【発明の詳細な説明】
イン・ビトロTリンパ球生成系発明の背景
Tリンパ球即ちT細胞は、哺乳動物の免疫系の基礎であり、外来抗原に対する
細胞性免疫の原因である。T細胞は、他のリンパ球と同様に、主として造血組織
において(即ち、胎児の肝臓及び成人の骨髄において)生成される多能性の造血
幹細胞から発生する。これらの前駆体幹細胞の幾つかは、血液を介して胸腺に移
動し、そこで、T細胞分化が起きる。
Tリンパ球の大部分は、他の白血球の免疫応答を促進し又は抑制するように作
用する免疫系レギュレーター(ヘルパーT細胞及びサプレッサーT細胞として公
知)である。他のTリンパ球(細胞障害性T細胞という)は、ウイルス感染した
細胞を殺すように作用する。これらの種々の型のT細胞は、それらの表面上の異
なる抗原マーカーの存在によって互いに区別される。特に、ヘルパーT細胞は、
CD4として知られる細胞表面糖蛋白質を発現し、細胞障害性T細胞は、異なる
細胞表面糖蛋白質CD8を発現する。T細胞が成熟するにつれて、それらは、C
D2細胞表面蛋白質を発現し、最終的には、CD3細胞表面蛋白質複合体を発現
する。
T細胞の発生は、イン・ビボで集中的に研究されてきた。証拠は、多能性造血
幹細胞がCD34表面分子を発現する細胞(CD34+細胞;例えばTerstappen
等、Blood,79:666-677,1992及びその中で参照されている文献を参照されたい)
の集団中に存在するということを示している。かかるCD34+細胞は、有核骨
髄細胞の約1%に相当する。CD34+細胞は、照射された宿主の胸腺をT細胞
で上首尾に再増殖させるために用いられてきたし(例えば、Exine 等、Nature 3
09:629-632,1984; Goldschneider 等、J.Exp.Med.163:1-17,1986; Berenson等、
J.Clin.Invest.81:951-955,1988 を参照されたい)、遺伝的に決定された重症複
合型免疫不全を有するマウス(SCIDマウス)中へのヒトCD34+前駆細胞
の移植は、それらのマウスにおける成熟Tリンパ球の発生を生じることが観察さ
れ
た(例えば、McCune等、Science 241:1632-1639,1988: Namikawa 等、J.Exp.Med
.172:1055-1063,1990; Berenson等、Blood 77:1717-1722,1991を参照されたい)
。
努力は、イン・ビトロTリンパ球生成系の開発にも向けられてきた(例えば、
Benveniste等、Cell.Immunol.127:92-104; Peault等、J.Exp.Med.174:1283-1286
,1991; Toki等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7548-7551,1991; Tjonnfjord 等、
J.Exp.Med.177:1531-1539; Hurwitz,J.Immunol.17:751-756,1987を参照された
い)。Peault等は、ヒトの胎児肝及び骨髄からのCD34+細胞を、予め低温培
養によって造血幹細胞を涸渇させたHLAミスマッチの胎児胸腺断片にイン・ビ
トロでマイクロインジェクションする系を開発した。しかしながら、Peault等は
、イン・ビトロでコロニー形成した胸腺をその後SCIDマウスに移植して、T
細胞の分化はイン・ビボで起きたので、完全なイン・ビトロT細胞発生を達成し
てはいない。
Tjonnfjord等は、胸腺間質細胞上清にて、組換えマウスc−kitリガンドの
存在若しくは不在にて培養した成人CD34+骨髄細胞からのイン・ビトロでの
T細胞分化を報告した。それにもかかわらず、Tjonnfjord等は、CD2、CD3
、CD4及びCD8等のT細胞特異的表面マーカーの存在により示されたように
、それらの全細胞培養の少部分しか成熟T細胞に分化しなかったことを見出した
(Tjonnfjord等の図3参照)。従って、培養した細胞の有意の部分が成熟T細胞
に発生するイン・ビトロTリンパ球生成系の開発の必要性がある。発明の要約
本発明は、培養した細胞の有意の部分が成熟T細胞に発生するイン・ビトロT
リンパ球生成系を提供する。本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系で生成され
た細胞の約17〜74%は、T細胞特異的表面抗原CD2を発現し;1.5〜3
4%は、CD3を発現し;16〜61%は、CD4を発現し、そして0〜15%
は、CD8を発現する。CD15又はCD56の発現(ナチュラルキラー細胞の
表現型)は、検出されなかった。
それ故、本発明は、CD34を発現する前駆細胞からイン・ビトロで生成され
たT細胞の単離された集団を提供し、その集団中のT細胞の約17〜74%はC
D2を発現し、その集団中のT細胞の約1.5〜34%はCD3を発現し、そし
てその集団中のT細胞の約16〜61%はCD4を発現する。本発明のT細胞の
集団は、リンパ球特異的なRAG−2遺伝子を発現する。更に、本発明のイン・
ビトロ系で生成されたT細胞は、T細胞向性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の
HIV−1IIIB株による感染に対して感受性である。それ故、本発明のT細胞は
、発生中のT細胞のHIV感染に影響を与える薬物を同定するために利用するこ
とができる。
本発明は又、i)CD34を発現する前駆細胞の集団を用意し;そしてii)そ
の前駆細胞をインターロイキン12(IL−12)の存在下で培養するステップ
を含むT細胞をイン・ビトロで生成する方法をも提供する。好ましくは、これら
の前駆細胞は、ヒト骨髄細胞、ヒト臍帯血液細胞、ヒト末梢血液細胞又はヒト胎
児肝細胞である。これらの前駆細胞は、胸腺間質の集密的単層及びIL−12を
含むサイトカイン又はサイトカインの組合せの存在にて(好ましくは、f1k2
/f1t3リガンドと組合せて)培養することができる。本発明の方法の最も好
ましい具体例において、IL−12は、約10ng/mlの濃度で存在し、f1
k2/flt3リガンドは、約100ng/mlの濃度で存在する。
本発明のイン・ビトロで生成されたT細胞は、製薬組成物にて治療上有効な量
で用いることができる。好ましくは、かかる組成物は、製薬上許容し得るキャリ
アー及び/又は製薬上許容し得る塩を含む。
本発明のイン・ビトロで生成されたT細胞は、T細胞の発生に影響を与える薬
物又は因子を同定するために用いることができる。この発明は又、i)少なくと
も約95%の純度のCD34陽性の哺乳動物骨髄細胞集団;及びii)インターロ
イキン12を含み、好ましくはiii)flk2/flt3リガンド;iv)胸腺間質
細胞の集団;及び/又はv)薬物をも含む組合せをも提供する。図面の簡単な説明
図1は、本発明の方法の好適具体例の概略図を示す。
図2は、本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系の好適具体例において前駆細
胞として用いた低密度骨髄単核細胞の種々の免疫表現型亜型の増殖能力を図解す
るものである。
図3は、本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系で生成された細胞の典型的な
フローサイトメトリー分析を示している。
図4は、CD34+細胞が、本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系における
培養中にRAG−2発現を獲得することを示すPCR及びサザーンブロット結果
を与えるものである。
図5は、HIV−1IIIBにさらした14日後のHIV抗血清及び抗ヒトFIT
Cで染色した本発明のT細胞を示す蛍光顕微鏡写真である。
図6は、HIV−IIIIB又は熱不活化した(擬似)ウイルスにさらした後の間
質のみ(パネルA)及びCD34+細胞を伴う間質(パネルB)の並行培養から
の上清のHIVp24抗原レベルを示す2つのグラフを与えるものである。
CD34+細胞を含む培養における11日後のp24の増加は、胸腺間質単独で
は起こらず、発生中のT細胞の生産的HIV感染の証拠である。
図7は、本発明の培養細胞中のIL−2のELISAによる検出を示す棒グラ
フである。
図8は、培養細胞によるTCR発現の獲得を図示している。21日目の細胞を
抗CD4−PE及び抗TCRα/β−1−FITCで染色した後にフローサイト
メトリー分析した(A)。21日目のトリプシン処理した胸腺間質単独、培養C
D34+細胞又は対照のCD2+細胞由来のRNAを、TCR発現についてRT
PCRにより分析した。
図9は、培養細胞の免疫表現型を描写するものである。出力細胞集団を、示し
たフォワード及びサイドスキャッタークリテリアを用いてゲートで制御した(A
)。特定の時点における示した抗体で染色した細胞のフローサイトメトリー分析
を示してある(B)。各時点は全細胞集団の分析を必要とし、それ故、示したデ
ータは、独立した培養からのものであり、単一培養の連続的サンプリングを示す
ものではない。発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、有効なイン・ビトロTリンパ球生成系を提供する。
本質的に、CD34+細胞は、「フィーダー」細胞の集密的単層の上にプレート
され、T細胞分化を誘導するように選択した成長因子の存在下で培養される。こ
のフィーダー細胞層の調製のための好適組織源は、ヒトの胎児の胸腺組織である
(他の起源例えば非ヒト霊長類又は他の哺乳動物からの胸腺間質、又は上述の起
源から誘導された不滅化細胞系統も別法として用いることはできるが)。このフ
ィーダー層は、当業者に公知の標準的技術を用いて調製することができる(例え
ば、Tjonnfjord等(前出)を参照されたい)。このフィーダー層の調製の好適方
法は、後述の実施例1に記載する。
本発明における使用のためのCD34+細胞は、種々の異なる起源例えば骨髄
、臍帯血液、末梢血液幹及び胎児肝から得ることができる。CD34+細胞の好
適起源は、幾分かその容易な利用可能性の故に、骨髄である。本発明で利用され
るCD34+細胞は、任意の利用し得る方法例えば蛍光活性化セルソーター(F
ACS)分析、免疫磁気ビーズ精製(若しくは、他の免疫沈降法)又はサイトカ
インを抗代謝剤と共に用いる機能的選択を用いて精製することができ、少なくと
も約95%の純度であるべきである(即ち、これらの細胞の少なくとも約95%
がCD34を発現すべきである)。
精製されたCD34+細胞を、フィーダー層上にプレートして、サイトカイン
又はサイトカインの混合物(好ましくは、インターロイキン12(IL−12)
を含み、多分、flk2/flt3リガンドをも含む)の存在下で、少なくとも
約2週間(典型的には、約35日を超えない)培養する。すべてのサイトカイン
標品が、本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系において等しく有効な訳ではな
い。特に、我々は、IL−2、IL−7及びSCFが、細胞の有意の部分の成熟
T細胞への発生の刺激において、IL−12と同程度に有効ではないということ
を見出した。典型的には、細胞は、本発明のイン・ビトロ系において、14日の
培養で約20〜25倍に増殖する(図2参照)。
培養期間後に、本発明のイン・ビトロ系で生成された細胞を、T細胞マーカー
の発現につき及び/又はT細胞活性について、例えば、T細胞表面マーカー例え
ばCD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25及びCD44を検出する
ためのFACS分析を含む利用できる任意の方法を用いて分析することができる
。典型的には、本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系で生成される細胞の約1
7〜74%は検出可能なCD2を発現し、約1.5〜34%は検出可能なCD3
を発現し、そして約16〜61%は検出可能なCD4を発現する。このイン・ビ
トロ系により生成される細胞培養は、CD8を発現する細胞は僅かしか有しない
;即ち、本発明のイン・ビトロ系にて生成される細胞の約15%以下がCD8+
である。
本発明の培養細胞は又、T細胞特異的遺伝子(例えば、RAG−2又はT細胞
レセプター(TCR)遺伝子)の発現につき及び/又はT細胞特異的蛋白質(例
えば、IL−2)の産生について、分子生物学の公知の技術を用いて分析するこ
ともできる(例えば、Sambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual C
old Spring Harbor Press,ニューヨーク、1989(参考として本明細書中に援用する)
を参照されたい)。RAG−2発現の獲得は、培養期間中検出可能である(図4
参照)。更に、TCRβ発現の獲得は、培養期間中検出可能である(図8参照)
。IL−2産生は、本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系において生成された
培養細胞中で検出可能である(図7参照)。IL−2の検出は、これらの培養細
胞が成熟T細胞であることを確実にする。
本発明のイン・ビトロ系で生成されたT細胞は、有糸分裂促進物質例えばPH
A、PMA、抗CD3レセプター(IL−2を伴う)に対する増殖応答につき、
又は抗原に対する増殖応答について、公知技術を用いて試験することができる。
本発明の培養細胞は、リンパ向性病原体に感染し易い。特に、培養細胞は、ヒ
ト免疫不全ウイルスのT細胞向性株、HIV−1IIIBに感染し易い。例えば、胸
腺間質フィーダー層上での14日間の培養の後に、HIV−1IIIBにさらされた
本発明のT細胞は、HIVp24抗原を産生し、それは細胞上清において検出可
能である(図6参照)。擬似ウイルス標品即ち熱不活化したウイルスにさらした
培養細胞は、検出可能なp24を産生しない。HIV−1IIIBにさらした細胞は
又、HIV−1抗血清を用いてHIVについて陽性に染色される(図5参照)。
それ故、本発明は、有効なイン・ビトロTリンパ球生成系を提供する。本発明
のイン・ビトロ系を利用してT細胞発生を研究することができ、T細胞の分化及
び/又は増殖の所定の段階を邪魔し又は促進する潜在的な薬物の候補を同定する
こともできる。例えば、薬物を本発明の培養系に加えることができ、生成T細胞
の数、免疫表現型、公知のT細胞刺激(例えば、PHA、PMA、抗CD3レセ
プター及びIL2)に対する反応性、又は特定の病原体(例えば、HIV若しく
はHTLV)による感染に対するそれらの薬物の効果を、薬物を加えてないか又
は「偽薬」を加えた培養との比較によって測定することができる。「偽薬」は、
測定するパラメーター(例えば、細胞数等)に有意に影響を与えない化合物であ
る。所定の試験で用いる「偽薬」の特定の性質は、それと比較される薬物の特性
に依存する。例えば、もし問題の薬物が蛋白質であるならば、適当な偽薬は、そ
の蛋白質の変性バージョンであろう。当業者は、所定の薬物との比較のための適
当な偽薬を容易に同定することができるであろう。
本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系において試験することのできる典型的
薬物には、T細胞の発生及び/又は増殖に対する効果を有すると思われる任意の
すべての化合物(例えば、シクロフィリン)が含まれる。事実、本発明のイン・
ビトロTリンパ球生成系は又、試験すべき化合物の起源としても利用することが
できる。即ち、本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系又はその化合物は、公知
の手順に従って分画することができ(例えば、Huang 等、Cell 63:225-233,1990
;Zsebo 等、Cell 63:195-201,1990(各々を参考として本明細書中に援用する)
を参照されたい)、個々の画分を、T細胞発生に対するそれらの効果について試
験することができる。望ましい活性を有する画分(例えば、T細胞発生及び/又
は増殖の1つ以上の面に影響を与える画分)を、更に、個々の活性因子が同定さ
れるまで、公知の技術によって分画することができる。次いで、活性因子を精製
することができ、蛋白質因子をコードする遺伝子を当分野において利用できる技
術例えば Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons)及びCurrent Protocols in Immunology
(John Wiley & Sons)に開示されたものによ
ってクローン化することができる。
T細胞発生及び/又は増殖に影響を与える活性因子は、例えば、本発明のイン
・ビトロTリンパ球生成系の間質成分から導くことができる。不滅化してない又
は不滅化した一次間質細胞を利用することができる。不滅化技術(例えば、シミ
アンウイルス40(SV40)ラージT抗原又はミドルT抗原を用いる形質導入
)は、当分野で公知である(例えば、Williams等、Mol.Cell.Biol.8:3864,1988
を参照されたい)。
本発明の培養系は、所定の薬物(又は薬物の組合せ)がその効果を発揮するT
細胞個体発生中の時点を容易に決定することができるように、薬物を種々の時点
で加えることができるという更なる利点を有する。
本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系及びそれにより生成された細胞につい
ての他の貴重な応用は、T細胞の遺伝的操作のための系としてである。外来性の
遺伝物質を、遺伝子トランスファーの任意の利用可能な方法例えばトランスフォ
ーメーション、トランスフェクション、感染(例えば、レトロウイルスベクター
又はアデノウイルス若しくはアデノ随伴ウイルスを用いる)、形質導入、エレク
トロポレーション等(例えば、Sambrook等、前出、参照)を用いて、例えばCD
34+前駆細胞に導入した後に、サイトカインの存在下で培養することができる
。
T細胞を感染から保護する遺伝子例えば優性の負のHIV−1rev変異体又
はHIV−1アンチセンス構築物を含むT細胞を、本発明のイン・ビトロ系を用
いて生成することができる。望ましくは、本発明のイン・ビトロTリンパ球生成
系を用いて、T細胞に導入することのできる他の遺伝子には、例えば、公知の特
異性の抗体をコードする遺伝子;レセプターリガンド遺伝子構築物、T細胞の反
応性を促進する遺伝子(サイトカイン、サイトカインレセプター若しくは「共同
刺激分子」例えばCD28、B7、CD40、CD40リガンド等をコードする
遺伝子等)が含まれる。幾つかの場合には、本発明の生成T細胞が、同様の遺伝
的操作を受けていないT細胞と比較して増大した寛容を有するようにT細胞反応
性を制限する遺伝子を導入することが望ましい。
更に、本発明のイン・ビトロTリンパ球生成系を利用して特定の反応性を有す
るT細胞を生成することができる。ペプチド等の抗原を、その抗原に対して反応
性のT細胞のサブセットの増殖を誘導するためにこの培養系に加えることができ
る。幾つかの場合には、当業者には明らかであろうが、その抗原は抗原提示細胞
例えばT2細胞、活性化B細胞、マクロファージ又は樹状細胞のコンテキストに
て提示されるのが望ましい。かかる本発明の反応性T細胞は、例えば、病気例え
ば悪性又は感染性疾患の治療のための標的を定めた免疫学的反応を生成するため
の養子免疫療法で利用することができるであろう。
事実、本発明のイン・ビトロ系で生成されたT細胞は、それらが特異的反応性
を有するか否かによらず、種々の治療技術において利用することができる。特に
、本発明の系で生成されたT細胞は、例えば養子免疫療法、ワクチン療法及び/
又は遺伝子療法における製薬組成物において用いることができる。本発明のT細
胞を含む典型的な製薬組成物は、適宜、製薬上許容でき且つ適合性のキャリアー
と組合せた治療上有効な量のT細胞であり、それは、特定の遺伝子産物(上記参
照)を発現することのできる遺伝子配列でトランスフェクト(又は、トランスフ
ォーム若しくは感染)されていてもいなくてもよい。用語「製薬上許容でき且つ
適合性のキャリアー」は、ここで用いる場合、下記で一層完全に記載するが、(
i)ヒト若しくは他の動物への投与に適した1つ以上の適合性充填希釈剤若しく
は封入物質及び/又は(ii)T細胞を標的に送達することのできる系をいう。従っ
て、本発明において、用語「キャリアー」は、この発明のT細胞と結合して投与
を容易にする有機若しくは無機の成分(天然若しくは合成)を意味する。
用語「治療上有効な量」は、所望の結果を生じ、治療される特定の状態に対し
て所望の影響力を発揮する本発明の製薬組成物の量をいう。種々の濃度を、同じ
成分を取り込んでいる組成物の調製において用いて、治療を受ける患者の年齢、
状態の重さ、治療の持続時間及び/又は投与の様式における変動に備えることが
できる。
用語「適合性の」は、ここで用いる場合、製薬組成物の成分が、所望の製薬効
果を実質的に損なう相互作用を生じることなく本発明のT細胞と及び互いに混合
され得ることを意味する。
本発明のT細胞は、それ自体(正味)で又は製薬上許容し得る塩と組合せて投
与することができる。製薬上許容し得ない塩は、幾つかの場合には、製薬上許容
し得る塩を調製するために便利に用いることができ、それ故、この発明の範囲か
ら除かれない。製薬上許容し得る塩には、次の酸から調製されるものが含まれる
が、これらに限られない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸
、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスル
ホン酸、蟻酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸及びベンゼン
スルホン酸。製薬上許容し得る塩は又、カルボン酸基のアルカリ金属又はアルカ
リ土類塩例えばナトリウム、カリウム又はカルシウム塩として調製することもで
きる。
本発明の製薬組成物は、非経口投与に最も適している。用語「非経口」は、皮
下注射、静脈、筋肉、胸骨内注射又は点滴技術を含む。非経口投与に適した好適
組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張であるこの発明のT細胞の無菌
水性調製物を含んでよい。用い得る許容し得るビヒクル及び溶媒の内には、水、
リンゲル溶液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。
この発明のT細胞は又、例えば、ワクチンにおける使用のための部分に結合さ
せることもできる。このT細胞が結合される部分は、蛋白質、炭水化物、脂質等
であってよい。カップリングは、T細胞と他の分子がそれぞれの活性を保持する
ならば、これらの2つの部分を結合する任意の化学反応によって達成することが
できる。この結合は、多くの化学的機構例えば共有結合、親和性結合、インター
カレーション、配位結合及び複合体形成を含むことができる。好適な結合は、共
有結合である。共有結合は、存在する側鎖の直接的縮合又は外部の架橋分子の組
み込みによって達成することができる。多くの二価又は多価の結合剤は、例えば
、蛋白質分子を他の分子(例えば、本発明のT細胞と結合した分子)にカップリ
ングさせるのに有用である。
例えば、代表的なカップリング剤には、有機化合物例えばチオエステル、カル
ボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド
、ジアゾベンゼン及びヘキサメチレンジアミンが含まれ得る。この一覧は、当分
野で公知の種々のクラスのカップリング剤を網羅することを意図するものではな
く、一層一般的なカップリング剤の例示である(例えば、Killen等、J.Immun.13
3:1335-2549,1984; Jansen等、Immunol.Rev.62:185-216,1982; 及びVitetta
等、前出を参照されたい)。
T細胞が結合し得る部分は、アジュバントであってもよい。用語「アジュバン
ト」は、患者における免疫応答を強化するT細胞に取込まれ又はT細胞と同時に
投与される任意の物質を含むことを意図している。アジュバントには、アルミニ
ウム化合物例えばゲル、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムゲル、及び
完全若しくは不完全フロイントアジュバントが含まれる。パラフィン油は、種々
の型の油例えばスクアレン又はピーナッツ油で置き換えることができる。アジュ
バント特性を有する他の物質には、BCG(弱毒化Mycobacterium tuberculosis
に他の微生物誘導体を加えたもの)、リン酸カルシウム、レバミソール、イソプ
リノシン、ポリアニオン(例えば、ポリA:U)、ルーティナン、百日咳毒素、
脂質A、サポニン及びペプチド例えばムラミルジペプチドが含まれる。例えば、
ランタン及びセリウムの稀土類塩も又、アジュバントとして用いることができる
。必要とされるアジュバントの量は、患者及び用いる特定の治療に依存し、過度
の実験を用いることなく当業者によって容易に決定することができる。それ故に
、本発明の典型的な製薬組成物は、治療上有効な量のこの発明のT細胞を単独で
又は免疫アジュバント及び/又はキャリアーと組み合わせて含むことができる。
本発明のイン・ビトロ系で培養された細胞はHIV−1による感染を受け易い
ので、この系を用いて、特に発生中のT細胞におけるHIV−1感染及び/又は
複製を阻止する薬物を同定することができる。本発明のイン・ビトロ系を用いて
HIV感染した細胞の発生及び/又は増殖を阻止する薬物を同定することもでき
る。例えば、標準的なウイルス感染技術を用いて、本発明のイン・ビトロ培養中
の細胞に、HIV−1の実験室株(例えば、HIV−1IIIB)又はHIV−1感
染した個人からの一次患者単離株を感染させることができる。可能性のある薬物
を、感染中の種々の時点で培養に加えることができ、それらの薬物のウイルス感
染に対する効果を、標準的HIV−1検出系(例えば、HIV−1p24抗原に
ついてのアッセイ、逆転写酵素アッセイ、免疫蛍光アッセイ又はPCRベースの
アッセイ)を利用し且つ見出された結果を薬物で処理してない感染培養物又は上
記の偽薬で処理した感染培養物と比較してアッセイすることができる。本発明
の系を用いて分析することのできる幾つかの可能性のある薬物及びそれらの薬物
のHIV感染に対する効果をアッセイする方法の例に関しては、例えば、Tsubot
a 等、J.Clin.Invest.86:1684-1689,1990; Gao 等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90
:8925-8928,1993;及びMeyerhans 等、J.Virol.68:535-540,1994を参照されたい
。
この発明を、更に、下記の実施例によって説明するが、これらは、決して更に
限定するものと解釈すべきではない。この出願中で引用されたすべての参考書類
(参考文献、発行された特許、公開された特許出願及び同時係属中の特許出願を
含む)を、明白に、参考として本明細書中に援用する。
実施例
実施例1:イン・ビトロで生成されたT細胞の調製及び分析胸腺間質培養
胸腺を、告知に基づく母親の同意の後に選択的に流産した妊娠18〜24週目の
ヒト胎児から取り出して(メリーランド、Laurel在、Anatomic Gift Foundation)室温
で培養培地中に移した。胸腺組織を、外科用ナイフを用いて小断片にミンスし、
次いで、組織ふるいを通して単細胞懸濁液を得た。細胞を、リン酸緩衝塩溶液(
PBS)にて2回洗い、20%FCS(ミズーリ、St.Louis 在、Sigma)、グルタミ
ン、ペニシリン及びストレプトマイシンを含むIscove改変ダルベッコ培地(IM
DM)(Washington,DC 在、Mediatech)中に再懸濁させた(2×106/mlの
密度)。この細胞懸濁液を、24ウェル組織培養プレートに、ウェル当り1ml
でプレートして、5%CO2を含む加湿インキュベーター中で、10〜14日間
37℃で培養して集密的間質の単層を形成させた。直ちに使用しない胸腺細胞は
、10%DMSOにて低温保存し、解凍後に培地で洗った後に上記のようにプレ
ートした。成人骨髄及び胎児肝からのCD34±細胞の精製
告知に基づく同意を得て、健康な成人志願者から腸骨稜吸引により骨髄試料を
得た。胸腺について上記したように胎児肝(妊娠18〜24週目)を得て、単細
胞懸濁液を同様にして調製した。単核細胞(MNC)を、Ficoll−Pac
que(スウェーデン、Uppsala在、Pharmacia Biotechnology)上での遠心分離によっ
て骨髄又は肝臓試料から分離し、2回洗って、IMDM中に懸濁させた。骨髄M
NCを一晩培養して粘着細胞を除去してから更なる精製を行なった。
CD34+画分を単離するために、これらの細胞を先ずマウス抗ヒトCD34
IgG1モノクローナル抗体(メイン、Westbrook 在、Amac Inc.)と共に1時間4
℃にインキュベートし、IMDMにて2回洗ってから、抗マウスIgG(ニューヨーク
、Great Neck在、Dynal Inc.)で被覆したDynabeadsM−450と共に
1時間4℃で穏やかに撹拌しながらインキュベートした。選択した細胞をマグネ
ットを用いて4回洗い、顕微鏡検査によってそれらの純度をチェックした。幾つ
かの実験において、骨髄MNCは又、負のビーズ選択により(マウス抗CD2モ
ノクローナルIgG1抗体で被覆したDynabeadsM−450(Dynal In
c.)を用いる負の選択の2ラウンドにより又は抗CD34DETACHABEA
DS(商標)(Dynal,Inc.)の使用による)又はセルソーティングによって、T
系列の細胞を涸渇させた。CD2+CD34-及びCD2+CD34+画分を、対照
実験での使用のために、FACSにより精製した。蛍光活性化セルソーター(FACS)分析による骨髄細胞画分の精製
骨髄MNCを、下記のように、FITC結合した抗CD34及びPE結合した
抗CD2抗体を用いて染色した。染色した細胞を、FACS Vantageセ
ルソーター(カリフォルニア、San Jose在、Becton Dickinson)を用いてソートした;
2色蛍光をFL1及びFL2チャンネルでログ増幅を用いて定量し、CD34+
CD2+及びCD34+CD2-画分を別々に集めた。CD34±培養
ウェル当り5×104〜105の上記のように精製したCD34+を、最初に多
数回洗ってすべての非粘着細胞を除去した胸腺間質単層上にプレートした(幾
つかの実験では15Gyで照射した)。次いで、これらの細胞を、下記のように
、追加のサイトカインを有するか又は有しないIMDM/20%FCSにて、更
に2〜4週間培養した。骨髄間質単層又は胸腺間質の代りに間質を有しない空の
ウェルの何れかを用いて対照用培養を行なった。培養には、各ウェルから培地の
大部分を注意深く取り除いて1mlの新鮮な培地及び適当なサイトカインで置き
換えることによって毎週2回培地を供給した。サイトカイン
次のヒトのサイトカインを組合せて加えて、T系列分化を促進するための最適
条件を達成した:5%、インターロイキン12(IL−12)、10ng/ml
(ニューメキシコ、Minneapolis 在、R&D Systems)及びflk2/flt3リガンド、
100/ng(ワシントン、Seattle 在、ImmunexのS.Lyman 博士提供)。フローサイトメトリーによる培養細胞の免疫表現型分類
細胞を、プレートしてから2〜4週間の種々の時点で、培養プレートから、間
質細胞を後に残すように、穏やかな吸引によって採集した。これらの細胞を計数
し、トリパンブルー染色によりそれらの生存力を評価した。2〜5×105細胞
のアリコートをPBS中で2回洗い、ヒト表面抗原に直接結合した(FITC又
はPE)マウスモノクローナル抗体を用いて染色した。用いた抗体は、次のもの
であった:FITC−抗CD34(Amac Inc.)、FITC−抗CD2及び抗C
D7、PE−抗CD2、抗CD3、抗CD4、抗CD7及び抗CD8(マサチューセッツ、
Boston 在、Exalpha Corp.)、FITC−抗TCRα/β1(Becton Dickinson
)、FITC−抗CD56+抗CD16。FITC及びPE結合したマウスイソ
型対照抗体を各培養について用いた。染色を製造者の指示に従って行ない、細胞
を1%パラホルムアルデヒドにて固定してからフローサイトメトリーにより分析
した。フローサイトメトリー分析を、各試料からの10,000細胞について、
FACScanサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて行なった。二重色
彩免疫蛍光を、FL1及びFL2チャンネルでログ増幅を用いて定量し、ヒュー
レットパッカード9000シリーズコンピューター用のLYSYSII
(Becton Dickinson)ソフトウェアを用いて分析した。
図3は、flk2/flt3リガンド及びIL−12を補った本発明のCD2
涸渇したCD34+細胞培養の典型的なフローサイトメトリー分析(21日目に
採集)を示す。培養間でかなりの変動があったが、flk2/flt3リガンド
とIL−12の組合せは、一貫して、T細胞マーカーを発現する細胞の最高画分
を生じた。精製CD34+細胞のこれらのサイトカインとの14〜35日間の培
養は、17〜74%のCD2発現、1.5〜34%のCD3発現及び16〜61
%のCD4発現を生じた。CD7の発現は、殆どの実験において、CD2の発現
より低かった。CD8発現は、殆どの培養において低く(≦15%)、CD16
又はCD56(ナチュラルキラー細胞のマーカー)の検出可能な発現はなかった
。
図9は、内部の指示について記載した系で培養したCD34+、CD2-骨髄細
胞の他の典型的フローサイトメトリー分析を示している。培養細胞によるPMA/PHA刺激されたIL−2産生
採集した細胞中の比較的成熟したT細胞の存在を確認するために、200μl
のIMDM/20%FCS中の105のアリコートを、フィトヘマグルチニン(
PHA)、3μg/ml及びホルボールミリスチン酸(PMA)、50ng/m
l(両方ともSigma 社製)の添加を伴って又は伴わないで培養した。上記のよう
に分離した骨髄MNCのCD2+画分を陽性対照として用いた。48時間後に培
養上清を採集し、ELISA(R & D System )によりインターロイキン2(I
L−2)濃度をアッセイするまで−20℃に保存した。低いが検出可能なレベル
のIL−2が、これらの培養上清中に認められた。RAG−2及びIL−2遺伝子発現についての逆転写とカップルしたポリメラー ゼ連鎖反応(RT−PCR)
103〜104のソートし培養した細胞から、グアニジニウムイソチオシアネー
ト抽出及び塩化セシウム中での超遠心分離によって全RNAを調製した。ランダ
ムプライマー及びモロニー逆転写酵素(Gibco-BRL)を用いる逆転写により
cDNAを調製し、リンパ球分化を受けている細胞によってのみ一時的に発現さ
れるヒトRAG−2遺伝子の415塩基対(bp)領域に特異的なプライマーを
用いて増幅した。PCR産物を2%アガロースゲル電気泳動により分析して、エ
チジウムブロミド染色後にUV光下で写真を撮った(図4参照)。32P標識した
32塩基のプローブを用いるサザーンブロットハイブリダイゼーションとその後
のオートラジオグラフィーにより、特異性を確認した。
実施例2:イン・ビトロで生成されたT細胞のHIV−2IIIB感染
無細胞のHIV−1IIIB又は擬似ウイルス標品をイン・ビトロT細胞培養に加
えて、HIV−1感染に対する感染性を測定した。3〜4日間隔で上清を集めて
HIVp24抗原レベルをELISAにより測定した。同等物
前述したことは、本発明のある好適具体例の詳細な説明に過ぎないということ
は理解されるべきである。それ故、この発明の精神及び範囲から離れることなく
種々の改変及び同等物が為され得るということは、当業者には明白である。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),CA,JP
(72)発明者 フリードマン,アンドルー
イギリス国 2エフ1 7エヌビー カー
ディフ,グレインジタウン,ウィンステイ
クロース 4