JP2004332136A - ラビング用布材 - Google Patents

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Abstract

【課題】開繊及び立毛についても十分な性能を有し、クリーン度に優れたラビング用布材を提供する。
【解決手段】経糸1及び緯糸2からなる地組織に織り込まれた多数のパイル糸3にアセテート繊維からなる糸を用いることで、ラビング処理に適した布材を作成できる。すなわち、アセテート繊維は、その先端横断面が従来の布材に用いられた綿やレーヨンに比べ均一であり、立毛性に優れていることから樹脂加工が不要で、繊維自体もクリーン度が高く、ラビング不良の原因となる不純物の発生も抑えられる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子製造工程で用いられるラビング用布材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、テレビやノートパソコンなどの様々な機器に画像表示用に広く用いられている。その表示要素の基幹を成す液晶分子の配向を所定の方向に制御するために、従来から製造工程においてラビング処理が行われている。ラビングとは、液晶を挟持する基板上に形成されたポリイミド樹脂等からなる配向膜の表面を一定方向に擦ることで、液晶分子をその方向に配向させる処理方法である。こうしたラビング処理の部材としては、パイル地の布材が用いられている。
【0003】
パイル地の布材は、図1及び図2に示すように、経糸1及び緯糸2からなる地組織に経糸方向にパイル長が数mm程度のカットパイル3が織り込まれた構造をしており、こうしたパイル地の布材を回転ローラの外周に巻きつけて回転させながら基板表面に接触させる。カットパイルは起毛されている為基板表面の配向膜には一定方向の微細な擦り跡が形成されることになる。図1はカットパイルがW字に織り込まれており、主に長繊維糸で織成する場合に用いられる。図2はV字にカットパイルが織り込まれ、主に紡績糸で織成する場合に用いられる。
【0004】
こうしたパイル地の布材を用いてラビング処理を行う場合、パイル糸の立毛性、細さ及び開繊の度合いがラビング処理の成否に大きな影響を及ぼすため、さまざまな対応策が採られてきている。例えば、特許文献1では、ビスコースレーヨン・フィラメントからなるカットパイルを地組織の経糸方向に所定角度傾斜させることで、ビスコースレーヨン・フィラメントが有する微細ヒダ構造が傾斜した状態で基板表面に接触して、より微細な溝を形成することが可能になる点が記載されている。また、特許文献2では、シルケット加工により各々の綿短繊維の捩れが除去された改良綿糸をカットパイル糸に用いた点が記載されている。また、特許文献3には、ビスコースレーヨン糸、キュプラ糸等をパイル糸として用い樹脂加工処理を施して形態安定加工を行う点が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
登録実用新案第3032820号公報
【特許文献2】
登録実用新案第3045464号公報
【特許文献3】
特開2002−148628号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
液晶表示素子は、画像表示の高解像度化の要請が高まっており、特に液晶プロジェクタに用いられる液晶表示素子では100倍以上に拡大して表示することからその要請が強い。こうした高解像度化が進んでいくと、一般的な文字表示では問題とならないような画素の表示不良が製品の歩留りに大きな影響を及ぼすようになってきている。
【0007】
画素の表示不良の原因の1つとして、画素の液晶分子の配向不良が挙げられるが、配向不良を助長するものとしてラビング処理工程でのラビング・スジ、ラビング・キズといった配向膜表面のラビング不良や配向膜に付着する不純物の存在が指摘されている。これまでもこうした原因による配向不良は発生していたが、上述のように高解像度化に伴う画像品質への要求レベルの厳格化とともに微細なものまで不良として取り扱われるようになってきている。
【0008】
上述した従来技術のように、ラビング用布材のパイル糸には、これまで綿糸のような天然繊維や、ビスコースレーヨンのような再生繊維が用いられてきている。こうした繊維が用いられてきているのは、図3の繊維の横断面(図3(a)は綿糸、図3(b)はビスコースレーヨン)に示すように、繊維の先端断面が異形断面を有することから、異形断面の尖鋭部分で配向膜を擦ることで配向膜表面に液晶分子の配向現象を生じさせる微細な溝が形成されると考えられてきている。このような微細な溝は、幅及び深さともナノメータ(10−9m)レベルのもので、理想的にはこうした溝を配向膜表面に均一に同じ方向に多数分布するように形成することが望ましい。
【0009】
綿糸やビスコースレーヨンといった繊維は、洗浄等の工程において純水や有機溶剤によりパイルフィラメント同士が付着したり、使用している過程でパイルフィラメント同士が集束してしまい開繊状態が悪くなる性質を有しており、また立毛性についても圧縮を繰り返すと寝た状態になりやすく、そのためパイル糸に樹脂加工処理を行い、開繊性及び立毛性を高めることが必要不可欠である。ところが、樹脂加工処理をしたパイル糸をラビング処理に用いると、ラビング処理中にパイル糸から剥がれ落ちた樹脂が配向膜表面に異物として付着し、ラビング不良の原因となっていることがわかってきている。例えば、熱硬化性樹脂加工剤を用いた場合には、パイル糸に付着した樹脂が剥がれ落ちてミクロ・リントとして配向膜表面に付着したり、また配向膜表面を摺動しているときにミクロ・リントが配向膜表面を傷つけてラビング・キズの発生原因となりやすい。熱可塑性樹脂加工剤及び熱溶融性樹脂加工剤の場合には、液晶表示素子の製造工程の中で剥がれ落ちた樹脂が配向溝に再付着してしまい、配向不良の発生要因となる。
【0010】
また、樹脂加工により糸の先端にも樹脂が付着することになるが、図3に示すように繊維の横断面は入り組んだ複雑な形状となっているため樹脂が均等に付着せず、そのため糸先端の硬さが不揃いとなってしまうこともラビング不良の原因の1つと考えられる。例えば、ビスコースレーヨンは、中心部のコア層と表面のスキン層との2層構造となっているが、スキン層への樹脂の付着が均等に行われないと、硬いスキン層の部分と樹脂の付着した部分では、硬さにバラツキが生じてラビング処理により形成される溝が不均一となってラビング不良が生じることが考えられる。さらに、綿糸を用いる場合には、綿糸自体にコットン・カス(糸に残留している綿の殻の部分)や残留イオン(例えばCaイオン))が付着しており、これらを完全に取り除くことはできないため、異物として配向膜に付着し、ラビング不良を生じることが考えられる。また、綿糸には未成熟のデッドコットンが含まれていることが多く、デッドコットンは綿糸に分化していないため配向表面にラビング・キズを起こしやすくなる。
【0011】
以上のように、従来のラビング用布材を用いることは、今後急速に進展していく液晶表示素子の高解像度化の要請が強まるに従い、これまで表面化してこなかった問題点がクローズアップされるようになってきている。本発明者らは、こうした問題点に対処するためには、これまでのラビング用布材の抜本的な見直しが必要であると考え、今後要求される性能を満たすためのラビング用布材の再検討を行った。これまでのラビング用布材の製造技術は、衣類やカーテン等の生活用品として使用されるビロード等のパイル地の製造技術を前提としているため、肌触り、外観及び安全性といったラビング処理とは異なる観点から技術開発が進められてきた製造技術の延長線上にあり、材料の選定からその加工処理までの一連の製造工程は、改良工夫はなされているもののラビング処理を前提にしたものではなかった。そこで、ラビング処理用に特化した布材を製造する観点からその製造技術を見直し、様々な材料を用いて製造工程を再検討し布材の試作を重ねた結果、開繊及び立毛についても十分な性能を有し、クリーン度に優れたラビング用布材を発明するに至ることができた。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るラビング用布材は、経糸及び緯糸により織成された地組織と、前記地組織に織り込まれ前記地組織より突出した多数のパイル糸とからなるラビング用布材において、前記パイル糸は、酢酸セルロース繊維からなるカットパイル糸であることを特徴とする。さらに、酢酸セルロース繊維は、アセテート繊維であることを特徴とする。さらに、アセテート繊維は、アセチル化度が2.65であることを特徴とする。アセテート繊維は、表面のみ加水分解処理されていることを特徴とする。
【0013】
上記のような構成を有することにより、樹脂加工を施すことなく開繊及び立毛の性能に優れたカットパイル糸を備えたラビング用布材を得ることができる。酢酸セルロース繊維は、ビスコースレーヨンと同様の異形横断面形状を有するとともにビスコースレーヨンのような硬いスキン層がなく、ソフトなコア層のみの繊維であることから、従来発生していたスキン層によるラビング・キズを防止することができる。
【0014】
酢酸セルロース繊維の代表的な繊維としてトリアセテート繊維(アセチル化度2.76以上3まで)及びアセテート繊維(アセチル化度2.22以上2.76未満)が挙げられるが、これらの繊維は、リンターパルプなどの高純度のαセルロースをアセチル化し、アセトンを溶媒として乾式紡糸により製造するため、図4に示すように異形横断面形状を有し、ビスコースレーヨンのような硬いスキン層がなく、スキン層によるラビング・キズを防止できる。アセテート繊維のヤング率は30cN/dtex程度で、綿やレーヨンのヤング率が70cN/dtex程度であるから、繊維自体も柔軟性に優れており、ラビング不良の発生を従来より抑えることが可能となる。
【0015】
また、いわゆる半合成繊維であるため、綿糸などの天然繊維のように糸先端の形状のばらつきは小さくなり、繊維に付着する不純物もないことから、ラビング処理中に配向膜表面に異物が付着することもない。
【0016】
アセテート繊維は、親水性の水酸基が疎水性のアセチル基に置換されているため、水に対する親水性が低下しており、洗浄等により水に濡れても繊維同士が付着して集束することはなく、良好な開繊状態を保つことができる。また、合成繊維のように熱可塑性を有しているため、起毛して熱セットすれば立毛性を向上させることができ、別途樹脂加工する必要はない。したがって、樹脂加工に伴う上述したような異物の発生等の問題を避けることができる。また、圧縮弾性率においてもアセテート繊維はレーヨンに比べて優れているため、ラビング処理のように液晶基板面に圧接されて摺動する工程で繰り返し使用してもパイル糸がすぐ寝てしまうことはなくパイル糸の耐久性が向上する。このように、アセテート繊維は、開繊及び立毛の性能が優れていることから、パイル長を長くしたり、細い糸を用いることが可能となり、ラビング処理における適応可能範囲をより広く設定することができる。
【0017】
以上のように、カットパイル糸にアセテート繊維を用いることで、糸先端のバラツキが小さくなり、配向膜表面に、より均一な溝を形成することが可能となり、また、開繊や立毛の性能もアップして多数の溝を万遍なく配向膜表面に形成することができる。さらに、ラビング処理での圧接・摺動といった作業にも十分耐えることができる。このように、本発明に係るラビング用布材は、ラビング処理用として優れた布材である。また、アセテート繊維のアセチル化度を2.65に設定すると、耐熱性が高まり、ラビング処理中の熱の影響を受けにくくなる。
【0018】
そして、アセテート繊維の表面のみ加水分解処理することで、繊維表面の親水性を高めて吸湿性を向上させ、ラビング処理中に布材内に静電気が発生することを抑えることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るラビング用布材に関する実施形態について詳述する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明に係るラビング用布材の地組織としては、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維あるいはこれらの混合繊維を用いた薄地または厚地の織物が採用できる。織物組織としては、パイル糸が織り込めるのであればよく特に限定されないが、図1又は図2に示すような構造を用いるのが好ましい。
【0021】
地組織に用いる経糸及び緯糸は、長繊維糸の場合33〜167デシテックス(30〜150デニール)の範囲のものが好ましく、長繊維糸としては、例えばビスコースレーヨン糸、キュプラ糸が用いられる。また、紡績糸の場合経糸及び緯糸として綿番手が双糸140番手〜単糸10番手のものが好ましい。さらに、経糸よりも緯糸を太くすると、パイル糸の傾斜状態を緯糸方向に揃えやすく、傾斜角度も揃いやすい。
【0022】
パイル糸としては、アセテート繊維からなる56〜660デシテックス(50〜600デニール;単糸フィラメントは1〜5デニール)の範囲の長繊維糸を使用し、カットパイル糸として用いる。アセテート繊維は、純度の高いパルプから製造されるため不純物をほとんど含有せず、タバコのフィルター材として用いられていることからも明らかなように、非常に高いクリーン度を備えている。したがって、ラビング処理に有害なイオン(例えば、S、Na、Ca、Cu等のイオン)が一切含有されていないので、ラビング不良を抑えることができるとともに洗浄等の作業工程が簡略化できる。
【0023】
アセテート繊維は、グルコース残基のアルコール性水酸基3個についてアセチル化された酢酸セルロースを後加水分解により2.22以上2.76未満の範囲までアセチル化度を下げたものを指すが、アセテート繊維において繊維表面のアセチル基を加水分解により水酸基に置換したものは、親水性が高まって吸湿性が向上し、静電気が発生しにくくなる。この場合、芯の部分はアセテート繊維のままなので、立毛性や開繊性といった特長は維持されている。
【0024】
アセテート繊維の表面のみ加水分解処理するためには、例えばアセテート繊維からなる布材を100℃以下の飽和蒸気の充満した雰囲気中に30分以上置くことで処理することが可能である。この場合、布材を適宜動かして加水分解処理にムラが出ないようにすることが必要となる。こうして加水分解処理を行った布材について、帯電防止性について測定をおこなったところ、漏洩抵抗値(東亜電波工業株式会社製SE−5E型超絶縁計で測定)では、処理しない場合に比べ1/30〜1/20まで低下していた。摩擦帯電圧(株式会社大栄科学精密器製作所製摩擦帯電圧測定器で測定)では、1/50〜1/10まで低下しており、その半減期は1秒以下であった。これらの測定結果から明らかなように、繊維表面の加水分解処理により静電気が発生しにくくなり、ラビング処理での静電気の影響を防止できる。
【0025】
図5に、本発明に係るラビング用布材の製造工程を示す。まず、図示されていないが、従来と同様に、上述したような繊維からなる経糸及び緯糸を用いて地組織を上下に所定の間隔を空けて織成し、2つの地組織の間にアセテート繊維からなるパイル糸を地組織に織り込んだ後、2つの地組織の間の中間位置でパイル糸を切断していくと、カットパイルを織り込んだ織布がまず作成される。
【0026】
こうして作成された織布10は、まずシャーリング工程でカットパイルの先端部をカッター20により切断し、カットパイルのパイル高さを揃える。スチーム工程では、スチームが表面から噴出するスチームローラ30に織布10を巻き付けてスチームにより織布10のシワを伸ばした後巻き取られる。洗浄工程では、洗浄槽40内の熱温水41に浸漬した状態で糸に付着した油剤、糊等の不純物を洗浄し、予備乾燥工程でヒータ50により十分乾燥させる。アセテート繊維は洗浄性、速乾性に優れているため、洗浄時間及び乾燥時間は従来より短くて済み、またこうした処理を比較的低温の環境下でも行うことができる。
【0027】
次に、起毛処理工程では、起毛装置60により経糸方向及び緯糸方向への起毛処理を行う。起毛装置は、針状に形成した多数のステンレス線を表面に設けた回転ローラ61を備えており、経糸方向及び緯糸方向にそれぞれ起毛処理と開繊処理を行う。回転ローラ61により起毛している箇所にはその起毛方向に熱風(100〜180℃)を常時吹き付けるようにする。回転ローラ61の回転数(800〜1200rpm)及び熱風の上下方向の吹き付け角度を調整することでパイル糸の傾斜角度を調整することができ、また布材全体の総厚みを調整することが可能となる。アセテート繊維は、物性上柔軟性が高いため起毛処理が容易で、その分回転ローラ61の針の摩耗も少なくて済む。
【0028】
起毛処理では、上述した以外の方法も用いることができる。例えば、ドラム式の熱シリンダ(表面温度を120〜130℃に加熱)の表面に布材の裏地(パイルの形成されている面の反対側の面)を密着させてパイル糸の根元部分を加熱した後ブラッシング処理すれば、パイル糸の傾斜角度や総厚みを調整することができる。また、布材に希アルコール(低級アルコール)や希酢酸溶液を含浸させた後乾燥しながら上述したようなブラッシング処理を行うことでもパイル糸の傾斜角度や総厚みを自由に調整することが可能である。
【0029】
そして、パイル糸を起毛処理及び開繊処理された織布は、熱処理工程でヒータ70により全体を加熱処理されてパイル糸の形態を安定させる。
【0030】
こうして製造された布材は、開繊状態が良好で立毛性に優れたものとなっている。そのため、パイル糸の長さを長くした場合(2.0〜8.0mm)でも細い糸(1.1〜5.4デシテックス/フィラメント(1〜5デニール/フィラメント))を用いることが可能で、ラビング処理における適応可能範囲が広がり、広範な設定に対応できる。
【0031】
また、上述の工程において、ビング処理に有害となるような物質が布材に残留してしまうような樹脂加工といった工程は一切不要であるため、布材を非常にクリーンな状態に仕上げることができる。
【0032】
【実施例】
実施例;経糸として、キュプラ繊維からなる135デシテックス(120デニール)の長繊維糸を使い、緯糸として、キュプラ繊維からなる110デシテックス(100デニール)の長繊維糸を使って、経糸密度44本/cm、緯糸密度70本/cmで平織りに織られた地組織を用いた。パイル糸として、アセテート繊維(アセチル化度2.65)からなる135デシテックス(120デニール)/32フィラメントの長繊維糸を使い、糸密度が560本/cmとなるように周知の織機により図1に示すW字型で地組織に織り込んだ。
【0033】
作成された織布は単位面積あたりのパイルフィラメントの本数が18,000本/cmで、パイル長は1.90mmとなるように切断した。こうして織成された織布を図5に示す製造工程により処理した。起毛処理工程では、経糸方向に3回、緯糸方向に2回ずつ回転ローラにより起毛処理を行い、加熱処理工程では、温度160〜180℃で2分間ヒートセッターにより加熱処理を行った。その後飽和蒸気の充満したスチーム室で30分間置き、繊維表面の加水分解処理を行った。
【0034】
製造された布材について圧縮弾性試験(JIS L 1096−1990準拠)を行った。比較のため、従来例として、パイル糸としてビスコースレーヨン(3.3デシテックス/フィラメント)を用いて上記実施例と同様に織成し、樹脂加工処理した布材を用意した。
【0035】
圧縮荷重0〜2,000g/1.77cmを連続して加える条件で試験を行ったところ、実施例のパイル糸では、圧縮率72.4%、圧縮弾性率85.7%、クラッシュポイント0.4kgであった。従来例のパイル糸では、圧縮率69.1%、圧縮弾性率79.6%、クラッシュポイント0.7kgであった。以上の試験結果から明らかなように、実施例の布材は従来例のものに比べて、圧縮弾性率が高いことから、ラビング処理の際に配向膜表面に繰り返し圧接されてもすぐ寝てしまうことがなく耐久性が高い。また、クラッシュポイントが従来例に比べて低くなるため、配向膜表面に対して圧接する際の柔軟性が大きくなり、ラビング・キズの発生を抑えることができる。
【0036】
また、各繊維表面を電子顕微鏡で拡大して観察したところ、従来例のパイル糸の繊維に比べ実施例のパイル糸の繊維は表面が平滑になっており、加水分解処理により繊維表面が水酸基に置換された結果と考えられる。アセテート繊維は、上述したように柔軟性が大きいため、ラビング処理において配向膜表面に圧接されると繊維の先端断面部分だけではなく、その近傍の繊維の側面も配向膜表面に接触する確率が高くなると考えられるが、繊維表面の平滑化により配向膜表面に有害な影響を及ぼすことが抑えられる。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るラビング用布材は、カットパイル糸に酢酸セルロース繊維を用いることで、糸先端のバラツキが小さくなり、配向膜表面に、より均一な溝を形成することが可能となり、また、開繊や立毛の性能もアップして多数の溝を万遍なく配向膜表面に形成することができる。さらに、ラビング処理での圧接・摺動といった作業にも十分耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラビング用布材のW字の織組織の模式図である。
【図2】ラビング用布材のV字の織組織の模式図である。
【図3】綿繊維及びビスコースレーヨンの先端横断面に関する概略図である。
【図4】アセテート繊維の先端横断面に関する概略図である。
【図5】本発明に係るラビング用布材の製造工程に関する説明図である。
【符号の説明】
1 地組織の経糸
2 地組織の緯糸
3 パイル糸

Claims (4)

  1. 経糸及び緯糸により織成された地組織と、前記地組織に織り込まれ前記地組織より突出した多数のパイル糸とからなるラビング用布材において、前記パイル糸は、酢酸セルロース繊維からなるカットパイル糸であることを特徴とするラビング用布材。
  2. 酢酸セルロース繊維は、アセテート繊維であることを特徴とする請求項1に記載のラビング用布材。
  3. アセテート繊維は、アセチル化度が2.65であることを特徴とする請求項2に記載のラビング用布材。
  4. アセテート繊維は、表面のみ加水分解処理されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のラビング用布材。
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