JPH11238483A - 荷電粒子線装置 - Google Patents

荷電粒子線装置

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JPH11238483A
JPH11238483A JP10352268A JP35226898A JPH11238483A JP H11238483 A JPH11238483 A JP H11238483A JP 10352268 A JP10352268 A JP 10352268A JP 35226898 A JP35226898 A JP 35226898A JP H11238483 A JPH11238483 A JP H11238483A
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JP
Japan
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charged particle
particle beam
temperature
objective lens
cooling
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Application number
JP10352268A
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English (en)
Inventor
Atsushi Obara
篤 小原
Takashi Takami
尚 高見
Tadashi Otaka
正 大高
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】磁界型レンズの温度変化が観察試料に与える影
響を最小とする。 【解決手段】磁界型レンズ5に流す励磁電流の発生する
ジュール熱を除去する磁界型レンズ冷却手段19と、磁
界型レンズの励磁電流からジュール熱の発生量を検出す
る磁界型レンズ発熱量検出手段16を設け、その検出結
果に従って、磁界型レンズを冷却し、磁界型レンズ温度
を常に室温に保つ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料に荷電粒子線
を照射して試料の検査,分析,加工,観察などを行う荷
電粒子線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子線やイオン線などの荷電粒子線を試
料に照射して試料の検査,分析,加工,像観察などを行
うために、荷電粒子線装置が利用される。荷電粒子線装
置には、半導体装置製造工程においてフォトマスクやウ
ェーハへのパターン形成に使用される電子線露光装置,
ウェーハ上に形成されたパターン等の外観検査等に使用
される走査型電子顕微鏡,試料内部の構造分析に使用さ
れる透過型電子顕微鏡,試料の微細加工を行う荷電粒子
加工装置などがある。
【0003】これらの荷電粒子線装置には、電子銃から
放出された電子線やイオン線源から放出されたイオン線
等の荷電粒子線を試料に焦点合わせして照射したり、試
料を透過した荷電粒子線像を結像させたりするために荷
電粒子線光学レンズの一種である磁界型レンズが備えら
れている。これらの磁界型レンズの励磁電流は、荷電粒
子線加速電圧の変更や像観察倍率の変更など、観察条件
の変更に合わせて増減される。また、操作者はある試料
の観察を終了すると、次に観察する試料を装置から一定
の距離だけ離れた位置にあるカセットから搬入する。そ
の時、試料は部屋の大気中に放出されていることが多い
ので、試料温度の初期値は室温となっていることが多
い。従って、試料の温度と磁界型レンズの温度とは必ず
しも一致しないことが多い。
【0004】従来の荷電粒子線装置、例えば電子顕微鏡
では、磁界型レンズに大きい励磁電流を必要とされる場
合にのみ、磁界型レンズに熱的に接触させた水流管に、
一定温度に冷却された冷却水を循環させて、磁界型レン
ズの発生するジュール熱を除去する方法を取っていた。
従って、磁界型レンズ温度は、一定の使用条件下で冷却
水温度からある範囲以内となるよう設計されていた。し
かし、実際には磁界型レンズの励磁電流を常に一定とし
て使用することは無い。
【0005】一方、例えば走査型電子顕微鏡には、磁界
型レンズ励磁電流量の変化にかかわらず、パターン像を
所望の安定した観察状態に保ち続けることが要求され
る。特に自動で外観検査等を行い、パターンを自動で呼
び出すために、試料ステージ上でパターンの位置精度が
高いことが要求される。さらに、高い処理能力を必要と
し、高稼働率を要求される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、例えば、走
査型電子顕微鏡で観察する試料像は試料の物性と一次電
子の相互作用により影響を受ける。すなわち、一次電子
の入射エネルギーと試料材質の持つ固有の物性に左右さ
れる二次電子又は反射電子の検出量を明るさで表す像観
察用表示器上の輝点の集まりを試料像としている。従っ
て、試料とその観察条件は常に一定ではなく、一次電子
の加速エネルギーは観察試料により観察者が変更する。
一次電子の加速エネルギーを高く又は低くすると、一次
電子ビーム焦点位置を試料上に合焦するためには、荷電
粒子光学レンズの一種である磁界型レンズに流す励磁電
流を大きく又は小さくする必要がある。磁界型レンズ励
磁電流を大きく又は小さくすると、その発生するジュー
ル熱も大きく又は小さくなる。
【0007】また、観察する試料高さ(電子光学軸方向
の位置を「高さ」と呼ぶ)は個別の試料により異なるの
で、焦点位置は観察試料の変更により合わせ直す必要が
ある。その時、上記と同様に磁界型レンズ励磁電流を大
きく又は小さく変更する必要があり、そのとき磁界型レ
ンズから発生するジュール熱は大きく又は小さく変動す
る。これは、観察する試料がウェーハ上のパターンの場
合、ウェーハの反りでウェーハ表面高さがウェーハ内の
場所により異なることで、観察するパターンを変更する
毎に焦点位置が異なってくるためである。
【0008】以上のように、一次電子加速エネルギーの
変更又は試料高さの変更が発生すると、磁界型レンズ励
磁電流を変更する必要があり、その時、発生するジュー
ル熱も変化する。しかし、従来の電子顕微鏡では、磁界
型レンズを冷却する冷却水は一定温度に制御されている
ので、これらのジュール熱発生量の変化を補正する手段
を持たない。
【0009】冷却水により磁界型レンズから吸収される
熱量q,磁界型レンズ温度T,冷却水温度TW の間の関
係式を下記(数1)に示す。式中、kは冷却能力を表
し、温度差と磁界型レンズからの吸熱量の係数である。
ここでは、説明を簡単にするために、単純な比例関係と
仮定した。
【0010】
【数1】 q=k(T−TW) …(数1) 磁界型レンズで発生する熱量が大きくなれば、係数k又
は磁界型レンズと冷却水の温度差(T−TW)を大きくす
る必要がある。しかし、kは冷却装置と固定された使用
条件(冷却水流速等)により常に一定の値を取るので、
(T−TW)を大きくする必要がある。ここで冷却水温度
W を一定に制御しているので、(T−TW)を大きくす
るためには、磁界型レンズ温度Tが大きくなる必要があ
る。従って、従来の電子顕微鏡では、磁界型レンズの励
磁電流を強く又は弱くすることで、磁界型レンズ温度が
高く又は低くなっていた。
【0011】このように、使用条件の変更により磁界型
レンズ励磁電流が大きく又は小さくなり、磁界型レンズ
温度が高く又は低くなると、図1に示すような磁界型レ
ンズが試料と対向しているような電子顕微鏡、例えば走
査型電子顕微鏡では、試料が磁界型レンズ温度の影響を
受ける。
【0012】すなわち、磁界型レンズ温度が高くなる
と、磁界型レンズから試料へ輻射熱等により熱伝達が起
こり、試料温度を上昇させる。試料がウェーハ上のパタ
ーンの場合、この熱によりウェーハに熱膨張を生じ、観
察中に被検パターンが視野内で移動するシフト現象を起
こす。逆に磁界型レンズ温度が低くなると、試料から磁
界型レンズに熱伝達が起こってウェーハの温度が低下す
る。温度が低下するとウェーハは収縮し、同様に観察中
の被検パターンが視野内で移動してしまう。ウェーハの
観察初期の温度と磁界型レンズ温度の温度差が大きい
程、このシフト量は大きくなる。観察前、ウェーハは大
気中の室温で保存されていることが多いので、磁界型レ
ンズ温度が室温と一致する時、ウェーハ上パターンのシ
フト量は最小となる。
【0013】また、磁界型レンズ温度が上昇すると、磁
界型レンズと試料との間を占める真空中でのガス分子が
レンズ表面又は真空容器表面へ吸着する際の吸着エネル
ギーが小さくなり、試料表面への移動が容易となり、一
次電子ビームが照射されている試料表面に堆積するコン
タミネーションの現象を活性化させる。このコンタミネ
ーション量は、磁界型レンズ温度が高い程多くなる。
【0014】ここでは走査型電子顕微鏡を例にとって説
明したが、試料に対向する磁界型レンズの温度変化によ
って試料が影響を受ける事情は他の荷電粒子線装置でも
同様である。例えば、荷電粒子線加工装置においては、
加工条件を変更するとき磁界型レンズの励磁電流が変化
し、それによって磁界型レンズの温度変化が生じるた
め、磁界型レンズに対向して配置されている試料が影響
を受ける。また、電子線露光装置にあっても、露光条件
の変更は磁界型レンズの励磁電流変化を伴い、それによ
って磁界型レンズの温度が変化するため、試料がその温
度変化の影響を受ける。
【0015】従って、従来の荷電粒子線装置では、観察
条件,加工条件,露光条件等の変更により磁界型レン
ズ、特に試料に対向している磁界型レンズの励磁条件を
変化させたとき、あるいは装置へ試料を搬入したとき
は、熱平衡に達して装置が安定化するまで、観察,加
工,露光等を中断する必要があった。これは、装置電源
を入れたときも同様である。すなわち、通常は室温にお
かれている装置に電源を入れると、磁界型レンズは励磁
電流によるジュール熱のために発熱するが、それが冷却
水による冷却と熱平衡に達するまでに比較的長い時間を
要し、その間本格的な作業にかかることはできない。
【0016】本発明は、このような従来技術の問題点に
鑑みてなされたもので、装置電源を入れたとき、あるい
は装置運転中に観察条件,加工条件,露光条件等を変更
して磁界型レンズの励磁電流を変化させたとき、装置の
安定化に要する時間を短縮し、稼働率を上げることので
きる荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明においては、荷電
粒子線光学レンズの一種である磁界型レンズの励磁電流
の変更量を検出して磁界型レンズのジュール熱発熱の変
化量を求め、その変化量だけ磁界型レンズ冷却手段の冷
却能力を補正することにより前記目的を達成する。ある
いは、磁界型レンズの温度変化を温度センサーにより検
出し、その温度変化に応じて磁界型レンズ冷却手段の冷
却能力を補正することにより前記目的を達成する。冷却
能力の補正を行う磁界型レンズは、試料に近接した位置
に配置されている磁界型レンズ、例えば対物レンズとす
るのが効果的である。また、磁界型レンズ冷却手段は、
磁界型レンズの温度を室温近傍の一定温度に保つのが好
ましい。
【0018】すなわち、本発明は、試料に荷電粒子線を
照射する手段と、磁界型レンズを含む荷電粒子線光学系
と、磁界型レンズを冷却する冷却手段とを含む荷電粒子
線装置において、磁界型レンズの発熱量を求める発熱量
検出手段と、冷却手段の冷却能力を制御する制御手段と
を備え、制御手段は磁界型レンズの温度が略一定に保た
れるように発熱量検出手段によって求められた発熱量に
応じて冷却手段の冷却能力を制御することを特徴とす
る。
【0019】発熱量検出手段は試料に対向する磁界型レ
ンズの発熱量を求め、制御手段は試料に対向する磁界型
レンズの冷却手段の冷却能力を制御することができる。
発熱量検出手段は、磁界型レンズの励磁電流量に基づい
て、あるいは磁界型レンズの温度に基づいて発熱量を求
めることができる。
【0020】また、本発明は、試料に照射する荷電粒子
線を発生させる手段と、磁界型レンズを含む荷電粒子線
光学系と、磁界型レンズを冷却する冷却手段とを含む荷
電粒子線装置において、試料に対向する磁界型レンズの
温度を検出する温度検出手段と、冷却手段の冷却能力を
制御する制御手段とを備え、制御手段は磁界型レンズの
温度が略一定に保たれるように温度検出手段によって検
出された温度に応じて冷却手段の冷却能力を制御するこ
とを特徴とする。
【0021】また、本発明は、荷電粒子線発生手段と、
試料に荷電粒子線を走査する走査手段と、対物レンズ
と、対物レンズを冷却する冷却手段と、対物レンズの励
磁電流を制御して荷電粒子線の焦点を試料表面に合わせ
る荷電粒子線焦点補正手段と、試料から放出された試料
信号を検出する試料信号検出手段とを含む荷電粒子線装
置において、対物レンズの励磁電流量に基づいて対物レ
ンズの発熱量を検出する発熱量検出手段と、発熱量検出
手段の検出結果を基に冷却手段の冷却能力を制御して対
物レンズを略一定温度に保つ制御手段とを備えることを
特徴とする。
【0022】また、本発明は、荷電粒子線発生手段と、
試料に荷電粒子線を走査する走査手段と、対物レンズ
と、対物レンズを冷却する対物レンズ冷却手段と、対物
レンズの励磁電流を制御して荷電粒子線の焦点を試料表
面に合わせる荷電粒子線焦点補正手段と、試料から放出
された試料信号を検出する試料信号検出手段とを含む荷
電粒子線装置において、対物レンズの温度を検出する温
度検出手段と、温度検出手段の検出結果を基に冷却手段
の冷却能力を制御して対物レンズを略一定温度に保つ制
御手段とを備えることを特徴とする。
【0023】冷却手段が冷却水,冷却油,冷却空気など
の冷媒を用いた冷却手段であるとき、制御手段は冷媒の
温度又は流速を変化させることによって冷却手段の冷却
能力を制御することができる。また、冷却手段がペルチ
ェ素子などのヒートポンプを用いた冷却手段であると
き、制御手段はヒートポンプの駆動電圧を変化させるこ
とによって冷媒手段の冷却能力を制御することができ
る。
【0024】冷却手段は、磁界型レンズ、特に対物レン
ズの温度を室温近傍の一定温度に保つのが好ましい。そ
うすることで、電源を投入した後又は装置へ試料を搬入
した後、試料又は磁界型レンズが熱平衡に到達する時間
が冷却後の荷電粒子線装置固有の熱的時定数τ(=C/
k、ただしCは装置本体の熱容量で単位は[J/℃]、
kは冷却後の装置本体の放熱係数で単位は[W/℃])
より短くできる。
【0025】本発明によると、磁界型レンズのジュール
熱発熱量を求め、その発熱量に応じて磁界型レンズ冷却
手段の冷却能力を補正するため、磁界型レンズ励磁電流
の変更を伴う操作を行っても、試料と磁界型レンズ(特
に対物レンズ)とが熱平衡に到達する時間を短くするこ
とができ、磁界型レンズ温度が試料へ与える影響を常に
最小としたまま、試料の観察や検査,加工,露光などの
操作を安定に伴うことができる。同様に、装置に電源を
投入したとき、あるいは装置に試料を搬入したとき、試
料が熱平衡に到達する時間を短くし、電源投入後直ちに
試料の観察,検査,加工,露光などを安定して行うこと
ができる。
【0026】特に、走査型電子顕微鏡によって自動で外
観検査等を行う場合、磁界型レンズ(対物レンズ)の発
生するジュール熱が輻射等によりウェーハへ熱伝達され
ることを防ぎ、ウェーハの熱膨張により観察パターンが
視野内で移動する現象を抑えることで、試料ステージ上
でのパターンの位置を高精度に求めることが可能とな
る。さらに、磁界型レンズでのジュール熱発生による熱
的過渡現象に要する時間を最小とすることで、待ち時間
なしに高稼働率で安定した外観検査等を行うことが可能
となる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。ここでは、走査型電子顕微鏡を例
にとって説明する。
【0028】図1は、本発明による走査型電子顕微鏡の
一例の概略構成図である。電子源1より放出された一次
電子ビームは一次電子加速電極2と電子源の間の電位差
により任意の加速エネルギーまで加速された後、収束レ
ンズ3により一旦収束し、荷電粒子線にレンズ作用を及
ぼす磁界型レンズの一種である対物レンズ5によって試
料ステージ7に載せられた試料6の表面に焦点を結ばせ
る。一次電子と試料6の材質との相互作用により発生し
た二次電子を二次電子検出器8によって検出し、増幅器
9によって信号増幅した後、観察用表示器11に輝点と
して表示する。この輝点の明るさは一次電子ビームが照
射された試料6表面からの二次電子量を表す。この時、
走査電源10によって駆動された偏向レンズ4によって
一次電子ビームを偏向し、試料6の表面を走査する。走
査電源10によって偏向レンズ4と同期された観察用表
示器11上では、一次電子ビームによって走査された試
料6表面と1対1の関係を持つ輝点の集まりとして試料
6の二次電子像が表示される。
【0029】操作者は二次電子像を観察しながら、試料
材質に適合した一次電子加速エネルギーを選択し、また
二次電子像の焦点ぼけを見ながら、一次電子ビームの焦
点を試料表面上に合焦しようとする。
【0030】操作者が一次電子加速エネルギーを上げる
又は下げる操作を行えば、その変更後の設定値VASは
一次電子加速電源20に記憶される。一次電子加速電源
20でVAS値に基づいて発生した電圧VACを一次電
子加速電極2に一次電子加速電圧として印加する。ま
た、記憶された一次電子加速電圧設定値信号VASを対
物レンズ励磁電流駆動装置13へ出力する。対物レンズ
励磁電流駆動装置13で、焦点位置設定器12から送ら
れてくる焦点位置信号FPSに基づいた対物レンズ励磁
電流IOBを対物レンズコイル15へ流す。この時、一
次電子加速電圧VACによる補正もVASを読み込んで
行う。この時の関係式を次の(数2)に示す。
【0031】
【数2】
【0032】ここで、FPSは対物レンズ5の焦点位
置、Nは対物レンズコイル15の巻き線数、VACは一
次電子加速電圧である。関数fは対物レンズ5を形成す
る流路の材質と形状により決まる。実際には、対物レン
ズ5の設定時のシミュレーションと実測等により求め
る。この関数fの一例を図2に示す。
【0033】焦点位置信号FPSと一次電子加速電圧V
ACから対物レンズ励磁電流IOBを求める時、実際的
な方法として、任意のFPSに対するN×IOB/VAC
1/2値を実験又はシミュレーション等により離散的に求
めて置き(図2中の○印)、図3の様な表TBL_an
を作成する。対物レンズ励磁電流駆動装置13では、読
み込んだFPS値fn に相当するN×IOB/VAC
1/2値anをTBL_an(図3)より割り出し、同時に
読み込んだ一次電子加速電圧VACと既知である巻き線
数Nから下記の(数3)により対物レンズ励磁電流IO
Bを求める。
【0034】
【数3】
【0035】また、操作者が二次電子像の焦点を合わせ
ようと一次電子ビームの焦点を高く又は低く(電子光学
系軸方向を「高さ」方向とし、電子源側を「高い」、試
料側を「低い」側とする)すれば、焦点位置設定器12
にその値が記憶される。焦点位置設定器12では、焦点
位置信号FPSを対物レンズ励磁電流駆動装置13へ出
力する。対物レンズ励磁電流駆動装置13で、前記(数
3)に基づいてFPSから対物レンズ励磁電流IOBを
発生し、対物レンズコイル15を励磁することで、一次
電子ビームの焦点を試料6の表面に結ぶ。
【0036】対物レンズ励磁電流IOBの流れる線の途
中に直列接続した電流計14により測定された対物レン
ズ励磁電流値信号OBSは、対物レンズ発熱量検出器1
6に出力される。対物レンズ発熱量検出器16で、読み
込まれたOBSは対物レンズ発熱量信号QSに変換され
る。この時、関係式は下記の(数4)で表される。
【0037】
【数4】 QS=r×IOB2 …(数4) QSは対物レンズ5の発熱量信号、rは対物レンズコイ
ル15の抵抗値、IOBは対物レンズコイル15に流れる
電流(信号OBSで表される)である。この(数4)に
基づいて変換された対物レンズ発熱量信号QSは、冷媒
ここでは冷却水の温度を設定する冷却水温度設定器17
へ出力される。
【0038】一方、室温は室温センサー32で設定さ
れ、その結果は計算機28へ出力される。計算機28で
は、その結果を基に設定温度(ここでは室温T0)を冷却
水温度設定器17へ出力する。冷却水温度設定器17で
は、対物レンズ発熱量信号QSと設定温度T0 が読み込
まれて、冷却水温度設定値信号TWSに変換される。こ
の時の関係を図4に示す。図4中のA又はBは直線を含
む曲線となるが、ここでは簡単化のために直線と仮定
し、下にその式を記す。直線Aは冷却水温度がTW1のと
きの関係を表し、直線Bは冷却水温度がTW2のときの関
係を表す。
【0039】A:q=k1×(T−TW1) B:q=k1×(T−TW2) いま、冷却水温度をTW1に設定した時、対物レンズ温度
1が室温T0になった(T1=T0)とする。この時の吸
熱量は直線Aと温度T=T0 の交点で、吸熱量q=q1
=発熱量Q1となる。この関係を表す係数k1 は、
(1)発熱源の対物レンズコイル15と吸熱側である対
物レンズ冷却水流路管19との熱的接触の度合、(2)
冷媒(この場合は水)の熱を受け取る能力と熱を運搬す
る能力、(3)冷却水製造装置での冷媒への熱伝達する
効率、の3点等を含めた全体の冷却能力により決まる。
実際には、実験等により求めておく。
【0040】ここで、発熱量がQ=Q2 へ上がったとす
る(Q1<Q2)。対物レンズ温度は直線AとQ=Q2
交点で、T=T2(T1<T2)となり、(T2−T1)だ
け温度上昇する。
【0041】そこで、冷却水設定温度をTW2(TW1>T
W2)に設定し直す。この時、対物レンズ温度は直線Bと
Q=Q2の交点で、T=T1となり、元の温度である室温
0と一致する。実際には、部屋に置かれた温度センサ
ー32等で求められた室温T0 、先に求められたQS、
実験等により求められたk1 により下記の(数5)でT
WSを求める。
【0042】
【数5】
【0043】このようにして求められた冷却水温度設定
値信号TWSは冷却水製造装置18へ出力される。冷却
水製造装置18では、冷却水温度設定値信号TWSを読
み込み、その信号に基づいて往路冷却水W1を、対物レ
ンズ5の温度が室温となるような温度まで冷却する。す
なわち、往路冷却水W1は対物レンズ冷却水流路管19
を周回し、対物レンズ5及び対物レンズコイル15を冷
却し、そのジュール熱を奪い、復路冷却水W2として冷
却水製造装置18へ返る。冷却水製造装置18では、復
路冷却水W2を再び冷却水温度設定値信号TWSに基づ
いた温度まで冷却し、往路冷却水W1として循環させ
る。
【0044】以下、図5を用いて、冷却水温度を設定す
る一連の動作を実行するための各ステップを説明する。
【0045】[ステップ100]まず対物レンズ励磁電
流駆動装置13は、焦点位置設定器12に記憶されてい
る焦点位置信号FPSを読み込む。FPSは、それ以前
に観察者が合焦の位置に焦点位置を合わせた値となって
いる。
【0046】[ステップ101]対物レンズ励磁電流駆
動装置13は、TBL_an(図3)に従ってFPS値
n に相当するN×IOB/VAC1/2値an を求め
る。
【0047】[ステップ102]さらに対物レンズ励磁
電流駆動装置13は、一次電子加速電源20に記憶され
ている一次電子加速電圧VACの値を信号VASによっ
て読み込む。VACは、それ以前に観察者によって試料
に適した値に設定されている。
【0048】[ステップ103]対物レンズ励磁電流駆
動装置13は、ステップ101で求めたan と、ステッ
プ102で求めたVAC、及び既知の対物レンズコイル
巻き線数Nから前記(数3)に基づいて、対物レンズ励
磁電流IOBを求める。
【0049】[ステップ104]対物レンズ励磁電流I
OBに直列接続された電流計14はIOBを測定し、そ
の電流値OBSを出力する。対物レンズ発熱量検出器1
6では、OBSを読み込んでIOBを求め、既知の対物
レンズコイル抵抗値rを用いて前記(数4)に基づき対
物レンズ発熱量信号QSを求める。
【0050】[ステップ105]冷却水温度設定器17
は、対物レンズ発熱量信号QSと設定温度T0 を読み込
んで、前記(数5)に基づいて冷却水温度設定値信号T
WSを求める。
【0051】[ステップ106]冷却水製造装置18
は、冷却水温度設定値信号TWSを読み込んで記憶し、
復路冷却水W2をTWS相当の温度まで冷却した後に往
路冷却水W1として対物レンズ冷却水流路管19へ送り
始める。
【0052】[ステップ107]対物レンズ励磁電流駆
動装置13は、焦点位置信号FPS又は一次電子加速電
圧設定値信号VASが書き換るかを常に監視し、変更が
生じれば、ステップ100へ戻る。実際には、本発明の特
徴を有する走査型電子顕微鏡全体を制御するホストコン
ピュータが操作者の操作の有無を常に監視し、FPS又
はVASの書き換えと、ステップ100からステップ1
07の流れを制御するのが良い。
【0053】以上の一連の動作によって、対物レンズ励
磁電流量の変化にかかわらず、対物レンズ温度を所望の
状態に保ち続けることが可能となる。この様子を図6に
示す。対物レンズコイル発熱量Qがある時刻t1 に増加
したとする。その原因は、操作者が一次電子加速電圧V
ACを上げる又は下げるか、焦点位置FPSを調整し直
したことによる。すると、図1に示す各ブロックの一連
の動作が図5のフローチャートに従って行われること
で、対物レンズ5からの吸熱量qは短い時間遅れΔt0
を置いた時刻t2に、発熱量Qの増加量ΔQ相当分のみ
増加する。その結果、対物レンズ温度Tの過渡現象が時
刻t1から時定数τより短い時間遅れΔts1(ただし、
走査電子顕微鏡本体の熱的時定数τ=C/k、Cは装置
本体の熱容量で単位は[J/℃]、kは冷却後の装置本
体の放熱係数で単位は[W/℃])を置いた時刻t3
での間で生じるが、時刻t3に元の温度T0に収束する。
【0054】対物レンズ励磁電流IOBの増加を検出し
てから、冷却水製造装置18で往路冷却水W1の温度を
下げ終えるまでの時間を最小限とすることで、対物レン
ズ5を含む本発明の走査型電子顕微鏡本体の熱的時定数
τ(τ=C/k、ただし、Cは装置本体の熱容量で単位
は[J/℃]、kは冷却後の装置本体の放熱係数で単位
は[W/℃])が時間遅れΔts1へ与える影響を最小と
し、時間差Δts1を最小限に抑えることができる。
【0055】これにより、操作者が一次電子加速電圧V
ACを上げる又は下げるか、焦点位置FPSを調整し直
した場合でも、操作者がほとんど待ち時間を置かずに観
察を始めても、対物レンズ5の発生するジュール熱が試
料6に及ぼす影響を常に最小に保つことができる。同様
に、観察開始時に装置に電源を投入した時においても、
装置内で試料が熱平衡に到達する時間を短縮し、電源投
入後直ちに安定な試料観察を行うことが可能になる。こ
のようにして走査型電子顕微鏡の稼働率向上を図ること
ができる。
【0056】上記実施の形態では、対物レンズ励磁電流
IOBを直列に接続された電流計14によって求め、そ
の電流値OBSを対物レンズ発熱量検出器16へ出力し
ている。しかし、対物レンズ励磁電流駆動装置13で対
物レンズ励磁電流IOB値を求めているので、その値を
表す信号OBSを直接に出力しても良い。
【0057】その機能ブロックを図7に示す。上記実施
の形態と同様に、信号FPSとVASを読み込んだ対物レ
ンズ励磁電流駆動装置13から対物レンズ励磁電流IO
Bが出力される。その一方、IOB値を表す信号OBS
を対物レンズ発熱量検出器16へ出力する。対物レンズ
発熱量検出器16は、前記(数4)に基づいて対物レン
ズ発熱量信号QSを求め、冷却水温度設定器17へ出力
する。以下は上記実睡の形態と同様である。この構成に
より、上記実施の形態で必要とされた電流計14を除く
ことができ、構成をより簡単にすることができる。
【0058】また上記実施の形態においては、対物レン
ズコイル15の発熱量がQ1からQ2へ上がった時、冷却
水温度をTW1からTW2へ下げることで、対物レンズ5の
温度を室温に保った。その様子は図4に示す通りであ
る。発熱量Q=Q1 のときに直線AとQ=Q1の交点か
ら対物レンズ5温度T=T1となっていたものが、対物
レンズコイル15の発熱量がQ=Q2へ上がった結果、
直線AとQ=Q2の交点から対物レンズ5温度はT=T
2 へと上昇した。そこで、冷却水温度をTW2へ下げるこ
とで、直線BとQ=Q2 の交点から対物レンズ温度T=
1=T0となり、対物レンズ5の温度を室温に保持する
ことができた。
【0059】しかし、前記(数1)において、温度差と
対物レンズからの吸熱量の係数で冷却能力を表すkを上
げることでも、温度差(T−TW)を上げるのと等価な効
果が得られる。すなわち、冷媒(この場合は水)の流速
vを上げることで、熱を受け取る能力を上げることがで
き、結果的に冷却能力kを上げることが可能となる。こ
の様子を図8に示す。図8中のA及びCは直線を含む曲
線となるが、図4の場合と同様に、簡単化のために直線
と仮定し、下にその式を記す。直線Aは冷却水の流速v
1 の時の関係を表し、直線Cは冷却水の流速v2 の時の
関係を表す。
【0060】A:q=k1×(T−TW1) C:q=k2×(T−TW1) qは対物レンズからの吸熱量、k1及びk2は冷却能力を
表し、温度差と対物レンズからの吸熱量の係数(k1
2)、v1及びv2は冷却水の流速(v1<v2)、Tは
対物レンズ温度、TW1は冷却水温度である。
【0061】いま、冷却水温度をTW1に設定した時、対
物レンズ温度T1が室温T0になった(T1=T0)とす
る。この時の吸熱量は直線Aと温度T=T0 の交点で、
吸熱量q=q1=発量量Q1となる。この関係は図4の場
合と同様に全体の冷却能力によって決まる。実際には、
実験等により求めておく。
【0062】ここで、発熱量がQ=Q2 へ上がった(Q
1<Q2)とする。対物レンズ温度は直線AとQ=Q2
交点で、T=T2(T1<T2)となり、(T2−T1)だ
け温度上昇する。そこで、冷却水の流速をv1からv2
上げる。この時、対物レンズ温度は直線CとQ=Q2
交点で、T=T1となり、元の温度である室温T0 と一
致する。
【0063】冷却水温度設定器17では、部屋に置かれ
た室温センサー32等で求められた室温T0 、先に求め
られた対物レンズ発熱量信号QS、実験等により求めら
れたk2 により下記の(数6)でTWSを求める。
【0064】
【数6】
【0065】実際的な方法として、任意の対物レンズコ
イル発熱量Qに対する冷却水の流速vを実験等により求
めておき、図9の様な表TBL_vnを作成する。実験
では、対物レンズコイル発熱量Qを実際に与えて対物レ
ンズ5の温度が室温となる時の冷却水の流速vを求め
る。
【0066】ところで、以上の実施の形態においては、
対物レンズの冷却手段を冷媒として冷水を循環させるこ
とで実現していた。しかし、熱を除去する手段には他に
ヒートポンプの一種であるペルチェ素子がある。対物レ
ンズ冷却手段としてペルチェ素子を用いた場合の概略構
成図を図10に示す。対物レンズ励磁電流駆動装置13
から対物レンズ励磁電流IOBが出力され、対物レンズ
コイル15を含む対物レンズ5が発熱する原理、及びI
OBから対物レンズ発熱量信号QSを求めるまでの動作
は上記実施の形態と同様である。
【0067】対物レンズ5及び対物レンズコイル15に
熱的に接触させたヒートパイプ等に代表される良熱伝導
体21によって、対物レンズコイル15の発生するジュ
ール熱を対物レンズ5の外へ導き出す。良熱伝導体21
の対物レンズコイル15との他端には、吸熱プレート2
2とペリチェ素子23と発熱プレート24が順に固定さ
れている。吸熱プレート22,ペルチェ素子23,発熱
プレート24の互いの接触面は、熱的接触抵抗を最も小
さくするように、その表面荒さを最小としている。ま
た、必要に応じて熱良伝導性クリームを互いの面に塗っ
てから接触させると、その熱的接触抵抗をより小さくす
ることが可能となる。発熱プレート24には、その接触
面にやはり熱的接触抵抗を小さくする工夫をされた放熱
フィン25が固定されている。
【0068】対物レンズ発熱量検出器16よりQSを読
み込んだペルチェ素子駆動装置26は、QS相当の熱を
ペルチェ素子23で吸うのに必要なペルチェ素子駆動電
圧VPを発生し、ペルチェ素子23へ印加する。ペルチ
ェ素子23は、VPによって吸熱量Qp1を発生し、吸熱
プレート22及び良熱伝導体21を通して対物レンズ5
及び対物レンズコイル15の熱を吸収する。放熱フィン
25から発熱プレート24を通して、吸熱量Qp1とペル
チェ素子23自身の発熱量を含むQp2を放熱する(Qp1
<Qp2)。ここで、Qp1=QSとなった時、対物レンズ
5は室温に保たれる。実際的な方法として、任意の対物
レンズコイル発熱量Qに対するペルチェ素子駆動電圧V
Pを実験等により求めておき、図16のような表TBL
_VPを作成する。実験では、対物レンズコイル発熱量
Qを与えて対物レンズの温度が室温となる時のVPを求
める。
【0069】以上、これまでにあげた実施の形態におい
ては、対物レンズ5の発熱量Qを求めることで、冷却手
段の冷却能力の補正を行っていた。しかし、対物レンズ
5に取り付けた温度センサーによって、対物レンズ5の
温度を室温とするように冷却能力の補正を行っても良
い。
【0070】その場合の例を図11に示す。対物レンズ
5の表面で、その温度が最も試料へ与える影響が大きい
場合、例えば対物レンズ下面に取り付けた温度センサー
27によって得られた温度信号TWSは、冷却水製造装
置18へ入力される。冷却水製造装置18では、TWS
は読み込み、その信号に基づいて往路冷却水W1を、対
物レンズ5の温度が室温となるような温度まで冷却す
る。冷却水の循環等は図1の場合と同様である。
【0071】その温度変化の様子を図12に示す。対物
レンズコイル発熱量Qがある時刻t1 に増加したとす
る。その原因は、操作者が一次電子加速電圧VACを上
げる又は下げたか、焦点位置FPSを調整し直したこと
による。すると、冷却後の走査型顕微鏡本体の放熱係数
k(単位[W/℃])と熱容量C(単位[J/℃])の
影響を受けながら対物レンズ5の温度Tは上昇する。温
度Tの上昇を温度センサー27によって検出した冷却水
製造装置18は徐々に吸熱量qを上げ始めて、最終的に
対物レンズコイル発熱量の増加量ΔQ相当分を増加した
値に収束する。対物レンズ温度Tもほぼ同時刻に収束す
る。しかし、その過渡現象は、対物レンズ5を含む走査
型電子顕微鏡本体の熱的時定数τの影響を強く受ける。
その結果、上記実施の形態での収束時間ΔtS1と比較し
て、やや長いΔtS2を要して過渡現象は収束する。そし
て、その後は常に対物レンズ5の温度を室温に保つ。
【0072】これにより、操作者が一次電子加速電圧V
ACを上げる又は下げるか、焦点位置FPSを調整し直
した場合でも、操作者がほとんど待ち時間をおかずに観
察を始めても、対物レンズ5の発生するジュール熱の影
響を常に最小に保つことができる。
【0073】上記図11で説明した実施の形態において
は、温度センサー27によって得られた対物レンズ5の
温度を常に一定とするように冷却水製造装置18の冷却
能力の補正を行った。しかし、温度センサー27で測定
される過渡現象の初期段階での対物レンズ5の温度の時
間変化勾配を求め、初期発熱量Q1 からΔQだけ上昇し
た後の発熱量Q2 をその勾配より求めても良い。
【0074】図13は、Q1からQ2へ発熱量が上昇した
後も冷却水製造装置18の冷却能力の補正を行わなかっ
た場合の対物レンズ5の温度TOの時間変化を示す図で
ある。時刻t1 まで、走査型電子顕微鏡本体は冷却水の
温度TWに対して温度Tiの平衡状態にある。時刻t1
対物レンズ5の発熱量が、初期発熱量Q1からΔQだけ
上昇した発熱量Q2 に変化したとする。この時、対物レ
ンズ5の温度TOは、温度Tiから新たな発熱量Q2と冷
却後の走査型電子顕微鏡本体の放熱係数kによって決ま
る到達温度Teに向かって徐々に上昇し、Teに収束す
る。ここで、この過渡現象の初期温度勾配tanθ0は、次
の(数7)によって求められる。
【0075】
【数7】
【0076】ここで、Q2 は上昇後の発熱量、kは(数
1)の場合と同様に冷却能力を表し、冷却水と対物レン
ズ5の温度差と対物レンズから冷却装置への吸熱量の係
数である。また、Cは走査型電子顕微鏡本体の熱容量を
表す。
【0077】そこで、実際に勾配tanθ0を求める方法を
図14に示す。初期発熱量Q1 からΔQだけ上昇した発
熱量Q2へ変化した時刻t1の直前で、対物レンズの温度
TOは初期平衡温度Tiとなっている。ここから、Δt
時間後に温度差ΔT0の上昇が温度センサーによって測
定されたとする。この時、下記の(数8)によって温度
勾配tanθ0を近似的に求めることができる。
【0078】
【数8】
【0079】この時、測定時間間隔Δtは、Δtの時間
精度と温度差ΔT0 の測定精度を考慮したtanθ0の計算
精度に対して、結果tanθ0が有意性を持つ範囲内で小さ
く取るのが良い。上記の(数7)及び(数8)より求ま
る下記(数9)によって、勾配近似値ΔT0/Δtか
ら、上昇後の発熱量Q2 を求めることが可能になる。
【0080】
【数9】
【0081】このような制御を行うための装置構成の例
を図15に示す。温度センサー27によって時間間隔Δ
tで求められる対物レンズ5の温度TOは、その度に波
形記憶装置(メモリ)29に記憶される。時刻t1 とそ
こからΔt時間後の温度差ΔT0 は、計算機28で波形
記憶装置29を参照することで、任意の時間に求めるこ
とができる。その値をT(t1),T(t1+Δt)とする
と、温度差ΔT0 は次式から時刻t1+Δtの直後に求
める。
【0082】ΔT0=T(t1+Δt)−T(t1) 上記によって求めたΔT0から(数9)に基づいて、上
昇後の発熱量Q2を求める。ここで、走査型電子顕微鏡
本体の熱容量Cと冷却能力を表す係数kは予めシミュレ
ーション又は実験等により求めておく。また、冷却水温
度TW は、往路冷却水W1の途中に設けられた水温セン
サー30の測定結果TW1と、復路冷却水W2の途中に設
けられた水温センサー31の測定結果TW2より下記の
(数10)により求める。
【0083】
【数10】
【0084】以上により求めた対物レンズ発熱量Q2
表す信号QSを冷却水温度設定器17へ出力する。その
後の動作は、図1の実施の形態の場合と同様である。本
実施の形態においても、図6に示したのと同様に、熱平
衡に到達する時間を短縮することが可能となる。
【0085】以上、これまでにあげた実施の形態におい
ては、例えば冷却水流路管19および対物レンズコイル
15表面への結露を防ぐことができない。
【0086】往路冷却水水温TW1または復路冷却水水温
W2の冷却水にさらされている流路管19および対物レ
ンズコイル15の表面温度が、その周囲の環境によって
決まる露点よりも低くなると、その表面に周囲の空気に
含まれている水分が結露して付着する。それは流路管1
9および対物レンズコイル15を構成する金属材料等の
表面に発生する腐食の原因となる。
【0087】この結露を防ぐための実施例の概略構成図
を図17に示す。対物レンズ励磁電流駆動装置13から
対物レンズ励磁電流IOBが出力され、対物レンズコイ
ル15を含む対物レンズ5が発熱する原理、及びIOB
から対物レンズ発熱量QSを求めるまでの動作は上記実
施例の形態と同様である。
【0088】対物レンズ発熱量検出器16より出力され
た信号QSは、冷勉水の温度を設定する冷却水温度設定
器17へ出力される。
【0089】一方、室温は室温センサー32で測定さ
れ、また周囲環境湿度は湿度計33で測定され、それら
の結果は各々計算機28へ出力される。計算機28で
は、それらの結果を基に露点TLを求める。このとき、
室温と湿度から一義的に露点は求まることが知られてい
る。実際には、それらの関係を個別の条件について求め
て図18に示すような表TBL_TL(図18)を作成
して計算機28の中に記憶しておくのが良い。計算機2
8は、この露点TLと室温T0 を冷却水温度設定器17
へ出力する。冷却水温度設定器17では冷却水設定値T
WSを求める。このとき、(数5)により求められた冷
却水設定値TWSが、露点TLより高い温度のときには
(数5)により求められたTWSをそのまま冷却水製造
装置18へ出力される。またTWSがTLより低い温度
のときは、TWS=TLと設定し直してこれを冷却水製
造装置18へ出力される。
【0090】このときの関係を図19に示す。図19中
のAおよびB,Dは直線を含む曲線となるが、ここでは
簡単化のために直線と仮定し、下にその式を記す。直線
Aは冷却水温度がTW1のときの関係を表し、直線Bは冷
却水温度がTW2のときの関係を表し、直線Dは冷却水温
度がTLのときの関係を表す。
【0091】A:q=k1×(T−TW1) B:q=k1×(T−TW2) D:q=k1×(T−TL) いま、冷却水温度をTW1に設定した時、対物レンズ温度
1が室温T0になった(T1=T0)とする。この時の吸
熱量は直線Aと温度T=T0 の交点で、吸熱量q=q1
=発熱量Q1となる。この関係を表す係数k1 は、上記
実施例と同様に全体の冷却能力を表す係数である。
【0092】ここで、発熱量がQ=Q2 へ上がったとす
る(Q1<Q2)。対物レンズ温度は直線AとQ=Q2
交点で、T=T2(T1<T2)となり、(T2−T1)だ
け温度上昇する。
【0093】そこで、対物レンズ温度の元の温度である
室温T0 と一致する冷却水設定温度TW2(TW1>TW2
を求める。しかし、このTW2は露点TLより低い温度と
なり結露を発生する可能性がある。そこで、冷却水設定
温度をTLとすると、対物レンズ温度は直線DとQ=Q
2の交点で、T=T3となり、元の温度である室温T0
り上昇するがT2 よりは低い温度とすることができる。
【0094】このようにして求められた冷却水温度設定
値信号TWSは冷却水製造装置18へ出力される。以降
の冷却水製造装置18を含む一連の動作は上記実施例と
同様である。
【0095】以下、図20を用いて、冷却水温度を設定
する一連の動作を実行するための各ステップを説明す
る。
【0096】[ステップ100]〜[ステップ104] 上記実施例と同じ [ステップ108]計算機28は室温T0 を読み取る。
【0097】[ステップ109]計算機28は湿度W0
を読み取る。
【0098】[ステップ110]計算機28は露点TL
をTBL_TLより求める。
【0099】[ステップ105]冷却水温度設定器17
は、対物レンズ発熱量信号QSと設定温度T0 を読み込
んで、前記(数5)に基づいて冷却水温度設定値信号T
WSを求める。
【0100】[ステップ111]ステップ105で求め
たTWSとステップ110で求めたTLを比較する。
【0101】[ステップ112]TWSのTLより低い
温度となったときTWS=TLを代入する。
【0102】[ステップ106]〜[ステップ107] 上記実施例と同じ 以上の一連の動作によって、対物レンズ励磁電流量の変
化にかかわらず、結露の発生しない条件範囲内で対物レ
ンズ温度を所望の状態に保ち続けることが可能となる。
【0103】このように、本発明による走査型電子顕微
鏡は、試料に対向する対物レンズの温度を常に室温に保
つことにより、観察条件を変更して対物レンズの励磁条
件が変わったとき、あるいは装置に電源を投入したとき
に、対物レンズと試料とが熱的平衡に到達する時間を短
縮することができる。また、試料(ウェーハ)搬入時に
試料温度が平衡状態に達する時間を最短にできる。従っ
て、観察条件を変更する操作を行った後、あるいは装置
に電源を投入したり、装置に試料を搬入した後、直ちに
安定した試料観察を開始することができる。
【0104】ここでは、本発明を走査型電子顕微鏡を例
にとって説明した。しかし、本発明は走査型電子顕微鏡
に限らず、荷電粒子加工装置,電子線露光装置等の荷電
粒子露光装置,透過型電子顕微鏡,イオン電子顕微鏡な
ど、他のタイプの荷電粒子線装置に対しても同様に適用
することができる。
【0105】
【発明の効果】本発明によると、荷電粒子線光学レンズ
の一種である磁界型レンズの励磁電流の強弱にかかわら
ず磁界型レンズ温度を常に一定温度に保ち、観察試料へ
の磁界型レンズ温度変化による影響を最小とすることが
できる。また、対物レンズでの結露を防ぐことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による走査型電子顕微鏡の一例を示すブ
ロック図。
【図2】対物レンズ励磁量を求めるグラフ。
【図3】対物レンズ励磁量を求める表。
【図4】冷却水設定温速を求めるグラフ。
【図5】冷却水温度を設定するための一連の動作の流れ
を表す図。
【図6】磁界型レンズ発熱量の変化と磁界型レンズ温度
の変化を説明する図。
【図7】本発明の他の例を示す部分ブロック図。
【図8】冷却水流速を求めるグラフ。
【図9】冷却水流速を求める表。
【図10】本発明の他の例を示す部分ブロック図。
【図11】本発明の他の例を示す部分ブロック図。
【図12】磁界型レンズ発熱量の変化と磁界型レンズ温
度の変化を説明する図。
【図13】発熱量が上昇した後も冷却能力の補正を行わ
なかった場合の磁界型レンズの温度変化を説明する図。
【図14】初期温度勾配を説明する図。
【図15】本発明の他の例を示す部分ブロック図。
【図16】ペルチェ素子駆動電圧を求める表。
【図17】本発明の他の例を示す部分ブロック図。
【図18】露点を求める表。
【図19】本発明の効果の例を示すグラフ。
【図20】冷却水温度を設定するための一連の動作の流
れの例を示す図。
【符号の説明】
1…電子源、2…一次電子加速電極、3…収束レンズ、
4…偏向レンズ、5…対物レンズ、6…試料、7…試料
ステージ、8…二次電子検出器、9…増幅器、10…走
査電源、11…観察用表示器、12…焦点位置設定器、
13…対物レンズ励磁電流駆動装置、14…電流計、1
5…対物レンズコイル、16…対物レンズ発熱量検出
器、17…冷却水温度設定器、18…冷却水製造装置、
19…対物レンズ冷却水流路管、20…一次電子加速電
源、21…良熱伝導体、22…吸熱プレート、20…ペ
ルチェ素子、24…発熱プレート、25…放熱フィン、
26…ペルチェ素子駆動装置、27…温度センサー、2
8…計算機、29…波形記憶装置(メモリ)、30…往
路冷却水・水温センサー、31…復路冷却水・水温セン
サー、32…室温センサー、33…湿度計、VAC…一
次電子加速電圧、VAS…一次電子加速電圧設定値、FP
S…焦点位置信号、IOB…対物レンズ励磁電流、OB
S…対物レンズ励磁電流値信号、QS…対物レンズ発熱
量信号、TO…対物レンズ温度、TW1…復路冷却水水
温、TW2…復路冷却水水温、TWS…冷却水温度設定値
信号、W1…復路冷却水、W2…復路冷却水、VP…ペ
ルチェ素子駆動電圧。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】試料に荷電粒子線を照射する手段と、磁界
    型レンズを含む荷電粒子線光学系と、前記磁界型レンズ
    を冷却する冷却手段とを含む荷電粒子線装置において、 磁界型レンズの発熱量を求める発熱量検出手段と、前記
    冷却手段の冷却能力を制御する制御手段とを備え、前記
    制御手段は前記磁界型レンズの温度が略一定に保たれる
    ように前記発熱量検出手段によって求められた発熱量に
    応じて前記冷却手段の冷却能力を制御することを特徴と
    する荷電粒子線装置。
  2. 【請求項2】前記発熱量検出手段は試料に対向する磁界
    型レンズの発熱量を求め、前記制御手段は試料に対向す
    る前記磁界型レンズの冷却手段の冷却能力を制御するこ
    とを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
  3. 【請求項3】前記発熱量検出手段は前記磁界型レンズの
    励磁電流量に基づいて発熱量を求めることを特徴とする
    請求項1又は2記載の荷電粒子線装置。
  4. 【請求項4】前記発熱量検出手段は前記磁界型レンズの
    温度に基づいて発熱量を求めることを特徴とする請求項
    1又は2記載の荷電粒子線装置。
  5. 【請求項5】試料に照射する荷電粒子線を発生させる手
    段と、磁界型レンズを含む荷電粒子線光学系と、前記磁
    界型レンズを冷却する冷却手段とを含む荷電粒子線装置
    において、 試料に対向する磁界型レンズの温度を検出する温度検出
    手段と、前記冷却手段の冷却能力を制御する制御手段と
    を備え、前記制御手段は前記磁界型レンズの温度が略一
    定に保たれるように前記温度検出手段によって検出され
    た温度に応じて前記冷却手段の冷却能力を制御すること
    を特徴とする荷電粒子線装置。
  6. 【請求項6】荷電粒子線発生手段と、試料に前記荷電粒
    子線を走査する走査手段と、対物レンズと、前記対物レ
    ンズを冷却する冷却手段と、前記対物レンズの励磁電流
    を制御して前記荷電粒子線の焦点を試料表面に合わせる
    荷電粒子線焦点補正手段と、前記試料から放出された試
    料信号を検出する試料信号検出手段とを含む荷電粒子線
    装置において、 前記対物レンズの励磁電流量に基づいて前記対物レンズ
    の発熱量を検出する発熱量検出手段と、前記発熱量検出
    手段の検出結果を基に前記冷却手段の冷却能力を制御し
    て前記対物レンズを略一定温度に保つ制御手段とを備え
    ることを特徴とする荷電粒子線装置。
  7. 【請求項7】荷電粒子線発生手段と、試料に前記荷電粒
    子線を走査する走査手段と、対物レンズと、前記対物レ
    ンズを冷却する対物レンズ冷却手段と、前記対物レンズ
    の励磁電流を制御して前記荷電粒子線の焦点を試料表面
    に合わせる荷電粒子線焦点補正手段と、前記試料から放
    出された試料信号を検出する試料信号検出手段とを含む
    荷電粒子線装置において、 前記対物レンズの温度を検出する温度検出手段と、前記
    温度検出手段の検出結果を基に前記冷却手段の冷却能力
    を制御して前記対物レンズを略一定温度に保つ制御手段
    とを備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
  8. 【請求項8】前記対物レンズの励磁電流が変化したと
    き、試料と前記対物レンズとが熱平衡に到達する時間が
    冷却後の荷電粒子線装置固有の熱的時定数τ(=C/
    k、ただしCは装置本体の熱容量で単位は[J/℃]、
    kは冷却後の装置本体の放熱係数で単位は[W/℃])
    より短いことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項
    記載の荷電粒子線装置。
  9. 【請求項9】前記制御手段は冷媒の温度を変化させるこ
    とによって前記冷却手段の冷却能力を制御することを特
    徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の荷電粒子線
    装置。
  10. 【請求項10】前記制御手段は冷媒の流速を変化させる
    ことによって前記冷却手段の冷却能力を制御することを
    特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の荷電粒子
    線装置。
  11. 【請求項11】前記冷却手段は、ヒートポンプであるこ
    とを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の荷電
    粒子線装置。
  12. 【請求項12】前記略一定の温度は室温であることを特
    徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の荷電粒子
    線装置。
  13. 【請求項13】前記荷電粒子線装置は走査型電子顕微鏡
    であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項
    記載の荷電粒子線装置。
  14. 【請求項14】電源を投入した後又は装置へ試料を搬入
    した後、試料と前記レンズとが熱平衡に到達する時間が
    冷却後の荷電粒子線装置固有の熱的時定数τ(=C/
    k、ただしCは装置本体の熱容量で単位は[J/℃]、
    kは冷却後の装置本体の放熱係数で単位は[W/℃])
    より短いことを特徴とする請求項12記載の荷電粒子線
    装置。
  15. 【請求項15】前記荷電粒子線装置において、露点を求
    める手段を有し、その結果に基づいて前記冷却手段の冷
    却能力を制御することを特徴とする請求項1〜14のい
    ずれか1項記載の荷電粒子線装置。
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