JP2006142902A - 車両のヒルホールド制動力制御装置 - Google Patents

車両のヒルホールド制動力制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 前後輪のヒルホールド制動力を解除する坂道発進時、発進性能や登坂能力を向上し、シームレスな発進を実現することができる車両のヒルホールド制動力制御装置を提供すること。
【解決手段】 車輪を駆動する動力源に装備された少なくとも1つのモータと、車輪の駆動スリップ検出時にモータトルクダウン制御により車輪のグリップを回復させるモータトラクション制御手段と、坂道停止時に前後輪の制動力を維持することで車両が後退するのを防止するヒルホールド制動力制御手段と、を備えた車両のヒルホールド制動力制御装置において、前記ヒルホールド制動力制御手段は、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力を従動輪制動力より遅く解除する手段とした。
【選択図】 図6

Description

本発明は、ハイブリッド車や電気自動車等に適用され、車輪を駆動する動力源に少なくとも1つのモータが装備された車両のヒルホールド制動力制御装置に関する。
動力源にモータが装備されたハイブリッド車では、駆動輪が駆動スリップすると、駆動スリップに合わせてモータが過回転し、モータ駆動回路に過電流が発生するため、モータ駆動回路の部品保護のためには駆動スリップを応答良く収束させる必要がある。この部品保護を目的として駆動スリップを収束させるモータトラクション制御装置は、駆動輪の回転角速度の変化率(角加速度)が所定値以上のときに駆動スリップが発生すると予測し、モータトルクを低下する構成とし、モータトルクの増加に伴って生じる駆動スリップを防止している(例えば、特許文献1参照)。
従来、坂道に停止して運転者がブレーキペダルからアクセルペダルに足を踏み替えた際に、ホイールシリンダにおける制動圧を維持させて車両が後退するのを防止する、いわゆるヒルホールドブレーキ制御を実行するブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−304514号公報 特開平10−181575号公報
しかしながら、上記従来のヒルホールドブレーキ制御を実行するブレーキ装置にあっては、前後輪の制動力配分が検討されておらず、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力も従動輪制動力も同時に解除されるものであるため、急激に駆動輪の液圧をリリースしたシーンにおいては、駆動輪がスリップアップし、モータトラクション制御が開始されると、モータトルクの低下により、発進性能や登坂能力が低下してしまう。また、駆動輪制動力と従動輪制動力とがゆっくりと同時に解除されると、引きずり抵抗が大き過ぎて、シームレスな発進が確保できない、という問題がある。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、前後輪のヒルホールド制動力を解除する坂道発進時、発進性能や登坂能力を向上し、シームレスな発進を実現することができる車両のヒルホールド制動力制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明における車両のヒルホールド制動力制御装置では、車輪を駆動する動力源に装備された少なくとも1つのモータと、車輪の駆動スリップ検出時にモータトルクダウン制御により車輪のグリップを回復させるモータトラクション制御手段と、坂道停止時に前後輪の制動力を維持することで車両が後退するのを防止するヒルホールド制動力制御手段と、を備えた車両のヒルホールド制動力制御装置において、
前記ヒルホールド制動力制御手段は、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力を従動輪制動力より遅く解除することを特徴とする。
よって、本発明の車両のヒルホールド制動力制御装置にあっては、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、ヒルホールド制動力制御手段において、駆動輪制動力が従動輪制動力より遅く解除される。すなわち、遅く制動力が解除される駆動輪側ではヒルホールド性を保ちつつ、かつ、早く制動力が解除される従動輪側では引き摺り抵抗を減らし、モータトルクの低下を招く駆動スリップの発生や大きな引き摺り抵抗の発生が解消される。この結果、前後輪のヒルホールド制動力を解除する坂道発進時、発進性能や登坂能力を向上し、シームレスな発進を実現することができる。
以下、本発明の車両のヒルホールド制動力制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、ハイブリッド車の駆動系構成を説明する。
図1は実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車の駆動系を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2(モータ)と、出力スプロケットOS、動力分割機構TMと、を有する。
前記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。
前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、パワーコントロールユニット3により作り出された三相交流を印加することによりそれぞれ独立に制御される。
前記両モータジェネレータMG1,MG2は、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この状態を「回生」と呼ぶ)。
前記動力分割機構TMは、サンギヤSと、ピニオンPと、リングギヤRと、ピニオンキャリアPCと、を有する単純遊星歯車により構成されている。そして、単純遊星歯車の3つの回転要素(サンギヤS、リングギヤR、ピニオンキャリアPC)に対する入出力部材の連結関係について説明する。前記サンギヤSには、第1モータジェネレータMG1が連結されている。前記リングギヤRには、第2モータジェネレータMG2と出力スプロケットOSとが連結されている。前記ピニオンキャリアPCには、エンジンダンパEDを介してエンジンEが連結されている。なお、前記出力スプロケットOSは、チェーンベルトCBや図外のディファレンシャルやドライブシャフトを介して左右前輪に連結されている。
上記連結関係により、図4に示す共線図上において、第1モータジェネレータMG1(サンギヤS)、エンジンE(プラネットキャリアPC)、第2モータジェネレータMG2及び出力スプロケットOS(リングギヤR)の順に配列され、単純遊星歯車の動的な動作を簡易的に表せる剛体レバーモデル(3つの回転数が必ず直線で結ばれる関係)を導入することができる。
ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸に各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤSとリングギヤRの歯数比λに基づき、(S〜PC):(PC〜R)の長さの比を1:λになるように配置したものである。
次に、ハイブリッド車の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、パワーコントロールユニット3(強電ユニット)と、バッテリ4(二次電池)と、ブレーキコントローラ5と、統合コントローラ6と、を有して構成されている。
前記統合コントローラ6には、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、から入力情報がもたらされる。なお、車速センサ8と第2モータジェネレータ回転数センサ11は、同じ動力分割機構TMの出力回転数を検出するもであるため、車速センサ8を省略し、第2モータジェネレータ回転数センサ11からのセンサ信号を車速信号として用いても良い。なお、モータコントローラ2からは、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリS.O.Cの情報がもたらされる。
前記ブレーキコントローラ5には、前左車輪速センサ12と、前右車輪速センサ13と、後左車輪速センサ14と、後右車輪速センサ15と、操舵角センサ16と、マスタシリンダ圧センサ17と、ブレーキストロークセンサ18と、から入力情報がもたらされる。
前記エンジンコントローラ1は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neを入力する統合コントローラ6からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。
前記モータコントローラ2は、レゾルバによる両モータジェネレータ回転数センサ10,11からのモータジェネレータ回転数N1,N2を入力する統合コントローラ6からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と、第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)と、をそれぞれ独立に制御する指令をパワーコントロールユニット3へ出力する。
前記パワーコントロールユニット3は、より少ない電流で両モータジェネレータMG1,MG2への電力供給が可能な電源系高電圧による強電ユニットを構成するもので、図5に示すように、ジョイントボックス3aと、昇圧コンバータ3bと、駆動モータ用インバータ3cと、発電ジェネレータ用インバータ3dと、コンデンサ3eと、を有する。前記第2モータジェネレータMG2のステータコイルには、駆動モータ用インバータ3cが接続される。前記第1モータジェネレータMG1のステータコイルには、発電ジェネレータ用インバータ3dが接続される。また、前記ジョイントボックス3aには、力行時に放電し回生時に充電するバッテリ4が接続される。
前記ブレーキコントローラ5は、低μ路制動時や急制動時等において、4輪のブレーキ液圧を独立に制御するブレーキ液圧ユニット19への制御指令によりABS制御を行い、また、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時、統合コントローラ6への制御指令とブレーキ液圧ユニット19への制御指令を出すことで回生ブレーキ協調制御を行う。さらに、坂道に停止して運転者がブレーキペダルからアクセルペダルに足を踏み替えた際に、ホイールシリンダにおける制動液圧を維持させて車両が後退するのを防止する、いわゆるヒルホールドブレーキ制御を行う。
このブレーキコントローラ5には、各車輪速センサ12,13,14,15からの車輪速情報や、操舵角センサ16からの操舵角情報や、マスタシリンダ圧センサ17やブレーキストロークセンサ18からの制動操作量情報が入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令を統合コントローラ6とブレーキ液圧ユニット19へ出力する。なお、前記ブレーキ液圧ユニット19には、前左車輪ホイールシリンダ20と、前右車輪ホイールシリンダ21と、後左車輪ホイールシリンダ22と、後右車輪ホイールシリンダ23と、が接続されている。
前記統合コントローラ6は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、加速走行時等において、エンジンコントローラ1への制御指令によりエンジン動作点制御を行い、また、停止時や走行時や制動時等において、モータコントローラ2への制御指令によりモータジェネレータ動作点制御を行う。この統合コントローラ6には、各センサ7,8,9,10,11からのアクセル開度APと車速VSPとエンジン回転数Neと第1モータジェネレータ回転数N1と第2モータジェネレータ回転数N2とが入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令をエンジンコントローラ1とモータコントローラ2へ出力する。なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、統合コントローラ6とモータコントローラ2、統合コントローラ6とブレーキコントローラ5は、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線24,25,26により接続されている。
次に、ヒルホールドブレーキ制御装置の構成を説明する。
実施例1のヒルホールドブレーキ制御装置は、図6に示すように、統合コントローラ6と、ブレーキコントローラ5と、ブレーキ液圧ユニット19及び各ホイールシリンダ20,21,22,23を有するブレーキアクチュエータと、により構成される。
前記統合コントローラ6には、アクセル開度センサ7と車速センサ8からのセンサ信号を入力するトルク指令演算部6aと、アクセル開度センサ7及び車速センサ8からのセンサ信号と、トルク指令演算部6aからの演算結果を入力する登坂量推定演算部6bと、を有する。
前記ブレーキコントローラ5には、前記登坂量推定演算部6bからの演算結果と、ブレーキストロークセンサ18からのセンサ信号を入力するヒルホールドトルク演算部5aを有する。なお、前記トルク指令演算部6a、登坂量推定演算部6b、ヒルホールドトルク演算部5aでの演算処理内容については、図7に示すフローチャートにより詳述する。
次に、駆動力性能について説明する。
実施例1のハイブリッド車の駆動力は、図2(b)に示すように、エンジン直接駆動力(エンジン総駆動力から発電機駆動分を差し引いた駆動力)とモータ駆動力(両モータジェネレータMG1,MG2の総和による駆動力)との合計で示される。その最大駆動力の構成は、図2(a)に示すように、低い車速ほどモータ駆動力が多くを占める。このように、変速機を持たず、エンジンEの直接駆動力と電気変換したモータ駆動力を加えて走行させることから、低速から高速まで、定常運転のパワーの少ない状態からアクセルペダル全開のフルパワーまで、ドライバの要求駆動力に対しシームレスに応答良く駆動力をコントロールすることができる(トルク・オン・デマンド)。
そして、実施例1のハイブリッド車では、動力分割機構TMを介し、エンジンEと両モータジェネレータMG1,MG2と左右前輪(車輪)とがクラッチ無しで繋がっている。また、上記のように、エンジンパワーの大部分を発電機で電気エネルギに変換し、高出力かつ高応答のモータで車両を走らせている。このため、例えば、アイスバーン等の滑りやすい路面での走行時において、車輪のスリップやブレーキ時の車輪のロック等で車両の駆動力が急変する場合、過剰電流からのパワーコントロールユニット3の部品保護、あるいは、動力分割機構TMのピニオン過回転からの部品保護を行う必要がある。これに対し、高出力・高応答のモータ特性を活かし、部品保護の機能から発展させて、車輪の駆動スリップを瞬時に検出し、そのグリップを回復させ、車両を安全に走らせるためのモータトラクション制御を採用している。
次に、制動力性能について説明する。
実施例1のハイブリッド車では、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時には、モータとして作動している第2モータジェネレータMG2を、ジェネレータ(発電機)として作動させることにより、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ4に回収し、再利用する回生ブレーキシステムを採用している。
この回生ブレーキシステムでの一般的な回生ブレーキ協調制御は、図3(a)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、要求制動力に大きさにかかわらず、算出された要求制動力を回生分と油圧分とで分担することで行われる。
これに対し、実施例1のハイブリッド車で採用している回生ブレーキ協調制御は、図3(b)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、算出された要求制動力に対し回生ブレーキを優先し、回生分で賄える限りは油圧分を用いることなく、最大限まで回生分の領域を拡大している。これにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギ回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギの回収を実現している。
次に、車両モードについて説明する。
実施例1のハイブリッド車での車両モードとしては、図4の共線図に示すように、「停車モード」、「発進モード」、「エンジン始動モード」、「定常走行モード」、「加速モード」を有する。
「停車モード」では、図4(1)に示すように、エンジンEと発電機MG1とモータMG2は止まっている。「発進モード」では、図4(2)に示すように、モータMG2のみの駆動で発進する。「エンジン始動モード」では、図4(3)に示すように、エンジンスタータとしての機能を持つ発電機MG1によって、サンギヤSが回ってエンジンEを始動する。「定常走行モード」では、図4(4)に示すように、主にエンジンEにて走行し、効率を高めるために発電を最小にする。「加速モード」では、図4(5)に示すように、エンジンEの回転数を上げると共に、発電機MG1による発電を開始し、その電力とバッテリ4の電力を使ってモータMG2の駆動力を加え、加速する。
なお、後退走行は、図4(4)に示す「定常走行モード」において、エンジンEの回転数上昇を抑えたままで、発電機MG1の回転数を上げると、モータMG2の回転数が負側に移行し、後退走行を達成することができる。
始動時は、イグニッションキーを回すとエンジンEが始動し、エンジンEを暖機した後、直ぐにエンジンEは停止する。発進時や軽負荷時は、発進時やごく低速で走行する緩やかな坂を下るときなどは、エンジン効率の悪い領域は燃料をカットし、エンジンは停止してモータMG2により走行する。通常走行時は、エンジンEの駆動力は、動力分割機構TMにより一方は車輪を直接駆動し、他方は発電機MG1を駆動し、モータMG2をアシストする。全開加速時は、バッテリ4からパワーが供給され、さらに、駆動力を追加する。減速時や制動時には、車輪がモータMG2を駆動し、発電機として作用することで回生発電を行う。回収した電気エネルギはバッテリ4に蓄えられる。バッテリ4の充電量が少なくなると、発電機MG1をエンジンEにより駆動し、充電を開始する。車両停止時には、エアコン使用時やバッテリ充電時等を除き、エンジンEを自動的に停止する。
次に、作用を説明する。
[ヒルホールドブレーキ制御処理]
図7は実施例1の統合コントローラ6及びブレーキコントローラ5にて実行されるヒルホールドブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(ヒルホールドブレーキ制御手段)。
ステップS1では、アクセル開度センサ7からのセンサ信号に基づき、アクセル開度を演算し、ステップS2へ移行する。
ステップS2では、ステップS1でのアクセル開度の演算に続き、車速センサ8からのセンサ信号に基づき、車速を演算し、ステップS3へ移行する。
ここで、車速情報については、車速演算に代え、各車輪速センサ12,13,14,15からのセンサ信号に基づき、車輪速を演算しても良い。
ステップS3では、ステップS2での車速演算に続き、アクセル開度情報と車速情報に基づき、トルク指令(ドライバ要求トルク)を演算し、ステップS4へ移行する。
ここで、「トルク指令(ドライバ要求トルク)」は、例えば、図示しない駆動力マップ(アクセル開度×車速×駆動トルク)を予め用意しておき、アクセル開度情報と車速情報から駆動力マップを検索してトルク指令を算出する。
ステップS4では、ステップS3でのトルク指令の演算に続き、トルク指令と車速とアクセル開度に基づいて登坂量を推定演算し、ステップS5へ移行する(路面勾配検出手段)。
ここで、「登坂量(=路面勾配)」の推定は、トルク指令により推定される車速より低いか、高いかに応じて勾配を推定する。また、車両が停止時に後退する場合は、後退量(変化量)に応じて勾配を推定する。以上の処理は、統合コントローラ6にて行われる。
ステップS5では、ステップS4での登坂量推定演算に続き、ブレーキストロークセンサ17からのセンサ信号に基づき、ブレーキストロークが演算される。
ステップS6では、ステップS5でのブレーキストロークの演算に続き、上記ステップS4にて推定された路面勾配値(=登坂量)を入力し、ステップS7へ移行する。
ステップS7では、ステップS6での路面勾配値の入力に続き、路面勾配値に応じてヒルホールドトルクを算出し、ステップS8へ移行する。
ここで、「ヒルホールドトルク」とは、坂道にて車両停止を維持するトルクであり、図8に示すように、路面勾配値(%)が大きな値であるほどヒルホールドトルクは大きなトルクとなる。
ステップS8では、ステップS7でのヒルホールドトルクの算出に続き、路面勾配値に応じてフロント(駆動輪)制動力の応答性とリア(従動輪)制動力の応答性を決定し、ステップS9へ移行する。
ここで、「フロント制動力の応答性とリア制動力の応答性」は、図9に示すように、フロント制動力とリア制動力とを比べた場合には、フロント制動力の時定数を高い値とすることでリア制動力の応答性に比べフロント制動力の応答性を遅くしている。また、路面勾配値(%)に対するフロント制動力の低下応答性とリア制動力の低下応答性は、路面勾配値(%)が大きくなるほど共に時定数を低くすることで応答性を早めている。さらに、フロント制動力の低下応答性とリア制動力の低下応答性の差は、路面勾配値(%)が大きいほど低下応答性が大きくなる設定としている。
ステップS9では、ステップS8でのフロント制動力とリア制動力との応答性決定に続き、ブレーキ液圧ユニット19に対し、決定した応答性によるフロントEBD液圧とリアEBD液圧を得るトルク指令を出力し、リターンへ移行する。
すなわち、坂道停止時であって、ヒルホールド制御の開始時には、図10のEBD液圧特性に示すように、リアEBD液圧が目標液圧に達した後、フロントEBD液圧が応答遅れにより目標液圧に達するように指令されることになる。ここで、「EBD(Electoric Brake force Distributionの略称)」とは、電子制御制動力分配システムのことをいい、ABSシステムを応用し、前輪制動力特性と後輪制動力特性を分けて制御できるようにしたものである。
[トラクション制御の背景技術について]
例えば、特開平10−304514号公報には、スリップ初期にトルクダウン応答性を向上させる技術(角加速度制御)が開示されている。この手法は、主にハイブリッド車や電気自動車や燃料電池車等のように、駆動力を発生させるユニットとしてモータを用いた車両に適用されるケースが多い。この技術の基本は、駆動輪の回転角速度の変化率(角加速度)が所定値以上のときに駆動スリップが発生すると予測し、モータトルクを低下させる構成となっている。この構成とすることにより、モータトルクの増加に伴って生じる駆動スリップを防止することができる。
ここで、駆動力を発生させるユニットとしてモータを用いたハイブリッド車において、駆動スリップの発生初期に高応答性にてスリップを抑制する「角加速度制御」が必要な理由について説明する。
仮にモータトラクション制御装置が無くて駆動スリップした場合には、エンジンの発電が追いつかず、モータはバッテリからどんどん電流を持ち出す。よって、モータ駆動回路に過電流が発生し、回路上の素子等にダメージを与えることになる。例えば、実施例1のパワーコントロールユニット3において、図5の矢印に示すように、コンデンサ3eを介して過電流が流れると、ジョイントボックス3aのヒューズや昇圧コンバータ3bのスイッチング回路がダメージを受けてしまう場合がある。しかも、ハイブリッド車や燃料電池車では、二次電池に対してモータ出力(モータ出力比)が大きければ大きいほど過電流が流れやすい。また、二次電池に対してエンジン、燃料電池の出力(エンジン出力比)が大きければ大きいほど過電圧、過電流が流れやすい。という関係がある。したがって、確実に部品保護を図るためには、滑ったらトルク制限をかけるという「角加速度制御」により駆動スリップを応答良く収束させるモータトラクション制御が必要となる。
しかしながら、従来の「角加速度制御」にあっては、駆動スリップが生じやすい低μ路における部品保護を優先し、駆動スリップの発生が予測されると大きなモータトルクダウン量を与える構成としていた。
一方、例えば、特開平10−181575号公報には、坂道に停止して運転者がブレーキペダルからアクセルペダルに足を踏み替えた際に、ホイールシリンダにおける制動圧を維持させて車両が後退するのを防止する、いわゆるヒルホールドブレーキ制御を実行するブレーキ制御装置が知られている。このようなブレーキ制御装置においては、上記公報に記載されているように、既存のABS制御を実行可能なブレーキ回路のソレノイドバルブを閉じることによって、マスタシリンダの液圧をホイールシリンダに封じ込めるようにすることで達成可能である。そして、このヒルホールド制御を実行するにあたっては、例えば、ブレーキペダルの踏み替えに伴いマスタシリンダ液圧が予め設定したヒルホールド開始判断しきい値を下回ったことを検出したら、これを開始条件として、ヒルホールド制御を実行していた。すなわち、マスタシリンダ液圧がヒルホールド開始判断しきい値を下回った時点で、ソレノイドバルブを閉じることにより、ヒルホールド開始判断しきい値より僅かに低い液圧をホイールシリンダに閉じ込めることにより、車両を停止させるのに必要な制動圧をホイールシリンダに閉じ込めることが可能である。
そこで、「角加速度制御」によるモータトラクション制御システムとヒルホールドブレーキ制御システムとが共に搭載されたハイブリッド車を想定すると、従来のヒルホールドブレーキ制御では、前後輪の制動力配分が検討されておらず、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力も従動輪制動力も同時に解除されるものである。
したがって、駆動輪制動力と従動輪制動力とが早期に同時に解除されると、駆動輪がスリップアップし、「角加速度制御(モータトラクション制御)」が開始されると、モータトルクの低下により、発進性能や登坂能力が低下してしまう。特に、急激に駆動輪の液圧をリリースしたシーンにおいては、駆動輪のスリップアップを誘発するため、強電ユニットでの電圧上昇の問題や単相に過電流が流れ込んだりして、システムに大きなダメージを与える可能性がある。
また、駆動輪制動力と従動輪制動力とがゆっくりと同時に解除されると、引きずり抵抗が大き過ぎて、車両を進ませようとする駆動力に対して引きずり抵抗により、前後加速度の変動が発生し、ガクガクした発進となってしまう。
[ヒルホールドブレーキ制御作用]
実施例1では、前後輪のヒルホールド制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力を従動輪制動力よりも遅く解除することで、発進性能や登坂能力を向上し、シームレスな発進を実現するようにした。
すなわち、坂道走行時や坂道停止時になると、図7のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8へと進む流れとなり、ステップS8において、路面勾配値に応じてフロント制動力の応答性とリア制動力の応答性が決定され、次のステップS9において、坂道停止時でヒルホール制御の開始条件が成立する場合、または、坂道停止からの発進時でヒルホール制御の解除条件が成立する場合には、ステップS8で決められた応答性(時定数)により、フロント液圧とリア液圧とが制御される。
つまり、ステップS8では、フロント制動力の応答性をリア制動力の応答性より遅くするように時定数が決定されるため(図9)、坂道停止時でヒルホール制御の開始条件が成立する場合には、図11に示すように、t0の時点からリア液圧は急な勾配にて上昇し、t1の時点で調圧目標値に達する。一方、フロント液圧は、t0の時点から緩やかな勾配にて上昇し、t1の時点より遅れたt2の時点で調圧目標値に達する。
また、坂道停止からの発進時でヒルホール制御の解除条件が成立する場合には、図11に示すように、リア液圧はt2の時点から急な勾配にて下降し、t3の時点でゼロ液圧に達する。一方、フロント液圧は、t2の時点から緩やかな勾配にて下降し、t3の時点より遅れたt4の時点でゼロ液圧に達する。
したがって、図12に示すように、遅く制動力が解除される前輪側(駆動輪側)では、フロント液圧が残ることによるヒルホールド性を保ちつつ、かつ、早く制動力が解除される後輪側(従動輪側)ではリア液圧が早期に排除されることにより引き摺り抵抗を減らすという作用を示す。
言い換えると、フロント・リア共に液圧を高応答で排除する場合のように、モータトルクの低下を招く前輪側でのスリップ発生が解消されるし、逆に、フロント・リア共に液圧を応答遅れで排除する場合のように、大きな引き摺り抵抗発生が解消される。
以上説明したように、実施例1では、前後輪のヒルホールド制動力を解除する坂道発進時、発進性能や登坂能力を向上し、シームレスな発進を実現することができる。
加えて、フロント制動力の低下応答性を遅くすることでゆっくりと前輪(駆動輪)の液圧をリリースするようにしているため、前輪の急激な車輪速変化が有効に抑制され、強電ユニットであるパワーコントロールユニット3での電圧上昇や単相に過電流が流れ込んだりして、システムに大きなダメージを与えることを確実に防止することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の車両のヒルホールド制動力制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 車輪を駆動する動力源に装備された少なくとも1つのモータと、車輪の駆動スリップ検出時にモータトルクダウン制御により車輪のグリップを回復させるモータトラクション制御手段と、坂道停止時に前後輪の制動力を維持することで車両が後退するのを防止するヒルホールド制動力制御手段と、を備えた車両のヒルホールド制動力制御装置において、前記ヒルホールド制動力制御手段は、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力を従動輪制動力より遅く解除するため、前後輪のヒルホールド制動力を解除する坂道発進時、発進性能や登坂能力を向上し、シームレスな発進を実現することができる。
(2) 前記ヒルホールド制動力制御手段は、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力の低下応答性を従動輪制動力の低下応答性より遅くするため、パワーコントロールユニット3での電圧上昇や単相に過電流が流れ込んだりして、システムに大きなダメージを与えることを確実に防止することができる。
(3) 停止している坂道の路面勾配を検出する路面勾配検出手段(ステップS4)を設け、前記ヒルホールド制動力制御手段は、路面勾配が大きいほど、駆動輪制動力の低下応答性と従動輪制動力の低下応答性を共に早くするため、発進時に路面勾配が大きいほど駆動力を応答良く高めることに対応した制動力低下特性となり、坂道の路面勾配の大小にかかわらず、発進性能や登坂能力を向上させることができる。
(4) 前記ヒルホールド制動力制御手段は、路面勾配が大きいほど、駆動輪制動力の低下応答性と従動輪制動力の低下応答性との差を大きくするため、発進時に路面勾配が大きいほどヒルホールド性を保っておく必要があるのに対応した制動力低下特性となり、坂道の路面勾配の大小にかかわらず、シームレスな発進を実現することができる。
(5) 前記モータトラクション制御手段は、駆動輪またはモータの角加速度を検出し、角加速度が設定角加速度を超えたらモータトルクダウン制御により車輪のグリップを回復させる「角加速度制御」を行うため、坂道発進時、トルクダウンの速度が速く、かつ、トルクダウン量が大きい部品保護の「角加速度制御」に入ることによる車両のずり下がり可能性を確実に防止することができる。
以上、本発明の車両のヒルホールド制動力制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、モータトラクション制御として「角加速度制御」のみを実行する例を示したが、「角加速度制御」と「スリップ量制御」とを組み合わせたモータトラクション制御を実行するものにも勿論適用できる。
実施例1では、ヒルホールド制動力制御手段として、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力の低下応答性と従動輪制動力の低下応答性とを異ならせる好ましい例を示したが、要するに、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力を従動輪制動力より遅く解除するものであれば、解除タイミング制御等によるものであっても含まれる。
実施例1では、1つのエンジンと2つのモータジェネレータと動力分割機構を備えたハイブリッド車への適用例を示したが、本発明のヒルホールド制動力制御装置は、他のパワーユニット構造を備えたハイブリッド車や電気自動車や燃料電池車やモータ4WD車等、要するに、車輪を駆動する動力源に少なくとも1つのモータが装備された車両であれば適用することができる。
実施例1のヒルホールド制動力制御装置が適用されたハイブリッド車を示す全体システム図である。 実施例1のヒルホールド制動力制御装置が適用されたハイブリッド車における駆動力性能特性図と駆動力概念図である。 実施例1のヒルホールド制動力制御装置が適用されたハイブリッド車における回生協調による制動力性能をあらわす対比特性図である。 実施例1のヒルホールド制動力制御装置が適用されたハイブリッド車における各車両モードを示す共線図である。 実施例1のハイブリッド車の強電ユニット(バッテリ・パワーコントロールユニット・第1モータジェネレータ・第2モータジェネレータ)を示すブロック図である。 実施例1のヒルホールドブレーキ制御装置の構成を示す制御ブロック図である。 実施例1の統合コントローラ及びブレーキコントローラにて実行されるヒルホールド制動力制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1でのヒルホールドブレーキ制御で演算される勾配に対するヒルホールドトルク特性の一例を示す図である。 実施例1でのヒルホールドブレーキ制御で演算される勾配に対する駆動輪と従動輪の時定数特性の一例を示す図である。 実施例1でのヒルホールドブレーキ制御におけるヒルホールドブレーキ制御開始時の目標液圧・リアEBD液圧・フロントEBD液圧の上昇特性を示す図である。 実施例1でのヒルホールドブレーキ制御におけるヒルホールドブレーキ制御開始からヒルホールドブレーキ制御解除までの調圧目標値・リア液圧・フロント液圧の各特性を示す図である。 実施例1でのヒルホールドブレーキ制御を実行する車両での発進時におけるヒルホールド性を保つ状態を示す作用説明図である。
符号の説明
E エンジン
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ(モータ)
OS 出力スプロケット
TM 動力分割機構
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 パワーコントロールユニット
4 バッテリ
5 ブレーキコントローラ
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 前左車輪速センサ
13 前右車輪速センサ
14 後左車輪速センサ
15 後右車輪速センサ
16 操舵角センサ
17 マスタシリンダ圧センサ
18 ブレーキストロークセンサ
19 ブレーキ液圧ユニット
20 前左車輪ホイールシリンダ
21 前右車輪ホイールシリンダ
22 後左車輪ホイールシリンダ
23 後右車輪ホイールシリンダ

Claims (5)

  1. 車輪を駆動する動力源に装備された少なくとも1つのモータと、車輪の駆動スリップ検出時にモータトルクダウン制御により車輪のグリップを回復させるモータトラクション制御手段と、坂道停止時に前後輪の制動力を維持することで車両が後退するのを防止するヒルホールド制動力制御手段と、を備えた車両のヒルホールド制動力制御装置において、
    前記ヒルホールド制動力制御手段は、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力を従動輪制動力より遅く解除することを特徴とする車両のヒルホールド制動力制御装置。
  2. 請求項1に記載された車両のヒルホールド制動力制御装置において、
    前記ヒルホールド制動力制御手段は、前後輪の制動力を解除する坂道発進時、駆動輪制動力の低下応答性を従動輪制動力の低下応答性より遅くすることを特徴とする車両のヒルホールド制動力制御装置。
  3. 請求項2に記載された車両のヒルホールド制動力制御装置において、
    停止している坂道の路面勾配を検出する路面勾配検出手段を設け、
    前記ヒルホールド制動力制御手段は、路面勾配が大きいほど、駆動輪制動力の低下応答性と従動輪制動力の低下応答性を共に早くすることを特徴とする車両のヒルホールド制動力制御装置。
  4. 請求項3に記載された車両のヒルホールド制動力制御装置において、
    前記ヒルホールド制動力制御手段は、路面勾配が大きいほど、駆動輪制動力の低下応答性と従動輪制動力の低下応答性との差を大きくすることを特徴とする車両のヒルホールド制動力制御装置。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載された車両のヒルホールド制動力制御装置において、
    前記モータトラクション制御手段は、駆動輪またはモータの角加速度を検出し、角加速度が設定角加速度を超えたらモータトルクダウン制御により車輪のグリップを回復させる角加速度制御を行うことを特徴とする車両のヒルホールド制動力制御装置。
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