【発明の詳細な説明】
神経剌激性ペプチド
関連出願
本出願は、1996年5月17日出願の米国特許出願連続番号第08/649
,272号に対して優先権を主張するものであり、前記特許出願の明細書は、そ
の全体を参照としてここに引用する。
発明の背景発明の分野
本発明は、神経刺激性ペプチド、蛋白、あるいはアミノ酸組成物の分野に関す
る。従来の技術
現在、哺乳類の中枢神経系(CNS)が、脳および脊髄内で特殊なシグナル伝
達を行うために多くの神経刺激性ペプチドを用いていることはよく知られている
。中でも広く知られている神経剌激性ペプチドは、ソマトスタチン、コレシスト
キニン、VIP、サブスタンスP、エンケファリン、神経ペプチドY(NPY)
、ニューロテンシン、TRH、CCK、およびダイノルフィンである(一般に、
The Biochemical Basis of Neuropharmacology,Cooper,Bloom and Roth,5th e
d.,Oxford University
Press,New York,1986参照)。CNS内で働く複雑なシグナリング経路を綿密に
説明するためには、特異的神経刺激性ペプチドとそれらの個々の特性の同定と特
性付け、ならびに神経学的に重要な特異的レセプタの特性付けと位置確認が必要
である。部分的にあるいは全面的に、共調してあるいは独立して作用するCNS
レセプタの作動薬(アゴニスト)と拮抗薬(アンタゴニスト)の同定は、より多
くの特異的神経刺激性ペプチドの存在が知られるほど、CNSレセプタ蛋白およ
びCNSレセプタ複合体の挙動により広い範囲の操作を施すことができるという
意味で有用である。重要な点として、ユニークな作動薬あるいは拮抗薬を同定す
ることにより、神経剌激性ペプチドレセプタのサブセットを、これらの作動薬あ
るいは拮抗薬との結合を通して詳細に特性付けすることや、位置決定することが
可能になる。神経剌激性ペプチドを同定し、それらを用いて既知のレセプタ複合
体の作用を特異的に変化させることによって、レセプタ複合体についてより詳し
い理解が得られるようになる。さらに、新しい神経刺激性ペプチドは、既知のC
NSレセプタ複合体の作用を変化させる代替手段を提供し、またこれまで知られ
ていないレセプタ複合体の発見あるいは既知のレセプタの未知の性質の発見を可
能にする。
神経変性障害、発作に関連する脳細胞死、痙攣性障害、学習および記憶に関係
づけられてきたN - メチル - D - アスパラギン酸(N-methyl-D-aspartate、
NMDA)レ
セプタが、ヒト組織からクローン化された(Hoffman,M.,1991,Science,254:801
・2参照)。NMDAに結合して活性化されることに加えて、NMDAレセプタ
はグルタミン酸(Glu)およびアスパラギン酸(Asp)によっても活性化さ
れ、同時に、D - 2 - アミノ - 5 - ホスホノバレエート(D-2-amino-5-phos
phonovalerate ,.D - AP5;D - APV)によって競合的に拮抗され、あ
るいはフェニルサイクリジン(phenylcyclidine、PCP)およびMK−801
によって非競合的に拮抗される。しかしながら、最も興味深いことは、NMDA
レセプタがグリシン(G1y)により、共活性化される(Kozikowskiら、1990,J
ournal of Medicinal Chemistry 33:1561 1571)ことである。NMDAレ
セプタ複合体上のアロステリック調節部位にグリシンが結合すると、NMDAレ
セプタチャネルの開放時間が延長し、開放頻度が劇的に上昇する。
NMDAレセプタは長期強化(long-term potentiation、LTP)の中心をな
すとみなされており、これは学習と記憶の基礎と考えられている神経の結合の持
続的な強化である(総説については、Bliss and Collingridge,1993,Nature 361
:31 - 39 参照)。たとえば発作の際に起こりうるCNSの損傷は、グルタミン
酸あるいはアスパラギン酸を溢出させることによってNMDAレセプタを有する
細胞の過度の興奮を引き起こし、そのような過度に興奮した細胞の約80%を死
に導くと思われる。NM
DAレセプタを有する細胞の大部分は脳の皮質と海馬領域に存在し、過度な興奮
による細胞の死後、患者は新しい事柄を学習することができなくなるが、長期記
憶にある事柄はまだ思い出すことができる。PCP乱用に関連するヒトの記憶喪
失はPCPの作用と結びつけられており、NMDAレセプタを通るカルシウム流
出の阻害の予想される結果である。
NMDAレセプタを遮断するか、あるいはさもなければその作用を変化させる
ことができる薬剤は、過度の興奮による細胞死あるいはNMDAレセプタに関連
する記憶障害から細胞を保護しうると考えられる。NMDAレセプタと相互作用
する他の薬剤は、LTPを形成する細胞の能力を強化し、従って学習と記憶を高
めると考えられる。
NMDAレセプタの重要性のゆえに、NMDAレセプタの、組織分布の微細な
マッピングやサブセットの特性付け、微妙な操作を可能にし、また、NMDAレ
セプタの他の作動薬あるいは拮抗薬の作用を特性付けることができる特異的なペ
プチド性作動薬あるいは拮抗薬を得ることは極めて有用であろう。
発明の要約
本発明は、NMDAレセプタと結合する能力を特徴付けられるいくつかの特異
的な神経剌激性ペプチドを提供する。本発明は、グリシンコアゴニスト(co-ago
nist)
部位でNMDAレセプタに結合し、少なくともグリシンの結合と同じ程度の生物
活性をNMDAレセプタが生じるような特異的なポリペプチドあるいはアミノ酸
組成物を提供する。本発明は、天然の組織、体液あるいは細胞から精製されるポ
リペプチドあるいはアミノ酸組成物を提供する。本発明は、従来の生化学的方法
あるいは分子生物学的手法を用いた、本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組
成物の化学的合成を提供する。本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組成物は
、NMDAレセプタ活性の分離と特性付けおよび組織での局在化を調べるのに有
用であるので、安定性が高められるように基本骨格には修飾したペプチドが組み
込まれているか、あるいはペプチドフラグメントの三次元コンフォメーションを
安定化するか、あるいは強化することができるように基本骨格に修飾を付け加え
ることにより得られる、安定なポリペプチドあるいはアミノ酸組成物が提供され
る。本発明はまた、環化したポリペプチドあるいはアミノ酸組成物も提供する。
本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組成物の他の利益は、サイズが小さい
ため血液脳関門を超える能力が高く、そのためインビボでの投与と検出に適して
いることである。たとえば本発明は、放射性マーカ、MRIマーカ、金属イオン
マーカ、酵素マーカ、化学発光性マーカ、あるいは該ポリペプチドあるいはアミ
ノ酸組成物の検出を可能にするそのような何らかのマーカと結合した
本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組成物を含む。
本発明はまた、生体被験者に投与することができるように適切な製薬上のキャリ
ヤ中の、本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組成物の製薬製剤も含む。その
ような投与は、i.p.、i.v.、i.m.、あるいは他の何らかの適当な手
段によって行いうる。
本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組成物を、インビトロで組織切片や染
色のようなスクリーニングを用いてNMDAレセプタの検出に使用する場合には
、結合させるマーカは、上記の適当なマーカに加えて、蛋白、抗体、アビジン、
ビオチン、ならびにスクリーニングアッセイあるいは染色工程においてポリペプ
チドあるいはアミノ酸組成物の存在を検出することができる他の何らかのそのよ
うなマーカも含みうる。
本発明はまた、本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組成物と、結合したレ
セプタとポリペプチドあるいはアミノ酸組成物を検出のための適切なマーカとを
用いて、NMDAレセプタを検出する方法も提供する。そのような方法は、使用
する検出条件に従ってインビトロでもインビボでも実施することができる。その
ような方法を用いて実施することができる特定手法としては、MRI、CATス
キャン、X線、ソノグラム、および他の非侵襲的検出法を含むが、これらには限
定されない。侵襲的手法、すなわち生検あるいは組織切片を考慮する場合には、
標準的な免疫学的スクリーニング法を使用して、結合し
たレセプタ/ポリペプチドの存在を検出することができ、また、免疫学的染色を
通して、もしくは広い範囲の利用できるマーカ/検出系を用いる他の検出手段を
通してそのような結合を特異的に視覚化することができる。それ故、本発明はま
た、本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組成物と接触するNMDAレセプタ
である、NMDAレセプタの生物学的活性を調整する方法も提供する。以下の実
施例におけるアッセイデータにより有効と予測されるものとして、特に下記の表
1にリストされたアミノ酸配列を持つペプチドが含まれる。
図面の簡単な説明
図1は、 [ 3H]MK801アッセイを用いたNMDA結合に関する試験の
結果を比較した3つのグラフを示す。図1AはD - シクロセリンの活性を示し
、図1Bはモノクローナル抗体B6B21の活性を示し、図1CはペプチドNT
- 3の活性を示している。結果は、選択的グリシン部位作動薬である7 - クロ
ロキヌレン酸の存在下での、試験成分の濃度対[ 3H]MK801の抑制の結
合のパーセンテージとして表わされている。
図2は、 [ 3H]MK801結合アッセイで測定したように、ペプチドN
T - 13を薬理学的なNMDA特異的機能アッセイにおいて部分的作動薬とし
て試験した結果を示す。
図3は、電気生理学的なNMDA特異的機能アッセイにおいてペプチドNT -
13を部分的作動薬として試験した結果を示す。図3Aはパッチクランプ測定
の結果を示す。図3B - Dは、ペプチドNT - 13が部分的なグリシン作動薬
の特性を持つことを示している。図3Bは、NT - 13はグリシンを擬態する
が、あまり有効ではないことを示す。図3Cは、NT - 13が標準的なNMD
A+グリシンの電流を阻害することを示している。図3Dは、NT - 13が誘
発するNMDA電流が、選択的グリシン部位拮抗薬である7 - クロロキヌレン
酸によって遮断されることを示している。
図4は、脳脊髄液(CSF)の対照とmAb B6B21とを比較した、挙動
的NMDA特異的機能アッセイにおいて部分的作動薬としてNT - 13を試験
した結果を示す。図4は、水没した台に泳ぎつくまでの短い潜伏時間(図4A)
、台までの経路の長さ(図4B)、ならびにトレーニング8日目のプローブトラ
イアルの際の標的までの減少した平均距離(図4C)によって測定されたように
、ペプチドNT - 13がモリスの水中迷路課題において何らかの認知強化を生
じさせることを示している。
図5は、B6B21モノクローナル抗体(mAb)で処置した後の高齢ウサギ
における眼のまばたき反応の結果を示す。挿入図は、最大条件反応(CR)が達
成された時の習得に関するデータを示す。
図6Aは、放射標識アンチピリン、スクロースおよび水と比較した、放射標識
ペプチドNT - 13の相対的血液脳関門透過性を示すグラフである。図6Bは
、水(100%値)と比較した脳内での%数をグラフで示したものである。
図7は、経鼻投与の5分後に脳内で測定された放射標識NT - 13の量をグ
ラフで示している。データは、経鼻的にデリバリーされた放射標識NT - 13
のmgに対する脳内の放射標識NT - 13のμgとして表わされている。
図8は、i.p.注射の20分後に脳内で測定された放射標識NT - 13の
量をグラフで示したものである。データは、i.p.注射を通してデリバリーさ
れた放射標識NT - 13のmgに対する脳内の放射標識NT - 13のμgで表
わされている。
発明の詳細な説明実施例1 NMDAレセプタに特異的なモノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、標準的なブロトコールに従って(MoskalとSchaffner,
1986,The Journal of Neuroscience,6(7):2045 - 2053 参照)、5日齢の新生児
ラットから分離した歯状回組織でマウスを免疫化することによって得た。組織化
学的方法により歯状回組織(dentate gyrus tissue)への結合に関してハイブリ
ドーマをスクリ
ーニングした後、有望な候補クローンを分離した。分離したクローンの中で、ラ
ット海馬切片においてLTPの産生を遮断し、海馬と歯状回の両方のCA1領域
で確立されたLTPを抑制することが認められたのは、モノクローナル抗体B6
E11であった(Stanton,SarveyおよびMoskal,1987,Proceedings of the Natio
nal Academyof Science,U.S.A.,84:1684 - 1688参照)。モノクローナル抗体B
6E11は、増強する入力により接合する先端突起に適用した時にはLTPを遮
断する上で有効であるが、細胞体あるいはCA1の基底突起に適用した時には有
効でないことが認められた。これに対し、同じ免疫グロブリンクラスの同じパネ
ルからのものであり、同じように標的組織に結合する第二のモノクローナル抗体
、G6E3は、LTPに全く影響を及ぼさなかった。
もうひとつのモノクローナル抗体、B6B21は、NMDAレセプタのグリシ
ン様モジュレーションによってLTPを強化することが認められた(Haring,Sta
nton,Scheideler,およびMoskal,1991,Journal of Neurochemistry,57(1):323 -
332参照)。このユニークなモノクローナル抗体は、ラットの海馬切片において
CA1錐体細胞の先端突起に適用した時、N - ( -1-( 2 - チエニル)シク
ロヘキシル) - 3,4 - [ 3H]ピペリジン([ 3H] - TCP)の結合
増加によって検出されるように、LTPを有意に上昇させることができた。最大
濃度のグルタミン酸、グリシンおよびマグネシウムを混合して添
加してNMDAレセプタを最大飽和させることにより、この作用は排除された。
最も重要な点として、モノクローナル抗体B6B21は[ 3H] - TCP結合
の7 - クロロキヌレン酸による阻害を排除したが、APVによる[ 3H] -
TCP結合の阻害には影響を及ぼさなかった。モノクローナル抗体B6B21に
よる[ 3H] - TCPの結合強化は、グルタミン酸によって増大したが、グリ
シンによっては増大しなかった。
海馬依存性の学習は、ウサギの眼まばたき条件付け試験を用いたインビボ実験
において、NMDAレセプタに特異的に結合する、B6B21の結合あるいはD
- シクロセリンの両者の添加によって促進されることが認められた(Thompson,
MoskalおよびDisterhoft,1992,Nature,359:638 - 641参照)。B6B21の脳室
内(脳室の内部への)注入は、ウサギでの海馬依存性の痕跡眼まばたき(trace
eye-blink)条件付けにおける習得率を有意に上昇させ、80%条件反応の判定
基準に達するのに要するトライアルの数を半減させた。血液脳関門を越える、N
MDAレセプタ上のグリシン部位の部分的作動薬であるD - シクロセリンの末
梢注射も、ウサギの学習率を二倍にした。
モノクローナル抗体B6B21の試験から、我々はmAb B6B21の作用
、従ってグリシンコアゴニスト作用を擬態することができるポリペプチドあるい
はアミノ酸組成物のパネル(表1)を作製することができた。実施例2 薬理学的なNMDA特異的活性 - [ 3H]MK801アッセイ
本発明のペプチドは、グリシンコアゴニスト部位で哺乳類のNMDAレセプタ
に特異的に結合することができる。驚くべきことに、本発明のペプチドはグリシ
ン(Gly、G)アミノ酸の存在を必要としない。NMDAレセプタが哺乳類の
脳において果たす重要な役割のゆえに、特異的作動薬は、NMDAレセプタの組
織分布、ならびに疾患、損傷あるいは他の薬理学的作用との相関の詳細なマッピ
ングのために非常に有用である。特異的で小さなペプチド作動薬は、バイオアベ
イラビリティーを高め、血液脳関門を越えて運搬されるようにさらに修正するこ
とができるという点で特に有用である。
本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組成物を、これまでに有効性が確認さ
れている[ 3H]MK - 801結合アッセイを用いて、NMDAレセプタへの
グリシンコアゴニスト作用を擬態する能力に関して試験した。この機能検定は、
NMDAレセプタによる[ 3H]MK - 801結合の増加はレセプタ結合チャ
ネルが開いている時にだけ起こりうるという事実を利用している。これは、MK
- 801結合部位がNMDAレセプタ複合体のイオノフォアの内側に位置して
おり、そのためレセプタ複合体チャネルの開放時にしかアクセスできないからで
ある。
従って[ 3H]MK - 801の結合増加は、このアッセイでは、本発明のポリ
ペプチドあるいはアミノ酸組成物のグリシンコアゴニスト結合部位への結合が引
き金となるチャネル開放の増加と直接相関している。
アッセイをさらに改善するために、NMDAレセプタチャネル複合体のグリシ
ン結合部位の選択的拮抗薬をアッセイに加える。7 - クロロキヌレン酸の通常
の作用は、グリシン部位に選択的に結合して、NMDAレセプタチャネルの開放
を阻害し、従って[ 3H]MK - 801がNMDAレセプタ複合体に結合する
のを阻害することである。ペプチドNT - 13の付加は[ 3H]MK - 80
1の結合阻害を排除し、従って本発明のポリペプチドあるいはアミノ酸組成物が
グリシン結合部位に結合するという事実と相関する。
膜の調製 アッセイで使用する粗シナプス膜を、ラットの海馬組織(雄性のス
ブラーグーダウリー( Sprague-Dawly)ラットを用いて調製し、以前に述べら
れている方法を用いて十分に洗浄した(Haringら、1991,J.Neurochem.57:323 -
331)。簡単に述べると、−80℃で保存しておいた組織をBrinkman
Polytronを用いて氷冷5mM トリス(Tris)(pH7.4)中でホモ
ジナイズし、次に48,000gで20分間遠心分離にかけてぺレット化する。
生じた上清を廃棄し、膜を低温緩衝液で3回洗浄する。次にペレットを5mM
EDTA、15mM Tris(pH7.4)に再懸濁し、37℃で1時間イン
キュベートする。膜懸濁液を48,000gで20分間遠心分離にかけてペレッ
ト化し、アッセイで使用するまで−80℃で保存する。
レセプタ結合アッセイ 凍結ペレットを室温で解凍し、5mM Tris(p
H7.4)に懸濁して遠心分離にかけることにより3回洗浄する。最終的なペレ
ットを2〜3mg/mlの濃度で5mM Tris緩衝液(pH7.4)に懸濁
する。新たに調製した膜200μgを、一連のぺプチド濃度と60μM 7−ク
ロロキヌレン酸の存在下に25℃で、1nM[ 3H]MK - 801を含む反応
混合物(最終容量約1ml)に加えて、結合反応を開始させる。10μMの標識
していないMK - 801を用いて非特異的結合を測定する。Brandel
24ウエル細胞ハーベスターを通して、あらかじめ0.25%ポリエチレンイミ
ンに30分間液浸しておいたWhatman GF/Bガラスフィルターで濾過
して結合反応を終了させる。
データの解析/解釈 D - シクロセリンの有効用量に等しいかまたはそれ以
下の濃度(10-5)で[ 3H]MK - 801結合を刺激するペプチドは、NM
DAレセプタ複合体のグリシン部位に結合する能力に関して陽性とみなされる。
図1は、D - シクロセリン(図1A)、mAb B6B21(図1B)、お
よびペプチドNT - 3(図1C)を用いた結合データを比較したデータを示す
。図1Cは、ペブチドNT - 3が明らかにmAb B6B21およびD - シク
ロセリンと同じようにNMDAレセプタのグリシン部位に結合することを明確に
示している。データは、被検物質の濃度に対する7 - クロロキヌレン酸存在下
での結合抑制の%として報告されている。
図2は、上記と同じくペプチドNT - 13の結合活性を示す。データは、被
検物質の濃度に対する7 - クロロキヌレン酸存在下での結合抑制の%として報
告されている。
以下の表2は、本発明のペプチドを用いたアッセイからの結果をリストしたも
のである。
* 10μM L - グルタミン酸の存在下
表2は、ラット海馬アッセイにおいて[ 3H]MK - 801結合によって測
定したペプチドNT - 1からNT- 18のNMDAレセプタ活性化への影響を
示しており、ペプチドの様々な濃度での結合抑制のパーセンテージ(±S.E.
M.)として報告されている。ペプチドNT - 15からNT - 18に関して報
告されたデータおよ
び各点についての実験誤差から、これらのペプチドのうちのいずれもが意味のあ
る生物活性を持つ可能性は低い。有効濃度に関して、ミリモル範囲に近い(10
0mM)10-5Mのペプチド濃度は、ペプチドが生物学的に活性であることの信
頼しうるインジケータとみなすには高すぎることを強調しておかねばならない。
そのような高濃度では、特異結合に比べて非特異的結合作用が拡大され、レセプ
タ/リガンドの結合平衡がゆがめられる可能性が高い。従って、10-5Mの濃度
範囲で至適結合活性を示すペプチドは有望な候補物質とはみなされない。
たとえば、NT - 14とNT - 15は試験したいずれの濃度でも作用を示さ
ず、またNT - 16、NT - 17およびNT - 18は10-5Mで最も有効で
ある。濃度と実験誤差を考慮に入れると、これらのペプチドは生物学的に活性で
はないものとして除外することが妥当である。
しかし、D - シクロセリンはNMDAレセプタのグリシン部位における部分
的作動薬であり、認知エンハンサーとして働きうることが認められている(Thom
pson,Moskal,およびDisterhoft,1992,Nature,359:638 - 641)。セリンとトレオ
ニンは多くの構造的特徴を共有しており、トレオニンがセリンと同様の強化特性
を持つことは可能であると考えられる。それゆえ、NT - 3とNT - 13のト
レオニン部分をセリンで置き換えると活性なペプチドを生じると予測することは
可能である。実施例3 電気生理学的なNMDA特異的活性アッセイ
本発明のペプチドのNMDAレセプタ機能に対する影響の直接電気生理学的測
定は、強力で明白であり、且つコストおよび時間的に効果的なスクリーニング法
である。最初に[ 3H]MK - 801結合アッセイを通して好ましいと選択さ
れた本発明のペプチドを電気生理学的スクリーニングに供する。
方法 二電極電位固定法と標準卵母細胞発現系標品を用いて電気生理学的記録
を行う(LeonardとKelso,1990,Neruon 4:53・60;Kelsoら,1992,J.Physiology 4
49:705 - 718 参照)。卵母細胞を分離し、マウスNMDAレセプタサブユニッ
トについてのmRNAを注入する:z1(ξ1)RNA 70n1を等しい量の
e1(ε1)RNAと同時注入する。2日間インキュベートした後、膜電位を−
80mVに固定して記録を行う。基準記録溶液は、95mM NaCl、2mM
KC1、3.8mM BaCl2、および5mM HEPESを含む。Mg2+
は一部の電位でNMDA電流を遮断するので除外する;Ca2+は卵母細胞の内因
性Ca2+依存性塩化物電流を生じさせるので除外する。NMDA含有溶液3〜5
mlを持続注入することによって応答を惹起する。記録室は約400mlの容量
を持つ。一部の実験では、7 - クロロキヌレン酸を潅流液に加えて、被検ペプ
チドあるいはアミ
ノ酸組成物がグリシン結合部位で競合し、作用することができることを明らかに
する。
データの解析/解釈 図3Aは、ペプチドNT - 13がNMDA電流に用量
依存性作用を及ぼすことを示す。高い濃度は高い電流を生じさせる。
図3Bは、ペプチドNT - 13がグリシンの不在下でNMDA電流を増強す
ることを示す。ここでは、10μMグリシンと100μM NMDAは大きな電
流を誘発した(約284nA、線の下向き偏向)。次の相では、100μMのペ
プチドNT - 13と100μM NMDAは、飽和グリシン+NMDA応答の
約40%の有意の電流を誘発した。この同じ細胞において、NMDA単独ではご
くわずかな応答しか示さなかった(約7nA)。
図3Cは、高いグリシン濃度でペプチドNT - 13を加えるとNMDA電流
を低下させることを示しており、ここではNMDAと飽和グリシンに対する対照
応答の約91%の低下を示している。このデータは、該ペプチドがグリシン結合
部位で競合するという結論をさらに裏付けている。
図3Dは、グリシン不在下で、ペプチドNT - 13の作用が拮抗薬7 - クロ
ロキヌレン酸の選択的付加によって遮断されたことを示している。実施例4 挙動的なNMDA特異的活性アッセイ - モリスの水中迷路
モリス(Morris)水中迷路 2種類の海馬(HPC)依存性連合学習がある;
時間依存性および空間依存性。モリスの水中迷路(Morris,1984,J.Neurosci.Met
h.11:47・60;Brandeisら,1989,Int.J.Neurosci.48:29 - 69)は空間依存性学習を
測定するための広く確立されたパラダイムであり、そのため時間的学習を測定す
る眼まばたき試験のような他の挙動アッセイを補足する。両方のタイプの学習が
加齢によって影響され、NMDAレセプタの活性化に依存する(Morris,1989,J.
Neurosci.9:3040 - 3057)。
アプローチの方法 すべての実験で成熟雄性スプラーグ−ダウレイ(Sprague-
Dawley)ラットを使用する。1群当り合計8〜10匹の動物を使用する。1群当
りの動物数は、同様の研究で得られたこれまでのデータのべき関数分析に基づい
て選択した。これら過去の試験の結果に基づき、生化学的および挙動的エンドポ
イントに関する誤差分散の現実的見積もりを得た。この情報を使用し、数値をp
<0.05と設定して、許容しうるレベルの統計力を与えるサンプルサイズを選
択した。見積もりは、Keppel(Design and Analysis,Prentice Hall,NY,1973 )
の中で示された提案に基づいた。すべての場合に、最小数の動物から引き出され
る情報の量を最大にするように試験をデザインした。
ラットの左右の側脳室内にステンレススチールのガイドカニューレを移植する
。ラットを2週間休息させた後、挙動試験を開始する。以下に述べる水中迷路課
題における各日のトレーニングセッションの15分前に、ラットに適当な濃度の
ペプチドあるいは人工脳脊髄液対照賦形剤(aCSF)を注入する。PE - 1
0チューブでCMA Instrumentsの精密注入ポンプにすえつけた1
0mlハミルトン注射器に接続した30ゲージの注射用カニューレを用いて、溶
液を約1.0ml/分の速度で脳室に注入する(i.c.v.)。合計約3.0
mlを各々の脳室に注入する。拡散を促進するために、注射用カニューレを注入
後2分間そのままの位置に残す。個々の処置 - 試験間隔を維持するように急性
注射処置を使用する。注射処置自体の成績への影響を評価するため、注射してい
ない対照群を含める。
水中迷路課題 i.c.v.注射の15分後に、モリスの水中迷路課題(MW
M)でラットを試験する。この課題は、ラットにおける空間記憶の挙動特性と神
経生物学的基質を評価するために広く使用される。速やかに習得される行動であ
り、食物遮断によって動機づけされないことから一般的になった。数多くの試験
が、この課題の成績は無傷の海馬および海馬中隔のコリン作動性回路に依存する
ことを明らかにしている。課題の成績は、HPCあるいはそのコリン作動性神経
支配の(i)外科的
あるいは(ii)薬理的分断によって、あるいは(iii)老化によって損なわ
れる。この課題が海馬中隔経路とHPCの機能的完全性について感受性のある有
用な挙動アッセイを提供することが認められている(Opelloら、1993、Physiol.
Behav.54(6):1227 - 1233)。
標準的なMWM課題は、ラットに、不透明な水の入った円形プールの中の水没
した台まで泳ぐことを学習することを求めるものである。プールの縁に沿った4
つの等間隔の点をスタート地点として定め、プールを4つの等しい四分円に分け
る。水没した避難台は、トレーニング期間を通して四分円のうちのひとつに位置
する。各々のトレーニングトライアルは、4つのスタート地点のひとつでラット
を水に入れることからなる。ラットは60秒間まで水没した台を捜すことが許さ
れ、また30秒間台上にとどまることが認められる。連続15日間、1日2回の
トライアルでラットを試験する。プールの周囲の異なるスタート地点を無作為の
順序で指定する。水没した台に泳ぎつくまでの潜伏時間が習得の測定となる。こ
れらの試験パラメータは、処置が誘発する空間記憶の改善と損傷の両方に感受性
のある課題を提供する。試験の第二の構成要素は、2、14、26および38回
のトライアル後のプローブトライアルの導入を含む。プローブトライアルの間は
、避難台を取り除き、ラットの挙動を30秒間ビデオテープに録画する。自動ビ
デオトラッキングシステムによって次の測定を導く:(i)正しい四分
円内に泳ぎつくのに要した時間のパーセント、(ii)プローブトライアル中の
標的からの平均距離、および(iii)泳ぐ速さ。この連続的なプローブトライ
アル法の使用は、空間学習の異なる構成要素の評価を可能にする;海馬機能に関
連しない記憶形態である手続的記憶、およびHPC依存性過程である宣言的記憶
。老化、アルツハイマー病およびAF64Aモデルでは宣言的記憶だけが損なわ
れるので、これら2つの認知形態を評価することは重要である(Opelloら、 199
3,Physiol.Behav.54(6):1227 - 1233)。
組織学的分析 挙動試験の終了後、ラットを犠牲剖検し、組織学的検査用に調
製する。ペプチドの反復注入がHPCにおいて興奮毒性損傷の徴候を生じさせる
かどうかを調べるための分析を行う。HPCの塊を、10%ホルマリンと30%
スクロースを含む0.1Mリン酸緩衝液中に垂下固定する。冠状切断して、クレ
シルバイオレットで染色し、CA3およびCA1の錐体細胞層の染色を画像分析
システムで測定する。
データの解析/解釈 混合型分散分析(ANOVA)に従い、複数因子あるい
は反復測定の発生率によって、一方向あるいは二方向分散分析(ANOVA)の
いずれかを用いて全体的な処置の影響を評価する。フィッシャーの最小有意差(
LSD)検定を用いて適当な対応比較
を実施する。許容される統計的有意性はp<0.05であり、ポスト - ホック
検定はすべて両側検定である。
結果 図4は、脳脊髄液対照(CSF)およびmAb B6B21と比較して
、挙動的NMDA特異的機能アッセイにおいてNT - 13を部分的作動薬とし
て試験した結果を示す。結果は、ペプチドNT - 13が、水没した台に泳ぎつ
くまでの短い潜伏時間(図4A)、台までの経路の短さ(図4B)、ならびにト
レーニング8日目のプローブトライアルの際の標的までの減少した平均距離(図
4C)によって測定されるように、ぺプチドNT- 13がモリスの水中迷路課題
において何らかの認知強化を生じさせたことを示している。図4Aのデータは、
各々の被検処置について秒で表わした避難潜伏時間として示されている。ここで
はペプチドNT - 13で処置したラットは、CSF対照(約19秒)およびm
Ab B6B21処置動物(約16.25秒)と比較して著明に改善された避難
潜伏時間(約10.75秒)を示した。図4Bのデータは、各々の被検処置につ
いてセンチメートルで表わした経路の長さとして提示されており、ペプチドNT
- 13で処置したラットは、対照CSF処置動物(約420cm)およびmA
b B6B21処置動物(約330cm)の比較して、標的までの経路の長さの
短縮(約300cm)を示した。図4Cのデータは、各々の被検処置についてセ
ンチメートルで表わした標的ま
での距離として示されており、プローブトライアルの間取り除かれた標的からの
平均距離を記銘についての測定として用いる。ここでは、ペプチドNT - 13
で処置したラットは取り除かれた標的の位置の非常に近く、約31cmの平均距
離にとどまったのに対し、対照CSFおよびmAB B6B21処置動物は各々
36.25cm、35cmそれた。
これらのデータは、本発明のペプチドによる処置が哺乳類において体内での挙
動効果、特にモリスの水中迷路課題での成績改善によって明らかにされたような
認知強化を誘発しうることを示している。実施例5 挙動的NMDA特異的活性アッセイ - 痕跡眼まばたき
痕跡眼まばたき条件付け 眼まばたきあるいは瞬膜(nictitating membrane)
条件付けは、いくつかの検査施設により、学習の神経基質の分析において使用さ
れる「モデル挙動システム」として適合されてきた(Disterhoftら、 1977,Brai
n Res.137:127 - 143;Thompson,1976,American Psychologist 31(3):209 - 227
)。中でもこのシステムの利点は、挙動パラダイムの相対的単純さ、使用しうる
卓越した管理方法、連合学習が分析されるという事実、条件刺激と無条件刺激の
適用と管理の容易さ、厳密な挙動的および神経生理学的測定の容易さ、ならびに
この準備のために使用できる挙動的データの豊富さであ
る(Gormezano,1966,in Classical Conditioning,J.B.Sidowdki編集、McGraw Hi
ll,New York,385 - 420;Goremzanoら、1987,Classical Conditioning,Hillsdal
e,New Jersey )。このシステムは、加齢に関連する記憶障害(Solomonら、1988
,Neurobiol.Aging 9:535 - 546)、カルシウム欠損と老化(Disterhoftら、1994
,Annals NY Acad.Sci.747:382 - 406)、健忘症(Gabrieliら、1995,Behav.Neur
osci.109:819 - 827)、およびコルサコフ健忘症患者と回復したアルコール依存
者(McGlinchey - Berrothら、1995,Alcoholism:Clin.and Exp.Resch.19:1127 -
1132 )を含めて、いくつかの疾病と相関していた。
アプローチの方法 雌性成熟白子ウサギ、Oryctolagus cuni
culus側脳室ガイドカニューレを左右両側に外科的に移植し、拘束へッドボ
ルトを取り付けた。手術は少なくとも到着から1週間後に実施し、体重に従って
麻酔のための用量を計算した(塩酸ケタミン60mg/kg、キシラジン10m
g/kg)。
手術から約10日後、被検動物にトレーニング環境への馴化の1時間のセッシ
ョンを1回実施した。2日間の休息後にトレーニングを開始した。前後に牽引ひ
もの付いたスナッグバッグを用いてウサギを拘束し、個別の防音室でトレーニン
グした。頭部拘束のためのバーの付いた、Gormezanoら(1996,in Classical Con
ditioning,J.B.Sidowdiki編集、McGraw Hill,New York,385 - 420頁)
が述べたのと同様のパッドを敷いたブレキシガラスストックにウサギを入れた。
眼瞼はドレスホックで開いたままに保持し、瞬膜の伸展を赤外線relecti
veセンサーで測定した(Thompsonら、1994,J.Neurosci.Meth.54:109 - 117)
。
各トレーニングセッションの前に、対のウサギに、人工脳脊髄液(aCSF;
124mM NaCl、26mM NaHCO3、3mM KCl、2.4mM
CaCl2、1,3mM MgSO4、1.24mM NaH2O4、10mM
D - グルコース;pH7.4)に懸濁したB6B21あるいはaCSF単独の
いずれか5μlを1μl/分/脳室の速度で左右両側に注入した。3つの濃度の
B6B21を使用した;0.3μg/μl、1.0μg/μlあるいは3.0μ
g/μl。実験の実施者は投与された溶液の内容物を知らされなかった。カニュ
ーレを挿入したウサギを、4つの処置群間で釣り合いをとり、各群最大6匹の動
物として対でトレーニングした。
注入後直ちに痕跡瞬膜条件付けを開始した。トレーニングは80トライアル/
日で15日間実施した(CS:6kHz、90dB、100msec、5mse
c上昇/下降時間;UCS:3.5psiトーン、150msec)。痕跡間隔
は、課題を海馬依存性にするため500ミリセカンドとした(Moyerら、1990,Be
hav.Neurosci.104(2):243 - 252)。トライアルは、30 - 60秒の変動
するトライアル間隔を置いて、IBM PC - コンパチブルコンピュータシス
テムによって制御した(Akaseら、1994;J.Neurosci.Method.54:119 - 130;Thomp
sonら、 1994,J.Neurosci.Meth.,54:109 - 117)。
データの解析/解釈 混合型ANOVAに従い、複数因子あるいは反復測定の
発生率によって、一方向あるいは二方向分散分析(ANOVA)のいずれかを用
いて全体的な処置の影響を評価する。フィッシャーの最小有意差(LSD)検定
を用いて適当な対応比較を実施する。許容される統計的有意性はp<0.05あ
り、ポスト- ホック検定はすべて両側検定である。
結果 投与された抗体B6B21の用量に基づいて挙動測定を比較するため、
各日に投与されたB6B21の総量に従ってウサギを群に分けた;aCSF対照
、1.5μg、3.0 - 5.0μg、および10.0 -15.0μg。1.5μ
g B6B21投与群は被検動物を1匹しか含まなかったので、統計分析には含
めなかった。
最終的な結果は、B6B21の投与が高齢のウサギにおいて用量依存的に痕跡
眼まばたき条件反応の習得を強化させたことを示した(図5)。同じ痕跡条件付
けプロトコールを用いて、Thompsonら(1995,Neurobiol.Aging747:382 - 406)
は、36ヵ月齢以上のウサギの40%(n=50)がトレーニング25日以内に
80%CRの
判定基準に達したことを報告した。残りの60%のウサギは>30%のレベルに
達することができず、「重度損傷」とされた。本試験におけるaCSF対照(n
=2)はThompsonの「重度損傷」動物と同様の成績であり、1.5μgのB6B
21(低用量;n=1、データは示していない)を摂取した1匹の動物も同様で
あった。本試験において10.0 - 15.0μg B6B21(高用量;n=
3)を摂取したウサギのいずれも、15日以内に80%CRには達しなかった。
しかし、3.0−5.0μg B6B21(中間用量;n=4)を摂取したウサ
ギは、他のすべての群と比較して5日目により高い習得を示し始め、達成された
最大CRによって測定すると、対照よりも高い習得を示した(スチューデントt
検定:t(4)=3.34、p<0.05、図5の挿入部分参照)。
学習を測定するため、トレーニングの最後の週のCRの平均パーセンテージを
各群について計算した。対照と実験群との間の一方向ANOVAは、群平均の間
で有意差を示した(F(3,12)=3.9、p<0.05p=0.037)。
対照と3.0 - 5.0μg群の間でのフィッシャーのPLSTポスト - ホック
T検定の比較は学習の強化を示したが(P(T≦t)片側=0.03、p<0.
05)、より高用量の群は同じポスト - ホックt検定において習得に有意差を
示さなかった(P(T≦t)片側=0.09)。
統計分析に使用した全体的な動物数は少なかったが、これらの結果は、mAb
B6B21が高齢ウサギにおいて用量依存的に、痕跡眼まばたき条件付けの習
得を有意に強化させることを明らかに示している。これらの結果は、生物学的に
活性なB6B21ペプチドミメティック(擬態物質)を開発する上での成功が妥
当に予想されることを示している。モノクローナル抗体B6B21を産生するハ
イブリドーマ細胞系は、ブタペスト条約の下にAmerican Type Culture Collecti
on(ATCC,Bethesda,MD,USA)に…年…月…日にアクセス番号……として寄託され
ている。実施例6 体内投与
血液脳関門の透過性 本発明のペプチドの血液脳関門透過性を調べるための実
験を行った。アッセイは、本発明のペプチドを体内で内頚動脈に注射してから1
5秒後の測定とラットの脳における検出を含み、投与した放射標識化合物のパー
センテージとして報告した。標識被検物質と標準物質の混合物をラットの頚動脈
に注射し、15秒後に断頭した。脳組織中の[14C]対[ 3H]の比率を、投
与した最初の混合物中の14C対 3Hの比率と比較して、脳の微小循環を通しての
単回通過で脳組織で失われた被検物質の量を決定した。得られるデータは比率で
あるので、測定は回収された被検サンブルの量とは独
立した正確な評価である。被検混合物は、対照として、標識した14C−アンチピ
リンあるいは14C - スクロースを 3H−ペプチドNT - 13あるいは 3H -
水と組み合わせた。14C - アンチピリンと14C - スクロースはそれぞれ拡散性
と非拡散性の対照である(図6A)。データは、 3H - 水を標準物質として用
いて規準化した。ニコチン、イソプロパノール、ヘロインおよびコデインについ
て報告した図6Bの追加データは、Bradburyら、1975,Amer.J.Physiol.299:1110
からとったものである。
経鼻投与 本発明のペプチドの投与は、エアロゾル組成あるいは点滴剤として
鼻経路で実施できる。本発明のペプチドの経鼻適用後の脳への移動の有効性を明
らかにするための実験を行った。雄性Sprague-Dawleyラットを塩酸ケタミンで麻
酔した。ペプチド溶液は、0.05 - 0.1mgの 3H - NT - 13とリン
ガー緩衝液に溶解した一連の濃度の低温(未標識)NT - 13(pH約7.8
)である。ピペットを用いて片方の鼻孔に20μlを2回の用量で投与溶液を投
与した。2度目の投与は最初の投与から2分後に行い、3分後に動物を断頭した
。脳を除去し、可溶化のために四等分した。可溶化した後、液体シンチレーショ
ン計数のためのサンプルを調製した。データは図7に報告されており、経鼻的に
投与した標識NT - 13のmgに対する脳内で測定された標識NT - 13のμ
gをグラフで示している。
ペブチドのi.p.注射 本発明の標識ペプチドのi.p.注射後に脳に供給
デリバリーされたペプチドの量を調べるための実験を行った。雄性Sprague-Dawl
eyラットに、水に溶解した 3H - NT - 13を注射した。注射から20分後に
動物を犠牲剖検し、液体シンチレーション計数のために脳を可溶化した。図8は
、i.p.注射した 3H - NT - 13のmgに対する脳内で測定された 3H -
NT - 13のμgで表わした結果を示すグラフである。
これらの実験が示すように、本発明のペプチドの体内投与は様々な経路を通し
て有効に実施することができる。実施例7 仮定的アプローチ 挙動的NMDA特異的活性アッセイ - ラットにおける痕跡眼まばたき
アプローチの方法 年齢に関連する疾病が少なく(Bronson,1990,in Genet
ic Effects on Aging II,Harrison,D.E.編集、Telford Press,Caldwell,N
ew Jersey)、眼まばたき条件付けにおける年齢に関連した障害も少ない(Weiss
とThompson,1992,Neurobiol.Aging 13:319 - 323 )、Fisher 344x
Brown NorwayラットのF1雑種を使用する。実験では9カ月齢のバ
ージンの雄性ラットを使用する。
ペントバルビタールナトリウム(65mg/kg体重)
の腹腔内注射によってラットを麻酔する。頭部の先端を毛剃りし、アルコールと
べタジンで洗浄する。ガス麻酔アダプターと無外傷性耳バー(鼓膜を保護するた
め)を備えた脳定位固定装置を使用する。動物を慎重に固定した後、頭皮上で正
中切開を行う。pereosteumの皮膚を後退させ、頭蓋を洗浄して乾燥さ
せる。頭蓋を通してブレグマの約0.8mm後方、正中線の右と左から1.3m
mのところに穴をあける(水平頭部座標)。次に硬膜を貫通して、25ゲージの
カニューレを各々の穴の中に皮質表面の下4.0mmの深さまで下げる(Tonkis
sとRawlins,1991,Exp.Brain Res.85:349 - 358)。これらのガイドカニューレを
歯科用アクリル樹脂で頭蓋に接合する。ストリップコネクタをカニューレの前方
で頭蓋に接合する。コネクタは、1本の接地線、EMG活性を測定するために上
眼瞼内に皮下移植する2本のワイヤ(テフロン被覆のステンレススチール)、お
よび眼窩周囲のショックを与えるために移植する2本のワイヤを含む。被検動物
には馴化の前に1週間の回復期間を与える。
以下に述べる各日のトレーニングセッションの15分前に、ラットに適当な濃
度のペプチドあるいは人工脳脊髄液対照賦形剤(aCSF)を注入する。PE -
10チューブでCMA Instrumentsの精密注入ポンプにすえつけ
た10mlハミルトン注射器に接続した30ゲージの注射用カニューレを用いて
、溶液を約1.0ml/分の速度で脳室に注入する(i.c.v.)。
合計約3.0mlを各々の脳室に注入する。拡散を促進するため、注射用カニュ
ーレを注入後2分間そのままの位置に残す。個々の処置 - 試験間隔を維持する
ように急性注射処置を使用する。注射処置自体の成績への影響を評価するため、
注射していない対照群を含める。
ラットをスピーカーと換気扇のある防音室内の小さなケージに入れる。次に実
験装置と頭部に移植したストリップコネクタをケーブルで接続する。条件剌激は
、PCコンパチブルコンピュータでのソフトウエアの使用とCoulbourn
Instrumentsからの電子モジュールによって制御する(Akaseら、1
994,J.Neurosci.Meth.54:119 - 130)。EMG活性を増幅し、フィルターし、4
5msの時定数で全波整流する(Skelton,1988,Behav.Neurosci.102:586 - 590
)。データ収集と解析のためシグナルをコンピュータに送る(Thompsonら、1994
,J.Neurosci.Meth.54:109 - 117)。
WeissとThompson(1992,Neurobiol.Aging 13:319 - 323)が報告した修正手法
を用いて眼まばたき条件付けを行う。トレーニングセッションの前に45分間の
セッションを1回行ってラットを条件付け装置に慣れさせる。痕跡500パラダ
イムあるいは偽条件付けのための対応のない対照パラダイムのいずれかにより、
動物を対で15日間毎日トレーニングする。トーン条件剌激(CS、100ms
、1KHz、85dB、5ms上昇/下降時間)と眼窩周囲ショックの無条件剌
激(US、150ms、2
mA AC)を用いてラットを痕跡眼まばたき条件付ける。課題を海馬依存性に
するため、刺激のない痕跡期間を500msとする(Moyerら、1990,Behav.Neur
osci.104(2):243 - 252)。条件付けれるラットは、30 - 60秒の無作為の間
隔(ITI)で対合したトーンとショックにより80回のトライアルを受ける。
対照ラットは、15 - 30秒の無作為ITIでトーン単独あるいはショック単
独のいずれかにより160回のトライアルを受ける。条件付けセッションの後、
各ラットは、30−60秒ITIでのトーン単独トライアルの80セッションか
らなる消去トレーニングを5日間受ける。
組織学的分析 挙動試験の終了後、ラットを犠牲剖検し、組織学的検査用に調
製する。ペプチドの反復注入がHPCにおいて興奮毒性損傷の徴候を生じさせる
かどうかを調べるための分析を行う。HPCの塊を、10%ホルマリンと30%
スクロースを含む0.1Mリン酸緩衝液中に垂下固定する。冠状切断して、クレ
シルバイオレットで染色する。CA3およびCA1の錐体細胞層の染色を画像分
析システムで測定する。
データの解析/解釈 データは、群(条件付けに対する対照)x用量(ACS
Fおよび3つの用量)のANOVA(一方向または二方向分散分析)で解析する
。反復測定もANOVAで分析する。習得に関するANOVA
は、ANOVAの15レベルを含む。消去についてのANOVAは5レベルを含
む。この要因分析法は、信頼しうる統計分析に使用される、群当り約10匹の動
物として8群の動物を生じる。実施例8 今後のオートラジオグラフィ試験
本発明のペプチドは、生物学的に活性なペプチドの脳組織分布の精緻な試験を
可能にする。
試験の方法 Bekensteinら(1990)のオートラジオグラフ法を本発明のペプチ
ドに適合させることにより、脳の海馬領域ならびにの組織全体の局所結合特異性
を検討することができる。最初の試験では、プレインキュベーションと洗浄、乾
燥方法、時間経過の平衡性、飽和、および23℃での結合部位の薬理学に関して
、至適結合条件を開発する。未処置のラットを犠牲剖検し、速やかに脳を除去し
てOCTに包埋し、切断の前に−20℃で2- メチルブタン中で凍結する。低温
槽で10μgの冠状切片を切断し、ポリ - D - リシンで被覆したカバーガラス
に解凍封入する。連続切断により、海馬の中隔側頭および背腹側範囲全体に沿っ
た結合勾配を評価することができる。特定の海馬領域あるいは細胞個体群内で(
それらを越えてではなく)結合勾配が認められる場合は、そのような勾配のない
領域内でのみスキャッチャード分析
を実施するように特に注意を払う。ニッスル染色した組織学的検査と非特異的結
合の測定には隣接切片を使用する。個々の切片を数回反復容量の20mM HE
PES緩衝液(pH7.4)中でプレインキュベートし、内因性あるいは外因性
リガンドの濃度を低下させる。組織を至適濃度の本発明の[ 3H] - ペプチド
と共に20mM HEPES緩衝液中で様々な時間インキュベートし、飽和試験
に対する平衡結合を決定する。飽和実験のために、脳切片を種々の濃度の本発明
の[ 3H] - ペプチドと共に20mM HEPES緩衝液中でインキュベート
する。過剰の低温ペプチドを加えて非特異的結合を測定する。
解析/解釈 組織切片を[ 3H] - Ultrofilm(Amersham)に付着
させ、フィルムの線形暴露のための必要に応じてメタクリレート包埋したトリチ
ウム標準物質と同時暴露する。これらの試験にはBioRadPhosphor
image Analyserを使用する。定量的デンシトメトリー分析は、M
acintosh IIfxワークステーションで8ビットのグレイスケールス
キャナーおよびNIMHで開発されたpublic domain画像分析ソフ
トウエア(Image v.1.29)を用いて実施する。
本明細書および実施例は例示であり、制限を意味しないことは明白に了解され
ている。当業者は、本発明の教
示するところから、他の特定具体例が本発明の真意と範囲内に含まれることを理
解し、判断できるであろう。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12P 21/08 G01N 33/566
G01N 33/566 A61K 37/02
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU
,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,
CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G
B,GE,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP
,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,
LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,N
Z,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI
,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,
UZ,VN
(72)発明者 コーリー、パトリシア エイ.
アメリカ合衆国 60631 イリノイ州 シ
カゴ オザナム アヴェニュー 6551