JPH1161092A - 高減衰材料及びその製造方法 - Google Patents

高減衰材料及びその製造方法

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JPH1161092A
JPH1161092A JP9227341A JP22734197A JPH1161092A JP H1161092 A JPH1161092 A JP H1161092A JP 9227341 A JP9227341 A JP 9227341A JP 22734197 A JP22734197 A JP 22734197A JP H1161092 A JPH1161092 A JP H1161092A
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JP
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high attenuation
crystallization
tan
sample
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JP9227341A
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English (en)
Inventor
Takeshi Nomura
武史 野村
Chihi Go
馳飛 呉
Kazunobu Hashimoto
和信 橋本
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Sumitomo Riko Co Ltd
Original Assignee
Tokai Rubber Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】表面層における経時変化を防止することによ
り、全体としての減衰性能の劣化を防止し、長期間にわ
たって安定した減衰性能を維持することができる高減衰
材料を提供するとともに、そのような高減衰材料を容易
に製造する方法を提供すること。 【解決手段】極性側鎖を有する塩素化ポリエチレン10
0重量部と、誘電体物質であるN,N−ジシクロヘキシ
ルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド100重量部
とを混練配合・加熱成形して得られる減衰材料基材の表
裏両面に6Mrad〜45Mradの電子線を照射す
る。これにより減衰材料基材の表裏両面に表面から内部
にかけて塩素化ポリエチレンの架橋反応を促進し、その
架橋密度が次第に減少していく傾斜構造をとる結晶化抑
制層を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高減衰材料に関
し、さらに詳しくは、音響ルームの遮音壁、建築構造体
の遮音間仕切、車両の防音壁等に適用される振動や騒音
を吸収する制振材・防音材としての高減衰材料及びその
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の高減衰材料としての高分子系材
料は、典型的な粘弾性材料であり、力学的にモデル化す
るといわゆる「フォークト模型」としてとらえることが
できる。このフォークト模型によればその質量部分が高
分子系材料の質量、ばねが弾性部分、ダッシュポットが
粘性部分としてモデル化されている。
【0003】高分子材料の材料微小部をこのモデルでと
らえれば、高分子材料はこのモデルが無数に結合して形
成されたものであり、材料微小部が何等かの原因で振動
すると、夫々の材料微小部には複素正弦歪 (ε*)が発
生し、これにより複素正弦応力(σ*)が発生する。こ
れらの比をとることにより複素弾性係数(E*)が次の
式により与えられる。 複素弾性係数(E*)=複素正弦応力(σ*)/複素正弦
歪(ε*
【0004】そしてこの複素弾性係数 (E*)の実数部
は、材料の弾性的な性質に係る貯蔵弾性係数(E’)と
定義され、その虚数部は、材料の粘性的な性質に係る損
失弾性係数(E”)と定義され、これらの比をとること
により損失正接(tanδ)が次の式により与えられ
る。 損失正接(tanδ)=損失弾性係数(E”)/貯蔵弾
性係数(E’) この損失正接(tanδ)は、制振・防音特性を決定す
る因子の一つであり、この値が高いほど力学的エネルギ
ーを電気あるいは熱エネルギーとして吸収・放出して、
吸音特性や制振特性等に優れていることが知られてい
る。高減衰材料の損失正接(tanδ)として求められ
る値は、0.5以上である。
【0005】系全体の損失係数(η)もまた、上述した
損失正接(tanδ)と同様に制振・防音特性を決定す
る因子の一つとして挙げられ、この値が高いほど制振性
能等に優れていることが知られている。高減衰材料の損
失係数(η)として求められる値は、0.1以上であ
る。
【0006】さらに、より優れた防音・制振機能を実現
するために、固体伝播音にあっては振動する物からの放
射音の抑制を図ることにより高い損失正接(tanδ)
を実現し、気体伝播音にあっては低周波数領域で発生す
る音の吸収を図ることにより10-6程度の歪に対して応
答可能な薄膜材料を実現すればよいことが見い出されて
いる。
【0007】さらにまた、こうした高減衰材料は、ある
一定の温度域で使用されるとは限らないことから使用温
度域が多数存在する場合や使用温度域が広い場合には損
失正接が広い温度域にわたって高く保たれていることも
要求される。
【0008】そこで、本出願人は、上記した要求特性を
満たす高い損失正接(tanδ)を示す高減衰材料とし
て、特願平9−123387号において、誘電体物質を
所定の体積比で極性側鎖を有するポリマー材料に分散さ
せ、これに熱処理工程及び成形工程等を施して得られる
材料を提案している。この高減衰材料を構成する誘電体
物質としては、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジ
ル−2−スルフェンアミド(三新化学製:商品名「サン
セラーDZ」)を採用し、ポリマー材料としては、塩素
化ポリエチレン(昭和電工(株)製:商品名「エラスレ
ン401A」)を採用している。
【0009】さらにまた、本出願人は、この改良技術と
して、特願平9−137665号において、上記した誘
電体物質とポリマー材料との混合物にフタル酸ジオクチ
ルあるいはリン酸トリクレシル等の添加剤を加えること
により、広い温度範囲において高い損失正接(tan
δ)を実現することができる材料を提案している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特願平
9−123387号及び特願平9−137665号にお
いて開示されている誘電体物質としてN,N−ジシクロ
ヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミドを用
い、ポリマー材料として塩素化ポリエチレンを用いた高
減衰材料は、その損失正接(tanδ)に経時変化が見
られることがわかっている。この経時変化は、材料の結
晶化によるものであるが、この結晶化は、高減衰材料の
減衰性能を劣化させる原因の一つとなっている。したが
って、耐用寿命を長く持たせることが必要な場合には、
上述した高減衰材料では所期する性能が得られない。
【0011】図2は、この高減衰材料のプレス直後の損
失正接(tanδ)とプレス後2週間後の損失正接(t
anδ)とを比較して示したものであるが、この図に示
したように、2週間という短期間であっても、0℃〜3
0℃の温度範囲にわたって損失正接(tanδ)がかな
りの割合で減少している。特にピーク付近においては、
2週間後のものは、プレス直後の損失正接(tanδ)
に対して約2/3にまで減少している。
【0012】そこで、この経時変化の原因を特定するた
めに次のようにして結晶データの収集を行った。まず、
経時変化を起こした高減衰材料のサンプルに100℃前
後の温度で加熱処理を施す。そして熱処理前後の両サン
プルについて走査型電子顕微鏡で観察し、熱処理前後の
サンプルの写真撮影を行う。熱処理前後のサンプルの写
真の図示はここでは省略するが、それによれば、熱処理
前のサンプルには経時変化によって形成された結晶が多
く見られるのに対し、熱処理後のサンプルではその結晶
が消失していることが確かめられた。
【0013】次いで熱処理前後の両サンプルについて密
度の測定を行った。これにより、熱処理前のサンプルの
密度が 1.166g/cm3、熱処理後のサンプルの密
度が1.163g/cm3 であることが判明した。この
ように熱処理後のサンプルの密度は、熱処理前のサンプ
ルの密度に較べると低下しているが、このことから加熱
処理により結晶のパッキング構造が崩壊したことが推察
される。
【0014】そこで結晶のパッキング構造の崩壊を裏付
けるために熱処理前後の両サンプルについて示差走査熱
分析(DSC)を行った。このときの分析条件は、加熱
速度が15.0℃/minである。また分析に際して
は、アルミニウムセルを用い、流量50ml/minの
窒素ガス雰囲気下で分析を行った。図3にこの示差走査
熱分析結果を示すが、この図では、横軸に環境温度を、
縦軸にヒーター発熱量を採っている。
【0015】熱処理前後の両サンプルの温度特性を比較
すると、熱処理前のサンプルには、約84℃付近で結晶
の融点であると認められる熱吸収ピークが存在している
が、熱処理後のサンプルの温度特性は、0℃から140
℃にかけて直線的に増加するのみで結晶の融点であると
認められる熱吸収ピークが存在しない。したがって、こ
のことから熱処理により結晶が消失したことが明らかと
なった。
【0016】次いで、結晶成長を引き起こす成分の特定
を行った。これについて図4及び図5を参照して説明す
る。まず、図4は、熱処理前後のサンプルの歪み量と弾
性率(貯蔵弾性係数)E’との関係を比較して示したも
のであり、横軸に歪(μm)をとり、縦軸に弾性率E’
(×107dyn/cm2)をとっている。この図によれ
ば、5μm〜100μm程度の歪に対し、熱処理後のサ
ンプルは、熱処理前のサンプルに対して、弾性率E’が
約3/4〜3/5程度に減少している。
【0017】図5は、熱処理前後のサンプルの歪み量と
損失正接(tanδ)との関係を比較して示したもので
あり、横軸に歪(μm)をとり、縦軸に損失正接(ta
nδ)をとっている。この図によれば、5μm〜200
μm程度の歪に対し、熱処理後のサンプルの損失正接
(tanδ)は、測定した全ての範囲にわたって回復し
ている。
【0018】以上のことから、経時変化によって形成さ
れた結晶は、熱処理によってその弾性率E’が変化し、
これにより損失正接(tanδ)が増減するものである
ことが判明する。この場合においては、弾性率E’は減
少し、損失正接(tanδ)は増加している。供試試料
として用いた高減衰材料は、上述したように、塩素化ポ
リエチレンとN,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル
−2−スルフェンアミドを成分としている。このN,N
−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンア
ミドは、一般的に遅効性の加硫促進剤として用いられ、
この場合においては、塩素化ポリエチレンの分子間を強
固な共有結合で架橋し減衰材料の機械特性、すなわち、
引張強さ、圧縮強さ、曲げ強さ、弾性(弾性率)、衝撃
強さ、硬さ、耐振動性、吸音性等の改善に寄与してい
る。したがって、損失正接(tanδ)の経時変化は、
加硫促進剤(N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル
−2−スルフェンアミド)の架橋結合が壊れて、その加
硫促進剤がそのまま結晶成長したことによるものと推察
される。
【0019】この結晶成長は、特に表層部において顕著
なものであり、経時変化によってこの表層部における結
晶化がひどくなるうえに、さらにその表層部だけでなく
材料内部へ向かって少しづつ進行していくものである。
したがって、表層部にあるN,N−ジシクロヘキシルベ
ンゾチアジル−2−スルフェンアミドの結晶化が材料全
体の減衰性能の劣化の原因となるという問題が指摘され
ている。
【0020】したがって、減衰材料の減衰性能を向上さ
せるためには、サンプル表面を架橋させる等して拘束
し、この表層部にあるN,N−ジシクロヘキシルベンゾ
チアジル−2−スルフェンアミドの結晶化を抑制するこ
とが有効であると推察される。そこで、この推察に基づ
いて、表層部での結晶化を容易に抑制することができる
廉価な種々の材料加工技術が試行錯誤されている。
【0021】本発明の解決しようとする課題は、表面層
における経時変化を防止することにより、全体としての
減衰性能の劣化を防止し、長期間にわたって安定した減
衰性能を維持することができる高減衰材料を提供すると
ともに、そのような高減衰材料を容易かつ廉価に製造す
る方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明に係る高減衰材料は、極性側鎖を有するポリマ
ー材料に誘電体物質を配合した減衰材料基材の表層部
に、該ポリマー材料の架橋反応により表面から内部へ向
かうにつれてその架橋密度が次第に減少した結晶化抑制
層が形成されていることを要旨とするものである。
【0023】この場合に、極性側鎖を有する「ポリマー
材料」としては、ゴム材料及びエラストマー材料のうち
少なくとも1種から選ばれたものであることが望まし
く、好適なものとして、塩素化ポリエチレン(CP
E)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレ
ンゴム(CR)等のゴム材料や、塩化ビニル系熱可塑性
エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩
素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等のエラスト
マー材料が挙げられる。また「誘電体物質」としては、
N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフ
ェンアミド、N−tert−ブチルベンゾチアジル−2
−スルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチア
ジル−2−スルフェンアミドより選ばれた1種又は2種
以上の誘電体物質が好適なものとして挙げられる。
【0024】また、「結晶化抑制層」は、その層厚が
0.01mm〜0.1mmの範囲内にあり、その架橋密
度が1.0×10-3mol/cm3 から未架橋状態にな
るまで最外層部から最内層部へかけて次第に減少したも
のであることが望ましい。
【0025】上記構成を有する高減衰材料によれば、極
性側鎖を有するポリマー材料に誘電体物質を配合した減
衰材料基材の表面に形成される結晶化抑制層は、その架
橋密度が、表面から内部へ向かうにつれて次第に減少す
る傾斜構造をとるため、減衰材料基材(結晶化抑制層)
の表面における経時変化が抑制される。また、結晶化抑
制層よりも更に内部の層は、未架橋のまま残るため、所
期する損失正接(tanδ)が維持されることになる。
したがって、本発明に係る高減衰材料は、その経時変化
が抑制された状態で、安定して優れた制振・防音特性を
示す。
【0026】また、本発明に係る高減衰材料の製造方法
は、極性側鎖を有するポリマー材料に誘電体物質を混練
配合する工程と、混練配合された材料に加熱処理及び成
形処理を施すことにより減衰材料基材を形成する工程
と、前記減衰材料基材の表面に電子線を照射し、前記ポ
リマー材料の架橋反応により結晶化抑制層を形成する工
程とを含むことを要旨とするものである。
【0027】この場合に、前記電子線の照射量は、6M
rad〜45Mradの範囲、より好ましくは12Mr
ad〜45Mradの範囲にあることが望ましい。電子
線の照射量が12Mradより少ないと、経時変化によ
る減衰性能の劣化を免れることができず、一方、電子線
の照射量が45Mradより多いと、経時変化による減
衰性能の劣化の抑制には有効であるが、tanδ特性を
高めに維持することが難しくなる。これにより、結晶化
抑制層の層厚は、0.01mm〜0.1mm、結晶化抑
制層の架橋密度は、その最外層部で 1.0×10-3
ol/cm3、その最内層部で未架橋状態となる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面及び
表を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明におい
て各種材料の「重量部」は、ポリマー材料100重量部
に対する重量を意味するものである。
【0029】図1は、本発明の一実施の形態に係る高減
衰材料の構成を示した図である。同図において、高減衰
材料10は、振動や騒音を吸収する制振材あるいは防音
材であり、音響ルームの遮音壁、建築構造体の遮音間仕
切、車両の防音壁等に適用されるものである。この高減
衰材料10は、基材12の表裏両面に電子線を照射して
形成された結晶化抑制層14a,14bと、未架橋層1
6とから構成されている。
【0030】したがって、結晶化抑制層14a,14b
と未架橋層16とは、電子線の照射による架橋の有無が
異なるが、その配合成分・組成は、同一である。この基
材12(結晶化抑制層14a,14b及び未架橋層16
を含む)の材料としては、塩素化ポリエチレン(CP
E)等の極性ポリマーとN,N−ジシクロヘキシルベン
ゾチアジル−2−スルフェンアミド(DZ)等の誘電体
物質を配合して混練し、これに所定の加工処理を施した
ものが用いられている。
【0031】結晶化抑制層14a,14bは、上述した
ように、基材12の表裏両面に電子線を照射することに
よって形成された架橋層であり、主として基材12の経
時変化を抑制する機能に係るものである。この結晶化抑
制層14a,14bは、その架橋密度が最外層部で1.
0×10-3mol/cm3 程度、最内層部(結晶化抑制
層と未架橋層との境界部分)で未架橋状態であり、この
架橋密度の分布状態は、最外層部から最内層部へかけて
次第に減少した傾斜構造となっている。ちなみに、この
高減衰材料10の断面方向の厚さは、結晶化抑制層14
a,14bを厚さ0.1mm程度(W1)、未架橋層を
厚さ1.8mm程度(W2)としたものである。
【0032】次にこの高減衰材料10の製造方法につい
て図1を参照して説明する。初めにこの本発明の一実施
の形態に係る製造方法は、高減衰材料の基材の製造工
程、及び、電子線照射工程から構成されるものであ
る。
【0033】まず、高減衰材料の基材の製造工程につい
て説明する。まず、極性ポリマーと誘電体物質とを10
0重量部づつ配合したものを混練する。そしてこの混練
材料を所定の型枠内に入れ、これを100℃〜200℃
の温度条件でその材料にもよるが10分程度加熱する。
これにより、減衰材料基材が得られる。
【0034】次いで、電子線照射工程について説明す
る。この電子線照射工程は、上述の工程を経て製造され
た減衰材料基材の表裏両面の全域に、図1に示したよう
に、A及びB方向(減衰材料基材表面に対して垂直な方
向)から6Mrad〜45Mrad程度の電子線をサン
プル送り速度13.3cm/minで照射している。こ
のように電子線を照射することによって、減衰材料基材
の表面層から極性ポリマーによる架橋反応が進む。これ
により減衰材料基材の表面に結晶化抑制層が形成され
る。結晶化抑制層の架橋密度は、照射する電子線量ある
いはサンプル速度により制御される。
【0035】例えば、上記の条件で電子線を照射したと
するならば、結晶化抑制層の架橋密度は、その最外層部
が1.0×10-3mol/cm3 と最も高くなり、そこ
から内部に向かうにつれて次第に減少し、深さ0.1m
m程度のところで零になる。本実施例では、架橋密度が
零になる部位を最内層部とし、そこからさらに内部を未
架橋層としている。
【0036】次に、上述した製造方法により、電子線照
射量を変えて本実施例として種々の高減衰材料10を作
製した。以下に各実施例及び比較例について説明する。
【0037】初めに次の表1は、本発明の実施に供した
試料(サンプル)の材料組成及び各試験結果を一覧表に
示したものである。本発明の実施に供した各試料1〜5
は、電子線照射量をそれぞれについて変えた以外は、す
べて同一の材料、製造工程で作製されている。すなわ
ち、材料については、極性側鎖を有するポリマー材料と
して樹脂系の塩素化ポリエチレン(CPE、昭和電工
(株)製:商品名「エラスレン401A」)を採用し、
スルフェンアミド系誘電体物質としては、N,N−ジシ
クロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド
(三新化学製:商品名「サンセラーDZ」)を採用し
た。ちなみに、塩素化ポリエチレンとN,N−ジシクロ
ヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミドの配合
量は、いずれも100重量部づつとしている。
【0038】そして、試料1〜4に係る減衰材料基材に
照射された電子線照射量は、それぞれ、6Mrad、1
2Mrad、18Mrad、45Mradであり、この
ときに使用した電子線照射装置は、日新ハイボルテージ
(株)製:商品名「キュアトロン」である。なお、本発
明品である各試料1〜4に形成された結晶化抑制層は、
上述したように、減衰材料基材の表裏両面に電子線を照
射することによって形成したものであり、その断面方向
の厚さは、全体の厚さ2mmに対し、試料1で0.1m
m、試料4で0.1mm程度である。作製した試料1〜
4は、それぞれ、「本発明品1〜4」と、また、電子線
を照射していない試料5は、「比較品」とした。
【0039】
【表1】
【0040】次いで、以上のようにして作製した本発明
品である各試料1〜4及び比較品である試料5について
損失正接(tanδ)の経時変化を調べた。この試験
は、各試料1〜5についてプレス直後及びプレス後1ヶ
月を経た後におけるtanδを測定し、この測定結果に
基づいてtanδ低下率を求めることにより行ったもの
である。tanδの測定には、株式会社レオロジ社製の
スペクトロメータを用いた。測定条件は、歪を10μm
(一定)とし、周波数を15Hz(一定)としている。
【0041】本発明品である試料1〜4及び比較品であ
る試料5のtanδについて表1を参照して説明する。
試料1〜4のプレス直後のtanδは、それぞれ、2.
33、2.15、2.11、1.88を示す。これに対
し、比較例(試料5)のプレス直後のtanδは、2.
49を示す。したがって、プレス直後においては、電子
線を照射しなかった試料5のtanδが最も高い値を示
すこと、及び、電子線の照射量を増加させるにつれて、
tanδ特性が低下する傾向があることが判明した。
【0042】一方、試料1〜4をプレス成形してから一
ヶ月経過した時の試料1〜4のtanδは、それぞれ、
1.86、1.87、1.92、1.82を示す。これ
に対し、比較品(試料5)をプレス成形してから一ヶ月
経過した時のそのtanδは、1.84を示す。したが
ってプレス成形してから一ヶ月経過した時は、試料3が
最良の結果を示す他、試料1及び試料2が比較品よりも
良い結果を示した。すなわち、電子線を照射することに
よって、経時変化による材料特性(tanδ)の劣化を
抑制できることが判明した。ちなみに、tanδの要求
特性は、0.5以上、望ましくは、1.0以上であるこ
とから、試料1〜4は、いずれも良好なtanδ特性を
備えているものといえる。
【0043】そこで、本発明品である試料1〜4及び比
較品である試料5のtanδ低下率を調べた。このta
nδ低下率は、「tanδ低下率(%)=((プレス直
後のtanδ−プレス1ヶ月経過後のtanδ)/プレ
ス直後のtanδ)×100」なる式により求めてい
る。長期間安定した減衰性能を維持するためには、この
値が低い程良い。tanδ低下率は、表1によれば、比
較品が26.1%を示したのに対して、試料1が20.
2%、試料2が13.0%、試料3が9.00%、試料
4が3.20%を示した。
【0044】すなわち、tanδ低下率については、試
料1が比較品の約4/5程度にまで、試料2が比較品の
約1/2程度にまで、試料3が比較品の約1/3程度に
まで、試料4が比較品の約1/9程度にまで減少してい
る。したがって、試料1〜4のtanδ低下率は、試料
4を最良(最低値)として、以下、試料3→試料2→試
料1と続く順番に増加している。すなわち、減衰材料基
材に電子線を照射することが経時変化による減衰特性の
劣化を防止する上で、きわめて有効であることが判明し
た。試料1〜4は、いずれも比較品に較べて飛躍的に経
時変化が抑制され、これにより長期間にわたって安定し
た減衰性能を示すものであることが判明した。
【0045】以上のことから、「tanδ≧0.5」と
いう条件を満たしつつ、tanδ低下率をできるだけ低
く抑えるには、電子線を照射することにより減衰材料基
材の表裏両面に結晶化抑制層として架橋層を形成するこ
とが有効であることが判明した。この場合に、照射する
電子線の量は、6Mrad〜45Mradの範囲にある
ことが望ましいことも判明した。
【0046】次いで、本発明品である各試料1〜4及び
比較品である試料5の損失係数(η)を測定したのでそ
れについて説明する。表1に示した損失係数(η)は、
各試料1〜5のプレス後2週間を経た時の値である。損
失係数(η)の測定には、松下電器産業(株)製の片持
ち梁式損失係数測定機を用いた。常温下、100Hzの
周波数を印加しながら測定を行った。
【0047】試料1〜4は、プレス後2週間を経た時の
損失係数(η)が0.06〜0.10の範囲、すなわ
ち、試料1が0.06、試料2が0.07、試料3が
0.08、試料4が0.10を示した。これに対し、比
較品は、その損失係数(η)が0.06を示した。した
がって、本実施例によるものは、試料1を除いて、損失
係数(η)が若干改善されたことが判明した。しかしな
がら、この損失係数(η)としては、0.06以上が要
求特性とされる。本実施例においては、すべての試料が
一応合格とされるものである。
【0048】以上説明したことから、本発明品1〜4に
ついて、tanδの値、tanδ低下率、損失係
数(η)のそれぞれについて総合的に評価を行うと、試
料3及び試料4は〜すべてについて要求特性を満た
し、きわめて良好(◎印)と評価された。
【0049】試料2については、tanδの値は、プレ
ス直後、一ヶ月経過時ともに比較的良好であるがtan
δの低下率が若干大きくなり損失係数(η)も低めであ
ることから、良好(○印)と評価された。また、試料1
については、tanδの低下率が更に大きく損失係数
(η)も低めであることからやや不良(△印)と評価さ
れた。
【0050】以上説明したように、ポリマー材料である
塩素化ポリエチレン(CPE)と、誘電体物質である
N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフ
ェンアミド(DZ)とを混練配合し、これに加熱成形処
理を施して作製した減衰材料基材の表裏両面に、電子線
を照射することによってその表面を架橋させ、結晶化抑
制層を形成することにより、N,N−ジシクロヘキシル
ベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DZ)の経時
変化による結晶化が抑制され、材料全体としてのtan
δ低下率(%)が飛躍的に低減されることが判明した。
【0051】この際に、電子線の照射は、減衰材料基材
の面に対して垂直な方向から減衰材料基材の表裏両面の
表面全体に照射するのみであるが、これにより、減衰材
料基材の表層部に架橋構造が形成される。この架橋構造
は、その表面から内部に向かうにつれて架橋密度が次第
に減少した傾斜構造をとるものであり、本実施例は、こ
の架橋構造に係る層を結晶化抑制層とするものである。
一方、架橋構造が形成された部分よりもさらに内部の層
は、プレス成形加工時の状態、すなわち、未架橋構造の
まま残ることになる。
【0052】本実施例によれば、架橋構造が形成された
結晶化抑制層は、引張強さ、圧縮強さ、曲げ強さ、弾性
(弾性率)が高められるため、耐久性に優れたものとな
り、経時変化が抑制されることになる。したがって、良
好なtanδ低下率(%)を示すものとなる。一方、結
晶化抑制層よりもさらに内部の未架橋層は、プレス成形
加工時の状態がそのまま残ることになるため、制振性や
吸音性を維持したものとなり、良好なtanδ特性を示
すものとなる。
【0053】ちなみに、結晶化抑制層は、tanδ低下
率(%)が低いので、外環境に晒されても経時変化によ
る劣化を免れる。未架橋層は、こうした特性を備えた結
晶化抑制層に挟まれているため、外環境との接触に起因
する経時変化を免れることになる。そのため、未架橋層
は、結晶化抑制層に較べるとtanδ低下率(%)が劣
るものの、材料全体としては、経時変化による劣化を免
れることになる。また、未架橋層は、tanδ特性が高
いため、結晶化抑制層に係る制振・防音機能を補うこと
になる。そのため、結晶化抑制層は、未架橋層に較べる
とtanδ特性が劣るものの、材料全体としては、高い
制振・防音機能を示すことになる。
【0054】このことから、高いtanδ特性を維持し
ながら、経時変化を抑制するには、減衰材料基材の表層
部に形成させる結晶化抑制層の架橋密度に傾斜を持たせ
ることが有効であることがわかる。この場合、サンプル
全体としての弾性率(E’)が増加することから、制振
性能の指標である損失係数(η)を高めに維持すること
にも効果がある。
【0055】さらにまた、結晶化抑制層の形成は、電子
線を照射するという非常に容易な方法でできる上、これ
により提供される減衰材料は、機械特性、すなわち、引
張強さ、圧縮強さ、曲げ強さ、弾性(弾性率)、制振
性、吸音性に優れたものである。この電子線の照射は、
既存の設備を使用して行うことができるため、製造工程
の低コスト化にも貢献することになる。
【0056】本発明は、上記した実施例に何等限定され
るものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々
の改変が可能である。例えば、上記実施例においては、
高減衰材料の各層の全体の厚さは、架橋された結晶化抑
制層の厚さを表裏面各0.1mm程度、全体の厚さを2
mmとしたものであるが、これに限られるものではな
い。さらに、上記実施例においては、結晶化抑制層は、
減衰材料基材の表裏両面に形成したが、用途に応じて表
裏面のいずれか一方の面に形成されるものであってもよ
い。
【0057】また、上記実施例で用いた各種の材料に代
えて、以下に掲げる材料を適用することも、勿論、本発
明に含まれるものである。すなわち、「ゴム材料」とし
ては、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレ
ンゴム(CR)等も適用可能な材料として挙げられる。
また、「誘電体物質」にしても、N,N−ジシクロヘキ
シルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、N−te
rt−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、
N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェン
アミド等が好適なものとして挙げられる。
【0058】
【発明の効果】本発明の高減衰材料によれば、極性側鎖
を有するポリマー材料に誘電体物質を配合した減衰材料
基材の表層部に、該ポリマー材料の架橋反応により表面
から内部へ向かうにつれてその架橋密度が次第に減少し
た結晶化抑制層を形成したので、その表層部の引張強
さ、圧縮強さ、曲げ強さ、弾性(弾性率)が高められ、
材料全体としての経時変化が抑制される。さらに本発明
の高減衰材料は、結晶化抑制層よりさらに内部の層を、
未架橋状態としたので高いtanδ特性を示す。これに
より、全体として減衰性能の劣化を防止することがで
き、長期間にわたって安定した減衰性能を維持すること
ができる。
【0059】本発明の製造方法によれば、所定の工程を
経て形成される減衰材料基材の表面に電子線を照射する
ことにより、減衰材料基材の表面から内部に向かうにつ
れて次第に減少する傾斜構造をとる結晶化抑制層が容易
に形成されることになる。
【0060】このような高減衰材料及びその製造方法に
よれば、その表裏面に結晶化抑制層が形成されているこ
とから非拘束型で適用可能になる他、音響ルームの遮音
壁、建築構造体の遮音間仕切、車両の防音壁等、幅広い
分野への応用が期待されるものである。さらに、その製
造方法が容易であることから、幅広い普及が望まれると
ともに、材料費、人件費等の製造コストを抑える上でも
きわめて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る高減衰材料の構成
を示した図である。
【図2】従来一般の高減衰材料の環境温度−tanδ特
性をプレス直後と2週間後とで比較して示した図であ
る。
【図3】従来一般に知られる高減衰材料の熱処理前後の
サンプルの熱分析解析データを比較して示した図であ
る。
【図4】図3に示した高減衰材料の熱処理前後のサンプ
ルの弾性率を比較して示した図である。
【図5】図3に示した高減衰材料の熱処理前後のサンプ
ルのtanδを比較して示した図である。
【符号の説明】
10 高減衰材料 12 基材 14a,14b 結晶化抑制層 16 未架橋層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 15/02 C08L 15/02 27/06 27/06 27/12 27/12 E04B 1/82 E04B 1/82 C G10K 11/162 F16F 7/00 B // F16F 7/00 15/08 D 15/08 G10K 11/16 A

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 極性側鎖を有するポリマー材料に誘電体
    物質を配合した減衰材料基材の表層部に、該ポリマー材
    料の架橋反応により表面から内部へ向かうにつれてその
    架橋密度が次第に減少した結晶化抑制層が形成されてい
    ることを特徴とする高減衰材料。
  2. 【請求項2】 前記ポリマー材料は、塩素化ポリエチレ
    ン系材料、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム
    等のゴム材料若しくは塩化ビニル系、フッ素ゴム系、塩
    素化ポリエチレン系エラストマー材料のうちから選ばれ
    た少なくとも1種又は2種以上のポリマー材料からなる
    ことを特徴とする請求項1に記載される高減衰材料。
  3. 【請求項3】 前記誘電体物質は、N,N−ジシクロヘ
    キシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、N−t
    ert−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミ
    ド、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフ
    ェンアミドより選ばれた1種又は2種以上の誘電体物質
    からなることを特徴とする請求項1に記載される高減衰
    材料。
  4. 【請求項4】 前記結晶化抑制層は、その層厚が0.0
    1mm〜0.1mmの範囲内にあり、その架橋密度が
    1.0×10-3mol/cm3 から未架橋状態になるま
    で最外層部から最内層部へかけて次第に減少したもので
    あることを特徴とする請求項1に記載される高減衰材
    料。
  5. 【請求項5】 極性側鎖を有するポリマー材料に誘電体
    物質を混練配合する工程と、混練配合された材料に加熱
    処理及び成形処理を施すことにより減衰材料基材を形成
    する工程と、前記減衰材料基材の表面に電子線を照射
    し、前記ポリマー材料の架橋反応により結晶化抑制層を
    形成する工程とを含むことを特徴とする高減衰材料の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 前記電子線の照射量は、6Mrad〜4
    5Mradの範囲にあることを特徴とする請求項5に記
    載される高減衰材料の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記ポリマー材料は、塩素化ポリエチレ
    ン系材料、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム
    等のゴム材料若しくは塩化ビニル系、フッ素ゴム系、塩
    素化ポリエチレン系エラストマー材料より選ばれた1種
    又は2種以上のポリマー材料からなることを特徴とする
    請求項5又は6に記載される高減衰材料の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記結晶化抑制層は、その架橋密度がそ
    の減衰材料基材の表面から内部へ向かうにつれて次第に
    減少する傾斜構造をとるものであることを特徴とする請
    求項5に記載される高減衰材料の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011039356A (ja) * 2009-08-14 2011-02-24 Riken Technos Corp 吸音体および吸音構造
JP2015102180A (ja) * 2013-11-26 2015-06-04 トヨタ自動車株式会社 高圧ガスタンク
CN106023975A (zh) * 2016-06-14 2016-10-12 国家电网公司 一种轻质低频宽带隔声组合结构
CN112459296A (zh) * 2020-08-12 2021-03-09 北京清源智瑞科技有限公司 一种轻质组装式声子晶体人声屏蔽会议室

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