JP2000327344A - 光学素子成形用型の製造方法及び光学素子成形用型 - Google Patents

光学素子成形用型の製造方法及び光学素子成形用型

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JP2000327344A
JP2000327344A JP11136430A JP13643099A JP2000327344A JP 2000327344 A JP2000327344 A JP 2000327344A JP 11136430 A JP11136430 A JP 11136430A JP 13643099 A JP13643099 A JP 13643099A JP 2000327344 A JP2000327344 A JP 2000327344A
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mold
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oxygen
molding
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Hiroaki Negishi
広明 根岸
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 離型性が良好であり、摩擦係数が小さく、摩
耗量も少ない光学素子成形用型を製造する。 【解決手段】 クロムを含む型基材の表面または型基材
上に形成したクロムを主成分とする薄膜に少なくとも酸
素をイオン注入する工程と、イオン注入の後、型基材を
酸素を含む雰囲気中で加熱処理する工程とによって製造
する。生成される酸化クロムが安定しており、結晶も小
さいため、摩擦係数が小さく、摩耗量の少なくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラスからなるレ
ンズ、プリズム等の光学素子をガラス素材のプレス成形
により製造するために使用される光学素子成形用型の製
造方法及びこの方法によって製造される光学素子成形用
型に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、成形型を用いて比較的小径のガラ
スレンズを直接にプレス成形することが行われている。
この成形に用いる成形型の素材としては、セラミックや
超硬合金等の材料が用いられており、これらの材料から
なる成形面に離型性耐摩耗膜として、貴金属膜、カーボ
ン系膜、各種窒化膜、各種酸化膜、各種炭化膜等を形成
している。これにより、成形されるガラスレンズの融着
を防止したり、型の耐久性を改善している。
【0003】例えば、特公平3−61616号公報に
は、クロム及び窒素を主成分とする化合物を成形面に形
成することにより、良好な離型性を有し、長寿命となっ
た型が開示されている。また、特公平4−74292号
公報には、酸化クロム、酸炭化クロム、酸窒化クロム、
酸炭窒化クロムなどのクロム含有物質の焼結体によって
成形面を形成することにより、ガラスに対する潤滑性効
果が優れ、且つガラスとの親和性に劣る成形面とするこ
とが開示されている。さらに、特公平4−45458号
公報には、クロム及び窒素からなる成形面を有した光学
素子成形用型を酸化可能な雰囲気で加熱することによっ
て、三酸化二クロムを最表層に形成し、これにより、離
型性が良好で、高硬度の成形面にすることが開示されて
いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の光学素子成形用型では、近年の高精度な画質が
要求されるレンズ系のニーズの高まりや、レンズ単体の
精度の高品質化に対して、成形性、耐久性及び経済性を
十分に満足するものとはなっていない。特に、成形条件
の高度化によって光学素子成形用型の使用環境が厳しく
なり、且つ光学素子成形用型への要求も高度となってい
る現状において、上述した従来の光学素子成形用型は、
型の転写性不足、成形面が粗れ易い、劣化が早い、耐久
性が短いなどの問題を有している。
【0005】本発明は、このような従来技術の問題点に
着目してなされたものであり、光学素子の高面精度化に
対応することができる高転写性を有しており、しかも離
型性が良好で且つ寿命を延命化できる光学素子成形用型
及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1の発明の光学素子成形用型の製造方法は、
クロムを含む型基材の表面または型基材上に形成したク
ロムを主成分とする薄膜に少なくとも酸素をイオン注入
する工程と、このイオン注入の後、上記型基材を酸素を
含む雰囲気中で加熱処理する工程と、を備えていること
を特徴とする。
【0007】イオン注入は、イオンを加速して表面に強
制的に元素を添加するものであり、クロム化合物に酸素
をイオン注入することにより、酸化クロムを生成するこ
とが出来る。すなわち、クロム化合物の表面に酸素イオ
ンが打ち込まれると、クロムと酸素イオンとの衝突、反
跳により、クロムが励起されるため、酸化クロムの合成
が可能となる.また、金属へのイオン注入は、表面に強
制的に元素を添加するため、固溶限を越えた過飽和の状
態になりうることが分かっており、従来では見られない
性質の材料形成が可能になる。さらに、最表面の結晶粒
の大きさは微細であり、滑らかな表面のままで酸化クロ
ムを形成することができる。
【0008】このイオン注入によって形成された酸化ク
ロムを光学素子成形用型として用いることを検討したと
ころ、クロムを含む化合物に少なくとも酸素をイオン注
入した後に、酸素を含む雰囲気中で加熱処理を行うこと
で、コーティングで得られる酸化クロムや、クロム化合
物の単なる熱酸化によって得られる酸化クロムとは異な
った特性を有していることが確認された。すなわち、酸
素を含む雰囲気中で加熱処理された酸化クロムは、コー
ティングで得られる酸化クロムや、クロム化合物の単な
る熱酸化によって得られる酸化クロムと比較し、表面の
摩擦係数が低下し、摩耗量が低下する特性を有している
ものである。しかも、イオン注入によって形成された酸
化クロムを、酸素を含む雰囲気中で加熱処理しても、表
面の結晶粒は成長せず、微細な構造のままとなってい
る。
【0009】図6(A)は、酸素イオンの注入後に、大
気雰囲気中で加熱処理して形成した酸化クロムの表面の
電子顕微鏡写真を、(B)はイオン注入のみによって酸
化クロムを形成した表面の電子顕微鏡写真を、(C)は
大気雰囲気中での加熱処理のみによって成形した酸化ク
ロムの表面の電子顕微鏡写真である。(A)と(B)と
を比較することによって明らかなように、大気雰囲気中
で加熱処理を行っても、表面の結晶粒が成長せずに微細
なままとなっている。また、(A)と(C)とを比較す
ることによって明らかなように、加熱のみによって形成
された表面に比べて、結晶粒が微細となっている。
【0010】図7はボールオンディスクによって行う摩
擦試験の結果を示し、(A)はクロム化合物に酸素イオ
ンを注入した後、酸素を含む雰囲気中で加熱処理したも
の、(B)はイオン注入のみによって得られた酸化クロ
ム表面、(C)はクロム化合物を単に熱酸化させて得ら
れた酸化クロム表面のそれぞれの結果である。試験用の
ボールとしては、直径4インチのアルミナボールを用
い、2Nの荷重で、直径10mmを5.23cm/se
cの速度で動かして摩擦係数を測定した。(A)で示す
ように、クロム化合物に酸素イオンを注入した後、酸素
を含む雰囲気中で加熱処理した表面は、回転回数が2
0,000回転を越えても摩耗が見られず、摩擦係数も
0.304と小さい値となった。これに比べ、クロム化
合物を単に加熱処理することで得られた酸化クロムの表
面(C)と、イオン注入のみによって得られた酸化クロ
ム表面(B)は、いずれも回転回数が2,000回転に
満たないところで、母材まで摩耗している。また、摩擦
係数も(A)に比べて極めて大きい値を示している。
【0011】イオン注入によって得られた酸化クロム
は、酸素を含む雰囲気中で加熱処理することにより、注
入面の非晶質のクロムが再結晶化される。通常、熱酸化
によるクロムの酸化では、酸化しきれないクロムが金属
クロムとして存在するほか、不安定な酸化物としても存
在する。しかし、イオン注入によって得られた酸化クロ
ムの表面は、クロムの量に対して酸素の量が過飽和の状
態で存在しているため、加熱することでクロムが十分酸
化し、表面がクロム酸化物として最も安定する三酸化二
クロムとなる。このため、欠陥のない安定した酸化クロ
ムが表面に均一に形成される。
【0012】さらに、イオン注入によって、表面のクロ
ムの結合が切断されて微細な結晶表面(非晶質表面)に
なる。これを酸素を含む雰囲気中で加熱処理することに
より、微細結晶のまま、酸化が進行し、微細な酸化物の
形成が可能となる.
【0013】なお、イオン注入によって得られた酸化ク
ロムを、酸素を含まない雰囲気、例えば窒素雰囲気やア
ルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気中で加熱処理を行
った場合、不安定な酸化物や金属クロムを僅かに含んだ
状態となる。また、真空雰囲気中での加熱処理では、表
面の酸素の放出が著しくなる。従って、酸素を含んだ雰
囲気中での加熱処理が望ましい。
【0014】以上のように、クロムを含む化合物に少な
くとも酸素をイオン注入した後、酸素を含む雰囲気中で
加熱処理を行うことにより、摩擦係数が小さく、摩耗量
の極めて小さい表面を得ることができる。そして、この
表面を、光学素子成形用型に用いることにより、摩擦係
数が小さく、摩耗量の極めて小さい成形面を得ることが
できる。
【0015】請求項1の発明では、型基材上に形成した
クロムを主成分とする薄膜に少なくとも酸素をイオン注
入し、その後、酸素を含む雰囲気中で加熱処理を行うこ
とができる。
【0016】例えば、光学素子成形用型として必要とさ
れる物性を備えた高熱伝導率の型基材の成形面に、クロ
ムを主成分とする薄膜を形成し、その表面に酸素をイオ
ン注入し、その後加熱処理を行うことにより、高熱伝導
率で、且つ、成形面の摩耗係数が小さく、摩耗量の極め
て小さい表面を有した光学素子成形用型を得ることが可
能となる.このように、光学素子成形用型としての物性
を考慮しながら、型基材の材料を選定することにより、
種々の特性を有し、且つ摩耗係数が小さく、摩耗量の極
めて小さい表面特性を備えることができる。
【0017】請求項2の発明は、請求項1記載の発明で
あって、上記加熱処理を400〜700℃の温度範囲内
で行うことを特徴とする。
【0018】この発明では、クロムを含む型基材の表面
または型基材上に形成したクロムを主成分とする薄膜に
少なくとも酸素イオンを注入し、その後、加熱処理を行
うことによって、成形面を形成するが、その加熱処理の
条件を400℃〜700℃の温度範囲に限定するもので
ある。通常、クロムが熱酸化する温度は、大気雰囲気中
で550℃前後であるが、酸素イオンの注入によって形
成された酸化クロムは、クロムの量に対して酸素の量が
過飽和の状態で存在しているのに加えて、表面や薄膜へ
のイオン注入によって、結合が切断された状態になって
いるため、通常の熱酸化時と比べて、比較的低い温度で
も再結晶化が進行する。
【0019】このため、400℃以上であれば、再結晶
化が可能である。それ以下の温度では、表面の酸化物の
再結晶化が困難となる。また、700℃以上の温度で加
熱処理を行うと、酸化物の再結晶化の後、結晶が急激に
成長するため、イオン注入によって非晶質化した効果が
なくなり、通常のクロムの酸化物と同様の表面または薄
膜となり、結晶が大きくなって、摩擦係数、摩耗量にも
効果が得られなくなる。従って、酸素雰囲気中での加熱
処理の温度は、400℃〜700℃の温度範囲が好適で
ある。より好ましくは、450℃〜650℃の温度範囲
であり、さらに好ましくは、500℃〜600℃の温度
範囲である.
【0020】請求項3の発明は、請求項1又は2記載の
発明であって、上記型基材は、クロムを主成分とする合
金、セラミックまたはサーメットであることを特徴とす
る。
【0021】この発明では、クロムを主成分とする合
金,セラミック,サーメットからなる型基材に、少なく
とも酸素をイオン注入した後、酸素を含む雰囲気中で加
熱処理を行って酸化クロム層を形成するため、クロムを
含む合金、セラミック、サーメットからなる型基材の表
面の結合が切断され、微細な結晶表面(非晶質表面)に
なる。これを酸素を含む雰囲気中で加熱処理することで
再結晶化し、微細結晶のまま酸化が進行するため、微細
な酸化物を形成することが可能となる。
【0022】また、この発明では、型基材に直接イオン
を注入するため、基材に酸素イオンを注入し、加熱処理
をするだけの簡単な加工工程となる。しかも、イオン注
入効果による強固な酸化クロム層を形成することができ
る.
【0023】請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれ
かに記載の発明であって、上記型基材クロムを主成分と
する薄膜を形成するときは、薄膜の形成と少なくとも酸
素イオンの注入とを同時に或いは交互に行うことを特徴
とする。
【0024】このような成膜は、ダイナミックイオンミ
キシング処理によって行うものである。ダイナミックイ
オンミキシング処理は、真空蒸着とイオン注入処理を同
時に行い、蒸着しながら表面に強制的に元素を添加する
ものである。これにより、表面には型基材と注入元素と
成膜元素との混合層が形成される。この混合層はイオン
の強制的な添加によって、型基材付近は、基材元素と注
入元素と成膜元素との混合層となり、表面付近は、注入
元素と成膜元素の混合物となる。このようなダイナミッ
クイオンミキシング処理では、混合層と型基材との間に
明確な界面はなくなる。
【0025】この発明では、かかるダイナミックイオン
ミキシング処理を用いて、成形面にCrを主成分とする
薄膜を蒸着しながら酸素イオンを注入するものである。
すなわち、基材表面に窒素イオン等の不活性イオンを注
入してCrの成膜を開始する。その後、酸素イオンを注
入し所望の酸化クロムの含有率以上になるような酸素の
注入量の他、諸条件を設定する。基材表面に不活性イオ
ンを先に注入するのは、基材が酸素イオンによって酸化
してしまうことを防止するためであり、基材と薄膜の混
合拡散層を形成する場合には、不活性イオンが良好であ
る。これに対して、酸素イオンを先に注入すると、成膜
後その部分から剥離する可能性がある。また、不活性イ
オンを先に注入することで、蒸着される薄膜の成長の核
となる部分を作り易く、膜の密着性が向上する。
【0026】このようなダイナミックイオンミキシング
処理によって成膜した酸化クロム膜も酸素を含んだ雰囲
気中で加熱処理することにより、クロムを含む化合物に
酸素をイオン注入した後に酸素を含む雰囲気中で加熱処
理を行った場合と同様に、表面は摩擦係数が小さくなる
と共に、摩耗量が極めて小さくなる。従って、この方法
によれば、摩耗係数が小さく、摩耗量の極めて小さい特
性を有した層を厚く形成することができる。通常、イオ
ン注入によってイオンが進入する探さは、数百から数千
オングストロームであるが、このダイナミックイオンミ
キシング処理を行うことにより、数μmの厚さであって
も、上述した特性を有した層を得ることができる。ダイ
ナミックイオンミキシング法によって形成された酸化ク
ロムは、酸素を過飽和の状態になるようにすることが可
能なため、成膜された膜の全体が、クロムに酸素のイオ
ン注入を行った場合と同様になり、その後に酸素を含む
雰囲気中で加熱処理することで、その膜全体が摩耗係数
が小さく、摩耗量の極めて小さい特性を有している。
【0027】請求項5の発明の光学素子成形用型は、以
上の請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって
製造され、成形面に酸化クロム層を備えていること特徴
とする。
【0028】酸化クロムは、標準生成エネルギーが大き
い負の値であり、他の元素と化合物を作り難い。そのた
め、成形時における溶融ガラスの焼付きと呼ばれる離型
不良が発生し難い。また、酸化クロムは、昇華性の物質
であるため、離型性も有している。
【0029】この酸化クロムの成形面によって酸素を含
む雰囲気中で光学素子の成形を行うと、最表面層は加熱
により酸化クロムが常に形成される状態になり、上述し
た理由で焼付きを起こさず、且つ酸化クロムが昇華する
ことで成形面とガラスとの間に、気体の隙間を発生させ
て更に離型性が向上する。成形面の最表層は徐々に昇華
していくことにより離型効果を継続することができる。
【0030】この発明の光学素子成形用型は、以上のよ
うな酸化クロム光学素子成形用型としての特有の離型性
に加え、クロムを含む化合物に少なくとも酸素をイオン
注入した後に、酸素を含む雰囲気中で加熱処理を行うこ
とで、摩擦係数が小さく、摩耗量の極めて小さい表面特
性を付与することができる。この表面を光学素子成形用
型の成形面に使用する場合、その低摩擦係数により、型
とガラスの摩擦抵抗が小さくなり、型の外周部の形状に
までガラスを十分に充填することができる。また、表面
の摩耗量が極めて少ないことにより、成形による成形面
の摩耗も極めて少なくなる。
【0031】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)図1は光学素子
成形用型の製造方法で用いる装置の構成を示す。真空容
器6内にホルダ2が設けられ、このホルダ2に光学素子
成形用型の型基材1が保持されている。なお、ホルダ2
は図示を省略した冷却板に取り付けられ、冷却板に供給
される冷却水によって冷却される。
【0032】真空容器6における型基材1との対向位置
には、イオン8を照射するイオン源3が設けられてい
る。このイオン源3はイオン化されたイオンガスを導入
する導入口4に連通している。導入口4は図示を省略し
たイオン化装置に接続されるものである。また、型基材
1の近傍には、照射されるイオンの個数を測定するイオ
ン電流測定器5が配置されている。さらに、真空容器6
の内部は真空ポンプ7によって所定の圧力に減圧され
る。
【0033】この実施の形態では、型基材1として炭化
タングステンを用いて光学素子成形用型を製造する。ま
ず、炭化タングステンからなる型基材1を所定の曲率半
径(70mm)の凹面形状に加工し、成形面をダイヤモ
ンド砥粒等を用いて、最大表面粗さ(Rmax)が0.
03μm以下となるように鏡面研磨加工する。その後、
窒化クロム膜を成膜する。この成膜は、マグネトロンス
パッタリングによって行い、まず、中間層としてCrを
2000オングストローム成膜し、その後、室化クロム
膜を6000オングストローム成膜した。
【0034】次に、このようにして得られた型基材1を
真空容器6内のホルダ2に保持し、この保持状態で真空
ポンプ7を用いて、真空容器6内を排気し、6×10
−4Pa以下の高真空とする。
【0035】そして、型基材1の成形面に対して、イオ
ン源3よりイオン8を照射する。この実施の形態では、
イオン化装置に純酸素を1〜5SCCM導入し、プラズ
マを発生させることでイオン化している。また、イオン
化されたものを質量分離することにより所望のイオンの
比率にし、導入口4からイオン源3に導入する。照射す
る酸素イオンの加速中エネルギーは30KeVであり、
イオンのビーム電流密度は35μA/cmである。イ
オン照射量は、1×1018ions/cmである。
なお、イオン源の方式は、この実施の形態に使用した方
式に限定されるものではなく、カウフマン型、バケット
型等を採用しても良い。
【0036】この実施の形態において、照射するイオン
の加速エネルギーは5〜200KeVの範囲が望まい。
さらに好ましくは、15〜100KeVの範囲である。
加速エネルギーが5KeV以下の場合には、表面がエッ
チング効果によって処理面の損傷が過大になり、形成す
る膜厚が薄くなるほか、表面に形成される酸化クロム層
が薄くなりすぎて、良好な効果が得られなくなるので好
ましくない。また、加速エネルギーが200KeV以上
の場合には、処理面が加熱され、型基材1に影響を及ぼ
すため好ましくない。
【0037】ビーム電流密度が200μA/cm以上
の場合には、処理面が粗れてくるため、精密な成形用型
の機能面に用いることが好ましくない。好ましくは、ビ
ーム電流密度は、100μA/cm以下が良い。
【0038】なお、型基材1を支持するホルダ2を、冷
却板に水を流すことによって、イオン注入処理中の型基
材1を冷却することが可能であり、これにより注入中の
型基材1の熱変形を防ぐことができる。
【0039】この実施の形態では、窒化クロム膜の形成
をマグネトロンスパッタリングによって行ったが、これ
に限定されることなく、PVD法や種々のCVD法、メ
ッキ等によって膜を形成しても良い。
【0040】以上のようにして得られた光学素子成形用
型を電気炉を用いて550℃で50分間加熱処理した。
加熱処理の具体的方法は、まず、光学素子成形用型を電
気炉にセットし、大気雰囲気のまま、20分かけて55
0℃に昇温し、その後30分間保持し、その後、炉内で
自然冷却を行うものである。加熱時の雰囲気は、真空中
でも、不活性ガス雰囲気でもある程度の効果はあるが、
表面の酸化層の形成には、酸素を含む雰囲気が良好であ
る。
【0041】加熱処理の温度は550℃で行ったが、4
00℃〜700℃の温度範囲であれば良い。通常、クロ
ムの熱酸化が進行する温度は、大気雰囲気中で550℃
前後であるが、酸素イオンの注入によって形成された酸
化クロムは、クロムの量に対して酸素の量が過飽和の状
態で存在しているのに加えて、表面がイオン注入によっ
て、結合が切断された状態になっているため、通常の熱
酸化時と比べ、比較的低い温度でも再結晶化が進行す
る。このため、400℃以上であれば、この再結晶化が
可能であるが、400℃以下の温度では、表面の酸化物
の再結晶化が困難となる。一方、700℃以上の温度で
加熱処理を行うと、表面は、酸化物の再結晶化の後、結
晶が急激に成長するため、イオン注入によって非晶質化
した効果がなくなり、通常のクロムの酸化物と同様の表
面になる。このため、結晶が大きくなり、摩擦係数、摩
耗量にも良好な効果が得られなくなる。
【0042】以上のことから、加熱処理における温度
は、400℃〜700℃の温度範囲に設定されるもので
ある。この加熱処理の温度としては、好ましくは450
℃〜650℃の温度範囲、さらに好ましくは500℃〜
600℃の温度範囲である。なお、この温度とは、型表
面の温度であって、炉内の雰囲気温度ではない。このた
め、炉内の雰囲気温度を高温度にして、短時間で加熱処
理を行っても同様の効果が得られる、その際は、極最表
層のみに加熱処理の効果が付与されることとなる。酸素
をイオン注入した領域全てに対して加熱処理の効果を付
与するために、500℃〜600℃の温度範囲で、数十
分以上加熱処理することが好ましい。
【0043】図2は以上によって製造された光学素子成
形用型の表面の構成を示す。最下層が型基材1の成分で
ある炭化タングステン9となっており、その表面近くに
マグネトロンスパッタリングによって成膜した中間層と
してのクロム膜10が存在し、その上にマグネトロンス
パッタリングで成膜した窒化クロム膜11が存在する。
そして、表面層には、酸化クロム層12が形成されてい
る。この酸化クロム層12は、イオン注入によって傾斜
的に酸素が注入された状態になり、加熱処理によってそ
のまま再結晶化するため、強固な層となっている。
【0044】なお、この実施の形態では、成形面に酸素
イオンを注入する際に、表面に酸素が過飽和状態となる
ように、酸素イオンのビーム電流密度及び注入時間によ
って注入量を調整している。この調整はイオン電流測定
器5によって行われる。このイオン電流測定器5として
は、2次電子抑制電極を備えたファラデーカップを使用
した。
【0045】このような光学素子成形用型の製造方法に
よれば、イオン注入によって得られた酸化クロムを、酸
素を含む雰囲気中で加熱処理することにより、注入面の
非晶質のクロムが再結晶化される。通常の熱酸化による
クロムの酸化では、酸化しきれないクロムが金属クロム
として存在するほか、不安定な酸化物としても存在す
る。しかし、このイオン注入によって得られた酸化クロ
ムの表面は、クロムの量に対して酸素の量が過剰の状態
で存在しているため、酸素を含む雰囲気中で加熱処理す
ることでクロムが十分に酸化する。このため、クロム酸
化物として最も安定している三酸化二クロムとなり、欠
陥のない安定した酸化クロムが表面に均一に形成され
る。さらに、イオン注入によって、表面のクロムの結合
が切断されて微細な結晶表面(非晶質表面)になってい
るため、これを加熱処理しても、結晶の成長は進行せ
ず、微細結晶のままで酸化が進行し、微細な酸化物の形
成が可能となる。
【0046】以上の方法で形成した光学素子成形用型の
表面における摩擦係数測定をボールオンディスク試験法
で行ったところ、摩擦係数は、0.3であった。また、
回転回数が25,000回でも、表面に摩耗は見られな
かった。試験条件は、試験用のボールとして、直径4イ
ンチのアルミナボールを用い、2Nの荷重で、直径10
mmを5.23cm/secの速度で動かして摩擦係数
を測定した。これに対し、クロム化合物を単に加熱処理
することで得られた酸化クロム表面と、イオン注入のみ
によって得られた酸化クロム表面は、いずれも、回転回
数が2,000回付近で、型基材まで摩耗してしまっ
た。また、摩擦係数もこの実施の形態の表面に比べてめ
て大きい値を示した。
【0047】次に、以上の実施の形態によって製造した
光学素子成形用型を用いて、硝材SKll(転移点:5
35℃、軟化点:630℃)のプリフォームを押圧成形
した。プレス条件は、硝材を710℃まで加熱軟化させ
てから、上下の型間に搬送し、型温度515℃、プレス
圧力25kg/cmで行った。この工程を10万回繰
り返したが、摩耗は見られなかった。
【0048】そして、このプレス後の成形面の表面粗さ
を測定したが、実質上当初のままであった。また、所望
の設計値とのズレを表すP−V値は、加工表面で、0.
10μmであるのに対して、成形後のレンズのP−V値
も0.10μmであった。これは、表面の摩擦係数が低
いことにより、硝材の流動がスムーズになり、転写性が
向上したことによるものである。
【0049】同様の成形をクロムの単なる熱酸化による
酸化クロム層を成形面に用いた光学素子成形用型で行っ
たところ、成形後のレンズのP−V値は、0.23μm
であった。さらに、成形を継続し、3万回繰り返した後
の型表面の測定を行ったところ、P−V値が0.34μ
mになっており、成形面の中心付近がへこんでしまっ
た。これは、ガラスの流動による摩耗が原因である。
【0050】なお、酸化クロムは、標準生成エネルギー
が大きい負の値であり、他の元素と化合物を作り難い。
そのため、成形時における溶融ガラスの焼付きと呼ばれ
る離型不良が発生し難い。また、酸化クロムは、昇華性
の物質であるため、離型性も良好である。
【0051】このような実施の形態によれば、クロムを
主成分とする薄膜を成膜し、その後、酸素イオンを注入
した後に酸素を含む大気雰囲気中で加熱処理して、成形
面に酸化クロム層を形成するものであり、イオン注入に
よって得られた酸化クロムの表面はクロムの量に対して
酸素の量が過飽和の状態で存在しており、これを酸素を
含む大気雰囲気中で加熱するため、クロムが十分に酸化
し、表面がクロム酸化物として最も安定した三酸化二ク
ロムとなり、欠陥のない安定した酸化クロムが表面に均
一に形成される。さらに、イオン注入によって、表面の
クロムの結合が切断されて微細な結晶表面(非晶質表
面)になっており、これを加熱処理しても、結晶の成長
が進行せず、微細結晶のままで再結晶化と酸化とが進行
し、微細な酸化物の形成が可能となる。これらにより、
型基材の表面は、摩擦係数が低く、摩耗量が少なくな
る。
【0052】従って、この実施の形態の光学素子成形用
型は、酸化クロムの材料としての離型性に加え、摩擦係
数が小さく、摩耗量の極めて小さい表面特性を有してい
る。このような低摩擦係数により、型とガラスの摩擦抵
抗が小さくなるため、型の外周部の形状にまでガラスが
十分充填でき、型形状のレンズへの転写性が向上する。
また、表面の摩耗量が少ないため、成形による型の成形
面の摩耗も極めて少なくなる。以上により、型の摩耗に
よる劣化の進行が遅くなり、良好な離型性を維持したま
まで型の寿命を延命化することができる。また、この実
施の形態の光学素子成形用型によれば、酸化クロム層が
成形面にのみ形成されているため、型基材の特性を保
ち、且つ表面の特性である離型性を有したままで成形面
の摩擦係数が小さく、摩耗量が極めて小さい特性を有し
ている。
【0053】(実施の形態2)図3はこの実施の形態の
光学素子成形用型の製造に用いる装置を示す。真空容器
22内にホルダ14が設けられ、このホルダ14に光学
素子成形用型の型基材13が保持されている。なお、ホ
ルダ14は図示を省略した冷却板に取り付けられ、冷却
板に供給される冷却水によって冷却される。
【0054】真空容器22における型基材13との対向
位置には、イオン23を照射するイオン源17が設けら
れている。イオン源17はイオン化されたイオンガスを
導入する導入口18に連通している。導入口18は図示
を省略したイオン化装置に接続されるものである。ま
た、型基材13の近傍には、照射されるイオンの個数を
測定するイオン電流測定器20が配置されている。
【0055】型基材13の下方には、蒸発源15が配置
されている。蒸発源15は成膜元素を含有した物質16
を蒸発させるものである。この成膜は膜厚モニタ19に
よって監視される。膜厚モニタ19は型基材13の表面
に成膜される元素の個数及びその膜厚を測定するように
なっている。真空容器22の内部は真空ポンプ21によ
って所定の圧力に減圧される。
【0056】この実施の形態では、型基材13として炭
化タングステンを用いて光学素子成形用型を製造する。
まず、型基材13を所定の非球面形状に研削加工し、成
形面をダイヤモンド砥粒等を用いて、最大表面粗さ(R
max)0.15μm以下となるように鏡面研磨加工す
る。その後、型基材13をホルダ14に保持し、この保
持状態で、真空ポンプ21により、真空容器22内を排
気して4×10−4Pa以下の高真空とする。
【0057】この状態で、まず、型基材13の成形面に
アルゴンイオンをイオン注入する。すなわち、イオン化
装置に純アルゴンガスを2.4SCCM導入し、プラズ
マを発生させることでイオン化し、イオン化されたもの
を質量分離させて、アルゴン原子イオンをイオン導入口
18からイオン源17に導入する。
【0058】照射するアルゴンイオンの加速エネルギー
は5KeV、イオンのビーム電流密度は25μA/cm
、イオン照射量は、1×1017ions/cm
した。なお、イオン源17としては、この実施の形態に
使用した方式に限定されるものではなく、カウフマン
型、バケット型等のものを採用してもよい。
【0059】このアルゴンイオンのイオン注入の後、型
基材13の成形面に対して、蒸発源15からクロムを含
有する物質16の真空蒸着を行った。なお、アルゴンイ
オンの注入は、注入量が1×1017ions/cm
になった後も継続し、これにより、クロムの蒸着とアル
ゴンイオンの注入とを同時に行うものである。これによ
り、型基材13の炭化タングステンとアルゴンとクロム
のミキシング層が形成される。
【0060】膜厚モニタ19として水晶振動式膜厚計を
用い、蒸着レートは膜厚モニタ19で調整しながら、6
オングストローム/secに設定し、この蒸着を膜厚が
2000オングストロームになるまで継続する。
【0061】その後、イオン化装置に導入している純ア
ルゴンガスを純酸素に切り替える。この時の純酸素ガス
の導入量は、1〜3SCCMの範囲で適宜調整する。ま
た、イオン化されたものを質量分離して、酸素原子イオ
ンを選択して注入する。照射する酸素イオンの加速エネ
ルギーは10KeV、イオンのビーム電流密度は45μ
A/cmとした。この間も、クロムの蒸着を継続する
ことで、クロムの蒸着と酸素のイオン注入を同時に行
う。このときの蒸着レートは膜厚モニタ19で調整しな
がら、6オングストローム/secに設定し、膜厚が1
0000オングストロームになるまで継続した。このよ
うなクロム蒸着と酸素イオンの注入を同時に行うことに
より、酸化クロム膜中に酸素を過飽和の状態で存在させ
ることができる。なお、クロムの蒸着及び酸素イオンの
イオン注入を同時に行う際に、真空容器22内に酸素を
導入して酸素をより多く存在させることも可能である。
【0062】このようにして得られた光学素子成形用型
を電気炉を用いて580℃で80分間加熱処理した。加
熱処理の具体的方法は、光学素子成形用型を電気炉にセ
ットし、大気雰囲気のままで、20分かけて580℃に
昇温し、その後60分間保持し、その後、炉内で自然冷
却を行うものである。
【0063】図4は以上によって形成された光学素子成
形用型の表面を示す。最下層が型基材1の成分である炭
化タングステン24となっており、その上にアルゴンを
先行して注入した後に成膜したクロム膜25が存在す
る。この型基材24とクロム膜25との界面は、アルゴ
ン注入によってミキシングされ、明確な界面は存在しな
い。
【0064】このように型基材24表面に不活性イオン
であるアルゴンイオンを先行して注入するのは、スパッ
タリングによる表面の洗浄効果と、型基材が酸素イオン
によって酸化することを防止するためであり、型基材と
膜との混合拡散層を形成するには不活性イオンが好まし
い。これに対し、酸素イオンを先に注入すると成膜後
に、その界面から酸化が進行して、膜が剥離し易くな
る。また、不活性イオンを先に注入することで、蒸着さ
れる薄膜の成長の核となる部分を作り易くなり、膜の密
着性も向上する。
【0065】図4において、かかるクロム膜25の上
に、クロムの成膜と酸素イオンの注入によって形成され
た酸化クロム膜を加熱処理することで形成した酸化クロ
ム膜26が形成されている。この方法によって得られた
酸化クロムの表面は、ダイナミックミキシング法で成膜
した膜の特徴である膜の応力が緩和された状態となって
いる他、密度の高い膜になっている。
【0066】以上の方法で形成した光学素子成形用型の
表面における摩擦係数測定をボールオンディスク試験法
で行ったところ、摩擦係数は、0.32であった。ま
た、回転回数が25,000回でも、表面に摩耗は見ら
れなかった。試験条件は、試験用のボールとして、直径
4インチのアルミナボールを用い、2Nの荷重で、直径
10mmを5.23cm/secの速度で動かして摩擦
係数を測定した。
【0067】このようにこの実施の形態で形成した表面
は、摩擦係数が小さく、摩耗量の極めて小さい表面にな
っている。この光学素子成形用型を用いて、硝材LaS
F03(転移点:730℃、軟化点:808℃)のプリ
フォームを押圧成形した。プレス条件は、硝材を830
℃まで加熱軟化させて、上下の型間に搬送し、型温度6
80℃、プレス圧力40kg/cmとした。このプレ
スを5万回繰り返したが、摩耗は見られなかった。
【0068】そして、このプレス使用後の成形面の表面
粗さを測定したが、実質上当初のままであった。また、
所望の設計値とのズレを表すP−V値は、型加工後の表
面で、0.10μmであるのに対して、成形後のレンズ
のP−V値も0.10μmであった。これは、表面の摩
擦係数が低いことにより、硝材の流動がスムーズにな
り、転写性が向上したことによるものである。
【0069】同様の成形をクロムの単なる熱酸化による
酸化クロム層を成形面に用いた光学素子成形用型で行っ
たところ、成形後のレンズのP−V値は、0.32μm
であった。さらに、成形を継続し、5000回繰り返し
た後の型表面の測定を行ったところ、P−V値が0.3
4μmになっており、成形面の中心付近がへこんでしま
った。その後、さらに成形を縦続したところ、トータル
7500回の成形で膜が剥がれてしまった。
【0070】このような実施の形態によれば、光学素子
成形用型の成形面が、クロムを主成分とする薄膜を形成
するとともに、少なくとも酸素イオンを同時或いは交互
に注入してクロムと酸素との混合層を形成し、その後、
酸素を含む大気雰囲気中で加熱処理を行うことで形成さ
れた酸化クロム層により構成されている。ダイナミック
イオンミキシング法により成膜した膜は、クロムの量に
対して酸素の量が過飽和の状態で存在しており、加熱す
ることでクロムが十分に酸化し、表面がクロム酸化物と
して最も安定した三酸化二クロムとなり、欠陥のない安
定した酸化クロム膜が均一となっている。
【0071】以上の方法によって得られた酸化クロムの
表面は、ダイナミックイオンミキシング法で成膜した膜
の特徴である、膜の応力が綾和されている、膜の密度が
高いという特性を有している。また、ダイナミックイオ
ンミキシング法によって成膜された薄膜の殆どの部分
が、酸素イオンの注入と加熱処理がなされている状態に
ある。そのため、薄膜の殆どの部分は、摩擦係数が小さ
く、摩耗量の極めて小さい特性を有しており、しかも、
この特性を有した層を厚く形成することができる。ま
た、型基材と膜との界面が、ミキシングされて明確とな
らないため、膜剥離が発生しなくなる。
【0072】(実施の形態3)この実施の形態では、実
施の形態1と同様の装置及び方法を用いて、光学素子成
形用型を製造した。なお、型基材1としては、炭化クロ
ム焼結体を用いて実施の形態1と同様のイオン注入処理
及び加熱処理を行うものである。
【0073】図5はこの実施の形態3の光学素子成形用
型の構成を示す。型基材1の成分である炭化クロム27
の表面に、酸素イオンを注入し、その後、酸素を含む大
気雰囲気中で加熱処理することで形成した酸化クロム層
28が存在している。
【0074】この実施の形態における光学素子成形用型
の成形面は、炭化クロムに酸素をイオン注入することに
より、炭化クロムの結合が切断される。また、表面に酸
素が過飽和の状態になるように酸素を注入するため、こ
れを酸素を含む雰囲気中で加熱処理することでクロムが
十分に酸化する。このため、表面がクロム酸化物として
最も安定した三酸化二クロムとなり、欠陥のない安定し
た酸化クロム膜が均一に形成される。また、炭化クロム
の結合を切断することにより、炭素が表面に存在する
が、加熱処理することでにより、表面の炭素は、二酸化
炭素ガスとなって気散するため、表面には存在しなくな
る。さらに、焼結体の表面の結晶が大きい場合にも、イ
オン注入によって結晶が微細化されるため、表面租さを
改善することができる。
【0075】なお、この実施の形態では、型基材として
炭化クロムを使用したが、これに限らず、クロムを主成
分とする合金、セラミック、サーメット等を同様に使用
することができる。
【0076】このような実施の形態では、型基材を炭化
クロムの焼結体で形成し、その表面に酸素を注入し、そ
の後、酸素を含む大気雰囲気中で加熱処理を行って成形
面を形成している為、膜を形成する等の手間がなく、迅
速で安価に光学素子成形用型を製造することができる。
また、構造的に成形面に膜が存在しないため、光学素子
の成形時に発生する膜が剥がれる現象は起きない。
【0077】このような光学素子成形用型を用いて、ガ
ラスの成形を行った場合、炭化クロムを単に熱酸化して
成形面に酸化クロム層を形成した光学素子成形用型に比
べて、5〜10倍の耐久性を得ることができるものであ
る。この実施の形態では、硝材SK11(転移点:53
5℃、軟化点:630℃)のプリフォームを押圧成形し
た。プレス条件は、硝材を700℃まで加熱軟化させ
て、上下の型間に搬送し、型温度510℃、プレス圧力
10kg/cmである。この結果、炭化クロムを単に
熱酸化して成形面に酸化クロム層を形成した光学素子成
形用型に比べて、5倍の耐久性を有していた。
【0078】また、硝材LaSF03(転移点温度:7
30℃、軟化点温度:808℃)のプリフォームの押圧
成形では、硝材を800℃まで加熱し、この実施の形態
により作製した上型、下型の型間に搬送し、型温度74
0℃、プレス圧力15kg/cmでプレスした。その
結果、炭化クロムを単に熱酸化して成形面に酸化クロム
層を形成した光学素子成形用型に比べ、10倍の耐久性
を有していた。
【0079】以上の説明から明らかなように、本発明は
以下の付記項の発明を包含するものである。
【0080】(付記項1) クロムを含む表面に少なく
とも酸素をイオン注入し、その後、酸素を含む雰囲気中
で加熱処理を行うことにより、少なくとも成形面を形成
することを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
【0081】この発明では、クロムを含む表面に少なく
とも酸素をイオン注入し、その後、酸素を含む雰囲気中
で加熱処理を行って成形面を形成するため、欠陥のない
安定した酸化クロムを表面に均一に形成でき、しかも微
細な酸化物を成形面に形成することが可能となり、摩擦
係数が小さく、摩耗量が極めて小さい成形面とすること
ができる。従って、酸化クロム自体が有している良好な
離型性に加え、摩擦係数が小さく、摩耗量が極めて小さ
い特性を成形面に付与することができる。
【0082】(付記項2) 上記加熱処理の条件が、4
00℃〜700℃の温度範囲であることを特徴とする付
記項1記載の光学素子成形用型の製造方法。
【0083】この発明では、酸素を含む雰囲気中での加
熱処理の条件が、400℃〜700℃の温度範囲である
ため、結晶を肥大化させることなく、且つ、摩擦係数の
低下と、摩耗量の削減が可能な酸化クロムの再結晶化を
行うことができる。
【0084】(付記項3) クロムを含む化合物に、少
なくとも酸素をイオン注入した後、酸素を含む雰囲気中
で加熱処理を行うことにより、少なくとも成形面を形成
する付記項1記載の製造方法によって製造され、成形面
に酸化クロム層を備えていることを特徴とする光学素子
成形用型。
【0085】この発明では、酸化クロム自体の良好な離
型性に加え、摩擦係数が小さく、摩耗量が極めて小さい
特性を有した成形面となっているため、型とガラスの摩
擦抵抗が小さくなり、型の外周部の形状までガラスが十
分に充填されて型形状のレンズへの転写性が向上する。
また、表面の摩耗量が少ないため、成形による型の成形
面の摩耗も極めて少なくなり、摩耗による劣化の進行が
遅くなり、型寿命を延命化することができる。
【0086】(付記項4) クロムを主成分とする薄膜
を形成し、その後、少なくとも酸素をイオン注入した
後、酸素を含む雰囲気中で加熱処理を行うことにより、
少なくとも成形面を形成することを特徴とする光学素子
成形用型の製造方法。
【0087】この発明では、光学素子成形用型として必
要とされる物性を備えている材料に、クロムを主成分と
する薄膜を形成することが可能であり、しかもその表面
に酸素をイオン注入し、その後加熱処理を行うため、光
学素子成形用型として必要とされる物性に加えて、成形
面の摩擦係数が小さく、摩耗量が極めて小さい特性を有
した光学素子成形用型を作製できる。
【0088】(付記項5) 上記加熱処理の条件が、4
00℃〜700℃の温度範囲であることを特徴とする付
記項4記載の光学素子成形用型の製造方法。
【0089】この発明では、結晶を肥大化させることな
く、且つ、摩擦係数の低下と、摩耗量の削減が可能な酸
化クロムの再結晶化を行うことができる。
【0090】(付記項6) クロムを主成分とする薄膜
に、少なくとも酸素をイオン注入した後に、酸素を含む
雰囲気中で加熱処理を行うことにより、少なくとも成形
面を形成する付記項4記載の製造方法によって製造さ
れ、、成形面に酸化クロム層を備えていることを特徴と
する光学素子成形用型。
【0091】この発明では、クロムを主成分とする薄膜
に、少なくとも酸素をイオン注入した後、酸素を含む雰
囲気中で加熱処理を行うことで形成された酸化クロム層
を備えているため、型基材の特性を有し、且つ成形面の
摩擦係数が小さく、摩耗量の極めて小さい特性を有する
ことができる。
【0092】(付記項7) クロムを主成分とする薄膜
を形成するとともに、少なくとも酸素イオンを同時或い
は交互に注入してクロムと酸素の混合層を形成し、その
後、酸素を含む雰囲気中で加熱処理を行うことにより、
少なくとも成形面を形成することを特徴とする光学素子
成形用型の製造方法。
【0093】この発明では、クロムを主成分とする薄膜
を形成するとともに、少なくとも酸素イオンを同時或い
は交互に注入してクロムと酸素の混合層を形成し、その
後、加熱処理を行うため、摩擦係数が小さく、摩耗量が
極めて小さい特性を有した層を厚く形成することができ
る。
【0094】(付記項8) 上記加熱処理の条件が、4
00℃〜700℃の温度範囲であることを特徴とする付
記項7記載の光学素子成形用型の製造方法。
【0095】この発明では、結晶を肥大化させることな
く、且つ、摩擦係数の低下と、摩耗量の削減が可能な酸
化クロムの再結晶化を行うことができる。
【0096】(付記項9) クロムを主成分とする薄膜
を形成するとともに、少なくとも酸素イオンを同時或い
は交互に注入し、クロムと酸素の混合層を形成し、その
後、酸素を含む雰囲気中で加熱処理を行うことにより、
少なくとも成形面を形成する付記項7記載の製造方法に
よって製造され、成形面に酸化クロム層を備えているこ
とを特徴とする光学素子成形用型。
【0097】この発明では、形成される酸化クロム層が
厚く、型の摩耗による劣化の進行が遅くなり、良好な離
型性を維持したままで、型寿命を延命化できる。
【0098】(付記項10) クロムを主成分とする合
金、セラミック、サーメットからなる型基材に、少なく
とも酸素をイオン注入した後、酸素を含む雰囲気中で加
熱処理を行うことにより、少なくとも成形面を形成する
ことを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
【0099】この発明では、クロムを主成分とする合
金、セラミック、サーメットからなる型基材に、少なく
とも酸素をイオン注入した後、加熱処理を行って成形面
を形成するため、型基材表面に酸化クロムを直接に形成
でき、薄膜の形成工程が不要となり、酸化クロム層を簡
単に形成することが可能である
【0100】(付記項11) 上記加熱処理の条件が、
400℃〜700℃の温度範囲であることを特徴とする
付記項10記載の光学素子成形用型の製造方法。
【0101】この発明では、結晶を肥大化させることな
く、且つ、摩擦係数の低下と、摩耗量の削減が可能な酸
化クロムの再結晶化を行うことができる。
【0102】(付記項12) クロムを主成分とする合
金、セラミックまたはサーメットからなる型基材に、少
なくとも酸素をイオン注入した後、酸素を含む雰囲気中
で加熱処理を行って、少なくとも成形面を形成する付記
項11記載の製造方法によって製造され、成形面に酸化
クロム層を備えていることを特徴とする光学素子成形用
型。
【0103】この発明では、型基材に、強固で、摩擦係
数が低く、摩耗量が極端に小さい表面が直接に形成され
ており、膜剥離が発生せず、しかも簡単な工程によって
作製することができる。
【0104】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、欠陥のない安
定した酸化クロムを表面に均一に形成でき、しかも微細
な酸化物を成形面に形成することができ、これにより、
摩擦係数が小さく、摩耗量が極めて小さい成形面とする
ことができる。
【0105】請求項2の発明によれば、酸化クロムの結
晶を肥大化させることなく、且つ、摩擦係数の低下と、
摩耗量の削減が可能な酸化クロムの再結晶化を行うこと
ができる。
【0106】請求項3の発明によれば、型基材表面に酸
化クロムを直接に形成でき、薄膜の形成工程が不要とな
り、酸化クロム層を簡単に形成することが可能となる。
【0107】請求項4の発明によれば、クロムを主成分
とする薄膜に対し、クロムと酸素の混合層を形成するた
め、摩擦係数が小さく、摩耗量が極めて小さい特性を有
した層を厚く形成することができる。
【0108】請求項5の発明によれば、酸化クロム自体
の良好な離型性に加え、型とガラスの摩擦抵抗が小さく
なっているため、型形状のレンズへの転写性が向上し、
しかも摩耗量が少ないため、型寿命を延命化することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に用いられる製造装置の
断面図である。
【図2】実施の形態1の成形用型の断面図である。
【図3】実施の形態2に用いられる製造装置の断面図で
ある。
【図4】実施の形態2の成形用型の断面図である。
【図5】実施の形態3の成形用型の断面図である。
【図6】(A)は本発明の成形用型の成形面の電子顕微
鏡写真、(B)及び(C)は従来の成形用型の成形面の
電子顕微鏡写真である。
【図7】(A)は本発明の成形用型の成形面に対する摩
擦試験の特性図、(B)及び(C)は従来の成形用型の
成形面に対する摩擦試験の特性図である。
【符号の説明】
1 13 型基材 9 炭化タングステン 10 クロム膜 11 窒化クロム膜 12 酸化クロム層 24 炭化タングステン 25 クロム膜 26 酸化クロム膜 27 炭化クロム 28 酸化クロム層

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロムを含む型基材の表面または型基材
    上に形成したクロムを主成分とする薄膜に少なくとも酸
    素をイオン注入する工程と、 このイオン注入の後、上記型基材を酸素を含む雰囲気中
    で加熱処理する工程と、を備えていることを特徴とする
    光学素子成形用型の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記加熱処理を400〜700℃の温度
    範囲内で行うことを特徴とする請求項1記載の光学素子
    成形用型の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記型基材は、クロムを主成分とする合
    金、セラミックまたはサーメットであることを特徴とす
    る請求項1または2記載の光学素子成形用型の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 上記型基材クロムを主成分とする薄膜を
    形成するときは、薄膜の形成と少なくとも酸素イオンの
    注入とを同時に或いは交互に行うことを特徴とする請求
    項1〜3のいずれかに記載の光学素子成形用型の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 上記請求項1〜4のいずれかに記載の製
    造方法によって製造され、成形面に酸化クロム層を備え
    ていること特徴とする光学素子成形用型。
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