JP2012163164A - モータ用転がり軸受 - Google Patents

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雄次郎 戸田
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Abstract

【課題】インバータ制御されるモータのような電食のおそれがある転がり軸受において、電食の防止とともに音響寿命を向上させ、低トルク化を図る。
【解決手段】ジルコニア−アルミナ−イットリア製の転動体を有し、かつ、基油として、全量の70質量%以上がエステル油である潤滑油を用いたグリース組成物が封入されていることを特徴とするモータ用転がり軸受。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えばエアコンのブロアモータの回転支持部に使用される転がり軸受のように、電食による損傷のおそれがある転がり軸受の改良に関する。
例えばエアコンのブロアモータは、電圧と周波数により高度な制御が可能なインバータによる制御が主流になってきている。このようなインバータモータでは、回転支持部に転がり軸受が使用されているが、この転がり軸受では、インバータ制御回路からの高周波電流(大電流)が瞬間的に軸受内を通過することにより、電食と呼ばれる損傷を受ける場合がある。
電食防止対策として、数μm〜数mmのセラミックの溶射被膜や樹脂絶縁層を軸受外径部に形成することが行われているが、コストが高く、取り扱いに注意を要する等の問題がある。また、インバータの高周波による電食に対しては、ある程度の膜厚と絶縁層事態の低誘電率が求められるため、更にコストが上昇する。
また、転動体をセラミック製にすることにより、電食をほぼ完全に防止できることも知られている。セラミック製転動体は、一般的には窒化珪素が使用されており、工作機械用の転がり軸受に多用されている。また、特許文献1のようにヤング率250KPa以上のジルコニア−アルミナ−イットリア製の転動体や、特許文献2のようにアルミナ−ジルコニア製の転動体も知られている。
特開2002−70871号公報 特開2002−5180号公報
しかしながら、セラミック製の転動体は、軸受鋼製の転動体に比べて高価であるばかりでなく、セラミックの種類や、潤滑のためのグリース組成物によっては大きく性能が変化し、用途にも大きく影響を与える。例えば、工作機械用転がり軸受に多用されている窒化珪素製の転動体をインバータ制御されるカーエアコンに適用すると、音響寿命が低下するおそれがある。音響寿命とは、マクロ的な回転精度や起動・回転トルクに影響を与えない程度の軸受内部の損傷により音響的にしか知覚できない状態を示すが、エアコンでは静粛性が要求されるため、音響寿命が重要視される。
また、省エネルギーの観点から、エアコンでは低トルク性能との両立が不可欠であり、そのためには低粘度の潤滑剤を使用するのが一般的である。軸受内部設計により低トルク化を図ることも可能であるが、低粘度の潤滑剤を用いる方が効果は大きい。しかし、低粘度の潤滑剤を用いると、起動から低速回転、あるいは高温時に油膜の形成が不十分になることがある。特に、カーエアコンではインバータ制御により低速で長時間駆動されることがあり、油膜が十分に形成されないおそれがある。
このような油膜が十分に形成されないことによる不具合は、窒化珪素製の転動体において大きな問題になり易い。窒化珪素では、針状結晶が絡み合っており、結晶粒も大きいため、油膜が薄くなったり、油膜切れを起こして摩耗が生じると、剥離面積が大きく、表面の凹凸も大きくなる。その結果、軌道面が損傷しやすくなり、耐久性が低下する。そこで、窒化珪素製の転動体を有する転がり軸受を組み込んだ工作機械では、主軸の潤滑管理(メンテナンス)を十分に行って剥離を防いでいるが、特に家庭用エアコンではメンテナンスが行き届かないことが多い。
このように、電食対策としてセラミック製の転動体を用いた場合にも種々の問題があり、本発明はインバータ制御されるモータのような電食のおそれがある転がり軸受において、電食の防止とともに音響寿命を向上させ、更には低トルク化を図ることを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明は、ジルコニア−アルミナ−イットリア製の転動体を有し、かつ、基油として、全量の70質量%以上がエステル油である潤滑油を用いたグリース組成物が封入されていることを特徴とするモータ用転がり軸受を提供する。
本発明のモータ用転がり軸受は、転動体をジルコニア−アルミナ−イットリア製としたため、電食防止効果に優れるとともに、結晶粒が窒化珪素製の転動体に比べて小さく、球形に近いため剥離を起こしても剥離面積が小さく、凹凸も小さくなる。また、グリース組成物の基油がエステル油を主成分とする潤滑油であり、ジルコニア−アルミナ−イットリア製の転動体の表面に吸着し易いため、油膜切れを起こし難く、音響寿命が長くなり、低トルクにもなる。
モータ用転がり軸受の一例(玉軸受)を示す断面図である。 軸受回転導電性試験の試験装置を示す模式図である。 軸受耐久試験後の音響測定の試験装置を示す模式図である。
以下、本発明に関して詳細に説明する。
図1は、モータ用転がり軸受の一例である玉軸受を示す断面図である。図示されるように、玉軸受1は、内輪10と外輪11との間に、保持器12におり複数の玉13を回動自在に保持してなり、軸受空間Sに充填されたグリース組成物(図示せず)をシールド14で封止して構成されている。
本発明では、玉13をジルコニア−アルミナ−イットリア製とする。ジルコニア−アルミナ−イットリアは、ジルコニアをイットリアで部分安定化し、アルミナ粒子を分散させたものである。また、結晶粒はほぼ球形であり、大きさも2μm以下である。これに対し窒化珪素は、アスペクト比(短径に対する長径の比)が2程度の針状結晶が絡み合っており、結晶粒も最大20μmにもなる。そのため、ジルコニア−アルミナ−イットリアは、剥離した場合でもも剥離面積が小さく、また剥離部分が浅く凹凸が小さくなるため、軌道面の損傷を抑えることができる。
ジルコニア−アルミナ−イットリアにおける成分比は、1.5〜5モル%のイットリアを含有するジルコニア50〜98質量%と、アルミナ2〜50質量%とすることが好ましい。このような成分比にすることにより、窒化珪素と遜色の無い機械的強度が得られる。特に好ましくは、イットリアの含有量が3モル%、アルミナ含有量が18〜22質量%である。
玉13を製造するには、原料となるイットリア安定化ジルコニア粉末及びアルミナ粉末として共に平均粒径1μm以下の微粉を用い、上記の成分比となるように混合して球状に成形し、焼結した後、表面を研磨する。平均粒径1μm以下の微粉を用いることにより、焼結後のジルコニア−アルミナ−イットリアにおいて結晶粒が微細になり、剥離した場合でも剥離面積が小さく、凹凸も小さくなる。成形はCIP成形(冷間水圧成形)が好ましく、焼結後はHIP処理(熱間等方加圧)を行うことが好ましい。
原料粉末における不純物は少ないほど好ましく、一般的な不純物であるSiOやFe、NaOはそれぞれ0.3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%、更に好ましくは0.1質量%とする。不純物は焼結性を低下させて機械的強度を低下させ、早期剥離の原因になり疲労寿命を著しく短くする。そのため、それぞれの不純物濃度が0.3質量%を超えると剥離が起こり易くなり、表面粗さが低下して軌道面が損傷しやすくなり、音響寿命を短くするおそれがある。アルミナはジルコニアよりも硬度が高いため、微細結晶粒であっても剥離したときの音響寿命に与える影響が大きい。そのため、それぞれの不純物量を上記のように少なくしてアルミナとジルコニアとの結合を高めてアルミナの剥離を抑える必要がある。
尚、内輪10及び外輪11は、通常の材料で構わず、例えばSUJ2を用いることで安価にすることができる。また、ステンレス材や浸炭材、浸炭窒化材等も使用できる。
また、本発明では、封入されるグリース組成物において、70質量%以上がエステル油である潤滑油を基油に用いる。エステル油は極性が大きいため、玉13を形成するジルコニア−アルミナ−イットリアとの密着性が高まる。そのため、基油におけるエステル油の割合が大きいほど好ましく、80質量%以上がより好ましく、基油全体がエステル油であることが特に好ましい。
エステル油には制限はないが、ジエステル油、ポリオールエステル油、芳香族エステル油等を好適に使用できる。具体的には、ジエステル油として、ジオクチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート等を挙げることができる。ポリオールエステル油として、C〜C18のアルキル鎖が誘導されたペンタエリスリトールエステル油、同ジペンタエリスリトールエステル油、同トリペンタエリスリトール油、ネオペンチル型ジオールエステル油、トリメチロールプロパンエステル油等を挙げることができる。芳香族エステル油として、ポリオールエステル油、あるいはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等を挙げることができる。また、これらは単独でも、適宜組み合わせて使用してもよい。
また、エステル油と組み合わせる潤滑油としては、鉱油や、エステル油以外の合成油等の通常グリース組成物の基油に用いられる潤滑油を使用できる。
基油粘度は低いほど低トルクとなるため好ましく、40℃における動粘度で50mm/s以下であることが好ましく、40mm/s以下がより好ましい。尚、下限に制限はないが、10mm/sが好ましい。このような低粘度の基油を用いると油膜が形成されにくくなる傾向があるが、エステル油が主成分であるため玉13を形成するジルコニア−アルミナ−イットリアへの吸着性が高く、更にはジルコニア−アルミナ−イットリアも緻密で剥離し難く、表面粗さも小さいため、油膜が良好に保持される。
増ちょう剤は、基油をゲル状に保持できるものであれば制限はなく、金属石けんやウレア化合物を使用できる。
グリース組成物には、必要に応じて各種添加剤を添加することができ、何れも公知の極圧剤や油性剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤等を適量添加することができる。
グリース組成物の混和ちょう度は、低トルクを図るために、180〜300が好ましく、200〜280がより好ましい。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜5)
表1に示す転動体材料にて試験軸受の転動体を作製した、尚、実施例で用いたジルコニア−アルミナ−イットリア製転動体を作製する際に、平均粒径を1μm以下の原料粉末を用い、更にSiO、Fe及びNaOの濃度をそれぞれ0.3質量%以下に抑えた。また、表1に示す組成のグリース組成物を調製した。そして、下記(1)軸受回転導電性試験、(2)軸受耐久試験後の音響測定を行った。
(1)軸受回転導電性試験
日本精工(株)製6806ZZ(内径30mm、外径42mm、幅7mm、金属シールド付)を用意し、表1に示す転動体を組み込み、表1に示すグリース組成物を軸受空間の25容積%となるように封入して試験軸受とした。そして、図2に示す試験装置に試験軸受を装着して、軸受の抵抗値を測定した。試験条件は、60℃、ラジアル荷重(Fr)9.8N、回転数120min−1、印加電圧30V、抵抗300kΩとし、軸受を通過する最大電流100μAに制限し、回転時一定時間毎に内輪と外輪との間の電圧を測定して抵抗値を求めた。結果を表1に併記するが、比較例1の抵抗値を1とする相対値で示した。
(2)軸受耐久試験後の音響測定
日本精工(株)製608(内径8mm、外径22mm、幅7mm、金属シールド付)を用意し、表1に示す転動体を組み込み、表1に示すグリース組成物を封入して試験軸受とした。そして、図3に示す試験装置に試験軸受を装着して、室温、アキシアル荷重(Fa)30N、回転数2000min−1、最大印加電圧5Vにて電流を流しながら200時間回転させ、回転前後のアンデロン値の差を求めた。結果を表1に併記するが、比較例1のアンデロン値の上昇値を1とする相対値で示した。
Figure 2012163164
実施例と比較例4との比較から明らかなように、エステル油を70質量%以上含む基油を用いたグリース組成物を封入し、かつ、ジルコニア−アルミナ−イットリア製の転動体を用いることにより、窒化珪素製の転動体を用いた場合よりも導電性及び音響寿命の両方に優れることがわかる。また、比較例1〜3のように、SUJ2製の転動体を用いた場合には、エステル油を70質量%以上含む基油を用いたグリース組成物を封入しても(比較例1)、導電性及び音響特性に問題がある。
1 玉軸受
10 内輪
11 外輪
12 保持器
13 玉
14 シールド

Claims (1)

  1. ジルコニア−アルミナ−イットリア製の転動体を有し、かつ、基油として、全量の70質量%以上がエステル油である潤滑油を用いたグリース組成物が封入されていることを特徴とするモータ用転がり軸受。

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014115785A1 (ja) * 2013-01-22 2014-07-31 日本精工株式会社 転がり軸受
WO2016027456A1 (ja) * 2014-08-20 2016-02-25 日本遮熱株式会社 電食防止層形成用コーティング材、及び遮熱材

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