JP2009235603A - スエード調の外観を有する多層抄き紙 - Google Patents

スエード調の外観を有する多層抄き紙 Download PDF

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Abstract

【課題】紙製品でありながら、紙または板紙表面が紙とは異なる触感を有し、ショッピングバッグ、段ボールケースに高級な印象を与えることができ、且つ高い防滑性を合わせ持つ、スエード調多層抄き紙または板紙を提供することである。
【解決手段】表層、中層、及び裏層の少なくとも3層以上の紙層により基紙が構成され、少なくとも前記基紙の表面となる層に着色層を有する多層抄き紙または板紙において、前記着色層の表層の少なくとも片面に樹脂粒子を含有する水分散系樹脂を塗工し、塗工層を乾燥することにより手触り感をスエード調とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、スエード調の外観を有すると共に、スエード調の手触り感も備え、美粧性に優れた多層抄き紙に関する。
商品のパッケージとして使用する段ボール原紙は、紙または板紙に適宜の絵柄や模様を直接印刷することによって製造される。最近では段ボール原紙にも、高級感が好まれる傾向があり、それにともなって、外観はもちろん、触感も質の良いものや変わったものが求められるようになっている。
高級感のある紙または板紙のひとつとして、スエード調の外観を有するものがある。スエード調とは、革の裏面をサンドペーパーでベルベット状(表面に毛羽を織り出した柔らかな布地)に起毛したもので、毛足が起毛した状態のことを言う。従来技術では、以下のようなスエード調の外観を有する素材の生産方法がある。
すなわち、例えば特許文献1には、感熱化剤と整泡剤を含有するアクリル酸エステル共重合体エマルジョンからなるバインダーを主成分とする水性樹脂組成物を、例えば高速プロペラミキサーで撹拌して起泡させ、基材表面の全面に捺印あるいはコーティングし組成物層を形成した後、この組成物層を湿潤状態で加熱させ起泡状態のままゲル化し乾燥することにより、多孔質で軽くて風合いのよい立体模様層を得る。この立体模様層をエンボスロール等によりエンボス化させ、あるいはサンディングによりスエード調の立体模様を形成してもよい。
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、塗布あるいはスクリーン印刷する水性樹脂組成物を調整する段階で、粘度の調整、撹拌機による気泡(発泡)を行う必要があり、塗工液を調整するための設備が必要となると共に製造時間を要する。また、スエード調の外観を得るために塗工後に水性樹脂組成物をゲル化させるのに実施例では10〜15分の熱乾燥を行い、更には得られた立体樹脂皮膜表面をサンドペーパーでサンディングするとあるため、操業性が悪く、製造時間の増加及び製造コストの増加となる問題がある。
また、例えば特許文献2には、基材の中間層及び表層のうちの少なくとも一方が膨張層と表皮層とを備える装飾材において、膨張層には、重合体中に、熱膨張したマイクロカプセルを分散させ、表皮層には、ウレタンビーズ、シリコンビーズ及びシリコンオイルのうちの少なくとも1種を含有させることにより、表面の凹凸が緻密で微細な外観を呈し、また柔らかい感触をも備えあわせ、艶消し調であって、且つしっとりとしたスエード調の外表面を有する装飾材及びその製造方法が提案されている。
しかしながら、特許文献2に記載された装飾材は、紙の表面に熱膨張性マイクロカプセルを分散塗工し、またウレタンビーズ、シリコンビーズ及びシリコンオイルのうち少なくとも1種を配合した塗工液を塗布する必要があるが、このような塗工は、下塗り剤として使用する塗料は有機溶剤で希釈されたものが好ましいとあり、塗工設備は防爆仕様であることが必須条件である。また、大気汚染防止法に伴うVOC規制により、VOC排出基準を満たすための工場設備が必要となり、設備費用が発生するという問題がある。さらに、スエード調の紙は製袋会社、印刷会社、段ボール会社にて加工されるから、紙または板紙が滑ることにより操業性および輸送性の面での問題が発生してはならないということもある。
また、特許文献3には、耐熱性及び耐溶剤性を有するプラスチックの補助フィルムにビーズ顔料を含有する塗料を塗布して塗膜を形成し、この塗膜が表面となるように、補助フィルムを包装に適した紙類の上にラミネートすることにより、スエード調の外観を維持した包装用紙が提案されている。
しかしながら、特許文献3に記載の包装用紙は、スエード調に成形したフィルムを紙または板紙に貼り合せるための2次加工が必要となり、工程数および製造時間の増加により製造コストの増加になる。また、フィルム貼合品は紙とフィルムの分別が困難であるため、古紙としてリサイクルすることが難しい問題がある。さらに、ビーズ顔料なる顔料粒子が合成樹脂で被覆された形態のものを含有する塗料を使用し、紙に直接塗布してスエード調の外観を得ようとしたが、特許文献3の第1頁右欄に「塗膜を少なくとも10μm、一般的には25μm以上とする必要があり、このような厚膜を塗工することは紙の繊維密度差に応じて塗料の吸収量が異なるためムラが生じてしまい、外観の美麗なものは得られない」との記載からも分かるように、従来の技術では紙に粒形状の合成樹脂を含有する塗工液を塗工することによりスエード調の外観を有する紙を製造することは不可能であった。
特公平8−30307号公報 特許第3786763号公報 特開平4−144743号公報
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、紙製品でありながら、一般的な紙とは異なるスエード調の外観及び手触り感を有し、且つ高い防滑性を合わせ持つ、スエード調の外観を有する多層抄き紙を提供することである。
本発明の上記目的は、表層、中層、及び裏層の少なくとも3層の紙層により基紙が構成され、少なくとも前記表層を着色層とした多層抄き紙において、少なくとも前記表層の表面に樹脂粒子を含有する水分散系の樹脂を塗工して塗工層を形成したことを特徴とするスエード調の外観を有する多層抄き紙を提供することによって達成される。
また、本発明の上記目的は、前記樹脂が重量固形分で片面当り0.9〜12.0g/m2塗工されていることを特徴とするスエード調の外観を有する多層抄き紙を提供することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記樹脂粒子の平均粒子径が4〜20μmであることを特徴とするスエード調の外観を有する多層抄き紙を提供することによって、より効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、JIS−P8147(1994)の滑り角度試験に準拠して測定した滑り角度が19度以上であり、またJIS−B0601(1994)の表面粗さ試験に準拠して測定した高低値(Ry)が21μm以下であることを特徴とするスエード調の外観を有する多層抄き紙を提供することによって、より効果的に達成される。
さらにまた、本発明の上記目的は、JIS−P8118(1998)の厚さ及び密度の試験方法に準拠して測定した密度が0.35〜0.93g/cm3であることを特徴とするスエード調の外観を有する多層抄き紙を提供することによって、より効果的に達成される。
表層、中層、及び裏層の少なくとも3層の紙層により基紙を構成し、少なくとも表層を着色層とし、また、少なくとも表層の表面に樹脂粒子を含有する水分散系の樹脂を塗工して塗工層を形成することにより、スエード調の外観及び手触り感を有し、美粧性に優れる多層抄き紙を低コストで製造することができ、本発明に係る多層抄き紙を用いて形成されたショッピングバッグ、段ボールケース等に高級な印象を与えることができる。
以下、本発明に係るスエード調の外観を有する多層抄き紙について詳細に説明する。なお、本発明に係るスエード調の外観を有する多層抄き紙は以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、適宜変更可能であることはいうまでもない。
本発明に係るスエード調の外観を有する多層抄き紙(以下、「本多層抄き紙」と言う。)は、表層、中層、及び裏層の3層の紙層により基紙が構成されており、この基紙のうち少なくとも表層を着色して着色層としている。また、本多層抄き紙は、少なくとも着色層である表層の表面に樹脂粒子を含有する水分散系の樹脂を塗工して塗工層を形成することにより、スエード調の手触り感を付与することができる。
本多層抄き紙の基紙に使用される原料パルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の木材繊維を主原料として化学的に処理されたパルプやチップ、あるいは木材以外の繊維原料であるケナフ、麻、葦等の非木材繊維を主原料として化学的に処理されたパルプやチップを機械的にパルプ化したグランドパルプ、木材またはチップに化学薬品を添加しながら機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、及びチップを柔らかくなるまで蒸解した後、レファイナー等でパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプ及びクラフトパルプ、セミケミカルパルプ、酵素漂白パルプを含むオフィス上物古紙を脱墨、漂白したパルプ、牛乳パック古紙上質断裁落ち古紙、コート断裁落ち古紙、上白、特白、中白等未印刷、地券、新段、新聞、クラフト封筒、模造、雑誌の古紙から得られる回収パルプ等をあげることができる。なお、古紙パルプを多く利用すると環境負荷が低減されるという利点がある。
また、本多層抄き紙は、表層の原料パルプ中に着色剤を配合して着色層とし、多層抄き紙の表面を着色している。なお、本多層抄き紙は、少なくとも表層の原料パルプ中に着色剤を配合すれば所望の目的を達成することができるが、中層、あるいは裏層の原料パルプ中に着色剤を配合して中層及び/又は裏層も着色層としても良い。
着色剤としては、アニオン性直接染料やカチオン性直接染料とともに、色が美しく、色濃度が高い塩基性染料を用いることができる。なお、これらの染料を2種以上添加する場合の染料の添加順序は、初期の段階でアニオン性直接染料を添加し、硫酸バンドを添加してpH調整を行った後、塩基性染料とそれに必要な定着剤を添加し、インレットに近い場所で高速染着性を有し、吸尽性が高く、耐水堅牢度や日光堅牢度が良好なカチオン性直接染料を添加するのが好適である。さらに、顔料を添加することで、一層濃色で且つ一層耐候性の高い着色を実現できる。なお、顔料としては公知の種々のものを用いることができる。
表層に用いられる原料パルプは、フリーネスを250〜400ml、特に250〜350mlに調整することが好ましい。表層のフリーネスが250ml未満であると、繊維間が密になりやすく、多層抄き紙の脱水不良が発生する。逆に400mlを超えると、繊維間が疎になりやすく、多層抄き紙の地合い不良が発生する。すなわち、多層抄き紙の美粧性が低下してしまう。
中層に用いられる原料パルプは、フリーネスを250〜450ml、特に250〜4000mlに調整することが好ましい。中層のフリーネスが250ml未満であると繊維間が密になりやすく、多層抄き紙の脱水不良が発生し、乾燥不良となる。逆に中層のフリーネスが450mlを超えると繊維間が疎になりやすく、多層抄き紙の地合い不良が発生する。
また、裏層に用いられる原料パルプは、フリーネスを250〜450ml、特に250〜400mlに調整することが好ましい。裏層のフリーネスが250ml未満であると、繊維間が密になりやすく、樹脂を塗工した後の乾燥時において紙中の水分が裏面に抜けにくくなる。逆に裏層のフリーネスが450mlを超えると、多層抄き紙の表層の原料パルプのフリーネスと裏層の原料パルプのフリーネスとの差が大きくなってしまうため、乾燥後にカールが発生してしまう。
なお、上記原料パルプのフリーネスの調整方法としては、例えばシングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、コニカルリファイナーなどの公知の叩解機を使用することができる。
なお、本明細書において、フリーネスとはJIS−P8220(1998)離解方法に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS−P8121(1995)パルプのろ水度試験方法に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて濾水度を測定した値である。
また、基紙中には、必要に応じて填料、歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤、定着剤、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、発泡剤等の抄紙用内添助剤を適宜配合することができる。
本多層抄き紙の基紙の坪量は、特に限定されるものではないが、通常120〜320g/m2、好ましくは120〜280g/m2である。坪量が120g/m2未満であると、本多層抄き紙を段ボール原紙に加工する際に、その強度を確保することが難しい。逆に、坪量が320g/m2を超えると、過剰品質となるだけでなく、製造コストが高くなるだけである。なお、本明細書における坪量とはJIS−P8124(1998)の坪量測定方法に準拠して測定した値である。
また、本多層抄き紙の抄造においては、樹脂の基紙内部への吸水性を調整するため、酸性ロジンサイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマーなど公知のサイズ剤を内添することにより、JIS−P8140(1998)に準じて測定された樹脂を塗工する前の紙(以下、「塗工前原紙」と言う。)のコッブサイズ度が接触時間120秒で15〜80g/m2、好ましくは20〜50g/m2となるように調整されることが好ましい。塗工前原紙のコッブサイズ度が15g/m2未満では、後工程の樹脂の塗布工程で、後述する樹脂を塗工する際、ムラなく均一に塗工することができない。一方、塗工前原紙のコッブサイズ度が80g/m2を超えると、塗布される樹脂の基紙の内部への浸透量が多くなり本願の所望とするスエード調の外観及び手触り感を得ることができない。
さらにまた、本多層抄き紙の基紙の抄造においては、塗工前原紙の密度が0.35〜0.93g/cm3が望ましい。塗工前原紙の密度が0.35g/cm3未満では、基紙内部への樹脂の染み込み量が多くなることにより、本願の所望とするスエード調の手触り感を得ることができない。一方、塗工前原紙の密度が0.93g/cm3を超えると、樹脂の原紙への吸着力が弱くなることにより、表面強度が下がり、塗工層が剥がれやすくなる。なお、塗工前原紙の密度の調整方法としては、例えばヤンキードライヤー、スーパーキャレンダ、グロスキャレンダ、ソフトキャレンダ等の加圧装置の圧力、加熱温度、ニップ数等の処理条件を適宜調整する。
なお、本多層抄き紙の基紙の抄紙方法については、特に限定されるものではなく、酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法のいずれであってもよい。また、抄紙機も特に限定されるものではなく、例えば長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機、ヤンキー抄紙機、傾斜ワイヤー抄紙機等の当分野における公知の種々な抄紙機を適宜使用することができる。
以上のようにして表層を着色して抄造された本多層抄き紙は、基紙の少なくとも着色層の表面に、樹脂粒子を含有する水分散系の樹脂を重量固形分で0.9〜12.0g/m2(dry)塗工し、乾燥することにより塗工層を形成する。すなわち、少なくとも基紙の表層の表面に、抄紙機のドライヤー後の塗布工程で、樹脂を塗工ないしは塗布して塗工層を設け、その後、塗工層をドライヤーにプレスさせながら、圧着乾燥させることにより塗工層がスエード調の外観及び手触り感を呈するようになる。これにより、本多層抄き紙にスエード調の外観及び手触り感を付与することができ、美粧性に優れるようになる。
本多層抄き紙に用いられる樹脂としては、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ラテックス系、ビニルアルコール系、アルキル系等の一般に公知の水分散系の樹脂を使用することができるが、ウレタン系樹脂を用いることが特に好ましい。
このような水分散系の樹脂の塗工量は重量固形分で0.9〜12.0g/m2(dry)、好ましくは2.0〜8.0g/m2(dry)である。塗工量が0.9g/m2(dry)未満の場合は、本願の所望とするスエード調の外観及び手触り感を得ることができないと共に、滑り角度を本願の所望とする19度以上とすることができない。逆に、塗工量が12.0g/m2(dry)を超えると、樹脂を塗工した後の乾燥工程で、紙が十分に乾燥しないという問題が発生してしまう。
また、樹脂に含有される樹脂粒子は、平均粒子径が4〜20μm、好ましくは8〜20μmのものが用いられる。これにより、本多層抄き紙のJIS−P8147(1994)の「紙及び板紙の摩擦係数試験方法の傾斜方法」に準拠して測定した滑り角度(以下、単に「滑り角度」と言う。)を19度以上とすることができる。なお、平均粒子径が4μm未満の樹脂粒子であると、粒子の大きさが小さく、塗工面のザラツキ感が出にくくなるため、本発明の所望とするスエード調の外観及び手触り感を得にくくなる。逆に、平均粒子径が20μmを超える樹脂粒子であると、しっとりとした滑らかなスエード調とならない。
上述した水分散系の樹脂の塗工方法としては、抄紙機にオンマシンで設置している塗工設備による塗工、あるいはオフマシンで設置している塗工設備による塗工のどちらでも良いが、コスト面と生産効率を考えるとオンマシンで塗工することが好ましい。なお、このような塗工装置としては、例えばカレンダー、ブレードコータ、エアーナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、スロットダイコータ、グラビアコータ、チャンプレックスコータ、ブラシコータ、スライドビードコータ、ツーロールあるいはメータリングブレード式のサイズプレスコータ、ビルブレードコータ、ショートドウェルコータ、ゲートロールコータ等の一般に公知の塗工装置を用いることができる。
また、本多層抄き紙の滑り角度は19度以上が望ましい。本多層抄き紙の滑り角度が19度未満であると、本多層抄き紙が例えば段ボールケース等に加工された場合、段ボールケースの荷崩れが発生するおそれがある。しかしながら、多層抄き紙の滑り角度が高くなりすぎると、多層抄き紙を加工する際、コルゲーターなどの貼合機、またはフレキソフォルダーグルアーなどの製函機においてシート詰まりが発生する原因になると共に、多層抄き紙が加工された段ボールケースの荷崩れを防止する目的の観点からは過剰品質となるため、実用的には滑り角度が19〜55度の範囲が好ましい。
また、上記のようにして形成された本多層抄き紙は、JIS−B0601(1994)の表面粗さ試験に準拠して測定した高低値(Ry)(以下、単に「粗度」と言う。)が21μm以下であり、実用的には20μm以下が好ましい。なお、粗度が21μmを超える場合、本多層抄き紙にグラビア印刷を施す際、特に網点部にインクのにじみが発生したり、再現性が劣ってしまい、グラビア印刷適性が低下してしまう。
また、本多層抄き紙はJAPAN TAPPI No.1のワックスによる表面強さ試験方法に準拠して測定した表面強度(以下、「表面強度」と言う。)が14A以上である。表面強度が14A未満の場合、例えば本多層抄き紙を使用して段ボールケースを製造する際に、グルアージョイント部で表層が剥離するおそれがあると共に、オフセット印刷など粘度の高いインクを使用する印刷においてピッキングの問題が発生する。しかしながら、表面強度が23Aを超えても、通常の印刷適性では過剰品質となるため、実用的には14〜23Aが好ましい。
さらにまた、本多層抄き紙はJIS−P8118(1998)の厚さ及び密度の試験方法による密度が0.35〜0.93g/cm3である。密度が0.35g/cm3未満の場合、本多層抄き紙は、段ボール原紙としての強度を確保できなくなる。一方、密度が0.93g/cm3を越える場合、紙の腰が弱くなりすぎるため、圧縮強度が弱くなる。
上述したように形成された本多層抄き紙は、優れたスエード調の外観及び手触り感を有し、美粧性に優れ、また防滑性にも優れるので、本多層抄き紙を用いて形成されたショッピングバッグ、段ボールケース等に高級な印象を与えることができる。
以上、本発明にかかる多層抄き紙を、その紙層が3層から成る場合について説明したが、中層を2層以上の複数層とし、4層以上の紙層から構成しても良い。また、樹脂を本多層抄き紙の表面に塗工する場合について説明したが、裏面、あるいは表裏面に塗工されていても良い。
本多層抄き紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の質量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ・薬品等は一例にすぎないので、本発明はこれらの実施例によって制限を受けるものではなく、適宜選択可能であることはいうまでもない。
本発明に係る35種類の多層抄き紙(これを「実施例1」ないし「実施例35」とする)と、これらの実施例1ないし実施例35と比較検討するために、1種類の板紙(これを「比較例1」とする)を、表1に示すような構成で作製した。
Figure 2009235603
〔実施例1〕
(基紙の作成)
<表層>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を100質量%用い、ダブルディスクリファイナーでフリーネス(CSF)が300mlとなるように原料パルプを調整し、表層用の原料パルプスラリーを作製した。この表層用の原料パルプスラリーに、着色剤、定着剤、サイズ剤、紙力増強剤を添加した。なお、着色剤としてアニオン性直接染料及び顔料を用いた。また、定着剤として硫酸バンドを用い、3.0質量%添加した。さらにサイズ剤として酸性ロジンサイズ剤を用い、0.75質量%添加し、さらに紙力増強剤を0.4質量%添加した。
<中層>
コート断裁落ち古紙パルプを100質量%用い、ダブルディスクリファイナーでフリーネス(CSF)が350mlとなるように原料パルプを調整し、中層用の原料パルプスラリーを作製した。この中層用の原料パルプスラリーに、定着剤、サイズ剤、紙力増強剤を添加した。定着剤として硫酸バンドを用い、0.4質量%添加した。また、サイズ剤として酸性ロジンサイズ剤を用い、0.75質量%添加し、さらに紙力増強剤を0.4質量%添加した。
<裏層>
地券古紙パルプ100質量%用い、ダブルディスクリファイナーでフリーネス(CSF)が400mlとなるように原料パルプを調整し、裏層用の原料パルプスラリーを作製した。この裏層用の原料パルプスラリーに、定着剤及びサイズ剤を添加した。なお、定着剤として硫酸バンドを用い、0.4質量%添加した。また、サイズ剤として酸性ロジンサイズ剤を用い、0.75質量%添加し、さらに紙力増強剤を0.4質量%添加した。
これらの表層、中層、及び裏層の各層の原料パルプスラリーを用い、円網5層抄紙機にて表層、3層の中層、及び裏層の原料パルプスラリーを抄き合わせ、坪量が170g/m2の5層構造の基紙から成る着色層を有する多層抄き紙(板紙)を抄紙した。
(樹脂の調整)
まず、樹脂粒子を含有する水分散系の樹脂として、大日精化工業株式会社製のダイプラコートSCW−6734クリヤーを使用した。この樹脂をプレドライヤー後の塗布パートで、塗工量が固形分で0.8g/m2(dry)となるように、着色層である基紙の表層の表面に塗布して塗工層を形成し、鏡面仕上げしたドライヤーで圧着乾燥し、基紙の表層の表面にスエード調層を形成して、多層抄き紙(実施例1)を得た。
(実施例2〜9)基紙の表面に塗工する樹脂の塗工量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして得た多層抄き紙。
(実施例9〜15)基紙の表面に塗工する樹脂に含有する樹脂粒子の平均粒子径を表1に示すように変更したこと以外は、実施例6と同様にして得た多層抄き紙。
(実施例15〜23)基紙の樹脂を塗工する表層のコッブサイズ度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例7と同様にして得た多層抄き紙。
(実施例24〜30)基紙の密度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例6と同様にして得た多層抄き紙。
(実施例31〜35)水分散系樹脂の種類及び/又は樹脂粒子の種類を表1に示すように変更したこと以外は、実施例7と同様にして得た多層抄き紙。
(比較例1)基紙に何も塗工しなかったこと以外は、実施例7と同様にして得た多層抄き紙。
なお、表1中の「表層のコッブサイズ度(g/m2)」とは、樹脂を塗工する前の基紙(塗工前原紙)の吸水度を、JIS−P8140(1998)に基づいて測定した値である。
また、表1中の「密度(g/cm3)」とは、樹脂が塗工される前の基紙の密度であり、JIS−P8118(1998)の厚さ及び密度の試験方法に準拠して測定した値である。
これら全実施例及び比較例についての品質評価、すなわち本多層抄き紙(全層)の滑り角度、表面強度、粗度等について評価試験を行った。その結果は表2に示すとおりであった。なお、この品質評価はJIS−P8111に準拠して温度23±2℃、湿度50±2%の環境条件で行った。また、得られた本多層抄き紙の触感、塗工性について評価し、上記評価試験結果と併せて総合評価を行った。
表2中の「滑り角度(度)」とは、各試料に係る多層抄き紙の滑りやすさをJIS−P8147(1994)の紙及び板紙の摩擦係数試験方法の傾斜方法に準拠して測定した値である。
また、「表面強度(A)」とは、各試料に係る多層抄き紙の表面の強さをJAPAN TAPPI No.1のワックスによる表面強さ試験方法に準拠して測定した値である。
「粗度(μm)」とは、各試料に係る本多層抄き紙の表面の粗さをJIS−B0601(1994)の表面粗さ試験に準拠して測定した値である。
「塗工後密度(g/cm3)」とは、樹脂を基紙の表層の表面に塗工した後の、各試料に係る多層抄き紙の密度をJIS−P8118(1998)の厚さ及び密度の試験方法に準拠して測定した値である。
また、「触感」とは、得られた各試料である多層抄き紙の外観及び手触り感がスエード調になっているか否かを、官能的に評価したものである。なお、評価基準は下記の通りとした。
◎:特に優れたスエード調である。
○:優れたスエード調である。
△:スエード調である。
×:スエード調でない。
また、「塗工性」とは、基紙の少なくとも表層の表面に樹脂を塗工する際にムラなく、均一に塗工できるかを目視で評価したものであり、その評価基準は下記の通りとした。
○:ムラなく、均一に塗工できる。
△:若干ムラがあるが、実用的には問題ない。
×:ムラがあり、均一に塗工できない。
さらにまた、「総合評価」とは、樹脂を塗工した後の基紙の触感、美粧性、塗工性、防滑性等の段ボール原紙としての品質、製造コスト及び加工適性を総合的に判断し、総合評価として評価した。
◎:スエード調の外観及び手触り感に優れ、品質及び加工適性にも優れている。
○:スエード調の外観及び手触り感に優れ、品質及び加工適性がある。
△:スエード調の外観及び手触り感を有するが、品質及び加工適性の点でやや劣る。
×:スエード調の外観及び手触り感を有さず、また品質及び加工適正の観点からも劣る。
Figure 2009235603
表2から分かるように、本発明に係るスエード調の外観を有する多層抄き紙、すなわち実施例1〜35に係る多層抄き紙であると、スエード調の外観及び手触り感を有するとともに、美粧性に優れ、さらに高い防滑性を有する等、加工適正にも優れる多層抄き紙を低コストで製造することができることがわかる。

Claims (5)

  1. 表層、中層、及び裏層の少なくとも3層の紙層により基紙が構成され、少なくとも前記表層を着色層とした多層抄き紙において、
    少なくとも前記表層の表面に樹脂粒子を含有する水分散系の樹脂を塗工して塗工層を形成したことを特徴とするスエード調の外観を有する多層抄き紙。
  2. 前記樹脂が重量固形分で片面当り0.9〜12.0g/m2塗工されていることを特徴とする請求項1に記載のスエード調の外観を有する多層抄き紙。
  3. 前記樹脂粒子の平均粒子径が4〜20μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスエード調の外観を有する多層抄き紙。
  4. JIS−P8147(1994)に準拠して測定した滑り角度が19度以上であり、またJIS−B0601(1994)に準拠して測定した高低値(Ry)が21μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスエード調の外観を有する多層抄き紙。
  5. JIS−P8118(1998)に準拠して測定した密度が0.35〜0.93g/cm3であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のスエード調の外観を有する多層抄き紙。
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