JP2004010973A - 複合被膜の損耗速度予測方法及びその方法を利用した被覆方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セラミックスと金属とを含む複合被膜が液中にさらされる場合における前記複合被膜の損耗速度予測方法に関する。
【解決手段】この損耗速度予測方法では、溶射により形成された被膜表面の、単位面積当りの空孔面積率と、硬質被膜表面に作用するキャビテーションによる衝撃エネルギーの関係に基づいて予測することに特徴を有する。本発明の予測方法によれば、評価実験を実施せずに済むため、時間とコストの大幅な節約となる。
【選択図】なし
【解決手段】この損耗速度予測方法では、溶射により形成された被膜表面の、単位面積当りの空孔面積率と、硬質被膜表面に作用するキャビテーションによる衝撃エネルギーの関係に基づいて予測することに特徴を有する。本発明の予測方法によれば、評価実験を実施せずに済むため、時間とコストの大幅な節約となる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックスと金属とを含む複合被膜、特に、耐キャビテーションエロージョン用硬質被膜が液中にさらされる場合に、その複合被膜が損耗する速度を予測する方法及びそのような方法による予測に基づいて厚さが決められた複合被膜、更にはそのような複合被膜が溶射法により溶着された回転部材及びそのような回転部材を備える流体機械に関する。
【0002】
【従来技術】
キャビテーションエロージョンにより損耗する部材には、耐キャビテーションエロージョン性に優れるステライト等の材料を基材に被覆施工したものが使用されてきた。しかし、土砂を含んだ水を汲み上げるポンプでは流路内部材に耐スラリーエロージョン性も要求されるため、セラミックスと金属を複合したサーメット材を溶射法を用いて被覆した硬質被膜を使用しなければならない。
複合被膜の損耗速度を知るには、材料ごとの評価実験が必要であり、そこで得られた損耗速度から必要な膜厚さを決定する。従って、新規材料すべてについて、評価実験を行わなければならないため、多くの時間とコストが必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般的にキャビテーションエロージョンによる材料の損耗速度は、延性材料では硬さ2/縦弾性係数、脆性材料では破壊靭性2/空孔密度と相関がある。しかし、硬質被膜では、縦弾性係数、破壊靭性の測定は難しいため、これらの因子を用いて損耗速度を予測することは困難である。そのため簡易かつ精度よく予測できる方法の提供が期待されている。
【0004】
したがって、本発明の目的は、溶射法によって基材に被覆された耐キャビテーションエロージョン用被膜の損耗速度を簡単でしかも精度良く予測できる方法を提供することである。
本発明の他の目的は、単位面積当りの空孔面積率及び硬質被膜表面に作用するキャビテーションによる衝撃エネルギーの関係に基づいて耐キャビテーションエロージョン用被膜の損耗速度を簡単で精度良く予測する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき、溶射法により基材の表面に被覆されるセラミックスと金属とを含む耐キャビテーション用複合被膜の厚さを決定する被覆方法及び被膜を提供することである。
本発明の更に別の目的は、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき決定された厚さで表面に耐キャビテーションロージョン用複合被膜が溶射法により被覆された羽根車及びそのような羽根車を有する流体機械を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願の一つの発明は、セラミックスと金属とを含む複合被膜が液中にさらされる場合における前記複合被膜の損耗速度予測方法おいて、溶射により形成された被膜表面の、単位面積当りの空孔面積率と、前記被膜表面に作用するキャビテーションによる衝撃エネルギーとの関係に基づいて予測することに特徴を有する。
上記複合被膜の損耗速度予測方法において、前記予測が次式により行われ、
L=A×B×(C×S+D)
ここにおいて、Lは損耗速度であり、Aは定数であり、Bはキャビテーションによる衝撃エネルギーであり、C、Dは硬質被膜の種類によって決まる定数であり、Sは硬質被膜表面の空孔面積率であり、S≧0.5で成り立つ関係を用いてもよい。この場合、前記セラミックスが金属炭化物及び金属酸化物の少なくとも1種類を含み、前記被膜が溶射法を用いて形成され、前記定数がC=0.356、D=0.4651であり、前記空孔面積率がS≧2であっても、或いは、前記セラミックスが金属炭化物及び金属酸化物の少なくとも1種類を含み、前記被膜が溶射法を用いて形成され、溶射後、金属を溶融させるために加熱処理され、前記定数がC=0.1064、D=0.0512であり、前記空孔面積率がS≧0.5であってもよい。
更に、上記複合被膜の損耗速度予測方法において、前記被膜の表面をデジタル画像処理することにより、空孔面積率を算出するようにしてもよい。
【0006】
本願の他の発明は、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜を溶射法により基材の表面に被覆する被覆方法であって、前記複合被膜の厚を、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定することに特徴を有する。
本願の別の発明は、溶射法によって基材の表面に溶着されている、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜であって、前記複合被膜の厚さが、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定されていることに特徴を有する。
【0007】
本願の更に別の発明は、ハブと、前記ハブの周りに円周方向に隔てて取り付けられた複数の翼とを備た羽根車において、前記羽根車の表面の少なくとも一部に、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜が溶射法によって溶着され、前記複合被膜の厚さが、前記記載の方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定されていることに特徴を有する。
本願の更に別の発明は、ハブ及び前記ハブの周りに円周方向に隔てて取り付けられた複数の翼を備た羽根車と、前記羽根車を回転可能に収容する室を画定するケーシングと、を備え、前記羽根車の表面の少なくとも一部に、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜が溶射法によって溶着され、前記複合被膜の厚さが、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定されていることに特徴を有する。
【0008】
【実施例】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
最初に耐キャビテーションエロージョン性に影響を及ぼす影響因子の評価について説明する。キャビテーションエロージョン試験は「エロージョン・コロージョンと利用技術、発行者:(株)IPC」に記載されている回転円板法に準じて行った。ただし、円板、試験片等の寸法は異なる。まず、図1[A]に示されるような円形(直径D=25mm、厚さT=6mm)の平板状の試験片用の基板1を多数作成した。一方、(a)高速フレーム溶射用の材料としては7種類の被膜材料を用意して、それぞれの基板1にはその7種類の被膜材料をそれぞれ別個に溶射し、厚さt=500μmの、下記の表1に示されるa1ないしa7の7種類の組成を有する被膜2aをそれぞれ形成し、試験片3a(図1[B])をつくった。また、(b)フレーム溶射用の材料としては9種類の被膜材料を用意して、それぞれの基板1にはその9種類の被膜材料をそれぞれ別個に溶射し、厚さt=500μmの、表1に示されるb1ないしb9の9種類の組成を有する被膜2bをそれぞれ形成し、試験片3b(図1[B])をつくった。その後、被膜2bを加熱処理し、被膜の組織の緻密化を図った。なお、表中で同じ組成であっても、炭化物平均粒径、溶射条件等が異なっており、全て特性の異なる被膜である。また、表中のCrmCnの表記は、Cr3C2、Cr7C3、Cr23C6、などのクロム炭化物の混合したものを表す。
【表1】
【0009】
前記試験片を図2及び図3に示す試験装置10にセットして行った。同図において、11はチャンバ12を画定する試験槽、13は試験槽11内で回転可能に支持されていて、一方の表面(図2では左面)に試験片3a、3bが着脱可能に取り付けられるようになっている回転体、14は回転体13を回転させる電動モータ、17は水タンク、18は水タンク17内の水を導管19を介して試験槽11内に送るポンプ、20は水を試験槽から水タンク17戻す導管である。回転体13には、試験片の取付け位置よりも回転体の回転方向に見て上流側に、所望の大きさ(本実施形態では直径15mm)の円形穴15(非貫通穴)が形成されている。この穴15は、回転体が回転するときに回転体表面にキャビテーションを発生させるものである。
【0010】
試験は、回転ディスク13の片面に前記試験片を取付け、これを水中に没した状態でモータ14により回転させ、回転体の回転によって発生したキャビテーションが試験片側に向かって流れるようにして行った。試験槽内の水圧は0.1Mpa、水温は15℃に調整した。
【0011】
上記試験により得た結果をグラフで表せば図4に示されるようになる。図4に単位面積当りの空孔面積率と損耗速度の関係を示す。単位面積当りの空孔面積率は、硬質被膜表面の拡大写真をコンピュータに取り込み、デジタル画像処理を行い求めた。なお、硬質被膜表面の拡大写真をコンピュータに取り込むに先だって、表面を平坦面に沿って研磨して空孔部分(凹み部分)を分かり易くし、空孔の面積は硬質被膜表面の単位面積についてその凹み部分の面積を測定することによって求めた。
本実験より以下の関係式が得られた。
【数式1】
L=A×B×(C×S−D) …(1)
ここで、Lは損耗速度(μm/h)であり、Aは定数であり、Bはキャビテーションによる衝撃エネルギーであり、C及びDは硬質被膜の種類(材質及び溶射処理方法)によって決まる定数であって、溶射法(a)に対してはC=0.356、D=0.4651であり、溶射法(b)に対してはC=0.1064、D=0.0512である。また、Sは単位面積当たりの空孔面積率(%)である。Sについては、溶射法(a)では2〜5%、溶射法(b)では0.5〜8%の範囲で実験を行い、確認した。溶射法(a)では5%以上、溶射法(b)では8%以上であっても、上式が成り立つと予想するが、実用上無意味な範囲であると考えられるので、この例では、溶射法(a)に対してはS≧2とし、溶射法(b)に対してはS≧0.5とした。
また、実用上の運転環境では損傷速度0.3mm3/h以下が要求されるため、この条件を満たすように、溶射法(a)及び(b)に基づいて、S=2.2の硬質被膜を製作し、上記同様の実験を行ったところ、得られた損耗速度は、上式で予測した結果とよく一致した。
【0012】
空孔面積率が2%以上では、同じ空孔面積率でも溶射法(a)による被膜は溶射法(b)による被膜より損耗量が多い。これは、溶射法(a)は、溶射後、サーメット被膜中の金属部を再溶融していないため、セラミックス硬質粒子と金属の結合力が弱いことと、溶射法(a)の空孔の多くはセラミックス硬質粒子と金属の境界部に存在していることが原因である。空孔面積率2%以上では、空孔面積率のみで整理できるが、2%以下になると空孔と破壊靭性の影響を考慮しなければならない。
上記のように予測した損耗速度に基づき、基材の表面に溶射法により被覆する被膜で構成される被膜の厚さを決定する。例えば、被膜がキャビテーションの環境条件下にさらされて摩耗した後、補修により被覆し直す場合、上記の予測した損耗速度及び希望する補修周期(次に補修するまでの期間)に基づいて、被膜の厚さが決定される。
【0013】
本発明による被膜で耐キャビテーションエロージョン化を図る流体機械用の構成部材の一例としてポンプのランナすなわち羽根車30が図5で断面図で示されている。
図5において、羽根車30は、回転軸を受ける軸穴31が形成されたハブ32と、そのハブ32から半径方向外側に放射上に広がる円板状の主板33と、主板33から軸方向(図5において上下方向)に隔てられた環状の側板34と、主板33と側板34との間において円周方向(軸穴の軸線O−O回りの円周方向)に等間隔に隔てて配置され所望の曲面に沿って湾曲して側板及び主板と一体的に形成された複数の翼35とで構成されていて、主板33、側板34及び翼35により流体の流れる流路36を画定している。流路36の半径方向内側の部分37が入口部となり、半径方向外側の部分38が出口部となる。また、環状の側板34は、円周方向内側の軸方向に伸びる部分34aと、半径方向外側に伸びる部分34bとを有し、軸方向伸長部分34aによって羽根車30の入口39を画定している。このような羽根車30を回転させて流体を送り出す場合、例えば、羽根車を土砂を含む水中で回転させると、羽根車30の表面、特に羽根車30内の流路36を画定する主板33の内面41、側板34の内面42及び翼35の両面、すなわち圧力面43、負圧面44にキャビテーションが発生し、それらの表面が気泡崩壊時の衝撃エネルギーにより極端に摩耗することになる。
【0014】
そこで、羽根車30の上記流路36を画成する内面41及び42、圧力面43及び負圧面44、入口39の内面45、側板34の外側面46及び主板33の裏面47のうち所望する面に、上記溶射法AないしCのうち適当な溶射法を適宜選んで前述の耐キャビテーションエロージョン溶射被膜を形成する。この場合、溶射を行う面の条件、溶射法の施工条件等を考慮して一つの羽根車に対して溶射する場所により異なる溶射方法を採用することも可能である。
【0015】
上記のように耐キャビテーションエロージョン溶射被膜形成された本発明の羽根車30は、水車或いはポンプのような流体機械に使用される。図6において、このような流体機械の一例として立形ポンプ50が断面で示されている。同図において、ポンプ50は、本発明による羽根車30を収容するポンプ室52を画成するケーシング51と、軸線を鉛直にして配置されていて下端に羽根車30が固定された主軸57と、ケーシングの上方に取り付けられたていて主軸57をケーシングに関して回転自在に支持する主軸受け58と、ケーシング51と主軸57との間からの流体の漏れを防止するシール装置59と、を備えている。ケーシング51は管状の支持台60の上に公知の方法で固定されている。ケーシング51は、上側の円盤状の端板53と、渦巻き状の出口室55を画成するケーシング本体54と、管状のカバー56とを備えている。カバー56の下端には筒状の吸出し管61が接続されている。
上記ポンプにおいて、主軸37を回転させることによってその下端に固定された羽根車30を回転させると、流体が吸出し管61内で矢印Xで示されるように羽根車の入口39に吸い込まれ、羽根車30の流路36を通って出口38側から半径方向に押し出され、出口室55内に流入する。出口室内の流体は、図示しない出口から吐き出される。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば次のような効果を奏することが可能である。
(イ)一般的にキャビテーションエロージョンによる材料の損耗速度は、延性材料では硬さ2/縦弾性係数、脆性材料では破壊靭性2/空孔密度と相関があり、特に、セラミックスと金属を複合した材料を、高圧・高速フレーム溶射法を用いて被覆した硬質被膜は、脆性材料であるので、損耗速度は破壊靭性2/空孔密度と相関があることが予想されるが、被膜の破壊靭性の測定は難しいため、これらの因子を用いて損耗速度を予測することは困難である。しかし、本発明によれば、硬質被膜で形成される被膜の単位面積当りの空孔面積率を用いると精度よく損耗速度を予測することが可能となり、評価実験を実施せずに済むため、時間とコストの大幅な節約となる。
(ロ)運転条件に応じて必要な被膜厚さを算出することが可能となるため、材料費の節約にもなる。
(ハ)損耗速度が予測できるので羽根車等の被覆剤の使用寿命を高い精度で予測可能になり、補修時期の決定を容易に決めること可能で流体機械の保守が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験片及び試験片用の基板の斜視図である。
【図2】本実施例で使用する試験装置の概略構成図である。
【図3】図2に示される試験装置の回転体の一部分の平面図である。
【図4】試験結果を示すグラフ図である。
【図5】本発明の被膜が形成される羽根車の一例を示す断面図である。
【図6】図5の羽根車を備えるポンプの断面図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックスと金属とを含む複合被膜、特に、耐キャビテーションエロージョン用硬質被膜が液中にさらされる場合に、その複合被膜が損耗する速度を予測する方法及びそのような方法による予測に基づいて厚さが決められた複合被膜、更にはそのような複合被膜が溶射法により溶着された回転部材及びそのような回転部材を備える流体機械に関する。
【0002】
【従来技術】
キャビテーションエロージョンにより損耗する部材には、耐キャビテーションエロージョン性に優れるステライト等の材料を基材に被覆施工したものが使用されてきた。しかし、土砂を含んだ水を汲み上げるポンプでは流路内部材に耐スラリーエロージョン性も要求されるため、セラミックスと金属を複合したサーメット材を溶射法を用いて被覆した硬質被膜を使用しなければならない。
複合被膜の損耗速度を知るには、材料ごとの評価実験が必要であり、そこで得られた損耗速度から必要な膜厚さを決定する。従って、新規材料すべてについて、評価実験を行わなければならないため、多くの時間とコストが必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般的にキャビテーションエロージョンによる材料の損耗速度は、延性材料では硬さ2/縦弾性係数、脆性材料では破壊靭性2/空孔密度と相関がある。しかし、硬質被膜では、縦弾性係数、破壊靭性の測定は難しいため、これらの因子を用いて損耗速度を予測することは困難である。そのため簡易かつ精度よく予測できる方法の提供が期待されている。
【0004】
したがって、本発明の目的は、溶射法によって基材に被覆された耐キャビテーションエロージョン用被膜の損耗速度を簡単でしかも精度良く予測できる方法を提供することである。
本発明の他の目的は、単位面積当りの空孔面積率及び硬質被膜表面に作用するキャビテーションによる衝撃エネルギーの関係に基づいて耐キャビテーションエロージョン用被膜の損耗速度を簡単で精度良く予測する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき、溶射法により基材の表面に被覆されるセラミックスと金属とを含む耐キャビテーション用複合被膜の厚さを決定する被覆方法及び被膜を提供することである。
本発明の更に別の目的は、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき決定された厚さで表面に耐キャビテーションロージョン用複合被膜が溶射法により被覆された羽根車及びそのような羽根車を有する流体機械を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願の一つの発明は、セラミックスと金属とを含む複合被膜が液中にさらされる場合における前記複合被膜の損耗速度予測方法おいて、溶射により形成された被膜表面の、単位面積当りの空孔面積率と、前記被膜表面に作用するキャビテーションによる衝撃エネルギーとの関係に基づいて予測することに特徴を有する。
上記複合被膜の損耗速度予測方法において、前記予測が次式により行われ、
L=A×B×(C×S+D)
ここにおいて、Lは損耗速度であり、Aは定数であり、Bはキャビテーションによる衝撃エネルギーであり、C、Dは硬質被膜の種類によって決まる定数であり、Sは硬質被膜表面の空孔面積率であり、S≧0.5で成り立つ関係を用いてもよい。この場合、前記セラミックスが金属炭化物及び金属酸化物の少なくとも1種類を含み、前記被膜が溶射法を用いて形成され、前記定数がC=0.356、D=0.4651であり、前記空孔面積率がS≧2であっても、或いは、前記セラミックスが金属炭化物及び金属酸化物の少なくとも1種類を含み、前記被膜が溶射法を用いて形成され、溶射後、金属を溶融させるために加熱処理され、前記定数がC=0.1064、D=0.0512であり、前記空孔面積率がS≧0.5であってもよい。
更に、上記複合被膜の損耗速度予測方法において、前記被膜の表面をデジタル画像処理することにより、空孔面積率を算出するようにしてもよい。
【0006】
本願の他の発明は、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜を溶射法により基材の表面に被覆する被覆方法であって、前記複合被膜の厚を、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定することに特徴を有する。
本願の別の発明は、溶射法によって基材の表面に溶着されている、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜であって、前記複合被膜の厚さが、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定されていることに特徴を有する。
【0007】
本願の更に別の発明は、ハブと、前記ハブの周りに円周方向に隔てて取り付けられた複数の翼とを備た羽根車において、前記羽根車の表面の少なくとも一部に、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜が溶射法によって溶着され、前記複合被膜の厚さが、前記記載の方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定されていることに特徴を有する。
本願の更に別の発明は、ハブ及び前記ハブの周りに円周方向に隔てて取り付けられた複数の翼を備た羽根車と、前記羽根車を回転可能に収容する室を画定するケーシングと、を備え、前記羽根車の表面の少なくとも一部に、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜が溶射法によって溶着され、前記複合被膜の厚さが、前記方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定されていることに特徴を有する。
【0008】
【実施例】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
最初に耐キャビテーションエロージョン性に影響を及ぼす影響因子の評価について説明する。キャビテーションエロージョン試験は「エロージョン・コロージョンと利用技術、発行者:(株)IPC」に記載されている回転円板法に準じて行った。ただし、円板、試験片等の寸法は異なる。まず、図1[A]に示されるような円形(直径D=25mm、厚さT=6mm)の平板状の試験片用の基板1を多数作成した。一方、(a)高速フレーム溶射用の材料としては7種類の被膜材料を用意して、それぞれの基板1にはその7種類の被膜材料をそれぞれ別個に溶射し、厚さt=500μmの、下記の表1に示されるa1ないしa7の7種類の組成を有する被膜2aをそれぞれ形成し、試験片3a(図1[B])をつくった。また、(b)フレーム溶射用の材料としては9種類の被膜材料を用意して、それぞれの基板1にはその9種類の被膜材料をそれぞれ別個に溶射し、厚さt=500μmの、表1に示されるb1ないしb9の9種類の組成を有する被膜2bをそれぞれ形成し、試験片3b(図1[B])をつくった。その後、被膜2bを加熱処理し、被膜の組織の緻密化を図った。なお、表中で同じ組成であっても、炭化物平均粒径、溶射条件等が異なっており、全て特性の異なる被膜である。また、表中のCrmCnの表記は、Cr3C2、Cr7C3、Cr23C6、などのクロム炭化物の混合したものを表す。
【表1】
【0009】
前記試験片を図2及び図3に示す試験装置10にセットして行った。同図において、11はチャンバ12を画定する試験槽、13は試験槽11内で回転可能に支持されていて、一方の表面(図2では左面)に試験片3a、3bが着脱可能に取り付けられるようになっている回転体、14は回転体13を回転させる電動モータ、17は水タンク、18は水タンク17内の水を導管19を介して試験槽11内に送るポンプ、20は水を試験槽から水タンク17戻す導管である。回転体13には、試験片の取付け位置よりも回転体の回転方向に見て上流側に、所望の大きさ(本実施形態では直径15mm)の円形穴15(非貫通穴)が形成されている。この穴15は、回転体が回転するときに回転体表面にキャビテーションを発生させるものである。
【0010】
試験は、回転ディスク13の片面に前記試験片を取付け、これを水中に没した状態でモータ14により回転させ、回転体の回転によって発生したキャビテーションが試験片側に向かって流れるようにして行った。試験槽内の水圧は0.1Mpa、水温は15℃に調整した。
【0011】
上記試験により得た結果をグラフで表せば図4に示されるようになる。図4に単位面積当りの空孔面積率と損耗速度の関係を示す。単位面積当りの空孔面積率は、硬質被膜表面の拡大写真をコンピュータに取り込み、デジタル画像処理を行い求めた。なお、硬質被膜表面の拡大写真をコンピュータに取り込むに先だって、表面を平坦面に沿って研磨して空孔部分(凹み部分)を分かり易くし、空孔の面積は硬質被膜表面の単位面積についてその凹み部分の面積を測定することによって求めた。
本実験より以下の関係式が得られた。
【数式1】
L=A×B×(C×S−D) …(1)
ここで、Lは損耗速度(μm/h)であり、Aは定数であり、Bはキャビテーションによる衝撃エネルギーであり、C及びDは硬質被膜の種類(材質及び溶射処理方法)によって決まる定数であって、溶射法(a)に対してはC=0.356、D=0.4651であり、溶射法(b)に対してはC=0.1064、D=0.0512である。また、Sは単位面積当たりの空孔面積率(%)である。Sについては、溶射法(a)では2〜5%、溶射法(b)では0.5〜8%の範囲で実験を行い、確認した。溶射法(a)では5%以上、溶射法(b)では8%以上であっても、上式が成り立つと予想するが、実用上無意味な範囲であると考えられるので、この例では、溶射法(a)に対してはS≧2とし、溶射法(b)に対してはS≧0.5とした。
また、実用上の運転環境では損傷速度0.3mm3/h以下が要求されるため、この条件を満たすように、溶射法(a)及び(b)に基づいて、S=2.2の硬質被膜を製作し、上記同様の実験を行ったところ、得られた損耗速度は、上式で予測した結果とよく一致した。
【0012】
空孔面積率が2%以上では、同じ空孔面積率でも溶射法(a)による被膜は溶射法(b)による被膜より損耗量が多い。これは、溶射法(a)は、溶射後、サーメット被膜中の金属部を再溶融していないため、セラミックス硬質粒子と金属の結合力が弱いことと、溶射法(a)の空孔の多くはセラミックス硬質粒子と金属の境界部に存在していることが原因である。空孔面積率2%以上では、空孔面積率のみで整理できるが、2%以下になると空孔と破壊靭性の影響を考慮しなければならない。
上記のように予測した損耗速度に基づき、基材の表面に溶射法により被覆する被膜で構成される被膜の厚さを決定する。例えば、被膜がキャビテーションの環境条件下にさらされて摩耗した後、補修により被覆し直す場合、上記の予測した損耗速度及び希望する補修周期(次に補修するまでの期間)に基づいて、被膜の厚さが決定される。
【0013】
本発明による被膜で耐キャビテーションエロージョン化を図る流体機械用の構成部材の一例としてポンプのランナすなわち羽根車30が図5で断面図で示されている。
図5において、羽根車30は、回転軸を受ける軸穴31が形成されたハブ32と、そのハブ32から半径方向外側に放射上に広がる円板状の主板33と、主板33から軸方向(図5において上下方向)に隔てられた環状の側板34と、主板33と側板34との間において円周方向(軸穴の軸線O−O回りの円周方向)に等間隔に隔てて配置され所望の曲面に沿って湾曲して側板及び主板と一体的に形成された複数の翼35とで構成されていて、主板33、側板34及び翼35により流体の流れる流路36を画定している。流路36の半径方向内側の部分37が入口部となり、半径方向外側の部分38が出口部となる。また、環状の側板34は、円周方向内側の軸方向に伸びる部分34aと、半径方向外側に伸びる部分34bとを有し、軸方向伸長部分34aによって羽根車30の入口39を画定している。このような羽根車30を回転させて流体を送り出す場合、例えば、羽根車を土砂を含む水中で回転させると、羽根車30の表面、特に羽根車30内の流路36を画定する主板33の内面41、側板34の内面42及び翼35の両面、すなわち圧力面43、負圧面44にキャビテーションが発生し、それらの表面が気泡崩壊時の衝撃エネルギーにより極端に摩耗することになる。
【0014】
そこで、羽根車30の上記流路36を画成する内面41及び42、圧力面43及び負圧面44、入口39の内面45、側板34の外側面46及び主板33の裏面47のうち所望する面に、上記溶射法AないしCのうち適当な溶射法を適宜選んで前述の耐キャビテーションエロージョン溶射被膜を形成する。この場合、溶射を行う面の条件、溶射法の施工条件等を考慮して一つの羽根車に対して溶射する場所により異なる溶射方法を採用することも可能である。
【0015】
上記のように耐キャビテーションエロージョン溶射被膜形成された本発明の羽根車30は、水車或いはポンプのような流体機械に使用される。図6において、このような流体機械の一例として立形ポンプ50が断面で示されている。同図において、ポンプ50は、本発明による羽根車30を収容するポンプ室52を画成するケーシング51と、軸線を鉛直にして配置されていて下端に羽根車30が固定された主軸57と、ケーシングの上方に取り付けられたていて主軸57をケーシングに関して回転自在に支持する主軸受け58と、ケーシング51と主軸57との間からの流体の漏れを防止するシール装置59と、を備えている。ケーシング51は管状の支持台60の上に公知の方法で固定されている。ケーシング51は、上側の円盤状の端板53と、渦巻き状の出口室55を画成するケーシング本体54と、管状のカバー56とを備えている。カバー56の下端には筒状の吸出し管61が接続されている。
上記ポンプにおいて、主軸37を回転させることによってその下端に固定された羽根車30を回転させると、流体が吸出し管61内で矢印Xで示されるように羽根車の入口39に吸い込まれ、羽根車30の流路36を通って出口38側から半径方向に押し出され、出口室55内に流入する。出口室内の流体は、図示しない出口から吐き出される。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば次のような効果を奏することが可能である。
(イ)一般的にキャビテーションエロージョンによる材料の損耗速度は、延性材料では硬さ2/縦弾性係数、脆性材料では破壊靭性2/空孔密度と相関があり、特に、セラミックスと金属を複合した材料を、高圧・高速フレーム溶射法を用いて被覆した硬質被膜は、脆性材料であるので、損耗速度は破壊靭性2/空孔密度と相関があることが予想されるが、被膜の破壊靭性の測定は難しいため、これらの因子を用いて損耗速度を予測することは困難である。しかし、本発明によれば、硬質被膜で形成される被膜の単位面積当りの空孔面積率を用いると精度よく損耗速度を予測することが可能となり、評価実験を実施せずに済むため、時間とコストの大幅な節約となる。
(ロ)運転条件に応じて必要な被膜厚さを算出することが可能となるため、材料費の節約にもなる。
(ハ)損耗速度が予測できるので羽根車等の被覆剤の使用寿命を高い精度で予測可能になり、補修時期の決定を容易に決めること可能で流体機械の保守が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験片及び試験片用の基板の斜視図である。
【図2】本実施例で使用する試験装置の概略構成図である。
【図3】図2に示される試験装置の回転体の一部分の平面図である。
【図4】試験結果を示すグラフ図である。
【図5】本発明の被膜が形成される羽根車の一例を示す断面図である。
【図6】図5の羽根車を備えるポンプの断面図である。
Claims (9)
- セラミックスと金属とを含む複合被膜が液中にさらされる場合における前記複合被膜の損耗速度予測方法おいて、溶射により形成された被膜表面の、単位面積当りの空孔面積率と、前記被膜表面に作用するキャビテーションによる衝撃エネルギーとの関係に基づいて予測することを特徴とする複合被膜の損耗速度予測方法。
- 請求項1に記載の複合被膜の損耗速度予測方法において、
前記予測が次式により行われ、
L=A×B×(C×S+D)
ここにおいて、Lは損耗速度であり、Aは定数であり、Bはキャビテーションによる衝撃エネルギーであり、C、Dは硬質被膜の種類によって決まる定数であり、Sは硬質被膜表面の空孔面積率であり、S≧0.5で成り立つ関係を用いたことを特徴とする複合被膜の損耗速度予測方法。 - 請求項2に記載の複合被膜の損耗速度予測方法において、前記セラミックスが金属炭化物及び金属酸化物の少なくとも1種類を含み、前記被膜が溶射法を用いて形成され、前記定数がC=0.356、D=0.4651であり、前記空孔面積率がS≧2であることを特徴とする複合被膜の損耗速度予測方法。
- 請求項2に記載の複合被膜の損耗速度予測方法において、前記セラミックスが金属炭化物及び金属酸化物の少なくとも1種類を含み、前記被膜が溶射法を用いて形成され、溶射後、金属を溶融させるために加熱処理され、前記定数がC=0.1064、D=0.0512であり、前記空孔面積率がS≧0.5であることを特徴とする複合被膜の損耗速度予測方法。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の複合被膜の損耗速度予測方法において、前記被膜の表面をデジタル画像処理することにより、空孔面積率を算出することを特徴とする複合被膜の損耗速度予測法。
- セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜を溶射法により基材の表面に被覆する被覆方法であって、前記複合被膜の厚を、前記請求項1ないし5のいずれかに記載の方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定することを特徴とする複合被膜の被覆方法。
- 溶射法によって基材の表面に溶着されている、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜であって、前記複合被膜の厚さが、前記請求項1ないし5のいずれかに記載の方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定されていることを特徴とする複合被膜。
- ハブと、前記ハブの周りに円周方向に隔てて取り付けられた複数の翼とを備た羽根車において、
前記羽根車の表面の少なくとも一部に、セラミックスと金属とを含むキャビテーションエロージョン用複合被膜が溶射法によって溶着され、前記複合被膜の厚さが、前記請求項1ないし5のいずれかに記載の方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定されていることを特徴とする羽根車。 - ハブと、前記ハブの周りに円周方向に隔てて取り付けられた複数の翼とを備た羽根車と、
前記羽根車を回転可能に収容する室を画定するケーシングと、
を備え、
前記羽根車の表面の少なくとも一部に、セラミックスと金属とを含む耐キャビテーションエロージョン用複合被膜が溶射法によって溶着され、前記複合被膜の厚さが、前記請求項1ないし5のいずれかに記載の方法を用いて予測した損耗速度に基づき、決定されていることを特徴とする流体機械。
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| JP2002166642A JP2004010973A (ja) | 2002-06-07 | 2002-06-07 | 複合被膜の損耗速度予測方法及びその方法を利用した被覆方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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| JP2004010973A true JP2004010973A (ja) | 2004-01-15 |
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ID=30434130
Family Applications (1)
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| JP2002166642A Withdrawn JP2004010973A (ja) | 2002-06-07 | 2002-06-07 | 複合被膜の損耗速度予測方法及びその方法を利用した被覆方法 |
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2002
- 2002-06-07 JP JP2002166642A patent/JP2004010973A/ja not_active Withdrawn
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