JP2004183191A - 伸縮性紡績糸及び織編物並びにその製造方法 - Google Patents

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実 増田
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安穂 早戸
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一廣 小森
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正史 竹内
Taizo Ishida
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Abstract

【課題】天然繊維特有の質感であるナチュラル感、ソフト感及びふくらみ感を有する織編物でありながら、合成繊維の主要な機能性である伸縮性、弾発性を併せ持つ高品位な伸縮性織編物を製造しうる伸縮性紡績糸の提供を技術的課題とする。
【解決手段】天然繊維及び/又はセルロース系繊維を包含する短繊維が鞘部に配され、かつ合成繊維が芯部に配された複重層紡績糸において、該複重層紡績糸の双糸が長手方向に二重らせん構造を有するコイル状構造糸であることを特徴とする伸縮性紡績糸。該双糸が二重らせん構造を有するコイル状構造をとることで、二本の単糸間に空隙ができ、この空隙の存在が織編物における伸縮性、弾発性及びふくらみ感に深く関与する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二重らせん構造を有するコイル状構造糸及びその製造方法、並びにコイル状構造糸を使用した織編物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、糸条に撚糸−熱セット−解撚を施して捲縮を付与し、織編物に嵩高性と伸縮性を発現させる仮撚加工は、熱セット性を有する合成繊維における差別化加工の代表的手法である。この仮撚加工を高度精密化した技術を用いて、いわゆる「新合繊」が誕生したのは周知である。この「新合繊」は、元来天然繊維を模倣することから始まったものだが、市場ニーズに次々と答えることで、この「新合繊」を使用した織編物の中には目標とする天然繊維織編物より高い質感と機能を持ち合わせる商品まで上市されるようになった。
しかしこの「新合繊」織編物も万能でなく、高い質感を追求すれば、糸加工から染色加工に至る全工程において高次加工が必要となり、天然繊維の質感と同格以上に仕上げると、かえってコスト高になる問題が生じ、用途が高級ゾーンに限られるなど問題もあった。
また、ここ数年は急速に人々の志向が多様化し、従来の「新合繊」では市場ニーズに応答できないケースが出始めてきた。
【0003】
このような状況を反映し、「新合繊」織編物にはない質感を持つ多機能繊維の開発が切望され、我々は特に「新合繊」織編物が不得意とする伸縮性に着目して新たな繊維を開発した(例えば、非特許文献1参照)。この繊維は、二種のポリエステル系重合体をサイドバイサイド型に貼り合わせた構造を持つ潜在捲縮糸で、中〜強撚領域の加撚により、伸縮性、弾発性及びふくらみ感を織編物上で表現できる効果を奏す。この繊維からなる織編物は主にアウター、ボトム分野で注目され、さらに応用商品として、例えば上記潜在捲縮糸と自発伸長糸とを混繊処理して得られる加工糸で構成されたウール調織編物や、上記潜在捲縮糸と異型断面糸とを混繊処理して得られる加工糸で構成されたシルキー調織編物など、「新合繊」の技術思想を適用したことで、さらなる用途展開が可能となった。
一方で、「新合繊」がここしばらくの間市場の中心にあったことで、本来の素材(天然繊維)への回帰が見られ、天然繊維本来の質感と合成繊維の高い機能性を併せ持つ商品の開発が進められている。一例を示すと、天然繊維と合成繊維とを合撚又は混繊させた糸条を用いた長短繊維複合織編物がこれに該当する。
【0004】
しかしながら、この長短繊維複合織編物は、織編物の表面に合成繊維が露出し、上記した「天然繊維への回帰」という要望に十分応答するに至っていない。
したがって、天然繊維の質感へ合成繊維の機能性を加味した織編物、すなわち天然繊維特有の質感であるナチュラル感、ソフト感及びふくらみ感を有する織編物でありながら、合成繊維の主要な機能性である伸縮性、弾発性を併せ持つ織編物の出現が求められている。
この要望に対し、一般的に実施されている方法は、弾性フィラメントの回りへ天然繊維をカバリングした糸条を製織編する方法である。しかしこのカバリング糸は、弾性フィラメントの伸縮性を生かすために、天然繊維の割合をあまり多くすることができず、織編物へソフト感を十分に付与できないという問題を有していた。そこで、天然繊維を弾性フィラメントの回りに緊密に配置する方法が提案されたが、得られたカバリング糸は、硬く緻密なため、依然として問題が残された。
これを解決するため、弾性フィラメントの回りへ天然繊維がカバリングされたカバリング糸と、別に用意された非弾性糸とが、該カバリング糸の撚方向と逆方向に特定の撚数で合撚されている複合糸が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この発明は、非弾性糸がカバリング糸の剛直さを低減させるという作用を利用したもので、織編物へ伸縮性とソフト感を付与できるのは勿論、非弾性糸がカバリング糸の伸縮性を適度に抑えるため、生折れやカーリングなども抑制できるという内容のものである。
【0005】
一方、上記問題に対し我々は、合成繊維の加工糸を製造する技術思想でもって糸条を作製し、織編物へ伸縮性及び弾発性を発現させた。すなわち、合成繊維と天然繊維の芯鞘構造紡績糸を仮撚し、さらに得られた仮撚糸へ熱水処理を施すことで、織編物へ嵩高性、伸縮性及び弾発性を表現できる伸縮性紡績糸を提案した(例えば、特許文献2参照)。
この伸縮性紡績糸は鞘部に天然繊維が配されていることから、織編物へソフト感、ナチュラル感、仕立て映えの他、吸湿性などの機能性を付与することができる。
【0006】
【非特許文献1】
繊維学会誌(繊維と工業)Vol.58(2002)P220〜223
【特許文献1】
特許2769080号公報(請求項1、〔0005〕、〔0037〕)
【特許文献2】
特許3081971号公報(請求項1、〔0014〕、〔0017〕)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1にかかる発明は、カバリング糸を合撚するため、該カバリング糸のトルクが影響し、合撚条件が厳格な上、品位が安定しないという問題を残している。
そして、特許文献2にかかる発明は、製織編前に紡績糸が熱水処理という熱履歴を受けている。したがって、リラックス工程で織編物へ伸縮性を付与する効果が乏しく、その結果、織編物の密度を甘めにしなければならないという設計上の制約を受けることとなり、商品バリエーションに限りがあるという問題を残している。
本発明は、この様な現状に鑑みて行われたものであり、天然繊維特有の質感であるナチュラル感、ソフト感及びふくらみ感を有する織編物でありながら、合成繊維の主要な機能性である伸縮性、弾発性を併せ持つ高品位な伸縮性織編物を製造しうる伸縮性紡績糸の提供を技術的課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、天然繊維及び/又は再生繊維を含有する短繊維が鞘部に配され、合成繊維が芯部に配された複重層紡績糸において、従来の技術思想から脱却し、該複重層紡績糸の持つ特異的性質に着目した結果、双糸によって長手方向に二重らせん構造を形成することで上記問題点を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は次の(1)〜(9)を要旨とするものである。
(1)天然繊維及び/又は再生繊維を含有する短繊維が鞘部に配され、かつ合成繊維が芯部に配された複重層紡績糸からなり、該複重層紡績糸の双糸が長手方向に二重らせん構造を有するコイル状構造糸であることを特徴とする伸縮性紡績糸。
(2)前記複重層紡績糸の撚係数Kが3.0〜6.5であることを特徴とする(1)記載の伸縮性紡績糸。
ただし、K=T/S1/2 ここで、K:撚係数 S:複重層紡績糸番手 T:1インチ間の撚数
(3)前記合成繊維が、極限粘度の異なる少なくとも二種類のポリエステル系重合体をサイドバイサイド型あるいは偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性複合繊維であることを特徴とする(1)又は(2)記載の伸縮性紡績糸。
(4)前記複重層紡績糸中に占める前記合成繊維の質量割合が15〜60質量%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の伸縮性紡績糸。
(5)繊度が10〜120番手であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の伸縮性紡績糸。
(6)前記複重層紡績糸を二本引き揃えて合糸し、撚係数K2.5〜9.0の加撚後、70〜130℃で30〜50分の蒸気セットを施し、前記加撚と逆方向でかつ前記加撚と撚係数差1.3〜2.6を有する撚係数K1.1〜10.0の解撚を施して捲縮発現させることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の伸縮性紡績糸の製造方法。
ただし、K=T/S1/2 ここで、K:撚係数 S:複重層紡績糸二本合糸の番手 T:1インチ間の撚数
(7)前記合成繊維が、弾性フィラメントであることを特徴とする(1)又は(2)記載の伸縮性紡績糸。
(8)前記弾性フィラメントの繊度が10〜80dtexであることを特徴とする(7)記載の伸縮性紡績糸。
(9)(1)〜(5)、(7)、(8)のいずれかに記載の伸縮性紡績糸を構成糸の20質量%以上使用していることを特徴とする織編物。
【0009】
以上の如く、本発明の伸縮性紡績糸は複重層紡績糸の双糸であって、二重らせん構造を有するコイル状構造を呈することで、二本の複重層紡績糸の間に空隙ができ、この空隙の存在が織編物における伸縮性、弾発性及びふくらみ感に深く関与する。
また、複重層紡績糸の撚係数が上がれば紡績糸の機械的強度は増すが、織編物に与えるソフト感は低減する。したがって、上記(2)の如く適度な撚係数を設定することで、互いの調和を保つことができる。
さらに、複重層紡績糸の芯部に配される合成繊維は、潜在捲縮性複合繊維であるのが望ましい。こうすることで、織編物へ新たにドレープ性を与えるだけでなく、弾発性とふくらみ感をさらに付与させることができる。
一方、織編物の伸縮性を特に向上させたい場合は、複重層紡績糸の芯部へ弾性フィラメントを配すれば該弾性フィラメントが具備する伸縮性と二重らせん構造が有するスプリング効果との相乗効果が生まれ、良好な伸縮性が発現する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳説する。
まず、複重層紡績糸の鞘部について説明する。
鞘部へは、天然繊維及び/又は再生繊維を含有する短繊維が配される。
本発明において天然繊維とは、綿、麻、絹、羊毛などを指し、再生繊維とは、ビスコースレーヨン、キュプラ、溶剤紡糸セルロース繊維などを指す。そして、これらの短繊維からなるステープルは繊度・平均繊維長共特に限定されない。
【0011】
鞘部へは、上記で列挙した各種の天然繊維及び再生繊維の内、目的に応じて選択された一種以上の繊維と他糸とを複合した短繊維が配されてもよい。混合する他糸は、用途に応じ通常使用される短繊維であれば特に限定されない。例えばポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン、ポリオレフィンなどの合成繊維、トリアセテートなどの半合成繊維などがあげられる。混合する他糸が元来長繊維ならば、単糸繊度1〜3dtexのフィラメントを選び、平均繊維長30〜60mmに切断してステープルにした上で使用する。これは、一般的に異種繊維を混合する場合、鞘部を構成するステープル間の均斉度を高くするには、繊度及び平均繊維長は混合相手に近づけるのがよいとされるため、3dtexより太くなれば、鞘部を構成するステープル全体が当該繊度となり、織編物にソフト感を付与するのが難しくなるので好ましくない。また、1dtex未満では張り腰感を付与しづらくなるので好ましくない。
さらに、平均繊維長が60mmより長くなれば、鞘部を構成するステープル全体が当該平均繊維長となり、ステープル相互の重なり部分が大きくなる。よって、複重層紡績糸表面の毛羽が低減することから織編物へナチュラル感を付与するのが難しくなるので好ましくない。また、30mm未満になるとステープル相互の重なり部分が小さくなり、可紡性の観点から必然的に複重層紡績糸が太くなり、薄地分野の織編物が作製できなくなるので好ましくない。
なお、フィラメント切断前にスタッフイングボックスを用いる機械捲縮付与、あるいは加熱処理による捲縮付与なども目的に応じて任意に行うこともできる。
【0012】
一方、混合方法及び混合比率は特に限定されない。混合方法は、例えば混打綿工程でそれぞれの繊維原料を混ぜ合わせ、カード、練条、粗紡を経る方法、もしくはそれぞれの繊維原料を単独でカード工程まで紡績した後、練条工程にてスライバーで合せる方法、又はそれぞれの繊維原料を単独に練条し、複数のスライバーを引き揃えて粗紡する方法などがある。さらに、意匠性を向上したい場合は、光沢を有する繊維原料や既に染着された繊維原料などを使用する。例えば製造時に着色剤を混用して製造された原着糸又は先染糸からなる繊維原料、あるいは光沢の異なる異型断面糸又は艶消剤の含有量が異なる繊維などからなる繊維原料を適当量混ぜることで、仕上加工後に光沢や色相の異なる杢感を表現できる。
【0013】
混合比率は、目的に応じ任意に決定してよいが、好ましくは、上記で列挙した各種の天然繊維及び再生繊維の内の少なくとも一種を、当該複重層紡績糸の鞘部に合計50質量%以上含有させるのがよい。これは、コスト、可紡性に加え、用いられる繊維本来の特徴を生かすためで、50質量%未満になると、当該織編物において、混合相手の繊維による干渉によって前記天然繊維又は再生繊維の風合いが低減される場合があり、好ましくない。
したがって、総合的に判断すれば、溶剤紡糸セルロース繊維(例えば「リヨセル(登録商標)」(レンチング社製)、「テンセル(登録商標)」(コートルズ社製)もしくは「モダール(登録商標)」(レンチング社製))、綿、あるいは羊毛のいずれかを単独で使用するのが特に望ましい。
単独使用することで、用いられる繊維本来の特徴が最大限生かされるため実用的でかつ用途展開が計りやすく、さらに、既存設備をそのまま使用するか又は若干の変更のみで製造可能であることから、コスト面でも優れるためである。
【0014】
ただし、溶剤紡糸セルロース繊維及び綿のようなセルロース系繊維だけで鞘部を構成することは、織編物の吸水・吸湿性やソフト感、ふくらみ感をより向上させる効果を奏する一方、セルロース系繊維織編物特有の欠点を誘発する場合がある。すなわち、家庭洗濯時に湿潤状態で揉まれると当該セルロース系繊維織編物が摩擦を受け、ステープルが繊維軸方向に割繊し、フィブリル化が発生して織編物表面に毛羽が立つ欠点や、洗濯時のシワが通常の家庭乾燥では簡単に消滅しないといった欠点、あるいは、縫製時において、織編物の伸縮率変動により縫い糸との間に物理的糸長差が生じ、パッカリングを誘発するといった欠点などである。この場合、これらの欠点をなるべく抑えるために白化防止加工や形態安定加工を施すのが望ましい。
前記加工は公知法に準じて行えばよく、設備、効率などを考慮して、紡績工程中もしくは後述する伸縮性紡績糸とした後、あるいは製織編後の仕上加工工程中あるいは縫製商品とした後のいずれかでも行うことができる。一例を示すと、白化防止加工は、織編物に対し、エキソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ、セルビアーゼなどのセルロース分解酵素で処理した後、ポリウレタン樹脂含有水溶液に浸漬する。また形態安定加工は、仕上加工工程において撥水加工を施した後、ホルムアルデヒドによる気相加工を施す。
【0015】
一方、鞘部を羊毛のみで構成した場合は、高級感があり仕立て映えに優れるなど感性面で秀でる効果を奏する。しかし、羊毛は家庭洗濯の際、大きく収縮しフェルト化する欠点があり、これを改善するため防縮加工を施すのが望ましい。該防縮加工も上述のセルロース系繊維と同様、紡績から縫製後に至るいずれかの段階で行われる。この防縮加工も公知法に準じて実施され、例えば、(1)羊毛繊維ステープルのスケールを次亜塩素酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌール酸ナトリウムなどの塩素化剤あるいはモノ過硫酸、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤で脱離させ、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂で被覆する方法、(2)羊毛繊維ステープルのスケールを合成高分子で被覆する方法、(3)低温プラズマ処理、コロナ放電処理などで繊維表面を改質することにより、羊毛繊維ステープルの摩擦係数の異方性を少なくする方法、があげられるが、操業性、コスト、防縮効果の調和を勘案して、紡績工程時の羊毛繊維スライバーへ(1)の方法を適用するのが望ましい。
【0016】
次に、複重層紡績糸の芯部について説明する。
芯部へ配される繊維は、合成繊維であることが重要である。繊維形態は長・短繊維いずれでもよいが、ソフト感、嵩高性などの質感、吸水・吸湿性などの機能面を考慮し、短繊維が好ましく用いられる。繊維の種類は、熱セット性が良好であれば特に限定されないが、好ましくは通常のポリエステル又は通常のポリアミド、さらに好ましくは、極限粘度の異なる少なくとも二種類のポリエステル系重合体をサイドバイサイド型あるいは偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性複合繊維を用いるのがよい。該潜在捲縮性複合繊維を用いると織編物へ新たにドレープ性を与えるだけでなく、弾発性とふくらみ感をさらに向上させることができる。
芯部へ配される合成繊維が短繊維の場合は、例えば次のような方法により効率良く製造することができる。
ポリエステル重合体又はポリアミド重合体を複数の紡糸孔が穿設された紡糸口金から溶融紡糸し、紡出長繊維群を冷却した後引き取り、集束して10万dtex程度を超える未延伸トウとし、得られた未延伸トウを例えば複数段熱ローラ延伸装置を用い延伸して延伸トウとし、所定長に切断して短繊維とした後、混打綿、カード、練条を経てスライバーとする。このとき繊度・平均繊維長は任意に選択可能であるが、後に天然繊維や再生繊維と共に後述の伸縮性付与加工を施すので、均斉度の関係上、繊度1〜3dtex、平均繊維長30〜60mmが望ましい。
【0017】
また、上記短繊維の断面形状は、何ら限定されるものでなく、丸型、楕円型、菱型、三角型、T字型、井型など任意の形状でよい。さらに該短繊維には、必要に応じて、例えば艶消剤、顔料、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加することもできる。さらには、短繊維に切断する前にスタッフイングボックスを用いる機械捲縮付与、あるいは加熱処理による捲縮付与などを施してもよい。
【0018】
一方、潜在捲縮性複合繊維の場合も、長・短繊維いずれでもよいが、上記と同様、短繊維が好ましく用いられる。潜在捲縮性複合繊維とは、極限粘度の異なる少なくとも二種類のポリエステル系重合体がサイドバイサイド型あるいは偏心芯鞘型に接合された断面形状を有する複合繊維の総称で、沸水による熱処理で優れた伸長率と弾性率を示す三次元スパイラル捲縮を発現する。つまり、高粘度ポリエステル系重合体が高収縮性を示し、低粘度ポリエステル系重合体が低収縮性を示すため、熱処理を施すことによって、両者間に収縮差が生じ、捲縮を発現すことができるのである。
本発明では、この内、極限粘度が異なる二種類のポリエステル系重合体をサイドバイサイド型に貼り合わせた断面形状を有する複合繊維が好ましく用いられる。ここでいう極限粘度は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合溶媒を用い、濃度0.5g/100、温度20℃で測定した値から求めたものである。
該複合繊維を構成する極限粘度の異なる二種類のポリエステル系重合体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレートなどを採用することができるが、PET、もしくはエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする共重合体(以下、PET共重合体)が特に好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてイソフタル酸、2・2−ビス{4−(β−ヒドロキシ)フェニル}プロパンなどの共重合成分や、酸化チタンなどの艶消剤、ヒンダートフェノール系化合物などの酸化防止剤、顔料、難燃剤、抗菌剤、導電性付与剤、セラミックスなどの特性付与剤が適宜配合されていてもよい。高粘度及び低粘度成分の極限粘度は、それぞれ0.55〜0.80、0.5〜0.75程度であればよい。
また、二種類のポリエステル系重合体の極限粘度差は、0.01〜0.3であることが好ましい。0.01未満では、上記潜在捲縮性複合繊維が十分な伸長率及び弾性率を発現せず、0.3を越える場合は、紡糸口金から吐出される重合体の流れが不規則となり、安定した紡糸が困難となる場合がある。
【0019】
潜在捲縮性複合繊維を短繊維で用いる場合、170℃における自由収縮熱処理で50個/25mm以上のスパイラル捲縮(測定法はJIS−L1015−7−12−1に準拠)を発現することが望ましい。スパイラル捲縮が50個/25mm未満の場合、織編物組織の拘束に打ち勝つだけの収縮応力が得られないため好ましくない。
また、カード工程でネップや未開繊部の発生しない原料とすることも必要である。一般にネップや未開繊部の発生は、捲縮数及び捲縮形態と密接な関係にあるので、8〜18個/25mmの機械捲縮を付与した複合繊維を用いるのが望ましい。付与した機械捲縮数が8個/25mm未満であると、未開繊部が発生しやすく、また18個/25mmを超えるとネップが発生しやすい。
なお、機械捲縮を付与する手段としては、スタッフィングボックス、加熱ギヤなどが採用できるが、短繊維の場合には、一般にスタッフィングボックスが採用される。
本発明では、潜在捲縮性複合繊維を用いる場合でも、既述したように短繊維が好ましく用いられる。紡糸条件は、従来のポリエステル系潜在捲縮性複合繊維に準じ、既述したポリエステル系重合体又はポリアミド重合体の場合と同様、延伸トウの切断し、混打綿、カード、練条を経てスライバーとする。なお、機械捲縮付与は延伸トウの切断前に行われる。
ステープルの繊度・繊維長は任意に選択可能であるが、後に天然繊維や再生繊維と共に後述の伸縮性付与加工を施すので、均斉度の関係上、繊度1〜3dtex、平均繊維長30〜60mmが望ましい。
【0020】
次に、合成繊維が芯部へ配され、天然繊維及び/又は再生繊維を含有する短繊維が鞘部へ配された複重層紡績糸の製法について説明する。
本発明に用いる複重層紡績糸は、前記二繊維が共に短繊維である場合、粗紡あるいは精紡工程で芯鞘構造とすることができ、芯部の合成繊維が長繊維である場合は、精紡工程で芯鞘構造とすることができる。
【0021】
まず、芯・鞘部がいずれも短繊維の場合について説明する。
粗紡工程で芯鞘構造とする場合は、前記二繊維それぞれのスライバーを既述の方法で用意し、粗紡機により芯鞘構造の粗糸を作製した後、精紡する。すなわち、二繊維のスライバーを並列して粗紡機へ給糸する際、芯部をなす合成繊維(以下R1)のスライバーへ、天然繊維及び/又は再生繊維を含有する短繊維(以下R2)のスライバーを巻きつけるべく、R1スライバーをフライヤーヘッドより見てドラフト域の外側へ給糸し、R2スライバーを内側に給糸する。ドラフト域で所定の太さにドラフトされ、フロントローラーからそれぞれ繊維束として紡出される時、R1繊維束はドラフト軸(R1の糸道)方向の延長線と、フロントローラーのニップ点及びフライヤーヘッドとを結ぶ線とのなす角を、水平面に投影した角度25〜60°で好ましく紡出される。R2繊維束はそのまま直進し、R1繊維束及びR2繊維束は合糸されるが、ここでフライヤーの回転により生ずる撚りを、R1繊維束へ集中伝播させると共に、R2繊維束への撚りの伝播を皆無とさせることで、R1繊維束にR2繊維束をカバリング(芯鞘構造)することができる。簡単にいえば撚転作用を利用して芯鞘構造とする。ここで上記角度が25°未満であると被覆繊維束(R2)のコイルピッチが長すぎて芯部(R1)が外部へ露出しやすくなる。また60°を超えると、被覆繊維束(R2)のコイルピッチが短すぎて、被覆繊維束に重なりが生じ、粗糸に太さ斑が発生やすくなる。さらに、R1繊維束へR2繊維束が完全に捲き付くためには、R1繊維束はR2繊維束より紡出張力が高いことが重要である。これはフライヤーヘッドから生じる撚転作用でR1繊維束へR2繊維束が捲き付くが、R1繊維束とR2繊維束の紡出張力が同じなら合撚(交撚)糸状に、またR1繊維束の紡出張力がR2繊維束より小さければ芯と鞘が逆転することになる。紡出張力に差を付けるには紡出時、R1繊維束をR2繊維束より低フィードとすればよい。それにはフロントボトムローラーの径に差を付ければよく、径の小さい側へR1繊維束を、大きい側へR2繊維束を給糸する。
かくして、芯鞘構造の繊維束はフライヤーを通過して粗糸として巻き取られ、得られた粗糸は公知の方法で精紡され、本発明に用いる複重層紡績糸となる。
【0022】
一方、精紡工程で芯鞘構造とする場合もその原理は粗紡の場合と同じである。二本それぞれの粗糸を公知の方法で用意し、リング精紡機で精紡し複重層紡績糸となる。精紡機へ二本の粗糸を給糸する際、トランペットを介して並列に給糸された該二粗糸は、バックローラー、セカンドローラーと順次送られながらドラフトされ、径の異なるフロントローラーへ並列に給糸され、それぞれ繊維束となる。この時、径の小さなローラーへはR1の繊維束を、大きなローラーへは、R2の繊維束を給糸することで、二本の繊維束間に物理的な糸長差(R1:短糸長、R2:長糸長)が生じる。フロントローラーの出口付近で、撚転作用により必然的に芯にはR1繊維束、鞘にはR2繊維束が配された二層繊維束が形成され、該二層繊維束はリング・トラベラーによる加撚並びにバルーン張力による緩み・斑の均斉化作用を受け、本発明に用いる複重層紡績糸となる。
【0023】
本発明に用いる複重層紡績糸の作製に当たっては、上記粗紡又は精紡の内、粗紡による製法を採用するのが望ましい。これは、精紡による製法では、ドラフト工程で芯部の繊維束及び鞘部の繊維束は、それぞれが個別に繊維束表面においてステープルがマイグレーションより絡み合うため、芯・鞘部の臨界面ですべりが生じやすく、擦れなどの外力で、芯・鞘部が分離する場合がある。また同方法は合糸(カバリング)の際の緩み、ムラを解消するため、比較的強い撚りを施さなければならず、織編物のソフト感が欠けることがある。
対して、粗紡による方法は多少カバリングで緩み・ムラが存在しても、通常の精紡糸と同程度の撚りで十分にそれらを吸収・均斉化することができ、織編物のソフト感を保持することができるので好ましい。
【0024】
次に、芯部の合成繊維が長繊維である複重層紡績糸の製法について説明する。この場合、既述の如く精紡工程で芯鞘構造とする。R2の粗糸のみトランペットを介してバックローラー、セカンドローラーと順次送られ、フロントローラーへ繊維束として給糸される。
一方、芯部を形成するR1の糸条は、テンサーで適度な張力をかけられ、ガイドを通じてフロントローラーへ給糸される。フロントローラーでは、張力の高いR1の糸条へ張力の低いR2の繊維束が重なることで芯鞘構造が形成され、リング・トラベラーによる加撚により複重層紡績糸となる。
【0025】
ここで、以上述べた複重層紡績糸における撚係数及び芯・鞘部の質量割合について説明する。
まず、該複重層紡績糸の精紡工程における好ましい撚係数範囲(K=T/S1/2 ただし、K:撚係数 S:複重層紡績糸番手 T:1インチ間の撚数)は、3.0〜6.5であり、さらに好ましくは3.4〜5.7である。撚係数が3.0より小さいと該複重層紡績糸を構成するステープル間に滑脱現象や織編物にした際ピリングが発生しやすくなる。逆に6.5より大きいと、該複重層紡績糸が緻密になるため、吸水・吸湿性が低下し、かつトルクも大きくなり製織編性に支障をきたす危険がある。
【0026】
一方、芯部を形成する合成繊維と鞘部を形成する短繊維の質量割合は、15/85〜60/40の範囲にあることが望ましい。これは、芯部の合成繊維の質量割合が15%質量未満であると、鞘部の短繊維の構成ステープル本数が多くなり、ステープル同士の結束力が大きくなるため、最終的に得られる伸縮性紡績糸及び織編物の伸縮性能が低下する危険があり、逆に芯部の合成繊維の質量割合が60質量%を超えると、短繊維による合成繊維の被覆が十分に行えず、複重層紡績糸の糸側面に芯部の合成繊維が露出する場合があり、織編物にしたときの風合いが損なわれる危険がある。
【0027】
そして、本発明の伸縮性紡績糸は、上記した複重層紡績糸からなり、該複重層紡績糸の双糸が長手方向に二重らせん構造を有するコイル状構造糸を形成することで得ることができる。
図1に本発明の伸縮性紡績糸の一例として、側面写真(電子顕微鏡写真)を示す。この図の如く、前記複重層紡績糸が双糸となって伸縮性紡績糸を形成し、該伸縮性紡績糸は、二重らせん構造を有するコイル状構造を呈することで、二本の複重層紡績糸間に空隙ができ、この空隙が織編物に弾発性及びふくらみ感を与える。そして、伸縮性紡績糸は、あたかもバネの如く伸縮することが可能であって、織編物へ良好な伸縮性を付与するのである。
【0028】
次に、本発明の伸縮性紡績糸の製法において、伸縮性を付与する方法について述べる。
本発明の伸縮性紡績糸は、二本の複重層紡績糸に対し、加撚−熱セット−解撚を連続して行うことで、芯部へ配された合成繊維に捲縮を与えることで得られる。一例を示すと、公知の合成繊維用仮撚加工機へ二本の上記複重層紡績糸を同時に供給し、仮撚施撚体によって加撚されながらヒータ(非接触)によって熱固定され、仮撚施撚体を通過した後、解撚され、デリベリローラを経て巻取ローラによってパッケージへ巻き取られる。
該仮撚施撚体はスピンドルピンの他、フリクションディスク、ベルトニップ、流体旋回装置など、前記複重層紡績糸に旋回力を付与できる仮撚施撚体であれば特に限定されるものではないが、風綿による品質及び効率低下を考慮すれば、流体旋回装置が好ましい。
【0029】
本発明の伸縮性紡績糸は、二重らせん構造を有するコイル状構造をとることで、織編物へ優れた伸縮性、弾発性及びふくらみ感などの効果を付与することができるが、上述したような公知の合成繊維用仮撚加工機による加工では、この効果が発現されないことがある。通常、仮撚加工機においては加撚と解撚の撚数の絶対値が同じであり、解撚によりいったん二本の複重層紡績糸が並列に配置される。そして、この状態から二重らせん構造を形成するためには、二本の複重層紡績糸同士のトルクと捲縮発現が一致していることが望まれるからである。つまり複重層紡績糸の捲縮発現はコイル状で、二本の複重層紡績糸同士の捲縮のコイルピッチが一致し、かつ互いの位相がずれた状態でコイル同士が絡むことで良好な二重らせん構造が形成される。仮撚斑が発生すると良好な二重らせん構造が形成され難いので、上記の如く合成繊維用仮撚加工機を使用すると、複重層紡績糸の長手方向で二本のコイルピッチとトルクを一致させるための加工条件や捲縮発現に寄与する合成繊維の選定が非常に厳しくなり、推奨できる方法とはいい難いのである。
【0030】
そこで確実に二重らせん構造を形成させるためには、加撚の撚係数と解撚の撚係数とに差を設け、二本の複重層紡績糸が絡んだままの状態でコイル状捲縮を発現させれば効果的である。具体的には、パーンワインダーなどで二本の複重層紡績糸を引き揃えて合糸し、ダブルツイスターなどの撚糸機で撚係数2.5〜9.0(K=T/S1/2 ただし、K:撚係数 S:複重層紡績糸二本合糸の番手 T:1インチ間の撚数)の加撚後、70〜130℃で30〜50分の蒸気セットを施し、その後、前記加撚と逆方向でかつ前記加撚と撚係数差1.3〜2.6を有する撚係数1.1〜10.0の解撚を施して本発明の伸縮性紡績糸とするのが好ましい。
ここで最初の加撚が撚係数2.5〜9.0としたのは、撚係数が2.5未満ではコイルピッチが長くなり十分な伸縮性が得られず、9.0を超えるとコイルピッチが短くなり十分な空隙を形成しづらく、またビリを発生させる場合もあり好ましくないからである。特に好ましい撚係数範囲は、4.5〜8.5である。またセット温度を70〜130℃としたのは、70℃未満ではセット効果が不十分で、130℃より高いと、複重層紡績糸の鞘部を構成する短繊維の物性を低下させる懸念があるため、好ましくないからである。
解撚について撚係数1.1〜10.0としたのは、撚係数が1.1未満の場合は、解撚効果が乏しいため十分な伸縮性が得られない。また撚係数が10.0を超えると、撚糸条件が厳しくなり撚斑が発生しやすく好ましくないからである。さらに、撚係数差を1.3〜2.6としたのは、1.3未満もしくは2.6を超えると、二本の複重層紡績糸が絡んだままの状態で二複重層紡績糸間に空隙が形成されず、伸縮性が低下するので好ましくないからである。
なお、この撚係数差は、加撚の撚係数から解撚の撚係数を差し引いた値の絶対値であり、加撚の撚係数と解撚の撚係数の大小は、どちらでもよい。
【0031】
以上のようにして得られる本発明の伸縮性紡績糸のトータル繊度は10〜120番手であるのが望ましい。10番手より太くなると汎用性に欠け、120番手より細くなると、強度及び伸縮発現能力が低下するので好ましくない。
【0032】
本発明の伸縮性紡績糸は、その構成単位である複重層紡績糸において、加撚−熱セット−解撚の工程により、捲縮が付与されることは既に述べたが、必ずしもそれによらず、芯部へ弾性フィラメントを配することによっても、本発明の伸縮性紡績糸を得ることができる。この場合は、既述の精紡工程で複重層紡績糸に捲縮が付与され、二本の複重層紡績糸が撚り合わされることになる。この芯部へ弾性フィラメントを配した態様においては、二本の複重層紡績糸の二重らせん構造に起因するスプリング効果と該複重層紡績糸自体の伸縮性との相乗効果により特に伸縮性に優れたものとすることができる。
弾性フィラメントとしては、ポリエーテル系ポリウレタン弾性糸あるいはポリエステル系ポリウレタン弾性糸が好ましく、その繊度としては10〜80dtexが望ましい。10dtex未満では、伸縮性紡績糸に十分な伸縮性を付与することができず、逆に80dtexを超えると、伸縮性は十分なものの、伸縮性紡績糸の二重らせん構造が緻密になりすぎて、織編物にソフト感を付与できなくなる。
【0033】
前記弾性フィラメントを用いて本発明を構成する複重層紡績糸を得るには、既述した場合と同様、精紡工程にて複重層紡績糸を作製すればよい。ただし、弾性フィラメントは繊度が小さく高伸縮性のため高い張力を掛けることができないため、フロントローラーへ給糸する際、鞘部を構成する短繊維の中心部分へ該弾性フィラメントが配されるようガイド設定を行い、さらに操業性を考慮して2〜4倍に延伸しながら給糸することが好ましい。
得られた複重層紡績糸を二本引き揃えて合糸しながら合撚機へ仕掛ける、又は合糸後ダブルツイスターへ仕掛けることで撚係数1.8〜3.2(K=T/S1/2 ただし、K:撚係数 S:複重層紡績糸二本合糸の番手 T:1インチ間の撚数)の撚りを施し、本発明の伸縮性紡績糸を得ることができる。
【0034】
以上のようにして得られる本発明の伸縮性紡績糸を用いて本発明の織編物が製造されるが、用途・目的に応じ、単独での撚糸や空気混繊、あるいは二本撚り、三本撚りなどにした上で供されても何ら差し支えない。また組織・密度に関わる設計、並びに織編物となす際の準備及び製織編に関わる工程条件・機種は適宜選択することができる。具体的には織物の経糸準備は、ワーパー、サイジング、ビーミングを経る通常の工程が望ましく、本発明の伸縮性紡績糸を使用した撚糸または混繊による糸条の場合は部分整経でもよい。織機は風綿発生を考慮しレピア織機もしくはエアージェットルームが望ましい。編物の場合は、通常の短繊維編物に使用される機種で対応可能である。
織編設計上の好ましい態様として、織編物を構成する構成糸の20質量%以上に、本発明の伸縮性紡績糸が使用される。これは20質量%未満では、本発明の目的である効果が得がたいためである。
【0035】
仕上加工工程は、一般の長繊維織編物の方法に準じて行えばよく、精練・漂白、リラックス、プレセット、染色、ファイナルセットと順次行えばよい。リラックス工程によって伸縮性紡績糸がさらに捲縮し、該伸縮性紡績糸に良好な二重らせん構造を有するコイル状構造が形成され、織編物の伸縮性が向上する。
仕上加工の内、染色加工は公知の設備を用いればよく、例えば液流染色機、気流染色機、ウインス、パドル染色機などが挙げられる。また織編物の構成繊維に応じて染料を選択すればよい。また、仕上加工中において、目的に応じ各種付帯加工も実施できる。既述の如く、構成糸にセルロース系繊維が含まれる場合は、白化防止加工や形態安定加工を、羊毛が含まれる場合は、防縮加工をそれぞれ行うことができる。
【0036】
図2は、本発明の伸縮性紡績糸を緯糸に使用した織編物の緯糸断面を電子顕微鏡で撮影したものである。本発明の伸縮性紡績糸は、この写真の如く、二本の複重層紡績糸がその中心部に空隙を有するよう二重らせん状に配されて、双糸をなしているのがわかる。
【0037】
【作用】
本発明の伸縮性紡績糸は、長手方向に二重らせん構造を有するコイル状構造糸であるため、構成糸である二本の複重層紡績糸間に空隙ができ、この空隙の存在が織編物における伸縮性、弾発性及びふくらみ感に深く関与する作用を奏する。また、伸縮性紡績糸を構成する複重層紡績糸に対し、適度な撚係数を設定することで紡績糸の機械的強度と織編物のソフト感の調和を保つことができる。
さらに、前記複重層紡績糸の芯部に配された合成繊維が、極限粘度の異なる少なくとも二種以上のポリエステル系重合体をサイドバイサイド型あるいは偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性複合繊維であると、織編物へより高い弾発性とふくらみ感と共に良好なドレープ性も付与される。
【0038】
本発明の伸縮性紡績糸の好ましい製法の一例は、二本の複重層紡績糸に対し加撚−熱セット−解撚を連続して行う製法である。確実に二重らせん構造を形成させるためには、加撚の撚係数と解撚の撚係数とに差を設け、二複重層紡績糸が絡んだままの状態でコイル状捲縮を発現させれば、効果的に二重らせん構造を形成できる。
一方、前記複重層紡績糸の芯部へ弾性フィラメントを配すれば、伸縮性をさらに向上させることができる。つまり二本の複重層紡績糸が二重らせん構造を有しながらコイル状構造を形成するので、そのスプリング効果との相乗効果を生む。
【0039】
【実施例】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。物性評価は以下の方法に準じて行った。
(1)伸長率
JIS L1096 8.14.1 A法(定速伸長法)に準じて、荷重を4.9N、9.8N、14.7Nの3種にて、経緯それぞれ測定した。
(2)寸法変化率
JIS L0217 第2頁記載の家庭洗濯103法に準じて洗濯を行い、ライン乾燥の後、JIS L1909 6.1布地の場合に準じてマーキングを行い、経緯それぞれの寸法変化率を測定した。
(3)伸長回復率及び残留歪率
JIS L1096 8.14.2 B−2法(定伸長法)に準じて緯方向のみ測定した。
(4)ピリング
JIS L1076 6.1 A法(ICI形試験機を用いる方法)に準じて測定した。
(5)織物評価
官能検査にて織物の弾発性、ふくらみ感、ナチュラル感及びソフト感を測定した。評価結果は、◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る、の四段階評価とした。
【0040】
(実施例1)
二酸化チタンを2.0質量%含有したポリエチレンテレフタレート繊維を15万デニールのトウに集束し、延伸後、機械捲縮を付与して単糸繊度が1.67dtexのトウ(クリンプトウ)を得た。このクリンプトウにポリオキシエチレン系油剤を繊維に対して0.22質量%になるよう付与し、32mmにカットした繊維を25℃、相対湿度65%RHの条件下に一昼夜エージングして平衡水分になるようにした後、公知の混打綿、カード、練条の各工程を通過させスライバーを得た。
一方、綿1.30dtex×38mmを公知の混打綿、カード、コーマ、練条の各工程を通過させスライバーを得た。
次に、得られた二本のスライバーを粗紡機へ供給するに際し、芯部をなすスライバーにポリエステルを、鞘部をなすスライバーに綿が位置するよう、粗紡機のフライヤーヘッドから見て外側にポリエステルスライバー、内側に綿スライバーを配し、ポリエステルスライバー40質量%、綿スライバー60質量%の割合になるように太さを調整した。このようにして粗糸を得たのち、撚方向Z、撚係数3.2で公知法に準じた精紡を行い、30番手の複重層紡績糸を得た。
さらに、得られた複重層紡績糸をパーンワインダーにて二本引き揃えて合糸した。
続いて、ダブルツイスターでZ方向に撚係数8.0の加撚後、120℃×45分の蒸気セットを行い、パーンワインダーで巻き返した後、S方向に撚係数6.0の解撚を行い、15番手(30番手双糸)の本発明の伸縮性紡績糸を得た。
【0041】
次に、経糸に綿30番手双糸を用いワーパー、サイジング、ビーミングを経て経糸ビームを作製し、該ビームをエアージェットルームに仕掛けた。緯糸には上記で得られた本発明の伸縮性紡績糸を用い、密度82×54本/吋の3/1ツイル織物の生機を製織した。
続いて、得られた生機に90℃×20分の精練・漂白を行い、液流バッチ方式で120℃のリラックス処理、乾熱190℃のプレセット後、110℃の反応染料染色(綿糸染色)、130℃の分散染料染色(ポリエステル染色)の後、ファイナルセットを経て、密度100×55本/吋の本発明の織編物を得た。
【0042】
(実施例2)
実施例1の伸縮性紡績糸において、加撚の撚係数を6.3、解撚の撚係数を8.3とする以外は実施例1と同一にして本発明の伸縮性紡績糸を得た。
続いて、実施例1の織編物の緯糸を該伸縮性紡績糸に変更する以外は実施例1と同一にして本発明の織編物を得た。
【0043】
(実施例3)
ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物4モル%及びイソフタル酸3モル%を共重合させた極限粘度0.70のPET系共重合ポリエステルと、極限粘度0.68のPETとを用い、複合質量比1:1で複合溶融紡糸装置にて、孔数344孔の丸断面口金孔から、紡糸温度290℃、紡糸速度1150m/分、吐出量204g/分でサイドバイサイド型未延伸糸を得た。この未延伸糸を、延伸倍率2.4倍、延伸温度70℃で延伸し、160℃で緊張熱処理を行い、スタッフィングボックスで機械捲縮を付与した後、カットして2.2dtex×51mmの潜在捲縮性複合繊維を得た。170℃における無荷重下熱処理時の発現捲縮数は、62個/25mmであった。得られた潜在捲縮性複合繊維に対し通常の紡績工程である混打綿、カード、練条を経てスライバーを得た。
次に、この潜在捲縮性複合繊維のスライバーを芯部に配すること以外は実施例1の伸縮性紡績糸と同一にして本発明の伸縮性紡績糸を得た。
続いて、実施例1の生機の緯糸を前記伸縮性紡績糸に変更する以外は実施例1と同一の生機を得た。得られた生機へ実施例1の仕上加工条件と同一の加工を施して密度103×56本/吋の本発明の織編物を得た。
【0044】
(実施例4)
市販のポリウレタン弾性糸44dtex(東レ・デュポン(株)製「LYCRA(登録商標)」)を3.5倍に延伸しながら、ガイドを通じてリング精紡機のフロントローラーへ給糸した。一方で公知法に準じて作製された溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製「リヨセル(登録商標)」)の粗糸を、前記リング精紡機へ精紡条件を撚方向Z、撚係数3.0に設定して、トランペットを介してバックローラー、セカンドローラー、フロントローラーへと順次送り、該フロントローラーの出口で上記ポリウレタン弾性糸を芯へ配し、溶剤紡糸セルロース繊維を鞘へ配した芯鞘構造を形成させ、60番手の複重層紡績糸を得た。
得られた複重層紡績糸二本を合撚機にて、S方向に撚係数2.3で引き揃えて合糸しながら合撚し、30番手(60番手双糸)の本発明の伸縮性紡績糸を得た。
次に、経糸が市販のポリエステル加工糸167dtex/48f、Z300T/Mであり、緯糸には上記で得た伸縮性紡績糸及び市販の綿30番手単糸が1:1に配されたツイル組織の生機をレピア織機にて作製した。得られた生機の密度は、129×72本/吋であった。
続いて、該生機に対し一般のポリウレタン弾性糸使いの織編物に適用される条件に準じて仕上加工し、密度169×79本/吋の本発明の織編物を得た。
【0045】
(比較例1)
実施例1の生機において、緯糸を通常市販されているポリエステル/綿複重層紡績糸30番手双糸(大和紡績(株)製「セルピー(登録商標)」)へ変更する以外は実施例1と同一の生機を得た。得られた生機へ実施例1の仕上加工条件と同一の加工を施して密度90×52本/吋の織編物を得た。
【0046】
以上、本発明の織編物並びに比較例1の織編物の物性を表1に示す。
【表1】
Figure 2004183191
【0047】
実施例1〜4の織編物は、表1のように、ふくらみ感や伸縮性などに優れ、ピリング、寸法安定性も問題ない範囲であり、衣料用途に好適に使用できるものであった。特に、実施例3は、伸縮性紡績糸を構成する綿複重層紡績糸において、芯部へ潜在捲縮性複合繊維が配されているため、弾発性が特に良好であり、また、実施例4は、伸縮性紡績糸を構成する綿複重層紡績糸において、芯部へ弾性フィラメントが配されているため、緯方向伸縮性が特に良好であった。
一方、比較例1は、緯糸が市販のポリエステル/綿複重層紡績糸であるので伸縮性、弾発性に乏しく、ふくらみ感に欠けるものであった。
【0048】
【発明の効果】
本発明の伸縮性紡績糸は、長手方向に二重らせん構造を有するコイル状構造糸であるため、構成糸である二本の複重層紡績糸間に空隙ができ、この空隙の存在が織編物における伸縮性、弾発性及びふくらみ感に深く関与する。従来から存在する伸縮性能を有する紡績糸の双糸を使用した織編物に比べ、本発明の織編物は、伸縮性、弾発性及びふくらみ感は勿論、ナチュラル感やソフト感といった質感にも優れている。さらに、伸縮性紡績糸を構成する複重層紡績糸には、吸水・吸湿性に対しピリングといった撚状態でその性能が相反する傾向に向かう特性に対しても、いずれも低下させない調和のとれた撚りが施されているため着衣快適性は良好で、用途はボトム、アウター、ユニフォームなどの中肉厚地分野だけでなく、ブラウスなどの薄地分野でも十分にその効果を発揮することができる。
【0049】
前記複重層紡績糸の芯部へ潜在捲縮性複合繊維を用いれば、上述の伸縮性、弾発性及びふくらみ感はさらに増し、ドレープ性も発現する。
さらに、弾性フィラメントを本発明の伸縮性紡績糸の構成糸に供すれば、さらに伸縮性を向上させることができる。従来の弾性フィラメントを用いてなる紡績糸織編物は、伸縮性のみ良好で風合いは硬く改善が望まれているが、本発明の伸縮性紡績糸を構成するに当たり、該弾性フィラメントを用いても、当該織編物は、ナチュラル感、ソフト感、ふくらみ感などを保持しており、本発明は従来の問題を解決できる優れた衣料素材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の伸縮性紡績糸の一例を示す図面代用写真であり、側面を電子顕微鏡で撮影したものである。
【図2】本発明の伸縮性紡績糸使いの織編物の一例を示す図面代用写真であり、緯糸断面を電子顕微鏡で撮影したものである。

Claims (9)

  1. 天然繊維及び/又は再生繊維を含有する短繊維が鞘部に配され、かつ合成繊維が芯部に配された複重層紡績糸からなり、該複重層紡績糸の双糸が長手方向に二重らせん構造を有するコイル状構造糸であることを特徴とする伸縮性紡績糸。
  2. 前記複重層紡績糸の撚係数Kが3.0〜6.5であることを特徴とする請求項1記載の伸縮性紡績糸。
    ただし、K=T/S1/2 ここで、K:撚係数 S:複重層紡績糸番手 T:1インチ間の撚数
  3. 前記合成繊維が、極限粘度の異なる少なくとも二種類のポリエステル系重合体をサイドバイサイド型あるいは偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性複合繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載の伸縮性紡績糸。
  4. 前記複重層紡績糸中に占める前記合成繊維の質量割合が15〜60質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の伸縮性紡績糸。
  5. 繊度が10〜120番手であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の伸縮性紡績糸。
  6. 前記複重層紡績糸を二本引き揃えて合糸し、撚係数K2.5〜9.0の加撚後、70〜130℃で30〜50分の蒸気セットを施し、前記加撚と逆方向でかつ前記加撚と撚係数差1.3〜2.6を有する撚係数K1.1〜10.0の解撚を施して捲縮発現させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の伸縮性紡績糸の製造方法。
    ただし、K=T/S1/2 ここで、K:撚係数 S:複重層紡績糸二本合糸の番手 T:1インチ間の撚数
  7. 前記合成繊維が、弾性フィラメントであることを特徴とする請求項1又は2記載の伸縮性紡績糸。
  8. 前記弾性フィラメントの繊度が10〜80dtexであることを特徴とする請求項7記載の伸縮性紡績糸。
  9. 請求項1〜5、7、8のいずれかに記載の伸縮性紡績糸を構成糸の20質量%以上使用していることを特徴とする織編物。
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