【発明の詳細な説明】
遺伝子治療のための自己削除性ベクター発明の分野
本発明は、好ましくは組み込み時に転写単位に無関係のすべての配列が除去さ
れるように転写単位を真核細胞に導入する、特別に作製されたベクターに関する
。任意の天然のまたは合成プロモーター/エンハンサー配列、タンパク質コード
配列およびポリアデニル化部位を含む1つの転写単位のみが、ゲノムに保持され
る。ゲノムから自分自身を除去することにより本発明のベクターは、導入された
遺伝子または組み込み部位に隣接する遺伝子による転写妨害、細胞癌遺伝子の活
性化、内因性レトロウイルスの動員、および免疫応答の出現のような、従来のベ
クター(例えば、レトロウイルスおよびそのベクター)で遭遇する問題を避ける
ことができる。発明の背景
レトロウイルスは、DNA中間体を介して複製するRNAウイルスである。ウ
イルスRNAゲノムの端には、DNA合成、組み込み、転写、およびRNAプロ
セシングを制御する短い配列の繰り返し(R)とユニークな配列(U5とU3)
が隣接する。制御領域の間には、ウイルス粒子の主要な構造タンパク質(gag
とenv)および粒子中に存在する酵素(pol、プロテアーゼ、逆転写酵素お
よびインテグラーゼ(integrase))のコード配列がある(図1)。
感染後まもなく、ウイルスRNAは逆転写酵素によりDNAに変換される。こ
のプロセスは、細胞性tRNAが伸長プライマーとして作用して、ウイルスゲノ
ム内の相補的な領域に結合することにより開始される。プライマー結合部位(P
BS)とも呼ばれるこの領域は、U5のすぐ下流に存在し、ウイルス複製に必須
である。組み込みの前に、それぞれがU3、RおよびU5領域を含有する長い末
端反復配列(LTR)がレトロウイルスゲノムの両側に隣接するように、ウイル
スゲノムの末端配列は複製される。この型の線状DNA分子はゲノム内に組み込
まれる(図1)。
LTR配列は、プロウイルスとも呼ばれる組み込まれたウイルス内で維持され
るが、2つのヌクレオチド(nt)は各末端から失われる。細胞性DNA配列も
変化しないが、組み込み時に、プロウイルスは両端に4〜6ntの反復配列が隣
接するように4〜6ntが複製される。プロウイルスとしてレトロウイルスゲノ
ムは細胞性DNAとともに複製され、RNAポリメラーゼIIにより細胞性遺伝子
として転写される。プロウイルス転写は、5’LTRのU3領域に存在するプロ
モーター/エンハンサー配列により制御される。ポリアデニル化転写体は、5’
LTR内のU3とR(cap部位)の結合部分で開始し、ポリアデニル化のシグ
ナルを含有する3’LTRのRで終結する。完全長(ゲノム)RNAは、核から
細胞質に運搬され、ウイルス粒子にパッケージングされて細胞から出芽するかま
たは翻訳されてgagおよびpolタンパク質を産生する。RNAの一部はスプ
ライスされて、envをコードするmRNAを生成する。
哺乳動物ゲノムに遺伝子を導入するようにレトロウイルスを改変することは可
能である。LTR内のいくつかの制御配列が変化しないなら、逆転写、組み込み
および粒子形成に必要なタンパク質を発現する細胞中で複製するその能力を障害
することなく、レトロウイルスゲノムを削除することができる。このために、ベ
クターDNAは、完全なレトロウイルスゲノムまたはヘルパーウイルスを含有す
る細胞株にトランスフェクションされる。ヘルパーウイルスは、U5とgagの
間の配列(Y)を含む小さい欠失のために粒子が集合することのないように作製
される。ベクターDNAはY欠失を含有しないため、組換え転写体はパッケージ
ングされ、ウイルス粒子として細胞から排除される。Y以外にgag配列もまた
、ベクターがパッケージングされる能力を増強することができる。
今日までレトロウイルスベクターは、外来遺伝子を哺乳動物細胞に導入するの
に最も効率的な手段である。従ってレトロウイルスは、認可されたすべての遺伝
子治療試験の80%以上で使用されている。しかしいくつかの要因が、遺伝子治
療ベクターとしての従来のレトロウイルスの実際的使用を妨げている。まず、導
入された遺伝子はしばしば、メチル化またはウイルスゲノムへの転写レプレッサ
ーの結合により不活性化される(1〜3)。これらのレプレッサーはいくつかの
レトロウイルスのプライマー結合部位に結合することが証明されており、その単
純な除去によりウイルス複製が妨害されるであろう。第2に、レトロウイルスは
ゲノムにほとんどランダムに組み込まれるため、しばしば組み込みにより突然変
異が起き、これが隣接遺伝子の発現を増強する(4、5)。隣接するプロト癌遺
伝子の活性化の次に感染細胞の悪性形質転換が起きることが、記載されている(
6)。活性化機構には、上流U3プロモーターまたは近くのU3エンハンサーに
よる転写増強が関与する。第3に、パッケージシグナルやリーダー配列のような
ウイルスベクター配列は、内因性レトロウイルスと組換えを起こして、新しい好
ましくない型の感染性ウイルスを生成することがある(7〜9)。最後に、ある
ベクターのウイルスまたは非ウイルス配列は、導入された細胞を排除する免疫応
答を引き起こすことがある(10)。遺伝子治療の総説は(26)に記載されて
いる。
本発明の目的は、先行技術のベクターの欠点を示さない新規ベクターを提供す
ることである。
このような目的は、部位特異的リコンビナーゼの少なくとも1つのコード配列
およびこのリコンビナーゼに特異的に認識される少なくとも1つの標的配列から
なる遺伝子治療に有用なベクター系により達成される。
このベクター系は、DNAベクターまたはRNAベクターでもよい。現在、遺
伝子治療に使用でき、本発明のベクター系の作製のための出発物質として適して
いるベクターがいくつかある。
部位特異的リコンビナーゼは、標的配列を特異的に認識する任意のリコンビナ
ーゼであってよい。先行技術は、部位特異的リコンビナーゼおよび対応する標的
配列のいくつかの例を提供する。当業者は、ベクター内のリコンビナーゼおよび
標的配列をコードする配列の位置は、哺乳動物ゲノムに取り込まれた後ベクター
のどの部分が除去されるかにより、選択することができる。部位特異的リコンビ
ナーゼは随時、標的配列とさらにゲノムにベクターを取り込むのに必要な配列を
含有するベクターを有する細胞中に同時に含有される別のベクターによりコード
されてもよい。さらに、リコンビナーゼは、標的配列を有するベクターを含有す
る細胞にタンパク質として添加してもよい。
好適な実施態様において、使用されるリコンビナーゼと標的配列の組合せは、
リコンビナーゼCreと標的配列loxPである。
さらなる実施態様において、リコンビナーゼはFlpであり、標的配列はfr
tである。
本発明のベクターは、哺乳動物ゲノム内に導入される目的の機能をコードする
遺伝子からなる転写単位である、任意の転写単位を含有してもよい。多くの場合
この遺伝子は、本発明のベクターを受け取る細胞により正しく調製されないタン
パク質をコードする。
さらに好適な実施態様において、本発明のベクターはレトロウイルスベクター
であり、最も好ましくはレトロウイルスDNAである。
レトロウイルスベクターが使用される場合、標的配列は好ましくはU3および
/またはU5領域に挿入され、この領域はさらに転写単位を含有してもよい。さ
らに好適な実施態様において本発明のベクターは、ウイルスプロモーターおよび
/またはエンハンサーを含んでよい。
哺乳動物細胞への本発明のベクターの導入の結果、ゲノムの所望ではないベク
ター部分の除去後、ベクターにより導入された少なくとも1つの標的配列を含有
する細胞が得られる。ベクターがまた追加の転写単位を含む多くの場合、この追
加の転写単位は哺乳動物細胞ゲノム内に含有される。転写単位が、通常は哺乳動
物細胞にも含有されるが何らかの理由で機能しない遺伝子を含有する場合、本発
明のベクターを介して細胞に導入される遺伝子は、細胞内に天然に存在する場合
の遺伝子と比較すると異なる染色体環境を有するであろう。ベクター配列(例え
ば、プロウイルスゲノム)が染色体から削除されると、一般にプロウイルスゲノ
ムの数個のヌクレオチドが細胞のゲノム内に残る。従って本明細書において「基
本的にプロウイルスゲノムがない」とは、好ましくは600塩基対未満、より好
ましくは100塩基対未満のヌクレオチドがゲノム内にとどまることを意味する
。
本発明のベクターを使用することにより、任意のDNAを哺乳動物細胞のゲノ
ムに取り込むことができる。
ベクター内の標的配列の位置は、ベクターの取り込み後にベクターのどの部分
がゲノムから削除されるかを、あらかじめ決定することを可能にする。
本発明は、真核細胞のゲノム内に治療目的または非治療目的で転写単位を導入
するための新規のベクター、特にレトロウイルスの開発を含む。このベクターは
、CreまたはFlpのようなリコンビナーゼおよびloxPまたはfrtのよ
うな少なくとも1つの特異的標的配列を含む部位特異的組換え系を有する。この
系は組み込まれると、転写単位に関係のないすべてのウイルスおよび非ウイルス
配列が除去されるように活性化される。この種のレトロウイルスは好ましくは、
従来のレトロウイルスベクターで遭遇するすべての好ましくない副作用を避ける
ことができる。
本発明の好適なレトロウイルスベクターは、好ましくはU3またはU5領域内
に、プロモーター、タンパク質コード配列、およびポリアデニル化配列を含む転
写単位を含有する。また好ましくはU3またはU5領域において、本発明のレト
ロウイルスは、部位特異的組換え系の少なくとも1つの合成または天然の標的配
列を含有する。このような系において、同じ配向を有する標的配列が隣接するD
NA断片は、対応するリコンビナーゼにより除去される(図2)。
本発明のレトロウイルスは、複製中にU3またはU5領域内に標的配列を挿入
して複製する。これによりウイルスゲノムの大部分が同一の標的配列内に配置さ
れ、リコンビナーゼがプロウイルスの塊を除去することを可能にする。目的の遺
伝子を含有する導入された転写単位の1つのコピーのみが、ゲノム内に残る。こ
のリコンビナーゼの発現は、導入された細胞内へのタンパク質またはリコンビナ
ーゼを発現するプラスミドの導入によりトランスで達成されるか、または好まし
くはプロウイルス自身からリコンビナーゼを発現してシスで達成される(図3、
4)。この場合、リコンビナーゼをコードする配列は、好ましくはプロウイルス
制御領域(LTR)の外の標的配列の間に配置される。これらの発現は好ましく
は、第2の合成または天然のプロモーターにより制御される。ポリアデニル化シ
グナルは好ましくは、3’LTRのR領域により提供される。プロウイルスに対
してリコンビナーゼカセットが逆の配向の場合、転写は、隠れたプロウイルスポ
リアデニル化シグナルで終わるか、または逆の配向でウイルスにクローン化され
た追加の合成または天然のポリアデニル化配列で終わる。
本発明のレトロウイルスはエンハンサーおよび/またはプロモーターがないこ
とが好ましい。しかし本発明のレトロウイルスは、それ自身のプロモーターおよ
びエンハンサー配列を含有し続ける。
本発明のレトロウイルスは好ましくは、哺乳動物細胞に治療遺伝子を導入する
のに使用されるが、基礎的研究にも使用できる。
本発明のレトロウイルスはまた、有害な可能性のある配列が組み込まれた後の
しかるべき時期に削除される限り、これらを導入してもよい。例えば、応用の可
能性のあるのは、ヒトレトロウイルス(HIV、HTLVI)ベースのベクター
である。
本発明は、本発明のレトロウイルスにより導入された少なくとも1つの部位特
異的組換え標的(例えば、loxPまたはfrt)および少なくとも1つのタン
パク質コード配列を含有する哺乳動物細胞を含有する。これらの細胞はほとんど
レトロウイルス配列が欠失している。
最後に本発明は、哺乳動物ゲノム内にcDNA配列を導入する方法(例えば本
発明のレトロウイルスによるプロデューサー細胞のトランスフェクション、哺乳
動物細胞の感染、およびリコンビナーゼ発現カセットの削除に関連する部位特異
的リコンビナーゼの発現)を含む。図面の簡単な説明
図1は、先行技術のレトロウイルスのゲノムの略図である。
図2は、部位特異的組換え系の略図である。
図3と4は、本発明のレトロウイルスの略図であり、P=プロモーター;Ts
=部位特異的標的配列;PCS=タンパク質コード配列、Rec=レコンビナー
ゼである。
図5は、レトロウイルスベクターU3pgklxtkneoとU3pgklx
tkneoMCCreの略図である。
図6は、MCCreをトランスフェクションする前後のU3pgklxtkn
eoを発現するクローンのサザンブロット解析である。最初の6つのレーンにお
いて、DNAはプロウイルス内で切断しない酵素NdeIとXbaIで消化した
。レーン7〜12は、Cre発現(+)クローンおよび非発現(−)クローンか
らのHindIII で消化したDNAを含有する。
図7は、U3pgklxtkneo(A)とU3pgklxtkneoMCC
re(B)を発現するクローンから得たDNAによるサザンブロット解析を示す
。Cre発現クローン(B)からの一定のHindIII 断片のシグナル強度の低
下に注意されたい。可変バンドは、プロウイルスの数に対応する。
図8は、レトロウイルスベクターpggSVCreU3lxpgkpuroと
pggSVCreU3lxSVpuroの略図である。
図9は、NIH3T3細胞中のU3lxpgkpuroSVCreプロウイル
スの組換えを示す。(A)部位特異的組換えの前後のプロウイルスの予測される
構造。(B)U3lxpgkpuroSVCreプロウイルスのサザンブロット
解析。ゲノムDNAはEcoRIで切断し、アガロースゲルで分画し、ナイロン
フィルターにブロットし、32P標識pgk−プローブにハイブリダイズさせた。
レーン1〜14、U3lxpgkpuroSVCreを発現するクローン1〜1
4。遍在する7kbの一定のバンドは、内因性pgkプロモーターである。(C)
U3lxpgkpuroSVCreを発現するクローンのPCR解析。ゲノムD
NAは、Cre−(上)またはb−アクチン−(下)特異的プライマーで増幅し
た。増幅産物は、1%アガロースゲルで分離し、以下のようにレーンを臭化エチ
ジウムで染色して可視化した:M、分子量標準物質(1kbのBRLラダー);1
〜14、U3lxpgkpuroSVCreを発現するクローン1〜14;15
、単一のコピーのU3pgklxtkneoを発現するクローン(陰性対照);
16、単一のコピーのU3pgklxtkneoMCCreを発現するクローン
(陽性対照)。
図10は、NIH3T3細胞中のU3lxSVpuroSVCreプロウイル
スの組換えを示す。(A)部位特異的組換えの前後のプロウイルスの予測される
構造。(B)U3lxSVpuroSVCreプロウイルスのサザンブロット解
析。細胞性DNAはEcoRI(左)またはHindIII (右)で切断し、図2
の凡例に記載のように処理し、32P標識SV40−プローブにハイブリダイズさ
せた。レーン1〜12、U3lxSVpuroSVCreを発現するクローン1
〜12。(C)U3lxSVpuroSVCreを発現するクローンのPCR解
析。ゲノムDNAは、Cre−(左)またはb−アクチン−(右)特異的プライ
マーで増幅した。増幅産物は、1%アガロースゲルで分離し、以下のようにレー
ンを臭化エチジウムで染色して可視化した:M、分子量標準物質(1kbのBRL
ラダー);1〜12、U3lxSVpuroSVCreを発現するクローン1〜
12;13〜14、単一のコピーのU3pgklxtkneoを発現するクロー
ン(陽性対照);15〜16、単一のコピーのU3pgklxtkneoMCC
reを発現するクローン(陰性対照)。
「ベクター系」という用語は、リコンビナーゼのコード配列およびこのリコン
ビナーゼの標的配列を細胞のゲノムに導入することができる少なくとも1つのベ
クターを意味する。リコンビナーゼをコードする配列および標的配列は、2つの
異なるベクター上に位置してもよいが、好ましくは1つのベクター中に存在する
。リコンビナーゼは随時、ベクター系がリコンビナーゼのコード配列を含まなく
てもよいように、細胞内にタンパク質として導入されてもよい。
「レトロウイルス」という用語は、DNA中間体を介して複製する任意のRN
Aウイルスを意味する。このようなウイルスには、継代のためにヘルパーウイル
スのような他のウイルスの存在を必要とするものがある。すなわちレトロウイル
スは、そのRNA中に実質的な欠失または突然変異を有するものを意味すること
が企図される。
「対照領域」という用語は、感染後および組み込みの前に複製されるレトロウ
イルスの領域を意味する。対照領域は、U3およびU5領域を含む。このような
領域はまた、LTR領域を含む。
「転写単位」という用語は、天然のまたは合成プロモーター、タンパク質コー
ド配列、およびポリアデニル化シグナルを含む核酸の配列を意味する。プロモー
ターはエンハンサーを含有してもよい。
「タンパク質コード配列」という用語は、治療的価値を有するかまたは何らか
の方法で細胞の代謝を妨害するポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を
意味する。これはまた、一般に「選択性マーカー」と呼ばれる、ポリペプチド鎖
を発現する細胞をポリペプチド鎖を発現しない細胞から区別するポリペプチドを
含む。
「標的配列」または「部位特異的標的配列」という用語は、部位特異的リコン
ビナーゼにより認識される合成または天然のヌクレオチド配列を意味する。この
ような配列の例には、P1ファージ由来のloxP(11〜13)またはサッカ
ロミセス・セレビッシェ(S.cerevisiae)由来のfrt(14〜16)がある
。
「リコンビナーゼ」または「部位特異的リコンビナーゼ」という用語は、特異
的標的配列に結合、を切断、を組換えする、合成、天然、または組換え酵素を意
味する。このような例は、P1ファージ由来のCreリコンビナーゼ(13)ま
たはサッカロミセス・セレビッシェ(S.cerevisiae)由来のFlpリコンビナ
ーゼ(14)がある。
本発明は、好ましくは体細胞へ治療価値のある遺伝子を導入するために使用さ
れる、自己削除性ベクター(好ましくはレトロウイルス)に関する。
図5は、本発明の2つの好適な実施態様を示す。上のベクター−pggU3p
gklxtkneo−において、マウスホスホグリセレートキナーゼ(pgk)
プロモーター(17)、loxP標的配列(11)、およびチミジンキナーゼ/
ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(tkneo)融合遺伝子からなる転写
単位を、エンハンサーのないMoMuLVレトロウイルスベクターの3’−U3
領域に挿入した。下のベクターでは、MCCre(ここで、Cre=Creリコ
ンビナーゼ、MC=ポリオーマラージTエンハンサーに融合したHSVチミジン
キナーゼプロモーター)をコードする追加の転写単位を、ウイルス本体のLTR
の間に挿入した。ウイルス複製とLTR介在複製は、MCCreを他のウイルス
配列および非ウイルス配列とともにloxP部位の間に配置し、Creリコンビ
ナーゼが、LTRを含有するpgk−lx−tkneoの1つのコピー以外の組
み込まれたプロウイルスのほとんどを削除することを可能にする。
図8は、本発明の2つの追加の好適な実施態様である。両方の作製体において
、MCプロモーターはサルウイルス40(SV40)プロモーターで置換され、
tkneo融合遺伝子はプロマイシン耐性遺伝子で置換された。上のベクター−
pggSVCreU3lxpgkpuro−において、プロマイシン耐性遺伝子
は、pgkプロモーターにより制御される。下のベクター−pggSVCreU
3lxSVpuro−において、同じU3遺伝子はSV40プロモーターにより
制御される。これらの例において3’LTR中のloxP部位は転写単位の上流
においた。
上記の好適な実施態様において転写単位と部位特異的リコンビナーゼ標的はU
3内にあるが、これは必須ではない。転写単位と標的配列の両方は、ベクターの
どの部分が削除されるかに依存して、U5領域またはベクターの他の部分にあっ
てもよい。
最後に、Cre組換えは、未変性のタンパク質としてまたはリコンビナーゼを
発現するプラスミドとしてトランスで提供されてもよい。例1
部位特異的組換え標的が隣接するプロウイルス配列が組み込み後に削除できる
かどうかを調べるために、我々はエンハンサーのないモロニーマウス白血病ウイ
ルスのU3領域内に、転写単位−pgk−loxP−tkneo−を挿入した(
図5)。プラスミド
CreリコンビナーゼとloxPの配列は、それぞれpMCCreとPGEM
30から得た(11)。マウスホスホグリセレート−キナーゼ−プロモーター(
pgk)は、ppgkCat(18)から得て、SV40/プロマイシン−アセ
チルトランスフェラーゼカセットはpBABEpuroから得た(19)。tk
neo遺伝子は、HSVチミジンキナーゼコード配列(20)のEheI/Sp
eI PCR増幅産物をネオマイシン−ホスホトランスフェラーゼコード配列(
21)のSpeI/NheI増幅産物に結合させることにより得た。フレーム内
(in frame)融合は、チミジンキナーゼ停止コドンとNeo−AUGを削除する
ことにより行なった。pgklxtkneoカセットは、pggU3en(−)
のユニークなNheI部位に平滑末端にしてクローン化してpggU3pgkl
xtkneoを得た。pggU3en(−)は、pggU3Neoen(−)(
21)からneoを除去し、ウイルス配列をSstI断片としてpBABEpu
roの骨格にサブクローニングして得た。pgklxtkneoは、pGEM3
0のPstI/EcoRI断片としてloxPを、pgkCATのXbaI/B
glII断片としてpgkを、そして平滑末端断片としてtkneoを、pBlu
escriptIIKSポリリンカー(ストラタジーン(Stratagene))の対応す
る部位に挿入することにより、pBluescriptIIKS中で組
み立てた。pggU3pgklxtkneoMCCreを得るために、MCCr
eのPCR増幅産物を、pggU3pgklxtkneoのユニークなXhoI
部位にクローン化した。細胞とウイルス
NIH3T3細胞とBOSC23細胞(22)を、10%胎児牛血清(ギブコ
(Gibco))補足DMEM(ギブコ(Gibco))培地中で増殖させた。ペア(Pear
)ら(22)が記載したように、BOSC23細胞の一過性トランスフェクショ
ンにより、ヘルパーウイルスのない組換えレトロウイルスを得た。105のNI
H3T3細胞を、ろ過したウイルス上清とともに4μg/mlのポリブレン(アルド
リッチ(Aldrich))の存在下で24時間インキュベートして感染させた。2μg
/mlのプロマイシン(シグマ(Sigma))または1mg/ml のG418(ギブコ(Gi
bco))を含有する培地中で7日間選択して、プロウイルスを発現するクローン
を単離した。サザンブロットハイブリダイゼーション
既に記載されている(21)ように32P標識プローブを用いてDNAハイブリ
ダイゼーションを行なった。サザンブロットをホスホイメージャー(PhosphoIma
ger)(モレキュラーダイナミクス(Molecular Dynamics))でスキャンし、イ
メージクオント(ImageQuantNT)ソフトウェア(モレキュラーダイナミクス(Mo
lecular Dynamics))で解析した。結果
以前の研究で、MoMuLVのU3領域は比較的多量の外部配列(5kbまで、
(23))を許容できることが証明された。これらをウイルス配列とともに複製
して、組み込まれたプロウイルス((24)に総説がある)が隣接する長い末端
反復配列(LTR)を作成する。従って我々は、レトロウイルスベクターの3’
−U3領域への部位特異的組換え−loxP−の標的配列の挿入後に、LTR−
介在複製が、ウイルスゲノムを2つのloxP部位の間に配置し、こうしてこれ
がCre−リコンビナーゼによる切断を受けやすくすることを予測した。
この予測を調べるために、マウスホスホグリセレートキナーゼ(pgk)プロ
モーター(17)、loxP標的配列(11)、およびチミジンキナーゼ/ネオ
マイシンホスホトランスフェラーゼ(tkneo)融合遺伝子から構成される転
写単位を、エンハンサーのないMoMuLVレトロウイルスベクターの3’−U
3領域(pggU3en(−)、(21))に挿入して、pggU3pgklx
tkneo−(図5)を得た。このプラスミドをBOSC23ヘルパー細胞(2
2)にトランスフェクションして組換えウイルスを得て、これをNIH3T3細
胞を感染するのに使用した。LTR介在複製は、感染細胞中でpgklxtkn
eoが隣接したプロウイルスを生成するはずである(図6)。これを試験するた
めに、G418中で選択後に、得られる12のネオマイシン耐性クローンをサザ
ンブロットで解析した。LTRを切断する制限エンドヌクレアーゼを使用して、
各場合にLTR介在複製を確認した(データは示していない)。Creリコンビ
ナーゼがloxPに隣接された配列を削除して5’pgkプロモーターを3’t
kneo遺伝子(図6)に融合させるかどうかを調べるために、U3pgklx
tkneoを発現する2つの細胞株を、それぞれCreリコンビナーゼとプロマ
イシン耐性をコードする発現プラスミドMCCre(11)とpBABEpur
o(19)で同時トランスフェクションした。プロマイシンで選択して得られた
細胞プールから抽出したゲノムDNAを、HindIII (LTRを切断するエン
ドヌクレアーゼ)で消化した(図6)。neo−プローブにハイブリダイズした
時、非組換えプロウイルスは、loxPが隣接する配列を収容できる4.7kbの
一定のバンドを生成する(図6、レーン7〜12)。このバンドは、Creを発
現するクローン中では非常に弱いかまたは完全に消滅(図6、レーン8、9、1
1、12)し、大部分のプロウイルスが組換えを受けていることを示した。すな
わちU3に挿入したloxP部位は、Creリコンビナーゼが1つのLTR以外
の大部分のプロウイルスを切り出すことを可能にする。大部分のプロウイルスD
NAの削除後に染色体内に残るプロウイルスDNAの部分は、染色体挿入部位の
配列解析と、外来遺伝子を導入するために使用されるベクターと配列比較するこ
とにより、容易に試験できる。例2
哺乳動物細胞への自己削除のために必要なすべての成分を有するベクターを開
発するために、我々は、U3に挿入されたloxP部位は、Creが同じプロウ
イルスから発現される時、組換えを受けるかどうかを調べた。MCプロモーター
により制御されるCreのコード配列をLTRの間でpggU3pgklxtk
neoに挿入してpggU3pgklxtkneoMCCreを得た。感染性ウ
イルスを得るために、pggU3pgklxtkneoMCCreを例1に記載
のようにBOSC23細胞にトランスフェクションした。NIH3T3細胞を感
染してG418中で選択した後得られたネオマイシン耐性クローンを、例1に記
載のようにサザンブロットで解析した。このベクターから得られたプロウイルス
は、組み込み後に自身を切断することが予測された。U3pgklxtkneo
とU3pgklxtkneoMCCreを発現するいくつかの独立のクローンか
らのゲノムDNAをHindIII (tkneoの下流の両方のプロウイルスを切
断する制限エンドヌクレアーゼ)で消化した。neoにハイブリダイズした時、
非組換えプロウイルスは、loxPが隣接するすべての配列を保持し、その結果
、それぞれ4.7kbと6kbの一定のバンドを生成する。このバンドはCre発現
クローンにもまだ存在するが、これは非発現クローン中より5〜10倍弱かった
(図7、B−レーン)。両方のタイプのクローンは匹敵する数のプロウイルスを
含有したため、結果は、かなりの数のU3pgklxtkneoMCCreプロ
ウイルスが、loxPに隣接される配列を削除したことを示す。例3
Creを発現するプロウイルスの自己削除の効率を改良するために、追加のプ
ロモーターと選択性マーカー遺伝子を使用して2つの追加の作製体を作成した。プラスミド
MCCreのCre領域、pBABEpuroのSV40プロモーター、およ
び下流のHindIII 部位を含有するpGEM30のloxP断片を、平滑末端
断片としてpGgU3en(−)のそれぞれBamHI、XhoIおよびNhe
I部位に順番に挿入した。平滑末端pgk−puro−またはSV40−pur
o発現カセットをloxPのHindIII 部位に連結して、pggSVCreU
3lxpgkpuroとpggSVCreU3lxSVpuroを得た。細胞とウイルス
例1と2に記載のものと同じ。DNAハイブリダイゼーションとPCR
既に記載されている(21)ように32P標識プローブを用いてDNAハイブリ
ダイゼーションを行なった。サザンブロットをホスホイメージャー(PhosphoIma
ger)(モレキュラーダイナミクス(Molecular Dynamics))でスキャンし、イ
メージクオント(ImageQuantNT)ソフトウェア(モレキュラーダイナミクス(Mo
lecular Dynamics))で解析した。PCR測定法のために、150ngのゲノムD
NAを、Cre特異的プライマー5’−TTAGCTAGCATGCCCAAG
AAGAAGAAG−3’と5’−GGAGCTAGCCTAATCGCCAT
CTTCCAG−3’を使用して40サイクル(94℃30秒、60℃1分、7
2℃1分)増幅した。対照PCRは、既に記載されているように(25)アクチ
ンプライマーを使用する以外は同じ条件下で行なった。結果
ベクター−pggSVCreU3lxpgkpuro−と−pggSVCre
U3lxSVpuro−(図8)をBOSC23細胞にトランスフェクションし
て感染性ウイルスを得た。回収したウイルスをNIH3T3細胞の感染のために
使用し、選択7日後にプロマイシン耐性クローンを単離した。
いずれかの作製体で得たプロマイシン耐性クローンのゲノムDNAをサザンブ
ロットで解析した。U3lxpgkpuroSVCreプロウイルスの組換えを
同定するために、DNAをEcoRI(両方のプロウイルスを各プロモーターの
前で切断するエンドヌクレアーゼ)で消化した(図9A、10A)。pgkにハ
イブリダイズした時、非組換えプロウイルスは、loxPが隣接するすべての配
列を保持し、その結果3.1kbの一定のバンドを生成する(図9B、レーン5、
9、12〜14)。このバンドはCre発現クローンから消えるはずである(図
9A)。従ってこのバンドは、14個のU3lxpgkpuroSVCre発現
クローンのうち9個から消失し、大部分のプロウイルスは組換えされていること
を示した(図9B、レーン1〜4、6〜8、10)。種々のサイズの追加のバン
ドは、3’LTRのEcoRI部位から隣接する細胞性DNAの部位に伸長して
いる断片である(図9B)。しかし、サザンブロットで組換えられて現れたクロ
ーンを含むすべてのクローンは、PCRにより解析するとCre特異的増幅産物
を生成した(図9C)。組換えられたクローンは10〜50倍少ない増幅産物を
生成した(図9C)が、結果は、リコンビナーゼは組換えに必要な閾値レベルを
均一に達成するのではないことを示唆する。
有意に高い組換え効率が、U3lxpgkpuroSVCreにより得られた
。図10Bに示すように、いずれのクローンもSV40にハイブリダイズした時
3kbの制限断片を生成せず、プロウイルス削除に一致する可変バンドのみが見ら
れた。組換えを確認するために、プロマイシンの上流で切断するHindIII で
DNAを消化した(図10A)。予想されたように、SV40またはプロマイシ
ンプローブにハイブリダイズさせた時、可変サイズのバンドのみが見られた。さ
らにハイブリダイゼーションパターンはユニークであり、3’LTRのHind
III 部位からそれぞれ5’および3’隣接細胞性DNA中の部位に伸長している
断片を反映していた(図10B、データは示していない)。PCRで解析した時
、12クローンのうち3つのみが弱いCre特異的増幅産物を生成した(図10
C)。
本発明のベクター系は、従来の担体および/または希釈剤を含有する薬剤組成
物の調製に使用することができる。治療すべき疾患に依存して、このベクター系
は、疾患の治療に有用な遺伝子を追加の転写単位中に含有する。
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【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1997年3月18日
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9】
【図9】
【図10】
【図10】
【図10】
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),UA(AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ
,TM),AL,AM,AT,AU,AZ,BB,BG
,BR,BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,
EE,ES,FI,GB,GE,HU,IS,JP,K
E,KG,KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT
,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,
NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,S
G,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG
,US,UZ,VN
(71)出願人 グレツ,マヌエル
ドイツ連邦共和国デイ−60596 フランク
フルト アム マイン,パウル−エールリ
ッヒ−シュトラーセ 42
(72)発明者 フオン メルフネル,ハラルド
ドイツ連邦共和国デイ−60590 フランク
フルト アム マイン,テオドル−シュテ
ルン カイ 7,ウニフェルジッタツクリ
ニクム フランクフルト アプト.ハマト
ロギー
(72)発明者 ルス,アンドレアス,ペテル
ドイツ連邦共和国ディ−60590 フランク
フルト アム マイン,テオドル−シュテ
ルン カイ 7,ウニフェルジッタツクリ
ニクム フランクフルト アプト.ハマト
ロギー
(72)発明者 グレツ,マヌエル
ドイツ連邦共和国デイ−60596 フランク
フルト アム マイン,パウル−エールリ
ッヒ−シュトラーセ 42