JP2009236830A - 被分析物担体、及び、その製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属性頭部の大きさ等の設計自由度が高い被分析物担体、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ラマン分光分析に用いる被分析物Mを担持するための被分析物担体1の製造方法であって、基板10表面に対して略垂直方向に凹んだ凹部4を基板10に形成することによって、略垂直方向に立設された複数のピラー部22を基板10に形成するピラー部形成ステップと、物理蒸着法または化学蒸着法によってピラー部22の先端部23を覆うように該先端部23に金属31を堆積させて、該先端部23に金属性頭部3を形成する金属性頭部形成ステップとを含むことを特徴とする被分析物担体の製造方法を提供する。
【選択図】図3
【解決手段】ラマン分光分析に用いる被分析物Mを担持するための被分析物担体1の製造方法であって、基板10表面に対して略垂直方向に凹んだ凹部4を基板10に形成することによって、略垂直方向に立設された複数のピラー部22を基板10に形成するピラー部形成ステップと、物理蒸着法または化学蒸着法によってピラー部22の先端部23を覆うように該先端部23に金属31を堆積させて、該先端部23に金属性頭部3を形成する金属性頭部形成ステップとを含むことを特徴とする被分析物担体の製造方法を提供する。
【選択図】図3
Description
本発明は、ラマン分光分析に用いる被分析物担体、及び、その製造方法に関する。
ラマン分光分析は、被分析物に励起光を照射することにより発生するラマン散乱光に基づいて行われる被分析物の分子同定等に用いられる分光技術である。ラマン散乱光は、極めて微弱であるため、検出が困難であるという問題を有している。そこで、表面増強ラマン散乱(SERS:Surface-Enhanced Raman Scattering)という現象を利用して、強度の高いラマン散乱光を発生させる方法が提案されている。このSERSは、金属粒子間の隙間に分子を位置させた状態で、該分子に励起光を照射することで生じる。従って、金属粒子間の隙間に分子を位置させた状態で、該分子に励起光を照射すると、強度の高いラマン散乱光が発生する。SERSによりラマン散乱光が増強される効果(以下、「SERS効果」という)は、金属粒子間の隙間の大きさが、数十nm程度又はそれ以下の大きさにおいて高い。このような高いSERS効果を得るために、金属粒子間に微細な隙間を形成する方法が以下に示すように、種々提案されている。
1つの方法として、銀のナノ粒子が分散したコロイド溶液に被分析物を混ぜた後、銀のナノ粒子及び被分析物を凝集させる方法を挙げることができる。この方法では、銀のナノ粒子が凝集して形成された銀の凝集体が微細な隙間をおいて複数形成される。しかし、かかる方法では、銀の凝集体の大きさや構造、及び、銀の凝集体間の隙間の大きさを制御することが困難である。SERS効果の大きさは、凝集体の大きさや構造、及び、凝集体間の隙間の大きさに依存するため、かかる方法では、SERS効果を安定して得ることができない。
また、他の方法として、非特許文献1に記載の方法を挙げることができる。非特許文献1に記載の方法は、図8に示すように、基板111と、基板111上に平面状に配置された大きさが同一の複数の球体112とを備える被分析物担体110に対して、球体112の上から金属を蒸着させる方法である。図8に示すように、球体112間には隙間113が形成されるため、該蒸着によって、基板111上の隙間113と対応する部分に金属が付着する。金属が付着することによって、基板111上において、隙間113と対応する部分に金属粒子が形成される。しかし、非特許文献1に記載の方法では、球体112間に形成される隙間113は大きさが一定であるため、形成される金属粒子の大きさも一定である。このため、非特許文献1に記載の方法では、特定の分子以外の分子においては、高いSERS効果を得ることができない。これは、SERS効果が分子の種類と金属粒子の大きさとに依存するためである。具体的には、SERS効果は、金属粒子近傍に生じる電場の強度に依存する。この電場の強度は、2つの要素(第1要素と第2要素)に依存し、2つの要素が共に大きいときに高い。第1要素は、被分析物に照射される励起光の波長に依存し、該励起光の各波長に対する第1要素の大きさは被分析物の分子の種類によって異なる。一方、第2要素も励起光の波長に依存し、該励起光の各波長に対する第2要素の大きさは金属粒子の大きさによって異なる。よって、金属粒子の大きさが一定であると、第2要素が大きくなる波長が一定であり、第1要素と第2要素とが共に大きくなる波長が存在する分子が限られる。従って、非特許文献1に記載の方法では、特定の分子以外の分子においては、高いSERS効果を得ることができない。また、大きさが異なる球体112を基板111上に配置して大きさが異なる隙間113を形成することによって、大きさが異なる金属粒子を形成することは可能である。しかし、大きさが異なる球体112を使用して、所望の大きさの隙間113を形成することは困難である。さらに、このような被分析物担体110は、基板111上に球体112を配置する必要があるため、量産性に欠ける。
また、他の方法として、特許文献1に記載の方法を挙げることができる。特許文献1に記載の方法は、図9に示すように、アルミニウムからなる基板120に陽極酸化を施して、所定の間隔で基板120に微細孔121を形成し、各微細孔121に金属粒子122を充填する方法である。しかし、陽極酸化では、大きさが異なる微細孔121を1枚の基板120に形成することが困難であるため、各微細孔121に充填される金属粒子122の大きさが同一となる。従って、特許文献1に記載の方法においても、特定の分子以外の分子においては、高いSERS効果を得ることができない。
また、他の方法として、特許文献2に記載の方法を挙げることができる。特許文献2に記載の方法は、図10(a)に示すように、基板131上に平面状に配置された大きさが同一の球体132をエッチングすることによって、球体132間に隙間133を形成し、蒸着等により金属粒子134を球体132に付着させる方法である。しかし、大きさが同一の球体132を使用することから、各球体132に付着した金属粒子134の大きさは同一となる。金属粒子134の大きさが同一となることを回避するために、大きさが異なる球体132を使用することも考えられる。しかし、大きさが異なる球体132を使用すると、図10(b)に示すように、平面視において、小さい球体132と大きな球体132とが重なる。このため、エッチングによって球体132間に隙間133を形成することが困難になる。従って、特許文献2に記載の方法においても、特定の分子以外の分子においては、高いSERS効果を得ることができない。また、このような基板131及び球体132を備える被分析物担体130は、基板131上に球体132を配置する必要があるため、量産性に欠ける。さらに、基板131と球体132との間は点接触であるため、金属粒子134が付着した球体132が基板131から剥がれ易いという問題を有する。
また、フォトリソグラフィやナノインプリント等を用いれば、大きさの異なる金属粒子を1枚の基板に作製することが可能である。しかし、このような技術では、加工精度の限界により、高いSERS効果を得るために必要とされる数nm程度またはそれ以下の大きさの隙間をおいて金属粒子を基板に形成することは困難である。
Christy L. Haynes and Richard P. Van Duyne、「A Versatile Nanofabrication Tool for Studies of Size-Dependent Nanoparticle Optics」、J. Phys. Chem、米国、American Chemical Society、2001年9月5日、105巻、24号、P5599-5611 特開2005−172569号
特開2005−144569号
Christy L. Haynes and Richard P. Van Duyne、「A Versatile Nanofabrication Tool for Studies of Size-Dependent Nanoparticle Optics」、J. Phys. Chem、米国、American Chemical Society、2001年9月5日、105巻、24号、P5599-5611
そこで、本発明は、SERS効果に影響を及ぼす金属性の物体の大きさ等の設計自由度が高い被分析物担体、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、ラマン分光分析に用いる被分析物を担持するための被分析物担体の製造方法であって、基板表面に対して略垂直方向に凹んだ凹部を前記基板に形成することによって、前記略垂直方向に立設された複数のピラー部を前記基板に形成するピラー部形成ステップと、物理蒸着法または化学蒸着法によって前記ピラー部の先端部を覆うように該先端部に金属を堆積させて、該先端部に金属性頭部を形成する金属性頭部形成ステップとを含むことを特徴とする被分析物担体の製造方法を提供する。
本発明に係る製造方法においては、ピラー部の先端部を覆うように該先端部に金属を堆積させて、該先端部に金属性頭部を形成する。ピラー部の先端部を覆うように金属を堆積させると、各ピラー部の先端部に形成される金属性頭部間の隙間はピラー部間の間隔よりも小さくなる。従って、本発明に係る製造方法によれば、高いSERS効果を得るために必要な金属性頭部間の隙間よりもピラー部間の間隔を大きくすることができる。よって、本発明に係る製造方法によれば、フォトリソグラフィやナノインプリント等を用いて容易にピラー部を形成することができる。このように、フォトリソグラフィやナノインプリント等を用いてピラー部を形成できることから、本発明に係る製造方法によれば、ピラー部の形態の設計自由度が高く、1つの被分析物担体に、平面視の大きさが異なるピラー部を形成することも可能である。また、金属性頭部は、ピラー部の先端部に堆積した金属から形成されるため、金属性頭部の大きさ等の金属性頭部の形態は、ピラー部の形態の影響を受ける。よって、ピラー部の形態を調整することで、金属性頭部の形態を調整することができる。よって、本発明に係る製造方法によれば、金属性頭部の形態の設計自由度も高くなる。
また、1つの被分析物担体に、大きさが異なるピラー部を形成すれば、1つの被分析物担体に、大きさが異なる金属性頭部を形成することもできる。このため、本発明に係る製造方法によれば、大きさが異なる金属性頭部を備えた被分析物担体を製造できる。よって、高いSERS効果を得ることができる分子の種類が限定され難く、多種類の分子において高いSERS効果を得ることができる被分析物担体を製造することができる。
また、本発明に係る製造方法によれば、金属の堆積量を調整することで、金属性頭部間の隙間の微調整が可能である。このため、本発明に係る製造方法によれば、SERS効果を安定して得ることが可能な被分析物担体を製造することができる。また、本発明に係る製造方法では、金属性頭部間の隙間の微調整が可能であるので、例えば、金属性頭部間の隙間を1nm未満の大きさにすることも可能である。
また、本発明に係る製造方法によって被分析物担体を製造すれば、土台部とピラー部とが同一の基板から形成されるので、金属性頭部が形成されるピラー部は、土台部から剥がれ難い。また、被分析物担体の製造の際に、球体を基板上に配置する必要が無いため、本実施形態に係る製造方法は、量産性に優れる。
好ましくは、前記ピラー部形成ステップは、前記略垂直方向に前記基板をエッチングするエッチング処理と、前記エッチング処理によって露出した前記基板の表面に保護膜を形成する保護膜形成処理とを交互に繰り返し行うエッチング工程を含む。
基板表面に対して略垂直方向にエッチングする場合、基板表面に対して略垂直な表面はイオン照射量が少なく、基板表面に対して略平行な表面はイオン照射量が多い。よって、かかるエッチング工程においては、基板表面に保護膜が形成されることにより、基板表面に対して略垂直な表面ではエッチングが進行し難く、基板表面に対して略平行な表面ではエッチングが進行し易い。このため、かかるエッチング工程においては、基板表面に対して略垂直方向にエッチングが大きく進行するので、小さい間隔で基板表面に対して略垂直方向に高いピラー部を形成することが可能である。ピラー部を小さい間隔で形成すると、ピラー部の先端部に形成される金属性頭部間の隙間を容易に小さくすることができる。また、小さい間隔で基板表面に対して略垂直方向に高いピラー部を形成することで、ピラー部の基端部及び土台部に金属が堆積し難く、各ピラー部の先端部に形成される金属性頭部が繋がることを防止することができる。
また、好ましくは、前記ピラー部形成ステップは、前記エッチング工程より前に行われる前処理工程を含み、前記前処理工程は、前記基板表面のうち前記凹部が形成される部分に塗布されたレジストをナノインプリントによって除去する工程である。
前処理工程をナノインプリントによって行うことで、レジストのパターニングを安価に行うことができ、ひいては、被分析物担体全体の製造のコストを抑えることができる。
また、前記前工程は、ナノインプリントに代えて、フォトリソグラフィによって行ってもよい。
また、前記ピラー部形成ステップは、エッチング工程に代えて、前記基板表面にナノインプリントを施して、前記凹部を前記基板に形成することによって、複数の前記ピラー部を前記基板に形成するナノインプリント工程を含んでもよい。
また、好ましくは、前記ピラー部形成ステップは、複数の前記ピラー部を前記基板に形成した後、前記ピラー部の少なくとも側面に、誘電体膜を形成する誘電体膜形成工程を含む。
かかる好ましい製造方法においては、ピラー部の少なくとも側面に誘電体膜を形成することによって、ピラー部間の間隔を狭くすることができる。従って、かかる好ましい製造方法においては、ピラー部の先端部に形成される金属性頭部間の隙間を容易に小さくすることができる。
さらに、本発明は、ラマン分光分析に用いる被分析物を担持するための被分析物担体であって、土台部、及び、前記土台部から立設した複数のピラー部を有する基体と、前記ピラー部の先端部を覆うように該先端部に堆積した金属からなる金属性頭部とを備えたことを特徴とする被分析物担体を提供することもできる。
本発明に係る被分析物担体の金属性頭部は、ピラー部の先端部(土台部から離間した方の端部)を覆うように該先端部に金属を堆積させることで形成されている。よって、各ピラー部の先端部に形成される金属性頭部間の隙間はピラー部間の間隔よりも小さくなる。従って、本発明に係る被分析物担体においては、高いSERS効果を得るために必要な金属性頭部間の隙間よりもピラー部間の間隔を大きくすることができる。よって、ピラー部は、フォトリソグラフィやナノインプリント等を用いて容易に形成することができる。従って、本発明に係る被分析物担体においては、ピラー部の形態の設計自由度が高い。よって、本発明に係る被分析物担体においては、金属性頭部の大きさ等の金属性頭部の形態についても設計自由度が高い。
金属性頭部の大きさ等の金属性頭部の形態は、ピラー部の形態の影響を受けるため、大きさが異なるピラー部を本発明に係る被分析担体が備えることで、本発明に係る被分析担体は、大きさが異なる金属性頭部を備えることができる。このように、大きさが異なる金属性頭部を備えることで、本発明に係る被分析物担体は、高いSERS効果を得ることができる分子の種類が限定され難く、多種類の分子において高いSERS効果を得ることもできる。
また、本発明に係る被分析担体においては、金属の堆積量を調整することで、金属性頭部間の隙間の微調整が可能である。このため、本発明に係る被分析物担体においては、SERS効果を安定して得られる。また、金属性頭部間の隙間の微調整することで、金属性頭部間の隙間を、例えば、1nm未満の大きさにすることも可能である。
好ましくは、前記ピラー部は、少なくとも側面に誘電体膜を有する構成とされる。
本発明は、金属性頭部の大きさ等の設計自由度が高い被分析物担体、及び、その製造方法を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る被分析物担体1の構造を説明する図であり、図1(a)は被分析物担体1の平面図を示し、図1(b)は図1(a)のA―A端面図を示す。図1に示すように、本実施形態に係る被分析物担体1は、土台部21、及び、土台部21から立設した複数のピラー部22を有する基体2と、ピラー部22の先端部23を覆うように該先端部23に堆積した金属31からなる金属性頭部3とを備えている。
ピラー部22の大きさ、ピラー部22の形状、ピラー部22間の間隔の大きさPd等のピラー部22の形態は限定されない。よって、例えば、ピラー部の平面視の形状は、図1(a)に示すような円形状だけでなく、例えば、正方形状、図2(a)に示すようなロッド状(矩形状)等の多角形状とすることができる。また、各ピラー部22の平面視の形状及び大きさは、同一であっても、異なっていてもよい。従って、例えば、被分析物担体1は、大きさが同一のピラー部22を複数備えることも、大きさが異なる複数種のピラー部22を1又は複数個ずつ備えることもできる。
また、ピラー部22の平面視における配置形態も特に限定されず、例えば図1(a)に示す千鳥状とすることができる。平面視におけるピラー部22の配置形態は、例えば、図2(a)に示すように、近接した2つのピラー部22から構成されるダイマー25が、他のダイマー25に対して間隔をおいて配置されたダイマー形態とすることもできる。また、平面視におけるピラー部22の配置形態は、例えば、図2(b)に示すように、一列に並んだ近接した3つのピラー部22から構成されるトリマー26が、他のトリマー26に対して間隔をおいて配置されたトリマー形態とすることもできる。また、平面視におけるピラー部22の配置形態は、例えば、図2(c)に示すように、ダイマー形態で配置された部分と、千鳥状に配置された部分とが存在する形態とすることもできる。尚、図2(c)では、ピラー部22間においてピラー部22の平面視の大きさが異なっているが、各ピラー部22の平面視の大きさ同一であってもよい。
尚、ピラー部22の高さ(図1(b)の矢印H方向の寸法)は、ピラー部22間の間隔の大きさPdよりも大きい。
図1(b)に示すように、金属性頭部3は、ピラー部22の先端部にのみ形成されており、他のピラー部22に形成された金属性頭部3と繋がっていない。この金属性頭部3を形成する金属31は、ピラー部2の先端部23の天面部23a及び側面部23bにのみ付着している。金属性頭部3は、ピラー部22の高さ方向(図1(b)の矢印H方向)と直交する水平方向(図1(b)の矢印W方向)に、ピラー部22の先端部23の側面部23bから張り出している。よって、金属性頭部3間の隙間の大きさSdは、ピラー部22間の間隔の大きさPdよりも小さい。この金属性頭部3間の隙間の大きさSdは、高いSERS効果が得られる数nm程度又はそれ以下の大きさである。金属性頭部3を形成する金属31には、銀、金など種々の金属を用いることができる。また、金属性頭部3は、ピラー部22の先端部23に堆積した金属31によって形成されるため、金属性頭部3の平面視の形状はピラー部22の平面視の形状に影響される。このため、図1(a)、図2(b)、及び、図2(c)に示すように、ピラー部22の平面視の形状が円形状の場合は、金属性頭部3の平面視の形状が円形状に、図2(a)に示すように、ピラー部22の平面視の形状がロッド状の場合は、金属性頭部3の平面視の形状がロッド状となる。また、金属性頭部3の平面視の大きさもピラー部22の平面視の大きさに影響される。このため、各ピラー部22の平面視の大きさが同一である場合は、各金属性頭部3の平面視の大きさも同一となる。一方で、図2(c)に示すように、各ピラー部22の平面視の大きさが異なる場合は、各金属性頭部3の平面視の大きさも異なる。
以上の構成の被分析物担体1において、ピラー部22の配置形態が図1(b)に示すような配置形態の場合、金属性頭部3間の隙間に被分析物Mが位置したときに、被分析物Mに励起光が照射されると、SERS効果によって、強いラマン散乱光Rが生じる。また、ピラー部22の配置形態が図2(a)に示すダイマー形態の場合は、同一のダイマー25を形成するピラー部22の先端部23に形成された金属性頭部3間の隙間に被分析物Mが位置したとき、SERS効果によって、強いラマン散乱光が生じる。また、ピラー部22の配置形態が図2(b)に示すトリマー形態の場合は、同一のトリマー26を形成するピラー部22の先端部23に形成された金属性頭部3間の隙間が2つあるが、何れの隙間に被分析物Mが位置した場合であっても、SERS効果によって、強いラマン散乱光が生じる。
被分析物担体1においては、図2(a)に示すように、平面視ロッド状の2つの金属性頭部3が近接したダイマー形態で配置することが好ましい。これは、平面視ロッド状の金属性頭部3をこのように配置することで、より高いSERS効果を得ることができるからである。
また、被分析物担体1は、大きさの異なる金属性頭部3を備えることが好ましい。これは、大きさの異なる金属性頭部3を備えることで、高いSERS効果を得ることができる分子の種類が限定され難く、多種類の分子において高いSERS効果を生じさせることができるからである。
図3は、本実施形態に係る被分析物担体1の製造方法を説明するためのフロー図である。図3(a)に示すように、被分析物担体1を製造する際には、まず、土台部21及びピラー部22が形成されるシリコン製の基板10の表面にレジスト11を塗布して、該基板10をベークする。次に、基板10に塗布されたレジスト11のうち、土台部21の上方部分であってピラー部22が形成されない部分(以下、「凹部4」という)に塗布された部分をナノインプリントによって除去する前処理工程を行う。この前処理工程は、図3(b)に示すように、ピラー部22の部分が凹んだシリコン製又は金属製のモールド12を、温度を上げて軟化させたレジスト11に押し付けて、該レジスト11にモールド12の形状を転写することで行う。これにより、図3(c)に示すように、凹部4に塗布された部分のレジスト11が基板上10から略除去される。次に、凹部4に塗布された部分の残留レジスト11aをプラズマエッチング等によって図3(d)に示すように完全に除去する。尚、前処理工程は、ナノインプリントに代えてフォトリソグラフィを用いて行ってもよい。
次に、図3(e)に示すように、基板10表面に対して略垂直方向に凹んだ凹部4を基板10に形成することによって、基板10表面に対して略垂直方向に立設された複数のピラー部22を基板10に形成する。ピラー部22の形成は、基板10表面に対して略垂直方向に基板10をエッチングするエッチング処理と、エッチング処理によって露出した基板10の表面に保護膜を形成する保護膜形成処理とを交互に繰り返し行うエッチング工程によって行う。
エッチング工程では、まず、レジスト11が塗布された基板10表面に対してエッチング処理を行う。このエッチング処理は、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチングを用いて行う。このICPエッチングは、例えば、基板10を基台に載置して、エッチングガスをプラズマ化すると共に、該基台にバイアス電位を与えて行う。この結果、図4(a)に示すように、基板10表面のうちレジスト11が塗布されていない部分では、基板10表面と略垂直方向にエッチングが進行する。次に、保護膜形成処理を行う。この保護膜形成処理では、図4(b)に示すように、レジスト11が塗布された基板10表面に保護膜14を形成する。保護膜14の形成後、再び、基板10表面に対して略垂直方向に基板10をエッチングする。基板10表面に対して略垂直方向に基板10をエッチングする際において、基板10表面と略平行な表面では、イオン照射が多く、保護膜14の除去及びエッチングが進行する。一方、基板10表面に対して略垂直な表面では、イオン照射が少なく、保護膜14の除去のみが進行して、エッチングが進行しない。この結果、図4(c)に示すように、基板10表面のうちレジスト11が塗布されていない部分では、基板10表面と垂直方向にエッチングが大きく進行する。このようなエッチング処理と保護膜形成処理とを交互に繰り返し行うことで、図3(e)に示すように、基板10のレジスト11が塗布されていない部分は、基板10表面に対して略垂直方向に凹む。このように、基板10のレジスト11が塗布されていない部分が基板10表面に対して略垂直方向に凹むことによって、凹部4が形成される。この凹部4が形成されることによって、基板10には、土台部21と、基板10表面と略垂直方向に立設したピラー部22とが形成される。尚、土台部21及びピラー部22が形成された後の基板10を基体2という。
次に、図3(f)に示すように、ピラー部22の先端部23の天面部23aに残留しているレジスト11を除去し、物理蒸着法または化学蒸着法によって、ピラー部22の先端部23を覆うように該先端部23に金属31を堆積させる。ピラー部22の高さは、ピラー部22間の間隔の大きさPdよりも大きいため、金属31は、図1に示すようにピラー部22の先端部23を覆うように堆積すると共に、土台部21には僅かにしか堆積せず、ピラー部22の基端部24の側面には殆ど堆積しない。よって、各ピラー部22に堆積した金属31から形成される金属性頭部3は、他のピラー部22に形成された金属性頭部3と繋がらない。また、金属性頭部3間の隙間は、金属31の堆積量によって微調整することができる。即ち、物理蒸着法または化学蒸着法に用いる金属31の量を調整することで、金属性頭部3間の隙間を微調整することができる。以上によって、図1に示すような、被分析物担体1が製造される。
以上のように、本実施形態に係る製造方法においては、ピラー部22の先端部23を覆うように金属31を堆積させて、該先端部23に金属性頭部3を形成する。ピラー部22の先端部23を覆うように金属31を堆積させると、各ピラー部22の先端部23に形成される金属性頭部3間の隙間はピラー部22間の間隔よりも小さくなる。従って、高いSERS効果を得るために必要な金属性頭部3間の隙間よりピラー部22間の間隔を大きくすることができる。よって、本実施形態に係る製造方法においては、上述のように、前処理工程などにおいて、フォトリソグラフィやナノインプリント等を用いることができるため、本実施形態に係る製造方法によれば、ピラー部22の平面視の大きさ、ピラー部22の平面視の形状、及び、ピラー部22間の間隔の大きさPd等のピラー部22の形態の設計自由度は高い。よって、本実施形態に係る製造方法によれば、1つの被分析物担体1に、平面視の大きさが異なるピラー部22を形成することも可能である。金属性頭部3は、ピラー部22の先端部23に堆積した金属31から形成されるため、金属性頭部3の大きさ等の金属性頭部3の形態は、ピラー部22の形態の影響を受ける。よって、ピラー部22の形態を調整することで、金属性頭部3の形態を調整することができる。よって、本実施形態に係る製造方法によれば、金属性頭部3の形態の設計自由度が高くなる。
また、1つの被分析物担体1に、大きさが異なるピラー部22を形成すれば、1つの被分析物担体1に、大きさが異なる金属性頭部3を形成することができる。このため、本実施形態に係る製造方法によれば、大きさが異なる金属性頭部3を備えた被分析物担体1を製造できる。よって、高いSERS効果を得ることができる分子の種類が限定され難く、多種類の分子において高いSERS効果を得ることができる被分析物担体1を製造することができる。
また、本実施形態に係る製造方法によれば、金属31の堆積量を調整することで、金属性頭部3間の隙間を微調整することができる。このため、本実施形態に係る製造方法によれば、SERS効果を安定して得ることが可能な被分析物担体を製造することができる。また、本実施形態に係る製造方法では、金属性頭部3間の隙間の微調整が可能であるので、例えば、金属性頭部3間の隙間を1nm未満の大きさにすることも可能である。
また、本実施形態に係る製造方法によって被分析物担体1を製造すれば、土台部21とピラー部22とが同一の基板10から形成されるので、ピラー部22は、土台部21から剥がれ難い。また、被分析物担体1の製造の際に、球体を平面状に基板10に配置する必要が無いため、本実施形態に係る製造方法は、生産効率性に優れる。
また、上述のように、フォトリソグラフィやナノインプリント等を用いてピラー部22を形成するため、本実施形態に係る製造方法によれば、図2(a)に示すような、平面視ロッド状のピラー部22をダイマー形態に配置するように形成することもできる。よって、本実施形態に係る製造方法によれば、図2(a)に示すような、平面視ロッド状の2つの金属性頭部3が近接したダイマー形態で配置することができる。
また、上記のように、前処理工程をナノインプリントによって行うことで、レジストのパターニングを安価に行うことができ、ひいては、被分析物担体1全体の製造のコストを抑えることができる。
本実施形態では、基板10へのピラー部22の形成は、エッチング工程によって行っているが、基板10へのピラー部22の形成は、エッチング工程に代えて、ナノインプリントによって行ってもよい。ナノインプリントによる基板10へのピラー部22の形成は、例えば、凹部4及びピラー部22の形状に対応した凹凸を有したシリコン製又は金属製のモールドを基板10表面に押し付けて、モールドの形状を基板10に転写することで行う。このようなナノインプリントでピラー部22を形成する場合は、例えば、基板10としてプラスチック製の基板を利用することができる。
ピラー部22は、図5に示すように、表面に誘電体膜22aを有してもよい。ピラー部22の側面に誘電体膜22aが形成されれば、誘電体膜22aの膜厚に応じた分だけ、ピラー部22間の間隔を狭くすることができる。このように、ピラー部22間の間隔を狭くすることで、ピラー部22の先端部23に形成される金属性頭部3間の隙間を容易に小さくすることができる。誘電体膜22aを形成するタイミングは、ピラー部22の形成後から、金属31を堆積するまでの間であればよい。誘電体膜22aの材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO2)や、窒化シリコン(SiN)等を挙げることができる。また、酸化シリコンの誘電体膜22aは、例えば、ピラー部22形成後の基体2全体に熱酸化又はCVD(Chemical Vapor Deposition)を施すによって形成することができる。また、窒化シリコンの誘電体膜22aは、例えば、ピラー部22形成後の基体2全体にCVDを施すことによって形成することができる。
次に、本発明に係る被分析物担体、及び、その製造方法の実施例について説明する。図6は、本実施例に係る被分析物担体1の平面図である。本実施例に係る被分析物担体1は、図6に示すように、複数のピラー部22が千鳥状に形成されている。各ピラー部22の平面視における形状は150nm角の正方形状とされている。各ピラー部22の高さは、1μmとされている。被分析物担体1の金属性頭部3を形成する金属31には金のが使用されている。金属性頭部3間の隙間の大きさSdは略0nmとされている。
次に、本実施例に係る製造方法を図3を利用して説明する。まず、図3(a)に示すように、シリコン製の基板10上に厚さ200nmのレジスト11を塗布し、ベークする。次に、図7に示すように、千鳥状に凹部12aと凸部12bとが形成されたシリコン製のモールド12を、図3(b)に示すように、温度を上げて軟化させたレジスト11に押し付けて、レジスト11にモールド12の形状を転写する。モールド12の凹部12a及び凸部12bは平面視200nm角の正方形状である。これにより、図3(c)に示すように、モールド12の凸部12bに対応する部分のレジスト11が基板上10から略除去される。次に、図3(d)に示すように、除去しきれなかった残留レジスト11aをプラズマエッチングによって除去する。次に、図3(e)に示すように、ICPエッチングを含むエッチング処理及び保護膜形成処理からなるエッチング工程によって、基板10表面に対して略垂直方向に凹んだ凹部4を基板10に形成することによって、基板10表面に対して略垂直方向に立設された複数のピラー部22を基板10に形成する。次に、ピラー部22の先端部23の天面部23aに残留しているレジスト11を除去し、真空蒸着によって、ピラー部22の先端部23を覆うように該先端部23に金属31を堆積させる。この真空蒸着を金属性頭部3間の隙間の大きさSdが略0となるまで行う。これにより本実施例に係る被分析物担体1が完成する。
1…被分析物担体、2…基体、21…土台部、22…ピラー部、23…先端部、24…基端部、3…金属性頭部、31…金属、4…凹部
Claims (8)
- ラマン分光分析に用いる被分析物を担持するための被分析物担体の製造方法であって、
基板表面に対して略垂直方向に凹んだ凹部を前記基板に形成することによって、前記略垂直方向に立設された複数のピラー部を前記基板に形成するピラー部形成ステップと、
物理蒸着法または化学蒸着法によって前記ピラー部の先端部を覆うように該先端部に金属を堆積させて、該先端部に金属性頭部を形成する金属性頭部形成ステップとを含むことを特徴とする被分析物担体の製造方法。 - 前記ピラー部形成ステップは、前記略垂直方向に前記基板をエッチングするエッチング処理と、前記エッチング処理によって露出した前記基板の表面に保護膜を形成する保護膜形成処理とを交互に繰り返し行うエッチング工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の被分析物担体の製造方法。
- 前記ピラー部形成ステップは、前記エッチング工程より前に行われる前処理工程を含み、
前記前処理工程は、前記基板表面のうち前記凹部が形成される部分に塗布されたレジストをナノインプリントによって除去することを特徴とする請求項2に記載の被分析物担体の製造方法。 - 前記ピラー部形成ステップは、前記エッチング工程より前に行われ、前記基板表面のうち前記凹部が形成される部分に塗布されたレジストをフォトリソグラフィによって除去する前処理工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の被分析物担体の製造方法。
- 前記ピラー部形成ステップは、前記基板表面にナノインプリントを施して、前記凹部を前記基板に形成することによって、複数の前記ピラー部を前記基板に形成するナノインプリント工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の被分析物担体の製造方法。
- 前記ピラー部形成ステップは、複数の前記ピラー部を前記基板に形成した後、前記ピラー部の少なくとも側面に、誘電体膜を形成する誘電体膜形成工程を含むことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の被分析物担体の製造方法。
- ラマン分光分析に用いる被分析物を担持するための被分析物担体であって、
土台部、及び、前記土台部から立設した複数のピラー部を有する基体と、
前記ピラー部の先端部を覆うように該先端部に堆積した金属からなる金属性頭部とを備えたことを特徴とする被分析物担体。 - 前記ピラー部は、少なくとも側面に誘電体膜を有することを特徴とする請求項7に記載の被分析物担体。
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