【発明の詳細な説明】
組換えヒレグリンおよび受容体活性化後のその生物学的機能
本発明は、用途の広い組換えヒレグリン(HRG)の生成およびこれらタンパ
ク質が受容体活性化後に誘起する生物学的機能の幾つかおよび細胞内シグナル伝
達経路に関する。
ヒレグリン(HRG)は、HER4/P180erbB4受容体に結合してそのチ
ロシンリン酸化を引き起こすモザイク状の糖タンパク質である。ヒレグリン(H
RG)[ホームズ(Holmes,W.E.)ら(1992)、Science 256、12
05−1210]、ニューディファレンシエーションファクター(neu differen
tiation factor)(NDF)[ペレス(Peles,E.)ら(1992)、Cell 6
9、205−216;ウェン(Wen,D.)ら(1992)、Cell 69、559
−572およびウェンら(1994)、Mol.Cell Biol.14、1909−1
919]、グリア増殖因子(GGF)[マーチオニ(Marchionni,M.A.)ら(
1993)Nature 362、312−318]、およびアセチルコリン受容体誘
導活性(ARIA)[フォールズ(Falls,D.L.)ら(1993)Cell 72
、801−815]は、相同な多機能タンパク質である。HRGイソ形は、選択
的な(alternative)RNAスプライシングにより単一の遺伝子から生じる。H
RG cDNAは複数のドメインを有する大きな膜貫通前駆体をコードしており
、これらドメインには、免疫グロブリン様ドメイン、幾つかのグリコシル化部位
を有するスペーサードメイン、EGF様ドメイン、種々の長さの膜近傍ドメイン
、膜貫通領域および細胞質ドメインが含まれる。可溶性の成熟HRGは、タンパ
ク質加水分解開裂により細胞表面から放出される。GGF[マーチオニら(19
93)Nature 362、312−318]およびARIA[フォールズら(19
93)Cell 72、801−815]は脳組織から単離されたが、HRGおよび
NDFには存在しないクリングル様ドメインをも含む。αおよびβHRGイソ形
は、EGF様ドメインの第三ループおよび膜近傍ドメインにおいて配列の相違を
示す。HRGのEGF様ドメインは、成長因子のEGFファミリー[EGF、
カーペンター(Carpenter,G.)ら(1979)Ann.Rev.Biochem.、48、
193−216、トランスフォーミング成長因子α、デリンク(Derynck,R.)
ら(1984)Cell 38、287−297、ワクシニアウイルス成長因子、ブ
ロンキスト(Blomquist,C.I.)ら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.US A
81、7363−7367、アンフィレグリン(amphiregulin)、ショヤブ(
Shoyab,M.)ら(1989)Science 243、1074−1076、ヘパリン
結合EGF様成長因子、ヒガシヤマ(Higashiyama,S.)ら(1991)Scien ce
251、936−939、およびベータセルリン(betacellulin)、シング
(Shing,Y.)ら(1993)Science 259、1604−1607]の特徴
である6つのシステイン残基を含む。
HRGはEGF様モチーフを含有するが、EGFR/P170erbB1[ホーム
ズら(1992)、Science 256、1205−1210]には結合しない。
HRGは、最近単離された上皮細胞成長因子受容体ファミリーの成員であるHE
R4/p180erbB4に結合する[プローマン(Plowman,G.D.)ら(1993
)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90、1746−1750;クルスク(Cul
ouscou,J.M.)ら(1993)J.Biol.Chem.268、18407−1841
0およびプローマンら(1993)Nature(ロンドン)366、473−47
5]。このファミリーの他の成員であるHER3/P180erbB3受容体もまた
HRGの受容体であることが報告されている[カラウェイ(Carraway,K.L.)
ら(1994)J.Biol.Chem.269、14303−14306]。HRGは
、最初に提唱されたように[ホームズら(1992)、Science 256、12
05−1210およびペレスら(1992)、Cell 69、205−216]、
HER2/p185erbB2受容体とは直接相互作用はしない。HER2/p18
5erbB2は、リン酸基転移またはHER4および/またはHER3とのヘテロ二
量体形成によりHRG媒体シグナル伝達に間接的に関与する[プローマンら(1
993)Nature(ロンドン)366、473−475およびカラウェイら(1
994)J.Biol.Chem.269、14303−14306]。
HRG/NDFがその受容体に結合すると、その結果としてヒト乳癌腫瘍細胞
が分化することが示されており[ペレスら(1992)、Cell 69、205−
216およびバカス(Bacus,S.S.)ら(1993)、Cancer Res.53、5
251−5261]、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の発現をアップレギ
ュレーションする[バカスら(1993)、Cancer Res.53。5251−5
261]。HRGの生物学的作用は内在性のチロシンキナーゼ活性を有する受容
体により媒体され、HRG結合により自己リン酸化される[プローマンら(19
93)Nature(ロンドン)366、473−475]。受容体チロシンキナー
ゼ、たとえば、上皮細胞成長因子受容体、血小板由来成長因子受容体およびイン
スリン受容体について行われた研究は、リガンド結合後の細胞内シグナル伝達に
おける受容体の自己リン酸化の重要な役割を示している[ウルリッヒ(Ullrich
,A.)ら(1990)Cell 61、203−212およびホワイト(White,M.
F.)ら(1994)J.Biol.Chem.269、1−4]。受容体チロシンキナー
ゼ上の特定の自己リン酸化部位が、Srcホモロジー2(SH2)ドメインを含
有する標的分子の認識構造として働くことが示されている。SH2ドメインは、
種々のシグナル伝達分子および癌遺伝子タンパク質中に認められる約100アミ
ノ酸の保存された非触媒配列である[コッホ(Koch,C.A.)ら(1991)S cience
252、668−674およびソンギャン(Songyang,Z.)ら(199
3)Cell 72、767−778]。SH2ドメイン含有タンパク質は、特定の
フランキングアミノ酸との関連でホスホチロシン残基に高親和性で結合する。た
とえば、ホスファチジルイノシトール(PI)3'キナーゼ(PI3−K)のp
85サブユニット、p21rasGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)、お
よびホスホリラーゼCγ(PLC−γ)はSH2ドメインを含むことが示されて
いる。さらに最近では、見かけの触媒ドメインを欠き、シグナル伝達に関与する
アダプター連結タンパク質として機能すると思われるSH2ドメイン含有タンパ
ク質が記載されている[ローウェンシュタイン(Lowenstein,E.J.)ら(19
92)Cell 70、431−442;ペリッチ(Pelicci,G.)ら(1992)Cell
70、93−104;イーガン(Egan,S.E.)ら(1993)Nature
(ロンドン)363、45−51;スコルニク(Skolnik,E.Y.)ら
(1993)Science 260、1953−1955;ロザキス−アドコック(
Rozakis−Adcock,M.)ら(1993)Nature(ロンドン)363、83−8
5およびゲール(Gale,N.W.)ら(1993)Nature(ロンドン)363、
88−92]。その中の一つであるShcは、SH2配列に対するホモロジーに
基づいてヒトc−fes遺伝子から同定およびクローニングされた[ペリッチら
(1992)Cell 70、93−104]。Shc cDNAは、単一のC末端
SH2ドメインとグリシンおよびプロリンに富むコラーゲン相同領域とを含む4
6kDaおよび52kDaの2つのタンパク質をコードすることが予測された。
Shcでは触媒ドメインは同定されなかった。抗Shc抗体は、広範囲の哺乳動
物細胞で46kDa、52kDaおよび66kDaの3つのタンパク質を認識す
ることが示されている。種々の成長因子およびサイトカインがShcタンパク質
のリン酸化を誘発することが示されている[プロンク(Pronk,G.J.)ら(1
993)J.Biol.Chem.268、5748−5753;ヨコテ(Yokote,K.)
ら(1994)J.Biol.Chem.269、15337−15343;ショーブ(
Schorb,W.)ら(1994)J.Biol.Chem.269、19626−19632
;カットラー(Cutler,R.L.)ら(1993)J.Biol.Chem.268、21
463−21465;バーンズ(Burns,L.A.)ら(1993)J.Biol.Che m
.268、17659−17661およびダメン(Damen,J.E.)ら(199
3)Blood 82、2296−2303]。Shcタンパク質の過剰発現は線維
芽細胞においてトランスフォーメーションした表現型[ペリッチら(1992)Cell
70、93−104]、およびPC12細胞のニューロン分化と関連して
おり[ロザキス−アドコックら(1992)Nature(ロンドン)360、68
9−692]、Shcが細胞増殖制御に関与することを強く示唆している。
本発明は、用途の広い組換えヒレグリン(HRG)の生成およびこれらタンパ
ク質が受容体活性化後に誘起する生物学的機能の幾つかおよび細胞内シグナル伝
達経路に関する。
受容体結合にはHRGのEGF様ドメインで充分であるので、本発明はHRG
−α、−β2または−β3のEGF様ドメインをコードするcDNA断片の、ト
ロンビン開裂部位をコードする配列、ついでヒトIgG1のFc部分をコードす
る配列を含む真核細胞発現ベクター中へのクローニングに関する。本発明はまた
、組換え融合タンパク質rHRG−T−Fcの製造にも関し、該組換え融合タン
パク質は、キメラタンパク質として、またはトロンビン開裂および該分子のFc
部分の除去後のEGF様ドメイン(reHRG)として用いることができる。
本発明は、いずれかの形態の組換えHRGがHER4受容体に結合し該受容体
を活性化すること、およびShcタンパク質がHRG刺激後にチロシンリン酸化
されることを示す。本発明はまた、rHRG−α−T−FcがHER4受容体を
発現するヒト乳癌細胞に結合し、細胞間接着分子−1の発現を誘発することをも
示す。さらに、reHRG−β2はShcタンパク質のリン酸化をチロシン上で
顕著に誘発することから、これらアダプター分子のHRG媒体シグナル伝達にお
ける役割が示唆される。
図1は、rHRG−T−Fc刺激後のHER4受容体のチロシン自己リン酸化
を示す。
図2は、rHRG−α−T−FcのMDA−MB−453細胞への結合を示す
。
図3は、rHRG−α−T−Fcに応答したICAM−1発現の誘発を示す。
図4は、rHRG−β3−T−Fcのトロンビン開裂を示す。
図5は、reHRGに応答したタンパク質リン酸化の刺激を示す。
図6は、HER4活性化後のShcタンパク質のチロシンリン酸化を示す。
図7は、ヒレグリンアルファ融合タンパク質のヌクレオチドおよびアミノ酸配
列(配列番号8および9)を示す。この特別のタンパク質において、ヌクレオチ
ド塩基の対応は下記のとおりである。
塩基 領域
1−178 CD5シグナル配列
179−373 ヒレグリンアルファEGF様結合ドメイン
374−424 トロンビン開裂部位
425−1129 ヒトIg定常領域
本発明は、HRGの組換えEGF様ドメインの製造および該ドメインによって
誘発される生物学的作用並びにHER4シグナル伝達に関与する細胞内分子の同
定に関する。好ましい態様において、本発明は、HRG−α、−β2および−β
3のEGF様ドメインの、トロンビン開裂部位をコードする配列、ついでヒトI
gG1のFc部分をコードする配列をインフレームで含む真核細胞発現ベクター
中へのクローニングに関する。さらに好ましくは、該ベクターは、該タンパク質
の効率的なプロセシングおよび分泌を可能とするCD5タンパク質のシグナル配
列をさらに含む。該ベクターは哺乳動物発現ベクターである。
本発明は、組換え融合タンパク質、rHRG−T−Fcの発現を指令するキメ
ラ遺伝子の製造に関する。該組換え融合タンパク質は、該ベクターを適当な宿主
中にトランスフェクションすることにより大量に発現される。好ましい宿主は哺
乳動物COS細胞である。これらタンパク質は、HER4/P180erbB4のリ
ン酸化を刺激することが示されている。得られた2価融合タンパク質は成長因子
として有用である。なぜなら、該融合タンパク質は成長因子受容体を活性化する
からである。これら融合タンパク質はまた、抗体のようにそのFcドメインによ
り検出されるうえでも有用である。
該組換え融合タンパク質はまた、HER3受容体およびHER4受容体の低分
子量アゴニストまたはアンタゴニストを同定するための高処理量スクリーニング
アッセイにおいても使用できる。高処理量スクリーニングアッセイには、試薬を
用いたマイクロリットルウエルプレートにおける短時間での数百の化合物のスク
リーニングが含まれる。このアッセイは、ロボット工学および自動装置の助けを
かりて行われる。このアッセイは、スクリーニングしようとする化合物に依存し
て結合アッセイまたは酵素アッセイなどであってよい。
本発明はまた、他の組換え成長因子、たとえば、上皮細胞成長因子、トランス
フォーミング成長因子α、アンフィレグリン、ベータセルリン、ヘパリン結合上
皮細胞成長因子、ワクシニア成長因子、クリプト(cripto)、インスリン成長因
子、インスリン様成長因子、トランスフォーミング成長因子β、血小板由来成長
因子、線維芽細胞成長因子、および神経成長因子を大量に製造するのにも有用で
ある。
本発明はまた、rHRG−T−Fc融合タンパク質のトロンビンプロテアーゼ
開裂後の精製EGF様ドメイン(reHRG)にも関する。これらreHRGは
、HER4発現細胞においてタンパク質リン酸化を刺激することが示されている
。
本発明はまた、プロテインA−セファロースクロマトグラフィーにより融合タ
ンパク質rHRG−T−Fcを単一工程で精製する方法にも関する。
本発明は、reHRG−β2がShcタンパク質のチロシン上でのリン酸化を
顕著に誘発することを示す。このことは、これらアダプター分子のHRG媒体シ
グナル伝達における役割を示唆している。
本明細書において使用する技術用語は、分子遺伝学の分野における当業者には
よく知られたものである。これら用語の定義は、分子生物学の分野における多く
の教科書、たとえば、「遺伝子」、第2版、ベンジャミン・ルイス(Benjamin
Lewis)、1985、ジョン・ウイリー&サンズ、ニューヨークに記載されてい
る。本発明において用いた略語は以下のとおりである。
略語の一覧表
HRG ヒレグリン
EGF 上皮細胞成長因子
EGFR EGF受容体
HER ヒトEGF受容体
NDF ニューディファンレンシエーションファクター
ARIA アセチルコリン受容体誘導活性
GGF グリア増殖因子
p185erbB2 HER2コードタンパク質
p180erbB4 HER4コードタンパク質
ICAM−1 細胞間接着分子−1
SH2 Srcホモロジー2
CHO チャイニーズハムスター卵巣
SDS−PAGE ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル
電気泳動
Bes N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−ア
ミノエタンスルホン酸
PBS リン酸緩衝食塩水
rHRG−T−Fc融合タンパク質を構築してHER4/HRG受容体/リガ
ンドペアの生物学の種々の側面を研究するための用途の広い組換えHRGを生成
することは、以下のようにして行う:受容体結合にはHRG−β1のEGF様ド
メインで充分であることが以前に示されているので[ホームズら(1992)、Science
256、1205−1210]、HRG−α、−β2または−β3の
EGF様ドメインがトロンビン開裂部位に結合し、ついでヒトIgG1抗体のヒ
ンジ領域、CH2領域およびCH3領域が結合し、タンパク質の分泌がCD5の
シグナル配列によって指令される可溶性タンパク質をコードする3つのキメラ遺
伝子を構築する。HRG−αのEGF様ドメインは成熟タンパク質の残基177
〜241に対応し、一方、HRG−β2のEGF様ドメインおよびHRG−β3
のEGF様ドメインは、それぞれ残基177〜238および残基177〜241
に対応する。これら3つの融合タンパク質、rHRG−T−FcをCOS細胞中
で一過性発現により調製し、培養上澄み液からプロテインA−セファロース上で
精製し、350〜1900μg/lの範囲の収量を得た。CD5シグナルペプチ
ドは、rHRG−T−Fcの効率的なプロセシングおよび分泌を可能にする。3
つの融合タンパク質はすべて免疫グロブリンと同様のジスルフィド結合したホモ
二量体として分泌され、それゆえ、それぞれ2つのHRG−EGF様ドメインを
提示することができる。rHRG−T−FcがHER4受容体に結合し該受容体
を活性化するこができることを確立するため、rHRG−T−FcがHER4の
リン酸化並びに形態学的変化およびICAM−1のアップレギュレーションを誘
発する能力についての研究を行うのが好ましい。
他の組換え成長因子をも大量に製造するため、他の成長因子、たとえば、上皮
細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子α、アンフィレグリン、ベータセ
ルリン、ヘパリン結合上皮細胞成長因子、ワクシニア成長因子、クリプト、イン
スリン成長因子、インスリン様成長因子、トランスフォーミング成長因子β、血
小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子、および神経成長因子のキメラ遺伝子を
rHRG−T−Fcと同様の仕方で構築し、発現させることができる。
rHRG−T−FcによるHER4受容体の活性化は、組換えヒト
p180erbB4/HER4を高レベルで発現しHRGに応答することが以前
に示されているCHO/HER4細胞[プローマンら(1993)Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 90、1746−1750およびクルスクら(1993)J.Biol.Chem
.268、18407−18410]で調べる。rHRG−α−
T−Fc,−β2−T−Fc、および−β3−T−FcをCHO/HER4細胞
に50および200ng/mlにて37℃で10分間加える。ついで、細胞を溶
解し、ついでチロシンリン酸化されたタンパク質のパターンを非処理の細胞と比
較して抗ホスホチロシンウエスタンブロッティングにより分析する。図1Aに示
すように、3つのすべてのHRG−T−FcはHER4受容体の過剰リン酸化を
誘発した。リガンドの活性化は受容体の自己リン酸化となるばかりでなく、分子
量100,000の未同定バンド(図1A)を含む幾つかの基質のチロシンリン
酸化ともなった。組換えヒトEGFRを高レベルで発現するCHO/EGFR細
胞で試験すると、rHRG−T−Fc(200ng/ml)はEGFRを活性化
しなかった(図1B)。EGF(200ng/ml)はCHO/EGFR細胞に
おいてEGFRのリン酸化を顕著に誘発した(図1B、レーン2)。これらの結
果は、rHRG−T−Fcが活性な分子であり、HER4チロシンリン酸化を特
異的に誘発しうることを示している。
HER4発現細胞へのrHRG−α−T−Fcの結合は、HER4受容体を発
現することが知られているMDA−MB−453細胞[プローマンら(1993
)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90、1746−1750]において並びに
関連受容体であるHER2およびHER3[クラウス(Kraus,M.H.)ら(1
987)EMBO J.6、605−610およびクラウスら(1989)、Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 86、9193−9197]において示すことがで
きる。これら細胞を1または10μg/mlのrHRG−a−T−Fcとともに
氷上でインキュベートする。結合した融合タンパク質は、rHRG−α−T−F
cのヒトFc部分を認識するフルオレセイン結合抗ヒトIgG抗体を加えること
により検出する。図2に示すように、rHRG−α−T−FcはMDA−MB−
453細胞に結合した(図2B、10μg/mL;および2D、1μg/mL)
。共焦顕微鏡により分析される蛍光は細胞の周辺に局在しており、氷上に保持し
た生きた細胞で染色を行ったという事実と一致する。融合タンパク質を加えない
場合には、フルオレセイン結合抗ヒトIgGはMDA−MB−453細胞への検
出可能な結合を示さなかった(図2A)。関連のないTek−Fc融合タンパク
質を10μg/mlで用いた場合には最小のバックグラウンド染色が観察される
(図2C)。この結果は、rHRG−T−FcがHER4発現細胞に結合し、H
RG結合タンパク質を発現する細胞をモノクローナル抗体と同様の仕方で検出す
るのに用いることができることを示している。rHRG−T−Fcは、細胞染色
のために抗体に替わる手段を提供する。
HRGのラットホモログであるNDFは、AU565哺乳動物腫瘍細胞におい
て形態学的変化を誘発すること[ペレスら(1992)、Cell 69、205−
216]並びにICAM−1の発現を誘発することが示されている[バカスら(
1993)、Cancer Res.53、5251−5261]。rHRG−α−T−
FcがMDA−MB−453細胞の表面でICAM−1の発現を誘発する能力を
調べるため、これら細胞を該融合タンパク質(50ng/ml)とともに3日間
処理し、抗ICAM−1抗体で染色した。結合した抗ICAM−1抗体は、フル
オレセイン結合抗マウスIgG抗体を用いて検出する。図3Bに示すように、r
HRG−α−T−Fcは非処理細胞(図3A)および関連のないTek−Fc融
合タンパク質で処理した細胞(図3C)に比べてMDA−MB−453細胞にお
いてICAM−1発現の明らかなアップレギュレーションを誘発した。HepG
2細胞からのならし培地から精製したHRGイソ形であるp45[クルスクら(
1993)J.Biol.Chem.268、18407−18410]は、50ng/
mlで正の対照として用い、ICAM−1のアップレギュレーションを誘発した
(図3D)。この結果は、rHRG−T−Fcが天然のHRGによって引き起こ
されるのと同様の生物学的応答をHER4受容体発現乳癌細胞において引き起こ
し、かかる細胞へのHRG結合後の生物学的変化を研究するのに用いることがで
きることを示している。
HRGのEGF様ドメインをコードするDNA断片は、PCRにより増幅し、
精製し、ついでヒトIgG1抗体のFc部分の配列の上流でインフレームにある
トロンビン開裂部位をコードする配列を含むCDM7由来発現ベクター中に挿入
する。発現ベクター中にトロンビン開裂部位を加えるのは、細菌での組換えタン
パク質発現のためにヘイクス(Hakes,D.)およびディクソン(Dixon)[ヘイ
クスら(1992)Anal.Biochem.202、293−298]により開発され
た系に基づくものである。rHRG−T−Fc中にトロンビン開裂部位が存在す
ることにより、融合タンパク質の2つの機能的ドメインの分離が可能となる。ト
ロンビン開裂後、精製EGF様ドメインが単量体タンパク質として回収される。
なぜなら、トロンビン部位は融合タンパク質のFcドメインのヒンジ領域の上流
に位置するからである。rHRG−β2−T−FcおよびrHRG−β3−T−
Fcをヒトトロンビンとともにインキュベートする。ついで、HRGの組換えE
GF様ドメイン(reHRG)をプロテインA−セファロースクロマトグラフィ
ーにより該分子のFc部分から分離する。reHRGをカラムフロースルー(fl
ow-throughs)中で回収する。Fc部分は、プロテインA−セファロースから酸
溶出により回収する。図4は、トロンビン開裂前のrHRG−β3−T−Fcの
銀染色ポリアクリルアミドゲルを示す(レーン1)。完全な融合タンパク質は還
元条件下で40kDaのみかけの分子量を示し、単量体に対応する。開裂後、プ
ロテインA−セファロース前では(レーン2)、該融合タンパク質のFc部分に
対応する34kDaバンド、およびHRG−β3のEGF様ドメインに対応する
6kDaバンドが同定される。これら2つの断片をプロテインA−セファロース
クロマトグラフィーにより分離する。HRG−β3の6kDa EGF様ドメイ
ン(reHRG−β3)をカラムフロースルーにより回収し(レーン3)、該融
合タンパク質の34kDa Fcドメインをカラムから酸で溶出する(レーン4
)。
reHRGに応答したタンパク質リン酸化の刺激は、MDA−MB−453細
胞中、rHRG−β2−T−FcおよびrHRG−β3−T−Fcの精製reH
RG−β2、reHRGβ3、およびFcドメイン上で行う。処理なし(レーン
1)またはEGF処理後(レーン2)に観察されるバックグラウンドレベルのリ
ン酸化に比べ、完全なrHRG−β2−T−FcおよびrHRG−β3−T−F
c(それぞれ、図6B、レーン3および6)は、180kDaタンパク質のチロ
シンリン酸化の強力な刺激剤である。reHRG−β2(レーン4)およびre
HRG−β3(レーン7)はrHRG−β2−T−FcおよびrHRG−β3−
T−Fcで得られるのと同様の180kDaタンパク質のリン酸化レベルの増大
を引き起こしたが、rHRG−β2−T−FcおよびrHRG−β3−T−Fc
からのFcドメインはタンパク質リン酸化を誘発できなかった(それぞれ、レー
ン5および8)。
融合タンパク質の開裂後、トロンビン開裂部位のグリシンに富む領域からの幾
つかのアミノ酸残基がreHRGのカルボキシ末端に残存する。開裂はトロンビン開
裂部位のプロリン−アルギニン認識配列で起こる。ヘイクスら(1992)、
Anal.Biochem.202、293−298を参照。これら付加残基はreHRG
の特性に影響を及ぼさなかった。複数のHRG/NDFイソ形のうち、EGFド
メインに近接した領域(HRG/NDF前駆体中で膜近傍領域と称する)は、存
在しなくてもよく(たとえば、HRG−β2/NDF−β2)、または26アミ
ノ酸までを含んでいてよい(たとえば、HRG−β4/NDF−β4)[ホーム
ズら(1992)、Science 256、1205−1210およびウェンら(1
994)、Mol.Cell Biol.14、1909−1919]。膜近傍領域を欠く
NDF−αの切り出し形(truncated form)は、完全長のNDF−αイソ形と同
じ受容体結合親和性を示し、このEGFドメインに近接する領域は受容体結合に
関与していないことを示唆している[ウェンら(1994)Mol.Cell Biol.
14、1909−1919]。このことは、トロンビン開裂後にreHRGがr
HRG−T−Fc融合タンパク質によって示される活性を保持していることを示
している。
MDA−MB−453細胞はHER3、HER4、および高レベルのHER2
をも発現するので、180kDaのリン酸化バンドの正確な同定は知られていな
い。HER4とHER3とはともにHRG受容体として同定されている[プロー
マンら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90、1746−1750
;クルスクら(1993)J.Biol.Chem.268、18407−18410;
プローマンら(1993)Nature(ロンドン)366、473−475および
カラウェイら(1994)J.Biol.Chem.269、14303−14306]
。試料は還元条件下で電気泳動しているので、リン酸化された分子種はHER2
を含む3つのすべての受容体の単量体の組み合わせに対応する。HRG刺激に応
答してHER2は受容体のリン酸基転移により間接的に刺激される[プローマン
ら(1993)Nature(ロンドン)366、473−475]。さらに、HR
G−β1のEGF様ドメインの高親和性結合部位はCOS−7細胞中でのHER
2およびHER3の同時発現によって再構築されうること、およびHRGの結合
によりHER2およびHER3の両者でのチロシンリン酸化という結果となるこ
とが示されている[スリウコウスキー(Sliwkowski,M.X.)ら(1994)、J.Biol.Chem
.269、14661−14665]。
観察された結果は明らかに、観察された生物学的作用がrHRG−T−Fcの
EGF様ドメインにより媒体されること、およびこれら作用は該融合タンパク質
のFc部分に帰することができないことを示している。
HER4受容体活性化後のShcのリン酸化は以下のようにして行われる:受
容体チロシンキナーゼ、たとえば、EGF受容体、インスリン受容体、およびP
DGF受容体の活性化の結果、多くの細胞内シグナル伝達分子がリン酸化される
[ウルリッヒら(1990)Cell 61、203−212およびホワイトら(1
994)J.Biol.Chem.269、1−4]。HRGシグナル伝達に関与する分
子を分析するため、MDA−MB−453細胞を200ng/ml reHRG
−β2とともにまたはreHRG−β2なしで刺激する。以下の抗体を用いて細
胞溶解液を免疫沈降する:抗GAP、抗PLC−g1、抗PI3−K、および抗
Shc。沈降したタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ついで抗ホスホ
チロシン抗体を用いてイムノブロッティングする。Shc沈降物、および程度は
低いがPI3−K免疫沈降物が、HRG刺激後にタンパク質リン酸化の増大パタ
ーンを示した。Shcリン酸化の分析をさらに行った。Shcタンパク質は、単
一のSH2ドメインを含有する偏在的に発現されるタンパク質である。3つの構
造上関連するShcタンパク質、p46Shc、p52Shcおよびp66Sh
cが、Ras活性化に関連すると思われるアダプター分子として記載されている
[ペリッチら(1992)Cell 70、93−104およびラザキス−アドコッ
クら(1992)Nature(ロンドン)360、689−692]。CHO/H
ER4細胞およびMDA−MB−453細胞をreHRG−β2に暴露し、溶解
する。等量の細胞溶解液を抗Shc抗体で免疫沈降し、抗Shc抗体か(図6A
)または抗ホスホチロシン抗体(図6B)のいずれかでブロッティングする。図
6Aは、刺激した細胞溶解液および刺激しない細胞溶解液からの等量のタンパク
質を各レーンに負荷すると、MDA−MB−453細胞(レーン1および2)は
p46Shcおよびp52Shcのみを発現するのに対し(p66Shcはアッ
セイで検出されない)、CHO/HER4細胞(レーン3および4)では3つの
すべてのShc
イソ形が発現される。p66Shcは他の2つのShcイソ形とは異なる転写物
から翻訳され、あらゆる種類の細胞で発現されるわけではない、たとえば、ヒト
造血細胞株には存在しない[ペリッチら(1992)Cell 70、93−104
]。図6Bに示すように、reHRG−β2は両細胞タイプにおいてShcの過
剰リン酸化を誘発した。MDA−MB−453細胞では、reHRG−β2刺激
はp46Shcおよびp52Shcの両方においてチロシンリン酸化という結果
となった(レーン1および2)。reHRG−β2刺激の後、p52Shcのリ
ン酸化はCHO/HER4細胞において顕著に増大する(レーン3および4)。
p46Shcは比較的高い内在レベルのリン酸化を示し、HRG処理後にわずか
しか影響を受けないと思われた。図6B、レーン3および4に示すようにブロッ
ティングの暴露時間を長くすると、p46Shcのバンドとp52Shcのバン
ドとの分離は失われたが、p66Shcは非刺激細胞(レーン5)に比べてre
HRG−β2に応答して(レーン6)リン酸化されることが明らかとなった。
本発明において示される結果は、HRG−α、−β2および−β3の組換えE
GF様ドメインがトロンビン開裂部位に融合し、ついで該部位がヒトIgG1の
Fcドメインに結合していることを示している。これら試薬は、融合タンパク質
としてかまたは切り出された組換えHRGの原料としてインビトロアッセイにお
いて有用である。これら結果はまた、両形がインビトロでHER4受容体を活性
化することができ、公知のHRG生物学的応答を引き起こすことを示している。
本発明は、HRG刺激後に、Ras活性化経路に関係しているShcタンパク質
がチロシン上でリン酸化されることを初めて示す。組換えHRGを入手しうるこ
とは、HRG受容体シグナル伝達のメカニズムの詳細な解明並びにHER4基質
とチロシンキナーゼのEGFRファミリーの他の成員の基質との比較のためにさ
らに実験することを可能にするであろう。
下記実施例において説明する本発明をさらに明確かつ実行可能とするため、開
示した結果を得るのに利用される材料および方法を一般的に記載する。これら材
料および方法は利用した技術を説明するものであり、本発明を限定することを意
図するものではない。これら方法の他の変法および改変法はよく知られており、
本発明によって予期される。
抗体−ウエスタンブロッティング試験において使用したRC20組換え抗ホス
ホチロシン抗体(トランスダクション・ラボラトリーズ(Transduction Labor
atories))およびPY20抗ホスホチロシン抗体(ICNバイオメディカルズ
(ICN Biomedicals,Inc.))は、トランスダクション・ラボラトリーズお
よびICNバイオメディカルズから購入した。ポリクローナル抗Shc抗体は、
アップステイト・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド(Upstate Biot
echnology Incorporated)から購入し、モノクローナル抗Shc抗体はトラン
スダクション・ラボラトリーズから購入した。抗ヒトICAM−1モノクローナ
ル抗体であるBBA3は、R&Dシステムズ(R&D Systems)から購入した
。
細胞株−MDA−MB−453ヒト乳癌細胞は、アメリカン・タイプ・カルチ
ャー・コレクションから入手した。CHO/EGFR細胞は、ソーン(B.Thor
ne)博士(ブリストル−マイヤーズ・スクイブ、シアトル、ワシントン)により
以下のようにして作成した:完全な組換えヒトEGF受容体コード配列を、ネオ
マイシン耐性遺伝子を含むCDM8発現ベクター中に挿入した。得られた構築物
をチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−KI)中にトランスフェクション
した。G418耐性クローンをEGFR発現について分析した。CHO/EGF
R安定細胞での機能性のEGFRの発現レベルの評価は、該細胞をEGFで刺激
し、EGFRを免疫沈降し、ホスホチロシンのウエスタンブロッティングにより
そのリン酸化レベルを決定することにより行った[プローマンら(1993)P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 90、1746−1750に報告されている]。
高レベルの組換えヒトHER4を発現するCHO/HER4細胞はこれまでに記
載されている[プローマンら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90
、1746−1750;クルスクら(1993)J.Biol.Chem.268、18
407−18410およびプローマンら(1993)Nature(ロンドン)36
6、473−475]。
実施例1
HRG−T−Fc発現プラスミドの構築
ヒトHRGのスペーサードメインの一部、EGF様ドメイン、膜貫通ドメイン
、および細胞質ドメインの幾つかの残基をコードするDNA断片を、HepG2
細胞から単離した全RNAからRT−PCRにより増幅した。オリゴヌクレオチ
ドプライマーは、ヒトHRG−βの配列[ホームズら(1992)Science 2
56、1205−1210]に基づいてデザインした。
使用したPCRプライマーを合成したが、下記配列を有する:
(フォワードプライマー、配列番号:1)および
(リバースプライマー、配列番号:2)。増幅はTaqDNAポリメラーゼ(パ
ーキン−エルマー・ロシュ(Perkin−Elmer Roche))を用いて35サイクル
行い、各サイクルは95℃で1分間の変性工程、65℃で1分間のアニール工程
、および72℃で30秒間の伸長工程からなっていた。得られたPCR生成物を
大腸菌ポリメラーゼIのクレノウ断片を用いて平滑末端とし、Sma−1消化し
たpBluscriptIIベクター(ストラタジーン(Stratagene))中にサブクロー
ニングし、個々のクローンのヌクレオチド配列をジデオキシ媒体チェインターミ
ネーション反応により決定した。この手順によりHRG−α、−β2、および−
β3のEGF様ドメインが得られた。
HRG−α、−β2、および−β3のEGF様ドメインは、上記のようにして
生成したHRG−α、または−β2鋳型プラスミドを用いたPCRにより生成し
た。以下に記載するオリゴヌクレオチドプライマーは、クローニングの目的のた
めに増幅生成物の5'末端にSpeI部位および3'末端にBamH1部位が存在
するようにデザインした。ヒトHRG−aの上皮細胞成長因子様ドメインは下記
配列を用いて増幅した:
(フォワード、配列番号:3)および
(リバース、配列番号:4)。PCR条件は,Pfuポリメラーゼおよび製造業
者(ストラタジーン)が推薦する試薬を用い、94℃で30秒間、55℃で1分
間および72℃で2分間からなる40サイクルであった。PCR生成物はHRG
−αの残基177−241に対応する相補的配列をコードしていた。ヒトHRG
−β2および−β3の上皮細胞成長因子様ドメインの増幅は、HRG−ββ2ク
ローンを鋳型として用いて行った。フォワードプライマーは上記に示す(配列番
号:3)。HRG−β2リバースプライマーは下記配列を有する:
(配列番号:5)。増幅はPfuポリメラーゼを用いて上記HRGaと同じ温度
条件で行った。このPCR生成物は、HRG−β2の残基177〜238に対応
する配列をコードしていた。HRG−β3リバースプライマーは、診断目的のた
めにHindIII部位を導入するサイレント点変異を含んでおり、下記配列を有
していた:
(配列番号:6)。PCR条件は、Pfuポリメラーゼを用い、94℃で1分間
、50℃で2分間および72℃で3分間からなる40サイクルであった。このP
CR生成物は、HRG−β3の残基177〜241に対応する配列をコードして
いた。すべてのPCR生成物をBamH1およびSpeIで消化し、発現タンパ
ク質の適切な分泌のためにクローニング部位の5'側にあるCD5シグナルペプ
チドをコードするcDNA配列並びにトロンビン開裂部位(アミノ酸配列
DPGGGGGRLVPRGFGTG;配列番号:7)をコードするcDNA配
列およびクローニング部位の3'側にあるヒトIgG1のヒンジ領域および定常
領域をコードするcDNA配列を含むBamH1−SpeI切断CDM7由来ベ
クターにライゲートした。すべての構築物をジデオキシ媒体チェインターミネー
ション反応により配列決定してEGF様ドメインの配列を確認し、それらの配列
がトロンビン配列およびFcコード配列とインフレームにあることを確かめた。
この手順の結果、構築物すなわちHRG−T−Fcの発現プラスミドが製造され
た。rHRG−T−Fcの配列は図7AおよびBに示してある。
実施例2
構築物のCOS細胞中へのトランスフェクション
上記構築物を以前に記載されたようにして[シード(Seed,B.)ら(198
7)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87、3365−3369]COS細胞中
にトランスフェクションし、得られた融合タンパク質をプロテインA−セファロ
ース(レプリゲン(Repligen))を用いて培養上澄み液から回収した。精製し
たタンパク質を還元条件下および非還元条件下で8%SDS−PAGE上で視覚
化した。タンパク質濃度はタンパク質アッセイキット(バイオ−ラド・ラボラト
リーズ(Bio-Rad Labs))を用いて決定した。この実験の結果、融合タンパ
ク質、rHRG−α−T−Fc、rHRG−β2−T−FcまたはrHRG−β
3−T−Fcが得られた。
実施例3
融合タンパク質のトロンビン開裂
融合タンパク質をヒトトロンビン(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズー
リから購入)とともに1:50(w/w)トロンビン:融合タンパク質比にて室
温にて30分間インキュベートした。ついで、開裂したタンパク質をプロテイン
A−セファロースカラムに負荷した。HRGの組換えEGF様ドメインを含むカ
ラムフロースルーを−20℃で貯蔵した。この手順により組換えタンパク質、r
eHRG−α、reHRG−β2またはreHRG−β3が得られた。
実施例4
チロシンリン酸化されたタンパク質のウエスタンブロッティングによる検出
CHO/HER4細胞(5×104)、CHO/EGFR細胞(2×104)
、およびMDA−MB−453細胞(4×105)を48ウエルプレート中に播
種した。24時間後、細胞を8時間血清飢渇させ、ついで種々の試料で37℃に
て10分間刺激した。上澄み液を廃棄し、沸騰電気泳動試料緩衝液を加えて細胞
を溶解した。溶解液を8%ポリアクリルアミドゲル(ノベックス(Novex)より
購入)上のSDS−PAGEに供し、ついでニトロセルロースに電気的にブロッ
ティングした。PY20モノクローナル抗ホスホチロシン抗体(ICNより購入
)および西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgGF(ab')2(カッ
ペル(Cappel)より購入)を、それぞれ一次および二次プローブ試薬として用
いた。免疫反応性のバンドを化学ルミネセンス(アマーシャム(Amersham Cor
p.)より購入)の増大を用いて視覚化した。得られた結果は、HER4受容体に
おけるチロシンリン酸化タンパク質のパターンを示し、これは図1に示してある
。
実施例5
免疫沈降
CHO/HER4細胞を100mm皿に播種した。80−90%コンフルエン
トな単層を洗浄し、種々の組換えHRGとともに37℃で10分間インキュベー
トした。単層を氷冷PBSで洗浄し、PBSTDS溶解緩衝液(10mMリン酸
ナトリウム、pH7.3、150mM NaCl、1%トリトン−X100、0.
5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)(1mM EDTA、2mM
フェニルメチルスルホニルフルオライド、1mM Na3VO4、20μg/m
lアプロチニン、20μg/mlロイペプチン、20μg/mlペプスタチンを
含有)中、氷上で10分間可溶化した。清澄化した抽出物のタンパク質濃度をB
CAタンパク質アッセイキット(ピアス(Pierce)から購入)を用いて決定し
た。溶解液(免疫沈降当たり1mg)をウサギ抗Shc抗体(UBIより購入)
とともに4℃で一夜インキュベートした。懸濁液にプロテインG−プラス/プロ
テインA−アガロース(オンコジーン・サイエンスィズ(Oncogene Sciences
))を加えて免疫複合体を沈降させた。4℃で1時間インキュベート
した後、免疫沈降物をPBSTDSで3回洗浄し、還元条件下で8%ポリアクリ
ルアミドゲル(ノベックスより購入)上で分離した。タンパク質をニトロセルロ
ースに電気的にブロッティングし、RC20組換え抗ホスホチロシン抗体(トラ
ンスダクション・ラボラトリーズより購入)または抗Shcモノクローナル抗体
(トランスダクション・ラボラトリーズより購入)を用いてプローブした。免疫
反応性のバンドを化学ルミネセンス(アマーシャムより購入)の増大を用いて視
覚化した。得られた結果は、Shcタンパク質の沈降を示し、これらタンパク質
がタンパク質reHRG−β2に応答してリン酸化されることを示していた。
実施例6
免疫組織化学染色
MDA−MB−453細胞を8−ウエルのホウ珪酸装填(chambered)スライ
ド(ラブ−テク(Lab−Tek)より購入)中に播種した。受容体結合を視覚化す
るため、48時間培養した後、細胞を氷上に10分間置き、氷冷結合緩衝液(4
4mM重炭酸ナトリウム、50mM Bes、pH7.0、0.1%ウシ血清アル
ブミンを添加したDMEM)で2回洗浄し、ついで氷上でrHRG−a−T−F
cとともに、または負の対照として、rHRG−T−Fcと同様にTek受容体
[デュモン(Dumont,D.J.)ら(1993)Oncogene 8、1293−130
1]の細胞外ドメインをトロンビン開裂部位に融合させ、ついでIgGのFc領
域に結合させた関連のない融合タンパク質とともに2時間インキュベートした。
Tek−Fc融合タンパク質を構築し生成するのに使用した試薬、クローニング
ベクターおよび哺乳動物細胞はrHRG−T−Fcを製造するのに用いたものと
同一であった。細胞を2回洗浄し、フルオレセイン結合ヤギ抗ヒトIgG F(a
b')2(タゴ(Tago)より購入)とともに氷上で45分間インキュベートした。
細胞をPBSで2回濯ぎ、PBS、2%ホルムアルデヒド中で20分間固定した
。その結果は、HER4受容体を発現する細胞を染色するのに上記組換え融合タ
ンパク質を用いることができることを示した。
実施例7
ICAM−1発現試験
ICAM−1発現試験を行うため、MDA−MB−453細胞を24時間培養
した後、50ng/mlのrHRG−α−T−Fc、p45[クルスクら(19
93)J.Biol.Chem.268、18407−18410]、負の対照としてT
ek−Fc融合タンパク質とともに、または培地単独で3日間インキュベートし
た。ついで、生きた細胞に染色を行った。細胞を洗浄し、結合緩衝液中に1:5
00に希釈した抗ICAM−1抗体(R&Dシステムズより購入)とともに氷上
で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、フルオレセイン結合ヤギ抗マウス
IgG F(ab')2(タゴより購入)とともに氷上で45分間インキュベートし
た。細胞をPBSで2回濯ぎ、上記のようにして固定した。受容体染色およびI
CAM−1発現のレベルをライカ(Leica)共焦顕微鏡を用いて分析した。その
結果は、上記融合タンパク質がHER4受容体を発現する乳癌細胞でICAM−
1の発現を誘発することを示し、図3に示してある。
実施例8
rHRG−T−Fc刺激後のHER4受容体のチロシン自己リン酸化−図1
A. CHO/HER4細胞を、rHRG−α−T−Fc(レーン2および3
)、rHRG−β2−T−Fc(レーン4および5)、およびrHRG−β3−
T−Fc(レーン6および7)の50ng/ml(レーン2、4および6)また
は200ng/ml(レーン3、5および7)存在下、または不在下(レーン1
)でインキュベートした。細胞を溶解し、タンパク質をSDS−PAGEにより
分離し、ニトロセルロースに移し、抗ホスホチロシン抗体でイムノブロッティン
グした。結合した抗体を可視化するため、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ
抗マウスIgG抗体および化学ルミネセンス試薬を用いた。その結果は、図1A
に示すように、3つのすべてのrHRG−T−FcがHER4受容体の過剰なリ
ン酸化を誘発することを示した。また、リガンド活性化の結果、受容体の自己リ
ン酸化および幾つかの基質のチロシンリン酸化が引き起こされた。
B. CHO/EGFR細胞を、EGF(レーン2)、rHRG−α−T−F
c(レーン3)、rHRG−β2−T−Fc(レーン4)、およびrHRG−β
3−T−Fc(レーン5)の200ng/ml存在下、または不在下(レーン1
)
でインキュベートした。細胞溶解液をAと同様にして処理した。HER4および
EGFRの位置を示す。その結果は、図1Bに示すように、rHRG−T−Fc
はEGFRを活性化することができないことを示した。図1B(レーン2)は、
EGFがCHO/EGFR細胞においてEGFRのリン酸化を顕著に誘発するこ
とを示した。
実施例9
MDA−MB−453細胞へのrHRG−α−T−Fcの結合−図2
細胞を8−ウエルのラブ−テク(ヌンク(Nunc))チャンバスライド中に2
×105細胞/ウエルにて播種した。2日後、細胞を氷上に置き、10μg/m
l(パネルB)および1μg/ml(パネルD)のrHRG−α−T−Fcで、
または10μg/mlで使用した関連のない融合タンパク質(パネルC)で染色
した。パネルAに示す実験では融合タンパク質を加えなかった。結合した融合タ
ンパク質を視覚化するため、フルオレセイン標識ヤギ抗ヒトFc抗体を用いた。
蛍光染色を共焦顕微鏡により分析した。図1Aに示す結果は、融合タンパク質を
加えなかった場合には細胞への結合を示さなかった。図2Bに示す結果は、rH
RG−α−T−FcがMDA−MB−453細胞に結合することを示した。図2
Cに示す結果は、関連のないTek−Fc融合タンパク質を用いた場合の最小の
バックグラウンド染色を示した。この実験で得られた結果は、rHRG−α−T
−FcがHER4発現細胞に結合し、HRG結合タンパク質を発現する細胞を検
出するのに用いることができることを示した。
実施例10
rHRG−α−T−Fcに応答したICAM−1発現の誘発−図3
MDA−MB−453細胞を8ウエルのラブ−テク(ヌンク)チャンバスライ
ド中で24時間培養した。細胞を50ng/mlのrHRG−a−T−Fc(パ
ネルB)、関連のない融合タンパク質(パネルC)、p45[クルスクら(19
93)J.Biol.Chem.268、18407−18410](パネルD)で処理
するか、または処理しなかった(パネルA)。さらに3日間のインキュベーショ
ンの後、細胞を抗ICAM−1モノクローナル抗体で染色した。結合した抗IC
AM−1
抗体を視覚化するため、フルオレセイン標識ヤギ抗マウスFc抗体を用いた。染
色を共焦顕微鏡により分析した。図3Bは、rHRG−α−T−Fcが、未処理
の細胞(図3A)および関連のないTek−Fc融合タンパク質で処理した細胞
(図3C)に比べてMDA−MB−453細胞においてICAM−1発現の明ら
かなアップレギュレーションを誘発することを示した。図3Dは、p45がIC
AM−1のアップレギュレーションを誘発することを示した。それゆえ、これら
実験の結果は、rHRG−T−Fcが、HER4受容体を発現する乳癌細胞にお
いて天然のHRGによって引き起こされるのと同様の生物学的応答を引き起こす
ことを示した。
実施例11
rHRG−β3−T−Fcのトロンビン開裂−図4
融合タンパク質をヒトトロンビンとともに室温で30分間インキュベートし、
プロテインA−セファロースカラム上に負荷した。HRG−β3のEGF様ドメ
イン(reHRG−β3)をカラムフロースルー中に回収し、一方、融合タンパ
ク質のFc部分はカラムから溶出した。得られた生成物をSDS−PAGEによ
り分析し、銀染色した。レーン1、未処理のrHRG−β3−T−Fc;レーン
2、トロンビン開裂後のrHRG−β3−T−Fc;レーン3、プロテインA−
セファロースカラムフロースルー(reHRG−β3);レーン4、プロテイン
A−セファロースカラム溶出液(融合タンパク質のFc部分)。図4(レーン1
)は、トロンビン開裂前のrHRG−β3−T−Fcの銀染色したポリアクリル
アミドゲルを示した。図4(レーン2)は、融合タンパク質のFc部分に対応す
る34kDaのバンドおよびHRG−β3のEGF様ドメインに対応する6kD
aのバンドを示した。このHrG−β3の6kDa EGF様ドメイン(reH
RG−β3)をカラムフロースルー中に回収し(レーン3)、融合タンパク質の
34kDa Fcドメインをカラムから酸で溶出した(レーン4)。
実施例12
reHRGに応答したタンパク質リン酸化の刺激−図5
MDA−MB−453細胞を、200ng/mlのEGF(レーン2)、
rHRG−β2−T−Fc(レーン3)、reHRG−β2(レーン4)、rH
RG−β2−T−Fc融合タンパク質のFc部分(レーン5)、rHRG−β3
−T−Fc(レーン6)、reHRG−β3(レーン7)、rHRG−β3−T
−Fc融合タンパク質のFc部分(レーン8)の存在下、または不在下(レーン
1)でインキュベートした。細胞を溶解し、タンパク質をSDS−PAGEによ
り分離し、ニトロセルロースメンブランに移し、抗ホスホチロシン抗体でブロッ
ティングした。免疫反応性のバンドを強化(enhanced)化学ルミネセンス試薬で
可視化した。その結果は、未処理(レーン1)またはEGF処理後(レーン2)
に観察されたバックグラウンドレベルのリン酸化と比較して、rHRG−β2−
T−Fcおよび−β3−T−Fc(それぞれ、レーン3および6)が180kD
aタンパク質のチロシンリン酸化の強力な刺激剤であることを示した。図5(レ
ーン4および7)は、reHRG−β2およびreHRG−β3が180kDa
タンパク質のリン酸化レベルの増大を引き起こすのに対して、rHRG−β2−
T−FcおよびrHRG−β3−T−FcのFcドメインはタンパク質リン酸化
を誘発することができなかった(図5、レーン5および8)。
実施例13
HER4活性化後のShcタンパク質のチロシンリン酸化−図6Aおよび6B
MDA−MB−453細胞(レーン1および2)およびCHO/HER4細胞
(レーン3および4)を200ng/mlのreHRG−β2で37℃にて10
分間処理するか(+)または処理せず(−)、可溶化した。等量のタンパク質(
1mg)を含有する細胞溶解液をポリクローナルウサギ抗Shc抗体で沈降させ
た。免疫複合体を洗浄し、SDS−PAGEにより分離し、ニトロセルロースに
移した。
A. モノクローナル抗Shc抗体を用いたイムノブロッティングによりShc
タンパク質を検出した。
B. 抗ホスホチロシン抗体を用いたイムノブロッティングによりShcタンパ
ク質のチロシンリン酸化を分析した。3つのShcイソ形の位置を示す。
図6Aに示す結果は、MDA−MB−453細胞(レーン1および2)が
p46Shcおよびp52Shcのみを発現するのに対して、CHO/HER4
細胞(レーン3および4)は3つのすべてのShcイソ形を発現することを示し
た。図6Bは、reHRG−β2が両細胞タイプにおいてShcの過剰なリン酸
化を誘発することを示した。MDA−MB−453細胞では、reHRG−β2
刺激はp46Shcおよびp52Shcの両方のチロシンリン酸化という結果と
なった(レーン1および2)。reHRG−β2刺激の後、p66Shcのリン
酸化はCHO/HER4細胞で顕著に増加した(レーン3および4)。ブロット
を長い時間暴露しておくと(図6B、レーン3および4)、p46Shcのバン
ドとp52Shcのバンドとの間の分離が失われるという結果になったが、p6
6Shcは未処理の細胞(レーン5)に比べてreHER−β2に応答してリン
酸化されることがわかった(レーン6)。
実施例14
他の成長因子の発現プラスミドの構築
他の成長因子、たとえば、上皮細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子
アルファ、アンフィレグリン、ベータセルリン、ヘパリン結合上皮細胞成長因子
、ワクシニア成長因子、クリプト、インスリン成長因子、インスリン様成長因子
、トランスフォーミング成長因子ベータ、血小板由来成長因子、線維芽細胞成長
因子または神経成長因子の発現プラスミドは、これら成長因子のcDNAから実
施例1に従って同様に構築でき、実施例2に従って発現することができる。
上記の記載および実施例は本発明を説明するためのものであるが、本発明を限
定することを意図するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、多く
の改変および修飾を施すことができる。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C12P 21/02 A61K 37/24 AED
(72)発明者 アルフォ,アレハンドロ・エイ
アメリカ合衆国98020ワシントン州 エド
モンズ、スプルース・ストリート1012番