明細書 抗菌剤の選定方法およびその利用方法 技術分野
本発明は抗菌剤の選定方法およびその利用方法に関する。 さらに詳しくは、 DN Aの塩基配列に基づいて対象系の微生物相を解析し、 この微生物相に最適な工業用 抗菌剤 (以下、 単に抗菌剤という場合がある) をデータベースから選定して使用 する抗菌処理方法おょぴ抗菌効果のモニタリング方法に関する。 また、 白水循環 系のスライムコントロールのために使用中のスライムコントロール剤に抵抗性を 示す微生物種およびその発生源を特定し、 この特定微生物が感受性である別のス ライムコントロール剤を発生源に対しても添加することにより、 白水循環系のス ライムコントロール効果をより安定なものとする、 または少ない薬剤使用量によ つて製紙工程のスライムを抑制する方法に関する。 また、 紙製品中に欠点、 はん 点などの付着物を形成する微生物の微生物相または優占微生物を DMの塩基配列を 指標にして特定する製紙工程における製品の付着物の分析方法、 この分析結果か ら付着原因および発生場所を突き止めることができる付着原因の探索方法、 なら びにこの付着原因に基いて付着物を低減させることができる微生物制御方法に関 する。 背景技術
スライムコント口一ル剤ゃ防腐剤などの工業用抗菌剤を使用する対象系は微生 物学的基質条件からみても環境条件からみても非常に広い範囲にあるため、 出現 する微生物の種類は非常に多種類にわたるものと考えられている。 例えば、 製紙 工程の白水系は p H条件が酸性の抄紙機から弱アルカリ性のものまであり、 また 温度条件も冬季は 1 5 °C程度になるところから、 加温により 5 0 °C程度まで昇温
するところまである。 防腐剤の対象系も p Hが酸性のものからアルカリ性のもの まであり、 温度条件は 2 0〜7 の広い範囲にわたっている。
このように抗菌剤を使用する対象系の環境条件は広い範囲で個々に異なるから、 そこに出現する微生物の種類も個々に異なっているものと考えられている。 対象 系の環境条件は抗菌剤の効力に対しても影響を与えるので、 個々の対象系に適用 する抗菌剤を選定するに当たっては、 対象系に存在する微生物の種類およぴ量
(微生物相) 、 ならびに環境条件に適合したものを選定する必要がある。 抗菌剤 の選定を誤ると、 期待した抗菌効果が得られないばかりでなく、 多量の抗菌剤を いたずらに自然環境に流出させ、 想定外の環境破壊を招かないとも限らないから である。
こうした広範な対象系 (適用分野) に対応するため、 性質の異なる多種類の抗 菌剤を準備しておき、 個々の対象系毎に最適の抗菌剤を選定できる工夫がなされ ている。 しかし、 準備する抗菌剤の種類が増えると、 個々に異なる条件に最も適 した抗菌剤を選定する技術が重要になってきている。
従来、 ある対象系に抗菌剤を適用しょうとする場合、 対象系から微生物試料を 採取し、 実験室に持ち帰った後できるだけ多く種類の抗菌剤について、 その効力 を殺菌試験、 増殖抑制試験およぴ菌数測定などによって相対比較し、 その試験結 果に基づいて抗菌剤の種類を決定することが多かった。
しかし、 こうした従来の方法では短期間に全ての抗菌剤について試験を実施す ることは人手と時間の制約から不可能であり、 通常限られた抗菌剤について限ら れた試験濃度で試験した結果から抗菌剤を選定せざるを得ないという問題点があ つた
また従来の方法では、 培養可能な微生物の試験結果にのみ基づいて抗菌剤が選 定されているという問題点がある。 すなわち抗菌剤が適用される対象系には培地 で^ 養で含な 生 ( ヽゎ る ηοη— culturable microorgani sims) も多数 存在することが知られているが、 こうした分離培養できない微生物が優占種の対
象系においては、 培養という操作を含む試験結果に基づいて選定した抗菌剤が必 ずしも最適な抗菌剤であるとは限らない。
このように従来の方法では、 対象系の微生物相が不明なために、 必ずしも最適 の抗菌剤を選定したかどうかがはっきりせず、 抗菌剤の選定とその使用方法の決 定は多くを経験に頼らざるを得ないのが実状である。
ところで、 微生物相の解析方法としては、 微生物を形態学的一生理学的特徴に よって区分する古典的な同定方法があるが、 この方法は熟練した微生物同定の専 門家でなければ正しい結果を得ることが困難であり、 また熟練者がかかりきりで 実施しても 1対象系の微生物相解析に 1か月以上の長期間を要することから、 特 別な研究目的以外では行われていない。 したがって、 微生物相の古典的な同定方 法を日常の抗菌剤選定に利用することは実質的に不可能である。
一方、 微生物相を 7〜 1 5日間の短期間で同定することができる迅速同定キッ トが市販されている。 しかし、 このような同定キットは主として医療用に開発さ れたものであり、 これを工業用抗菌剤の使用対象系に応用した場合、 正しい微生 物同定ができにくいという問題点がある。 またこれらの同定キットは培養可能な 微生物にしか適用できず、 対象系の優占微生物が培地で分離培養できない微生物 の場合は間違つた知見が得られるという問題点がある。
以上の状況から、 抗菌処理を行う場合、 短時間でしかも正確に対象系の微生物 相を把握し、 微生物相および対象系の環境条件に適した抗菌剤を選定する必要が ある。
微生物相の解析手段については最近になって、 微生物のリボソーム RNA (以下、 rR Aという) をエンコードする DNA (以下、 rDNAという) の塩基配列の違いを利用 した様々な方法が開発され、 コロニーを形成できない細菌類 (non- culturable b acteria) を含めて短時間に微生物相を明らかにできるようになった。 しかしなが ら、 このようにして調べた微生物相と、 各抗菌剤の効力、 対象系の栄養条件、 環 境条件といった複数の情報とを組み合わせて、 個々の対象系に最も適した抗菌剤
を選定する方法はこれまで知られていない。
ところで、 適用した抗菌剤の効果は、 同じ抗菌剤を長期間使用し続けていると 環境条件の微小な変化や微生物が薬剤抵抗性を獲得するなどして、 抗菌効果が急 激に変化する現象が知られている。 このため、 抗菌剤適用後は期待した通りの効 果が継続して発揮されているかどうかを定期的に監視する必要がある。 この目的 のために従来は、 シャットダウン直後に系内の汚れ状況を観察したり、 寒天平板 法を利用して対象系の生菌数測定などを行って判断する方法が採用されている。 しかし上記従来の監視方法では、 抗菌剤の効力変化が薬剤抵抗性菌の出現によ るものなのか、 単に薬剤量が不足したためなのかといった原因を明らかにするこ とはできない。 そこで抗菌剤適用後に微生物相変化の面からモニタリング可能な 工業用抗菌剤の効果監視方法が求められている。
また、 抗菌剤を使用しても障害が発生した場合や、 長期間にわたり同一の抗菌 剤を適用していて急激にその効果が低下した場合などは、 直ちにその原因を明ら かにして迅速な解決を図る必要がある。 しかしながら従来は、 障害発生の原因を 迅速かつ的確に知る方法がなく、 試行錯誤によって対応策を工夫する以外に方法 がなかった。
そこで、 こうした緊急の場合にも対応できる科学的な原因究明と的確な処理方 法の決め方が求められている。
製紙工場の製紙プロセスは、 パルプを水に分散懸濁させ、 所望する大きさとパ ルプ濃度に調製後、 各種製紙薬品を加えて抄紙機で抄紙するものであり、 パルプ 原料調製系、 損紙系、 製紙薬品調製系、 調成系、 白水循環系および白水回収系な どから構成されている。 抄紙機で分離された水は白水と呼ばれ、 パルプの分散懸 濁、 濃度調製その他の用途に再利用される。 白水中には製紙薬品として加えられ たデンプンやその他有機物が含まれており、 水温が通常 3 0〜4 0 °Cであること から、 微生物の生息には好条件であり、 何らのスライムコントロールが行われな い場合は 1 0 5〜1 0 7個/ m L程度の微生物が含まれている。
これらの微生物は抄紙機白水循環系の水中壁面において付着増殖し、 さらに白 水中の非生物的固形物をも取り込んでスライムと呼ばれる付着物を形成する。 こ のようなスライムが抄紙機運転中に剥離すると、 紙製品に斑点、 目玉を形成し、 製品品質を低下させたり、 断紙により抄紙機の連続操業を停止させるなど、 様々 な障害をもたらす。
このようなスライム障害を防止するために、 現在は白水循環系にスライムコン トロール剤を添加してスライムの発生を抑制する方法が広く実施されており、 各 種のスライムコントロール剤が市場に出回っている。
製紙工程に生息する微生物は、 原料パルプ、 各種製紙薬品、 工業用水または空 気中などから持ち込まれ、 各製紙工程で増殖して各環境条件に適合した微生物相 が形成される。 これらの微生物は工程の流れに沿っていずれも抄紙原料中に集合 するので、 白水循環系にはあらゆる製紙工程で増殖した微生物が含まれることに なる。 このうち白水循環系の環境に適合し、 壁面で付着増殖しやすいものがスラ ィムの主構成菌をなしている。
以上の状況から白水循環系の微生物相は複雑であることが想像されており、 用 いられるスライムコントロール剤は抗菌スぺク トルの広いものが好まれる傾向が ある。 しかし抗菌スペクトルが広く、 効力の高いスライムコントロール剤は一方 で毒性が高かったり、 取り扱いが危険であったりして、 現実にはそれほど理想的 な効能をもつたスライムコント口ール剤はなく、 複数のスラィムコント口ール剤 成分を配合する方法が広く行われている。
仮に、 白水やスライムの微生物相を容易に解析でき、 各微生物が主としてどこ で増殖したかという発生源が分かれば、 必ずしも抗菌スぺクトルが理想的に広く なくても合理的な使用方法を工夫すればスライムの抑制が可能であり、 白水循環 系には優占菌種に対して有効なスライムコントロール剤を添加し、 そのスライム コントロール剤に抵抗性を示す微生物だけはその発生源に対して該当する微生物 に有効な別のスライムコントロール剤を添加することにより、 安定したスライム
コントロール効果が達成できるはずである。
このような考え方は従来からあり、 損紙チェストなどの特に微生物増殖が激し い場所にもスライムコントロール剤を添加する方法が試みられている。 しかしこ れら従来の方法における微生物発生源を特定する方法は、 製紙工程各所から試料 を採取して寒天平板法などにより生菌数測定を行い、 生菌数の高い場所が微生物 発生源であるとする方法であった。
従来の生菌数測定法では微生物の種類が分からないから、 従来の方法では白水 循環系で使用中のスライムコントロール剤 (白水処理剤) に抵抗性の微生物が増 殖しているのか、 感受性の微生物なのか判断できない。 そこで改めて生菌数の高 かった複数の場所から試料を採取し直し、 種々のスライムコントロール剤による 抗菌試験を実施して発生源に適用するスライムコントロール剤 (発生源処理剤) を選定しなければならなかつた。
発生源で増殖した微生物相において白水処理剤に抵抗性の微生物が優占菌種で ある場合は、 操作が煩雑であることを我慢すれば上記従来の方法によっても適切 な発生源処理剤を選定することができる。 しかし、 白水処理剤に対して感受性菌 種が優占種であるが抵抗性菌種も同時に増殖している場合には、 上記従来の方法 では好適な発生源処理剤を特定しにくいか、 特定が不可能であるという問題点が あ o 0
また製紙工程は、 最近節水対策のために白水の再利用が進み、 あらゆる工程に 繰り返し循環使用されるようになってきた。 このように白水再利用が進んだ製紙 工程では各所の生菌数が白水生菌数と変わらなくなり、 生菌数測定によっては微 生物発生源を特定できなくなつている。 一方、 このように白水再利用の激しい系 の方が一般にスライム障害も激しいので、 より合理的なスライム抑制方法が強く 求められている。
また前記のような製紙プロセスから構成される製紙工場において、 品質管理上 の最も大きな問題点は、 なんらかの異物が抄紙時に紙の上に付着し、 この付着物
が原因となって製品中に欠点 (ホール、 はん点、 目玉とも呼ばれる) と呼ばれて いる不良部分が発生することである。 欠点は製品の品質を大幅に落とすばかりで なく、 印刷時における種々のトラブルの原因となっている。 また、 こうした欠点 は断紙の原因となり、 抄紙機の運転を困難にさせ、 生産性を著しく低下させる。 欠点を引き起こす付着物の本体は、 スライム (微生物おょぴそれらが産生する 粘質物) 、 ピッチ、 スケール、 サイズ、 夾雑物、 およびこれらの複合体であるこ とが知られている。 製紙工程の中でも抄紙工程は微生物が生育しやすい環境にな つていることから、 微生物由来のスライムには大きな注意が払われており、 その 発生を抑制するためにスライムコントロール処理が通常行われている。
製品に発生した欠点が微生物スライム由来であるかどうかは、 顕微鏡観察や二 ンヒドリン反応等の化学分析によって調べることができる。 欠点がスライム由来 であることが特定されれば、 スライムコントロール処理を改善し、 欠点の発生を 防止する必要がある。
しかしながら、 紙製品は高温で乾固されており欠点中の微生物はすでに死滅し ているので、 欠点から微生物を分離培養して、 その名称を特定したり、 それらの 微生物の構成比、 すなわち微生物相、 または優占微生物を調べることは難しい。 このため、 欠点の原因となっている微生物 (以下、 原因微生物という場合があ る) が何であり、 またその原因微生物の発生場所が抄紙機、 水系または原料のど こなのかを特定することは不可能である。
従来、 強固な胞子や芽胞を形成する微生物の一部を紙から分離した例 (Vaisan enら、 Journal of Applied Bacteriology^ 7 1卷、 1 3 0〜1 3 3 ^—ン、 1 9 9 1年) はあるが、 ほとんどの微生物は死滅しているので、 やはり欠点の原因微 生物おょぴ発生場所を突き止めることはできない。
したがって、 原因微生物おょぴその発生場所を特定し、 その微生物に最も効果 的な方法で微生物制御処理を行うというような、 科学的かつ合理的な対応を実施 することは不可能である。 このため、 現状では経験的かつ状況的判断により抄紙
機まわりのスライムコントロール量を増大したり、 比較的菌数の高いチェスト等 を殺菌するなどの対処療法が行われているだけであり、 微生物に起因する欠点を 確実に低減させることは難しい。
本発明の目的は、 DNAの塩基配列に基づいて試料の微生物相を解析し、 この微生 物相に最適な工業用抗菌剤をデータベースを利用して簡単に、 かつ短時間で的確 に選定することができる抗菌剤の選定方法おょぴその利用方法を提案することで ある。
本発明の他の目的は、 対象系の微生物相に応じて最適な工業用抗菌剤を短時間 で選定して効率よく抗菌処理することができる抗菌処理方法を提案することであ る。
本発明の他の目的は、 抗菌剤の効果が発揮されているかどうかを短時間で簡単 に、 かつ的確に把握することができる抗菌効果のモニタリング方法を提案するこ とである。
本発明の他の目的は、 従来の生菌数測定法に代わって白水処理剤に対する抵抗 性微生物の種類おょぴ発生源を、 微生物 DNAの塩基配列による微生物相解析とその 存在比率から特定し、 予め集積した薬剤検索データベースによって選定した発生 源処理剤を発生源に対して添加することによってスライム抑制方法を合理的なも のにするとともに、 白水循環系におけるスライム抑制効果を安定化しょうとする ものである。 また、 白水中の優占微生物に対して有効なスライムコントロール剤 を選定し: C最も流量が多い、 したがって使用量が高くなる白水循環系の白水処理 剤とし、 抵抗性微生物に対しては、 その発生源を特定し、 これらに有効な別のス ライムコントロール剤を発生源処理剤として選定して発生源だけに適用すること により、 スライムコントロール剤の合計使用量を低減しようとするものである。 本発明の他の目的は、 紙製品の欠点の原因となっている微生物を簡単に、 かつ 確実に特定することができる製紙工程における製品の付着物の分析方法を提案す ることである。
本発明の他の目的は、 紙製品の欠点の原因となっている微生物の発生場所を簡 単に、 かつ確実に特定することができる製紙工程における製品の付着物の付着原 因の探索方法を提案することである。
本発明のさらに他の目的は、 紙製品の欠点の原因となっている微生物の発生場 所を簡単に、 かつ確実に特定し、 これに基いて紙製品の欠点の発生を簡単に、 か つ確実に低減させることができる製紙工程における微生物制御方法を提案するこ とである。 図面の簡単な説明 '
図 1は、 発明の実施の形態において本発明の抗菌処理方法を適用する製紙装置 の系統図である。
図 2は、 発明の実施の形態において本発明の抗菌処理方法における微生物相の 解析および抗菌剤の選定方法の一例を示すフローチャートである。
図 3は、 発明の実施の形態において本発明のスライム抑制方法を適用する製紙 装置の系統図である。
図 4は、 実施例 1 0において行った電気泳動の結果を示す図である。
図 5は、 実施例 1 1において解析した DNAの T R F L P法によるフラグメントパ ターンを示すグラフである。 全てのグラフにおいて、 縦軸は蛍光強度、 横軸は T R F (Terminal Restriction Fragment の: さ (bases) でめる。 発明の開示
従来の古典的な微生物同定方法によっては抗菌剤使用対象系の微生物相の解析 をすることができず、 したがって対象系の微生物相に応じた抗菌剤の選定は事実 上できなかった。 そこで経験主義的な従来法に代わる方法として、 本発明者らは DNAの塩基配列による微生物相の解析が短時間ででき、 しかも培地で分離培養でき ない微生物であっても解析可能であることに着目し、 これと各微生物に対して行
つた抗菌試験結果、 および抗菌剤処理をした対象系の処理実績データとを有機的 に組み合わせることにより、 微生物相に応じて適切な抗菌剤を選定することがで きる抗菌処理方法を完成した。 また抗菌剤をある対象系に適用した後は、 系内の 微生物相変化を監視することによって抗菌剤効果をモニタリングし、 必要に応じ て抗菌剤の種類を変更する方法を完成した。
また発明者らは、 微生物 DNAの塩基配列による微生物相の解析が、 従来の古典的 な方法に比べて正確性および迅速性においてはるかに優れており、 製紙工程にお ける微生物相の比較や、 抵抗性微生物の発生源を特定するのに有効なことを見出 し、 鋭意研究の結果本発明を完成するに至った。
また本発明者は紙製品の欠点から微生物に由来する DNAを抽出し、 その DNAの遺 伝情報をもとに、 付着物を構成している微生物の種類、 名称、 構成比、 優占微生 物などを解析することが可能であることを見出し、 本発明を完成した。
すなわち本発明は次の抗菌剤の選定方法およぴその利用方法である。
( 1 ) 試料の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析する微生物解析工程と, 微生物に対する工業用抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されているデータべ一 スを検索して、 前記微生物解析工程で解析した試料の微生物相、 優占微生物また は特定微生物に対して有効な工業用抗菌剤を抽出し、 この中から工業用抗菌剤を 選定する抗菌剤選定工程と
を有する抗菌剤の選定方法。
( 2 ) 工業用抗菌剤を使用して抗菌処理する方法において、
工業用抗菌剤を適用する対象系から微生物を含む試料を採取する試料採取工程 と、
この試料の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析する微生物解析工程と、 微生物に対する工業用抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されているデータべ一 スを検索して、 前記微生物解析工程で解析した試料の微生物相、 優占微生物また は特定微生物に対して有効な工業用抗菌剤を抽出し、 この中から工業用抗菌剤を
選定する抗菌剤選定工程と、
前記抗菌剤選定工程で選定した工業用抗菌剤を対象系に添加する抗菌剤添加工 程と
を有する抗菌処理方法。
( 3 ) 工業用抗菌剤を適用する対象系から微生物を含む試料を採取する試料 採取工程と、
この試料の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析する微生物解析工程と、 微生物に対する工業用抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されているデータべ一 スを検索して、 前記微生物解析工程で解析した試科の微生物相、 優占微生物また は特定微生物に対して有効な工業用抗菌剤を抽出し、 この中から工業用抗菌剤を 選定する抗菌剤選定工程と、
前記抗菌剤選定工程で選定した工業用抗菌剤を対象系に添加する抗菌剤添加工 程と
を有する抗菌処理を行っている抗菌処理系において、
定期的または任意の時点で、 前記試料採取工程および微生物解析工程を行い、 この解析結果を前回の解析結果と比較して、 微生物相の変化から工業用抗菌剤効 果の変化を監視する
抗菌効果のモニタリング方法。
( 4 ) 製紙工程で発生するスライムをスライムコント口一ル剤を用いて抑制 する方法であって、
スライムコントロール剤を用いてスライムを抑制している製紙工程の 2箇所以 上から試料を採取する試料採取工程と、
各試料ごとの微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析する微生物解析工程と、 微生物に対する工業用抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されているデータべ一 スを検索して、 前記微生物解析工程で解析した試科の微生物相、 優占微生物また は特定微生物に対して有効なスライムコントロール剤を抽出し、 この中からスラ
ィムコント口一ル剤を選定するスライムコント口ール剤選定工程と、
前記スライムコントロール剤選定工程で選定したスライムコントロール剤を対 象系に添加するスライムコントロール剤添加工程と
を有する製紙工程のスライム抑制方法において、
前記微生物解析工程で検出された微生物が、 現在使用しているスライムコント ロール剤に対して抵抗性を有するか否かを判定する抵抗性判定工程と、
前記抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定した抵抗性微生物の存在比率が高 い試料の採取場所を抵抗性微生物の発生源と判定する発生源判定工程と
をさらに有し、
前記スライムコントロール剤選定工程においては、 前記抵抗性判定工程で抵抗 性を有すると判定した抵抗性微生物を検索キーとしてデータベースを検索してス ライムコントロール剤を抽出する
製紙工程のスライム抑制方法。
( 5 ) 製紙工程で発生し、 紙製品の付着物の原因となるスライムをスライム コントロール剤を用いて抑制する方法であって、
紙製品に付着した付着物および製紙工程に発生したスライムを試科として採取 する試料採取工程と、
各試料ごとの微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析する微生物解析工程と、 微生物に対する工業用抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されているデータべ一 スを検索して、 前記微生物解析工程で解析した試料の微生物相、 優占微生物また は特定微生物に対して有効なスライムコントロール剤を抽出し、 この中からスラ ィムコントロール剤を選定するスライムコントロール剤選定工程と、
前記スライムコントロール剤選定工程で選定したスライムコントロール剤を対 象系に添加するスライムコントロール剤添加工程と
を有する製紙工程における微生物抑制方法において、
付着物の微生物相または優占微生物と、 製紙工程内に発生したスライムの微生
物相または優占微生物とを比較することにより、 付着物の原因となったスライム の発生場所を特定するスライム発生源特定工程をさらに有し、
前記スライムコントロール剤選定工程においては、 付着物の原因となったスラ ィムの優占微生物を検索キーとしてデータベースを検索してスライムコントロー ル剤を抽出し、
前記スライムコントロール剤添加工程では、 スライムコントロール剤を前記ス ラィム発生源特定工程で特定した場所に添加する
製紙工程における微生物抑制方法。
( 6 ) 工業用抗菌剤を使用して抗菌処理する方法において、
工業用抗菌剤を適用する対象系から微生物を含む試料を採取し、
この試科の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析し、
微生物に対する工業用抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されているデータべ一 スを検索し、 前記試料の微生物相、 優占微生物または特定微生物に対して有効濃 度が入力されている工業用抗菌剤を抽出し、 この中から工業用抗菌剤を選定して 使用する
抗菌処理方法。
( 7 ) 工業用抗菌剤を使用して抗菌処理する方法において、
工業用抗菌剤を適用している対象系から、 定期的または任意の時点で、 微生物 を含む試料を採取し、
この試料の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析し、
この解析結果を前回の解析結果と比較して、 微生物相の変化から工業用抗菌剤 効果の変化を監視し、 工業用抗菌剤に抵抗性を有する微生物の出現傾向が認めら れた場合には、 微生物に対する工業用抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されてい るデータベースを検索し、 前記出現傾向が認められた微生物に対して有効濃度が 入力されている工業用抗菌剤を抽出し、 この中から工業用抗菌剤を選定して使用 する
抗菌処理方法。
(8) データベースに蓄積されている微生物に対する工業用抗菌剤の有効濃 度のデータは、 微生物毎に培養試験から得られた有効濃度、 処理実績から得られ た有効濃度、 または文献から得られた有効濃度である上記 (6) または (7) 記 載の抗菌処理方法。
(9) データベースは、 微生物の生育に及ぼす環境条件ごとに微生物に対す る工業用抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されており、 指定された環境条件の中 から工業用抗菌剤を抽出するものである上記 (6) ないし (8) のいずれかに記 載の抗菌処理方法。
(10) 微生物の生育に及ぼす環境条件が pH、 温度または対象系の種類で ある上記 (9) 記載の抗菌処理方法。
(1 1) データベースは、 微生物の種類、 工業用抗菌剤の種類および有効濃 度、 微生物の生育に及ぼす環境条件、 ならびに処理実績の結果が追加、 蓄積およ び修正できるものである上記 (6) ないし (10) のいずれかに記載の抗菌処理 方法。
(1 2) データベースは、 対象系に使用した工業用抗菌剤の濃度および工業 用抗菌剤使用前後の微生物相の解析結果、 ならびに処理実績の結果を入力すると、 工業用抗菌剤使用前後の微生物相の各微生物の量の差を演算して記録し、 この演 算結果から各微生物に対して工業用抗菌剤の濃度が有効であつたか否かを判定し て追加、 蓄積および修正できるものである上記 (6) ないし (11) のいずれか に記載の抗菌処理方法。
(13) データベースは、 対象系に使用した工業用抗菌剤の濃度および工業 用抗菌剤使用前後の微生物相の解析結果、 ならびに処理実績の結果を入力すると、 工業用抗菌剤使用前後の微生物相の各微生物の量の差を演算し、 この演算結果か ら各微生物に対して工業用抗菌剤の濃度が有効であつたか否かを判定し、 この処 理実績から得られる判定結果と、 対象系に含まれる培養可能微生物について培養
試験した結果から得られる判定結果とを比較し、 処理実績における工業用抗菌剤 の効力は培養試験における効力に比べて過大、 正常範囲内または過小のいずれか であるかを判定して追加、 蓄積および修正できるものである上記 (6 ) ないし ( 1 2 ) のいずれかに記載の抗菌処理方法。
( 1 4 ) 工業用抗菌剤を使用している対象系において定期的または任意の時 点で、 対象系から微生物を含む試料を採取し、
この試科の微生物相を DMの塩基配列に基づいて解析し、
この解析結果を前回の解析結果と比較して、 微生物相の変化から工業用抗菌剤 効果の変化を監視する
抗菌効果のモニタリング方法。
( 1 5 ) 工業用抗菌剤を使用している対象系において定期的または任意の時 点で、 対象系から微生物を含む試料を採取し、
この試科の微生物相 DNAの塩基配列に基づいて解析し、
この解析結果を前回の解析結果と比較して、 微生物相の変化から工業用抗菌剤 効果の変化を監視し、 工業用抗菌剤に抵抗性を有する微生物の出現傾向が認めら れた場合には、 工業用抗菌剤の再選定の判断をする
抗菌効果のモニタリング方法。
( 1 6 ) 製紙工程で発生するスライムをスライムコントロール剤を用いて抑 制する方法において、
スライムコントロール剤を用いてスライムを抑制している製紙工程の 2箇所以 上から試料を採取し、 各試料ごとの微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析する 微生物解析工程と、
微生物解析工程で検出された微生物が、 現在使用しているスライムコントロー ル剤に対して抵抗性を有するか否かを判定する抵抗性判定工程と、
抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定した抵抗性微生物の存在比率が高い試 料の採取場所を抵抗性微生物の発生源と判定する発生源判定工程と、
抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定した抵抗性微生物を検索キーとして、 微生物に対するスライムコントロール剤の有効濃度のデータが蓄積されているデ ータベースを検索し、 抵抗性微生物に対して有効濃度が入力されているスライム コントロール剤を抽出し、 この中から新しいスライムコントロール剤を選定する スライムコントロール剤選定工程と、
発生源判定工程で判定した抵抗性微生物の発生源に、 スライムコントロール剤 選定工程で選定した新しいスライムコント口一ル剤を添加する発生源処理剤添加 工程と
を有する製紙工程のスライム抑制方法。
( 1 7 ) 製紙工程で発生するスライムをスライムコントロール剤を用いて抑 制する方法において、
スライムコントロール剤を用いてスライムを抑制している製紙工程の 2箇所以 上から試料を採取し、 各試料中の微生物を DNAの塩基配列に基づいて解析する微生 物解析工程と、
微生物解析工程で検出された微生物が、 現在使用しているスライムコントロー ル剤に対して抵抗性を有するか否かを判定する抵抗性判定工程と、
抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定した抵抗性微生物の存在比率を、 前記 各試料ごとに求め、 抵抗性微生物の存在比率の高い試料の採取場所を抵抗性微生 物の発生源と判定する発生源判定工程と、
抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定した抵抗性微生物を検索キーとして、 微生物に対するスライムコントロール剤の有効濃度のデータが蓄積されているデ ータベースを検索し、 抵抗性微生物に対して有効濃度が入力されているスライム コントロール剤を抽出し、 この中から新しいスライムコントロール剤を選定する スライムコント口ール剤選定工程と、
発生源判定工程で判定した抵抗性微生物の発生源に、 スライムコントロール剤 選定工程で選定した新しいスライムコントロール剤を添加する発生源処理剤添加
工程と
を有する製紙工程のスライム抑制方法。
( 1 8 ) 製紙工程で発生するスライムをスライムコントロール剤を用いて抑 制する方法において、
スライムコントロール剤を用いてスライムを抑制している製紙工程の 2箇所以 上から試料を採取し、 各試料ごとの微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析する 微生物解析工程と、
微生物解析工程で検出された微生物が、 現在使用しているスライムコントロー ル剤に対して抵抗性を有するか否かを判定する抵抗性判定工程と、
抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定した抵抗性微生物を検索キーとして、 微生物に対するスライムコントロール剤の有効濃度のデータが蓄積されているデ ータベースを検索し、 抵抗性微生物に対して有効濃度が入力されているスライム コントロール剤を抽出し、 この中から新しいスライムコントロール剤を選定する スライムコント口ール剤選定工程と、
抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定した抵抗性微生物の存在比率が高い試 料の採取場所に、 スライムコントロール剤選定工程で選定した新しいスライムコ ントロール剤を添加する発生源処理剤添加工程と
を有する製紙工程のスライム抑制方法。
( 1 9 ) 抵抗性判定工程において、 微生物解析工程で検出された微生物また は現在使用しているスライムコントロール剤を検索キーとして、 微生物に対する スライムコントロール剤の有効濃度のデータが蓄積されているデータベースを検 索し、 検索対象の微生物に対して現在使用しているスライムコント口ール剤の有 効濃度が記録されている場合は、 検索対象の微生物は現在使用しているスライム コントロール剤に対して抵抗性を有さず、 有効濃度が記載されていない場合は抵 抗性を有すると判定する上記 (1 6 ) ないし (1 8 ) のいずれかに記載のスライ ム抑制方法。
( 2 0 ) 微生物解析工程において試料を採取する場所が、 パルプ原料調製系、 損紙系、 製紙薬品調製系、 調成系、 白水循環系おょぴ白水回収系からなる群から 選ばれる 2箇所以上である上記 (1 6 ) ないし (1 9 ) のいずれかに記載のスラ ィム抑制方法。
( 2 1 ) 製紙工程において、 製品に付着した付着物から微生物に由来する DN
Aを抽出し、 得られた DNAの塩基配列を指標にして付着物の微生物相または優占微 生物を分析する製紙工程における製品の付着物の分析方法。
( 2 2 ) 製紙工程において、 製品に付着した付着物から微生物に由来する DN Aを抽出し、 得られた DNAの塩基配列を指標にして付着物の微生物相または優占微 生物を分析し、 この微生物相または優占微生物と、 製紙工程内に発生したスライ ムの微生物相または優占微生物とを比較することにより、 付着物の原因となった スライムを特定する製紙工程における製品の付着物の付着原因の探索方法。
( 2 3 ) 製紙工程において、 製品に付着した付着物から微生物に由来する DN Aを抽出し、 得られた DNAの塩基配列を指標にして付着物の微生物相または優占微 生物を分析し、 この微生物相または優占微生物と、 製紙工程内に発生したスライ ムの微生物相または優占微生物とを比較することにより、 付着物の原因となった スライムの発生場所を特定し、 特定したスライムの発生場所に対して殺菌 ·防腐 処理を行う製紙工程における微生物制御方法。
( 2 4 ) 微生物相または優占微生物を分析するために使用する DNAが、 リポソ ム R N Aをコードする DNAである上記 (2 1 ) ないし (2 3 ) のいずれかに記載 の方法。
本明細書において、 「微生物」 は細菌、 酵母、 糸状菌 (力ビ) 、 藻類おょぴァ 一キア (古細菌) 等を含む。
また 「抗菌剤」 は上記微生物に対する殺生物作用および Zまたは増殖抑制作用 を有する薬剤を意味し、 一般に抗菌剤、 殺菌剤、 静菌剤、 抑制剤、 スライムコン トロール剤、 防腐剤などと称されているものが含まれる。
また 「抗菌」 は上記微生物を死滅させることおよび または増殖を抑制するこ とを意味する。
また 「微生物相」 は対象系または試料中の個々の微生物の種類と構成比おょぴ 含有量 (微生物数または微生物量の割合) を示す意味で用いられているが、 優占 微生物の種類と構成比および含有量、 または特定微生物の種類と構成比および含 有量を示す意味で用いられる場合もある。
また 「処理実績の結果」 および 「処理効果」 はともに対象系に抗菌剤を使用し た場合の効果を意味する。 この効果は、 例えば製紙工程においてスライムコント ロール剤を使用する場合、 一定期間内におけるスライム成長量 (微生物量でもス ライム厚さでも可) の差で表してもよい。 ある一定の成長量に達するまでの期間 で表してもよい。 またスライムが対象系で発生することによって生じる障害内容 の程度によって示すことも含まれる。
また 「白水処理剤」 は白水循環系で使用中のスライムコントロール剤を意味し、 「発生源処理剤」 は抵抗性微生物の発生源に添加するスライムコントロール剤を 意味する。
また 「付着物」 は紙製品に発生し、 製紙分野において欠点 (ホール、 はん点、 目玉とも呼ばれる) と呼ばれている不良部分を意味する。
また 「抗菌剤検索データベース」 と 「薬剤検索データベース」 とは同じ意味で 使用されている。
參抗菌剤の選定方法
本発明の抗菌剤の選定方法は、 試料の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析 する微生物解析工程と、 微生物に対する工業用抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積 されているデータベースを検索して、 前記微生物解析工程で解析した試料の微生 物相、 優占微生物または特定微生物に対して有効な工業用抗菌剤を抽出し、 この 中から工業用抗菌剤を選定する抗菌剤選定工程とを有する抗菌剤の選定方法であ る。 このような抗菌剤の選定方法は、 前記抗菌処理方法、 抗菌効果のモニタリン
グ方法、 製紙工程のスライム抑制方法、 製紙工程における微生物抑制方法などに おいて、 抗菌剤 (スライムコントロール剤) を選定する際の選定方法として利用 することができる。
本発明の抗菌剤の選定方法では、 微生物解析工程として DNAの塩基配列に基づい て微生物相を解析するが、 この微生物相の解析方法としては公知の方法が制限な く使用できる。 なお微生物相の解析は、 微生物の DNAの塩基配列から微生物名を決 定 (同定) することは必ずしも必須ではなく、 他の微生物と区別できる番号 (以 下、 微生物番号という) を独自に付与し、 この微生物番号を微生物名の代わり用 いることもできる。 例えば、 微生物検索データベースにおいて高い相同性を有す る微生物が検索されない場合は、 その微生物に独自の微生物番号を付与して他の 微生物と区別することができる。 ただし、 微生物相を他者に説明する場合には微 生物名 (学名) を用いるのが便利であるので、 塩基配列に基づく微生物名を同定 しておくのが好ましい。
例えば、 微生物の同定 (判定) には、 DNAの塩基配列と微生物との関係が蓄積さ れている公知の微生物系統分類のデータベース (微生物検索データベース) を利 用することができ、 この微生物検索データベースをパソコン等のコンピュータを 用いて検索することにより微生物を同定することができる。 後述する具体的な微 生物検索データベースにはィンターネットを介してアクセスすることができるの で、 迅速にデータを検索できる。 後述する微生物検索データベースには、 リボソ ーム RNA (rR A) をエンコードする DNA (rDNA) の塩基配列のデータが蓄積されて いるので、 微生物の同定には試料から分離した rDNAの塩基配列を用いることがで きる。 rDNAは微生物の種類、 サプュ -ットの大きさによって数種類に分類される が (16S rDNA, 18S rDNAなど) 、 どの分子を用いても差し支えない。 また本発明 は rDNAだけに限定されず、 rRNAのスぺーサ一配列または gyrEなど他の DNA画分を利 用した方法であってもよい。 したがって、 どのような微生物検索データベースを 用いてもよいし、 どれか単一のものに統一して用いることもできる。 またさらに
複数の微生物検索データベースを併用することもできる。
前記微生物検索データベースとしては、 GenBank、 EMBレ DDBJなどの公的 DNAデ ータベースや、 ミシガン大学に設置されている Ribosomal Database Projectなど があげられる。 検索操作は FASTA、 BLAST等の既存のプログラムによって短時間に 効率的に行うこと力 sできる。 また、 MicroSeq 16S rDNA Sequense Database ( P E バイオシステムズ社) などの商用の微生物検索データベースを、 MicroSeq Analy sis Software ( P Eバイオシステムズ社、 商標) などの市販のソフトウェアによ り検索することもできる。 なお微生物検索データベースを自身で構築してもよい。 例えば、 塩基配列データから、 それに対応する微生物名または微生物を区別する ための微生物番号が検索できるデータベースを公知のデータベースソフトウェア などを用いて構築し、 他の微生物検索データベースと併用することもできる。 対象系から採取した試料から微生物コロニーを単離して分離株の該当 DNAの塩基 配列を決定し、 得られた結果を微生物検索データベースと照合して微生物を同定 することができる。 rDNAは大腸菌等の宿主ベクター系を用い古典的クローニング 操作によって単離 ·増幅することもできるが、 PCK法 (ポリメラーゼ連鎖反応) な どの試験管内 DNA増幅方法によって増幅させる方が簡便である。
また、 微生物群を培養分離せず混合状態のまま微生物 DNAを抽出し、 対象とする 大多数の微生物に共通性の高い塩基配列によって構成されるプライマーを用いて 各微生物の rDNAだけを PCR法などの試験管内 DNA増幅方法によって増幅し、 さらに ゲル電気泳動などによって個々の微生物由来の rDNAを分離し、 得られた結果を微 生物検索データベースと照合して微生物を同定することもできる。
複数の微生物を同定する場合、 塩基配列の決定に先だって、 R F L P法 (Rest riction Fragment Length Polymorphism:Moyerら、 Applied and Environmental Microbiology誌、 6 2卷、 2 5 0 1〜 2 5 0 7ページ、 1 9 9 6年) ) によって おおまかに相違を調べることもできる。 すなわち、 各微生物の rDNAを各種の制限 酵素で完全に消化し、 ポリアクリルアミ ドまたはァガロースゲル電気泳動で分離
電気泳動し、 DNA染色後のパターンの違いから区別することができる。
微生物群からコロエーを分離してから調べる方法では、 培地で分離培養できな い (non-culturableな) 微生物が存在している場合、 この微生物は検出できない。 また、 培養可能な微生物であっても 1種類の培地や培養条件だけで全ての分離培 養可能な微生物が検出されるという保証はない。 一方、 微生物群を分離せずに微 生物混合体から微生物 DMを抽出して調べる方法では、 培地で分離培養できない微 生物が存在する系であってもそれらを検出できる利点があるが、 微生物による DN A抽出率の差、 細胞あたりの該当遺伝子のコピー数の差、 PCR時の増幅効率の差、 プライマーの選び方によって異なる検出微生物群の感度差などがあるから、 これ らの特性と対象系に出現する微生物の特性を理解した上でならば上記方法を単独 で用いてもよいし、 適宜併用することもできる。
混合 rDNAから個々の微生物の rDNAを分離する方法には一般に電気泳動が用いら れるが、 これにはいくつかの方法が提案されている。 例えば、 DGGE法 (Dena tured Gradient Gel Electrophoresis :Muyzer t>、 Applied and Environmental M icrobiology誌、 5 9卷、 6 9 5〜 700ページ、 1 9 9 3年) 、 T G G E法 (T emperature Gradient Gel nlectrophoresis: ichnerら、 Applied and Environme ntal Microbiology誌、 6 5卷、 1 02〜: L 0 9ページ、 1 9 9 9年) 、 S S C P 法 (Single Strand Conf ormat!iona丄 Polymorphism: Schwiegerら、 Applied and Environmental Microbiology誌、 64卷、 48 70〜 48 7 6ページ、 1 9 9 8 年) 、 TRF L P法 (Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism: Li uら、 Applied and Environmental Microbiology誌、 6 3卷、 451 6〜 4 5 2 2 ページ、 1 9 9 7年) 、 またはランダムクローニング法 (Dunbarら、 Applied an d Environmental Microbiology志、 6 5卷、 1 6 6 2〜 1 6 6 9ぺーシ、 1 9 9 9年) などがあるが、 本発明の抗菌剤の選定方法はこれらに限定されるものでは ない。
また目的によって混合微生物系内の特定の微生物を調べるリアルタイム PCR法
(Wittwerら、 BioTechnique誌、 2 2卷、 1 3 0〜 1 3 8ページ、 1 9 9 7年) 、 F I S H法 (Fluorescence In ¾itu Hybridization: Ammanら、 Applied and Envi ronraental Microbiology誌、 5 8卷、 6 1 4〜 6 2 3ページ、 1 9 9 2年) 、 古 典的ハイプリダイゼ^ "ション法 (Williamら、 Microbiology誌、 1 4 1巻、 2 7 9 3〜 2 8 0 0ページ、 1 9 9 5年) なども本発明の抗菌剤の選定方法に利用する ことができる。 これらの方法に使用される制限酵素やプライマーにも各種のもの があるが、 公知の任意のものを使用することができる。
分離 ·増幅した rDNAは実験的操作により直接その塩基配列を決定することがで きる。 これら一連の操作には、 各種の試薬キット、 例えば AutoRead Sequencing Kit (アマシャム · フアルマシア ·バイオテク株式会社、 商標) や MicroSeq 500 16S rDNA Kit ( P Eバイオシステムズ社、 商標) などが巿販されているので、 こ れらを用いることができる。 もちろん、 DNAポリメラーゼ等の試薬を独自に調合し てジデォキシ法等の方法によって操作を行うこともできる。 また、 解析機器とし ては、 塩基配列解析装置、 例えば ALFexpressII DNA Analysis System (アマシャ ム ' フアルマシア ·バイオテク株式会社、 商標) や ABI PRISM 310 ( P Eパイオシ ステムズ社、 商標) が市販されているので、 これらを用いることができる。 もち ろん、 ポリアクリルアミ ドゲル電気泳動を行い、 オートラジオグラフィ一等によ りパンド (シークェンシングラダー) の位置を解読することもできる。 混合 rDNA を試料とした場合には、 電気泳動して得たバンドを染色後、 該当するパンドをゲ ルごと切り出し、 ゲルから DNAを抽出 ·精製後、 再ぴ PCRを行い、 増幅された DNAを 塩基配列決定に用いることができる。
既存の微生物検索データベースを用いて検索する場合、 使用する試験方法には 各々のデータベースに指定された範囲の方法が公開されているので、 それに従え ばよい。
試料から採取した微生物の DNAの塩基配列と、 微生物検索データベースに登録さ れている塩基配列とを比較し、 データベース上で最も相同性の高い塩基配列を有
する微生物を最も近縁の微生物であると判断することができる。
全く同一の微生物同士であれば、 ある種の例外 (例えばゲノム上の複数のコピ 一における多型性) を除いて、 指標とする遺伝子の塩基配列には 1 0 0 %の相同 性が認められる。 また同属同種の近縁微生物同士の場合は遺伝子の種類にもよる が 1 0 0 %に近い相同性が認められ、 例えば 16S rDNAの場合であればおおむね 9 8 %以上の相同性が得られる。 したがって、 該当する塩基配列を比較して 9 8 % 以上、 好ましくは 9 9 %以上の相同性が認められる場合は、 通常同属同種の微生 物と判定することができる。 相同性が 9 8 %に満たない場合は、 同属同種の微生 物とは判断せず、 独自の微生物番号などを付与し、 この番号を微生物名の代わり に用いることができる。
また同定した微生物の構成比は、 コロニーの割合、 DNAの割合などから定量する ことができる。 コロニーを分離して調べる方法であれば、 統計的に信頼できる数 のコロニーをァトランダムに選択し、 これらのコロニーの同定を全て行うことに よって、 試料中の各種微生物の構成比を算出することができる。 また微生物群か ら直接 DNAを評価する方法では、 D G G E法や T G G E法で観察される DNAバンド の量がもとの微生物量を反映していると解釈されるので、 DNAバンドの積算濃度に 対する個々の DNAバンドの濃度の比を構成比として捕らえることができる。 このよ うなパンド濃度を測定するためには、 市販のデンシトメーターやスキャナーに連 動した画像解析装置 (例えば、 ImageMaster (アマシャムフアルマシアバイオテク (株) 製、 商標) など) を用いることができる。 また蛍光試薬を結合した DNAブラ イマ一を用いたり、 泳動後の染色に蛍光物質を利用した場合は、 その蛍光量を F1 uorlmager (アマシャムフアルマシアバイオテク (株) 製、 商標) などの蛍光ィメ ージアナライザーで直接測定することもできる。 また F I S H法であれば、 全微 生物数に対する染色された微生物数を顕微鏡下に直接計測して構成比を算出する ことができる。
微生物の絶対量は公知の方法、 例えば平板培地を用いたコロニー計測法、 M P
N (Most Probable Number) 法、 または D A P I ( 4 , 6—ジアミジノー 2—フ ェ-ノレインドーノレ) 、 アタリジンオレンジや C F D A (Carboxyfluoresceindiac etate) 等の蛍光物質による染色後の微生物細胞を顕微鏡下で定量計測するなどの 方法によって、 単位容量または単位重量あたりの微生物数を算出することができ る。 各種微生物の構成比と絶対量を積算することにより、 試料中の該当微生物の 含有量を算出することもできる。 リアルタイム P C R法や古典的ハイブリダィゼ ーション法であれば、 あらかじめ既知濃度の微生物細胞または DNAを標準物質とし て試科を同条件で反応させることにより、 試料中の初発の細胞数または DM量を推 測することが可能である。
本発明の抗菌剤の選定方法において、 抗菌剤選定工程で用いるデータベース
(以下、 抗菌剤検索データベースという場合がある) は、 少なくとも微生物とそ の各々に対応した各種抗菌剤の有効濃度が蓄積されており、 微生物を検索キーに して、 有効濃度が記録されている抗菌剤を検索、 抽出できるものであれば、 どの ような形式のものでもよい。 検索キーとなる微生物としてほ微生物検索データべ ースから得られた微生物名、 ァクセッションナンバーまたは微生物番号などが利 用できる。 微生物名は学名で表記することもできるし (例えば、 Escherichia co ii HBlOlなど) 、 ァクセッションナンバーで表記することもできる。 また学名を 決定できない微生物や塩基配列に対しては独自に付与した微生物番号による表記 を用いてもよい。 検索キーはキーボードなどの入力装置から入力できる。 有効濃 度のデータは、 微生物毎に培養試験から得られた有効濃度、 処理実績から得られ た有効濃度、 または文献から得られた有効濃度のいずれでもよい。
有効濃度が入力されているということは、 検索対象の微生物に対してその濃度 で抗菌作用があることを意味するが、 抗菌剤の濃度を複数設けて、 その濃度にお ける抗菌作用の有無または程度が入力されていてもよい。 この場合、 抗菌作用が 認められる濃度において抗菌剤を抽出する。
抗菌剤検索データベースは、 未登録の微生物または塩基配列が発生するつど、
これらの微生物に対応する各種抗菌剤の有効濃度などのデータが追加登録され、 蓄積できるものが好ましい。
また抗菌剤検索データベースは、 微生物の生育に及ぼす環境条件ごとに微生物 に対する抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されており、 この環境条件を指定する と、 指定された環境条件の中から抗菌剤を抽出するものであるのが好ましい。 環 境条件の具体的なものとしては p H、 温度、 対象系の種類と分類、 基質の種類と 濃度、 ならびに抗菌剤効力に影響を与える物質、 例えば還元物質の濃度などがあ げられる。 上記対象系の種類と分類としては、 対象系の種類が製紙工程なら抄紙 の種類、 抄造条件、 サイズ剤、 歩留向上剤、 紙力向上剤など各種内添剤の種類と 添加濃度、 過去に使用していた抗菌剤の種類など;冷却水系なら捕給水の種類、 水質、 混入している大気中のガス成分、 冷却水の滞留時間、 その他の使用薬剤な ど;防腐対象なら対象基質、 要求される防腐期間などがあげられる。 なお、 抗菌 剤検索データベースに入力されている抗菌剤の有効濃度が培養試験から得られた データである場合上記 p H、 温度などは培養条件に相当し、 処理実績から得られ たデータの場合上記 p H:、 温度などは対象系の環境条件に相当する。
環境条件が P Hの場合、 複数の p H条件における有効濃度が蓄積されているの が好ましい。 例えば、 p H 5、 p H 6、 p H 7 · · 'におけるデータが蓄積され ているのが好ましい。 温度などの場合も、 p Hの場合と同様に複数の条件におけ る有効濃度が蓄積されているのが好ましい。 このように有効濃度に関するデータ が環境条件ごとに蓄積されている場合、 例えば p H 6かつ温度 2 0 °Cを選定条件 とし、 これらを検索キーにして抗菌剤を絞り込むことができる。
また抗菌剤検索データベースは、 対象系に使用した抗菌剤の濃度おょぴ抗菌剤 使用前後の微生物相の解析結果、 ならびに処理実績の結果を入力すると、 抗菌剤 使用前後の微生物相の各微生物の量の差を演算して記録し、 この演算結果から各 微生物に対して抗菌剤の濃度が有効であつたか否かを判定して追加、 蓄積おょぴ 修正できるものが好ましい。 このような抗菌剤検索データベースを用いることに
より、 より適切な抗菌剤を選定することができる。
また抗菌剤検索データベースは、 対象系に使用した抗菌剤の濃度および抗菌剤 使用前後の微生物相の解析結果、 ならびに処理実績の結果を入力すると、 抗菌剤 使用前後の微生物相の各微生物の量の差を演算し、 この演算結果から各微生物に 対して抗菌剤の濃度が有効であつたか否かを判定し、 この処理実績から得られる 判定結果と、 対象系 (試料) に含まれる培養可能微生物について培養試験した結 果から得られる判定結果とを比較し、 処理実績における抗菌剤の効力は培養試験 における効力に比べて過大、 正常範囲内または過小のいずれかであるかを判定し て追加、 蓄積および修正できるものが好ましい。 このような抗菌剤検索データべ —スを用いることにより、 実際の対象系の環境下における抗菌剤の効果を正確に 評価することが可能であり、 このためより適切な抗菌剤を選定することができる ので好ましい。
また抗菌剤検索データベースは、 文献等に記載されている抗菌剤の特性や抗菌 効力、 抗菌剤の価格などのデータが入力されているのが好ましい。 さらに抗菌剤 検索データベースは、 処理実績のデータ、 試験結果のデータ、 文献データなどの 新しいデータが追加、 蓄積できるものが好ましい。
上記のようなデータがより多く蓄積された抗菌剤検索データベースはより適切 な抗菌剤を選定することができる。
培地で分離培養できない微生物に対する抗菌剤の抗菌スぺク トルを純粋菌株を 用いて室内試験で測定することは不可能なので、 このような微生物に対応する有 効濃度などのデータは実績データを蓄積する必要がある。
例えば、 ある抗菌剤をある対象系に適用した場合、 適用前後の微生物相の解析 結果とその時の抗菌剤処理効果、 および抗菌剤の系内維持濃度 (添加濃度から計 算によって求めた維持濃度でも可) 、 その他好ましくは微生物の生育と抗菌剤効 力に影響を与える対象系の環境条件が逐次追加入力され、 記録できるようにした 抗菌剤検索データベースのフォーマットを作成しておく。 使用前には存在し、 抗
菌剤使用後に消失した微生物は、 適用した抗菌剤で駆逐されたものとみなし、 抗 菌剤使用前の微生物相と抗菌剤使用後の微生物相の差を演算結果として記憶する カラムを抗菌剤検索データベース内に設ける。 このようにすると消失した微生物 は適用した抗菌剤の系内維持濃度に対して感受性であることが分かり、 逆に占有 率が変わらなかったり増大した微生物は適用した抗菌剤の維持濃度において非感 受性であるか、 または抵抗性であるかを区分できる。
このようにして求めた一連の微生物に対する抗菌剤効力の妥当性を評価するた めの方法としては、 例えば以下のような方法がある。 すなわち、 対象系から採取 した試料中には少なくとも 1〜 2種の培養可能な微生物が存在しているので、 そ の微生物に対して室内実験で求めた抗菌性を抗菌剤検索データベースから呼び出 して照合し、 抗菌剤維持濃度において感受性の範囲にあるか否かを判断し、 室内 試験の結果と許容範囲内 (任意に設定可) で矛盾がなければ、 該適用例で計算に よって求めた一連の微生物群に対する抗菌効力データは正常範囲にあると判断す る。 そしてこの判断結果を表示できるカラムを抗菌剤検索データベースに用意し、 その旨入力しておく。 もし室内試験データがなければ、 その時に分離された微生 物を用いて室内試験を追加すればよい。
使用対象系に還元性物質などの抗菌剤効力を阻害する物質が含まれている場合 には、 上記のようにして求めた抗菌効力データは室内試験によって測定した抗菌 効力よりも悪くなるはずである。 すなわち求めた抗菌効力の値は共存していた系 内物質の影響を受けて過小評価されているので、 このように判断された 1群のデ 一タには過小評価と前記カラムに表示する。 また、 使用対象系の前工程で使用さ れ、 残留した抗菌剤が現対象系に流下するような場合には、 使用した抗菌剤の効 力が過大評価されている可能性がある。 こうした場合は、 同様に前記カラムに過 大評価を表示する。
以上のような記入カラムをもつ抗菌剤検索データベースのフォーマットを設計 して、 多くの適用例のデータを集積しておけば、 ある種の培地で分離培養できな
い微生物に対して抗菌剤を検索する際には正常範囲のデータ群から有効な抗菌剤 を選定することができる。
また新たに、 ある対象系に適用する抗菌剤を選定しょうとする時に、 対象系に 抗菌効力を阻害したり、 増大させる物質の共存がある場合は、 上記抗菌剤検索デ ータベースに集積され、 過大評価または過小評価と判定されたデータ群は抗菌剤 選定の重要な要素になり得るのでこれらも削除せずに集積することが好ましい。 本発明の抗菌剤の選定方法で使用する抗菌剤検索データベースを構築するコン ピューターソフトウェアとしては、 Mi crosoft社製の Microsoft Exelや Microsoft Access (いずれも商標) などの市販のソフトウェアを使用できるが、 これらに限 定されるものではなく、 目的にそったものであればどのようなものでも使用する ことができる。 該当する微生物名やァクセッションナンバーから各抗菌剤の効力、 対象系の環境条件など、 目的とする内容を検索する機能は、 上記ソフトウェアに 通常付随しているので、 それらを利用することができ、 不足するプログラムがあ る場合は、 公知の方法を組み合わせて追加することもできる。
上記のようにして抗菌剤を選定することにより、 抗菌剤を使用する対象系に最 適な抗菌剤を簡単に、 かつ短時間で的確に選定することができる。
•抗菌処理方法
本発明の抗菌処理方法は、 従来の殺菌試験、 増殖抑制試験または寒天平板法に よる菌数測定などに頼った経験主義的な抗菌剤選定方法の代わりに、 対象系の微 生物相を DNAの塩基配列によって微生物相解析し、 得られた微生物相と抗菌剤を検 索できる抗菌剤検索データベースとを照合し、 最も適した抗菌剤を選定して使用 する抗菌処理方法である。
本発明の抗菌処理方法が適用できる対象系は、 抗菌剤を使用して抗菌処理して いる処理系であれば特に制限されない。 例えば、 製紙工程水、 冷却水、 超純水製 造工程などの工業用スライムコントロール剤を使用する系;製紙用デンプンスラ リーや糊液、 金属加工用水溶性切削油などの防腐剤を使用する系などがあげられ
る。
本発明の抗菌処理方法では、 まず対象系から微生物を含む試料を採取する。 通 常この試料中には複数種の微生物が存在していると考えられる。 次に、 採取した 試料の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析し、 データベースから抗菌剤を選 定する。 この微生物相の解析および抗菌剤の選定は、 前記抗菌剤の選定方法で説 明した微生物解析工程およぴ抗菌剤選定工程における方法をそのまま利用して行 うことができる。
本発明の抗菌処理方法は、 まず最初に対象系からスライム、 白水、 循環冷却水、 防腐対象物質などの微生物を含む試料を採取し、 DNAの塩基配列による微生物相解 析によって、 試料中に含まれる微生物相を構成する微生物を微生物名またはァク セッションナンバー (微生物名に相当する) 毎に調べる。 通常これら一連の試験 操作は 2〜7日間で終了する。
次いで上記解析により同定された微生物を検索キーとして抗菌剤検索データべ ースを検索し、 抗菌剤を検索、 抽出する。 この場合、 環境条件などを検索キーと して入力し、 抗菌剤をさらに絞り込むことができる。 抽出結果はディスプレイな どの出力装置に出力させることができる。 抽出された抗菌剤が 1種類の場合はそ の抗菌剤を選定し、 複数の場合はその中から選定する。 抽出された抗菌剤の中か ら実際に使用する抗菌剤の選定方法は任意であり、 人が選定することもできるし、 コンピュータで自動的に行うこともできる。 具体的な選定方法としは、 例えば次 のような方法などがあげられる。
1 ) 全微生物または優占微生物に対して最も低い最小有効濃度の抗菌剤を選定 する。
2 ) 特定の微生物を予め指定しておき、 それに対して最も有効な抗菌剤を選定 する。
3 ) ある種の抗菌剤抵抗性微生物の占有率が任意に設定した小さな比率である 場合はその存在を無視するが、 その比率を越えている場合はその微生物に対する
抗菌性だけで選定する。
4 ) 優占微生物または特定微生物に対して 「最小有効濃度 X価格」 が最小とな る抗菌剤を選定する。 この場合、 処理コストを加味した選定を行うことができる。 これらの選定方法は、 抗菌剤検索データベースに機能の一部として組み込んで おくこともできる。
選定基準は、 従来の長期にわたる経験の蓄積からとりあえず設定可能であるが、 抗菌剤検索データベースのデータ集積数が少ない初期段階では、 データが蓄積さ れる度に処理成功率を目安に修正することが望ましい。
上記のような方法により抗菌剤を選定することにより、 対象系の微生物相に対 して最も適切な抗菌剤を短時間で、 かつ的確に選定することができる。
本発明の抗菌処理方法は、 上記のようにして選定した抗菌剤を用いて対象系の 抗菌処理を行う抗菌処理方法であるが、 抗菌剤の選定は定期的または任意の時点 で繰り返して行うことができる。
例えば、 対象系から定期的または任意の時点で、 微生物を含む試料を採取し、 前記の方法により試料の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析し、 この解析結 果を前回の解析結果と比較して、 微生物相の変化から抗菌剤効果の変化を監視す る。 微生物相に大きな変化が認められず、 抗菌剤の効果があると認められる場合 は、 その抗菌剤を継続して使用する。 一方、 抗菌剤に抵抗性を有する微生物の出 現傾向が認められた場合には、 前記抗菌剤検索データベースを検索し、 前記出現 傾向が認められた微生物に対して有効な抗菌剤を抽出、 選定する。 例えば、 ある 抗菌剤を連続的に使用している対象系で、 顕著な付着物の増大とともにある特異 的な微生物 (または DNA) の増大が確認されたとき、 抗菌剤検索データベースにこ の微生物 (または DNA) が該当する抗菌剤に有意の抵抗性を持つものとして登録さ れている場合や、 試験結果を行った結果、 該当する抗菌剤に抵抗性を有すること が明らかになった場合など、 微生物相の変化と増大した微生物の抗菌剤抵抗性に 因果関係が認められたら、 抗菌剤に抵抗性を有する微生物の出現傾向が認められ
ると判断することができる。 このようにして、 微生物相の解析および抗菌剤の選 定を繰り返して行うことにより、 その時点における最適な抗菌剤を使用して抗菌 処理を行うことができる。
また本発明の抗菌処理方法では、 抗菌剤を使用している対象系において微生物 の増殖に起因する障害が発生した場合、 その原因が薬剤抵抗性微生物の出現によ るものかどうかを短期間で判断することができるので、 抵抗性微生物であれば抗 菌剤の種類変更で対応し、 そうでなければ抗菌剤の使用方法 (添加濃度、 添加方 法など) か対象系の環境条件変化が原因であるから、 これらを見直すことよって 迅速に解決策を講じることができる。
なお本発明の抗菌処理方法は、 抗菌剤の選定に、 抗菌剤検索データベースに入 力されていない殺菌試験、 増殖抑制試験または菌数測定などの結果を組み合わせ て使用することができる。
參抗菌効果のモニタリング方法
本発明の抗菌効果のモニタリング方法は、 抗菌剤を適用した対象系において、 系内の微生物相変化を DNAの塩基配列に基づいて定期的または任意の時点で監視す ることによって抗菌剤の効果をモニタリングする方法である。
すなわち、 抗菌剤が対象系に使用されてから定期的にまたは適当な期間をおい て任意の時点で、 対象系から微生物を含む試料を採取し、 前記の方法により試料 の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析し、 この解析結果を前回の解析結果と 比較して、 微生物相の変化から抗菌剤効果の変化を監視する。 微生物相に大きな 変化が認められず、 抗菌剤の効果があると認められる場合は、 その抗菌剤を継続 して使用する。 一方、 前回の微生物相解析では存在しなかった微生物が新たに出 現し始めた場合には、 その微生物が現在使用している抗菌剤に対して非感受性微 生物または薬剤抵抗性があるかどうかを抗菌剤検索データベースで照合する。 そ して感受性菌の場合は、 抗菌剤は有効であると判定してそのまま監視を続ける。 一方、 非感受性微生物または薬剤抵抗性微生物の場合は、 その微生物に有効な抗
菌剤を前記の方法により抗菌剤検索データベースを検索し、 有効な抗菌剤を選定 することにより微生物障害を容易にかつ的確に防止することができる。
このようにして抗菌効果をモニタリングすることにより、 対象系において抗菌. 効果が低下したり障害が発生したりするよりも前に対策を講じることができる。 したがって、 このような本発明のモニタリング方法においては、 微生物相解析が モニタリング手段であり、 抗菌剤検索データベースが抗菌剤変更の判定基準を提 供する。
書製紙工程のスライムの抑制方法
本発明め製紙工程のスライムの抑制方法 (以下、 単にスライムの抑制方法とい う場合がある。 ) を適用する対象は、 紙を製造する製紙工程であり、 紙の種類、 製造方法などに制限はない。 製紙工場では 2 , 2—ジプロモー 3 _二トリ口プロ ピオンアミ ド (以下、 D B N P Aと略記する場合がある) を主成分とするスライ ムコントロール剤を白水処理剤として使用し、 スライム抑制処理が広く行われて いるが、 このような製紙工場の製紙工程に対して本発明のスライムの抑制方法は 好適に適用することができる。
本発明のスライムの抑制方法に用いられるスライムコントロール剤は特に制限 されず、 公知のスライムコントロール剤が使用でき、 各々の製紙工程に好適な薬 剤を選定し、 白水処理剤おょぴ発生源処理剤として用いることができる。 白水処 理剤および発生源処理剤はその薬剤成分が無機化合物からなるものであっても、 有機化合物からなるものであってもよい。 またこれらスライムコントロール剤成 分は単一の薬剤からなるものであっても、 複数の薬剤成分を配合したいわゆる複 合剤であってもよい。 さらにスライムコントロール剤の剤型にも制限はなく、 液 剤、 フロアプル剤、 水和剤などを用いることができる。 さらに白水処理剤と発生 源処理剤との組合せは制限されず、 必ずしも相乗効果を奏する組合せでなくても よい。
スライムコントロール剤の具体的なものとしては次の無機系化合物および有機
系スライムコントロール剤などが例示される。
(1) 無機系スライムコントロール剤
例えば、 塩素、 次亜塩素酸塩、 二酸化塩素、 塩素化シァヌル酸、 塩素化ヒダン トイン、 臭素、 臭素イオンと次亜塩素酸塩との反応生成物など。
(2) 有機系スライムコントロール剤
1) 四級アンモニゥム塩系界面活性剤 :例えば、 ジデシルジメチルアンモニゥ ムクロリ ド (以下、 DDACと略記する場合がある) など。
2) イソチアゾロン類:例えば、 5—クロ口一 2—メチルー 4—イソチアゾリ ン一 3—オン、 2—メチル _ 4一イソチアゾリン一 3—オン、 5—クロ口一 2— n—ォクチルイソチアゾリン _ 3—オン、 1, 2—べンゾイソチアゾリン一 3— オン、 およびこれらの金属錯塩など。
3) チオシァネート類:例えば、 メチレンビスチオシァネートなど。
4) ブロム酢酸エステル類:例えば、 1 , 4一ビス (プロモアセトキシ) 一 2 —ブテン、 1, 2_ビス (プロモアセトキシ) ェタン、 ビス (プロモアセトキ シ) プロパンなど。
5) プロモシァノ化合物:例えば、 2, 2—ジブロモ _ 3—ユトリロプロピオ ンアミ ド、 1, 2—ジプロモー 2, 4—ジシァノブタンなど。
6) プロモニトロ化合物:例えば、 2, 2—ジプロモ— 2 トロー 1一エタ ノーノレ、 2—プロモー 2—ニトロプロパン一 1, 3—ジォーノレ、 ]3—プロモュト ロスチレン、 2, 2—ジブロモ一 3—二トリ口プロピオンアミ ド (D BN PA) など。
7) ォキシム類:例えば、 モノクロログリオキシム、 ジクロログリオキシム、 2 - (p—ヒ ドロキシフエ二ノレ) グリオキシヒ ドロキシモイノレクロライ ド、 α— ク口口べンズァノレドキシム、 α—クロ ロべンズァノレドキシムァセテートなど。
8) アルデヒ ド類:例えば、 オルトフタルアルデヒ ド、 ダルタルデヒ ド、 ホル ムアルデヒ ドなど。
9 ) その他:例えば、 2, 2—ジクロロ一 1, 2—ジチオール一 3—オン、 2 , 4 , 5 , 6—テトラクロ口イソフタ口-トリル、 3 , 3 , 4, 4ーテトラクロ口 ヒ ドロキシチォフェン一 1 , 1—ジォキシドなど。
抵抗性微生物の発生源が複数存在する製紙工程においては、 それぞれの発生源 に対して好適な発生源処理剤を選定して使用することが好ましい。 また白水処理 剤に抵抗性を有する抵抗性微生物が複数存在する場合は、 それぞれの抵抗性微生 物に対して抗菌作用を有する発生源処理剤を選定して使用するのが好ましい。 ま た、 製紙薬品として用いるデンプン調製系や染料系などに防腐目的あるいは変質 防止のため既にスライムコントロール剤が使用されている場合であっても、 そこ がなお白水処理剤の抵抗性微生物の発生源である場合には、 発生源処理剤を選定 し、 追加添加するのが好ましい。
本発明のスライム抑制方法では、 試料の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解 析し、 解析された微生物に対して最適なスライムコントロール剤をデータベース から選定する。 この微生物相の解析およびスライムコントロール剤の選定は、 前 記抗菌剤の選定方法で説明した微生物解析工程おょぴ抗菌剤選定工程における方 法をそのまま利用して行うことができる。 なお、 抗菌剤の選定方法において抗菌 剤検索データベースをスライムの抑制方法の説明では、 薬剤検索データベースと 称している。
本発明のスライム抑制方法は、 まず微生物解析工程として、 スライムコント口 —ル剤 (白水処理剤) を用いてスライムを抑制している製紙工程から試料を採取 する。 そして各試料について、 DNAの塩基配列による微生物相解析によって、 微生 物相を解析する。 この場合微生物相を構成する微生物を微生物名またはァクセッ シヨンナンバー (微生物名に相当する) 毎に前記方法で調べる。 通常これら一連 の試験操作は 2〜7日間で終了する。 なお、 微生物解析工程では、 試料中に含ま れる微生物の種類を同定し、 含有量の定量は省略することもできる。
試料を採取する場所は限定されず、 製紙工程の任意の場所から試料を採取する
ことができるが、 2箇所以上、 好ましくは 5〜2 0箇所から試料を採取する。 試 料の採取場所が多いほど、 抵抗性微生物の発生源を正確に判定することができる。 具体的には、 C G P (Chemical Ground Pulp) パノレパー、 C G Pチェスト、 L B K P (Laubholz Bleached Kraft Pulp) ノ ノレパー、 L B K Pチェス トなどから 構成されるパルプ原料調製系; ゥエツト損紙パルパ一、 ゥ ット損紙チェスト、 ドライ損紙パルパ一、 ドライ損紙チェストなどから構成される損紙系;サイズ剤 タンク、 硫酸バンドタンク、 染料タンク、 スライムコントロール剤タンク、 内添 デンプン糊液タンクなどから構成される製紙薬剤調製系; ミキシングチ ス ト、 マシンチェス ト、 種箱などから構成される調成系;抄紙機、 スク リーン装置、 ィ ンレッ ト、 セーブオール、 白水サイロなどから構成される白水循環系;脱水機、 クリア白水ピットなどから構成される白水回収系等から、 スライム、 白水、 槽内 液などを試料として採取することができる。
次いで抵抗性判定工程として、 前記微生物解析工程で検出された微生物が、 現 在使用しているスライムコントロール剤 (白水処理剤) に対して抵抗性を有する か否かを判定する。 例えば、 前記微生物解析工程で検出された微生物または現在 使用しているスライムコントロール剤を検索キーとして、 前記薬剤検索データべ ースを検索し、 検索対象の微生物に対して現在使用しているスライムコントロー ル剤の有効濃度が記録されている場合は、 検索対象の微生物は現在使用している スライムコントロール剤 (白水処理剤) に対して抵抗性を有さず、 有効濃度が記 載されていない場合は抵抗性を有すると判定することができる。 また公知の文献、 または培養試験の結果などから、 抵抗性の有無を判定することもできる。 さらに 白水処理剤を使用しているにも関わらず、 前回の解析結果と比較して特定の微生 物に増殖傾向が認められる場合、 その微生物は抵抗性ありと判定することもでき る。
次いで発生源判定工程として、 前記抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定し た抵抗性微生物の存在比率が高い試料の採取場所を抵抗性微生物の発生源と判定
する。 発生源は複数存在する場合もある。 前記微生物解析工程において、 試料の 微生物相を解析している場合、 各微生物の構成比または含有量は既に判明してい るので、 新たに抵抗性微生物の存在比率を求める必要はなく、 微生物解析工程に おいて判明している存在比率から発生源を判定することができる。 一方、 微生物 解析工程において微生物の種類だけを解析している場合は、 抵抗性微生物が検出 された試料について、 その存在比率を前記方法により求め、 その結果に基づいて 発生源を判定する。
次いでスライムコントロール剤選定工程として、 前記抵抗性判定工程で判定し た抵抗性微生物を検索キーとして、 前記薬剤検索データベースを検索し、 抵抗性 微生物に対して有効濃度が入力されているスライムコントロール剤を抽出する。 この場合、 環境条件などを検索キーとして入力し、 スライムコントロール剤をさ らに絞り込むことができる。 抽出結果はディスプレイなどの出力装置に出力させ ることができる。 抽出されたスライムコントロール剤が 1種類の場合はそのスラ ィムコントロール剤を発生源処理剤として選定し、 複数の場合はその中から選定 する。 抽出されたスライムコントロール剤の中から実際に発生源処理剤として使 用するスライムコント口ール剤の選定方法は任意であり、 人が選定することもで きるし、 コンピュータで自動的に行うこともできる。 具体的な選定方法としは、 例えば次のような方法などがあげられる。
1 ) 抵抗性微生物に対して最も低い最小有効濃度のスライムコントロール剤を 選定する。
2 ) 抵抗性微生物に対して 「最小有効濃度 X価格」 が最小となるスライムコン トロール剤を選定する。 この場合、 処理コストを加味した選定を行うことができ る。
これらの選定方法は、 薬剤検索データベースに機能の一部として組み込んでお くこともできる。
選定基準は、 従来の長期にわたる経験の蓄積からとりあえず設定可能であるが、
薬剤検索データベースのデータ集積数が少ない初期段階では、 データが蓄積され る度に処理成功率を目安に修正することが望ましい。
次いで発生源処理剤添加工程として、 前記発生源判定工程で判定した抵抗性微 生物の発生源に、 前記スライムコントロール剤選定工程で選定した新しいスライ ムコントロール剤、 すなわち現在使用している白水処理剤とは別の発生源処理剤 剤を添加する。
なお本発明ののスライムの抑制方法では発生源判定工程は省略することも可能 であり、 この場合抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定した抵抗性微生物の存 在比率が高い試料の採取場所に、 スライムコントロール剤選定工程で選定した新 しいスライムコントロール剤 (発生源処理剤) を添加することもできる。
上記のような方法によれば、 抵抗性微生物に対して最も適切なスライムコント ロール剤を短時間で、 かつ的確に選定することができ、 しかも発生源に対して添 加することができるので添加量を最小限にすることができる。
本発明のスライム抑制方法は、 微生物解析工程など一連の工程は定期的または 任意の時点で繰り返して行うことができる。
例えば、 製紙工程から定期的または任意の時点で、 試料を採取し、 前記の方法 により試料の微生物相を DNAの塩基配列に基づいて解析し、 この解析結果を前回の 解析結果と比較して、 微生物相の変化からスライムコントロール剤効果の変化を 監視する。 微生物相に大きな変化が認められず、 スライムコントロール剤の効果 があると認められる場合は、 そのスライムコントロール剤を白水処理剤として継 続して使用する。 また抵抗性微生物の存在比率が減少した場合は、 発生源処理剤 の添加を中止する。 さらに新たな抵抗性微生物が検出された場合、 その微生物に 対する新しい発生源処理剤を選定して添加する。
このようにして、 微生物相の解析および発生源処理剤の選定を繰り返して行う ことにより、 その時点における最適なスライムコントロール剤を使用してスライ ム抑制処理を行うことができる。
また本発明のスライム抑制方法では、 スライムコントロール剤を使用している 製紙工程において微生物の増殖に起因する障害が発生した場合、 その原因が薬剤 抵抗性微生物の出現によるものかどうかを短期間で判断することができるので、 抵抗性微生物であればスライムコント口ール剤の種類変更で対応し、 そうでなけ ればスライムコントロール剤の使用方法 (添加濃度、 添加方法など) か環境条件 変化が原因であるから、 これらを見直すことよって迅速に解決策を講じることが できる。
なお本発明のスライム抑制方法は、 白水処理剤の選定に前記薬剤検索データべ ースを利用することもできる。 例えば、 製紙工程において優占微生物となってい る微生物を検索キーとして薬剤検索データベースを検索し、 抽出されたスライム コントロール剤の中から白水処理剤として使用するスライムコントロール剤を選 定することができる。
また本発明のスライム抑制方法は、 スライムコントロール剤の選定に、 薬剤検 索データベースに入力されていない殺菌試験、 増殖抑制試験または菌数測定など の結果を組み合わせて使用することができる。 ' 秦製紙工程における製品の付着物の分析方法
本発明の製紙工程における製品の付着物の分析方法 (以下、 単に分析方法とい う場合がある。 ) を適用する対象は、 紙を製造する製紙工程において製造された 紙製品であり、 紙の種類、 製造方法などに制限はない。 製紙工程は、 通常、 パル プに填料や薬品を添加して紙の原料をつくる調成工程、 抄紙機で紙を抄く抄紙ェ 程、 および紙の表面を塗料等で覆って印刷適性をよくする塗工工程などの工程に さらに分類されるが、 このような工程を経て製造された紙製品について分析する ことができる。
本発明において製品に付着した付着物から微生物に由来する DNAを抽出する方法 は限定されず、 例えば紙製品から付着物 (欠点) または付着物を含む部分を切り 取り、 これを裁断し、 緩衝液などの抽出液中に充分浸漬した後、 機械的破砕など
物理的処理、 または界面活性剤処理や酵素処理などの化学的処理を単独または組 み合わせて行い、 付着物中の微生物細胞より DNAを抽出する方法などが採用できる。 この場合、 微生物は死滅していても DNAの抽出は可能である。
上記物理的処理の具体的な方法としては超音波破砕や凍結融解法;微細なガラ スまたは鉱物性のビーズなどを用いたホモジナイゼーシヨンなどがあげられる。 また化学処理の具体的な方法としては、 リゾチーム等の容菌酵素、 セルラーゼ、 アルギン酸リアーゼ等の多糖類分解酵素、 プロテアーゼ、 ぺプチダーゼ等のタン パク質分解酵素などによる酵素処理;ラウリル硫酸ナトリゥム等の陰イオン性界 面活性剤、 T r i t o n— X 1 0 0等の非イオン性界面活性剤などによる処理が あげられる。 このような物理的または化学的処理により、 DNAは溶解物として得ら れるが、 さらに精製するのが好ましい。 溶解物からの DNAの精製は、 エタノール、 イソプロパノール等の有機溶媒による沈殿回収;ガラスビーズや樹脂への吸着を 利用した方法など公知の方法が利用できる。
抽出した DNAから微生物の性状、 構成比を分析するには、 微生物を特定できる塩 基配列の相対的含量を調べることによって行われる。 また優占微生物を特定する には、 上記方法で調べた相対的含量の多い微生物を優占微生物とすることができ る。 このような微生物相の解析は、 前記抗菌剤の選定方法で説明した微生物解析 工程における方法をそのまま利用して行うことができる。 すなわち、 微生物を特 定できる DNAとしては、 解析対象とするすべての微生物が保有している DNAであれ ば差し支えないが、 1 6 S r DNA、 1 8 S r DNA, 2 3 S r DNAなどのリボソーム R N A ( r DNA) をコードする DNAや、 それらのスぺーサー配列、 g y r Eなど、 塩 基配列から微生物を特定できるデータベースがすでに構築されている DNAが望まし い。
ドットハイプリダイゼーションゃ DNAチップを用いた効率的ハイプリダイゼーシ ヨン方法によって、 抽出した DNAを 接ターゲットにして、 DNAの種類や相対的な 量を調べることもできるが、 ポリメラーゼ連鎖反応 (P C R ) 等の試験管内 DNA増
幅方法によって対象 DNAを増幅させてから調べる方法が一般的である。 たとえば 1 6 S rDNAであれば、 大多数の微生物に共通に存在する配列をデザインしたュニバ ーサルプライマーを用いて、 抽出された全 DNAを錄型として 1 6 S rDNAを混合物 として増幅することができる。
抽出された 1 6 S rDNAは付着物の原因となる 1種以上の微生物に由来する 1種 以上の混合物であるので、 この 1 6 S rDNAの混合物を増幅させ、 増幅させた DNA の構成比を特定するとともに、 それらの DMから微生物の名称を特定することによ つて、 付着物の微生物相または優占微生物を特定することができる。 DNAの構成比 を求めるには公知の方法が利用でき、 例えば DGGE法 (Denatured Gradient G el Electrophoresis: Muyzerら、 Applied and environmental Microbio丄 ogyg志、 5 9卷、 6 9 5〜 700ページ、 1 9 9 3年) 、 TGGE法 (Temperature Grad ient Gel Electrophoresis: Eichnerら、 Applied and Environmental Microbiol ogy誌、 6 5卷、 1 0 2〜: 1 0 9ページ、 1 9 9 9年) 、 S S C P法 (Single St rand Conformational Polymorphism: schwiegerら、 Applied and Environmental Microbiology誌、 64卷、 4 8 70〜 48 76ページ、 1 9 9 8年) 等の電気泳 動法や TRF L P法 (Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism". L iuら、 Applied and Environmental Microbiology 、 6 3卷、 4 51 6〜4 5 2 2ページ、 1 9 9 7年) 等の分離手法を用いることができる。 微生物固有の増幅 産物量を特定し、 全増幅産物量に対する割合として微生物の構成比を概算するこ とができる。 上述の電気泳動法や TRF LP法を用いた場合には、 増幅産物量は DNAのバンドの強度や TRFに相当する蛍光強度として捉えることができ、 これら の強度の比を微生物の構成比として捉えることができる。
また、 大腸菌等の確立された宿主ベクター系を用いて、 増幅産物をランダムク 口 ユンク (Dunbarら、 Applied and Environmental Microbiology!^ 6 5 、 1 6 6 2〜 1 6 6 9ページ、 1 9 9 9年) し、 得られたクローンの遺伝子解析と それらの構成比から、 微生物相を特定することも可能である。
DNAからの微生物の特定は、 DNAの塩基配列を DNAシークェンサ一等を用いて決定 し、 その配列を後述のデータベースと比較することにより、 該当する DNAを保有す る微生物の分類上の位置付けや、 名称を明らかにすることができる。 単一種の DN A分子が全体の 9割程度を占める試料であれば、 増幅産物の塩基配列を直接決定す ることで優占微生物の塩基配列を決定することができる。 電気泳動法等により多 様な DNA分子を分離した場合には、 該当するバンド (DNA) をゲルから回収し、 再 度 P C Rで増幅したのち、 それぞれの DNAについて、 DNAシークェンサ一で塩基配 列を決定することができる。
前記データベースとしては、 G e n B a n k、 E M B L、 D D B Jなどの公的 データベースやミシガン州立大学に設置されている RibosoRial Database Project などがあげられる。 検索方法は F A S T A、 B L A S T等の既存のプログラムに よって短時間に効率的に行うことができる。 また、 MicroSeq 16SrDNA Sequence Database (アプライドバイオシステムズジャパン社) などの商用の検素データべ ース MicroSeq Analysis Software (ァプフィ ドノヽィォシスアムズシヤノ ン社) などの市販のソフトウェアにより検索することもできる。 またこうしたデータべ ースを自身で構築し、 それを利用してもよい。 またデータベースから微生物の名 称が特定できない場合、 最も相同性の高い近縁の微生物または新種の微生物であ ると判断することができる。
上記のようにして付着物の微生物相または優占微生物を分析することにより、 微生物を培養することなく、 DNAの塩基配列を指標として、 原因微生物の名称、 構 成比または優占微生物などを簡単に、 かつ確実に特定することができる。
秦付着原因の探索方法
本発明の付着原因の探索方法は、 上記分析方法で特定した付着物の微生物相ま たは優占微生物と、 製紙工程内に発生したスライムの微生物相または優占微生物 とを比較し、 付着物の微生物相または優占微生物と一致または類似する微生物相 または優占微生物を有するスライムを、 付着物の原因となったスライムと特定す
る方法である。 スライムの微生物相または優占微生物は DNAの塩基配列を指標にし て、 付着物の微生物相または優占微生物を特定した前記方法と同じ方法により特 定することができる。
スライムをサンプリングする場所は限定されず、 製紙工程の任意の場所から採 取することができるが、 2箇所以上、 好ましくは 5〜2 0箇所から採取する。 ス ライムの採取場所が多いほど、 付着物の原因となったスライムを正確に判定する ことができる。
具体的には、 C G P (Chemical Ground Pulp) パノレパー、 C G Pチェス ト、 L B K P (Laubholz Bleached Kraft Pulp) パルパ一、 L B K Pチェストなどから 構成されるパルプ原料調製系; ウエット損紙パルパ一、 ウエット損紙チ スト、 ドライ損紙パルパ一、 ドライ損紙チェストなどから構成される損紙系;サイズ剤 タンク、 硫酸バンドタンク、 染料タンク、 スライムコントロール剤タンク、 内添 デンプン糊液タンクなどから構成される製紙薬剤調製系; ミキシングチヱスト、 マシンチヱスト、 種箱などから構成される調成系;抄紙機、 スクリーン装置、 ィ ンレッ ト、 ヘッドボックス、 セーブオール、 白水サイロなどから構成される白水 循環系;脱水機、 クリァ白水ピット、 C P (Consi stency Profiling Control Sy stem) チューブなどから構成される白水回収系; ワイヤー、 ホイールなどから構 成される抄紙機周辺機器等からスライムを採取することができる。 また白水、 槽 内液などを採取し、 これらの試料の微生物相または優占微生物を前記分析方法で 分析することにより、 スライムの発生場所をある程度予測し、 その場所から重点 的にスライムを採取することもできる。
本発明の付着原因の探索方法は、 前記分析方法で特定した付着物の微生物相ま たは優占微生物と、 製紙工程内に発生したスライムの微生物相または優占微生物 とを比較することにより、 付着物の原因となったスライムを特定しているので、 紙製品の欠点の原因となっている微生物が高濃度に存在する場所や発生源を簡単 に、 かつ確実に特定することができる。
暴微生物制御方法
本発明の微生物制御方法は、 上記探索方法で特定したスライムの付着場所を、 付着物の原因となったスライムの発生場所であると判定し、 このようにして特定 したスライムの発生場所に対して殺菌 ·防腐処理を行う微生物制御方法である。 殺菌 ·防腐処理は、 スライムを構成する微生物、 特に優占微生物に対して殺菌 - 防腐効果を有するスライムコントロール剤を添加するなどの方法により行うこと ができる。 スライムコントロール剤は抗菌試験等により決定することができる。 また、 原因微生物の名称が特定されている場合は、 その微生物に対して殺菌 ·防 腐効果を有することが知られている薬剤を使用することもできる。 またスライム コントロール剤は前記抗菌剤の選定方法で説明した抗菌剤選定工程の方法を利用 して抗菌剤検索データベースから選定することもできる。
このような微生物制御方法では、 原因微生物に対して効果的な薬剤を的確に選 択して、 原因微生物が高濃度に存在する場所や旺盛に繁殖している場所に対して、 重点的に、 かつ必要最小限の薬剤で殺菌、 防腐処理を行うことができるので、 経 験的かつ状況的判断に頼ることなく、 効率的、 合理的、 かつ低コストで欠点の発 生を防止することができる。
以上の通り、 本発明の抗菌剤の選定方法は、 DNAの塩基配列に基づいて試料の微 生物相を解析し、 この微生物相に最適な工業用抗菌剤をデータベースを利用して 選定しているので、 最適な抗菌剤を簡単に、 かつ短時間で的確に選定することが できる。
本発明の抗菌処理方法は、 DNAの塩基配列に基づいて対象系の微生物相を解析し、 この微生物相に最適な工業用抗菌剤をデータベースから選定して使用するように しているので、 対象系の微生物相に応じて最適な工業用抗菌剤を短時間で選定し て効率よく抗菌処理することができる。
本発明の抗菌効果のモニタリング方法は、 DNAの塩基配列に基づいて対象系の微 生物相を解析し、 微生物相の変化から抗菌剤の効果を監視しているので、 抗菌剤
の効果が発揮されているかどうかを短時間で簡単に、 かつ的確に把握することが でき、 微生物の増殖に起因するトラブルを事前に防止することができる。
本発明のスライム抑制方法は、 DNAの塩基配列に基づいて対象系の微生物相を解 析し、 スライムコントロール剤に対する抵抗性微生物が認められる場合には、 そ の抵抗性微生物に最適なスライムコント口ール剤をデータベースから選定してそ の発生源に添加するようにしているので、 抵抗性微生物に対して最も適切なスラ ィムコントロール剤を短時間で、 かつ的確に選定することができ、 しかも添加量 を最小限にして効率よくスライムの抑制を行うことができる。
本発明の製紙工程における製品の付着物の分析方法は、 付着物から微生物に由 来する DNAを抽出し、 得られた DNAの塩基配列を指標にして付着物の微生物相また は優占微生物を分析しているので、 紙製品の欠点の原因となっている微生物を簡 単に、 かつ確実に特定することができる。
本発明の製紙工程における製品の付着物の付着原因の探索方法は、 付着物から 微生物に由来する DNAを抽出し、 得られた DMの塩基配列を指標にして付着物の微 生物相または優占微生物を分析し、 この微生物相または優占微生物と、 製紙工程 内に発生したスライムの微生物相または優占微生物とを比較することにより、 付 着物の原因となったスライムを特定しているので、 紙製品の欠点の原因となって いる微生物の発生場所を簡単に、 かつ確実に特定することができる。
本発明の製紙工程における微生物制御方法は、 付着物から微生物に由来する DN Aを抽出し、 得られた DNAの塩基配列を指標にして付着物の微生物相または優占微 生物を分析し、 この微生物相または優占微生物と、 製紙工程内に発生したスライ ムの微生物相または優占微生物とを比較することにより、 付着物の原因となった スライムの発生場所を特定し、 特定したスライムの発生場所に対して殺菌 ·防腐 処理を行うので、 紙製品の欠点の原因となっている微生物の発生場所を簡単に、 かつ確実に特定し、 これに基いて紙製品の欠点の発生を簡単に、 かつ確実に低減 させることができる。
次に本発明の抗菌処理方法を図面を用いて説明する。 ―
図 1は本発明の抗菌処理方法を適用する製紙装置の系統図であり、 白水系を抗 菌処理する場合の例である。
図 1の装置において、 1は抄紙機、 2は種箱、 3は白水ピット、 4は微生物相 解析系、 5は抗菌剤選定系、 6は制御系である。 7 a、 7 b · · ·は抗菌剤貯槽 であり、 抗菌剤の種類毎に複数設けられている。
図 1の装置では次のようにして紙が製造される。 すなわち、 連絡路 1 1からパ ルプスラリーが種箱 2で流量調整されて導入され、 ポンプ 1 2により連絡路 1 3、 1 4を通ってスクリーン装置 1 5に送られ、 夾雑物が除かれた後、 連絡路 1 7か らインレッ ト 1 8に送られる。 このパルプスラリーがインレッ ト 1 8から抄紙機 1のワイヤー部 2 1上に供給される。 ワイヤー部 2 1を通過した白水はセーブォ ール 2 2で受けた後、 連絡路 2 3から白水ピット 3に集められる。 白水ピット 3 の白水は、 一部は連絡路 1 4中でパルプスラリーと混合され、 循環使用される。 残部は排水路 2 4から排出される。 ワイヤー部 2 1上に形成された紙層は後工程 の乾燥工程 (図示せず) などを経て紙製品とされる。
上記のような製紙装置を抗菌処理するには、 例えば白水ピット 3から微生物を 含む試科を採取し、 微生物相解析系 4で微生物相の解析を行い、 その結果に基づ いて抗菌剤選定系 5で抗菌剤を選定する。 微生物相解析系 4における微生物相の 解析およぴ抗菌剤選定系 5における抗菌剤の選定は、 例えば図 2に示すフローに より行われる。
抗菌剤選定系 5の結果が制御系 6にインプットされ、 選定された抗菌剤が指定 された濃度となるように、 抗菌剤貯槽 7 a、 7 b · · ·から薬注路 2 7 a、 2 7 b · · ·を通して種箱 2に添加される。
このようにして添加された抗菌剤がパルプスラリ一おょぴ白水に溶解して製紙 装置を循環することにより、 装置全体が抗菌処理される。 抗菌剤の濃度の調整は、 目的の濃度となるように、 制御系 6から信号をポンプ 2 8 a、 2 8 b - · 'に送
り、 添加量を制御することにより自動的に行うこともできる。
白水ピット 3からの試料の採取は定期的または任意の時点で行い、 続いて微生 物相解析、 抗菌剤の選定を行う。 これにより、 その時点における最も適した抗菌 剤が選定され、 最も効果的に抗菌処理を行うことができる。
図 1では白水ピット 3から試料を採取しているが、 スクリーン装置 1 5、 イン レット 1 8またはセーブオール 2 2などから試料を採取してもよい。 また図 1で は抗菌剤貯槽 7 a、 7 b · · 'は 3個設けられているが、 2個または 4個以上で あってもよい。
図 2は図 1の微生物相解析系 4および抗菌剤選定系 5における処理の流れを示 すフローチャートであり、 微生物の生育に及ぼす環境条件ごとに微生物に対する 抗菌剤の有効濃度のデータが蓄積されており、 指定された環境条件の中から抗菌 剤を絞り込むことができる抗菌剤検索データベースを使用した場合の例である。 図 2のフローチャートでは、 ステップ 3 1において対象系から微生物を含む試 料を採取し、 ステップ 3 2において試料のコロニー数と全微生物数を測定する。 全微生物数は、 例えば試料中の細胞をァクリジンオレンジや D A P Iなどで染色 後、 蛍光顕微鏡下に直接計測するなどの公知の方法により測定することができる。 なお、 既に何度も測定を行っている対象系であって、 環境条件から結果が推測で きる場合はステップ 3 2は省略することもできる。
次にステップ 3 3において、 コ口-一数と全微生物数とを比較し、 ほぼ等しい 場合はステップ 3 4においてコロニー形成微生物の rDNAの解析を行う。 一方、 等 しくない場合はステップ 3 5においてコロニーを形成できない微生物を含む全微 生物の rDNAの解析を行う。
次にステップ 3 6において、 上記で解析した塩基配列に基づいて微生物検索デ ータベースを検索する。 この場合、 複数の微生物検索データベースを検索するこ ともできる。 この検索結果に基づいて、 ステップ 3 7において微生物を同定 (微 生物相の決定) する。 この場合、 微生物名を決定 ることができない場合、 独自
に微生物番号を付与することもできる。
次にステップ 3 8において、 ステップ 3 7において同定された微生物名、 ァク セッションナンバーまたは独自に付与した微生物番号のいずれかを検索キーとし て抗菌剤検索データベースを検索する。 ステップ 3 9で抗菌剤が抽出された場合 は、 ステップ 4 0において環境条件を検索キーとして抗菌剤を絞り込み、 成功例 がある場合はステップ 4 1においてその抗菌剤を抗菌処理に用いる薬剤として選 定する。 この時、 抗菌剤濃度も決定される。 複数の抗菌剤が抽出される場合は、 前記のようにコストなどを考慮して選定することができる。
一方、 ステップ 3 9において抗菌剤検索データベースで抗菌剤が抽出されない 場合は、 ステップ 4 2に進みコロニー形成微生物かどうかをステップ 3 3の結果 を見返すことにより判定し、 コロニー形成微生物の場合はステップ 4 3において 室内で各種抗菌剤に対する培養試験を行い、 その結果から抗菌剤を選定する (ス テツプ 4 4 ) 。 またステップ 4 2でコロニー非形成微生物と判定される場合は、 ステップ 4 5において過去の経験などから抗菌剤を選定する。
上記のようにして選定した抗菌剤を用いて、 ステップ 4 6において抗菌処理を 行う。
次にステップ 4 7において処理効果を判定し、 抗菌効果が良好でない場合はそ の結果を抗菌剤検索データベースに入力し (ステップ 4 8 ) 、 もう一度ステップ 3 1に戻り試科の採取から操作を繰り返す。 同定される微生物が同じ場合、 ステ ップ 4 0において絞り込まれる抗菌剤の中から前回とは別の抗菌剤を選定する。 なお、 ステップ 3 4または 3 5において DNA解析の結果が前回と同じ場合、 ステツ プ 3 6の微生物検索データベースの検索は省略することもできる。
一方、 ステップ 4 7において処理効果が良好と判定される場合は、 その結果を 抗菌剤検索データベースに入力し (ステップ 4 9 ) 、 任意の期間を置いた後 (ス テツプ 5 0 ) 、 ステップ 3 1から操作を繰り返す。
なお、 図 2のフローでは、 ステップ 3 9において抗菌剤が抽出されない場合、
コ口ニー形成微生物では培養試験を行つて抗菌剤を選定しているが、 過去の経験 などから選定することもできる。
上記の方法により、 抗菌剤検索データベースに結果を蓄積しながら処理を継続 していくに従って、 ステップ 3 9および 4 0で N Oと判定される割合は次第に減 少し、 抗菌剤検索データベースを検索するだけで、 適切な抗菌剤を選択できるよ うになる。
次に本発明のスライム抑制方法を図面を用いて説明する。
図 3は本発明のスライム抑制方法を適用する製紙装置の系統図である。
図 3の装置において、 5 1は。0 ?パルパー、 5 2は C G Pチェス ト、 5 3は L B K Pパルパ一、 5 4は L B K Pチェス トであり、 これらがパルプ原料調製系 を構成している。
5 6はウエット損紙パルパ一、 5 7はウエット損紙チェスト、 5 8はドライ損 紙パルパ一、 5 9はドライ損紙チヱストであり、 これらが損紙系を構成している。
6 1はサイズ剤タンク、 6 2は硫酸バンドタンク、 6 3は染料タンク、 6 4は 白水処理剤タンク、 6 5は内添デンプン糊液タンクであり、 これらが製紙薬剤調 製系を構成している。
6 7はミキシングチェス ト、 6 8はマシンチェス ト、 6 9は種箱であり、 これ らが調成系を構成している。
7 1は抄紙機、 7 2はスクリーン装置、 7 3はインレッ ト、 7 4はセーブォー ノレ、 7 5は白水サイロであり、 これらが白水循環系を構成している。
7 7は分離濃縮装置、 7 8はクリア白水ピットであり、 これらが白水回収系を 構成している。 8 1は工業用水ピット、 8 2は外添デンプン糊液タンクである。 図 3の装置では次のようにして紙が製造される。 すなわち、 紙の原料となるパ ルプが C G Pパルパ一 5 1、 L B K Pパルパ一 5 3、 ゥエツト損紙パルパ一 5 6、 ドライ損紙パルパ一 5 8に導入されて離解され、 各チヱスト 5 2、 5 4、 5 7、 5 9を経てミキシングチェスト 6 7に導入される。 ここでサイズ剤 9 1および硫
酸バンド 9 2が添加混合され、 さらにマシンチェスト 6 8で内添デンプン糊液 9 3が添加されてパルプスラリー 9 4が調製される。 このパルプスラリー 9 4が種 箱 6 9に導入され、 染料 9 5、 白水処理剤 9 6が添加され、 流量調整されポンプ 1 0 1によりスクリーン装置 7 2に送られ、 夾雑物が除かれた後、 インレツト 7 3に送られる。
このパルプスラリー 9 4がインレッ ト 7 3から抄紙機 7 1のワイヤー部 1 0 2 上に供給される。 ワイヤー部 1 0 2を通過した白水はセーブオール 7 4で受けら れ後、 白水サイロ Ί 5に集められる。 白水サイロ 7 5の白水 1 0 3は、 一部は連 絡路 1 0 4中でパルプスラリー 9 4と混合され、 循環使用される。 残部は分離濃 縮装置 7 7に送られて脱水され、 回収された原料はミキシングチヱス ト 6 7に戻 されて再利用され、 ろ液はクリア白水ピット 7 8に集められ、 各工程で再利用さ れる。 ワイヤー部 1 0 2上に形成された紙層は後工程のプレスパート 1 0 5、 ド ライパート (図示せず) などを経て紙製品とされる。 プレスパート 1 0 5、 ドラ ィパートで発生する損紙はそれぞれゥエツト損紙、 ドライ損紙としてウエット損 紙パルパ一 5 6、 ドライ損紙パルパ一 5 8に送られ、 再利用される。
上記のようにして紙が製造される製紙工程では、 白水処理剤タンク 6 4から添 加される白水処理剤 9 6、 例えば 2, 2—ジブロモ一 3—二トリ口プロピオンァ ミ ド (D B N P A) がパルプスラリー 9 4および白水 1 0 3に溶解して白水循環 系を循環し、 白水循環系のスライム抑制が行われる。 またクリア白水ピット 7 8 に集められたクリア白水 1 0 6が再利用されることにより、 再利用先のスライム も抑制される。
このようにしてスライムの抑制が行われている製紙工程において、 任意の 2箇 所以上から試料を採取し、 各試科ごとの微生物相を DNAの塩基配列に基づいて前記 方法により解析する (微生物解析工程) 。 例えば、 C G Pチヱス ト 5 1、 L B K Pチェス ト 5 3、 ゥヱット損紙チェス ト 5 6、 ドライ損紙チェス ト 5 8、 サイズ 剤タンク 6 1、 染料タンク 6 3、 内添デンプン糊液タンク 6 5、 ミキシングチェ
ス ト 6 7、 マシンチェス ト 6 8、 白水サイロ 7 5、 クリア白水ピット 7 8、 工業 用水ピット 8 1、 外添デンプン糊液タンク 8 2などから試料を採取する。
次いで抵抗性判定工程として、 前記微生物解析工程で検出された微生物が、 現 在使用している白水処理剤 9 6に対して抵抗性を有するか否かを判定する。 例え ば、 前記微生物解析工程で検出された微生物または現在使用している白水処理剤 9 6を検索キーとして、 前記薬剤検索データベースを検索し、 検索対象の微生物 に対して現在使用している白水処理剤 9 6の有効濃度が記録されている場合は、 検索対象の微生物は現在使用している白水処理剤 9 6に対して抵抗性を有さず、 有効濃度が記載されていない場合は抵抗性を有すると判定することができる。 次いで発生源判定工程として、 前記抵抗性判定工程で抵抗性を有すると判定し た抵抗性微生物の存在比率が高い試料の採取場所を抵抗性微生物の発生源と判定 する。 例えば、 D B N P Aに抵抗性の微生物の存在比率がウエット損紙チヱスト 5 6で最も高い場合は、 その抵抗性微生物の発生源はゥヱット損紙チェスト 5 6 であると判定することができる。 発生源は複数存在する場合もある。
次いでスライムコントロール剤選定工程として、 前記抵抗性判定工程で判定し た抵抗性微生物を検索キーとして、 前記薬剤検索データベースを検索し、 抵抗性 微生物に対して有効濃度が入力されているスライムコントロール剤を抽出する。 この場合、 環境条件などを検索キーとして入力し、 スライムコントロール剤をさ らに絞り込むのが好ましい。 複数のスライムコントロール剤が抽出された場合は、 抵抗性微生物に対して最も低い最小有効濃度のスライムコントロール剤を選択す るか、 「最小有効濃度 X価格」 が最小となるスライムコントロール剤を選択する ことにより、 発生源処理剤として使用するスライムコントロール剤を選定する。 次いで発生源処理剤添加工程として、 前記発生源判定工程で判定した抵抗性微 生物の発生源に、 前記スライムコントロール剤選定工程で選定した新しいスライ ムコントロール剤、 すなわち現在使用している白水処理剤とは別の発生源処理剤 剤を添加する。 例えば、 ゥエツト損紙チェスト 5 6に、 抵抗性微生物に有効であ
るとして選定された HP GHC (2— (p—ヒドロキシフエニル) グリオキシロ ヒドロキシモイルク口ライド) を添加する。 これにより、 抵抗性微生物がその発 生源で効果的に抗菌処理され、 これによりスライムが抑制される。
試料の採取は定期的または任意の時点で繰り返して行う。 そして発生源処理剤 の効果が認められた場合は、 発生源処理剤の使用は中止し、 白水処理剤による通 常の処理を行う。 一方、 効果が認められない場合は、 さらに別の発生源処理剤に 切り替えるか、 発生源処理剤の使用方法 (添加濃度、 添加方法など) または環境 条件を見直す。 さらに新たな抵抗性微生物が検出された場合、 その微生物に対す る新しい発生源処理剤を選定して添加する。
このようにして、 微生物相の解析おょぴ発生源処理剤の選定を繰り返して行う ことにより、 その時点における最適なスライムコントロール剤を短時間で、 かつ 的確に選定することができ、 しかも発生源に対して添加することができるので添 加量を最小限にしてスライムの抑制を行うことができる。 発明を実施するための最良の形態
次に本発明の実施例について説明する。
実施例 1
《実験室スライム試験装置による実験例》
特開平 9 - 7 50 6 5号に記載されたトルク式スライム試験装置、 すなわち静 止した外部シリンダと、 この外部シリンダ内に同軸的に設置された内部シリンダ とを有し、 外部シリンダと内部シリンダとの間に水を流通させるとともに内部シ リンダを回転させて内部シリンダ表面にスライムを成長させるようにしたスライ ム試験装置を使用した。 この装置を滞留時間 20分間となるように人工白水 (組 成:溶性デンプン 1 42mg/L、 硫酸アンモニゥム 1 1. 6ing/L、 p H 7. 0) を 3 で連続供給し、 DBNPA (ジブロモニトリ口プロピオンアミ ド) を主剤とするスライムコントロール剤を接触濃度 2. 5mg/Lで 1 5分間、 3
回 日で間欠添加した。 1 2日間運転後にスライムが厚さ 1 1 9 m発生したの でこれを採取し、 PY寒天培地 (組成:ポリペプトン 1 g L、 酵母エキス l g L、 N a C 1 0. 5 gZL、 寒天 1. 5 %、 p H 7. 0) を用いて培養し、 最大希釈の平板からァトランダムに細菌 24菌株を分離した。 個々の分離菌株を 一白金耳採取し、 1. 5 mL容量の微量遠心管に分注した 0. 4πlLのTE緩衝 液 ( 1 OmM T r i s— HC 1、 1 mM EDTA、 p H 8. 0) に懸濁した。 この懸濁液に 0. 8 gの 0. 1 mmジルコニァノシリカビーズ (Bio Spec Pro ducts, Inc社) を加えて、 細胞破碎機 (ビートビータ : Bio Spec Products, Inc 社) により最大出力で 1分間ホモジナイズした。 8, 000 X g、 5分間遠心分 離後、 上清を铸型 DNA溶液として PCR反応を行った。 試薬は PyroBestDNAポリメラー ゼ (宝酒造株式会社、 商標) を用い、 反応装置は GeneAmp2400 (PEバイオシステ ムズ社、 商標) を用いた。 プライマーは 5'_GAGTTTGATCMTGGCTCAG - 3,と 5,_ACGGYT ACCTTGTTACGACTT- 3'を用いた。 PCRの反応条件は、 94°。で0. 2分間、 5 5°Cで 0. 3分間、 7 2°Cで 2分間の反応を 3 0サイクル繰り返し、 最終回は 7 2°Cで 7分間反応を行った。 反応物は MicroSpin S- 300 HRカラム (アマシャム ' ファノレ マシア ·バイオテク株式会社製、 商標) に通して未反応のプライマーを除去した のち、 その一部を BigDye Terminatorし ycle sequencing FS Ready Reaction Kit (P Eバイオシステムズ社、 商標) を用いてシークェンシング反応を行った。 シ 一ク工ンシング用プライマーは 5' -GAGTTTGATCMTGGCTCAG-3'および 5, - CAGCMGCCGC GGTAATWC-3'とした。
反応物は AutoSeq G- 50カラム (アマシャム · フアルマシア ·バイオテク株式会 社製、 商標) に通して未反応のヌクレオチドを除去した後、 加熱変性させ、 ABI PRISM 3000シークェンサ一に供し、 5, 末端より約 5 00塩基の配列を決定した。 全ての分離株に対して得られた塩基配列のデータについて、 GenBankデータベース にアクセスして個々の細菌を同定したところ、 24株の分離株は 5種類の細菌を 含んでおり、 このうちデータベースにァクセッションナンバー AB004728として登
録されている Microbacterium属の一種の塩基配列と 9 8. 1 %の相同性を有する 16S rDNAを持つ細菌 (すなわち Microbacterium sp. と同定) が全細菌の 7 5%を 占め、 優占微生物であった。
さらに、 この分離した優占微生物の塩基配列について独自に構築した微生物検 索データベース (過去に検索した結果を独自に集積したデータベース) を検索し た結果、 全く同じ塩基配列の細菌が過去に分離されたことがあり、 微生物番号 6 3 54として登録されていた。 この微生物番号を検索キーとして抗菌剤検索デー タベースを検索した結果、 上記の Microbacterium sp. は D B N P Aに対する薬斉 lj 抵抗性菌であることが分かり、 その他の分離菌はいずれも DBNP A感受性菌で あった。 なお念のために後刻各分離菌株について DBNPAによる殺菌試験を行 つたところ、 使用した抗菌剤検索データベースの結果は正しい値を示しているこ とを確認した。
また Microbactrium sp. に対して、 『最小有効濃度 X価格』 から判断して最も 低コストで効果の得られる抗菌剤を抗菌剤検索データベースで検索した結果、 H P GHC ( 2 - (p—ヒ ドロキシフエ二ノレ) グリオキシロヒ ドロキシモイノレクロ ライド) が抽出され、 その最小有効濃度は 0. 2mg/Lであることが判明した。 また他の分離菌株は全て H P G H Cに対して感受性であった。
上記の結果を基に、 スライム試験装置の運転条件は変えずにスライムコント口 ール剤だけを HPGHCが系内で 0. 3 mg/Lを維持する方法に変更した。 そ の結果、 スライム付着量は著しく減少し、 同じ期間内のスライム成長が厚さ 3 mになった。 この時に採取した HP GHC処理スライムの微生物相の解析を前記 と同じ方法で実施したところ、 icrobacterium sp. は検出されなかった。
この実施例において、 スライムを採取してから Microbacterium sp. が優占微生 物であることを明らかにするまでに要した日数は 5日間であった。
実施例 1で用いた前記抗菌剤検索データベースは、 Microsoft社の Microsoft A ccess (商標) を利用して作成したものであり、 各種水系および製紙工場のデンプ
ンスラリー、 デンプン糊液、 コーティングカラーから分離した細菌について、 p H 3水準、 温度 3水準の条件下で各種抗菌剤 (スライムコントロール剤、 防腐剤、 およびそれらの素剤) を用いて殺菌試験おょぴ増殖抑制試験を行い、 その試験結 果を入力したものである。 さらに各種抗菌剤を各種対象系に適用して得られた過 去の実績データを網羅して入力したものである。
なお、 この抗菌剤検索データベースの検索は、 Microsoft Accessに組み込まれ ている 「並べ替え」 、 「オートフィルター」 および 「検索」 の機能だけを利用し て行い、 検出結果をコンピュータの画面上に表示させて判断した。
実施例 2
《D製紙におけるスライムコントロール剤選定例》
中質紙を抄造している長網マシンのスライムコントロールを、 D B N P Aを主 剤とする抗菌剤で長期間処理していたところ、 白水循環工程でピンク色の細菌ス ライムが発生した。 そこで実施例 1と同じ方法で、 寒天培地を用いて複数の付着 場所のスライムから細菌各 2 4菌株を分離し、 微生物相の解析を行った。 この結 果、 分離株は 5種類の細菌を含んでおり、 このうち GeneBankデータベースのァク セッションナンバー A.T000002の Deinococcus geothe進 lisに 9 9 . 5 %の相同性 を有する 16S rDNAを持つ細菌 (すなわち、 2. geothermalisと同定) が全細菌の 4 6 %を占めていた。
Deinococcus geothermalisを検索キーとして、 実施例 1と同じ抗菌剤検索デー タベースで検索したところ、 この細菌は D B N P Aに抵抗性を持つグループに属 していた。 念のために後刻分離菌の D B N P Aに対する殺菌試験を行ったところ、 間違いなく D B N P A抵抗性菌であった。 この菌に対して有効な抗菌剤を抗菌剤 検索データベースから抽出した結果、 本系の p Hおよび温度条件においてはある 種の無機臭素系化合物が適しているとの結果を得た。 また他の分離菌で検索した 結果、 この無機臭素系化合物に抵抗性を有するスライム構成菌は存在しなかった。 そこで直ちにこれを実際のスライムコントロールに適用した結果、 ピンク色のス
ライムはもとよりスライム全体の発生が極めて少なくなつた。 2 5日間連続操業 後に採取した白水サイロ内の付着物を上記と同じ方法で微生物相の解析した結果、 Deinococcus geothermalisが全微生物相に占める占有率は 4 %に減少していた。 なお、 スライム試料を採取してから上記の各種試験を終了し、 新しい処理方法を 決定するまでに要した時間は 6日間であった。
実施例 3
《D製紙におけるモニタリング例》
D製紙には実施例 2と抄造製品が同じで、 マシン形式、 抄造条件が類似した別 のマシンが隣り合わせで存在する。 しかし、 実施例 2のマシンでピンク色のスラ ィムが発生した時にもこのマシンではその発生が認められなかった。 そこで実施 例 1と同じ方法により白水試料から寒天培地を用いて細菌 3 6菌株を分離し、 微 生物相の解析を行った。 試験菌株数が多いことから、 各菌株から調製した 16S rD NAを 3種類の制限酵素 (BstUI、 Rsal、 Hhal) でそれぞれ消化して T R F L P解析 を行い、 パターンが一致するものは同じ菌としてあらかじめグループ化した後、 塩基配列を指標とした同定を行った。 その結果、 本マシンの分離 3 6菌株に占め ¾ Deinococcus geothe進 lisは占有率 2 · 7 % ( 1菌株) に過ぎなかった。
マシンの環境条件が類似していることから、 このマシンでもいずれ時間が経過 すると同じピンク色のスライムが発生する恐れがあつたので、 従来法による効果 監視を強めるとともに、 上記と同じ試験方法により (分離菌株は 4 8菌株に増や した) 白水試料の微生物相の解析を 7〜 1 4日間の間隔で繰り返し実施した。 ま た実施例 1の試験装置と基本構造が同じ 3連式スライムモニターをこのマシンに 設置し、 次のように使用した。
すなわち、 1台 (以下 1号機とする) は本来のスライムモェターとするために、 マシン白水を連続供給した。 残りの 2台はマシン条件を模したシュミレーター試 験装置として用い、 白水の滞留時間がマシンと同条件となるように供給白水の流 量を設定した上で、 D B N P A添加時間帯から離れた時間帯にマシン白水を貯留
タンクに取り、 D B N P Aを含まない白水を供給するようにした。 そして実機の 条件下で D B N P A製剤と無機臭素系化合物の抗カ確認を行うために、 1台 (以 下 2号機とする) には D B N P A製剤を、 あとの 1台 (以下 3号機とする) には 無機臭素系化合物をマシン処理条件と同じになるように各々独立した注入システ ムを使用して添加した。
第4回目までの微生物相の 军析結果は、 Deinococcus geothermalisの占有率が 2〜4 % ( 4 8菌株中 1 ~ 2菌株) の範囲で推移していたが、 初回の試験から数 えて 4 7日後に行った第 5回目の結果では 6菌株 (1 2 . 5 %) に増加した。 こ の時同時に実施した白水試料に対する殺菌効力試験では D B N P A製剤の効力は 良好なままで、 通常のバラツキ範囲内にあった。 一方、 3連式スライムモニター の 3号機におけるスライム成長の兆候はなく、 1号機および 2号機においてはス ライム厚さ数 / mに相当する微小な付着ではあったが、 スライム成長の兆候が認 められた。
このような複数の結果を総合して、 この変化は当マシンにもピンク色のスライ ムが発生し始めた兆候であると判断し、 マシンに適用する抗菌剤を D B N P A製 剤から無機臭素系化合物に変更 (試験日から 5日後) した。
抗菌剤を切り替えてから 7日目に行ったマシン白水における微生物相の解析結 果は、 分離菌 4 8菌株中 1菌株 (占有率 2 %) が Deinococcus geothermali sとな り、 ほぼ元の状態に復帰していた。 また 3連式スライムモニターの 1号機付着量 は検出限界以下に低下した。 一方 2号機の方はスライム付着量が徐々に増加し、 抗菌剤切り替え後 1 4日目には肉眼でも判別できるピンク色のスライムが発生し た。 この結果から、 抗菌剤の変更があと 1〜2週間遅れていたら当マシンでもス ライム障害が発生していた可能性が高いと判断された。
この結果から、 DNAの塩基配列を用いた本発明の抗菌効果のモニタリング方法は、 抗菌剤使用マシンにおける効力のモニタリング手段として有効なことが明らかで あ 。
実施例 4
《0製紙におけるスライムコント口ール剤選定例》
中性の中質紙を抄造している長網マシンのスライムコントロールを、 塩素処理 と DBNP Aを主剤とする抗菌剤を併用して長期間にわたり行っていたところ、 白水循環系に黄色のスライムが発生した。 そこで実施例 1と同じ方法でスライム から 24菌株を分離し、 16S rDNAによる微生物相の解析を行った。 その結果、 Ge nBankデータベースのァクセッションナンパー AB027702で特定される Microbacter ium属に属する一微生物の 16S rDNAの塩基配列に 9 8. 0%の相同性を持つ遺伝子 を有する細菌が 90%を占めていることが分かった。
さらに、 分離された優占細菌の塩基配列を独自に構築した前記微生物検索デー タベースで検索したところ、 9 9. 1%相同の塩基配列を有する細菌が微生物番 号 240 1として登録されていた。 そこでこの微生物番号を検索キーとして抗菌 剤検索データベースを検索した結果、 D B N P Aに抵抗性を示すグループに属す る菌であることがわかった。 これに有効な抗菌剤を当マシンの環境条件において 『最小有効濃度 X価格』 から判断したところ無機臭素系化合物を主剤とする抗菌 剤であるとの結果を得た。 そこで次の操業期間からは選定された無機臭素系抗菌 剤を単独で用いてスライムコントロールを行った。 その結果、 1 4日間の連繰期 間中、 肉眼で識別できるスライムの発生がなくなつた。
実施例 5
《A製紙工場デンプンスラリーにおける防腐剤選定例》
A製紙工場製紙用デンプン糊液 (pH 9、 温度 60t) で、 糊液粘度が短時間 に低下する現象が発生した。 本系ではイソチアゾロン系抗菌剤を 1 OmgZL [イソチアゾロンとしての濃度] の濃度で連続添加している。 菌数を測定すると、 1. 7 X 1 0 E + 8 CFU/mLの菌が発生しており、 腐敗初期状況と推定され た q 実施例 3と同じ方法により、 微生物相の解析を行った結果、 Paenibacillus属 の一微生物 (GenBankデータベース : AJ288158) と 94. 8%の相同性を有する 1
6S rDMを持つ細菌が全菌の 9 6 %を占めることがわかった。
さらに、 分離された優占細菌の塩基配列を独自に構築した前記微生物検索デー タベースで検索したところ、 全く同じ塩基配列を有する細菌が微生物番号 2 6 7 5として登録されていた。 そこでこの微生物番号を検索キーとして抗菌剤検索デ ータベースを検索した結果、 この細菌は過去に同じ工場から分離されており、 こ の細菌の栄養細胞はイソチアゾロンに感受性であることがわかった。 優占種が感 受性菌であることから、 原因は抗菌剤が不適合なのではなく使用方法に問題があ ると推定し、 抗菌剤注入システムを見直した結果、 注入ポンプの吐出量が約 1 5に低下し、 注入濃度が不足していることが判明した。 防腐剤貯留タンク内の残 存量からも注入量低下が裏付けられたため、 これが原因であると判断し、 デンプ ン糊槽を洗浄後、 注入ポンプを新品に取り替えて、 再び運転を開始したところ上 記現象が止まり、 菌数も元に戻った。
実施例 6
《 S製紙における糸状菌に対するスライムコント口ール剤選定例》
酸性の新聞紙を抄造している長網マシンのスライムコントロールを、 D B N P
Aと B B A B ( 1, 4一ビス (プロモアセトキシ) 一 2—プテン) を主剤とする 抗菌剤を併用して長期間にわたり行っていたところ、 マシン全体に力ビを主体と するスライムが発生した。 そこで、 P Y D培地を用いて糸状菌および酵母を選択 的に分離した。 4日間培養して形跡されたコロニーは全て淡い橙色を帯びた菌糸 を有する直径 5 mmの糸状菌であった。 実施例 1と同じ方法で 8株の糸状菌を分 離し、 18S rDNAによる微生物相の解析を行った。 PCRプライマーおよびシークェン シング用プライマーは、 5' -GTAGTCATATGCTTGTCTC-3 'と 5 ' -GGCTGCTGGCACCAGACTTG C - 3'を用いた。 その結果、 8株全てが、 Chaetomium elatum (GenBankデータべ一 ス :ァクセッションナンバー M83257) と 9 9 . 2 %の相同性を有する 18S rDNAを 持つ糸状菌であることがわかった。
Chaetomium elatumを検索キーとして抗菌剤検索データベースで検索したところ、
DBNPAおよび B B ABに非感受性の糸状菌グループに属することがわかつた。 このため、 上記糸状菌に有効な抗菌剤を当マシンの環境条件において 『最小有効 濃度 X価格』 から判断したところ、 4, 5—ジクロ口一 1, 2—ジチオラン一 3 —オン (以下ジチオール) を主剤とする抗菌剤であるとの結果を得た。 そこで次 の操業期間からは選定された B B A Bとジチオールを主剤とする抗菌剤を用いて スライムコントロールを行った。 その結果、 1 4日間の連繰期間中、 肉眼で識別 できるスライムの発生がなくなった。
実施例 7
《空調冷却水系におけるスライムコント口ール剤選定例》
イソチアゾロンを包接して錠剤化した固形抗菌剤を冷却水に浸漬することによ りスライムコントロールを実施している N (株) 管理棟の空調用冷却水系で顕著 な細菌スライムの発生が見られた。 有機物濃度が低い系であることから、 培地で 分離培養できない微生物の占有が大きいと判断し、 スライムから全 DNAを抽出した のち、 抽出された全 DNAを錄型として PCRを行うことにした。
2 mL容量のスクリューキャップ付き微量遠心管を用い、 耳搔き一杯程度のス ライムを 1 mLの DNA抽出用緩衝液 ( 1 00 mM T r i s _HC l、 1 00 πιΜ EDTA、 l O OmM N a 2H P O 4 + N a H 2 P O 4、 1. 5M Na C l、 p H 8. 0) に懸濁し、 28の0. 1 mmジルコニァ/シリカビーズを加え、 ビ 一トビータを用い最大出力で 2分間ホモジナイズした。 さらに凍結融解を 3回繰 り返したのち、 1 Omg/mL濃度の Proteinase K (生化学工業) を 0. 0 1 m
L添加して 3 7 °Cで 1 5分間反応を行った。 さらに 0. 2mLの 1 0%SDSを 添加し、 混合後 6 5 tで 30分間放置した。
ビートビータで再度ホモジナイズ後、 遠心分離 (1 0, 000 X g、 1 0分 間) で上清を回収した。 等量のクロ口ホルムを加えてよく懸濁後、 遠心分離 (1 0, 000 X g、 1 0分間) を行い上清を回収した。 0. 6倍容量のイソプロパ ノールを加え混合後、 30分間室温に置いたのち、 遠心分離 (1 0, 000 X g、
1 0分間) で DNAを回収した。 DNAは 7 0 %エタノールでリ ンス後、 乾燥し T E緩 衝液に懸濁した。 PCRは実施例 1と同じ方法で行った。 プライマーは、 5' - GAGTTT GATCMTGGCTCAG-3'と 5' - CAGCMGCCGCGGTAATWC-3'を用いた。 後者は 5 ' 末端をリン 酸化したものを用い、 およそ 5 0 0塩基対を増幅した。 得られた PCR産物は、 λェ キソヌクレアーゼで処理し、 一本鎖 DNAとした後、 S S C Ρ法により解析を行った c すなわち、 1 0 %ポリアクリルアミ ドゲルを用い、 2 0 0 V、 2 0 °Cの低温条件 で 8時間の電気泳動を行った。 ゲルは GelStar (宝酒造株式会社製、 商標) で染色 後、 U Vランプを照射して DNAのバンドを確認した。 およそ 1 0本の独立したバン ドが観察されたが、 著しく濃度の高い (すなわち量の多い) パンドは検出されな かった。
たまたま障害が発生する以前に採取され、 凍結保存されていた本冷却水系のス ライムについても同様の解析を行って比較した結果、 バンドの数と位置おょぴ濃 度比に大きな違いは観察されず、 障害発生の前後で微生物相に変化は見られない ことがわかった。 検出されたパンドのうち、 最も濃度の濃いバンドから DNAを回収 し、 塩基配列を決定した結果、 Rubrivivax属の近縁種 (GenBankデータベース;ァ クセッショ ンナンバー X89910) と 9 5 .. 8 %の相同性を有する 16S rDNAと、 Sphi ngomonas sp. (GenBankデータベース ; ァクセッショ ンナンノ ー AB023290) と 9 9 . 5 %の相同性を有する 16S rDNAであった。
実施例 1と同じ独自に構築した微生物検索データベースを検索したところ、 こ れらの 16S rDNAはこれまでにも度々同冷却水系から分離されており、 イソチアゾ 口ン処理で顕著な障害を起こした事例はない。 また実施例 1と同じ抗菌剤検索デ ータベースを検索した結果、 Sphingomonas sp. はイソチアゾロンに感受性菌であ ることがわかった。 これらの結果から抗菌剤の種類が不適合なのではなく、 使用 方法に問題があると推定し、 運転日報を調べた結果、 運転担当者がプロ一水量を 高めに設定する変更を実施していた。 これらのことからスライム発生の原因は、 冷却水系の滞留時間が設定値よりも短くなり、 ィソチアゾロンの水中維持濃度が
低下したためと判断された。 そこでプロ一水量を元の状態に戻した結果、 スライ ム発生は止まった。
実施例 8
《超純水製造工程の R O濃縮水側の抗菌剤処理例》
H電子の超純水製造工程の RO濃縮水側にスライムが発生し、 フラックス低下 傾向が出てきた。 スライムを DNA抽出用緩衝液に懸濁後、 グラスビーズを加えてホ モジナイズした。 以下実施例 7と同じ方法で DNAを抽出し、 さらに PCRにより全 16 S rDNAを調製した。 16S rDNAは一本鎖化後、 S S C P法により解析を行った。 そ の結果、 5本の独立したバンドが観察され、 うち 1本は全体の 80%の濃度を占 めるものであった。 このバンドの塩基配列を決定した結果、 Ralstonia eutropha (GenBank: ァクセッションナンバー D88000) と 9 9. 9%の相同性を有すること がわかった。
実施例 1と'同じ抗菌剤検索データベースには複数の Ralstonia eutrophaが登録 されており、 今回分離した 16S rDNAと比較すると 9 9. 2- 9 9. 7%の相同性 を有していた。 この全てに対して最も有効な抗菌剤を検索すると次亜塩素酸ナト リゥムであった。 しかし塩素は RO膜に悪影響を与えることが分かっているので 適用できない。 そこで抗菌剤検索データベースから ROに影響がなく、 かつ上記 微生物に有効な抗菌剤を再検索した結果、 ィソチアゾロン系抗菌剤がイソチアゾ ロンとして 1. 2~1. 5mgZLで有効な使用実績のあることが分かった。 そ こで RO膜内をー且洗浄してから上記のイソチアゾロン製剤を 1. 5mgZLに なるよう注入した。 その結果、 スライム発生がなくなった。
参考例 1
連続操業期間約 2週間の中性抄紙の製紙工程において、 抄紙機の白水循環系で スライムが発生するため、 DBNPA (ジブロモユトリロプロピオンアミ ド) を 有効成分とするスライムコントロール剤を種箱に間欠添加をする方法 (DBNP Aの系内濃度が 2 OmgZLを 20分間維持するように設定した注入量を 1日に
4回、 定量ポンプで自動注入した) でスライムコントロールを行った。 この製紙 . 工程ではこの他にクリャ白水配管にもスライムが発生するため、 同様に DBNP Aを有効成分とするスライムコントロール剤をクリャ白水ピットにも間欠添加す る方法でスライムコントローノレを行った。
実施例 9
参考例 1の処理を開始してから 2か月後に、 抄紙機ワイヤー下のサクションボ ックス内に細菌を主体とするスライムの発生が観察された。 そこでこのスライム を試料として寒天平板法で細菌を分離培養し、 釣菌した 48菌株にっき 16S rDNA を指標にして微生物相の解析を行った。 各菌株から抽出した DNAを铸型として PCR で 16S rDNAを合成し、 3種類の制限酵素 (B s t U I、 R s a 1、 Hh a I ) で それぞれ消化して RF L P解析を行った。 電気泳動パターンが一致するものは同 じ菌としてあらかじめグループ化した後、 5 ' 末端より 500 b p前後の部分塩 基配列を指標として GenBankデータベースにアクセスして、 個々の細菌を同定した。 その結果、 48菌株中 2 5菌株カ ^Deinococcus geothermalis, 1 0菌株が Ac^ov orax temperans, 8菌株が Riemerella属近縁のグラム陰性細菌、 4菌株が Shingo monasであり、 残る 1菌株カ Rhizobium sp.であった。
各菌株の 16S rDNAの塩基配列を指標にして薬剤検索データベースを調べた結果、 Acidovorax temperansN Riemere丄丄 &属¾1縁のグフム陰 te細菌、 Shingomonasおよぴ Rhizobium sp.は D B N P Aに対する感受性菌であったが、 Deinococcus geother malisは DBNP Aに対する抵抗性菌であることが分かった。
後刻これを確かめるため、 代表的分離菌株にっき DBNP Aの殺菌試験を行つ たところ、 Acidovorax temperans^ Riemerella属 ¾Ε¾のクラム陰性細菌、 Shin¾o monasおよび Rhizobium sp.は 2 m g ZL以下の D B N P Aに 30分間接触するこ とで生菌数の 9 9%が死滅したが、 Deinococcus geothermalisは 3 OingZLの DBNP Aに 30分間接触させても全く殺菌されなかった。
次に製紙工程の各箇所から試科を採取し、 DAP I染色直接検鏡法により全菌
数を測定するとともに各 48菌株を寒天平板法により分離し、 16S rDNAの塩基配 列により 48菌株に占める Deinococcus geothermalisの存在比率を調べた。 試験 結果を表 1に示す。 表 1
試料名または 全菌数 Deinococcus 割合 試料採取場所 (eel Is/mL) geotherma 1 i sW&^ (%)
(48株中のコロニー数) * 1 白水サイロの白水 5. 1 X 1 07 9 1 9 クリア白水ピッ卜のクリア白水 3. 0 1 07 8 1 7 工業用水 5. 7 1 03 0 0
L B K Pチェス卜 6. 0 1 06 1 2
CG Pチェスト 4. 8 1 04 0 0 ドライ損紙チェス卜 8. 3 X 1 07 7 1 5 ゥエツト損紙チ: cスト 6. 7 X 1 07 44 92 ミキシングチ Iス卜 4. 8 X 1 07 6 1 3 マシンチェス卜 5. 2 X 1 07 7 1 5 染料タンク 1. 1 X 1 03 0 0 サイズ液タンク 8. 7 X 1 02 0 0 外添デンプン糊液タンク 1. 5 1 04 0 0 内添デンプン糊液タンク 4. 6 X 1 03 0 0
* 1 {Deinococcus geothermai is \ロニ一数 Z48) x 1 00
Deinococcus geothermalisは主にゥエツト損紙チェストに存在し、 その存在比 率は 9 1. 7%に達した。 LBKPチ: ストやドライ損紙チェストにも検出され たが、 これはパルプ調製に使用された回収白水を介してもたらされたものである。 また、 各種パルプ原料が集まったミキシングチヱスト、 マシンチェストは、 全菌 数が増加しているけれども Deinococcus geothermali sの比率が低いこと力 ら、 こ こでは Deinococcus geothermalisが増殖していないことがわかる。 以上の試験結 果から DB NP A抵抗性菌である Deinococcus £eothermalisはゥエツト損紙チェ ストで増殖し、 白水循環系に供給されたものと判定した。
薬剤検索データべースで、 Deinococcus geothermalisを検索キーにしてスライ ムコントロール剤を検索し、 中性域において殺菌効力の高いスライムコントロー ル剤に絞り込んだところ HP GHC (2— (p—ヒ ドロキシフエニル) グリオキ シロヒ ドロキシモイルク口ライド) が抽出された。 HPGHCは系内濃度 2 Om g/Lに 20分間接触させることで Deinococcus geothermalisを殺菌することも 分かった。 ゥ ット損紙系の流量は白水循環系の流入量に比べて約 2 0分の 1で あり、 同じ系内濃度 2 Omg/Lを達成するにはゥ: ット損紙に添加する方が薬 剤使用量が少なくて済む。 さらにこのチェストの滞留時間は長いので、 一度添加 した薬剤が長時間微生物と接触し、 連続注入をしなくても接触時間を維持できる ので流量比以上に薬剤使用量が少なくても済む利点がある。
なお実施例で用いた上記薬剤検索データベースは、 Microsoft社の Microsoft A ccess (商標) を利用して作成したものであり、 各種水系および製紙工場のデンプ ンスラリー、 デンプン糊液、 コーティングカラーから分離した細菌について、 p H 3水準、 温度 3水準の条件下で各種スライムコントロール剤またはその素剤を 用いて殺菌試験おょぴ増殖抑制試験を行い、 その試験結果を入力したものである。 さらに各種スライムコントロール剤を各種対象系に適用して得られた過去の実績 データを網羅して入力したものである。 なお、 この薬剤検索データベースの検索 は、 Microsoft Accessに組み込まれている 「並べ替え」 、 「オートフィルター」 および 「検索」 の機能だけを利用して行い、 検出結果をコンピュータの画面上に 表示させて判断した。
スライムコントロール剤検索の結果から、 ゥ; ット損紙チェストに発生源処理 剤として HP GHCを有効成分とするスライムコントロール剤を保有水量 (チェ ス ト容量) 当たり 2 5mg,Lを 1日 3回添加し、 白水循環系には D B N P Aを 有効成分とするスライムコント口ール剤を従来通りの要領で添加する方法に処理 法を変更した。
この時 HP GHCの使用量は、 白水循環系にこれを添加したと仮定した場合の
約 3 0分の 1の使用量に相当する。
その結果、 シャットダウン時に観察されたスライム付着量は著しく減少し、 サ クシヨンボックス付着物はいわゆるスライムから少量のパルプ繊維を主体とする 付着物になった。
処理法を変更してから 2回目のシャツトダウン時おょぴその直前に、 製紙工程 の各部から試料を採取し、 全菌数およぴ Deinococcus geothermali sの存在比率を、 前回と同じ方法で測定した。 その結果、 全菌数は通常のバラツキ範囲内にあり変 化がなかったが、 Deinococcus geothermalisは検出されなくなった。 結果を表 2 に示す。
表 2
以上の結果から少量のスライムコントロール剤を追加使用するだけで、 DBN P Aに抵抗性の Deinococcus geothe顧 lisを、 その発生源であるゥエツト損紙チ エストで駆逐したことがわかる。 また白水循環系におけるスライムコントロール 効果を確実なものにしたことがわかる。
なお、 同時に採取したサクシヨンボックス付着物の全菌数は 3. 5 X 1 09cel ls/dry— gで り、 これ力 ら ¾ Deinococcus geothermalisは検出されな力、つた。 実施例 1 0
A工場 Z抄紙機 (日産 2 90トン、 上質紙、 p H7. 3) において、 操業開始 直後より直径 1〜1. 5 mmの褐色の欠点が多発した。 紙片より欠点部分を切り 取り、 その 30個 (約 7. 5mg) を 2 mL容量のプラスチック製微量遠心管に
入れた。 1 mLの DNA抽出液 ( 1 0 O mM T r i s — C l 、 1 0 0 mM ED T A_N a、 1 0 O mM N a 2HP 04、 1. 5 M N a C 1 (p H 8. 0 ) ) を 加え、 室温に 3 0分間放置して紙片を充分に浸漬させた。
次に、 2 8の0. 1 mmジルコニァシリカビーズ (Bio Spec Products, Inc 社) を加え細胞破砕機 (ビートビータ : BioSpec Products, Inc社) で 2分間ホモ ジナイズした。 次に、 1 O in g Zin L濃度のプロティネース K (生化学工業株式 会社) 水溶液を 1 0 L加え、 3 7°Cで 1 5分間反応を行った。 1 0 % S D S水 溶液 2 5 0 /z Lを加え、 ビートビータ一で 1分間ホモジナイズしたのち、 6 0°C で 3 0分間放置した。 1 2 0 0 0 r p mで 2 5 °C、 1 0分間遠心分離したのち、 上淸 6 0 0 μ Lを新しいプラスチックチューブに移し、 6 0 0 ; Lのクロ口ホル ムを加えた。 充分に混合したのち、 1 2 0 0 0 r p mで 2 5 °C、 1 0分間遠心分 離した。 上層液 5 5 0 μ Lを新しいチューブに移し、 3 3 0 /2しのイソプロパノ ールを加えて緩やかに混合して室温に 3 0分間静置した。 遠心分離後 (1 2 0 0 0 r p m、 2 5 °C、 1 0分間) 、 上澄みを廃棄し、 7 0 %エタノールでチューブ 内をリ ンスしてから、 沈殿物を減圧乾燥した。 乾燥した沈殿物は 5 0 Lの T E 水溶液 ( 1 0 mM T r i s _ C 1 、 1 mM E DT A (p H 8. 0 ) ) に懸濁 し、 DNA懸濁液を得た。 また紙片の正常部についても 7. 5 m g相当を 3 0等分割 し、 上記と同様の方法で DNAを抽出した。 すべての抽出操作は再現性を確認するた め、 各試料につき 2連で行った。
上記方法により欠点部および正常部より抽出した各 DNA懸濁液を铸型として、 P CR反応により、 細菌特異的プライマー (Bact27f: 5' - AGAGTTTGATCMTGGCTCAG - 3 ,、 Bact519R: 5' - GWATTACCGCGGCKGCTG- 3' ) 、 および真菌特異的プライマー (NS1 : 5, -GTAGTCATATGCTTGTCTC-3'、 NS2: 5 GGCTGCTGGCACCAGACTTGC- 3' ) を用いて、 s s r DNAを増幅した。 試薬は PyroBestDNAポリメラーゼ (宝酒造株式会社) を用 い、 反応装置は GeneAmp2400 (アプライドバイオシステムズジャパン社) を用いた。 P C Rは、 3 0 Lの反応液で、 温度条件は 9 4 °Cで 0. 2分間、 5 5 °。で0.
3分間、 7 2 °Cで 1分間の反応を 3 0サイクル繰り返し、 最終回は 7 2 °Cで 7分 間の反応を行った。
増幅産物 2 μ Lを 2 %濃度のァガロースゲル電気泳動に供し、 1 0 0 m V、 4 5分間の泳動の後、 ェチジゥムブロマイド染色で DNAを染色し、 紫外線照射下にお いて観察した。 その結果、 図 4に示すように、 細菌特異的プライマーを用いた場 合には、 欠点部および正常部ともに s s r DNAのバンドが見られたが、 真菌特異的 プライマーを用いた場合には、 欠点部では 1 8 S r DNAのバンドが観察されたが、 正常部ではバンドが観察されなかった。 この結果から、 欠点部の細菌量は正常部 と同レベルであるのに対し、 欠点部は顕著な量の真菌を含むことがわかった。 増幅された 1 8 S r DNA水溶液 2 5 μ Lを MicroSpin S-300HRカラム (アマシャ ムフアルマシアバイオテク株式会社) に供し、 未反応のプライマーを除去したの ち、 その一部を BigDye Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit (アプライドノく ィォシステムズジャパン社) を用いてシークェンシング反応を行った。 シークェ ンシングプライマーは上述の N S 1、 N S 2を用い、 シークェンサ一は ABI Pris m 310 Genetic Analyzer (アプライドバイオシステムズジャパン社) を用いた。 その結果、 配列表の配列番号 6に示す塩基配列が得られた。
配列番号 6の塩基配列をデータベース上で検索した。 すなわち、 G e n B a n kデータベースにアクセスし、 データベース上の 1 8 S r DNA配列と B L A S Tを 用いて比較したところ、 Sarcinomyces属の糸状菌の 1 8 S r DNA配列と最もよく一 致し、 9 4 %の相同性を示すことがわかった。
上記方法で特定された Sarcinomyces属の糸状菌の発生場所を次の方法で突き止 めた。 すなわち、 白水および各原料ラインのかび数を P D A平板培地上に形成さ れるコロニー数を指標として調べた。 さらに、 コロニーの形態を指標としてダル ープィ匕し、 上述の DNAシークェンシングにより、 コロニーの 1 8 S r DMAの塩基配 列を指標として個々のカビの同定を行った。 その結果、 表 3に示すように、 白水 および L B K Pスラリー中に優占微生物として観察される赤褐色のカビの DNAの塩
基配列が、 欠点部から分離した DNAの塩基配列と完全に一致した。
以上の結果から、 この赤褐色のカビが欠点の原因であること、 およびこれらの カビの多くが LBKPスラリ一から由来していることがわかった。
表 3
上記結果を基に、 欠点の発生を防止するため、 次のような対策を行った。 まず、
LBKPの製造工程を調べたところ、 シックナーのろ液ラインに赤褐色のスライ ムが発生していることが明かになり、 このスライムの力ビ数を調べた結果、 スラ ィム l g (湿重量) あたり 5 X 1 06C FUのカビが見いだされた。 すべて白水中 の優占微生物と同じ赤褐色のカビで、 塩基配列も一致した。 顕微鏡観察結果から も、 カビを主体とするスライムであることがわかった。 そこで、 本ラインを N a OH洗浄するとともに、 ろ液ラインスライムから分離したカビに最も有効であつ た 4, 5—ジクロロー 1, 2—ジチオラン一 3—オンを主成分とするスライムコ ントロール剤を間欠注入し、 殺菌 ·防腐処理を行った。 その結果、 欠点の発生は 完全になくなった。
実施例 1 1
B工場 Y抄紙機 (日産 41 0 トン、 微塗工紙、 pH7. 5) において、 操業開 始 1 1日目より直径約 5 mmの薄い褐色の欠点が多発し、 操業を停止するに至つ た。 紙片より欠点部分を切り取り、 その 3個 (約 8. 1 mg) を 2 mm四方に裁
断後、 2mL容量のプラスチック製微量遠心管に入れた。 l mLの DNA抽出液 (1 O O mM T r i s — C l、 1 0 0 mM EDTA— N a、 1 0 0 mM N a 2H P 04、 1 . 5 M N a C 1 ( p H 8. 0 ) ) を加え、 室温に 3 0分間放置して紙 片を充分に浸漬させた。
次に、 2 の 0. 1 mmジルコニァ Zシリカビーズを加え、 ビートビータで 2 分間ホモジナイズした。 次に、 1 O rn g ZinL濃度のプロティネース K水溶液を 1 0 /z L加え、 3 7°Cで 1 5分間反応を行った。 1 0 % S D S水溶液 2 5 0 / L を加え、 ビートビータ一で 1分間ホモジナイズしたのち、 6 0°Cで 3 0分間放置 した。 1 2 0 0 0 r p mで 2 5 °C、 1 0分間遠心分離したのち、 上清 6 0 0 /x L を新しいプラスチックチューブに移し、 6 0 0 Lのクロ口ホルムを加えた。 充 分に混合したのち、 1 2 0 0 0 r p mで 2 5 °C、 1 0分間遠心分離した。 上層 5 5 Ό μ Lを新しいチューブに移し、 3 3 0 ;z Lのィソプロパノールを加えて緩や かに混合して室温に 3 0分間静置した。 遠心分離後 (1 2 0 0 0 r p m、 2 5 °C、 1 0分間) 、 上澄みを廃棄し、 7 0 %エタノールでチューブ内をリンスしてから、 沈殿物を減圧乾燥した。 乾燥した沈殿物は 5 0 Lの T E水溶液 (1 0 mM T r i s — C l、 1 mM ED TA (p H 8. 0 ) ) に懸濁し、 DNA懸濁液を得た。 また紙片の正常部についても 8. l m g相当を 2 5等分割し、 上記と同様の方法 で DNAを抽出した。 すべての抽出操作は再現性を確認するため、 各試料につき 2連 で行った。
上記方法により欠点部および正常部より抽出した各 DNA懸濁液を铸型として、 P C R反応により、 実施例 1 0と同じ細菌特異的プライマー (Bact27f、 Bact519R) および真菌特異的プライマー (NS1、 NS2) を用いて、 s s r DNAを P C R増幅した c 試薬は PyroBestDNAポリメラーゼを用い、 反応装置は GeneAmp OOを用いた。 P C Rの反応条件は 9 4°Cで 0. 2分間、 5 5でで0. 3分間、 7 2 で1分間の反 応を 3 0サイクル繰り返し、 最終回は 7 2DCで 7分間の反応を行った。
増幅産物 2 μ Lを 2 %濃度のァガロースゲル電気泳動に供し、 1 0 0mV、 4
5分間の泳動の後、 ェチジゥムブロマイド染色で DMを染色し、 紫外線照射下にお いて観察した。 その結果、 細菌特異的プライマーを用いた揚合では、 欠点部では 明瞭な s s r DNAのバンドが観察されたが、 正常部ではきわめて薄いバンドが観察 された。 真菌特異的プライマーを用いた場合には、 欠点部おょぴ正常部ともにパ ンドは観察されなかった。
以上の結果から、 欠点部は正常部と比較して顕著な量の細菌を含むことがわか つた。
欠点が多発した時期では系内は全体に汚れており、 欠点の原因となる汚染箇所 を目視観察により特定することはできなかった。 そこで、 系内のスライムを採取 し、 スライムの微生物相と欠点部の微生物相との比較を行った。 サンプルは以下 の箇所から採取した。
1 ) ヘッ ドボックス内スライム
2 ) ホイール下スライム
3 ) 白水サイロ壁スライム
4 ) 種箱壁スライム
5 ) C P (Consistency Profiling Control System) チュープスライム
6 ) 白水
スライムは湿重量で 5 O m g相当から、 白水は 2 m Lを 1 0 0 0 0 r p m、 4 °C、 1 0分間遠心分離して得られた沈殿物から、 上述の方法に従って DNAを抽出し た。 乾燥した沈殿物は 5 0 μ Lの Τ Ε水溶液に懸濁した。
微生物相の比較には T R F L Ρ法を用いた。 上記スライムおよび白水から抽出 した DNA懸濁液ならぴに欠点から抽出した DNA懸濁液を铸型として、 上述と同条件 で P C R反応を行った。 前記プライマー Bact27fは 5 ' 末端側を 4, 4, 2', 4', 5' , 7' -hexachloro-6-carboxyf luorescein 、6— H E X ) でラベノレし 7こ のを用 ヽた。 増幅された 1 6 S r DNA水溶液 2 5 μ Lを MicroSpin S- 400HRカラム (アマシャム 株式会社) に供し、 未反応のプライマーを除去したのち、
その 0 . 5 II Lを制限酵素 B s t U I (ニュ^ f ングランドパイオラボ社) 2単 位を含む 2 /i Lの N E 2緩衝液と混合し、 6 5 °Cで 2時間反応した。 反応物に 1 2 μ Lのホノレムアミ ド、 0 . 5 /i Lの Gene-Scan 500 Rox Size Standard (ァプラ イドバイオシステムズジャパン社) を順次混合しよく攪拌した。 混合物は 9 4 °C で 2分間反応後、 氷水中で急速に冷却し、 ABI PRISM310 Genetic Analyzerを用い て、 GeneScanプログラム (アプライドバイオシステムズジャパン社) を用いたフ ラグメント解析を行った。 解析結果を図 5に示す。
ひとつの細菌は、 複数コピーの保有による多形性や制限酵素認識配列のオーバ 一ラップなどの例外を除いて、 固有のピークを示す。 比較対象とする二つの試料 の間で、 ピークの位置と量を指標としたフラグメントパターンが似ていれば、 両 者の微生物相はおおむね似ていると判断される。 図 5からわかるように、 欠点由 来のフラグメントパターンは 2 0 1 b a s eの T R F (Terminal Restriction F ragment) を主体とするもので、 C Pチューブスライム由来のパターンと極めてよ く似ていたが、 2 2 3 b a s eの T R Fを主体とする白水、 ならびに他のスライ ム由来のパターンとは明らかに異なるものであった。
以上の解析結果から、 欠点は C Pチューブに発生したスライムがはく離するな どして製紙工程に混入して発生したものと推測された。 C Pラインは、 白水をポ リディスクフィルターで処理したクリア白水が利用されているが、 これまでスラ ィムコントロール処理はされていなかった。 そこで、 クリアピットに 2, 2—ジ プロモー 3—二トリ口プロピオンァミ ドを主体とするスライムコントロール剤を 一日 2回間欠注入した。 その結果、 その後の操業から C Pチューブのスライムは 激減し、 欠点の発生もなくなった。 産業上の利用可能性
本発明の抗菌剤の選定方法は、 最適な抗菌剤を簡単に、 かつ短時間で選定する ことができるので、 抗菌処理方法、 抗菌効果のモニタリング方法、 製紙工程のス
ライム抑制方法、 製紙工程における微生物抑制方法などにおいて、 抗菌剤 (スラ ィムコントロール剤) を選定する際の選定方法として利用することができる。 本発明の抗菌処理方法は、 対象系の微生物相に応じて最適な工業用抗菌剤を短 時間で選定して効率よく抗菌処理することができる。
本発明の抗菌効果のモニタリング方法は、 抗菌剤の効果が発揮されているかど うかを短時間で簡単に、 かつ的確に把握することができ、 微生物の増殖に起因す るトラプルを事前に防止することができる。
本発明のスライム抑制方法は、 抵抗性微生物に対して最も適切なスライムコン トロール剤を短時間で、 かつ的確に選定することができ、 しかも添加量を最小限 にして効率よくスライムの抑制を行うことができる。
本発明の製紙工程における製品の付着物の分析方法は、 紙製品の欠点の原因と なっている微生物を簡単に、 かつ確実に特定することができる。
本発明の製紙工程における製品の付着物の付着原因の探索方法は、 紙製品の欠 点の原因となっている微生物の発生場所を簡単に、 かつ確実に特定することがで きる。
本発明の製紙工程における微生物制御方法は、 紙製品の欠点の原因となってい る微生物の発生場所を簡単に、 かつ確実に特定し、 これに基いて紙製品の欠点の 発生を簡単に、 かつ確実に低減させることができる。