JP2012177197A - 銅合金板材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 NiとSnの少なくとも1種を合計で0.03〜5.0mass%、Pを0.01〜0.3mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上である銅合金板材、及びその製造方法。
【選択図】 なし
Description
また、特許文献4に記載された発明では、導電率が低いうえに、鉄合金層の腐食の問題や、メッキを施した場合の均一性が不十分などの問題があり、部品用として使用するのには十分とはいえない。さらに、通常、コネクタなどの端子は圧延方向に対して平行か垂直に部品取りされる。このため、特許文献5に記載された発明のように、銅合金箔の圧延方向に対して45°方向のヤング率を上げる方法では実用的とはいえない。また、特許文献6では、Znの添加量が23〜28質量%である、Cu−Zn−Sn系合金とすることによってヤング率を所定の値以下に下げるものであり、展伸方向と直角方向のヤング率で130kN/mm2以下としている。特許文献7では、Znの添加量が15質量%を超え35%以下である、Cu−Ni−Sn−Zn系合金とすることによってヤング率を115kN/mm2以下としている。特許文献6、7に記載された発明は、Znを大量に固溶させる必要があるため、導電率が低下し、電気・電子機器の部品に使用することはできない。
(1)Cr、Zr、Tiの少なくとも1種を合計で0.05〜1.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
(2)Cr、Zr、Tiの少なくとも1種を合計で0.05〜1.0mass%含有し、Sn、Zn、Si、Ag、Mn、B、P、Mg、Ni、CoおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.005〜1.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
(3)Be、Niの少なくとも1種を合計で0.1〜3.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
(4)Be、Niの少なくとも1種を合計で0.1〜3.0mass%含有し、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Al、Cr、Co、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.005〜1.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
(5)NiとSnの少なくとも1種を合計で0.03〜5.0mass%、Pを0.01〜0.3mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
(6)NiとSnの少なくとも1種を合計で0.03〜5.0mass%、Pを0.01〜0.3mass%含有し、Zn、Si、Ag、Mn、B、Mg、Cr、Co、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.005〜1.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
(7)Mg、Pを合計で0.3〜2.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
(8)Mg、Pを合計で0.3〜2.0mass%含有し、Sn、Zn、Ag、Mn、B、Ni、Co、Cr、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.005〜1.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
(10)30〜1000nmの大きさの第2相粒子が、104〜108個/mm2で存在することを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の銅合金板材。
(11)前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の銅合金板材を製造する方法であって、前記銅合金板材を与える合金成分組成から成る銅合金素材に、鋳造[工程1]、均質化熱処理[工程2]、熱間加工[工程3]、水冷[工程4]、冷間圧延1[工程6]、熱処理1[工程7]、冷間圧延2[工程8]及び熱処理2[工程9]をこの順に施すことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
(12)前記熱処理2[工程9]の後で、時効析出熱処理[工程11]、冷間圧延[工程12]、調質焼鈍[工程13]をこの順に施すことを特徴とする(11)項に記載の銅合金板材の製造方法。
(13)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の銅合金板材からなる銅合金部品。
(14)前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の銅合金板材からなるコネクタ。
また、本発明の銅合金板材の製造方法は、曲げ加工性に優れ、優れた強度を有し、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや端子材、リレー、スイッチなどに適した銅合金板材の製造方法として好適である。
本発明の銅合金板材の好ましい実施の態様について、詳細に説明する。ここで、「銅合金材料」とは、(加工前であって所定の合金組成を有する)銅合金素材が所定の形状(例えば、板、条、箔、棒、線など)に加工されたものを意味する。その中で、板材とは、特定の厚みを有し形状的に安定しており面方向に広がりをもつものを指し、広義には条材を含む意味である。本発明において、板材の厚さは、特に限定されるものではないが、本発明の効果が一層よく顕れ実際的な用途に適合することを考慮すると、4〜0.03mmが好ましく、1〜0.05mmがより好ましい。
なお、本発明の銅合金板材は、その特性を圧延板の所定の方向における原子面の集積率で規定するものであるが、これは銅合金板材としてそのような特性を有しておれば良いのであって、銅合金板材の形状は板材や条材に限定されるものではない。本発明では、管材も板材として解釈して取り扱うことができるものとする。
本発明の銅合金板材は、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下である。
本明細書における結晶方位の表示方法は、銅合金板材の長手方向(LD){板材の圧延方向(RD)に等しい}をX軸、板幅方向(TD)をY軸、板材の厚さ方向{板材の圧延法線方向(ND)に等しい}をZ軸とする直角座標系を取り、銅合金板材中の各領域において、Z軸に垂直な(圧延面(XY面)に平行な)結晶面の指数(h k l)と、X軸に垂直な(YZ面に平行な)結晶面の指数[u v w]とを用いて、(h k l)[u v w]の形で表す。また、(1 3 2)[6 −4 3]と(2 3 1)[3 −4 6]などのように、銅合金の立方晶の対称性のもとで等価な方位については、ファミリーを表すカッコ記号を使用し、{h k l}<u v w>と表す。
各方位の面積率とは、各理想方位からのずれ角度が10°以内の領域の面積を、測定面積で割って算出したものである。
理想方位からのずれ角度については、共通の回転軸を中心に回転角を計算し、ずれ角度とする。図1に、Cube方位からのずれ角度が10°以内の方位の例を示す。ここでは、(100)及び(110)及び(111)の回転軸に関して、10°以内の方位を示しているが、あらゆる回転軸に関してCube方位との回転角度を計算することができる。回転軸は最も小さいずれ角度で表現できるものを採用し、全ての測定点に対してこのずれ角度を計算し、各方位から10°以内の方位を持つ結晶粒の面積の和を全測定面積で除し、面積率とする。
EBSDによる方位解析において得られる情報は、電子線が試料に侵入する数10nmの深さまでの方位情報を含んでいるが、測定している広さに対して小さすぎるため、本明細書中では面積率を用いる。方位分布は銅合金板材の板材表面から測定し、方位分布が板厚方向に変化している場合は、EBSDによる方位解析は板厚方向に何点かを任意にとって平均を取った値をいう。
その他の結晶方位として、RDW方位{120}<001>、S方位{231}<346>、D方位{4 11 4}<11 8 11>、Goss方位{110}<001>、R1方位{352}<358>、BR方位{362}<853>などが発生するが、上記のCube方位を満足し、さらに好ましくは上記のcopper方位、Brass方位の面積率を満足していれば、これらの方位成分を含んでいてもよい。
まず1点目に挙げられるのは、X線回折の方法で測定可能なのは、ブラッグの回折条件を満足し、かつ充分な回折強度が得られる、ND//(111)、(200)、(220)、(311)、(420)面の5種類のみであり、Cube方位からのずれ角度が15〜30°に相当する、例えばND//(511)面やND//(951)面などの高指数で表現される結晶方位については、測定出来ない。即ち、EBSD測定を採用することにより、初めて、それらの高指数で表現される結晶方位に関する情報が得られ、それにより特定される金属組織と作用の関係が明らかになる。
2点目は、X線回折はND//{hkl}の±0.5°程度に含まれる結晶方位の分量を測定しているのに対し、EBSD測定によれば菊池パターンを利用するため、特定の結晶面に限定されない、桁違いに広範な金属組織に関する情報が網羅的に得られ、合金材料全体としてX線回折では特定することが難しい状態が明らかになる。
以上のとおり、EBSD測定とX線回折測定とで得られる情報はその内容及び性質が異なる。
なお、本明細書において特に断らない限り、EBSDの測定は、銅合金板材のND方向に対して行ったものである。
本発明の銅合金板材のビッカース硬さは、120以上であり、190以上であることが好ましい。この板材のビッカース硬さの上限値には特に制限はないが、通常、400以下である。本明細書におけるビッカース硬さとは、JIS Z 2244により、測定された値をいう。ビッカース硬さがこの範囲内のものは、本発明の銅合金板材をコネクタなどに使用した場合の電気接点の接圧が十分であるという効果を奏する。ビッカース硬さが小さすぎると、コネクタの電気接点の接圧が不十分なために、導通障害が生じる場合がある。
(3)Cu−(Cr、Zr、Ti)系合金
本発明の銅合金板材は、Cr、Zr、Tiの少なくとも1種を合計で0.05〜1.0mass%含有し、必要に応じて、Sn、Zn、Si、Ag、Mn、B、P、Mg、Ni、CoおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.005〜1.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる。したがって、Sn、Zn、Si、Ag、Mn、B、P、Mg、Ni、CoおよびHfからなる群の元素を含有していなくてもよい。Cr、Zr及びTiの含有量を上記の範囲内とすることにより、(6−1)Cr単独、Zr単独及びTi単独などの金属や、(6−2)Cr、Zr、Tiの少なくとも2種以上からなる化合物、(6−3)Cr、Zr、Tiの少なくとも1種以上からなる元素と銅との化合物を析出させて銅合金の強度と耐応力緩和特性を向上させることができる。Cr、Zr及びTiの含有量は、Cr、Zr、Tiの少なくとも1種を合計で、0.05〜1.0mass%、好ましくは0.35〜0.7mass%である。Cr、Zr及びTiのそれぞれの添加量は、好ましくは0.1〜0.45mass%、さらに好ましくは0.2〜0.4mass%である。
これらの元素の合計の添加量が上記範囲よりも多すぎると導電率を低下させ、また、少なすぎると上記の効果が十分に得られない。
本発明の銅合金板材は、Be、Niの少なくとも1種を合計で0.1〜3.0mass%含有し、必要に応じて、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Al、Cr、Co、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.005〜1.0mass%含有する。したがって、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Al、Cr、Co、Ti、ZrおよびHfからなる群の元素を含有していなくてもよい。Be及びNiの含有量を上記の範囲内とすることにより、Beや、BeとNiとの化合物を析出させて、銅合金の強度と耐応力緩和特性を向上させることができる。BeとNiの含有量は、Be、Niの少なくとも1種を合計で、0.1〜3.0mass%、好ましくは2.0〜3.0mass%である。Beの添加量は好ましくは0.1〜2.8mass%、さらに好ましくは0.2〜2.5mass%である。Niの含有量は好ましくは0.1〜2.5mass%、さらに好ましくは0.2〜2.0mass%である。これらの元素の合計の含有量が上記範囲よりも多すぎると導電率を低下させ、また、少なすぎると上記の効果が十分に得られない。
本発明の銅合金板材は、NiとSnの少なくとも1種を合計で0.03〜5.0mass%、Pを0.01〜0.3mass%含有し、必要に応じて、Zn、Si、Ag、Mn、B、Mg、Cr、Co、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.005〜1.0mass%含有する。したがって、Zn、Si、Ag、Mn、B、Mg、Cr、Co、Ti、ZrおよびHfからなる群の元素を含有していなくてもよい。Ni、Sn及びPの含有量を上記の範囲内とすることにより、NiとPの化合物を析出させて、銅合金板材の強度と耐応力緩和特性を向上させることができる。SnにNi、Pを配合することにより、耐応力緩和特性の向上について、相乗効果を奏することができる。NiとSnの少なくとも1種を合計で、0.03〜5.0mass%、好ましくは1.0〜4.0mass%、さらに好ましくは2.0〜3.0mass%含有する。Niの含有量は好ましくは0.03〜3.0mass%、さらに好ましくは0.5〜2.0mass%である。Snの含有量は好ましくは0.2〜1mass%、さらに好ましくは0.25〜0.5mass%である。また、Pの含有量は好ましくは0.01〜0.3mass%、さらに好ましくは0.02〜0.08mass%である。
これらの元素の合計の含有量が上記範囲よりも多すぎると導電率を低下させ、また、少なすぎると上記の効果が十分に得られない。また、この範囲を超えて添加した場合に、Cube方位が減少する場合があり、好ましくない。
本発明の銅合金板材は、Mg、Pを合計で0.3〜2.0mass%含有し、必要に応じて、Sn、Zn、Ag、Mn、B、Ni、Co、Cr、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.005〜1.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる。したがって、Sn、Zn、Ag、Mn、B、Ni、Co、Cr、Ti、ZrおよびHfからなる群の元素を含有していなくてもよい。Mg及びPの含有量を上記の範囲内とすることにより、MgとPの化合物を析出させて、銅合金の強度と耐応力緩和特性を向上させることができる。その含有量は、Mg、Pを合計で、0.3〜2.0mass%、好ましくは1.5〜2.0mass%である。Mg及びPのそれぞれの添加量は好ましくは0.3〜1.0mass%、さらに好ましくは0.35〜0.5mass%である。これらの元素の合計の添加量が上記範囲よりも多すぎると導電率を低下させ、また、少なすぎると上記の効果が十分に得られない。また、この範囲を超えて添加した場合に、Cube方位が減少する場合があり、好ましくない。
上記合金(3)〜(6)は、以下の副添加元素を含有する。好ましい副添加元素としては、Sn、Zn、Si、Ag、Mn、B、P、Mg、Al、Ni、Cr、Co、Ti、Zr及びHfが挙げられる。これらの元素が、上記の主添加元素に含まれる場合は除かれる。
これらの副添加元素の含有量は、Sn、Zn、Si、Ag、Mn、B、P、Mg、Al、Ni、Cr、Co、Ti、Zr及びHfからなる群から選ばれた少なくとも1種の総量で0.005〜1.0mass%であり、好ましくは0.01mass%〜0.9mass%、さらに好ましくは、0.03mass%〜0.8mass%である。これらの副添加元素の含有量をこの範囲内とすることにより、上記効果を十分奏することができ、導電率を低下させることがない。
この範囲を超えて添加した場合に、Cube方位が減少する場合があり、好ましくない。
上記の各合金板材に含まれる30〜1000nmの大きさの第2相は、結晶粒が粗大化するのを抑制し、曲げ加工性や強度を向上させることができる。合金板材中の第2相とは、鋳造工程で生成した晶出物や、熱間圧延や熱処理で生成した析出物が含まれる。より好ましい第2相の大きさの範囲は、40〜600nm、さらに好ましい範囲は50〜200nmである。
上記の各合金板材に含まれる30〜1000nmの大きさの第2相の密度は、104〜108個/mm2が好ましい。より好ましい範囲は、5×105〜5×107個/mm2、さらに好ましい範囲は、105〜107個/mm2である。
第2相の大きさが30nmより小さい場合は十分に曲げ加工性向上の効果が得られず、1000nmより大きい場合は、メッキ性が低下する場合があるため好ましくない。密度が小さすぎると、十分に曲げ加工性向上の効果が得られず、密度が大きすぎると、曲げ加工性が低下する場合があるため、好ましくない。
本発明の銅合金板材は、好ましくは、0.2%耐力が600MPa以上、ビッカース硬度が190以上で、180°密着U曲げ可能な曲げ加工性を有し、ヤング率が115GPa以下、たわみ係数が100以下、導電率40%IACS以上、耐応力緩和特性として応力緩和率が25%以下である。
ここで、ヤング率の代用特性として、たわみ係数を用いても良い。たわみ係数は、日本伸銅協会技術標準JCBA T312(2002年)「銅及び銅合金板条の片持ち梁による曲げたわみ係数測定方法」に従って、片持ち梁法によって測定する。
また、耐応力緩和特性については、後述する150℃に1000時間保持する方法で測定した応力緩和率(SRR)の値である。
Cu−(Cr、Zr、Ti)系合金では、導電率は、好ましくは60%IACS以上、より好ましくは70%IACS以上、さらに好ましくは75%IACS以上、特に好ましくは80%IACS以上であり、耐力は、好ましくは430MPa以上、より好ましくは470MPa以上、さらに好ましくは500MPa以上、特に好ましくは530MPa以上である。導電率と耐力の上限にはそれぞれ特に制限はないが、通常、導電率は98%IACS以下、耐力は800MPa以下である。
Cu−(Be、Ni)系合金では、導電率は、好ましくは20%IACS以上、より好ましくは25%IACS以上、さらに好ましくは40%IACS以上、特に好ましくは46%IACS以上であり、耐力は、好ましくは700MPa以上、より好ましくは750MPa以上、さらに好ましくは850MPa以上、特に好ましくは950MPa以上である。導電率と耐力の上限にはそれぞれ特に制限はないが、通常、導電率は80%IACS以下、耐力は1300MPa以下である。
Cu−(Ni、Sn)−P系合金では、導電率は、好ましくは30%IACS以上、より好ましくは34%IACS以上、さらに好ましくは37%IACS以上、特に好ましくは41%IACS以上であり、耐力は、好ましくは500MPa以上、より好ましくは530MPa以上、さらに好ましくは560MPa以上、特に好ましくは585MPa以上である。導電率と耐力の上限にはそれぞれ特に制限はないが、通常、導電率は80%IACS以下、耐力は800MPa以下である。
Cu−Mg−P系合金では、導電率は、好ましくは50%IACS以上、より好ましくは54%IACS以上、さらに好ましくは57%IACS以上、特に好ましくは60%IACS以上であり、耐力は、好ましくは450MPa以上、より好ましくは490MPa以上、さらに好ましくは520MPa以上、特に好ましくは550MPa以上である。導電率と耐力の上限にはそれぞれ特に制限はないが、通常、導電率は90%IACS以下、耐力は900MPa以下である。
(従来の銅合金板材の製造方法)
本発明の銅合金板材の好ましい製造方法について説明する前に、従来の析出型銅合金板材の製造方法について説明する。銅合金素材を鋳造[工程1]して鋳塊を得て、これに均質化熱処理[工程2]を施し、熱間圧延等の熱間加工[工程3]、水冷[工程4]、面削[工程5]、冷間圧延1[工程6]をこの順に行い薄板化し、析出型合金であれば700〜1020℃の温度範囲で溶体化と再結晶が目的の、固溶型合金であれば300〜900℃の温度範囲で再結晶が目的の、熱処理2[工程9]を行い、析出型合金であれば時効析出熱処理[工程11]を行い、仕上げ冷間圧延[工程12]によって必要な強度を満足させる。
添加元素の量の少ない純銅系の合金の場合、上記の冷間圧延1[工程6]の加工率が例えば90%以上などの様に高い場合に、熱処理2[工程9]において、Cube方位が発達するが、ビッカース硬度が120以上のものは得られなかった。一方、コネクタに使用される様な高強度合金の場合はビッカース硬度が120以上のものが得られるものの、溶質元素量が多く、結晶粒界の移動度が低いために、上記の[工程6]で加工後の[工程9]での再結晶という製造工程ではCube方位は発達しなかった。
本発明の銅合金板材は、上記の従来の、冷間圧延1[工程6]の後で、熱処理2[工程9]の前に、200℃〜750℃で5秒〜20時間の範囲で行う熱処理1[工程7]及び、2〜50%の加工率の冷間圧延2[工程8]を加えることによって、中間熱処理2[工程9]での再結晶集合組織においてCube方位の面積率を増加させることができる。熱処理1[工程7]では、本発明の銅合金板材は完全には再結晶しておらず、該工程で部分的に再結晶している亜焼鈍組織を得ることが目的である。冷間圧延2[工程8]では、低い加工率の圧延によって、微視的に不均一な歪みを導入することができる。この熱処理1[工程7]と冷間圧延2[工程8]を加えることによって、中間熱処理2[工程9]におけるCube方位粒の優先成長を可能にする。
従来、中間熱処理2[工程9]のような中間焼鈍は、次工程の圧延での荷重を低減するために銅合金板材を再結晶させて強度を落とすために行われている。また、従来の純銅系合金板材を製造する際に、最終再結晶熱処理[工程9]の前の圧延では加工率を高くすることにより、Cube方位を高めていたのに対し、本発明の銅合金板材を得るには、熱処理2[工程9]の前に、上記の熱処理1[工程7]及び、2〜50%の加工率の冷間圧延2[工程8]を加えることによって、中間熱処理2[工程9]での再結晶集合組織においてCube方位の面積率を増加させることができる。
冷間圧延[工程8]の加工率は、2〜50%、好ましくは4〜40%、さらに好ましくは5〜30%である。加工率が小さすぎると、再結晶の駆動力となる歪みが不十分となる。また加工率が大きすぎると、歪みが大きくなりすぎるため、熱処理2[工程9]においてCube方位の発達が不十分となり、好ましくない。冷間圧延[工程8]の少なくとも一部を、テンションレベラーなどによって曲げ歪みを銅合金板材に与える方法で代替してもよい。
所望のバネ性を有する銅合金板材を得るために、仕上げ冷間圧延[工程12]で、加工硬化させることができる。この工程での加工率は40%以下が好ましい。加工率が高すぎると、Cube方位から圧延安定方位に方位が変化し、Cube方位面積が減少するため好ましくない。また、Brass方位とCopper方位の面積率の合計を20%以下にするには、25%以下の加工率にすることが好ましい。
好ましくは上記の製造方法により得られた銅合金板材は、Cube方位の発達した組織を有し、曲げ加工性だけでなく、耐応力緩和特性も優れている。
加工率(%)=((t1−t2)/t1)×100
各熱処理や圧延の後に、板材表面の酸化や粗度の状態に応じて酸洗浄や表面研磨を、形状に応じてテンションレベラーによる矯正を行っても、Cube方位{001}<100>の面積率が本発明の範囲内であれば問題はない。
本発明の銅合金板材は上記の実施態様の製造方法により製造することが好ましいが、EBSD測定における結晶方位解析において前記所定の面積率を満足し、かつ、所定のビッカース硬度を満足するならば、上記[工程1]〜[工程13]をこの順にすべて行うことに必ずしも拘束されるものではない。上記の方法に含まれるものではあるが、上記[工程1]〜[工程9]の内、[工程5]を省略して、[工程9]を最終工程として製造工程を終了してもよい。
原料を高周波溶解炉により溶解し、これを0.1〜100℃/秒の冷却速度で鋳造[工程1]して鋳塊を得た。分析成分を表1〜4に示し、残部がCuと不可避不純物からなる。これを900〜1020℃で3分〜10時間の均質化熱処理[工程2]後、熱間加工[工程3]を行った後に水焼き入れ(水冷[工程4]に相当)を行い、酸化スケール除去のために面削[工程5]を行った。その後に、冷間圧延1[工程6]、熱処理1[工程7]、冷間圧延2[工程8]及び熱処理2[工程9]を表5中のA〜Dに示す条件で行った。その後に、400℃〜700℃で5分〜10時間の時効析出熱処理[工程11]、加工率が0%〜40%の仕上げ冷間圧延[工程12]、200℃〜600℃で5秒〜10時間の調質焼鈍[工程13]を行って実施例の供試材とした。各熱処理や圧延の後に、板材表面の酸化や粗度の状態に応じて酸洗浄や表面研磨を、形状に応じてテンションレベラーによる矯正を適宜行い、供試材の厚さが、10μm程度の箔、100μm程度の薄板及び1000μm程度の厚板を問題なく得ることができた。
なお、表1〜4中の比較例の供試材は、表5中の工程P〜Tによって製造した。
これらの供試材の組成及び評価結果を表1〜4に示す。
(a)Cube方位、Copper方位、Brass方位、S方位、RDW方位の面積率
EBSD法により、約500μm四方の測定領域で、スキャンステップが0.5μmの条件で測定した。測定面積は結晶粒を200個以上含むように測定した。EBSD法の装置としては、(株)TSLソリューションズ製 OIM5.0(商品名)を用いた。
(b)ビッカース硬さ[Hv]
供試材の断面を鏡面研磨し、JIS Z 2244に準じて測定した。
(c)90°W曲げ加工性
JIS Z 2248に準じて90°W曲げ加工性を評価した。供試材の圧延方向に垂直に幅10mm、長さ35mmに切出し、これに曲げの軸が圧延方向に直角になるようにW曲げしたものをGW(Good Way)、曲げの軸が圧延方向に平行になるようにW曲げしたものをBW(Bad Way)とし、曲げ部を50倍の光学顕微鏡で観察し、クラックの有無を調査した。GW及びBWともにクラックがなく良好であるものを◎(「優」)、クラックは無いがシワが大きいものを○(「良」)、クラックが発生し好ましくないものを×(「不可」)と判定し、◎と○を合格とした。各曲げ部の曲げ角度は90°、各曲げ部の内側半径は0.15mmとした。◎と○を合格とした。
供試材の圧延方向に垂直に幅1mm、長さ25mmにプレスで打ち抜き、これに曲げの軸が圧延方向に直角になるようにW曲げしたものをGW(Good Way)、曲げの軸が圧延方向に平行になるようにW曲げしたものをBW(Bad Way)とした。JIS Z 2248に準じて曲げ加工性の評価を行った。0.4mmRの90°曲げ金型を使用して予備曲げを行った後に、圧縮試験機によって密着曲げを行った。曲げ部外側における割れの有無を50倍の光学顕微鏡で目視観察によりその曲げ加工部位を観察し、割れの有無を調査した。GW及びBWともに曲げ加工部にクラックがなく、シワも軽微なものを◎(「優」)、クラックがないがシワが大きいものを○(「良」)、クラックのあるものを×(「不可」)と判定した。◎と○を合格とした。
供試材の圧延平行方向から切り出したJIS Z2201−13B号の試験片をJIS Z2241に準じて3本測定しその平均値を測定した。その平均値が400MPa以上のものを合格とした。
(f)導電率 [EC]:
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温漕中で、四端子法により供試材の比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。導電率が25%IACS以上のものを合格とした。
(g)ヤング率(縦弾性係数)
供試材の圧延平行方向と圧延垂直方向に、幅20mm、長さ200mmの短冊状試験片を採取し、試験片長さ方向に引張試験機により応力を付与した。あらかじめ降伏する歪み量を測定しておき、その80%の歪み量を最大歪み量とし、その歪み量までを10分割した歪みを与え、その10点から歪みと応力の比例定数を求めた。圧延方向に対して平行と垂直の両方向に試験片を採取して測定し、その平均値をヤング率とした。ヤング率が120GPa以下のものを合格とした。
日本伸銅協会技術標準(JCBA)T312(2002年)に従って、片持ち梁法によって測定した。供試材の圧延方向に対して平行と垂直の両方向に試験片を採取して測定し、平均値をたわみ係数とした。たわみ係数が105GPa以下のものを合格とした。
(i)平均結晶粒径
JIS−H0501の切断法に準じ、供試材の厚さ方向に平行でかつ圧延方向と平行な断面を鏡面研磨した後にエッチングして測定した。最終冷間圧延方向に対して平行方向と直角方向の2方向でそれぞれの平均結晶粒径を測定し、その平均値を平均結晶粒径とした。
(j)結晶粒の扁平率[a/b]
上記の平均結晶粒径の算出において、冷間圧延方向に対して平行方向に測定された平均結晶粒径(a)と垂直方向に測定された平均結晶粒径(b)の比を算出した。通常、結晶粒は圧延方向に伸びた楕円状であるため、aを長軸、bを短軸として、a/bの比によって結晶粒の扁平率を評価した。
供試材について、反射法で、ターゲットとして銅またはモリブデンを使用し、KαのX線を使用してX線を照射した。管電流20mA、管電圧40kV、の条件で測定し、回折角と回折強度のプロファイルにおいて、回折強度のバックグラウンドを除去後、各ピークのKα1とKα2を合わせた積分回折強度I(hkl)を求めた。ここで(hkl)は回折を起こすNDに向く結晶面の指数である。方位がランダムな場合に相当する純銅の標準粉末から測定した積分回折強度I0(hkl)との比、I(hkl)/I0(hkl)を算出し、X線回折強度とした。
この数値によって、本発明で見出された結晶方位を特定出来るものでは無く、この方法で方位を簡易評価した場合の参考値を示すためのものである。
鏡面研磨した供試材をエッチングし、FE−SEMによって10万倍の倍率で観察し、大きさが30〜1000nmの大きさの第2相粒子の個数を数えて、測定面積で割り、密度(個/mm2)を算出した。FE−SEMとしては、7001FA(日本電子社製)を用いた。第2相粒子が楕円形状や、板形状の場合は、長径の長さが30〜1000nmの場合にカウントした。
(m)応力緩和率 [SRR]
日本伸銅協会技術標準(JCBA)T309(2004)(旧日本電子材料工業会標準規格 EMAS−3003に相当)に準じ、片持ち梁法により耐力の80%の初期応力を負荷として加え、150℃で1000時間保持後の残存永久歪みから、応力緩和率を求めた。圧延垂直方向に試験片を採取した。応力緩和率が30%以下のものを合格とした。
図4は耐応力緩和特性の試験方法の説明図であり、(a)は熱処理前、(b)は熱処理後の状態である。図4(a)に示すように、試験台4に片持ちで保持した試験片1に、耐力の80%の初期応力を付与した時の試験片1の位置は、基準からδ0の距離である。これを150℃の恒温槽に1000時間保持(前記試験片1の状態での熱処理)し、負荷を除いた後の試験片2の位置は、図4(b)に示すように基準からHtの距離である。3は応力を負荷しなかった場合の試験片であり、その位置は基準からH1の距離である。この関係から、応力緩和率(%)は(Ht−H1)/(δ0−H1)×100と算出した。式中、δ0は、基準から試験片1までの距離であり、H1は、基準から試験片3までの距離であり、Htは、基準から試験片2までの距離である。
(n)表面粗度
JIS B 0601(2001年)に従って、供試材について、算術平均粗さ(Ra)と最大高さ(Rz)を表面粗さ計SE−30H(小阪研究所社製)を用いた。測定長さは4mmで、圧延方向に対して垂直方向に測定した。
日本伸銅協会技術標準(JCBA)T312(2002年)に従って、打ち抜き加工を行い、バリ高さを測定した。
(p)スプリングバック量
90°W曲げを行った後に、断面から曲げ角度を観察し、90°から開いた角度を測定した。
(q)方位密度
EBSD法により測定した方位分布を、Bungeによって提唱された一般化球面調和関数を用いて展開し、方位密度分布関数(ODF Orientation Distribution Function)を計算した。この時の展開次数は16次で行った。Cube方位等の方位密度を表1〜4に示した。実施例1のODFマップを図2に、比較例1のODFマップを図3に示す。図2及び図3において、φ2が0°〜90°まで、5°おきに、横軸φ1、縦軸Φのマップを示している。Cube方位密度は、(φ1、Φ、φ2)が(0°、0°、0°)の位置で示される。
完全に結晶方位分布が完全ランダムな場合の方位密度は1であり、対象となる方位成分が完全なランダム方位の状態に対して何倍の集積状態かを表すのが、方位密度である。
ヤング率(縦弾性係数)は、全ての試験片において、圧延方向に対して平行方向の値が、垂直方向よりも低く、その差は2〜20GPaであった。たわみ係数は、全ての試験片において、圧延方向に対して平行方向の値が、垂直方向よりも低く、その差は2〜20GPaであった。
比較例1−1〜比較例1−4はCube方位面積率が低いために、曲げ加工性、ヤング率及びたわみ係数が劣った。比較例1−5はCube方位面積率が高いためにビッカース硬さ及び耐力が劣り、また結晶粒径が粗大化した状態となっており、曲げ加工性が劣った。比較例1−6は主成分であるCr、Zr、Tiの総量が少ないために、ビッカース硬さ、耐力及び耐応力緩和特性に劣った。比較例1−7は主成分であるCr、Zr、Tiの総量が多いために、圧延加工性を低下させる粗大な晶出物が多数存在し、熱間加工中にエッジ割れが発生し試作を中止した。比較例1−8は、副添加元素の総量が多いためにCube方位面積率が減少し、曲げ加工性、ヤング率及びたわみ係数が劣った。比較例1−9は、副添加元素の総量が多いためにCube方位面積率が減少し、曲げ加工性、ヤング率及びたわみ係数が劣るとともに、導電性が劣った。
一般的なNiめっき、Agめっき、Snめっきを施した後の曲げ加工性も評価したところ、比較例に比べて、実施例では、めっきの割れが軽微であることが確認された。
無酸素銅を母材として用いて、Cr;0.2質量%、Zr;0.1質量%を含有した組成を有する銅合金を高周波溶解炉で溶製し、厚さ25mm、幅30mm、長さ150mmのインゴットに鋳造した。これを950℃に加熱して、厚さ8mmまで熱間圧延し、その後、厚さ1mmまで冷間圧延して、800℃で焼鈍した。
続いて、これに加工度40%の冷間加工と、500℃で1分間加熱する熱処理とを、3回繰り返して行って、厚さ0.22mmの金属板材を作製した。
これを試料c01とした。
得られた試験体c01は、上記本発明に係る実施例とは製造条件について、中間熱処理1[工程7]を行っておらず、冷間圧延1[工程6]より後の熱処理と冷間圧延の工程が異なり、Cube方位は5%未満であり、ヤング率(縦弾性係数)について本発明の要求特性を満たさない結果となった。
Be1.91質量%、Ni0.14質量%、Fe0.04質量%、Co0.30質量%を含有し残部が銅である組成を有する銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片(厚さ60mm)を固相線より30℃以上低い温度(合金組成により820〜900℃)に加熱したのち抽出して、熱間圧延を開始した。固相線温度は、各組成の合金について予備実験を行うことによって把握してある。熱間圧延に際しては、700℃以上の温度域での圧延率が60%以上となり、かつ700℃未満の温度域でも圧下率44%で圧延が行われるようにパススケジュールを設定した。熱間圧延の最終パス温度は600℃〜400℃の間にある。鋳片からのトータルの熱間圧延率は約90%である。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。次いで、圧延率82%で冷間圧延を行った後、溶体化処理に供した。溶体化処理においては、溶体化処理後の平均結晶粒径(双晶境界を結晶粒界とみなさない)が10〜40μmとなるように到達温度を合金組成に応じて700〜850℃の範囲内で調整し、700〜850℃の温度域での保持時間を10sec〜10mimの範囲で調整した。続いて、上記溶体化処理後の板材に対して、圧延率20%で仕上冷間圧延を施した。なお、必要に応じて途中で面削を行い、板厚は0.2mmに揃えた。「未時効処理材」としての供試材にはこの段階の板材を使用した。
このようにして得られた板厚0.2mm板材について、予備実験として300〜500℃の温度範囲で最大5hまでの時効処理実験を行い、合金組成に応じて最大硬さとなる時効処理条件(その時効温度をTm(℃)、時効時間をtm(min)とする)を把握した。
この合金(上記未時効処理材)の板材を時効温度Tm(320℃)、時効時間tm(120分)で時効処理して「時効硬化材」の供試材とした。これを試料c02−1とした。
また、ミルハードン材として出荷する場合を想定して、この合金(上記未時効処理材において、仕上げ冷間圧延率を10%に変更)の板材に、最大硬度には到達しない程度の時効処理を施したものを供試材とした。その時効処理条件は時効温度Tm(320℃)、時効時間0.1tm以上tm未満(20分)の範囲とした。これを試料c02−2とした。
得られた試験体c02−1、c02−2は、上記本発明に係る実施例とは製造条件について、中間熱処理1[工程7]を行っておらず、冷間圧延1[工程6]より後の熱処理と冷間圧延の工程が異なり、Cube方位は5%未満であり、ヤング率(縦弾性係数)について本発明の要求特性を満たさない結果となった。
Ni0.7質量%、Sn1.2質量%、P0.05質量%、Fe0.02質量%、Zn0.05質量%を含有し残部が銅である組成を有する銅合金を、コアレス炉にて溶製した後、半連続鋳造法(鋳造の冷却凝固速度2℃/sec)で造塊して、厚さ70mm×幅200mm×長さ500mmの鋳塊を得た。この鋳塊を、以下の条件にて圧延して銅合金薄板を製造した。鋳塊の表面を面削して加熱後、加熱炉で960℃で加熱した後、直ちに熱延終了温度750℃で熱間圧延を行って厚さ16mmの板とし、650℃以上の温度から水中に急冷した。
この際、溶解炉での合金元素添加完了から鋳造開始までの所要時間は、1200秒以下とし、加熱炉抽出から熱延終了までの所要時間は、1200秒以下とした。
この板を、酸化スケールを除去した後、冷延→連続仕上げ焼鈍→冷延→歪み取り焼鈍を行なって、銅合金薄板を製造した。即ち、一次冷間圧延(粗冷間圧延、中延べ冷間圧延)後の板を面削した。この板の仕上げ焼鈍を、焼鈍炉にて、板の実体温度として、最高到達温度が600℃、この温度での保持時間60秒として行った。
この仕上げ焼鈍後に、圧下率を60%とした最終冷間圧延を行った。この最終冷間圧延のロール径(60mm)と、1パス当たりの最小圧下率(30%)として行った。なお、最終冷間圧延では4パスとも同じロール径のロールを使用した。また、ロール長さは500mmとした。この最終冷間圧延後に、実体温度400℃×20秒間の低温の歪み取り焼鈍を行って、厚さ0.25mmの銅合金薄板を得た。
これを試料c03とした。
得られた試験体c03は、上記本発明に係る実施例とは、合金組成について、Fe0.02質量%を含有している点で、また、製造条件について、本発明での工程9に相当する再結晶熱処理である仕上げ焼鈍の前に、中間熱処理1[工程7]を行っておらず、冷間圧延1[工程6]より後の熱処理と冷間圧延の工程が異なり、Cube方位は5%未満であり、ヤング率(縦弾性係数)について本発明の要求特性を満たさない結果となった。
0.66質量%のMgと0.04質量%のPを含み、残部がCuからなる銅合金を溶製し、縦型の小型連続鋳造機を用いて鋳造して、厚さ50mmの鋳片を得た。
その鋳片を900℃に加熱した後に抽出し、熱間圧延を開始した。この熱間圧延では、900℃〜600℃の温度域における圧延率が60%以上になり且つ600℃未満の温度域でも圧延が行われるようにパススケジュールを設定した。なお、600℃未満〜300℃における熱間圧延率を48%とし、熱間圧延の最終パス温度は500℃〜300℃の間とした。また、鋳片からのトータルの熱間圧延率は約90%であった。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。
次いで、圧延率92%で冷間圧延を行った後、400〜700℃で再結晶焼鈍を行った。なお、試料表面に取り付けた熱電対により再結晶焼鈍時の温度変化をモニターした。再結晶焼鈍後の平均結晶粒径(双晶境界を結晶粒界とみなさない)が10〜30μmになるように、到達温度を合金組成に応じて400〜700℃の範囲内で調整し、400〜700℃の温度域における保持時間を10秒間〜30分間の範囲で調整した。
次に、再結晶焼鈍後の板材に対して、圧延率35%で仕上げ冷間圧延を行い、次いで、300℃の炉中に5分間装入する低温焼鈍を施した。
このようにして銅合金板材を得た。なお、必要に応じて途中で面削を行い、銅合金板材の板厚を0.3mmに揃えた。これを試料c04とした。
得られた試験体c04は、上記本発明に係る実施例とは製造条件について、中間熱処理1[工程7]を行っておらず、冷間圧延1[工程6]より後の熱処理と冷間圧延の工程が異なり、Cube方位は5%未満であり、ヤング率(縦弾性係数)について本発明の要求特性を満たさない結果となった。
2 負荷を除いた後の試験片
3 応力を負荷しなかった場合の試験片
4 試験台
Claims (8)
- NiとSnの少なくとも1種を合計で0.03〜5.0mass%、Pを0.01〜0.3mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
- NiとSnの少なくとも1種を合計で0.03〜5.0mass%、Pを0.01〜0.3mass%含有し、Zn、Si、Ag、Mn、B、Mg、Cr、Co、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1種を合計で0.005〜1.0mass%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、EBSD測定における結晶方位解析において、Cube方位{001}<100>の面積率が5%以上70%以下であり、ビッカース硬さが120以上であることを特徴とする銅合金板材。
- Copper方位{121}<111>とBrass方位{110}<112>方位の面積率の合計が、20%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅合金板材。
- 30〜1000nmの大きさの第2相粒子が、104〜108個/mm2で存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金板材。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金板材を製造する方法であって、前記銅合金板材を与える合金成分組成から成る銅合金素材に、鋳造[工程1]、均質化熱処理[工程2]、熱間加工[工程3]、水冷[工程4]、冷間圧延1[工程6]、熱処理1[工程7]、冷間圧延2[工程8]及び熱処理2[工程9]をこの順に施すことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
- 前記熱処理2[工程9]の後で、時効析出熱処理[工程11]、冷間圧延[工程12]、調質焼鈍[工程13]をこの順に施すことを特徴とする請求項5に記載の銅合金板材の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金板材からなる銅合金部品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金板材からなるコネクタ。
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