JP2004148954A - 空気入りタイヤおよびその装着方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ベルト角度の最適化を図ることにより、タイヤの周方向剛性を維持しながら幅方向剛性を向上させ、その結果、高速走行時に横力を受けた際にも高い旋回性能および直進安定性を発揮する空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、一対のビード部2、ビード部2からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部3および両サイドウォール部3間にまたがって延びるトレッド部4の各部にわたってトロイド状に延びるプライ5a、5bからなるカーカス4を配設し、カーカス4のクラウン部7とトレッド部4との間に、タイヤ周方向に対し傾斜して延びる補強素子10a、10bをゴム被覆してなる2層のベルト層8a、8bからなる主ベルト9を具える。主ベルト9を構成するベルト層8a、8bはいずれも補強素子10a、10bがタイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように積層してなる。
【選択図】 図2
【解決手段】空気入りタイヤ1は、一対のビード部2、ビード部2からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部3および両サイドウォール部3間にまたがって延びるトレッド部4の各部にわたってトロイド状に延びるプライ5a、5bからなるカーカス4を配設し、カーカス4のクラウン部7とトレッド部4との間に、タイヤ周方向に対し傾斜して延びる補強素子10a、10bをゴム被覆してなる2層のベルト層8a、8bからなる主ベルト9を具える。主ベルト9を構成するベルト層8a、8bはいずれも補強素子10a、10bがタイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように積層してなる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、カーカスを補強するためのベルトを有する空気入りタイヤに関するものであり、特にベルトを構成する補強素子のタイヤ周方向に対する角度であるベルト角度の適正化を図ることにより、かかるタイヤの高速走行における旋回性能および直進安定性を向上させる。
【0002】
【従来の技術】
走行中の車両には、路面状態および風などに起因した外乱の影響が常にあり、この外乱がタイヤの操縦安定性に与える影響も大きい。特に、今日では、高速道路網の発達や車両の高出力化を背景として高速走行を行う機会が増えているが、この高速走行において重要となる直進安定性は、上記外乱および操舵によってタイヤに発生する横力の影響を大きく受ける。
【0003】
従来のタイヤ100は、図6(a)に示すように、通常トレッド部101に陸部102と溝103を有する。このようなタイヤ100が横力Fを受けると、図6(b)に示すように、タイヤ100はトレッド踏面幅方向断面内で車両外側SOから内側SIに向けてせん断変形するが、このとき陸部102と溝103との間に剛性段差が存在する結果、陸部102に路面104から浮き上がって接地しなくなる部分が生じやすい。このため、旋回性能が損なわれるとともに操舵によって安定した進路修正ができず、特に高速走行における直進安定性が満足する水準にはなく、改善の余地があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、ベルト角度の最適化を図ることにより、タイヤの周方向剛性を維持しながら幅方向剛性を向上させ、その結果、高速走行時に横力を受けた際にも高い旋回性能および直進安定性を発揮する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明は、一対のビード部、該ビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部および両サイドウォール部間にまたがって延びるトレッド部の各部にわたってトロイド状に延び、かつコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のプライからなるカーカスを配設し、カーカスのクラウン部とトレッド部との間に、タイヤ周方向に対し傾斜して延びる補強素子をゴム被覆してなる2層のベルト層からなる主ベルトを具える空気入りタイヤにおいて、前記主ベルトを構成するベルト層はいずれも補強素子がタイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように積層してなることを特徴とする空気入りタイヤである。
【0006】
ここにいう「同方向に傾斜する」とは、タイヤ周方向をx軸、タイヤ幅方向をy軸とした直交座標を仮定したとき、タイヤ周方向と補強素子とのなす角のうち鋭角が、第1象限および第3象限にある関係、または第2象限および第4象限にある関係をいう。
【0007】
また、プライを構成するコードのタイヤ周方向に対する角度であるプライ角度が鋭角側から測定して45〜90度の範囲であることが好ましい。
【0008】
さらに、カーカスは、コードが互いに交差するよう積層した少なくとも2枚のプライからなることが好ましい。
【0009】
さらにまた、ベルト層を構成する補強素子のタイヤ周方向に対する角度であるベルト角度が鋭角側から測定して5〜85度の範囲であることが好ましく、25〜45度の範囲であることがさらに好ましい。
【0010】
加えて、主ベルトを構成するベルト層は、互いに異なるベルト角度を有することが好ましい。
【0011】
加えてまた、主ベルトの内面を構成する内側ベルト層のベルト角度が、主ベルトの外面を構成する外側ベルト層のベルト角度よりも大きいことが好ましく、5〜30度大きいことがさらに好ましい。
【0012】
また、内側ベルト層の幅が、外側ベルト層の幅よりも広いことが好ましく、外側ベルト層の幅が、内側ベルト層の幅の50〜90%の範囲であることがさらに好ましい。
【0013】
さらに、主ベルトを構成するベルト層のうち少なくとも1層のベルト層を、その幅中心位置がタイヤ赤道面位置からタイヤ幅方向にオフセットされるように配設することが好ましく、オフセットされたベルト層は、オフセット距離がベルト層の15〜35%の範囲であることがさらに好ましい。
【0014】
そして、この発明のタイヤを車両に装着する場合には、タイヤの車両装着姿勢にて、内側ベルト層は、その幅中心位置がタイヤ赤道面位置よりも車両外側にオフセットされるように配設され、かつ外側ベルト層は、その幅中心位置がタイヤ赤道面位置よりも車両内側にオフセットされるように配設されることが好ましい。
【0015】
また、ベルト層を構成する補強素子はモノフィラメントであることが好ましく、複数本のモノフィラメントからなる束コードであることがさらに好ましい。
【0016】
さらに、カーカス外面を構成する最外プライと内側ベルト層は、それぞれを構成するコードと補強素子が、タイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように配設してなることが好ましい。
【0017】
さらにまた、主ベルトの外面上に、主ベルトを実質的に覆う範囲にわたって、コードをらせん巻回してタイヤ周方向に略平行に配列したコードをゴム被覆してなる少なくとも1層の補助ベルトを配設することが好ましい。
【0018】
また、この発明は、前記のような構成を有する空気入りタイヤを車両に装着する方法において、全てのタイヤは、主ベルトを構成するベルト層の補強素子から車両進行方向に引いた延長線が、車両幅中心線と交差するように車両に装着することを特徴とする空気入りタイヤの装着方法である。
【0019】
さらに、この発明は、前記のような構成を有する空気入りタイヤを車両に装着する方法において、全てのタイヤは、主ベルトを構成するベルト層の補強素子が同方向に傾斜するように車両に装着することを特徴とする空気入りタイヤの装着方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明に従う代表的な空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」という。)のタイヤ幅方向断面図であり、図2(a)は、この発明に従う代表的なタイヤの主ベルトを構成するベルト層の一部透視上面図であり、図2(b)は、従来のタイヤの主ベルトを構成するベルト層の一部透視上面図である。
【0021】
図1に示すタイヤ1は、一対のビード部2、該ビード部2からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部3および両サイドウォール部3間にまたがって延びるトレッド部4の各部にわたってトロイド状に延び、かつコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のプライ、図1では2枚のプライ5a、5bからなるカーカス6を配設し、カーカス6のクラウン部7とトレッド部4との間に、タイヤ周方向に対し傾斜して延びる補強素子をゴム被覆してなる2層のベルト層8a、8bからなる主ベルト9を具える。
【0022】
そして、この発明の構成上の主な特徴は、図2(a)に示すとおり、ベルト層8aを構成する補強素子10aおよびベルト層8bを構成する補強素子10bのそれぞれがタイヤ周方向Cに対して同方向に傾斜するように積層してなることにあり、より具体的には、タイヤ周方向をx軸、タイヤ幅方向をy軸とした直交座標を仮定したとき、タイヤ周方向Cに対して補強素子10a、10bをそれぞれ鋭角側から測定したベルト角度θa、θbが、第1象限および第3象限、または第2象限および第4象限、図2(a)では第1象限および第3象限にあるよう積層してなることにある。
【0023】
以下、この発明が上記構成を採用するに至った経緯を作用とともに説明する。発明者は、タイヤの旋回性能を向上させるため鋭意研究を重ね、車両の旋回時には、操舵によりタイヤに舵角が付加され、タイヤに横力が加わるため、前記のように、タイヤはトレッド部踏面幅方向断面内で横方向へとせん断変形し、陸部の一部が浮き上がって路面に接地できなくなり、旋回性能が低下することを見出した。この浮き上がりを抑制するには、ベルト角度θaおよびθbを大きくすることによって主ベルト9の幅方向面外剛性を高めることが有効である。しかし、従来のタイヤでは、図2(b)に示すように、補強素子10a、10bはタイヤ周方向Cに対して異なる方向に傾斜しているため、かかるベルト角度の増大は主ベルト9の周方向剛性の低下を招き、駆動性能が大幅に損なわれることとなる。また、ベルト角度θaまたはθbのいずれか一方のみを大きくすることによって、主ベルト9の周方向剛性を維持しながら幅方向剛性を向上させることも考えられたが、この場合には、補強素子10a、10bの交差角度が大きくなる結果、ベルトのカップリング変形が増大し、トレッド部のせん断変形を抑制させてしまい、その結果、層間せん断歪を増大させ、耐久性が著しく低下する現象が発生し、効果的に主ベルト9の幅方向面外剛性を向上させることができなかった。そこで、発明者は、主ベルト9を2層のベルト層8a、8bで構成し、それぞれのベルト層8a、8bを構成する補強素子10a、10bがタイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように積層すれば、用途に合わせて周方向剛性を制御しながら、上記の溝部の浮き上がりを抑制することが可能となるため、高速走行においても高い旋回性能および直進安定性が得られることを見出し、この発明を完成させるに至ったのである。
【0024】
プライ5a、5bを構成するコードのタイヤ周方向Cに対する角度であるプライ角度が鋭角側から測定して45〜90度の範囲であることが好ましい。かかるプライ角度とすることで、主ベルト9に加えて、カーカス6のタイヤ幅方向剛性が高まる結果、タイヤ1全体としての幅方向剛性も高まり、旋回性能および直進安定性がより一層向上するからである。
【0025】
また、乗心地性を確保する観点からは、カーカス6は、コードが互いに交差するよう積層した少なくとも2枚のプライからなることが好ましい。
【0026】
さらに、ベルト層8a、8bを構成する補強素子のタイヤ周方向Cに対する角度であるベルト角度θa、θbが鋭角側から測定して5〜85度の範囲であることが好ましい。ベルト角度θa、θbが5度未満では主ベルト9の幅方向剛性が不足するからであり、85度を超えると周方向剛性が不足するからである。幅方向剛性と周方向剛性の双方をバランスよく確保する観点からは、ベルト角度θa、θbが鋭角側から測定して25〜45度の範囲であることがさらに好ましい。
【0027】
さらにまた、主ベルト9を構成するベルト層8a、8bのベルト角度θa、θbは互いに異なることが好ましい。一方のベルト角度を大きくして幅方向剛性の向上に寄与させ、他方のベルト角度を小さくして周方向剛性の確保に寄与させることで、旋回性能および直進安定性が一層向上するからである。
【0028】
加えて、主ベルト9の内面を構成する内側ベルト層8aのベルト角度θaが、主ベルト9の外面を構成する外側ベルト層8bのベルト角度θbよりも大きいことが好ましい。内側ベルト層8aの方が主ベルト9の幅方向剛性への寄与が高いことから、θaをθbよりも大きくすることで旋回性能および直進安定性が一層向上するからである。主ベルト9のカップリング変形を抑制するという観点からは、θaはθbよりも5〜30度大きいことがさらに好ましい。
【0029】
加えてまた、内側ベルト層8aの幅Waが、外側ベルト層8bの幅Wbよりも広いことが好ましい。内側ベルト層8aの方が主ベルト9の幅方向剛性への寄与が高いことから、その幅Waを大きくすることで旋回性能および直進安定性が一層向上するからである。主ベルト9の周方向剛性を確保するという観点からは、WbがWaの50〜90%の範囲であることがさらに好ましい。
【0030】
さらに、図3に示すように、主ベルト9を構成するベルト層8a、8bのうち少なくとも1層のベルト層、図3では両方のベルト層8a、8bを、その幅中心位置12a、12bがタイヤ赤道面位置Eからタイヤ幅方向にオフセットされるように配設することが好ましい。オフセット配設とすることで、重なっていない側のベルト端部の層間せん断歪を大幅に低減し、耐久性を向上できるからである。この際、オフセットされたベルト層8a、8bは、オフセット距離da、dbがそれぞれベルト層8a、8bの幅Wa、Wbの15〜35%の範囲であることが、主ベルト9全体の剛性を確保するという点からさらに好ましい。
【0031】
そして、この発明のタイヤ1を車両に装着する場合には、タイヤ1の車両装着姿勢にて、内側ベルト層8aは、その幅中心位置12aがタイヤ赤道面位置Eよりも車両外側SOにオフセットされるように配設され、かつ外側ベルト層8bは、その幅中心位置12bがタイヤ赤道面位置Eよりも車両内側SIにオフセットされるように配設される、すなわち図3のタイヤ1では、タイヤの左側が車両内側となるように装着されることが好ましい。このようにタイヤ1を装着すれば、外側ベルト層8bのベルト角度のみを小さくすることが可能となるため、タイヤ破壊の核となりやすい主ベルト端部の歪レベルが減少し、タイヤの旋回性能と耐久性をバランスよく両立することができるからである。
【0032】
また、ベルト層8a、8bを構成する補強素子10a、10bはモノフィラメントであることが好ましい。補強素子10a、10bがタイヤ周方向Cに対して同方向に傾斜するように積層すると、ベルト層間でセパレーションが起きる可能性が高くなるが、補強素子10a、10bをモノフィラメントとすることで、撚り内部へのゴム浸透の問題がなくなり、ゴムとの接着が向上して、亀裂延展を遅らせることとなり、かかるセパレーションを防止できるからである。補強素子10a、10bが複数本のモノフィラメントからなる束コードであると、コーディングゴムのコード間距離が確保でき、コード方向の歪が低減されるので、セパレーション防止効果が高くなることからさらに好ましい。
【0033】
さらに、カーカス外面を構成する最外プライ5aと、内側ベルト層8aはそれぞれを構成するコードと補強素子が、タイヤ周方向Cに対して同方向に傾斜するように配設してなることが好ましい。かかる配設により、コードと補強素子の相対角度が低減し、層間せん断歪が低下するので、タイヤ全体の周方向剛性を損なうことなく、補強素子10a、10bが傾斜している側の幅方向剛性を向上させることができるからである。
【0034】
さらにまた、図3に示すように、主ベルト9の外面上に、主ベルト9を実質的に覆う範囲にわたって、コードをらせん巻回してタイヤ周方向Cに略平行に配列したコードをゴム被覆してなる少なくとも1層、図3は1層の補助ベルト13を配設することが好ましい。かかる補助ベルト13を配設することにより、タイヤの周方向剛性が向上すると共に、ベルト層8a、8bの端部からのセパレーションを有効に抑制できるからである。
【0035】
次に、上記空気入りタイヤの装着方法について図4および図5を参照して説明する。
図4および図5に示す車両11の旋回時には、前記のように、車両外側SOから内側SIに向けて横力Fがタイヤ1に加わるため、旋回外側のタイヤ、即ち右旋回では車両左側のタイヤ、左旋回では車両右側のタイヤの車両内側SIにより大きな横力Fが作用する。また、前記のような構成を有するタイヤ1は、ベルト層8a、8bを構成する補強素子10a、10bがタイヤ周方向Cに対して同方向に傾斜した、いわゆる非対称タイヤであり、タイヤ赤道面Eを中心としたタイヤの左側と右側では、操舵によりタイヤ1に舵角が付加され時の横力発生(コーナリングフォース)が異なる。
【0036】
そこで、図4に示すように、全てのタイヤ1を、主ベルト9を構成するベルト層の補強素子10a、10bから車両進行方向に引いた延長線La、Lbが、車両幅中心線Yと交差するように車両に装着すれば、より大きな横力Fが作用する旋回外側において、タイヤ1の幅方向剛性の高い側が、より大きな横力Fの作用する車両内側SIに配置されるため、操舵により横力Fがタイヤ1に作用した場合にも、タイヤ1のせん断変形は少なくなり、車両11の旋回性能と直進安定性を向上させることができる。
【0037】
また、オーバルコースのサーキット等を走行する等、片側にしか操舵を行わない車両の場合には、横力Fの作用方向が一定であるので、図5に示すように、全てのタイヤ1を、主ベルト9を構成するベルト層の補強素子10a、10bが同方向に傾斜するように車両に装着すれば、タイヤ1の幅方向剛性の高い側が、より大きな横力Fの作用する旋回方向内側に配置されるため、操舵により横力Fがタイヤ1に作用した場合にも、タイヤ1のせん断変形は少なくなり、車両11の旋回性能を向上させることができる。
【0038】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0039】
【実施例】
次に、この発明に従う空気入りタイヤを試作し、性能評価を行ったので、以下に説明する。
【0040】
実施例1〜7のタイヤは、タイヤサイズが235/45ZR17であり、トレッドパターンがリブパターンであり、プライ角度がそれぞれ80度および110度の2枚のプライを、コードが互いに交差するよう積層させたカーカス(実施例1〜4)、プライ角度が80度の1枚のプライからなるカーカス(実施例5)、プライ角度がそれぞれ90度の2枚のプライを積層させたカーカス(実施例6)、またはプライ角度が90度の1枚のプライからなるカーカス(実施例7)を有し、補強素子が複数本のモノフィラメントからなる束コードであり、表1に示す諸元を有する。
【0041】
比較のため、タイヤサイズ、トレッドパターン、カーカスおよび補強素子が実施例1〜4と同じであり、表1に示す諸元を有するタイヤ(従来例)についても併せて試作した。
【0042】
(試験1)
前記各供試タイヤをJATMAで定める標準リム(8JJ)に組み付けてタイヤ車輪とし、空気圧235kPa(相対圧)を適用し、旋回性能、直進安定性および耐久性についての評価を行った。旋回性能は、これらのタイヤ車輪にJATMAで定める最大負荷能力(650kgf)の70%の負荷(450kgf)を平板上に加え、フラットベルト式試験機を用いて、速度50km/h、タイヤの進行方向と試験機の回転面とのずれを1度とした条件下で、タイヤに加わる横力を測定して評価した。結果を表1に示す。表中の旋回性能は、従来例のタイヤにおける横力(1771N)を100としたときの横力の測定値の指数比であり、数値の大きいほど旋回性能が優れている。
【0043】
また、操縦安定性および直進安定性は、上記のタイヤ車輪各4本を2500ccの後輪駆動車に装着し、左右両コーナーからなるテストコースを、乗員2名で速度60〜120km/hの範囲で直進走行、レーンチェンジ走行等を実施したときのフィーリングをプロのドライバーによって評価した。この際、実施例1〜7のタイヤについては、図4に示す装着方法に従って装着し、さらに実施例3のタイヤについては、内側ベルト層が車両内側にオフセットするように装着した。耐久性は、直進安定性評価のための走行テストを実施した後のタイヤを解剖し、ベルト端に発生しているセパレーションの総延長を目視にて測定した。これらの結果を表1に示す。表中の直進安定性および耐久性は、それぞれ従来例のタイヤを基準としたときの数値差で示してあり、数値差が正で大きいほど操縦安定性、直進安定性および耐久性は優れている。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示す結果から、実施例1〜7のタイヤはいずれも従来例のタイヤに比べて、旋回性能、操縦安定性、直進安定性および耐久性が優れている。
【0046】
(試験2)
上記の実施例2、実施例3および比較例のタイヤ車輪各4本を2500ccの後輪駆動車に装着し、右コーナーのみからなるオーバルコースを、乗員2名で速度60〜120km/hの範囲で走行したときの操縦安定性、直進安定性をプロのドライバーによってフィーリング評価した。この際、実施例2および3のタイヤについては、図5に示す装着方法に従って装着し、さらに実施例3のタイヤについては、内側ベルト層が車両内側にオフセットするように装着した。耐久性は、直進安定性評価のための走行テストを実施した後のタイヤを解剖し、ベルト端に発生しているセパレーションの総延長を目視にて測定した。これらの結果を表2に示す。表中の直進安定性および耐久性は、それぞれ従来例のタイヤを基準としたときの数値差で示してあり、数値差が正で大きいほど直進安定性および耐久性は優れている。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示す結果から、実施例2および3のタイヤはいずれも従来例のタイヤに比べて、操縦安定性、直進安定性および耐久性が優れている。
【0049】
【発明の効果】
この発明により、ベルト角度の最適化を図ることにより、タイヤの周方向剛性を維持しながら幅方向剛性を向上させ、その結果、高速走行時に横力を受けた際にも高い旋回性能および直進安定性を発揮する空気入りタイヤを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に従う空気入りタイヤの幅方向断面図である。
【図2】(a)はこの発明に従う空気入りタイヤの補強素子のタイヤ周方向に対する角度を説明するための図であり、(b)は従来の空気入りタイヤの補強素子のタイヤ周方向に対する角度を説明するための図である。
【図3】この発明に従う他の空気入りタイヤの幅方向断面図である。
【図4】この発明に従う空気入りタイヤの装着方法を説明するための図である。
【図5】この発明に従う空気入りタイヤの他の装着方法を説明するための図である。
【図6】(a)は従来のタイヤの接地状態を示す幅方向略断面図であり、(b)は(a)のタイヤに横力Fが加わった場合の接地状態を示す幅方向略断面図である。
【符号の説明】
1 タイヤ
2 ビード部
3 サイドウォール部
4 トレッド部
5a、5b プライ
6 カーカス
7 クラウン部
8a、8b ベルト層
9 主ベルト
10a、10b 補強素子
11 車両
12a、12b ベルト層幅中心位置
13 補助ベルト
C タイヤ周方向
E タイヤ赤道面
【発明の属する技術分野】
この発明は、カーカスを補強するためのベルトを有する空気入りタイヤに関するものであり、特にベルトを構成する補強素子のタイヤ周方向に対する角度であるベルト角度の適正化を図ることにより、かかるタイヤの高速走行における旋回性能および直進安定性を向上させる。
【0002】
【従来の技術】
走行中の車両には、路面状態および風などに起因した外乱の影響が常にあり、この外乱がタイヤの操縦安定性に与える影響も大きい。特に、今日では、高速道路網の発達や車両の高出力化を背景として高速走行を行う機会が増えているが、この高速走行において重要となる直進安定性は、上記外乱および操舵によってタイヤに発生する横力の影響を大きく受ける。
【0003】
従来のタイヤ100は、図6(a)に示すように、通常トレッド部101に陸部102と溝103を有する。このようなタイヤ100が横力Fを受けると、図6(b)に示すように、タイヤ100はトレッド踏面幅方向断面内で車両外側SOから内側SIに向けてせん断変形するが、このとき陸部102と溝103との間に剛性段差が存在する結果、陸部102に路面104から浮き上がって接地しなくなる部分が生じやすい。このため、旋回性能が損なわれるとともに操舵によって安定した進路修正ができず、特に高速走行における直進安定性が満足する水準にはなく、改善の余地があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、ベルト角度の最適化を図ることにより、タイヤの周方向剛性を維持しながら幅方向剛性を向上させ、その結果、高速走行時に横力を受けた際にも高い旋回性能および直進安定性を発揮する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明は、一対のビード部、該ビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部および両サイドウォール部間にまたがって延びるトレッド部の各部にわたってトロイド状に延び、かつコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のプライからなるカーカスを配設し、カーカスのクラウン部とトレッド部との間に、タイヤ周方向に対し傾斜して延びる補強素子をゴム被覆してなる2層のベルト層からなる主ベルトを具える空気入りタイヤにおいて、前記主ベルトを構成するベルト層はいずれも補強素子がタイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように積層してなることを特徴とする空気入りタイヤである。
【0006】
ここにいう「同方向に傾斜する」とは、タイヤ周方向をx軸、タイヤ幅方向をy軸とした直交座標を仮定したとき、タイヤ周方向と補強素子とのなす角のうち鋭角が、第1象限および第3象限にある関係、または第2象限および第4象限にある関係をいう。
【0007】
また、プライを構成するコードのタイヤ周方向に対する角度であるプライ角度が鋭角側から測定して45〜90度の範囲であることが好ましい。
【0008】
さらに、カーカスは、コードが互いに交差するよう積層した少なくとも2枚のプライからなることが好ましい。
【0009】
さらにまた、ベルト層を構成する補強素子のタイヤ周方向に対する角度であるベルト角度が鋭角側から測定して5〜85度の範囲であることが好ましく、25〜45度の範囲であることがさらに好ましい。
【0010】
加えて、主ベルトを構成するベルト層は、互いに異なるベルト角度を有することが好ましい。
【0011】
加えてまた、主ベルトの内面を構成する内側ベルト層のベルト角度が、主ベルトの外面を構成する外側ベルト層のベルト角度よりも大きいことが好ましく、5〜30度大きいことがさらに好ましい。
【0012】
また、内側ベルト層の幅が、外側ベルト層の幅よりも広いことが好ましく、外側ベルト層の幅が、内側ベルト層の幅の50〜90%の範囲であることがさらに好ましい。
【0013】
さらに、主ベルトを構成するベルト層のうち少なくとも1層のベルト層を、その幅中心位置がタイヤ赤道面位置からタイヤ幅方向にオフセットされるように配設することが好ましく、オフセットされたベルト層は、オフセット距離がベルト層の15〜35%の範囲であることがさらに好ましい。
【0014】
そして、この発明のタイヤを車両に装着する場合には、タイヤの車両装着姿勢にて、内側ベルト層は、その幅中心位置がタイヤ赤道面位置よりも車両外側にオフセットされるように配設され、かつ外側ベルト層は、その幅中心位置がタイヤ赤道面位置よりも車両内側にオフセットされるように配設されることが好ましい。
【0015】
また、ベルト層を構成する補強素子はモノフィラメントであることが好ましく、複数本のモノフィラメントからなる束コードであることがさらに好ましい。
【0016】
さらに、カーカス外面を構成する最外プライと内側ベルト層は、それぞれを構成するコードと補強素子が、タイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように配設してなることが好ましい。
【0017】
さらにまた、主ベルトの外面上に、主ベルトを実質的に覆う範囲にわたって、コードをらせん巻回してタイヤ周方向に略平行に配列したコードをゴム被覆してなる少なくとも1層の補助ベルトを配設することが好ましい。
【0018】
また、この発明は、前記のような構成を有する空気入りタイヤを車両に装着する方法において、全てのタイヤは、主ベルトを構成するベルト層の補強素子から車両進行方向に引いた延長線が、車両幅中心線と交差するように車両に装着することを特徴とする空気入りタイヤの装着方法である。
【0019】
さらに、この発明は、前記のような構成を有する空気入りタイヤを車両に装着する方法において、全てのタイヤは、主ベルトを構成するベルト層の補強素子が同方向に傾斜するように車両に装着することを特徴とする空気入りタイヤの装着方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明に従う代表的な空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」という。)のタイヤ幅方向断面図であり、図2(a)は、この発明に従う代表的なタイヤの主ベルトを構成するベルト層の一部透視上面図であり、図2(b)は、従来のタイヤの主ベルトを構成するベルト層の一部透視上面図である。
【0021】
図1に示すタイヤ1は、一対のビード部2、該ビード部2からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部3および両サイドウォール部3間にまたがって延びるトレッド部4の各部にわたってトロイド状に延び、かつコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のプライ、図1では2枚のプライ5a、5bからなるカーカス6を配設し、カーカス6のクラウン部7とトレッド部4との間に、タイヤ周方向に対し傾斜して延びる補強素子をゴム被覆してなる2層のベルト層8a、8bからなる主ベルト9を具える。
【0022】
そして、この発明の構成上の主な特徴は、図2(a)に示すとおり、ベルト層8aを構成する補強素子10aおよびベルト層8bを構成する補強素子10bのそれぞれがタイヤ周方向Cに対して同方向に傾斜するように積層してなることにあり、より具体的には、タイヤ周方向をx軸、タイヤ幅方向をy軸とした直交座標を仮定したとき、タイヤ周方向Cに対して補強素子10a、10bをそれぞれ鋭角側から測定したベルト角度θa、θbが、第1象限および第3象限、または第2象限および第4象限、図2(a)では第1象限および第3象限にあるよう積層してなることにある。
【0023】
以下、この発明が上記構成を採用するに至った経緯を作用とともに説明する。発明者は、タイヤの旋回性能を向上させるため鋭意研究を重ね、車両の旋回時には、操舵によりタイヤに舵角が付加され、タイヤに横力が加わるため、前記のように、タイヤはトレッド部踏面幅方向断面内で横方向へとせん断変形し、陸部の一部が浮き上がって路面に接地できなくなり、旋回性能が低下することを見出した。この浮き上がりを抑制するには、ベルト角度θaおよびθbを大きくすることによって主ベルト9の幅方向面外剛性を高めることが有効である。しかし、従来のタイヤでは、図2(b)に示すように、補強素子10a、10bはタイヤ周方向Cに対して異なる方向に傾斜しているため、かかるベルト角度の増大は主ベルト9の周方向剛性の低下を招き、駆動性能が大幅に損なわれることとなる。また、ベルト角度θaまたはθbのいずれか一方のみを大きくすることによって、主ベルト9の周方向剛性を維持しながら幅方向剛性を向上させることも考えられたが、この場合には、補強素子10a、10bの交差角度が大きくなる結果、ベルトのカップリング変形が増大し、トレッド部のせん断変形を抑制させてしまい、その結果、層間せん断歪を増大させ、耐久性が著しく低下する現象が発生し、効果的に主ベルト9の幅方向面外剛性を向上させることができなかった。そこで、発明者は、主ベルト9を2層のベルト層8a、8bで構成し、それぞれのベルト層8a、8bを構成する補強素子10a、10bがタイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように積層すれば、用途に合わせて周方向剛性を制御しながら、上記の溝部の浮き上がりを抑制することが可能となるため、高速走行においても高い旋回性能および直進安定性が得られることを見出し、この発明を完成させるに至ったのである。
【0024】
プライ5a、5bを構成するコードのタイヤ周方向Cに対する角度であるプライ角度が鋭角側から測定して45〜90度の範囲であることが好ましい。かかるプライ角度とすることで、主ベルト9に加えて、カーカス6のタイヤ幅方向剛性が高まる結果、タイヤ1全体としての幅方向剛性も高まり、旋回性能および直進安定性がより一層向上するからである。
【0025】
また、乗心地性を確保する観点からは、カーカス6は、コードが互いに交差するよう積層した少なくとも2枚のプライからなることが好ましい。
【0026】
さらに、ベルト層8a、8bを構成する補強素子のタイヤ周方向Cに対する角度であるベルト角度θa、θbが鋭角側から測定して5〜85度の範囲であることが好ましい。ベルト角度θa、θbが5度未満では主ベルト9の幅方向剛性が不足するからであり、85度を超えると周方向剛性が不足するからである。幅方向剛性と周方向剛性の双方をバランスよく確保する観点からは、ベルト角度θa、θbが鋭角側から測定して25〜45度の範囲であることがさらに好ましい。
【0027】
さらにまた、主ベルト9を構成するベルト層8a、8bのベルト角度θa、θbは互いに異なることが好ましい。一方のベルト角度を大きくして幅方向剛性の向上に寄与させ、他方のベルト角度を小さくして周方向剛性の確保に寄与させることで、旋回性能および直進安定性が一層向上するからである。
【0028】
加えて、主ベルト9の内面を構成する内側ベルト層8aのベルト角度θaが、主ベルト9の外面を構成する外側ベルト層8bのベルト角度θbよりも大きいことが好ましい。内側ベルト層8aの方が主ベルト9の幅方向剛性への寄与が高いことから、θaをθbよりも大きくすることで旋回性能および直進安定性が一層向上するからである。主ベルト9のカップリング変形を抑制するという観点からは、θaはθbよりも5〜30度大きいことがさらに好ましい。
【0029】
加えてまた、内側ベルト層8aの幅Waが、外側ベルト層8bの幅Wbよりも広いことが好ましい。内側ベルト層8aの方が主ベルト9の幅方向剛性への寄与が高いことから、その幅Waを大きくすることで旋回性能および直進安定性が一層向上するからである。主ベルト9の周方向剛性を確保するという観点からは、WbがWaの50〜90%の範囲であることがさらに好ましい。
【0030】
さらに、図3に示すように、主ベルト9を構成するベルト層8a、8bのうち少なくとも1層のベルト層、図3では両方のベルト層8a、8bを、その幅中心位置12a、12bがタイヤ赤道面位置Eからタイヤ幅方向にオフセットされるように配設することが好ましい。オフセット配設とすることで、重なっていない側のベルト端部の層間せん断歪を大幅に低減し、耐久性を向上できるからである。この際、オフセットされたベルト層8a、8bは、オフセット距離da、dbがそれぞれベルト層8a、8bの幅Wa、Wbの15〜35%の範囲であることが、主ベルト9全体の剛性を確保するという点からさらに好ましい。
【0031】
そして、この発明のタイヤ1を車両に装着する場合には、タイヤ1の車両装着姿勢にて、内側ベルト層8aは、その幅中心位置12aがタイヤ赤道面位置Eよりも車両外側SOにオフセットされるように配設され、かつ外側ベルト層8bは、その幅中心位置12bがタイヤ赤道面位置Eよりも車両内側SIにオフセットされるように配設される、すなわち図3のタイヤ1では、タイヤの左側が車両内側となるように装着されることが好ましい。このようにタイヤ1を装着すれば、外側ベルト層8bのベルト角度のみを小さくすることが可能となるため、タイヤ破壊の核となりやすい主ベルト端部の歪レベルが減少し、タイヤの旋回性能と耐久性をバランスよく両立することができるからである。
【0032】
また、ベルト層8a、8bを構成する補強素子10a、10bはモノフィラメントであることが好ましい。補強素子10a、10bがタイヤ周方向Cに対して同方向に傾斜するように積層すると、ベルト層間でセパレーションが起きる可能性が高くなるが、補強素子10a、10bをモノフィラメントとすることで、撚り内部へのゴム浸透の問題がなくなり、ゴムとの接着が向上して、亀裂延展を遅らせることとなり、かかるセパレーションを防止できるからである。補強素子10a、10bが複数本のモノフィラメントからなる束コードであると、コーディングゴムのコード間距離が確保でき、コード方向の歪が低減されるので、セパレーション防止効果が高くなることからさらに好ましい。
【0033】
さらに、カーカス外面を構成する最外プライ5aと、内側ベルト層8aはそれぞれを構成するコードと補強素子が、タイヤ周方向Cに対して同方向に傾斜するように配設してなることが好ましい。かかる配設により、コードと補強素子の相対角度が低減し、層間せん断歪が低下するので、タイヤ全体の周方向剛性を損なうことなく、補強素子10a、10bが傾斜している側の幅方向剛性を向上させることができるからである。
【0034】
さらにまた、図3に示すように、主ベルト9の外面上に、主ベルト9を実質的に覆う範囲にわたって、コードをらせん巻回してタイヤ周方向Cに略平行に配列したコードをゴム被覆してなる少なくとも1層、図3は1層の補助ベルト13を配設することが好ましい。かかる補助ベルト13を配設することにより、タイヤの周方向剛性が向上すると共に、ベルト層8a、8bの端部からのセパレーションを有効に抑制できるからである。
【0035】
次に、上記空気入りタイヤの装着方法について図4および図5を参照して説明する。
図4および図5に示す車両11の旋回時には、前記のように、車両外側SOから内側SIに向けて横力Fがタイヤ1に加わるため、旋回外側のタイヤ、即ち右旋回では車両左側のタイヤ、左旋回では車両右側のタイヤの車両内側SIにより大きな横力Fが作用する。また、前記のような構成を有するタイヤ1は、ベルト層8a、8bを構成する補強素子10a、10bがタイヤ周方向Cに対して同方向に傾斜した、いわゆる非対称タイヤであり、タイヤ赤道面Eを中心としたタイヤの左側と右側では、操舵によりタイヤ1に舵角が付加され時の横力発生(コーナリングフォース)が異なる。
【0036】
そこで、図4に示すように、全てのタイヤ1を、主ベルト9を構成するベルト層の補強素子10a、10bから車両進行方向に引いた延長線La、Lbが、車両幅中心線Yと交差するように車両に装着すれば、より大きな横力Fが作用する旋回外側において、タイヤ1の幅方向剛性の高い側が、より大きな横力Fの作用する車両内側SIに配置されるため、操舵により横力Fがタイヤ1に作用した場合にも、タイヤ1のせん断変形は少なくなり、車両11の旋回性能と直進安定性を向上させることができる。
【0037】
また、オーバルコースのサーキット等を走行する等、片側にしか操舵を行わない車両の場合には、横力Fの作用方向が一定であるので、図5に示すように、全てのタイヤ1を、主ベルト9を構成するベルト層の補強素子10a、10bが同方向に傾斜するように車両に装着すれば、タイヤ1の幅方向剛性の高い側が、より大きな横力Fの作用する旋回方向内側に配置されるため、操舵により横力Fがタイヤ1に作用した場合にも、タイヤ1のせん断変形は少なくなり、車両11の旋回性能を向上させることができる。
【0038】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0039】
【実施例】
次に、この発明に従う空気入りタイヤを試作し、性能評価を行ったので、以下に説明する。
【0040】
実施例1〜7のタイヤは、タイヤサイズが235/45ZR17であり、トレッドパターンがリブパターンであり、プライ角度がそれぞれ80度および110度の2枚のプライを、コードが互いに交差するよう積層させたカーカス(実施例1〜4)、プライ角度が80度の1枚のプライからなるカーカス(実施例5)、プライ角度がそれぞれ90度の2枚のプライを積層させたカーカス(実施例6)、またはプライ角度が90度の1枚のプライからなるカーカス(実施例7)を有し、補強素子が複数本のモノフィラメントからなる束コードであり、表1に示す諸元を有する。
【0041】
比較のため、タイヤサイズ、トレッドパターン、カーカスおよび補強素子が実施例1〜4と同じであり、表1に示す諸元を有するタイヤ(従来例)についても併せて試作した。
【0042】
(試験1)
前記各供試タイヤをJATMAで定める標準リム(8JJ)に組み付けてタイヤ車輪とし、空気圧235kPa(相対圧)を適用し、旋回性能、直進安定性および耐久性についての評価を行った。旋回性能は、これらのタイヤ車輪にJATMAで定める最大負荷能力(650kgf)の70%の負荷(450kgf)を平板上に加え、フラットベルト式試験機を用いて、速度50km/h、タイヤの進行方向と試験機の回転面とのずれを1度とした条件下で、タイヤに加わる横力を測定して評価した。結果を表1に示す。表中の旋回性能は、従来例のタイヤにおける横力(1771N)を100としたときの横力の測定値の指数比であり、数値の大きいほど旋回性能が優れている。
【0043】
また、操縦安定性および直進安定性は、上記のタイヤ車輪各4本を2500ccの後輪駆動車に装着し、左右両コーナーからなるテストコースを、乗員2名で速度60〜120km/hの範囲で直進走行、レーンチェンジ走行等を実施したときのフィーリングをプロのドライバーによって評価した。この際、実施例1〜7のタイヤについては、図4に示す装着方法に従って装着し、さらに実施例3のタイヤについては、内側ベルト層が車両内側にオフセットするように装着した。耐久性は、直進安定性評価のための走行テストを実施した後のタイヤを解剖し、ベルト端に発生しているセパレーションの総延長を目視にて測定した。これらの結果を表1に示す。表中の直進安定性および耐久性は、それぞれ従来例のタイヤを基準としたときの数値差で示してあり、数値差が正で大きいほど操縦安定性、直進安定性および耐久性は優れている。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示す結果から、実施例1〜7のタイヤはいずれも従来例のタイヤに比べて、旋回性能、操縦安定性、直進安定性および耐久性が優れている。
【0046】
(試験2)
上記の実施例2、実施例3および比較例のタイヤ車輪各4本を2500ccの後輪駆動車に装着し、右コーナーのみからなるオーバルコースを、乗員2名で速度60〜120km/hの範囲で走行したときの操縦安定性、直進安定性をプロのドライバーによってフィーリング評価した。この際、実施例2および3のタイヤについては、図5に示す装着方法に従って装着し、さらに実施例3のタイヤについては、内側ベルト層が車両内側にオフセットするように装着した。耐久性は、直進安定性評価のための走行テストを実施した後のタイヤを解剖し、ベルト端に発生しているセパレーションの総延長を目視にて測定した。これらの結果を表2に示す。表中の直進安定性および耐久性は、それぞれ従来例のタイヤを基準としたときの数値差で示してあり、数値差が正で大きいほど直進安定性および耐久性は優れている。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示す結果から、実施例2および3のタイヤはいずれも従来例のタイヤに比べて、操縦安定性、直進安定性および耐久性が優れている。
【0049】
【発明の効果】
この発明により、ベルト角度の最適化を図ることにより、タイヤの周方向剛性を維持しながら幅方向剛性を向上させ、その結果、高速走行時に横力を受けた際にも高い旋回性能および直進安定性を発揮する空気入りタイヤを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に従う空気入りタイヤの幅方向断面図である。
【図2】(a)はこの発明に従う空気入りタイヤの補強素子のタイヤ周方向に対する角度を説明するための図であり、(b)は従来の空気入りタイヤの補強素子のタイヤ周方向に対する角度を説明するための図である。
【図3】この発明に従う他の空気入りタイヤの幅方向断面図である。
【図4】この発明に従う空気入りタイヤの装着方法を説明するための図である。
【図5】この発明に従う空気入りタイヤの他の装着方法を説明するための図である。
【図6】(a)は従来のタイヤの接地状態を示す幅方向略断面図であり、(b)は(a)のタイヤに横力Fが加わった場合の接地状態を示す幅方向略断面図である。
【符号の説明】
1 タイヤ
2 ビード部
3 サイドウォール部
4 トレッド部
5a、5b プライ
6 カーカス
7 クラウン部
8a、8b ベルト層
9 主ベルト
10a、10b 補強素子
11 車両
12a、12b ベルト層幅中心位置
13 補助ベルト
C タイヤ周方向
E タイヤ赤道面
Claims (18)
- 一対のビード部、該ビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部および両サイドウォール部間にまたがって延びるトレッド部の各部にわたってトロイド状に延び、かつコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のプライからなるカーカスを配設し、カーカスのクラウン部とトレッド部との間に、タイヤ周方向に対し傾斜して延びる補強素子をゴム被覆してなる2層のベルト層からなる主ベルトを具える空気入りタイヤにおいて、
前記主ベルトを構成するベルト層はいずれも補強素子がタイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように積層してなることを特徴とする空気入りタイヤ。 - プライを構成するコードのタイヤ周方向に対する角度であるプライ角度が鋭角側から測定して45〜90度の範囲である請求項1記載の空気入りタイヤ。
- カーカスは、コードが互いに交差するよう積層した少なくとも2枚のプライからなる請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
- ベルト層を構成する補強素子のタイヤ周方向に対する角度であるベルト角度が鋭角側から測定して5〜85度の範囲である請求項1〜3のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- 主ベルトを構成するベルト層は、互いに異なるベルト角度を有する請求項1〜4のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- 主ベルトの内面を構成する内側ベルト層のベルト角度が、主ベルトの外面を構成する外側ベルト層のベルト角度よりも大きい請求項1〜5のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- 内側ベルト層のベルト角度が、外側ベルト層のベルト角度よりも5〜30度大きい請求項6記載の空気入りタイヤ。
- 内側ベルト層の幅が、外側ベルト層の幅よりも広い請求項1〜7のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- 外側ベルト層の幅が、内側ベルト層の幅の50〜90%の範囲である請求項8記載の空気入りタイヤ。
- 主ベルトを構成するベルト層のうち少なくとも1層のベルト層は、その幅中心位置がタイヤ赤道面位置からタイヤ幅方向にオフセットされるように配設してなる請求項1〜9のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- オフセットされたベルト層は、オフセット距離が該ベルト層の幅の15〜35%の範囲である請求項10記載の空気入りタイヤ。
- タイヤの車両装着姿勢にて、内側ベルト層は、その幅中心位置がタイヤ赤道面位置よりも車両外側にオフセットされるように配設され、かつ外側ベルト層は、その幅中心位置がタイヤ赤道面位置よりも車両内側にオフセットされるように配設してなる請求項10または11記載の空気入りタイヤ。
- ベルト層を構成する補強素子はモノフィラメントである請求項1〜12のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- ベルト層を構成する補強素子は複数本のモノフィラメントからなる束コードである請求項13記載の空気入りタイヤ。
- カーカス外面を構成する最外プライと内側ベルト層は、それぞれを構成するコードと補強素子が、タイヤ周方向に対して同方向に傾斜するように配設してなる請求項1〜14のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- 主ベルトの外面上に、主ベルトを実質的に覆う範囲にわたって、コードをらせん巻回してタイヤ周方向に略平行に配列したコードをゴム被覆してなる少なくとも1層の補助ベルトを配設した請求項1〜15のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- 請求項1〜16のいずれか一項記載の空気入りタイヤを車両に装着する方法において、全てのタイヤは、主ベルトを構成するベルト層の補強素子から車両進行方向に引いた延長線が、車両幅中心線と交差するように車両に装着することを特徴とする空気入りタイヤの装着方法。
- 請求項1〜16のいずれか一項記載の空気入りタイヤを車両に装着する方法において、全てのタイヤは、主ベルトを構成するベルト層の補強素子が同方向に傾斜するように車両に装着することを特徴とする空気入りタイヤの装着方法。
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