JP2010142354A - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】コントラストを制御するためのプレパルスの印加を伴うイメージングにおいて、プレパルスの印加時に渦電流に起因して発生する残留磁場による影響を低減させることが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、イメージング手段および補償手段を備える。イメージング手段は、コントラストを制御するためのプレパルス(FAT-SATURATION PULSE)の印加を伴ってイメージングを行うことにより画像データを取得する。補償手段は、プレパルス(FAT-SATURATION PULSE)の印加タイミングにおいて、プレパルス(FAT-SATURATION PULSE)の印加以前に印加された傾斜磁場により発生した2次以上の空間分布を有する渦電流による残留磁場(REMANENT EDDY)を抑制する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する磁気共鳴イメージング(MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置に係り、特に、所望の目的を有するプレパルスの印加時において渦電流による残留磁場の影響を低減させることが可能な磁気共鳴イメージング装置に関する。
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。
この磁気共鳴イメージングの分野におけるコントラスト制御技術の1つとして、脂肪からのMR信号を抑制する脂肪抑制法が知られている。さらに、脂肪抑制法の1つとして脂肪抑制パルスをプレパルスとして印加することにより脂肪信号を抑制する技術が知られている。例えば、脂肪の共鳴周波数に合致させた帯域幅を有する90°RFパルスを印加することによって、脂肪のプロトンを選択的に励起および飽和させるCHESS (chemical shift selective)法がある。特に、被検体の断面のMR画像を得る場合、断面内に存在する脂肪は化学シフトに因ってアーチファクト等の画質劣化の原因となるため、上述したような脂肪からのMR信号を抑制する脂肪抑制技術は必要不可欠である。
また、このようにプレパルスを印加することによってコントラストを制御する技術は脂肪抑制に限らず、ラベリング等の様々な目的にも利用されている。
一方、磁気共鳴イメージングにおいて印加される傾斜磁場の立ち上がりや立ち下がりの際に傾斜磁場変化に伴ってMRI装置の導体部分に渦電流が誘起される。そして、誘起された渦電流により作り出される磁場に影響により、印加すべき傾斜磁場の波形が歪むため、画像にアーチファクトが発生するという問題がある。
この問題に対して、渦電流による画質劣化を補償する方法として、渦電流により発生する傾斜磁場と逆の極性の傾斜磁場を予め傾斜磁場に上乗せして出力するプレエンファシスという技術が知られている(例えば特許文献1参照)。プレエンファシスを利用するためには、渦電流の減衰の時定数と強度が必要であり、これらの値は事前に測定される。尚、渦電流の減衰の時定数および強度はMRI装置に固有の値となる。
特開2001−258865号公報
しかしながら、従来の渦電流に対する補償技術は、渦電流の減衰の時定数と強度が空間的に一様であるという前提で傾斜磁場の波形に対してプレエンファシスを掛けることによって、渦電流に起因する残留磁場が発生しないようにするものである。従って、渦電流の減衰の時定数および強度が空間的に変化する場合には、プレエンファシスの設定値と異なる渦電流が発生する位置において残留磁場が生じることとなる。
すなわち、渦電流により発生する磁場は、0次の空間分布および1次の空間分布の他に、2次の空間分布をも有する。このよう磁場に対し、0次の空間分布および1次の空間分布による影響は、上述したプレエンファシスによって補正することが可能であるが、2次の空間分布による影響をプレエンファシスによって十分に補正することは困難である。
このような渦電流による2次の空間分布を有する残留磁場が存在すると、残留磁場によって脂肪抑制パルスの帯域幅と一致しない共鳴周波数を有する脂肪組織が生じ、脂肪抑制効果が低減してしまう。特に、2次の分布を有する渦電流の影響により、オフセンターで磁場の均一性が劣化し、脂肪抑制効果が低下することが問題となっている。
従って、CHESS法等の脂肪抑制法を用いた撮像において、良好な脂肪抑制効果を得るためには均一な磁場を形成することが必要である。そのためには、渦電流に起因して生じる空間的に減衰の時定数および強度が変化するする残留磁場を補正することが必要である。
同様に、脂肪抑制以外の目的でプレパルスが所定の強度の傾斜磁場パルスとともに印加される場合においても、渦電流による2次の空間分布を有する残留磁場が存在すると、プレパルスの印加時において形成すべき傾斜磁場の本来の強度と異なる強度の傾斜磁場が形成されることとなる。従って、渦電流による残留磁場はプレパルスの印加によるコントラスト制御の精度劣化に繋がる。このため、コントラストを制御するためのプレパルスの印加時における、渦電流に起因して発生する残留磁場を補正することが必要である。
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、コントラストを制御するためのプレパルスの印加を伴うイメージングにおいて、プレパルスの印加時に渦電流に起因して発生する残留磁場による影響を低減させることが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、コントラストを制御するためのプレパルスの印加を伴ってイメージングを行うことにより画像データを取得するイメージング手段と、前記プレパルスの印加タイミングにおいて、前記プレパルスの印加以前に印加された傾斜磁場により発生した2次以上の空間分布を有する渦電流による残留磁場を抑制する補償手段とを有することを特徴とするものである。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置においては、コントラストを制御するためのプレパルスの印加を伴うイメージングにおいて、プレパルスの印加時に渦電流に起因して発生する残留磁場による影響を低減させることができる。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21と、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23およびRFコイル24とを図示しないガントリに内蔵した構成である。
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24はガントリに内蔵されず、寝台37や被検体P近傍に設けられる場合もある。
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
さらに、傾斜磁場電源27には、傾斜磁場電源制御コンピュータ38および渦補償回路39が接続される。また、渦補償回路39には、渦補償パラメータデータベース39Aが接続される。
傾斜磁場電源制御コンピュータ38は、シーケンスコントローラ31または傾斜磁場電源27から取得したパルスシーケンスを参照し、傾斜磁場電源27に制御信号を与えることにより傾斜磁場電源27からのパルス出力波形を制御する機能を有する。特に、傾斜磁場電源制御コンピュータ38は、RFコイル24から送信されるRF信号の1つであるプレパルスの印加タイミングにおいて、プレパルスの印加以前における傾斜磁場の印加に伴って生じた2次以上の空間分布を有する渦電流の影響による残留磁場がキャンセルされるような渦補正傾斜磁場パルスが傾斜磁場コイル23から印加されるように傾斜磁場電源27を制御する機能を有する。そのために、傾斜磁場電源制御コンピュータ38には、後述する渦補償パラメータデータベース39Aやコンピュータ32に保存される2次以上の空間分布を有する渦電流に関するパラメータが保存され、渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングの計算の際に参照される。
渦補正傾斜磁場パルスの印加タイミングおよび強度の決定方法は後述するコンピュータ32における決定方法と同一であるためここでは説明を省略する。ただし、傾斜磁場電源制御コンピュータ38は、イメージング中において傾斜磁場電源27を制御することにより、データ収集用の傾斜磁場パルスの印加に追従してリアルタイムに渦補正傾斜磁場パルスを設定して印加させる機能を備えている。
尚、傾斜磁場電源制御コンピュータ38を備える代わりに、コンピュータ32に上述した傾斜磁場電源制御コンピュータ38の機能を設けても良い。
渦補償パラメータデータベース39Aには、渦電流の減衰の時定数の他、単位強度の傾斜磁場が印加された場合に発生する渦電流の強度の各軸成分またはこれらを求めるための係数およびスケーリング値がパラメータとして保存される。これらのパラメータは、0次および1次の空間分布を有する渦電流の場合と、2次以上の空間分布を有する渦電流の場合とで、別々に保存される。2次以上の空間分布を有する渦電流に関する情報は、後述するコンピュータ32に保存される情報と同様な情報であり、空間位置ごとに非線形に変化するパラメータとなる。渦電流に関するパラメータは、後述する渦測定シーケンスを実行することにより取得することができる。
渦補償回路39は、シーケンスコントローラ31から取得したパルスシーケンスを参照し、印加される傾斜磁場によって生じる渦電流によって残留磁場が発生しないようにパルスシーケンス上において撮影条件として設定されている傾斜磁場パルスの波形を補正する機能と、補正後の傾斜磁場パルスを傾斜磁場電源27に出力することにより、渦電流による残留磁場が発生しないような傾斜磁場が傾斜磁場コイル23から印加されるように傾斜磁場電源27を制御する機能を有する。特に、渦補償回路39は、0次または1次の空間分布を有する渦電流の発生を抑制する第1のモードと2次以上の空間分布を有する渦電流の発生を抑制する第2のモードとを切換可能に有する。そして、渦補償回路39は、渦補償パラメータデータベース39Aを参照し、それぞれのモードにおいて対応する渦電流の減衰の時定数や強度等の渦電流に関する情報に基づいて渦電流が発生しないような傾斜磁場パルスの補正波形を求めるように構成される。
一方、RFコイル24は、送信器29および受信器30と接続される。RFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能と、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波およびA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
図2は、図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
コンピュータ32は、プログラムにより撮影条件設定部40、シーケンスコントローラ制御部41、k空間データベース42、画像再構成部43、画像データベース44および画像処理部45として機能する。撮影条件設定部40は、プレパルス設定部40A、渦補正傾斜磁場パルス生成部40Bおよび渦電流パラメータ記憶部40Cを備えている。
撮影条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ制御部41に与える機能を有する。
撮影条件設定部40のプレパルス設定部40Aは、コントラストを制御するためのプレパルスの印加を設定する機能を有する。コントラストを制御するためのプレパルスとしては、水選択励起パルス等の選択励起パルス、脂肪抑制パルスやシリコーン抑制パルス等の抑制パルス、SORS (slice-selective off-resonance sinc pulse)、t-SLIP (TIME-SLIP: time-Spatial Labeling Inversion Pulse)やASL (Arterial spin labeling)パルス等のスピンラベリング(タグ付けまたは標識化ともいう)パルス、MTC (magnetization transfer contrast)パルス、(プレ)サチュレーション(Presat: presaturation)パルスが挙げられる。
水選択励起パルスは、水を選択的に励起するプレパルスであり、脂肪抑制パルスは脂肪を抑制するためのプレパルスである。水選択励起パルスや脂肪抑制パルス等の選択励起パルスや抑制パルスには、共鳴周波数が物質ごとに異なるケミカルシフトを利用するものがある。ケミカルシフトを利用する脂肪抑制パルスの例としてはCHESSパルスがある。
スピンラベリングパルスは、撮像断面に流入する血液や脳脊髄液(CSF: cerebrospinal fluid)等の動体にタグ付けを行うためのプレパルスである。特に血液のスピンラベリングを行うためのスピンラベリングパルスは、ASLパルスと呼ばれる。また、スピンラベリングパルスの1つとして複数のラベリング用のパルスの印加を伴うt-SLIPがある。
t-SLIPは、領域非選択インバージョンパルスと領域選択インバージョンパルスとで構成される。領域非選択インバージョンパルスはON/OFFの切換が可能である。つまり、t-SLIPは、領域選択インバージョンパルスを少なくとも含み、領域選択インバージョンパルスのみで構成される場合や領域選択インバージョンパルスおよび領域非選択インバージョンパルスの双方で構成される場合がある。
領域選択インバージョンパルスは、撮影断面と独立に任意に設定することが可能である。この領域選択インバージョンパルスで撮影領域に流入する血液をラベリングすると、反転時間(TI: inversion time)後に血液が到達した部分の信号強度が高くなる。尚、領域非選択インバージョンパルスをOFFにすると、TI後に血液が到達した部分の信号強度が低くなる。このため血液の移動方向や距離を把握することができる。すなわち、TI後に撮影断面に到達した血液のみの信号強度を選択的に強調または抑制することができる。
また、Presatパルスは、所望の物質のスピンを飽和させることによって所望の物質からの信号を抑制するためのプレパルスである。Presatパルスは、ディフェージンググラジエント傾斜磁場の印加前に印加される。MTCパルスは、MTC効果を利用して結合水のプロトンの磁化を飽和させ、実質臓器の信号を抑制するプレパルスである。SORSは、スライス選択傾斜磁場とともに印加されるMTCパルスである。
撮影条件設定部40の渦補正傾斜磁場パルス生成部40Bは、プレパルスの印加タイミングにおいて、プレパルスの印加以前における傾斜磁場の印加に伴って生じた2次以上の一様でない空間分布を有する、すなわち位置の変化に対して非直線的に変化する渦電流の影響による残留磁場がキャンセルされるように渦補正傾斜磁場パルスを設定する機能を有する。渦補正傾斜磁場パルスは、プレパルスの印加前またはプレパルスの印加時に印加される。尚、必要に応じて、目的とする強度(面積)の傾斜磁場が発生するように、複数の渦補正傾斜磁場パルスを印加することもできる。
図3は、図2に示す渦補正傾斜磁場パルス生成部40Bにおいてプレパルスの印加前に渦補正傾斜磁場パルスを設定した例を示す図である。
図3において、横軸は時間を示す。また、図3において、Gは渦補正傾斜磁場パルスを、RFは、プレパルスの一例としての脂肪抑制パルスを示す。
図3の点線に示すような渦電流による残留傾斜磁場が存在する場合、脂肪抑制パルスの印加タイミングにおいて残留傾斜磁場と極性が逆の傾斜磁場が残留するように、脂肪抑制パルスの印加に先立って、渦補正傾斜磁場パルスを印加することができる。すなわち、プレパルスの印加タイミングから所定の時間tcだけ遡ったタイミングで所定の強度Iの渦補正傾斜磁場パルスの印加が設定される。これにより、渦補正傾斜磁場パルスの印加によって生じた補正用の傾斜磁場と渦電流による残留傾斜磁場とが打ち消し合って、脂肪抑制パルスの印加タイミングにおいて傾斜磁場が実質的にゼロとなる。
このように、渦電流による残留磁場を補償すれば、渦電流からの残留磁場が正確には時間的および空間的に非線形の特性を有するものの、渦電流からの残留磁場の非線形性に影響されることなく残留磁場の補償効果を得ることができる。すなわち、渦補正傾斜磁場パルスによる渦電流と同様な非線形な特性を有する残留磁場による補償であるため、残留磁場同士による打消し合いとなり、残留磁場の非線形性の影響を回避することができる。そして、良好な脂肪抑制効果を得ることができる。
尚、脂肪抑制パルスと同時に傾斜磁場パルスが印加されず、脂肪抑制パルスの印加タイミングにおいて傾斜磁場はゼロとされるが、傾斜磁場パルスとともに印加されるプレパルスの場合には、渦電流による残留磁場がキャンセルされることによってプレパルスのとともに印加される傾斜磁場パルスによって本来必要とされる強度の傾斜磁場が得られるように渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングが設定される。以降においても同様である。
図4は、図3に示す渦補正傾斜磁場パルスを設定したシーケンスチャートである。
図4において横軸は時間を示す。図4に示すように、マルチスライス撮影を行う場合には、スライスごとに脂肪抑制パルスが印加された後、イメージングシーケンスの実行によって対応するスライスのデータが収集されるようにパルスシーケンスが設定される。イメージングシーケンスとしては任意のタイプのシーケンスを用いることができる。各イメージングシーケンスや付随するシーケンスでは、それぞれデータ収集用または所定の目的を有する傾斜磁場パルスが印加されるため、後続するシーケンスの開始時において渦電流による残留磁場が生じる。そこで、各スライスに対応するシーケンスにおいて、それぞれ脂肪抑制パルスに先立って残留磁場を打ち消すために必要な強度の渦補正傾斜磁場パルスの印加が設定される。
図5は、図2に示す渦補正傾斜磁場パルス生成部40Bにおいてプレパルスの印加と同時に渦補正傾斜磁場パルスを設定した例を示す図である。
図5において、横軸は時間を示す。また、図5において、Gは渦補正傾斜磁場パルスを、RFは、プレパルスの一例としての脂肪抑制パルスを示す。
図5の点線に示すような渦電流による残留傾斜磁場が存在する場合、脂肪抑制パルスの印加タイミングにおいて残留傾斜磁場の強度と同等とみなせる強度Iを有し、極性が逆の渦補正傾斜磁場パルスを印加することができる。正確には、渦電流による残留磁場は非線形に減衰するため、例えば、脂肪抑制パルスが印加される時間間隔における残留磁場の平均強度、強度の中央値あるいは強度の積分値等の値から渦補正傾斜磁場パルスの強度Iを決定することができる。これにより、渦補正傾斜磁場パルスの印加によって生じた補正用の傾斜磁場と渦電流による残留傾斜磁場とが打ち消し合って、脂肪抑制パルスの印加タイミングにおいて傾斜磁場が実質的にゼロとなる。
このように、渦電流による残留磁場を補償すれば、図3に示すように脂肪抑制パルスに先立って渦補正傾斜磁場パルスを印加する場合に比べて、渦補正傾斜磁場パルスの印加タイミングの計算が不要であり、かつ強度の計算が容易であるという利点が得られる。
図6は、図5に示す渦補正傾斜磁場パルスを設定したシーケンスチャートである。
図6において横軸は時間を示す。図6に示すように、マルチスライス撮影を行う場合には、スライスごとに脂肪抑制パルスが印加された後、イメージングシーケンスの実行によって対応するスライスのデータが収集されるようにパルスシーケンスが設定される。そこで、各スライスに対応するシーケンスにおいて、それぞれ脂肪抑制パルスと同時に残留磁場を打ち消すために必要な強度の渦補正傾斜磁場パルスの印加が設定される。
次に、渦補正傾斜磁場パルスの強度Iの計算方法について説明する。
渦補正傾斜磁場パルスの強度Iは、X軸方向成分Ix、Y軸方向成分IyおよびZ軸方向成分Izを有するため、渦補正傾斜磁場パルスの強度I(Ix, Iy, Iz)を求めるためには、撮像断面(スライス)の位置を含む空間に分布する渦電流のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の成分を求めておく必要がある。
単位強度の傾斜磁場が印加された場合に発生する2次以上の空間分布を有する渦電流の各軸方向の成分は、それぞれ高次式を用いて近似することができる。実用的には、2次式または3次式で渦電流の各軸方向の成分を近似することができる。例えば、単位強度の傾斜磁場が印加された場合に発生する渦電流の強度r(rx, ry, rz)のZ軸方向の成分rzは、式(1)のようにZ軸方向の空間位置Zに関する2次式を用いて近似することができる。
[数1]
rz=Sc(aZ2+bZ+c) (1)
式(1)において、a, b, cは各項の係数であり、Scはスケーリング値である。これらの係数a, b, cおよびスケーリング値Scは、装置の特性によって定まる。スケーリング値Scは、装置の特性により複数の値を有する場合もある。これはX軸方向、Y軸方向についても同様である。
また、強度H (Hx, Hy, Hz)の傾斜磁場パルスが印加されてから時間tだけ経過した時点における渦電流の強度R(t)は式(2)のように表される。
[数2]
R(t)=rHexp(-t/T) (2)
ただし、式(2)においてT(Tx, Ty, Tz)は渦磁場の減衰の時定数である。時定数Tも装置の特性によってスケーリング値Scと一対のパラメータとして定まる。
これらの渦電流の強度R(t)を求めるための係数a, b, c、スケーリング値Scおよび時定数Tは、装置の据付時や撮影前に予め試験撮影によって測定してパラメータ化し、記憶しておくことができる。時定数が複数(n個)存在する場合には、Tn, an, bn, cn, Scnのそれぞれのセットとなる。
例えば、渦電流を生成するための傾斜磁場パルスを印加するFFE (fast field echo)シーケンスを渦電流の空間分布を測定するための渦測定シーケンスとして利用することができる。
図7は、図2に示す渦補正傾斜磁場パルス生成部40Bにおいて設定される渦補正傾斜磁場パルスの強度を決定するために必要な2次以上の空間分布を有する渦電流に関する情報を取得するための渦測定シーケンスを示す概念図である。
図7において横軸は時間を示す。図7に示すように、渦測定シーケンスは、RFパルスおよび読み出し用傾斜磁場Groが互に同一で、データ収集に先立って渦電流を生成するための極性が互いに逆の傾斜磁場Geddy1(x, y, z), Geddy2(x, y, z)をそれぞれ印加する2つの第1のシーケンスおよび第2のシーケンスで構成される。この渦測定シーケンスを実行して収集されるデータの差分から渦電流の時定数Tおよび強度R(t)またはこれらを求めるための関数を得ることができる。また、渦測定シーケンスの実行によって、係数a, b, c、スケーリング値Scおよび時定数Tではなく、直接、空間位置ごとの渦電流の強度r(rx, ry, rz)を求めて記憶しておくこともできる。
尚、ある軸に傾斜磁場が印加されると他の軸方向にも渦電流が発生することとなる。従って、ある1つの軸方向に傾斜磁場が印加された場合に影響を受ける3軸方向についての高次式の各係数が渦電流の成分を求めるために必要となる。傾斜磁場の印加軸にはX, Y, Zの3軸方向があり、それぞれ影響を受ける傾斜磁場の軸がX, Y, Zの3軸方向であるため、合計9通りの高次式の係数の組み合わせが予め求めておくべきパラメータとなる。
このように、ある強度Hの傾斜磁場が印加された場合に発生する渦電流の各軸方向の成分R(Rx, Ry, Rz, t)を求めるためには、係数a, b, c、スケーリング値Scおよび渦磁場の減衰の時定数T等のパラメータを記憶しておけば良いことになる。つまり、渦電流の各軸方向の成分は、交差項(cross term)を含む高次式の各項の係数値、スケーリング値および渦磁場の減衰の時定数をパラメータとして表すことができる。
これらの撮影位置ごとの各軸方向における渦電流の値を求めるためのパラメータは渦電流パラメータ記憶部40Cに記憶され、渦補正傾斜磁場パルス生成部40Bにより参照できるように構成される。
図8は、図2に示す渦電流パラメータ記憶部40Cに保存されるパラメータの一例を示す図である。
図8は、渦電流の各軸方向の成分を2次式で近似した場合に渦電流パラメータ記憶部40Cに保存されるパラメータのセットを示している。すなわち、傾斜磁場の印加軸と影響を受ける軸の合計9通りのパラメータのセットが1対の時定数およびスケーリング値とともにパラメータセットとして記憶される。時定数およびスケーリング値は、部材等の装置の特性によっては複数の値を有する場合があり、図8では、2つの値を有する例を示している。このため、9通りのパラメータのセットが時定数およびスケーリング値ごとに予め求められて渦電流パラメータ記憶部40Cに保存される。
図8に示すようなパラメータが準備されると、渦補正傾斜磁場パルス生成部40Bにおいてプレパルスが印加されるときに渦電流に起因する残留磁場を打ち消すために印加すべき渦補正傾斜磁場パルスの強度を求めることができる。
すなわち、プレパルスと同時に渦補正傾斜磁場パルスを印加する場合には、渦補正傾斜磁場パルスの強度Iは、式(3)のように計算することができる。
[数3]
I=rH1exp(-t1/T)+rH2exp(-t2/T)+rH3exp(-t3/T)+…+rHnexp(-tn/T) (3)
ただし、式(3)において、Hiは、プレパルスの印加タイミングにより近い側から過去に遡る方向に数えてi番目の傾斜磁場パルスの強度を、tiはプレパルスとi番目の傾斜磁場パルスの印加時刻間の差(経過時間)を、それぞれ示す。
すなわち、渦補正傾斜磁場パルスの強度Iは、プレパルスの印加タイミングから一定時間遡って、その間に印加された強度H1, H2, H3, …, Hnのn個の傾斜磁場パルスによる渦電流の時定数Tおよび経過時間t1, t2, t3, …, tnに応じた減衰後の各軸方向の成分値を積算することにより求めることができる。換言すれば、プレパルスが印加される前に印加された各傾斜磁場パルスによって生じた空間位置ごとの残存する渦電流の対象軸方向の成分を積算することによって渦補正傾斜磁場パルスの強度Iを算出することができる。
傾斜磁場パルスの強度H1, H2, H3, …, Hnは、設定されたパルスシーケンスから既知である。また、単位強度の傾斜磁場が印加された場合に発生する渦電流の強度r(rx, ry, rz)および時定数Tは、上述したように空間位置と係数a, b, cおよびスケーリング値Scを用いた近似式にスライス励起位置等の空間位置を代入することによって高精度で求めることができる。
一方、単位強度の傾斜磁場が印加された場合に発生する渦電流の強度r(rx, ry, rz)および時定数Tは、近似式を用いずに、上述した渦測定シーケンスによって直接測定することもできる。例えば、スライス励起位置に最も近い位置における渦電流の強度および時定数の測定結果をそのスライス励起位置における渦電流の強度r(rx, ry, rz)および時定数Tとして利用すれば計算容易化に繋がる。
尚、積算対象となる傾斜磁場パルスに起因する渦電流の成分値の数nは、経過時間tnが十分に長くなるように決定される。全ての傾斜磁場パルスに起因する渦電流の成分値を積算対象とすることも可能であるが、経過時間tnが十分に長くなるように決定された一部の傾斜磁場パルスに起因する渦電流の成分値を積算対象とすれば処理量の低減化に繋げることができる。装置の特性に依存して積算対象となる渦電流の成分値の数nは変化するが、具体的には、経過時間tnが10秒程度確保されるように積算対象となる渦電流の成分値の数nを決定すれば、十分な精度が得られると考えられる。
また、ここでいう傾斜磁場パルスには、FLOP SPOILERパルスや拡散強調イメージング(DWI: diffusion weighted imaging)におけるMPG (motion probing gradient)パルス等の全ての傾斜磁場パルスが含まれるため、減衰後の強度が無視できない程度に大きいMPGパルス等の傾斜磁場パルスによって生じた渦電流は積算対象とすることが望ましい。
図9は、図5に示す渦補正傾斜磁場パルスの対象軸方向の強度の計算方法を説明する図である。
図9において横軸は時間を示す。図9に示すように渦補正傾斜磁場パルスの強度Iは、1番目、2番目、3番目、…、n番目に印加された強度H1, H2, H3, …, Hnの傾斜磁場パルスの印加によって生じた渦電流の経過時間t1, t2, t3, …, tnに応じた減衰後の対象軸方向の成分値を積算することによって求めることができる。
一方、プレパルスに先立って渦補正傾斜磁場パルスを印加する場合には、渦補正傾斜磁場パルスによる残留磁場が過去の傾斜磁場パルスによる残留磁場の積算値となればよい。従って、渦補正傾斜磁場パルスの強度Iおよび印加タイミングtcは、式(4)のように計算することができる。
[数4]
rIexp(-tc/T)=rH1exp(-t1/T)+rH2exp(-t2/T)+rH3exp(-t3/T)+…+rHnexp(-tn/T) (4)
ただし、式(4)において、tcは、渦補正傾斜磁場パルスの印加タイミングからプレパルスの印加タイミングまでの経過時間である。
このように、渦磁場の減衰の時定数Tおよび渦電流の強度の空間分布データに基づいて、渦電流の位置、時定数および強度に関する近似式を作成し、渦補正傾斜磁場パルスの印加タイミングおよび強度Iを求めることができる。尚、渦電流による残留磁場データ間における空間距離は狭い方がより高い精度で残留磁場を補償することに繋がる。残留磁場および渦補正傾斜磁場パルスの強度を計算するための空間位置は、必要な精度の維持および計算容易化の観点から、例えば各スライス励起位置とすることができる。ただし、撮影目的に応じて撮影視野(FOV: field of view)の位相エンコード方向(PE: phase encode)および/またはリードアウト(RO: readout)方向の中心位置や端部分の位置について残留磁場および渦補正傾斜磁場パルスの強度を計算してもよい。
上述した図4や図6に示すような渦補正傾斜磁場パルスの印加タイミングおよび強度の決定は、パルスシーケンス上において行わずに、傾斜磁場電源制御コンピュータ38による傾斜磁場電源27の制御によって行うこともできる。この場合には、パルスシーケンス上には、渦補正傾斜磁場パルスが設定されないが、イメージング中において所定の強度の渦補正傾斜磁場パルスが所定の印加タイミングで印加されることとなる。
さらに、渦補正傾斜磁場パルスを印加せずに、渦補償回路39によるプレエンファシスによって渦電流による残留磁場の補償を行うこともできる。
図10は、図1に示す渦補償回路39により渦電流による残留磁場の補償を行う場合のプレパルスの印加タイミングにおける傾斜磁場を示す図である。
図10において、横軸は時間を示す。また、図10において、Gは傾斜磁場を、RFは、プレパルスの一例としての脂肪抑制パルスを示す。
渦補償回路39によるプレエンファシスを行うと、図10の点線に示すように渦電流による残留磁場は無視可能な十分に小さい強度となる。従って、脂肪抑制パルスの印加タイミングには渦補正傾斜磁場パルスが印加されない。
図11は、図10に示すように渦補償回路39により渦電流による残留磁場の補償を行う場合におけるシーケンスチャートである。
図11において横軸は時間を示す。図11に示すように、マルチスライス撮影を行う場合には、スライスごとに脂肪抑制パルスが印加された後、イメージングシーケンスの実行によって対応するスライスのデータが収集されるようにパルスシーケンスが設定される。尚、渦補償回路39によるプレエンファシスによって渦電流による残留磁場は抑制されるため、渦補正傾斜磁場パルスの印加は設定されない。
次に、コンピュータ32の他の機能について説明する。
シーケンスコントローラ制御部41は、入力装置33からスキャン開始指示情報を受けた場合に、撮影条件設定部41からパルスシーケンスを含む撮影条件をシーケンスコントローラ31に与えることにより駆動制御させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部41は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース42に形成されたk空間に配置する機能を有する。このため、k空間データベース42には、受信器30において生成された各生データがk空間データとして保存される。
画像再構成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んでフーリエ変換(FT: Fourier transform)を含む画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する機能と、再構成して得られた画像データを画像データベース44に書き込む機能を有する。このため、画像データベース44には、画像再構成部43において再構成された画像データが保存される。
画像処理部45は、画像データベース44から画像データを取り込んで必要な画像処理を行って表示用の2次元の画像データを生成する機能と、生成した表示用の画像データを表示装置34に表示させる機能を有する。
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
磁気共鳴イメージング装置20では、3通りの方法により渦電流により生じたプレパルスの印加タイミングにおける残留磁場の補償を行うことができる。具体的には、磁気共鳴イメージング装置20では、パルスシーケンスに渦補正傾斜磁場パルスの印加を設定することによる残留磁場の第1の補償方法、傾斜磁場電源制御コンピュータ38からの制御信号により傾斜磁場電源27を制御して渦補正傾斜磁場パルスを印加させることによる残留磁場の第2の補償方法および渦補償回路39によりプレエンファシスを行うことによる残留磁場の第3の補償方法を実施することが可能である。簡単に言えば、ソフトウェアによる制御、ハードウェアによる制御および回路による制御が可能である。そこで、3つの方法について順番に説明する。
図12は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20によりパルスシーケンスに渦補正傾斜磁場パルスの印加を設定することによる残留磁場の補償を伴って画像データを収集する際の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
まずステップS1において、撮影条件設定部41において、プレパルスおよび渦補正傾斜磁場パルスの印加を伴うパルスシーケンスが撮影条件として設定される。具体的には、ステップS11において、マルチスライス撮影用のパルスシーケンスの種類が選択され、プレパルス設定部40Aにおいて脂肪抑制パルス等のコントラストを制御するためのプレパルスの印加が設定される。
次に、前計算として各スライスからのデータを収集するためのシーケンスにおいてそれぞれ印加すべき渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングが渦補正傾斜磁場パルス生成部40Bにおいて設定される。すなわち、ステップS12において、パルスシーケンスに基づいてデータの収集となるあるスライスの位置情報を取得する。次に、ステップS13において、渦電流パラメータ記憶部40Cに保存されている空間位置ごとの渦電流に関する強度や時定数等のパラメータおよびスライス位置情報を用いて、スライス位置における渦電流による残留磁場の強度を計算する。次に、ステップS14において、計算された強度の残留磁場が打ち消されるような渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングが計算される。次に、ステップS15において、計算された強度および印加タイミングで渦補正傾斜磁場パルスが印加されるようにパルスシーケンスに渦補正傾斜磁場パルスの出力値がセットされる。
次に、ステップS16において、全てのスライスについて渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングの計算が終了したか否かが判定され、未計算のスライスが存在する場合には、再びステップS11において、別の未計算のスライス位置情報が取得される。そして、ステップS12からの処理が実行され、パルスシーケンスに渦補正傾斜磁場パルスの出力値がセットされる。
さらに、ステップS16において、全てのスライスについて渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングの計算が終了したと判定された場合には、撮影条件の設定が終了する。これにより全てのスライスからのデータを収集するための各シーケンス上に、スライス位置に応じた強度および印加タイミングで渦補正傾斜磁場パルスの印加が設定される。
次に、ステップS2において、設定された撮影条件に従ってイメージングが行われる。
すなわち、予め寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
そして、入力装置33からシーケンスコントローラ制御部41にイメージングの開始指示が与えられると、シーケンスコントローラ制御部41は撮影条件設定部40からパルスシーケンスを取得してシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部41から受けたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部41に与え、シーケンスコントローラ制御部41はk空間データベース42に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。
次に、画像再構成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んで画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する。再構成して得られた画像データは画像データベース44に書き込まれる。さらに、画像処理部45は、画像データベース44から画像データを取り込んで必要な画像処理を行って表示用の2次元の画像データを生成する。そして、生成された表示用の画像データは表示装置34に表示される。
このように表示された画像データは、コントラストを制御するプレパルスおよびプレパルスの印加タイミングにおいて2次以上の空間分布を有する渦電流による残留磁場を打ち消す渦補正傾斜磁場パルスを印加して得られている。このため、渦電流の影響を受けずに良好なコントラストを有する画像データが得られる。
つまり第1の補償方法は、イメージングの開始前における撮影条件の設定時において全てのスライスについて渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングの計算を行い、パルスシーケンスに渦補正傾斜磁場パルスをセットしてイメージングを行うものである。そして、傾斜磁場電源27等のハードウェアはパルスシーケンスに従って、渦補正傾斜磁場パルスを出力させる。
図13は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により傾斜磁場電源27を制御して渦補正傾斜磁場パルスを印加させることによる残留磁場の補償を伴って画像データを収集する際の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。尚、図13において図12と同様のステップには同符号を付して説明を省略する。
まずステップS20において、撮影条件設定部41により、プレパルスの印加を伴うが渦補正傾斜磁場パルスの印加を伴わないパルスシーケンスが撮影条件として設定される。次に、ステップS21において、イメージングが開始され、初めにデータ収集するスライスに対応するパルスシーケンスがシーケンスコントローラ31から傾斜磁場電源27に出力される。
そうすると、傾斜磁場電源制御コンピュータ38は、傾斜磁場電源27から取得したパルスシーケンスを参照し、図12に示す処理と同様にステップS12からステップS14において、スライス位置情報の取得、残留磁場の計算、渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングの計算を行う。残留磁場の計算の際には、傾斜磁場電源制御コンピュータ38の記憶装置に保存された空間位置ごとの渦電流に関する時定数や強度等のパラメータが参照される。
次に、ステップS22において、傾斜磁場電源制御コンピュータ38は、渦補正傾斜磁場パルスの出力値を制御信号にセットして傾斜磁場電源27に出力する。このため、ステップS23において、傾斜磁場電源27による制御により、傾斜磁場コイル23から渦補正傾斜磁場パルスが印加される。
次に、ステップS24において、傾斜磁場電源制御コンピュータ38は、全てのスライスからのデータ収集が終了したか否か、つまり撮影が終了したか否かを判定する。そして、データが収集されていないスライスが存在する場合には、データが収集されていないスライスについて、再びステップS12からステップS23までの処理および動作が繰り返される。さらに、撮影が終了したと判定されると渦補正傾斜磁場パルスに関する処理および動作は終了する。
つまり第2の補償方法は、傾斜磁場電源27に付属する傾斜磁場電源制御コンピュータ38において、イメージング実行中に励起されるスライス位置の変更に追随してリアルタイムに渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングの計算を行って印加するものである。尚、心電同期撮影や呼吸同期撮像の場合に生じる空き時間を利用して渦補正傾斜磁場パルスの強度および印加タイミングを計算するようにすれば、パルスシーケンスに渦補正傾斜磁場パルスの印加を設定する場合に比べて、計算によるロスタイムを短縮することができる。
図14は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により渦補償回路39による残留磁場の補償を伴って画像データを収集する際の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。尚、図14において図12または図13と同様のステップには同符号を付して説明を省略する。
まずステップS20において撮影条件が設定され、続いてステップS21においてイメージングが開始される。すなわち、初めにデータ収集するスライスに対応するパルスシーケンスがシーケンスコントローラ31から渦補償回路39に出力される。
そうすると、渦補償回路39は、シーケンスコントローラ31から取得したパルスシーケンスを参照し、図12に示す処理と同様にステップS12において、スライス位置情報を取得する。
次に、ステップS30において、渦補償回路39は、渦補償パラメータデータベース39Aに保存されている2次以上の空間分布を有する渦電流に起因して生じる残留磁場強度を求めるための空間位置ごとのパラメータを参照する。そして、渦補償回路39は、スライス位置に対応するパラメータを取得する。つまり、通常は、渦補償回路39が0次または1次の空間分布を有する渦電流に関するパラメータを渦補償パラメータデータベース39Aから読み込む第1のモードが設定されているが、2次以上の空間分布を有する渦電流に関するパラメータを渦補償パラメータデータベース39Aから読み込む第2のモードに切換えられる。
次に、ステップS31において、渦補償回路39は、スライス位置に対応するパラメータに基づいて渦電流が発生しないように傾斜磁場波形を補正することにより渦補償済傾斜磁場パルスを生成する。
次に、ステップS32において、渦補償回路39は、渦補償済傾斜磁場パルスを傾斜磁場電源27に出力する。このため、傾斜磁場電源27による制御により、傾斜磁場コイル23から渦補償済傾斜磁場パルスが印加される。
次に、ステップS24において、渦補償回路39は、撮影が終了したか否かを判定する。そして、データが収集されていないスライスが存在する場合には、再びステップS12からステップS32までの処理および動作が繰り返される。さらに、撮影が終了したと判定されると渦補償済傾斜磁場パルスに関する処理および動作は終了する。
つまり第3の補償方法は、2次の空間分布を有する渦電流についての時定数や強度等の空間位置ごとのパラメータを渦補償パラメータデータベース39Aに保存し、イメージング実行中に励起されるスライス位置に対応する渦電流に関するパラメータを渦補償回路39が渦補償パラメータデータベース39Aから取得して2次の空間分布を有する渦電流に対応したプレエンファシスを行うものである。これにより、プレパルスの印加前における残留磁場そのものが無視できる程度に十分抑制される。このため、渦補正傾斜磁場パルスを印加することなく、プレパルスの印加により良好なコントラストの制御を行うことが可能となる。
尚、第3の補償方法において、プレパルスの印加後には、0次または1次の渦電流に対する従来のプレエンファシスを行ってもよい。ただし、第1のモードと第2のモードとの切換動作が発生するため、プレパルスの印加前後において、常に2次の渦電流に対するプレエンファシスを行う方が簡易な制御に繋がる。
以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、プレパルスの印加以前における傾斜磁場の印加に伴って生じた2次以上の空間分布を有する渦電流の補償を行うようにしたものである。具体的には、磁気共鳴イメージング装置20では、渦電流の影響による残留磁場がキャンセルされるように渦補正傾斜磁場パルスが印加されるか或いは2次の空間分布を有する渦電流に対するプレエンファシスが実行される。
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、渦電流の時定数と強度が空間的に変化し、2次の空間分布を有する場合であっても、渦電流に起因する残留磁場を励起スライス近傍において補償することができる。これにより、脂肪抑制パルス等のプレパルスの印加による効果を向上させることができる。特に、脂肪抑制パルスが印加される場合には、渦電流の影響により非線形に空間分布する残留磁場が顕著なオフセンターにおける磁場の均一性を向上させて脂肪抑制効果の向上に繋げることができる。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図。 図1に示すコンピュータの機能ブロック図。 図2に示す渦補正傾斜磁場パルス生成部においてプレパルスの印加前に渦補正傾斜磁場パルスを設定した例を示す図。 図3に示す渦補正傾斜磁場パルスを設定したシーケンスチャート。 図2に示す渦補正傾斜磁場パルス生成部においてプレパルスの印加と同時に渦補正傾斜磁場パルスを設定した例を示す図。 図5に示す渦補正傾斜磁場パルスを設定したシーケンスチャート。 図2に示す渦補正傾斜磁場パルス生成部において設定される渦補正傾斜磁場パルスの強度を決定するために必要な2次以上の空間分布を有する渦電流に関する情報を取得するための渦測定シーケンスを示す概念図。 図2に示す渦電流パラメータ記憶部に保存されるパラメータの一例を示す図。 図5に示す渦補正傾斜磁場パルスの対象軸方向の強度の計算方法を説明する図。 図1に示す渦補償回路により渦電流による残留磁場の補償を行う場合のプレパルスの印加タイミングにおける傾斜磁場を示す図。 図10に示すように渦補償回路により渦電流による残留磁場の補償を行う場合におけるシーケンスチャート。 図1に示す磁気共鳴イメージング装置によりパルスシーケンスに渦補正傾斜磁場パルスの印加を設定することによる残留磁場の補償を伴って画像データを収集する際の手順を示すフローチャート。 図1に示す磁気共鳴イメージング装置により傾斜磁場電源を制御して渦補正傾斜磁場パルスを印加させることによる残留磁場の補償を伴って画像データを収集する際の手順を示すフローチャート。 図1に示す磁気共鳴イメージング装置により渦補償回路による残留磁場の補償を伴って画像データを収集する際の手順を示すフローチャート。
符号の説明
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイル
24 RFコイル
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
38 傾斜磁場電源制御コンピュータ
39 渦補償回路
39A 渦補償パラメータデータベース
40 撮像条件設定部
40A プレパルス設定部
40B 渦補正傾斜磁場パルス生成部
40C 渦電流パラメータ記憶部
41 シーケンスコントローラ制御部
42 k空間データベース
43 画像再構成部
44 画像データベース
45 画像処理部
P 被検体

Claims (12)

  1. コントラストを制御するためのプレパルスの印加を伴ってイメージングを行うことにより画像データを取得するイメージング手段と、
    前記プレパルスの印加タイミングにおいて、前記プレパルスの印加以前に印加された傾斜磁場により発生した2次以上の空間分布を有する渦電流による残留磁場を抑制する補償手段と、
    を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 前記補償手段は、前記残留磁場を打ち消すための傾斜磁場補正パルスを印加するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  3. 前記補償手段は、前記プレパルスの印加タイミングにおいて前記残留磁場と打ち消すための逆の極性を有する傾斜磁場補正パルスを印加するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  4. 前記補償手段は、前記プレパルスの印加前において傾斜磁場補正パルスを印加し、前記傾斜磁場補正パルスにより生じる渦電流による残留磁場によって前記傾斜磁場による残留磁場を打ち消すように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  5. 前記補償手段は、前記イメージング用に印加される傾斜磁場波形を制御することによって前記残留磁場を抑制する補償回路を有することを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  6. 前記イメージング手段は、前記プレパルスとして脂肪を抑制するための脂肪抑制パルスを印加するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  7. 前記イメージング手段は、前記プレパルスとして、水を選択的に励起するための水選択励起パルス、所望の物質のスピンを飽和させて前記所望の物質からの信号を抑制するための、ディフェージンググラジエント傾斜磁場の印加前に印加されるサチュレーションパルス、撮像断面に流入する動体にタグ付けを行うためのスピンラベリングパルス、結合水のプロトンの磁化を飽和させ、実質臓器の信号を抑制するためのMTCパルス、スライス選択傾斜磁場とともに印加されるMTCパルスであるSORSのいずれかを印加するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  8. 前記補償手段は、撮影条件としてのパルスシーケンスにおいて前記残留磁場を打ち消すための傾斜磁場補正パルスの印加を設定するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  9. 前記補償手段は、前記イメージング中において傾斜磁場を印加するための傾斜磁場コイルに電流を供給する傾斜磁場電源を制御することによって前記残留磁場を打ち消すための傾斜磁場補正パルスを印加するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  10. 2次以上の空間分布を有する渦電流に関する情報を保存する渦電流パラメータ記憶手段をさらに備え、
    前記補償手段は、前記渦電流に関する情報を用いて前記残留磁場を抑制するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  11. 前記補償手段は、2次以上の空間分布を有する渦電流に関する情報を取得するための渦測定シーケンスを実行することによって得られた前記渦電流に関する情報を用いて前記残留磁場を抑制するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  12. 前記補償手段は、前記イメージングにおいて励起される複数のスライス位置における渦電流による残留磁場を求めることにより前記2次以上の空間分布を有する渦電流による残留磁場を抑制するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
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