JP2000351917A - 酸化物膜形成用塗布液、酸化物膜形成方法および酸化物膜付き基体 - Google Patents

酸化物膜形成用塗布液、酸化物膜形成方法および酸化物膜付き基体

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JP2000351917A
JP2000351917A JP11162912A JP16291299A JP2000351917A JP 2000351917 A JP2000351917 A JP 2000351917A JP 11162912 A JP11162912 A JP 11162912A JP 16291299 A JP16291299 A JP 16291299A JP 2000351917 A JP2000351917 A JP 2000351917A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高い耐摩耗性を有し、外観欠点の少ない遷移金
属酸化物膜を安価に形成させるための塗布液、該塗布液
を使用した酸化物膜の形成方法、および酸化物膜付き基
体の提供。 【解決手段】Co等の金属の塩と、Siのアルコキシド
と、樹脂とを含む塗布液であって、塗布液中の前記金属
の塩の全金属とSiとの総量に対するSiの原子比が
0.28以上である酸化物膜形成用塗布液、酸化物膜形
成方法および酸化物膜付き基体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は酸化物膜形成用塗布
液、酸化物膜形成方法および酸化物膜付き基体に関す
る。
【0002】
【従来の技術】これまで、基体上に、さまざまな機能を
付与するために酸化物膜を形成する手法が数多く提案さ
れている。現在、多用されている酸化物膜形成方法とし
ては、真空蒸着、スパッタリング、CVD等の乾式法
や、ゾルゲル法、スプレー熱分解等の湿式法などがあ
る。湿式法による成膜は、安価に成膜できる点で工業生
産上有利である。
【0003】湿式法による成膜の代表例にゾルゲル法が
ある。これは、金属のアルコキシドを加水分解させ、溶
液中でメタロキサン結合(M−O−M)を形成させてゾ
ル化し、塗布、加熱を行うことにより成膜する方法で、
低反射干渉膜や絶縁膜などの成膜に実績がある。ゾルゲ
ル法は、加水分解条件等を適切に制御することにより均
質な膜を形成できるので、最もよく用いられる方法であ
る。
【0004】遷移金属酸化物からなる緻密な薄膜をガラ
ス表面にコーティングすると、イオン吸収により様々に
着色し、透過率が大きく低下した低透過性着色ガラスと
なる。また緻密で均質な薄膜を形成すれば、光吸収性酸
化物の特性として反射率が高まりハーフミラー状となる
ことがある。このような低透過性着色ガラスは、日射を
効果的に遮断できるために内部環境の保護につながり、
また室内、車内のプライバシー保護にも役立つ。
【0005】前述のゾルゲル法によって遷移金属酸化物
膜を形成すると、遷移金属アルコキシドがあまり一般的
でなく、またきわめて高価な材料であるために、安価な
成膜には不向きであった。一方、硝酸塩、塩化物、硫酸
塩などの金属塩は、入手もしやすいが、これらの金属塩
のみではゾルゲル法のような均質で緻密な薄膜が得られ
ないので、耐摩耗性や耐薬品性が乏しく、高耐久性の薄
膜が得難かった。
【0006】特開平9−30836号公報にはエチレン
グリコールオリゴマーを含む酸化物被膜形成用塗布液が
提案されている。該酸化物被膜形成用塗布液を基体上に
塗布して得られた膜は、比較的に均質かつ緻密な膜であ
るが、膜と基体との密着性は乏しい。したがって、より
高い摩耗強度が要求される用途(たとえば自動車用のド
アガラスなどの昇降が繰り返される部位などの用途)に
は不向きであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記問題点
に鑑み、高い耐摩耗性を有し、外観欠点の少ない遷移金
属酸化物膜を簡便に形成できる塗布液、該塗布液を使用
した酸化物膜の形成方法、および酸化物膜付き基体の提
供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、Co、Cr、
Mn、Fe、Ni、Cu、Znおよびランタノイド(L
a〜Lu)からなる群から選ばれる1種以上の金属の塩
と、Siのアルコキシドまたはその部分加水分解物と、
樹脂とを含む塗布液であって、塗布液中の前記金属の塩
の全金属とSiとの総量に対するSiの原子比が0.2
8以上である酸化物膜形成用塗布液(以下、本塗布液と
いう)を提供する。
【0009】本塗布液によれば、均質で緻密な酸化ケイ
素を含有する遷移金属酸化物膜を形成でき、その緻密さ
と酸化ケイ素特有の性質により、高い耐摩耗性とガラス
と同等の低い反射率を有する着色膜が得られ、また外観
も充分に良好で実用上問題ない。
【0010】Co、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Z
nおよびランタノイド(La〜Lu)からなる群から選
ばれる1種以上の金属の塩(以下、単に金属塩という)
としては、塗布液を形成する溶媒に可溶であれば特に限
定されないが、溶解性が高く溶媒選択の自由度がある、
キレート錯体を形成した場合に安定性に優れる、熱分解
時に発生するガスの有害度が比較的小さい等の理由から
硝酸塩であることが好ましい。金属塩は1種類で、また
は数種類を混合して用いられる。また意匠性の向上を目
的として黒色系の着色膜を形成する場合、金属塩として
Cuの塩とMnの塩とを併用することが好ましい。Cu
とMnは黒色のスピネル酸化物を形成する。黒色系着色
膜は、X線回折分析においてスピネル酸化物のピークを
有する。
【0011】一般に知られているCoやFeを含むスピ
ネル酸化物は、高温(たとえば800℃)で長時間(た
とえば1時間以上)焼成されることで生成するが、Cu
やMnのスピネル酸化物は比較的低温で生成しやすく、
加熱条件の上限が限られている場合にはきわめて有効で
ある。
【0012】本塗布液中のCu、Mnの組成と、成膜後
の酸化物膜中の組成とは必ずしも一致しない。膜組成と
同等の比率の液組成では、充分な吸光度を有するスピネ
ル酸化物膜を得られないことがある。これは、原料の金
属源を、エチレングリコールオリゴマー、Siのアルコ
キシド等で本塗布液中で安定化しても、焼成過程で一部
昇華して減少したり、または、高温焼成の場合には金属
がイオン化してガラス中にマイグレーションして、結果
的に膜中のCuやMn含有割合が減少する、などが原因
と考えられる。
【0013】また、CuやMnに添加する他の金属成分
の金属種と量によって、スピネル結晶化する温度や、膜
の耐久性、透過色調などを調整できる。たとえば、Cr
を添加するとより低い焼成条件で結晶化し、黒っぽいグ
レーとなる。Cr添加系では低温結晶化しやすいCr酸
化物が核となって、CuやMnのスピネル結晶化が促進
され、CuやMnの一部がCrに置換されたスピネル結
晶複合酸化物が形成されると考えられる。Cr添加量は
多いほど、結晶化が促進され低温で結晶化しやすくな
り、透過色調は青っぽいグレーとなるが、多すぎると、
膜の緻密性が低下して膜の硬度が低下する。
【0014】本塗布液中の金属塩の全金属とSiとの総
量に対するCrのモル比は0.01〜0.3であること
が好ましく、特に0.01〜0.1であることが好まし
い。一方、Fe、Coなどを添加することによって、膜
の耐久性を高めたり透過色調を褐色に近づけうる。スピ
ネル結晶化温度はCr添加の場合と逆に上昇し、より多
くの加熱が必要となることもある。
【0015】また、酸化物膜の吸光度を増すために、塩
化ルテニウム、塩化金酸、塩化白金酸などの貴金属化合
物を添加できる。また、酸化物膜の耐薬品性をさらに向
上させたり、屈折率を調整したりできることから、A
l、TiおよびZrからなる群から選ばれる1種以上の
金属のアルコキシドまたはキレートを添加できる。
【0016】本塗布液は、化学式HO(CH2CH2O)
nH(ただしnは2〜8の整数)で表されるエチレング
リコールオリゴマー(以下、単にオリゴマーという)の
1種以上を含むことが好ましい。本発明におけるオリゴ
マーは、分子内にエーテル性酸素、末端には水酸基を有
するために、それらの酸素を介して金属イオンに配位し
ていると考えられ、金属塩の熱分解挙動を変化させるも
のと考えられる。
【0017】本発明におけるオリゴマーは、2量体(上
述の化学式におけるn=2)〜8量体(n=8)となっ
ている。単量体(n=1)、すなわちエチレングリコー
ルでは均質で緻密な酸化物膜を形成しにくく、添加の効
果が小さい。9量体以上の高分子では、金属イオンへ配
位しにくいためか、良好な結果が得られにくい。
【0018】オリゴマーは、単独または2種以上の混合
物で用いられる。プロピレングリコールの重合体では添
加の効果が小さい(緻密な膜が得られず、剥離が起きた
り、吸光度が上がりにくい)。これは立体的な構造の違
いにより金属イオンへの配位状態の違いが原因と考えら
れる。
【0019】オリゴマーの具体例としては、ジエチレン
グリコール(n=2)、トリエチレングリコール(n=
3)、テトラエチレングリコール(n=4)、ペンタエ
チレングリコール(n=5)、ヘキサエチレングリコー
ル(n=6)、ヘプタエチレングリコール(n=7)、
オクタエチレングリコール(n=8)が挙げられる。ま
た、前記したオリゴマーを主成分として含み、2種以上
のオリゴマーの混合物として市販されているポリエチレ
ングリコール#200(重合体の混合物であり、平均分
子量は200)、ポリエチレングリコール#300(重
合体の混合物であり、平均分子量は300)なども用い
うる。
【0020】オリゴマーとしては、得られる酸化物膜の
緻密さおよび均質性の観点、または入手のしやすさの観
点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ルおよびテトラエチレングリコールからなる群から選ば
れる1種以上が好ましい。また、ポリエチレングリコー
ル#200も好ましく用いられる。オリゴマーは、ごく
微量の添加で効果があるが、逆に添加量が多すぎると、
金属イオンとの配位に関与しないオリゴマーが増えるた
めか、焼成後の酸化物膜の均質性を阻害し膜の硬度が低
下したり、外観を損ねる傾向にある。本発明において
は、塗布液中の金属塩の全金属とSiとの総量に対する
オリゴマーのモル比が0.3以下であることが好まし
い。オリゴマーの添加量は必要最小限にすることが好ま
しい。
【0021】本塗布液におけるSi酸化物前駆体(Si
のアルコキシドまたはその部分加水分解物をいう、以下
同じ。)は、金属塩の全金属とSiとの総量に対するS
iのモル比が0.28以上となるように含有される。
0.28以上とすることで酸化物膜の耐久性(特に実用
上重視されることが多い耐摩耗性)が飛躍的に向上す
る。得られる酸化物膜は、高い耐摩耗性を要求される用
途、たとえば自動車用のドアガラスなどに充分使用可能
な耐久性を有する。
【0022】Siの含有量が増えるにしたがって耐摩耗
性は向上するが、CuやMnのスピネル結晶化が起こり
にくくなる。結晶化を促進するためには、Cr添加量を
増したり、より多くの加熱を行うとよい。充分な耐久性
を発現し、かつ結晶化を阻害しないSiの含有量として
は、金属塩の全金属とSiとの総量に対するSiのモル
比が0.30〜0.60であること好ましい。
【0023】Si酸化物前駆体としては、テトラメトキ
シシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシ
ラン、テトラブトキシシランなどの単量体や、前記アル
コキシドの縮合体であるヘキサエトキシジシロキサン、
オクタエトキシトリシロキサン、デカエトキシテトラシ
ロキサン、エトキシポリシロキサンや、単量体と縮合体
の混合物であるエチルシリケート40などが挙げられ
る。
【0024】さらに、アルコキシ基の一部がアルキル基
に置換された、すなわちアルコキシ基とアルキル基とを
有するアルキルアルコキシシランも用いられる。アルキ
ル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、 2
−エチルブチル、オクチルなどの直鎖状または分岐状の
アルキル基や、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの
シクロアルキル基などが挙げられる。Siのアルコキシ
ドの加水分解生成物の合成方法としては、公知の方法が
用いられる。生成物を制御するうえでは、アルコキシド
の種類や量、加水分解触媒の種類や量、水の量、反応方
法、反応時間、反応温度、撹拌条件等が重要なファクタ
である。
【0025】Siのアルコキシドに水や触媒を添加する
にあたっては、1)Siのアルコキシドと水とを混合す
る方法、2)Siのアルコキシドと水とを酸の存在下で
混合する方法、3)Siのアルコキシドと水とをアルカ
リの存在下で混合する方法、などの方法が好ましい。前
記2)の方法における酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、
リン酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸などが好まし
い。なお、Siのアルコキシドと水との混合物に硝酸銅
を添加し、酸性溶液とすることなども一態様である。ま
た3)の方法におけるアルカリとしてはアンモニアなど
を用いる。
【0026】本発明の塗布液に用いる溶媒としては、金
属塩とオリゴマーとを同時に溶解させ、かつ金属塩とオ
リゴマーとの反応生成物(錯体)を溶解させうる溶媒が
用いられる。塗膜のレベリング性(均一性)や乾燥時に
発生する色ムラ抑制の観点から、2種類以上の混合溶媒
とすることも有効である。2種類以上の混合溶媒を用い
る場合、その内の1種以上の溶媒が前記錯体を溶解する
溶媒であり、他の溶媒が前記錯体を溶解しない溶媒であ
ってもよい。
【0027】溶媒としては、水、低級1価アルコール
(メタノール、エタノール、プロパノール等)、水溶性
ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、へキシレングリコール等)、エーテルアルコール
(セロソルブ類、カルビトール類等)、ケトン(メチル
エチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステ
ル、エーテル、アセタールなどが挙げられる。また、単
に溶媒としてだけではなく、塗布液中で金属に配位して
キレートを形成し金属源の安定化に寄与するものもあ
る。たとえば、エーテルアルコール、水溶性ジオール
(特にヘキシレングリコール)の溶媒などが挙げられ
る。
【0028】塗膜乾燥過程においては、溶剤蒸発、高分
子量化にともなう粘性の変化、表面張力の変化などに起
因して、また外来異物などにより、塗膜外観に膜厚ムラ
やピンホール、クレータ状欠点などが発生しやすい。ま
た、焼成時にも膜の収縮が大きいために、特に厚膜にな
ると、微小な亀裂やクラックが入りやすくなる。このよ
うな塗膜乾燥、焼成時の外観欠点の抑制には、塗布液中
に樹脂を添加することが重要である。
【0029】本塗布液に用いる樹脂としては、金属塩と
溶媒からなる溶液に可溶なものであれば特に限定されな
い。金属塩に硝酸塩を使用した場合には塗布液が水溶性
となることが多いため、水系塗料用添加剤(レベリング
剤、表面調整剤、粘弾性調整剤)にも用いられることの
多い水溶性樹脂を用いると溶解性も高く効果的である。
【0030】さらに、溶解性以外に考慮すべき樹脂の特
性として、塗布液の粘性への影響、および熱分解温度が
挙げられる。粘性は塗膜のレベリング性、膜外観と密接
に関連するため、塗布液の性質や所望の膜厚に合わせる
必要がある。また、塗膜を乾燥、焼成する段階で樹脂を
膜中に残留させたくない場合には、比較的低温で分解
し、最終焼成後にはほとんど膜中に残留しない樹脂を用
いることが好ましい。取り扱い上は、毒性が少なく安全
な樹脂(たとえば多糖類など)が好ましい。
【0031】水溶性樹脂の例としては、セルロース誘導
体系(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロー
ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル
セルロースなど)、タンパク質系(カゼイン、カゼイン
酸ナトリウム、カゼイン酸アンモニウムなど)、アルギ
ン酸系(アルギン酸ナトリウムなど)、ポリビニル系
(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンな
ど)、ポリアクリル酸系(ポリアクリル酸、ポリアクリ
ル酸ナトリウムなど)、ポリエーテル系(ポリエーテル
ジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテ
ル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキ
シ変性物など)、無水マレイン酸共重合体系(ビニルメ
チルエーテル−無水マレイン酸共重合物の部分エステル
など)などが挙げられる。
【0032】また、非水系塗布液にも使用しうる樹脂の
例としては、エチルセルロース、ポリアクリル酸アルキ
ル、ポリアルキルビニルエーテル、ジメチルポリシロキ
サン、メチルフェニルポリシロキサン、有機変性ポリシ
ロキサン(たとえば変性シリコーンオイル)などが挙げ
られる。特にセルロース誘導体系は、水溶性、非水溶性
とも各種あるため選択の幅が広く、400℃以下の焼成
で熱分解しやすく、さらに毒性がなく安全であるため好
ましく用いられる。
【0033】樹脂の添加量は、コート工法、塗膜の乾
燥、焼成工程、および最終的に得られる膜物性に合わせ
て適宜選択すればよく、特に限定されない。樹脂は焼成
後に膜に残存する場合は膜形成成分となる一方、膜中の
樹脂の残存量が過剰であると膜の物性が劣化する傾向に
あり、このような観点から、樹脂の添加量は、金属塩の
全金属とSiとの総量に対する重量比で0.001〜
8.00であることが好ましく、特に0.01〜3.0
0であることが好ましい。
【0034】塗膜外観欠点抑制の観点から、塗料添加剤
として用いられる各種界面活性剤を添加できる。特に、
シリコーン系、フッ素系などの界面活性剤には膜厚ムラ
抑制に効果的なものがある。本塗布液においては、ケイ
酸塩、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナなどの無
機系添加剤も添加できる。
【0035】本発明は、本塗布液を基体上に塗布し、3
00℃以上の温度で焼成する酸化物膜形成方法を提供す
る。300℃未満の温度では分解が進みにくい。温度の
上限は特になく、基体の耐熱温度まで、たとえば通常の
ソーダライムガラスであれば650〜700℃程度まで
加熱ができ、温度が高くなるほど酸化物膜は緻密化す
る。
【0036】本発明における酸化物膜の膜厚(幾何学的
膜厚)は、特に限定されないが、意匠性や実用上の耐久
性の観点から、20〜500nmであることが好まし
く、特に50〜400nmが好ましい。膜厚を調整する
ことにより、所望の可視光透過率となしうる。
【0037】Si酸化物を含む膜をガラス基体に形成す
る場合、高温で加熱すると膜の収縮に伴ってガラス基体
が反りやすいが、本発明においては、このような問題は
生じにくい。これは、本塗布液が金属塩を含む結果、得
られる膜の熱膨張率がガラスと同等かむしろ大きくな
り、厚膜を形成しても高温焼成時のガラス基体の反りが
生じ難くなるためと考えられる。
【0038】また、基体上に、本塗布液を塗布、加熱し
て形成した酸化物膜(下層膜)上に、さらに本塗布液を
塗布することにより、下層膜の細孔中に塗布液が浸透す
る。塗布後、300℃以上の温度に加熱することによ
り、さらに緻密で高耐久性の多層の酸化物膜が得られ
る。多層の酸化物膜は同じ組成の塗布液を用いて多層膜
としてもよく、異なる組成の塗布液を用いて多層膜とし
てもよい。
【0039】透明基体(たとえばガラス基体)の遮光性
付与を目的とする場合、1層で目標の値まで透過率を下
げるのに比べ、2層に分けた方がより薄い膜厚で加熱、
熱分解できるため、より緻密な膜が得られる。しかも、
1層目の熱分解で生じた多孔質膜の細孔中に塗布液が浸
透し、さらに緻密で高耐久性の膜が得られる。
【0040】多層とした場合、酸化物膜の合計膜厚は、
特に限定されないが、実用上の耐久性の観点から、20
〜600nmであることが好ましく、特に50〜500
nmが好ましい。多層膜の場合、それぞれの層の膜厚は
特に限定されず、所望の膜厚で形成できる。2層目を薄
く(たとえば100nm以下程度)形成すると、膜の表
面の緻密性が増し、摩耗などに対する耐久性が向上す
る。また、逆に1層目を薄く形成して、基体と2層目の
密着性を増すといった膜構成も有効である。
【0041】塗布液の基体への塗布方法は特に限定され
ず、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、
メニスカスコート、フローコート、転写印刷、スクリー
ン印刷等などが挙げられる。
【0042】本発明は、また、基体上に前記の酸化物膜
形成方法により酸化物膜が形成されてなる酸化物膜付き
基体を提供する。基体としては300℃以上の耐熱性が
あることが好ましく、たとえばガラス基体、セラミック
ス基体等が挙げられる。
【0043】本発明は、自動車用窓ガラス(特に昇降す
る自動車用窓ガラス)に前記の酸化物膜形成方法により
酸化物膜を形成し酸化物膜付き自動車用窓ガラスを得る
うえで好適である。
【0044】
【実施例】以下に本発明の詳細を実施例(例1〜9、1
2〜15)および比較例(例10、11、16)を挙げ
て示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0045】例1〜11に用いた基体は、フロート法に
より製造された4mm厚のグリーン色熱線吸収ガラス基
板(100mm×100mmの大きさ、可視光透過率7
9%、可視光反射率8%)である。
【0046】表1(金属源の種類と量(単位:g)、オ
リゴマーの種類と量(単位:g)および溶媒)に示す割
合で原料を混合し、50℃で2時間撹拌したものを塗布
液とした。なお、表1で用いた略称は表3に示す。Si
OR以外の金属源は硝酸塩である。塗布液中の金属塩の
全金属とSiとの総量に対するCrのモル比(C/
M)、塗布液中の金属塩の全金属とSiとの総量に対す
るSiのモル比(S/M)、塗布液中の金属塩の全金属
とSiとの総量に対するオリゴマーのモル比(EG/
M)、樹脂の種類、塗布液中の金属塩の全金属とSiと
の総量に対する樹脂の重量比(P/W)も表1に示す。
【0047】例1〜7、10、11においては、基板に
スピンコータを用いて塗布後、焼成して、反射率10%
以下の試料を得た。例8、9においては、例1同様に、
上記基板にスピンコータを用いて下層液を塗布し、50
0℃で2分間焼成して下層を形成した後、スピンコータ
を用いて上層液を塗布、焼成して上層を形成し、反射率
10%以下の試料を得た。
【0048】例12においては、基体としてフロート法
により製造された4mm厚のグリーン色熱線吸収ガラス
(1m×2mの大きさ、可視光透過率79%、可視光反
射率8%)で形成された自動車のサイドドアに用いる窓
ガラスを用い、表1に示す塗布液をフレキソ印刷法によ
り塗布後、表2に示す条件で焼成して膜を形成した。
【0049】また、例13においては、例12における
フレキソ印刷法のかわりにディップコート法を用いて表
1に示す塗布液を塗布し、表2に示す条件で焼成した以
外は例12と同様に行った。
【0050】また、例14、15、16においては、例
12におけるフレキソ印刷法のかわりにダイコート法を
用いて表1に示す塗布液を塗布し、表2に示す条件で焼
成した以外は例12と同様に行った。なお、外観向上を
目的として、溶媒は混合溶媒を用い、その重量比率は、
例14、16については、HG/PGM/MIBK/M
EK=12/53/14/21、例15については、H
G/IPA/PGMAC=25/55/20とした。
【0051】最外層の酸化物膜の焼成条件、膜厚(多層
の場合は合計膜厚)、得られた試料の可視光透過率Tv
(JIS−R3106)、透過色、耐摩耗性を表2に示
す。耐摩耗性は、荷重500gf、1000回転のテー
バー摩耗試験(JIS−R3212)後のヘイズ値変化
ΔH(%)の結果を示した。なお、実用上必要とされる
ΔHは5.0%以下である。
【0052】例12〜16で得られた酸化物膜付き自動
車用サイドドアガラスは、実用上充分な耐摩耗性を有し
ていることが確認され、例12〜15においてはピンホ
ールや膜厚ムラのほとんどない良好な外観の酸化物膜が
得られた。しかし例16においては、ピンホールが多数
あり、実用上充分な外観であるとは言い難かった。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】本発明の酸化物膜形成用塗布液によれ
ば、きわめて耐摩耗性が高く外観欠点の少ない遷移金属
酸化物膜を容易に形成できる。また、高い耐摩耗性を要
求される自動車用ドアガラスなどに使用しうる高意匠性
のガラスを、生産性良く、低コストで生産できる。
フロントページの続き Fターム(参考) 4G059 AA01 AC08 EA01 EA05 EB07 FA05 FA28 FA29 FB05 4J038 AA011 AA012 DL021 DL051 EA011 HA331 HA332 HA441 HA442 JA27 JC32 NA01 NA11 PA19

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Co、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Z
    nおよびランタノイド(La〜Lu)からなる群から選
    ばれる1種以上の金属の塩と、Siのアルコキシドまた
    はその部分加水分解物と、樹脂とを含む塗布液であっ
    て、塗布液中の前記金属の塩の全金属とSiとの総量に
    対するSiの原子比が0.28以上である酸化物膜形成
    用塗布液。
  2. 【請求項2】金属の塩がCuの塩とMnの塩とからなる
    請求項1に記載の酸化物膜形成用塗布液。
  3. 【請求項3】金属の塩が硝酸塩である請求項1または2
    に記載の酸化物膜形成用塗布液。
  4. 【請求項4】化学式HO(CH2CH2O)nH(ただし
    nは2〜8の整数)で表されるエチレングリコールオリ
    ゴマーの1種以上を含む請求項1、2または3に記載の
    酸化物膜形成用塗布液。
  5. 【請求項5】エチレングリコールオリゴマーが、ジエチ
    レングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラ
    エチレングリコールからなる群から選ばれる1種以上で
    ある請求項4に記載の酸化物膜形成用塗布液。
  6. 【請求項6】塗布液中の前記金属の塩の全金属に対する
    エチレングリコールオリゴマーのモル比が0.3以下で
    ある請求項4または5に記載の酸化物膜形成用塗布液。
  7. 【請求項7】樹脂が水溶性樹脂である請求項1〜6のい
    ずれかに記載の酸化物膜形成用塗布液。
  8. 【請求項8】請求項1〜7のいずれかに記載の酸化物膜
    形成用塗布液を基体上に塗布し、300℃以上の温度で
    焼成する酸化物膜形成方法。
  9. 【請求項9】基体上に請求項8に記載の酸化物膜形成方
    法により酸化物膜が形成されてなる酸化物膜付き基体。
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