ガラス(フロントガラスを
除く)には、強化ガラス板が用いられている。この場
合、運転者または同乗者の負傷を防ぐために、安全性の
面から強化ガラス板の割れに対する法規が定められてい
る。こうした法規に定められた性能を満足するものでな
ければ、自動車の窓ガラスとして使用できないようにな
っている。
【0003】例えば、自動車窓用の強化ガラスの法規に
は、強化ガラス板に局部的な衝撃を与えた際の破砕片の
状態についての規制がある。具体的には、衝撃により割
れたガラス板の破砕片の粒子数が最少である区域と、破
砕片の粒子数が最多である区域とを選定し、これらの区
域での破砕片の最少粒子数および最多粒子数がある許容
範囲に入ることが規定されている。
【0004】この破砕片の最少許容粒子数により、ガラ
ス板が割れて生じる粒子の最大粒度が決まる。最大粒度
が小さければ、ガラス板が割れたとき、大きな破砕片に
より裂傷を受ける危険性が減少する。また、破砕片の最
多許容粒子数により、ガラス板が割れて生ずる破砕片の
最小粒度が決まる。最小粒度が大きければ、ガラスの微
粒子が人体内に入る危険性が減少する。こうした、ガラ
ス板の破損時における破砕片の大きさ等についての規定
は、ECEの標準規格やJIS規格等にある。
【0005】例えばECE標準規格(E6)では、割れ
たガラス板の5cm×5cm正方形内の破砕片の粒子数
が最少で40個、最多で400個であることが要求され
ている(ガラス板の端縁から幅20mmの帯状区域およ
び割れ開始点を中心とする半径75mmの円形区域を除
く。)。なお、以後上記の破砕片の粒子数のうちの最多
値を最多粒子数、最少値を最少粒子数と呼ぶ。また、ガ
ラス板が割れた際、端部が尖っていたり長さが75mm
を超える細長い細片を全く含有してはならないという必
要条件がある。他に、破砕片の面積が3cm2 を超えて
はならないという必要条件がある。
【0006】強化ガラス板は、ガラス板の軟化点付近の
温度(通常600〜700℃程度)までガラス板を加熱
した後に、冷却風により急冷して得られる。冷却風は、
ガラス板の両面に配された複数の冷却用ノズルから、ガ
ラス板に向けて吹き付けられる。こうして、冷却時にガ
ラス板面とガラス板内部とに温度差をつけ、最終的に固
化されたガラス板面に圧縮応力層を残存させることによ
って、ガラス板が強化処理される。
【0007】ところで、最近の自動車は、燃費の低減等
のために軽量化が求められている。それにともない、ガ
ラス板の厚みを薄くし、軽量化する要求が高まってい
る。板厚が4〜6mm程度の範囲のガラス板では、上記
のガラス板強化方法により比較的容易に上記各規格を満
足できる強化ガラス板が得られる。ところが、軽量化の
要求にともない板厚を薄くした場合、上記の強化方法で
は各規格を満足できる強化ガラス板が得にくかった。そ
の理由は、板厚が薄いためにガラス板面とガラス板内部
とに充分な温度差を付与できないからである。
【0008】概念的には、ガラス板面とガラス板内部と
の間に充分な温度差を与えるためには、冷却風の圧力を
上げる、ノズルをガラス板に近づける、各ノズル間の距
離(ピッチ)を短くする、等の手段が考えられる。しか
し、冷却風の圧力を上げようとすると、ブロア装置やコ
ンプレッサに機械的な限界があることから、実現が困難
である。
【0009】一方、ガラス板に衝突する冷却風には、ガ
ラス板に衝突した後の逃げ道が確保される必要がある。
これは、衝突後の冷却風がその場に残留すると、後から
噴射されてくる冷却風のガラス板への衝突を妨げること
になり、ガラス板面への均一な吹き付けが困難になるか
らである。上述のノズルピッチを短くしたり、ノズルを
ガラス板に近づけると、ガラス板に衝突した後の逃げ道
を確保できなくなる。
【0010】また、強化処理時には、冷却風の吹き付け
の際にガラス板を揺動させて、ガラス板面の冷却を均一
化させている。そのため、ノズルをガラス板に近づける
と、この揺動動作がノズルによって妨げられる恐れがあ
る。ガラス板が複曲面を有するように曲げ成形されたも
のであると、特にノズルとガラス板との干渉が著しい。
【0011】そこで、板厚の薄い強化ガラス板を得るた
めに、ノズルの配置を特殊な配置しにして強化処理する
ことが提案されている。具体的には、ガラス板に主応力
の異なる領域を設けることによって、破砕の進行方向を
コントロールしようというものである。
【0012】ここで、主応力方向、主応力差とは何かを
説明する。まず、ガラス板面に垂直なある1平面(ガラ
ス板の断面)を選ぼうとする。選び方によって、その平
面はガラス板面に平行なある直線に対しあらゆる角度を
とりうる。この平面内にある1点を選ぶと、この点に働
く、選ばれた平面に垂直な方向の応力値は、選ばれる平
面の角度によってそれぞれ異なるので、その角度のうち
応力値が最大となる角度と最小になる角度とが存在す
る。この最大値を示す応力の方向と、最小値を示す応力
の方向とが、主応力方向である。2つの主応力方向は直
交する。本明細書では、原則として、最大値を示す応力
の方向を主応力方向と呼ぶ。また、上記最大値および上
記最小値が主応力である。
【0013】ところで、主応力自身を直接に測定するこ
とはできないので、強化ガラス板においては、光弾性法
によって得られる主応力差によって、主応力が評価され
る。この光弾性法によって得られる主応力差は、強化ガ
ラス板において、板厚方向に並んだ全ての点における最
大応力値と最小応力値との差の総和の積分平均値に相当
する。したがって、ガラス板面上のある点を選び、この
点から板厚方向に各点をとり、これらの点の最大応力値
と最小応力値との差の積分平均値が、そのガラス板面上
に選んだ点での主応力差として、また、そのときの主応
力方向が、その点での主応力方向として、評価される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】主応力方向の異なる領
域を設けた強化ガラス板が、米国特許第4,128,6
90号明細書、特開昭55−104935号公報、特開
昭58−91042号公報に提案されている。
【0015】米国特許第4,128,690号明細書に
は、板厚が2.5〜3.5mmの強化ガラス板について
の記載がある。この強化ガラス板は、最大が62MN/
2の中心引張応力を有し(表面圧縮応力の最大値が1
24MN/m2 )、このガラス板には、ガラス板の平面
内に作用する主応力を異にする区域の分布が形成されて
おり、この主応力の異なる区域において、その主応力差
の最大値が8〜25MN/m2 であり、この最大値を示
す区域間の距離が15〜30mmの範囲内にある。
【0016】ところが、実際に3.0mm以下の板厚の
ガラス板を上記分布の強化ガラス板として作製すると、
次の不具合が生じる。E6の破砕試験において、最多粒
子数と最少粒子数との差が大きくなる。このことは、強
化ガラス板の成形条件の少しの変化(例えば外気温度等
の変化)により、E6に規定されている最多粒子数の上
限または最少粒子数の下限のどちらかがその限度を超え
やすい状態にあることを示す。
【0017】また、上記異なる主応力の分布の強化ガラ
ス板は、細長い破砕片(細片)が発生しやすい傾向にあ
る。さらに、全般的に破砕片の最大面積が3cm2 を超
えやすい傾向にある。こうした傾向は、上記分布がまば
らすぎることに起因すると予測される。
【0018】特開昭55−104935号公報には、板
厚が2.5〜3.5mmの強化ガラス板についての記載
がある。この強化ガラス板は、850〜1350kg/
cm2 の平均表面圧縮応力を有する。そして、ガラス板
の平面内に作用する主応力を異にする区域が、散在して
形成されている。主応力の異なる区域では、その主応力
差の最大値が50〜300kg/cm2 の範囲内にあ
る。この最大値を示す区域間の距離が5mm以上15m
m未満の範囲にある。
【0019】ところで、この公報には、その実施例5に
板厚が2.5mmの強化ガラス板についての記載があ
る。このとき、この主応力差の最大値を示す区域間の距
離は、7.1〜9.0mmである。すなわち、ガラス板
の板厚が小さいと、上記の距離が短くなければ法規を満
足する強化ガラス板が得にくいことがわかる。この距離
が短いと、破砕試験時に強化ガラス板に発生するクラッ
クが迷走しやすくなる。迷走するということは、細かい
破砕片を得るためには有利である。
【0020】しかし、迷走するが故に、クラックの進行
は成り行きにまかせることになる。すなわち、クラック
の進行の仕方を自在にコントロールしにくくなる。一方
で、強化ガラス板の成形条件の少しの変化(例えば外気
温度等の変化)により、得られる強化ガラス板の応力値
や異なる主応力の分布に微妙な変化が生じる。特に薄い
ガラス板はその影響を受けやすい。そのため、クラック
の進行の仕方を自在にコントロールできないと、得られ
る応力値や上記の分布を予測しにくく、成形条件の抽出
等が煩雑になる。
【0021】特開昭58−91042号公報には、板厚
が2.4〜3.5mmの強化ガラス板についての記載が
ある。この強化ガラス板には、その表面に最大値が13
00kg/cm2 以下である表面圧縮応力が高い帯状領
域と、最小値が1020kg/cm2 以上である表面圧
縮応力が低い帯状領域とが、交互に形成されている。表
面圧縮応力の最大値と最小値との差は、80〜220k
g/cm2 である。そして、表面圧縮応力の低い帯状領
域では、主応力差の最大値が80kg/cm2以上であ
る。
【0022】この公報に開示された強化ガラス板のう
ち、板厚が2.4mmのガラス板に注目する。この場
合、表面圧縮応力の低い帯状領域の帯幅を小さくする
か、または、表面圧縮応力の低い帯状領域の主応力値を
大きくすることが求められている。表面圧縮応力の低い
帯状領域の帯幅を小さくすると、前述のクラックの迷走
を引き起こしやすくなる。表面圧縮応力の低い帯状領域
の主応力値を大きくすると、主応力差は元来引張応力な
ので、強化ガラス板の実用的な強度を得にくくなる可能
性がある。
【0023】特に、実用的な強度の面では、次の不具合
も予想される。すなわち、表面圧縮応力の低い帯状領域
とは、強化処理時に冷却風の噴流があたらない部分であ
る。そのため、板厚が2.4mmのガラス板では、ガラ
ス板の冷却風があたらない部分の表面圧縮応力を102
0kg/cm2 以上にすることは、実現性に乏しい。し
たがって、この部分の表面圧縮応力は、実際にはたかだ
か900kg/cm2程度のものと予想される。この場
合、作製される強化ガラス板では、実用的な強度が得ら
れていない。
【0024】なお、この公報にある実施例では、2.4
mmの板厚のガラス板の平均表面圧縮応力が開示されて
いる。例えば平均表面圧縮応力が1100kg/cm2
であり、表面圧縮応力の高低差が190kg/cm2
ある強化ガラス板の例示がある。ここで開示されている
のは、あくまでも圧縮応力の大きい値と小さい値との平
均値である。したがって、この公報では、実際に表面圧
縮応力の帯状領域の表面圧縮応力が1020kg/cm
2 である強化ガラス板が得られることを示していない。
【0025】このように、板厚が2.5mm程度のガラ
ス板に所定の主応力の分布が形成された、強化ガラス板
は公知である。しかし、実際には、2.5mm程度とい
う板厚では、これらの強化ガラス板は規格の満足が困難
であった。さらに、実際にこうした規格を満足する薄い
強化ガラス板を得るためには、設備上の問題点も多く実
現性の低いものであった。特に、複曲面形状に曲げ成形
されたガラス板や大面積のガラス板では、設備上の問題
点は著しい。
【0026】すなわち、概念的には主応力の異なる領域
の分布を密にすることは、規格を満足する方向へ向か
う。ところが、そのためには、ノズルをガラス板に近づ
ける、各ノズル間の距離(ピッチ)を短くする、等の手
段が必要になる。その結果、ガラス板に衝突した後の冷
却風の逃げ道が確保できなくなる不具合は、先に述べた
とおりである。
【0027】本発明の目的は、板厚の薄い強化ガラス板
と、そのような強化ガラス板を容易に得るためのガラス
板の冷却方法および冷却装置を提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】本発明は、板厚が2.3
〜3.5mmであり、1000〜1300kg/cm2
の平均表面圧縮応力が形成された強化ガラス板であっ
て、前記ガラス板面には、120kg/cm2 以下の大
きさでありかつ近接周辺の主応力差に比べて大きい主応
力差を有し、主応力方向が互いに略平行である複数の基
準点aであって、隣り合う基準点a、a間にそれらの基
準点の主応力差以上の主応力差を有する点が存在しない
基準点aの群により形成される基準直線を中心線とす
る、幅が10〜30mmの範囲内にある、複数の互いに
平行な帯状領域Aと、隣り合う帯状領域A、A間に挟ま
れて形成された帯状領域Bと、が形成されており、帯状
領域Bには、近接周辺の主応力差に比べて大きい主応力
差を有する複数の基準点bが散在し、かつ基準点bにお
ける主応力方向が隣接する基準点bにおける主応力方向
と異なるものである、ことを特徴とする強化ガラス板を
提供する。
【0029】また、本発明は、板厚が2.3〜3.5m
mであり、1000〜1300kg/cm2 の平均表面
圧縮応力が形成された強化ガラス板であって、前記ガラ
ス板面には、120kg/cm2 以下の大きさでありか
つ近接周辺の主応力差に比べて大きい主応力差を有し、
主応力方向が互いに略平行である複数の基準点aであっ
て、前記主応力方向と異なる方向を向く近接周辺の主応
力差に比べて大きい主応力差を有する点が、隣り合う基
準点a、a間に存在しない基準点aの群により形成され
る基準直線を中心線とする、幅が10〜30mmの範囲
内にある、複数の互いに平行な帯状領域Aと、隣り合う
帯状領域A、A間に挟まれて形成された帯状領域Bと、
が形成されており、帯状領域Bには、近接周辺の主応力
差に比べて大きい主応力差を有する複数の基準点bが散
在し、かつ基準点bにおける主応力方向が隣接する基準
点bにおける主応力方向と異なるものである、ことを特
徴とする強化ガラス板を提供する。
【0030】また、本発明は、加熱されたガラス板を、
該ガラス板の両面に対向配置された複数のノズルを有す
る一対の風箱間に搬送し、風箱から供給される冷却風を
前記複数のノズルからガラス板面に吹き付けることによ
りガラス板を強化するガラス板の冷却方法であって、前
記複数のノズルのうちの少なくとも一方のガラス板面側
に配される各ノズルは、同時に複数の方向に向けて冷却
風を噴出するように複数の開口孔が設けられたものであ
って、前記ノズルの開口孔からガラス板に向かう冷却風
の噴流の吹き付け方向線とガラス板面との交点がガラス
板面上にほぼ均一に並ぶように、ガラス板に向けて冷却
風を吹き付けることを特徴とするガラス板の冷却方法を
提供する。
【0031】さらに、本発明は、加熱されたガラス板
を、該ガラス板の両面に対向配置された複数のノズルを
有する一対の風箱間に搬送し、風箱から供給される冷却
風を前記複数のノズルからガラス板面に吹き付けること
によりガラス板を強化するガラス板の冷却方法であっ
て、ガラス板に対向する側の先端面が凸状曲面形状とさ
れ、かつ風箱内から供給される冷却風をガラス板に向け
て吹き付ける複数の開口孔が前記先端面に設けられた中
空管状の複数のノズルを、ガラス板の少なくとも一方の
面側に配し、これらノズルからガラス板に向けて冷却風
を吹き付けることを特徴とするガラス板の冷却方法を提
供する。
【0032】さらに、本発明は、ガラス板の両面に対向
配置された風箱と、該風箱のガラス板側に装着された複
数のノズルとを少なくとも有し、所定の温度に加熱され
たガラス板に向けて各ノズルから噴出する冷却風を吹き
付けるガラス板の冷却装置において、前記ノズルは、ガ
ラス板に対向する側に凸状曲面形状の先端面を有する中
空管状のものであって、前記先端面には、風箱内から供
給される冷却風をガラス板に向けて吹き付ける複数の開
口孔が設けられていることを特徴とするガラス板の冷却
装置を提供する。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明をさら
に詳細に説明する。図1は、本発明の強化ガラス板の一
例を示す概念図、図2はその拡大概念図であり、強化ガ
ラス板に形成されている主応力を説明するためのもので
ある。図中の矢印は、各基準点の主応力方向を示す。図
中の○印は、後に説明する冷却風の噴流がガラス板に衝
突する点を示す。図中・印は、各基準点を示す。
【0034】強化ガラス板10の板厚は、2.3〜3.
5mmの範囲内にある。なお、実際にガラス板を冷却す
る際の外気温等の諸条件が充分に満足されない特殊な場
合には、以下に説明する冷却風の能力が不足することが
ある。そのため、より現実的でありかつ本発明を効果的
に実現できる好ましい板厚は、2.5〜3.1mmであ
る。強化ガラス板10の表面に形成された圧縮応力の平
均値は、1000〜1300kg/cm2 の範囲内にあ
る。強化ガラス板10の表面には、帯状領域Aと帯状領
域Bとが、交互に形成されている。
【0035】帯状領域Aは、基準点aの群により形成さ
れる基準直線Tを中心線とする、幅La が10〜30m
mの範囲内にある帯状の領域である。基準点aは、12
0kg/cm2 以下の主応力差を有する点でありかつ近
接周辺の主応力差に比べて大きい主応力差を有する点で
ある。そして、基準点aは、隣り合う基準点a、a間
に、(a)それらの点の主応力差以上の主応力差を有す
る点が存在しないように選ばれた点である。または、基
準点aは、隣り合う基準点a、a間に、(b)基準点a
での主応力方向と異なる方向を向くような、近接周辺の
主応力差に比べて大きい主応力差を有する点が存在しな
いように選ばれた点である。基準点aの主応力方向は、
それぞれ互いに略平行である。その方向は、帯状領域A
の長手方向に対し略垂直な方向である。図中の、一組の
隣り合う基準点a、a間の距離Lcと、もう一組の隣り
合う基準点a、a間の距離Ld との和(Lc +Ld
は、40〜60mmの範囲内にある。
【0036】帯状領域Bには、近接周辺の主応力差に比
べて大きい主応力差を有する複数の基準点bが散在す
る。基準点bは、その点における主応力方向が隣接する
基準点bにおける主応力方向と異なるものである。
【0037】本例の強化ガラス板10では、1つの帯状
領域Bにおける基準点bの主応力方向をたどって形成さ
れる線は、蛇行している。そのうち、帯状領域Aとの境
界に近い基準点b(以下この基準点をbA という)にお
ける主応力方向は、基準点aにおける主応力方向に対し
略垂直である。
【0038】また、本例の強化ガラス板10において、
基準点bは次の2つのグループに大別できる。基準点b
の第1のグループは基準点bA のことであり、基準点a
の主応力方向に略垂直な方向に主応力方向を有するもの
である。そして、各々の帯状領域Bにおいて、基準直線
(T)方向にみて、隣り合う一方の帯状領域Aとの境界
の近傍と隣り合うもう一方の帯状領域Aとの境界の近傍
とに交互に配されているグループである。一方、基準点
bの第2のグループは、第1のグループのうちの隣り合
う一方の帯状領域Aとの境界の近傍にある基準点bA
と、この基準点bA に隣接するもう一方の帯状領域Aと
の境界の近傍にある基準点bA とを結ぶ方向に略一致す
る方向に主応力方向を有する。そして、この2つの第1
のグループの基準点bA 間に配されたものである。
【0039】ところで、基準点aどうしの主応力方向は
互いに略平行であると説明した。また、基準点bA にお
ける主応力方向は基準点aにおける主応力方向に対し略
垂直であると説明した。これは、本発明において、主応
力方向を説明する「略平行」、「略垂直」は、厳密に
「平行」、「垂直」でなくてもよいことを示すものであ
る。すなわち、本発明において「略平行」、「略垂直」
であることは、板厚の薄いガラス板が法規を満足しうる
ような主応力の分布を有する程度に、「平行」、「垂
直」であることを意味する。これを詳しく説明する。
【0040】本発明における強化ガラス板は、加熱され
たガラス板に冷却風を吹き付けて急冷して得られる。こ
の場合、冷却風の噴流がガラス板に衝突する点をガラス
板面上に散在させることによって、主応力の分布が得ら
れる。一方で、主応力差の生成は急冷の度合に依存する
が、外気温の違いなどにより、急冷の度合を常に一定に
保つことは困難である。そのため、主応力方向が所定の
方向(平行、垂直)を向くように冷却風の設定をして
も、必ずしも厳密に所定の方向(平行、垂直)を向かな
いことがある。こうした事情を考慮して、所定の方向
(平行、垂直)と若干方向が違っていても法規を満足し
うる強化ガラス板であれば、本発明の強化ガラス板に含
まれる。なお、クラックの進行のコントロール精度が高
い観点から、主応力方向が厳密に所定の方向(平行、垂
直)を向いていることは好ましい。同様の理由で、厳密
な「直線」から若干ずれた線も「基準直線(T)」に含
まれるものとする。
【0041】こうした主応力の分布を有する強化ガラス
板が、板厚が薄くても規格を充分に満足できる理由は、
次のとおりである。まず、本発明の強化ガラス板は以下
の(1)、(2)の特性をともに満たす。 (1)120≦σa 、好ましくは40≦σa ≦80(単
位kg/cm2 、σa ;基準点aの主応力差)。 (2)10≦La ≦30(単位mm)。
【0042】本発明の強化ガラス板は(1)、(2)の
特性に加えて、さらに、以下の(3)〜(6)から選ば
れる1以上の特性を満たすことが好ましい。 (3)10≦Lb ≦30(単位mm)。 (4)50≧σb (単位kg/cm2 、σb ;基準点b
の主応力差)。 (5)基準点bでの主応力方向をたどった線は蛇行して
おり、帯状領域Aに近い基準点bでの主応力方向は基準
点aでの主応力方向に略垂直。 (6)40≦Lc +Ld ≦60、好ましくは20≦Lc
≦30かつ20≦Ld ≦30、より好ましくは20≦L
c ≦30かつ20≦Ld ≦30かつLc >Ld 。なお、
基準点bA を近傍に有する側がLc に相当し、これに隣
り合う組がLd に相当する。
【0043】一方、破砕試験における破砕片の数や大き
さは、クラックの進行の挙動に依存する。すなわち、ク
ラックが直線的に進行すると、それだけ破砕片は細長い
細片になりやすく、大きくなりやすい。そのため、なる
べくクラックを直線的に進行させないことが求められ
る。
【0044】基本的には、大きな主応力の存在によりク
ラックの直進を妨げることができる。クラックが主応力
方向に垂直な方向に曲がっていくからである。そして、
クラックが曲がった後に別のクラックに突き当たること
によって、破砕片が形成される。本発明の強化ガラス板
は、異なる主応力方向を有する基準点bが帯状領域Bに
散在しているので、クラックは帯状領域Aから帯状領域
Bに向かうことができる。ところが、σa の大きさが大
きすぎると、帯状領域Bに基準点bが存在していても、
帯状領域Aを進行するクラックを帯状領域Bに向けるこ
とができなくなる。
【0045】そこで、(1)を満足することによって、
帯状領域Aにおいてこの領域の長手方向に平行に進行す
るクラックがそのまま進行し続けることを防止する(基
準点aの主応力方向は、この場合のクラックの進行方向
に合致する方向へクラックを導くものである。)。40
>σa であると、クラックの進行をコントロールしにく
く、80<σa であると、基準点bの主応力差や主応力
方向に微妙な制約が生じやすい。そのため、40≦σa
≦80であることは、特に好ましい。
【0046】(1)を満足していても、上記のクラック
の進行を妨げにくい場合がある。それは、La が大きす
ぎる場合である。すなわち、帯状領域Aを進行するクラ
ックの進行方向を曲げる役割を担っているのは、基準点
bの主応力である。そこで、基準点bの主応力の影響を
受けやすくするためにLa ≦30とするものである。逆
にLa が小さすぎると、帯状領域Bから帯状領域Aに向
かって進行してきたクラックを曲げにくくなる。そのた
め、(1)を満足しつつ(2)を満足する必要があるわ
けである。
【0047】(3)を満足することが好ましい理由は、
(2)を満足すべき理由とほぼ同様である。一方で
(5)を満足する強化ガラス板では、帯状領域Bを進行
するクラックが、基準点bの主応力方向に垂直な方向に
曲がる。そのため、クラックをくねらせることができ、
(3)の範囲を若干超えていても、所望のクラックの進
行を実現しうる。
【0048】逆に、クラックの進行を所望の方向に導く
ためには、(4)を満足する強化ガラス板は好ましい。
σb <50であると、上記のクラックの進行をコントロ
ールしにくくなるからである。
【0049】基準点bA での主応力方向は、基準点aで
の主応力方向に略垂直であると、帯状領域Aを進行する
クラックを帯状領域Bに向けて曲げやすくなる。これに
より、帯状領域Aを進行するクラックの、帯状領域Aの
長手方向への進行を妨げることができる。(6)を満足
する場合、特にLc >Ld であると好ましい理由は、次
のとおりである。隣接する基準点a間の距離が離れてい
ると、この箇所に大破片が生じやすい。そこで、帯状領
域Aにおいて進行するクラックを帯状領域Bに向けて曲
げてやり、大破片の発生を抑制することが求められる。
そのため、離れた距離に設けられた隣接する基準点aの
近傍に、基準点bA が設けられることが好ましい。した
がって、Lc >Ld とすることによって、帯状領域Aに
おいて進行するクラックを帯状領域Bに向けて曲げるこ
とができ、帯状領域Aでの大破片を抑制できる。
【0050】このように、クラックのコントロールには
複数の要素が相互に影響を及ぼしあう。特にガラス板の
板厚が薄い場合には、もともとガラス板面とガラス板内
部とに温度差を与えにくい。そのため、単純なクラック
の進行のコントロールでは、法規を満足する破砕が得ら
れない。そこで、本発明の強化ガラス板は(1)、
(2)の主応力特性を有するものであり、さらに(3)
〜(6)の主応力特性を有することが好ましいわけであ
る。
【0051】次に、応力値の測定方法について説明す
る。 (A)表面圧縮応力の測定 表面圧縮応力の測定は、JIS R3222に準じて行
う。JIS R3222は、倍強度ガラス板に関するも
のである。ここでの測定は、供試体が倍強度ガラス板な
ので、本発明の強化ガラス板を供試体として測定するこ
とになる。測定点についての規定もあるが、本発明の強
化ガラス板の圧縮応力を測定する際には、この規定にと
らわれず適宜の複数点を測定する。その後、得られた複
数点の表面圧縮応力の平均値を求める。
【0052】測定点としては、ガラス板の中心点から半
径50mmの円内にある点を選ぶことが好ましい。特
に、表面圧縮応力値が最大値に近いと予想される点と最
小値に近いと予想される点を、それぞれ同数選ぶことが
好ましい。なお、ガラス板を冷却するための冷却風の噴
流の吹き付け方向線とガラス板面との交点で、表面圧縮
応力値が最大値になると考えるのが自然である。この交
点について隣り合う2点の中間点で、表面圧縮応力値が
最小値になると考えるのが自然である。
【0053】(B)主応力方向、主応力差の測定 図7に、主応力方向、主応力差の測定装置を示す。基本
的には、強化ガラス板10に円偏光光線を入射させ、強
化ガラス板10の歪の影響で楕円偏光となった透過光の
偏光状態を測定することによって、主応力方向、主応力
差を求める。光源41から発せられた光線は、偏光子4
2を通過させて直線偏光になる。その後、1/4波長板
43を透過させて円偏光とする。強化ガラス板10の背
後には検光子45が配されている。
【0054】強化ガラス板10は、入射する光線に対し
垂直に配しておく。強化ガラス板10に入射した円偏光
光線は、強化ガラス板10を透過し、強化ガラス板10
の応力歪に応じて楕円偏光となる。こうして得られた楕
円偏光光線を、回転する検光子45を通した後に光検出
器46の出力を測定することにより、楕円偏光の状態を
知ることができる。
【0055】主応力方向、主応力差は、得られた楕円偏
光の状態から次のように求められる。主応力方向をθ
1 、θ2 、主応力差に対応する位相差をδとする。光検
出器の出力I(φ)は式(1)で与えられる(ただし、
kは比例定数、φは検光子の回転角度である。)。光検
出器の出力の最小値Imin と最大値Imax との比は楕円
率Rである。Rとδとは式(2)すなわち式(3)の関
係にある(δ>0とする。)。したがって、位相差δ、
主応力方向θ1 、θ2 は式(4)、式(5)で表され
る。
【0056】すなわち、楕円偏光の楕円率Rと検光子の
回転角度φ(最大、最小の出力値が得られるときの楕円
の長軸角度)を求めることにより、主応力差、主応力方
向を求めることができる。なお、主応力差Δσとこれに
対応するδとの関係は式(6)で表される。ここで、c
は光弾性定数(=2.63nm/cm/kg/cm
2 )、tは強化ガラス板10の板厚、λは光源41から
発せられる光の波長であり、本応力測定装置ではλ=6
23.8nmである。
【0057】
【数1】 I(φ)=k{1−sinδ・sin2(θ−φ)} ・・・(1) R=Imin /Imax =(1−sinδ)/(1+sinδ)・・・(2) δ=sin-1{(1−R)/(1+R)} ・・・(3) θ1 =φ+π/4±nπ ・・・(4) θ2 =φ−π/4±nπ ・・・(5) Δσ=λδ/(360ct) ・・・(6)
【0058】なお、この応力測定装置において、光源4
1にはHe−Neレーザを使用した。強化ガラス板の強
化むら等の微小変化を検出するために、微小点に光線を
絞れるからである。偏光子42には偏光性のよいグラム
トムソンプリズムを使用した。リファレンス光の取出し
のために、偏光子42と1/4波長板43との間にガラ
ス板47を配置した。このリファレンス光を検出するに
あたり、外光の影響を少なくするために、ガラス板47
とリファレンス光検出器48との間に干渉フィルタ49
を配した。1/4波長板43には、水晶を研磨し、63
2.8nmの波長に対しπ/2の位相差を生じさせるも
のを用いた。回転検光子45には、偏光子42と同じ素
子を用いた。光検出器46には、リファレンス光用と同
様に外光の影響を小さくするために前面に干渉フィルタ
を配した太陽電池を使用した。
【0059】こうして主応力差および主応力方向を多数
点測定することによって、本発明における基準点a、b
を定めることができる。なお、基準点a、bを定めるこ
とによって、La 、Lb 、Lc 、Ld を定めることがで
きる。
【0060】上記の本発明の強化ガラス板を作製するた
めの好ましい方法を、以下に説明する。図3は、本発明
のガラス板の冷却装置の一例を示す概略断面図である。
本発明のガラス板の冷却装置は、ガラス板1の両面に対
向配置される風箱11、11’および風箱11、11’
のガラス板1側に装着された複数のノズル12とを、主
要構成部材としてなる。
【0061】風箱11、11’に装着されたそれぞれの
ノズル12群にて形成される面は、ガラス板1の形状に
概略一致している。加熱炉(図示せず)内にて軟化点付
近まで加熱され、必要に応じて曲げ成形されたガラス板
1は、風箱11、11’間に搬送される。この場合、ガ
ラス板1は駆動機構に連結されたリング等の適宜の搬送
手段に、水平状態で保持されて、風箱11、11’間に
搬送される。風箱11、11’間にガラス板1が搬送さ
れると、各ノズル12から所定の温度、圧力の冷却風
が、ガラス板1に向けて吹き付けられる。こうして、ガ
ラス板1は急冷され、所望の強化処理されたガラス板と
される。
【0062】図4は、本発明におけるノズルの一例を示
す概略斜視図(a)、概略上面図(b)である。ノズル
12は中空管状を呈しており、そのガラス板1に対向す
る側の先端面12aは、ガラス板1に対向する側を凸側
面とする部分球面形状を呈している。
【0063】先端面12aには、冷却風をガラス板1に
向けて吹き付ける複数の開口孔20が設けられている。
これら開口孔20は、ノズル12の長手方向中心線のま
わりに例えば放射状に点在するように、先端面12aの
全面にまんべんなく設けられている。なお、図5は本発
明におけるノズルの他の例を示す概略上面図である。
【0064】このように、ノズルの先端面の形状を凸状
曲面形状としこの先端面に複数の開口孔を設けることに
よって、ノズルから噴出させた冷却風がガラス板に吹き
付けられた後の冷却風の逃げ道を確保しつつ、かつガラ
ス板面の単位面積当りに衝突する噴流の数を増加させる
ことができる。
【0065】図6に示すように、ノズル12からガラス
板1に向かう噴流の吹き付け方向線とガラス板1面との
交点Pがガラス板1面上にほぼ均一に並ぶように、ノズ
ル12からガラス板1に向けて冷却風を吹き付ける。こ
の場合、ガラス板1面上において、交点Pを10cm角
あたり30点以上にすることが好ましく、そのためには
ノズルのピッチ、ノズルの開口孔の分布、ノズル先端と
ガラス板面との間の間隔を適宜調整することになる。
【0066】この調整の際には、吹き付け方向線とガラ
ス板面とのなす角を45°以下、ノズル先端とガラス板
面との間の間隔を開口孔の開口径の4〜6倍程度にする
ことが、所定の破砕片を得つつ充分なガラス板の強度を
得るために好ましい。これによって、冷却効率を下げず
にガラス板面方向の応力分布を密(ガラス板面方向に作
用する主応力が異なる区域間の距離が短い)にすること
ができ、ガラス板の破損時の破砕を細かくできる。
【0067】特に、ガラス板の厚みが小さい場合、上記
の細かい破砕を得るためには冷却風の冷却能を高める必
要があった。すなわち、原理的には冷却能を高めれば、
厚みが例えば2.3〜3.5mm程度の薄いガラス板で
あっても、破損時に細かい破砕が得られる。しかし、冷
却能を高めると冷却の初期段階においてガラス板面に一
時的に発生する引張応力により、ガラス板が割れる恐れ
がある。さらに現実的には、冷却能をやみくもに高める
ことが機械構造上困難であることは上述のとおりであ
る。そのため、冷却能を特別に高めることなく破損時の
破砕の細かいガラス板を、本発明によって得ることが可
能となった。
【0068】さらに、ガラス板が複雑形状(例えば3次
元的に複曲面を有するように曲げ成形されたガラス板、
特にその湾曲面の弧の深さが20mmほどにもなるも
の)であると、ガラス板の均一な冷却に必要な大きな揺
動を与えることが困難になる。そこで、上記のようなノ
ズル形状とすることによって開口孔を密に配置している
ので、風箱間にてガラス板に与える揺動のストロークを
短くできる。
【0069】本発明におけるガラス板の冷却装置は上記
例に限定されず、例えば、ガラス板は風箱間に水平状態
で保持されて搬送されてもよく、垂直状態で保持されて
搬送されてもよい。これに伴って、風箱は図示のように
上下に対向配置されるものに限られず、ガラス板の垂直
状態での保持にあわせて配置することもできる。
【0070】ノズル群が形成する面の形状は、ガラス板
の形状に応じて適宜設定できる。ノズルの先端面からガ
ラス板までの距離が、各ノズルでほぼ等しくなること
が、所定の応力をガラス板に付与できる点から好まし
い。そのため、ノズル群が形成する面の形状はガラス板
の形状にほぼ一致した形状であることが好ましい。な
お、各ノズルから噴出される冷却風の温度や風量、圧力
等を、各々のノズルで適宜制御することや、各々のノズ
ル間のピッチ等を適宜調整することによって、ノズル群
が形成する面の形状を、ガラス板の形状によらずに設定
することもできる。
【0071】風箱内からノズルに向けて供給される冷却
風は、風箱に連結されたブロア装置やコンプレッサ等か
ら風箱に供給された冷却風が、風箱を経て各ノズルに供
給されるものでもよく、風箱内を複数のブロックに分割
して、各々のブロックにブロア装置やコンプレッサ等か
ら冷却風を供給してもよい。
【0072】また、各ノズルに設けられる開口孔の形
状、数、配置位置等は、それぞれ同一であってもよく、
それぞれ異なっていてもよい。これらは、与えようとす
るガラス板の応力分布に応じて、適宜決定される。
【0073】ガラス板の形状は、所定の曲率に曲げ成形
されたものであっても平板状のものであってもよく、特
に制限はない。本発明の目的に鑑みて、本発明のガラス
板の冷却装置は、複曲面を有する曲げ形状等の複雑な形
状に曲げ成形されたガラス板を冷却する際に、特に効果
的に用いられる。
【0074】ガラス板に冷却風が吹き付けられる直前の
温度は、ガラス板の軟化点付近温度が好ましく、620
〜700℃が例示される。これは、通常自動車用のガラ
ス板が曲げ成形される温度まで加熱され、曲げ成形工程
の直後に、冷却工程により強化処理が施されるからであ
る。
【0075】本発明のガラス板の冷却装置によって効果
的に所望の応力を有するように強化処理が施されるガラ
ス板としては、その板厚が2.3〜3.5mmのものが
好ましく例示される。これは、厚みの小さいガラス板の
場合、従来の装置では冷却能を高めなければ破損時に細
かい破砕が得られる強化ガラス板の実現が困難であった
のに対し、本発明のガラス板の冷却装置が、冷却能を高
めることなく破損時に細かい破砕片が得られる強化ガラ
ス板を実現できるからである。
【0076】なお、このように本発明の強化ガラス板と
して、または本発明のガラス板の冷却方法、装置によ
り、従来にない効果的な所望の強化ガラス板が得られる
ガラス板の寸法としては、(800〜1500)×(5
00〜1000)mm程度のものが、好ましく例示され
る。また、こうしたガラス板の弧の深さとしては、10
〜30mmが好ましく例示される。
【0077】
【実施例】表1に示す形状のガラス板を、表1中の冷却
条件にて強化処理し、例1〜例10の強化ガラス板を作
製した。また、表1に示す形状のガラス板を、表1中の
冷却条件にて強化処理のシミュレーションをし、例11
〜例14の強化ガラス板モデルを作製した。例1〜例5
では、図3、図4に示す装置を用いて強化処理をした。
例6〜例10では、従来のノズルを有する装置(ノズル
ピッチ大)を用いて強化処理をした。
【0078】なお、表1中の「深さ」(W)はガラス板
の短辺方向の曲げ(弧)の深さ(単位mm)、「温度」
は冷却開始時のガラス板の温度(単位℃)、「距離」は
ノズルの先端面からガラス板面までの距離(単位mm)
である。また、ガラス板の厚さ(t)、寸法(x×y)
の単位はmm、風圧の単位はmmAqである。寸法等の
特定は、図8を参照する。深さWは、図示の箇所がもっ
とも大きくなるように断面を考えて特定する。
【0079】こうして得られた強化ガラス板は、表2に
示す各物性値の強化ガラス板となった。表2中、最大表
面圧縮応力σmax 、最小表面圧縮応力σmin 、主応力差
σa、σb 、距離La 、Lb 、Lc 、Ld は、それぞれ
上述の(A)表面圧縮応力の測定、(B)主応力方向、
主応力差の測定に基づき行った。σmax 、σmin 、σ
a 、σb の単位はそれぞれkg/cm2 、La 、Lb
c 、Ld の単位はそれぞれmmである。
【0080】こうして強化処理の施されたガラス板につ
いて、JIS R3212に規定する強化ガラス板破砕
試験に準拠する試験を行い、表3に示す結果が得られた
(表3中「−」は未測定)。表3中の「衝撃点」は、上
記JIS R3206の試験における複曲面の供試体の
衝撃点を、最少粒子数Nmin は、JIS R3211の
自動車用安全ガラスの強化ガラス板の破砕片の状態(J
IS R3211の表5)のうち、衝撃点の周辺であっ
て衝撃点から75mmを超えた位置の50×50mmの
正方形の領域内にある破砕片数が最も少なくなるように
選んだ領域内の破砕片数を、最多粒子数Nmax は、上記
の破砕片の状態のうち、衝撃点の周辺であって衝撃点か
ら75mmを超えた位置の50×50mmの正方形の領
域内にある破砕片数が最も多くなるように選んだ領域内
の破砕片数を、「細片数」は、長さが75mmを超え、
150mm以下の細長い破砕片の数を、「大破片面積」
は、最大破砕片の面積を、それぞれ示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】例3と例6とを比較すると、自動車用安全
ガラスの規格を満足する強化ガラス板を得るためには、
例3(本発明の方法・装置を用いた例)では1400m
mAqの風圧の冷却風で充分であるのに対し、例6(従
来のノズルを用いた例)では2300mmAqの風圧の
冷却風が必要であることがわかる。また、例6〜例10
では、例1〜例5に比べて最少粒子数が少ない。従来の
装置では冷却風の逃げ道を確保するためにノズルを密に
配置することが困難であることから、破砕片が細かくな
りにくいことがわかる。
【0085】例11〜例14はシミュレーションにより
得た強化ガラス板モデルなので、これらモデルからは実
際の破砕に基づく破砕の状態ではなく破砕の傾向がわか
る。例1と例11とを比較すると、σa がLa に対して
小さい(La がσa に見合わないほど大きすぎる)と帯
状領域Aでのクラックの進行を妨げられず、細片が発生
することがわかる。例1と例12とを比較すると、Lb
がLc 、Ld に見合わないほど大きすぎると、帯状領域
Bでのクラックの交錯を実現できず、大破片が発生する
ことがわかる。例1と例13とを比較すると、Lc <L
d であると、La を小さくしないと大破片が発生するこ
とがわかる。例1と例14とを比較すると、σb が小さ
すぎることにより、大破片が発生することがわかる。
【0086】
【発明の効果】本発明の強化ガラス板によれば、
(1)、(2)の主応力特性を、さらに好ましくは
(3)〜(6)のうち1以上の主応力特性を、満たすこ
とによって、法規を満足する破砕が得られるように、ク
ラックの進行をコントロールできる。これにより、特に
ガラス板の板厚が薄い場合であっても、法規を満足する
強化ガラス板を得ることができた。
【0087】また、本発明によれば、曲面形状の先端面
に前記先端面に風箱内から供給される冷却風をガラス板
に向けて吹き付ける複数の開口孔が設けられたノズルを
用いている。これにより、従来のガラス板の強化方法お
よび装置で充分な強化度が得られない板厚の薄いガラス
板に対して、自動車用窓ガラス板の安全法規を満足する
ために充分な強化度の強化ガラス板を製造できるという
優れた効果が得られる。
【0088】こうして、本発明によれば、板厚の厚いガ
ラス板に適用されていた従来の強化方法および装置に比
較して、少ない風量で従来の強化方法および装置により
強化された強化ガラス板と同等の強化度を実現できると
いう優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の強化ガラス板の一例を示す概念図
【図2】図1の拡大概念図。
【図3】本発明のガラス板の冷却装置の一例を示す概略
断面図。
【図4】本発明におけるノズルの一例を示す概略斜視図
(a)、概略上面図(b)。
【図5】本発明におけるノズルの他の一例を示す概略上
面図。
【図6】本発明における冷却風の吹き付け状態の一例を
示す概念図。
【図7】主応力方向、主応力差を求めるために用いる測
定装置の概念図。
【図8】ガラス板の寸法等について説明するための正面
図(a)、断面図(b)。
【符号の説明】
1:ガラス板 11、11’:風箱 12:ノズル 20:開口孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 聡 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】板厚が2.3〜3.5mmであり、100
    0〜1300kg/cm2 の平均表面圧縮応力が形成さ
    れた強化ガラス板であって、 前記ガラス板面には、120kg/cm2 以下の大きさ
    でありかつ近接周辺の主応力差に比べて大きい主応力差
    を有し、主応力方向が互いに略平行である複数の基準点
    aであって、隣り合う基準点a、a間にそれらの基準点
    の主応力差以上の主応力差を有する点が存在しない基準
    点aの群により形成される基準直線を中心線とする、幅
    が10〜30mmの範囲内にある、複数の互いに平行な
    帯状領域Aと、隣り合う帯状領域A、A間に挟まれて形
    成された帯状領域Bと、が形成されており、 帯状領域Bには、近接周辺の主応力差に比べて大きい主
    応力差を有する複数の基準点bが散在し、かつ基準点b
    における主応力方向が隣接する基準点bにおける主応力
    方向と異なるものである、ことを特徴とする強化ガラス
    板。
  2. 【請求項2】板厚が2.3〜3.5mmであり、100
    0〜1300kg/cm2 の平均表面圧縮応力が形成さ
    れた強化ガラス板であって、 前記ガラス板面には、120kg/cm2 以下の大きさ
    でありかつ近接周辺の主応力差に比べて大きい主応力差
    を有し、主応力方向が互いに略平行である複数の基準点
    aであって、前記主応力方向と異なる方向を向く近接周
    辺の主応力差に比べて大きい主応力差を有する点が、隣
    り合う基準点a、a間に存在しない基準点aの群により
    形成される基準直線を中心線とする、幅が10〜30m
    mの範囲内にある、複数の互いに平行な帯状領域Aと、
    隣り合う帯状領域A、A間に挟まれて形成された帯状領
    域Bと、が形成されており、 帯状領域Bには、近接周辺の主応力差に比べて大きい主
    応力差を有する複数の基準点bが散在し、かつ基準点b
    における主応力方向が隣接する基準点bにおける主応力
    方向と異なるものである、ことを特徴とする強化ガラス
    板。
  3. 【請求項3】帯状領域Bの幅が10〜30mmの範囲内
    にあることを特徴とする請求項1または2に記載の強化
    ガラス板。
  4. 【請求項4】基準点aにおける主応力差が40〜80k
    g/cm2 の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜
    3のいずれかに記載の強化ガラス板。
  5. 【請求項5】基準点bにおける主応力差が50kg/c
    2 以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれ
    かに記載の強化ガラス板。
  6. 【請求項6】各々の帯状領域Bにおける基準点bの主応
    力方向には、基準点aの主応力方向に略垂直な方向が含
    まれており、かつ各々の帯状領域Bにおける基準点bの
    主応力方向をなぞって形成された線が蛇行状であること
    を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の強化ガラ
    ス板。
  7. 【請求項7】基準点bは2つのグループに大別されるも
    のであり、基準点bの第1のグループは、基準点aの主
    応力方向に略垂直な方向に主応力方向を有するものであ
    り、かつ、各々の帯状領域Bにおいて、基準直線方向に
    みて、隣り合う一方の帯状領域Aとの境界の近傍と隣り
    合うもう一方の帯状領域Aとの境界の近傍とに交互に配
    されており、基準点bの第2のグループは、第1のグル
    ープのうちの隣り合う一方の帯状領域Aとの境界の近傍
    にある基準点bと、この基準点bに隣接しかつもう一方
    の帯状領域Aとの境界の近傍にある基準点bとを結ぶ方
    向に略一致する方向に主応力方向を有し、かつ当該2つ
    の基準点b、b間に配されていることを特徴とする請求
    項1〜6のいずれかに記載の強化ガラス板。
  8. 【請求項8】加熱されたガラス板を、該ガラス板の両面
    に対向配置された複数のノズルを有する一対の風箱間に
    搬送し、風箱から供給される冷却風を前記複数のノズル
    からガラス板面に吹き付けることによりガラス板を強化
    するガラス板の冷却方法であって、前記複数のノズルの
    うちの少なくとも一方のガラス板面側に配される各ノズ
    ルは、同時に複数の方向に向けて冷却風を噴出するよう
    に複数の開口孔が設けられたものであって、前記ノズル
    の開口孔からガラス板に向かう冷却風の噴流の吹き付け
    方向線とガラス板面との交点がガラス板面上にほぼ均一
    に並ぶように、ガラス板に向けて冷却風を吹き付けるこ
    とを特徴とするガラス板の冷却方法。
  9. 【請求項9】ガラス板面における前記交点が10cm角
    あたり30個以上となるように、ガラス板に向けて冷却
    風を吹き付けることを特徴とする請求項8記載のガラス
    板の冷却方法。
  10. 【請求項10】加熱されたガラス板を、該ガラス板の両
    面に対向配置された複数のノズルを有する一対の風箱間
    に搬送し、風箱から供給される冷却風を前記複数のノズ
    ルからガラス板面に吹き付けることによりガラス板を強
    化するガラス板の冷却方法であって、ガラス板に対向す
    る側の先端面が凸状曲面形状とされ、かつ風箱内から供
    給される冷却風をガラス板に向けて吹き付ける複数の開
    口孔が前記先端面に設けられた中空管状の複数のノズル
    を、ガラス板の少なくとも一方の面側に配し、これらノ
    ズルからガラス板に向けて冷却風を吹き付けることを特
    徴とするガラス板の冷却方法。
  11. 【請求項11】ガラス板の両面に対向配置された風箱
    と、該風箱のガラス板側に装着された複数のノズルとを
    少なくとも有し、所定の温度に加熱されたガラス板に向
    けて各ノズルから噴出する冷却風を吹き付けるガラス板
    の冷却装置において、前記ノズルは、ガラス板に対向す
    る側に凸状曲面形状の先端面を有する中空管状のもので
    あって、前記先端面には、風箱内から供給される冷却風
    をガラス板に向けて吹き付ける複数の開口孔が設けられ
    ていることを特徴とするガラス板の冷却装置。
  12. 【請求項12】前記ノズルの先端面に設けられる複数の
    開口孔は、前記先端面にまんべんなく設けられているこ
    とを特徴とする請求項11記載のガラス板の冷却装置。
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