JPH11244307A - 歯並矯正用具及びその製造方法 - Google Patents

歯並矯正用具及びその製造方法

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JPH11244307A
JPH11244307A JP5226298A JP5226298A JPH11244307A JP H11244307 A JPH11244307 A JP H11244307A JP 5226298 A JP5226298 A JP 5226298A JP 5226298 A JP5226298 A JP 5226298A JP H11244307 A JPH11244307 A JP H11244307A
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JP
Japan
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film
orthodontic appliance
carbon film
gas
plasma
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Application number
JP5226298A
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English (en)
Inventor
Takahiro Nakahigashi
孝浩 中東
Osamu Imai
今井  修
Koji Okamoto
康治 岡本
Yasuo Soejima
康夫 副島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性、潤滑性及び撥水性に優れるととも
に、これらの特性を長期にわたり維持できる歯並矯正用
具及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 表面の一部又は全部S1に耐摩耗性、潤
滑性及び撥水性のある炭素膜(DLC膜)Fが形成され
ている歯並矯正用具、及び、歯並矯正用具の基体Sを形
成する工程と、その基体Sの表面の一部又は全部S1に
耐摩耗性、潤滑性及び撥水性のある炭素膜Fを形成する
工程とを含む歯並矯正用具の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯科領域におい
て、歯並びを矯正するために用いる歯並矯正用具及びそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】歯並矯正は種々の用具を用いて行われて
いるが、動かそうとする歯に接着したブラケットをアー
チワイヤで繋いで該ブラケットに左右又は上下方向の持
続的な力をかけることで歯並びを矯正するマルチブラケ
ット法が主流である。マルチブラケット法に用いられる
一組の歯並矯正用具の1例を図1(A)に示す。この一
組の歯並矯正用具は、複数のブラケットB、バッカルチ
ューブT、アーチワイヤA、結紮用ワイヤWを有する。
このブラケットBはミニダイヤモンドブラケットと呼ば
れるタイプのもので、その裏面が動かそうとする歯に接
着剤を用いて接着される略四角形の台座B1を有し、台
座B1上の四隅にはそれぞれ結紮用ワイヤWを掛けるた
めの掛止部B2を有する。台座B1と掛止部B2とは一
体的に形成されている。2対の掛止部B2の間に形成さ
れた二つの溝B3にはアーチワイヤAが嵌め通される。
また、バッカルチューブTは大臼歯に固定されるもの
で、後述する大臼歯に巻かれたバンドにその裏面が溶着
される台座T1を有し、台座T1上にはアーチワイヤA
を通すための孔T2’を有するガイド部T2及びゴムチ
ューブ等を掛けるための掛止部T3を有する。台座T
1、ガイド部T2及び掛止部T3は一体的に形成されて
いる。
【0003】この歯並矯正用具を用いて歯並びを矯正す
るにあたっては、図1(B)に示すように、動かそうと
する歯XにそれぞれブラケットBの台座B1が接着され
る。また、大臼歯Yには金属製のバンドDが巻かれ、バ
ンドD上にバッカルチューブTの台座T1が溶着され
る。また、アーチワイヤAがブラケットBの溝B3及び
バッカルチューブTのガイド部T2の孔T2’に嵌め通
される。さらにブラケットBに嵌められたアーチワイヤ
AはブラケットBの四隅に形成された掛止部B2に結紮
用ワイヤWを掛けることでブラケットBと結紮される。
【0004】さらに、歯間を広げたり狭めたりするため
には、アーチワイヤAにコイルCを巻き付けたり、アー
チワイヤAにループA1を形成したり、大臼歯Yに取り
付けられたバッカルチューブTの掛止部T3と動かそう
とする歯に取り付けられたブラケットBとの間にゴムチ
ューブRを掛けることで、左右方向の持続的な力をブラ
ケットBにかけ、それによりブラケットBが取り付けら
れた歯を移動させる。この他、口腔内温度で所定の形状
となるよう記憶させた形状記憶合金を用いてアーチワイ
ヤ自体にバネの機能を持たせたものを用いることも行わ
れている。
【0005】また、審美的見地から、図1(A)のミニ
ダイヤモンドブラケットに代えて、図1(C)に示すよ
うなスマイルブラケットと呼ばれる小さいタイプのブラ
ケットも用いられている。スマイルブラケットSBは、
略四角形の台座SB1を有し、その上にアーチワイヤA
を嵌め通すための溝SB3を有する半円筒状のガイド部
SB2が形成されている。台座SB1とガイド部SB2
とは一体的に形成されている。使用にあたり、スマイル
ブラケットSBも台座SB1が歯に接着されたのち溝S
B3にアーチワイヤAが嵌め通されるが、スマイルブラ
ケットSBとアーチワイヤAとの結紮はワイヤを用いず
通常樹脂製の半円筒状のカバーSB4を被せることで行
われる。
【0006】マルチブラケット法では、歯の移動に伴い
ブラケットとアーチワイヤとの間、アーチワイヤと結紮
用ワイヤとの間が擦れるが、加えた力を効果的に歯に伝
えるためにはこれらの間の摩擦係数が小さいことが求め
られる。一方、ブラケット、アーチワイヤ、結紮用ワイ
ヤの材料には金属やセラミックが用いられる。しかし、
金属やセラミックからなるブラケット等は表面粗度が大
きく、そのため互いの摩擦係数が大きくなり、歯の移動
を効果的に行い難いとともに、摩擦によりその表面が摩
耗し易い。さらに、撥水性が悪いために歯垢が付着し易
いという難点もある。
【0007】また、歯に力を掛けるためのゴムチューブ
は歯や金属製等のブラケット等との接触により摩耗し易
く、数カ月或いはさらに長期にわたり矯正を行う場合に
その取替えを頻繁に行わなければならず、手間がかか
る。また、スマイルブラケットに被せる樹脂製カバーは
金属製等のブラケットやアーチワイヤとの摩擦係数が大
きく、そのため表面が摩耗し易い。さらに、ゴムや樹脂
からなる歯並矯正用具の場合も撥水性が悪く歯垢が付着
し易いという難点がある。
【0008】ブラケットとアーチワイヤとの間の摩擦係
数を低減することができる歯並矯正用具として、例えば
特開平5−146458号公報によると、アモルファス
合金をイオンプレーティング、蒸着、イオン注入、めっ
き等の方法でコーティングしたブラケット及びアーチワ
イヤが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開平5−146458号公報が教える歯並矯正用具で
は、数カ月或いはさらに長期にわたり装着する場合にそ
の摩耗を防止できるだけの十分な潤滑性、耐摩耗性は得
られない。また、撥水性が良くないため歯垢の付着防止
効果は望めない。さらに、イオンプレーティング、蒸
着、イオン注入、めっき等の方法でコーティングされた
アモルファス合金膜はブラケット等の基体との密着性が
悪く、長期にわたり使用すると部分的な膜剥離が生じる
ことがあり、該膜形成の効果を持続し難い。
【0010】そこで本発明は、耐摩耗性、潤滑性及び撥
水性に優れるとともに、これらの特性を長期にわたり維
持できる歯並矯正用具及びその製造方法を提供すること
を課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に本発明は、表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性及
び撥水性のある炭素膜が形成されていることを特徴とす
る歯並矯正用具を提供する。また本発明は、歯並矯正用
具の基体を形成する工程と、該基体の表面の一部又は全
部に耐摩耗性、潤滑性及び撥水性のある炭素膜を形成す
る工程とを含むことを特徴とする歯並矯正用具の製造方
法を提供する。
【0012】前記歯並矯正用具における炭素膜を形成す
る「表面」としては、他物品との接触面、外表面等を挙
げることができる。本発明に係る歯並矯正用具は、歯並
矯正用具の基体の表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑
性を有する炭素膜が形成されているため、その部分は他
物品(組み合わせ使用される他の歯並矯正用具等)との
滑りが良く、またその部分は他物品との摩擦、接触によ
り摩耗、劣化し難い。さらに、該炭素膜が摩耗し難いこ
とから良好な潤滑性が長期にわたり維持される。また、
該炭素膜が撥水性を有しているため、数カ月或いはさら
に長期にわたり口腔内で使用しても歯垢等の汚れが付着
し難い。
【0013】前記歯並矯正用具としては、マルチブラケ
ット法で用いる各種ブラケット、バッカルチューブ、ア
ーチワイヤ、結紮用ワイヤ、大臼歯に取り付けられるバ
ンド、歯に持続的な力を加えるために用いるコイルやゴ
ムチューブ、矯正した歯並びを保持するために用いるリ
テーナ、歯並拡大のために用いるクワッドヘリックス、
スマイルブラケットとアーチワイヤとの結紮に用いるカ
バー等を挙げることができる。本発明の歯並矯正用具は
これらに限らず、単独で歯並矯正に用いられるもの、そ
の部品、部分等のいずれでもよい。
【0014】本発明における歯並矯正用具の基体は、少
なくとも膜形成面が、金属、セラミック、ゴム及び樹脂
から選ばれた少なくとも1種の材料からなるものとする
ことができる。前記例示した歯並矯正用具のうち、ゴム
チューブの他、結紮用カバーの基体には樹脂製のものが
よく用いられる。前記金属としてはステンレスチール、
コバルト−クロム(Co−Cr)合金、チタン、チタン
合金、ニッケル、ニッケル合金等を例示できる。また、
前記セラミックとしてはアルミナ、ジルコニア(酸化ジ
ルコニウム)等を例示できる。
【0015】また、ゴムとしては天然ゴム、ブチルゴ
ム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、塩素
化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリ
ルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴ
ム、フッ素ゴム等を例示できる。また、樹脂としては熱
硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでも採用でき、熱硬
化性樹脂としては、フェノール・ホルムアルデヒド樹
脂、尿素樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、エポ
キシ樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエス
テル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等
を例示できる。
【0016】熱可塑性樹脂では、ビニル系樹脂(ポリ塩
化ビニル、ポリ2塩化ビニル、ポリビニルブチレート、
ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルホ
ルマール等)、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエーテ
ル、ポリエステル系樹脂(ポリスチレン、スチレン・ア
クリロニトリル共重合体等)、ABS、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル系樹脂(ポ
リメチルメタクリレート、変性アクリル等)、ポリアミ
ド系樹脂(ナイロン6、66、610、11等)、セル
ロース系樹脂(エチルセルロース、酢酸セルロース、プ
ロピルセルロース、酢酸・酪酸セルロース、硝酸セルロ
ース等)、ポリカーボネート、フェノキシ系樹脂、フッ
素系樹脂(3フッ化塩化エチレン、4フッ化エチレン、
4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン、フッ化ビニリ
デン等の樹脂)、ポリウレタン等を例示できる。
【0017】この他、炭素繊維も縒り合わせてアーチワ
イヤや結紮用ワイヤ等のワイヤの基体を構成する材料と
して用いたり、ブラケット等のブロック状の基体の材料
として用いることができる。本発明における炭素膜とし
ては、代表例としてDLC(Diamond Like Carbon、ダイ
ヤモンド状炭素)膜を挙げることができる。DLC膜
は、潤滑性良好であり、また、他物品との摩擦により摩
耗し難く、且つ、その厚さを調整することにより、基体
が柔軟性を有するものである場合にも該基体本来の柔軟
性を損なわない程度にすることができる適度な硬度を有
する炭素膜である。また、撥水性が良好である。さら
に、比較的低温で形成できる等、成膜を容易に行うこと
ができる。
【0018】いずれにしても前記炭素膜の膜厚は、基体
上に密着性良好に形成でき、さらに基体の保護膜として
十分機能できるとともに、基体が柔軟性を有するもので
ある場合にも該基体本来の柔軟性を損なわない範囲内で
あればよい。また、本発明に係る歯並矯正用具は、歯並
矯正用具の基体の膜形成面が金属又はセラミックからな
る場合、該基体と炭素膜との間にシリコン、チタン、炭
化ケイ素、炭化チタン、窒化チタンからなる群より選ば
れた少なくとも1種の材料からなる中間膜が形成された
ものとすることができる。これらの中間膜材料は炭素
膜、金属及びセラミックの双方との整合性が良いため、
炭素膜の基体への密着性を向上させることができる。同
様に、本発明方法においても、歯並矯正用具の基体の膜
形成対象面が金属又はセラミックからなる場合、炭素膜
形成に先立ち、該膜形成対象面上に前記材料からなる中
間膜を形成することができる。
【0019】前記中間膜の膜厚は100Å〜2000Å
程度とすることが望ましい。これは、100Åより薄く
なってくると均一に成膜することが困難になるからであ
り、2000Åより厚くなってくると生産性が低下する
からである。また、本発明における炭素膜形成方法とし
ては、少なくともその膜形成対象面の材料としてゴム、
樹脂等の比較的耐熱性に劣る材料を用いた基体に熱的損
傷を与えない温度範囲で膜形成できる方法として、プラ
ズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティン
グ法等を挙げることができるが、特にプラズマCVD法
を用いる場合は、後述するプラズマによる前処理と炭素
膜形成とを同一の装置を用いて行うことができる。
【0020】プラズマCVD法により炭素膜を形成する
場合のプラズマ原料ガスとしては、炭素膜形成に一般に
用いられるメタン(CH4 )、エタン(C2 6 )、プ
ロパン(C3 8 )、ブタン(C4 10)、アセチレン
(C2 2 )、ベンゼン(C 6 6 )等の炭化水素化合
物ガス及び必要に応じて、これらの炭化水素化合物ガス
にキャリアガスとして水素ガス、不活性ガス等を混合し
たものを用いることができる。
【0021】プラズマCVD法により炭素膜を形成する
場合、成膜圧力を100mTorr程度とし、成膜温度
を100℃以下にするとDLC膜が形成される。成膜温
度を高くするほど形成される膜の硬度が向上し、500
℃以上では非常に耐摩耗性に優れる炭素膜が形成され
る。900℃以上ではダイヤモンド膜が形成される。ま
た前記中間膜は、スパッタリング法、イオンプレーティ
ング法等により形成することができる。
【0022】また、本発明に係る歯並矯正用具の製造方
法において、前記炭素膜形成に先立ち、前処理として、
歯並矯正用具の基体の膜形成対象面を前処理用ガス、例
えばフッ素(F)含有ガス、水素(H2 )ガス及び酸素
(O2 )ガスから選ばれた少なくとも1種の前処理用ガ
スのプラズマに曝すことができる。前記フッ素含有ガス
としては、フッ素(F2 )ガス、3フッ化窒素(N
3 )ガス、6フッ化硫黄(SF6 )ガス、4フッ化炭
素(CF4 )ガス、4フッ化ケイ素(SiF4 )ガス、
6フッ化2ケイ素(Si2 6 )ガス、3フッ化塩素
(ClF3 )ガス、フッ化水素(HF)ガス等を挙げる
ことができる。
【0023】なお、前記中間膜を形成する場合は、中間
膜形成前に基体の膜形成対象面を前記前処理用ガスのプ
ラズマに曝すこと又は(及び)中間膜形成後に該中間膜
を該前処理用ガスのプラズマに曝すことができる。歯並
矯正用具の基体や中間膜を前記前処理用ガスのプラズマ
に曝すことにより、基体や中間膜の表面が清浄化され、
又はさらに基体や中間膜の表面粗度が向上する。これら
は、炭素膜や中間膜の密着性向上に寄与し、高密着性炭
素膜を得ることができる。
【0024】また、歯並矯正用具の基体の膜形成対象面
がゴム、樹脂等の有機材料からなる場合、フッ素含有ガ
スプラズマを採用するときは、これによって基体表面が
フッ素終端され、水素ガスプラズマを採用するときはこ
れによって基体表面が水素終端される。フッ素−炭素結
合及び水素−炭素結合は安定であるため、このような終
端処理を施した面上に炭素膜を形成する場合は、膜中の
炭素原子が基体表面部分のフッ素原子又は水素原子と安
定に結合を形成する。そしてこれらのことから、その後
形成する炭素膜と前記基体との密着性を向上させること
ができる。
【0025】また、酸素ガスプラズマを採用するとき
は、基体や中間膜表面に付着した有機物等の汚れを特に
効率良く除去でき、これらのことからその後形成する炭
素膜や中間膜の密着性を向上させることができる。本発
明方法において、プラズマによる前処理は同種類のプラ
ズマを用いて或いは異なる種類のプラズマを用いて複数
回行っても構わない。例えば、歯並矯正用具基体の膜形
成面がゴム、樹脂等の有機材料からなる場合、該基体を
酸素ガスプラズマに曝した後、フッ素含有ガスプラズマ
又は水素ガスプラズマに曝し、その上に炭素膜を形成す
るときには、基体表面がクリーニングされた後、該面が
フッ素終端又は水素終端されて、その後形成する炭素膜
と該基体表面との密着性は非常に良好なものとなる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。図2は本発明に係る歯並矯正用具
の製造に用いることができる成膜装置の1例の概略構成
を示す図である。また、図3(A)は本発明に係る歯並
矯正用具の1例(ブラケット)の断面図であり、図3
(B)は本発明に係る歯並矯正用具の他の例(スマイル
ブラケットのカバー)の断面図である。
【0027】図1の装置は、排気装置11が接続された
真空チャンバC1を有し、チャンバC1内には電極2及
びこれに対向する位置に電極3が設置されている。電極
3は接地され、電極2にはマッチングボックス22を介
して高周波電源23が接続されている。また、電極2に
はその上に支持される被成膜基体を成膜温度に加熱する
ためのヒータ21が付設されている。また、チャンバC
1にはガス供給部4が付設されて、内部にプラズマ原料
ガスを導入できるようになっている。ガス供給部4には
マスフローコントローラ、弁及びプラズマ原料ガスのガ
ス源が含まれるが、これらは図示を省略している。チャ
ンバC1は炭素膜形成用のチャンバである。
【0028】また、チャンバC1にはゲート弁Gを介し
て中間膜形成用のチャンバC2が連設されている。チャ
ンバC2には排気装置11’が接続されている。チャン
バC2内には電極2’及びこれに対向する位置に電極
3’が設置されている。電極3’は接地電極である。電
極2’にはマッチングボックス22’を介して高周波電
源23’が接続されている。電極2’上にはスパッタタ
ーゲットSTが設置されている。スパッタターゲットS
Tの材料としてはシリコン、チタン、炭化ケイ素、炭化
チタン、窒化チタン又はこれらを混合したものを用い
る。また、チャンバC2にはガス供給部4’が付設され
て、内部にプラズマ原料ガスを導入できるようになって
いる。ガス供給部4’にもマスフローコントローラ、弁
及びプラズマ原料ガスのガス源が含まれるが、これらは
図示を省略している。
【0029】この装置を用いて本発明に係る歯並矯正用
具(ここではブラケット)を製造する方法の1例につい
て説明する。先ず、ここでは別途に予め形成しておいた
金属からなるブラケット基体Sを、歯に接着されない面
を電極2’の方に向けて、チャンバC2内の接地電極
3’上に設置する。次いで、排気装置11’の運転によ
りチャンバC2内を所定圧力に調整した後、ガス供給部
4’からプラズマ原料ガスを導入する。ここではプラズ
マ原料ガスとして不活性ガスを用いる。また、電極2’
に高周波電源23’からマッチングボックス22’を介
してガスプラズマ化用の高周波電力を供給する。
【0030】これにより前記導入した原料ガスがプラズ
マ化され、プラズマ中の正イオンがスパッタターゲット
STに衝突することでスパッタターゲットSTからスパ
ッタ粒子が放出される。放出された粒子が基体Sの歯へ
の装着時に口腔内に露出される外表面S1上に堆積して
中間膜が形成される。なお、この中間膜形成は行うこと
が望ましいが、必ずしも要しない。
【0031】次いで、ゲート弁Gを開けて、排気装置1
1の運転にて所定圧力に調整されたチャンバC1内に中
間膜が形成された基体を搬入し、電極2上に載置する。
この後ゲート弁Gを閉じる。次いで、必要に応じてチャ
ンバC1内圧力を再調整した後、ガス供給部4からチャ
ンバC1内にフッ素含有ガス、水素ガス及び酸素ガスの
うち1種以上のガスを前処理用ガスとして導入するとと
もに高周波電源23からマッチングボックス22を介し
て電極2に高周波電力を供給し、これにより前記導入し
た前処理用ガスをプラズマ化し、該プラズマの下で基体
Sの外表面S1の前処理を行う。なお、この表面処理
(前処理)は行うことが望ましいが、必ずしも要しな
い。
【0032】次いで、必要に応じてチャンバC1内を再
び真空引きし、さらに圧力を再調整した後、ガス供給部
4からチャンバC1内に成膜用原料ガスとして炭化水素
化合物ガスを導入するとともに高周波電源23からマッ
チングボックス22を介して電極2に高周波電力を供給
し、これにより前記導入した炭化水素化合物ガスをプラ
ズマ化し、該プラズマの下で基体Sの外表面S1に炭素
膜を形成する。
【0033】このようにして、図3(A)に示すよう
に、金属製のブラケット基体Sの装着時に口腔内に露出
する外表面S1上に中間膜M及び炭素膜Fが形成された
炭素膜被覆ブラケットが得られる。この炭素膜被覆ブラ
ケットは、基体Sの外表面S1に耐摩耗性、潤滑性を有
する炭素膜Fが形成されているため、他物品例えばアー
チワイヤや結紮用ワイヤとの滑りが良く、かかる他物品
との摩擦、接触により摩耗、劣化し難い。さらに、該炭
素膜Fが摩耗し難いことから良好な潤滑性が長期にわた
り維持される。また、該炭素膜Fが撥水性を有している
ため、数カ月或いはさらに長期にわたり口腔内で使用し
ても歯垢等の汚れが付着し難い。さらに、中間膜Mを形
成したり、プラズマによる前処理を施すときには、炭素
膜Fの密着性が向上するため、良好な耐摩耗性、潤滑
性、撥水性が一層長期にわたり維持される。
【0034】また、図2の装置を用いて、本発明に係る
歯並矯正用具(ここではスマイルブラケットのカバー)
を製造する方法の他の例について説明する。この場合、
カバー基体として樹脂製のものを用い、チャンバC2内
での中間膜の形成は行わず、チャンバC1内でカバー基
体S’の外表面S1’全体に前記と同様にしてプラズマ
による前処理及び炭素膜形成を行う。なお、基体S’の
外表面S1’全体に略均一に表面処理及び膜形成を行う
ため、基体S’の向きを変えて2回づつ表面処理及び膜
形成を行う。この場合も、プラズマによる前処理は行う
ことが望ましいが、必ずしも要しない。
【0035】このようにして、図3(B)に示すよう
に、樹脂製のカバー基体S’の外表面S1’全体に炭素
膜Fが形成された炭素膜被覆カバーが得られる。この炭
素膜被覆カバーについても、耐摩耗性、潤滑性及び撥水
性が長期にわたり維持されることは前記炭素膜被覆ブラ
ケットの場合と同様である。なお、ここでは炭素膜被覆
ブラケット及び炭素膜被覆スマイルブラケットカバーの
例について説明したが、この他いずれの歯並矯正用具に
ついても同様の方法で炭素膜を形成することができ、同
様の効果が得られる。
【0036】次に、図2の装置を用いて、ブラケット等
の材料として多用されるステンレススチールSUS30
4からなる試験片の外表面にDLC膜を形成した実験例
1、シリコン中間膜及びDLC膜を形成した実験例2及
びプラズマによる前処理を施した後DLC膜を形成した
実験例3〜6について説明する。 実験例1 前述の図2の装置を用いた成膜方法において、中間膜形
成及び前処理用ガスプラズマによる試験片の前処理を行
わず、チャンバC1内で該試験片の外表面に直接DLC
膜を形成した。 試験片 材質 ステンレススチールSUS304 サイズ 10mm×10mm×厚さ1mm 高周波電極サイズ 直径280mm DLC膜形成の成膜条件 成膜用原料ガス メタン(CH4 )、50sccm 高周波電力 13.56MHz、150W 成膜圧力 0.01Torr 成膜温度 25℃ 成膜時間 60min 実験例2 前記実験例1において、チャンバC1内でのDLC膜形
成に先立ち、チャンバC2内で試験片の外表面にシリコ
ンからなる中間膜を形成した。DLC膜の成膜条件は前
記実験例1と同様とした。 高周波電極サイズ 直径200mm スパッタターゲット材料 シリコン(Si) 中間膜形成の成膜条件 プラズマ原料ガス アルゴン(Ar)、50sccm 高周波電力 13.56MHz、200W 成膜圧力 0.05Torr 成膜温度 25℃ 成膜時間 10min 実験例3 前記実験例1において、DLC膜形成に先立ち、試験片
に次の条件で水素ガスプラズマによる前処理を施した。
成膜条件は前記実験例1と同様とした。 前処理条件 前処理用ガス 水素(H2 )、100sccm 高周波電力 13.56MHz、300W 処理圧力 0.1Torr 処理時間 5min 実験例4 前記実験例1において、DLC膜形成に先立ち、試験片
に次の条件でフッ素化合物ガスプラズマによる前処理を
施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。 前処理条件 前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 )、100sccm 高周波電力 13.56MHz、300W 処理圧力 0.1Torr 処理時間 5min 実験例5 前記実験例1において、DLC膜形成に先立ち、試験片
に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施
し、さらに水素ガスプラズマによる第2の前処理を施し
た。成膜条件は前記実験例1と同様とした。 第1前処理条件 前処理用ガス 酸素(O2 )、100sccm 高周波電力 13.56MHz、300W 処理圧力 0.1Torr 処理時間 5min 第2前処理条件 前処理用ガス 水素(H2 )、100sccm 高周波電力 13.56MHz、300W 処理圧力 0.1Torr 処理時間 5min 実験例6 前記実験例1において、DLC膜形成に先立ち、試験片
に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施
し、さらにフッ素化合物ガスプラズマによる第2の前処
理を施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。 第1前処理条件 前処理用ガス 酸素(O2 )、100sccm 高周波電力 13.56MHz、300W 処理圧力 0.1Torr 処理時間 5min 第2前処理条件 前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 )、100sccm 高周波電力 13.56MHz、300W 処理圧力 0.1Torr 処理時間 5min 次に、前記実験例1及び2により得られた各DLC膜被
覆試験片及び未処理の試験片(比較例)について、SU
S304材との摩擦係数を測定した。摩擦係数は、物品
表面に先端曲率半径R18mmのSUS304からなる
ピン状物品の該先端部を当接させ、且つ、該ピン状物品
に10gの荷重をかけた状態でこのピンを10mm/s
ecの速度で移動させたときの値を測定した。10回測
定した平均値を次表に示す。
【0037】 このように、SUS304からなる試験片にDLC膜を
被覆することでSUS304材との摩擦係数が非常に小
さくなったことが分かる。
【0038】また、前記実験例1及び2により得られた
各DLC膜被覆試験片及び未処理の試験片(比較例)に
ついて、ヌープ硬度を測定した。ヌープ硬度は、実験例
1及び2では2gヌープ硬度を測定し、比較例では0.
5gヌープ硬度を測定した。結果を次表に示す。 このように、SUS304からなる試験片にDLC膜を
被覆することで、硬度が高くなったことが分かる。
【0039】また、前記実験例1及び2により得られた
各DLC膜被覆試験片及び未処理の試験片(比較例)に
ついて、表面段差計を用いて表面粗さを測定した。最大
高さRmaxの値を次表に示す。 このように、SUS304からなる試験片にDLC膜を
被覆することで、表面粗さが小さくなったことが分か
る。
【0040】また、前記実験例1〜6により得られた各
DLC膜被覆試験片について膜の密着性を評価した。膜
密着性は、試験片上に形成された膜を1mm平方の正方
形状に区切り、テープを貼った後剥がしてどの程度膜が
剥離するかを調べるJISテープ剥離試験法(メッシュ
法)により評価した。結果を次表に示す。 このように、DLC膜形成に先立ちSUS304からな
る試験片表面にプラズマによる前処理を施すことで膜密
着性が向上したことが分かる。また、シリコン中間膜を
形成することで膜密着性が向上したことも分かる。
【0041】また、前記実験例1及び2により得られた
各DLC膜被覆試験片及び未処理の試験片(比較例)に
ついて、撥水性を評価した。撥水性は各試験片上に純水
の水滴を置きその接触角を測定することで評価した。な
お、接触角は、空気中にある固体面上に液体があると
き、固体、液体、気体の3相の接触点で液体に引いた接
線と固体面のなす角のうち液体を含む方の角をいい、大
きいほど撥水性がよいことを示す。
【0042】 このように、SUS304からなる試験片にDLC膜を
被覆することで、撥水性が向上したことが分かる。
【0043】以上のことから、表面の一部又は全部に炭
素膜(特にDLC膜)を形成した本発明の歯並矯正用具
は、その部分の潤滑性、耐摩耗性及び撥水性に優れるこ
とが分かる。また、耐摩耗性に優れることから良好な潤
滑性及び撥水性を長期にわたり維持できることが分か
る。また、中間膜を形成する場合や前処理としてプラズ
マ処理を行う場合は、炭素膜の密着性を向上させること
ができ、その分良好な耐摩耗性、潤滑性及び撥水性を一
層長期にわたり維持できることが分かる。
【0044】
【発明の効果】以上のように本発明によると、耐摩耗
性、潤滑性及び撥水性に優れるとともに、これらの特性
を長期にわたり維持できる歯並矯正用具及びその製造方
法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図(A)、図(B)及び図(C)はそれぞれ従
来用いられている歯並矯正用具の例或いはさらにその使
用状況を示す図である。
【図2】本発明の歯並矯正用具の製造に用いることがで
きる成膜装置の1例の概略構成を示す図である。
【図3】図(A)及び図(B)はそれぞれ本発明に係る
歯並矯正用具の実施形態の断面図である。
【符号の説明】
C1、C2 真空チャンバ 11、11´ 排気装置 2、2’ 高周波電極 21 ヒータ 22、22’ マッチングボックス 23、23’ 高周波電源 3 接地電極 4、4´ プラズマ原料ガス供給部 ST スパッタターゲット G ゲート弁 S 歯並矯正用具(ブラケット)基体 S1 基体Sの装着時に口腔内に露出する外表面 S’ 歯並矯正用具(スマイルブラケットのカバー)基
体 S1’ 基体S’の外表面 F 炭素膜 M 中間膜 B ミニダイヤモンドブラケット B1 台座 B2 掛止部 B3 溝 A アーチワイヤ A1 ループ W 結紮用ワイヤ T バッカルチューブ T1 台座 T2 ガイド部 T2’ ガイド部T2の孔 T3 掛止部 D バンド C コイル R ゴムチューブ SB スマイルブラケット SB1 台座 SB2 ガイド部 SB3 溝 SB4 カバー X 動かそうとする歯 Y 大臼歯
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 副島 康夫 京都市右京区梅津高畝町47番地 日新電機 株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性
    及び撥水性のある炭素膜が形成されていることを特徴と
    する歯並矯正用具。
  2. 【請求項2】 前記炭素膜がDLC膜である請求項1記
    載の歯並矯正用具。
  3. 【請求項3】 前記歯並矯正用具の基体の膜形成面が金
    属、セラミック、ゴム又は樹脂からなるものである請求
    項1又は2記載の歯並矯正用具。
  4. 【請求項4】 前記歯並矯正用具の基体の膜形成面が金
    属又はセラミックからなり、該基体と前記炭素膜との間
    にシリコン、チタン、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化チ
    タンからなる群より選ばれた少なくとも1種の材料から
    なる中間膜が形成されている請求項1、2又は3記載の
    歯並矯正用具。
  5. 【請求項5】 歯並矯正用具の基体を形成する工程と、
    前記基体表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性及び撥
    水性のある炭素膜を形成する工程とを含むことを特徴と
    する歯並矯正用具の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記炭素膜をDLC膜とする請求項5記
    載の歯並矯正用具の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記炭素膜をプラズマCVD法により形
    成する請求項5又は6記載の歯並矯正用具の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記歯並矯正用具の基体の膜形成対象面
    を金属、セラミック、ゴム又は樹脂で形成する請求項
    5、6又は7記載の歯並矯正用具の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記炭素膜形成に先立ち、前処理として
    前記歯並矯正用具の基体の膜形成対象面をフッ素(F)
    含有ガス、水素(H2 )ガス及び酸素(O2)ガスから
    選ばれた少なくとも1種のガスのプラズマに曝す請求項
    5から8のいずれかに記載の歯並矯正用具の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記歯並矯正用具の基体の膜形成対象
    面を金属又はセラミックで形成し、前記炭素膜形成に先
    立ち、前記歯並矯正用具の基体の炭素膜形成対象面上に
    シリコン、チタン、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化チタ
    ンからなる群より選ばれた少なくとも1種の材料からな
    る中間膜を形成する請求項5から8のいずれかに記載の
    歯並矯正用具の製造方法。
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