JPH11229232A - 炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法

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JPH11229232A
JPH11229232A JP10037241A JP3724198A JPH11229232A JP H11229232 A JPH11229232 A JP H11229232A JP 10037241 A JP10037241 A JP 10037241A JP 3724198 A JP3724198 A JP 3724198A JP H11229232 A JPH11229232 A JP H11229232A
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acrylonitrile
fiber
carbon fiber
polymer
spinning
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JP10037241A
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Mitsuo Hamada
光夫 浜田
Yoshihiko Hosako
芳彦 宝迫
Teruyuki Yamada
輝之 山田
Tatsuji Shimizu
龍兒 清水
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、繊維構造を緻密化、均質化するこ
とにより、炭素繊維にしたときも容易に高強度と高弾性
率を発現し得る炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊
維、およびその経済性に優れた製造方法を提供すること
を目的とする。 【解決手段】 モノマー成分としてアクリロニトリルを
98重量%以上含みカルボン酸基を5.0×10-5
2.0×10-4当量/g含有するアクリロニトリル系重
合体と、アンモニアとを溶解したジメチルホルムアミド
またはジメチルスルホキシド溶液を紡糸原液として用い
て紡糸することを特徴とする炭素繊維用アクリロニトリ
ル系前駆体繊維の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は炭素繊維あるいは黒
鉛繊維製造用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法
に関し、特に高強度および高弾性を有する炭素繊維の製
造に好適な、緻密性の高い、アクリロニトリル系前駆体
繊維の製造方法およびこれによって得られる炭素繊維用
アクリロニトリル系前駆体繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、アクリル系繊維を前駆体とする炭
素繊維および黒鉛繊維(本出願では、一括して炭素繊維
という。)はその優れた力学的性質により、航空宇宙用
途を始め、スポーツ、レジャー用途の高性能複合材の補
強繊維素材として広い範囲で利用されている。さらに、
これらの複合材料の高性能化のために炭素繊維の品質、
性能の一層の向上が求められると共に、さらに製造コス
トの低減により産業資材用途への広がりが期待されてい
る。
【0003】炭素繊維の前駆体としてのアクリロニトリ
ル系繊維は、衣料用アクリル繊維とは異なりあくまでも
最終製品である炭素繊維を製造するための中間製品であ
る。従って、品質、性能の優れた炭素繊維を与えるよう
なものが求められると同時に、前駆体紡糸時の安定性に
優れ、かつ炭素繊維となす焼成工程において生産性が高
く、低コストで提供し得るものであることが極めて重要
である。
【0004】高性能な炭素繊維を製造する場合、その前
駆体となるアクリロニトリル系前駆体繊維は欠陥点のな
い高品質なものであることが必須であり、より緻密で均
質な繊維構造であることが必要条件である。このような
観点から数多くの提案がなされてきたが、その中で、原
料重合体の高重合度化、アクリロニトリル以外の共重合
成分含有量を低下させる等の提案がある。
【0005】このように原料重合体を高重合度化した
り、アクリロニトリル以外の共重合成分含有量を低下さ
せたりした場合、一般的に溶剤への溶解性が低下するの
で、原料重合体の溶剤として、例えばジメチルホルムア
ミドやジメチルスルホキシド等の溶解性の高い溶剤を用
いる。しかし、凝固の際に重合体の析出凝固性が著しく
高くなり、失透した凝固糸、即ちポーラスな繊維構造の
凝固糸になるという問題がある。
【0006】この失透を抑制するために、特公昭55−
23588号公報には、アクリロニトリル系共重合体の
有機溶剤溶液にアンモニアやアミン化合物などを配合す
ることが提案されている。しかしながら、この公報に記
載されているアクリロニトリル系共重合体は、耐炎化反
応の起点となるカルボン酸基含有ビニル系化合物以外に
スルホン酸基含有ビニル系化合物を含有することが必須
となっている。このようなコモノマーの含有は、焼成し
た際の欠陥点を増加させることになり、炭素繊維用前駆
体繊維としては好ましくない。
【0007】さらに、アクリロニトリル系前駆体繊維の
原料となるアクリロニトリル系重合体においては、繊維
への賦形性はもちろん、焼成工程での複雑な熱化学反応
について十分に考慮する必要がある。
【0008】すなわち、性能・品質ともに優れた炭素繊
維をより低製造コストにて得るためには、焼成熱処理に
より炭素構造に至らしめる際、フュージング(融着)発
生や炭素繊維性能低下の原因となる熱分解物生成が少な
く、かつ短時間の焼成でこれが可能であるような熱反応
特性であることが望ましい。
【0009】アクリロニトリル系繊維から炭素繊維への
転換には大幅な物理・化学的変化を伴い、両者の因果関
係は極めて不明瞭である。理論的な解明についても種々
研究されてきたが、未だ多くの未解決の問題を包含して
いるのが現状である。
【0010】アクリロニトリル系前駆体繊維を構成する
基本となるアクリロニトリル系重合体としていかなる重
合組成のものが好適かという点を、工業的な観点から定
量的に示したものは少ない。
【0011】従来提案されてきたものからその知見を纏
めてみると、炭素繊維前駆体用のアクリロニトリル系重
合体としては、アクリロニトリルがその重合組成におい
てある程度以上(約90重量%以上)含有されるものが
好ましいということ、また焼成過程を短時間で通過させ
るため適当な反応開始基、すなわちニトリル基の環化縮
合反応を促進する官能基(例えばカルボキシル基)を導
入することが有効であること、さらにこれらの条件をふ
まえながら、前駆体繊維への賦形を容易にすべく、その
他のコモノマーを添加することなどの方法が挙げられ
る。
【0012】これまで、例えば重合体組成中のアクリロ
ニトリル含有率が高い重合体を用いた場合、溶剤への溶
解性が低下し前駆体繊維の製造は極めて限定された方法
に依存せざるを得ず、原液濃度も希釈なものになること
から、炭素繊維性能・紡糸賦形性において十分満足なも
のとなっていない。
【0013】また、紡糸賦形における自由度を広げるべ
く共重合成分の含有量を増加したものは、これを用いた
前駆体繊維の焼成熱処理においてフュージング(融着)
が生じやすく、同時に炭素化収率も低下するなど、焼成
工程通過性、炭素繊維の品質・性能の面でなお不十分で
ある。
【0014】このような種々の問題を克服し、同時によ
り短時間に焼成炭素化が可能な、あるいはこれに有利な
原料重合体の組成を示唆する次のような提案がなされて
いる。
【0015】例えば、焼成初期の耐炎化における環化お
よび酸化反応性が高い重合体組成にすることで焼成速度
および炭素化収率の向上を図る方法(特公昭47−33
019号公報)、カルボン酸ビニルモノマーを用いるこ
と等により重合体組成を限定して重合体製造や紡糸工程
での安定性も考慮しながら焼成時間の短縮を試みたもの
(特開昭51−7209号公報)などが提案されてい
る。
【0016】しかし、これらはいずれも重合体組成すな
わち共重合モノマーの種類や含有量について広範囲な構
成を提示しているだけであり、焼成特性などの前駆体繊
維に求められる特性を十分に満足するだけの適切な組成
を開示したものとは到底言えない。さらに、耐炎化での
反応促進そのものが高速焼成を可能にすると考えられて
いるが、一方では得られる炭素繊維の性能はむしろ損な
われる傾向にあり、炭素繊維の生産性および性能の両面
での向上は達成されていない。
【0017】こういった中で、特開昭52−34027
号公報において、重合体組成を限定し、さらに焼成処理
条件に工夫を施すことで、高性能炭素繊維を経済的かつ
安定に製造するための方法が開示されている。特に(メ
タ)アクリルアミドとカルボキシル基含有モノマーの併
用による耐炎化反応促進における特異的な効果は注目に
値する。
【0018】また、特開平5−339813号公報に
は、アクリロニトリル、アクリルアミドメタクリル酸の
共重合組成をコントロールし、温式紡糸を行うことによ
って緻密性の高いアクリロニトリル系前駆体繊維とする
提案がなされている。この提案によって、これまでの湿
式紡糸方式での欠点を補うことが可能となったが、より
高性能な炭素繊維を得るためのアクリロニトリル系前駆
体繊維としては不十分なものである。
【0019】このように、従来から多くの方法が提案さ
れているにもかかわらず、炭素繊維用前駆体繊維とし
て、高い生産性を有し、高性能な炭素繊維を与えるアク
リロニトリル系前駆体繊維は未だ得られていない。特
に、焼成工程での耐炎化反応を効率よく実施する上での
アクリロニトリル系重合体組成に関する提案は多くなさ
れているのに対して、繊維構造を支配する凝固工程にお
いて繊維構造を制御し、それによって高性能炭素繊維用
前駆体繊維を得る試みについては、提案がないのが現状
である。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、このよ
うな従来の技術の問題点に鑑みて、前駆体繊維構造の緻
密化、均質化について鋭意検討した結果本発明に至った
ものである。すなわち本発明は、繊維構造を緻密化、均
質化することにより、炭素繊維にしたときも容易に高強
度と高弾性率を発現し得る炭素繊維用アクリロニトリル
系前駆体繊維、およびその経済性に優れた製造方法を提
供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明は、モノマー成分
としてアクリロニトリルを98重量%以上含みカルボン
酸基を5.0×10-5〜2.0×10-4当量/g含有す
るアクリロニトリル系重合体と、アンモニアとを溶解し
たジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシド溶
液を紡糸原液として用いて紡糸することを特徴とする炭
素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維(以下、単に前
駆体繊維ともいう。)の製造方法に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明で用いるアクリロニトリル
系重合体は、モノマー成分としてアクリロニトリルが9
8重量%以上含む。98重量%に満たない場合、炭素繊
維にしたときにアクリロニトリル以外の共重合体が欠陥
点となり、炭素繊維の品質および性能を損なうからであ
る。
【0023】また、この重合体中に含まれるカルボン酸
基は、焼成工程での耐炎化反応性を高める役割を果たす
一方、炭素繊維の欠陥点となるため、最適なものに制御
する重要な要素である。すなわち、カルボン酸基の含有
量が5.0×10-5当量/g未満である場合は、熱反応
性が低く、さらに高温での処理を必要とする。高温で処
理を行うと、暴走反応が起こりやすく、安定した焼成工
程通過性を得ることが困難となる。逆に暴走反応を抑制
するために、低速度での焼成を行う必要が生じ経済的で
ない。
【0024】また、カルボン酸基の含有量が2.0×1
-4当量/gを越えるとポリマーのニトリル基の閉環反
応が迅速になるため繊維内部にまで酸化反応が進行せ
ず、繊維表面層近くの部分のみ耐炎化構造が進行する形
となる。しかしこのような構造では、次のさらに高温の
炭素化工程において、繊維中心部の耐炎化構造未発達な
部分の分解が抑制できないため、炭素繊維の性能、特に
引張弾性率が著しく低下する。
【0025】本発明において、アクリロニトリル系重合
体へカルボン酸基を導入する方法としては、アクリル
酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル
酸、クロトン酸等のカルボキシル基を有するビニル系モ
ノマーをアクリロニトリルおよびその他のモノマー成分
と共重合することによって容易に達成される。この中で
も、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好まし
い。
【0026】本発明で用いられるアクリロニトリル系重
合体は、アクリロニトリルおよび上記カルボン酸基含有
ビニルモノマー以外にも本発明の要件を満足する範囲
で、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン
酸、フマル酸、クロトン酸等のビニル基含有カルボン酸
のエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アク
リルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルア
ミド、無水マレイン酸、メタクリロニトリル、スチレ
ン、α−メチルスチレン等のモノマーを少量含んでいて
も良い。この中でも特に共重合成分としてはアクリルア
ミドが好ましい。熱環化反応速度は、カルボン酸基の含
有量が支配的な要因であるが、少量のアクリルアミドが
共存することで急激に増大する。
【0027】このようなモノマーを用いて、アクリロニ
トリル系重合体を製造するには、溶液重合、懸濁重合等
公知の重合方法の何れでも用いることができる。
【0028】重合された重合体から、未反応モノマーや
重合触媒残査、その他の不純物類を極力のぞくことが好
ましい。また前駆体繊維紡糸での延伸性や炭素繊維の性
能発現性などの点から、重合体の重合度は極限粘度
[η]が1.0以上、特に1.4以上が好ましい。ま
た、極限粘度[η]が2.0以下のものが通常用いられ
る。
【0029】紡糸原液の溶媒はアクリロニトリル系重合
体を溶解する溶剤であって、本発明では、ジメチルホル
ムアミドまたはジメチルスルホキシドを用いる。通常ア
クリロニトリル系重合体用の溶媒はこの他にもジメチル
アセトアミド等が考えられるが、本発明において用いら
れる重合体はアクリロニトリル含有量が98重量%以上
と高いために、ジメチルホルムアミドやジメチルスルホ
キシドのような良溶媒を用いることが必須である。
【0030】紡糸したときに緻密な凝固糸を得るために
は、紡糸原液としてある程度以上ポリマー濃度を有する
ポリマー溶液を使用することが好ましく、アクリロニト
リル系重合体の濃度としては17重量%、さらに好まし
くは19重量%以上である。また、通常25重量%以下
が好ましい。
【0031】ところで、アクリロニトリルを98重量%
以上含有した重合体をジメチルホルムアミドまたはジメ
チルスルホキシドに溶解して得た紡糸原液を紡糸して得
られる凝固糸は、一般に失透していたり、またはマクロ
ボイドを含んでいる。ここでマクロボイドとは、最大径
が0.1〜数μmの大きさを有する球形、紡錘形、円筒
形を有する空隙を総称したものである。前駆体繊維の緻
密化や均質性の向上のためには、失透やマクロボイドを
含まないことが好ましい。
【0032】本発明では、失透やマクロボイドの問題を
解決するために、アンモニアを含む重合体溶液を原液と
して用いる。この際、重合体中のカルボン酸基の20%
以上がアンモニウム塩を形成し、また原液中のアンモニ
アの存在により、原液への水の拡散速度が低下し、透明
でマクロボイドのない凝固糸が得られると考えられる。
このときのpHは8以上、好ましくは9以上となるよう
にすることが好ましい。一方、アンモニアを過剰に添加
しすぎると、原液粘度の経時変化が大きくなるので、原
液のpHは、通常11以下、好ましくは10以下となる
ようにアンモニアを添加する。
【0033】アンモニアの添加方法は、特に制限はない
が、例えば重合体溶液にアンモニアをバブリングするこ
とで容易に適当なpHに調整することができる。
【0034】炭素繊維の性能向上には、前駆体繊維の緻
密性や均質性が重要な要素である。前駆体繊維の繊維構
造の緻密性あるいは均質性が不十分な場合、焼成時に欠
陥点となり、炭素繊維の性能を損なう。緻密で均質な前
駆体繊維を得るには、この凝固糸の性状が極めて重要で
あり、本発明の製造方法では、さらに凝固糸の空隙率が
50%以下となるように製造することが好ましい。
【0035】空隙率は、凝固糸の緻密性や均質性の指標
であり、空隙率が50%以下であれば、凝固糸に存在す
る細孔は十分に均一である。本発明者らが検討した結
果、本発明が対象とする凝固糸において空隙率が50%
以下の範囲では、空隙率と平均細孔半径は良好な相関を
示す。逆に、空隙率が55%を越えると、空隙率と平均
細孔半径の相関がなくなり、平均細孔半径のみが増大し
てくる。これは、空隙率が大きくなると、大きい半径を
有する細孔が増加することを示しており、凝固糸が均質
でなくなることを示唆しているものと考えられる。
【0036】本発明においては、上記の重合体組成およ
び紡糸原液中にアンモニアを含むことにより容易に空隙
率50%以下の凝固糸を得ることができる。このときの
凝固浴は、紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液が好
適に使用され、含まれる溶剤の濃度を調節して、凝固糸
の空隙率が50%以下となるように設定する。溶剤の濃
度は40〜80重量%、好ましくは50〜70重量%で
ある。
【0037】また、凝固浴の温度は低い方が好ましく、
通常60℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
凝固浴の温度を低くすればより緻密な凝固糸を得ること
ができるが、温度を下げすぎると凝固糸の引取速度が低
下し生産性が低下するので、適切な範囲に設定すること
が望ましい。
【0038】紡糸は、紡糸原液を円形断面を有するノズ
ル孔より凝固浴中に吐出するか(湿式紡糸)、または一
旦空気中に吐出した後凝固浴に導いて(乾−湿式紡
糸)、凝固糸とする。紡糸ドラフトは、ポリマー濃度、
延伸倍率に応じ、所望のデニール繊維が得られるように
適切に設定する。
【0039】次に凝固糸を、乾燥緻密化に先立ち、洗浄
および延伸する。この洗浄、延伸については特に限定は
なく、洗浄後延伸、または延伸後洗浄、あるいは同時に
行うことが可能である。延伸方法としては、通常浴中延
伸が用いられる。このとき浴中延伸は凝固糸を凝固浴中
または延伸浴中で直接延伸してもよいし、また一部空中
延伸した後に、浴中延伸をしてもよい。浴中延伸は通常
50〜98℃の延伸浴中で1回あるいは2回以上の多段
に分割するなどして行われ、その前後あるいは同時に洗
浄を行ってもよい。
【0040】延伸、洗浄後の繊維は公知の方法によって
油剤処理を行う。油剤の種類は特に限定されないが、ア
ミノシリコン系界面活性剤が好適に使用される。
【0041】油剤処理後、乾燥緻密化して前駆体繊維を
得る。乾燥緻密化の温度は、繊維のガラス転移温度を越
えた温度で行う必要があるが、実質的には含水状態から
乾燥状態によって異なることもあり、温度は100〜2
00℃程度の加熱ローラーによる方法が好ましい。
【0042】乾燥緻密化後、必要に応じて高温の加熱ロ
ーラー等による乾熱延伸、あるいは加圧スチームによる
スチーム延伸等を行ってよい。
【0043】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明す
る。以下の説明で「%」は重量%を表す。
【0044】(イ)「共重合体組成」 共重合体中のアクリルアミドおよびカルボン酸含有モノ
マー等の各モノマー含有量は、1H−NMR法(日本電
子GSZ−400型超伝導FT−NMR)により測定し
て求めた。
【0045】(ロ)「共重合体の極限粘度[η]」 25℃のジメチルホルムアミド溶液で測定した。
【0046】(ハ)「凝固糸の空隙率および平均細孔半
径」 凝固浴および延伸浴から出た糸条を採取し、水洗後、液
体窒素による凍結乾燥法を用いて構造の固定化を行う。
この乾燥試料を約0.2g精秤しディラトメーターに入
れる。次に水銀注入装置を用いて容器内を真空(0.0
5torr以下)にし、その後水銀を充填する。そし
て、ポロシメーターを用いて測定を行う。水銀圧入量よ
り細孔体積を求める。圧力は最大3000バールまでか
ける。空隙率は以下の式を用いて求めた。 空隙率=V/(V+M) ここで、Mは試料の体積、Vは細孔容積である。
【0047】(ニ)「カルボン酸基の定量」 カルボン酸の定量は、上述(イ)の1H−NMRにより
定量した。
【0048】(ホ)「炭素繊維のストランド強度・弾性
率」 JIS−7601に記載の方法に準じて測定した。
【0049】[実施例1]オーバーフロー式の重合容器
にアクリロニトリル(以下ANと略す)、メタクリル酸
(以下MAAと略す)、蒸留水とジメチルアセトアミ
ド、そして重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを
毎分一定量供給し、65℃に維持しながら撹拌を続け、
オーバーフローしてきた重合スラリーから洗浄、乾燥を
経てアクリロニトリル系重合体を得た。組成はAN/M
AA=98.7/1.3(%)、すなわち、カルボン酸
基量は1.5×10-4当量/gであった。また、共重合
体の極限粘度[η]は1.7であった。
【0050】このアクリロニトリル系共重合体をジメチ
ルホルムアミドに溶解して重合体溶液を調製し、さらに
pHが9になるまでアンモニアをバブリングして紡糸原
液(重合体濃度21%、原液温度70℃)を調製した。
【0051】この紡糸原液を直径0.075mm、孔数
3000の口金を用いて、濃度70%、浴温35℃のジ
メチルホルムアミド水溶液中に吐出し、透明で、マクロ
ボイドのない凝固糸を得た。このときの空隙率は32%
であった。さらにこの凝固糸を空気中で1.5倍、さら
に温水中で3.4倍に延伸しながら洗浄・脱溶剤した
後、シリコン系油剤溶液中に浸漬し、140℃の加熱ロ
ーラーにて乾燥緻密化した。引き続いて、180℃の熱
盤上で1.5倍延伸し、捲取速度77m/分にて1.1
デニールの前駆体繊維を得た。
【0052】この繊維を空気中230〜260℃の熱風
循環式耐炎化炉にて5%の伸張を付与しながら50分間
処理し、耐炎化繊維となし、引き続きこの繊維を窒素雰
囲気下最高温度600℃、伸張率5%にて1.5分間低
温熱処理し、さらに同雰囲気下で最高温度が1200℃
の高温熱処理炉にて−4%の伸張の下、約1.5分処理
した。得られた炭素繊維のストランド強度は521kg
/mm2、ストランド弾性率は26.3ton/mm2
あった。
【0053】[実施例2]仕込みモノマー組成を変えて
実施例1と同様な重合法で重合を行い、表1に示す組成
の極限粘度1.8の重合体を得た。この重合体をジメチ
ルスルホキシドに溶解し、さらにpHが8になるまでア
ンモニアをバブリングして紡糸原液(重合体濃度21
%、原液温度70℃)を調製した。
【0054】この紡糸原液と、さらに凝固浴として濃度
50%、浴温35℃のジメチルスルホキシド水溶液を用
いて実施例1と同様な方法により凝固糸を得、さらに同
様に処理して1.1デニールの前駆体繊維を得た。この
前駆体繊維を実施例1と同様に焼成して炭素繊維を得
た。
【0055】凝固糸を光学顛微鏡で観察したところ、透
明でマクロボイドのない繊維であった。また、凝固糸の
空隙率、および得られた炭素繊維のストランド性能は表
2に示す通りであった。
【0056】[実施例3]オーバーフロー式の重合容器
にAN、MAAと蒸留水、そして重合開始剤の過硫酸ア
ンモニウム、亜硫酸水素アンモニウムおよび硫酸を毎分
一定量供給し50℃に維持しながら撹拌を続け、オーバ
ーフローしてきた重合スラリーから洗浄、乾燥を経てア
クリロニトリル系重合体を得た。この共重合体の組成お
よびカルボン酸基量を表1に示した。また、この重合体
の極限粘度[η]は1.7であった。
【0057】この重合体を用いた以外は実施例1と同様
にして、透明で、マクロボイドのない凝固糸を得、さら
に実施例1と同様な方法で後処理を施し、1.1デニー
ルの前駆体繊維を得た。
【0058】さらに、実施例1と同様な方法により焼成
を行い、炭素繊維を得た。凝固糸の空隙率、および炭素
繊維のストランド性能は表2に示す通りであった。
【0059】[実施例4]仕込みモノマー組成を変えて
実施例3と同様の重合法で重合を行い、表1に示す組成
の重合体を得た。この重合体を用いた以外は実施例2と
同様にして炭素繊維を得た。
【0060】このときの凝固糸は実施例3と同様に、透
明でマクロボイドもなかった。凝固糸の空隙率、および
得られた炭素繊維のストランド性能は表2に示す通りで
あった。
【0061】[実施例5]実施例3で用いたアクリロニ
トリル系重合体をジメチルホルムアミドに溶解し、さら
にpH9になるまでアンモニアをバブリングして紡糸原
液(重合体濃度22%、原液温度70℃)を調製した。
【0062】この紡糸原液を直径0.15mm、孔数3
000の口金を用いて、乾湿式紡糸を行った。エアギャ
ップを5mmとして、濃度70%、浴温20℃のジメチ
ルホルムアミド水溶液に吐出し凝固糸とした。凝固糸は
透明で、マクロボイドのない均質なもので、このときの
空隙率は28%であった。
【0063】さらにこの凝固糸を空気中で1.2倍、沸
水中で4倍に延伸しながら洗浄・脱溶剤した後、シリコ
ン系油剤溶液中に浸漬し、140℃の加熱ローラーにて
乾燥緻密化した。引き続いて180℃の乾操ロール間で
1.70倍延伸した後、捲取速度160m/分にて、
1.1デニールの前駆体繊維を得た。
【0064】この繊維を空気中230〜260℃の熱風
循環式耐炎化炉にて5%の伸張を付与しながら50分間
処理し、繊維密度が1.36g/cm3の耐炎化繊維と
し、引き続きこの繊維を窒素雰囲気下最高温度600
℃、伸張率5%にて1.5分間低温熱処理し、さらに同
雰囲気下で最高温度が1400℃の高温熱処理炉にて−
5%の伸張の下、約1.5分処理した。
【0065】得られた炭素繊維のストランド強度は55
2kg/mm2、ストランド弾性率は27.1ton/
mm2であった。
【0066】[実施例6]実施例3と同様の紡糸原液を
用い、実施例3と同様な方法で紡出、洗浄、延伸、油剤
処理、乾燥緻密化を行った。乾燥緻密化した繊維を2.
5kg/cm2Gの加圧水蒸気中にて3.3倍延伸した
後、再乾燥し、紡速110m/min.で捲取り、1.
1デニールの前駆体繊維を得た。
【0067】この繊維を実施例3と同様な方法で焼成
し、炭素繊維を得た。凝固糸の空隙率、および得られた
炭素繊維のストランド性能は表2に示す通りであった。
【0068】[実施例7]仕込みモノマー組成を変えて
実施例1と同様に重合を行い、表1に示す組成の極限粘
度1.7の重合体を得た。この重合体をジメチルスルホ
キシドに溶解し、pHが8になるまでアンモニアをバブ
リングして紡糸原液(重合体濃度21%、原液温度70
℃)を調製した。
【0069】この紡糸原液と、さらに凝固浴として濃度
50%、浴温35℃のジメチルスルホキシド水溶液を用
いて実施例1と同様な方法により凝固糸を得、さらに同
様に処理して1.1デニールの前駆体繊維を得た。この
前駆体繊維を実施例1と同様に焼成して炭素繊維を得
た。
【0070】凝固糸を光学顛微鏡で観察したところ、透
明でマクロボイドのない繊維であった。また、凝固糸の
空隙率、および得られた炭素繊維のストランド性能は表
2に示す通りであった。
【0071】
【表1】 表中、ANはアクリロニトリル、AAmはアクリルアミ
ド、MAAはメタクリル酸、IAはイタコン酸を表す。
【0072】
【表2】
【0073】[比較例1]実施例1で重合して得た共重
合体をジメチルホルムアミドに溶解したものを、アンモ
ニアをバブリングすることなく紡糸原液(重合体濃度2
1%、原液温度7、0℃)として用いた以外は実施例1
と同様にして凝固糸を得、さらに同様に処理して前駆体
繊維を得た。この前駆体繊維を実施例1と同様に焼成し
て炭素繊維を得た。このときの凝固糸は失透しており、
凝固糸内部に多数のボイドがみられた。
【0074】[比較例2]実施例7で重合して得た共重
合体をジメチルスルホキシドに溶解したものを、アンモ
ニアをバブリングすることなく紡糸原液(重合体濃度2
1%、原液温度70℃)として用いた以外は実施例7と
同様に焼成して炭素繊維を得た。このときの凝固糸は失
透しており、凝固糸内部に多数のボイドがみられた。
【0075】[比較例3]仕込みモノマー組成を変えた
以外は実施例1と同様に重合を行い表3に示す組成の極
限粘度[η]が1.7の共重合体を得た。
【0076】この共重合体を実施例1と同様にしてアン
モニア添加したものを紡糸原液として用いて湿式紡糸法
により凝固糸を得、さらに同様に処理して1.1デニー
ルの前駆体繊維を得た。この前駆体繊維を実施例1と同
様に焼成して炭素繊維を得た。
【0077】凝固糸の空隙率、および得られた炭素繊維
のストランド性能は表4に示す通りであった。
【0078】[比較例4]仕込みモノマー組成を変えた
以外は実施例3と同様に重合を行い、表3に示す組成の
極限粘度[η]が1.7の共重合体を得た。
【0079】この共重合体を実施例1と同様にしてアン
モニアを添加したものを紡糸原液として用いて湿式紡糸
法し、透明でマクロボイドのない凝固糸を得た。さらに
同様に処理して1.1デニールの前駆体繊維を得、実施
例1と同様に焼成して炭素繊維を得た。
【0080】凝固糸の空隙率、および得られた炭素繊維
のストランド性能は表4に示す通りであった。
【0081】[比較例5]仕込みモノマー組成を変えた
以外は比較例4と同様に重合を行い、表3に示す組成の
極限粘度1.7の重合体を得た。
【0082】この共重合体を実施例1と同様にしてアン
モニア添加したものを紡糸原液として、湿式紡糸法し
て、透明でマクロボイドのない凝固糸を得た。さらに同
様に処理して1.1デニールの前駆体繊維を得、実施例
1と同様に焼成して炭素繊維を得た。
【0083】凝固糸の空隙率、および得られた炭素繊維
のストランド性能は表4に示す通りであった。
【0084】[比較例6]実施例1で重合して得た共重
合体をジメチルアセトアミドに、重合体濃度21%にな
るように加えて加熱し、溶解させようとしたが、溶け残
りが生じ、均一な原液が得られなかった。
【0085】
【表3】 表中、ANはアクリロニトリル、AAmはアクリルアミ
ド、MAAはメタクリル酸を表す。
【0086】
【表4】
【0087】
【発明の効果】本発明によれば、繊維構造を緻密化、均
質化することにより、炭素繊維にしたときも容易に高強
度と高弾性率を発現し得る炭素繊維用アクリロニトリル
系前駆体繊維、およびその経済性に優れた製造方法を提
供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 龍兒 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 モノマー成分としてアクリロニトリルを
    98重量%以上含みカルボン酸基を5.0×10-5
    2.0×10-4当量/g含有するアクリロニトリル系重
    合体と、アンモニアとを溶解したジメチルホルムアミド
    またはジメチルスルホキシド溶液を紡糸原液として用い
    て紡糸することを特徴とする炭素繊維用アクリロニトリ
    ル系前駆体繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記アクリロニトリル系重合体を紡糸し
    て得られる凝固糸の空隙率が50%以下であることを特
    徴とする請求項1記載の炭素繊維用アクリロニトリル系
    前駆体繊碓の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記紡糸原液のpHが8〜11であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の炭素繊維用アクリロニト
    リル系前駆体繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方
    法によって製造された炭素繊維用アクリロニトリル系前
    駆体繊維。
  5. 【請求項5】 請求項4の炭素繊維用アクリロニトリル
    系前駆体繊維を焼成して得られる炭素繊維。
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