JP2000297819A - セラミックスコーティングボールを用いた軸受 - Google Patents
セラミックスコーティングボールを用いた軸受Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】フレッチング磨耗防止と予圧抜け防止の両方を
同時に可能とする玉軸受を提供する。 【解決手段】玉軸受の玉を、その玉軸受の軌道輪と略同
じ線膨張係数を持つ金属材料で形成するとともに、玉表
面にセラミックス材をコーティングしてなるセラミック
スコーティングボールとした。軸受組立時と使用時とで
温度差があっても、軌道輪と玉とが同じように膨張また
は収縮するため、セラミックス製玉のように予圧抜けや
予圧過大は防止できる。また、玉と軌道輪とがセラミッ
クス層を介して接触するからフィレッチング磨耗も防止
できる、高い回転性能・音響性能が得られる。
同時に可能とする玉軸受を提供する。 【解決手段】玉軸受の玉を、その玉軸受の軌道輪と略同
じ線膨張係数を持つ金属材料で形成するとともに、玉表
面にセラミックス材をコーティングしてなるセラミック
スコーティングボールとした。軸受組立時と使用時とで
温度差があっても、軌道輪と玉とが同じように膨張また
は収縮するため、セラミックス製玉のように予圧抜けや
予圧過大は防止できる。また、玉と軌道輪とがセラミッ
クス層を介して接触するからフィレッチング磨耗も防止
できる、高い回転性能・音響性能が得られる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックスコー
ティングボールを用いた軸受に係り、特に、表面に硬質
セラミックス皮膜を形成して耐フィレッチング性を高め
るとともに、温度変化に伴う予圧抜けの現象をも防止で
きるようにした転動体を用いHDDスピンドルモータ装
置等に好適な軸受に関する。
ティングボールを用いた軸受に係り、特に、表面に硬質
セラミックス皮膜を形成して耐フィレッチング性を高め
るとともに、温度変化に伴う予圧抜けの現象をも防止で
きるようにした転動体を用いHDDスピンドルモータ装
置等に好適な軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、HDD装置用の軸受として、図
5に示すスピンドルモータや図6に示すスイングアーム
モータ等に、小型のアンギュラ玉軸受が多用されてい
る。前者の玉軸受1は、図外の磁気ディスクが装着され
るカップ形のフランジ2を、ベース3に立設された軸4
の回りにモータMで滑らかに回転駆動させるのに使用さ
れ、特に高い回転・音響性能が要求される。また、後者
のスイングアーム用の玉軸受1は、磁気ディスクDの有
効エリアにヘッド6をアクセスして位置決めを行うスイ
ングアーム7を、ベース8に立設された軸9の回りにモ
ータで滑らかに揺動駆動させるのに使用される。これら
の玉軸受1には軸支持剛性を高めるために室温で予圧が
かけられるが、HDD装置のモータの場合は小型化が要
求されるため、スペースを必要とする定圧予圧方式が採
用できない。そのため、上から荷重をかけて予圧した状
態で2個の玉軸受の内輪1nを軸4,9に、外輪1gを
被回転体であるフランジ2又はスリーブ10の内周面
に、それぞれ接着剤で固定する定位置予圧方式が採られ
ている。
5に示すスピンドルモータや図6に示すスイングアーム
モータ等に、小型のアンギュラ玉軸受が多用されてい
る。前者の玉軸受1は、図外の磁気ディスクが装着され
るカップ形のフランジ2を、ベース3に立設された軸4
の回りにモータMで滑らかに回転駆動させるのに使用さ
れ、特に高い回転・音響性能が要求される。また、後者
のスイングアーム用の玉軸受1は、磁気ディスクDの有
効エリアにヘッド6をアクセスして位置決めを行うスイ
ングアーム7を、ベース8に立設された軸9の回りにモ
ータで滑らかに揺動駆動させるのに使用される。これら
の玉軸受1には軸支持剛性を高めるために室温で予圧が
かけられるが、HDD装置のモータの場合は小型化が要
求されるため、スペースを必要とする定圧予圧方式が採
用できない。そのため、上から荷重をかけて予圧した状
態で2個の玉軸受の内輪1nを軸4,9に、外輪1gを
被回転体であるフランジ2又はスリーブ10の内周面
に、それぞれ接着剤で固定する定位置予圧方式が採られ
ている。
【0003】上記HDD装置の玉軸受1は、装置の輸送
時に回転部分(2,10)が回転方向に微小振動するこ
とによりフレッチング磨耗(微動磨耗)が発生して、音
響性能や振動性能に悪影響をうけやすい。このフレッチ
ング磨耗は軸受1の玉Bに発生する。そこで、フレッチ
ング磨耗対策として、軸受の玉Bにセラミックス材を使
用することが行われ始めている。これは、セラミックス
の表面特性,硬度,機械的強度,化学的安定性,磨耗係
数等が軸受鋼をはじめとする鋼材よりも優れているため
である。
時に回転部分(2,10)が回転方向に微小振動するこ
とによりフレッチング磨耗(微動磨耗)が発生して、音
響性能や振動性能に悪影響をうけやすい。このフレッチ
ング磨耗は軸受1の玉Bに発生する。そこで、フレッチ
ング磨耗対策として、軸受の玉Bにセラミックス材を使
用することが行われ始めている。これは、セラミックス
の表面特性,硬度,機械的強度,化学的安定性,磨耗係
数等が軸受鋼をはじめとする鋼材よりも優れているため
である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、セラミ
ックス製の玉は、表面特性は優れていても、鋼材製に比
べると線膨張係数が70%も小さく、縦弾性係数が50
%大きい。そのため、HDD装置のモータ用の玉軸受の
ように定位置予圧方式が採られるものでは、装置の使用
時に温度が高くなると、玉とその転動面間の接触最大応
力の変化が大きくなって軸受剛性(予圧)が大きく減少
し、極端な場合には使用時に予圧がゼロになるいわゆる
予圧抜けが発生する可能性がある。
ックス製の玉は、表面特性は優れていても、鋼材製に比
べると線膨張係数が70%も小さく、縦弾性係数が50
%大きい。そのため、HDD装置のモータ用の玉軸受の
ように定位置予圧方式が採られるものでは、装置の使用
時に温度が高くなると、玉とその転動面間の接触最大応
力の変化が大きくなって軸受剛性(予圧)が大きく減少
し、極端な場合には使用時に予圧がゼロになるいわゆる
予圧抜けが発生する可能性がある。
【0005】以下、その予圧抜け発生の可能性について
検討してみる。玉と転動面とが転がり接触する接触部の
弾性変形と応力については、ヘルツの弾性接触理論が適
用できる。一般的には、図7(a)に示したように、滑
らかな表面を持つ弾性体である二つの物体I ,IIが接触
するとき、その接点付近には対称面で互いに直交してい
る主曲率面1と2が存在する。そして、図7(b)に示
すように、物体I には主曲率面1と2の断面内にそれぞ
れ主曲率半径rI1とrI2が、また物体IIには主曲率面1
と2の断面内にそれぞれ主曲率半径rII1 とrII 2 が存
在する。これら各主曲率半径rI1,rI2,rII1 ,r
II2 (各主曲率半径は凸面のとき正とし、凹面のとき負
の符号をつけて区別する)の逆数である主曲率を、それ
ぞれρI1,ρI2,ρII1 ,ρII2 とする。
検討してみる。玉と転動面とが転がり接触する接触部の
弾性変形と応力については、ヘルツの弾性接触理論が適
用できる。一般的には、図7(a)に示したように、滑
らかな表面を持つ弾性体である二つの物体I ,IIが接触
するとき、その接点付近には対称面で互いに直交してい
る主曲率面1と2が存在する。そして、図7(b)に示
すように、物体I には主曲率面1と2の断面内にそれぞ
れ主曲率半径rI1とrI2が、また物体IIには主曲率面1
と2の断面内にそれぞれ主曲率半径rII1 とrII 2 が存
在する。これら各主曲率半径rI1,rI2,rII1 ,r
II2 (各主曲率半径は凸面のとき正とし、凹面のとき負
の符号をつけて区別する)の逆数である主曲率を、それ
ぞれρI1,ρI2,ρII1 ,ρII2 とする。
【0006】この接触部には、互いに直交する2つの長
さの半径(長半径aと短半径b)をもつ接触楕円Aが形
成される。いま、接触楕円A部に加わる垂直荷重Qによ
り接触楕円Aの中心に作用する最大接触応力をσmax 、
荷重Qによる両弾性体I,IIの接近量をδとすると、σ
max 、δはそれぞれ次式で与えられる。
さの半径(長半径aと短半径b)をもつ接触楕円Aが形
成される。いま、接触楕円A部に加わる垂直荷重Qによ
り接触楕円Aの中心に作用する最大接触応力をσmax 、
荷重Qによる両弾性体I,IIの接近量をδとすると、σ
max 、δはそれぞれ次式で与えられる。
【0007】
【数1】
【0008】そこで、上式を図8に示すようなアンギュ
ラ玉軸受1における玉Bと外輪1gの転動溝及び内輪1
nの転動溝との接触に適用して検討する。いま、玉Bが
セラミックス製で、外輪1g、内輪1nが鋼製とする。
セラミックス材は 縦弾性係数EI =3.20×104 kg/mm2 ポアソン比mI =10/2.7 線膨張係数AI =3.2 ×10-6/℃ 熱伝導率BI =10.8 w/m,k 鋼材は 縦弾性係数EII=2.12×104 kg/mm2 ポアソン比mII=10/3 線膨張係数AII=11.8×10-6/℃ 熱伝導率BII =76 w/m,k であるから、セラミックス製玉の場合の最大接触応力σ
max 及び接近量δは σmax =210 ×(1/μν) 3√{( Σρ)2Q} ……… (1) δ=(1.13 /103 )(2K/πμ)3√{ΣρQ2 } ……… (2) μν,2K/πμはρの関数となる。
ラ玉軸受1における玉Bと外輪1gの転動溝及び内輪1
nの転動溝との接触に適用して検討する。いま、玉Bが
セラミックス製で、外輪1g、内輪1nが鋼製とする。
セラミックス材は 縦弾性係数EI =3.20×104 kg/mm2 ポアソン比mI =10/2.7 線膨張係数AI =3.2 ×10-6/℃ 熱伝導率BI =10.8 w/m,k 鋼材は 縦弾性係数EII=2.12×104 kg/mm2 ポアソン比mII=10/3 線膨張係数AII=11.8×10-6/℃ 熱伝導率BII =76 w/m,k であるから、セラミックス製玉の場合の最大接触応力σ
max 及び接近量δは σmax =210 ×(1/μν) 3√{( Σρ)2Q} ……… (1) δ=(1.13 /103 )(2K/πμ)3√{ΣρQ2 } ……… (2) μν,2K/πμはρの関数となる。
【0009】図8において、玉Bの直径をd、外輪1g
の軌道溝の軸受軸線を含む断面における溝曲面の曲率半
径をro 、軸受軸線に直交する断面における溝曲面の曲
率半径をRO とし、また内輪1nの軌道溝の軸受軸線を
含む断面における溝曲面の曲率半径をri 、軸線lに直
交する断面における溝曲面の曲率半径をRi とすると、
主曲率和Σρ=ρI1+ρI2+ρII1 +ρII2 は次の式で
表される。
の軌道溝の軸受軸線を含む断面における溝曲面の曲率半
径をro 、軸受軸線に直交する断面における溝曲面の曲
率半径をRO とし、また内輪1nの軌道溝の軸受軸線を
含む断面における溝曲面の曲率半径をri 、軸線lに直
交する断面における溝曲面の曲率半径をRi とすると、
主曲率和Σρ=ρI1+ρI2+ρII1 +ρII2 は次の式で
表される。
【0010】 内輪と玉とでは、 Σρ=4 /d+(1/Ri ) −(1/ri ) ……… (3) 外輪と玉とでは、 Σρ=4 /d+(1/Ro ) −(1/ro ) ……… (4) また補助変数cosτ=|(ρI1−ρI2)+(ρII1 −
ρII2 )|/Σρは、 内輪と玉の場合 cosτ={(1/ri )+(1/Ri ) }/Σρ … (5) 外輪と玉の場合 cosτ={(1/ro )−(1/Ro ) }/Σρ … (6) である。
ρII2 )|/Σρは、 内輪と玉の場合 cosτ={(1/ri )+(1/Ri ) }/Σρ … (5) 外輪と玉の場合 cosτ={(1/ro )−(1/Ro ) }/Σρ … (6) である。
【0011】ばね定数k=dQ/dδ より k=1/{(1.13 /103 )(2K/πμ) }・3 /2 ・ 3 √(Q/Σρ)(7) ここで、HDD用玉軸受である名番B5−39(内径5
mm,外径13mm,幅3mm)における直径2mmの
玉をセラミックス製にしたと仮定して数値計算を行って
みる。
mm,外径13mm,幅3mm)における直径2mmの
玉をセラミックス製にしたと仮定して数値計算を行って
みる。
【0012】玉直径d=2.0mm ri =1.07mm(平均)、 ro =1.07mm
(平均) Ri =3.5mm、 Ro =5.50mm+δs =5.
508mm ただし、すきまδs =16μm(平均) これらの値を式(3)〜(6)に当てはめてΣρ、co
sτを算出し、μ,ν,μν,2K/πμを求めた結果を
表1に示す。
(平均) Ri =3.5mm、 Ro =5.50mm+δs =5.
508mm ただし、すきまδs =16μm(平均) これらの値を式(3)〜(6)に当てはめてΣρ、co
sτを算出し、μ,ν,μν,2K/πμを求めた結果を
表1に示す。
【0013】
【表1】
【0014】また、式(1),(2)及び(7)より、
内輪,外輪それぞれの最大接触応力σmax 、接近量(変
形量)δを求めると この式(8)より k∝3 √Q∝σmaxiの関係が成立す
る。
内輪,外輪それぞれの最大接触応力σmax 、接近量(変
形量)δを求めると この式(8)より k∝3 √Q∝σmaxiの関係が成立す
る。
【0015】次に、玉が鋼製で、外輪,内輪も鋼製とし
た場合について述べると、鋼製玉の場合の最大接触応力
σmax 及び接近量δは σmax =187 ×(1/μν) 3√{( Σρ)2Q} δ=(1.28 /103 )(2K/πμ)3√{ΣρQ2 } である。よって、同じ最大接触応力σ’maxiに対する鋼
玉の荷重Q’及び接近量δc ’をセラミックス玉の荷重
Q及び接近量δc と比べると、 ただし、δc =δi +δo である。
た場合について述べると、鋼製玉の場合の最大接触応力
σmax 及び接近量δは σmax =187 ×(1/μν) 3√{( Σρ)2Q} δ=(1.28 /103 )(2K/πμ)3√{ΣρQ2 } である。よって、同じ最大接触応力σ’maxiに対する鋼
玉の荷重Q’及び接近量δc ’をセラミックス玉の荷重
Q及び接近量δc と比べると、 ただし、δc =δi +δo である。
【0016】鋼玉の場合の荷重Q’及び接近量δ’は、
いずれもセラミックス玉の1.4 倍となることがわかる。
σmaxiの値を20,40,60,80,100,12
0,140kg/mm2として、セラミックス玉と鋼玉
との荷重−接近量を計算した結果を、図9にプロットし
て示した。一般に軸受の予圧の大きさσmax は100k
g/mm2 であり、そのときのセラミックス玉の接触点
の弾性変形量(接近量)δc は、図9からδc =0.522
μmとなり、相当小さい値である。
いずれもセラミックス玉の1.4 倍となることがわかる。
σmaxiの値を20,40,60,80,100,12
0,140kg/mm2として、セラミックス玉と鋼玉
との荷重−接近量を計算した結果を、図9にプロットし
て示した。一般に軸受の予圧の大きさσmax は100k
g/mm2 であり、そのときのセラミックス玉の接触点
の弾性変形量(接近量)δc は、図9からδc =0.522
μmとなり、相当小さい値である。
【0017】以下、軸受予圧に対する温度差の影響を、
セラミックス玉と鋼玉との場合について比較検討する。
鋼材とセラミックス材との線膨張係数の差ΔAは、 ΔA=11.8×10-6/℃( 鋼)−3.2 ×10-6/℃( セ)=
8.6 ×10-6/℃ 玉と内輪軌道面との接触剛性はその最大接触応力σmaxi
に比例し、接触点の弾性変形量δc が0.2μm以下で
は急激に接触剛性の値は小さくなる。そこでいま、鋼と
セラミックスとの弾性変形量(接近量)の差Δδc =0.
2 μmに相当する温度変化ΔTの値を、玉径d=2mm
とした場合について計算すると ΔT=Δδc /ΔA・玉径=0.2 /(8.6 ×10-6×2×
103 )=11.6(℃) になる。したがって、上記の一般的なσmax =100k
g/mm2 におけるセラミックス玉の弾性変形量δc =
0.522 μm(図2参照)の値は30.3℃の温度差に相当す
る。つまり、セラミックス玉では、予圧設定時と軸受使
用時との温度差が30.3℃に達したとき予圧が無くな
りσmaxi=0となって予圧抜け現象が生じる。
セラミックス玉と鋼玉との場合について比較検討する。
鋼材とセラミックス材との線膨張係数の差ΔAは、 ΔA=11.8×10-6/℃( 鋼)−3.2 ×10-6/℃( セ)=
8.6 ×10-6/℃ 玉と内輪軌道面との接触剛性はその最大接触応力σmaxi
に比例し、接触点の弾性変形量δc が0.2μm以下で
は急激に接触剛性の値は小さくなる。そこでいま、鋼と
セラミックスとの弾性変形量(接近量)の差Δδc =0.
2 μmに相当する温度変化ΔTの値を、玉径d=2mm
とした場合について計算すると ΔT=Δδc /ΔA・玉径=0.2 /(8.6 ×10-6×2×
103 )=11.6(℃) になる。したがって、上記の一般的なσmax =100k
g/mm2 におけるセラミックス玉の弾性変形量δc =
0.522 μm(図2参照)の値は30.3℃の温度差に相当す
る。つまり、セラミックス玉では、予圧設定時と軸受使
用時との温度差が30.3℃に達したとき予圧が無くな
りσmaxi=0となって予圧抜け現象が生じる。
【0018】セラミックス製玉と鋼製内外輪の組合せで
は、温度差ΔTにより玉径dのみが変化する。その変化
量Δdは、 Δd=ΔA×ΔT×d=8.6 ×10-6×ΔT×d …(10) 例えば、d=2mmで最大接触応力σmaxi=100kg
/mm2 とすると、このときのセラミックス玉の弾性変
形量δc =0.52μmであり、 (イ)組立時温度20℃、使用時温度80℃とするとΔ
T=60℃となり、 Δd=8.6 ×10-6×60×2.0 ×103 μm=−1.032 μ
m 予圧抜けが生じる条件は寸法差Δ=δc +Δd<0であ
るから、この場合は予圧が抜ける。
は、温度差ΔTにより玉径dのみが変化する。その変化
量Δdは、 Δd=ΔA×ΔT×d=8.6 ×10-6×ΔT×d …(10) 例えば、d=2mmで最大接触応力σmaxi=100kg
/mm2 とすると、このときのセラミックス玉の弾性変
形量δc =0.52μmであり、 (イ)組立時温度20℃、使用時温度80℃とするとΔ
T=60℃となり、 Δd=8.6 ×10-6×60×2.0 ×103 μm=−1.032 μ
m 予圧抜けが生じる条件は寸法差Δ=δc +Δd<0であ
るから、この場合は予圧が抜ける。
【0019】(ロ)組立時温度6 0℃、使用時温度80
℃とするとΔT=2 0℃となり、 Δd=8.6 ×10-6×20×2.0 ×103 μm=−0.344 μ
m の寸法差がつくことになる。この場合は、Δ=0.18μm
であるから予圧は抜けない。しかし、図9からセラミッ
クス玉の弾性変形量δc =0.18μmのときの最大接触応
力σmaxi≒60kg/mm2 であるから、剛性は最初の
σmax =100kg/mm2 の時の剛性値に対し40%
減少したことになる。
℃とするとΔT=2 0℃となり、 Δd=8.6 ×10-6×20×2.0 ×103 μm=−0.344 μ
m の寸法差がつくことになる。この場合は、Δ=0.18μm
であるから予圧は抜けない。しかし、図9からセラミッ
クス玉の弾性変形量δc =0.18μmのときの最大接触応
力σmaxi≒60kg/mm2 であるから、剛性は最初の
σmax =100kg/mm2 の時の剛性値に対し40%
減少したことになる。
【0020】(ハ)組立時温度6 0℃、これを輸送する
時の温度が20〜0℃と低下した場合は、温度変化ΔT
=−40〜−60℃となり、Δd=0.69〜1.0 μmにな
るからΔ=δc +Δd=1.21〜1.52μmと、予圧が増加
する方向になる。Δ=δc とおいて最大接触応力σmaxi
を求めてみる。(8)式より、セラミックス玉の弾性変
形量δc は δc =δi +δo =(8.05×10-4+8.43×10-4)3 √Q2 =16.48 ×10-4Q2/3 よって Q1/3 =√(δc ・104 /16.48 )=24.633√δc 同じく(8)式より、 σmaxi=1.78×102 3 √Q =1.78×102 ×24.633√δc =43.85 ×102 √δc …(11) すなわち、 δc =1.21×10-3mmではσmaxi=152.5 kg/mm2 δc =1.52×10-3mmではσmaxi=171 kg/mm2 で
あり、σmaxi=100 kg/mm2 に対して、温度が組立
時より下がると予圧力が増大して接触圧が大となる。
時の温度が20〜0℃と低下した場合は、温度変化ΔT
=−40〜−60℃となり、Δd=0.69〜1.0 μmにな
るからΔ=δc +Δd=1.21〜1.52μmと、予圧が増加
する方向になる。Δ=δc とおいて最大接触応力σmaxi
を求めてみる。(8)式より、セラミックス玉の弾性変
形量δc は δc =δi +δo =(8.05×10-4+8.43×10-4)3 √Q2 =16.48 ×10-4Q2/3 よって Q1/3 =√(δc ・104 /16.48 )=24.633√δc 同じく(8)式より、 σmaxi=1.78×102 3 √Q =1.78×102 ×24.633√δc =43.85 ×102 √δc …(11) すなわち、 δc =1.21×10-3mmではσmaxi=152.5 kg/mm2 δc =1.52×10-3mmではσmaxi=171 kg/mm2 で
あり、σmaxi=100 kg/mm2 に対して、温度が組立
時より下がると予圧力が増大して接触圧が大となる。
【0021】以上の試算から明らかなように、セラミッ
クスと鋼との線膨張率αの差が予圧の増減をきたし、軸
受使用温度が組立温度より上がると予圧抜け、下がると
予圧力の増大をきたす。このように軸受剛性が変化する
と、例えばHDDスピンドルモータの固有振動数が変化
し、玉軸受の持つ玉,内外輪転動面のそれぞれの幾何学
的誤差成分の山数の組合せにより発生する特定周波数振
動に一致することによる振動共振の可能性が大きくな
る。しかも、回転の始動時から温度が安定するまでの時
間的変化を考えると、必然的に共振が出現することにな
る。
クスと鋼との線膨張率αの差が予圧の増減をきたし、軸
受使用温度が組立温度より上がると予圧抜け、下がると
予圧力の増大をきたす。このように軸受剛性が変化する
と、例えばHDDスピンドルモータの固有振動数が変化
し、玉軸受の持つ玉,内外輪転動面のそれぞれの幾何学
的誤差成分の山数の組合せにより発生する特定周波数振
動に一致することによる振動共振の可能性が大きくな
る。しかも、回転の始動時から温度が安定するまでの時
間的変化を考えると、必然的に共振が出現することにな
る。
【0022】そこで、本発明は、このような従来の問題
点に着目してなされたものであり、フレッチング磨耗防
止と予圧抜け防止の両方を同時に可能とする玉軸受を提
供することを目的とする。
点に着目してなされたものであり、フレッチング磨耗防
止と予圧抜け防止の両方を同時に可能とする玉軸受を提
供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1に係る本発明は、玉軸受の玉が、当該玉
軸受の軌道輪と略同じ線膨張係数を持つ金属材料からな
る金属ボールの表面にセラミックス材をコーティングし
てなることを特徴とする。この発明の玉軸受の玉は、そ
の表面がセラミックス材でコーティングしてあるから、
表面硬度,機械的強度,化学的安定性に優れ、セラミッ
クス製玉と同様の耐フレッチング特性を有し、しかも玉
の本体は鋼などの金属製であるから線膨張係数が内外輪
と同じ値で、軸受全体の温度上昇に対し接触部の最大応
力変化が発生しない。従って使用時に温度上昇しても、
軸受剛性の低下や予圧抜けという現象は発現しない。
めに、請求項1に係る本発明は、玉軸受の玉が、当該玉
軸受の軌道輪と略同じ線膨張係数を持つ金属材料からな
る金属ボールの表面にセラミックス材をコーティングし
てなることを特徴とする。この発明の玉軸受の玉は、そ
の表面がセラミックス材でコーティングしてあるから、
表面硬度,機械的強度,化学的安定性に優れ、セラミッ
クス製玉と同様の耐フレッチング特性を有し、しかも玉
の本体は鋼などの金属製であるから線膨張係数が内外輪
と同じ値で、軸受全体の温度上昇に対し接触部の最大応
力変化が発生しない。従って使用時に温度上昇しても、
軸受剛性の低下や予圧抜けという現象は発現しない。
【0024】また、温度変化の過渡現象に対しても、セ
ラミックス製玉より縦弾性係数が小さく、熱伝導度も大
であるから有利である。
ラミックス製玉より縦弾性係数が小さく、熱伝導度も大
であるから有利である。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。実施形態1: 本発明の第1の実施形態として、HDD用
玉軸受(B5−39)の転動体に用いる直径2mmの表
面被覆球体(玉)をとり上げる。
を参照して説明する。実施形態1: 本発明の第1の実施形態として、HDD用
玉軸受(B5−39)の転動体に用いる直径2mmの表
面被覆球体(玉)をとり上げる。
【0026】その成膜工程の概要を述べると、 熱処理後に研磨仕上げして最終仕上げの直前の精度と
した直径2mmの鋼球の表面に、PVD法によりTiN
を所定の処理温度でコーティング処理する。 その後、真空炉にて焼入れ,焼戻し処理を行って、前
記コーティング処理温度による硬度低下を回復させる。
した直径2mmの鋼球の表面に、PVD法によりTiN
を所定の処理温度でコーティング処理する。 その後、真空炉にて焼入れ,焼戻し処理を行って、前
記コーティング処理温度による硬度低下を回復させる。
【0027】次いで、コーティング膜厚さ0.2〜
2.5μmになるまでダイヤモンドラップ加工すること
により、熱処理変形を取り除き、表面粗さ,ウエービネ
ス,真円度,寸法精度を所定の精度に整える。 なお、上記〜の工程は、被膜強度を強くするため
に、ワークの鋼球を200〜600℃という比較的高温
の範囲で適宜に選択した温度でPVD処理する高温成膜
の場合である。工程省略してコストダウンを図るとき
は、ワークの鋼球を160℃という低温でPVD処理
し、その後の熱処理を省いてから直接の工程に進
む。
2.5μmになるまでダイヤモンドラップ加工すること
により、熱処理変形を取り除き、表面粗さ,ウエービネ
ス,真円度,寸法精度を所定の精度に整える。 なお、上記〜の工程は、被膜強度を強くするため
に、ワークの鋼球を200〜600℃という比較的高温
の範囲で適宜に選択した温度でPVD処理する高温成膜
の場合である。工程省略してコストダウンを図るとき
は、ワークの鋼球を160℃という低温でPVD処理
し、その後の熱処理を省いてから直接の工程に進
む。
【0028】この実施形態1では、160℃という低温
PVD処理を行った。 (1)PVD処理工程の例 図1に示すようなHCD方式のPVD装置を用いる。こ
の装置の上蓋1を開けて、チャンバ2内に、ワークであ
る鋼球Wを多数個配列する。 (イ)チャンバ内を排気し高真空にする(10-10 〜1
0-13 Torr)。
PVD処理を行った。 (1)PVD処理工程の例 図1に示すようなHCD方式のPVD装置を用いる。こ
の装置の上蓋1を開けて、チャンバ2内に、ワークであ
る鋼球Wを多数個配列する。 (イ)チャンバ内を排気し高真空にする(10-10 〜1
0-13 Torr)。
【0029】(ロ)成膜用金属母材3であるTiをるつ
ぼ4内に装着する。 (ハ)その成膜用金属母材3を電子ビーム銃5により加
熱溶融して蒸発させる。 (ニ)反応ガスのN2 をキャリアガスのArと共にチャ
ンバ2内に導入し、チャンバ内を10-3〜10-4Tor
rに調整する。
ぼ4内に装着する。 (ハ)その成膜用金属母材3を電子ビーム銃5により加
熱溶融して蒸発させる。 (ニ)反応ガスのN2 をキャリアガスのArと共にチャ
ンバ2内に導入し、チャンバ内を10-3〜10-4Tor
rに調整する。
【0030】(ホ)プラズマ電子銃6と成膜用金属母材
3との間にグロー放電を行い、Tiをイオン化しプラズ
マ状態にしてワークWの表面にTiNの膜を生成させ
る。このときの反応は 2Ti+N2 →2TiN (なお、TiCを生成するときは、N2 に代えてC2 H
2 を導入し、2Ti+C2 H2 →2TiC+H2 とする
ことができる。) (ヘ)この時、ワークWと成膜用金属母材3との間に
は、数100〜数1000Vの電位差を選択する。
3との間にグロー放電を行い、Tiをイオン化しプラズ
マ状態にしてワークWの表面にTiNの膜を生成させ
る。このときの反応は 2Ti+N2 →2TiN (なお、TiCを生成するときは、N2 に代えてC2 H
2 を導入し、2Ti+C2 H2 →2TiC+H2 とする
ことができる。) (ヘ)この時、ワークWと成膜用金属母材3との間に
は、数100〜数1000Vの電位差を選択する。
【0031】成膜厚さは、予め成膜速度(概ね数〜数1
0μm/hr)を正しく求めておき、時間で制御する。
この実施形態1の例では、0.5〜1μm/hrであっ
た。また、ワークWは予め100℃以上に予熱しておく
のが望ましい。この実施形態例では、PVD成膜時のワ
ークWの温度は160℃を選択したが、200〜600
℃の処理温度で適宜に選択できる。先にも述べたよう
に、工程省略によるコストダウンを図るときは低温成膜
が、被膜強度を強くしたい時は高温成膜が望ましい。 (2)フレッチング評価試験 上記の低温PVD処理の工程を経て膜厚2.5μmのT
iN被覆に成膜した直径2mmの表面被覆球体を、膜厚
2.0μmになるまでダイヤモンドラップ加工し、寸法
精度を整えたものを転動体として、HDD装置のスピン
ドルモータ用の玉軸受(B5−39)を4個組み立て
た。これを試験体として図2に示す試験装置によりフレ
ッチング耐久試験を行った。
0μm/hr)を正しく求めておき、時間で制御する。
この実施形態1の例では、0.5〜1μm/hrであっ
た。また、ワークWは予め100℃以上に予熱しておく
のが望ましい。この実施形態例では、PVD成膜時のワ
ークWの温度は160℃を選択したが、200〜600
℃の処理温度で適宜に選択できる。先にも述べたよう
に、工程省略によるコストダウンを図るときは低温成膜
が、被膜強度を強くしたい時は高温成膜が望ましい。 (2)フレッチング評価試験 上記の低温PVD処理の工程を経て膜厚2.5μmのT
iN被覆に成膜した直径2mmの表面被覆球体を、膜厚
2.0μmになるまでダイヤモンドラップ加工し、寸法
精度を整えたものを転動体として、HDD装置のスピン
ドルモータ用の玉軸受(B5−39)を4個組み立て
た。これを試験体として図2に示す試験装置によりフレ
ッチング耐久試験を行った。
【0032】図2において、10はワッシャと予圧バネ
からなる軸方向付勢手段で、軸11に固定されている。
軸11は回転止め12で固定されている。下部をサポー
ト軸受14で支持したハウジング16はACサーボモー
タ17に連結されており、設定した角度,回数で揺動回
転駆動される。20は4個の試験軸受で、転動体20A
として上記の表面被覆球体が組み込まれている。各試験
軸受20は、その外輪20−1をハウジング16の内径
に嵌合するとともに内輪20−2を軸11に通し、軸1
1とは別体のスリーブ21A,21Bを交互に重ねて装
着され、軸,内輪は回転せず、ハウジング,外輪が回転
可能に支持される。軸方向付勢手段10の皿バネ22で
スリーブ21A,21Bが軸方向に押圧されて、試験軸
受20の内輪20−2,外輪20−1,転動体20Aに
予圧(Fa)が加えられる。
からなる軸方向付勢手段で、軸11に固定されている。
軸11は回転止め12で固定されている。下部をサポー
ト軸受14で支持したハウジング16はACサーボモー
タ17に連結されており、設定した角度,回数で揺動回
転駆動される。20は4個の試験軸受で、転動体20A
として上記の表面被覆球体が組み込まれている。各試験
軸受20は、その外輪20−1をハウジング16の内径
に嵌合するとともに内輪20−2を軸11に通し、軸1
1とは別体のスリーブ21A,21Bを交互に重ねて装
着され、軸,内輪は回転せず、ハウジング,外輪が回転
可能に支持される。軸方向付勢手段10の皿バネ22で
スリーブ21A,21Bが軸方向に押圧されて、試験軸
受20の内輪20−2,外輪20−1,転動体20Aに
予圧(Fa)が加えられる。
【0033】試験条件は次のように設定した。 試験軸受 :B5−39 周波数 :27Hz 揺動角度 :2° 荷重Fa :14.7N 揺動回数 :1×105 回 グリース量:12mg(NS7) 以上の条件で試験を行った後、4個の試験軸受20を取
り出して、その平均の軸受音響値を求め、その値を転動
体20Aである表面被覆球体の被膜厚さとの関係で整理
した。 (3)フレッチング評価結果 図3に、フレッチング試験にかける前の音響性能db
(マイクロホン音圧計による)と被膜厚さとの関係を示
す。
り出して、その平均の軸受音響値を求め、その値を転動
体20Aである表面被覆球体の被膜厚さとの関係で整理
した。 (3)フレッチング評価結果 図3に、フレッチング試験にかける前の音響性能db
(マイクロホン音圧計による)と被膜厚さとの関係を示
す。
【0034】図4に、フレッチング試験後の音響性能d
bと被膜厚さとの関係を示す。図3,図4とも、縦軸の
音響性能は、試験前の被膜厚さ2.0μmの試験軸受
(B5−39)の音圧(db)を1.0とした比で示し
た。図3に示すように、ダイヤモンドラップ加工済の完
成被膜厚さが0.2μm未満では、不均一成膜となって
ムラが生じ、表面粗さ,真円度,寸法精度が不十分のた
め音響性能がバラツキ且つその値が悪くなっている。ま
た、被膜厚さとコストとの関係については、時間との関
係で正の比例相関があるものの、膜厚2.5μmを越え
るあたりから比例関係がくずれて成膜速度がやや低下し
てくることから、コストの立ち上がりがみられる。この
ことから、転動体として完成された表面被覆球体の被膜
厚さは0.2〜2.5μmの範囲が、音響性能上及びコ
ストの点から望ましいといえる。
bと被膜厚さとの関係を示す。図3,図4とも、縦軸の
音響性能は、試験前の被膜厚さ2.0μmの試験軸受
(B5−39)の音圧(db)を1.0とした比で示し
た。図3に示すように、ダイヤモンドラップ加工済の完
成被膜厚さが0.2μm未満では、不均一成膜となって
ムラが生じ、表面粗さ,真円度,寸法精度が不十分のた
め音響性能がバラツキ且つその値が悪くなっている。ま
た、被膜厚さとコストとの関係については、時間との関
係で正の比例相関があるものの、膜厚2.5μmを越え
るあたりから比例関係がくずれて成膜速度がやや低下し
てくることから、コストの立ち上がりがみられる。この
ことから、転動体として完成された表面被覆球体の被膜
厚さは0.2〜2.5μmの範囲が、音響性能上及びコ
ストの点から望ましいといえる。
【0035】なお、このフレッチング評価試験における
PVD処理において、処理温度400℃の高温成膜工程
を選択した場合、その後の真空焼入れ,焼戻し後に球体
表面に形成されたTiNの被膜に、熱き裂と思われるき
裂が発生するものもあることが確認された。この点から
も、成膜厚さは2.5μm以下にしておく必要がある。
また、音響性能の面からみると、図3から明らかなよう
に、膜厚が0.2μm以上で安定した性能が得られてお
り、下限を0.2μmにすることが望ましいといえる。
PVD処理において、処理温度400℃の高温成膜工程
を選択した場合、その後の真空焼入れ,焼戻し後に球体
表面に形成されたTiNの被膜に、熱き裂と思われるき
裂が発生するものもあることが確認された。この点から
も、成膜厚さは2.5μm以下にしておく必要がある。
また、音響性能の面からみると、図3から明らかなよう
に、膜厚が0.2μm以上で安定した性能が得られてお
り、下限を0.2μmにすることが望ましいといえる。
【0036】図4には、フレッチング試験にかけた後の
音響性能dbと被膜厚さとの関係を示した(×印)。こ
の揺動試験後の音響特性においても、完成球体被膜厚さ
0.2μm未満では顕著な音響劣化がみられる。また、
膜厚2.5μmを越えると、被膜の一部が疲労剥離して
損傷し、被膜の劣化による音響性能の低下がみられる。
このことから、図3の場合と同様に、被膜厚さは0.2
〜2.5μmの範囲が耐フレッチングに優れていること
がわかる。実施形態2: 本発明の第2の実施形態として、HDD用
玉軸受(B5−39)の転動体に用いる直径2mmの鋼
球表面に、400℃でPVD処理してTiN被膜を成膜
した場合について説明する。
音響性能dbと被膜厚さとの関係を示した(×印)。こ
の揺動試験後の音響特性においても、完成球体被膜厚さ
0.2μm未満では顕著な音響劣化がみられる。また、
膜厚2.5μmを越えると、被膜の一部が疲労剥離して
損傷し、被膜の劣化による音響性能の低下がみられる。
このことから、図3の場合と同様に、被膜厚さは0.2
〜2.5μmの範囲が耐フレッチングに優れていること
がわかる。実施形態2: 本発明の第2の実施形態として、HDD用
玉軸受(B5−39)の転動体に用いる直径2mmの鋼
球表面に、400℃でPVD処理してTiN被膜を成膜
した場合について説明する。
【0037】この例のPVD処理工程は、図1に示した
HCD方式のPVD装置を用い、処理温度以外は実施形
態1 と同じ条件下で、膜厚2.5μmのTiN被覆の成
膜を行った。400℃という高温でPVD処理された鋼
球は、前工程の焼入れ,焼戻し時における焼戻し温度よ
り高い温度で加熱されることになり硬度が低下する。そ
こで真空炉内で830℃,30分間の加熱を施し、その
後、焼入れ,焼戻しを行い、母材硬さHRC60〜63
にして前記コーティング処理温度による硬度低下を回復
させた。次いで、コーティング膜厚さ2.0μmになる
までダイヤモンドラップ加工して表面粗さ,真円度,寸
法精度等を所定の精度に整えた。
HCD方式のPVD装置を用い、処理温度以外は実施形
態1 と同じ条件下で、膜厚2.5μmのTiN被覆の成
膜を行った。400℃という高温でPVD処理された鋼
球は、前工程の焼入れ,焼戻し時における焼戻し温度よ
り高い温度で加熱されることになり硬度が低下する。そ
こで真空炉内で830℃,30分間の加熱を施し、その
後、焼入れ,焼戻しを行い、母材硬さHRC60〜63
にして前記コーティング処理温度による硬度低下を回復
させた。次いで、コーティング膜厚さ2.0μmになる
までダイヤモンドラップ加工して表面粗さ,真円度,寸
法精度等を所定の精度に整えた。
【0038】この実施形態例では、試験球体の熱処理後
の変形も大きく、したがって加工コストが上昇するが、
処理温度160℃の場合(実施形態1)に比べて被膜材
と試験球体表面との密着性が高くなるため、過酷な使用
条件下では音響寿命の点で有利になる。図4は、被膜厚
さ0.2〜2.5μmの範囲において、160℃の低温
PVD処理(×印)よりも400℃の高温PVD処理
(○印)を行ったものの方が、音響性能のバラツキが少
なく、音響劣化にも優れていることを示している。
の変形も大きく、したがって加工コストが上昇するが、
処理温度160℃の場合(実施形態1)に比べて被膜材
と試験球体表面との密着性が高くなるため、過酷な使用
条件下では音響寿命の点で有利になる。図4は、被膜厚
さ0.2〜2.5μmの範囲において、160℃の低温
PVD処理(×印)よりも400℃の高温PVD処理
(○印)を行ったものの方が、音響性能のバラツキが少
なく、音響劣化にも優れていることを示している。
【0039】なお、上記各実施形態では硬質被膜として
TiN被膜について説明したが、これに限らずTiC,
AlN,TiAlN,ZrN,HfN,CrN,TiC
N,WC,ダイヤモンド,Al2 O3 被膜等についても
同様に本発明が適用できる。また、硬質被膜をPVD法
により形成する場合について述べたが、CVD法もこれ
らの成膜法として同様に有効である。
TiN被膜について説明したが、これに限らずTiC,
AlN,TiAlN,ZrN,HfN,CrN,TiC
N,WC,ダイヤモンド,Al2 O3 被膜等についても
同様に本発明が適用できる。また、硬質被膜をPVD法
により形成する場合について述べたが、CVD法もこれ
らの成膜法として同様に有効である。
【0040】また、表面被覆球体の母材材料について
は、2次硬化能を有する各種超硬合金,SKHのような
高速度鋼,SKDのような耐摩不変形用特殊鋼、SUS
440Cのようなマルテンサイト系ステンレス鋼などで
は、成膜時の高温処理でも硬度低下が生じないので、成
膜時の焼入れ,焼戻し処理を省くことができる。また、
PVD処理前の球体の精度を高精度にしておくことによ
り、成膜後のダイヤモンドラップ加工工程を省略するこ
とができる。
は、2次硬化能を有する各種超硬合金,SKHのような
高速度鋼,SKDのような耐摩不変形用特殊鋼、SUS
440Cのようなマルテンサイト系ステンレス鋼などで
は、成膜時の高温処理でも硬度低下が生じないので、成
膜時の焼入れ,焼戻し処理を省くことができる。また、
PVD処理前の球体の精度を高精度にしておくことによ
り、成膜後のダイヤモンドラップ加工工程を省略するこ
とができる。
【0041】また、ダイヤモンドラップに代えて、B
N,SiCなどの砥粒を使用することもできる。また、
玉径がより小さくなっても、例えばd=1/16インチ
(1.588 1.20mm)として2mm玉と比較しても、玉
径比は0.794 倍、δc は0.809 倍だから、最大接触応力
(予圧変化)もほぼ同様の値である。
N,SiCなどの砥粒を使用することもできる。また、
玉径がより小さくなっても、例えばd=1/16インチ
(1.588 1.20mm)として2mm玉と比較しても、玉
径比は0.794 倍、δc は0.809 倍だから、最大接触応力
(予圧変化)もほぼ同様の値である。
【0042】以上のように、特に、耐フレッチング性能
が要求されるスピンドル用転がり軸受やHDD装置のス
イングアーム用軸受の転動体に、膜厚0.2〜2.5μ
mの硬質被膜をPVD法やCVD法によって成膜するこ
とにより、当該軸受の音響特性を向上せしめ、しかも低
コストの要求を満たす転がり軸受を提供することができ
る。
が要求されるスピンドル用転がり軸受やHDD装置のス
イングアーム用軸受の転動体に、膜厚0.2〜2.5μ
mの硬質被膜をPVD法やCVD法によって成膜するこ
とにより、当該軸受の音響特性を向上せしめ、しかも低
コストの要求を満たす転がり軸受を提供することができ
る。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る発
明によれば、球体表面に硬質被膜を0.2〜2.5μm
の厚さで成膜して、耐フレッチング性に優れた表面被覆
球体を低コストで提供することができる。また、請求項
2に係る発明によれば、請求項1の表面被覆球体を転動
体として、長寿命で音響特性の良好な低コストの軸受装
置を提供できる。
明によれば、球体表面に硬質被膜を0.2〜2.5μm
の厚さで成膜して、耐フレッチング性に優れた表面被覆
球体を低コストで提供することができる。また、請求項
2に係る発明によれば、請求項1の表面被覆球体を転動
体として、長寿命で音響特性の良好な低コストの軸受装
置を提供できる。
【図1】HCD方式のPVD装置の概要図である。
【図2】フレッチング評価試験装置の概要図である。
【図3】球体被覆膜厚とフレッチング試験前の音響性能
及び製造コストとの関係を示した図である。
及び製造コストとの関係を示した図である。
【図4】球体被覆膜厚とフレッチング試験後の音響性能
との関係を、PVD処理温度別に示した図である。
との関係を、PVD処理温度別に示した図である。
【図5】HDDスピンドルモータの断面図である。
【図6】HDDスイングアームモータの一部切り欠き斜
視図である。
視図である。
【図7】二つの曲面の点接触部の主曲率面と主曲率半径
とを説明する図で、(a)は斜視図、(b)は断面図で
ある。
とを説明する図で、(a)は斜視図、(b)は断面図で
ある。
【図8】アンギュラ玉軸受の部分断面図である。
【図9】セラミックス玉と鋼玉とにおける荷重Q−接近
量δc の計算値と最大接触応力σmaxiとの相関を示す図
である。
量δc の計算値と最大接触応力σmaxiとの相関を示す図
である。
1 玉軸受 1n 内輪 1g 外輪 B 玉
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀家 章史 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J101 AA02 AA42 AA54 AA62 BA10 DA03 DA05 DA11 EA02 EA05 EA06 EA41 EA42 EA43 EA44 EA78 FA01 FA15 FA35 FA60 GA53 5D109 BB04 BB13 BB16 BB21 BB27 5H605 AA00 AA05 BB05 CC04 DD05 EA19 EB04 EB10 FF00 FF10 GG10
Claims (1)
- 【請求項1】 玉軸受の玉が、当該玉軸受の軌道輪と略
同じ線膨張係数を持つ金属材料からなる金属ボールの表
面にセラミックス材をコーティングしてなることを特徴
とするセラミックスコーティングボールを用いた軸受。
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