【発明の詳細な説明】
組換えタンパク質の産生のための改善されたNeurospora宿主
およびそれを生成するための方法技術分野
本発明は、組換えタンパク質(特に、真核生物タンパク質)を産生する分野に
関する。詳細には、本発明は、発現されたタンパク質を野生型Neurosporaと同じ
速度では分解しない改善されたNeurospora宿主、およびそのような宿主を単離す
る方法を提供する。背景技術
細菌、酵母、および真菌における異種遺伝子のクローン化および発現は、種々
の有用なタンパク質を産生するための潜在的な系として認識されている。例えば
:Lambowitzの米国特許第4,486,533号は、ミトコンドリアプラスミドDNAによる
糸状菌のためのDNAベクターの自律的複製、ならびにNeurosporaへの異種遺伝子
の導入および発現を開示する;Yeltonらの米国特許第4,816,405号は、糸状子嚢
菌類の重要な株を改変して、所望の異種タンパク質を大量に産生および分泌させ
るのを可能にする手段および系を開示する;Buxtonらの米国特許第4,885,249号
は、宿主Aspergillus niger細胞に取り込まれ得る選択マーカーを含むDNAベクタ
ーによる、A.nigerの形質転換を開示する;そして、McKnightらの米国特許第4,
935,349号は、Aspergillusおよび他の糸状菌中で異種遺伝子の発現を指向し得る
プロモーターを含む、高等真核生物遺伝子をAspergillus中で発現するための方
法を開示する。同様の技術が、Neurospora crassa(「N.crassa」)へのアミノ
酸輸送に関連するmtr遺伝子をクローン化するため、およびインビボでこの遺伝
子に隣接しているゲノムマーカーとクローン化されたDNAとの密接な連関を証明
するために使用されている。Stuart,W.D.ら、Genome(1988)30:198-203;Koo
,K.およびStuart,W.D.Genome(1991)34:644-651。
糸状菌は、それらを真核生物タンパク質を産生する際の使用のための良好な候
補にする多くの特徴を有する。糸状菌は、複合タンパク質を分泌し得;ジスルフ
ィド結合形成を含む三次元タンパク質を正確に折り畳み得;翻訳後にタンパク質
をタンパク質分解的に切り取り得;そしてn-結合型およびo-結合型のグリコシル
化反応を用いてタンパク質をグリコシル化し得る。これらの能力は、この群の生
物を、分泌組換えタンパク質の産生のための魅力的な宿主にしている(MacKenzi
e,D.A.ら、J Gen Microbiol(1993)139:2295-2307;Peberdy,J.F.,Trends
in BioTechnology(1994)12:50-57)。今日までのほとんどの例において、糸
状菌において組換え(異種)タンパク質の商業的に実行可能な産生レベルは、天
然の(同種(homologous))真菌性タンパク質の高い産生レベルに到達していな
い。このことは、高レベルの分泌プロテアーゼを含む広範な種々の潜在的な原因
に帰属している。
Neurospora crassaは、最近、組換え同種および異種タンパク質産生のための
宿主細胞として使用されている(Carattoli,A.,ら、Proc Nat Acad Sci USA(1
995)92:6612-6616;Yamashita,R.A.ら、Fungal Genetics Newsletter(1995、
増刊)42A;Kato,E.ら、Fungal Genetics Newsletter(1995、増刊)42A;Bucz
ynski,S.ら、Fungal Genetics Newsletter(1995、増刊)42A)。しかし、Neur
ospora crassaは、少なくとも5つの別個の細胞外プロテアーゼ(3つは酸性プ
ロテアーゼとして、少なくとも1つは中性プロテアーゼとして、そして少なくと
も1つはアルカリ性プロテアーゼとして特徴付けられている)を有する。(Lind
berg,R.A.ら、J.Bacteriol(1982)150(3):1103-1108)。これらのプロテアー
ゼは、1つ以上の必須栄養素(例えば、炭素、窒素、イオウ)が欠乏している条
件下で高度に発現され、そして発現される組換えタンパク質の高レベルのタンパ
ク質分解を生じ得る(Lindberg,R.A.ら、J Bacteriol(1982)150(3):1103-110
8;Cohen,L.ら、Archiv Biochem Biophys(1975)169:324-330;Abbott,R.A.
ら、J Bacteriol(1984)159(2):505-510;Hanson,M.A.ら、Proc Nat Acad Sci
USA 72(4):1240-1244(1975))。
組換えタンパク質を産生する際の使用のための理想的な宿主細胞は、以下の特
徴を有する:
1)研究室培養において増殖させるのが簡易であり、そして安価であること;
2)液体培地中に高レベルの組換え産物を分泌し得、従って産物を回収するた
めに宿主細胞を破壊して開ける必要性を排除し、それによりその後の処理プロト
コルを単純化し得ること;
3)産物が天然において本来産生される細胞と類似または同一の様式で、組換
え産物を折り畳み、切り取り、グリコシル化し、そしてその他の翻訳後処理をし
得ること;
4)形質転換細胞の容易な同定のための遺伝的マーカー(単数または複数)を
有すること、および;
5)産生培地において安定な、非変性、非分解性環境を提供し、その結果、組
換え産物が経時的に安全に蓄積し得ること。
天然に見出されている糸状菌Neurospora crassaの株は、全てではないがいく
つかの上記の特徴を有する。このような株は、Fungal Genetics Stock Center,
Kansas City,Kansasのような系統保存所(stock repositories)から入手でき
る。入手できる株は、以下の特徴を有する:
1)研究室培養において増殖させるのが簡易であり、そして安価であること;
2)それら自身の内因性タンパク質を1リットルあたり250mgまで分泌し得る
こと、および;
3)それら自身の内因性タンパタ質を折り畳み、切り取り、グリコシル化し、
そしてその他の翻訳後処理をし得ること;
4)形質転換によりレスキューされ得、そして形質転換細胞の容易な同定のた
めに適切な既知である遺伝的マーカーを有すること。これらのマーカーのうち最
も単純なものは、単一の栄養要求性を生じ、そして適切な野生型遺伝子での形質
転換によって栄養要求性からレスキューされ得る変異(例えば、his-2、his-3、
inl、trp-2)である;
5)いくつかまたは全ての細胞外内因性タンパク質の分泌速度を増大させる既
知の変異(例えば、exo-1、inlts498において未同定の対立遺伝子)を有するこ
と。
しかし、研究室で誘導された変異を含む株を含む、天然のまたは収集された株
のいずれにおいても、通常Neurospora crassaにより培地中に分泌される細胞外
プロテアーゼのレベルを減少させる変異は見出されず、他の記載された所望の遺
伝的特徴の全てが見い出され得るか、またそれらがその何らかの部分集合または
部分的な組み合わせに見出される任意の株(単数または複数)もまた存在しない
。
本発明は、Neurospora crassaの改善された株、そのような株を生成する方法
、およびその使用(例えば、組換えタンパク質産物を発現させる際の使用)を提
供する。1つの特定の株の構築は、例示のために使用されるが、方法のこの特定
の例示は本発明の範囲を限定することを意図しない。発明の要旨
本発明は、組換えタンパク質を産生する際の使用のための改善されたNeurospo
ra宿主細胞株を提供する。詳細には、本発明は、減少した細胞外プロテアーゼ活
性を有するNeurospora宿主を提供する。このような宿主は、30℃での少なくとも
8日間のインキュベーション後に、ソルボースゼラチン寒天(SGA)上にハロー
を生成しないことによって特徴付けられ、そして2回以上の変異誘発および選択
を用いることにより単離される。このような株は、各回の変異誘発および選択後
に、倍数的な速度で分泌組換えタンパク質を産生することが見出された。
本発明はさらに、組換えタンパク質を産生する際の使用のためのNeurospora宿
主細胞株を生成する改善された方法を提供する。この改善された方法は、減少し
た細胞外プロテアーゼ活性を有する細胞株を同定するために、2回以上の変異誘
発/選択を使用する。1つの例において、exo1/his-3 Neurospora細胞株はUV線
で変異誘発され、そして30℃での増殖の4日後に、SGAプレート上にハローを生
成する減少した能力を有するコロニーが選択され、そしてさらなる回の変異誘発
および選択に供された。1つの例において、3回の変異誘発後、細胞株は、出発
株によって産生される量の約27〜125倍の量の分泌組換えタンパク質を産生する
ことが見出された。
本発明はさらに、組換えタンパク質を産生するための改善された方法を提供し
、この改善は、本明細書中に記載される方法を用いて選択されるNeurospora宿主
細胞株の使用である。1つの例において、このような株は、出発株によって産生
される量の約27〜125倍の量の分泌組換えタンパク質を産生することが示された
。好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、複数回の変異誘発および選択が、野生型Neurospora株ならびに一回
の変異誘発および選択に供されたNeurosporaの株よりも低速度で、分泌組換えタ
ンパク質を分解する、Neurosporaの株を単離するために使用され得るという観察
に基づく。1つの例において、出発株において見られる速度の約27〜125倍の速
度で回収可能な組換えタンパク質を分泌する株が産生された。この観察に基づい
て、本発明は、タンパク質の商業的生産のために使用され得る改善されたNeuros
pora宿主細胞株を単離する方法、および開示される方法により単離される改善さ
れたNeurospora宿主細胞株を提供する。詳細には、減少した、分泌組換えタンパ
ク質を分解する能力を有する、改善されたNeurospora宿主株が、Neurospora株を
変異誘発し、減少した分泌プロテアーゼ活性を有するクローン性コロニーを選択
し、次いで変異誘発/選択プロセスを1回以上繰り返すことにより、単離され得
る。
本明細書で用いるNeurospora株は、Neurospora属の糸状菌をいう。本明細書に
記載のように改変され得るNeurospora種の例としては、Neurospora crassa、N.
africana、N.celata、N.discreta、N.dodgei、N.galapagosensis、N.inter
media、N.lineolata、N.pannonica、N.sitophila、N.sublineolata、N.ter
ricola、およびN.tetrasermaが挙げられるが、これらに限定されない。
任意のNeurospora株が、本発明の方法のための出発材料として使用され得る。
適切な株はFungal Genetics Stock Center(FGSC),Department of Microbiolo
gy,University of Kansas Medical Center,Kansas City,Kansas 66103、また
はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC),12301 Parklawn Drive,
Rockville,MD 20852から入手可能である。好ましい出発株は、単一の遺伝子に
より修正され得る栄養要求性変異を有する。相補可能な栄養要求性変異は、生成
される宿主の形質転換における使用のための選択マーカーを提供する。以下の実
施例において、ヒスチジン栄養要求性株を出発材料として使用した。この株は、
クローン化野生型his-3遺伝子で容易に相補可能であるhis-3変異を含んでいた。
種々の選択マーカーの議論を以下に提供する。
Neurospora出発株を変異誘発するために種々の方法を使用して、改善されたタ
ンパク質生産能力を有する宿主を生成し得る。変異は、非特異的(non-directed
)方法または特異的(directed)方法のいずれかを使用して作製され得る。変異
は、用いられる変異誘発方法が特異的な遺伝子配列または染色体位置を標的化し
ない場合に、非特異的であるといわれる。改善されたNeurospora宿主を生成させ
るために使用され得る非特異的変異誘発手順としては、化学的および物理的変異
誘発方法、ならびにその組み合わせが挙げられる。物理的変異誘発方法の例とし
ては、UV照射(Davisら、Methods of Enzymology 17A:79-143(1971))が挙げら
れるが、これに限定されない。以下の実施例において、紫外線照射を使用してNe
urosporaを変異誘発した。当業者は、物理的修飾方法が、化学的増感薬剤を使用
することにより増強され得ることを容易に理解し得る。非特異的変異誘発におけ
る使用のための化学的薬剤の例としてはEMSが挙げられるが、これに限定されな
い。
変異誘発は、変異誘発方法が特異的な標的配列または標的領域に指向される場
合、特異的であるといわれる。特異的変異誘発方法としては、インビトロ部位特
異的変異誘発、相同組換え技術および転移性エレメントの使用が挙げられるが、
これらに限定されない。当業者は、分泌プロテアーゼの産生に関与する遺伝子を
選択的に標的化するために、ノックアウト変異誘発手順を容易に適応させ得る。
分泌プロテアーゼの産生に関与する遺伝子の多くがNeurosporaにおいてクローン
化されている。本発明の改善された宿主を生成するために、2回以上のノックア
ウト変異誘発を使用し得る。さらに、特異的変異誘発と非特異的変異誘発との組
み合わせが使用され得る。
好ましい変異誘発方法は、非特異的方法である。このような方法は、変異誘発
される遺伝子(単数または複数)の正体(identity)も染色体位置も知る必要な
しに、活性なプロテアーゼの産生および分泌を担う1つ以上の遺伝子内に複数の
変異をランダムに生成することを可能にする。さらに、非特異的変異誘発は、多
数の、変異誘発されたNeurosporaの個々のクローン性集団を効率的にスクリーニ
ングすることを可能にする。
本発明において、Neurospora株は変異誘発されて、野生型株に比較した場合、
減少したレベルの分泌プロテアーゼの活性を有する宿主株が生成される。分泌プ
ロテアーゼの活性の減少は、特定のプロテアーゼの活性を除去または減少させる
、プロテアーゼ遺伝子内の変異の結果であり得、これは例えば以下による:プロ
テアーゼコード領域または調節領域内の点変異またはフレームシフト変異の生成
;プロテアーゼの分泌に導く経路における変化;例えば、プロテアーゼの輸送を
担う遺伝子内の変異;およびプロテアーゼ発現の誘導を担う経路における変化。
用いられる変異誘発方法が外因性プロテアーゼの減少を生じる株を同定するた
めに、種々の方法が使用され得る。好ましい選択方法は、Neurosporaの細胞外タ
ンパク質基質を分解する能力に依存する。
ソルボースおよび不透明タンパク質(opaque protein)プロテアーゼ基質を含
有する固体培地(例えば、ソルボース寒天ゼラチンプレート(SGA))上で増殖
させられた野生型Neurosporaは、コロニーとして増殖し、そして増殖中のコロニ
ーを取り囲むハロー(明澄化のゾーン)を生成する。ハローはプレーティングの
1〜4日後以内に出現し、そして分泌プロテアーゼによる細胞外タンパク質の分
解を表す。1回の変異誘発の後、分泌プロテアーゼの活性を変化させる変異を含
むNeurosporaは、4日間のインキュベーション後、このようなハローを欠くこと
、またはより小さい存在するハローを有することのいずれかによって同定される
。さらなる1回以上の変異誘発および選択の後、8日間のインキュベーション後
、このようなハローを欠くか、またはより小さい存在するハローを有するかのい
ずれかの株が同定され得る。本発明の改善された宿主のすべては、8日間30℃で
のソルボース寒天ゼラチンプレート上での増殖後にハローを生成しないことによ
り容易に同定される。
本発明以前には、8日間の培養後にハローを生成しないNeurospora株の記載は
存在しなかった。3回の変異誘発/選択の後に単離された株は、出発株に比較し
た場合、タンパク質産生の数倍の増加を生じる。20、30、60、90、120、および1
25倍程の回収可能な分泌タンパク質を産生する株は、3回の変異誘発の後に単離
され得る。
種々のプレーティング培地が、本発明の改善された宿主株を選択するために用
いられ得る。1つの必須の培地成分はソルボースである。固体培地上にプレート
した場合に、ソルボースはNeurosporaがシングルコロニーとして増殖することを
可能にする。
プレーティング培地は、わずかに〜ほとんど不透明であるプロテアーゼ基質を
さらに含有する。このようなプロテアーゼ基質の例としては、ゼラチン寒天、ア
ルブミン、スキムミルク固体、カゼインおよびチトクロムCが挙げられるがこれ
らに限定されない。
好ましい培地は少量の必須栄養素(例えば、炭素、窒素、または硫黄)を含有
するかまたは、1つ以上のこれらの成分をそれがNeurospora細胞中に入り得る(
輸送される)前に分解される必要がある形態で含有する。このような培地は、Ne
urosporaから分泌されるプロテアーゼの産生/活性を増加させることが示されて
いる(Abbott,R.A.ら、J.Bacteriol.(1984)159(2):505-510;Hanson,M.A.ら
、Proc Nat Acad Sci USA 72(4):1240-1244(1975))。
培地のpHもまた、特定の分類のプロテアーゼ内の変異を同定するための手段と
して変動され得る。プロテアーゼは、活性のためのpHの必要性に従って分類され
得る(例えば、酸性、塩基性、および中性プロテアーゼ)。変異誘発されたNeur
osporaを特定のpHを有する培地上にプレートすることにより、その分類のプロテ
アーゼに影響する変異が同定され得る。
以下の実施例において使用されるプレーティング/選択方法は、変異誘発後に
多数のクローン性コロニーをスクリーニングすることを可能にする。本発明の改
善された宿主を同定するために、別の方法が使用され得る。例えば、分泌プロテ
アーゼの存在を直接的に検出するアッセイが、本発明のNeurospora宿主を同定す
るために使用され得る。プロテアーゼ活性は、当該分野において記載される方法
を使用して、培養上清から直接的にアッセイされ得る。あるいは、特定のプロテ
アーゼの存在は、ELISAアッセイのような免疫学的アッセイを使用して測定され
得る。
本発明の方法において、2回以上の変異誘発が使用される。30℃でのSGAプレ
ート上での8日間の培養後にハローを生成しない宿主細胞株を同定するために、
2回以上の変異誘発が必要とされることが観察されている。このような選択は、
出発株に比較して、回収可能な分泌タンパク質産生の数倍の増加を有する株を同
定する。本発明の方法の1つの適用において、株は、外因性DNAを異種タンパク
質を産生することにおける使用のために細胞に導入する前に、2回以上の変異誘
発/選択を使用して単離される。あるいは、外因性DNAを細胞に導入する前に、
1回の変異誘発/選択が使用され、次いで1回以上のさらなる変異誘発/選択が
、外因性DNAの導入後に実施される。
一旦単離されると、本発明の改善されたNeurospora宿主は、組換えタンパク質
を産生するために使用され得る。タンパク質産生は、野生型株に比較した場合、
分泌プロテアーゼの活性の減少のために、有意に増強される。
糸状菌の形質転換および真菌の培養のための標準的な技術は当該分野において
周知であり、そして組換えタンパク質の産生のために本発明の改善された宿主を
形質転換するために使用され得る。N.crassaに適用されるような技術の十分な
概説は、例えば、Davisら、Methods Enzymol(1971)17A:79-143に見出される。
標準的な手順は、一般に、株の維持および分生子の調製のために使用される。La
mbowitzら、J Cell Biol(1979)82:17-31に記載のように、菌糸体は、代表的に
は、液体培養において約14時間(250C)増殖させられる。宿主株は、一般に、適
切な栄養素(単数または複数)(例えば、ヒスチジン;アルギニン;phe、tyrお
よび/またはtrp(各約80 Tg/ml);p-アミノ安息香酸(約2Tg/ml);およびイ
ノシトール(約0.2 mg/ml))を補充したVogel'sまたはFries最少培地中のいず
れかで増殖させられ得る。
発現が活性化され、そして所望のタンパク質が産生されると、タンパク質は、
当該分野において一般に認められている技術を使用して、培養物から回収され得
る。タンパク質は培地中に分泌されるので、培地は取り出され得、そして分泌さ
れたタンパク質は従来の技術(例えば、サイズ排除、イオン交換クロマトグラフ
ィー、逆相クロマトグラフィー、分画遠心分離など)を使用して精製され得る。
適切なプロトコルは、タンパク質産物の性質に依存する。
本発明の改善された宿主は、分泌組換えタンパク質を産生することにおける使
用のために意図される。この使用において補助するために、出発株が単一の遺伝
子により相補され得る栄養要求マーカーを含み得るか、または選択マーカー/選
択薬剤が用いられ得る。選択マーカーの適切な選択は、産生されるべきタンパク
質の性質および出発株の性質に依存する。まっすぐな選択は、例えば、宿主がそ
れに対して感受性である抗生物質(例えば、ベノミル)に対する抗生物質耐性を
担う酵素を産生する発現系であり得る。あるいは、宿主が、例えば栄養欠損につ
いて選択される場合、野生型遺伝子が欠損を置換するために使用され得る。しか
し、そのためには適切な変異株が必要である。
出発株は一般的に調製され得るが、選択のための手段を含む形質転換ベクター
の設計をより多様にする、Neurosporaの多数の変異体が容易に利用可能である。
例えば、選択のための1つの非常に単純な方法は、特定の栄養素についての要求
を有する株を利用する。ここで、選択マーカー手段は、この栄養要求性の原因と
なる欠損遺伝子を置換することにより提供される。例証として、ヒスチジンの非
存在下で増殖し得ない株が出発株として使用される場合、首尾良い形質転換体は
、「マーカー」として変異体において欠損している遺伝子の野生型を含む核酸を
使用し、そして形質転換された細胞を最少培地上で増殖させて選択され得る。首
尾良い変異体のみがヒスチジンの非存在下で増殖し得る。培地中の他のアミノ酸
または他の栄養素の存在に対する依存を生じる同様な変異もまた公知である。N
.crassaにおいて、例えば、公知の変異体としては特異的栄養要求性を有する変
異体が挙げられる。有用な栄養要求性および関連する変異体の例としては、以下
が挙げられる:
(1) アミノ酸(例えば、ヒスチジン(his-1からhis-7変異体)、プロリン(ag
a変異体)、アルギニン(arg-11異体)、シトルリン(arg-11変異体)、アスパ
ラギン(asn変異体)、コリン(chol-1およびchol-2変異体)、システイン(cys
-I変異体)、グルタミン(gln-1変異体)、ロイシン(leu-1からleu-4)、リジ
ン(lys-2、lys-4、およびlys-5)、メチオニン(mac変異体、ならびにmet-6、m
et-9、およびmet-10変異体)、ならびにスレオニン(thr-2およびthr-3変異体)
);
(2) 芳香族アミノ酸の混合物(例えば、p-アミノ安息香酸、チロシン、トリプ
トファン、およびフェニルアラニンの混合物(aro-6、aro-7、およびaro-8以外
のすべてのaro株により要求される)、トリプトファンおよびフェニルアラニン
の混合物(aro-6変異体のために要求される)、イソロイシンおよびバリンの混
合物(ilv-1、ilv-2、およびilv-3のために要求される)、ならびにフェニルア
ラニンおよびチロシンの混合物(pt変異体のために要求される));
(3) ビタミン(例えば、パントテン酸(pan-1変異体)およびチアミン(thi-2
およびthi-4変異体));
(4) プリン塩基(例えば、アデニン(ad-2からad-4およびad-8変異体)、ヒポ
キサンチン(ad-2およびad-3変異体)、イノシン、ならびにグアニンまたはグア
ノシン(gua-1またはgua-2変異体));
(5) ピリミジン塩基(例えば、ウラシル(pyr-1からpyr-6));
(6) 飽和脂肪酸(cel変異体)または不飽和脂肪酸(例えば、9位または11位
のいずれかにおいてシス立体配置で二重結合を有するC16またはC18脂肪酸、9
位においてトランス立体配置で二重結合を有する脂肪酸、およびメチレン架橋に
より中断される複数のシス二重結合を有する脂肪酸(ufa-1およびufa-2));
(7) 生理学的に重要なイオン(例えば、カリウム(trk));
(8) 糖アルコール(イノシトール(acu変異体およびinl変異体)ならびにグリ
セロール);ならびに
(9) 他の有機物質(例えば、酢酸塩(ace変異体)、I-ケトグルタレート、コ
ハク酸塩、リンゴ酸塩、ギ酸塩、またはホルムアルデヒド(for変異体)、p-ア
ミノ安息香酸(pab-1、pab-2、およびpab-3変異体)、ならびにスルホンアミド
(35℃におけるsfo変異体))。
他の選択マーカー系もまた使用され得る(例えば、毒性物質または他の有害培
養条件に対する耐性を与える遺伝子を含むこと)。例えば、抗生物質に対する耐
性を与えるタンパク質をコードする遺伝子が使用され得る。ここで、選択は、抗
生物質を含有する培地上で実施される。糸状菌の場合、このような抗生物質とし
てはベノミルが挙げられる。
本発明は、本明細書中に記載の方法により単離される宿主をさらに提供する。
本発明の方法を用いて単離される宿主の例は、Hep-25/24と記され、そしてアメ
リカンタイプカルチャーコレクションに、1995年12月14日に、ブダペスト条約の
もとに寄託されている。Hep-25/24宿主の産生は、詳細に実施例において記載さ
れる。
以下の実施例は、本発明を例証するが、限定しないことが意図される。
実施例1 方法および材料
すべての出発株を、Fungal Genetics Stock Center(FGSC),Department of Mi
crobiology,University of Kansas Medical Center,Kansas City,Kansas 661
03から得た。株を、それらの遺伝子座名および貯蔵センターから入手可能な「株
カタログ」に列挙されているFGSC貯蔵番号によって同定した。
Neurospora培養の増殖、交配、および子孫の回収は、Methods in Enzymology
第17A巻79-143,1970、R.H.DavisおよびF.J.DeSerresによる「Neurospora crassa
の遺伝学および微生物学研究技術」に十分に記載された十分に確立された方法に
従う。
組換え産物の同定のための特定の技術は、各々の特定の産物に対して開発され
た標準アッセイを利用する。これらは、標準的な酵素結合免疫吸着検定法(ELIS
A)および活性アッセイが含まれるが、これらに限定されない。Neurospora crassa の発現株の構築の説明 遺伝的交雑
exo-I株(FGSC#2256)は、アミラーゼおよびインベルターゼを含む細胞外酵素の
過剰産生株である(H.GratznerおよびD.N.Sheehan、J.Bact 97: 544-549頁,19
69)。his-3株(FGSC#2278)は、Neurosporaのヒスチジン生合成経路において多
数の酵素活性をコードする遺伝子複合体における変異のため、培地中にヒスチジ
ン補充を必要とする。(D.D.Perkinsら、Microbiological Reviews,46,426-57
0頁,1982)。
exo-1株をhis-3株と交配させ、そして二重変異体(double mutant)exo-1;his
-3を回収した。この子孫をhisexoと示し、そしてNeurosporaの接合型であるAお
よびaの両方の例を回収した。
hisexo-laと称される1つの単離物を、細胞外プロテアーゼ産生を誘導するこ
とが知られている固体培地で増殖させた(Lindberg R.A.ら、J.Biol.Chem.2
56(2):811-814(1981))。30℃で4日間増殖後、この株は、ソルボース-寒天-ゼ
ラチンプレート上に可視のハロー(halo)を産生した。宿主株の変異誘発
hisexo-laの固形傾斜培養より得られた分生子柄の懸濁液を、紫外線光源(W C
rossliker,FB-UVX-1000 Fisher Scientific)に対して、UV曝露から細胞が60〜
80%死滅を得るのに充分な時間(20 秒)曝露することにより、hisexo-la株の変
異誘発を達成した。生存した細胞を、標準的なペトリ皿の固体プロテアーゼ誘導
培地に、プレート当たり50〜100コロニー得られると見積もられるような希釈で
プレートした。得られたコロニーを四日間の増殖後に評価した。ハローの見られ
ないコロニーを拾い、そしてさらなる試験のためにVogelの最少培地の寒天傾斜
に移した(Davis および DeSerres)。約20,000のコロニーを評価し、そして67
コロニーをさらなる試験用に選択した。1つの選択したコロニーが、4日目にお
いて安定かつ再現性のあるハローのない表現型を与え、そしてHep-25(ヒスチジ
ン細胞外性プロテアーゼ)と命名された。8日間増殖を続けた場合、Hep-25のコ
ロニーは視覚可能なハローを発達させた。
上記のようにHep-25を出発株として用い、そして8日後に得られたハローを欠
くコロニーを評価する2回目の変異誘発を行った。再び、約20,000のコロニーを
評価し、そしてさらなる研究のために、52コロニーを選択した。これらのうち1
コロニーが安定かつ再現性のある表現型を与え、そしてこれをHep-25/24と命名
した。組換えタンパク質を産生する形質転換体の選択
Hep-25/24を、野生型his-3遺伝子配列を含むプラスミドpNH60(FGSCから得た
)およびNeurosporaグルコアミラーゼ遺伝子RNAポリメラーゼプロモーターによ
って駆動されるNeurospora発現ベクターを含むプラスミドを含むDNAサンプル(
これは、シグナル認識粒子認識部位および選択シグナルをコードするアミノ酸末
端を含むヒト免疫グロブリンG(IgG)のヒトκ鎖サブユニットをコードするcDNA遺
伝子を含む)(PTC特許係属中、Alan Radford および University of Leeds,
United Kingdom)を用いて、標準方法(Vollmer.S.J.ら、Proc Natl Acad Sci
USA 83: 4869-4873(1986))によって形質転換し、そしてグルコアミラーゼ翻訳
停止部位およびポリアデニル化部位(Radford 上記)によって停止した。形質転
換体を、ソルボースは補充するがヒスチジンは補充しない固体最少培地上でのコ
ロニー増殖について選択した。
形質転換細胞コロニーは滅菌の使い捨てのガラスピペットで拾い、ウェル底に
0.45μフィルター付で漏れ防止の滅菌プラスチックライナーでカバーされた滅菌
マイクロタイタープレート(Millipore)に移し、2%のソルボースを補充した
液体Vogelの培地(Davis および DeSerres 前記)で30℃で150rpmで振盪しなが
ら培養した。48時間後、プラスチックライナーを除去し、そして培地を底のフィ
ルターから抜き、そしてそのような回収のためにデザインされた多岐管(Millip
ore)を用いる標準的なマイクロタイタープレートに回収した。培地をヒトκ鎖
タンパク質の存在についてサンドイッチELISAでアッセイしている間、細胞を含
むプレートを4℃に保存した。
アッセイによって培地中に高レベルのκタンパク質を産生すると同定された培
養物を、マイクロタイター培養プレートから固体寒天斜面培地に移した。多くの
一連の平行実験において、組換えタンパク質もまた産生する形質転換したコロニ
ーの割合は、拾った全形質転換体において10%〜30%の間で変動した。一般的な
実施として、通常、最も高い6つの培養物をさらなる実験のために移す。次いで
、産生株におけるホモカリオン核を確実にするために、高レベルの安定産生株は
、小形分生子増殖期を経る(Ebbole,D.ら,Fungal Genetics Newsletter 37:
17-18(1990))。小形分生子の継代培養物をペトリプレートのコロニー培地から
拾い、そして底にフィルター付きの新しいマイクロタイター培養物プレートのセ
ットに移し、培養し、元の選択手順についての上記のように試験した。最高量の
組換え産物を産生するコロニー(ここの実施例では、ELISAで同定したヒトκ鎖
)を最少固体培地の斜面管に移した。変異誘発と過剰産生株の選択
安定産生株であることが証明された小形分生子株を、さらに1回の変異誘発プ
ロトコルを行い、そして固体最少コロニー培地にプレートした。このプロトコル
では、2〜3日後に現れたコロニーを拾い、マイクロタイター増殖/フィルター
プレート上に拾い、そして増殖2日後に組換えタンパク質の産生の増加について
選択した(この場合、ELISAで同定したヒトκ鎖)。試験した全コロニーの1〜
2%が産生増加を示した。最も高い6つの産生体を、25mlの液体振盪培養で産生
レベルの安定性について試験した。安定な最高レベルの産生体を、上記のように
2回目の変異誘発および選択のための親株として選択した。
この選択手順を3回用いて実験を行った。各レベルで、3〜5倍の産生レベル
の改善は、最高の産生量を示す変異体の典型であることが見い出された。これら
の改善は相加的なものではなく相乗的なものであり、この結果、3回の変異およ
び選択の後の組換えタンパク質産生レベルの増加は、通常27倍〜125倍の範囲で
あった。プロテアーゼおよび組換えタンパク質の産生および分泌をコントロール
している遺伝子の数および型がNeurosporaゲノムの大きさおよび複雑さによって
制限されるに違いないので、上限は明確に存在するに違いないにも関わらず、こ
の方法によって可能な産生改善の上限には達していない。開発した株の一般的な発現宿主としての利用
上記の方法によって開発した株を、選択の手順で使用した元の組換えタンパク
質以外の組換えタンパク質の宿主として使用し得る。これは以下のようにして成
し遂げられ得る。
元の形質転換細胞株におけるhis-3(または他の選択的な)遺伝子座に対する
形質転換DNAが、マーカー遺伝子(すなわちhis-3)の部分配列のみを形質転換す
るがマーカー遺伝子のゲノム変異の部位をカバーする部分配列は形質転換しない
標準方法を使用することにより、その遺伝子座を特異的に標的にする場合、形質
転換細胞はおそらく1つのインタクトで機能的な組換えマーカー遺伝子配列のみ
を有するようである。同様に、組換えcDNA遺伝子発現カセットがNeurosporaゲノ
ムDNAの長い配列に隣接している場合、発現カセットの挿入は、組換遺伝子に隣
接するDNAの部位での単一の事象として非常に高い確率で起こるようである。こ
れらの可能性の両方は、プローブとしてマーカーおよび発現カセットDNAを用い
る、開始形質転換体のゲノムDNAの簡単なサザンブロットによって容易に確認さ
れる。挿入により必須ではないが選択的である遺伝子の変異誘発を生じるように
フランキングDNA配列を慎重に選択する場合、(例えば、言及するが、多くの可
能性のある部位のうちの3つである、am(硝酸還元酵素)あるいはmtr(中性ア
ミノ酸運搬)あるいはcaf(カフェイン耐性)(Perkinsら、上記を参照のこと)
)、次いで、この挿入をフランキング配列遺伝子の機能の喪失のために選択し得
る。
次いで、上記の特徴を有する改変された宿主を、マーカー遺伝子(例えば、hi
s-3)プラスミド配列を含むDNA混合物で同時形質転換し得、この配列は、コーデ
ィング領域に小さな内部欠損を有するように構築されており、そのため元のcDNA
(例えば、ヒトκ鎖)遺伝子発現カセット配列の周りのフランキング配列の遺伝
子座に機能しないポリペプチドおよび野生型ゲノムDNA配列をコードする。
形質転換体を、ヒスチジン補充培地で増殖し、次いでヒスチジン補充しない培
地で増殖能力の欠損を試験し、最後に元の組換え産物の産生能力の欠損を試験す
ることによってhis-3野生型機能の欠損を試験した場合、まずフランキング遺伝
子配列の表現型(すなわちam+への転換)の修復について選択する。そのような
形質転換体は、今回、再びその野生型マーカー遺伝子(例えば、his-3)を欠損
し、そして元の組換えタンパク質(ヒトκ鎖)の配列を含むcDNA発現構築物が通
常のNeurospora野生型DNAゲノム配列に置き換えられたということ以外は、改変
された宿主細胞株と同一であると予想される。この予測はもう一度、適切なDNA
プローブを使用するサザンブロットにより証明される。
この新しい宿主細胞は、この図中に最初に記載したものに類似するが、異なる
発現のcDNA配列(例えば、ヒトγ鎖抗体、ヒトtPA、ヒトインシュリンなど)を
含む第二のcDNA発現構築物で現在形質転換されようとしている。もう一度、最初
の形質転換体を、本来上記のように、機能的な野生型マーカー配列(例えば、hi
s-3)を用いる同時形質転換のための選択によってスクリーニングし得る。
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