JP2014009131A - 湾曲結晶の製造方法および湾曲結晶 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の湾曲結晶の製造方法は、結晶基板上に炭素系材料を直接蒸着して、前記結晶基板を湾曲させる工程を含むことを特徴とする。また、本発明の湾曲結晶は、上記の製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
【選択図】図1
Description
特許文献1に記載の製造方法によれば、Si、GeまたはSiGeからなる単結晶に対し、数千度の温度で高温加圧加工を施すことにより、該単結晶を湾曲加工して、集光効率の高い湾曲単結晶を得ることができる。
また、所期する単結晶の曲率に応じた形状の金型を用いるため、一度金型を作製すると、単結晶の曲率を自由に制御することは困難であった。従って、単結晶の曲率を変更するためには、その都度、その曲率に応じた形状の金型の作製が必要となり、コストの増大を招いていた。
さらに、熱変形を利用して湾曲させることのできる単結晶基板のサイズは、直径50mm程度であり、直径200mmといった大口径の単結晶基板を湾曲させることは困難であった。
この製造方法によれば、高温熱処理や金型を必要とすることなく、湾曲単結晶を製造することが可能となる。
すなわち、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料は、残留応力が高いことと、さらに炭素が化学的に安定であることから異種材と接着しにくく、基板との密着性に乏しいことが知られており、これに対し、SiC膜を接着層とすることにより、結晶基板を十分に湾曲することができるように、結晶基板とダイヤモンドライクカーボンとの密着性を確保していた。
しかしながら、SiC膜の蒸着の際に用いるTMSガスなどのSiC前駆体ガスは、それ自体高価である上、これらのガスの多くは発火性を有し、非常に高価な安全装置を用意してその危険性を回避していたため、コストが増大してしまうという問題があった。
その結果、本発明者らは、結晶基板上にダイヤモンドライクカーボンなどの炭素系材料を強固に蒸着するにはSiC膜を中間層として設ける必要があるという従来の知見にも関わらず、結晶基板上に直接炭素系材料を蒸着した場合であっても、結晶基板上に炭素系材料を、所望の湾曲結晶を得るのに十分強固に蒸着することができるという新規知見を得た。
本発明の湾曲結晶の製造方法は、結晶基板上に炭素系材料を直接蒸着して、前記結晶基板を湾曲させる工程を含むことを特徴とする。
これにより、TMSガスのようなSiC前駆体ガスを用いることなく、低コストで湾曲結晶を製造することができる。
ここで、「炭素系材料」とは、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、グラファイト、グラフェン、カーボンナノファイバーなどの、炭素を主成分として含む材料をいう。
ダイヤモンドライクカーボンは、高硬度であるため本発明の製造方法に用いる炭素系材料として適しており、また、既知の低コストの手法によって蒸着することができるからである。
ここで、「ダイヤモンドライクカーボン」とは、ダイヤモンド構造に対応するsp3結合を有する炭素と、グラファイト構造に対応するsp2結合を有する炭素とが不規則に混在したアモルファス構造のカーボンをいい、例えば、テトラヘドラルアモルファスカーボン、アモルファスカーボン、水素化アモルファスカーボン、水素化テトラヘドラルアモルファスカーボンなどが挙げられる。
炭素系材料の蒸着は、様々な方法で行うことができ、CVDやPVDにより炭素系材料を低コストで蒸着することができる。
プラズマ化学気相成長法によれば、特に低コストで、大口径の結晶基板蒸着が可能であり、また、原料にガスを用いるため均一な炭素系材料の蒸着が可能であるからである。
本発明の製造方法により製造された湾曲結晶は、湾曲形状の乱れが小さいものである。
図1は、結晶基板に炭素系材料を蒸着させる様子を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の湾曲結晶の製造方法は、プラズマCVD(chemical vapor deposition)装置1を用いて行い、まず、チャンバ2内部に結晶基板3を配置する。
ここで、プラズマCVD装置1は、既知の装置を用いることができ、本実施形態では、最初に、チャンバ2内を室温程度の低温下におく。
ここで、結晶基板3の材料については、本実施形態及び後述の実施例では、Si単結晶基板を用いた例とGe単結晶基板を用いた例について説明するが、特には限定せず、例えば、他に、サファイアなどからなる、単結晶又は多結晶の基板を用いることもできる。
ここで、本実施形態では、結晶基板3は、直径300mm程度までの大口径のものを用いることができる。
次に、本実施形態では、チャンバ2内を放電清浄する。
具体的には、チャンバ2内に、4.0〜6.0Paの一定の圧力でアルゴンガスを導入し、電極4にDC電圧を印加してアルゴンガスをプラズマ化することにより、プラズマ化したアルゴンイオンの物理的な衝撃により結晶基板に付着した汚染層を除去することができる。
ここで、特には限定しないが、例えば、4kVで10kHzの低周波DCパルス電圧を供給して、0.3〜1.0Aの電流パルスを形成することが好ましい。
また、アルゴンガスの流速は、28〜30sccm(0.047〜0.051Pa・m3/s)とすることが好ましい。
さらに、この放電清浄工程は、例えば、10分間程度行うことが好ましい。
なお、本発明では、このように、結晶基板に付着した汚染層を除去するために、放電清浄工程を行うことが好ましいが、放電清浄を行わない場合も含むものとする。
そして、放電清浄工程は、アルゴンガスの代わりに、一般的に放電清浄工程で用いられる他の種類のガスを用いて行うこともでき、あるいは、他の種類のガスを併用することもできる。例えば、アルゴンガスと水素ガスとを併用することにより、アルゴンイオンによる物理的衝撃のみならず、水素イオンによる酸化物の還元作用による化学的なエッチング効果により汚染層を除去することができる。
具体的には、真空チャンバ内にC2H2(アセチレン)ガスを28〜30sccm(0.047〜0.051Pa・m3/s)の流速で流入し続ける。
そして、電極4に、例えば、特には限定しないが5kVで、10kHzの低周波DCパルス電圧を供給して、0.5〜0.7Aの電流パルスを形成して、C2H2ガスをプラズマ化する。
これによりアセチレンガスが分解され、ダイヤモンドライクカーボンがSi単結晶基板上やGe単結晶基板上に堆積し、ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されていく。
ここで、ダイヤモンドライクカーボンの堆積速度は、19〜20nm/minとすることが好ましく、ダイヤモンドライクカーボンの堆積厚さは、1000〜5000nmとすることが好ましい。なお、ダイヤモンドライクカーボンの堆積速度は、印加電圧の大きさと、アセチレンガスの流速を制御することによって制御することができる。
ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚に応じて、湾曲結晶の曲率を制御することができ、結晶基板の厚さにもよるが、40〜640mmの範囲に制御することができる。たとえば、Si単結晶基板の厚さが50μmの場合は、ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚(堆積厚さ)を上記の範囲とすることにより、曲率半径を40〜160mmの範囲に制御することができる。
ここで、本実施形態では、ダイヤモンドライクカーボンの原料としてアセチレンガスを用いたが、炭素系材料の原料ガスとしては、他にも、例えばメタンやベンゼンのガスなどを用いることができる。
図2に示すように、本実施形態によれば、ダイヤモンドライクカーボンの堆積中、Si結晶基板やGe結晶基板と、ダイヤモンドライクカーボン膜との間に発生する残留応力により、結晶基板3が、ダイヤモンドライクカーボンが蒸着する側に凸に湾曲していく。
後述の実施例で説明するように、結晶基板の種類や径によらず、湾曲結晶の曲率半径は、ダイヤモンドライクカーボンの膜厚にほぼ反比例するため、所定の膜厚となるまでダイヤモンドライクカーボンを蒸着することにより、所期した曲率を有する湾曲結晶を得ることができる。
特に、TMSガス等のSiC前駆体ガスを用いないため、高価な安全装置を必要とせず、安全かつ低コストでの湾曲結晶の製造が可能となる。
さらに、本実施形態の製造方法によれば、ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚を制御することにより、所望の曲率を有する大口径の湾曲結晶を得ることができる。特にSiCを蒸着しないため、SiC膜が介在することによる物理的要因を考慮する必要がなく、曲率の制御が容易となる。
このように、本実施形態の製造方法により得られる湾曲結晶は、湾曲形状の乱れが小さく、理想的な湾曲形状となる。また、後述の実施例で詳細に説明するように、たとえば、X線分析への用途において、湾曲させても、高いX線反射率、積分反射率、偏光感度を有する。そのため、本発明の製造方法により得られる湾曲結晶は、優れたX線分光素子、X線偏光素子、X線光学素子などとして使用することができる。
化学気相成長法としては、本実施形態で説明したプラズマCVD法の他、熱CVD法や光CVD法などを用いることができる。
また、物理気相成長法としては、例えば、スパッタリング法、アークイオンプレーティング法、イオン蒸着法、イオンビーム法、レーザアブレーション法などを用いることができる。
特に、本発明では、炭素系材料の蒸着中に結晶基板が湾曲するため、湾曲した基板上に均一な膜を蒸着することのできる、プラズマCVD法を用いることが好ましい。
本発明の製造方法により得られる湾曲結晶の湾曲形状について評価するため、以下のように、プラズマCVD装置を用いて、Si湾曲単結晶を製造した。
まず、チャンバ(サイズ:径600mm×高さ600mm、堆積エリア:径300mm×高さ300mm)内の上記堆積エリア内に、直径200mm、厚さ75μmのSi(100)単結晶基板を配置した。チャンバ内の温度は、常温とした。
次に、チャンバ内部を、7×10−4Pa以下まで減圧し、真空化した。
そして、チャンバ内に、4.5〜5.0Paの一定の圧力、および、30sccm(5.1×10−3Pa・m3/s)の流速でアルゴンガスを導入し、プラズマCVD装置の電極に、電圧4kVで、10kHzの低周波DCパルス電圧を供給して、0.4Aの電流パルスを形成し、流入したアルゴンガスをプラズマ化して、10分間放電清浄を行った。
ここで、ダイヤモンドライクカーボンの堆積速度は、20nm/minとし、ダイヤモンドライクカーボンの堆積厚さが2400nmとなるまで120分間堆積を続けた。
ダイヤモンドライクカーボンの蒸着により、Si(100)結晶基板と、ダイヤモンドライクカーボン膜との間に発生した残留応力によって、Si(100)単結晶基板が湾曲し、Si(100)単結晶からなる湾曲結晶が得られた。
この評価結果を図3および図4に示している。
図3において、得られたデータから破線で示すように円弧による近似でフィッティングを行い、図4に示すように、−7.5mm〜7.5mmの範囲における、上記フィッティングの残差を求めた。ここで、横軸において、「測定場所」とは、湾曲後の結晶を水平投影した位置を示すものであり、湾曲後の湾曲結晶の中心(曲がった一番底の部分)の位置を0mmとした基準で示すものである。
なお、レーザ変位計により測定を行った結果から、曲率半径を求めたところ、この厚さ75μmのSi(100)湾曲単結晶の曲率半径は、約150mmであった。
図3、図4に示すように、本発明の製造方法により得られた湾曲結晶は、平均残差0.1μm以下であり、表面を断面視した際に、ほぼ理想的な円弧状に湾曲していることがわかる。なお、どの断面で見ても同様の結果であった。
このことから、本発明によれば、接着層としてSiC等の中間層を用いずとも、ほぼ理想的な湾曲形状を有する湾曲結晶を得ることができることがわかる。
次に、本発明の製造方法により、湾曲結晶の曲率をダイヤモンドライクカーボンの膜厚によって制御することができることを確認するため、ダイヤモンドライクカーボンの膜厚、および、結晶基板の種類、厚さを変えて湾曲結晶を製造し、その曲率半径を測定した。
ここで、実施例2において、ダイヤモンドライクカーボンの膜厚および結晶基板の種類、厚さ以外の条件は、上記の実施例1と同様の条件で湾曲結晶を製造した。
また、曲率半径は、キーエンス社製LT−8100(精度0.1μm)を用いて、湾曲結晶の表面形状を測定することにより行った。
そして、以下に示す湾曲結晶の曲率半径の理論式(数1)との比較により、曲率制御性を評価した。ただし、当該理論式において、ρ:湾曲結晶の曲率半径(mm)、σ:残留応力(GPa)、E:結晶のヤング率(Si:130(GPa)、Ge:103(GPa))、ν:結晶のポアソン比(Si:0.28、Ge:0.28)、t:結晶の厚さ(mm)、d:ダイヤモンドライクカーボンの膜厚(mm)である。
評価結果を図5に示す。なお、図5において、縦軸を曲率半径(mm)、横軸をダイヤモンドライクカーボンの膜厚(nm)とし、共に対数表示している。また、図5において、各直線は、上記理論式に基づくものである。
なお、残留応力を測定した結果は、Si(100)では0.5GPa程度、Ge(111)では0.4GPa程度であった。
従って、本発明の湾曲結晶の製造方法は、湾曲形状(曲率)の制御性に非常に優れていることがわかる。
次に、本発明の製造方法によって得られる湾曲結晶を用いて、非特許文献1(Figure 8)に記載の測定システムにより、X線反射率を計測し、X線分析への応用性を評価した。
ここで、湾曲結晶は、Ge(111)結晶およびSi(100)結晶を用い、ダイヤモンドライクカーボンの膜厚を制御することにより、Ge(111)結晶については、曲率半径が245mm、157mmの2種類の湾曲結晶を作製し、Si(100)結晶については、曲率半径が285mm、167mmの2種類の湾曲結晶を作製した。その他の製造条件は、実施例1と同様である。
また、比較対象として、湾曲していない平坦なGe(111)結晶およびSi(100)結晶も用意した。
また、X線ビームとしては、Ge(111)の<333>反射を用いた2結晶分光器により得られる、完全偏光のCuKα線(約8.0keV)を用いた。
評価結果を図6、図7に示している。
従って、湾曲結晶の曲率半径が小さくなるにつれ、角度幅が大きくなり、エネルギー帯域が広がることがわかる。
すなわち、本発明の製造方法によれば、湾曲結晶の曲率半径を制御して、その曲率半径に応じた反射幅を有する湾曲結晶を得ることができることがわかる。
次に、Ge(111)結晶とSi(100)結晶を用いて、本発明の製造方法により、ダイヤモンドライクカーボンの膜厚を変えて曲率を様々に変えた湾曲結晶を製造した。
なお、ダイヤモンドライクカーボンの膜厚と基板の種類を増やしたこと以外については、実施例1と同様の条件で湾曲結晶の製造を行った。
そして、これらの湾曲結晶を用いて、上記非特許文献1(Figure 8)に記載の測定システムにより、それぞれの湾曲結晶の積分反射率(全方位からの一様な強度の入射光量の総和に対する、全方位に反射した光量の総和の比)を求めた。
Ge(111)結晶の<111>反射と<333>反射、Si(100)結晶の<400>の積分反射率について、図8に評価結果を示しており、縦軸および横軸を対数表示している。積分反射率は大きいほど、湾曲結晶全体としてのX線の反射性能が良いことを示す。
図8に示すように、本発明の製造方法により得られた湾曲結晶によれば、積分反射率は、曲率半径が小さくなるにつれて単調増加していることがわかる。
また、図8に、「X線回折における湾曲結晶の積分反射能の計算」(石田秀信著、JST資料番号:0302A)によるモデル式に基づく理論曲線を実線で図示しており、この理論曲線とも良く整合していることがわかる。
このことから、本発明の製造方法によれば、湾曲結晶の曲率に応じて、積分反射率をほぼ理論値どおりの値とすることができ、より具体的には、曲率半径を小さくすることにより積分反射率を増加させることができることがわかる。そして、実施例2にて説明したように、湾曲結晶の曲率は、ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚を制御することにより、容易に、かつ、高精度に制御することができる。
次に、非特許文献1(Figure 8)に記載の測定システムを用いて、実施例4で製造した湾曲結晶の偏光感度を求めた。
ここで、偏光感度の指標として、100%偏光を観測したときの変調の度合いである変調因子(Modulation Factor)Mを用いた。
変調因子Mは、1以下の値となり、数値が大きい方が、偏光度が小さいX線に対しても、変調が大きく、偏光に対する検出性能が大きいことを示す。
この評価結果を図9に示している。
図9に示すように、Ge(111)結晶の<111>反射、Si(100)結晶の<400>反射のいずれの場合も、曲率半径を300mm以下とすることにより高い変調因子が得られることがわかる。
また、上記の「X線回折における湾曲結晶の積分反射能の計算」(石田秀信著、JST資料番号:0302A)によるモデル式を拡張した理論曲線を実線で図示しており、この理論曲線とも良く整合していることがわかる。
このことから、本発明の製造方法により得られた湾曲結晶を用いると、たとえば、X線分析への用途において、優れたX線偏光素子として、偏光検出性能を制御性良く向上させることができることがわかる。
また、湾曲させても、高いX線反射率、積分反射率、偏光感度を有するため、X線分析や放射光施設への用途に用いることもでき、X線偏光素子、X線分光素子、X線光学素子などへの応用、例えば、ブラッグ反射偏光計の光学素子として次世代X線天文衛星への搭載などが期待できる。
2 チャンバ
3 結晶基板
4 電極
Claims (5)
- 結晶基板上に炭素系材料を直接蒸着して、前記結晶基板を湾曲させる工程を含むことを特徴とする、湾曲結晶の製造方法。
- 前記炭素系材料は、ダイヤモンドライクカーボンである、請求項1に記載の湾曲結晶の製造方法。
- 前記蒸着は、化学気相成長法又は物理気相成長法により行う、請求項1又は2に記載の湾曲結晶の製造方法。
- 前記蒸着は、プラズマ化学気相成長法により行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の湾曲結晶の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の湾曲結晶の製造方法により製造されたことを特徴とする湾曲結晶。
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