JP2005504155A - 水性のスチレン−ブタジエンポリマー分散液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は水性のスチレン−ブタジエンポリマー分散液を、スチレン、ブタジエン及び場合により、スチレン及びブタジエンとは異なるエチレン性不飽和コモノマーを含有するモノマー混合物Mを重合容器中でモノマー供給法により、水素原子の引き抜きによってペンタジエニルラジカル又は1−フェニルラジカルを形成する化合物及びα−メチルスチレン二量体から選択される6〜20個のC原子を有する少なくとも1種の炭化水素KW並びに少なくとも1つのSH基を有する有機化合物Sを含有する調節剤系の存在下にラジカル水性乳化重合させることによって製造するための方法において、少なくとも30%の炭化水素KWを重合容器に初充填することを特徴とする方法に関する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性のスチレン−ブタジエンポリマー分散液を、モノマー供給法によるスチレン及びブタジエンを含有するモノマー混合物のラジカル水性乳化重合によって製造するための方法に関する。本発明はまた前記の方法により得られるスチレン−ブタジエンポリマー分散液並びにその紙塗被塗料におけるバインダーとしての使用に関する。
【0002】
紙及び厚紙は、その印刷性及び光学的特性、例えば光沢性、白色度及び不透明度の改善のためにその製造時にしばしば顔料含有被覆を施与される。この場合に使用される被覆材料(紙塗被塗料とも呼称される)は顔料の他に、個々の顔料粒子を互いに、そして紙表面に結合させ、従って閉鎖顔料層を形成するために用いられるバインダーを含有する。
【0003】
特に印刷されるべき印刷用紙及び厚紙を被覆、すなわち塗被する。更に特殊紙、例えばラベル、壁紙及び接着性ラベルのための支持体として使用される印刷されないシリコン紙を被覆する。
【0004】
バインダーが紙塗被組成物中に一般に100質量部の顔料に対して30質量部までにすぎない量で含まれているにも拘わらず、紙の特性、特に印刷性能及び外観に決定的な影響を及ぼす。印刷性能のために、例えば平滑度、無気泡、圧縮性並びに液体、例えば印刷インキ又は湿し水に対する吸収挙動が重要である。また重要な基準は、機械的負荷に対する被覆の安定性である。特にオフセット印刷では高い機械的安定性が保証されねばならない。それというのも該表面は使用される印刷インキのタックに基づいて機械的に非常に強く負荷を受ける。オフセット印刷で使用される湿し水に基づいて、この機械的強度は湿った状態でも保証されねばならない。紙被覆の機械的耐負荷能力はピック強度と呼称され、湿った状態での機械的負荷はウェットピック強度と呼称される。
【0005】
紙被覆のピック強度はますます重要性を増している。それというのも昨年に激しく高められた印刷速度が紙面の機械的負荷をますます高めたからである。それに基づいて、バインダーとして先行技術で使用される水性重合体分散液が被覆においてますます高められた質量割合で使用される。しかしながらこのことは、紙被覆のための使用材料の望ましくないコスト増大を引き起こした。更に高められたバインダー割合は紙の光学的特性及び印刷性を悪い方に変える。こうして、高められたバインダー割合は印刷インキの吸収挙動を緩慢にし、これはとりわけ積載において印刷インキが裏移りする可能性を引き起こす。
【0006】
EP−A407059号は、連鎖移動剤の存在下に製造される、少なくとも5%のゲル割合を有するブタジエン含有のコポリマーラテックスを製造する方法を記載している。連鎖移動剤としては、とりわけテルペン炭化水素及び硫黄含有の連鎖移動剤が挙げられる。そこに記載されるラテックスは、バインダーとして紙被覆剤中で使用できる。
【0007】
DE19512999号から、重合体が少なくとも5K互いに異なっている2種のゲル変換点を有する多相のスチレン−ブタジエンコポリマーラテックスをバインダーとして含有する紙被覆剤が公知である。その製造は、一般に重合されるべきモノマーの連鎖移動剤の存在下での乳化重合によって行われる。連鎖移動剤として、とりわけアルキルメルカプタン及び炭化水素、例えばテルピノーレン又はα−メチルスチレン二量体が使用される。しかしながら多相のポリマーの製造は付加的な出費に関連している。
【0008】
ドイツ国特許出願P10046930.2号は、調節剤(連鎖移動剤)としての硫黄含有化合物及びテルピノーレンからなる混合物の存在下に乳化重合することによって製造され、その際、該調節剤は重合反応にその過程で供給される、実質的に単相のスチレン−ブタジエンラテックスの製造を記載している。
【0009】
先行技術に記載されるブタジエン−スチレンラテックスはしばしばピック強度、特にウェットピック強度の必要条件を所望の範囲で満たすことができない。先行技術で提案される重合調節剤としてのテルピノーレンの使用は、そこに示される条件下に同様に満足な生成物をもたらさない。更に残留モノマー含量は、部分的に満足いくものではない。
【0010】
従って本発明の課題は、容易に製造され、そして少ない使用量でも紙塗被組成物において高い乾燥性及びウェットピック強度を有する紙被覆をもたらすポリマーラテックスを提供することである。
【0011】
意想外にも前記課題は、100質量%のモノマーに対して
− 0.02〜0.5質量%の、水素原子の引き抜きによってペンタジエニルラジカル又は1−フェニルラジカルを形成する化合物及びα−メチルスチレン二量体から選択される6〜20個のC原子を有する少なくとも1種の炭化水素KW並びに
− 0.3〜2質量%の、少なくとも1つのSH基を有する有機化合物Sを含有し、かつ少なくとも30%、有利には少なくとも50%、特に少なくとも80%、特に有利には全量(もしくは>95%)の炭化水素KWを重合容器に初充填することを特徴とする調節剤系の存在下に、スチレン−ブタジエン含有のモノマー混合物をモノマー供給法によりラジカル水性乳化重合させることによって製造される、スチレン−ブタジエンポリマーラテックスによって解決されることが判明した。
【0012】
それに応じて、本発明は水性のスチレン−ブタジエンポリマー分散液を、
− スチレン、
− ブタジエン及び場合により
− 100質量%のモノマーMに対して30質量%までの、スチレン及びブタジエンとは異なるエチレン性不飽和コモノマー
を含有するモノマー混合物Mを、前記の調節剤系を前記のように供給することを特徴とするモノマー供給法によりラジカル水性乳化重合させることによって製造するための方法に関する。
【0013】
有機化合物Sは基本的に重合容器中に初充填してよい。しかしながら有利には主要量、特に少なくとも70%、tこうに有利には少なくとも90%、特に全量の有機化合物Sを重合反応にその過程において供給する。有利には主要量の化合物S、特に全量の化合物Sの添加をモノマー添加と並行して、特にモノマー供給物中で実施する。
【0014】
該方法により得られるポリマー分散液は、低い凝集物割合、高い機械的安定性及び低い残留モノマー含量によって優れている。更に前記の分散液を用いて、低いバインダー割合でも、ピック強度、特にウェットピック強度に関して先行技術の紙塗被組成物を凌駕する紙塗被組成物を製造できる。従って本発明による方法により得られるポリマー分散液も同様に本発明の対象である。
【0015】
本発明による調節剤系は、有利には0.05〜0.4質量%、特に0.1〜0.3質量%の少なくとも1種の炭化水素KW及び、有利には0.5〜1.8質量%、特に0.7〜1.5質量%の、少なくとも1個のSH基を有する少なくとも1種の有機化合物を含有する。一般にテルピノーレンと化合物Sとの質量比は、少なくとも1:100、有利には少なくとも1:50、特に少なくとも1:10である。該比は高くて1:1.25、特に高くて1:1.5、特に有利には高くて1:2である。
【0016】
有利な化合物Sは疎水性モノマーのスチレン及びブタジエン中に可溶性である。特に該化合物は、C4〜C18−アルキルメルカプタン、例えばn−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン及びステアリルメルカプタンから選択される。
【0017】
適当な炭化水素KWは、α−メチルスチレン二量体の他に、水素原子の引き抜きによってペンタジエニルラジカル又は1−フェニルアリルラジカルを形成する全ての化合物である。該化合物は、C3原子上に1又は2個の水素原子を有する1,4−ペンタジエン構造(構造A):
【0018】
【化1】
又はC5原子上に1又は2個の水素原子を有する1,3−ペンタジエン構造(構造B):
【0019】
【化2】
を有し、その際、二重結合の1つがフェニル環の構成要素であってもよい化合物である。構造A及びBにおいて、垂線は開放原子価を示すが、二重結合の立体化学についての意味は満たしていない。開放原子価は、水素、アルキル基又はフェニル基で満たされていてよく、又は2つの開放原子価あたりに1つの5又は6員の炭素環を形成してよい。二重結合を介して互いに結合された2つのC原子の原子価は二重結合のC原子と一緒にフェニル環を表すことができる。
【0020】
構造Aを有する化合物のための例は1,4−ジヒドロベンゼン、γ−テルピネン、テルピノーレン及びノルボルナジエン並びに更にα−イオノンである。構造Bを有する炭化水素のための例は1,3−シクロヘキサジエン、α−テルピネン及びα−フェランドレンである。炭化水素KWという用語は、水素の脱離下に構造A又はBを形成する炭化水素ケトン及び炭化水素アルコールをも含む。有利な炭化水素調節剤は、γ−テルピネン、テルピノーレン及びα−メチルスチレン二量体、特にテルピノーレンである。
【0021】
「モノマー供給法」という用語は、先行技術で使用され、そして「バッチ法」と異なって、重合されるべきモノマーを完全に反応容器中に初充填せず、重合されるべき全モノマーの主要量、通常は少なくとも70%、有利には少なくとも80%、特に90%又は全量を定義された時間に亘って重合反応に重合反応条件下に供給する重合法を示している。重合条件という用語は、当業者に、重合反応器が重合反応の開始のために十分な量の開始剤を含有し、かつ反応器内容物が、開始剤が重合の開始のために十分な分解速度を示す温度を有することと解する。温度及び分解速度の間の関連は当業者に、通常の重合開始剤について十分に知られているか、又は慣例の実験において調査できる。
【0022】
モノマー供給物における濃度の記述は、これ以降では特に記載がない限り、その添加の時点での供給物中の1成分の事実上の濃度を指す。モノマー濃度の質量%での記述は、この場合に当該の時点でもしくは当該の時間間隔で供給されるモノマーの全量を指す。それに応じて、全体の記述は、供給の全時間に亘って添加される成分の全量を指す。特に記載がない限り、モノマー供給物とは全てのモノマー供給物の合計であると解されるべきである。
【0023】
残留揮発性成分の含量の低減のために、モノマーをできる限り迅速に重合反応に供給することが有利であると見なされる。有利には重合されるべきモノマーを最大で8時間以内、特に2〜6時間以内、特に有利には2.5〜5時間以内に重合反応に供給する。
【0024】
本発明の有利な実施態様においては、少なくとも70%の重合されるべきモノマーが重合反応に供給されている時点で、モノマー供給物中のブタジエンの濃度を、全供給時間の少なくとも1%の時間に亘って、供給物中のモノマーに対して少なくとも10質量%、有利には少なくとも15質量%、例えば10〜40質量%、特に15〜30質量%だけ増大させる。
【0025】
一般にモノマー供給物が高められたブタジエン濃度を有する時間間隔が、モノマー供給の全時間の少なくとも1%、特に少なくとも2%であり、かつ有利には20%の、特に10%の時間を超過せず、かつ例えばモノマー供給の全時間の1〜20%、特に2〜10%である。
【0026】
有利にはモノマー供給物中のブタジエンの濃度を少なくとも50質量%、特に少なくとも55質量%に増大させる。それに応じて、前記の時間の間のスチレン濃度は50質量%以下、特に有利には45質量%以下である。
【0027】
有利には供給物組成の変更は、重合されるべきモノマーの少なくとも75%、特に少なくとも80%、有利には99%まで、特に95%まで、特に有利には90%までが重合反応に供給されている場合に行われる。
【0028】
モノマー供給物中の組成の変更は、連続的又は段階的に1段階以上で、例えば2、3、4、5又は6段階で又はモノマー添加の完了前に終了する限られた時間間隔内で最終値まで行われてよい。
【0029】
モノマー供給物の組成の変更は、種々の様式で制御できる。例えばブタジエン及びスチレンを別個のモノマー供給物を介して重合反応に供給してよい。又は1モノマー種の部分量、例えば部分量のブタジエンを、該モノマーの残留量とは別個の供給物を介して重合反応に供給する。そうするとモノマー供給物の相対供給速度の変更は、簡単な様式でモノマー供給物の全体の組成の変更をもたらす。もちろんモノマーM1及びM2及び場合によりM3は全供給を介しても重合反応に供給でき、かつ供給物の事実上の組成は、液流の連続的混合を可能にする適当な混合装置によって事前に調整できる。この場合に特にスタティックミキサーが適当である。
【0030】
有利な実施形Aにおいては、スチレン含有モノマー供給物の供給速度をブタジエン供給の速度が一定である場合にモノマー添加の完了に向かって低減させ、それも有利には、モノマー供給物中のスチレンの割合がモノマー添加の完了の時点で40質量%未満、特に20質量%未満、殊に0質量%であるように低減させる。有利にはモノマーの80%、特に90〜99.5%、特に有利には95〜99%が供給されている場合に変更が行われる。これは、特に簡単な様式においてスチレン供給の停止によってブタジエン供給完了前に、重合されるべき全体のブタジエンの、特に90〜99.5質量%、特に有利には95〜99質量%が供給されている場合にうまくいく。
【0031】
反対に、スチレン添加の速度が一定である場合に、ブタジエン供給速度はモノマー添加の完了に向かって最終値にまで高められるか、又は少なくとも限られた時間間隔で高められる(実施形B)。また両者の措置を互いに組み合わせてもよい。高められたブタジエン供給速度の段階の時間に関しては前記のことが言える。
【0032】
実施形Bの特殊形として、スチレン及びブタジエン及び場合によりモノマーM3を含有するモノマー混合物をほぼ一定のモノマー組成で重合反応にモノマー供給物Mz1として供給し、その際、Mz1の全組成物中のブタジエンの割合が重合されるべきモノマー組成物中の全ブタジエン量に対して0.5〜20質量%だけ低減されている実施形B′が特に有利である。モノマー供給物Mz1の少なくとも70%、有利には75〜99%、特に80〜95%が重合反応に供給されている場合に、重合されるべき全体のブタジエンの全量に対して0.5〜20質量%、有利には1〜10質量%、特に2〜5質量%のブタジエンを、モノマー供給物Mz1の残留量と平衡して供給物Mz2として添加する。供給物Mz2は、有利には5質量%未満の、ブタジエンとは異なるモノマーM2及び/又はM3を含有する。特に供給物Mz2は唯一のモノマーとしてブタジエンを含有する。Mz2の添加は、前記の時点で開始して重合反応の完了まで又は短い間隔の中で行われてよい。供給物Mz2の全時間は、有利にはMz1の全時間の、有利には1〜20%、特に2〜10%である。供給物Mz1及びMz2はこの場合に物質流として解される。Mz1及びMz2を、別個の供給口を介して重合反応器中に供給してもよい。同様に、物質流Mz1及びMz2に相当するモノマー量を適当な混合装置を使用して共通の導管を用いて反応器中に供給することも可能である。
【0033】
モノマーの添加は、モノマー自体の混合物の形でも、モノマーM1〜M3の水性エマルジョンの形でも実施でき、その際、後者の措置が一般に有利である。実施形B′において、しばしばブタジエン豊富な供給物Mz2を純粋モノマーもしくはモノマー混合物として、かつ供給物Mz1を水性エマルジョンとしてポリマー反応に供給する。
【0034】
これらのモノマーを重合反応に水性エマルジョンとして供給する場合に、モノマー割合は、エマルジョンの全質量の、通常30〜90質量%、特に40〜80質量%である。その他に、モノマーエマルジョンは一般に少なくとも一部の、有利には少なくとも70質量%の、特に少なくとも80質量%の、又は全量の、乳化重合のために慣用の必要とされる界面活性化合物を含有する。
【0035】
生じる重合体において、モノマー組成の変更によっても記載されるように、例えば複数のガラス転移温度によってポリマーのDSCにおいて明らかな多相性を生じない。
【0036】
本発明による方法のために、基本的にラジカル水性乳化重合のために公知の開始剤系が適当である。有利な開始剤は水溶性である。ペルオキシド基を有する係る開始剤、例えば無機及び有機のペルオキシド及びヒドロペルオキシドが特に有利である。過酸化水素及びペルオキソ二硫酸の塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウムが特に有利である。また有機のヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドが適当である。部分的に、前記のペルオキシドと一緒に還元剤及び/又は原子価状態を変更しうる金属化合物を使用することが有効であると示されている。
【0037】
適当な還元剤はアスコルビン酸、ヒドロキシメタンスルフィン酸、アセトンの亜硫酸水素付加物、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムである。適当な金属化合物のための例は、鉄、バナジウム又は銅の塩及び水溶性錯体である。通常、ラジカル開始剤は重合されるべきモノマーに対して0.1〜3質量%の量で使用される。
【0038】
重合温度は当然のように、重合開始剤の分解特性に依存し、そして、有利には少なくとも60℃、特に少なくとも70℃、特に有利には少なくとも80℃、より特に有利には少なくとも90℃である。有利には高価な圧力装置を回避するために120℃、有利には110℃の重合温度が慣用である。
【0039】
低い残留モノマー含量を達成するために、重合の間に反応混合物を激しく混合する際に有利であると見なされる。激しく混合することは、例えば特定の撹拌機を高い撹拌速度と組み合わせて使用することによって、撹拌機とステーターとを組み合わせることによって、又は高速循環装置、例えば循環ポンプによって反応混合物をバイパスを介して達成でき、その際、バイパス自体は剪断力の発生のための装置、例えば固定された取付物、例えば剪断板又は多孔板を備えていてよい。特定の撹拌機とは、接線流動成分の他にも軸方向流動場も発生させるような撹拌機を意味する。かかる撹拌機は、例えばDE−A19711022号に記載されている。特に多段階撹拌機が有利である。接線流動成分及び軸方向流動成分を発生させるための特定の撹拌機のための例は、クロスアーム撹拌機、MIG(R)及びINTERMIG(R)撹拌機(EKATO社の多段階インパルス向流撹拌機及び干渉多段階インパルス向流撹拌機)、軸流タービン撹拌機(前記の撹拌機は一段階又は多段階で構成され、かつ慣用の撹拌機と組み合わされていてよい)、更にヘリカル型撹拌機、有利には隔壁状のヘリカル型撹拌機、アンカー型の隔壁状の撹拌機及び1段階又は多段階の高速流動する中央撹拌機を有する同軸撹拌機並びに多段階ブレード撹拌機である。更にDE−C14421949号、JP−A292002号、WO93/22350号に記載される撹拌機の種類が適当である。
【0040】
一般にラジカル水性乳化重合は界面活性化合物の存在下に行われる。界面活性化合物とは、乳化剤も、乳化剤と異なって一般に2000ダルトンを上回る分子量を有し、水溶性である保護コロイドも意味する。界面活性物質は、モノマーと一緒に、例えば水性モノマーエマルジョンの形で供給してよい。もちろん界面活性物質の一部又は全量を重合容器中に初充填してもよい。
【0041】
有利な乳化剤は、一般に分散液中の重合体もしくは重合されるべきモノマーMに対して0.2〜10質量%、有利には0.5〜5質量%の量で使用されるアニオン系及び非イオン系の乳化剤である。
【0042】
アニオン系乳化剤には、アルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C20)の、エトキシル化アルカノール(EO−度:2〜50、アルキル基:C8〜C20)及びエトキシル化アルキルフェノール(EO−度:3〜50、アルキル基:C4〜C20)の硫酸半エステルの、アルキルスルホン酸(アルキル基:C8〜C20)の及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C4〜C20)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩が該当する。更なる適当なアニオン系乳化剤は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, 192〜208頁に記載されている。
【0043】
アニオン系界面活性物質には、一般式I
【0044】
【化3】
[式中、R1及びR2が水素又は直鎖状又は分枝鎖状の、6〜18個のC原子、特に6、12及び16個のC原子を有するアルキル基を意味し、その際、R1及びR2が両者とも同時に水素ではない]の化合物も該当する。X及びYは有利にはナトリウム、カリウム又はアンモニウムイオンであり、その際、ナトリウムが特に有利である。しばしば50〜90質量%の割合のモノアルキル化製品を有する工業的混合物、例えばDowfax(R)2A1(ダウケミカルカンパニー社の商標)が使用される。化合物Iは一般に、US−A4269749号から公知である。
【0045】
適当な非イオン系乳化剤は、芳香脂肪族又は脂肪族の非イオン系乳化剤、例えばエトキシル化モノ−、ジ−及びトリ−アルキルフェノール(EO−度:3〜50、アルキル基:C4〜C9)、長鎖アルコールのエトキシレート(EO−度:3〜50、アルキル基、C8〜C36)並びにポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド−ブロックコポリマーである。長鎖アルカノールのエトキシレート(アルキル基:C10〜C22、平均エトキシル化度:3〜50)が有利であり、そのうち直鎖状又は分枝鎖状のC12〜C18−アルキル基及びエトキシル化度8〜50を有するオキソアルコール及び天然アルコールをベースとするものが特に有利である。
【0046】
有利には本発明による方法ではアニオン系乳化剤又は少なくとも1種のアニオン系及び非イオン系の乳化剤の組み合わせが使用される。
【0047】
適当な保護コロイドは、例えばポリビニルアルコール、デンプン誘導体及びセルロース誘導体、カルボキシル基を有するポリマー、例えばアクリル酸及び/又はメタクリル酸とコモノマー、例えばスチレン、オレフィン又はヒドロキシアルキルエステルとのホモポリマー及びコポリマー、又はビニルピロリドンを含有するホモポリマー及びコポリマーである。更に適当な保護コロイドの詳細な記載はHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, 411〜420頁に記載されている。
【0048】
また乳化剤及び/又は保護コロイドからの混合物を使用してよい。
【0049】
紙塗被組成物中でのバインダーとしての使用に関しては、重合されるべきモノマー混合物は20〜80質量%、特に40〜70質量%のスチレン及び20〜80質量%、特に30〜55質量%のブタジエンの他に30質量%まで、有利には20質量%まで、特に10質量%まで、例えば0.5〜20又は1〜10質量%のスチレン及びブタジエンとは異なるエチレン性不飽和コモノマーを含有する。コモノマーのための例は:
− 酸基を有するモノエチレン性不飽和モノマー、例えば3〜10個のC原子を有するモノカルボン酸及びジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アクリルアミドグリコール酸、ビニル酢酸、マレイン酸、イタコン酸及びマレイン酸とC1〜C4−アルカノールとの半エステル、エチレン性不飽和スルホン酸、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸、例えばビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、スチレンホスホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸及びそれらの水溶性塩、例えばそれらのアルカリ金属塩、有利にはアクリル酸及びメタクリル酸かかるモノマーはモノマーM中に10質量%までの量で、例えば0.1〜10質量%、有利には0.1〜4質量%の量で含まれていてよい;
モノエチレン性不飽和カルボン酸のアミド、例えばアクリルアミド及びメタクリルアミド並びにN−(ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル)アミド、有利にはエチレン性不飽和カルボン酸のN−メチロールアミド、例えばN−メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミドかかるモノマーはモノマーM中に10質量%までの量で、例えば0.1〜10質量%、有利には0.1〜4質量%の量で含まれていてよい。
【0050】
− モノエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、特にヒドロキシエチルエステル及びヒドロキシプロピルエステル及びヒドロキシブチルエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレート。かかるモノマーはモノマーM中に10質量%までの量で、例えば0.1〜10質量%、有利には0.5〜5質量%の量で含まれていてよい。
【0051】
有利には3〜10個のC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、例えばアクリルニトリル及びメタクリルニトリルかかるモノマーはモノマーM中に30質量%までの量で、例えば1〜30質量%、有利には5〜20質量%の量で含まれていてよい。
【0052】
− 反応性モノマー:反応性モノマーには、架橋のために適当な反応性官能基を有するモノマーが該当するこれには、前記のエチレン性不飽和カルボン酸、そのN−アルキロールアミド及びヒドロキシアルキルエステルの他に、カルボニル基又はエポキシ基を有するモノマー、例えばN−ジアセトンアクリルアミド、N−ジアセトンメタクリルアミド、アセチルアセトキシエチルアクリレート及びアセチルアセトキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートが該当する。かかるモノマーはモノマーM中に10質量%までの量で、例えば0.5〜10質量%の量で含まれていてよい。
【0053】
− 並びに架橋性モノマー:架橋性モノマーには、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和結合を有するモノマー、例えば二官能性及び三官能性のアルコールのジアクリレート及びトリアクリレートもしくは−メタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートが該当する。かかるモノマーはモノマーM中に2質量%までの量で、有利には1質量%以下、例えば0.01〜2質量%、有利には0.01〜1質量%の量で含まれていてよい。有利な実施態様においては、モノマーMは架橋性モノマーを含有しない。
【0054】
有利なコモノマーは3〜10個のC原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、それらのアミド、それらのヒドロキシ−C2〜C4−アルキルエステル、それらのN−(ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル)アミド並びに前記のエチレン性不飽和ニトリルである。特に有利なコモノマーは、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸である。
【0055】
特に有利な実施態様においては、重合されるべきモノマーの混合物Mは
− 40〜70質量%のスチレン、
− 30〜59質量%のブタジエン及び
− 1〜10質量%のエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸
を含有する。
【0056】
もう一つの有利な実施態様においては、スチレンの一部、有利には全モノマー量に対して5〜20質量%がアクリルニトリル及び/又はメタクリルニトリルと置換されている。前記の有利な実施態様においては、重合されるべき混合物は、例えば
− 30〜65質量%のスチレン、
− 30〜59質量%のブタジエン、
− 5〜20質量%のアクリルニトリル及び/又はメタクリルニトリル及び
− 1〜10質量%のエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸
を含有する。
【0057】
紙塗被塗料におけるバインダーとして使用することに関して、重合により得られる重合体が−20〜+50℃の範囲、有利には0〜30℃の範囲のガラス転移温度を有する場合に有利であると見なされる。ガラス転移温度としては、本願ではASTM3418−82に従ってDSCを用いて規定できる、いわゆる中点温度に相当する。
【0058】
ガラス転移温度は使用されるモノマー混合物Mに亘って公知のように制御できる。
【0059】
フォックス(T.G. Fox著, Bull. Am. Phys. Soc. (Ser II) 1, 123[1956]及びUllmann's Encyclopaedie der technischen Chemie, Weinheim(1980), 17,18頁)によると、混合重合体のガラス転移温度関しては、次の良好な近似が適用される。
【0060】
【数1】
[式中、X1、X2、....Xnはモノマー1、2....nの質量分率であり、Tg 1、Tg 2....Tg nはそれぞれモノマー1、2....nの一つだけから構成された重合体のガラス転移温度(ケルビンで示す)を意味する]。ガラス転移温度は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, Weinheim, Vol A 21 (1992) 169頁又はJ. Brandrup, E.H. Immergut, Polymer Handbook 第3版., J. Wiley, New York 1989から公知である。ポリスチレンはそれによれば、380KのTgを有し、そしてポリブタジエンは171Kもしくは166KのTgを有する。
【0061】
本発明による方法により得られる重合体は、一般に1000nm未満の質量平均粒径を有する。粒度のdw値は、通常のように、粒度の質量平均として定義され、例えば該値は、W. Scholtan und H. Lange, Kolloid-Z. und Z.-Polymere 250 (1972) 782〜796頁の方法に相応して分析的超遠心分離器を用いて測定される。超遠心分離測定は、試料の粒径の積分質量分布を提供する。そこから、何質量パーセントの粒子が規定サイズと同じ直径又はそれ未満の直径を有するかを得ることができる。本発明による紙塗被組成物中での使用に関して、質量平均粒径は、有利には500nm未満、特に300nm未満、特に有利には50〜300nmの範囲、殊に有利には70〜200nmの範囲である。
【0062】
水性重合体分散液のポリマー粒度の調整法は先行技術から公知である。有利には乳化重合は規定のポリマー粒度の調整のためにシードラテックス法により又はインサイチューで製造されるシードラテックスの存在下に実施される。このための方法は公知であり、そして先行技術から引用できる(EP−B40419号並びに'Encyclopedia of Polymer Science and Technology', Vol 5, John Wiley & Sons Inc., New York 1966, 847頁を参照のこと)。
【0063】
一般に、乳化重合を1種以上の非常に微細なポリマーの存在下に水性ラテックスの形(いわゆるシードラテックス)で実施することが有利であると見なされる。有利には0.1〜5質量%、特に0.2〜3質量%の少なくとも1種のシードラテックス(全モノマー量に対するシードラテックスの固体含量)を使用する。シードラテックスは、部分的に又は完全にモノマーと一緒に重合反応に供給してよい。しかしながら有利には該方法はシードラテックスを初充填して(初充填シード)行われる。該ラテックスは、一般に10〜200nm、有利には20〜100nm、特に20〜50nmの質量平均粒度を有する。それらの構成するモノマーは、例えばスチレン、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート及びその混合物であり、その際、シードラテックスは副次的な量で、エチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はそのアミドを、有利にはシードラテックス中の重合体粒子の全質量に対して10質量%未満で重合導入されて含有してよい。
【0064】
シードラテックスの使用に際して、しばしば、シードラテックスを部分的又は完全に、有利には少なくとも80%まで重合容器中に初充填し、開始剤の一部、有利には前記の割合の開始剤及び場合により一部の重合されるべきモノマーを添加し、そして所望の重合温度に加熱するという手段をとる。もちろん、開始剤及びシードラテックスの導入を逆の順序で実施してもよい。有利にはモノマーの添加をまず重合条件下で実施する。通常は初充填は開始剤及びシードラテックスの他に更に水及び場合により界面活性化合物の一部を含有する。
【0065】
一般に重合の間にpH値9を超過しない。pH値の調整は、重合反応の過程で中和剤を添加することによって容易に行われる。重合の間にpH値が上昇した場合には、例えば塩基、例えばアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩が適当である。このことは、例えば重合開始剤としてペルオキソ硫酸塩を使用した場合に該当する。
【0066】
重合反応に引き続き、更に分散液中の未反応のモノマー(いわゆる残留モノマー)を低減させるためにしばしば後重合を行う。この後重合はしばしば化学的脱臭としても呼称される。化学的脱臭は、一般にラジカル後重合によって、特にDE−A4435423号、DE−A4419518号並びにDE−A4435422号に挙げられているレドックス開始剤系の作用下に行われる。有利には後重合は、少なくとも1種の有機ペルオキシド及び還元剤、有利には無機亜硫酸塩又はα−ヒドロスルホン酸もしくはα−ヒドロスルフィン酸の塩(カルボニル化合物の亜硫酸水素付加物)からのレドックス開始剤系を用いて実施される。後重合のための開始剤の量は、一般に重合される全モノマーに対して0.1〜5質量%、有利には0.2〜3質量%、特に0.3〜2質量%の範囲である。複数の成分からなる開始剤系、例えばレドックス開始剤系では量の記述はそれらの成分の全量に関連するものである。化学的脱臭は、有利には60〜100℃、特に70〜95℃の範囲の温度で実施する。化学的脱臭のために使用される開始剤量は、一回で又は長時間に亘り連続的に一定の又は変動した、例えば増大する供給速度で分散液に添加してよい。添加の時間は、その際、一般に10分〜5時間の範囲、特に30分〜4時間の範囲である。化学的後重合の全時間は、一般に15分〜5時間の範囲、有利には30分〜4時間の範囲である。
【0067】
本発明による方法により得られるポリマー分散液は良好な機械的安定性及び比較的低い残留モノマー割合によって優れている。前記の分散液をベースとする紙塗被塗料は紙に対する非常に良好な付着性、及び改善されたウェットピック強度を有する。また本発明は、少なくとも1種のスチレン−ブタジエン共重合体を本発明による水性重合体分散液の形で含有する紙塗被塗料に関する。
【0068】
もちろん該紙塗被塗料は主成分として少なくとも1種の無機又は有機の顔料を含有する。無機顔料のための例は、粘土鉱物、例えばカオリン、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、サチン白、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛などである。有機顔料のための例は、有利には水性分散液の形で使用されるポリスチレンラテックス並びに尿素−ホルムアルデヒド樹脂である。本発明により有利な紙塗被塗料の実施形は、顔料として粘土鉱物、有利にはカオリン並びに炭酸カルシウムを含有する。
【0069】
本発明による紙塗被塗料中のバインダーの量は、100質量部の顔料に対して一般に3〜30質量部、有利には5〜20質量部である。更に本発明による紙塗被塗料は100質量部の顔料あたりに一般に0.1〜5質量部、有利には1〜3質量部の助剤を含有する。助剤には、耐水性改善剤、顔料のための分散助剤、粘度調節剤、硬化剤、着色顔料、蛍光染料、pH値の調整剤並びに補助バインダーが該当する。
【0070】
補助バインダーは、一般に水溶性ポリマー、例えばカゼイン、変性カゼイン、デンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸などである。補助バインダーの割合は、一般に100質量部の顔料に対して1質量部を超過しない。
【0071】
pH値の調整剤として、一般に塩基、有利には無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化カルシウムが使用される。有利には紙塗被塗料は7.5〜9.5の範囲のpH値を有する。
【0072】
本発明による紙塗被塗料の製造は、通常は、成分の混合によって、有利には本発明による方法により得られるような水性ポリマー分散液を、既に一般に一部の又は全量の必要な助剤を含有する顔料の水性分散液に添加することによって行われる。
【0073】
本発明による紙塗被塗料は、改善されたピック強度、特に改善されたウェットピック強度を有する被覆をもたらす。
【0074】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明はそれに制限されるものではない。
【0075】
重合体の粒度の測定は、ISO13321に従う光散乱によって、Malvernオートサイザー2Cを用いて0.01質量%の試料で行われた。透光率は0.01質量%の試料で2.5cmのキュベット長で参照としての純水に対して測定された。ガラス転移温度の測定はDSCを用いて中点法に従って行った。
【0076】
残留揮発性成分の測定はガスクロマトグラフィー分析によって行った。
【0077】
I. ポリマー分散液の製造(例1、比較例V1及びV2)
例1(分散液D1)
重合容器中に300gの水、37gの33質量%のポリマーシード(d50、30nm)、3.7gのテルピノーレン並びに10%の開始剤溶液(供給物2)を初充填し、かつ85℃に加熱した。
【0078】
次いで2つの別個の供給路を介して同時に開始して4.5時間以内にモノマーエマルジョン及び開始剤溶液の残量を重合容器中に温度を保持したままで添加した。供給開始の4時間後に、まず30gのブタジエンを5分間以内に反応容器中に添加した。モノマーの添加が完了した後に70℃に冷却し、かつ同時に開始して70gの水中の4gのt−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液並びに2.5gのアセトンの溶液、67gの水中の7gの40質量%の二亜硫酸ナトリウム溶液を温度を保持したままで2時間以内に添加した。引き続き60gの25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、そして室温に冷却した。
【0079】
供給物1:
970gの脱塩水
24gのラウリル硫酸ナトリウム溶液(水中28質量%)
15gのn−ドデシルメルカプタン
800gのスチレン
630gのブタジエン
45gのアクリル酸
供給物2:
210gの水中の15gのペルオキソ二硫酸ナトリウム
分散液の固体含量は約50質量%であった。透光率は48%であった。質量平均粒度d50は160nmであった。pH値は6.2であり、ガラス転移温度Tgは1℃であった。
【0080】
ガラス転移温度はDSCを用いて「中点」温度として測定した。分散液の相対透光率を、水(100%)に対して0.01質量%の試料で2.5cmのキュベット長において測定した。平均粒径の測定は、ISO13321に従って準弾性光散乱によって、Malvernオートサイザー2Cを用いて0.01質量%の試料で行われた。
【0081】
例2:(分散液D2)
重合容器中に300gの水、37gの33質量%のポリマーシード(d50、30nm)、1.8gのテルピノーレン並びに10%の開始剤溶液(例1と同様)を初充填し、かつ85℃に加熱した。
【0082】
次いで2つの別個の供給路を介して同時に開始して1時間以内に第一のモノマーエマルジョン(供給物1)及び開始剤溶液の残量を4時間以内に重合容器中に温度を保持したままで添加した。供給物1の完了直後に供給物2を3.5時間以内に重合反応器中に添加した。供給物1の開始4時間後に、5分間以内で30gのブタジエンを反応容器中に添加した。モノマーの添加が完了した後に70℃に冷却し、かつ同時に開始して70gの水中の4gのt−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液並びに2.5gのアセトンの溶液、67gの水中の7gの40質量%の二亜硫酸ナトリウム溶液を温度を保持したままで2時間以内に添加した。引き続き60gの25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、そして室温に冷却した。
【0083】
供給物1:
216.0gの脱塩水
5.3gのラウリル硫酸ナトリウム溶液(水中28質量%)
3.3gのn−ドデシルメルカプタン
2.0gのテルピノーレン
177.8gのスチレン
140.0gのブタジエン
10.0gのアクリル酸
供給物2:
754.0gの脱塩水
18.7gのラウリル硫酸ナトリウム溶液(水中28質量%)
11.7gのn−ドデシルメルカプタン
622.2gのスチレン
490.0gのブタジエン
35.0gのアクリル酸
開始剤溶液:
210gの水中の15gのペルオキソ二硫酸ナトリウム
得られたポリマー分散液は6.2のpH値を有し、かつ約50質量%の固体含量を有した。透光率は48%と測定された。質量平均粒度d50は160nmであった。重合体は約1℃のガラス転移温度を有していた。
【0084】
比較例1:(分散液V1)
重合を、初充填もモノマー供給物もテルピノーレンを含有しないという差異を伴って例1と同様に実施した。全ての他のプロセスパラメーターは変えなかった。
【0085】
得られたポリマー分散液は6.2のpH値を有し、かつ約50質量%の固体含量を有した。透光率は48%と測定された。質量平均粒度d50は160nmであった。重合体は約1℃のガラス転移温度を有していた。
【0086】
比較例2:(分散液V2)
重合を、全量のテルピノーレン(3.8g)がモノマーの供給物中に存在するという差異を伴って例1と同様に実施した。
【0087】
得られたポリマー分散液は6.2のpH値を有し、かつ約50質量%の固体含量を有した。透光率は48%と測定された。質量平均粒度d50は160nmであった。重合体は約1℃のガラス転移温度を有していた。
【0088】
物理的脱臭前の分散液D1、D2、V1及びV2中の残留揮発性成分を第1表に示した。
【0089】
【表1】
【0090】
II. 応用技術的試験
1. 塗被塗料のための配合表
64質量部の水
70質量部の炭酸カルシウム
30質量部のカオリン
0.4質量部のポリアクリル酸ナトリウム塩
0.05質量部の水酸化ナトリウム(25質量%の溶液として)
0.5質量部のカルボキシメチルセルロース
10gの重合体に相当する20質量部のポリマー分散液(50質量%)
該塗料の固体含量は約60%であった。
【0091】
2. 塗被紙の製造及び試験
原紙として、70g/m2の連量を有する木質繊維不含の塗工紙原紙を使用した。紙塗被組成物の施与を研究室用塗工装置で10g/m2で片面に行った。乾燥をIR照射器を用いて行った。該紙を応用技術的試験の前に研究室用カレンダー(1ローラ対、線圧2000N/cm)に何度も通過させた。
【0092】
ドライピック強度
試験されるべき紙から33×3cmのサイズの条片を長手方向に切断し、そしてこの条片を調湿室中で50%の相対空気湿度で27℃において15時間貯蔵した。
【0093】
該条片を引き続き印刷機(IGT印刷性試験器AC2/AIC2)において標準的インキ(Lorilleux−Lefranc社の印刷インキ)で印刷した。
【0094】
試験条片を連続的に高まる速度(最大速度200cm/s)で該印刷機中に導いた。ドライピック強度のための尺度として、乾燥開始後に紙塗被組成物から10個の裂け目(ピック)が生じた速度をcm/sで示す。
【0095】
オフセット試験
紙:
試験されるべき紙から、240×46mmのサイズを有する試料を長手方向で切断した。
【0096】
試験の実施:
インキローラ上に相応量の印刷インキを適用し、そして1分間運転させた。次いで印刷版を使用し、そして30秒間着色した。
【0097】
印刷速度は1m/sであった。紙条片を印刷試料担体上で印刷される紙条片と一緒に再び開始部位に戻した。規定の時間間隔の後に、印刷工程を印刷版を交換せずに再び開始した。この工程を複数回繰り返す。
【0098】
各通過の後に、紙条片の印刷面でのピックを視覚的に評価した。初めてピックが生じるまでの通過数を示す。非常に顕著なピックの場合には、最後の通過は半分として示す(例えば3回の通過後の強い引き抜きを2.5で示した)。
【0099】
塗被塗料F1は分散液D1を含有する。塗被塗料F2は分散液D2を含有し、塗被塗料VF1は分散液V1を含有する。
【0100】
【表2】
【0101】
これらのデータは、テルピノーレンをアルキルメルカプタネンと組み合わせて使用することによって応用技術的特性の改善が達成できることを示している。更なる改善は、主要量のテルピノーレンが初充填中に存在する場合にのみ見いだされる。
【0001】
本発明は、水性のスチレン−ブタジエンポリマー分散液を、モノマー供給法によるスチレン及びブタジエンを含有するモノマー混合物のラジカル水性乳化重合によって製造するための方法に関する。本発明はまた前記の方法により得られるスチレン−ブタジエンポリマー分散液並びにその紙塗被塗料におけるバインダーとしての使用に関する。
【0002】
紙及び厚紙は、その印刷性及び光学的特性、例えば光沢性、白色度及び不透明度の改善のためにその製造時にしばしば顔料含有被覆を施与される。この場合に使用される被覆材料(紙塗被塗料とも呼称される)は顔料の他に、個々の顔料粒子を互いに、そして紙表面に結合させ、従って閉鎖顔料層を形成するために用いられるバインダーを含有する。
【0003】
特に印刷されるべき印刷用紙及び厚紙を被覆、すなわち塗被する。更に特殊紙、例えばラベル、壁紙及び接着性ラベルのための支持体として使用される印刷されないシリコン紙を被覆する。
【0004】
バインダーが紙塗被組成物中に一般に100質量部の顔料に対して30質量部までにすぎない量で含まれているにも拘わらず、紙の特性、特に印刷性能及び外観に決定的な影響を及ぼす。印刷性能のために、例えば平滑度、無気泡、圧縮性並びに液体、例えば印刷インキ又は湿し水に対する吸収挙動が重要である。また重要な基準は、機械的負荷に対する被覆の安定性である。特にオフセット印刷では高い機械的安定性が保証されねばならない。それというのも該表面は使用される印刷インキのタックに基づいて機械的に非常に強く負荷を受ける。オフセット印刷で使用される湿し水に基づいて、この機械的強度は湿った状態でも保証されねばならない。紙被覆の機械的耐負荷能力はピック強度と呼称され、湿った状態での機械的負荷はウェットピック強度と呼称される。
【0005】
紙被覆のピック強度はますます重要性を増している。それというのも昨年に激しく高められた印刷速度が紙面の機械的負荷をますます高めたからである。それに基づいて、バインダーとして先行技術で使用される水性重合体分散液が被覆においてますます高められた質量割合で使用される。しかしながらこのことは、紙被覆のための使用材料の望ましくないコスト増大を引き起こした。更に高められたバインダー割合は紙の光学的特性及び印刷性を悪い方に変える。こうして、高められたバインダー割合は印刷インキの吸収挙動を緩慢にし、これはとりわけ積載において印刷インキが裏移りする可能性を引き起こす。
【0006】
EP−A407059号は、連鎖移動剤の存在下に製造される、少なくとも5%のゲル割合を有するブタジエン含有のコポリマーラテックスを製造する方法を記載している。連鎖移動剤としては、とりわけテルペン炭化水素及び硫黄含有の連鎖移動剤が挙げられる。そこに記載されるラテックスは、バインダーとして紙被覆剤中で使用できる。
【0007】
DE19512999号から、重合体が少なくとも5K互いに異なっている2種のゲル変換点を有する多相のスチレン−ブタジエンコポリマーラテックスをバインダーとして含有する紙被覆剤が公知である。その製造は、一般に重合されるべきモノマーの連鎖移動剤の存在下での乳化重合によって行われる。連鎖移動剤として、とりわけアルキルメルカプタン及び炭化水素、例えばテルピノーレン又はα−メチルスチレン二量体が使用される。しかしながら多相のポリマーの製造は付加的な出費に関連している。
【0008】
ドイツ国特許出願P10046930.2号は、調節剤(連鎖移動剤)としての硫黄含有化合物及びテルピノーレンからなる混合物の存在下に乳化重合することによって製造され、その際、該調節剤は重合反応にその過程で供給される、実質的に単相のスチレン−ブタジエンラテックスの製造を記載している。
【0009】
先行技術に記載されるブタジエン−スチレンラテックスはしばしばピック強度、特にウェットピック強度の必要条件を所望の範囲で満たすことができない。先行技術で提案される重合調節剤としてのテルピノーレンの使用は、そこに示される条件下に同様に満足な生成物をもたらさない。更に残留モノマー含量は、部分的に満足いくものではない。
【0010】
従って本発明の課題は、容易に製造され、そして少ない使用量でも紙塗被組成物において高い乾燥性及びウェットピック強度を有する紙被覆をもたらすポリマーラテックスを提供することである。
【0011】
意想外にも前記課題は、100質量%のモノマーに対して
− 0.02〜0.5質量%の、水素原子の引き抜きによってペンタジエニルラジカル又は1−フェニルラジカルを形成する化合物及びα−メチルスチレン二量体から選択される6〜20個のC原子を有する少なくとも1種の炭化水素KW並びに
− 0.3〜2質量%の、少なくとも1つのSH基を有する有機化合物Sを含有し、かつ少なくとも30%、有利には少なくとも50%、特に少なくとも80%、特に有利には全量(もしくは>95%)の炭化水素KWを重合容器に初充填することを特徴とする調節剤系の存在下に、スチレン−ブタジエン含有のモノマー混合物をモノマー供給法によりラジカル水性乳化重合させることによって製造される、スチレン−ブタジエンポリマーラテックスによって解決されることが判明した。
【0012】
それに応じて、本発明は水性のスチレン−ブタジエンポリマー分散液を、
− スチレン、
− ブタジエン及び場合により
− 100質量%のモノマーMに対して30質量%までの、スチレン及びブタジエンとは異なるエチレン性不飽和コモノマー
を含有するモノマー混合物Mを、前記の調節剤系を前記のように供給することを特徴とするモノマー供給法によりラジカル水性乳化重合させることによって製造するための方法に関する。
【0013】
有機化合物Sは基本的に重合容器中に初充填してよい。しかしながら有利には主要量、特に少なくとも70%、tこうに有利には少なくとも90%、特に全量の有機化合物Sを重合反応にその過程において供給する。有利には主要量の化合物S、特に全量の化合物Sの添加をモノマー添加と並行して、特にモノマー供給物中で実施する。
【0014】
該方法により得られるポリマー分散液は、低い凝集物割合、高い機械的安定性及び低い残留モノマー含量によって優れている。更に前記の分散液を用いて、低いバインダー割合でも、ピック強度、特にウェットピック強度に関して先行技術の紙塗被組成物を凌駕する紙塗被組成物を製造できる。従って本発明による方法により得られるポリマー分散液も同様に本発明の対象である。
【0015】
本発明による調節剤系は、有利には0.05〜0.4質量%、特に0.1〜0.3質量%の少なくとも1種の炭化水素KW及び、有利には0.5〜1.8質量%、特に0.7〜1.5質量%の、少なくとも1個のSH基を有する少なくとも1種の有機化合物を含有する。一般にテルピノーレンと化合物Sとの質量比は、少なくとも1:100、有利には少なくとも1:50、特に少なくとも1:10である。該比は高くて1:1.25、特に高くて1:1.5、特に有利には高くて1:2である。
【0016】
有利な化合物Sは疎水性モノマーのスチレン及びブタジエン中に可溶性である。特に該化合物は、C4〜C18−アルキルメルカプタン、例えばn−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン及びステアリルメルカプタンから選択される。
【0017】
適当な炭化水素KWは、α−メチルスチレン二量体の他に、水素原子の引き抜きによってペンタジエニルラジカル又は1−フェニルアリルラジカルを形成する全ての化合物である。該化合物は、C3原子上に1又は2個の水素原子を有する1,4−ペンタジエン構造(構造A):
【0018】
【化1】
又はC5原子上に1又は2個の水素原子を有する1,3−ペンタジエン構造(構造B):
【0019】
【化2】
を有し、その際、二重結合の1つがフェニル環の構成要素であってもよい化合物である。構造A及びBにおいて、垂線は開放原子価を示すが、二重結合の立体化学についての意味は満たしていない。開放原子価は、水素、アルキル基又はフェニル基で満たされていてよく、又は2つの開放原子価あたりに1つの5又は6員の炭素環を形成してよい。二重結合を介して互いに結合された2つのC原子の原子価は二重結合のC原子と一緒にフェニル環を表すことができる。
【0020】
構造Aを有する化合物のための例は1,4−ジヒドロベンゼン、γ−テルピネン、テルピノーレン及びノルボルナジエン並びに更にα−イオノンである。構造Bを有する炭化水素のための例は1,3−シクロヘキサジエン、α−テルピネン及びα−フェランドレンである。炭化水素KWという用語は、水素の脱離下に構造A又はBを形成する炭化水素ケトン及び炭化水素アルコールをも含む。有利な炭化水素調節剤は、γ−テルピネン、テルピノーレン及びα−メチルスチレン二量体、特にテルピノーレンである。
【0021】
「モノマー供給法」という用語は、先行技術で使用され、そして「バッチ法」と異なって、重合されるべきモノマーを完全に反応容器中に初充填せず、重合されるべき全モノマーの主要量、通常は少なくとも70%、有利には少なくとも80%、特に90%又は全量を定義された時間に亘って重合反応に重合反応条件下に供給する重合法を示している。重合条件という用語は、当業者に、重合反応器が重合反応の開始のために十分な量の開始剤を含有し、かつ反応器内容物が、開始剤が重合の開始のために十分な分解速度を示す温度を有することと解する。温度及び分解速度の間の関連は当業者に、通常の重合開始剤について十分に知られているか、又は慣例の実験において調査できる。
【0022】
モノマー供給物における濃度の記述は、これ以降では特に記載がない限り、その添加の時点での供給物中の1成分の事実上の濃度を指す。モノマー濃度の質量%での記述は、この場合に当該の時点でもしくは当該の時間間隔で供給されるモノマーの全量を指す。それに応じて、全体の記述は、供給の全時間に亘って添加される成分の全量を指す。特に記載がない限り、モノマー供給物とは全てのモノマー供給物の合計であると解されるべきである。
【0023】
残留揮発性成分の含量の低減のために、モノマーをできる限り迅速に重合反応に供給することが有利であると見なされる。有利には重合されるべきモノマーを最大で8時間以内、特に2〜6時間以内、特に有利には2.5〜5時間以内に重合反応に供給する。
【0024】
本発明の有利な実施態様においては、少なくとも70%の重合されるべきモノマーが重合反応に供給されている時点で、モノマー供給物中のブタジエンの濃度を、全供給時間の少なくとも1%の時間に亘って、供給物中のモノマーに対して少なくとも10質量%、有利には少なくとも15質量%、例えば10〜40質量%、特に15〜30質量%だけ増大させる。
【0025】
一般にモノマー供給物が高められたブタジエン濃度を有する時間間隔が、モノマー供給の全時間の少なくとも1%、特に少なくとも2%であり、かつ有利には20%の、特に10%の時間を超過せず、かつ例えばモノマー供給の全時間の1〜20%、特に2〜10%である。
【0026】
有利にはモノマー供給物中のブタジエンの濃度を少なくとも50質量%、特に少なくとも55質量%に増大させる。それに応じて、前記の時間の間のスチレン濃度は50質量%以下、特に有利には45質量%以下である。
【0027】
有利には供給物組成の変更は、重合されるべきモノマーの少なくとも75%、特に少なくとも80%、有利には99%まで、特に95%まで、特に有利には90%までが重合反応に供給されている場合に行われる。
【0028】
モノマー供給物中の組成の変更は、連続的又は段階的に1段階以上で、例えば2、3、4、5又は6段階で又はモノマー添加の完了前に終了する限られた時間間隔内で最終値まで行われてよい。
【0029】
モノマー供給物の組成の変更は、種々の様式で制御できる。例えばブタジエン及びスチレンを別個のモノマー供給物を介して重合反応に供給してよい。又は1モノマー種の部分量、例えば部分量のブタジエンを、該モノマーの残留量とは別個の供給物を介して重合反応に供給する。そうするとモノマー供給物の相対供給速度の変更は、簡単な様式でモノマー供給物の全体の組成の変更をもたらす。もちろんモノマーM1及びM2及び場合によりM3は全供給を介しても重合反応に供給でき、かつ供給物の事実上の組成は、液流の連続的混合を可能にする適当な混合装置によって事前に調整できる。この場合に特にスタティックミキサーが適当である。
【0030】
有利な実施形Aにおいては、スチレン含有モノマー供給物の供給速度をブタジエン供給の速度が一定である場合にモノマー添加の完了に向かって低減させ、それも有利には、モノマー供給物中のスチレンの割合がモノマー添加の完了の時点で40質量%未満、特に20質量%未満、殊に0質量%であるように低減させる。有利にはモノマーの80%、特に90〜99.5%、特に有利には95〜99%が供給されている場合に変更が行われる。これは、特に簡単な様式においてスチレン供給の停止によってブタジエン供給完了前に、重合されるべき全体のブタジエンの、特に90〜99.5質量%、特に有利には95〜99質量%が供給されている場合にうまくいく。
【0031】
反対に、スチレン添加の速度が一定である場合に、ブタジエン供給速度はモノマー添加の完了に向かって最終値にまで高められるか、又は少なくとも限られた時間間隔で高められる(実施形B)。また両者の措置を互いに組み合わせてもよい。高められたブタジエン供給速度の段階の時間に関しては前記のことが言える。
【0032】
実施形Bの特殊形として、スチレン及びブタジエン及び場合によりモノマーM3を含有するモノマー混合物をほぼ一定のモノマー組成で重合反応にモノマー供給物Mz1として供給し、その際、Mz1の全組成物中のブタジエンの割合が重合されるべきモノマー組成物中の全ブタジエン量に対して0.5〜20質量%だけ低減されている実施形B′が特に有利である。モノマー供給物Mz1の少なくとも70%、有利には75〜99%、特に80〜95%が重合反応に供給されている場合に、重合されるべき全体のブタジエンの全量に対して0.5〜20質量%、有利には1〜10質量%、特に2〜5質量%のブタジエンを、モノマー供給物Mz1の残留量と平衡して供給物Mz2として添加する。供給物Mz2は、有利には5質量%未満の、ブタジエンとは異なるモノマーM2及び/又はM3を含有する。特に供給物Mz2は唯一のモノマーとしてブタジエンを含有する。Mz2の添加は、前記の時点で開始して重合反応の完了まで又は短い間隔の中で行われてよい。供給物Mz2の全時間は、有利にはMz1の全時間の、有利には1〜20%、特に2〜10%である。供給物Mz1及びMz2はこの場合に物質流として解される。Mz1及びMz2を、別個の供給口を介して重合反応器中に供給してもよい。同様に、物質流Mz1及びMz2に相当するモノマー量を適当な混合装置を使用して共通の導管を用いて反応器中に供給することも可能である。
【0033】
モノマーの添加は、モノマー自体の混合物の形でも、モノマーM1〜M3の水性エマルジョンの形でも実施でき、その際、後者の措置が一般に有利である。実施形B′において、しばしばブタジエン豊富な供給物Mz2を純粋モノマーもしくはモノマー混合物として、かつ供給物Mz1を水性エマルジョンとしてポリマー反応に供給する。
【0034】
これらのモノマーを重合反応に水性エマルジョンとして供給する場合に、モノマー割合は、エマルジョンの全質量の、通常30〜90質量%、特に40〜80質量%である。その他に、モノマーエマルジョンは一般に少なくとも一部の、有利には少なくとも70質量%の、特に少なくとも80質量%の、又は全量の、乳化重合のために慣用の必要とされる界面活性化合物を含有する。
【0035】
生じる重合体において、モノマー組成の変更によっても記載されるように、例えば複数のガラス転移温度によってポリマーのDSCにおいて明らかな多相性を生じない。
【0036】
本発明による方法のために、基本的にラジカル水性乳化重合のために公知の開始剤系が適当である。有利な開始剤は水溶性である。ペルオキシド基を有する係る開始剤、例えば無機及び有機のペルオキシド及びヒドロペルオキシドが特に有利である。過酸化水素及びペルオキソ二硫酸の塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウムが特に有利である。また有機のヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドが適当である。部分的に、前記のペルオキシドと一緒に還元剤及び/又は原子価状態を変更しうる金属化合物を使用することが有効であると示されている。
【0037】
適当な還元剤はアスコルビン酸、ヒドロキシメタンスルフィン酸、アセトンの亜硫酸水素付加物、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムである。適当な金属化合物のための例は、鉄、バナジウム又は銅の塩及び水溶性錯体である。通常、ラジカル開始剤は重合されるべきモノマーに対して0.1〜3質量%の量で使用される。
【0038】
重合温度は当然のように、重合開始剤の分解特性に依存し、そして、有利には少なくとも60℃、特に少なくとも70℃、特に有利には少なくとも80℃、より特に有利には少なくとも90℃である。有利には高価な圧力装置を回避するために120℃、有利には110℃の重合温度が慣用である。
【0039】
低い残留モノマー含量を達成するために、重合の間に反応混合物を激しく混合する際に有利であると見なされる。激しく混合することは、例えば特定の撹拌機を高い撹拌速度と組み合わせて使用することによって、撹拌機とステーターとを組み合わせることによって、又は高速循環装置、例えば循環ポンプによって反応混合物をバイパスを介して達成でき、その際、バイパス自体は剪断力の発生のための装置、例えば固定された取付物、例えば剪断板又は多孔板を備えていてよい。特定の撹拌機とは、接線流動成分の他にも軸方向流動場も発生させるような撹拌機を意味する。かかる撹拌機は、例えばDE−A19711022号に記載されている。特に多段階撹拌機が有利である。接線流動成分及び軸方向流動成分を発生させるための特定の撹拌機のための例は、クロスアーム撹拌機、MIG(R)及びINTERMIG(R)撹拌機(EKATO社の多段階インパルス向流撹拌機及び干渉多段階インパルス向流撹拌機)、軸流タービン撹拌機(前記の撹拌機は一段階又は多段階で構成され、かつ慣用の撹拌機と組み合わされていてよい)、更にヘリカル型撹拌機、有利には隔壁状のヘリカル型撹拌機、アンカー型の隔壁状の撹拌機及び1段階又は多段階の高速流動する中央撹拌機を有する同軸撹拌機並びに多段階ブレード撹拌機である。更にDE−C14421949号、JP−A292002号、WO93/22350号に記載される撹拌機の種類が適当である。
【0040】
一般にラジカル水性乳化重合は界面活性化合物の存在下に行われる。界面活性化合物とは、乳化剤も、乳化剤と異なって一般に2000ダルトンを上回る分子量を有し、水溶性である保護コロイドも意味する。界面活性物質は、モノマーと一緒に、例えば水性モノマーエマルジョンの形で供給してよい。もちろん界面活性物質の一部又は全量を重合容器中に初充填してもよい。
【0041】
有利な乳化剤は、一般に分散液中の重合体もしくは重合されるべきモノマーMに対して0.2〜10質量%、有利には0.5〜5質量%の量で使用されるアニオン系及び非イオン系の乳化剤である。
【0042】
アニオン系乳化剤には、アルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C20)の、エトキシル化アルカノール(EO−度:2〜50、アルキル基:C8〜C20)及びエトキシル化アルキルフェノール(EO−度:3〜50、アルキル基:C4〜C20)の硫酸半エステルの、アルキルスルホン酸(アルキル基:C8〜C20)の及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C4〜C20)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩が該当する。更なる適当なアニオン系乳化剤は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, 192〜208頁に記載されている。
【0043】
アニオン系界面活性物質には、一般式I
【0044】
【化3】
[式中、R1及びR2が水素又は直鎖状又は分枝鎖状の、6〜18個のC原子、特に6、12及び16個のC原子を有するアルキル基を意味し、その際、R1及びR2が両者とも同時に水素ではない]の化合物も該当する。X及びYは有利にはナトリウム、カリウム又はアンモニウムイオンであり、その際、ナトリウムが特に有利である。しばしば50〜90質量%の割合のモノアルキル化製品を有する工業的混合物、例えばDowfax(R)2A1(ダウケミカルカンパニー社の商標)が使用される。化合物Iは一般に、US−A4269749号から公知である。
【0045】
適当な非イオン系乳化剤は、芳香脂肪族又は脂肪族の非イオン系乳化剤、例えばエトキシル化モノ−、ジ−及びトリ−アルキルフェノール(EO−度:3〜50、アルキル基:C4〜C9)、長鎖アルコールのエトキシレート(EO−度:3〜50、アルキル基、C8〜C36)並びにポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド−ブロックコポリマーである。長鎖アルカノールのエトキシレート(アルキル基:C10〜C22、平均エトキシル化度:3〜50)が有利であり、そのうち直鎖状又は分枝鎖状のC12〜C18−アルキル基及びエトキシル化度8〜50を有するオキソアルコール及び天然アルコールをベースとするものが特に有利である。
【0046】
有利には本発明による方法ではアニオン系乳化剤又は少なくとも1種のアニオン系及び非イオン系の乳化剤の組み合わせが使用される。
【0047】
適当な保護コロイドは、例えばポリビニルアルコール、デンプン誘導体及びセルロース誘導体、カルボキシル基を有するポリマー、例えばアクリル酸及び/又はメタクリル酸とコモノマー、例えばスチレン、オレフィン又はヒドロキシアルキルエステルとのホモポリマー及びコポリマー、又はビニルピロリドンを含有するホモポリマー及びコポリマーである。更に適当な保護コロイドの詳細な記載はHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, 411〜420頁に記載されている。
【0048】
また乳化剤及び/又は保護コロイドからの混合物を使用してよい。
【0049】
紙塗被組成物中でのバインダーとしての使用に関しては、重合されるべきモノマー混合物は20〜80質量%、特に40〜70質量%のスチレン及び20〜80質量%、特に30〜55質量%のブタジエンの他に30質量%まで、有利には20質量%まで、特に10質量%まで、例えば0.5〜20又は1〜10質量%のスチレン及びブタジエンとは異なるエチレン性不飽和コモノマーを含有する。コモノマーのための例は:
− 酸基を有するモノエチレン性不飽和モノマー、例えば3〜10個のC原子を有するモノカルボン酸及びジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アクリルアミドグリコール酸、ビニル酢酸、マレイン酸、イタコン酸及びマレイン酸とC1〜C4−アルカノールとの半エステル、エチレン性不飽和スルホン酸、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸、例えばビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、スチレンホスホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸及びそれらの水溶性塩、例えばそれらのアルカリ金属塩、有利にはアクリル酸及びメタクリル酸かかるモノマーはモノマーM中に10質量%までの量で、例えば0.1〜10質量%、有利には0.1〜4質量%の量で含まれていてよい;
モノエチレン性不飽和カルボン酸のアミド、例えばアクリルアミド及びメタクリルアミド並びにN−(ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル)アミド、有利にはエチレン性不飽和カルボン酸のN−メチロールアミド、例えばN−メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミドかかるモノマーはモノマーM中に10質量%までの量で、例えば0.1〜10質量%、有利には0.1〜4質量%の量で含まれていてよい。
【0050】
− モノエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、特にヒドロキシエチルエステル及びヒドロキシプロピルエステル及びヒドロキシブチルエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレート。かかるモノマーはモノマーM中に10質量%までの量で、例えば0.1〜10質量%、有利には0.5〜5質量%の量で含まれていてよい。
【0051】
有利には3〜10個のC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、例えばアクリルニトリル及びメタクリルニトリルかかるモノマーはモノマーM中に30質量%までの量で、例えば1〜30質量%、有利には5〜20質量%の量で含まれていてよい。
【0052】
− 反応性モノマー:反応性モノマーには、架橋のために適当な反応性官能基を有するモノマーが該当するこれには、前記のエチレン性不飽和カルボン酸、そのN−アルキロールアミド及びヒドロキシアルキルエステルの他に、カルボニル基又はエポキシ基を有するモノマー、例えばN−ジアセトンアクリルアミド、N−ジアセトンメタクリルアミド、アセチルアセトキシエチルアクリレート及びアセチルアセトキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートが該当する。かかるモノマーはモノマーM中に10質量%までの量で、例えば0.5〜10質量%の量で含まれていてよい。
【0053】
− 並びに架橋性モノマー:架橋性モノマーには、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和結合を有するモノマー、例えば二官能性及び三官能性のアルコールのジアクリレート及びトリアクリレートもしくは−メタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートが該当する。かかるモノマーはモノマーM中に2質量%までの量で、有利には1質量%以下、例えば0.01〜2質量%、有利には0.01〜1質量%の量で含まれていてよい。有利な実施態様においては、モノマーMは架橋性モノマーを含有しない。
【0054】
有利なコモノマーは3〜10個のC原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、それらのアミド、それらのヒドロキシ−C2〜C4−アルキルエステル、それらのN−(ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル)アミド並びに前記のエチレン性不飽和ニトリルである。特に有利なコモノマーは、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸である。
【0055】
特に有利な実施態様においては、重合されるべきモノマーの混合物Mは
− 40〜70質量%のスチレン、
− 30〜59質量%のブタジエン及び
− 1〜10質量%のエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸
を含有する。
【0056】
もう一つの有利な実施態様においては、スチレンの一部、有利には全モノマー量に対して5〜20質量%がアクリルニトリル及び/又はメタクリルニトリルと置換されている。前記の有利な実施態様においては、重合されるべき混合物は、例えば
− 30〜65質量%のスチレン、
− 30〜59質量%のブタジエン、
− 5〜20質量%のアクリルニトリル及び/又はメタクリルニトリル及び
− 1〜10質量%のエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸
を含有する。
【0057】
紙塗被塗料におけるバインダーとして使用することに関して、重合により得られる重合体が−20〜+50℃の範囲、有利には0〜30℃の範囲のガラス転移温度を有する場合に有利であると見なされる。ガラス転移温度としては、本願ではASTM3418−82に従ってDSCを用いて規定できる、いわゆる中点温度に相当する。
【0058】
ガラス転移温度は使用されるモノマー混合物Mに亘って公知のように制御できる。
【0059】
フォックス(T.G. Fox著, Bull. Am. Phys. Soc. (Ser II) 1, 123[1956]及びUllmann's Encyclopaedie der technischen Chemie, Weinheim(1980), 17,18頁)によると、混合重合体のガラス転移温度関しては、次の良好な近似が適用される。
【0060】
【数1】
[式中、X1、X2、....Xnはモノマー1、2....nの質量分率であり、Tg 1、Tg 2....Tg nはそれぞれモノマー1、2....nの一つだけから構成された重合体のガラス転移温度(ケルビンで示す)を意味する]。ガラス転移温度は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, Weinheim, Vol A 21 (1992) 169頁又はJ. Brandrup, E.H. Immergut, Polymer Handbook 第3版., J. Wiley, New York 1989から公知である。ポリスチレンはそれによれば、380KのTgを有し、そしてポリブタジエンは171Kもしくは166KのTgを有する。
【0061】
本発明による方法により得られる重合体は、一般に1000nm未満の質量平均粒径を有する。粒度のdw値は、通常のように、粒度の質量平均として定義され、例えば該値は、W. Scholtan und H. Lange, Kolloid-Z. und Z.-Polymere 250 (1972) 782〜796頁の方法に相応して分析的超遠心分離器を用いて測定される。超遠心分離測定は、試料の粒径の積分質量分布を提供する。そこから、何質量パーセントの粒子が規定サイズと同じ直径又はそれ未満の直径を有するかを得ることができる。本発明による紙塗被組成物中での使用に関して、質量平均粒径は、有利には500nm未満、特に300nm未満、特に有利には50〜300nmの範囲、殊に有利には70〜200nmの範囲である。
【0062】
水性重合体分散液のポリマー粒度の調整法は先行技術から公知である。有利には乳化重合は規定のポリマー粒度の調整のためにシードラテックス法により又はインサイチューで製造されるシードラテックスの存在下に実施される。このための方法は公知であり、そして先行技術から引用できる(EP−B40419号並びに'Encyclopedia of Polymer Science and Technology', Vol 5, John Wiley & Sons Inc., New York 1966, 847頁を参照のこと)。
【0063】
一般に、乳化重合を1種以上の非常に微細なポリマーの存在下に水性ラテックスの形(いわゆるシードラテックス)で実施することが有利であると見なされる。有利には0.1〜5質量%、特に0.2〜3質量%の少なくとも1種のシードラテックス(全モノマー量に対するシードラテックスの固体含量)を使用する。シードラテックスは、部分的に又は完全にモノマーと一緒に重合反応に供給してよい。しかしながら有利には該方法はシードラテックスを初充填して(初充填シード)行われる。該ラテックスは、一般に10〜200nm、有利には20〜100nm、特に20〜50nmの質量平均粒度を有する。それらの構成するモノマーは、例えばスチレン、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート及びその混合物であり、その際、シードラテックスは副次的な量で、エチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はそのアミドを、有利にはシードラテックス中の重合体粒子の全質量に対して10質量%未満で重合導入されて含有してよい。
【0064】
シードラテックスの使用に際して、しばしば、シードラテックスを部分的又は完全に、有利には少なくとも80%まで重合容器中に初充填し、開始剤の一部、有利には前記の割合の開始剤及び場合により一部の重合されるべきモノマーを添加し、そして所望の重合温度に加熱するという手段をとる。もちろん、開始剤及びシードラテックスの導入を逆の順序で実施してもよい。有利にはモノマーの添加をまず重合条件下で実施する。通常は初充填は開始剤及びシードラテックスの他に更に水及び場合により界面活性化合物の一部を含有する。
【0065】
一般に重合の間にpH値9を超過しない。pH値の調整は、重合反応の過程で中和剤を添加することによって容易に行われる。重合の間にpH値が上昇した場合には、例えば塩基、例えばアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩が適当である。このことは、例えば重合開始剤としてペルオキソ硫酸塩を使用した場合に該当する。
【0066】
重合反応に引き続き、更に分散液中の未反応のモノマー(いわゆる残留モノマー)を低減させるためにしばしば後重合を行う。この後重合はしばしば化学的脱臭としても呼称される。化学的脱臭は、一般にラジカル後重合によって、特にDE−A4435423号、DE−A4419518号並びにDE−A4435422号に挙げられているレドックス開始剤系の作用下に行われる。有利には後重合は、少なくとも1種の有機ペルオキシド及び還元剤、有利には無機亜硫酸塩又はα−ヒドロスルホン酸もしくはα−ヒドロスルフィン酸の塩(カルボニル化合物の亜硫酸水素付加物)からのレドックス開始剤系を用いて実施される。後重合のための開始剤の量は、一般に重合される全モノマーに対して0.1〜5質量%、有利には0.2〜3質量%、特に0.3〜2質量%の範囲である。複数の成分からなる開始剤系、例えばレドックス開始剤系では量の記述はそれらの成分の全量に関連するものである。化学的脱臭は、有利には60〜100℃、特に70〜95℃の範囲の温度で実施する。化学的脱臭のために使用される開始剤量は、一回で又は長時間に亘り連続的に一定の又は変動した、例えば増大する供給速度で分散液に添加してよい。添加の時間は、その際、一般に10分〜5時間の範囲、特に30分〜4時間の範囲である。化学的後重合の全時間は、一般に15分〜5時間の範囲、有利には30分〜4時間の範囲である。
【0067】
本発明による方法により得られるポリマー分散液は良好な機械的安定性及び比較的低い残留モノマー割合によって優れている。前記の分散液をベースとする紙塗被塗料は紙に対する非常に良好な付着性、及び改善されたウェットピック強度を有する。また本発明は、少なくとも1種のスチレン−ブタジエン共重合体を本発明による水性重合体分散液の形で含有する紙塗被塗料に関する。
【0068】
もちろん該紙塗被塗料は主成分として少なくとも1種の無機又は有機の顔料を含有する。無機顔料のための例は、粘土鉱物、例えばカオリン、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、サチン白、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛などである。有機顔料のための例は、有利には水性分散液の形で使用されるポリスチレンラテックス並びに尿素−ホルムアルデヒド樹脂である。本発明により有利な紙塗被塗料の実施形は、顔料として粘土鉱物、有利にはカオリン並びに炭酸カルシウムを含有する。
【0069】
本発明による紙塗被塗料中のバインダーの量は、100質量部の顔料に対して一般に3〜30質量部、有利には5〜20質量部である。更に本発明による紙塗被塗料は100質量部の顔料あたりに一般に0.1〜5質量部、有利には1〜3質量部の助剤を含有する。助剤には、耐水性改善剤、顔料のための分散助剤、粘度調節剤、硬化剤、着色顔料、蛍光染料、pH値の調整剤並びに補助バインダーが該当する。
【0070】
補助バインダーは、一般に水溶性ポリマー、例えばカゼイン、変性カゼイン、デンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸などである。補助バインダーの割合は、一般に100質量部の顔料に対して1質量部を超過しない。
【0071】
pH値の調整剤として、一般に塩基、有利には無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化カルシウムが使用される。有利には紙塗被塗料は7.5〜9.5の範囲のpH値を有する。
【0072】
本発明による紙塗被塗料の製造は、通常は、成分の混合によって、有利には本発明による方法により得られるような水性ポリマー分散液を、既に一般に一部の又は全量の必要な助剤を含有する顔料の水性分散液に添加することによって行われる。
【0073】
本発明による紙塗被塗料は、改善されたピック強度、特に改善されたウェットピック強度を有する被覆をもたらす。
【0074】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明はそれに制限されるものではない。
【0075】
重合体の粒度の測定は、ISO13321に従う光散乱によって、Malvernオートサイザー2Cを用いて0.01質量%の試料で行われた。透光率は0.01質量%の試料で2.5cmのキュベット長で参照としての純水に対して測定された。ガラス転移温度の測定はDSCを用いて中点法に従って行った。
【0076】
残留揮発性成分の測定はガスクロマトグラフィー分析によって行った。
【0077】
I. ポリマー分散液の製造(例1、比較例V1及びV2)
例1(分散液D1)
重合容器中に300gの水、37gの33質量%のポリマーシード(d50、30nm)、3.7gのテルピノーレン並びに10%の開始剤溶液(供給物2)を初充填し、かつ85℃に加熱した。
【0078】
次いで2つの別個の供給路を介して同時に開始して4.5時間以内にモノマーエマルジョン及び開始剤溶液の残量を重合容器中に温度を保持したままで添加した。供給開始の4時間後に、まず30gのブタジエンを5分間以内に反応容器中に添加した。モノマーの添加が完了した後に70℃に冷却し、かつ同時に開始して70gの水中の4gのt−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液並びに2.5gのアセトンの溶液、67gの水中の7gの40質量%の二亜硫酸ナトリウム溶液を温度を保持したままで2時間以内に添加した。引き続き60gの25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、そして室温に冷却した。
【0079】
供給物1:
970gの脱塩水
24gのラウリル硫酸ナトリウム溶液(水中28質量%)
15gのn−ドデシルメルカプタン
800gのスチレン
630gのブタジエン
45gのアクリル酸
供給物2:
210gの水中の15gのペルオキソ二硫酸ナトリウム
分散液の固体含量は約50質量%であった。透光率は48%であった。質量平均粒度d50は160nmであった。pH値は6.2であり、ガラス転移温度Tgは1℃であった。
【0080】
ガラス転移温度はDSCを用いて「中点」温度として測定した。分散液の相対透光率を、水(100%)に対して0.01質量%の試料で2.5cmのキュベット長において測定した。平均粒径の測定は、ISO13321に従って準弾性光散乱によって、Malvernオートサイザー2Cを用いて0.01質量%の試料で行われた。
【0081】
例2:(分散液D2)
重合容器中に300gの水、37gの33質量%のポリマーシード(d50、30nm)、1.8gのテルピノーレン並びに10%の開始剤溶液(例1と同様)を初充填し、かつ85℃に加熱した。
【0082】
次いで2つの別個の供給路を介して同時に開始して1時間以内に第一のモノマーエマルジョン(供給物1)及び開始剤溶液の残量を4時間以内に重合容器中に温度を保持したままで添加した。供給物1の完了直後に供給物2を3.5時間以内に重合反応器中に添加した。供給物1の開始4時間後に、5分間以内で30gのブタジエンを反応容器中に添加した。モノマーの添加が完了した後に70℃に冷却し、かつ同時に開始して70gの水中の4gのt−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液並びに2.5gのアセトンの溶液、67gの水中の7gの40質量%の二亜硫酸ナトリウム溶液を温度を保持したままで2時間以内に添加した。引き続き60gの25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、そして室温に冷却した。
【0083】
供給物1:
216.0gの脱塩水
5.3gのラウリル硫酸ナトリウム溶液(水中28質量%)
3.3gのn−ドデシルメルカプタン
2.0gのテルピノーレン
177.8gのスチレン
140.0gのブタジエン
10.0gのアクリル酸
供給物2:
754.0gの脱塩水
18.7gのラウリル硫酸ナトリウム溶液(水中28質量%)
11.7gのn−ドデシルメルカプタン
622.2gのスチレン
490.0gのブタジエン
35.0gのアクリル酸
開始剤溶液:
210gの水中の15gのペルオキソ二硫酸ナトリウム
得られたポリマー分散液は6.2のpH値を有し、かつ約50質量%の固体含量を有した。透光率は48%と測定された。質量平均粒度d50は160nmであった。重合体は約1℃のガラス転移温度を有していた。
【0084】
比較例1:(分散液V1)
重合を、初充填もモノマー供給物もテルピノーレンを含有しないという差異を伴って例1と同様に実施した。全ての他のプロセスパラメーターは変えなかった。
【0085】
得られたポリマー分散液は6.2のpH値を有し、かつ約50質量%の固体含量を有した。透光率は48%と測定された。質量平均粒度d50は160nmであった。重合体は約1℃のガラス転移温度を有していた。
【0086】
比較例2:(分散液V2)
重合を、全量のテルピノーレン(3.8g)がモノマーの供給物中に存在するという差異を伴って例1と同様に実施した。
【0087】
得られたポリマー分散液は6.2のpH値を有し、かつ約50質量%の固体含量を有した。透光率は48%と測定された。質量平均粒度d50は160nmであった。重合体は約1℃のガラス転移温度を有していた。
【0088】
物理的脱臭前の分散液D1、D2、V1及びV2中の残留揮発性成分を第1表に示した。
【0089】
【表1】
【0090】
II. 応用技術的試験
1. 塗被塗料のための配合表
64質量部の水
70質量部の炭酸カルシウム
30質量部のカオリン
0.4質量部のポリアクリル酸ナトリウム塩
0.05質量部の水酸化ナトリウム(25質量%の溶液として)
0.5質量部のカルボキシメチルセルロース
10gの重合体に相当する20質量部のポリマー分散液(50質量%)
該塗料の固体含量は約60%であった。
【0091】
2. 塗被紙の製造及び試験
原紙として、70g/m2の連量を有する木質繊維不含の塗工紙原紙を使用した。紙塗被組成物の施与を研究室用塗工装置で10g/m2で片面に行った。乾燥をIR照射器を用いて行った。該紙を応用技術的試験の前に研究室用カレンダー(1ローラ対、線圧2000N/cm)に何度も通過させた。
【0092】
ドライピック強度
試験されるべき紙から33×3cmのサイズの条片を長手方向に切断し、そしてこの条片を調湿室中で50%の相対空気湿度で27℃において15時間貯蔵した。
【0093】
該条片を引き続き印刷機(IGT印刷性試験器AC2/AIC2)において標準的インキ(Lorilleux−Lefranc社の印刷インキ)で印刷した。
【0094】
試験条片を連続的に高まる速度(最大速度200cm/s)で該印刷機中に導いた。ドライピック強度のための尺度として、乾燥開始後に紙塗被組成物から10個の裂け目(ピック)が生じた速度をcm/sで示す。
【0095】
オフセット試験
紙:
試験されるべき紙から、240×46mmのサイズを有する試料を長手方向で切断した。
【0096】
試験の実施:
インキローラ上に相応量の印刷インキを適用し、そして1分間運転させた。次いで印刷版を使用し、そして30秒間着色した。
【0097】
印刷速度は1m/sであった。紙条片を印刷試料担体上で印刷される紙条片と一緒に再び開始部位に戻した。規定の時間間隔の後に、印刷工程を印刷版を交換せずに再び開始した。この工程を複数回繰り返す。
【0098】
各通過の後に、紙条片の印刷面でのピックを視覚的に評価した。初めてピックが生じるまでの通過数を示す。非常に顕著なピックの場合には、最後の通過は半分として示す(例えば3回の通過後の強い引き抜きを2.5で示した)。
【0099】
塗被塗料F1は分散液D1を含有する。塗被塗料F2は分散液D2を含有し、塗被塗料VF1は分散液V1を含有する。
【0100】
【表2】
【0101】
これらのデータは、テルピノーレンをアルキルメルカプタネンと組み合わせて使用することによって応用技術的特性の改善が達成できることを示している。更なる改善は、主要量のテルピノーレンが初充填中に存在する場合にのみ見いだされる。
Claims (15)
- 水性のスチレン−ブタジエンポリマー分散液を、
− スチレン、
− ブタジエン及び場合により
− 100質量%のモノマーに対して30質量%までの、スチレン及びブタジエンとは異なるエチレン性不飽和コモノマー
を含有するモノマー混合物Mを重合容器中でモノマー供給法により、100質量%のモノマーに対して、
− 0.02〜0.5質量%の、水素原子の引き抜きによってペンタジエニルラジカル又は1−フェニルラジカルを形成する化合物及びα−メチルスチレン二量体から選択される6〜20個のC原子を有する少なくとも1種の炭化水素KW並びに
− 0.3〜2質量%の少なくとも1つのSH基を有する有機化合物S
を含有する調節剤系の存在下にラジカル水性乳化重合させることによって製造するための方法において、少なくとも30%、有利には少なくとも50%、特に少なくとも80%、特に有利には全量(もしくは>95%)の炭化水素KWを重合容器に初充填することを特徴とする方法。 - 有機化合物Sを重合の経過の間に反応容器に供給する、請求項1記載の方法。
- 化合物SがC4〜C18−アルキルメルカプタンから選択されている、請求項1又は2記載の方法。
- 炭化水素KWがテルピノーレン、γ−テルピネン及びα−メチルスチレン二量体から選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
- 重合されるべきモノマーの少なくとも70%が重合反応に供給されている時点で、全供給時間の少なくとも1%の時間に亘りモノマー供給物中のブタジエンの濃度を供給物中のモノマーに対して少なくとも10質量%だけ増大させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
- モノマー供給物中のブタジエンの濃度を前記時間において少なくとも50質量%に増大させる、請求項5記載の方法。
- スチレン、ブタジエン及び場合によりモノマーM3を含有するモノマー混合物をモノマー供給物Mz1として重合反応に供給し、次いでモノマー供給物Mz1の少なくとも70%が重合反応に供給されている場合に、重合されるべき全ブタジエンの全量に対して0.5〜20質量%のブタジエンを供給物Mz2としてモノマー供給Mz1と並行して重合反応に供給する、請求項5又は6記載の方法。
- 供給Mz2全体を供給Mz1の時間の1〜20%の時間以内で供給する、請求項7記載の方法。
- 重合を0.1〜10質量%の少なくとも1種のシードラテックスの存在下に実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
- スチレン及びブタジエンとは異なるモノマーが、3〜10個のC原子を有するモノエチレン性不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、それらのアミド、それらのヒドロキシ−C2〜C4−アルキルエステル、それらのN−(ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル)アミド及びエチレン性不飽和ニトリルから選択されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
- 重合されるべきモノマー混合物が
− 40〜70質量%のスチレン、
− 30〜59質量%のブタジエン及び
− 1〜10質量%のエチレン性不飽和のモノカルボン酸又はジカルボン酸
を含有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。 - 重合されるべきモノマー混合物が、
− 30〜65質量%のスチレン、
− 30〜59質量%のブタジエン、
− 5〜20質量%のアクリルニトリル及び/又はメタクリルニトリル及び
− 1〜10質量%のエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸
を含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。 - 請求項1から12までのいずれか1項記載の方法により得られる水性ポリマー分散液。
- 紙塗被塗料におけるバインダーとしての、請求項13記載の水性ポリマー分散液の使用。
- 100質量部の顔料に対して、それぞれ
i)少なくとも1種の無機顔料、
ii)5〜20質量部の少なくとも1種の、請求項13記載の水性ポリマー分散液の形のスチレン−ブタジエン共重合体、
iii)0.1〜5質量部の慣用の助剤
を含有する紙塗被塗料。
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