JPH11291408A - 親水性塗膜を有する物品 - Google Patents

親水性塗膜を有する物品

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JPH11291408A
JPH11291408A JP10110185A JP11018598A JPH11291408A JP H11291408 A JPH11291408 A JP H11291408A JP 10110185 A JP10110185 A JP 10110185A JP 11018598 A JP11018598 A JP 11018598A JP H11291408 A JPH11291408 A JP H11291408A
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正明 山谷
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 基材上に、全樹脂固形分に対しシリコー
ン樹脂を30〜80重量%含有するシリコーン−アクリ
ル樹脂複合膜からなる第一層と、その上に光触媒含有層
からなる第二層が形成されてなることを特徴とする親水
性塗膜を有する物品。 【効果】 本発明によれば、第一層の下塗り層に全樹脂
固形分に対しシリコーン樹脂を30〜80重量%含有す
るシリコーン−アクリル樹脂複合膜を形成し、その上に
光触媒含有層を形成したことにより、耐候性と基材への
密着性、可撓性、耐アルカリ性の両立が可能となる。ま
た、この塗膜は太陽光の照射を受け、塗膜表面が親水性
を発現し、長期間、防汚性、抗菌性を維持することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒作用によっ
て表面が親水化する層を表面に有する親水性塗膜を有す
る物品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、
環境汚染、安全な作業環境の確保の観点から、塗料或い
はコーティング剤の分野では有機溶剤から水系へと分散
媒の変更が求められている。
【0003】この要求に基づき、アクリル樹脂系に代表
されるラジカル重合性ビニルモノマーを乳化重合したエ
マルジョン系塗料は、優れた被膜形成性及び耐薬品性の
良さから、コーティング剤の基本材料として幅広く採用
されている。しかしながら、この種のコーティング剤は
本質的に耐水性及び耐候性が不足するという欠点を有し
ている。
【0004】それに対し、シラン化合物を加水分解・縮
合して得られるシリコーン樹脂(レジン)は、高硬度
で、耐候性、耐水性、耐熱性、撥水性に優れた被膜を形
成する能力があるため、コーティング剤として注目され
ている。その反面、被膜形成性、耐アルカリ性、被膜の
可撓性に劣り、縮合活性に富むシラノール基に起因して
貯蔵安定性も劣るという欠点がある。また、シリコーン
樹脂は、一般的に有機溶剤に溶解した形態で使用される
ため、火災・爆発の危険性、人体への有毒性、環境汚染
等の問題があり、エマルジョン型の開発が求められてい
る。
【0005】このような背景の中で、近年、アクリル樹
脂とシリコーン化合物との複合膜を形成するエマルジョ
ン組成物が注目されており、幾つかの報告もなされてい
る。しかし、現在報告されているシリコーン−アクリル
エマルジョン組成物は、基本的にはアクリル樹脂の一部
を加水分解性シリル基で変性させる方法、或いはアクリ
ル乳化重合中にアルコキシシラン類を添加する方法で合
成されており、保存安定性が維持可能な実用レベルでの
シリコーン含有量は、せいぜい樹脂固形分に対し20重
量%程度である。
【0006】一方、最近、光触媒を利用して塗膜表面に
抗菌、防汚性を付与する技術が報告されている。これは
光触媒を最表層に固定化した膜に、紫外線を含む太陽光
を照射すると、光触媒によって生成する活性ラジカル種
が細菌類や油汚れを分解するというものであり、屋外に
曝される建築物、構造物用塗料への応用が期待されてい
る。光触媒含有膜の形成方法としては、(1)光触媒を
基材に直接塗布後、高温で焼結させる方法、(2)基材
と光触媒の間に中間接着層を設ける方法、(3)光触媒
とバインダー樹脂の組成物を塗布し、一コートにて塗膜
を形成する方法が報告されている。(1)は金属、ガラ
ス等の耐熱性を有する無機基材にしか適用できないし、
(3)は光触媒が塗膜内部に埋没してしまうため、光触
媒の能力を十分発揮させるためには光触媒の含有量を増
やさなくてはならない等の問題点があるため、(2)の
方法が最も実用的である。しかし、光触媒に接している
有機物は光照射にて発生するラジカル種により分解され
るため、光触媒を固定化する中間接着(下塗り)層にア
クリル樹脂、ウレタン樹脂等を主成分とする汎用な有機
樹脂塗料を用いた場合、屋外暴露によって多量の太陽光
が照射されるため、有機樹脂と光触媒の界面で有機樹脂
の酸化分解が起こるので、極めて耐久性に乏しい。これ
を防止するためには、下塗り層にシリコーン樹脂或いは
フッ素樹脂塗料を使用することが好ましいことも報告さ
れている。
【0007】また、これとは別に光触媒を含有した塗膜
に光を照射すると、表面の水に対する接触角が10度以
下に低下する現象も報告されている。これは光触媒粒子
表面の水酸基に水が吸着するためと考えられている。こ
の親水性塗膜は雨水により汚染物質が洗い流されるた
め、長期間にわたり極めて高い防汚性を発現することが
知られている。これは前述した光触媒の酸化分解による
防汚性付与とは別の機構で発現すると考えられており、
光触媒の親水化能力はラジカル種の発生による酸化分解
力と必ずしも相関するものではない。
【0008】このような親水性塗膜を形成させる場合、
中間接着層としていかなる樹脂層を用いるかは極めて重
要な選択である。耐候性を最優先させる必要がある場
合、シリコーン樹脂を主成分とする無機塗膜が最も適す
るはずであるが、PETやポリカーボネート樹脂等の有
機樹脂基材にはプライマーなしでは密着性が低いのに加
え、膜自身の可撓性、耐アルカリ性に乏しいという欠点
を有する。それに対し、アクリル樹脂等の有機樹脂を主
成分とする下塗り層は、特に有機樹脂基材との密着性に
優れ、また低温硬化性、可撓性の付与も容易なため、フ
ィルム等の基材への下塗りには好適である。更に酸化分
解能は低く、親水化能力は高いタイプの光触媒を選択す
ることができれば、耐候性にも優れた光触媒含有塗膜の
形成が可能であろうと考えられる。
【0009】しかしながら、光触媒による親水性の発現
機構は完全に解明されてはおらず、現在、酸化分解能は
低く、親水化能力は高いタイプの光触媒の選択は不可能
である。従って有機樹脂基材への密着性、可撓性を維持
しつつ、光触媒による耐候劣化を最小限に抑えた下塗り
層の開発が、親水性光触媒含有塗膜の実用化にとって極
めて重要である。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本
発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った
結果、光触媒を基材表面に固定化する方法として、シリ
コーン樹脂を30重量%以上80重量%以下含有するシ
リコーン−アクリル複合膜を下塗り層とし、その上に光
触媒を含有する塗布液を塗布、固着させることにより、
光触媒を表面に固定化した場合、有機樹脂等の各種基材
上にプライマーなしでも密着性の良好な塗膜を形成し得
る上、低温硬化性、可撓性、耐候性にも優れ、太陽光照
射を受けることにより光触媒作用によって表面が親水化
し、防汚性、抗菌性、防曇性を発現する塗膜が得られる
ことを知見し、本発明をなすに至った。。
【0011】以下、本発明について更に詳しく説明す
る。本発明の親水性塗膜を有する物品は、基材上に、全
樹脂固形分に対しシリコーン樹脂を30〜80重量%含
有するシリコーン−アクリル樹脂複合膜からなる第一層
と、その上に光触媒含有層からなる第二層が形成されて
なるものである。
【0012】ここで、親水性塗膜は、鉄、ステンレス製
の建築用構造材やアルミサッシ建材等の表面保護、自動
車、電化製品用の塗装用コーティング、プラスチック
板、磁気或いは感熱記録用フィルム、包装用フィルム、
ビニールクロス等の表面保護コーティング、眼鏡レンズ
等の光学物品の表面保護コーティング、合板の表面保護
コーティング、モルタル、コンクリート、セメント製の
外装用壁材又は窯業パネル(ALC板、サイジングボー
ド、石膏ボード)、レンガ、ガラス陶磁器、人工大理石
等の表面保護コーティング等として使用することができ
る。基材はかかる物品の種類により選定され、また基材
の材質も、プラスチック(有機樹脂)、セラミックス、
ガラス、金属、或いはそれらの複合物等、特に限定され
るものではないが、ポリカーボネート、アクリル樹脂等
の有機樹脂平板、PET樹脂等の有機樹脂フィルムを好
ましく用いることができる。
【0013】本発明においては、上記基材に、第一層と
してシリコーン−アクリル樹脂複合膜を形成する。
【0014】この場合、このシリコーン−アクリル樹脂
複合膜において、シリコーン樹脂の全樹脂固形分に対す
る含有量は30〜80重量%であり、好ましくは35〜
70重量%、更に好ましくは40〜60重量%である。
30重量%より少ない場合、暴露試験で光触媒と下塗り
層の樹脂界面での分解劣化が発生し、光触媒の脱落、膜
の白化等の外観不良が著しいため不適である。一方、8
0重量%より多い場合、基材との密着性、耐アルカリ
性、可撓性が著しく低下し、シリコーン樹脂より構成さ
れる無機塗料の有する欠点を改良できず、実用性に乏し
い。
【0015】本発明の第一層の形成には、以下のシリコ
ーン−アクリル樹脂エマルジョン組成物を塗布する方法
が最も好ましい。即ち、 (1)下記平均組成式(1) R1 mR2 nSi(OH)p(X)qO(4-m-n-p-q)/2 (1) (式中、R1は非置換一価炭化水素基、R2は置換一価炭化水素基、Xは加水分解 性基を表す。m,n,p,qは0.5≦m≦1.8、0≦n≦1.0、0<p≦ 1.5、0≦q≦0.5、0.5≦m+n≦1.8、0<p+q≦1.5を満た す数である。) で表される非水溶性のシラノール基含有シリコーン樹脂 100重量部、 (2)ラジカル重合性ビニルモノマー 25〜233重量部 を主成分として含有し、好ましくは実質的に有機溶剤を
含まない溶液の乳化重合物からなるシリコーン樹脂含有
エマルジョン組成物である。
【0016】ここで、上記式(1)のシラノール基含有
シリコーン樹脂において、R1は非置換一価炭化水素基
を表し、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル基、
エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t
−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル
基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、5
−ヘキセニル基、9−デセニル基等のアルケニル基、フ
ェニル基等のアリール基などを具体例として示すことが
できる。この中でも、メチル基、プロピル基、ヘキシル
基、フェニル基が好ましい。特に耐候性を要求される場
合にはメチル基が好ましく、撥水性が求められる場合に
は長鎖アルキル基を使用するのが好ましく、被膜に可撓
性を付与する場合にはフェニル基を適用するのがよい。
この場合、特には、全有機置換基(R1+R2)中のメチ
ル基の含有率が少なくとも50モル%、特に80モル%
以上であることが好ましい。
【0017】R2は置換された一価炭化水素基を表す。
この置換一価炭化水素基は、上記炭素数1〜10の非置
換一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部を置換基で
置換したもので、置換基としては、(i)フッ素、塩素
などのハロゲン原子、(ii)グリシジロキシ基、エポ
キシシクロヘキシル基などのエポキシ官能基、(ii
i)メタクリル基、アクリル基などの(メタ)アクリル
官能基、(iv)アミノ基、アミノエチルアミノ基、フ
ェニルアミノ基、ジブチルアミノ基などのアミノ官能
基、(v)メルカプト基、テトラスルフィド基などの含
硫黄官能基、(vi)(ポリオキシアルキレン)アルキ
ルエーテル基などのアルキルエーテル官能基、(vi
i)カルボキシル基、スルフォニル基などのアニオン性
基、(viii)第4級アンモニウム塩構造含有基など
が適用可能である。この置換された一価炭化水素基の具
体例としては、トリフルオロプロピル基、パーフルオロ
ブチルエチル基、パーフルオロオクチルエチル基、3−
クロロプロピル基、2−(クロロメチルフェニル)エチ
ル基、3−グリシジロキシプロピル基、2−(3,4−
エポキシシクロヘキシル)エチル基、5,6−エポキシ
ヘキシル基、9,10−エポキシデシル基、3−(メ
タ)アクリロキシプロピル基、(メタ)アクリロキシメ
チル基、11−(メタ)アクリロキシウンデシル基、3
−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)アミノ
プロピル基、3−(N−フェニルアミノ)プロピル基、
3−ジブチルアミノプロピル基、3−メルカプトプロピ
ル基、2−(4−メルカプトメチルフェニル)エチル
基、ポリオキシエチレンオキシプロピル基、3−ヒドロ
キシカルボニルプロピル基、3−トリブチルアンモニウ
ムプロピル基などを挙げることができる。基材との密着
性を向上させる場合には、エポキシ、アミノ、メルカプ
ト官能性基などを適用するのがよい。ビニル重合体との
緊密なブロック化を目指す場合、ラジカル共重合が可能
な(メタ)アクリル官能性基、或いは連鎖移動剤として
の機能を有するメルカプト官能性基を使用するのが好ま
しい。また、ビニル重合体とシロキサン結合以外の結合
で架橋を試みる場合、ビニル重合体中に含有される有機
官能基と反応可能な官能基を導入しておけばよく、例え
ばエポキシ基(ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基
などとの反応)、アミノ基(エポキシ基、酸無水物基な
どとの反応)などを挙げることができる。
【0018】加水分解性基Xの具体例としては、メトキ
シ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、
ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の
アルコキシ基、イソプロペノキシ基等のアルケニルオキ
シ基、フェノキシ基等のアセトキシ基、オキシム基など
を挙げることができる。加水分解・縮合反応性、エマル
ジョン中での安定性から、アルコキシ基、特にメトキシ
基、エトキシ基、イソプロポキシ基を用いるのが好まし
い。
【0019】m,n,p,qは各々0.5≦m≦1.
8、0≦n≦1.0、0<p≦1.5、0≦q≦0.
5、0.5≦m+n≦1.8、0<p+q≦1.5の範
囲を満たす数を表す。即ち、上記シリコーン樹脂は、硬
化過程において、3次元的に強固なシロキサン結合を形
成し、有機溶剤によるアクリル樹脂の溶出、膨潤を防
ぎ、より緻密な複合膜を形成できる程度の架橋性を有す
ることが必要である。非置換一価炭化水素基R1の組成
比率mが0.5より小さい場合、シリコーン樹脂の架橋
密度が高すぎるため、耐クラック性に乏しい。1.8よ
り大きい場合は、逆に架橋密度が低く、シリコーン樹脂
のネットワーク形成が不十分であり、完全硬化してもア
クリル樹脂はシリコーン樹脂ネットワークから容易に溶
けだしてしまうため、不適である。置換一価炭化水素基
R2は必須成分ではないが、アクリル樹脂中に含有され
る反応性置換基と化学結合を形成できる有機基をシリコ
ーン樹脂側に含ませてもよい。縮合反応性基であるシラ
ノール基は、必ず含有していなくてはならない。しか
し、シラノール基量pが1.5を超える場合、保存安定
性が乏しく不適である。また加水分解性基Xは、通常加
水分解後も若干残存しているが、本発明にて使用される
シリコーン樹脂においては、Xの組成比率qは0.5以
下であることが好ましい。0.5を超えると乳化重合
中、及び重合後の保存中に加水分解が進行し、アルコー
ル等の副生物が生成し、エマルジョンを不安定にするた
めである。
【0020】更により緻密で、かつ透明性に優れた複合
膜を形成するためには、アクリル樹脂と複合化されるシ
リコーン樹脂が、以下の分子構造を有することが重要で
ある。
【0021】即ち、(a)式R3−SiZ3で表される構
造単位(T単位)を30〜100モル%含有し、かつこ
のT単位のうち、式R3−Si(OH)Z’2で表される
シラノール基を1個含有する構造単位(T−2単位)を
30〜80モル%含有し(但し、上記式中、R3は置換
又は非置換の一価炭化水素基を示し、ZはOH基、加水
分解性基又はシロキサン残基を示し、Z’はシロキサン
残基を示す。)、数平均分子量が500以上であるシラ
ノール基含有シリコーン樹脂が適する。
【0022】なお、シロキサン残基は、酸素原子を介し
て隣接する珪素原子に結合し、シロキサン結合を形成し
ている置換基のことを意味し、−O−Si≡と表すこと
ができる。
【0023】このようなシリコーン樹脂と、後述するラ
ジカル重合性ビニルモノマーとを含有する混合溶液を乳
化重合して得られるシリコーン−アクリル樹脂複合エマ
ルジョン組成物は、室温で長期間にわたり経時変化せ
ず、更に塗膜は透明性に優れ、耐酸性、耐アルカリ性、
耐有機溶剤性、耐候性に優れた塗膜を形成することが可
能である。
【0024】式 R3−SiZ3で表されるT単位は、シリ
コーン樹脂の架橋度、硬化性に大きく影響を与える構造
単位で、30〜100モル%含有される。含有量が30
モル%未満では、形成される被膜が低硬度となり、また
硬化性も劣るおそれがある。エマルジョン粒子内でビニ
ル重合ポリマーと均一に絡まり合わせ、活性なシラノー
ル基の自由度を制御するためにはシリコーン樹脂により
構造性を付与する必要がある。T単位含有量が50〜1
00モル%の範囲を満たしていれば、シリコーン樹脂は
剛直となり、保存安定性も良好となるため、更に好まし
い。
【0025】この場合、その他の構成単位としては、R
3 3SiZ で表されるM単位0〜10モル%、R3 2SiZ
2で表されるD単位0〜50モル%、又はSiZ4で表さ
れるQ単位0〜30モル%を併用してもよい。硬化被膜
の硬度を更に高めるためには、主としてQ単位を併用す
るとよく、逆に硬化被膜に柔軟性を付与する目的には、
D単位を併用するのがよい。
【0026】上述したように、上記R3−SiZ3のT単
位中、R3−Si(OH)Z’2で表されるシラノール基
を1個だけ含有するT−2単位を30〜80モル%含有
していることが好ましいが、この場合、上述したよう
に、Z’で示されるシロキサン残基は−O−Si≡と表
すことができるから、T−2単位は、R3−Si(O
H)(−O−Si≡)2と表すこともできる。
【0027】ここで、R3の置換又は非置換の一価炭化
水素基としては、上述したR1、R2と同様のものを挙げ
ることができるが、シリコーン樹脂中の有機置換基R3
は、塗膜の耐候性をより一層高めるためには50モル%
以上がメチル基であることが好ましい。
【0028】なお、シリコーン樹脂の分子量は、数平均
分子量で500以上が好ましいが、より好ましくは80
0〜3000であり、重量平均分子量で800〜100
00程度が適する。
【0029】上記シリコーン樹脂は、上記条件を満たし
ていれば、いかなる方法で製造しても良い。具体的製造
方法を以下に述べる。製造するための原料としては、上
述した加水分解性基や塩素等の加水分解性基を1個、2
個、3個又は4個含有し、上記条件を満たす有機置換基
を有するシラン化合物であればいかなるものも使用可能
である。このようなシラン化合物としては、ビニルトリ
クロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ
エトキシシラン、ビニルメチルジクロルシラン、ビニル
メチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラ
ン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、3−グリシド
キシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプ
ロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル
メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメ
チルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロ
ピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプ
ロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシ
プロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリ
ロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4−ビニルフ
ェニルトリメトキシシラン、3−(4−ビニルフェニ
ル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニル
メチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメ
トキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラ
ン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−
アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−ア
ミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−
メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプ
トプロピルトリエトキシシエラン、3−メルカプトプロ
ピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピル
メチルジエトキシシランなどの所謂シランカップリング
剤以外に、テトラクロルシラン、テトラメトキシシラ
ン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メ
チルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メ
チルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシ
ラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソプロ
ペノキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジ
メトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチル
ジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、
ジメチルジイソプロペノキシシラン、トリメチルクロル
シラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキ
シシラン、トリメチルイソプロペノキシシラン、エチル
トリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピ
ルトリクロルシラン、ブチルトリクロルシラン、ブチル
トリメトキシシラン、ヘキシルトリクロルシラン、ヘキ
シルトリメトキシシラン、デシルトリクロルシラン、デ
シルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、
フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリクロ
ルシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、プロピ
ルメチルジクロルシラン、プロピルメチルジメトキシシ
ラン、ヘキシルメチルジクロルシラン、ヘキシルメチル
ジメトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フ
ェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジクロルシ
ラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルフェニル
クロルシラン、及びこれらの部分加水分解物などが、使
用可能なシラン化合物として挙げられる。なお、加水分
解性基が塩素等のハロゲン原子の場合は全て加水分解さ
せ、シリコーン樹脂中に残存させないことが好ましい。
操作性、副生物の溜去のし易さからは、アルコキシシラ
ンが好ましく、特にメトキシシラン或いはエトキシシラ
ンを使用するのがより好ましい。使用可能な有機珪素化
合物はこれに限定されるものではない。これらのシラン
化合物の1種又は2種以上の混合物を使用しても良い。
【0030】これら列挙した加水分解性シラン化合物の
加水分解方法は、以下に示すような方法で行うことが好
ましい。即ち、加水分解性シラン化合物を水溶液中で加
水分解することにより得られるシリコーン樹脂は、加水
分解残基をほとんど含まず、シラノール基を豊富に含有
する特徴を有する。実質的に有機溶剤をほとんど含有し
ない親水性条件で加水分解を実施すると、本発明を特徴
づけるT−2単位を多量に含有する構造性に富む特異な
シリコーン樹脂が得られる。このシリコーン樹脂は、以
下の各工程を経て調製される。
【0031】まず、第一の過程では、前述した各種加水
分解性有機シラン化合物を、pH=1〜7の水溶液中で
加水分解・縮合する過程である。加水分解に使用する水
の量は、上記諸条件を満足する組成に配合したシラン化
合物或いはその混合物100重量部に対して50〜50
0重量部使用するのが良い。50重量部未満では反応系
内の水量が少ないため、前述したシラノール基の反応性
の制御が難しく、構造性の付与が不可能な場合が生じ
る。また、500重量部を超えると原料のシラン濃度が
低すぎ、縮合反応が遅くなってしまうおそれが生じる。
加水分解は水溶液にシラン化合物を加え、撹拌し行う
が、加水分解、特に初期の加水分解を促進させるため
に、加水分解用触媒を添加しても良い。加水分解触媒
は、シラン化合物を添加する前に水溶液に添加しても良
いし、シラン化合物を分散させた後の分散液に添加して
も良い。加水分解触媒としては、従来公知の触媒を使用
することができ、添加した水溶液がpH=1〜7の酸性
を示すものを適用するのが良い。特に、酸性のハロゲン
化水素、カルボン酸、スルフォン酸、酸性或いは弱酸性
の無機塩、イオン交換樹脂等の固体酸などが好ましい。
具体例としては、フッ化水素、塩酸、硝酸、硫酸、酢
酸,マレイン酸に代表される有機酸、メチルスルフォン
酸、表面にスルフォン酸基又はカルボン酸基を有するカ
チオン樹脂等が挙げられる。加水分解触媒を使用する場
合、その添加量は珪素原子上の加水分解性基1モルに対
して0.001〜10モル%の範囲であることが好まし
い。
【0032】一方、上記シリコーン樹脂と共に用いられ
てシリコーン樹脂含有アクリルエマルジョン組成物を形
成するラジカル重合性ビニルモノマーとしては公知のも
のが使用可能であるが、その例としては、(a)アクリ
ル酸又はメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イ
ソプロピル、ブチル、イソブチル、オクチル、2−エチ
ルヘキシル、ラウリル、ステアリル又はシクロヘキシル
エステルなどの(メタ)アクリル酸エステル、(b)ア
クリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などのカルボ
キシル基又はその無水物含有ビニルモノマー、(c)2
−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロ
キシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル
基含有ビニルモノマー、(d)(メタ)アクリルアミ
ド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メト
キシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチ
ル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アク
リルアミドなどのアミド基含有ビニルモノマー、(e)
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチル
アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有
ビニルモノマー、(f)メトキシエチル(メタ)アクリ
レート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのア
ルコキシル基含有ビニルモノマー、(g)グリシジル
(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテルなど
のグリシジル基含有ビニルモノマー、(h)酢酸ビニ
ル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマ
ー、(i)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチ
レンなどの芳香族ビニルモノマー、(j)(メタ)アク
リロニトリルなどのシアン化ビニルモノマー、(k)塩
化ビニル、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニルモノマ
ー、(l)ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレ
ート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチ
ロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの1分子
中にラジカル重合性不飽和基を2個以上含有するビニル
モノマー、(m)エチレンオキサイド基の数が1〜10
0個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレー
トなどの(ポリ)オキシエチレン鎖含有ビニルモノマ
ー、(n)片末端に(メタ)アクリロキシプロピル基を
含有するジメチルポリシロキサン、片末端にスチリル基
或いはα−メチルスチリル基を含有するジメチルポリシ
ロキサンなどの片末端にラジカル重合性官能基を有し、
シロキサン単位が1〜200個のジオルガノポリシロキ
サン、(o)ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエ
トキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニル
メチルジエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシ
シラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキ
シシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエト
キシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチル
ジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロヒル
メチルジエトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメト
キシシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリ
メトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキ
シシランなどのラジカル重合性官能基を含有するシラン
化合物等を具体例として例示することができる。
【0033】これらの中で、ラジカル重合性ビニルモノ
マー中の炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)
アクリル酸アルキルエステルの含有量が1〜100モル
%であることが好ましい。1モル%未満の含有量では耐
薬品性などの特性が得られないことがある。更に好まし
くは30〜99モル%の範囲を満たすのが好ましい。硬
化被膜に耐溶剤性又は耐薬品性などの特性を付与する場
合には、架橋可能な官能基を含有するラジカル重合性ビ
ニルモノマーを共重合させるのがよく、特に縮合反応に
よりシロキサン結合を形成できる(o)に示されるラジ
カル重合性官能基を含有するシラン化合物、及びカルボ
ン酸/エポキシ基の開環反応による架橋が可能なエポキ
シ官能基を有する(g)に分類されるグリシジル(メ
タ)アクリレート、グリシジルアリルエーテルなどのグ
リシジル基含有ビニルモノマーが好適であり、本系では
他方に使用する樹脂がシラノール基を含有するシリコー
ン樹脂であるので、シラン化合物の方がより一層適して
いる。この場合、このシラン化合物としては、特に下記
一般式(2)で示されるビニル重合性官能基含有加水分
解性シランが使用される。
【0034】
【化1】 式中、R3は水素原子又はメチル基、R4は炭素数1〜1
0の酸素原子、−COO−基などを介在してもよいアル
キレン基、アリーレン基、アルキレンアリーレン基等の
二価の有機基、rは0,1又は2を示し、R1,Xは上
記と同様の意味を示す。
【0035】R4の具体例としては、下記のものを例示
することができる。
【0036】
【化2】
【0037】上記ビニル重合性官能基含有加水分解性シ
ランの含有量は、ラジカル重合性ビニルモノマー全体の
0.01〜10モル%、特に0.1〜5モル%が好まし
い。少なすぎると耐溶剤性、耐薬品性の発現が不十分と
なり、多すぎると高架橋しすぎて、被膜にクラックが発
生したりするため不適当となる場合がある。
【0038】なお、表面に潤滑性を付与したい場合には
(n)に例示されている片末端にラジカル重合性官能基
を含有するジオルガノポリシロキサンを共重合するのが
よい。
【0039】また、第1成分のシリコーン樹脂100重
量部に対して、このラジカル重合性ビニルモノマーは2
5〜233重量部の範囲で使用する。25重量部未満で
は、造膜性及び耐薬品性が不十分となることがあり、2
33重量部を超過すると、耐候性及び耐水性が不足する
ことがある。更に好ましくは、このラジカル重合性ビニ
ルモノマーを42〜186重量部の範囲で使用するのが
よい。
【0040】本発明で用いるシリコーン樹脂含有アクリ
ルエマルジョン組成物は、上記シリコーン樹脂とラジカ
ル重合性ビニルモノマーとを乳化重合して得られる乳化
重合物であるが、この乳化重合は、界面活性剤を用い、
ラジカル重合開始剤を使用することによって行うことが
できる。この場合、乳化重合に使用する界面活性剤とし
ては、従来公知のノニオン系、カチオン系、アニオン系
各種界面活性剤、及びラジカル重合可能な官能基を含有
する反応性乳化剤が適用可能である。ポリオキシエチレ
ンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェ
ニルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステ
ル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタ
ンエステルなどのノニオン系界面活性剤、アルキルトリ
メチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアン
モニウムクロライドなどのカチオン系界面活性剤、アル
キル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキル
アリルスルフォン酸塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩
などのアニオン系界面活性剤、アミノ酸型、ベタイン型
などの両性イオン型界面活性剤、特開平8−27347
号公報中に記されている分子中にスルフォン酸塩、ポリ
オキシエチレン鎖、第4級アンモニウム塩などの親水性
基を含有するラジカル重合可能な(メタ)アクリレー
ト、スチレン、マレイン酸エステル化合物などの誘導体
を含む各種反応性界面活性剤を示すことができる。これ
らの界面活性剤は1種又は2種以上を使用してもよい。
界面活性剤は、有効成分の0.5〜15重量%使用する
のが好ましく、特には1〜10重量%使用するのが良
い。特にエマルジョンの安定性を確保する観点からは、
使用する界面活性剤の一部或いは全部に、上記反応性界
面活性剤を使用するのが良い。
【0041】次に、ラジカル重合開始剤としては、過硫
酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化
水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチ
ルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキシド、2,
2’−アゾビス−2−[2−N−ベンジルアミジノ]プ
ロパン塩酸塩等の水溶性タイプ、ベンゾイルパーオキサ
イド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジブチルパー
オキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネー
ト、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオ
キシオクトエート、アゾイソブチロニトリル等の油溶性
タイプ、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコ
ルビン酸等の還元剤を併用したレドックス系などを使用
することができる。この重合開始剤の使用量は、ラジカ
ル重合性ビニルモノマーに対して、0.1〜10重量%
使用すればよく、好ましくは0.5〜5重量%使用する
のが良い。
【0042】上記エマルジョン組成物の製造方法につい
て更に具体的に述べると、好適な方法は、以下の2方法
に大別される。
【0043】第1の方法は、第1の工程でシラノール基
を含有する単独では水不溶性のシリコーン樹脂溶液から
有機溶剤を溜去し、実質的に有効成分のみにし、第2の
工程で有機溶剤を除去したシリコーン樹脂をラジカル重
合可能なビニルモノマー化合物に添加・溶解することに
よりその溶液とし、第3の工程で界面活性剤を使用して
第2の工程で調製したシリコーン樹脂含有ビニルモノマ
ー溶液を乳化重合してエマルジョンとする方法である。
溶剤を溜去する工程では、活性の高いシラノール基を温
存するため、できるかぎり低温で除去するのがよい。従
って、この方法は、一度有機溶剤を分離するため、比較
的シラノール基含有量の少ない安定性に優れるシリコー
ン樹脂を用いる場合に適している。必要に応じて、比較
的高沸点のラジカル重合性ビニルモノマーを共存させた
状態で有機溶剤を溜去する、ラジカル重合性ビニルモノ
マーを溶剤の代わりとする所謂溶剤置換法を採用しても
よい。乳化重合する方法としては、一括して乳化した
後、重合する一括仕込法、ラジカル重合性ビニルモノマ
ー含有溶液或いはその乳化液を連続追加しながら重合す
る単量体添加法など従来公知の種々の方法が適用可能で
ある。また、乳化液の一部を予め重合した後、残りの乳
化液を追加しながら重合するシード重合法、更にはコア
とシェルのモノマー組成を変えたコア/シェル重合法も
適用できる。
【0044】ラジカル重合性ビニルモノマー含有溶液の
乳化液は、ラジカル重合性ビニルモノマー含有溶液を界
面活性剤水溶液に添加し、ホモミキサー或いは高圧ホモ
ジナイザーを使用して乳化することが好ましい。乳化重
合は10〜90℃、好ましくは30〜80℃の温度で通
常3〜8時間で完結する。
【0045】第2の方法は、下記工程、即ち、(i)加
水分解性シラン化合物をpH=1〜7の水溶液中で加水
分解し、上述したシラノール基含有シリコーン樹脂を含
む反応混合物を得る工程、(ii)この反応混合物から
加水分解副生成物を系外に除去し、主としてシラノール
基含有シリコーン樹脂と水を含有する系にする工程、
(iii)上記主としてシラノール基含有シリコーン樹
脂と水からなる系に、ラジカル重合性ビニルモノマーを
添加し、シラノール基含有シリコーン樹脂を上記ビニル
モノマーに溶解し、残存する加水分解副生成物及び水か
らなる層を除去する工程、(iv)このシリコーン樹脂
含有ラジカル重合性ビニルモノマー溶液を界面活性剤の
存在下で乳化重合する工程によってエマルジョン組成物
を得る方法である。更に詳細には、この第2の方法は、
第1の工程で加水分解性シラン化合物を水中で加水分解
し、更に縮合重合させ、分子末端にシラノール基を含有
する上記式(1)のシリコーン樹脂を含む反応混合物を
得、第2の工程でこの反応混合物から加水分解により副
生したアルコール等の有機溶剤、その他の加水分解副生
物を溜去し、式(1)のシラノール基含有シリコーン樹
脂成分と水のみとし、ここに第3の工程でラジカル重合
可能なビニルモノマー化合物を添加し、水系に分散或い
は不溶な状態で存在するシリコーン樹脂をビニルモノマ
ー化合物中に溶解させ、シリコーン樹脂を含有するラジ
カル重合性ビニルモノマー溶液として水層から分離し、
更に第4の工程で界面活性剤を使用して、第3の工程で
調製したシリコーン樹脂含有ラジカル重合性ビニルモノ
マー溶液を乳化重合する方法である。この方法では、工
程の途中でシリコーン樹脂単独で存在する状態がないた
め、反応活性に富むシラノール基の縮合を抑制すること
が可能である。従って、この方法は、シラノール基を豊
富に含有するが、水に不溶なシリコーン樹脂の場合に適
している。また、この水中で加水分解・縮合させたシリ
コーン樹脂は、有機溶剤中で調製した同一組成のシリコ
ーン樹脂と比較して、より高硬度で、可撓性に富む被膜
を与え、硬化性にも優れるため、好ましい方法であり、
本発明では、この第2の方法によって得られたエマルジ
ョン組成物を用いることが好ましい。シリコーン樹脂含
有アクリルエマルジョン組成物は、従来から公知の様々
な方法によって調製することができるが、上述したシリ
コーン樹脂含有アクリルエマルジョン組成物は、これま
でのものとは全く異なるものである。即ち、上記のよう
な加水分解・縮合方法によって生成したシリコーン樹脂
を、上記のような乳化重合法にてアクリル樹脂と複合化
させることにより、均一、透明性に優れた緻密な塗膜を
形成することが初めて可能となったものである。
【0046】ここで、上記エマルジョン組成物は、乳化
重合を実施する以前に、単独では水に不溶なレベルまで
重縮合させたシリコーン樹脂の溶液から、加水分解性シ
ラン化合物を加水分解する際に副生するアルコールなど
を含めた有機溶剤を可能な限り除去し、少量の被膜形成
助剤を添加した系で更にラジカル重合性ビニルモノマー
の溶液に変換したものを乳化重合に供することにより、
従来シリコーン樹脂の溶剤として多用されていたメタノ
ール等の低沸点有機溶剤やトルエンに代表される芳香族
有機溶剤を実質的に含有しないエマルジョンが得られ
る。なお、実質的に含有しないとは、シラノール基含有
シリコーン樹脂とラジカル重合性ビニルモノマーとの合
計量100重量部に対して5重量%以下ということであ
り、更に好ましくは2重量%以下である。
【0047】本発明において、第一層を形成するシリコ
ーン−アクリル樹脂複合膜は、上記シリコーン樹脂含有
アクリルエマルジョン組成物を主成分とし、硬化触媒、
被膜形成助剤、防腐剤、凍結防止剤等を含有したものを
硬化することによって形成することができる。硬化触媒
としては従来公知の縮合触媒であるものを使用すること
ができる。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナト
リウム、ぎ酸ナトリウム、n−ヘキシルアミン、トリブ
チルアミン、ジアザビシクロウンデセンのごとき塩基性
化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチ
ルチタネート、アルミニウムトリイソブトキシド、アル
ミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチル
アセトナート、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウ
ム、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナ
ート、鉄アセチルアセトナ一ト、スズアセチルアセトナ
ート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレ
ートのごとき含金属化合物類;p−トルエンスルホン
酸、トリクロル酢酸のごとき酸性化合物類、及びこれら
のエマルジョンなどが挙げられる。
【0048】また、被膜形成助剤は水に可溶で、大部分
の水分が気化した後も被膜中に残存し、完全硬化するま
で被膜に流動性を付与することにより高いレベリング性
を維持するように機能するものである。特に、形成され
るアクリル系ポリマーのガラス転移点が高い場合に有効
である。従って、水に可溶で沸点が100℃以上のもの
は全て含まれ、1−ブタノール、イソブチルアルコー
ル、2−ペンタノール、3−ペンタノール、イソペンチ
ルアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メチル−
3−メトキシブタノール等のアルコール類、1,2−プ
ロパンジオール、1,3−ブタンジオール、4−ブタン
ジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタン
ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グ
リセリン、トリメチロールプロパン等のポリオール類、
2−ブトキシエタノール、2−フェノキシエタノール、
2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルア
セタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルア
セタート等のエチレングリコール誘導体、1−メトキシ
−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノー
ル、1−メトキシ−2−メチルエチルアセタート、1−
エトキシ−2−メチルエチルアセタート、ジプロピレン
グリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテ
ル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプ
ロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等の
プロピレングリコール誘導体、3−メトキシブチルアセ
タート等のブチレングリコール誘導体、シクロヘキサノ
ン等のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブ
チロラクトン、炭酸プロピレン、ジブチルフタレート等
のエステル類等を例示することができる。特に、2−エ
トキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセター
ト、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセター
ト、1−エトキシ−2−メチルエチルアセタート、ジプ
ロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等が
レベリング性の点から好ましい。これらの有機溶剤は、
メタノールやエタノール等の低沸点アルコール類と比較
して水溶性に劣るため、エマルジョンの安定性を損なわ
ず、均一な被膜の形成にのみ寄与する。この被膜形成助
剤は、乳化重合前のビニルモノマー溶液に添加しても良
いし、乳化重合後のエマルジョンに添加してもその作用
は変わらない。添加量は(シラノール基含有シリコーン
+ラジカル重合性ビニルモノマー)の合計量100重量
部に対して0〜20重量部であるのが好ましい。20重
量部を超えて添加すると、硬化終了後も被膜中に残存す
る被膜形成助剤の量が多くなるため、被膜の特性が不十
分なものとなり好ましくない。より好ましくは、5〜2
0重量部の範囲を満たす場合である。更に好ましい範囲
は5〜15重量部である。
【0049】なお、上記エマルジョン組成物には、pH
を調節するための緩衝剤となる酸・塩基性化合物の組み
合わせ、例えば酢酸と酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナ
トリウムとクエン酸などを添加してもよい。その他、優
れた塗膜性能を付与する目的で体質顔料、着色顔料及び
防食顔料、染料、レベリング剤なども使用できる。この
場合、上記エマルジョン組成物は、pH3〜9、特に4
〜8に調整することが好ましい。
【0050】本発明においては、上記シリコーン−アク
リル樹脂複合膜の第一層上に光触媒含有層の第二層を形
成する。
【0051】ここで、第二層に用いる光触媒としては、
塗膜の表面に存在し、太陽光を受けることにより表面を
親水性に変化させることのできる程度の、高い光触媒活
性を有する粒子が使用される。光触媒として高い活性を
有するものとしては、化学的に安定であり、安価である
ことを考慮すると酸化チタンが好ましい。酸化チタンの
粒子型は問わない。酸化チタン粒子は分散媒に分散した
ゾルの他、水、溶剤を含有したペースト或いは粉体を使
用することができる。ゾルの分散媒としては水、メタノ
ール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノー
ル、イソブタノール等のアルコール類、メチルエチルケ
トン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が好まし
い。酸化チタンの光触媒活性は、粒子の平均粒径が小さ
いほど高く、粒径0.1μm以下のものを使用するのが
良い。ここで言う平均粒径とは、粉末ならX線回折した
ときの結晶の最大ピークの積分幅からScherrer
式により求められる値、分散液なら動的光散乱法にて測
定された値である。
【0052】これらの光触媒活性な粒子は分散媒等の影
響により凝集を起こし、分散安定性に乏しくなる場合が
ある。この場合、部分的に表面処理し安定化させること
ができる。表面処理は加水分解性を有するケイ素、アル
ミニウム、ジルコニウム等を添加し、粒子の表面を変性
することによって達成される。但し、粒子の表面全てを
被覆してしまうと光触媒活性は抑制されるので、表面処
理は部分的に行われねばならず、膜の防汚性を十分発現
する程度にとどめる。
【0053】第二層の光触媒含有層を形成する塗布液と
しては、光触媒の微粒子を水及び/又は有機溶剤に分散
した液が使用できる。有機溶剤の例としては、メタノー
ル、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコー
ル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、そ
の他エステル類、エーテル類、ジメチルホルムアミド等
が使用できる。第一層と強固に結合し、塗膜としての耐
久性を高めるため、シリコーン樹脂を含有することも可
能である。この場合、光触媒とシリコーン樹脂の含有比
率は任意に決定することができるが、好ましくはシリコ
ーン樹脂100重量部に対し、光触媒を固形分で10〜
400重量部使用するのがよい。なお、シリコーン樹脂
としては、上述したシリコーン樹脂を使用することも可
能であるが、これに限られず、公知のシリコーン樹脂を
用いることができる。
【0054】また、光触媒酸化チタンとシリカ分散液と
の混合液から形成される第二層は、速やかに親水性を発
現する傾向にあり、好ましい。この場合、光触媒酸化チ
タンは、シリカ固形分100重量部に対し40〜190
0重量部の割合で使用することが好ましい。
【0055】更に、光触媒粒子は本来、光照射により生
ずる強力な酸化力により脱臭力、抗菌力を発現するが、
これらの機能性を更に高めるために銀、銅、白金、金、
パラジウム、鉄、ニッケル、亜鉛より選ばれた1種又は
2種以上の金属元素を含む物質を含有させることができ
る。これらの金属元素を含む物質の含有量は、硬度、可
撓性等の膜物性に影響を与えない程度である必要があ
り、酸化チタン100重量部に対し20重量部以下であ
ることが好ましい。
【0056】なお、先に述べたように、光触媒酸化チタ
ンの酸化分解能と親水化能とは、別の原理で発現してい
ると考えられているが、両者をはっきり区別して扱うこ
とは極めて困難である。親水性表面に油分などの有機物
が付着すれば、当然接触角は上昇するが、光触媒により
生成したラジカル種によって有機物の分解が起これば、
親水性も長期にわたり維持できることとなり、塗膜表面
の防汚性に大きく寄与していると考えられるからであ
る。
【0057】本発明の塗膜において、塗膜厚さは適宜選
定されるが、第一層は0.01〜100μm、特に0.
1〜50μmであることが好ましく、また第二層は0.
5μm以下、特に0.1μm以下であることが好まし
い。
【0058】塗膜の形成方法も制限されないが、以下の
工程を採用することができる。即ち、上記エマルジョン
組成物等のシリコーン−アクリル樹脂複合膜を形成可能
なコーティング液を第一層として基材に塗布する工程、
塗布した膜を風乾、或いは加熱硬化することにより部分
的又は完全に硬化させる工程、シリコーン樹脂層の上に
光触媒含有塗布液を塗布する工程、室温乾燥或いは加熱
して光触媒を第一層に固着させる、或いはシリコーン樹
脂を架橋させて光触媒含有塗膜を形成させることによっ
て第二層とする工程を順次行うことにより達成される。
基材と第一層のシリコーン−アクリル樹脂複合膜との密
着性を向上させるため、プライマー層を形成しても良い
し、基材表面にコロナ放電等の処理を行っても良い。基
材への塗布方法としては、スプレーコーティング法、ロ
ールコーティング法、ディップコーティング法、スピン
コーティング法等があるが、そのいずれを用いてもよい
し、それ以外の方法でもよい。塗膜の硬化方法は、空気
中に放置して風乾させても良いし、加熱しても良い。加
熱温度、時間なども限定されるものではないが、通常は
室温〜250℃、10分〜2時間加熱することにより硬
化塗膜が形成される。第一層の硬化条件を調整し、部分
的に未架橋膜とすることにより、第二層との密着性を向
上させることも可能である。この場合、具体的には第一
層の硬化を80〜130℃、1〜10分程度で行うこと
により、タック感のない程度に硬化しながら一部未硬化
状態としておき、第二層を塗布後、硬化させることによ
って光触媒を一部埋め込んだ状態とすることにより、硬
度及び密着性に優れた塗膜を得ることができる。これら
の塗膜に太陽光等の紫外線を含む光を照射すると、数日
で表面の水に対する接触角が60度以下、場合によって
は20度以下に低下し、親水性となる。接触角が60度
を超えると、雨水による汚染物質の除去効果が十分機能
せず、期待される防汚性が発現しない。紫外線を含む光
としては、波長が400nm以下の光を含んだものであ
れば光源、強度等は問わず、使用することができ、例え
ば、太陽光等の大気中の紫外線や蛍光灯の紫外線、紫外
線ランプ等の紫外線発生装置を使用することができる。
従って、太陽光が当たる場所であれば、数日〜数週間で
塗膜表面は親水化される。室内での使用の場合、最低1
μW/cm2の紫外線を含む光が照射されることが好ま
しい。1μw/cm2以下では表面親水化が達成されな
かったり、或いは極めて長時間を要することがある。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、第一層の下塗り層に全
樹脂固形分に対しシリコーン樹脂を30〜80重量%含
有するシリコーン−アクリル樹脂複合膜を形成し、その
上に光触媒含有層を形成したことにより、耐候性と基材
への密着性、可撓性、耐アルカリ性の両立が可能とな
る。また、この塗膜は太陽光の照射を受け、塗膜表面が
親水性を発現し、長期間、防汚性、抗菌性を維持するこ
とができる。
【0060】この場合、第一層に上述したシリコーン樹
脂含有アクリルエマルジョン組成物を使用することによ
り、これは、水分散エマルジョン塗料であり、地球環
境、安全性、作業者の健康等に配慮したものであると共
に、従来のシリコーン−アクリル樹脂塗料とは異なり、
シリコーン樹脂の分子構造を制御することによりシリコ
ーン樹脂の含有量を高く保ちつつ、透明、均一なシリコ
ーン−アクリル樹脂複合膜を形成することができる。
【0061】
【実施例】以下、調製例、実施例及び比較例を示し、本
発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制
限されるものではない。なお、以下の例において部は重
量部を示す。
【0062】[調製例1]2Lのフラスコに、メチルト
リメトキシシラン408g(3.0モル)を仕込み、窒
素雰囲気下、0℃で水800gを加えてよく混合した。
ここに、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液216gを4
0分間かけて滴下し加水分解反応を行った。滴下終了
後、10℃以下で1時間撹拌した後、室温で3時間撹拌
して加水分解反応を完結させた。次いで、加水分解で生
成したメタノール及び水を70℃×60Torrの条件
下で1時間減圧溜去し、1136gの溶液を得た。溶液
は白濁しており、1昼夜静置すると2層に分離した。水
に不溶となったシリコーン樹脂は沈降した。
【0063】この白濁溶液から一部サンプリングし、水
不溶となったシリコーン樹脂をメチルイソブチルケトン
を用いて溶解させ、水層から分離した。脱水処理後、T
HFに溶媒置換し、メチルグリニャールを反応させ、シ
ラノール基を定量したところ、シラノール基の含有量は
11.0重量%(対シリコーン樹脂)であった。またG
PC測定の結果、このシリコーン樹脂の数平均分子量は
1.8×103であった。
【0064】このシラノール基含有シリコーン樹脂の構
造は、赤外吸収スペクトル(IR)分析、及び核磁気共
鳴スペクトル(29Si NMR)分析により決定した。
風乾により溶剤を除去した被膜の赤外吸収スペクトル
で、3200cm-1を中心にシラノール基に由来する幅
広い吸収が観測される一方、メトキシ基の炭素−水素結
合の伸縮振動に由来する2840cm-1付近に吸収は観
測されなかった。別法として、残存メトキシ基をアルカ
リクラッキング法で溜去し定量することを試みたが、メ
タノールは検出されず、赤外吸収スペクトル分析の結果
が裏付けられた。この結果から、メトキシ基は完全に加
水分解されていると判断された。
【0065】29Si NMR分析では、以下に示すT単
位の各構造は、出現する化学シフトの位置違いから判別
可能である。 T−1単位 CH3−Si(−O−Si≡)1(−OH)2 −46〜48ppm T−2単位 CH3−Si(−O−Si≡)2(−OH)1 −54〜58ppm T−3単位 CH3−Si(−O−Si≡)3 −62〜68ppm
【0066】このシラノール基含有シリコーン樹脂の29
Si NMR分析を行ったところ、T−1単位を2モル
%、T−2単位を42モル%、T−3単位を56モル%
含んでいるとわかった。以上の分析結果から、得られた
シリコーン樹脂は以下の平均組成式で表すことができ
る。
【0067】(CH3)1.0Si(OH)0.44O1.28 この組成式から算出されるシラノール基含有量は10.
5重量%であり、実測値とも良く一致していた。
【0068】次に、この水溶液にメタクリル酸メチル
(MMA)210g及びアクリル酸ブチル(BA)90
gを加え、沈降したシリコーン樹脂を溶解し、シリコー
ン樹脂含有MMA/BA溶液として水層から分離した。
分離後の溶液に、水を500g加え、10分間十分撹拌
混合した後静置し、水層を分離した。有機層中に含有さ
れるメタノールをGCで定量したところ、本溶液中に
0.2重量%検出された。最終的に不揮発分40.2重
量%(105℃×3時間)のMMA/BA溶液(A)が
505g得られた。
【0069】[調製例2]調製例1において、メチルト
リメトキシシランの代わりに、メチルトリメトキシシラ
ン388g(2.85モル)及びジメチルジメトキシシ
ラン18g(0.15モル)を使用し、水400gと1
N酢酸水4gを用いて加水分解し、MMA210g及び
BA90gの代わりにMMA110g、BA110gを
使用して水層から分離するように変更する以外は、調製
例1と同様にして調製した。
【0070】得られたシラノール基含有シリコーン樹脂
を同様に分析したところ、T−2単位を38モル%含有
し、数平均分子量は1.5×103であった。また平均
組成式は以下のように表される。
【0071】(CH3)1.05Si(OH)0.40O1.28 また、シラノール基量は9.6重量%であった。
【0072】最終的に、不揮発分49.7%(105℃
×3時間)のMMA/BA混合溶液(B)411gを得
た。
【0073】[調製例3]5Lフラスコに、水1300
g、メタノール200g、トルエン800gを仕込み、
室温で撹拌しながら、メチルトリクロルシラン89.7
g(0.6モル)とフェニルトリクロルシラン507.
6g(2.4モル)の混合物を1時間かけて滴下し、加
水分解させた。更に、30℃で3時間撹拌することによ
って加水分解を完結させた。その後静置して塩酸を含む
水層を分離除去した。次いで残った有機層に1Lの水を
加え、10分間撹拌し、静置した後水層を分離除去する
という水洗操作を2回繰り返した。得られたシリコーン
樹脂溶液を50℃×50Torrの条件下で有機溶剤を
減圧溜去し、粉体化したシリコーン樹脂を329g得
た。
【0074】得られたシラノール基含有シリコーン樹脂
を同様に分析したところ、T−1単位を1モル%、T−
2単位を16モル%含有し、数平均分子量は1.9×1
03であった。シラノール基量は2.6重量%であっ
た。また平均組成式は以下のように表される。
【0075】(C6H5)0.80(CH3)0.2Si(OCH
3)0.07(OH)0.40O1.27 このシリコーン樹脂にメタクリル酸メチル(MMA)2
00g及びアクリル酸ブチル(BA)23gを加え、最
終的に不揮発分59.0%(105℃×3時間)のMM
A/BA溶液(C)を552g得た。
【0076】[調製例4]撹拌機、コンデンサー、温度
計及び窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水
を730部、pH緩衝剤として炭酸ソーダを0.47
部、ホウ酸を4.70部仕込み、撹拌しながら60℃に
昇温した後窒素置換した。これにロンガリット1.75
部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの1%水溶液
0.12部、硫酸第1鉄の1%水溶液0.04部を添加
すると同時に、調製例1で得たシリコーン樹脂含有MM
A/BA溶液(A)700部、γ−メタアクリロキシプ
ロピルメチルジメトキシシラン7部、t−ブチルハイド
ロパーオキサイド(純分69%)2.1部、反応性界面
活性剤アクアロンRN−20(第一工業製薬(株)製/
商品名)14.0部、アクアロンHS−10(第一工業
製薬(株)製/商品名)7.0部からなる混合液を、重
合容器内の温度を60℃に保持しながら、2.5時間か
けて均一に添加し、更に60℃にて2時間反応させて重
合を完了させた。ここに、2−ブトキシエチルアセター
ト40部を添加し、十分撹拌混合し、エマルジョン(E
m−1)を完成させた。
【0077】得られたエマルジョンEm−1の固形分濃
度は50.1%であり、アンモニア水を添加してpHを
7.0に調整した。
【0078】[調製例5]ガラス製ビーカーに、調製例
2で得られたシリコーン樹脂含有MMA/BA混合溶液
(B)を700部、γ−メタアクリロキシプロピルメチ
ルジメトキシシラン7部、反応性界面活性剤アクアロン
RN−20(第一工業製薬(株)製/商品名)14.0
部、アクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製/商
品名)7.0部、2−ブトキシエチルアセタート70部
を仕込み、高速撹拌機で撹拌しながら、脱イオン水43
0gをゆっくり加えながらエマルジョン化した。
【0079】撹拌機、コンデンサー、温度計及び窒素ガ
ス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水を230部、
pH緩衝剤として炭酸ソーダを0.47部、ホウ酸を
4.70部仕込み、撹拌しながら60℃に昇温した後窒
素置換した。これにロンガリット1.75部、エチレン
ジアミン四酢酸二ナトリウムの1%水溶液0.12部、
硫酸第1鉄の1%水溶液0.04部を添加すると同時
に、上記で調製したエマルジョンを重合容器内の温度を
60℃に保持しながら、2.5時間かけて均一に添加
し、更に60℃にて2時間反応させて重合を完了させ
た。
【0080】得られたエマルジョン(Em−2)の固形
分濃度は49.9%であり、アンモニア水を添加してp
Hを8.0に調整した。
【0081】[調製例6]シリコーン樹脂含有MMA/
BA混合溶液(B)の代わりに、シリコーン樹脂含有M
MA/BA溶液(C)を用いる以外は、調製例5と同様
に乳化重合することにより、エマルジョン(Em−3)
を合成した。このエマルジョンの固形分濃度は49.2
%であり、アンモニア水を添加してpHを8.0に調整
した。
【0082】[比較調製例1]調製例1において、メタ
クリル酸メチル(MMA)210g、及びアクリル酸ブ
チル(BA)90gの代わりに、メタクリル酸メチル
(MMA)500g、及びアクリル酸ブチル(BA)1
03gを加え、シリコーン樹脂を溶解させ水層と分離す
ることにより、最終的に不揮発分24.6重量%(10
5℃×3時間)のMMA/BA溶液(D)810gを得
た。
【0083】[比較調製例2]調製例1において、メタ
クリル酸メチル(MMA)210g、及びアクリル酸ブ
チル(BA)90gの代わりに、アクリル酸ブチル(B
A)40gを加え、シリコーン樹脂を溶解させ、水層と
分離することにより、最終的に不揮発分85.6重量%
(105℃×3時間)のBA溶液(E)250gを得
た。
【0084】[比較調製例3,4]シリコーン樹脂含有
MMA/BA混合溶液(B)の代わりに、シリコーン樹
脂含有MMA/BA溶液(D)、或いはBA溶液(E)
を用いる以外は、調製例5と同様に乳化重合することに
より、エマルジョン(Em−4,5)を得た。このエマ
ルジョンの固形分濃度は、Em−4で48.8%、Em
−5で50.2%であり、両方ともアンモニア水を添加
してpHを8.0に調整した。
【0085】[実施例1〜6、比較例1〜4]アクリル
フィルム(AF)、ガラス板(GL)を基材とし、調製
例にて合成したエマルジョンを塗布し、表1記載の条件
で硬化し、第一層とした後、水分散チタニアゾル(日産
化学製TA−15(固形分濃度15%)とメタノール分
散シリカゾル(固形分15%)の4:1混合ゾルをエタ
ノールにて8倍希釈した液を塗布、硬化し、第二層とし
て光触媒含有塗膜を形成させた。第一層は硬化後の膜厚
が20μmになるように塗工した。第二層は流し塗りに
て約0.05〜0.1μm程度の膜厚とした。
【0086】これらの塗膜についてサンシャインカーボ
ンウェザーメーターにて促進耐候性試験(2000時
間)を行い、試験前後での塗膜外観、表面の水接触角、
密着性を比較した。塗膜の外観においては、白濁が全く
無い状態を○、白濁,黄変した状態を×と判定した。密
着性については、セロハンテープによる碁盤目試験を行
い、完全密着しているものを○、基材と第一層或いは第
一層と第二層のいずれか一方でも剥離しているものを×
と判定した。
【0087】その結果、第一層にシリコーン樹脂含有量
25重量%のEm−4を用いた場合と、シリコーン樹脂
含有量82重量%のEm−5を用いた場合では、いずれ
も第二層の剥離、離脱が発生し、試験後の塗膜の接触角
は50度以上であり、親水性を維持することはできなか
った。それに対し、シリコーン樹脂含有量が30〜80
重量%の範囲内にあるEm−1〜3は、塗膜外観も良好
であり、長期間にわたり親水性が維持されていた。
【0088】
【表1】
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C09D 151/08 C09D 151/08 183/06 183/06 (72)発明者 山本 昭 群馬県碓氷郡松井田町大字人見1番地10 信越化学工業株式会社シリコーン電子材料 技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に、全樹脂固形分に対しシリコー
    ン樹脂を30〜80重量%含有するシリコーン−アクリ
    ル樹脂複合膜からなる第一層と、その上に光触媒含有層
    からなる第二層が形成されてなることを特徴とする親水
    性塗膜を有する物品。
  2. 【請求項2】 シリコーン−アクリル樹脂複合膜が、 (1)下記平均組成式(1) R1 mR2 nSi(OH)p(X)qO(4-m-n-p-q)/2 (1) (式中、R1は非置換一価炭化水素基、R2は置換一価炭化水素基、Xは加水分解 性基を表す。m,n,p,qは0.5≦m≦1.8、0≦n≦1.0、0<p≦ 1.5、0≦q≦0.5、0.5≦m+n≦1.8、0<p+q≦1.5を満た す数である。) で表される非水溶性のシラノール基含有シリコーン樹脂 100重量部、 (2)ラジカル重合性ビニルモノマー 25〜233重量部 を主成分として含有した液体の乳化重合物からなるシリ
    コーン樹脂含有アクリルエマルジョン組成物の硬化物で
    ある請求項1記載の物品。
  3. 【請求項3】 上記(1)成分のシラノール基含有シリ
    コーン樹脂が、式R3−SiZ3で表される構造単位(T
    単位)を30〜100モル%含有し、かつこのT単位の
    うち、式R3−Si(OH)Z’2で表されるシラノール
    基を1個含有する構造単位(T−2単位)を30〜80
    モル%含有し(但し、上記式中、R3は置換又は非置換
    の一価炭化水素基を示し、ZはOH基、加水分解性基又
    はシロキサン残基を示し、Z’はシロキサン残基を示
    す。)、数平均分子量が500以上であるシラノール基
    含有シリコーン樹脂である請求項2記載の物品。
  4. 【請求項4】 シラノール基含有シリコーン樹脂におけ
    るケイ素原子に結合した全有機置換基中のメチル基の含
    有量が50モル%以上である請求項2又は3記載の物
    品。
  5. 【請求項5】 シリコーン−アクリル樹脂複合膜が、
    (i)加水分解性シラン化合物をpH=1〜7の水溶液
    中で加水分解し、請求項2、3又は4記載のシラノール
    基含有シリコーン樹脂を含む反応混合物を得る工程、
    (ii)この反応混合物から加水分解副生成物を系外に
    除去し、主としてシラノール基含有シリコーン樹脂と水
    を含有する系にする工程、(iii)上記主としてシラ
    ノール基含有シリコーン樹脂と水からなる系に、ラジカ
    ル重合性ビニルモノマーを添加し、シラノール基含有シ
    リコーン樹脂を上記ビニルモノマーに溶解し、残存する
    加水分解副生成物及び水からなる層を除去する工程、
    (iv)このシリコーン樹脂含有ラジカル重合性ビニル
    モノマー溶液を界面活性剤の存在下で乳化重合する工程
    によって得られたシリコーン樹脂含有アクリルエマルジ
    ョン組成物の硬化物である請求項1記載の物品。
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