JPH1124539A - 計算機ホログラムおよびその作成方法 - Google Patents

計算機ホログラムおよびその作成方法

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JPH1124539A
JPH1124539A JP9189229A JP18922997A JPH1124539A JP H1124539 A JPH1124539 A JP H1124539A JP 9189229 A JP9189229 A JP 9189229A JP 18922997 A JP18922997 A JP 18922997A JP H1124539 A JPH1124539 A JP H1124539A
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智恒 浜野
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    • G03H2224/04Particle beam, e.g. e-beam

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 再生像の輝度むら発生を抑制する。 【解決手段】 原画像10上に定義された多数の点光源
Pからの物体光と、所定の参照光Rとの干渉波を求め、
記録面20上の各演算点Q(x,y)における干渉波強
度を演算によって求める。演算を行う際には、各点光源
Pからの物体光の広がりを、所定の広がり角θで規定さ
れる円錐内に制限する。記録面20上の各演算点ごとの
干渉波の振幅の差が、所定の許容範囲内に収まるように
なるまで、広がり角θの値を、初期値から徐々に小さく
してゆく。許容範囲に収まったら、記録面20上に得ら
れた干渉波の振幅強度を二値化して二値画像を作成し、
この二値画像を電子線描画装置で媒体上に描画し、エン
ボスホログラムを作成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はホログラムの作成方
法に関し、特に、計算機を用いた演算により所定の記録
面上に干渉縞を形成してなる計算機ホログラムを作成す
る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、レーザを利用してコヒーレント光
を容易に得ることができるようになり、ホログラムの商
業的な利用もかなり普及するに至っている。特に、金券
やクレジットカードについては、偽造防止の観点から、
媒体の一部にホログラムを形成するのが一般化してきて
いる。
【0003】現在、商業的に利用されているホログラム
は、光学的な手法により、原画像を媒体上に干渉縞とし
て記録したものである。すなわち、原画像を構成する物
体を用意し、この物体からの光と参照光とを、レンズな
どの光学系を用いて感光剤が塗布された記録面上に導
き、この記録面上に干渉縞を形成させるという手法を採
っている。この光学的な手法は、鮮明な再生像を得るた
めに、かなり精度の高い光学系を必要とするが、ホログ
ラムを得るための最も直接的な手法であり、産業上では
最も広く普及している手法である。
【0004】一方、計算機を用いた演算により記録面上
に干渉縞を形成させ、ホログラムを作成する手法も知ら
れており、このような手法で作成されたホログラムは、
一般に「計算機合成ホログラム(CGH:Computer Gen
erated Hologram )」、あるいは単に「計算機ホログラ
ム」と呼ばれている。この計算機ホログラムは、いわば
光学的な干渉縞の生成プロセスをコンピュータ上でシミ
ュレーションすることにより得られるものであり、干渉
縞パターンを生成する過程は、すべてコンピュータ上の
演算として行われる。このような演算によって干渉縞パ
ターンの画像データが得られたら、この画像データに基
づいて、実際の媒体上に物理的な干渉縞が形成される。
具体的には、たとえば、コンピュータによって作成され
た干渉縞パターンの画像データを電子線描画装置に与
え、媒体上で電子線を走査することにより物理的な干渉
縞を形成する方法が実用化されている。
【0005】コンピュータグラフィックス技術の発展に
より、印刷業界では、種々の画像をコンピュータ上で取
り扱うことが一般化しつつある。したがって、ホログラ
ムに記録すべき原画像も、コンピュータを利用して得ら
れた画像データとして用意することができれば便利であ
る。このような要求に応えるためにも、計算機ホログラ
ムを作成する技術は重要な技術になってきており、将来
は光学的なホログラム作成手法に取って代わる技術にな
るであろうと期待されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、計算
機ホログラムは、今後大きな需要が見込まれる分野であ
るが、現時点では、商業的な利用を図る上での解決すべ
き課題をいくつか抱えている。たとえば、干渉縞を演算
する際に、コンピュータに多大な演算負担が課せられる
点は、解決すべき重要な課題のひとつである。現在のと
ころ、演算処理能力の優れた超高速コンピュータを用い
て、長時間にわたる演算を実行させれば、光学的なホロ
グラムと同等の品質をもった計算機ホログラムを作成す
ることは可能であるが、このような作成方法は商業的に
利用することはできない。そこで、計算機ホログラムを
作成する際に、コンピュータの演算負担を軽減させる手
法が提案されている。たとえば、特願平8−13165
5号明細書や特願平8−277931号明細書には、原
画像および記録面を、それぞれ分割して線状の単位領域
を多数定義し、「原画像上の所定の単位領域内の点光源
から発せられた光は、記録面上の対応する特定の単位領
域内にのみ到達する」との仮想の限定条件を付した演算
を行うことにより、演算負担を軽減させる方法が提案さ
れている。
【0007】また、コンピュータ上で得られた干渉縞
を、実際の媒体上で、どのようにして物理的な干渉縞と
して再現するか、という点も、解決すべき重要な課題の
ひとつである。光学的な手法でホログラムを作成する場
合、いわゆる写真技術を利用して、感光フィルム上にア
ナログ画像として干渉縞を記録することが可能である
が、計算機ホログラムを作成する場合、コンピュータ上
に得られたデジタル画像データに基づいて、媒体上に物
理的な干渉縞を形成する必要がある。ところが、干渉縞
パターンは、光の波長レベルの微細なパターンであるた
め、かなり高精度な描画技術が必要になる。現在のとこ
ろ、計算機ホログラムを作成するための物理的な描画工
程には、電子線描画装置を用いた描画を行うのが最適で
あると考えられている。電子線描画装置は、半導体集積
回路用の微細パターンの描画に広く利用されており、干
渉縞パターンの描画に必要十分な精度をもっている。た
だ、電子線描画装置は電子ビームのオン/オフ制御によ
りパターン形成を行う装置であり、パターン形成面に対
して、電子ビームによる描画/非描画の制御しか行うこ
とはできない。したがって、媒体上には二値画像による
干渉縞のパターン形成が行われることになる。
【0008】ところが、本来得られるべきアナログの干
渉縞パターンを、二値画像によるパターンとして記録す
ると、記録対象となる原画像のモチーフによっては、観
察時に輝度むらが生じる現象が確認されている。このよ
うな輝度むらが発生する原因についての考察は後述する
が、原画像として、いわゆる文字やロゴを用いた場合に
は特に輝度むらの発生が顕著である。たとえば、英文字
の「A」といった単純なモチーフからなる原画像を記録
した場合、この英文字が一様な輝度をもった線で描かれ
ていたとしても、観察時には、文字の上部を構成する線
の輝度と文字の下部を構成する線の輝度との間に、かな
りの相違が生じることになる。このような輝度むらは、
上述したコンピュータによる演算負担を軽減させる手法
を利用した場合には、特に顕著に現れる。
【0009】そこで本発明は、媒体上に二値画像として
干渉縞を記録した場合であっても、再生像に輝度むらが
生じることのない計算機ホログラムを作成する方法を提
供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、計算機を用いた演算によ
り所定の記録面上に干渉縞を形成してなる計算機ホログ
ラムを作成する方法において、所定の原画像と、この原
画像を記録するための記録面と、この記録面に対して照
射する参照光とを定義する段階と、記録面上に多数の演
算点を定義し、個々の演算点について、原画像上に定義
された点光源から発せられた物体光と、参照光とによっ
て形成される干渉波の強度を演算する段階と、個々の演
算点について求められた干渉波の強度を二値化し、記録
面上に二値画像を定義する段階と、この二値画像に基づ
いて、媒体上に物理的な干渉縞を作成する段階と、を行
い、このとき、干渉波の強度演算を行う際に、個々の演
算点ごとの干渉波の振幅の差が、所定の許容範囲内に収
まるように、点光源から発せられた物体光の広がりを制
限するようにしたものである。
【0011】(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1
の態様に係る計算機ホログラムの作成方法において、予
め、物体光の初期広がり角を定義しておき、個々の演算
点ごとの干渉波の振幅の差が所定の許容範囲内に収まる
まで、物体光の広がり角を初期広がり角から徐々に減少
させながら、記録面上の全演算点についての干渉波強度
演算を繰り返し実行するようにしたものである。
【0012】(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1
または第2の態様に係る計算機ホログラムの作成方法に
おいて、原画像の点光源における法線を中心軸とし、こ
の点光源を通り中心軸に対して角度θをなす線を中心軸
の回りに回転させて得られる円錐を定義し、物体光の広
がりをこの円錐内に制限するようにしたものである。
【0013】(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1
または第2の態様に係る計算機ホログラムの作成方法に
おいて、記録面の演算点における法線を中心軸とし、こ
の演算点を通り中心軸に対して角度θをなす線を中心軸
の回りに回転させて得られる円錐を定義し、原画像を構
成する点光源のうち、この円錐に含まれる点光源からの
物体光のみが演算点に到達するものとして、物体光の広
がりの制限を行うようにしたものである。
【0014】(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1
または第2の態様に係る計算機ホログラムの作成方法に
おいて、原画像および記録面を、それぞれ分割して多数
の単位領域を定義し、原画像上の個々の単位領域と記録
面上の個々の単位領域とを対応づけ、記録面上に定義さ
れた個々の演算点について、当該演算点が所属する単位
領域に対応する原画像上の単位領域を演算対象単位領域
と定め、この演算対象単位領域内の点光源から発せられ
た広がりを制限された物体光と、参照光とによって形成
される干渉波の強度を演算するようにしたものである。
【0015】(6) 本発明の第6の態様は、上述の第5
の態様に係る計算機ホログラムの作成方法において、演
算対象単位領域内の点光源における法線を中心軸とし、
この点光源を通り中心軸に対して角度θをなす線を中心
軸の回りに回転させて得られる円錐を定義し、物体光の
広がりをこの円錐内に制限するようにしたものである。
【0016】(7) 本発明の第7の態様は、上述の第5
の態様に係る計算機ホログラムの作成方法において、記
録面の演算点における法線を中心軸とし、この演算点を
通り中心軸に対して角度θをなす線を中心軸の回りに回
転させて得られる円錐を定義し、原画像を構成する点光
源のうち、演算点についての演算対象単位領域内に位置
し、かつ、定義した円錐に含まれる点光源からの物体光
のみが演算点に到達するものとして、物体光の広がりの
制限を行うようにしたものである。
【0017】(8) 本発明の第8の態様は、上述の第5
〜第7の態様に係る計算機ホログラムの作成方法におい
て、原画像および記録面を多数の平行線によって分割
し、多数の線状の単位領域を定義するようにしたもので
ある。
【0018】(9) 本発明の第9の態様は、上述の第1
〜第8の態様に係る計算機ホログラムの作成方法によっ
て、計算機ホログラムを作成するようにしたものであ
る。
【0019】(10) 本発明の第10の態様は、計算機を
用いた演算を利用して、所定の媒体上に原画像を干渉縞
として記録した計算機ホログラムにおいて、媒体上の任
意の点に法線を立て、この法線を中心軸とし、当該任意
の点を通り中心軸に対して所定の角度θをなす線を中心
軸の回りに回転させて得られる円錐を定義したときに、
当該任意の点には、記録対象となる原画像のうち、定義
した円錐の内部の部分に関する情報のみが記録されてい
るようにしたものである。
【0020】(11) 本発明の第11の態様は、上述の第
10の態様に係る計算機ホログラムにおいて、媒体上に
多数の単位領域が定義されており、この媒体上の各単位
領域は、それぞれ原画像上に定義された特定の単位領域
に対応づけられており、媒体上の任意の点には、この任
意の点が所属する単位領域に対応する原画像上の単位領
域のうち、この任意の点について定義された円錐の内部
に位置する部分に関する情報のみが記録されているよう
にしたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示する実施形態
に基づいて説明する。
【0022】§1. 計算機ホログラムの基本原理 図1は、一般的なホログラムの作成方法を示す原理図で
あり、原画像10を記録面20上に干渉縞として記録す
る方法が示されている。ここでは、説明の便宜上、図示
のとおりXYZ三次元座標系を定義し、記録面20がX
Y平面上に置かれているものとする。光学的な手法を採
る場合、記録対象となる物体が原画像10として用意さ
れることになる。この原画像10上の任意の点Pから発
せられた物体光Oは、記録面20の全面に向けて進行す
る。一方、記録面20には、参照光Rが照射されてお
り、物体光Oと参照光Rとの干渉縞が記録面20上に記
録されることになる。
【0023】記録面20の位置に計算機ホログラムを作
成するには、原画像10、記録面20、参照光Rを、コ
ンピュータ上にデータとしてそれぞれ定義し、記録面2
0上の各位置における干渉波強度を演算すればよい。具
体的には、図2に示すように、原画像10をN個の点光
源P,P,P,…,P,…,Pの集合として
取り扱い、各点光源からの物体光O,O,O
…,O,…,Oが、それぞれ演算点Q(x,y)へ
と進行するとともに、参照光Rが演算点Q(x,y)に
向けて照射されたものとし、これらN本の物体光O
と参照光Rとの干渉によって生じる干渉波の演算点
Q(x,y)の位置における振幅強度を求める演算を行
えばよい。物体光および参照光は、通常、単色光として
演算が行われる。記録面20上には、必要な解像度に応
じた多数の演算点を定義するようにし、これら各演算点
のそれぞれについて、振幅強度を求める演算を行えば、
記録面20上には干渉波の強度分布が得られることにな
る。
【0024】このような強度分布を示す画像データに基
づいて、実際の媒体上に物理的な濃淡パターンやエンボ
スパターンを形成すれば、原画像10を干渉縞として記
録したホログラムが作成できる。媒体上に高解像度の干
渉縞を形成する手法としては、電子線描画装置を用いた
描画が適している。電子線描画装置は、半導体集積回路
のマスクパターンを描画する用途などに広く利用されて
おり、電子線を高精度で走査する機能を有している。そ
こで、演算によって求めた干渉波の強度分布を示す画像
データを電子線描画装置に与えて電子線を走査すれば、
この強度分布に応じた干渉縞パターンを描画することが
できる。ただ、一般的な電子線描画装置は、描画/非描
画を制御することにより二値画像を描画する機能しか有
していない。そこで、演算によって求めた強度分布を二
値化して二値画像を作成し、この二値画像データを電子
線描画装置に与えるようにすればよい。
【0025】§2. 演算負担を軽減させる手法 計算機ホログラムを作成する基本原理は、上述したとお
りである。ただ、高い品質をもった再生像を得るために
は、記録面20に記録される干渉縞の解像度を高めると
ともに、原画像10自体の解像度を高める必要がある。
別言すれば、記録面20上に定義する演算点Qの数を増
やすとともに、原画像10を構成する点光源Pの数を増
やす必要があり、コンピュータの演算負担は両者の積に
応じて増大することになる。このため、現在の一般的な
コンピュータの処理能力を考慮すると、このような手法
によって作成された計算機ホログラムを商業的に利用す
るのは困難である。
【0026】そこで、ここでは、演算負担を軽減させる
ための実用的な一手法を述べておく。図3は、この手法
を説明するための原理図である。まず、原画像10上の
任意の点光源Pから発せられた物体光Oiが、図示の
とおり水平方向(XZ平面に平行な平面内)にのみ広が
ると仮定する。すると、物体光Oiは、記録面20上の
線状領域Bだけに到達することになり、記録面20の他
の領域には、物体光O は一切届かないことになる。原
画像10を構成するすべての点光源から発せられる物体
光について、同様の限定(物体光はXZ平面に平行な平
面内にのみ広がるという限定)を付すようにすれば、記
録面20上の各演算点における干渉波強度の演算負担は
大幅に軽減される。
【0027】図4は、この演算負担を軽減させる手法の
具体的な適用例を示す図である。この例では、原画像1
0および記録面20を、それぞれ多数の平行線によって
水平方向に分割し、多数の線状の単位領域を定義してい
る。すなわち、図示のとおり、原画像10は、合計M個
の単位領域A,A,A,…,A,…Aに分割
されており、記録面20は、同じく合計M個の単位領域
,B,B,…,B,…Bに分割されてい
る。原画像10が立体画像の場合、各単位領域A,A
,A,…,A,…Aは、この立体の表面部分を
分割することによって得られる領域になる。ここで、原
画像10上のM個の単位領域と記録面20上のM個の単
位領域とは、それぞれが1対1の対応関係にある。たと
えば、原画像10上の第m番目の単位領域Aは、記録
面20上の第m番目の単位領域Bに対応している。
【0028】なお、この図4に示す例では、各単位領域
,A,A,…,A,…Aの幅は、原画像1
0上に定義された点光源のピッチに等しく設定されてお
り、個々の単位領域には、点光源が一列に並んだ線状の
領域になっている。たとえば、図示の例では、第m番目
の単位領域Aには、N個の点光源Pm1〜PmNが一
列に並んでいる。また、各単位領域B,B,B
…,B,…Bの幅は、記録面20上に定義された演
算点のピッチに等しく設定されており、個々の単位領域
には、演算点が一列に並んだ線状の領域になっている。
図示の演算点Q(x,y)は、第m番目の単位領域B
内に位置する演算点を示しており、XY座標系におい
て座標値(x,y)で示される位置にある。
【0029】この例の場合、演算点Q(x,y)につ
いての干渉波強度は、次のようにして求められる。ま
ず、この演算点Q(x,y)が所属する単位領域B
に対応する原画像10上の単位領域Aを演算対象単位
領域として定める。そして、この演算対象単位領域A
内の点光源Pm1〜PmNから発せられた物体光Om1
〜OmNと、参照光Rとによって形成される干渉波につ
いての演算点Q(x,y)の位置における振幅強度を
求めれば、この振幅強度が、目的とする演算点Q(x,
)についての干渉波強度である。図5は、このよう
な演算処理の概念を説明するための上面図であり、図4
に示す原画像10および記録面20を、図の上方から見
た状態を示している。図示のとおり、演算点Q(x,y
)における干渉波強度を求めるのに必要な物体光は、
演算対象単位領域A内のN個の点光源Pm1,…,P
mi,…,PmNから発せられた物体光Om1,…,O
mi,…,OmNのみに限定され、原画像10を構成す
る全点光源からの物体光を考慮する必要はない。このた
め、演算負担は大幅に軽減されることになる。
【0030】こうして、記録面20上に定義したすべて
の演算点Q(x,y)について、それぞれ所定の干渉波
強度を求めれば、記録面20上に干渉波の強度分布が得
られることになる。そこで、この強度分布に基づいて、
媒体上に物理的な干渉縞(物理的な濃淡パターンやエン
ボスパターン)を作成すれば、計算機ホログラムが作成
できる。媒体上に高解像度の干渉縞を形成する手法とし
ては、電子線描画装置を用いた描画が適している。電子
線描画装置は、半導体集積回路のマスクパターンを描画
する用途などに広く利用されており、電子線を高精度で
走査する機能を有している。そこで、演算によって求め
た干渉波の強度分布を示す画像データを電子線描画装置
に与えて電子線を走査すれば、この強度分布に応じた干
渉縞パターンを描画することができる。
【0031】ただ、一般的な電子線描画装置は、描画/
非描画を制御することにより二値画像を描画する機能し
か有していない。そこで、演算によって求めた強度分布
を二値化して二値画像を作成し、この二値画像データを
電子線描画装置に与える必要がある。図6は、このよう
な二値化処理の概念図である。上述した演算により、記
録面20上の各演算点Q(x,y)には、所定の振幅強
度値が定義されることになる。そこで、この振幅強度値
に対して所定のしきい値(たとえば、記録面20上に分
布する全振幅強度値の平均値)を設定し、このしきい値
以上の強度値をもつ演算点には画素値「1」を与え、こ
のしきい値未満の強度値をもつ演算点には画素値「0」
を与えるようにし、各演算点Q(x,y)を、「1」も
しくは「0」の画素値をもつ画素D(x,y)に変換す
れば、多数の画素D(x,y)の集合からなる二値画像
が得られる。この二値画像のデータを電子線描画装置に
与えて描画を行えば、物理的な二値画像として干渉縞を
描画することができる。実際には、この物理的に描画さ
れた干渉縞に基づいて、たとえばエンボス版を作成し、
このエンボス版を用いたエンボス加工を行うことによ
り、表面に干渉縞が凹凸構造として形成されたホログラ
ムを量産することができる。
【0032】なお、このような演算負担を軽減させる手
法で作成された計算機ホログラムは、厳密な意味では、
本来のホログラムにはなっていない。すなわち、本来の
ホログラムであれば、たとえば、図2に示すように、記
録面20上の任意の1点Q(x,y)に記録された干渉
縞には、原画像10を構成する全点光源からの物体光の
情報が反映されていなければならない。ところが、上述
の手法で作成された計算機ホログラムでは、たとえば、
図4に示すように、記録面20上の任意の1点Q(x,
)に記録された干渉縞には、原画像10の単位領域
内の点光源からの物体光の情報しか反映されていな
い。このため、このホログラムの再生像は、図の水平方
向に関しては本来のホログラム像として観察されるが、
図の垂直方向に関しては本来のホログラム像としては観
察されなくなる。より具体的に説明すれば、図4に示す
記録面20を、図のY軸を枢軸として回転させながら観
察した場合には、本来の立体像としての観察が可能であ
るが、図のX軸を枢軸として回転させながら観察した場
合には、本来の立体像としての観察はできなくなる。た
だ、このように本来のホログラム再生像が得られなくて
も、クレジットカードや金券の偽造防止マークとしての
機能は十分に果たすことができるため、実用上は大きな
支障は生じない。
【0033】§3. 輝度むらの発生 本願発明者が知る限りにおいて、計算機ホログラムの技
術は、現在のところ商業的な利用にまでは至っていな
い。これは、前述したように、光学的なホログラムに近
い高品質の計算機ホログラムを得るためには、コンピュ
ータに多大な演算負担が課されるという問題や、コンピ
ュータ上にデジタル画像データとして得られた干渉縞
を、いかにして物理的な媒体上に作成するかという問題
があるためである。本願発明者は、前者の問題を解決す
るためには、上述した§2で述べた手法がかなり有効で
あり、後者の問題を解決するためには、既に述べたよう
に、干渉縞パターンを二値画像に変換し、電子線描画装
置を用いた描画を行う手法が有効であると考えている。
【0034】しかしながら、このような手法を用いて作
成された計算機ホログラムには、観察時に輝度むらが生
じるという新たな問題があることが判明した。特に、原
画像として、いわゆる文字やロゴを用いた場合に、この
ような輝度むらが顕著である。たとえば、図7(a) に示
すような英文字「A」をモチーフとした原画像を用い
て、上述した§2の手法で計算機ホログラムを作成した
場合を考える。ここで、モチーフとなった原画像「A」
は、二値画像で構成されており、文字を構成する輪郭の
内側部分は均一の輝度で光っており、文字の背景部分は
全く光を発していないものとする。実際、偽造防止用の
シールなどには、このような二値画像からなる英文字を
モチーフとするものが多い。さて、このようなモチーフ
を原画像として、§2の手法で計算機ホログラムを作成
し、これを観察すると、図7(b) に示すように、各部分
ごとの輝度が異なって見える。具体的には、文字の上端
部分の画像Iαは高い輝度を示し、その下の部分の画像
Iβは中程度の輝度を示し、文字の横桟に相当する部分
の画像Iγは低い輝度を示すことになる。
【0035】このように、本来は均一の輝度で観察され
るべきモチーフを記録したのに、実際の観察時に輝度む
らが生じることは、決して好ましいことではない。本願
発明者は、このような輝度むらが生じる原因は、演算で
求めた干渉縞パターンを、媒体上に二値画像として記録
したためであると考えている。この現象を説明するため
に、ここでは図8に示すような原画像15について、上
述の§2の手法を適用して計算機ホログラムを作成した
場合に、記録面にどのような干渉縞が形成されるかを考
えてみる。原画像15は、三角形のモチーフからなる二
値画像であり、図にハッチングを施して示す三角形の内
側部分は均一の輝度で光っており、三角形の外側の背景
部分は全く光を発していないものとする。
【0036】上述の§2の手法を利用する場合、コンピ
ュータの演算負担を軽減するために、原画像および記録
面をそれぞれ単位領域に分割することになる。ここで
は、原画像15および記録面を多数の平行線によって水
平方向に分割し、多数の線状単位領域を形成した場合を
考える。図9は、このようにして原画像15上に形成さ
れた3つの単位領域Aα,Aβ,Aγを示しており、図
10は、これら各単位領域に対応して記録面25上に形
成された3つの単位領域Bα,Bβ,Bγを示してい
る。いま、図9に示す原画像15上の各単位領域Aα
β,Aγに、それぞれ水平方向に並んだ点光源を定義
する。すなわち、単位領域Aαには、点光源Pα1,P
α2,Pα3…が定義され、単位領域Aβには、点光源
β1,Pβ2,Pβ3…が定義され、単位領域Aγ
は、点光源Pγ1,Pγ2,Pγ3…が定義されること
になる。このとき、各点光源の1つ1つは、いずれも同
じ輝度で光っているものとする。
【0037】§2で述べた演算負担を軽減させる手法を
利用する場合、図10に示す記録面25上の各単位領域
α,Bβ,Bγ内の干渉縞は、それぞれ図9に示す各
単位領域Aα,Aβ,Aγ内の点光源からの物体光のみ
を考慮して演算される。たとえば、図10の単位領域B
α内の干渉縞は、図9の単位領域Aα内に定義された点
光源からの物体光と、所定の参照光との干渉波により決
定されることになる。すると、この例のような三角形の
モチーフからなる原画像15を用いた場合、記録面25
上に形成される干渉縞の強度(記録面上の各位置におけ
る干渉波の振幅)は、各単位領域ごとに異なることにな
る。たとえば、記録面25上の単位領域Bα内の干渉波
は、原画像15上の単位領域Aα内の点光源からの物体
光と参照光との干渉により得られることになるが、前述
のように、三角形のモチーフはその内部のみが光ってお
り、実質的な点光源は三角形の内部にのみ定義されるこ
とになるので(三角形の外部に定義された点光源の光強
度は零であり、実質的に点光源として機能しない)、単
位領域Aα内の実質的な点光源の数は比較的少ない(図
示の例では3個)。逆に、記録面25上の単位領域Bγ
内の干渉波は、原画像15上の単位領域Aγ内の点光源
からの物体光と参照光との干渉により得られることにな
るが、単位領域Aγ内の実質的な点光源の数は、単位領
域Aα内の実質的な点光源の数よりも多くなる。
【0038】このような事情を考慮すると、図10に示
すように、各単位領域Bα,Bβ,Bγ内に得られる干
渉波の振幅は、図示のとおり、単位領域Bαが最も小さ
く、単位領域Bβが中程度となり、単位領域Bγが最も
大きくなる。このように、各単位領域ごとの干渉波の振
幅に差が生じていても、これら干渉波に対応する干渉縞
をそのままの状態で記録すれば、輝度むらが発生するこ
とはない。たとえば、記録面25上の単位領域Bα
は、振幅強度の小さな干渉縞が記録されているが、再生
時には、この干渉縞によって、図9に示す原画像25に
おける単位領域Aα内の3つの点光源Pα1,Pα2
α3を像として再現すればよいため、再生された個々
の点光源Pα1,Pα2,Pα3の輝度が低下すること
はない。逆に、記録面25上の単位領域Bγには、振幅
強度の大きな干渉縞が記録されているが、再生時には、
この干渉縞によって、図9に示す原画像25における単
位領域Aγ内の多数の点光源Pγ1,Pγ2,Pγ3
像として再現する必要があるため、再生された個々の点
光源Pγ1,Pγ2,Pγ3の輝度が、再生された点光
源Pα1,Pα2,Pα3の輝度に比べて高くなること
はない。結局、三角形のモチーフからなる再生像は、い
ずれの箇所も同一の輝度で観察されることになり、観察
時における輝度むらは生じない。
【0039】ところが、電子線描画装置を用いた描画に
より、実際の媒体上に物理的な干渉縞を形成する場合、
前述したように、干渉縞パターンを二値画像として記録
する必要がある。このため、演算によって記録面25上
に得られた干渉波の強度分布は、二値化されることにな
る。この二値化処理は、通常、干渉波の中心位置(たと
えば、振幅強度の平均位置:図10に示す干渉波の波形
において実線で示される中心線位置)をしきい値とし、
たとえば、このしきい値より大きな部分を「1」、小さ
な部分を「0」とすることによって行われる。その結
果、図10に示すような記録面25上に得られた干渉波
の強度分布は、図11に示すような二値画像に変換され
ることになる。この二値画像には、各単位領域Bα,B
β,Bγごとに、それぞれ「1」または「0」の数字を
羅列したビット列が形成されることになる。電子線描画
装置で、この二値画像を描画する場合、個々のビットを
1画素として、黒もしくは白の描画がなされる。この描
画された二値画像に基づいてエンボス加工を行えば、黒
もしくは白の画素が、媒体上では凹部もしくは凸部とし
て表現され、物理的な干渉縞が形成されることになる。
【0040】ここで、図10に示すような記録面25上
に得られた干渉縞の強度分布が、図11に示すようなビ
ットの集合からなる二値画像に変換される点に着目する
と、この二値化処理により、干渉波の振幅強度の情報が
失われてしまうことがわかる。すなわち、図11に示す
二値画像では、単位領域Bαに記録されているビット列
も、単位領域Bγに記録されているビット列も、0また
は1の羅列にすぎない。この0または1の羅列は、原画
像15のモチーフとしての情報は有しているので、再生
した場合、図12に示すように、原画像15に含まれて
いた三角形のモチーフは再生像として認識することがで
きる。しかしながら、干渉波の振幅強度の情報が失われ
てしまっているため、もはや本来の正しい輝度で三角形
のモチーフを再生することはできない。具体的には、図
12において、単位領域Bα内に再現される上端部分の
画像Iαは、本来は弱い振幅強度をもった干渉波(図1
0参照)として記録されていなければならないところ、
この振幅強度の情報が失われてしまっているため、本来
の再生像よりも高い輝度で再生されることになる。逆
に、単位領域Bγ内に再現される下端部分の画像I
γは、本来は強い振幅強度をもった干渉波(図10参
照)として記録されていなければならないところ、この
振幅強度の情報が失われてしまっているため、本来の再
生像よりも低い輝度で再生されることになる。図7(b)
に示す英文字「A」の再生像に輝度むらが生じるのも、
全く同じ理由である。
【0041】以上、コンピュータの演算負担を軽減する
ために、原画像および記録面をそれぞれ単位領域に分割
する手法を採った場合を例にとって、輝度むらの生じる
原因を説明した。ただ、この輝度むらが生じる本質的な
要因は、演算負担を軽減するために単位領域に分割する
手法を採った点にあるわけではなく、干渉波の強度分布
を物理的に記録する際に二値化を行った点にある。もち
ろん、単位領域に分割する手法を採った場合、この輝度
むらの発生に更に拍車がかかることになるが、単位領域
への分割が、輝度むら発生の直接的な要因ではないこと
は留意すべきである。
【0042】図13は、単位領域に分割する手法を採ら
ない場合にも、輝度むらが発生することを説明するため
の概念図である。いま、原画像10と記録面20とを図
示のように対向させ、原画像10上に多数の点光源を定
義し、この点光源からの物体光と所定の参照光との干渉
波の強度分布を、記録面20上に求める場合を考える。
単位領域への分割手法を採らないため、「記録面20上
の各演算点Qには、原画像10上の全点光源からの物体
光が到達する」として、干渉波の強度演算が行われるこ
とになる。たとえば、図13において、演算点Qα
は、点光源Pαからの物体光も到達するし、点光源Pγ
からの物体光も到達する。同様に、演算点Qγには、点
光源Pαからの物体光も到達するし、点光源Pγからの
物体光も到達する。
【0043】このように、記録面20上の各演算点に
は、原画像10上の全点光源からの物体光が到達するの
で、各演算点で得られる干渉波の振幅は、すべて等しく
なるように思えるが、実は、このような考え方は誤りで
ある。なぜなら、物体光の光路長に応じた振幅強度の減
衰が生じるためである。たとえば、図13において、点
光源Pαから演算点Qαに至るまでの光路長は、同じ点
光源Pαから演算点Qγに至るまでの光路長よりも短
い。したがって、点光源Pαの影響は、演算点Qγより
も演算点Qαの方がより強く受けることになる。同様
に、点光源Pγの影響は、演算点Qαよりも演算点Qγ
の方がより強く受けることになる。したがって、たとえ
ば、点光源Pαの輝度よりも点光源Pγの輝度の方が高
ければ、図14に示すように、演算点Qαにおける干渉
波の振幅に比べて、演算点Qγにおける干渉波の振幅に
比べて大きくなる。このように、各演算点と各点光源と
の距離が様々であるため、§2で述べた単位領域に分割
する手法を採らない場合でも、やはり記録面20上の個
々の演算点ごとの干渉波の振幅には差が生じるのであ
る。このような演算点ごとの振幅強度の差は、二値化処
理によって失われてしまうため、既に述べたように、再
生時に輝度むらが生じることになる。たとえば、図8に
示すような三角形のモチーフからなる原画像15を、§
1で述べた基本原理に基づく手法で記録した場合であっ
ても、干渉縞を二値画像として媒体上に記録する限り、
再生時に輝度むらが生じることになる(三角形の頂点付
近ほど輝度が高く、底辺付近ほど輝度が低くなる)。
【0044】§4. 輝度むらを抑制するための原理 輝度むらの発生原因は、上述したように、二値化処理に
よって振幅強度に関する情報が失われてしまうためと考
えられる。したがって、二値化処理を行わずに、演算で
得られたままの干渉波強度分布を媒体上に記録するよう
にすれば、輝度むらの発生を解消することはできる。し
かしながら、デジタル画像データとして用意された干渉
縞という微細なパターンを、媒体上に物理的に形成する
手法としては、現時点においては、電子線描画装置を用
いるのが最も実用的であり、そのためには二値化を行う
ことが不可欠になる。
【0045】そこで本願発明者は、最終的に二値化処理
を行うことを前提とした上で、できるだけ輝度むらの発
生を抑制する方法を模索した結果、点光源から発せられ
た物体光の広がりを制限する手法が有効であることを見
出だした。この手法は、原画像自身が二値画像からなる
モチーフ(たとえば、図7(a) に示すモチーフや図8に
示すようなモチーフ)の場合に特に効果的である。
【0046】たとえば、図15に示すような原画像10
を、記録面20上に干渉縞として記録する場合を考え
る。この場合、原画像10上に多数の点光源Pを定義
し、この点光源Pから発せられた物体光と、所定の参照
光Rとの干渉波を演算によって求めることになるが、こ
のとき、図示のように、点光源Pから発せられる物体光
の広がりを制限するのである。通常、点光源から発せら
れる物体光は球面波となり、記録面20の全体に照射さ
れることになるが、本発明に係る方法では、物体光の広
がりは制限され、特定の点光源Pから発せられた物体光
は、記録面20上の一部の領域にのみ照射されることに
なる。
【0047】物体光の広がりを制限する具体的な方法の
一例として、図15には円錐を定義する方法が示されて
いる。すなわち、原画像10の点光源Pにおける法線n
を中心軸とし、この点光源Pを通り中心軸nに対して角
度θをなす線を中心軸nの回りに回転させて得られる円
錐を定義し、物体光の広がりをこの円錐内に制限するの
である。このような制限を課すれば、点光源Pからの物
体光は、記録面20上の所定の楕円領域内にのみ照射さ
れることになり、この物体光は、この楕円領域内の演算
点Qについての演算においてのみ利用されることにな
る。
【0048】もっとも、実際の演算を考慮した場合、物
体光の広がりを制限するということは、図16に示すよ
うに、個々の演算点Q(x,y)側から円錐の定義を行
い、この円錐に含まれる点光源のみを考慮して演算を行
うことと等価である。すなわち、図16において、記録
面20上の所定の演算点Q(x,y)における干渉光強
度を演算する場合に、この演算点Q(x,y)における
法線nを中心軸とし、この演算点Q(x,y)を通り
中心軸nに対して角度θをなす線を中心軸nの回り
に回転させて得られる円錐を定義し、原画像10を構成
する点光源のうち、この円錐に含まれる点光源(図の領
域PP内の点光源)からの物体光のみが、演算点Q
(x,y)に到達するものとして取り扱えば、実質的
に、物体光の広がり角の制限を行うことができる。
【0049】このように、点光源から発せられた物体光
の広がりを制限すると、個々の演算点ごとの干渉波の振
幅の差を縮めることができる。本発明において、物体光
の広がりを制限する意義は、正に「演算点ごとの干渉波
の振幅の差を縮める」という点にある。物体光の広がり
を制限することによって得られる効果を、図8に示す三
角形のモチーフからなる原画像15を用いた例について
見てみよう。
【0050】上述したように、物体光の広がりを所定の
円錐内に制限するということは、個々の演算点側から円
錐を定義し、この円錐内に含まれる点光源からの物体光
のみを当該演算点についての演算に用いることと等価で
ある。そこで、記録面25上のいくつかの演算点Q
(a)〜Q(k)に着目し(図示省略)、これら各演算
点についての円錐に含まれる領域として、図17に示す
ように、原画像15上に、それぞれ円形領域PP(a)
〜PP(k)が定義されたものとしよう。たとえば、円
形領域PP(a)は、記録面25上の演算点Q(a)に
おける法線nを中心軸とし、この演算点Q(a)を通
り中心軸nに対して角度θをなす線を中心軸nの回
りに回転させて得られる円錐の内部に相当する原画像1
5上の領域になり、演算点Q(a)についての干渉波強
度は、この円形領域PP(a)内の点光源からの物体光
と、所定の参照光との干渉波についての振幅ということ
になる。
【0051】この図17に示す例では、円形領域PP
(a),PP(b)内には、光を発する実質的な点光源
は存在しないので、記録面25側の演算点Q(a),Q
(b)には干渉波は形成されないことになる。一方、円
形領域PP(d)〜PP(k)内には、ほぼ全域にわた
って点光源が存在するので、記録面25側の演算点Q
(d)〜Q(k)における干渉波の強度は、ほぼ等しく
なる。また、三角形のモチーフの輪郭部分に位置する円
形領域PP(c)内には、全域の60%程度の領域に点
光源が存在するので、記録面25側の演算点Q(c)に
おける干渉波の強度は、演算点Q(d)〜Q(k)にお
ける干渉波の強度の60%程度になる。このように、物
体光の広がりを制限した場合、モチーフの内部に含まれ
る円形領域PP(d)〜PP(k)からの物体光に基づ
いて干渉波が形成される演算点Q(d)〜Q(k)につ
いては、干渉波の振幅は均一になり、振幅に差は生じな
い。ただ、円形領域PP(c)のように、モチーフの輪
郭付近の領域からの物体光に基づいて干渉波が形成され
る演算点Q(c)などについては、振幅に差が生じるこ
とになる。
【0052】こうして、記録面25上に干渉波の振幅の
強度分布が得られても、実際には、この強度分布は二値
化され、二値画像が媒体上に記録されることになる。こ
のため、振幅強度に関する情報は失われてしまう。しか
しながら、物体光の広がりを制限して干渉縞を形成した
ため、上述したように、モチーフの内部に含まれる円形
領域PP(d)〜PP(k)からの物体光に基づく干渉
波の振幅は均一になっており、これらの領域に関して
は、振幅強度に関する情報が失われてしまっても、再生
時の輝度むらは生じない。すなわち、再生時の輝度むら
は、図10や図14に示すように、干渉波の振幅に差が
生じているのにもかかわらず、二値化によって、この振
幅の差を無視した干渉縞を記録してしまうことに起因す
るものであり、そもそも干渉波の振幅に差が生じていな
ければ、輝度むらが生じる要因はないのである。
【0053】結局、本発明に係る計算機ホログラムの作
成方法の要点は、干渉波の強度演算を行う際に、物体光
の広がりを制限し、この制限によって、個々の演算点ご
との干渉波の振幅の差を低く抑える(別言すれば、個々
の演算点ごとの干渉波の振幅ができるだけ等しくなるよ
うにする)点にある。もちろん、モチーフの輪郭付近の
領域(たとえば、図17における円形領域PP(c))
からの物体光に基づいて得られる干渉波については、振
幅が大小様々になり、振幅の差を低く抑えることは困難
である。したがって、本発明に係る方法を適用した場合
でも、モチーフの輪郭部分については輝度むらが生じる
傾向が見られるが、一般に、モチーフのパターン認識を
行う上では、輪郭部分の輝度むらは重大な障害にはなら
ない。
【0054】§5. 本発明の具体的な実施形態 既に§2において述べたように、現在の一般的なコンピ
ュータの処理能力を考慮すると、演算負担を軽減させる
ために単位領域への分割を行った手法を採るのが現実的
である。具体的には、図4に示すように、原画像10お
よび記録面20を、それぞれ多数の平行線によって水平
方向に分割し、多数の線状の単位領域を定義する。そし
て、演算点Q(x,y)についての干渉波強度は、原
画像10上の単位領域Aを演算対象単位領域として、
この演算対象単位領域A内の点光源Pm1〜PmN
ら発せられた物体光Om1〜OmNと、参照光Rとによ
って形成される干渉波についての演算点Q(x,y
の位置における振幅強度として求める。このような手法
は、図3の原理図に示されているように、原画像10上
の点光源Pからの物体光が、XZ平面に平行な平面内
にのみ広がるという条件下で演算を行う手法と言うこと
ができるが、このような手法で図7(a) に示すような英
文字を記録した場合、その再生像には、図7(b) に示す
ような輝度むらが生じてしまう。
【0055】このような場合、§2で述べた手法(単位
領域に分割する手法)に、更に§4で述べた本発明の手
法(物体光の広がりを制限する手法)を組み合わせて用
いればよい。すなわち、演算点Q(x,y)について
の干渉波強度を求める際には、まず、原画像10上の単
位領域Aを演算対象単位領域として求め、この演算対
象単位領域A内の点光源Pm1〜PmNから発せられ
た物体光Om1〜OmNの広がりを制限し、制限を受け
た物体光Om1〜OmNと参照光Rとによって形成され
る干渉波についての演算点Q(x,y)の位置におけ
る振幅強度を求めればよい。広がりを制限する手法とし
ては、たとえば、演算対象単位領域A内の各点光源に
ついて、法線を中心軸とし、当該点光源を通り中心軸に
対して角度θをなす線を中心軸の回りに回転させて得ら
れる円錐を定義し、物体光の広がりをこの円錐内に制限
するようにすればよい。
【0056】もっとも、実際の演算においては、演算点
側から円錐を定義し、この円錐内に含まれる点光源のみ
を考慮する手法が採られる。図18は、このような手法
を説明するための上面図である。ここでは、記録面20
上の単位領域B内の演算点Q(x,y)についての
干渉波強度を求める手法が示されている。まず、この演
算点Q(x,y)の位置において、記録面20に法線
を定義する。そして、この法線nを中心軸とし、
演算点Q(x,y)を通り中心軸nに対して角度θ
をなす線を中心軸nの回りに回転させて得られる円錐
を定義し、原画像10を構成する点光源のうち、演算点
Q(x,y)についての演算対象単位領域A内に位
置し、かつ、定義した円錐に含まれる点光源を考慮すべ
き点光源として定める。図示の例では、単位領域A
の点光源Pa〜Pbの間に配置された点光源が考慮すべ
き点光源になる。ここで、演算点Q(x,y)につい
て考慮すべき任意の点光源P(x,y)のX座標
値xは、 |x−x| < r(x,y) sin θ (1) なる式(1) を満足する値として与えられる。なお、上式
において、r(x,y)は、点光源Pと演算点Q
(x,y)との間の距離である。こうして、考慮すべ
き点光源が求まったら、これら考慮すべき点光源からの
物体光のみが演算点Q(x,y)に到達するものとし
て、干渉波の強度演算を行えば、実質的に、各点光源か
らの物体光の広がりを制限した演算を行ったことにな
る。
【0057】なお、物体光の広がりを制限するための角
度θ(以下、広がり角θという)の最適値は、原画像と
して用いるモチーフの形状や大きさ、原画像と記録面と
の距離などのパラメータによって異なるため、一義的に
定めることはできない。ただ、一般論として言えば、広
がり角θを小さく設定すればするほど、個々の演算点ご
との干渉波の振幅の差は小さくなり、再生時の輝度むら
発生は抑制される(たとえば、図8に示すように、内部
が均一な輝度を有する三角形が、輝度をもたない背景に
置かれているようなモチーフを原画像として用い、広が
り角θ=0°という極端な設定を行ったとすれば、干渉
波が得られる全演算点の振幅は同一になる)。しかしな
がら、広がり角θを小さく設定すればするほど、ホログ
ラム本来のいわゆる立体的な再生像は得られなくなる。
ホログラム本来の原理によれば、記録面上の各点には、
原画像上のすべて点からの物体光に関する情報が記録さ
れていなければならない。したがって、物体光の広がり
角θを小さく設定すればするほど、本来のホログラムと
しての性質が損なわれることになり、再生像が得られる
観測点が限定されることになる(たとえば、記録面に対
して斜め方向から観察した場合に、十分な再生像が認識
できないような事態が生ずる)。
【0058】結局、輝度むら発生を抑制するという観点
からは、広がり角θを小さく設定すべきであるが、本来
のホログラムとしての性質を維持するという観点から
は、広がり角θを大きく設定すべきであり、実用上は、
両者の妥協点として最適な広がり角θを設定することに
なる。基本概念としては、記録面上における干渉波の強
度演算を行う際、個々の演算点ごとの干渉波の振幅の差
について、予め所定の許容範囲を定めておき、実際の振
幅の差がこの許容範囲内に収まるという条件下におい
て、できるだけ大きな広がり角θを設定すればよい。
【0059】もっとも、実用上は、次のような試行錯誤
的な手法を用いることにより、最適な広がり角θを設定
するのが好ましい。すなわち、予め、物体光の初期広が
り角θを定義しておく。そして、個々の演算点ごとの
干渉波の振幅の差が所定の許容範囲内に収まるまで、物
体光の広がり角θを初期広がり角θから徐々に減少さ
せながら、記録面上の全演算点についての干渉波強度演
算を繰り返し実行するのである。
【0060】図19は、このような試行錯誤的な手法を
示す流れ図である。まず、ステップS1において、広が
り角θを、初期広がり角θに設定する。たとえば、初
期広がり角θ=90°と定めておけば、初期状態にお
いては、実質的に広がり角の制限はなくなる。
【0061】続いて、ステップS2において、原画像を
構成する各点光源の広がりを、図3に示すように、XZ
平面に平行な平面内に制限し、かつ、広がり角をθに制
限した状態で、記録面上の各演算点Q(x,y)につい
て、それぞれ干渉波の振幅I(x,y)を求める強度演
算を行う。そして、ステップS3において、全演算点の
干渉波強度の最大値Imax および最小値Imin を求め、
ステップS4において、各演算点の干渉波強度(振幅I
(x,y))が0〜1の範囲内になるように規格化す
る。この規格化は、ステップS3において求めた最大値
Imax および最小値Imin を用いた次の式(2) により行
うことができる。
【0062】 I(x,y)=(I(x,y)−Imin )/(Imax −Imin ) (2) ここで、I(x,y)は、規格化後の点Q(x,y)
についての干渉波強度(振幅)であり、0〜1の範囲内
の値をとる。
【0063】続いて、ステップS5において、単位領域
の番号を示すパラメータmを初期値1に設定する。この
パラメータmは、たとえば、図4に示されている記録面
20上の単位領域の1つを示すためのもので、パラメー
タm=1は、第1番目の単位領域Bを示している。次
のステップS6では、第m番目の単位領域内の演算点に
ついて、干渉波強度(既にステップS2で求められ、ス
テップS4において規格化されている)の最大値I
(m)max および最小値I(m)min が求められ
る。たとえば、m=1の場合、図4に示す記録面20上
の第1番目の単位領域B内に含まれる全演算点の規格
化後の干渉波強度のうちの最大値I(1)max および
最小値I(1)min が求められることになる。
【0064】次に、ステップS7において、 I(m)max ≧ L1 かつ I(m)min ≦ L2 (3) なる条件式(3) が満たされているか否かが判断される。
ここで、L1およびL2は、予め設定された許容範囲を
示す値であり、いずれも0〜1の範囲内の値が設定され
る(L1>L2)。値L1は、最大値I(m)max が
とるべき最小の基準を示す値であり、値L2は、最小値
(m)min がとるべき最大の基準を示す値である。
最大値I(m)max が値L1以下であっても、最小値
(m)min が値L2以上であっても、条件式(3) は
満足されないことになる。
【0065】この条件式(3) の意味するところを説明す
るために、ここでは、値L1=0.8,値L2=0.2
という具体的な数値を設定した場合について考えてみ
る。本発明に係る手法(物体光の広がりを制限する手
法)を取り入れない場合、たとえば、図8に示すような
三角形のモチーフからなる原画像15を記録面25上に
記録すると、図10に示すように、各単位領域ごとに、
記録される干渉波強度(振幅)に大きな差が生じること
は既に述べたとおりである。すなわち、単位領域Bα
の各演算点には比較的小さな強度が得られ、単位領域B
β内の各演算点には中程度の強度が得られ、単位領域B
γ内の各演算点には比較的大きな強度が得られることに
なる。ところで、ステップS3において求められる最大
値Imax および最小値Imin は、記録面25上の全演算
点の強度についての最大値および最小値であるから、図
10に示す例の場合、実質的に単位領域Bγ内の特定の
演算点についての強度が最大値Imax になるとともに、
同じく単位領域Bγ内の特定の演算点についての強度が
最小値Imin になる。したがって、ステップS4におい
て、式(2) を用いた規格化を行うと、各単位領域Bα
β,Bγ内の干渉波は、たとえば、図20に示すよう
になる。
【0066】上述したように、条件式(3) において、値
L1=0.8,値L2=0.2という具体的な数値を設
定すると、図20に示す例では、単位領域Bγについて
は条件を満たすことになるが、単位領域Bα,Bβにつ
いては条件を満たさないことになる。別言すれば、図1
9のステップS7における条件判断は、m=αの場合、
あるいはm=βの場合は、否定的な判断がなされ、m=
γの場合には、肯定的な判断がなされることになる。こ
のステップS7の条件判断は、ステップS8およびステ
ップS9を経て、繰り返し実行される。すなわち、m=
1,m=2,m=3,…,m=Mと順次mの値を更新し
ながら、ステップS7の条件判断が行われることにな
る。そして、もし図20に示す例のように、ステップS
7において否定的な条件判断がなされる単位領域が存在
した場合には、ステップS7からステップS10へと移
行する。ステップS10は、広がり角θの値を更新する
処理である。すなわち、予め変動角Δθを設定してお
き、ステップS10を実行するたびに、これまでの広が
り角θを変動角Δθだけ狭める処理が行われる。ステッ
プS10により、新たな広がり角θが設定されると、再
び、ステップS2からの処理が実行される。すなわち、
点光源の広がりを、新たな広がり角θを用いて制限し、
記録面25上の全演算点についての干渉波の強度演算が
再度実行される。
【0067】結局、図20に示す例のように、各単位領
域ごとの干渉波の振幅に大きな差が生じていた場合、小
さな振幅をもった単位領域(たとえば、m=αのときの
単位領域Bα)についてのステップS7の条件判断にお
いて、否定的な判断がなされ、ステップS10において
広がり角θが狭められることになる。既に述べたよう
に、広がり角θを小さく設定すればするほど、各演算点
ごとの強度の差が小さくなるので、ステップS10を経
てステップS2からの処理を繰り返し実行すれば、前回
の実行時に比べて、ステップS7の条件式が満たされや
すい状態になっている。こうして、m=1〜Mのすべて
について、ステップS7の条件式が満たされれば、第1
番目の単位領域から第M番目の単位領域に至る全M個の
単位領域について、いずれも規格化された干渉波強度の
最大値が0.8以上であり、最小値が0.2以下である
ことになり、単位領域間の干渉波の振幅の差が所定の許
容範囲内に収まったことになる(図20に示す例で説明
すれば、単位領域Bαについての振幅や単位領域Bβ
ついての振幅が増大し、単位領域Bγについての振幅に
近付いたことになる)。
【0068】前述したように、広がり角θは、小さく設
定すればするほど、ホログラム本来の像再生が阻害され
ることになるので、輝度むらの発生が許容できる範囲内
で、できるだけ大きな広がり角θを設定するのが望まし
い。図19に流れ図を示す手順によれば、大きめの初期
広がり角θから、広がり角θの設定を徐々に狭めてゆ
く処理を、記録面上の各演算点ごとの干渉波強度の差が
所定の許容範囲内に収まるまで、繰り返し実行すること
ができるので、輝度むらの許容範囲を満たす最大の広が
り角θを決定することができる。結局、ステップS7の
条件式における値L1,L2は、輝度むらの許容範囲を
定めるパラメータとして機能することになる。なお、上
述の例では、L1=0.8,L2=0.2に設定した
が、これらの値は、輝度むらの許容範囲を考慮して適宜
設定すればよい。また、初期広がり角θや、変動角Δ
θの値も、演算時間などを考慮して、適宜設定すればよ
い。一実施例を示すと、θ=85°、Δθ=10°な
る設定を行ったところ、θ=45°の時点で干渉波強度
の差が許容範囲内になった。
【0069】§6. 筋状ノイズの発生 これまで述べてきたように、実用上は、コンピュータの
演算負担を軽減させるために、§2に示す単位領域への
分割を行う手法を採るのが好ましいが、この領域分割の
手法を採って作成された計算機ホログラムには、原画像
とは無関係な筋状のノイズが観察されるという新たな問
題が生じることが確認されている。特に、原画像とし
て、いわゆる文字やロゴを用いた場合に、このような筋
状ノイズの発生が顕著である。たとえば、図21(a) に
示すような英文字「H」をモチーフとした原画像を用い
て、上述した§2の手法で計算機ホログラムを作成する
と、図21(b) に示すように、縦方向に伸びる多数の筋
状のノイズが観察される。このような筋状ノイズをよく
観察してみると、再生像に含まれている光学的なノイズ
成分(別言すれば、参照光Rを照射することによって観
察されるノイズ成分)ではなく、記録媒体としてのホロ
グラムそのものに含まれている物理的なノイズ成分(別
言すれば、参照光Rを照射しなくても観察されるノイズ
成分)であることがわかる。
【0070】本願発明者は、このような筋状ノイズが観
察される原因を、次のように考えている。いま、図22
(a) に示すような原画像に基づいて、図22(b) に示す
ようなホログラムが作成された場合を考える。上述した
§2の手法によれば、原画像およびホログラム記録面
は、いずれも水平方向に分割され、多数の線状単位領域
が定義されることになる。そこで、たとえば、図22
(a) に示すように、原画像上に定義された第m番目の単
位領域Aと、これに隣接する第(m+1)番目の単位
領域Am+1とに着目してみると、両単位領域内の画像
パターンは全く同じであることがわかる(いずれも、英
文字「H」なるモチーフの両脚部分の画像パターンにな
っている)。一方、図22(b) に示すホログラムの記録
面上の第m番目の単位領域Bと、これに隣接する第
(m+1)番目の単位領域Bm+1に着目してみる。す
ると、単位領域B内に記録される干渉縞は、原画像上
の単位領域A内の画像(点光源の集合)からの物体光
と参照光との干渉に基づいて得られるものであり、単位
領域Bm+1内に記録される干渉縞は、原画像上の単位
領域Am+1内の画像(点光源の集合)からの物体光と
参照光との干渉に基づいて得られるものであるから、参
照光として平行光線を用いたとすれば、単位領域A
の画像と単位領域Am+1内の画像とが同一パターンで
ある以上、単位領域B内に形成される干渉縞と単位領
域Bm+1内に形成される干渉縞とはやはり同一パター
ンになる。
【0071】したがって、この同一の干渉縞パターンを
二値化して得られる二値画像上では、図23に示すよう
に、単位領域B内の連続ビットと単位領域Bm+1
の連続ビットとは、全く同一になる。このように、全く
同一もしくは類似した連続ビットからなる行が、複数行
連続して配置されると、肉眼によって縦方向の筋が認識
されることになる。たとえば、エンボス加工により、ビ
ット「0」の部分が凹部、ビット「1」の部分が凸部と
して表現された場合、図23にビット「0」で示されて
いる部分により物理的な溝が形成されることになり、ホ
ログラム全面には、縦方向に伸びた多数の筋が観察され
ることになる。これが、多数の筋状ノイズの発生原因で
あると考えられる。
【0072】結局、図21(b) に示す再生像に見られる
ような縦に伸びた筋状ノイズが発生する原因は、「演算
負担を軽減するために、横方向に伸びた多数の線状単位
領域を定義したため」と言うことができる。図1の原理
図に示されているように、本来のホログラムであれば、
記録面20上のすべての点における干渉縞は、原画像1
0上のすべての点からの物体光と参照光との干渉によっ
て作成されるため、図21(a) に示すような単純な原画
像であったとしても、隣接する領域間で全く同一の干渉
縞パターンが得られるようなことはないと考えてよい。
ところが、図4に示すように、多数の単位領域に分割す
る手法を採ると、上述したように、隣接する単位領域間
で全く同一の干渉縞パターンが得られるような事態が生
じることになる。このような傾向は、二値化処理によっ
て更に拍車がかけられる。すなわち、干渉縞の強度分布
を演算によって求めた段階では、それぞれ異なる演算値
が得られていたとしても、二値化した段階では同一にな
ってしまう可能性がある。
【0073】このように、筋状ノイズが観察される傾向
は、特に、文字・ロゴなどの単純な平面図形からなる原
画像を用いた場合に顕著である。別言すれば、階調をも
った写真画像や複雑な形状をした立体画像を原画像とし
て用いた場合には、このような筋状ノイズはあまり観察
されない。これは、階調画像や立体画像が原画像の場
合、隣接する単位領域であっても、干渉波の強度に差が
生じやすくなるためである。しかしながら、金券やクレ
ジットカードなどの偽造防止マークとしては、文字・ロ
ゴなどの単純な平面図形からなる原画像が利用されるケ
ースが多く、商業的な利用という観点からは、この筋状
ノイズの発生は重大な問題になる。
【0074】§7. 筋状ノイズを解消するための方法 筋状ノイズの発生原因が、§6で述べた点にあることを
考慮して、本願発明者は、各単位領域ごとの強度分布に
現れる周期性を乱すことにより、この筋状ノイズの発生
を抑えることができることを見出だした。具体的には、
次のような方法により、強度分布の周期性を乱すことが
可能である。すなわち、§2で述べた演算方法によれ
ば、記録面20上の個々の演算点Qについての干渉波の
強度を演算する際に、原画像10上の演算対象単位領域
内に多数の点光源を定義し、各点光源から発せられた個
々の物体光と参照光とを干渉させることにより干渉波を
得るようにし、この干渉波の演算点Qにおける振幅強度
を演算によって求めることになるが、このとき、各点光
源から発せられる個々の物体光の初期位相をランダムに
設定するのである。
【0075】たとえば、図5に示す例の場合、記録面2
0上の演算点Q(x,y)についての干渉波の強度を
演算する際、原画像10上のN個の点光源Pm1,P
m2,Pm3,…,Pmi,…,PmNから発せられる
N個の物体光Om1,Om2,Om3,…,Omi
…,OmNと参照光R(この例では、記録面20に対し
て角度θで入射する平行光線)とを合成して干渉波を得
る演算を行うことになる。このとき、物体光Om1,O
m2,Om3,…,Omi,…,OmNの初期位相(0
〜2π)の値をそれぞれランダムに設定してやれば、演
算点Q(x,y)における干渉波の振幅強度は、この
ランダムに設定された初期位相の影響を受けた値にな
る。このような手法を採れば、図22(a) に示すよう
に、単位領域A内の画像と単位領域Am+1内の画像
とが、たとえ全く同一であったとしても、図22(b) に
示すように、ホログラム記録面上の単位領域B内に得
られる干渉縞パターンと、単位領域Bm+1内に得られ
る干渉縞パターンとは、ランダムな初期位相の影響によ
り異なるものとなり、図23に示すような縦方向に関す
るビットの整列現象を抑えることができるようになる。
【0076】以下、このような原理に基づく計算機ホロ
グラムの作成方法を、実際に適用するための具体的な式
を記述しておく。いま、XY平面上に定義された記録面
において、座標値(x,y)で示される位置にある演算
点Q(x,y)についての干渉波の振幅強度を演算する
場合を考える。ここで、この演算点Q(x,y)に、N
本の物体光O〜Oが照射されているとすると、これ
ら合計N本の物体光の演算点Q(x,y)における合成
振幅強度O(x,y)を、次の式(4) によって求める。
【0077】 O(x,y)=Σi=1〜N((O/r(x,y)) ・exp(jkr(x,y)+jφ)) (4) ここで、Oは、演算対象単位領域(演算点Q(x,
y)が所属する単位領域に対応する原画像10上の単位
領域)内の第i番目の点光源Pから発せられた物体光
(第i番目の物体光)の最大振幅を示し、r(x,
y)は、点光源Pと演算点Q(x,y)との距離を示
している。すなわち、式(4) における「(O/r
(x,y)」なる項は、距離による最大振幅の減衰を
示す項である。一方、指数関数の形で記述された次の項
は、この物体光の周期的な振幅変動を複素振幅の形式で
示す項であり、jは複素単位、kは物体光の波数(波長
をλとした場合、k=2π/λ、この例では、全物体光
の波長は同一としている)、φは第i番目の物体光の
初期位相(0〜2π)である。ここで、「kr(x,
y)」なる項は、光路長を示しており、この光路長に初
期位相「φi」を加えることにより、演算点Q(x,
y)の位置における複素振幅が与えられることになる。
【0078】この式(4) の演算を行う際に、任意の整数
iに対して、0〜1の範囲の任意の乱数を発生させる関
数RND(i)を用いて、 φ=2π・RND(i) (5) なる形で初期位相φを与えれば、各物体光にそれぞれ
ランダムな初期位相(0〜2πの範囲)を設定すること
が可能になる。
【0079】一方、記録面20に対して角度θをなし、
X軸に平行な平行光線として参照光Rを定義すれば、演
算点Q(x,y)における参照光Rの振幅強度R(x,
y)は、 R(x,y)=R・exp(jkx・sin (θ)+jφ)) (6) なる式によって与えられる。ここで、Rは参照光Rの
最大振幅、φは参照光Rの初期位相である。
【0080】このように、式(4) で与えられる物体光の
合成振幅強度O(x,y)および式(6) で与えられる参
照光の振幅強度R(x,y)は、いずれも複素振幅の強
度であるから、演算点Q(x,y)における干渉波の強
度I(x,y)は、 I(x,y)=|O(x,y)+R(x,y)| (7) で与えられることになる。
【0081】上述の演算式を用いて、記録面20上の各
演算点Qについて強度Iを求め、強度分布を示す画像を
二値化し、得られた二値画像のデータを電子線描画装置
に与え、媒体上に物理的な干渉縞を形成したところ、英
文字からなる原画像のモチーフは、何ら支障なく再生さ
れ、しかも肉眼では何ら筋状ノイズは認識されなかっ
た。
【0082】§8. 鮮明な再生像を形成するための手
これまで述べてきた手法によって記録面上に作成された
ホログラムは、本来は、干渉縞の演算時に用いた参照光
Rと同じ単色光を用いて観察すべきものである。しかし
ながら、このホログラムをクレジットカードなどの偽造
防止用に利用した場合、単色光による再生は困難であ
り、実際には、白色光による再生が行われると考えてよ
い。このような白色光による再生を行うと、色分散によ
り、再生像が不鮮明になることが知られている。
【0083】図24は、記録面20上に形成されたホロ
グラムを、白色光により再生した場合に、色分散が生じ
る原理を説明する図であり、図2に示す記録面20を上
方から見た図に相当する。図示の例は、透過型ホログラ
ムの例であり、記録面20の表側に観測点E(肉眼)を
置く場合、記録面20の裏側から再生光Rを照射するこ
とになる。この再生光Rは、記録面20を透過する際
に、ホログラムとして記録されている干渉縞により進路
を変えるが、その進行方向は波長ごとにそれぞれ異な
る。図24では、波長λ1の光と波長λ2の光の進行方
向が例示されている。
【0084】図24において、再生像は、記録面20の
裏側に虚像として形成されることになるが、像の位置は
波長ごとに異なってくる。たとえば、記録面20に対し
て、奥行きLaの位置に形成される像(ここでは、黒点
で示す)に着目すると、波長λ1に関しては再生像Ia
1が得られ、波長λ2に関しては再生像Ia2が得られ
ることになる。したがって、λ1〜λ2が可視波長域で
あるとすれば、奥行きLaの位置に形成される像は、再
生像Ia1〜Ia2の広がりをもった像として観察され
ることになる。これが色分散の生じる基本的な原因であ
る。ここで注目すべき点は、記録面20からの奥行きが
増すほど、色分散の程度が大きくなる点である。たとえ
ば、記録面20に対して、奥行きLbの位置に形成され
る像(ここでは、黒点で示す)の広がりは、再生像Ib
1〜Ib2の範囲となり、奥行きLaの位置の像に比べ
て分散が大きくなっている。
【0085】不鮮明な再生像が生じる原因としては、上
述の色分散のほか、記録面20の解像度や面積が有限で
あるという事由も影響しているが、いずれにせよ、記録
面20に対する奥行きが増すほど、再生像は不鮮明にな
らざるを得ない。ところが、ホログラムを産業上利用す
る立場からは、ある程度の奥行きをもった像を記録した
いという要望が強い。特に、偽造防止用シールなどの用
途では、記録面に対してそれぞれ異なる奥行きをもった
位置に複数の対象物を配置したモチーフが好んで用いら
れている。たとえば、図25に示す例では、英文字
「A」を表現した第1の対象物11と、英文字「B」を
表現した第2の対象物12とが用意されている。このよ
うな英文字は、会社のロゴマークを表現したモチーフを
構成するために広く利用されているが、いわゆる「立体
画像の記録」というホログラム本来の特性を生かすため
に、個々の文字ごとに異なる奥行きをもった位置に配置
することが多い。
【0086】図26は、図25に示す2つの対象物1
1,12を、記録面20に対して、それぞれ異なる奥行
きをもった位置に配置した状態を示す上面図である。す
なわち、英文字「A」を表現した第1の対象物11は、
記録面20に対して奥行きLaの位置に配置され、英文
字「B」を表現した第2の対象物12は、記録面20に
対して奥行きLbの位置に配置されている。このような
2つの対象物11,12を原画像とした計算機ホログラ
ムを作成するには、所定の参照光Rを定義し、対象物1
1,12上に定義した多数の点光源から発せられる物体
光と参照光Rとの干渉によって、記録面20上に形成さ
れる干渉縞を演算によって求めればよい。このようにし
て作成された計算機ホログラムに対して、参照光Rを照
射して、図のように観測点Eから観察すれば、記録面2
0の裏側の対象物11,12と同じ位置に、再生像が虚
像として得られることになる。
【0087】ところが、再生時に照射する参照光Rは、
実際には白色光に近いものになり、上述したように、色
分散によって再生像が不鮮明になる現象が生じる。図示
の例の場合、記録面20に対する奥行きLaに比べて、
奥行きLbはかなり大きいため、第1の対象物11に比
べて、第2の対象物12の不鮮明度は著しくなる。この
ため、観測点Eから観察した場合、英文字「A」に比
べ、英文字「B」は著しくボケた画像として認識される
ことになる。
【0088】本願発明者は、このように複数の対象物か
らなる原画像をホログラムとして記録する場合、一部の
対象物は実像として、別な一部の対象物は虚像として記
録することにより、再生像の全体的な鮮明度を向上させ
ることが可能なことを見出だした。具体的には、計算機
ホログラムの作成時に、図27に示すような配置を行え
ばよい。この例では、第1の対象物11を記録面20の
表側に配置し、第2の対象物12を記録面20の裏側に
配置し、記録面20の裏側に参照光Rを照射して干渉縞
の記録を行っている。もちろん、実際には、干渉縞の記
録はすべて演算によって行われる。すなわち、記録面2
0上の個々の演算点Qについて、第1の対象物11上の
多数の点光源から発せられた物体光と、第2の対象物1
2上の多数の点光源から発せられた物体光と、参照光R
と、の干渉波の強度を演算すればよい。
【0089】図27に示す方法を、図26に示す方法と
比較すると、第1の対象物11と記録面20との距離
(奥行き)Laは変わりないものの、第2の対象物12
と記録面20との距離(奥行き)は、LbからLb
と大幅に減少していることがわかる。このため、第2の
対象物12の再生像の鮮明度が大幅に向上することにな
る。しかも、両対象物11,12間の距離Lには変化は
ないため、再生像として得られる立体的なモチーフには
変わりはない(図26の場合も、図27の場合も、観測
点Eから観察した場合、英文字「A」が英文字「B」よ
りも前方に距離Lだけ浮き出して見える)。
【0090】図26に示す記録方法と、図27に示す記
録方法との本質的な違いは、前者では全対象物が虚像と
して記録されていたのに対し、後者では、第1の対象物
11は実像として記録され、第2の対象物12は虚像と
して記録されている点にある。このように、複数の対象
物を記録する際、実像と虚像とを混在させる手法を採れ
ば、全体的に、再生像の鮮明度を向上させることができ
る。もちろん、後者の手法でも、色分散を皆無にするこ
とはできない。ただ、複数の対象物を相互に奥行きLを
もって配置してなる原画像を記録する際には、この手法
を取り入れることにより、再生像の全体としての鮮明度
を向上させることができ、また、個々の対象物ごとの鮮
明度の差を緩和することができる。
【0091】本願発明者は、上述の手法で、2つの英文
字からなるモチーフを原画像とした計算機ホログラムを
実際に作成してみた。具体的には、10mm四方の正方
形状の記録面を定義し、この記録面の前方1mmの位置
に第1の英文字を配置し、後方1mmの位置に第2の英
文字を配置し、各英文字からの物体光および参照光とし
て、いずれも波長500nmの光を定義して、記録面上
の干渉波の強度分布を演算により求めた。この強度分布
を二値化して二値画像を作成し、この二値画像に基づい
てエンボス加工を行い、実際のホログラムを作成した。
その結果、2つの英文字ともに、かなり鮮明な再生像が
得られ、一方がホログラム記録面から1mmほど浮き出
た位置で観察され、もう一方がホログラム記録面から1
mmほど沈んだ位置で観察された。
【0092】本願発明者が行った実験によると、偽造防
止シールなどに利用されている10mm四方の程度の大
きさの記録面を用いた場合、記録面と原画像との距離が
5mm以上になると、色分散によりかなり不鮮明な再生
像が形成されることになるが、記録面と原画像との距離
を1mm程度に維持すると、肉眼で観察した限り十分鮮
明な再生像が得られることが判明した。
【0093】なお、上述の手法は、複数の対象物からな
る原画像を記録する場合に限らず、単一の対象物からな
る原画像を記録する場合にも有効である。すなわち、記
録面に対して所定の奥行きをもった立体的な対象物を原
画像として記録する場合、この対象物の一部分を実像が
形成される態様で記録し、別な一部分を虚像が形成され
る態様で記録すればよい。
【0094】たとえば、図28は、Z軸方向に奥行きを
もった立体的な対象物からなる原画像16を、記録面2
0上に記録する従来の方法を示す上面図である。原画像
16上の白丸は、それぞれ点光源を示している(実際に
は、原画像16上には多数の点光源が定義されるが、こ
こでは図示の便宜上、その一部のみを示す)。第i番目
の点光源Pから発せられた多数の物体光Oix(x=
1,2,…)が記録面20の全面へと照射されるととも
に、所定の参照光Rが記録面20の全面へと照射され
る。そして、これらの干渉波の振幅強度が、記録面20
上の各演算点Qの位置において演算され、記録面20上
に強度分布としての干渉縞が得られることになる。
【0095】これに対し、ここで述べる手法により原画
像16を記録する場合は、図29の上面図に示すような
配置を行えばよい。原画像16は、記録面20の表裏両
面にわたるように配置されている。光学的な手法によっ
てホログラムを作成する場合には、原画像16となる物
体そのものを記録面20上に配置することは物理的に不
可能であるが、計算機ホログラムを作成する場合には、
原画像16も記録面20も、三次元座標系における幾何
学データとして定義されるだけであるから、座標系上で
重なりあっていても何ら支障はない。ここでは、記録面
20の裏側に位置する第i番目の点光源Pから発せら
れた多数の物体光Oixは図示のように記録面20の全
面へと照射され、同様に、記録面20の表側に位置する
第j番目の点光源Pから発せられた多数の物体光O
jxも図示のように記録面20の全面へと照射される。
そして、これら物体光と参照光Rとの干渉によって得ら
れる干渉波の振幅強度が、記録面20上の各演算点Qの
位置において演算され、記録面20上に強度分布として
の干渉縞が得られることになる。
【0096】図30は、図29に示す手法により作成さ
れた計算機ホログラムの再生状態を示す上面図である。
記録面20の裏側から参照光R(実際には、記録時に用
いた単色光ではなく、白色光になる)を照射し、記録面
20の表側の観測点Eから観察すれば、図示のように、
実像(図の黒丸で示す点)と虚像(図の白丸で示す点)
とからなる再生像17が得られることになる。図28に
示す記録方法と、図29に示す記録方法とを比較すれ
ば、原画像16の各点と記録面20との距離は、全体的
に後者の方が減少しており、本手法の適用により、色分
散の少ない、より鮮明な画像が得られることがわかる。
【0097】§9. 具体的な記録媒体の作成方法 最後に、実際の記録媒体上に、物理的に干渉縞を形成さ
せる具体的な方法の一例を開示しておく。本発明に係る
方法では、図6(a) に示すような干渉波の強度分布が得
られたら、個々の演算点Q(x,y)に与えられた強度
値(図20の流れ図に示す手順を実行した場合、0〜1
の範囲内に規格化されている)を二値化し、図6(b) に
示すような画素D(x,y)からなる二値画像を形成す
る。たとえば、0.5なる値を二値化のしきい値として
用いたとすれば、0.5〜1の強度値をもつ演算点Qに
は、画素値「1」をもつ画素Dが定義され、0〜0.5
の強度値をもつ演算点Qには、画素値「0」をもつ画素
Dが定義される。
【0098】ここでは、こうしてコンピュータ上に用意
された二値画像に基づいて、実際の媒体上にエンボス構
造をもった干渉縞を形成させるための具体的な方法を、
図31および図32の側断面図に基づいて説明する。ま
ず、図31(a) に示すように、ガラス基板100を用意
し、その上に電子線感光型のレジスト剤を塗布し、レジ
スト層110を形成する。続いて、コンピュータ上に用
意された二値画像のデータを、電子線描画装置に与え、
レジスト層110上に二値画像を描画する(0または1
のいずれかの画素値をもつ画素に対して、電子線が照射
され、たとえば、レジスト層のうちの照射を受けた部分
だけが硬化する)。そして、このレジスト層110を現
像し、未硬化部分を除去すれば、図31(b) に示すよう
に、表面に凹凸構造をもったレジストホログラム115
が形成される。この表面の凹凸構造は、ホログラムとし
ての干渉縞を構成している。
【0099】続いて、図32(a) に示すように、レジス
トホログラム115の表面に、蒸着法や無電解鍍金法な
どを用いて導電性の金属被膜120を形成する。そし
て、たとえば、この基板全体をニッケル鍍金浴に浸して
鍍金を行えば、図32(b) に示すように、金属被膜12
0の上面に所定の厚みをもったニッケルからなる鍍金層
130を形成することができる。ここで、レジストホロ
グラム115を、金属被膜120から剥離除去すれば、
下面が金属被膜120で覆われた鍍金層130を得るこ
とができるので、これをスタンパ(エンボス版)として
用いてエンボス加工を行うことができる。すなわち、図
32(c) に示すように、熱可塑性の樹脂などからなるホ
ログラム用媒体フィルム200を用意し、この上からス
タンパ(鍍金層130および金属被膜120)を熱をか
けながら押圧すると、図32(d) に示すように、エンボ
スホログラム205が形成される。
【0100】なお、実用上は、多面付けされたスタンパ
を用いて、フィルム原反(たとえば、PET層/アクリ
ル樹脂層/アルミ蒸着層なる3層構造をもったフィル
ム)に対して、押圧プロセスを繰り返し、エンボスホロ
グラム205を大量生産するのが好ましい。こうして生
産されたエンボスホログラム205に対しては、必要に
応じて、粘着加工が施される。たとえば、塩化ビニル/
酢酸ビニル共重合体を主成分とする粘着剤を、一方の面
(たとえば、アルミ蒸着層側)に塗布し、PETなどか
らなる剥離紙に貼り付ければ、シール状のホログラムを
作成することができる。
【0101】
【発明の効果】以上のとおり本発明に係る計算機ホログ
ラムの作成方法によれば、記録面上で干渉波強度に関す
る演算を行う際に、物体光の広がりを制限するようにし
たため、媒体上に二値画像として干渉縞を記録する場合
であっても、再生像の輝度むらを抑制した計算機ホログ
ラムを作成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なホログラムの作成方法を示す原理図で
あり、原画像10を記録面20上に干渉縞として記録す
る方法が示されている。
【図2】図1に示す原理に基づいて、記録面上の任意の
点Q(x,y)における干渉波の強度を演算する方法を
示す図である。
【図3】演算負担を軽減させたホログラムの作成方法を
示す原理図であり、原画像10を記録面20上に干渉縞
として記録する方法が示されている。
【図4】図3に示す原理に基づいて、記録面上の任意の
点Q(x,y)における干渉波の強度を演算する方法
を示す図である。
【図5】図4に示す原画像10および記録面20を、図
の上方から見た状態を示した上面図である。
【図6】演算によって得られた強度分布画像を二値化
し、二値画像を得る過程を示す概念図である。
【図7】二値化画像に基づいて作成されたホログラムを
観察すると、輝度むらが発生する状態を示す平面図であ
る。
【図8】ホログラムへの記録対象となる原画像上のモチ
ーフの一例を示す図である。
【図9】原画像15上に多数の線状単位領域を定義した
ときの、各線状単位領域内の点光源の配置を示す平面図
である。
【図10】記録面25上に多数の線状単位領域を定義
し、各線状単位領域ごとに干渉波を求めた場合の各干渉
波の振幅の相違を示す平面図である。
【図11】図10に示す各干渉波の振幅強度を二値化し
た状態を示す平面図である。
【図12】図11に示す二値化により、再生像に輝度む
らが生じる原理を説明する平面図である。
【図13】記録面20上の各位置によって、それぞれ干
渉波の強度に差が生じる原理を示す側面図である。
【図14】図13に示す記録面20上の2つの演算点Q
α,Qβにおける干渉波の振幅を示す図である。
【図15】原画像10上の点光源Pからの物体光の広が
りを、円錐によって制限する手法を示す概念図である。
【図16】原画像10上の点光源Pからの物体光の広が
りを、記録面20上の演算点Q(x,y)側から定義し
た円錐によって制限する手法を示す概念図である。
【図17】円錐により物体光の広がり制限を行った場合
に、干渉波の強度差が緩和される原理を示す原画像15
の平面図である。
【図18】演算負担を軽減させるために、点光源からの
物体光の広がりを、平面上の扇状領域に制限する手法を
示す上面図である。
【図19】本発明の一実施形態に係る計算機ホログラム
の作成方法の手順を示す流れ図である。
【図20】図19に示す手順の基本原理を説明する図で
ある。
【図21】原画像を記録したホログラムを再生する際
に、再生像とともに筋状ノイズが観察される例を示す図
である。
【図22】筋状ノイズが発生する原因を説明するための
図である。
【図23】二値化によって筋状ノイズの原因となるビッ
ト整列が生じている状態を示す図である。
【図24】記録面20上に形成されたホログラムを、白
色光により再生した場合に、色分散が生じる原理を説明
する図であり、図2に示す記録面20を上方から見た図
に相当する。
【図25】原画像として用意された2つの対象物を示す
平面図である。
【図26】図25に示す2つの対象物11,12を、記
録面20に対して、それぞれ異なる奥行きをもった位置
に配置した通常の配置方法を示す上面図である。
【図27】図25に示す2つの対象物11,12を、記
録面20に対して、それぞれ異なる奥行きをもった位置
に配置した別な配置方法を示す上面図である。
【図28】奥行きをもった立体原画像16を通常の方法
で記録面20に対して配置した状態を示す上面図であ
る。
【図29】奥行きをもった立体原画像16を別な方法で
記録面20に対して配置した状態を示す上面図である。
【図30】図29に示す配置によって作成された計算機
ホログラムを観察したときに得られる再生像を示す上面
図である。
【図31】実際の媒体上にエンボス構造をもった干渉縞
を形成させるための具体的な方法を説明するための側断
面図である。
【図32】実際の媒体上にエンボス構造をもった干渉縞
を形成させるための具体的な方法を説明するための別な
側断面図である。
【符号の説明】
10,15,16…原画像 17…再生像 20,25…記録面 100…ガラス基板 110…レジスト層 115…レジストホログラム 120…金属被膜 130…鍍金層 200…ホログラム用媒体フィルム 205…エンボスホログラム A,A,A,A,Am+1,A,Aα
β,Aγ…原画像上の線状単位領域 B,B,B,B,B,bm+1,B,Bα
β,Bγ…記録面上の線状単位領域 D(x,y)…二値画像を構成する画素 E…観測点 Ia1,Ia2…第1の対象物の再生像 Ib1,Ib2…第2の対象物の再生像 Iα,Iβ,Iγ…再生像の各部 Imax ,Imin …全演算点についての干渉波強度の最大
値および最小値 I(α)max ,I(β)max ,I(γ)max …第
α,β,γ番目の単位領域についての干渉波強度の最大
値 I(α)mix ,I(β)mix ,I(γ)mix …第
α,β,γ番目の単位領域についての干渉波強度の最小
値 L…2つの対象物のZ軸方向の距離 La…第1の対象物と記録面との距離 Lb,Lb…第2の対象物と記録面との距離L1,L
2…輝度むらの許容範囲を定める値 n,n…法線(円錐の中心軸) O,O,O,Oix,Ojx,O,Om1,O
mN…物体光 P,P,P,P,P,Pm1,PmN,Pα
γ,P,P…点光源 Pα1〜Pα3,Pβ1〜Pβ3,Pγ1〜Pγ3…点
光源 PP,PP(a) 〜PP(k) …原画像上の領域 Q(x,y),Q(x,y),Qα,Qγ…演算点 R…参照光(再生光) λ1,λ2…参照光Rに含まれる光の波長 θ…物体光の広がり角/参照光と記録面とのなす角 θ…初期広がり角度 Δθ…変動角

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 計算機を用いた演算により所定の記録面
    上に干渉縞を形成してなる計算機ホログラムを作成する
    方法であって、 所定の原画像と、この原画像を記録するための記録面
    と、この記録面に対して照射する参照光とを定義する段
    階と、 前記記録面上に多数の演算点を定義し、個々の演算点に
    ついて、前記原画像上に定義された点光源から発せられ
    た物体光と、前記参照光とによって形成される干渉波の
    強度を演算する段階と、 個々の演算点について求められた干渉波の強度を二値化
    し、前記記録面上に二値画像を定義する段階と、 前記二値画像に基づいて、媒体上に物理的な干渉縞を作
    成する段階と、 を有し、個々の演算点ごとの干渉波の振幅の差が、所定
    の許容範囲内に収まるように、点光源から発せられた物
    体光の広がりを制限することを特徴とする計算機ホログ
    ラムの作成方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の作成方法において、 予め、物体光の初期広がり角を定義しておき、個々の演
    算点ごとの干渉波の振幅の差が所定の許容範囲内に収ま
    るまで、物体光の広がり角を前記初期広がり角から徐々
    に減少させながら、記録面上の全演算点についての干渉
    波強度演算を繰り返し実行することを特徴とする計算機
    ホログラムの作成方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の作成方法にお
    いて、 原画像の点光源における法線を中心軸とし、前記点光源
    を通り前記中心軸に対して角度θをなす線を前記中心軸
    の回りに回転させて得られる円錐を定義し、物体光の広
    がりを前記円錐内に制限することを特徴とする計算機ホ
    ログラムの作成方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2に記載の作成方法にお
    いて、 記録面の演算点における法線を中心軸とし、前記演算点
    を通り前記中心軸に対して角度θをなす線を前記中心軸
    の回りに回転させて得られる円錐を定義し、原画像を構
    成する点光源のうち、前記円錐に含まれる点光源からの
    物体光のみが前記演算点に到達するものとして、物体光
    の広がりの制限を行うことを特徴とする計算機ホログラ
    ムの作成方法。
  5. 【請求項5】 請求項1または2に記載の計算機ホログ
    ラムの作成方法において、 原画像および記録面を、それぞれ分割して多数の単位領
    域を定義し、前記原画像上の個々の単位領域と前記記録
    面上の個々の単位領域とを対応づけ、前記記録面上に定
    義された個々の演算点について、当該演算点が所属する
    単位領域に対応する前記原画像上の単位領域を演算対象
    単位領域と定め、この演算対象単位領域内の点光源から
    発せられた広がりを制限された物体光と、前記参照光と
    によって形成される干渉波の強度を演算するようにした
    ことを特徴とする計算機ホログラムの作成方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の作成方法において、 演算対象単位領域内の点光源における法線を中心軸と
    し、前記点光源を通り前記中心軸に対して角度θをなす
    線を前記中心軸の回りに回転させて得られる円錐を定義
    し、物体光の広がりを前記円錐内に制限することを特徴
    とする計算機ホログラムの作成方法。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の作成方法において、 記録面の演算点における法線を中心軸とし、前記演算点
    を通り前記中心軸に対して角度θをなす線を前記中心軸
    の回りに回転させて得られる円錐を定義し、原画像を構
    成する点光源のうち、前記演算点についての演算対象単
    位領域内に位置し、かつ、前記円錐に含まれる点光源か
    らの物体光のみが前記演算点に到達するものとして、物
    体光の広がりの制限を行うことを特徴とする計算機ホロ
    グラムの作成方法。
  8. 【請求項8】 請求項5〜7のいずれかに記載の方法に
    おいて、 原画像および記録面を多数の平行線によって分割し、多
    数の線状の単位領域を定義することを特徴とする計算機
    ホログラムの作成方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれかの作成方法によ
    って作成された計算機ホログラム。
  10. 【請求項10】 計算機を用いた演算を利用して、所定
    の媒体上に原画像を干渉縞として記録した計算機ホログ
    ラムにおいて、 媒体上の任意の点に法線を立て、この法線を中心軸と
    し、前記任意の点を通り前記中心軸に対して所定の角度
    θをなす線を前記中心軸の回りに回転させて得られる円
    錐を定義したときに、前記任意の点には、記録対象とな
    る原画像のうち、前記円錐の内部の部分に関する情報の
    みが記録されていることを特徴とする計算機ホログラ
    ム。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載の計算機ホログラム
    において、 媒体上に多数の単位領域が定義されており、この媒体上
    の各単位領域は、それぞれ原画像上に定義された特定の
    単位領域に対応づけられており、 媒体上の任意の点には、この任意の点が所属する単位領
    域に対応する原画像上の単位領域のうち、この任意の点
    についての円錐の内部に位置する部分に関する情報のみ
    が記録されていることを特徴とする計算機ホログラム。
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