【発明の詳細な説明】
架橋ポリケトン
本発明は架橋ポリケトンポリマーに関する。より詳細には、本発明は架橋ポリ
ケトンポリマー、その製法及びその使用に関する。
本明細書でポリケトン又はポリケトンポリマーと呼ぶ一酸化炭素とオレフィン
類の線状交互ポリマーは当該技術分野で周知である。この類のポリマーはUS−
A−4880865及びUS−A−4818811をはじめとする多数の特許文
献に開示されている。
ポリケトンポリマーはバランスのよい機械的性質を示すため、エンジニアリン
グサーモプラスチックとして特に有用である。改善された摩擦特性を示すように
材料を改良することにより、ポリケトンの優れた特性を更に高めることができる
。このような改良材料から製造した部品や製品は摩耗に耐え、特に長期間にわた
って転がり又は滑り接触下においた場合に大きい摩擦荷重に耐えることができる
と考えられる。このような特性は一般に添加剤を添加することにより達成される
。しかし、ポリマーマトリックスの添加剤添加によるポリケトン特性の他の変化
を避けるために、添加剤を加えずにこのような特性を達成できるならば有益であ
ろう。更に、ポリマーに添加剤をそれ以上加えずに熱性能、寸法安定性及び引張
強さ等の他の特性を改善できるならば有益であろう。
ケトン基を含むポリマーは紫外線に暴露されるとノリッシュI型及び/又はノ
リッシュII型開裂反応により分解することが知られている。これは酸素の有無
に拘わらずに生じる。酸素の存在下で紫外線照射すると、ポリケトンは分子量が
有意に低下し、脆性挙動や機械的強度の低下等の望ましくない特性をもつポリマ
ーとなる。
ポリケトンは溶融架橋できることも知られている。こうして得られた架橋材料
は延性と靭性が低下し、ポリマーマトリックス中に離散ゲル粒子をもつことが多
く、結晶度の低下及び/又は結晶融点の低下を示す。更に、このような材料は酸
化分解に対して不安定になる。要するに、溶融架橋ポリマーは例えばエンジニア
リングサーモプラスチックとして利用するのに特に望ましくない。化学的修飾を
除き、このような機械的性質の低下を示さない実質的に架橋されたポリケトンは
未だ製造されていない。
US−A−3812025は主鎖又は側鎖中に低モル分率、即ちモノマーで計
算した場合に一般に約10モル%未満、特に約5モル%未満のケトン基をもつポ
リオレフィンの高エネルギー放射線による架橋を提案している。これらのケトン
基はオレフィンを場合によりグラフト又はブロック共重合により一酸化炭素又は
ビニルケトンと共重合することにより組み込まれる。従来はケトン基含量の低い
ポリマーしか使用されておらず、US−A−3812025によるとこれらのポ
リマーが未修飾ポリオレフィンの全ての望ましい性質をもつためであると説明さ
れている。50モル%までのケトン基を含むポリオレフィンを架橋する可能性も
示されているが、このような架橋はノリッシュI/II型鎖開裂反応を伴うと予
想される。US−A−3812025の発明者はJ.A.Slivinskas
とJ.E.Guillet,“γ−Radiolysis of Ketone
Polymers”,Journal of Polymer Scienc
e,Vol.II,3043−3056(1973)にその理由を説明している
。同文献において発明者は、脂肪族/ケトン長の減少即ちケトン基の含量の増加
に伴い、ノリッシュI型及びノリッシュII型反応に起因すると考えられる光分
解が増加すると述べている。この見解は上記分解プロセスの解釈に一致すると思
われる。従って、この文献は放射線照射したポリケトンが同時に開裂と架橋を生
じ、延性、衝撃及び引張強さを維持しない架橋材料となることを示唆している。
こうして形成された架橋材料は比較的低分子量のフラグメントから構成されると
予想される。即ち、US−A−3812025の請求の範囲が大きい脂肪族鎖長
をもつポリマーを高エネルギー放射線によりポリマー分子のケトン部分に架橋す
ることに限定されているのはこのためであると考えられる。同特許の実施例は最
大10モル%未満のケトン基をもつ材料に関する。
このように、従来技術は高エネルギー放射線によりポリケトンポリマーが鎖開
裂分解することを示唆している。驚くべきことに、高エネルギー放射線による硬
化によりポリケトンポリマーの特性を強化することができ、この方法により製造
した材料は熱及び機械的性質(例えば靭性)の強化や、摩擦特性(例えば摩耗)
等の性質に優れることが今般判明した。従って、生成物は例えば放射線照射ポリ
ケトン製品を相互間又は他の製品との間で転がり又は滑り接触させるような用途
等の非常に苛酷な用途範囲で使用するのに特に適している。
従って、本発明はポリケトンポリマーを高エネルギー放射線に暴露することに
より架橋することを特徴とするポリケトンポリマーの架橋方法に関する。
本発明は更に本発明の方法によりそれ自体獲得可能な架橋ポリケトンポリマー
に関する。本発明は更に本発明の架橋ポリケトンを含み及び/又は本発明による
ポリケトンの架橋方法を含む方法により獲得可能な製品にも関する。本発明の方
法はポリマー又は該ポリマーから製造した製品の加工中の1時点以上でポリケト
ンポリマーに放射線照射することを特徴とする。本発明は更に、本発明による架
橋ポリケトンを含有する組成物も含む。
摩擦用語も含めて本明細書で使用する以下の用語は以下の意味をもつものとす
る。
上述のように、ポリケトン又はポリケトンポリマーは一酸化炭素と少なくとも
1種のエチレン性不飽和炭化水素の線状交互ポリマーである。これらの用語はこ
れらのモノマーのコポリマー、三元ポリマー、四元ポリマー等を表す。当該技術
分野で周知のポリマー添加剤をポリケトンと併用することができる。例えば、充
填剤、エキステンダー、滑剤、顔料、可塑剤及び他のポリマー材料をポリケトン
組成物に加え、組成物の性質を改善又は改変することができる。
「DCOF」:2つの表面の相対接触運動中において、DCOFは相対表面速
度を経時的に一定に維持したときに加えられる法線力に対する合成摩擦力の比で
ある。
「LPV」:接触している2個の試料間の相対表面速度を一定に維持し且つ加
えられる法線力を経時的に段階的に増加するとき、LPVは熱軟化による突発的
材料破損の直前の段階における法線圧力と表面速度の積である。
「摩耗K指数」:ASTM D3702を使用してスラストワッシャー試験装
置で実施した場合に、として定義され、ここでW=摩耗量(m3)、F=法線力(N)、V=相対表面
速度(m/s)及びT=試験時間(h)である。
「架橋」とは、こうして結合した各ポリマー分子の主鎖の少なくとも1点にお
ける2個以上のポリマー分子の結合である。架橋の結果、分子量が増加する。長
時間架橋の結果、ポリマー鎖の網状構造を含むゲルが形成され、ゲルは未架橋ポ
リマーを溶解するために使用される溶媒に不溶性になる。架橋ポリケトンは一般
にポリケトン出発材料に対して少なくとも10%の重量平均分子量の増加を示す
ポリケトンポリマーである。実際に、既に多少の程度まで架橋されているポリケ
トンポリマーを本発明の方法により更に架橋させることができる。
「硬化」とは、本発明によるポリケトンポリマーの処理である。本発明では、
ポリケトンポリマーは有用な機械的性質を全面的に低下せずに架橋される。後述
するように、硬化ポリケトンポリマーは400nm光で励起したときに490n
mで(その出発材料である未硬化材料に比較して)発光強度の増加を実質的に示
さないという点で他の架橋ポリケトンポリマー(例えば溶融架橋ポリケトンポリ
マー)から区別される。一般に、490nmにおける発光強度の増加は10%未
満である。
「比表面積」とは単位質量当たりの表面積(m2/g)を意味する。これは所
与の材料の嵩の量を表面積として表した相対尺度である。
本発明で使用するポリケトンは一酸化炭素と少なくとも1種のエチレン性不飽
和化合物の線状交互コポリマーである。従って、ポリケトンポリマーは線状交互
構造であり、即ち、エチレン性不飽和化合物の各分子につき1個の一酸化炭素を
含む。エチレン性不飽和化合物は炭素原子数20までのものを利用でき、炭素と
水素のみから構成される化合物や、その他にヘテロ原子を含む化合物(例えば不
飽和エステル、エーテル及びアミド類)が挙げられる。不飽和炭化水素類が好ま
しい。利用可能なエチレン性モノマーの例は脂肪族α−オレフィン類(例えばエ
テン、プロペン及びブテン−1)、環状オレフィン類(例えばシクロペンテン)
、芳香族化合物(例えばスチレン及びα−メチルスチレン)及びビニルエステル
類(例えば酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル)である。好ましいポリケトンポリ
マーは一酸化炭素とエテンの線状交互コポリマー、又は一酸化炭素とエテンと炭
素原子数少なくとも3の別のエチレン性不飽和化合物(特にプロペンやブテン−
1等のα−オレフィン)の線状交互コポリマーである。
一酸化炭素とエテンと別のエチレン性不飽和化合物からなる好ましいポリケト
ンポリマーを使用する場合には、一般に他のエチレン性不飽和化合物1部を含む
各単位につきエテン1部を含む少なくとも2単位がポリマー内に存在する。好ま
しくは、他のエチレン性不飽和化合物1部を含む各単位につきエテン1部を含む
10〜100単位が存在する。従って、好ましいポリケトンポリマーのポリマー
鎖は反復式:
により表され、式中、Gはエチレン性不飽和により重合した炭素原子数少なくと
も3のエチレン性不飽和化合物の部分であり、y:xの比は一般に0.5以下で
ある。一酸化炭素とエテンの線状交互ポリマーを本発明の組成物で使用する場合
には、第2のエチレン性不飽和化合物は存在せず、ポリマーはyを0にした上記
0.01〜0.1である。末端基の厳密な種類はポリマーの性質にさほど影響し
ないと思われるので、ポリマーはほぼ上記ポリマー鎖の式により表される。
ゲル透過クロマトグラフィーにより測定した場合、1000〜200,000
、特に20,000〜90,000の数平均分子量をもつポリケトンポリマーが
特に有利である。重量平均分子量の好ましい範囲は2000〜1,000,00
0、特に40,000〜500,000である。ポリマーの物性は分子量、ポリ
マーが単一のエチレン性不飽和化合物を主体とするか又は複数のエチレン性不飽
和化合物を主体とするか、エチレン性不飽和化合物の種類と割合にも依存する。
ポリマーの典型的な融点は示差走査熱量分析により測定した場合に175℃〜3
00℃、より一般には210℃〜270℃である。ポリマーは一般に、標準毛管
粘度測定装置で60℃のm−クレゾール中で測定した場合に、0.5dl/g〜
10dl/g、より一般には0.8dl/g〜4dl/gの極限粘度数(LVN
)をもつ。
ポリケトンポリマーの好ましい製造方法はUS−A−4808699及びUS
−A−4868282から公知である。US−A−4808699はVII族金
属化合物と、6未満のpKaをもつ非ハロゲン水素酸のアニオンと、二座リン、
ヒ素又はアンチモン配位子を含む触媒の存在下でエテンと一酸化炭素を接触させ
ることによるポリケトンポリマーの製造を教示している。US−A−48682
82はエチレン性不飽和基をもつ1種以上の炭化水素と同様の触媒の存在下で一
酸化炭素とエテンを接触させることによるポリケトンポリマーの製造を教示して
いる。
本発明の方法では、硬化度又は硬化深度は放射線源と放射線源の強度にも依存
する。材料をγ線等の光子型放射線源により硬化させる場合には、ポリマーマト
リックス全体を硬化させることができる。これは主に放射線が透過性であるため
である。イオンビーム等の非透過性放射線では表面硬化が生じる。本発明では、
使用するイオンの種類と衝撃の強さにより硬化深度及び硬化度が変化する。当然
のことながら、軽いイオンのほうが重いイオンよりも硬化深度は大きくなる。
別の例としては、電子ビーム(eビーム)架橋が工業用として特に有用である
。ポリマーワイヤー及びケーブル、ペレット、熱収縮製品、回転成形品、吹込成
形容器、射出成形品並びにシートはいずれもこのようなオフライン法で容易に高
エネルギー衝撃を受け、製法の他の部分への衝撃は最小限に維持される。この方
法はほぼ瞬時に実施することができ、暴露時間は秒単位である。当業者に容易に
理解される通り、架橋度はeビーム暴露レベルに直接関連し、容易に調節できる
。
本発明の硬化を実施するために有用な高エネルギー放射線は>10eV、特に
>100eVのエネルギーで照射が行われるものであればよく、109eVまで
のエネルギーで照射が行われるならば十分保証できる。104〜108eVのエネ
ルギーレベルが特に有用である。このような放射線の周知源としては、eビーム
、X線、ガンマ線及びイオンビームが挙げられる。好ましい放射線源はeビーム
、ガンマ線、及び表面硬化が所望される場合にはイオンビームである。最も好
ましい放射線源は工業用Co60エミッター等のガンマ線源である。
特にCo60エミッター等からのガンマ線を照射源として使用する場合には、好
ましい線量は5Mrad〜25Mradであるが、1〜50Mradの線量であ
れば有益な効果が得られると考えられる。線量は5〜5.6Mradとするのが
最も好ましい。硬化に必要な線量を加えるために必要な速度であれば任意の速度
を使用できるが、所与のエミッターに可能な最高速度で硬化は最も有効に行われ
ると考えられる。照射線量及び速度は、トリアリルシアヌレート、エチレングリ
コールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート及びアリル
メタクリレート等の当該技術分野で公知の放射線促進剤の付加使用により有意に
低下させることができる。ポリケトンは酸化防止剤や溶融安定剤等の他の添加剤
の存在下で硬化させてもよいし、不在下で硬化させてもよい。ポリケトンの特殊
な製造は不要である。
驚くべきことに、本発明の実施によりLPVや摩耗指数等の摩擦特性が改善さ
れることが判明した。本発明の最も好ましい態様では、硬化ポリケトンポリマー
は市販分析器の測定能力を越えるLPVを示す。即ち、LPVは7000kPa
.m/s(200,000psi.ft/分)を上回る。従って、硬化ポリケト
ンギア、軸受及び他の転がり又は滑り接触部品は、このように硬化していないポ
リケトン部品よりも大きい荷重に耐えることができる。
本発明により製造した材料は高温特性の点でも従来技術から改善される。例え
ば、20Mradのガンマ線に暴露することにより硬化したポリケトン試料の熱
撓み温度(HDT)は100℃まで上昇したが、同様の未硬化ポリケトンポリマ
ー試料のHDTは92℃であった。
更に、本発明の実施により、寸法安定性(例えばクリープ)、引張強さ及び耐
疲労性等の長期機械的性質や、ポリマーの遮断性、弾性記憶、耐応力亀裂性、耐
可塑性、耐破壊/剪断性及び溶融加工性等の他の性質も改善されると考えられる
。例えば、本発明により製造した硬化ポリケトンはポリマーマトリックスに試薬
が透過しにくく、未硬化ポリマーに比較して水、アルコール、塩素化炭化水素類
等の膨潤又は吸着に耐えると考えられる。
本発明の硬化ポリケトンはスナップ嵌め部品、耐力用部品及び熱収縮性成形品
を製造するために使用することができる。耐薬品、耐摩耗及び耐熱管等の下げ孔
掘削用部品の製造にも有用であると考えられる。スリーブ、ワイヤー及びケーブ
ル外被、コーティング、コネクター、ライナー、チューブ等もこの材料から有効
に製造できる。このような部品は電気、自動車、航空及び医療産業で特に有用で
ある。本発明により製造した硬化ポリケトンから押出グレードポリマー及びフィ
ルムも製造できる。
本発明により製造した架橋ポリケトンは可視蛍光観察及び蛍光分光法(励起/
発光スペクトル)の両者による特性決定により溶融架橋材料から容易に区別する
ことができる。水銀灯による照射下で溶融架橋ポリケトンは可視蛍光を示すが、
高エネルギー放射線に暴露することにより架橋したポリケトンは可視蛍光を示さ
ない。更に、溶融架橋ポリケトンの励起及び発光スペクトルは実施例に記載する
ように高エネルギー放射線により架橋したポリケトンポリマーとは大きく異なる
。このような特性の相違は単に化学的構造の相違に起因するものと思われる。溶
融架橋ポリケトンポリマーはフルオロフォア種を含む化学構造をもつが、放射線
照射により硬化したポリケトンポリマーはその製造原料であるポリケトンポリマ
ー出発材料と同様にこのような化学構造をもたない。
硬化を適正に行うように酸素の影響に対するポリケトンポリマーの感受性を制
限すると有利である。即ち、酸素の実質的存在下で放射線照射を行うとポリマー
鎖開裂を生じ、低分子量材料を生じる恐れがある。酸素の実質的存在とは、ポリ
マーの総量の有意部分が酸素に暴露されることを意味する。比表面積はポリマー
が空気中で放射線照射される場合のこのような暴露の程度を表す尺度である。比
表面積が大きいほど、鎖開裂傾向は高まる。2.1×10-3m2/g未満の比表
面積をもつポリケトンは十分に架橋されるが、少なくとも0.10m2/gの比
表面積をもつポリケトンは空気の存在下で有意鎖開裂を生じる。1×10-3m2
/g程度の小さい比表面積をもつポリケトンは空気の存在下で架橋すると考えら
れる。従って、空気の存在下で放射線照射する場合、ポリケトンポリマー又はそ
の製品の比表面積は0.1m2/g未満、特に2.1×10-3m2/g未満、より
特定的には1×10-3m2/g未満であることが好ましい。従って、極低温粉砕
ポリマーは酸素に暴露されるポリマー量の割合が高いため、空気の存在下の放
射線架橋には通常はあまり適していない。他方、ストランド、ギアや軸受等の最
終完成品、その後の機械加工を要する素材付形物、シート等は通常は放射線架橋
に好適である。
減圧下又は材料もしくは製品を窒素や貴ガス等の不活性ガスでシールしながら
本発明の方法を実施してもよく、適正にポリケトンの硬化を達成できる。
本方法を実施する温度は重要ではないと思われる。しかし、ポリケトンの融点
よりも低温、例えば0〜170℃、特に10〜150℃の範囲で選択される温度
で実施するのが好ましい。完成品の架橋による硬化はこのような好適方法の1例
である。しかし、融点を上回る温度で硬化を行っても硬化材料の種々の有用な態
様を製造することができる。
以下、非限定的な実施例により本発明を説明する。実施例
各実施例では、次のように特性を決定した。
機械的性質はASTM D638、厚さ3.18mm(1/8″)I型及びV
型引張試験片を使用して試験した。I型引張試験片は歪速度50.8mm(2イ
ンチ)/分及びグリップ間隔114mm(4.5インチ)で試験した。V型試験
片には、歪速度12.7mm(0.5インチ)/分とグリップ間隔25.4mm
(1.0インチ)を使用した。
分子量はPhenomenex Phenoge1 7.8mm×30cm,
5μmとPhenogel 5μm,500A カラムを直列に接続してGPC
システムに取り付けて測定した。ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として
使用し、0.01Mトリフルオロ酢酸アンモニウムを調節剤として使用した。シ
ステムには屈折率検出器とミニDAWN光散乱検出器を取り付けた。
摩擦特性はComputer Controlled Multi−Spec
imen Test Machineを使用して測定した。この試験では、試験
しようとする材料から射出成形したスラストワッシャーを鋼固定ワッシャーに対
して1方向に回転させた。以下のパラメーター:速度、荷重、温度、摩耗及び試
験時間のデータロッギングを連続的に行った。このデータロッギングからLPV
、DCOF及び摩耗指数を計算した。
LPVは9.1N(20 lb)から試料破損まで4.4N(10 lb)の
荷重増分で段階的に荷重を増しながら速度0.51m/s(100fpm)で測
定した。試料破損は溶融軟化時の構造的団結性の急減である。摩耗試験は荷重2
.41MPa(350psi)及び速度0.28m/s(56fpm)で4時間
実施し、放射線照射していない試料を据え付けた。その後に(据え付け後に)放
射線照射した試料を固定ワッシャー(16〜18rms仕上げの1018炭素鋼
)を取り替えて0.28MPa(40psi)及び0.25m/s(50fpm
)で20時間試験した。各試験前後の試料と固定ワッシャーの厚みと重量を測定
した。次に、試料の比重を組み込んで最終摩耗指数を計算した。
熱撓み温度(HDT)はASTM D648を使用し、1.82MPa(26
4psi)の荷重で測定した。示差走査熱量計(モデル7700)を20℃/分
の傾斜速度で使用して窒素下に融点(Tm)と融解エンタルピー(ΔH)を測定
した。
特に指定しない限り、実施例で使用した材料の照射はポリケトンポリマーを0
.28Mrad/時の速度でCo60γ線源に暴露することにより実施した。実施例1
融点約220℃と極限粘度数1.8dl/gをもつニート線状交互ポリケトン
(一酸化炭素とエチレンと少量のプロピレンの三元ポリマー)を調製した。この
材料に、0.2%IRGANOX 1330(IRGANOXは商標名)ヒンダ
ードフェノール酸化防止剤、0.3%NUCREL 535(NUCRELは商
標名)エチレンメタクリル酸コポリマー及び0.2%カルシウムヒドロキシアパ
タイト(百分率はいずれも混合物の総重量に対する重量%である)をブレンドし
た。この材料から引張試験片を作成した。試料Aはその後、放射線照射しなかっ
た。試料B及びCは空気中で夫々5.6Mrad及び20Mradのγ線を照射
した。種々の機械的性質及び特性を測定し、結果を下表1に示す。 本実施例は、ポリケトンポリマーにγ線を照射すると分子量が増加し、この増
加は放射線量に相関することを示す(20Mradで網状結合形成が生じた)。
更に、本発明による硬化ポリケトンはポリマーの優れた引張強さと延性を維持又
は改善し、これはノッチ付きアイゾッド衝撃試験から明らかである。高温特性も
改善される。ポリマーの結晶度は硬化プロセスの影響を受けない。実施例2
融点約220℃と極限粘度数約1.8dl/gをもつニート線状交互ポリケト
ン(一酸化炭素とエチレンと少量のプロピレンの三元ポリマー)を調製した(M
w83,000、MWD4.3)。この材料に二軸スクリュー押出機で0.5%
IRGANOX 1330ヒンダードフェノール酸化防止剤をブレンドし、ダイ
に通して1.52mm(60mil)(直径)ストランドとした。ポリマースト
ランド約10gを空気の存在下でガラス管に入れた。こうして試料は約2.1×
10-3m2/gの比表面積を示した。雰囲気の排気又はガスシールは行わなかっ
た。次に試料を5.6Mradのγ線に暴露した。次にポリマーの重量平均分子
量(Mw)を測定すると、160,000であり、分子量分布(MWD)は11
.3であった。このMwの増加は硬化が生じたことを示す。実施例3
実施例2のポリケトンポリマーを極低温粉砕して粉末とした。ポリマー粉末約
10gをガラス管に入れ、0.4Pa(3mtor)の圧力に達するまで排気し
た。こうして試料は0.10m2/g(BET法により測定)の比表面積を示し
た。次に試料を5.6Mradのγ線に暴露した。次にポリマーの分子量(Mw
)を測定すると、170,000であり、MWDは8.1であったため、有意硬
化が生じたと判断される。実施例4
31.8mm(1.25インチ)押出機を使用して実施例1に記載したポリケ
トンポリマーをチューブラインフレートフィルム管に通して加工し、厚さ0.0
51mm(2mil)のフィルムを作成した。インフレートフィルムから4個の
10.2×10.2cm(4×4インチ)試料を作成した。第1の試料は放射線
照射しなかった。この試料を分析すると、Mw79,400であった。次に、3
個の試料をEnergy Science Incorporated CB1
50 Electrocurtain装置に入れた。酸素濃度が100ppm未
満となるように試料室を窒素パージした。次に試料を電圧165kVの電子ビー
ム照射に暴露した。陰極電力は360Wであった。合計5Mradに暴露した試
料はMw87,500であり、10Mradに暴露した試料はMw141,00
0であり、20Mradに暴露した試料はMw144,000(20%ゲル)で
あった。
本実施例は、ポリケトンポリマーにeビームを照射するとポリマーの硬化が生
じることを示す。実施例5
実施例1のポリケトンポリマーから3種の異なる3.18mm(1/8インチ
)I型引張試験片を作成した。比較の目的で引張試験片Aはその後の溶融熱履歴
まで放射線照射又は処理しなかった。引張試験片Bは5.6Mradのγ線に暴
露した。比較の目的で引張試験片Cは3.18mm(1/8インチ)金型に入れ
、圧縮成形機で型締圧70MPa(10,000psi)、265℃で20分間
加熱し、溶融架橋を誘導した。次に引張試験片Cを圧縮成形機から取り出し、室
温まで冷却した。
次に、無フィルターハンドヘルド水銀灯から発生した光に暴露することにより
、引張試験片を可視蛍光観察した。引張試験片A及びBの場合には可視蛍光は観
察されなかった。溶融架橋試料である引張試験片Cでは薄黄色蛍光が観察された
。
更に、MPF−66スペクトロフォトメーターを使用して23℃で固体材料の
励起及び発光スペクトルを試験することにより、蛍光分光特性決定を行った。引
張試験片A及びBは400nmの光で励起後に490nmで弱い蛍光発光(相対
強度0.04)しか示さなかったが、引張試験片Cは490nmを中心に1つの
幅広な強いピーク(相対強度1.04)を示した。
本実施例は、本発明による硬化ポリケトンが溶融架橋ポリケトンと異なる分子
構造をもつことを例証するものである。実施例6
実施例1により調製したポリケトンポリマーを射出成形し、摩擦試験用スラス
トワッシャーを形成した。比較試料Aはその後、放射線照射しなかった。試料B
は5.6Mradのγ線を照射し、試料Cは20Mradのγ線を照射した。摩
擦特性は以下の通りであった。
試料A:LPV=1120kPa.m/s(32,000psi.ft/分)、
試料B:LPV>7000kPa.m/s(>200,000psi.ft/分
)(計測能力超過)、
試料C:LPV>7000kPa.m/s(>200,000psi.ft/分
)(計測能力超過)。
本実施例は本発明により硬化したポリケトンポリマーで示される摩擦特性の有
意改善を例証するものである。特に摩擦用途用に調製したポリケトンの典型的添
加剤ブレンドは1860〜1930kPa.m/s(53,000〜55,00
0psi.ft/分)のLPVをもつことが判明した。従って、本発明の硬化方
法を実施したポリケトンの摩擦特性は実質的に改善されるとみなすことができる
。この改善は予想外であり、本発明により製造した物品は、別の物品と転がり又
は滑り接触するような用途に特に適切になる。この硬化方法はギア、軸受、カム
、フォロアー、スプロケット、ワッシャー、容器ライナー、ブッシュ、滑車、滑
り板及び他の多数の類似物品の製造に有用である。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1997年11月24日(1997.11.24)
【補正内容】
補正請求の範囲
1.ポリケトンポリマーを高エネルギー放射線に暴露することからなるポリケト
ンポリマーの架橋方法であって、ポリケトンポリマーが一酸化炭素とエテンと場
合により炭素原子数少なくとも3の別のオレフィン性不飽和化合物の線状交互コ
ポリマーである前記方法。
2.架橋しようとするポリケトンポリマーが2.1×10-3m2/g未満の比表
面積をもつことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の方法。
3.不活性雰囲気で実施することを特徴とする請求の範囲第1又は2項に記載の
方法。
4.高エネルギー放射線が電子ビーム線、イオンビーム線、X線又はγ線である
ことを特徴とする請求の範囲第1から3項のいずれか一項に記載の方法。
5.高エネルギー放射線がγ線であることを特徴とする請求の範囲第4項に記載
の方法。
6.放射線量が1〜50Mrad、特に5〜20Mradであることを特徴とす
る請求の範囲第1から5項のいずれか一項に記載の方法。
7.請求の範囲第1から6項のいずれか一項に記載の方法により獲得可能である
ことを特徴とする架橋ポリケトンポリマー。
8.重量平均分子量が出発ポリケトンの重量平均分子量よりも少なくとも10%
、特に少なくとも100%高いことを特徴とする請求の範囲第7項に記載の架橋
ポリケトンポリマー。
9.請求の範囲第7又は8項に記載の架橋ポリケトンを含むことを特徴とする製
品。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,
CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,G
E,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR
,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,
MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,P
L,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK
,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN
(72)発明者 マイソアー,ナレイアナ
アメリカ合衆国テキサス州77095、ヒユー
ストン、バスウツド・フオレスト・コート
7527