JP2004011830A - 転がり軸受およびそれを用いたファンモータ - Google Patents
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Abstract
【課題】保持器のポケットと転動体の隙間とグリースの増ちょう剤の量と保持器音との関係を明らかにすることによって、低温環境下であっても保持器音の低減を図ることができる転がり軸受を実現する。
【解決手段】内周面に転動軌道を設けた外輪と、外周面に転動軌道を設けた内輪と、外輪と内輪のそれぞれの転動軌道の間に配設された複数の転動体と、転動体を転動自在に係止する複数のポケットを有し樹脂材料で成形された保持器とを備えグリースにより潤滑される転がり軸受において、増ちょう剤の量が20質量パーセント以下であるグリースを用い、半径方向隙間比を0≦δr/Da≦0.09、軸方向隙間比を0≦δa/Da≦0.06に設定する。
【選択図】 図1
【解決手段】内周面に転動軌道を設けた外輪と、外周面に転動軌道を設けた内輪と、外輪と内輪のそれぞれの転動軌道の間に配設された複数の転動体と、転動体を転動自在に係止する複数のポケットを有し樹脂材料で成形された保持器とを備えグリースにより潤滑される転がり軸受において、増ちょう剤の量が20質量パーセント以下であるグリースを用い、半径方向隙間比を0≦δr/Da≦0.09、軸方向隙間比を0≦δa/Da≦0.06に設定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリースにより潤滑される転がり軸受であり、特にファンモータに用いられる転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
掃除機や洗濯機、コタツ等の家電製品、家庭用や自動車用のエアコンディショナ、温風ヒータ、空気清浄機、分煙機等の空調製品、給湯器、パーソナルコンピュータや測定器等に用いられる軸にファンがついたモータ(以下、ファンモータという。)には、樹脂製の保持器を有する転がり軸受が多く用いられている。
【0003】
また、ファンモータに用いられる転がり軸受は、一般に転動体である玉の直径Daと保持器のポケットのポケット面と転動体の転動面との間に設けた軸方向隙間δaとの軸方向隙間比δa/Daを0.08程度、半径方向隙間δrとの半径方向隙間比δr/Daを0.1程度に設定したものであり、潤滑材としては基油にリチウム石鹸系またはジウレア系の増ちょう剤を添加したグリースが使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の転がり軸受においては、低温度環境下で使用された場合にグリースの基油粘度が上昇し、転動体とポケットの隙間に粘度の高い基油が不規則に流入する結果、転動体と保持器が衝突することによる衝突音(以下、保持器音という。)が発生しやすいという問題がある。
【0005】
また、グリースの基油を半固体状にするための増ちょう剤の量が多いと低温時にグリースが固化しやすく流動性が低下して保持器音が更に発生しやすくなるという問題がある。
一方、ファンモータの中で特にエアコンディショナ等の空調製品のファンモータに使用される転がり軸受は、低温環境下の保持器音が僅かなものであってもその低減が要望されるようになってきている。
【0006】
また、電気製品の省エネルギに対する要求が強まっており、転がり軸受には駆動トルクの低減が期待されている。
そこで、本発明は、保持器のポケットと転動体の隙間とグリースの増ちょう剤の量と保持器音との関係を明らかにすることによって、低温環境下であっても保持器音の低減を図ることができる転がり軸受を実現することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、内周面に転動軌道を設けた外輪と、外周面に転動軌道を設けた内輪と、前記外輪と内輪のそれぞれの転動軌道の間に配設された複数の転動体と、該転動体を転動自在に係止する複数のポケットを有し、樹脂材料で成形された保持器とを備え、グリースにより潤滑される転がり軸受において、増ちょう剤の量が20質量パーセント以下であるグリースを用い、前記転動体の直径をDaとし、前記ポケットのポケット面と前記転動体の転動面との間の半径方向隙間をδr、軸方向隙間をδaとして、前記保持器のポケットの形状が、半径方向隙間比δr/Daが0≦δr/Da≦0.09であり、軸方向隙間比δa/Daが0≦δa/Da≦0.06であることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明による転がり軸受の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態を示す半断面図、図2は本発明の保持器を示す斜視図である。
【0009】
図1において、1は転がり軸受であり、グリースにより潤滑される。
2は外輪であり、その内周面に転がり軸受1の転動軌道が設けられている。
3は内輪であり、その外周面に転がり軸受1の転動軌道が設けられている。
4は保持器であり、樹脂材料を射出成形により成形した図2に示すような円環状の部材である。
【0010】
5は転動体としての玉であり、互いの接触を防止する保持器4に係止されて所定のピッチで複数個設けられ、外輪2に設けられた転動軌道とこれに対向する内輪3に設けられた転動軌道との間に転動自在に配設されている。
6はシール部材として密封板であり、玉5の両側に設けられ外輪2の内周面に嵌合して固定され内輪3の外周面に隣接し、外部からの塵芥や泥水の浸入を防止すると共に潤滑材としてのグリースを外輪2と内輪3の間の空間7に封止する。
【0011】
なお、図1に示す矢印Aは転がり軸受1の軸方向を、矢印Rは転がり軸受1の半径方向を示す。
図2において、11はポケットであり、保持器4の円周方向に所定のピッチで複数個設けられており、球面に成形されたポケット面12が形成され、これによって玉5を転動自在に係止する。
【0012】
13は開口部であり、ポケット11の軸方向の一方の側に設けられ、玉5の直径Daより僅かに小さい開口を有しており、玉5をポケット11に挿入する場合の入口となると共に、玉5の挿入後はポケット11からの玉5の脱落を防止するためのストッパの機能を発揮する。
14は保持器柱であり、隣り合うポケット11の間に設けられ、玉5同士が接触しないための隔壁となる。
【0013】
15は爪部であり、開口部13の両側に設けられ、玉5をポケット11へ挿入する際に樹脂材料の弾性を利用しやすいよう略円弧状に成形される。
上記の構成の作用について説明する。
本実施の形態では、内輪3の内周面が図示しないシャフトと嵌合し連動して回転する。外輪2は図示しないハウジング等に固定されている。
【0014】
シャフトが回転する場合は、保持器4に係止され、外輪2と内輪3の転動軌道の間に配置された玉5がそれぞれの転動軌道上をグリースに潤滑されて転動し、固定された外輪2によってシャフトを回転自在に支持する。
この時、外輪2と内輪3の間の空間7に密封板6によって封止されているグリースが、保持器4のポケット11に挿入されている玉5とポケット面12の間に形成されている隙間に入り込み、玉5の転動面とポケット面12の間をその潤滑作用によって潤滑してシャフトを円滑に回転させる。
【0015】
低温環境下においては、グリースの基油粘度が上昇して保持器4のポケット11のポケット面12と玉5の転動面の間の隙間にグリースが不規則に流入し、これによって玉5が保持器4と衝突して保持器4の振動を励起する現象が起こり保持器音を発生させ、増ちょう剤の量が多いと低温環境下でこの傾向が更に強くなる。
【0016】
従って、保持器の振動を抑えて保持器音を低減させるためには、軸方向隙間δaおよび半径方向隙間δrを狭くすることが有効と考えられるが、増ちょう剤の量が多いグリースを低温環境下で使用すると、グリースの粘度の上昇により狭い隙間への潤滑剤の流入が阻害され、潤滑不良の発生に伴う駆動トルクの増大や保持器のポケットの磨耗、保持器音の早期上昇等が懸念される。
【0017】
このため、低温時におけるグリースの増ちょう剤の量と玉5の転動面とポケット面12の軸方向隙間δaと半径方向隙間δrが転がり軸受1の保持器音に及ぼす影響を調べる実験を行った。
なお、軸方向隙間δaおよび半径方向隙間δrはそれぞれ直径隙間とし、実験結果に一般性を持たせるために、玉5の直径Daとの比として無次元数として軸方向隙間比δa/Daおよび半径方向隙間比δr/Daを用いて整理した。
【0018】
実験は、半径方向隙間比が0≦δr/Da≦0.09、軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.06のISOで設定されている呼び番号608(外径φ22、内径φ8)の転がり軸受を用い、外輪2を静止輪、内輪3を回転輪として雰囲気温度0℃および20℃、回転速度1800rpmの実験条件によって行い、そのときの保持器音を評価した。
【0019】
また、保持器音の評価は、各種の基油の流動点と40℃における動粘度を有するグリースを用いて転がり軸受の保持器音を評価し、保持器音の発生が無いものを○、小さいものを△、大きいものを×として判定した。
このようにして実験した増ちょう剤の量の多少による保持器音の評価結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
表1に示すように、雰囲気温度が20℃の場合は、各種のグリースにおいて増ちょう剤の量が25質量パーセント(以下、mass%という。)以下であれば保持器音が発生せずに良好な回転運動を行うことができるが、雰囲気温度が0℃の場合は、各種グリースの増ちょう剤の量が20mass%以下のときのみ保持器音が発生せずに良好な回転運動を行うことができることが判る。
【0021】
また、転がり軸受1の保持器音は、リチウム石鹸等の増ちょう剤の種類には関係せず、増ちょう剤の量によって一義的にその大小が判定されることも同時に判明した。
以上説明したように、本実施の形態においては、0℃等の低温環境下であっても、増ちょう剤の量が20mass%以下のグリースを用い、半径方向隙間比が0≦δr/Da≦0.09、軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.06の転がり軸受によって、保持器音の判定結果で保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができる。
【0022】
上記ように、グリースの増ちょう剤の量が20mass%以下のグリースを用いることによって、転がり軸受の保持器4のポケット11と玉5の軸方向隙間や半径方向隙間を一定の条件で狭く設定すれば保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができるが、グリースには他の性状として基油の動粘度があり、同じ増ちょう剤の量であっても異なった動粘度を有するグリースが存在する。
【0023】
このため、グリースの基油の動粘度と軸方向隙間比δa/Daと半径方向隙間比δr/Daが転がり軸受1の保持器音に及ぼす影響を調べる実験、および軸方向隙間比δa/Daが転がり軸受1の駆動トルクに及ぼす影響を調べる実験を行った。
実験は、半径方向隙間比が0≦δr/Da≦0.09のISOの呼び番号608の転がり軸受を用い、外輪2を静止輪、内輪3を回転輪として雰囲気温度0℃、回転速度1800rpmの実験条件によって行い、そのときの保持器音を評価した。
【0024】
また、保持器音の評価は、グリースの40℃における基油の動粘度を10〜40、40〜90、90〜160mm2/secの3つのグループに分け、ポケット11内の玉5の軸方向隙間のレベル毎に各5個の転がり軸受の保持器音を評価し、保持器音の発生が無いものを○、小さいものを△、大きいものを×として判定した。
【0025】
なお、実験に用いたグリースは、増ちょう剤の量が20mass%以下のグリースである。
このようにして実験した保持器音の評価結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
表2に示すように、グリースの基油動粘度毎に保持器音が発生しない領域が存在することが判る。
すなわち、グリースの40℃における基油の動粘度が10〜40mm2/secのとき、軸方向隙間比δa/Da=0.06以下の領域、基油動粘度が10〜90mm2/secのとき軸方向隙間比δa/Da=0.05以下の領域、基油動粘度が10〜160mm2/secのとき軸方向隙間比δa/Da=0.025以下の領域が保持器音の判定結果で保持器音が発生しない領域となった。
【0027】
なお、転がり軸受1に使用するグリースは、リチウム石鹸系等のグリースの種類には関係せず、基油動粘度によって一義的に保持器音の大小が判定されることも同時に判明した。
また、グリースの基油は単一の種類の基油に限らず、複数の基油を混合しても、複数の基油を混入させても、混合後または混入後に発揮される複合したグリースの基油の動粘度を上記グリースの動粘度として用いれば同様の評価結果を得ることができる。
【0028】
次に、上記と同様の実験条件で軸方向隙間比δa/Daと転がり軸受1の駆動トルクとの関係を求めた。この結果を図3に示す。
図3に示すように、転がり軸受1の駆動トルクは軸方向隙間比δa/Daが0よりも小さくなると急激に上昇し、δa/Daが0以上であれば通常の転がり軸受と同等の駆動トルクであることが判る。
【0029】
これによって、増ちょう剤の量が20mass%以下のグリースを用い、半径方向隙間比が0≦δr/Da≦0.09の転がり軸受において、軸方向隙間比0≦δa/Daを、グリースの40℃における基油の動粘度が10〜40mm2/secのとき軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.06の領域。
もしくは、基油動粘度が10〜90mm2/secのとき軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.05の領域。
【0030】
もしくは、基油動粘度が10〜160mm2/secのとき軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.025の領域に設定することによって、極低温環境下での保持器音の発生がなく、かつ低温環境下において転がり軸受の駆動トルクを増加させることなく、保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができる。
以上のように、転がり軸受の保持器4のポケット11と玉5の隙間を狭くすることによって低温環境下において保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができる。
【0031】
しかし、上記のような玉5とポケット面12の間に非常に狭い隙間を設けたポケット11の形状(以下、対策ポケット形状という。)を全てのポケット11に設けるためには、ポケット11の軸方向位置や半径方向位置およびポケット11の形状を精度よく加工する必要があり、特に樹脂材料で成形される樹脂製の保持器4においては、成形に用いる金型の精度を向上させる必要があり、金型の製作が困難であるため、金型の製作者の労力が増大すると共にその製作のための費用が増大する。
【0032】
そこで、必要な対策ポケット形状の数を求めるため、対策ポケット形状の数による保持器音の低減効果を評価する実験を行った。
実験は、従来の保持器4に対策ポケット形状を円周方向に略等配に点在させて形成し、上記と同様の実験条件によって保持器音を上記と同様にして判定し評価した。その評価結果を表3に示す。
【0033】
なお、本実験に用いた保持器4のポケット11は7個所に設けられている。
【0034】
【表3】
表3に示すように、対策ポケット形状が少なくとも3箇所あれば保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができる。
これによって、対策ポケット形状を保持器の円周方向に略等配に少なくとも3箇所設ければ、保持器音が発生しない転がり軸受とすることができ、樹脂製の保持器を成形する金型の製作が容易となり、金型の製作者の労力を軽減すると共に金型の製作費用を低減することができる。
【0035】
上述したように、本発明の転がり軸受は、特に低温環境下において低騒音を期待されているファンモータに適用した場合に顕著な効果を発揮する。
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、グリースの増ちょう剤の量と軸方向隙間比δa/Daと半径方向隙間比δr/Daの関係により転がり軸受の保持器の形状を設定することによって、低温環境下であっても保持器音を低減した転がり軸受を得ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す半断面図
【図2】本発明の保持器を示す斜視図
【図3】軸方向隙間と駆動トルクの関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 転がり軸受
2 外輪
3 内輪
4 保持器
5 玉
6 密封板
7 空間
11 ポケット
12 ポケット面
13 開口部
14 保持器柱
15 爪部
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリースにより潤滑される転がり軸受であり、特にファンモータに用いられる転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
掃除機や洗濯機、コタツ等の家電製品、家庭用や自動車用のエアコンディショナ、温風ヒータ、空気清浄機、分煙機等の空調製品、給湯器、パーソナルコンピュータや測定器等に用いられる軸にファンがついたモータ(以下、ファンモータという。)には、樹脂製の保持器を有する転がり軸受が多く用いられている。
【0003】
また、ファンモータに用いられる転がり軸受は、一般に転動体である玉の直径Daと保持器のポケットのポケット面と転動体の転動面との間に設けた軸方向隙間δaとの軸方向隙間比δa/Daを0.08程度、半径方向隙間δrとの半径方向隙間比δr/Daを0.1程度に設定したものであり、潤滑材としては基油にリチウム石鹸系またはジウレア系の増ちょう剤を添加したグリースが使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の転がり軸受においては、低温度環境下で使用された場合にグリースの基油粘度が上昇し、転動体とポケットの隙間に粘度の高い基油が不規則に流入する結果、転動体と保持器が衝突することによる衝突音(以下、保持器音という。)が発生しやすいという問題がある。
【0005】
また、グリースの基油を半固体状にするための増ちょう剤の量が多いと低温時にグリースが固化しやすく流動性が低下して保持器音が更に発生しやすくなるという問題がある。
一方、ファンモータの中で特にエアコンディショナ等の空調製品のファンモータに使用される転がり軸受は、低温環境下の保持器音が僅かなものであってもその低減が要望されるようになってきている。
【0006】
また、電気製品の省エネルギに対する要求が強まっており、転がり軸受には駆動トルクの低減が期待されている。
そこで、本発明は、保持器のポケットと転動体の隙間とグリースの増ちょう剤の量と保持器音との関係を明らかにすることによって、低温環境下であっても保持器音の低減を図ることができる転がり軸受を実現することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、内周面に転動軌道を設けた外輪と、外周面に転動軌道を設けた内輪と、前記外輪と内輪のそれぞれの転動軌道の間に配設された複数の転動体と、該転動体を転動自在に係止する複数のポケットを有し、樹脂材料で成形された保持器とを備え、グリースにより潤滑される転がり軸受において、増ちょう剤の量が20質量パーセント以下であるグリースを用い、前記転動体の直径をDaとし、前記ポケットのポケット面と前記転動体の転動面との間の半径方向隙間をδr、軸方向隙間をδaとして、前記保持器のポケットの形状が、半径方向隙間比δr/Daが0≦δr/Da≦0.09であり、軸方向隙間比δa/Daが0≦δa/Da≦0.06であることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明による転がり軸受の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態を示す半断面図、図2は本発明の保持器を示す斜視図である。
【0009】
図1において、1は転がり軸受であり、グリースにより潤滑される。
2は外輪であり、その内周面に転がり軸受1の転動軌道が設けられている。
3は内輪であり、その外周面に転がり軸受1の転動軌道が設けられている。
4は保持器であり、樹脂材料を射出成形により成形した図2に示すような円環状の部材である。
【0010】
5は転動体としての玉であり、互いの接触を防止する保持器4に係止されて所定のピッチで複数個設けられ、外輪2に設けられた転動軌道とこれに対向する内輪3に設けられた転動軌道との間に転動自在に配設されている。
6はシール部材として密封板であり、玉5の両側に設けられ外輪2の内周面に嵌合して固定され内輪3の外周面に隣接し、外部からの塵芥や泥水の浸入を防止すると共に潤滑材としてのグリースを外輪2と内輪3の間の空間7に封止する。
【0011】
なお、図1に示す矢印Aは転がり軸受1の軸方向を、矢印Rは転がり軸受1の半径方向を示す。
図2において、11はポケットであり、保持器4の円周方向に所定のピッチで複数個設けられており、球面に成形されたポケット面12が形成され、これによって玉5を転動自在に係止する。
【0012】
13は開口部であり、ポケット11の軸方向の一方の側に設けられ、玉5の直径Daより僅かに小さい開口を有しており、玉5をポケット11に挿入する場合の入口となると共に、玉5の挿入後はポケット11からの玉5の脱落を防止するためのストッパの機能を発揮する。
14は保持器柱であり、隣り合うポケット11の間に設けられ、玉5同士が接触しないための隔壁となる。
【0013】
15は爪部であり、開口部13の両側に設けられ、玉5をポケット11へ挿入する際に樹脂材料の弾性を利用しやすいよう略円弧状に成形される。
上記の構成の作用について説明する。
本実施の形態では、内輪3の内周面が図示しないシャフトと嵌合し連動して回転する。外輪2は図示しないハウジング等に固定されている。
【0014】
シャフトが回転する場合は、保持器4に係止され、外輪2と内輪3の転動軌道の間に配置された玉5がそれぞれの転動軌道上をグリースに潤滑されて転動し、固定された外輪2によってシャフトを回転自在に支持する。
この時、外輪2と内輪3の間の空間7に密封板6によって封止されているグリースが、保持器4のポケット11に挿入されている玉5とポケット面12の間に形成されている隙間に入り込み、玉5の転動面とポケット面12の間をその潤滑作用によって潤滑してシャフトを円滑に回転させる。
【0015】
低温環境下においては、グリースの基油粘度が上昇して保持器4のポケット11のポケット面12と玉5の転動面の間の隙間にグリースが不規則に流入し、これによって玉5が保持器4と衝突して保持器4の振動を励起する現象が起こり保持器音を発生させ、増ちょう剤の量が多いと低温環境下でこの傾向が更に強くなる。
【0016】
従って、保持器の振動を抑えて保持器音を低減させるためには、軸方向隙間δaおよび半径方向隙間δrを狭くすることが有効と考えられるが、増ちょう剤の量が多いグリースを低温環境下で使用すると、グリースの粘度の上昇により狭い隙間への潤滑剤の流入が阻害され、潤滑不良の発生に伴う駆動トルクの増大や保持器のポケットの磨耗、保持器音の早期上昇等が懸念される。
【0017】
このため、低温時におけるグリースの増ちょう剤の量と玉5の転動面とポケット面12の軸方向隙間δaと半径方向隙間δrが転がり軸受1の保持器音に及ぼす影響を調べる実験を行った。
なお、軸方向隙間δaおよび半径方向隙間δrはそれぞれ直径隙間とし、実験結果に一般性を持たせるために、玉5の直径Daとの比として無次元数として軸方向隙間比δa/Daおよび半径方向隙間比δr/Daを用いて整理した。
【0018】
実験は、半径方向隙間比が0≦δr/Da≦0.09、軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.06のISOで設定されている呼び番号608(外径φ22、内径φ8)の転がり軸受を用い、外輪2を静止輪、内輪3を回転輪として雰囲気温度0℃および20℃、回転速度1800rpmの実験条件によって行い、そのときの保持器音を評価した。
【0019】
また、保持器音の評価は、各種の基油の流動点と40℃における動粘度を有するグリースを用いて転がり軸受の保持器音を評価し、保持器音の発生が無いものを○、小さいものを△、大きいものを×として判定した。
このようにして実験した増ちょう剤の量の多少による保持器音の評価結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
表1に示すように、雰囲気温度が20℃の場合は、各種のグリースにおいて増ちょう剤の量が25質量パーセント(以下、mass%という。)以下であれば保持器音が発生せずに良好な回転運動を行うことができるが、雰囲気温度が0℃の場合は、各種グリースの増ちょう剤の量が20mass%以下のときのみ保持器音が発生せずに良好な回転運動を行うことができることが判る。
【0021】
また、転がり軸受1の保持器音は、リチウム石鹸等の増ちょう剤の種類には関係せず、増ちょう剤の量によって一義的にその大小が判定されることも同時に判明した。
以上説明したように、本実施の形態においては、0℃等の低温環境下であっても、増ちょう剤の量が20mass%以下のグリースを用い、半径方向隙間比が0≦δr/Da≦0.09、軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.06の転がり軸受によって、保持器音の判定結果で保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができる。
【0022】
上記ように、グリースの増ちょう剤の量が20mass%以下のグリースを用いることによって、転がり軸受の保持器4のポケット11と玉5の軸方向隙間や半径方向隙間を一定の条件で狭く設定すれば保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができるが、グリースには他の性状として基油の動粘度があり、同じ増ちょう剤の量であっても異なった動粘度を有するグリースが存在する。
【0023】
このため、グリースの基油の動粘度と軸方向隙間比δa/Daと半径方向隙間比δr/Daが転がり軸受1の保持器音に及ぼす影響を調べる実験、および軸方向隙間比δa/Daが転がり軸受1の駆動トルクに及ぼす影響を調べる実験を行った。
実験は、半径方向隙間比が0≦δr/Da≦0.09のISOの呼び番号608の転がり軸受を用い、外輪2を静止輪、内輪3を回転輪として雰囲気温度0℃、回転速度1800rpmの実験条件によって行い、そのときの保持器音を評価した。
【0024】
また、保持器音の評価は、グリースの40℃における基油の動粘度を10〜40、40〜90、90〜160mm2/secの3つのグループに分け、ポケット11内の玉5の軸方向隙間のレベル毎に各5個の転がり軸受の保持器音を評価し、保持器音の発生が無いものを○、小さいものを△、大きいものを×として判定した。
【0025】
なお、実験に用いたグリースは、増ちょう剤の量が20mass%以下のグリースである。
このようにして実験した保持器音の評価結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
表2に示すように、グリースの基油動粘度毎に保持器音が発生しない領域が存在することが判る。
すなわち、グリースの40℃における基油の動粘度が10〜40mm2/secのとき、軸方向隙間比δa/Da=0.06以下の領域、基油動粘度が10〜90mm2/secのとき軸方向隙間比δa/Da=0.05以下の領域、基油動粘度が10〜160mm2/secのとき軸方向隙間比δa/Da=0.025以下の領域が保持器音の判定結果で保持器音が発生しない領域となった。
【0027】
なお、転がり軸受1に使用するグリースは、リチウム石鹸系等のグリースの種類には関係せず、基油動粘度によって一義的に保持器音の大小が判定されることも同時に判明した。
また、グリースの基油は単一の種類の基油に限らず、複数の基油を混合しても、複数の基油を混入させても、混合後または混入後に発揮される複合したグリースの基油の動粘度を上記グリースの動粘度として用いれば同様の評価結果を得ることができる。
【0028】
次に、上記と同様の実験条件で軸方向隙間比δa/Daと転がり軸受1の駆動トルクとの関係を求めた。この結果を図3に示す。
図3に示すように、転がり軸受1の駆動トルクは軸方向隙間比δa/Daが0よりも小さくなると急激に上昇し、δa/Daが0以上であれば通常の転がり軸受と同等の駆動トルクであることが判る。
【0029】
これによって、増ちょう剤の量が20mass%以下のグリースを用い、半径方向隙間比が0≦δr/Da≦0.09の転がり軸受において、軸方向隙間比0≦δa/Daを、グリースの40℃における基油の動粘度が10〜40mm2/secのとき軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.06の領域。
もしくは、基油動粘度が10〜90mm2/secのとき軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.05の領域。
【0030】
もしくは、基油動粘度が10〜160mm2/secのとき軸方向隙間比が0≦δa/Da≦0.025の領域に設定することによって、極低温環境下での保持器音の発生がなく、かつ低温環境下において転がり軸受の駆動トルクを増加させることなく、保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができる。
以上のように、転がり軸受の保持器4のポケット11と玉5の隙間を狭くすることによって低温環境下において保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができる。
【0031】
しかし、上記のような玉5とポケット面12の間に非常に狭い隙間を設けたポケット11の形状(以下、対策ポケット形状という。)を全てのポケット11に設けるためには、ポケット11の軸方向位置や半径方向位置およびポケット11の形状を精度よく加工する必要があり、特に樹脂材料で成形される樹脂製の保持器4においては、成形に用いる金型の精度を向上させる必要があり、金型の製作が困難であるため、金型の製作者の労力が増大すると共にその製作のための費用が増大する。
【0032】
そこで、必要な対策ポケット形状の数を求めるため、対策ポケット形状の数による保持器音の低減効果を評価する実験を行った。
実験は、従来の保持器4に対策ポケット形状を円周方向に略等配に点在させて形成し、上記と同様の実験条件によって保持器音を上記と同様にして判定し評価した。その評価結果を表3に示す。
【0033】
なお、本実験に用いた保持器4のポケット11は7個所に設けられている。
【0034】
【表3】
表3に示すように、対策ポケット形状が少なくとも3箇所あれば保持器音が発生しない転がり軸受を得ることができる。
これによって、対策ポケット形状を保持器の円周方向に略等配に少なくとも3箇所設ければ、保持器音が発生しない転がり軸受とすることができ、樹脂製の保持器を成形する金型の製作が容易となり、金型の製作者の労力を軽減すると共に金型の製作費用を低減することができる。
【0035】
上述したように、本発明の転がり軸受は、特に低温環境下において低騒音を期待されているファンモータに適用した場合に顕著な効果を発揮する。
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、グリースの増ちょう剤の量と軸方向隙間比δa/Daと半径方向隙間比δr/Daの関係により転がり軸受の保持器の形状を設定することによって、低温環境下であっても保持器音を低減した転がり軸受を得ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す半断面図
【図2】本発明の保持器を示す斜視図
【図3】軸方向隙間と駆動トルクの関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 転がり軸受
2 外輪
3 内輪
4 保持器
5 玉
6 密封板
7 空間
11 ポケット
12 ポケット面
13 開口部
14 保持器柱
15 爪部
Claims (4)
- 内周面に転動軌道を設けた外輪と、外周面に転動軌道を設けた内輪と、前記外輪と内輪のそれぞれの転動軌道の間に配設された複数の転動体と、該転動体を転動自在に係止する複数のポケットを有し、樹脂材料で成形された保持器とを備え、グリースにより潤滑される転がり軸受において、
増ちょう剤の量が20質量パーセント以下であるグリースを用い、
前記転動体の直径をDaとし、前記ポケットのポケット面と前記転動体の転動面との間の半径方向隙間をδr、軸方向隙間をδaとして、
前記保持器のポケットの形状が、半径方向隙間比δr/Daが0≦δr/Da≦0.09であり、軸方向隙間比δa/Daが0≦δa/Da≦0.06であることを特徴とする転がり軸受。 - 請求項1において、
前記保持器のポケットの形状が、略等配に少なくとも3箇所に形成されていることを特徴とする転がり軸受。 - 内周面に転動軌道を設けた外輪と、外周面に転動軌道を設けた内輪と、前記外輪と内輪のそれぞれの転動軌道の間に配設された複数の転動体と、該転動体を転動自在に係止する複数のポケットを有し、樹脂材料で成形された保持器とを備え、グリースにより潤滑される転がり軸受を用いたファンモータにおいて、
増ちょう剤の量が20質量パーセント以下であるグリースを用い、
前記転動体の直径をDaとし、前記ポケットのポケット面と前記転動体の転動面との間の半径方向隙間をδr、軸方向隙間をδaとして、
前記保持器のポケットの形状が、半径方向隙間比δr/Daが0≦δr/Da≦0.09であり、軸方向隙間比δa/Daが0≦δa/Da≦0.06であることを特徴とする転がり軸受を用いたファンモータ。 - 請求項1において、
前記保持器のポケットの形状が、略等配に少なくとも3箇所に形成されていることを特徴とする転がり軸受を用いたファンモータ。
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