本発明の車両用自動変速機の変速制御装置は、例えば遊星歯車式や平行軸式等の有段の自動変速機に好適に適用されるが、変速範囲が異なる複数の変速レンジを有するベルト式、トロイダル型等の無段変速機にも適用され得る。無段変速機については、有段変速機と同様に複数の前進ギヤ段で段階的に変速比を変化させる態様で使用することも可能である。自動的に変速が行なわれる変速レンジの変速範囲は、通常は変速比が最も大きい最低速前進ギヤ段や最低速変速比は同じで、最高速前進ギヤ段や最高速変速比が異なるだけである。
有段変速機の場合、7段或いは8段以上の多段変速機に好適に適用されるが、6段以下の有段変速機に適用することもできる。また、一般には単一のギヤ列が設定されるが、少なくとも一部の変速比が異なる2種類以上のギヤ列や、ギヤ段の数が異なる2種類以上のギヤ列を成立させることが可能で、運転者の選択操作や車両の走行状態などに応じて自動的に所定のギヤ列が設定される有段変速機にも本発明は適用され得る。
切換スイッチは、例えば運転席の横や運転席前方のインストルメントパネルなどに設けられたシフトレバー操作でON、OFFされるように設けられるが、シフトレバーとは別にステアリングホイールなどに配置することもできるなど、種々の態様が可能である。
上記切換スイッチのON状態が継続した場合には常に連続変更制御を実施するようになっていても良いが、運転者の意図に反して複数段の切換が行われることを防止するため、例えば連続変更許容スイッチを別に設け、その連続変更許容スイッチがON操作された時だけ連続変更を許容し、連続変更許容スイッチがOFFの場合には、切換スイッチのON状態が継続しても1段ずつアップダウンさせるように構成することもできる。その場合に、連続変更許容スイッチやその電気系統が故障した場合には、切換スイッチのON状態の継続による連続変更制御を禁止することが望ましい。なお、高車速など一定の走行状態では、連続変更許容スイッチのON操作などに拘らず強制的に連続変更制御が禁止されるようにしても良い。
切換スイッチは、例えば変速比を大きくするダウンシフト用および変速比を小さくするアップシフト用の両方を備えて構成され、切換要求信号の継続出力で連続変更する連続変更手段は、ダウンシフトおよびアップシフトの両方で連続変更を行うように構成されるが、ダウンシフトの時だけ連続変更するなどアップダウンの何れか一方で連続変更制御を実施するだけでも良い。一般に、ダウンシフトの場合に連続変更制御による操作性の向上効果が大きく、アップシフトについては、それ程必要性はなく、例えばアップシフトについては1回のスイッチ操作で常に1段ずつ切り換えるようにしたり、1回のスイッチ操作で一気に最上位の変速レンジや最高速ギヤ段まで切り換えるようにしたりするなど、本発明とは異なる種々の態様が可能である。
連続変更手段は、設定すべき変速レンジやギヤ段を1つずつ順番に連続的に変更するが、切換手段は、その変更に従って変速レンジやギヤ段を1つずつ連続的に切り換えるものでも、或いは短時間で連続的に変更される場合には最終的に設定された変速レンジやギヤ段へ飛越し切換するものでも良いなど、種々の態様が可能である。但し、連続変更途中における変速レンジやギヤ段の変化を運転者が確認できるように、レンジインジケータやギヤ段インジケータなどの表示装置により、連続変更手段によって連続的に変更される変速レンジやギヤ段を音又は画像などで表示することが望ましい。
上記連続変更手段、或いは実際に変速レンジやギヤ段を切り換える切換手段は、切換後のエンジン回転速度や車両の挙動を安定させるように制御するVSC(Vehicle Stability Control)等の判断により、その切換或いは変速を制限する切換制限手段を設けることが望ましい。切換制限手段は、ギヤ段切換えやレンジ切換えを完全に中止するものでも良いが、可能な範囲でギヤ段切換えやレンジ切換えを行なうものが望ましい。
時間間隔を可変設定する時間間隔設定手段は、車両の走行状態や運転者の運転嗜好などをパラメータとして幾つかのマップを備えていて、そのマップに従って時間間隔を設定するものでも良いが、基準の時間間隔に所定の係数を掛け算したり所定の時間を加算、減算したりして補正するようにしても良いなど、種々の態様が可能である。また、運転者がその時間間隔を直接設定したり変更したり選択したりできるものでも良い。
時間間隔設定手段により可変設定される複数種類の時間間隔は、切換要求信号の出力継続時間に応じて変速レンジやギヤ段を最上位から最下位まで順次変更する全時間領域で、その複数の変更時間間隔が総て異なる場合であっても良いが、例えば狙い通りに変速レンジやギヤ段を切り換えたい比較的切換段数が少ない場合、すなわち切換要求信号の出力継続時間が短い間は、通常時(標準時)と同じ時間間隔で、多段階を素早く切り換えたい場合、すなわち切換要求信号の出力継続時間が所定時間以上になったら通常(標準)よりも時間間隔を短くするなど、少なくとも一部の時間間隔が相違しておれば良い。
時間間隔設定手段によって可変設定される時間間隔は、第7発明のように切換要求信号の出力継続時間が長くなるに従って短くなるように設定することが望ましいが、切換要求信号の出力継続時間の長さに拘らず一定の時間間隔で変更されるように定められても良いなど、種々の態様が可能である。第7発明では、例えば時間間隔が一定の割合で等比級数的に短くなるように定められ、その割合を車両の走行状態や運転者の運転嗜好などに応じて増減するように構成されるが、時間間隔が2段階或いは3段階など、段階的に短くなるものでも良いし、一定時間までは同じ時間間隔でその後連続的に短くなるようにしたり、特に規則性を有することなくランダムに短くなるようにしたりしても良いなど、種々の態様が可能である。
運転者の運転嗜好に基づいて時間間隔を可変設定する第6発明では、例えばブレーキやアクセルの踏み方などの操作傾向、連続切換や手動切換の使用頻度、パワーモードやエコノミーモードの選択状態などから運転嗜好を自動的に判断するように構成することもできるが、運転者の操作で可変設定できるものや、車載の記憶装置に予め記憶されるか運転者が携帯しているICカードなどに記録されている年齢、性別、運転嗜好等の運転者の個人情報を読み込んで可変設定するものなど、種々の態様が可能である。複数の運転者が同じ車両を使用する場合には、個々の運転者の時間間隔を個別に記憶して、運転者を特定するだけで自動的に設定されるようにすることが望ましい。
運転者の運転嗜好や車両の走行状態など複数の設定条件を考慮して時間間隔を可変設定する場合に、走行状態によりそれ等の設定条件が競合する場合には、総合的に判断して最適な時間間隔が設定されるようにすることが望ましいが、制御が複雑になることがあるため、例えば車両停止時等の特定の走行状態の時には、運転嗜好など他の設定条件に優先して走行状態に基づいて時間間隔を設定するようにしても良いなど、種々の態様が可能である。一般に、運転者の運転嗜好よりも車両の走行状態に基づく設定を優先することが望ましい。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される車両用自動変速機10の一例を説明する骨子図で、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16、ダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18、シングルピニオン型の第4遊星歯車装置20、および第5遊星歯車装置22を主体として構成されている第2変速部24とを有し、入力軸26の回転を変速して出力歯車28から出力する。入力軸26は入力部材に相当するもので、トルクコンバータ32のタービン軸であり、走行用駆動源としてのエンジン(内燃機関)30のクランク軸31からトルクコンバータ32を介して回転が入力される一方、出力歯車28は出力部材に相当するもので、差動歯車装置などを介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、この車両用自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1では中心線の下半分が省略されている。
上記第1変速部14を構成している第1遊星歯車装置12のキャリアCA1は入力軸26に連結されて回転駆動され、サンギヤS1は回転不能にケース34に一体的に固定され、リングギヤR1は中間出力部材として入力軸26の回転を減速して第2変速部24へ出力する。このように入力軸26から第1遊星歯車装置12のキャリアCA1、そのキャリアCA1に配設されたピニオンギヤ、および中間出力部材としてのリングギヤR1を経て第2変速部24へ伝達する経路が第2入力経路PA2で、第1遊星歯車装置12のギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1に応じて定められる一定の変速比1/(1−ρ1)で減速される。また、上記第2入力経路PA2とは別に、第1変速部14の第1遊星歯車装置12のキャリアCA1を経由して、入力軸26の回転を変速比1.0でそのまま第2変速部24へ伝達する第1入力経路PA1が設けられている。
前記第2変速部24は主変速部に相当するもので、第2遊星歯車装置16は、ピニオンギヤが大径部および小径部を有する段付ピニオン36にて構成されており、その小径部が第2遊星歯車装置16のピニオンギヤとして機能している一方、大径部には第5遊星歯車装置22のリングギヤR5が噛み合わされている。また、第2遊星歯車装置16、第3遊星歯車装置18のキャリアCA2およびCA3、サンギヤS2およびS3は、それぞれ共通の部材にて構成されているとともに、第2遊星歯車装置16のピニオンギヤ(段付ピニオン36の小径部)は第3遊星歯車装置18の第1ピニオンギヤ(サンギヤS3と噛み合うピニオンギヤ)を兼ねている。
そして、第2変速部24を構成している第2遊星歯車装置16、第3遊星歯車装置18、第4遊星歯車装置20、および第5遊星歯車装置22は、一部が互いに連結されることによって6つの回転要素RM1〜RM6が構成されており、具体的には、第4遊星歯車装置20のサンギヤS4によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置16のリングギヤR2によって第2回転要素RM2が構成され、第5遊星歯車装置22のリングギヤR5によって第3回転要素RM3が構成され、第2遊星歯車装置16のキャリアCA2および第3遊星歯車装置18のキャリアCA3が互いに連結されて第4回転要素が構成され、第3遊星歯車装置18のリングギヤR3および第4遊星歯車装置20のキャリアCA4が互いに連結されて第5回転要素RM5が構成され、第2遊星歯車装置16のサンギヤS2、第3遊星歯車装置18のサンギヤS3、および第4遊星歯車装置20のリングギヤR4が互いに連結されて第6回転要素RM6が構成されている。
また、上記第1回転要素RM1(サンギヤS4)は第1ブレーキB1によってケース34に選択的に連結されて回転停止させられ、第2回転要素RM2(リングギヤR2)は第2ブレーキB2によってケース34に選択的に連結されて回転停止させられ、第4回転要素RM4(キャリアCA2、CA3)は第3ブレーキB3によってケース34に選択的に連結されて回転停止させられ、第6回転要素RM6(サンギヤS2、S3、およびリングギヤR4)は第1クラッチC1を介して中間出力部材である前記第1遊星歯車装置12のリングギヤR1すなわち第2入力経路PA2に選択的に連結され、第1回転要素RM1(サンギヤS4)は第2クラッチC2を介して同じくリングギヤR1すなわち第2入力経路PA2に選択的に連結され、第2回転要素RM2(リングギヤR2)は第3クラッチC3を介して第1入力経路PA1すなわち入力軸26に選択的に連結され、第3回転要素RM3(リングギヤR5)は第4クラッチC4を介して第1入力経路PA1すなわち入力軸26に選択的に連結され、第5回転要素RM5(リングギヤR3およびキャリアCA4)は前記出力歯車28に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第1ブレーキB1〜第3ブレーキB3、第1クラッチC1〜第4クラッチC4は、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の油圧式摩擦係合装置である。
図2の(a) は、上記第1変速部14および第2変速部24の各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図であり、下の横線が回転速度「0」で、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸26と同じ回転速度である。また、第1変速部14の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリアCA1を表しており、それ等の間隔は第1遊星歯車装置12のギヤ比ρ1に応じて定められる。図は、ギヤ比ρ1=0.427の場合である。第2変速部24の6本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RM1(サンギヤS4)、第2回転要素RM2(リングギヤR2)、第3回転要素RM3(リングギヤR5)、第4回転要素RM4(キャリアCA2、CA3)、第5回転要素RM5(リングギヤR3およびキャリアCA4)、第6回転要素RM6(サンギヤS2、S3、およびリングギヤR4)を表しており、それ等の間隔は第2遊星歯車装置16のギヤ比ρ2、第3遊星歯車装置18のギヤ比ρ3、第4遊星歯車装置20のギヤ比ρ4、第5遊星歯車装置22のギヤ比ρ5に応じて定められる。図は、ギヤ比ρ2=0.349、ρ3=0.419、ρ4=0.301、ρ5=0.262の場合である。なお、第2変速部24の丸付きの数字「1」〜「6」はそれぞれ第1回転要素RM1〜第6回転要素RM6を表している。
そして、この共線図から明らかなように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3が係合させられて、第6回転要素RM6が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに第4回転要素RM4が回転停止させられると、出力歯車28に連結された第5回転要素RM5は「1st」で示す回転速度で回転させられ、最も大きい変速比(=入力軸26の回転速度/出力歯車28の回転速度)の第1速前進ギヤ段「1st」が成立させられる。第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第6回転要素RM6が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力歯車28に連結された第5回転要素RM5は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1速前進ギヤ段「1st」よりも変速比が小さい第2速前進ギヤ段「2nd」が成立させられる。第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第6回転要素RM6が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに第1回転要素RM1が回転停止させられると、第5回転要素RM5は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2速前進ギヤ段「2nd」よりも変速比が小さい第3速前進ギヤ段「3rd」が成立させられる。第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられて、第2変速部24が第1変速部14を介して一体的に減速回転させられると、第5回転要素RM5は「4th」で示す回転速度すなわち第1変速部14のリングギヤR1と同じ回転速度で回転させられ、第3速前進ギヤ段「3rd」よりも変速比が小さい第4速前進ギヤ段「4th」が成立させられる。
第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられて、第6回転要素RM6が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに第2回転要素RM2が入力軸26と一体回転させられると、第5回転要素RM5は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4速前進ギヤ段「4th」よりも変速比が小さい第5速前進ギヤ段「5th」が成立させられる。この第5速前進ギヤ段「5th」は、第1クラッチC1および第4クラッチC4を係合させて成立させることもできる。第3クラッチC3および第4クラッチC4が係合させられて、第2変速部24が入力軸26と一体回転させられると、第5回転要素RM5は「6th」で示す回転速度すなわち入力軸26と同じ回転速度で回転させられ、第5速前進ギヤ段「5th」よりも変速比が小さい第6速前進ギヤ段「6th」が成立させられる。この第6速前進ギヤ段「6th」の変速比は1.0である。第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられて、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに第2回転要素RM2が入力軸26と一体回転させられると、第5回転要素RM5は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6速前進ギヤ段「6th」よりも変速比が小さい第7速前進ギヤ段「7th」が成立させられる。第3クラッチC3および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸26と一体回転させられるとともに第1回転要素RM1が回転停止させられると、第5回転要素RM5は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7速前進ギヤ段「7th」よりも変速比が小さい第8速前進ギヤ段「8th」が成立させられる。
また、第2クラッチC2および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに第2回転要素RM2が回転停止させられることにより、第5回転要素RM5は「Rev」で示す回転速度で逆回転させられ、後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。なお、第2クラッチC2および第3ブレーキB3を係合させ、第1回転要素RM1を第1変速部14を介して減速回転させるとともに第4回転要素RM4を回転停止させることにより、上記後進ギヤ段「Rev」よりも変速比が大きい後進ギヤ段を成立させることも可能で、どちらの後進ギヤ段を採用しても良いし、必要に応じて2段で変速することも可能である。
図2の(b) は、上記各ギヤ段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B3の作動状態との関係をまとめて示す作動表で、「○」は係合、空欄は解放を表しており、クラッチC1〜C4およびブレーキB1〜B3の何れか2つを掴み替えるだけで、連続する各前進ギヤ段の変速を行うことができる。また、各前進ギヤ段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、第3遊星歯車装置18、第4遊星歯車装置20の各ギヤ比ρ1〜ρ4によって適宜定められ、例えばρ1=0.427、ρ2=0.349、ρ3=0.419、ρ4=0.301とすれば、図2(b) に示す変速比が得られ、変速比ステップが略一定で適切な値であるとともに、トータルの変速比幅(=4.169/0.602)も6.921程度と大きく、後進ギヤ段「Rev」の変速比も適当で、全体として適切な変速比特性が得られる。
なお、上記第7速前進ギヤ段「7th」および第8速前進ギヤ段「8th」は、第3クラッチC3を係合させる代わりに第4クラッチC4を係合させ、第3回転要素RM3を入力軸26と一体回転させることによっても成立させることが可能で、それ等の変速比は、図2(a) における第3回転要素RM3(リングギヤR5)の位置すなわち第5遊星歯車装置22のギヤ比ρ5に応じて適宜定められる。すなわち、上記車両用自動変速機10は、第7速前進ギヤ段「7th」および第8速前進ギヤ段「8th」の変速比が異なる2種類のギヤ列を成立させることが可能で、運転者の選択などで何れかのギヤ列が設定されるようになっている。
図3は、上記自動変速機10やエンジン30などを制御するために車両に設けられた制御系統の概略を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン30の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によってアクセル操作量Accに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁56が設けられている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン30のアイドル回転速度NEIDL を制御するために電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御するISC(アイドル回転速度制御)バルブ53が設けられている。この他、エンジン30の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットル弁開度センサ62、車速V(出力歯車28の回転速度Nout に対応)を検出するための車速センサ64、タービン回転速度NT(=入力軸26の回転速度Nin)を検出するためのタービン回転速度センサ66、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ68、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、Mモードスイッチ76、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82、飛越し切換許容スイッチ84、加速度センサ86、車重センサ88、ナビゲーションシステム110、IC情報読取装置112などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、スロットル弁開度θTH、車速V、タービン回転速度NT、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、Mモード(手動変速モード)の選択の有無、変速レンジのアップ要求RUP、ダウン要求RDN、連続切換の許容の有無、車両加速度、車重、交差点までの距離が分かるナビゲーション情報、運転者が携帯しているICチップに記録されている個人情報、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。ICチップは、例えば車両のキーなどに一体的に組み込まれる。
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。電子制御装置90にはまた、インストルメントパネル等に設けられたMモードインジケータ100、レンジインジケータ102、ギヤ段インジケータ104が接続されており、Mモードインジケータ100に手動変速モードが選択されている旨を表示し、レンジインジケータ102に変速レンジを表示し、ギヤ段インジケータ104にギヤ段を表示する。
上記電子制御装置90によるエンジン30の出力制御は、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射装置92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御し、アイドル回転速度制御のためにISCバルブ53を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図4に示す関係から実際のアクセル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン30の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってエンジン30のクランク軸31をクランキングする。
自動変速機10の変速制御は、シフトレバー72のレバーポジションPSHに応じて行われる。シフトレバー72は運転席の近傍に配設され、図5の(a) に示すシフトパターン120に従って移動操作されるようになっている。シフトパターン120は、5つのレバーポジション「P(パーキング)」、「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、および「M(マニュアル)」を備えており、シフトレバー72はその何れかのレバーポジションへ択一的に操作される。レバーポジション「M」には、車両の前後方向に「+」位置および「−」位置が設けられている。
上記レバーポジション「P」は駐車位置で、自動変速機10は動力伝達遮断状態とされるとともに、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってパーキングロック機構などにより機械的に出力歯車28、すなわち駆動輪が回転不能に固定される。レバーポジション「R」は後進走行を行なう後進走行位置で、例えばシフトレバー72の移動操作に従って油圧制御回路98(図3参照)のマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、自動変速機10は前記後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。レバーポジション「N」は動力伝達遮断位置で、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、自動変速機10はクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B3の全部または一部が解放されて動力伝達遮断状態とされる。これらのレバーポジション「P」、「R」、「N」へシフトレバー72が操作されると、そのことがレバーポジションセンサ74によって検出され、レンジインジケータ102にそれ等のポジション「P」、「R」、「N」である旨が表示される。
レバーポジション「D」は、自動変速機10の前進ギヤ段を自動的に切り換えて前進走行する前進走行位置で、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、総ての前進ギヤ段「1st」〜「8th」を成立させることが可能とされ、それ等の総ての前進ギヤ段「1st」〜「8th」を用いて自動的に変速する最上位のDレンジが成立させられる。すなわち、シフトレバー72がレバーポジション「D」へ操作されると、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断してDレンジを電気的に成立させ、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の総ての前進ギヤ段を用いて変速制御を行う。具体的には、油圧制御回路98に設けられた複数のソノレイド弁やリニアソレノイド弁のATソレノイド99の励磁、非励磁を制御することにより油圧回路を切り換え、図2(b) に示すようにクラッチC1〜C4およびブレーキB1〜B3の作動状態を変化させて、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の何れかの前進ギヤ段を成立させるのである。この変速制御は、例えば車速Vおよびスロットル弁開度θTHをパラメータとして予め記憶された変速マップ(変速条件)に従って行われ、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の前進ギヤ段を成立させる。このレバーポジション「D」では、レバーポジションセンサ74からの信号に基づいてDレンジであることがレンジインジケータ102に表示されるとともに、変速制御によって逐次切り換えられる実際の前進ギヤ段がギヤ段インジケータ104に表示される。
レバーポジション「M」は、図6に示す8つの変速レンジを手動操作で切り換えることができる手動変速ポジションで、シフトレバー72がそのレバーポジション「M」へ移動操作されたことをMモードスイッチ76からのON信号によって判断し、シフトレバー72が「+」位置または「−」位置へ操作されることにより変速レンジを電気的にアップダウンする手動変速モードに設定するとともに、その旨を前記Mモードインジケータ100に表示する。図6は、本実施例で電気的に設定される変速レンジとその変速範囲を示した図で、ギヤ段の欄の数字「1」〜「8」は第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」を表しており、変速比が最も大きい最低速前進ギヤ段は何れも第1速前進ギヤ段「1st」で、最高速前進ギヤ段が1つずつ変化している。また、各変速レンジでは、第1速前進ギヤ段「1st」からその最高速前進ギヤ段までの範囲で、前記Dレンジと同じ変速マップに従って自動的に変速が行なわれる。
上記「+」位置はアップシフト位置で、「−」位置はダウンシフト位置であり、シフトレバー72がそれ等の「+」位置または「−」位置へ操作されると、そのことが前記アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82によって検出され、アップ要求RUPやダウン要求RDNを表す信号に従って変速レンジが電気的に変更される。これ等の「+」位置および「−」位置は何れも不安定で、シフトレバー72はばね等の付勢手段により自動的にシフトポジション「M」へ戻されるようになっており、「+」位置または「−」位置への一定時間以上の操作で変速レンジが1つずつアップダウンされ、それに伴って前進ギヤ段が変更される。レバーポジション「M」へ操作されて手動変速モードが設定された時の初期レンジは、本実施例ではレバーポジション「D」と同じDレンジであるが、レバーポジション「M」への操作は変速意志を表していると見做して、Dレンジより1つ低い7レンジを初期レンジとして設定することもできる。上記アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82は切換スイッチに相当し、それ等のスイッチ80、82から出力されるアップ要求RUP、ダウン要求RDNを表す信号は切換要求信号である。
前記Mモードスイッチ76は、シフトレバー72が図5の(a) においてレバーポジション「M」から右側に位置している場合、すなわち上記「+」位置や「−」位置へ操作された場合もON信号を出力するようになっており、レバーポジション「D」へ戻されるまでON状態で、手動変速モードが維持される。
一方、上記手動変速モードにおいて、前記飛越し切換許容スイッチ84を操作しながらシフトレバー72が「+」位置または「−」位置へ操作されると、その保持時間、すなわちアップ要求RUPやダウン要求RDNを表す信号の出力継続時間に応じて、1または複数の変速レンジを飛び越して切り換えるようになっており、多段階の変速レンジを一気に切り換える際の操作が容易となる。その場合に、エンジン30のオーバーランや車両の挙動が不安定になったりすることを防止するため、エンジン回転速度NEやVSC等の判断を用いて、特にダウンシフトについて所定の条件下でレンジ切換を制限し、可能な範囲でできるだけ低速の変速レンジに設定する切換制限手段136(図7参照)が機能的に設けられている。飛越し切換許容スイッチ84は、図5の(b) に示すようにシフトレバー72の操作ノブ73に押込み操作可能に設けられているとともに、操作力が解除されると自動的に戻ってOFFになるもので、押込み操作されている間だけON状態を維持する。この飛越し切換許容スイッチ84は連続変更許容スイッチに相当する。
図7は、電子制御装置90によって行なわれる変速制御に関する一連の信号処理のうち、上記手動変速モードにおいて飛越し切換許容スイッチ84が押込み操作されることによって実施される飛越し切換制御に関する部分を説明する機能ブロック線図で、連続変更手段130、時間間隔設定手段132、レンジ切換手段134、切換制限手段136、変速手段138を備えており、図8および図9に示すフローチャートに従って信号処理を行う。図8のステップS5〜S7は時間間隔設定手段132によって実行され、ステップS9およびS15は連続変更手段130によって実行され、ステップS10、S12、S14、S16、S17はレンジ切換手段134によって実行され、ステップS11およびS13は切換制限手段136によって実行される。レンジ切換手段134は切換手段に相当する。
図8のステップS1では、シフトレバー72が「+」位置および「−」位置を含むレバーポジション「M」に位置していて、Mモードスイッチ76がONか否かを判断する。Mモードスイッチ76がONの場合には、電気的に手動変速モードに設定するとともにMモードインジケータ100に手動変速モードである旨を表示させ、ステップS2以下を実行する。
ステップS2では、シフトレバー72が「+」位置または「−」位置へ操作されてアップシフトスイッチ80またはダウンシフトスイッチ82からアップ要求RUPまたはダウン要求RDNを表す信号が供給されたか否かを判断する。アップ要求RUPやダウン要求RDNの信号が供給された場合は、ステップS3で飛越し切換許容スイッチ84がONすなわち押込み操作されているか否かを判断し、押込み操作されていない場合はステップS4で現在の変速レンジに対して変速レンジを1つだけアップまたはダウンし、それに伴って必要に応じて前記変速手段138により前進ギヤ段を変速する。この変速レンジの変更では、ステップS11と同様に切換制限手段136により変速レンジの切換えが可能か否かを判断し、必要に応じてそのレンジ切換えを禁止する。また、切換え禁止の場合も含めて現在の実際の変速レンジやギヤ段をレンジインジケータ102、ギヤ段インジケータ104に表示し、切換不可の場合はその旨も併せて表示する。
飛越し切換許容スイッチ84がONの場合は、ステップS3に続いてステップS5を実行し、IC情報読取装置112によりキーなどに設けられたICチップから運転者の個人情報を読み込む。個人情報には、アップ要求RUPやダウン要求RDNを表す信号の出力継続時間に応じて変速レンジを飛越し切換する際の変速レンジの変更速度について、運転者の運転嗜好が図10に示すように「速」か「標準」か「遅」かに関する情報、すなわち運転者がそれ等を直接設定したものや、それ等を間接的に判断できる年齢や性別等の情報が含まれている。なお、このように個人情報を読み込む代わりに、運転者の実際の運転状態、例えばブレーキやアクセルの踏み方などの操作傾向、連続切換や手動切換の使用頻度、パワーモードやエコノミーモードの選択状態などから、変速レンジの変更速度に関する運転嗜好(速・標準・遅)を自動的に判断する運転嗜好判断手段を設けることもできる。車両のインストルメントパネル等に、運転者が運転嗜好(速・標準・遅)を自由に選択できる設定装置を設けるようにしても良い。
次のステップS6では、現在の走行状態、具体的には車速V、路面勾配Φ、交差点までの距離Lを読み込む。車速Vは、車速センサ64によって検出され、路面勾配Φは、スロットル弁開度センサ62によって検出されるスロットル弁開度θTH、エンジン回転速度センサ58によって検出されるエンジン回転速度NE、加速度センサ86によって検出される車両加速度、車重センサ88によって検出される車重、などから予め定められた演算式に従って求められる。また、交差点までの距離Lは、ナビゲーションシステム110から得られる現在位置と地図情報から求められるが、可能であればビーコンなどを利用してレーダなどで直接測定するようにしても良い。
ステップS7では、アップ要求RUPやダウン要求RDNを表す信号の出力継続時間に応じて変速レンジを1つずつ順番に連続的に変更する際の変更時間パターンを、上記ステップS5およびS6で読み込んだ個人情報および走行状態に基づいて、図9のフローチャートに従って設定する。図9のステップR1では、個人情報および車速Vに基づいて、例えば図10に示すように個人情報および車速Vをパラメータとして予め設定された6種類の基準パターンの中から対応するものを選択する。図10の基準パターンは、例えば図11に示すようにアップ要求RUPやダウン要求RDNを表す信号(図11はダウン要求RDNの場合)の出力継続時間が長くなるに従って、変速レンジの設定を1つずつ順番に連続的に変更するように定められており、本実施例では出力継続時間が長くなるに従って時間間隔が一定の割合で等比級数的に短くなり、変速レンジの設定の変更速度が徐々に速くなる。
図11は個人設定が「標準」の場合の高車速時(H2)と低車速時(L2)とを比較して示すタイムチャートで、時間t0 は、飛越し切換許容スイッチ84を押込み操作しながらシフトレバー72が「−」位置へ操作された時間である。そして、低車速時(L2)の基準パターンは高車速時(H2)に比較して時間間隔の減少割合が大きく、変速レンジの設定を順番に変更する総ての時間間隔が高車速時(H2)よりも短くて、変速レンジの設定の変更速度が速い。また、個人設定が「速」の場合は「標準」に比較して時間間隔の減少割合が大きく、時間間隔が短くなって変速レンジの設定の変更速度が速い一方、「遅」の場合は「標準」に比較して時間間隔の減少割合が小さく、時間間隔が長くなって変速レンジの設定の変更速度が遅い。
なお、図11は、Dレンジからダウンシフトする場合であるが、その時の変速レンジがDレンジ以外の場合は、その変速レンジから変更を開始すれば良い。また、アップシフトの場合も同様に定められるが、その時間間隔はダウンシフトの場合と同じである必要はなく、適宜定められる。
図9に戻って、ステップR2では路面勾配Φが予め定められた一定値以上か否かを判断し、一定値以上の場合はステップR3を実行し、ステップR1で読み込んだ基準パターンに対して一定の補正係数(<1.0)を掛け算するなどして補正する(補正1)ことにより、変速レンジの設定を変更する時間間隔を短くして変更速度を速くする。ステップR4では、交差点までの距離Lが予め定められた一定値以下か否かを判断し、一定値以下の場合はステップR5を実行し、ステップR1で読み込んだ基準パターン、或いはステップR3で補正された基準パターンに対して一定の補正係数(<1.0)を掛け算するなどして補正する(補正2)ことにより、変速レンジの設定を変更する時間間隔を短くして変更速度を速くする。そして、ステップR6では、ステップR1で読み込んだ基準パターン、或いは必要に応じてステップR3、R5で補正された基準パターンを、実際に使用する変更時間パターンに設定する。なお、路面勾配Φや交差点までの距離Lの大きさに応じて細かく時間間隔を補正するようにしても良い。また、補正により時間間隔が短くなり過ぎることを防止するため、所定の下限ガードを設けるようにしても良い。
図8に戻って、ステップS8ではダウンシフトか否か、すなわちダウン要求RDNを表す信号が供給されているか否かを判断し、ダウンシフトの場合はステップS9以下を実行する。ステップS9では、ステップS7で設定された変更時間パターンに基づいて、ダウン要求RDNを表す信号の出力継続時間に応じて変速レンジの設定を1つずつ順番に連続的にダウンシフト側へ変更するとともに、その変速レンジの変更を連続的にレンジインジケータ102に表示して運転者に知らせる。このステップS9は、ダウン要求RDNを表す信号がOFFになるか、飛越し切換許容スイッチ84がOFFになるか、或いは変速レンジが最下位のLレンジに達するまで行われ、次のステップS10では、最終的に設定された変速レンジを目標レンジに設定する。なお、このステップS9、S10の段階では変速レンジが確定していないため、未確定であることを点滅や色などで表示するようにしても良い。
ステップS11では、目標レンジまでダウンシフトしてもエンジン30がオーバーランしたり車両の挙動が不安定になったりしないか否かを判断する。すなわち、現在の走行状態に基づいて、目標レンジの変速範囲の最高速ギヤ段までダウンシフトできるか否か、例えば目標レンジがLレンジの場合には第1速前進ギヤ段「1st」までダウンシフトできるか否かを判断する。そして、目標レンジへのダウンシフトが可能であれば、ステップS12を実行してその目標レンジを実際の変速レンジに設定し、変速手段138によりその目標レンジの変速範囲の最高速ギヤ段まで飛越し切換により自動変速機10を一気にダウンシフトする。これにより、変速レンジが確定し、その変速レンジや変速されたギヤ段をレンジインジケータ102、ギヤ段インジケータ104に表示する。
上記ステップS11の判断がNOの場合、すなわち目標レンジへのダウンシフトが不可の場合は、ステップS11に続いてステップS13を実行し、現在の走行状態に基づいて目標レンジよりも上の変速レンジの中からダウンシフトが可能な最低の変速レンジを求める。そして、ステップS14で、そのダウンシフトが可能な最低の変速レンジを実際の変速レンジに設定して、レンジインジケータ102に表示するとともに、変速手段138によりその変速レンジの変速範囲の最高速ギヤ段まで自動変速機10を一気にダウンシフトし、そのギヤ段をギヤ段インジケータ104に表示する。変速レンジについては、目標レンジへの切換が不可であった旨も併せて所定時間だけ表示する。
一方、前記ステップS8の判断がNOの場合、すなわちアップシフトの場合には、ステップS8に続いてステップS15〜S17を実行し、ダウンシフトの場合のステップS9、S10、S12と同様に、アップ要求RUPを表す信号の出力継続時間に応じて変速レンジの設定をアップシフト側へ変更し、飛越し切換によるアップシフトを行う。アップシフトの場合は、エンジン30がオーバーランする恐れはないとともに車両の挙動が不安定になる可能性も小さいため、前記ステップS11に相当する判断は必ずしも必要なく、そのまま目標レンジまでアップシフトすれば良い。
このように、本実施例の変速制御装置においては、ステップS9やS15で連続変更手段130が変速レンジの設定を変更する際の変更時間パターンが、ステップS5〜S7において時間間隔設定手段132により個人情報や走行状態に基づいて可変設定されるため、変速レンジの設定の変更速度が変更され、狙い通りの変速レンジへの切換操作性を確保しつつ、車両の走行状態や運転者の嗜好などよって定まる一定の条件下では変速レンジの設定が速やかに変更されて、変速レンジやギヤ段が素早く切り換えられるようになる。
具体的には、図11に示すように低車速時には高車速時に比べて変更時間パターンの時間間隔が短いため、車両停止時や減速時、或いは登坂路で車速Vが低下した場合などに、変速レンジの設定が素早く変更されて速やかにダウンシフトが行われる一方、高車速時には変更速度が遅いため、例えばレンジインジケータ102の表示を見ながらシフトレバー72を「−」位置からレバーポジション「M」へ戻すか、飛越し切換許容スイッチ84の押込みを解除することにより、狙い通りの変速レンジへ容易に切り換えることができる。
また、路面勾配Φが大きい時には小さい時に比べて変更時間パターンの時間間隔が短くなるように補正されるため、登坂路や降坂路で変速レンジの設定が素早く変更されてダウンシフトが行われることにより、大きな駆動力やエンジンブレーキが速やかに得られる一方、平坦路では変更速度が遅いため、例えばレンジインジケータ102の表示を見ながらシフトレバー72を「−」位置からレバーポジション「M」へ戻すか、飛越し切換許容スイッチ84の押込みを解除することにより、狙い通りの変速レンジへ容易に切り換えることができる。
また、交差点までの距離Lが短い時には長い時に比べて変更時間パターンの時間間隔が短くなるように補正されるため、交差点で停止したり減速したりする際に変速レンジの設定が素早く変更されて速やかにダウンシフトが行われる一方、交差点以外の通常の走行時には変更速度が遅いため、例えばレンジインジケータ102の表示を見ながらシフトレバー72を「−」位置からレバーポジション「M」へ戻すか、飛越し切換許容スイッチ84の押込みを解除することにより、狙い通りの変速レンジへ容易に切り換えることができる。
また、ICチップに記録された運転者の個人情報に基づいて、変速レンジの設定の変更速度が「速」、「標準」、「遅」の3種類の変更時間パターンが設定されるため、運転嗜好が異なる種々の運転者に対して、その運転嗜好に合致した操作性が得られるようになる。
また、アップ要求RUPやダウン要求RDNを表す信号の出力継続時間が長くなるに従って変更時間間隔が等比級数的に短くなるため、変速レンジの設定の変更速度が次第に速くなって多段階の切換えが短時間で速やかに行われるとともに、レンジインジケータ102に表示される変速レンジの変化も次第に速くなり、運転者の要求や感覚に合致した切換制御が行われるようになって、切換操作性が一層向上する。すなわち、飛越し切換許容スイッチ84を押込み操作して多段階の切換えを一気に行おうとする場合、運転者は速やかにその切換えが行われることを望んでいる可能性が高いため、切換要求信号(RUP信号やRDN信号)の出力継続時間が長くなるに従って変更速度を速くすれば、速やかな切換を望んでいる運転者の切換要求や感覚に合致する一方、切換要求信号の出力継続時間が短い間は変更速度が遅いため、狙い通りの変速レンジへ容易に切り換えることができるのである。
なお、上記実施例の変更時間パターンは、切換要求信号(RUP信号やRDN信号)の出力継続時間が長くなるに従って変更時間間隔が等比級数的に短くされていたが、図12に示すように、切換要求信号の出力継続時間の長さに拘らず一定の時間間隔で変速レンジの設定が変更されるように定めることもできる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用自動変速機 72:シフトレバー 80:アップシフトスイッチ(切換スイッチ) 82:ダウンシフトスイッチ(切換スイッチ) 130:連続変更手段 132:時間間隔設定手段 134:レンジ切換手段(切換手段) RUP:アップ要求(切換要求信号) RDN:ダウン要求(切換要求信号)
ステップS5〜S7:時間間隔設定手段
ステップS9、S15:連続変更手段
ステップS10、S12、S14、S16、S17:レンジ切換手段(切換手段)