【発明の詳細な説明】
ハロゲン化銀写真フィルム用画像トーン変調剤
技術分野
本発明は、白黒ハロゲン化銀写真材料に関する。特に、本発明は、トーンを改
良するために微粒子化された臭化銀エマルションへのトーン変調剤の添加に関す
る。
背景技術
現像されたハロゲン化銀層の画像トーンは、通常、黒色フィラメント銀の既知
の色相または濃淡を表している。画像トーンは、多数のファクターに依存して、
茶色−黒色または青色−黒色として表すことができるが、この画像トーンの変化
は、特定の画像形成環境では望ましくないこともある。茶色−黒色トーンが暖調
またはソフトトーンとして表されるのに対して、青色−黒色画像トーンは、冷調
またはハードトーンとしても広く知られている。
画像のトーンは、画像形成媒体の特定の用途もしくは仕様に依存して、光の反
射または透過によって観察され得る。医療応用のための画像、特に、レーザーイ
メージャーによる露光から形成される画像では、画像から透過した光によって画
像を観ることが多いことから、透過した画像トーンは、非常に重要である。観察
すべき画像の多さ、およびそれぞれの画像の分析に当てられる限られた時間を考
慮したならば、医療用画像のトーンやトーンの濃度は重要である。画像トーンは
、最適化して、ライトボックス上で目の疲労を最小限にして容認できる画質を得
る必要がある。このために、青色−黒色画像トーンは非常に望ましい。トーンを
最適化すると同時に、それに対応してDminの増加またはセンシトメトリーにお
ける他の大きな変化は存在すべきではない。現像された写真エマルションの画像
トーンは、多数の要因、例えば、ハロゲン化銀の粒径、ゼラチン硬化の程度(E.
Weyde著、Photogr Korres、1、7頁(1962年)参照)、および現像液のp
H、現像剤の性質および乾燥方法のような種々の現像パラメータ(T.H.Jamesお
よびW.Vanselow著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・ エンジニアリング
、1、104頁(1958年)参照)等に依存する。画像トー
ンは、光の青色成分の散乱のために、画像領域内での銀粒子の寸法の減少ととも
に、より黄褐色になっていく。画像トーンにおけるこの望ましくないシフトを克
服するため、従来から、粒子中に塩化銀を多く含む微粒子化写真エマルションに
はトーン変調剤を添加している。しかしながら、臭化銀含有量の高い(例えば、
50〜100モル%の)微粒子化写真エマルションは、変調が困難である。
認識された画像トーンはまた、多くの方法、例えば、非常に青みがかった基材
の使用や染料形成用現像剤の使用、または現像された銀の形態の適応によって変
更され得る。このうち、支持体の種類に関する柔軟性(透明であるかまたは青み
がかったものであるか)が保持されることから、後者が好ましい手順である。現
像中に形成された染料は、安定性が低いことがあるため、問題となり得る。現像
中に生成されるフィラメント銀の形態を変えることにより、恒久的に冷たい画像
トーンが作成されることがある。
いくつかの刊行物が、現像されたハロゲン化銀エマルションのトーンについて
記載している。例えば、様々なトーン変調剤を用いた塩化銀エマルションの変調
が、K.Futakiら著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリン グ
、4、257頁(1960年)に開示されている。臭化銀エマルション中での
フィラメント銀の成長および性質は、W.E.Muller著、フォトグラフィック・サイ エンス・アンド・エンジニアリング
、15、369頁(1971年)に記載され
ている。フィラメント銀の形態に対する現像剤の効果は、T.H.Jamesら著、フォ トグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング
、1、104頁(19
58年)に記載されている。フィルム硬度のような画像トーンに影響を及ぼすい
くつかの要因は、E.Weyde著、Photogr Korres、98、7頁(1962年)に記
載されている。
米国特許第2,298,093号公報には、臭化銀エマルションへのトーン変調剤の導
入の問題点が挙げられている。単位:−C(=O)NHC(=S)Y−を含有する化
合物が、青色−黒色画像を表すために臭化銀エマルションのトーン変調剤として
開示されている。しかしながら、トーンがどのように決定されるかについては説
明されておらず、有効なデータも供給されていなかった。
米国特許第4,818,675号公報および特開平3-153234号公報には、青色染料の画
像態様の生成によって暖色画像トーンをマスクする青色ロイコ染料の使用が記載
されている。欧州特許第481651号公報および特開平3-271733号公報には、画像の
色相の視覚的な印象を変更するためのエマルション層内での青色染料の使用が記
載されている。これらの対策の欠点は、未露光部のフィルムの速度の低下および
/または光学濃度の増加を導き得ることである。
他の文献には、複素環式チオール類またはチオン類の使用が開示されている(
特開昭61-20026号公報および特開昭63-15140号公報参照)。欧州特許第197895号
公報には、白黒紙製品中での画像トーン変調剤としての2-アルキルチオテトラ
アザインデン類の使用が記載されている。当該分野で検討されている他の銀配位
種としては、大環状スルフィド(例えば、特開昭63-313939号公報に記載の少な
くとも3個の硫黄原子、少なくとも1本の炭素鎖および少なくとも1個の他の2
価の結合基を含有する化合物)が挙げられる。
画像トーンについての改良も、様々な銀粒子エマルションと関連して論議され
ている。例えば、米国特許第5,013,641号および同第5,258,280号には、平板状エ
マルション中での画像トーンの改良が記載されている。特開平4-294346号公報に
は、画像トーンを高めるための粒径0.4μm以下のエマルション内でのメルカ
プトオキサジアゾール類の使用が開示されている。実施例の一つでは、オキサジ
アゾールを含まないエマルションの黄色がかった黒色トーンに比べて青色−黒色
画像トーンを与えるある種のメルカプトオキサジアゾールと組み合わせた平均粒
径0.35μmのコア−シェル型立方品の臭化塩化銀エマルションが使用されて
いる。
発明の開示
本発明は、以下の式I:
(式中、R1およびR2は独立して、アルキル基、アリール基および複素環基から
成る群から選ばれるか、またはR1およびR2は共にr環を構成し、nは1〜5ま
での整数であり、mは1〜5までの整数であり、Yは、水素であり、およびR3
は、水素またはアルキル基である。)
で表されるトーン変調剤を含む白黒ネガ型ハロゲン化銀写真エマルションを提供
する。
本発明の別態様では、下式II:
(式中、R1およびR2は独立して、アルキル基、アリール基および複素環基から
成る群から選ばれるか、またはR1およびR2は共にr環を構成し、nおよびmは
1〜5までの整数であり、およびXは、O、S、N-OHおよびN-N(R)2(式
中、Rは、水素またはアルキル基である。)から成る群より選ばれる。)
で表されるトーン変調剤を含む白黒ネガ型ハロゲン化銀写真エマルションが提供
される。
本発明のもう一つの態様では、上記式IまたはIIで表されるジチオ置換され
た化合物を含有する少なくとも1層の上記エマルション層を上に塗布した支持体
を含む白黒ネガ型写真要素が提供される。
本発明において、「基」は、置換されていても未置換であってもよい化学種を
いう。例えば、「アルキル基」は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチ
ル、ドデシル、アリルおよびステアリル等のように、単純な、分岐されたおよび
環状のアルキル部位を包含する。アルキル基は、ヒドロキシル、シアノ、アミノ
、アルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、ハロゲンのような置換基、およ
び通常、許容されるかまたは望ましい置換の範疇および種類内に含まれる、写真
分野において当業者に知られた他の置換基も包含する。「部位」または「種」は
、
未置換の化学物質のみを指す。
発明の詳細な説明
本発明は、感度特性(例えば、写真速度、コントラスト、DminおよびDma x
)に悪影響を及ぼさずに写真要素の臭化銀含有エマルション中に組み込まれる
と、現像された画像に青色−黒色カラーを与えるジチオ置換された化合物を提供
する。トーン変調剤は、ハロゲン化銀溶媒の不存在下において(熱転写とは対照
的に)湿式現像から直接生成される現像されたハロゲン化銀粒子の画像トーンを
変化するのに特に有用である。
特に有用なジチオ置換された化合物は、以下の二つの構造式IおよびIIで表
される。
(式中、R1およびR2は独立して、アルキル基、アリール基および複素環基から
成る群から選ばれるか、またはR1およびR2は共にr環、好ましくは8〜16員
の環(例えば、1,5-ジチアシクロオクタンおよび1,5,9,13−テトラチア
シクロヘキサデカン)を構成し、nは1〜5までの整数であり、mは1〜5まで
、好ましくは1〜3の整数であり、Yは、水素であり、およびR3は、水素また
は好ましくは炭素数5以下のアルキル基である。)
(式中、R1およびR2は独立して、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、
アリル基等)、アリール基(例えば、フェニル基)および複素環基(例えば、チ
オフェン基、テトラヒドロチオフェン基、フラン基等)から成る群から選ばれる
か、またはR1およびR2は共にr環、好ましくは8〜16員の環(例えば、1,
5-ジチアシクロオクタンおよび1,5,9,13−テトラチアシクロヘキサデカン
)を構成し、nおよびmは1〜5まで、好ましくは1〜3の整数であり、および
Xは、O、S、N-OHおよびN-N(R)2(式中、Rは、水素またはアルキル基で
ある。)から成る群より選ばれる。)
ジチオ置換された化合物の代表的な例を表Iに列挙する。
表 I 関連した化合物は、市販されているかまたは常法により容易に合成される。代
表的な合成法を、以下の実施例の調製例で説明する。
ジチオ置換された化合物は、本質的に白黒ネガ型ハロゲン化銀エマルション(
すなわち、塩化銀、臭化銀、臭化塩化銀、臭化ヨウ化銀、塩化ヨウ化銀、臭化塩
化ヨウ化銀の粒子またはそれらの組み合わせ)に添加されてよい。ジチオ置換さ
れた化合物は、臭化銀含有量の高いエマルション(すなわち、臭化銀を少なくと
も50モル%、好ましくは少なくとも75モル%、最も好ましくは85〜100
モル%含むエマルション)中で特に有用である。粒子は、均一または層状(すな
わち、コア−シェル型)の構造を有していてよい。粒子数の少なくとも50%の
平均エッジ長さは、普通、2.0μm未満、好ましくは1.0μm未満、最も好ま
しくは0.4μmである。
ハロゲン化銀の形態は、通常、立方または8面体であるが、これらに限定され
るものではない。他の適した形態としては、4面体、12面体斜方形および24
面体、8面体、エピタキシャル、平板状または層状粒子および上記形態の組み合
わせが挙げられる。球形粒子およびはっきりしない形態の粒子も挙げられる。上
記エマルションは、周知の手順で調製され、例えば、米国特許第2,222,264号公
報、同第3,320,069号公報、同第3,271,157号公報、同第4,425,425号公報および
同第4,425,426号公報に記載のシングルジェットまたはダブルジェットエマルシ
ョンである。エマルション調製中、金属イオンのような添加物(すなわち、ロジ
ウムイオン、ルテニウムイオンまたはイリジウムイオン)を使用して相反則を改
良するかまたはコントラストをより高めることができる。添加物は、ハロゲン化
銀粒子の半径に沿った所望の複雑性の濃度変化を発揮することがある。
ハロゲン化銀エマルションは、未洗浄でも、副生成物である溶解性塩を除去す
るために洗浄されてもよい。後者の場合、溶解性塩は、冷却および濾過によって
除去でき、あるいはエマルションは、例えば、米国特許第2,618,556号公報;同第
2,614,928号公報;同第2,565,418号公報;同第3,241,969号公報;および同第2,489,
341号公報に記載の手順で、凝固洗浄できる。
エマルションは、当業者に周知の方法によって、調製され、洗浄され、化学的
およびスペクトル的に増感できる。ハロゲン化銀写真エマルションは、写真分野
で常用されている他の添加物(例えば、主な金属イオン、遷移金属イオン;硫黄
、セレン、テルル、金、パラジウムおよび白金の化合物のような化学増感剤等)
を含有できる。
ハロゲン化銀エマルションは、かぶり防止剤および安定化剤を単独でまたは組
み合わせて添加することにより、かぶりの生成に対し保護でき、また貯蔵中の感
度変化に対して安定化できる。好適な添加物としては、米国特許第2,131,038号
公報および同第2,694,716号公報に記載のチアゾリウム塩;米国特許第2,886,437
号公報および同第2,445,605号公報に記載のアザインデン;米国特許第2,728,663
号公報に記載の水銀塩;米国特許第3,287,135号公報に記載のウラゾール;米国
特許第3,235,652号公報に記載のスルホカテコール;英国特許第623,448号公報に
記載のオキシム;ニトロン;ニトロインダゾール;米国特許第2,839,405号公報
に記載の多価金属塩;米国特許第3,220,839号公報に記載のチウロニウム塩;お
よび米国特許第2,566,263号公報および同第2,597,915号公報に記載のパラジウム
塩、白金塩および金塩が挙げられる。
エマルションは、普通、ハロゲン化銀粒子の感度を高める染料を用いて、露光
装置の波長にスペクトル増感される。例えば、ヘリウム−ネオンレーザが出力装
置である場合、エマルションは、633nmにスペクトル増感でき;赤外線レー
ザダイオードが出力装置である場合、エマルションは、例えば720から900
nmの領域に増感できる。エマルションは、連続トーンまたはハーフトーン画像
再生のために使用されてよい。
ハロゲン化銀エマルションは、ビヒクルまたはバインダー剤として、あらゆる
親水性コロイド中に単独でまたは組み合わせて分散できる。適した親水性材料と
しては、動物の骨および皮膚から酸または限られた方法で生成されるタンパク質
、ゼラチンおよび化学変性されたゼラチン(すなわち、フタル化ゼラチン、スク
シニル化ゼラチン)、セルロース誘導体、多糖類(すなわち、デキストラン、ア
ラビアガム)のような天然起源の物質;および水溶性ポリビニル化合物(すなわ
ち、ポリビニルピロリドン)、アクリルアミドポリマーまたはラテックス形態で
の分散化ビニル化合物等の他の合成ポリマー化合物のような合成物質、特に、写
真材料の寸法安定性を高めたものが共に挙げられる。好適な合成ポリマーとして
は、
米国特許第3,143,568号公報、同第3,193,386号公報、同第3,062,674号公報、同
第3,220,844号公報、同第3,287,289号公報および同第3,411,911号公報が挙げら
れる。好ましいポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクル酸、ス
ルホアルキル(メタ)アクリレートの非水溶性ポリマー、硬化またはキュアーを促
進する架橋部を有するものおよびカナダ特許第774,054号公報に記載されている
ようなスルホベタイン繰り返し単位を有するものである。
写真ハロゲン化銀エマルションは、様々な有機および無機硬化剤(例えば、ア
ルデヒド、ケトン、カルボン酸および炭酸誘導体、スルホナートエステル、スル
ホニルハライドおよびビニルスルホン、活性ハロゲン化合物、エポキシ化合物、
アジリジン、活性オレフィン、イソシアナート、カルボジイミド、酸化多糖類(
すなわち、ジアルデヒドデンプンおよびオキシグアーガム)のような混成機能硬
化剤)を単独でまたは組み合わせることによって硬化されてよいコロイド中に分
散できる。
エマルションは、塩化物、硝酸塩等の溶解性塩を含有する層のような帯電防止
または導電層、金属蒸着層、米国と去第2,861,056号公報および同第3,206,312号
公報に記載のイオン性ポリマーまたは米国特許第3,428,451号公報に記載されて
いるような非溶解性無機塩を含む写真要素中で使用してよい。
写真エマルションは、広範な支持体上に塗布されてよい。好適な支持体として
は、ポリエステルフィルム、下塗りされたポリエステルフィルム、ポリエチレン
テレフタレートまたはポリエチレンナフタレートフィルム、セルロースエステル
フィルム、ポリビニルアセタールフィルム、ポリカーボネートフィルムおよび関
連する樹脂材料、並びにガラス、金属および紙が挙げられる。通常、可撓性支持
体を用いる。公的な紙支持体は、部分アセチル化されてもバリタおよび/または
α−オレフィンポリマー、特に、炭素数2〜10のα−オレフィンポリマー(例
えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン−ブテンコポリマー)で被
覆されてよい。
エマルションは、ポリアルコール(米国特許第2,960,404号公報に記載のグリ
セリンおよびジオール;米国特許第2,588,765号公報および同第3,12,060号公報
に記載の脂肪酸またはエステル;および英国特許第955,061号公報に記載のシリ
コーン樹脂等)のような可塑剤および潤滑剤を含有してよい。
上記写真エマルションは、サポニン、米国特許第2,600,831号公報に記載のア
ルキルアリールスルホネートのようなアニオン性化合物界面活性剤、フッ素化界
面活性剤および米国特許第3,133,816号公報に記載の両性化合物を含有してよい
。
上記エマルション層を含む写真要素は、デンプン、二酸化チタン、シリカ、酸
化亜鉛、米国特許第2,992,101号公報および同第2,701,245号公報に記載のポリマ
ービーズ艷消し剤を含有してよい。
ハロゲン化銀エマルションは、スチルベン、トリアジン、オキサゾールおよび
クマリン蛍光増白剤を含む蛍光増白剤を含有する写真要素中で使用され得る。好
適な水溶性蛍光増白剤は、ドイツ特許第927,067号公報および同第2,933,390号公
報に記載のものまたはドイツ特許第1,150,274号公報および米国特許第3,406,070
号公報に記載の蛍光増白剤の分散体を包含する。
本発明のエマルション層を含む写真要素は、米国特許第3,253,921号公報、同
第2,274,782号公報、同第2,257,583号公報および同第2,956,879号公報に記載さ
れているような光吸収物質およびフィルター染料も含有してよい。所望により、
染料は、媒染されてもよい(米国特許第3,282,699号公報参照)。
写真エマルションは、ディップコーティング、エアーナイフコーティング、カ
ーテンコーティングまたは米国特許第2,681,294号公報に記載の種類のホッパー
を用いた押し出しコーティングを含む種々のコーティング法で塗付されてよい。
米国特許第2,761,791号公報および英国特許第837,095号公報に記載の手順により
、2層以上を同時に塗付してもよい。
コーティング助剤、スペクトル増感剤、帯電防止剤、アキュタンス染料、かぶ
り防止剤、安定化剤、潜像安定化剤、よじれ防止剤、湿潤剤、艶消し剤等のよう
な他の通常の写真用添加物も含まれてよい。
トーン変調化合物は、普通、エマルションの塗付直前に添加される。画像トー
ンに最も高い改良を付与するために、1種以上のトーン変調剤をエマルションに
添加してよい。
好ましくは、トーン変調剤は、0.001〜10g/銀1モル、特に、0.1〜
1g/銀1モルの基準でエマルション中に組み込まれる。例えば、水、メタノー
ル、エタノール、アセトン、DMSOおよびDMF等の好適な溶媒を使用して化
合物を溶解してもよい。あるいは、トーン変調剤は、固体、油または他の非水混
和性液体中の分散体、ゼラチンマトリックス中の分散体として、または当業者に
既知の他の常法により添加されでもよい。トーン変調剤の量は、フィルムの感度
特性(すなわち、写真速度、コントラスト、DminおよびDmax)を最適化するた
めに変更してよい。
露光されたフィルムの画像トーンは、適した方法を用いて測定することができ
る。画像トーンを測定するある方法は、光学濃度およそ1でのCIEカラー配座
を決定することによる。b*配座は、画像カラーに関連した青色/黄色の色相を
表す。正のb*値は、画像が黄色のトーンを呈することを示すが、負のb*値は、
青色画像トーンを示す。本発明において例示される化合物は、より大きな負の値
(青色)に向かって0.5以上のb*の変化をもたらす。
上記画像トーンは、現像されたハロゲン化銀粒子によって専らもたらされる中
性黒色からの偏差である。認知される画像トーン全体は、基材材料の色やゼラチ
ンおよび他のエマルション成分並びに現像された粒子から生じるしみのような、
多数の構成要素から成る。トーンを決定するときに未露光部を参照として用いる
ことにより、上記の他の構成要素を相殺し、かつ測定された画像トーンから排除
することができる。
実施例
以下の調製例は、実施例1〜4で使用するジチオ置換された化合物の合成法の
代表的な例を示す。化合物16および17は、アルドリッチ・ケミカルズ(米国
ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手したものである。化合物13および
19は、ランカスター・シンセシス・リミテッド(英国ランカスター、モアカン
ベ)から入手したものである。特に断りのない限り、調製例で列挙する化合物質
は、アルドリッチ・ケミカルズから入手したものである。代表的な化学物質には
、以下の略語を使用した:MeOH=メタノールおよびDMF=ジメチルホルム
アミド。 2-アリロキシ-1,3-ビス(メチルチオ)プロパン(3)の調製
乾燥したTHF中の1,3-ビス(メチルチオ)-2-プロパノール(3.02g
、20ミリモル)を、撹拌している乾燥したTHF(50mL)中の希薄水酸化
ナトリウム懸濁液(60%鉱油中分散体1.02g、22ミリモル)に、窒素下
、0℃において滴下した。添加終了後、混合物をこの温度で30分間撹拌し、次
いでアリルブロマイド(2.66g、22ミリモル)を滴下して処理した。混合
物を室温に戻した後、16時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣をエーテ
ル(50mL)と水(50mL)に分配させた。有機物を分離し、乾燥し、濾過
し、蒸発させてオレンジ色の油を得た。これを、40−60石油エーテル/エー
テル(=4/1)中でのクロマトグラフィーにより精製して、無色の油を得た(
2.3g、60%)。
1,3-ビス(2-(ジメチルアミノ)エチルチオ-2-プロパノール(4)の調製
2-(ジメチルアミノ)エタンチオール塩酸塩(10.78g、78ミリモル)を
水酸化ナトリウム(6.2g、155ミリモル)のエタノール(40mL)溶液
に窒素下、0℃において滴下した。ここへ、さらにエタノール(20mL)を加
え、混合液をこの温度で10分間撹拌した。ここへ、1,3-ジクロロ-2-プロパ
ノール(5.29g、41ミリモル)を滴下した。添加終了後、反応混合物を室
温に戻し、さらに2時間撹拌した。沈殿した固体を濾別し、エタノールで洗浄し
た。炉液を蒸発させた。得られた油をアセトン中に溶解し、濾過し、蒸発させて
、青味がかった黄色の油として所望の生成物を得た(8.90g、68%)。
2,3-ジクロロプロパン-2-オール(アルドリッチ社製)と2当量の好適なチ
オールとの反応により、上記と同じ手順で化合物2,6,14,15および18
を調製した。化合物11も、1,3-ジクロロアセトンから同様にして調製した。
1-クロロ-3-メチルチオプロパンの調製
ナトリウムメタンチオラート(14g、200ミリモル)をエタノール中の1
-ヨード-3-クロロプロパン(40.88g、200ミリモル)に滴下した。混合
物を室温で64時間撹拌した。真空下で溶媒を除去し、残渣をエーテルと水に分
配した。有機物を分離し、乾燥し、濾過し、蒸発させて、無色の油を得た。それ
をエーテル中においてカラムクロマトグラフィーにより精製して、無色の油とし
て所望の物質を得た(9g、収率36%)。
1,6-ビス(メチルチオ)-3-ヘキサノール(5)の調製
乾燥したTHF(50mL)中の1-クロロ-3-メチルチオプロパン(3.73
g、30ミリモル)を、マグネシウム片を撹拌しているところへアルゴン下で添
加した。添加終了後、混合物を50℃で3時間加熱した。その後、混合物を室温
まで冷却し、3-メチルチオプロパノール(3.12g、30ミリモル)を加えた
。反応系を室温で1時間撹拌した。2Mアンモニウムクロライド溶液(50mL
)、次いでエーテル(50mL)を加えた。有機物を分離し、乾燥させて、濾過
し、蒸発させて、青味がかった黄色の油を得た。それを40〜60石油エーテル
/エーテル(4/5)中においてクロマトグラフィーにより精製して、無色の油
として化合物5を得た(2.1g、36%)。
化合物1は、3-メチルチオプロパナールをエチルホルメート0.5当量に代え
たこと以外は、化合物5と同様の方法で調製した。 2-(2-ヒドロキシ-3-(メチルチオ)プロピルチオ)チオフェン(8)の調製
2-(2’,3’−エポキシプロピルチオ)チオフェン(2.5g、14.5ミリモ
ル)(メイブリッジ・ケミカルズ社製)をエーテル(30mL)中のナトリウム
メタンチオレート(0.6g、8.6ミリモル)の溶液に添加した。混合物を室温
で16時間撹拌した。2N塩酸(100mL)を加え、生成物をジクロロメタン
(100mL)中に抽出した。有機抽出液を乾燥させて濾過し、蒸発させて、得
られた油を、ジクロロメタン中の薄層クロマトグラフィーで精製して、無色の油
として化合物8を得た(0.6g、収率32%)。
化合物7は、(ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ、パーキン・トラ ンスファーI
、1991年、897頁に開示の方法で得られた)2-フェニルチ
オメチルオキシランから出発したこと以外は、化合物8と同様にして調製した。
化合物9の調製
化合物4(2g)のアセトン(50mL)溶液は、窒素下、室温において、ヨ
ウ化エチル(1.2mL)を滴下して処理した。20時間撹拌した後、生成した
沈殿物を濾別し、アセトンで洗浄し、40℃、真空下において乾燥して、所望の
物質2.83g(収率65%)を得た。
化合物10の調製
ヒドロキシルアミン塩酸塩(5.47g)と酢酸ナトリウム(8.75g)の水
(50mL)中の溶液を40℃に加熱した。溶液をエタノール(100mL)中
の化合物11(10g)に添加して、混合物を40℃で10分間撹拌した。混合
物を冷却して、溶媒を蒸発させた。残渣を、水とエーテルに分配した。有機物を
分離し、乾燥し、濾過し、蒸発させて、油を得た。それをエーテル:ガソリン(
1:1)中においてクロマトグラフ分離させて、油として化合物10を得た(5
.64g、収率42%)。エマルション調製液
以下の調製例は、実施例1〜4で使用したエマルション調製液について記載し
ている。
エマルションAの調製
このエマルションは、平均粒径0.11μmの純粋な臭化銀エマルションであ
る。40℃においてpH=3およびpBr=3.05の7.9%不活性ゼラチンか
ら成るケトル溶液を調製した。3.98M KBr溶液と3.84M AgNO3
溶液を7秒かけて、それぞれ10mL添加することにより予備的な核生成を行な
った。3分後、3.84M AgNO3および3.98M KBr溶液を、10m
L/分で出発して38分後に48mL/分で終了する線形速度で、pBrを制御
しながら添加した。
エマルションBの調製
このエマルションは、平均粒径0.16μmの純粋な臭化銀エマルションであ
る。このエマルションは、温度を47.5℃まで上げて、硝酸銀を39分10秒
かけて加えたこと以外はエマルションAと同様の方法で調製した。
エマルションCの調製
このエマルションは、平均粒径0.24μmの純粋な臭化銀エマルションであ
る。このエマルションは、温度を58℃まで上げて、硝酸銀を58分かけて加え
たこと以外はエマルションAと同様の方法で調製した。
エマルションA〜Cを、N-メチルチオスクシンイミドとナトリウムテトラク
ロロ金酸を用いて化学増感した。最適条件に増感した後、エマルションにテトラ
アザインデンを加えて安定化した。各エマルションを、ヘプタメチンシアニン染
料を用いてスペクトルの赤外部へスペクトル増感した。染料は、スチレントリア
ジン化合物LeucophorBCF(サンド・カンパニー社製)で超増感した。良好な
塗布特性を確実にし、ゼラチンを硬化するために、7miLのポリエステル上に
塗付する前に、界面活性剤およびホルムアミドのような化合物も添加した。ゼラ
チン含量は、塗付前に90g/モルに調整した。
塗付する前に、水、メタノールまたはDMF中の0.5%溶液としてのトーン
変調剤をエマルションに加えた。エマルションを被覆重量:銀1モルにつき1.
6〜2gで塗付した。30日間の自然エージング後、画像トーンを測定した。
以下に示す実験フィルムは、レーザーダイオードからの光を段階付き中間濃度
フィルターを通過させて得た段階付き光源でフィルム試料を露光することにより
試験した。露光したフィルムは、コダックRP X−Omat現像液(コダック社(
ニューヨーク、ロッチェスター)製)中で現像した。現像した画像の濃度を調査
することによりフィルムの写真応答性を測定し、通常の感度曲線を得た。速度1
は、かぶりの上の光学濃度1.0で測定する。画像トーンは、トランスミッショ
ン・グレータグ・カラリメータを用いて測定した。L*a*b*配座は、ベースを
差し引いた光学濃度:0.90〜1.10の間において測定した。Δb*は、以下
の式で定義される。
Δb*=b1*−b0*
(式中、b1*は、ベースを差し引いた、添加物を含むフィルムのb*値であり、
およびb0*は、ベースを差し引いた、添加物を含まないフィルムのb*値である
。)実施例1
実施例1は、トーン変調化合物を臭化銀エマルションに添加することによって
観察される画像トーンの向上を表している。化合物1〜13を、表IIに示す添
加量(Ag1モル当たりの重量;mg/Agモル)および溶媒中でエマルション
Aに加えた。表IIは、画像トーンの変化について観察された結果と各条件にお
けるDminおよび速度1も示している。
表 II 化合物はいずれも、画像トーンにかなりの向上を与え、大抵の場合、Dmin
または速度は大きく変化しなかった。ある場合では、感度が向上した。化合物3
はより低い速度をもたらしたが、それは、トーン変調剤の添加量が最適化されて
いなかったことを強調すべきである。実施例2
本実施例は、トーン変調剤が、ある種の臭化銀エマルションの画像トーンを向
上できることを示している。化合物1〜13を、表IIIに列挙した量(mg/
Agモル)に従って、同表に挙げた溶媒中において、エマルションBおよびCに
添加した。表IIIには、各々の条件において観察された画像トーンおよび感度
特性も示している。
表 III 実施例3
本実施例は、大過剰のトーン変調剤が、臭化銀エマルションの画像トーンを向
上できることを示している。メタノール中に溶解したトーン変調剤4をエマルシ
ョンAに添加した。表IVには、各々の条件において観察された結果をまとめる
。
表 IV 実施例4
本実施例は、本発明の化合物と先行技術で使用されるトーン変調剤とを比較し
ている。トーン変調化合物を、表Vに示す量でエマルションBに加えた。表Vに
は、各条件において観察された画像トーンおよび感度特性もまとめている。比較
化合物20および21は、以下の化学構造を有する市販の化合物である。 表 V 化合物4を用いた条件は、感度に重大な影響を及ぼすことなく画像トーンを高
める。しかしながら、化合物20および21を用いた比較条件では、画像トーン
は高めるが、エマルションの速度が大幅に低下する。
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