【発明の詳細な説明】
多座金属錯体並びにこれらを製造する方法及びこれらの使用
発明の分野
本発明は、多座金属錯体(multidentate metal complexes)、及びこれらの治
療処置における使用に関する。
発明の背景
一般には、多座配位子(Kennard,Inorg.Chim.Acta 2:347(1967);Liu et a
l.,Inorg.Chem.31:5400(1992))、特に多座シッフ塩基配位子の金属錯体(Ho
lm et al.,Prog.Inorg.Chem.1:83(1966);Patterson and Holm,Bioinorg.
Chem.4:257(1975);Jurisson et al.,Inorg.Chem.23:4743(1984);Green et
al,,J.Am.Chem.Soc.,106:3689(1984))は、公知であり、多年の間研究さ
れている。これら金属錯体の磁気的、電気的、及び電気化学的特性が特徴づけら
れており、シッフ塩基配位子のバックボーン上の置換基の性質にかなり依存する
ことが見いだされている(Holm et al.,Prog.Inorg.Chem.1:83(1966))。直
線状のN4O2供与体基を含有するシッフ塩基配位子の金属錯体(Das Sarma and B
allar,J.Am.Chem.Soc.76:4051(1954);Das Sarma et al.,J.Am.Chem.S
oc.86:14(1964);Tweedle and Wilson,J.Am.Chem.Soc.98:4824(1976);Si
nn et al.,J.Am.Chem.Soc,100:3375(1978);Evans and Jakubovic,Polyhe
dron 7:1881(1988);Chandra and Chakravorty,Inorg.Chem.31:760(1992);T
sang et al.,J.Nuc.Med.34:1127(1993))、及び直線状のN4O2基を有する
類似のアミンフェノール配位子の金属錯体(Wong et al,Inorg.Chem.34:93(1
995))が報告されている。すべてのこれら多座配位子及び対応する金属錯体の、
従来の生物医学的な興味は、放射性医薬として、金属の過剰摂取状態及び毒性の
治療に使用するためのキレート剤としてのこれらの使用の可能性により生じてい
た。
マラリアは、最も重篤で広く行き渡った感染症の1つであり、4億以上の事例
と2百50万の死亡が、全世界、特に熱帯地方で年間に起こっている(Muller a
nd
Baker,Medical Parasitology,Gower Medical Publishing,London(1990))。
加えて、旅行者、移住者及び軍人による近年の米国へのマラリアの移入の増加に
より、この疾患の国民の注目が再燃している。人に感染する幾つかのマラリアの
種のうち、最も豊富で致命的であるのは、三日熱マラリアの原因微生物であるPl
asmodium falciparumである、最近の数十年間にわたって、多くの探索及び開発
が広範囲の抗マラリア薬で研究されている。
抗マラリアの化学療法には、歴史的に、ターゲット療法、抑制治療及び/又は
臨床治療がある。抗マラリア薬は、大まかには、作用機構に基づいて幾つかの明
確なグループに分けられる。クロロキン、プロマキン、キニン及びこれらの誘導
体のようなより古い周知の医薬によって特徴づけられる第一のグループは、迅速
な細胞学的作用を示す。このグループのうち、クロロキンは、マラリアの予防及
び治療の最も一般的な、よく認容され、費用効率のよい医薬である(Muller and
Baker,Medical Parasitology,Gower Medical Publishing,London(1990))。
これらの医薬は、寄生中内に選択的に蓄積し、消化性液胞の機能を妨害すると
考えられている。実際に、Plasmodium寄生虫のクロロキンに選択的な株は、これ
らの消化性液胞に約800倍クロロキンを濃縮させる(Veignie and Moreau,An
n,Trop.Med.Pafastol.85:229(1991))。消化性液胞は、寄生虫の主要栄養源
である宿主のヘモグロビンの分解に応答する寄生虫の重要な器官である。消化性
液胞は、酸性pH及び酸加水分解酵素の高含量のようなリソソーム様の特性を有
する(Goldberg and Slater,Parasitl.Today 8:280(1992))。消化性液胞内で
のヘモグロビンの分解は、もっぱら消化性液胞に見出される酵素であるヘムポリ
メラーゼによって重合により解毒される色素体に大量の毒性ヘムを生じる。クロ
ロキンは、クロロキン感受性寄生虫の消化性液胞に見出される濃度で、in vitro
でヘムポリメラーゼを阻害する。これにより、消化性液胞でのクロロキンの蓄積
が色素体の形成に寄与するという観測が説明される(Slater and Cerami,Natur
e 355:167(1992)(London))。しかし、現在、クロロキン耐性微生物が、マラ
リアが風土病であるそれぞれの主要地域から報告されている(van Es et al.,C
lin.Invest.Med.16:285(1993))。
クロログアニド、ピリメタミン、スルホンアミド、及び誘導体により代表され
る医薬の第二の主要グループは、パラアミノ安息香酸(PABA)からホリニン
酸(ホリニン酸塩(folate))の合成を攻撃し、標的にして、遅くするという作
用メカニズムを有する。これらの医薬は、宿主哺乳動物細胞では起こらないPA
BAのホリニン酸塩への取り込みを妨害するか、又は寄生性ジヒドロホリニン酸
塩還元酵素を阻害する傾向がある。後天的又は先天的なこれらの医薬に対する医
薬耐性が実験室で容易に示され、第一のグループと同様に、それぞれの主要な固
有マラリア地域から報告されている。
抗マラリア治療への幾つかの他のアプローチが知られている。米国特許第5,
270,037には、インターフェロンを含有する組成物でマラリアを治療する
ことが開示されている。
加えて、鉄キレート剤の幾つかの遊離のリガンドでマラリアを治療することを
教示する刊行物が多く存在する。例えば、WO93/00082を参照。これに
は、哺乳動物細胞から鉄(III)を除去するのに有用なヒドロアメート(hydroam
ate)誘導体の使用、及びマラリアを発症するPlasmodium falciparumのような病
原性微生物により起こる疾患の治療が開示されている。更に、EPA214,9
33、EPA214,101、Iheanacho et al.,Trans.R.Soc.Trop.Med.
Hyg.84:213-216(1990),Stahel et al.,Am.J.Trop.Med.Hyg.39:236-240(
1988),Hershko and Peto,J.Med.Chem.168:375-387(1988),及びHershko et
al.,J.Inorg.Biochem.47:267-277(1992)を参照。これらは、マラリアの治
療のための他の鉄キレート剤の使用を教示する。
従って、Plasmodium種、特に新生の薬物耐性P.falciparum種(Sharma,Natur
e 373:279(1995))に対して効果のある新規な抗マラリア薬を発見、及び開発す
る緊急の必要性がある。
発明の概要
本発明は、多座配位子を含有する幾つかの完全な金属錯体が抗マラリア薬とし
て効果があるということを本発明者らが見出したことによる。従って、本発明は
、マラリアを治療するために使用されうる物質の新規な組成物、及びこれらの組
成物でマラリアを治療することに関する。加えて、該錯体は、癌の様な本明細書
中
で開示される他の疾患の治療、及び複数の医薬に耐性なトランスポーターに起因
する疾患に使用しうる、従って、本発明はまた、本発明の錯体を含有する薬学的
組成物に関する。
特に、本発明はまた、下式Iのカチオン性多座金属錯体に関する。
但し、
MはFe、In、Ga又はAlである;
破線は単結合または二重結合を表す;
細かい平行線で表した線は、金属カチオン(M)への配位を表す;
A及びBは酸素であるか、又はArが2−ピリジル又は任意に置換された
2−ピロリルである場合、窒素上の共有された電子対である;
Arは任意に置換されたフェニル、任意に置換されたナフチル、任意に置
換された2−ピリジル又は任意に置換された2−ピロリルである;及び
Xは(CHR2)p[NR3(CHR4)q]rである。但し、p及びrは独立
に1、2、3、4、5又は6であり、rは0、1又は2であり、R2、R3及びR4
は独立に、水素、低級アルキル又はフェニルであるか、又はp又はqがそれぞ
れ2よりも大きい場合、2つの隣り合ったR2又はR4基は二重結合又は縮合した
ベンゼン環を表す;
但し、rが1又は2である場合、金属への1又は2の追加の配位部位が存
在する。
該錯体は、更に、−A-(但し、−A-は薬学的に許容しうるアニオンである。
)を任意に含有する。
本発明はまた、式Iに従った多座カチオン性金属錯体であって、条件(A)と
してArの少なくとも1つの置換基がホウ素を含有するものに関する。
本発明はまた、式Iに従った多座カチオン性金属錯体であって、条件(B)と
してArの少なくとも1つの置換基が薬学的に活性な置換基への結合を含有する
ものを提供する。
本発明はまた、Xが任意に置換されたフェニルである式Iに従った多座カチオ
ン性金属錯体を提供する。Xが置換されたフェニルである場合、置換基は低級ア
ルキル基であり、好ましくはメチル基がN結合に関してメタ及びパラ位にある。
本発明は更に、N,N’−ビス[3−(2−ヒドロキシ−3−メトキシベンジ
ルイミノ)プロピル]エチレンジアミンM(III)+A-、N,N’−ビス[3−
(2−ヒドロキシ−3−エトキシベンジルイミノ)プロピル]エチレンジアミン
M(III)-A-、N,N’−ビス[3−(2−ヒドロキシ−3−メトキシベンジ
ルイミノ)プロピル]エチレンジアミンM(III)+A-、N,N’−ビス[3−
(2−ヒドロキシ−3−メトキシ−5−ブロモベンジルイミノ)プロピル]エチ
レンジアミンM(III)+A-、N,N’−ビス[3−(2−ヒドロキシ−3−メ
トキシ−5−クロロベンジルイミノ)プロピル]エチレンジアミンM(III)+A-
、N,N’−ビス[3−(2−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミノ)プ
ロピル]エチレンジアミンM(III)+A-、N,N’−ビス[3−(2−ヒドロ
キシ−4,6−ジメトキシベンジルアミノ)プロピル]エチレンジアミンM(II
I)+A-、N,N’−ビス[3−(2−ヒドロキシ−3−メトキシ−5−ブロモ
ベンジルアミノ)プロヒル]エチレンジアミンM(III)+A-、及びN,N’−
ビス[3−(2−ヒドロキシ−5−クロロベンジルアミノ)プロピル]エチレン
ジアミンM(III)+A-(但し、M(III)はFe、In、Ga又はAlであり、
A-は薬学的に許容しうるアニオンである。)よりなる群がら選択される多座カ
チオン性金属錯体に関する。
本発明はまた、N,N’−ビス[3−(2−ヒドロキシ−3−フルオロベンジ
ルイミノ)プロピル]エチンンジアミンM(III)+A-、N,N’−ビス[3−
(2−ヒドロキシ−3−フルオロベンジルアミノ)プロピル]エチレンジアミン
M(III)+A-、N,N’−ビス[3−(2−ヒドロキシ−5−ブロモベンジル
イミノ)プロピル]エチレンジアミンM(III)+A-、N,N’−ビス[3−(
2−ヒドロキシ−5−ブロモベンジルイミノ)プロピル]エチレンジアミンM(
III)+A-、N,N’−ビス[3−(2−ヒドロキシ−5−ブロモベンジルアミ
ノ)プロ
ピル]エチレンジアミンM(III)+A-(但し、、M(III)はFe(III)、I
n(III)、Ga(III)又はAl(III)であり、A-は薬学的に許容しうるアニ
オンである。)よりなる群から選択される多座カチオン性金属錯体に関する。
本発明はまた、本発明の何れかの錯体、及び薬学的に許容しうる担体を含有す
る薬学的組成物に関する。
本発明はまた、式Iの多座カチオン性金属錯体の効果的な量を投与することを
具備したマラリアの治療方法に関する。
本発明はまた、式Iの多座カチオン性金属錯体の効果的な量を、ガンの治療の
必要なときに動物に投与することを具備した癌の治療方法に関する。
本発明はまた、トランスポーターの複数医薬ファミリーに起因する疾患の治療
方法であって、効果的な量の式Iの多座カチオン性金属錯体(但し、式Iにおい
て、条件(A)として、好ましくは、Arの置換基の少なくとも1つがホウ素を
含有する。)を該方法の必要なときに動物に投与することを具備した方法に関す
る。
本発明はまた、癌の治療における光力学的治療を強化する方法であって、(a
)効果的な量の式Iの多座カチオン性金属錯体を該方法の必要なときに動物に投
与すること、(b)動物のガン細胞を、前記ガン細胞を殺すのに効果的な光の波
長にさらすことを具備した方法に関する。
本発明はまた、ホウ素−中性子治療により癌を治療する方法であって、(a)
効果的な量の式Iの多座カチオン性金属錯体を、該方法の必要なときに動物に投
与すること、(b)前記動物のガン細胞を、前記ガン細胞を殺すのに効果的な中
性子線にさらすことを具備した方法に関する。
本発明はまた、薬理学的に活性な物質の経口吸収又は細胞での蓄積を増加させ
る方法であって、効果的な量の式Iの多座カチオン性金属錯体(但し、条件(B
)として、Arの少なくとも1つの置換基が薬学的に活性な置換基への結合を含
有する。)を、該方法の必要なときに動物に投与することを具備した方法に関す
る。
本明細書中で説明する全ての錯体の好ましい態様では、細かい平行線で表した
線が、金属(III)カチオン(M)への配位を表す。
図面の簡単な説明
図1:P.falciparum成長阻害に関する置換されたMENPBI−Fe(III)
錯体の濃度−効果曲線。■=3−OMeMENPBI−Fe(III);□=3−
OEtMENPBI−Fe(III);及び●=4,6−ジ−OMeMENPBI
−Fe(III)。
図2:KB−3−1及びKB−8−5細胞内のMENPBI錯体の細胞毒性。
図2は、ヒト腎臓細胞カルチノーマの薬物感受性細胞(KB−3−1)及び誘導
された複数医薬感受性細胞(KB−8−5)の細胞毒性活性に関する置換された
MENPBI−Fe(III)錯体の濃度効果を示すグラフである。但し、○、▽
=親KB−3−1細胞;●、▼=複数医薬耐性KB−8−5細胞;○、●=ME
MPBI−Fe(III)錯体;及び▽、▼=コルキシン(colchicine)細胞毒性
対照である。
図3:トランスフェノール配置で表された、四座(N4O2)エチレンジアミン
−ビス(ポリ(R−ベンジルイミノ))リガンド金属(III)モノカチオン性錯
体の構造。
図4A−B:培養物内の赤血球内P.falciparumに関する4,6−ジメトキシ
−ENBPIFe(III)の効果。(図4A):抗マラリア活性の濃度−効果曲
線:クロロキン感受性(HB3)及び耐性(FCR−3、Indo、Dd2)株
を、種々の濃度の阻害剤の存在下又は非存在下で成長させた。成長阻害を3H−
ヒポキサンチンの取り込みアッセイで測定した。データは3回の測定の平均値で
示した。エラーバー(記号よりも大きい場合)は±SEMを表す。(図4B):
抗マラリア活性の時間経過:初期(リング)状態(a)での寄生虫は、5μMの
阻害剤又はDMSOビヒクル(vehicle)でインキュベートした。14時間(b
)に、処理された寄生虫をこれらの細胞質に導入し始め、初期トロフォゾイト段
階まで成長させた。24時間の時点(c)で、処理された寄生虫は更に成長せず
、異常な形態がみられた。30時間(d)に、若干の残った寄生虫は核凝縮性(
pyknotic)であった 対照的に、対照寄生虫は、後期トロフォゾイト段階まで2
4時間(e)で成長し、大きな消化性液胞がヘモゾイン(hemozoin)で満たされ
ていた。30時間(f)に、対照寄生虫は、正常なシゾゴニーを受けた。再度、
ヘモゾインの
充満した液胞がみられた。
図5:4,6−ジメトキシ−ENBPIFe(III)錯体によろヘム重合の阻
害。ヘム重合を、予め形成されたヘモゾイン核形成(白丸)又はヒスチジン富化
タンパクIIで促進される反応(黒丸)により、種々の濃度の医薬の存在下でアッ
セイした。データを代表的な実験から得た。値は2つの独立の測定の平均である
。
図6:六座R−ENBPIリガンドの一般的構造。
図7:R−ENBPI金属錯体の合成経路。
図8A−B:H3Mabi(1)のプロトンデカップル13CNMRスペクトル
(75.4MHz)(図8A);及びCDCl3中、室温でのH3DMabi(2
)(図8B)。化学シフトは、TMSを対照としたppmで表した。
図9A−L:細胞生存試験及びLC50測定。増加する濃度のR−ENBPI金
属(III)錯体(○、●)、25μMコルキシン((三角)、▼)又は金属(III
)イオン(□、■)での、親のKB−3−1(○、(三角)、□)及び複数医薬
耐性KB−8−5(●、▼、■)細胞の生存率。図9A−D、9E−H、91−
Lは、(i)3−MeO−R−ENBPI(図9A−D)、(ii)4,6−ジM
eO−R−ENBPI(図9E−H)、及び(iii)遊離金属(図91−L)の
、それぞれAl(III)、Fe(III)、Ga(III)、及びIn(III)錯体を表
す。各点は、3回の測定の平均を表し、バーは、記号よりも大きい場合には、±
SEMを表す。
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、多座配位子を含有する完全な金属錯体がマラリアの治療又は予防に
有効であるという発見に関連する。本発明で使用しうる多座配位子には、任意に
置換されたアリール、2−ピリジル、又はピロリルアルデヒドを、少なくとも2
つの一級又は二級アミンを含有するアミノ化合物と反応して得られるシッフ塩基
イミン、並びに該イミンを水素化ホウ素で還元することによって得られる還元さ
れたアミンが含まれる。好ましくは、多座配位子は二座−又は多座サリチルアル
ジアミン(salicylaldiamines)である。
多種類の多座配位子が当分野で製造されている。例えば、Kennard,Inorg.Ch
im.
Acta 2:347(1967);Liu et al.,Inorg.Chem.31:5400(1992),Holm et al.,Pro
g.Inorg.Chem.1:83(1966);Patterson and Holm,Bioinorg.Chem.4:257(19
75);Jurisson et al.,Inorg.Chem.23:4743(1984); Green et al.,J Am.C
hem.Soc.106:3689(1984);Holm et al.,Prog.Inorg.Chem.1:83(1966);Das
Sarma and Ballar,J.Am.Chem.Soc.76:4051(1954);Das Sarma et al.,J
Am.Chem.Soc.86:14(1964);Tweedle and Wilson,J.Am.Chem.Soc.98:4824
(1976);Sinn et al.,J.Am.Chem.Soc.100:3375(1978);Evans and Jakubov
ic,Polyheron 7:1881(1988);Chandra and Chakaravorty,Inorg.Chem.31:76
0(1992);Tsang et al.,J.Nuc.Med.34:1127(1993)、及びWong et al.,Inor
g.Chem.34:93(1995)を参照
開示された多座配位子金属錯体は、式Iを有しうる。
但し、
MはFe、In、Ga又はAlである;
破線は独立に単結合又は二重結合を表す;
細かい平行線で表した線は、金属カチオン(M)への配位を表す;
A及びBは酸素若しくは窒素であるか、又はArが2−ピリジル又は2−
ピロリルである場合、窒素上の共有された電子対である;
Arは任意に置換されたフェニル、ナフチル、2−ピリジル又は2−ピロ
リルである;
Xは(CHR2)p[NR3(CHR4)q]rである。但し、R2、R3及びR4
は独立に、水素、低級アルキル又はフェニルであるか、又はp又はqがそれぞ
れ2よりも大きい場合、2つの隣り合ったR2又はR4基は二重結合又は縮合した
ベンゼン環を表し、p及びqは独立に1、2、3、4、5又は6であり、rは0
、1又は2である;
但し、rが1又は2である場合、多座配位子は、金属へ5又は6回配位す
る。
該錯体は、−A-(−A-は薬学的に許容しうるアニオンである。)を更に含有
する。
式Iにおいて、Xは、上記以外では、任意に位置換されたフェニルであり得、
置換されている場合、フェニルは低級アルキル基を有し、N結合に関してメタ又
はパラ位にあるメチル基が好ましい。
Arの任意の置換基には、ホウ素原子(条件(A))を含有するが、又は薬学
的に活性な物質に結合されている(条件(B))。
好ましくは、多座配位子は、六座配位子N4O2アミンフェノール配位子、及び
類似のシッフ塩基フェノール配位子の一般的カテゴリーに入る。このような錯体
は、M[エチレンジアミンN,N’−ビス(プロピル)(2−ヒドロキシ R−
ベンジルアミノ)]錯体(M[ethylene diami Sne N,N'-bis(propyl)(2-hydroxy
R-benzylamino)]complexes)又は「MENPBA−錯体」、及びM[エチレンジ
アミン N,N’−ビス(プロピル)(2−ヒドロキシ R−ベンジルイミノ)
]錯体(M[ethylene diamine N,N-bis(propyl)(2-hydroxy R-benzylimino)]comp
lexes)又は「MENPBI−錯体」(但し、Rはアルキル又は置換されたアル
キル又はアリール又は置換されたアリール部分を表し、Mは所望の六座配位化学
及び生物学的活性を付与する何れかの金属を表す。)と称されうる。アルキレン
バックボーンの成分は、不飽和炭素鎖を容易に含み、所望の特性を付与する。最
も好ましい態様は、R=OMe及び/又はハロゲン部分、及びM=Fe(III)
を含む。好ましい錯体は、全体で(1+)のモノカチオンである。MENPBI
−錯体を製造するための代表的な一般手順の例として、MENPBI−Fe(II
I)の合成を以下に説明する。
本発明の金属錯体のアニオンカウンターイオンは、他には、クロライド、ブロ
マイド、アイオダイド、サルフェート、ホスフェート、アセテート、フマレート
、スクシネート、シトレート、タータレート等を含む薬学的に許容しうるアニオ
ンである。
多座配位子錯体は、以下のように製造される。一般に、この方法には、サリチ
ルアルデヒド、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、又は2−ピロリジンカルボ
キシアルデヒドをジアミンと縮合し、シッフ塩基を得ることが含まれる。シッフ
塩基自身は、金属塩と錯体を形成し得、抗マラリア薬、抗ガン剤又は薬学的エン
ハンサーとして投与されるか、又は水素化ホウ素ナトリウム又は水素化シアノホ
ウ素ナトリウムで還元され、アミンを生じる。これはまた、金属塩と錯体を形成
し得、抗マラリア薬、抗ガン剤又は薬学的エンハンサーとして使用されうる。
本発明で使用されうるジアミンの非制限的な例には、エチレンジアミン、ビス
(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)−1,
3−プロパンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(
2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(2−アミノプロピル)
−1,4−ブタンジアミン、ビス(2−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビ
ス(2−アミノエチル)エチレンジアミン、1,5,9−トリアザノナン、1,
4,9,12−テトラアゾドデカ−6−エン、1,2−プロピレンジアミン、1
,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−2−アミノ
エチルアミン、3−メチル−3−アミノプロピルアミン、4−メチル−4−アミ
ノブチルアミン、5−メチルアミノペンチルアミン、6−メチルアミノヘキシル
アミン、3−メチルアミノ−2−メチルプロピルアミン、2−エチルアミノエチ
ルアミン、3−エチルアミノプロピルアミン、4−エチルアミノブチルアミン、
5−エチルアミノペンチルアミン、6−エチルアミノヘキシルアミン、3−プロ
ピルアミノプロピルアミン、4−プロピルアミノブチルアミン、5−プロピルア
ミノペンチルアミン、及び6−プロピルアミノヘキシルアミンが含まれるがこれ
らに限定されない。
使用されうるサリチルアルデヒド誘導体の例は、式IIを有する。
但し、R3、R4、R5及びR6は独立に水素、ハロ、アルキル、アルコキシ
又はニトロである。
特別な例には、5−ブロモサリチルアルデヒド、5−クロロサリチルアルデヒ
ド、3−フルオロサリチルアルデヒド、3−メトキシサリチルアルデヒド、3−
エトキシサリチルアルデヒド、4,6−ジメトキシサリチルアルデヒド、5−ブ
ロモ−3−メトキシサリチルアルデヒド及び5−ニトロサリチルアルデヒド(こ
れらは商業的に利用可能である。)、並びにEvans and Jakubovic,Polyhedron
7:1881-1889(1988)により開示されたサリチルアルデヒド−5−スルホネート、T
sang et al.,J.Nucl.Med.34:1127-1131(1993)により開示された4,6−ジ
メトキシサリチルアルデヒド、及びTweedle and Wilson,J.Amer.Chem.Soc.
98:4824-4834(1976)により開示されたx−ニトロサリチルアルデヒド(明らかに
、ニトロ基の位置は未知である。)が含まれる。
使用されうるピリドカルボキシアルデヒドの例は、下記式IIIを有する。
但し、R3、R4、R5及びR6は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキ
シ、又はニトロである。
使用されうるピロリジンカルボキシアルデヒドの例は、下式IVを有する。
但し、R3、R4、R5及びR6は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキ
シ、又はニトロである。
例えば、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、及び対応する置換さ
れたサリチルアルデヒド、ピリドカルボキシアルデヒド、又はピロリジンカルボ
キシアルデヒド(1:2の比)をメタノールに溶解し、30分撹拌し、メタノー
ルに溶解したナトリウムメトキシドを滴下して処理する。30分後、溶液を、メ
タノールに溶解したM(III)塩(例えば、水和した硝酸第二鉄)で処理し、1
時間撹拌し、次いで濾過する。揮発分を減圧下に除去し、残渣を熱水に溶解し、
水に溶解したカリウムヘキサフルオロホスフェートを加える。揮発分を減圧下の
除去し、所望の置換されたMENPBI−M(III)(例えば、MENPBI−
Fe(III))残渣を水及びアセトンから結晶化する。置換された遊離の配位子
及びM+−錯体の分析及び特徴付けを、通常の1H−NMR、13C−NMR、及び
/又はGC−マススペクトルで行った。
式V〜XIIの以下の好ましいEMPBI又はENPBA錯体は、全体として中
性であるか、又は正電荷を有し得、荷電されている場合、薬学的に許容しうるア
ニオンであるA-を任意に含む。
好ましい本発明のモノカチオン性置換ENPBI−錯体は、下式Vを有する。
但し、
MはFe+3、In+3、Ga+3又はAl+3である;
破線は独立に単結合又は二重結合を表す;
細かい平行線で表した線は、金属カチオン(M)への配位を表す;
R1及びR2は独立に水素又はアルキルである;
R3、R4、R5及びR6は独立に、低級アルコキシ、ハロ又はニトロ基であ
る;及び
n=2、3、4、5又は6である。
特に好ましい化合物では、R3がメトキシであるか、又はR3がエトキシである
か、又はR4及びR6がメトキシである。
「低級アルコキシ」の語は、C1-6アルコキシ基を意味する。
「ハロ」の語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
「アルキル」の語は、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、好ましくは1から6の炭
素原子を含有するものである。
好ましくは、R3基には、OCH3、OC2H5、OC3H7、及びハロゲンが含ま
れる。
好ましくは、R4及びR6基は、OCH3及びOC2H5である。
好ましい置換されたメタロ[アルキレンジアミノ N,N’−ビス(アルキル
)(2−ヒドロキシ R−ベンジルイミノ)]錯体は、式VIを有する。
但し、
MはFe+3、In+3、Ga+3又はAl+3である;
破線は独立に単結合又は二重結合を表す;
細かい平行線で表した線は、金属カチオン(M)への配位を表す;
R1は独立に水素又はアルキルである;
R3、R4、R5及びR6は独立に、低級アルコキシ、ハロ又はニトロ基であ
る;及び
n=2、3、4、5又は6である。
特に好ましい置換されたMENPBI−錯体は、下式VIIを有する。
但し、
MはFe又はAlである;
破線は独立に単結合又は二重結合を表す;
細かい平行線で表した線は、金属カチオン(M)への配位を表す;
R3はOCH3又はOC2H5である;
R4及びR6はOCH3である;
R1及びR3はHである;及び
nは2であり、n’は3である。
他の好ましいENPBI錯体は、下式VIIIを有する。
但し、
MはFe+3、In+3、Ga+3又はAl+3である;
破線は単結合又は二重結合を表す;
細い平行な線で表された線は金属カチオン(M)への配位を表す;
R1は水素又はアルキルである;
R3、R4、R5及びR6は独立に低級アルコキシ、ハロ又はニトロ基である
;
R7及びR8は独立に水素又は低級アルキルである;及び
n=2、3、4、5又は6である。
他の好ましいENPBI錯体は、下式IXを有する。
但し、
MはFe+3、In+3、Ga+3又はAl+3である;
破線は単結合又は二重結合を表す;
細い平行な線で表された線は金属カチオン(M)への配位を表す;
R1は水素又はアルキルである;
R3、R4、R5及びR6は独立に低級アルコキシ、ハロ又はニトロ基である
;
R7、R8、R9及びR10は独立に水素又は低級アルキルである;及び
n=1、2、3、4、5又は6である。
他の好ましいENPBI錯体は、下式Xを有する。
但し、
MはFe+3、In+3、Ga+3又はAl+3である;
破線は単結合又は二重結合を表す;
細い平行な線で表された線は金属カチオン(M)への配位を表す;
R1は水素又はアルキルである;
R3、R4、R5及びR6は独立に低級アルコキシ、ハロ又はニトロ基である
;
R7及びR8は独立に水素又はアルキルである;
R9及びR10は独立に水素又は低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ又は
ニトロ基である;及び
n=1、2、3、4、5又は6である。
他の好ましいENPBI錯体は、下式XIを有する。
但し、
MはFe+3、In+3、Ga+3又はAl+3である;
破線は単結合又は二重結合を表す;
細い平行な線で表された線は金属カチオン(M)への配位を表す;
R1は水素又はアルキルである;
R3、R4、R5及びR6は独立に低級アルコキシ、ハロ又はニトロ基である
;
R7、R8、R11及びR12は独立に水素又は低級アルキルである;
R9及びR10は独立に水素又は低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ又は
ニトロ基である;及び
n=1、2、3、4、5又は6である。R11及びR12はメチルであること
が好ましい。
他の好ましいENPBI錯体は、下式XIIを有する。
MはFe+3、In+3、Ga+3又はAl+3である;
破線は単結合又は二重結合を表す;
細い平行な線で表された線は金属カチオン(M)への配位を表す;
R1は水素又はアルキルである;
R3、R4、R5及びR6は独立に低級アルコキシ、ハロ又はニトロ基である
;
R7及びR8は独立に水素又は低級アルキルである;及び
n=2、3、4、5又は6である。
特に好ましい置換されたMENPBA−錯体は、式I、V、VI、VIII、IX、X
、XI、及びXIIに類似の構造を有するが、シッフ塩基はアミンに還元されている
。
本発明の金属錯体は、1以上の公知の抗マラリア物質と共に投与されうる。公
知の抗マラリア物質は、これらの化学的組成物に基づいて、以下の6つの主要な
グループに分けることができる。
1)9−アミノアクリジン(例えば、メパクリン)、
2)4−アミノキノリン(例えば、アモジアキン、クロロキン、ヒドロキシ
クロロキン)、
3)8−アミノキノリン(例えば、プリマキン、キノシド(quinocide))
、
4)ジヒドロ葉酸リダクターゼに阻害作用を有するビグアニド(例えば、ク
ロロプログアニル、シクログアニル、プログアニル)、
5)ジアミノピリミジン(例えば、ピリメタミン)、
6)キニン塩
これらのグループに加えて、ダプソン、スルホンアミド、スルファニルアミン
及び及びテトラサイクリンのような抗体も抗マラリア薬として使用しうる。
これらの活性様式に依存して、公知の抗マラリア薬は以下のカテゴリーに分類
される。
1.−次組織段階に対して効果的な原因予防物質、
2.ぶり返し又は再発に向けられ、潜伏組織段階に対して効果的な活性物質
、
3.血液殺シゾント剤、
4.殺生殖母細胞剤(gametocytocides)
5.殺スポロント剤(spoeonticides)
第一のグループには、例えばプログアニル、ピリメタミン及びプリマキン並び
にこれらの誘導体が含まれ、スルファニルアミン、スルホンアミド及びテトラサ
イクリンも含まれる。第二のグループには、例えばプリマキン及びその類似体の
ような8−アミノキノリン及び誘導体、フロキサクリン、シクログアニル、ダプ
ソン、及びキナゾリンが含まれる。血液シゾントに対して活性な物質には、特に
、メパクリンのような4−アミノアクリジン、及びクロロキン又はクロロキンサ
ルフェートのような4−アミノキノリン、キニン、アモジアキン及びメパクリン
、メフロキン、及び、ハロファントレン、ピリメタミン、プログアニル、プリマ
キン及びスルファニルアミン及び特にプリマキンと組み合わせたスルホンアミド
のような関連化合物が含まれる。
共に投与されうる他の物質は、アルテミシニン(artemisinine)化合物、及び
、アルテスネート(artesunate)、アルテムエーテル(artemether)、ピペラキ
ン、ヒドロキシピペラキン、ピロナリジン、ハロファントレン、及び一般には、
ビグアニド及びキニン塩のような、その半合成誘導体をベースとしたセスキテル
ペンラクトンである。
上述の殺シゾント剤は、例えばP.vivax、P.malariae又はP.ovaleのシゾントに
対して効果的であるが、成熟した生殖母細胞には効果がない。プリマキン及びキ
ノシドのような8−アミノキノリンも生殖母細胞に対して効果的である。他の公
知の抗マラリア薬は、クロロプログアニル、シクログアニル(例えば、エンボニ
ン酸(embonic acid)の塩)、パマキン、プラスモシド、トタキン、スピロゲル
マニウム、フェブリフギン、ブルサトール、ブルセイン−A、ブルセイン−B、
ブルセイン−C、ヤダンジオリド(yadanziolide)−A、テブキン、エンピロリ
ン、ユーリコマノン、3−(4−イミダゾイル)−2−(ピバロイルアミノ)−
プロヒオニルヒドラジド、シンコニジン、クカビタシン(cucurbitacine)、ト
リピナジン、5−エチルチオリボース、アルテエーテル(arteether)(アルテ
ムエーテル(artemether)のエチルエーテル類似体)、アルテニリン酸(arteni
lic acid)、ピレキソール、アタラフィリニン、ジホルミルダプソン、ブルセア
ンチン、ニトロキン、オクタノイルプリマキン、プリメタミン プラス スルフ
ァドキシン、ヒベルニン、ダベキン、アルテリン酸、メフロキンキネート、ハー
フアントリン−ベータ−グリセロホスフェート、ニンボリド、セルゲオリド(Pi
crolenmma Pseudocoeffeaのカシノイド)、シマリカラクトン−D、フルオロキ
ン、フルオレンメタノール、イソウラミル、シクロロイシン、アセダプソン(ジ
アセチルダプソン)、ゲンチオピクリン、アムキネート(アムキノレート)、エ
ンドキン、ペンタキン、イソペンタキン、メチルクロロキン、アモピロキン、キ
ニン、ヒドロキニン(ジヒドロキニン)、ジメプラスミン、アザクリン、ジアプ
ロミン、メノクトン、シクロキン(ハロキン)、ラピノン、アリストキン、クロ
グアナミル、クロシグアニル、ブリンドキシム、シンコニン、トリピペラキン、
3−ヒドロキシ−2−(4−(4−フェニル)−シクロヘキシル)−1,4−ア
ントラキノン、アミノジアキン、4−メチル−5−n−ペントキシプリマキン、
4−メチル−5−n−ヘキソキシプリマキン、2−(4−(4−クロロフェニル
)−シクロヘキシル)−3−ヒドロキシ−1,4−ナフタレンジオン、ゴシポー
ル誘導体、ハロファントリン(1,3−ジクロロ−α−(2−ジブチルアミノ)
エチル)−6−(トリフルオロメチル)−9−フェナントレン−メタノール)、
シンコナアルカロイド(例えば、キニン、キニジン、シンコニンの組合せ)、N
,N’−ビス(3−((フェニルメチル)アミノ)プロピル)−1,8−オクタ
ンジアミン、N,N−ビス(3−((フェニルメチル)アミノ)−プロピル)−
1,7−ジアミノヘプタン、2−アセチル及び2−プロピオニル−ピリジンチオ
セミカルバゾンのセレニウム類似体、テブキン、2,6−ビス(1−ピペリジニ
ルメチル)−4−((7−(トリフルオロメチル)−4−キノリニル)アミノ)
−フェノール、4’
−クロロ−5−(1,1−ジメチルメチル)−3−(((1,1−ジメチルエチ
ル)アミノ)メチル)−(1,1’−ビフェニル−2−オールの一級リン酸エス
テル、N4−(2,6−ジメトキシ−4−メチル−5−(3−トリフルオロメチ
ル)−フェノキシ−8−キノリニル)−1,4−ペンタンジアミン、N,N−ジ
エチル−N’−(6−メトキシ−4−メチル−8−キノリニル)−1,6−ヘキ
サンジアミン、5−(N−アリール−トロパン−3−イル)−及び5−(ピペリ
ジン−4−イル)−2,4−ジアミノ−ピリミジン、4’−アミノ−4−n−プ
ロピルアミノ−2−メチル−ジフェニルスルホン、5−エチルチオリボース、リ
ボフラビン類似体、臭素酸塩としての1−(3−(2,4−ジクロロフェノキシ
)−1,6−ジヒドロ−6,6−ジメチル−1,3,5−トリアジン−2,4−
ジアミン、一塩酸塩としての1,6−ジヒドロ−6,6−ジメチル−1−(3−
(2,4,5−トリクロロフェノキシ)−プロポキシ)−1,3,5−トリアジ
ン−2,4−ジアミン、トランス−2−(4−(1,1−ジメチルエチル)−シ
クロヘキシル)−3−ヒドロキシ−1,4−ナフタレンジオン、エンピロリン、
ミリンカマイシン、トリピラジン、3−(4−イミダゾリル)−2−(ピバロイ
ルアミノ)プロピオニルヒドラジド、2−アセチルピリジン−チオセミカルバゾ
ン及びこれらのピロリジン誘導体である。
本発明はまた、他の細胞タイプに関するこれらの細胞毒性活性に対してこれら
の錯体を使用することに関する。このような細胞タイプには、CNS腫瘍、肺ガ
ン、肺、頭部及び頚部、ガンリンパ腫、白血病、卵巣カルチノーマ、肉腫、腎細
胞カルチノーマ、及び前立腺ガンが含まれる。
従って、本発明はまた、癌を治療する方法であって、前記細胞を、本発明の多
座カチオン性金属錯体の1つの効果的な量と接触することを具備した方法に関す
る。このような接触は、典型的には、動物にin vivoで投与することによって行
われるであろう。
本発明はまた、光力学的治療の強化剤としてこれらの金属錯体を使用すること
に関する。本発明の金属錯体のような光吸収性化学品は、ガン細胞によって選択
的に保持される。ガン細胞は、特定の光の波長(400から800nm)にさらさ
れると殺される。このようなアプローチは、局在化したガン細胞(及び循環系に
ないもの、例えば白血病細胞)、及びガン細胞が容易に接近できる場合に最もよ
く働く。Harrison's Principles of Internal Medicine,11th.Edition,Braunwal
d et al.,(eds.),McGraw-Hill Book Co,New York,N.Y.,pp441(1987)参照。この
ようなガン細胞の例には、CNS腫瘍、肺ガン、肺、頭部及び頚部、リンパ腫、
及びメラノーマが含まれる。
本発明はまた、ホウ素中性子治療でのホウ素原子を含有するこれらの金属錯体
の使用に関する。このような金属錯体は、式IIIの化合物(但し、R3、R4又は
R5の1つがニトロ基である。)をH2/Pd又はSn/HClのような還元剤と
反応し、対応するアニリンを得ることによって調製される。このアミンを、脱水
剤の存在下で、トリメチルアミン−ボランカルボン酸の活性エステル(シグマか
ら入手可能なベタインのα−ボロン類似体)とカップリングし、ボロン置換した
錯体を得ることができる。
この他には、カテコール(アルドリッチ)をサリチルアルデヒドに変換するこ
とができる。これは、サリチルアルデヒドを製造するためのMOMのオルソ直接
能力(direct ability)を利用して、エトキシメチルエーテル(MOM)で1つ
のヒドロキシル基を保護し、他のヒドロキシル基をアセテート(酢酸無水物)と
して保護し、次いで、アセテート基を脱保護(NaOH、MeOH)することを
利用する。引き続き、トリアルキルボランと反応し、最終段階でMOMを脱保護
する。
この他の方法は、配位子が金属の周りを取り巻く場合に使用される。等モルの
テトラフェニルホウ酸ナトリウムでの処理により、分子にホウ素を取り込むこと
ができる(Nozaki et al.,Inorg.Chem.34:2108(1995))
本発明の実施に使用されうる活性エステルの例には、N−ヒドロキシコハク酸
イミドの半コハク酸エステル、スルホ−N−ヒドロキシコハク酸イミド、ヒドロ
キシベンゾトリアゾール、及びp−ニトロフェノールが含まれる。脱水剤の例に
は、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−(3−ジメチルアミノプ
ロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)、及び1−(3−ジメチルアミ
ノプロピル)−3−エチルカルボジイミドメチロダイド(EDCI)が含まれる
。複合体を形成するためのEDCの使用は、米国特許第4,526,714及び
P
CT公開番号WO91/01750、及びArnon,R et al.,Proc.Natl.Acad.Sci
.(USA)77:6769-6772(1980)に開示されており、これらの開示は、参照文献として
本出願の一部をなす。
ホウ素含有錯体が調製されれば、これを例えば上記腫瘍の1つに苦しんでいる
患者に投与する。錯体は細胞によって取り込まれるであろう。中性子治療を行う
場合、ホウ素原子は、中性子を吸収し、これらのエネルギーを放出し、これによ
ってガン細胞が殺される。
本発明の金属錯体は、経口吸収を高めるために薬学的に活性な物質のデリバリ
ーツールとしても使用されうる。好ましくは、薬学的に活性な物質は、ベンゼン
環を介してペプチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド模倣物、ペプチド核酸類似
体又はこれらの誘導体に結合される。本発明の金属錯体の親油性カチオン特性は
、負の内部膜ポテンシャルに応答する際、細胞の膜二重層を横切って、結合され
た薬理学的に活性な物質を引き寄せる熱力学的推進力をもたらす。
従って、本発明はまた、細胞をターゲッティングするのに使用されうる薬理学
的に活性な物質−錯体複合体の製造に、本発明の錯体を使用することに関する。
該複合体は、上記アニリンと、薬理学的に活性な物質にアニリンアミンを結合で
きる二官能性結合基とを反応することによって得ることができる。
従って、本発明はまた、薬理学的に活性な物質に結合された本発明の多座配位
子−金属錯体を含有する錯体/薬理学的に活性な物質であって、該結合が、その
予想した薬理学的作用を達成する薬理学的に活性な物質の能力を実質的に阻害し
ないものに向けられる。
「結合基(linking group)」の語は、薬理学的に活性な物質に、錯体を共有
結合でカップリングするのに使用され、in vivoで薬理学的に活性な物質の薬理
学的作用を阻害しない1以上の二官能性分子を意味する。
薬理学的に活性な物質に錯体を結合するのに使用されうる結合基の例には、
但し、q=2〜5、x=2〜12である。及び
但し、YはN又はSであり、y=1〜3である。
この他には、他のサリチルアルデヒド誘導体を、5位のハロゲンの存在を利用
して、ジメチルホルムアミド中、Zn末及びNiCl2ビス(トリフェニルホス
フィン)を用いて、保護された誘導体(式II)及び3−ブロモキノリン(アルド
リッチ)を含むカップリング反応を介して合成しうる(Sharma et al.,J.Org.Ch
em.59:7785(1995))。
典型的には、無水琥珀酸との反応によって薬理学的に活性な物質を錯体のアニ
リノ誘導体に結合し、ヘミ−琥珀酸アミドを得る。次に、得られたヘミ−琥珀酸
アミドを脱水剤を用いて活性エステルに変換し、次いで該活性エステルを薬理学
的に活性物質上の求核性官能基と反応する。本発明の実施に使用しうる活性エス
テルの例には、N−ヒドロキシ琥珀酸イミドのヘミ−琥珀酸エステル、スルホ−
N−ヒドロキシ琥珀酸イミド、ヒドロキシベンズトリアゾール、及びp−ニトロ
フェノールが含まれる。脱水剤の例には、ジシクロヘキシルカルボジイミド、(
DCC)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(
EDC)、及び1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミ
ドメチオジド(EDCI)が含まれる。
この他には、R3、R4、R5及びR6がハロ基である場合、グリニヤール試薬を
マグネシウムとの反応で調製し、次いで、カルボニルを含有する薬理学的に活性
な物質と縮合しうる。カルボニル基を含有する薬理学的に活性な物質の例は、プ
ロゲステロン、ロリプラム、ロリシプリン、及びプロガビドである。
本発明の錯体と複合体を形成しうる薬理学的に活性な物質には、トランスフェ
ラーゼ、ハイドロラーゼ、イソメラーゼ、プロテアーゼ、リガーゼ、キナーゼの
ような酵素、及びエステラーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、及びペプチ
ダーゼのようなオキドリダクターゼ;ロイペプチン、キモスタチン及びペプスタ
インのような酵素阻害剤及び腫瘍アンギオテンシンファクターのような成長因子
が含まれるが、これらに限定されない。
他の適切な薬理学的に活性な物質は、プロゲステロン、エストロゲン及びアン
ドロゲンのような脂溶性ステロイド、並びに脂溶性ビタミンA、D、E及びKで
ある。
低分子量及び高分子量ポリペプチドに加えて、薬理学的に活性な物質は、抗炎
症薬(例えば、インドメタシン、フラビプロフェン、ケトプロフェン、イブプロ
フェン、フェニルブタゾン)、抗生物質(例えば、ベータ−ラクタム、アミノグ
リコシド、マクロライド、テトラサイクリン、プリリドンカルボン酸、ホスホマ
イシン)、抗腫瘍薬(例えば、アドリアマイシン、シスプラチン、ブレオマイシ
ン、マイトマイシン、フルオロウリシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、
アミノ酸(例えば、アスコルビン酸、N−アセチルトリプトファン)、抗真菌剤
、プロスタグランジン、ビタミン、ステロイド、及び抗ウイルス薬(例えば、A
ZT、DDI、アシクロビル、ヨードクリジン(iodxuridine)、アマンタジン
、及びビダラビン)でありうる。
本発明に従った組成物は、個々の投与方法に対して公知であり、使用されてい
る薬学的又は本草薬的形態、好ましくは、非経口投与で使用されるもの、特に、
当業者に利用可能なポンプを備えた連続的点滴又は間欠的点滴を含めた、静脈内
、筋肉内、皮下、皮内、関節内、鞘内、腹腔内点滴又は注射で使用されろものに
より投与されるが、又は、例えばEP−A−213,523に従った、例えばリ
ポソームをベースとしたマイクロカプセル化した製剤により投与されうる。
本発明に従った金属錯体の投与用のすぐに使用できる溶液を調製するためには
、この目的に対して公知の水性点滴溶液又は注射溶液を、任意に当分野で公知の
賦形剤、担体及び/又は安定化物質と共に使用しうる。本発明の目的のためのす
ぐに使用できる溶液は、例えば、水又はリン酸緩衝生理食塩水(pH7から7.
5)に金属錯体を溶解し、任意にツウィーン及び/又はゼラチン又はアルブミン
を投与の直前に追加し、この溶液を無菌条件下で適切な容器(例えば、シリンジ
、アンプル、袋)に移すことによって調製される。
本発明の目的で投与される金属錯体の量は、当分野で公知の投与量、疾患の重
篤度、応答速度、及び疾患の更なる経路、及び副作用によって決定されるであろ
う。一般的には、投与量は個々の基準に従って調節されなければならない。好ま
しくは、金属錯体は、1日あたり約50mgから500mgの効果的な投与量レベル
でそう物に投与されうる。
投与の方法及び投与量は、リポソームベースのマイクロカプセル化抗マラリア
物質であって、例えば、多くの刊行された特許文献に一部を挙げれば、EP−A
−213,523又はEP−A−152,379、及び、更に加えて、例えばE
P−A−354,442又はEP−B−56,781に従ったものも含めた、上
記の抗マラリア薬用の公知の治療プランに依存するであろう。
本発明の金属錯体及び従来の抗マラリア物質は、同時に投与することによって
、又は適切な経路で連続的又は逐次的投与で投与され、個々の活性物質は、例え
ばキットの形態で別々に、又は一緒にして直接に提供され、投与される。別々に
、又は間接的に若しくは直接的に一緒に存在する活性物質成分は、乾燥物質とし
て及び溶液として提供されうるが、マイクロカプセル化した形態も可能であり、
この場合、活性物質成分は、直接に一緒に使用してもよく、リポソーム混合物と
して、又は投与のための分離システムとして間接的に使用してもよい。これは、
同時に投与される2種類の活性物質成分、即ち抗マラリア薬及び金属錯体に対し
て有利である。
何れの動物も本発明の薬学的組成物で治療することが意図される。好ましくは
、このような動物はヒトであるが、本発明はそのような制限を意図していない。
更に詳述することなく、当業者は上述の説明を用いて、その最も広い範囲で本
発明を利用しうると信ずる。従って、以下の好ましい特別な態様は、単に例示と
解釈され、何れによっても本開示の残りの部分を制限しない。本明細書に挙げた
全ての特許及び刊行物は、これらの全てを参照文献として本明細書の一部となす
。
例1
ENBPI錯体の合成及び抗マラリア活性
生物検定
選択されたMRNPBI−錯体の抗マラリア活性
In vitroでのマラリア寄生虫の赤血球内増殖を阻害するためのこれらの新規な
金属医薬品の強さを、ヒドロキサンチン取り込み法で決定した。培養物中での寄
生虫の成長は、細胞性DNAへの放射性標識されたヒドロキサンチンの取り込み
と平行するので、抗マラリア薬は、細胞ペレット内に見出されるヒポキサンチン
の放射活性を特徴的に減少させる。以下のデータでは、100%阻害は寄生虫の
完全な根絶をあらわす。
方法
培養
医薬感受性のP.falciparumクローンHB3及びクロロキン耐性P.falciparum
クローンFCR−3及びIndoを、10%ヒト血漿(Hui et al.,Trans.R.Soc.
Trop.Med.Hyg.625:625(1984))を追加した5%ヒト赤血球(Trager and Jens
en,Science 93:673(1976))を用いてRPMI培地中、3%酸素/3%二酸化炭
素下、37℃で育成した。ソルビトールで処理して同期化を達成した(Lambros
and Vandenberg,J.Parasitol.65:1418(1979))。
P.falciparum培養での医薬の効果
10%寄生虫血で、後期リング状態の培養物を、種々の濃度のMENPBI−
錯体又はMENPBA−錯体(RPMI培地で希釈したもの)の存在下で、16
時間3倍に成長させた。この期間の最後に、1μCi(17.2Ci/mmol)の[3
H]ヒポキサンチンを添加し、培養物を更に4時間インキュベートした。寄生虫
を集め、[3H]ヒポキサンチンの取り込みを先に開示されたように測定した(F
rancis et al.,ENBO J.13:306(1994);Desjardins et al.,Agents Chemother.
16:710(1979))。対照として、医薬用のDMSOビヒクル(vehicle)をRPM
Iで同じ程度に希釈し、同じ培養物に加えた。これは、寄生虫のヒポキサンチン
の取り込みには効果がなかった。
所定時間内に、リング状態の培養物を10μMのMENPBI−錯体を添加し
て、又は添加せずに6〜21時間インキュベートした。示した時間に、培養した
寄生虫のアリコートを除去し、血液スミアをギムザ染色を用いて調製した。
イソボログラム分析(isobologram analysis)
2%寄生虫血で、後期リング状態の培養物を、種々の組み合わせのMENPB
I−錯体(Francis et al.,ENBO J.13:306(1994))及び古典的な抗マラリア薬、
クロロキンの存在下で16時間育成した。この期間の最後に、1μCi(17.2
Ci/mmol)の[3H]ヒポキサンチンを加え、培養物を更に4時間インキュベー
トした。寄生虫を集め、[3H]ヒポキサンチンの取り込みを先に開示されたよ
うに測定した(Desjardins et al.,Agents Chemother.16:710(1979))。対照と
して、医薬用のDMSOビヒクル(vehicle)をRPMI1640で同じ程度に
希釈し、同じ培養物に加えた。これは、寄生虫のヒポキサンチンの取り込みには
効果がなかった。培養物内の寄生虫血はヒポキサンチンの取り込みに平行する。
他の阻害剤のサブIC50投与量の存在下での、各阻害剤に対するIC50を計算し
、プロットした(イソボログラム)。
細胞生存試験及びLD50の決定
MENPBI−又はMENPBA−錯体にさらされた親細胞系(KB−3−1
)及び複数医薬に耐性な細胞系(KB−8−5)を96ウェルマイクロタイター
プレートでアッセイした。細胞(4,000〜20,000)を、新規な細胞毒
性薬(MENPBI−又はMENPBA−錯体)の試験濃度を増加しながらプレ
ート化し、37℃で72時間、3倍にインキュベートした。複数医薬に耐性な細
胞を、医薬を含まない培地中で細胞毒性薬と培養する前に72〜96時間培養し
た。細胞の生存をスルホローダミンB(SRB)を用いてアッセイした(Ma-zza
nti et al.,J.Cell Pharmacol.1:50(990))。細胞を10%トリクロロ酢酸中で
60分4℃において固定化し、生水で5回洗浄し、15分間室温で1%酢酸中の
0.4%SRBで染色した。過剰のSRBを1%酢酸で4回洗浄し、染色物を1
0mMの非緩衝トリス塩基に再溶解した。定量は、550nmの波長でELISA
プレートを用いて行った。生存率は、MENPBI−又はMENPBA−錯体を
用いないMEM培地中での成長と比較した生存している細胞のパーセンテージと
して表した。LD50の決定は、細胞生存率曲線からの補間によって得た。
結果
図1は、R3−メトキシ、R3−エトキシ、又はR4,R5−ジメトキシ置換され
たMENPBI−Fe(III)錯体に対する濃度−効果曲線を表す。3種類のモ
ノカチオン性Fe(III)錯体は、P.falciparumの医薬感受性のHB3株の強力
な阻害剤であった。阻害カーブのラインウェーバー−ブルク(Lineweaver-Burk
)プロットは、2.9μM、0.8μM及び1.1μMのIC50値(最大阻害濃
度の半分)にそれぞれ対応する。驚くことに、4,6−ジメトキシMENPBI
−錯体のIn(III)類似体は、すべての投与量で最小の抗マラリア活性を示し
た(データは示していない。)。
これらの新規な金属薬剤の抗マラリア作用の化学構造活性測定は、1μMから
5μMの濃度で存在する場合、医薬感受性HB3及び2種類のクロロキン耐性P.
fraciparumクローン、FCR−3及びIndoで行った(表1)。先の実験と同
様に、5μMの濃度の3種類MENPBI−Fe(III)錯体の全てがHB3寄
生虫の成長を完全に停止した。FCR−3クローンは、3−メトキシ、及び3−
エトキシMENPBI−Fe(III)類似体の抗マラリア活性に対して減少した
感度を示したが、4,6−ジメトキシMENPBI−Fe(III)類似体は、5
μMで96%成長阻害を示した。驚くことに、Indo医薬耐性クローンでは、
3種類全てのMENPBI−Fe(III)錯体は、5μMで強い成長阻害プロフ
ィールを示した、更に、4,6−ジメトキシMENPBI−In(III)類似体
は、いずれのクローンでも十分な活性を有しなかった。データのセットを全体と
して見た場合、最も重要な観測は、4,6−ジメトキシMENPBI−Fe(II
I)錯体が、医薬耐性クローン及びクロロキン耐性クローンの両方においてin vi
troで強い抗マラリア活性を示すということである。
NA=抗マラリア活性なし。
*は三回の測定の平均である。
#R1、R5=H
同様な方法で得られる追加のデータは、5μMのN,N’−ビス[(3−(2
−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミノ)プロピル]エチレンジアミン]M
(III)+A-及びN,N’−ビス[3−(2−ヒドロキシ−3−メトキシ−5−
ブロモベンジルアミノ)プロピル]エチレンジアミンM(III)+A-(但し、M
はFe又はAlである。)が、マラリア寄生虫の赤血球内成長を完全に阻害する
ことを示した。
図2は、ヒトKB腎臓細胞カルチノーマ細胞を用いた、細胞毒性アッセイにお
けるR4,R6−ジメトキシ置換されたMENPBI−Fe(III)錯体に対する
濃度一効果曲線の例を示す。MENPBI−Fe(III)錯体は、親のKB−3
−1細胞で強力な細胞毒性薬であり、約8μMのIC50を示した。興味のあるこ
とに、派生された複数医薬に耐性なKB−8−5細胞は、100μMまでの濃度
で、細胞毒性効果の痕跡を全く示さなかった。このことは、ヒトMDR1 P−
糖蛋白トランスポーターの発現がMENPBI−錯体の細胞毒性作用を修飾する
ことを
示す。
例2
クロロキン耐性Plasmodium falciparumに対した作用する抗マラリア性
シッフ塩基Fe(III)配位錯体;ヘモゾイン形成の阻害との相関
イントロダクション
寄生虫毒性での鉄の代謝に起因する重要性を仮定して、デフェロキサミンのよ
うな種々の金属キレート剤及び逆ヘモジデリン貧食細胞が、可能な抗マラリア化
学療法剤として探索されている(Stahel,E.et al.,Amer.J.Trop.Med.Hygiene 39
:236-240(1988);Yinnon A.,et al.,Blood 74:2166-2171(1989);Lytton,S.et al.
,Mol.Pharma.40:584-590(1991);Hershko,C.et al.,J.Inorg.Biochem.47:257-277
(1992);Gordeuk,V.et al.,Amer J.Trop.Med.Hygiene 48:193-197(1993);Lytton
,S.et al.,Amer.J.Hematology 43:217-220(1993))。遊離の配位子として投与し
た場合、おそらく消化性液胞内での鉄イオン(Fe(III))の代謝を中断させ
ることによって抗マラリア活性を獲得することが示されているが、これらの薬理
学的特性の知識は全くない(Hershko,C.et al.,J.Inorg Biochem.47:267-277(1
992))。NmOn供与体中心を一部に含む他の多座配位子(n、m=2から4)はま
た、金属中毒の治療のための治療用キレート剤として探索されており(May,P.M.a
nd Bulman,R.A.,Prog.Med.Chem.20:225-336(1983);Bryce-Smith,D.,Chem.Soc.Re
v.15:93-123 8986))、これらの対応する金属錯体は診断用放射性薬剤として(D
eutsch,E.et al.,Prog.Inorg.Chem.30:75-139(1983);Green,M.A.et al.,J.Am.Ch
e.Soc.196:3689-3691(1984);Tsang,B.et al.,J.Nucl.Med.34:1127-1131(1993);T
sang,B.et al,J.Med.Chem.37:4400-4406(1994))、磁気共鳴イメージングの常磁
性造影剤として(Lauffer,R.,Chem.Rev.87:901-927(1987);Kumar,K.and Tweedle,
M.F.,Pure Appl.Chem.65:515(1993);Xu,J.etal.,J.Am.Chem.Soc.117:725-726(19
95))、及び治療用医薬として(Abrams,M.and Murrer,B.,Science 261:725-730(
1993))評価されている。我々は最近、1つのクラスから選択された薬剤、特に
、六座の(N4O2)エチレンジアミン−ビス(プロピル(R−ベンジルアミノ)
)Fe(III)錯体が、加水分解に安定で
あり、疎水性の所望のバランスと、細胞膜透過性を高める非局在化したモノカチ
オン性電荷を有することを見いだした(Sharma,V.et al.,J.Chem.Med.,投稿中(1
996))。哺乳動物細胞では、これらの化合物は、形質膜中で複数医薬耐性(MD
R1)のP−糖蛋白(Pgp)の発現によって調節される細胞毒性活性を示す(Sha
rma,V.et al.,J.Chem.Med.,投稿中(1996))。ヒトMDR1 P−糖蛋白は、P.f
alciparum pfmdrl遺伝子産物、pghlの相同体である(両方とも、膜トランスポー
ターのATP−結合カセット(ABC)スーパーファミリーの細胞膜内蛋白であ
る。)(Wilson,C.et.al.,Science 244:1184-1186(1989);Foote,S.J.et al.,Na
ture 345:255-258(1990);Ford,J.M.and Hait,W.N.,Pharmacol.Rev.42:155-199(1
990);Gottesman,M.M.and Pastan,I.,Annual Revlew of Biochemistry 62:3
85-427(1993))。
p−糖蛋白は、外側に向けられた医薬トランスポーターである(Gottesman,M.
M.and Pastan,I.,Annual Review of Biochemistry 62:385-427(1993);Pienic
a-Worms,D.et al.,Biochemistry 34:12210-12220(1995))が、Pghlは、消化性
液胞膜に局在化しており(Cowman,A.F.et al.,J.Cell Biol.113:1033-1042(1991
))、可能性として内側に向けられたトランスポーター(van Es,H.et al.,Molec
.and Cell Biol.14:2419-2428(1994))として、クロロキン隔離に関わる(Kro
gstad,D.J.et al.,Biochem.Pharmacol.43:57-62(1992))。Pgh1は、P.fal
ciparuの種々の臨床単離物で、クロロキン耐性に寄与しうる(Foote,S.J.et al.
,Natture 345:255-258(1990))が、pfmdrlは、遺伝子クロスでクロロキン耐性か
ら分離される(Wellmes,T.E.,et.al.,Nature 345:253-255(1990))。
MDR1 P−糖蛋白とPghlとの間の高い程度の相同性を仮定して、我々は、
金属(III)化合物のN4O2クラスの選択された類似体が、抗マラリア化学療法
剤として開発する価値のあると仮定した。可能な抗マラリア薬として、式Iに従
った一般構造を有するこれらの六座シッフ塩基金属錯体は、これらの金属結合親
和性が種々の配位金属の要求にマッチするように適切な受容体原子を挿入するこ
とにより変化しうるので、多大な柔軟性を提供し、これによって完全な錯体の安
定性を増加しうる(Wong,E.et al.,Inog.Chem.34:93-101(1995);Sharma,V.et al
.,J.Chem.Med.,投稿中(1996))。
加えて、内部配位範囲を維持しながら、得られる錯体の親油性及び分子形状を
芳香族環及び炭化水素バックボーンの置換基を独立に変化することによって、変
化しうる。これらの化合物には、容易に合成される抗マラリア薬、例えばクロロ
キンのような、ヘモゾイン形成をブロックするが、更に、クロロキン耐性株に活
性であるものの新たなクラスが包含される。
材料と方法
配位子の合成
全ての試薬、溶媒及び金属塩{Al(III)、Fe(III)、Ga(III)及び
In(III)の硝酸塩及びアセチルアセトネート}は、アルドリッチケミカル社
又はアルファケミカル社から分析用グレートの材料として得た。図6に従った所
望の六座配位子1a〜bの六座の前駆体は、適切な直鎖テトラアミンと3等量の
置換されたサリチルアルデヒドをメタノール中又は乾燥塩化メチレン中で先に開
示されたように縮合することによって得られる(Sharma,V et al.,J.Chem.Med.
投稿中(1996))。2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル−1,3−
ビス(4−アザ−5−(2”−ヒドロキシ−3”−メトキシ−フェニル)ブタ−
4−エン−1’−イル)−1,3−イミダゾリジン(Mabi、900mg、1.56
mmol)を、メタノールに溶解されたN,N’−ビス(アミノプロピル)エチレン
ジアミン(286mg、1.64mmol)及びo−バニリン(748mg、4.92mm
ol)を縮合することによって合成した。2−(2’−ヒドロキシ−4’,6’−
ジメトキシフェニル)−1,3−ビス(4−アザ−5−(2”−ヒドロキシ−4
”,6”−ジメトキシ−フェニル)ブタ−4”’−エン−1’−イル)−1,3
−イミダゾリジン(Dmabi,400mg、0.60mmol)を、N,N’−ビス(ア
ミノプロピル)エチレンジアミン(130mg、0.74mmol)と4,6−ジメト
キシ−サリチルアルデヒド(407mg、2.24mmol)との、同様の反応で得ら
れる。Mabi及びDmabiを、the Washington University Resource for Biomedicao
and Bioorganic Mass Spectrometry Facilityにおいて1H及び13CNMRスペ
クトル、赤外(IR)スペクトル、質量(FAB)スペクトル(LR及びHRM
S)により特徴づけた(Sharma,V et al.,J.Chem.Med.,投稿中(1996))。
N4O2金属(III)錯体の合成
金属錯体は、先に開示されたように、エタノール中でMabi及びDmabiを適切な
金属塩と反応することで得られる(Sharma,V.et al.,J.Chem.Med.,投稿中
(1996))。得られた金属(III)錯体を、純度を確認する元素分析、及び構造の
同一性を確立するための1HNMR(Fe(III)錯体を除く)IR、及びFAB
−LRMSで特徴づけた。
Plasmodium培養
Plasmodium falciparum株(HB3、FCR−3、Indo−1、Dd2)を
、Trager及びJensen(Trager,W.and Jensen,J.B.,Science 193:673-675(1976))
の方法により赤血球内培養物中で成長させた。培養物を、5%寄生虫血、ヒト血
清及び赤血球を用いる2%ヘマトクリット、3%酸素/3%二酸化炭素雰囲気下
で維持した。発育段階の同期化を、ソルビトール処理によって達成した(Lambros
,C.and Vandenberg,J.,J.Parasitol.65:418-420(1979))。寄生虫の成長阻害及
び最大阻害濃度の半分(IC50値)の値を、3H−ヒポキサンチンの取り込みを
測定して決定した(Desjardins,R.E.et al.,Antimicrob.Agents Chemother.
16:710-718(1979))。寄生虫を、後期リング状態で開始する医薬、次いで、寄生
虫を回収する前の、中−トロフォゾイト段階で4時間加えられた3H−ヒポキサ
ンチンとインキュベートし、取り込まれた放射活性が分析された。全ての医薬を
10mMDMSOストックの1:1000希釈として添加した。ビヒクル単独では
、3H−ヒポキサンチンの取り込みに効果はなかった。
ヘム重合アッセイ
使用した手順は、Slater & Cerami(Nature(London)355:167-169(1992))及び
Dorn et al.(Nature 374:269-271(1995))の手順を修飾した。ヘミン(50μ
M)を、寄生虫に由来するヘモゾイン(2μg/ml)と、100mM酢酸ナトリウ
ム、pH5.0(最終容積0.5ml)中でインキュベートした。37℃で16時
間後、生成物を4℃、15,000×gで30分間マイクロフューズ(microfuge)
遠心により回収した。ペレットを1mlの、0.1M重炭酸ナトリウム、pH9.
1中の2.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中で手短に超音波にかけて再
懸濁させ、37℃で30分間インキュベートした。遠心を繰返し、得られたペレ
ットを1mlの2.5%SDS中で超音波にかけながら洗浄した。遠心の後、ペレ
ットを2.5%SDS/50mMNaOHで可溶化した(間欠的に混合しながら室
温で1時間)。生成物の形成を400nmの波長で、分光計で測定した。対照のイ
ンキュベーション物には、ヘミンを加えずに、又はヘミンを単独で加え、これら
の値の合計を引いた、個々の阻害剤又はクロロキンを直接にインキュベーション
物に加え、医薬のビヒクル(DMSO)を含有するが、阻害剤を用いないインキ
ュベーション物と比較した。ヒスチジンを富化したタンパクII(HRPII)で媒
介される重合アッセイを、先に開示された(11−A)ように、50μMヘマチ
ンを含む1ml反応物中で37℃、16時間インキュベートした500pmolのタン
パクを用いて行った。
プロテアーゼアッセイ
消化性液胞プロテアーゼプラスメプシンI及びII、及びファルシパインを精製
し、先に開示されたように14C−グロブリン基質を用いてアッセイした(Gluzman
,I.et al.,J.Clin.Invest.93:1602-1608(1994))。阻害剤を10mMDMSOスト
ックの1:1000希釈として加えた。
結果
全ての試薬及び出発物質は商業的に利用可能であり、これらの試薬の開発に対
して安価で、有利な要件である。これらの化合物の合成及び特徴付けは、ほかに
説明されている(Sharma,V.et al.,J.Chem.Med.,投稿中(1996))。エチレンジア
ミン−N,N’−ビス(プロピル(2−ヒドロキシ−R−ベンジルイミノ))配
位子1a〜b(R−ENBPI;図6)の強さでアピールされることは、広範囲
の金属イオンと安定な「完全−錯体(holo-complex)」を効果的に形するこれら
の能力である(Sharma,V.et al.,J.Chem.Med.,投稿中(1996))。特に、我々は、
Al(III)、Fe(III)、Ga(III)及びIn(III)を配位する図3の一
般構造2a〜bの錯体を、Mabi及びDmabi前駆体と対応する金属(III)アセチル
アセトネートをエタノール中で還流して合成した。Al(III)及びIn(III)
錯体2a〜bは、塩基の存在下でこれらの適切な水和された塩で前駆体を処理す
ることでも単離されうる。配位子1a〜b及び主要グループの金属(main group
metals)カチオンを用いた金属体2a〜b(図3)の形成は、供与体中心の柔
軟性に関連した金属が入り込むための電子的及び立体的要求によって決定される
べきである。全ての場合において、七座前駆体と対応する三価イオンの錯体は、
五員環イミダゾリジン環の開裂を導き、これによって金属への配位に対して内部
の二級アミン窒素をさらす(Sharma,V.et al.,J.Chem.Med.,投稿中(1996))。こ
れは、配位範囲の周りに包み込まれた配位子として金属が入り込むための要求に
合致するようにある程度の予めの構成を1a〜bのN4O2供与体中心に分け与え
る。金属とこれらのENBPI配位子との配位は、立体異性体の形成を起こす(
Sarma,B.D.and Baiolar,J.C.,J.Am.Chem.Soc.77:5476-5480(1955))。
この金属と宿主のマラリアの代謝及び関連した生物適合性でのFe(III)の
重要性の故に、Fe(III)化合物は、赤血球内培養物でのPlasmodium falciaru
mのトロフォゾイトに対して試験されるターゲットリード(target leads)であ
る。4,6−ジメトキシ−ENBPIFe(III)誘導体に対するP.falciparum
殺曲線(killing curves)を図4Aに示した。1から1.5μMのIC50値を、
クロロキン感受性HB3に対して、並びに耐性FCR−3、Indo−1及びD
d2株に対して得た。クロロキンでの対照試験で、HB3株は感受性であるが、
他のものはクロロキン耐性である(表2)ことが確認された。3−メトキシ−E
NBPIFe(III)類似体は、医薬感受性株に対して等しい強さであったが、
4,6−ジメトキシ類似体とは対照的に、該薬剤は、耐性FCR−3及びInd
o−1株に対しては効果が低かった(May,P.M.and Bulman,R.A.,Prog.Med
.Chem.20:225-336(1983))。3H−ヒポキサンチンの取り込みアッセイで測定
した寄生虫の死は、血液スミアーのカウントと相関した。医薬は、中部−トロフ
ォゾイト段階で効果的であり、より成熟した寄生虫は抵抗し、より低い成熟度の
寄生虫では、これらがトロフォゾイトに発育するまで正常に成長(この時点で、
これらは処理により殺された。)した(図4B)。医薬の存在下で培養された寄
生虫は、
ヘモゾイン形成の著しい減少を示した。反対に、対照の寄生虫は正常に成熟し、
ヘモゾイン色素で満たされた大きな消化性液胞を発達させ、次いで正常なシゾゴ
ニーを受けた。
従って、我々は、in vitroアッセイで、ヘム重合をブロックする医薬の能力を
検査した。ヘムを予め形成したヘモゾインと、4,6−ジメトキシENBPIF
e(III)錯体の存在下、酸性条件下でインキュベートした、クロロキンと同様
に、この化合物は、強力な重合阻害剤であり、約4μMのIC50を有していた(
図4A)。最近のデータは、寄生虫のHRPIIが、Plasmodiumの消化性液胞でヘ
ムの重合を開始しうることを示唆している(Sullivan,D.et al.,Science 271:21
9-222(1996))。4,6−ジメトキシ−ENBPIFe(III)錯体は、HRPII
アッセイで、重合をブロックすることに関して等しい強さを示した。
Fe(III)の配位が、本質的に抗マラリア活性に対して重要であるかどうか
、又は完全な金属薬剤の全体のコンフォーメーションが所望の効果を付与するか
どうかを決定するために、培養物及びヘムの重合阻害曲線を、種々の配位金属を
用いて3−メトキシ−及び4,6−ジメトキシ−ENBPI錯体に対しても作成
した(表2)。非常に優れた相関が、ヘモゾイン形成の阻害と、全ての錯体形成
された金属種に対するPlasmodium培養物を殺す能力との間に見いだされた。注目
すべきことは、ヘム重合及びPlasmodium培養物の強力な阻害剤である薬剤はまた
、ヒトMDR1遺伝子産物、P−糖蛋白流出トランスポーターにより認識される
ことが示されていろものである(Sharma,V.et al.,J.Chem.Med.,投稿中(1996))
。
脱金属化反応がヘム重合の阻害に、可能性として含まれるかどうかを更に決定
するために、種々の金属塩をヘモゾインアッセイで直接に試験した(表4)。鉄
イオン(III)及びアルミニウムイオン(III)は、このプロセスで強い阻害剤で
あった(それぞれ0.7μM及び1.5μMのIC50値)が、ガリウム(III)
は、R−ENBPIガリウム(III)錯体の十分な拮抗活性にもかかわらず効果
が低がった(IC50=100μM)。反対に、インジウム(III)カチオンは、
適度な阻害を示した(IC50=25μM)が、R−ENBPIインジウム(III
)錯体は全く効果がなかった。鉄(II)の適度な活性を除けば、種々の他の生理
学的ジカチ
オン性金属は効果がなかった(表4)。対照実験で、カウンターイオン(アイオ
ダイド、ナイトレート及びクロライド)も効果を有しないことが示された。従っ
て、金属(III)塩の強さと、これらの対応するR−ENBPI金属(III)錯体
の間の相関の欠如により、薬理学的に活性な成分として、無傷の「完全−錯体」
が再度指摘された。R−ENBPI金属(III)錯体及びp−糖蛋白トランスポ
ートの間の会合により、及び該薬剤がPlasmodium培養物の消化性液胞を標的にす
るようであるので、アッセイを行い、液胞プロテアーゼ作用の阻害の可能性を試
験した。4,6−ジメトキシ−ENBPIFe(III)錯体は、10μMでは、
各々培養された寄生虫から精製されたアスパラギンプロテアーゼ、プラスメプシ
ン(aspartic protease plasmepsins)I及びII、及びクロブリンプロテアーゼ
ファルシパイン(falcipain)のグロブリン開裂活性に効果がなかった。
ディスカッション
消化性液胞内でのヘモゾイン形成の破壊は、完全には特徴づけられていない機
構によってクロロキンのような医薬が、赤血球血漿膜、寄生虫を含有する液胞膜
、寄生虫血漿膜、及び最後には消化性液胞膜を含めたいくつかの膜二重層を越え
てトラスポートされることを必要とする。クロロキンは、適度に親油性であり、
酸性環境で正味のカチオン電荷を付与する滴定可能なプロトンを有する。従って
、拡散性の膜内外トランスポート及び医薬のトラップが、消化性液胞内のクロロ
キンの凝集した蓄積を説明できることが提案されている(Slater,A.,Pharmacol.
Ther.57:203-235(1993)に概説されている。)。医薬又は液胞(フェリプロトポ
ルフィリン)内の高親和性部位への結合により提供される正味のカチオン電荷は
化合物の逆拡散(back-diffusion)を防止しうる(Chou,A.et al.,Biochem.19:1
543-1549(1980))。クロロキン取り込み及び抗マラリア活性の他の寄与は、リン
脂質二重層上への吸着を可能にする両親媒性カチオンとしてのその性質に関係し
(Wernsdorfer,W.and McGregor,I.,eds.,Malaria:Principles and Practice of
Malariolgy,Churchill Livigston,Mew York,p1818(1988))、多くの疎水性化
合物では、局在化したモノカチオン電荷を有する(Lichtstein,D.et al.,Proc.N
atl.Acad.Sci.USA 76:650-654(1979);Chernoff,D.M.et al.,Biochim.Biophys.
Acta 1147:262-266(1993))ため、膜を越える透過を可能とし、生きている細胞
により生じる負の膜内外電位への応答で細胞内部の範囲に凝集した蓄積を可能と
しうる(Ritchie,R.J.,Prog.Biophys.Molec.Biol.43:1-32(1984))。追加の物理
化学的プロセスも、特にpfmdr1遺伝子産物、Pgh1、膜トランスポーターの多くの
ABCスーパーファミリーの寄生虫による発現に寄与しうる(Wilson,C.et al.,
Science 244:1184-1186(1989);Foot,S.J.et al.,Nature 345:255-258(1990);van
Es,H.et al.,Molec.and Cell Biol.14:2419-2428(1994))。抗マラリア化学療
法への革新的なアプローチを計画する際に、我々は、クロロキン耐性経路をバイ
パスできるが、マラリア微生物に対する本質的な役割とこの細胞小器官の独特の
性質を与える消化性液胞の機能を標的にし続ける能力を医薬に付与できる医薬の
トランスポートの機構を活用することが望ましいと考えた。
本発明は、Plasmodium培養物及び幾つかのクロロキン耐性株に対して強い活性
を有する新しいクラスの抗マラリア化合物を同定する。培養物での抗マラリア薬
の強さはヘム重合を阻害するこれらの能力と相関し、最も強力なリード(lead)
は、4,6−ジメトキシ−ENBPIFe(III)錯体である。強さは、ヒト遺
伝子産物でトランスポートされるこれらの薬剤の能力の1つの尺度である、これ
らの錯体にさらされた細胞上のMDRI P−糖蛋白の発現によって付与される
フォールド−ドラッグ耐性(fold-drug resistance)とも相関する(Sharma,V.e
t al.,J.Chem.Med.,投稿中(1996))。寄生虫による医薬の蓄積が、消化性液胞膜
上に局在化されるPlasmodiumP−糖蛋白相同体、Pgh-1に依存することが予想され
る(Cowman,A.F.et al.,J.Cell.Biol.113:1033-1042(1991))。
注目すべきことは、ヒトp−糖蛋白、特にR−ENBPIIn(III)錯体に
よって認識されない同様の薬剤が、Plasmodium培養物中で十分な殺寄生虫(para
sitocidal)活性を欠き、in vitroでヘモゾイン形成を阻害しないことである。
これは、酸性条件下でヘモゾイン形成の阻害に対して金属(III)塩と完全な金
属(III)錯体との間に相関関係が低いことをこの研究で示し、更に薬剤が1HN
MR及びUV/VISスペクトル法により、中性pH(37℃)で72時間(5
1−A)で加水分解に安定であることが証明されているので、該薬剤の特異な脱
金属化反応に寄与しうることはありそうもない。分子配置は適切である。R−E
N
BPIFe(III)及びGa(III)類似体の結晶構造は、中央の配位範囲の周り
のフェノール性酸素に対してトランス配置を示した(Ito,T.et al.,Chemistry L
etters 121-124(1983);Tsang,B.et al.,J.Med.Chem.37:4400-4406(1994))。し
かし、予備的な分子モデリングデータでは、中央部コアでの配位金属の個性が、
分子のコンフォーメーションに大きく影響することが示唆されている(Sharma,V
et al.,J.Chem.Med.,投稿中(1996))。六配位In(III)対Fe(III)及びG
a(III)の大きなイオン半径(それぞれ、0.81Å対0.65Å及び0.6
2Å)(Shannon,R.D.,Acta Crys.A32:751-767(1976))を仮定すれば、分子モデ
リングデータは、テトラミンバックボーンの立体的圧迫には、R−ENBPIイ
ンジウム(III)化合物に対してはシス配置が有利であることを示唆している(S
harma,V.et al.,J.Nucl.Med.,印刷中(1996))。これらの研究は、他の配位子及
び金属に広げなければならず、最終的には結晶構造を得てモデリングデータを確
認するであろう。それでもなお、トランス配置を優先する化合物がMDRI P
−糖蛋白によって認識され、ヘム重合をブロックでき、寄生虫を殺すことができ
るが、シス配置を好むものはこのようにならず、可能性として、一般の代謝経路
にこれらの種々の生物学的プロセスに結びつく。データは、無傷の「完全−錯体
」の確認が薬理学的な活性を付与することを示している。
培養物阻害に対するIC50値は、in vitroでのヘム重合に対するよりも同じケ
ースでわずかに低い。幾つかの可能性はこの観測を説明する。第一に、消化性液
胞内のヘム重合の条件は、試験管内の条件よりも有意に異なっており、IC50値
を変化する。第二に、化合物が消化性液胞で濃度勾配に逆らって蓄積されうる。
第三に、少量のヘム重合のみをブロックすることは、無傷の寄生虫を殺すのに十
分な毒性を有しないヘムの強化を導く。
R−ENBPI金属(III)錯体は、HRPIIで媒介されるアッセイと同様に
予め形成されたヘモゾインで開始される重合アッセイで等しい強さを有する。こ
れらは、クロロキンに対して得られる結果と同様である。好ましいモデルは、ヘ
ム重合がHRPIIで媒介されるヘムの結合によって開始されることである(Sull
ivan,D.et al.,Science 271:219-222(1996))。一度核形成が起こると、重合は
非酵素的に進行しうる。R−ENBPI金属(III)錯体及びクロロキンの両方
が、ヘモゾ
インを接種し(タンパクを含まない)、タンパクで媒介される反応で働くので、
これは、遮断が、反応の非酵素的ポリマー伸長段階、又はヘム基質での直接効果
であることを示唆する。
テトラミンバックボーンは、このクラスの化合物の芳香族環の種々の位置で変
化され、置換されうる。薬剤は、相対的に容易に、安価に合成される。これは、
有用な抗マラリア薬の成功のためには重要な特性である。予備実験では、環の置
換基を変化することで、高ナノモル範囲で効果的な新規な化合物を得た。クロロ
キンと同様な分子標的を妨害するが、同様の耐性機構を受けないと思われるFe
(III)のような生物学的に適合した金属を取り込む骨格を有する薬剤のグルー
プを得ることが奨励される。
表の説明
表2は、培養物中での赤血球内のP.falciparumの成長に関する種々のR−EN
BPI金属(III)錯体及びクロロキンの効果を示す。置換基命名法は、図3及
び6を参照として引用する。薬剤を、3H−ヒポキサンチン取り込み法によって
クロロキン−感受性及び−耐性株に対して示した濃度で試験した。値は、医薬を
用いない対照培養物に対するパーセント成長阻害として表した。データを、代表
的な実験からの3回の測定の平均として表した。NAAは、抗マラリア活性なし
であり、R5=Hである。
表3は、本研究で表にした寄生虫の成長とヘモゾイン形成に対するIC50値を
表し、Sharma,V.et al.,J.Chem.Med.,投稿中(1996)中のデータから再計算したM
DR1で媒介される医薬耐性と比較した。ヒトKB細胞での研究から誘導される
のは、MDR1のデータは、MDR1 P−糖蛋白の発現が指示された金属(II
I)錯体の細胞毒性の強さよって付与されるフォールド耐性(fold-resistance)
(MDR1細胞でのIC50/医薬感受精細胞でのIC50;Ford,J.M.and Hait,W.
N.,Pharmacol.Rev.42:155-199(1990))を示すことである。
表4は、金属塩によるヘム重合の阻害のデータを示す。ヘム重合は、10μM
濃度の示された金属塩の存在下又は非存在下において、予め形成されたヘモゾイ
ンの核形成反応でアッセイされた。データは、代表的な実験からの3回の測定の
値の平均である。
例3
複数医薬耐性(MDRI)P−糖蛋白の発現レベル及び多座(N4O2)エチレン
ジアミン−ビス[プロピル(R−ベンジルイミノ)]金属(III)カチオンの
細胞毒性力に関する配位金属の影響
イントロダクション
テトラフェニルホスホニウム(Lichtshtein,D.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.US
A76:650-654(1979))、ローダミン123(Johnson,L.et al.,Proc Natl.Acad.S
ci.USA 77:990-994(1980); Davis,S.et al.,J.Biol.Chem.260:13844-13850
(1985))、及び1−メチル−4−フェニルピリジニウム(Langston,J.W.et al
.,Science 219:979-980(1983); Ramsay,R.R.et al.,Biochem.Biophys.Res
.Commun.134:743-748(1986))で代表される選択された有機親油性モノカチオン
、ヘキサキス(2−メトキシイソブチルイソニトリル)テクネチウム(I)(Tc
-SESTAMINI)(Piwnica-Worms,D.et al.,Circ.82:1826-1838(1990):Backus,M.et
al.,Am.J.Physiol.Cell 265:C178-C187(1993);Crane,P.et al.,Europ.J.Nuc.Me
d.20:2025(1993);Piwnica-Worms,D.et l.,Mag.Res.Imaging 12:541-652
(1994))に代表される選択された有機金属親油性カチオンが、生きている細胞の
ミトコンドリア内に蓄積される。生化学的膜二重層の透過を可能にする適度な疎
水性、及び負の膜内外電位を生じる区画に金属イオンを封鎖できる局在化したカ
チオンによって特徴づけられる場合、これらの薬剤は、ミトコンドリアマトリッ
クス内で1,000倍まで濃縮される。この生物学的ターゲッティング特性を生
かすことで、化合物は膜機能の生物物理学的プローブとして(Ritchie,R.J.,Pro
g.Biophys.Molec.Biol.43:1-32(1984);Chermoff,D.M.et al.,Biochim.Biophys A
cta 1147:262-266(1993))、神経学的ダメージのモデルとして(Gluck,M.et al.
,J.Biol.Chen.269:3167-3174(1994))、及び医療イメージングで(Wackers,F.J.
et al,J.Nucl.Med.30:301-309(1989))有用であることが判明した。更に、ガン
細胞でのミトコンドリア膜内外電位の推定の増加が、ローダミン123及び類自
体のような選択された親油性カチオンに腫瘍特異的な細胞毒性を付与する可能な
メカニズムとして提案されている(Davis,S.et al.,J.Biol.Chem.260:13844)-1
3850(1985);Chen,L.B.,Annu.Rev Cell Biol..4:155-181(1988);Koya,K.et.al.,C
ancer Res.56:538-543(1996))。最近、担体を添加した99Tc-SESTAMINIが、〜9
μMの最大致死量濃度の半分(LC50)で、推定として、ミトコンドリアの機能
を破壊することによって、ヒトアレキサンダー肝細胞性カルチノーマ細胞に対し
て強力な細胞毒性活性を有することが示された(Piwnica-Worms,D.et al.,Cance
r Res.53:1-8(1993))。しかし、治療用の金属薬剤としての更なる開発に関して
、99Tc(I)又は等しい構造の(isostructural)レニウム(I)類似体が、
それぞれ、これらの金属の固有の低エネルギーβ−放射及び遅い配位反応動力学
により最適値以下となる。可能なターゲッティング抗癌金属医薬としての他の骨
格を更に探索するために、我々は、種々の金属に都合よくキレーティングできが
、細胞内ターゲッティングを付与するための生物学的に望まれる親油性モノカチ
オン特性を維持する多座配位子を調査した。
種々の多座配位子及びこれらの対応する金属錯体は、金属中毒の治療のための
治療用キレート剤として(Bryce-Smith,D.,Chem.Soc.Rev.15:93-123(1986);May,
P.M.and Bulman,R.A.,Prog.Med.Chem.20:225-336(1983)、診断用放射性薬剤とし
て(Deutsch,E.et al.,Prog.Inog.Chem.30:75-139(1983))、磁気
共鳴イメージングでの常磁性造影剤として(Lauffer,R.,Chem.Rev.87:901-927(1
987);Kurnar,K.and Tweedle,M.F.,Pure Appl.Chem.65:515(1993);Xu,J.et al.,J
.Am.Chem.Soc.117:7245-7246(1995))、治療用医薬として(Abarms,M.and Murre
r,B.,Science 261:725-730(1993))、合成による変換を行うために(例えば、機
能化されていないオレフィンの不斉エポキシ化(Palucki,M.et al.,Tetrahedron
Lett.36:5457-5460(1995))、及び種々の配位子及び金属のゲスト−ホスト相互
作用を研究するために活用されている。
多座配位子の中には、N4O2供与体コアを有するシッフ塩基配位子(Isobe,T.
et al.,Bull Chem.Soc.Japan 40:1862-1863(1967);Evans,D.F.and Jakubovic,D.
A.,J.Chem.Soc.Dalton Trans.2927-2933(1988))が周知である。これらの配位子
と種々の遷移金属及び主要グループの金属との配位化学(Sarma,B.D.and Bailar
,J.C.,J.Am.Chem.Soc.77:5476-5480(1955);Sarma,B.D.et al.,J.Am.Chem.Soc.86
:14-16(1964);Tweedle,M.F and Wolson,L.,J.Am.Chem.Soc.98:4824-4834(1976)
)及び主要グループの金属及びランタンニドを有するN4O2及びN4O3供与体コ
アを持つ種々の金属キレートの構造的な側面が報告されている(Wong,e.et al.
Inorg.Chem.34:2164-2178(1995);Yang,L.W.et al.,Inorg.Chem.34:4921-4925(1
995))。
シッフ塩基N4O2金属錯体も、心筋の灌流イメージング(perfuslon imaging
)で使用される可能なポジトロン放射を行う放射性医薬として報告されている(
Green M.A.et al.,J.Am.Chem.Soc.106:3689-3691(1984);Tsang,B.W.et al.,J.Nu
cl.Med.34:1127-1131(1993);Tsang,B.W.et al.,J.Med.Chem.37:4400-4406(1994)
)。
可能な細胞毒性薬として、図6に示される一般的構造、又は式Iに従った一般
的構造を有する六座のシッフ塩基配位子は、これらの結合親和性が、種々の入り
込んでくる金属の要求に合致するように適切な供与原子を挿入することによって
変化されうるので、非常に高い柔軟性を付与する。加えて、内部配位範囲を保持
するが、得られた錯体の親油性及び分子形状は、芳香族環及び炭化水素バックボ
ーンの置換基の変化には独立に変化する。
Al(III)、Fe(III)、Ga(III)、及びIn(III)のN2O4シッフ塩
基
フェノール性錯体の合成が示され、更にヒト表皮カルチノーマKB−3−1細胞
、及びクロロキンで選別された複数医薬耐性で誘導したKB−8−5細胞でのこ
れらの細胞特性の強さの特徴付けを行ったっこれらのシッフ塩基配位子に対して
、これらの対応する金属医薬の細胞特性の強さは、中心に配位する金属の個性に
強く依存する。更に、ヒト複数医薬耐性(MDRI)遺伝子産物、P−糖蛋白の
適度な発現により、強力なAl(III)−、Fe(III)−、及びGa(III)−
錯体の細胞毒性活性からの保護が付与された。
結果と議論
化学
所望の七座配位子の七座化合物3及び4前駆体を、適切なアミン及び3等量の
置換されたサリチルアルデヒドをエタノール中で縮合して合成した(図7)。別
法として、該アミンを、活性化されたモレキュラーシーブの存在下、乾燥塩化メ
チレン中で3等量の置換されたサリチルアルデヒドと縮合して、分光学的に同一
の化合物を得た。前駆体3(H3Mabi)及び4(H3DMabi)(図7)の赤外ス
ペクトルは、イミンC=N結合に特徴的な1640cm-1及び1625cm-1にそれ
ぞれ強いピークを示した。第三のアルデヒドとN,N’−ビス(アミノプロピル
)エチレンジアミンの2つの内部の隣接した二級窒素との反応によるイミダゾリ
ジン5員環の形成は、2つの外側の環に比較して、中央の環にユニークな特徴を
付与する。CDCl3中での3の1HNMRスペクトルは、δ8.12に特徴的な
イミンプロトン、δ7.00〜6.55に芳香族プロトンの多重線、δ3.88
及びδ3.86にそれぞれ外側と内側の環のメトキシ置換基、及びδ3.65、
3.40、2.80〜2.28、及び1.82に重なった多重線の形で炭化水素
プロトンを示した。プロトンデカップリング13CNMRスペクトルは、δ165
.2にイミン炭素の特徴的な炭素共鳴及びベンジル炭素のδ89.3を含めた2
0の共鳴シグナル(図8)を示し、これは前駆体3の提案された構造と一致した
。CDCl3中の前駆体4の1HNMRも、δ8.25に1重線の特徴的なイミン
プロトン、δ5.99、5.91、5.84、及び5.56に、1:1:2:2
の比で、それぞれ中央及び外側の芳香族プロトン、δ4.32にベンジルプロト
ンに
帰属されるプロトン、δ3.77、3.76、3.71、及び3.70に、2:
2:1:1の比でそれぞれ異なったメトキシ基、並びに、δ3.52、3.35
、2.75〜2.30、及び1.80に一連の多重線の形で炭化水素バックボー
ンのプロトンを示した。プロトンデカップリング13CNMRスペクトルは、22
のシグナルに代わって20の共鳴シグナル(図8)を示した。これはおそらくメ
トキシのシグナルが重なっているためである。
水性条件下で三価金属と処理すると、七座前駆体は、3及び4として単離され
るか、又は適切なサリチルアルデヒド及びアミンの縮合反応の間にシッフ塩基副
生成物として形成されるかにかかわらず、中央の環が分離除去され、これによっ
て得られた配位子上の立体的要求を減少し、N4O2六座供与体コアを提供する(
Sarma,B.D.and Bailar,J.C.,J.Am.Chem.Soc.77:5476-5480(1955))。我々が利用
することを望むこれらの配位子のアピールすべき特性は、広範囲の金属イオンを
効果的にキレートするこれらの能力である。特に、我々は、前駆体3及び4と、
対応する金属(III)アセチルアセトネートをエタノール中で還流する反応から
Fe(III)、Ga(III)及びIn(III)を有する錯体合成した(図7)。別
法として、Al(III)及びIn(III)錯体を、塩基の存在下でこれらの適切な
水和された塩と前駆体3及び4を処理して単離した。前駆体3及び4から誘導さ
れろ配位子と、主要グループの金属カチオンを有する金属錯体の形成は、供与体
コアの柔軟性に関して、入り込んでくる金属の電子的及び立体的要求により決定
されなければならない。Fe+3及びGa+3のほぼ等しい六配位イオン半径(それ
ぞれ0.65Å及び0.62Å)(Shannon,R.D.,Acta Cryst.A32:751-767(1976
))により、Fe+3に対して高い親和性を有する配位子は、同様の配位化学でし
ばしば得られる。対照的に、Al+3(0.51Å)及びIn+3(0.81Å)を
、有機構造の中心金属コアの影響を分析するための2つの最も大きな限界として
選択した。全ての場合において、七座化合物3及び4とこれらの対応する三価金
属イオンとの複合体形成は、イミダゾリジン5員環の開裂を導き、これによって
金属への配位のために内部の二級アミン窒素をさらす。これは、配位範囲の周り
に包み込まれた配位子として金属が入り込むための要求に合致するようにある程
度の予めの構成をN4O2供与体中心に分け与える。ジメチルスルホキシド−d6
中で
測定された金属(III)の1HNMRスペクトルは、ベンジルプロトンが存在しな
いこと及び芳香族プロトンの範囲が相対的に簡略化されたことを示した。錯体の
合成が水性条件下で行われるので、乾燥ジメチルスルホキシド−d6中でのこれ
らの1HNMRスペクトルは全て、金属錯体と結合した水素による弱く配位した
水に仮に帰属されるδ3.25〜3.45付近の強いシグナルを示す。この仮説
を確かめるために、少量のD2Oを加えることによって交換実験(これは、この
子ugなるの消失を起こす。)を行い、これによって配位した水の存在が確認で
き、更に、このシグナルに隠れた炭化水素バックボーンから現れるプロトンシグ
ナルを帰属することができる。加えて、予想されるように、δ4.80〜5.2
2付近のN−Hに帰属されるプロトンシグナルは、消滅するか、又は幅広化し、
高磁場に移動するが、残りのシグナルは、D2O交換実験で変化せずに残る。
Al(III)、Fe(III)、Ga(III)及びIn(III)金属錯体のKBrペ
レットとしての赤外(IR)スペクトルは、若干の選択されたバンドでの重要で
ない違いのみがあるが、基本的には同一である。3250〜3100cm-1及び
1550〜1560cm-1の間の幅広のバンドは、配位されたアミン窒素の伸縮及
び変角モードにそれぞれ帰属される。3bを除く全ての錯体で、我々が金属錯体
中のO−H伸縮に帰属した3600〜3300cm-1の間の幅広のバンドを示し、
これは、水素結合を介して保持された弱く配位された水を示唆した。
加えて、υ(C=N)に対応する特徴的なバンドが5〜20cm-1のシフトを受
け、配位子のイミン窒素に金属が配位したことを確認した。更に、3000〜2
600cm-1で、及び1600cm-1、1480cm-1、及び1440cm-1での通常の
バンドが観測され、υ(C−H)及びυ(C=C)にそれぞれ帰属された。60
0cm-1以下のバンドは、錯体のスペクトルで存在するが、前駆体自身のスペクト
ルにはなく、これはおそらく、υ(M−O)及びυ(M−N)を表す。
このように、1HNMR及びIRスペクトルのデータは、溶液及び固体状態で
それぞれ提案された完全な錯体の構造と一致した。3−ニトロベンジルアルコー
ル又はチオグリセロールマトリックスとして測定した、全ての錯体の質量スペク
トル(FAB)は、金属配位カチオン((ML)+、M=金属、L=配位子)に
対応する質量イオンピークを示した。更に、より高い原子質量の領域にピークが
ない
ことは、二量化種がないことを示しており、これにより提案されたカチオン性錯
体が支持される。
アセトニトリル中、室温での錯体に対するモル伝導率(κ)は、100〜17
4Ω-1mol-1cm2の範囲の値を示し、1:1電解質(モノカチオン金属錯体形成
)とも矛盾しなかった(Geary,W.J.,Coord.Chem.Rev.7:81-122(1971))。更に、
錯体は、中性加水分解に対して安定であった。錯体の1HNMR及びUV/VI
Sスペクトルは、72時間(37℃、pH7.5)水中でインキュベートする前
後で重ね合わせることができる。
図6に示される一般的構造を有し、N4O2供与体コアを含有する前駆体3及び
4(図7)のR−ENBPI誘導体は、中央の金属イオンを取り囲み、4つの6
員環及び1つの5員環を形成する。対照的に、2つの6員環及び3つの5員環が
、ビスプロピレン基の代わりにビスエチレン基を含有する化合物で形成される(
Sarma,B.D.and Bailar,J.C.,J.Am.Chem.Soc.77:5476-5480(1955))。炭化水素鎖
の立体的要求の結果として、プロピレンバックボーンは、隣接した供与体原子を
結合し、この結果、これらがお互いにシスに配置されなければならず、従って、
90°に近い隣接した供与体原子間の角が生じる。これは、先に{1,10−ビ
ス(2−ヒドロキシベンズアミド)−3,6−ジアザデカン}マンガン(IV)の
場合に報告されている(Chandra,S.K.and Chakravorty,A.,Inog.Chem.31:760-765
(1992))。
Fe(III)及びGa(III)の類似のR−ENBPI錯体の結晶構造(Tsang,
B.Wet al.,J.Med.Chem.37:4400-4406(1994]);Ito,T.et al.,Chemistry Letter 1
21-124(1983))に基づいて、我々は、Al(III)、Fe(III)、及びGa(II
I)の、我々のR−ENBPI錯体が、2つのフェノレート酸素が互いにトラン
スに配位され、対応するアミン及びイミン窒素がシスに配置される構造をとり、
図7に示されるように全体として八面体構造又は対応するエナンチオマーを与え
るようである。しかし、In(III)錯体の場合には、主要グループの金属のう
ち、周期律表の下方に移動することによって得られるイオンサイズの増加は、炭
化水素バックボーンの立体的束縛を増加させるようである。
従って、In(III)の配位に際して、これらの束縛を回避し、おそらくフェ
ノ
ール性酸素がシス配置になるように、構造に十分な変化が起こることが期待され
る。実際に、CACheワークシステムを用いた予備的な分子モデリングデータ
は、R−ENBPI Al(III)、Fe(III)及びGa(III)錯体に対して
中心の金属コアの周りのフェノール性酸素のトランス配置を正確に予言したが、
In(III)錯体に対してはシス配置を示唆した(Sharma,V.et al.,J.Nucl.Med.
,投稿中(1996))。
細胞毒性
ヒト複数医薬耐性(MDRI)遺伝子をコードするP−糖蛋白は、細胞の外側
の化学療法剤をトランスポートすることによって化学療法に耐性な腫瘍にする原
形質膜内トランスポーターである(Gros,P et.al.,Nature 323:728-731(1986);S
hen,D.W.et al.,Science 232:643-645(1986);Gottesman,M.M.and Pastan,I.,Ann
ual Review of Biochemistry 62:385-427(1993))。P−糖蛋白の過剰発現は、
患者の癌の化学療法を失敗させる1つの強力な機構と考えられている。P−糖蛋
白の多くの医薬基質及び調節剤(阻害剤)が、親油性カチオン性化合物であり(Fo
rd,J.M.et al.,Pharmacol.Rev.42:155-199(1990))、これはR−ENBPI金
属(III)錯体のラセミ混合物の細胞質の細胞毒性と、P−タンパク質の発現の
レベル間の関係が、探索に重要であることを示唆している。親のヒト表皮カルチ
ノーマKB−3−1細胞及び派生したクロロキン選別KB−8−5複数医薬耐性
細胞(Akiyama,S.I.et al.,Somatic Cell Mol.Genet.11:117-126(1985))は、免
疫検出でき、適度なレベルのMDRI P−タンパク質をそれぞれ全く発現しな
い。これは、原形質膜調製物を抗−P−糖蛋白モノクローナル抗体C219(Do
lci,E.D.et al.,International Journal of Cancer 54:302-308(1993))及びC
494で免疫ブロットすることで決定した。
従って、これらの細胞は、定量的毒性アッセイのための都合のよいin vitroシ
ステムを提供する。96−ウェルプレート内の、単層培養物中の細胞を、薬理学
的に適切な濃度の範囲にわたって、新規なR−ENBPI金属錯体にさらし、細
胞の生存率を培養物中で3日後にSRB法で決定した(Skehan,P.et al.,J.Natl
Cancer Inst.82:1107-1112(1990))。医薬のビヒクル単独の存在下で成長させ
た
細胞を対照調製物として使用したが、高濃度の化学療法剤、クロロキン(25μ
M)の存在下で成長された細胞は、最大の細胞毒性活性の影響を示した。
細胞毒性の強さは、生存率曲線のコンピュータによるフィッティング及びLC50
の測定によって決定した。医薬感受性のKB−3−1細胞では、(3−MeO
−R−ENBPI)Fe(III)(3b、実験の欄参照)が、3−MeO−R−
ENBPI系列に対して最も強い細胞毒性活性である9μMのLC50を示した(
図9A〜D)。3−MeO−R−ENBPIの金属(III)錯体は、Fe(III)
>Al(III)>In(III)>Ga(III)の細胞毒性の強さの順序を示した(
表5)。KB−8−5腫瘍細胞によるMDRI P−糖蛋白の発現は、3−Me
O−R−ENBPI)Fe(III)(3b)の細胞毒性からの劇的な防御を付与
した。3bの濃度は、有意に細胞毒性を示さない100μM程度の高さである。
加えて、MDRI P−糖蛋白質は、3a及び3cの細胞毒性作用からの適度な
防御(2〜3倍)を付与したが、3dに対しては十分な防御を付与しなかった。
同様に、KB−3−1細胞では、4,6−ジMeO−R−ENBPIの金属(II
I)錯体は、Fe(III)>Al(III)>Ga(III)>>In(III)の細胞毒
性の強さの順序を示した(表9E〜H、及び表5)。
全体として、4,6−ジMeO−類似体は、3−MeO類似体よりも強力であ
る。更に、KB−8−5細胞内でのMDRI P−糖蛋白の適度なレベルの発現
は、(4,6−ジMeO−R−ENBPI)Fe(III)類似体(4b)の細胞
毒性活性からの強い防御を付与し、この場合にはまた、(4,6−ジMeO−R
−ENBPI)Al(III)(4a)から、及び(4,6−ジMeO−R−EN
BPI)Ga(III)(4c)からの強い防御を付与するが、In(III)類似体
4dの活性の十分な調節は付与されなかった。
これらのデータは、Al(III)、Fe(III)、及びが(III)錯体がヒトM
DRI P−糖蛋白によるトランスポート基質として認識され、これによって細
胞から押し出され、これれらの細胞毒性ターゲットから封鎖除去されることと最
もよく一致するであろう。
注目すべきことは、細胞毒性の強さと、P−糖蛋白トランスポート活性との間
に相関があるようであるということである。グループとしては、活性な4,6−
ジMeO−R−ENBPI類似体が、3−MeO−R−ENBPI類似体よりも
強力であり、より強いP−糖蛋白トランスポートプロフィールを示す。In(II
I)錯体3d及び4dは、細胞毒性の強さに関しては著しく低く、P−糖蛋白の
トランスポートプロフィールが全くない。加えて、Al(III)、Fe(III)、
Ga(III)及びIn(III)の硝酸塩の細胞毒性活性を、KB−3−1及び医薬
耐性のKB−8−5細胞で評価した(9I〜L)。
これらの対応するR−ENBPI錯体とは対照的に、Al(III)及びFe(I
II)イオンは、100μMまでの何れの濃度でも細胞毒性の何れの証拠も、又は
医薬耐性及びMDR細胞間で何れの異なった効果も示さなかった。Ga(III)
及びIn(III)塩は100μMで適度な毒性活性を示し、金属錯体で観測され
る効果とは逆の、医薬耐性細胞系において強さを増加させる傾向がある。更に、
前駆体3及び4は、水性緩衝液を添加した場合(これによって遊離の六座配位子
が生じるであろう。)、100μMの最も高い試験濃度(適度な活性が両細胞系
で等しく観測された。(データを示さず。))を除いて、十分な細胞毒性を示さ
なかった。全体として、中性加水分解に対する錯体の示された安定性と組み合わ
せると、これらのデータは、Al(III)、Fe(III)及びGa(III)錯体の
細胞毒性の強さが、細胞区画内で、本質的に、完全な錯体の薬理学的効果に最も
よく寄与するであろう。
Al(III)、Fe(III)及びGa(III)錯体(In(III)錯体ではない)
が所望の細胞毒性の特性を付与するという観測から、提案された分子形状(フェ
ノーリックのトランス配置)及び最終錯体の荷電分布(金属に特異的な特性では
ない)が、一般に、薬理学的作用を付与するということが更に示された。中性加
水分解に対する錯体の安定性、及び金属イオンの活性の欠如は、迅速な細胞外脱
金属化反応、トランスフェリンのような血清金属結合蛋白でのトランスメタル化
反応、又は作用のこれらの機構に寄与するものとして、中性の細胞内区画での配
位子のキレーション反応を除外するという結果につながるであろう。In(III
)の配位がゆがめられ、錯体を十分に不安定化し、その細胞毒性ターゲット(推
定で負に帯電した区画)で蓄積するか、又はMDRIトランスポーターにより認
識される、その容量を変化することが明らかになるであろう。
Fe(III)錯体の優先的な強さは、この錯体の特徴的な配座の寸法に起因し
うるが、リソソームのような亜細胞性の細胞小器官にこれらの薬剤の酸加水分解
の可能性を排除し得ない。これらの金属薬剤は、細胞毒性ターゲットとしてのミ
トコンドリアのような負に帯電した区画を利用するようにデザインされているが
、更なる実験で、薬理学的部位、作用のメカニズム、医薬活性の立体化学、及び
これらの抗癌性の強さに基づくMDR調節薬の共同投与(co-administration)
の影響を調査する必要がある。
結果
置換されたシッフ塩基N4O2フェノール配位子(R−ENBPI)のAl(II
I)、Fe(III)、Ga(III)、及びIn(III)錯体を合成し、これらの薬理
学的特性を、細胞毒性金属医薬の可能なクラスとして調査した。これらの錯体は
、種々のコア金属の配位を可能にする直線状の配位子の柔軟性を、電位依存性の
腫瘍選択的薬剤の親油性のカチオン性特性と組み合わせた。結果は、これらの金
属薬剤のラセミ混合物の細胞毒性が、Fe(III)>Al(III)>Ga(III)
≧In(III)の順で、配位した中心金属の個性に強く依存することを示した。
加えて、活性な4,6−ジメトキシ置換されたR−ENBPI錯体は、3−メト
キシ類似体よりも強力であった。
更に、ヒトMDRI P−糖蛋白の適度な細胞発現は、Al(III)、Fe(I
II)及びGa(III)R−ENBPI錯体の細胞毒性からの防御を付与すしたが
、In(III)錯体では付与しなかった。特に、グループ(III)元素の中では、
ヒト細胞が、異なった金属を有する同じ配位子で形成された錯体を認識すること
ができる。錯体に比較した異なった安定に加え、Al(III)、Fe(III)及び
Ga(III)R−ENBPI錯体の中央の配位範囲周辺におけるフェノール性部
分のトランス配置は、これらの生物学的活性に大きく影響しうる。しかし、これ
らの細胞毒性金属錯体の作用のメカニズム及び構造−機能性の関係を評価するに
は、更に研究が必要である。
実験の部
一般的方法
ビス(N,N’−アミノプロピル)エチレンジアミン、4,6−ジメトキシサ
リチルアルデヒド、及びO−バニリン(3−メトキシサリチルアルデヒド)をAl
drich Chemical Co.から得た。Al(III)−、Fe(III)−、Ga(III)−
及びIn(III)−アセチルアセトネート及びこれらの水和した塩は、Mathey-Jo
hnson/Alfa Chemical Co.及びAldrichより購入した。1HNMR及び13CNMR
スペクトルは、GEMINI 300MHz分光計で記録し、化学シフトは、TMSを対照に
したδ(ppm)で示した。IRスペクトルは、Perkin-Elmer 1710 フーリエー変
換分光光度計で記録した。質量スペクトル(LR及びHRMS)は、3−ニトロ
ベンジルアルコール又はチオグリセロールマトリックスを用いて、Washington U
niversity Resource for Biomedical and Bioorganic Mass Spectrometryから得
た。元素分析(C,H,N)は、Galbraith Laboratories,Knoxvill,TN.により
行った。モル伝導率(κ、Ω-1mol-1cm2)を、0.37mMの錯体の濃度を用い
て、アセトニトリル中、25℃においてポータブル伝導率測定器(Orion Resear
ch、モデル120)で決定した。錯体の水中安定性を、密閉したバイアル中で、
2mlのH2O(pH7.5)中に5から10mgのサンプルを懸濁させることによ
って決定した。サンプルを72時間(37℃)で撹拌し、蒸発させ、残渣をCV
/VIS(Beckman 620)又はDMSO−d6中の1HNMRスペクトルで分析し
た。
配位子の合成
2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−1,3−ビス(4−ア
ザ−5−(2”−ヒドロキシ−3”−メトキシフェニル)ブタ−4’−エン−1
’−イル)−1,3−イミダゾリジン(H3Mabi)(3)
エタノール(5ml)に溶解したN,N’−ビス(アミノプロピル)エチレンジ
アミン(286mg、1.64mmol)を、エタノール(10ml)に溶解したo−バ
ニリン(748mg、4.92mmol)の撹拌溶液に加えた。反応混合物を還流する
ように3時間加熱した。室温に冷却した後、揮発分をロータリーエバポレーショ
ンで除去し、残渣を減圧下に2日間乾燥し、明るい黄色の固体1(900mg、1
.56mmol、95%収量)を得た。、別法として、乾燥塩化メチレン中、活性化
したモレキュラーシーブの存在下で、N,N’−ビス(アミノプロピル)エチレ
ンジアミンを3等量のo−バニリンと室温で一夜撹拌して処理し、濾過し、これ
を引き続いて蒸発させて、分光学的に同一の化合物を得た。
1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ:1.82(m,4H),2.28-2.80(m,6H),3.40(m,4H),3.65(m,3
H),3.86(s,3H),3.88(s,6H),6.55(dd,1H),6.64(t,1H),6.7-7.0(m,7H),8.12(s,2H)
;13C NMR(75.4MHz,CDCl3)δ:28.7,49.4,49.6,55.6,55.7,55.8,89.3,111.9,113.4
,117.1,117.9,118.1,121.2,122.7,122.8,147.2,147.7,148.3,152.4,165.2,IR(CH2
Cl2,cm-l):1640 υ(C=N);FAB-HRMS:C32H47N4O6(M+H)+に対する計算値 577.3025
,実測値 577.3020.
2−(2’−ヒドロキシ−4’,6’−ジメトキシフェニル)−1,3−ビス
(4−アザ−5−(2”−ヒドロキシ−4”,6”−メトキシフェニル)ブタ−
4’”−エン−1’−イル)−1,3−イミダゾリジン(H3DMabi)(4)
N,N’−ビス(アミノプロピル)エチレンジアミン(130mg、0.74mm
ol)及び4,6−ジメトキシサリチルアルデヒド(407mg、2.24mmol)の
同様の反応で淡い黄色の固体H3DMabi2(400mg、0.60mmol、80%)を
得た。
1H NMR(300 MHz,CDCl3)δ:1.80(m,4H),2.30-2.75(m,6H),3.35(m,4H),3.52(m,2
H),3.70,3.71(s,6H),3.77,3.76(s,12H),4.32(s,1H),5.56(d,2H),5.84(d,2H),5.9
1(d,1H),5.99(d,1H),8.25(s,2H);13C NMR(75.4MHz,CDCl3)δ:28.9,49.2,49.5,50
.8,54.9,55.1,80.6,87.2,89.4,94.2,95.2,101.1,102.0,158.1,160.1,160.5,160.
6,161.4,166.8,176.0;IR(CH2Cl2,cm-1):1625,υ(C=N),FAB-HRMS:C35H47N4O9(M+H
)+に対する計算値667.3342,実測値667.3338.
金属(III)錯体の合成
方法A
適切な配位子をメタノール(3ml)に溶解し、水酸化カリウムを滴下して処理
し、20分間還流するように加熱した。熱しながら、水(2ml)を含有するメタ
ノール(5ml)に溶解した適切な水和した塩を加え、1時間還流し、冷却して濾
過した。濾液を室温でゆっくり蒸発させ、微結晶性固体を得た。これを分離し、
水、次いで冷メタノールで洗浄し、次にエタノールで洗浄して、減圧下に一夜乾
燥した。
方法B
他の方法には、等モル量の適切な配位子及び金属アセチルアセトネートをエタ
ノール中で混合することが含まれる。内容物を1時間還流し、次いで反応混合物
を、熱しながら、水に溶解した等モル量のKIで処理し、更に1〜10分還流し
た。得られた混合物を室温に冷却し、微結晶性の化合物を沈殿させて除いた。こ
れを分離し、冷エタノールで洗浄し、次いでエーテルで洗浄し、減圧下に乾燥し
た。
((3−OMe−R−ENBPI)Al)+NO3 -(3a)
H3Mabi配位子3(160mg、0.27mmol)、水酸化カリウム(271μl、
3M)及びAl(NO3)3・9H2O(100mg、0.27mmol)を用い、10
%MeOHを含有するエーテルで洗浄し、最後にエーテルで洗浄し、減圧下に乾
燥することを含む方法Aを用いて、3a(130mg、0.24mmol、87%)を
得た。
1H NMR(300 MHz,DMSO-d6)δ:1.50(m,2H),1.85(m,2H),2.68(m,2H),2.88(m,4H),
3.15(m,2H),3.38(m,4H),368(s,6H,OCH3),4.90(bs,2H,NH),6.65(t,2H,Ar-H),6.90
(d,2H,Ar-H),705(d,2H,Ar-H),8.30(s,2H,CH=N);IR(KBr,cm-1):1625υ(C=N),1360
,1265υ(NO3);κ(Ω-1mol-1cm2)117;質量分析スペクトル(FAB)(C24H32N4O4Al
)+に対する値 m/z = 467.1; 元素分析:C24H32N5O7Al H2Oに対する値:C,52.65;H
,6.26;N,12.79計算値:C,52.50;H,6.22;N,12.69.
((4,6−ジ−OMe−R−ENBPI)Al)+NO3 -(4a)
H3DMabi配位子4(66mg、0.09mmol)、水酸化カリウム(3M、98
μl)及びAl(NO3)3・9H2O(37mg、0.09mmol)について、方法
Aを用いて4a(50mg、0.08mmol、86%)を得た。
1H NMR(300 MHz,DMSO-d6)δ:1.50(m,2H),1.90(m,2H),2.70(m,2H),2.92(m,4H),
3.15-365(m,6H),3.78(s,6H,OCH3),3.81(s,6H,OCH3),4.80(bs,2H,NH),5.94(s,2H,
Ar-H),6.02(s,2H,Ar-H),8.22(s,2H,CH=N);IR(KBr,cm-1):1620υ(C=N),1280b υ(
NO3.);κ(Ω-1mol-1cm2):158; 質量分析スペクトル(FAB)(C26H36N4O6Al)に対す
る値m/z = 527.2; 元素分析 C26H36N5O9AlH2Oに対する値:C,51.40;H,6.30,N,11.
53,実測値:C,51.61;H,6.40;N,11.65.
((3−OMe−R−ENBPI)Fe)+I-(3b)
H3Mabi配位子3(153mg、0.26mmol)、及びFe(acac)3(94m
g、0.26mmol)、及びKI(44mg)について方法Bを用いて、3b(12
0mg、0.19mmol、72%)を得た。
IR(KBr,cm-1):3140υ(N-H),3000-2750υ(C-H),1620υ(C=N),1555 δ(N-H),160
5, 1480, 1440 υ(C=C);κ(Ω-1 mol-1 cm2): 149; 質量分析スペクトル(FAB)(C24
H32N4O4Fe)+に対する値m/z = 496.2;元素分析 C24H32N4O4FeIに対する計算値
:C,46.25;H,5.17;N,8.99実測値:C,46.13:H,5.22:N,8.97.
((4,6−ジ−OMe−R−ENBPI)Fe)+I-(4b)
H3DMabi配位子4(110mg、0.17mmol)、及びFe(acac)3(60
mg、0.17mmol)、及びKI(28mg)について、方法Bを用いて4b(90
mg、0.13mmol、77%)を得た。
IR(KBr,cm-1):3420 υ(O-H),3110 υ(N-H),3000-2850 υ(C-H),1610 υ(C=N),
1550 δ(N-H),1595,1460,1430 υ(C=C);κ(Ω-1mol-1cm2):127; 質量分析スペク
トル(FAB): (C26H36N4O6Fe)+に対する値 m/z = 556.2; 元素分析C26H36N4O6FeI
0.5H2Oに対する計算値:C,45.11,H,5.39;N,8.09,実測値:C,45.54;H,5.84:N,7.64
.
((3−OMe−R−ENBPI)Ga)+I-(3c)
H3Mabi配位子3(140mg、0.24mmol)、及びGa(acac)3(89m
g、0.24mmol)、及びKI(40.3mg)について方法Bを用いて、3c(
125mg、0.19mmol、80%)を得た。
1H NMR(300 MHz,DMSO-d6)δ:1.62(m,2H),1.95(m,2H),2.72(m,2H),3.02(m,4H),
3.10-3.65(m,6H),3.81(s,6H,OCH3),5.18(bs,2H,NH),6.62(t,2H,Ar-H),6.85(d,2H
,Ar-H),7.05(d,2H,Ar-H),8.28(s,2H,CH=N);IR(KBr,cm-1):1635 υ(C=N); κ(Ω- 1
mol-1 cm2): 137; 質量分析スペクトル(FAB):(C24H32N4O4Ga)+に対する値:m/z
=509.3; 元素分析C24H32N4O4GaI・2H2Oに対する値:C,42.82;H,5.39;N,8.32, 計
算値:C,42.85;H,5.31;N,8.35.
((4,6−ジ−OMe−R−ENBPI)Ga)+I-(4c)
H3DMabi配位子4(130mg、0.19mmol)、及びGa(acac)3(72
mg、0.19mmol)、及びKI(32mg)について、方法Bを用いて4c(11
0mg、0.16mmol、81%)を得た。
1H NMR(300 MHz,DMSO-d6)δ:1.55(m,2H),1.94(m,2H),2.65(m,2H),2.95(m,4H),
3.35(m,4H),3.67(t,2H),3.75(s,6H),3.78(s,6H),4.96(bs,2H,NH),5.87(2H,Ar-H)
,5.96(2H,Ar-H),8.28(s,2H,CH=N);IR(KBr,cm-1):1610υ(C=N);κ(Ω-1 mol-1 cm2
):133;質量分析スペクトル(FAB):(C26H36N4O6Ga)+に対する値 m/z = 569.1;
元素分析C26H36N4O6GaI 2H2Oに対する値:C,42.59;H,5.49;N,7.64,実測値:C,42.
93;H,5.38;N,7.78.
((3−OMe−R−ENBPI)Al)+NO3 -(3d)(脚注1)
H3Mabi配位子3(132mg、0.23mmol)、水酸化カリウム(3M、230
μl)及びIn(NO3)・5H2O(89mg、0.23mmol)を用い、最後に1
5%のメタノールを含有するエーテルで洗浄することを含む方法Aを用いて、3
d(100mg、0.16mmol、71%)を得た。
1H NMR(300 MHz,DMSO-d6)δ:1.75(m,2H),2.12(m,2H),2.65(m,2H),3.10(m,4H),
3.46(m,2H),3.67(m,2H),3.75(s,6H,OCH3),4.17(t,2H),5.22(bs,2H,NH),6.54(t,2
H,Ar-H),6.79(d,2H,ArH),6.97(d,2H,Ar-H),8.34(s,
2H,CH=N);IR(KBr,cm-1):1626 υ(C=N),1280-1244 b υ(NO3);κ(Ω-1 mol-1cm2)
: 110; 質量分析スペクトル(FAB):(C24H32N4O4In)+に対する値 m/z = 555.0; 元
素分析 C24H32N4O4InI KCI(脚注1)に対する計算値値: C,38.09; H,4.26;N,7.40
実測値: C,38.39; H,,4.86;N,,7.08.
((4,6−ジ−OMe−R−ENBPI)In)+I-(4d)
H3DMabi配位子4(118mg、0.17mmol)、及びIn(acac)3(73
mg、0.17mmol)、及びKI(30mg)について、方法Bを用いて4d(10
0mg、0.13mmol、76%)を得た。
1H NMR(300 MHz,DMSO-d6)δ:1.70(m,2H),2.0(m,2H),2.55(m,2H),3.5(m,4H),3.
40(m,4H),3.72(s,6H,OCH3),3.76(s,6H,OCH3),3.94(t,2H),5.14(bs,2H,NH),5.83(
2H,Ar-H),5.94(2H,Ar-H),8.34(s,2H,CH=N);IR(KBr,cm-1):1608 υ(C=N),κ(Ω-1
mol-1cm2): 174;質量分析スペクトル(FAB):(C26H36N4O6In)+m/z= 615.1;元素分
析:C26H36N4O6InI 2H2Oに対する計算値:C,40.12;H,5.18;N,7.20実測値:C,39.82;
H,5.01;N,7.47.
細胞培養及び細胞毒性アッセイ
親のKB−3−1及び複数医薬耐性KB−8−5細胞系の単層を、L−グルタ
ミン、(2mM)、ペニシリン/ストレプトマイシン(0.1%)、及び熱で不
活性化したウシ胎児血清(10%)を追加したDMEM(GIBCO)中、10ngの
クロロキン(Sigma Co.)の非存在下及び存在下でそれぞれ通常通りに成長させ
た。複数医薬耐性細胞を医薬を含まない培地で16時間細胞毒性アッセイの前に
培養した。R−ENBPI金属−錯体、金属塩、又はクロロキンの細胞毒性の強
さを、96−ウェルのマイクロタイタープレートで開示されているように決定し
た(Piwnica-Worms,D.et al.,Cancer Res.53:1-8(1992))。細胞(5,000/
ウェル)をウシ胎児血清(5%)を含有する培地中でプレート化し、4時間再生
させた。示された濃度のR−ENPBI錯体、適合したビヒクルを含む金属(II
I)硝酸塩又は細胞毒性濃度のクロロキン(10μg/ml:25μM)を、各細
胞系に対して同じものを3通り作成したウェルに加えた。次に、細胞を通常の成
長条
件下(37℃、5%CO2雰囲気)で72時間インキュベートした。
細胞の生存率を、先に開示され方法(Skehan,P.et al.,J.Natl.Cancer Inst.8
2:1107-1112(1990))をわずかに修飾して、スルホローダミンB(SRB)を用
いてアッセイした。手短に言えば、細胞を10%トリクロロ酢酸中で、60分4
℃において固定化し、生水で5回洗浄し、一夜(25℃)空気乾燥した。次に、
タンパク質沈殿物を1%酢酸中の0.4%SRBで、室温において20分間染色
した。過剰のSRBを1%酢酸で4回洗浄して除き、プレートを空気(25℃)
乾燥し、次いで染色物を10mMの緩衝されていないTFis塩基に溶解した。
定量を、吸収差法(absorption difference technique)(490〜450nm
)を用いてELISAプレートリーダーで行った。生存率を、医薬のビヒクルの
みを含有する培地中で育成させたものに対する生存細胞の百分率として表した(
配位子3、1%エタノール;配位子4及び金属(III)硝酸塩、0.85%エタ
ノール/0.15%DMSO)。LC50の決定は、S字式にコンピュータでフィ
ットさせることによって細胞生存曲線から得た。
S={(Smax−Smin)/(1+(C/LC50)γ)}+Smin
但し、Sは細胞タンパク質、Smaxは、対照バッファー中の細胞タンパク質
であり、Sminは最も高い医薬の毒性での残りの細胞タンパク質であり、γは勾
配であり、Cは細胞毒性薬の濃度であり、LC50は最大細胞毒性濃度の半分であ
る。一対のデータをStudent's t試験により比較した(Glanz,S.A.,Primer of Bi
ostatistics,2nd ed.,McGraw-Hill,Inc.,New York,p379(1987))。ほとんどの類
似体は、少なくとも2つの別の実験で試験した。本質的に同一の結果であった。
上述の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確かめることができ、本
発明の意図及び範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変更及び修飾を行い
、過度の実験をすることなく種々の用法及び条件にこれを適合させることができ
る。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
A61K 38/00 A61K 41/00
41/00 45/00 AGA
45/00 AGA C07F 5/00 J
C07F 5/00 5/06 E
5/06 15/02
15/02 A61K 37/02
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ,
DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I
L,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK
,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,
MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,R
U,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR
,TT,UA,UG,US,UZ,VN