JP2014105341A - 耐硫酸腐食性、耐粒界腐食性および表面性状に優れるFe−Ni−Cr系合金およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Fe−Ni−Cr系合金の粗溶鋼を脱炭精錬した後、Siを添加してCr還元と予備脱酸し、次いでAl、石灰および蛍石を添加してCaO−SiO2−Al2O3−MgO−F系スラグを生成させて脱酸、脱硫処理を施した後、Nbを添加して、mass%で、C:0.001〜0.07%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:30〜40%、Cr:18〜23%、Mo:1〜5%、Cu:1〜5%、Nb:0.2〜1%、Al:0.01〜0.5%、Mg:0.0001〜0.01%、Ca:0.0001〜0.01%、O:0.0001〜0.01%の成分組成で、非金属介在物がCaO−MgO−Al2O3系、MgOおよびMgO・Al2O3のうちの1種または2種以上のみからなる合金を得る。
【選択図】なし
Description
上記合金板から板厚×25mm×20mmの試験片を採取し、全面をSiC研摩紙(#400)で湿式研摩し、乾燥し、試験片の質量を測定した後、フラスコ内の40mass%H2SO4沸騰水溶液中に24hr浸漬する腐食試験を行った。試験終了後、試験片を取り出し、洗浄し、乾燥し、再び試験片の質量を測定し、試験前後における質量減少量から、腐食度(g/m2・hr)を算出した。その結果、上記腐食度が2以下のものは耐硫酸腐食性が良好(○)、2を超えるものは耐硫酸腐食性が劣る(×)と評価した。
<耐粒界腐食性>
上記合金板から板厚×25mm×20mmの試験片を採取し、全面をSiC研摩紙(#80)で湿式研摩し、乾燥し、試験片の質量を測定した。その後、ASTM A262 PracticeBに準じて、236mlのH2SO4と400mlの蒸留水を混合した溶液に25gのFe2(SO4)3を溶解した、フラスコ内のFe2(SO4)3−H2SO4の沸騰水溶液中に120hr浸漬する腐食試験を行った。試験終了後、試験片を取り出して洗浄し、乾燥させた後、試験片を切断し、断面における最大粒界侵食深さを光学顕微鏡にて測定した。その結果、最大粒界侵食深さが50μm以下のものは耐粒界腐食性が良好(○)、50μmを超えるものは耐粒界腐食性が劣る(×)と評価した。
実験は、まず、前記実験結果に基き、Fe−0.5mass%Mn−33mass%Ni−20mass%Cr−2.6mass%Mo−3mass%Cu合金を高周波誘導溶解炉でマグネシア坩堝を用いて溶解した後、その溶融合金の上に、実機での精錬を考慮して、各種特級試薬を配合して60mass%CaO−5mass%SiO2−20mass%Al2O3−10mass%MgO−F系スラグを形成した。次いで、Siを0.5mass%添加して予備脱酸し、あるいは、上記Siを添加し、さらにAlを0.005〜0.6mass%の範囲で変化させて添加して(Si+Al)脱酸した後、Nbを0.5mass%を目標として添加し、5分間放置した後、鋳型に鋳込んで20kg鋼塊とした。次いで、前述した実験と同様、鍛造し、冷間圧延して板厚2mmの合金板とした。これらの合金板について、Nbの歩留まり、非金属介在物の成分組成および合金板表面の疵発生有無を、下記の要領で調査した。
鋼塊中のNb濃度を測定し、添加したNbの歩留りを100%と仮定したときの鋼塊中のNb濃度に対する比(百分率)を求め、Nbの歩留りとした。
<非金属介在物組成>
上記合金板から切り出したサンプルのL方向断面を鏡面研摩し、観察された介在物の成分組成を、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDS)を用いて分析した。
<表面疵の発生有無>
上記合金板表面に発生した疵の有無を目視観察して判定した。
本発明は、上記の知見に基いて開発したものである。
C:0.001〜0.07mass%
Cは、オーステナイトを安定化する元素であり、所望の合金強度を確保するのに必要な元素であり、要求される強度に応じて、0.001mass%以上を含有させる。しかし、0.07mass%を超えて過剰に添加すると、Cr,Mo,Nbと炭化物を形成して合金を鋭敏化し、耐食性を低下させる。よって、Cの含有量は0.001〜0.07mass%の範囲とする。好ましくは0.005〜0.03mass%の範囲である。
Siは、脱酸材として添加される元素であり、また、耐酸性や耐粒界腐食性の向上にも有効な元素であるので、本発明では0.1mass%以上を含有させる。しかし、1.0mass%を超える添加は、Fe,Cr,Moから構成されるシグマ相の生成を促進し、脆化を引き起こしたり、溶接性を低下させたりする。よって、Siの含有量は0.1〜1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.2〜0.7mass%の範囲である。
Mnは、脱酸材として有効な元素であるので、0.1mass%以上を添加する。しかし、2.0mass%を超える過剰な添加は、Siと同様、シグマ相の生成を促進し、脆化を引き起こす。よって、Mnの含有量は0.1〜2.0mass%の範囲とする。好ましくは0.2〜0.9mass%の範囲である。
Niは、オーステナイト組織を安定化するために不可欠な元素である。また、Niは、塩化物を含む溶液環境における耐孔食性、耐隙間腐食性ならびに耐応力腐食割れ性を改善する効果を有する。斯かる効果を得るためには、30mass%以上の添加が必要である。しかし、40mass%を超える添加は、その効果が飽和し、原料コストの上昇を招く。よって、Niは30〜40mass%の範囲とする。好ましくは32〜36mass%の範囲である。
Crは、耐食性を確保するのに必要な不動態皮膜を合金板表面に形成させる元素であり、耐酸性、耐孔食性、耐隙間腐食性ならびに耐応力腐食割れ性を改善するための母材の構成成分として不可欠の元素でもある。斯かる効果を得るためには、18mass%以上の添加が必要である。しかし、23mass%を超える過剰の添加は、シグマ相を生成し、脆化を招く。よって、Crの含有量は18〜23mass%の範囲とする。好ましくは19〜22mass%の範囲である。
Moは、耐酸性や、耐孔食性、耐隙間腐食性、耐応力割れ性といった耐食性を改善するために不可欠な元素であり、1mass%以上の添加を必要とする。しかし、5mass%を超える添加は、シグマ相の生成を促進し、母材を脆化させる。よって、Moの含有量は1〜5mass%の範囲とする。好ましくは1.5〜3mass%の範囲である。
Cuは、耐硫酸腐食性を改善するために必要な元素であり、その効果は1mass%以上の添加で得られる。しかし、5mass%を超えて過剰に添加すると、熱間加工性を低下させ、鍛造や熱間圧延において割れを発生させる。よって、Cuの含有量は1〜5mass%の範囲とする。好ましくは1.5〜4mass%の範囲である。
Nbは、Cを固着することによって耐粒界腐食性を改善するのに有効な元素であり、その効果は0.2mass%以上の添加で得られる。しかし、1mass%を超える過剰な添加は、Cuと同様、熱間加工性を低下させ、鍛造や熱間圧延において割れを発生させる。よって、Nbの含有量は0.2〜1mass%の範囲とする。好ましくは0.2〜0.6mass%の範囲である。
Alは、脱酸材として、また、スラグ中のMgO,CaOを還元して、溶融合金中にMgを0.0001〜0.01mass%、Caを0.0001〜0.01mass%供給するために添加される必須元素であり、本発明においては特に重要な元素である。というのは、後述するように、MgとCaは、非金属介在物の成分組成を適正範囲に制御し、表面疵の発生を防止するために有効に作用する元素であるからである。Alの添加量が0.01mass%未満では、脱酸不足のためO濃度が0.01mass%を超えて高くなり、Nbの歩留まりを低下させてしまう。一方、0.5mass%を超えて添加すると、MgO,CaOの還元が進行し過ぎて、Mg,Ca濃度が0.01mass%を超えて高くなり、非金属介在物の成分組成が本発明の範囲から逸脱し、表面疵発生の原因となる。よって、本発明では、Alの含有量を0.01〜0.5mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.3mass%の範囲である。
Mgは、非金属介在物を、CaO−MgO−Al2O3系、MgOおよびMgO・Al2O3のうちの1種または2種以上のみからなる成分組成に制御することによって、表面疵の発生を防止するのに有効な元素である。上記効果は、0.0001mass%未満の添加では得られず、一方、0.01mass%を超えて添加すると、連続鋳造時のノズル閉塞を招いて操業を阻害したり、鋼スラブ中にMg起因の気泡欠陥を発生させ、表面疵を発生させたりする。よって、Mgの含有量は0.0001〜0.01mass%の範囲とする。好ましくは0.0001〜0.006mass%の範囲である。
Caは、Mgと同様、非金属介在物を、CaO−MgO−Al2O3系、MgOおよびMgO・Al2O3のうちの1種または2種以上のみからなる成分組成に制御することによって、表面疵の発生を防止するのに有効な元素である。上記効果は、0.0001mass%未満の添加では得られず、一方、0.01mass%を超えて添加すると、CaO−MgO−Al2O3系介在物中のCaO成分が50mass%を超えてCaO主体となる。その結果、連続鋳造時にノズル閉塞を引き起こし、却って、表面疵を発生させる原因となってしまう。よって、Caの含有量は0.0001〜0.01mass%の範囲とする。好ましくは0.0001〜0.006mass%の範囲である。
O(酸素)は、通常、鋼中に酸化物として存在する元素であり、Nb添加鋼においては、0.01mass%を超えると、Nbを酸化して非金属介在物中にNb2O5のみからなる介在物が存在するようになり、表面疵を発生する。しかし、Oが0.0001mass%未満になると、スラグ中に存在するMgOやCaOが還元されて、溶鋼中のMg,Ca濃度がともに0.01mass%を超えてしまい、連続鋳造時のノズル閉塞を招いて、換業を阻害したり、表面疵を発生させたりする原因となる。よって、Oの含有量は0.0001〜0.01mass%の範囲とする。好ましくは0.0001〜0.002mass%の範囲である。なお、上記範囲内への酸素濃度の調整は、後述するように、Alの添加量を適正範囲に制御することでなされる。
B:0.005mass%以下
Bは、熱間加工性を改善する元素であるが、過剰に添加すると、逆に、熱間での延性を阻害する。そのため、Bを添加する場合は、0.005mass%以下とするのが好ましい。
本発明のFe−Ni−Cr系合金は、その成分組成を上記範囲内に制御することによって、十分な耐硫酸腐食性、耐粒界腐食性が確保される。しかし、表面性状にも優れたものとするには、併せて非金属介在物の成分組成を適正範囲に制御する必要がある。
すなわち、本発明の合金中に含まれる非金属介在物は、CaO−MgO−Al2O3系、MgO、MgO・Al2O3のうちのいずれか1種または2種以上のみからからなるものであることが必要である。すなわち、表面疵を発生させ、表面品質を著しく低下させるNb酸化物(Nb2O5)が存在しないことが必要である。望ましくは、上記Nb2O5の他に、クラスターを形成して表面品質の低下をもたらすAl2O3のみからなる介在物も存在しないことが好ましい。
ここで、上記CaO−MgO−Al2O3系介在物が凝集して大型化するのをより防止するためには、CaO:10〜50mass%、MgO:5〜70mass%、Al2O3:10〜60mass%であることが好ましい。
また、MgO・Al2O3の介在物は、MgO濃度が5mass%未満(Al2O3濃度が95mass%超)となると、介在物の特性が急激にアルミナ質に変化し、鋼板表面にクラスター起因の表面疵を発生させるようになるので、MgO≧5mass%(Al2O3≦95mass%)であることが好ましい。
本発明のFe−Ni−Cr系合金は、粗溶鋼を溶製した後、酸素吹精して脱炭精錬し、Si合金鉄を添加してCr還元および予備脱酸し、次いで、Alを添加し、さらに石灰および蛍石を添加してCaO−SiO2−Al2O3−MgO−F系スラグを生成させて脱酸および脱硫処理した後、Nbを添加することにより製造するのが最良の方法である。
3(MgO)+2Al=(Al2O3)+3Mg
3(CaO)+2Al=(Al2O3)+3Ca
(括弧( )内はスラグ中成分を、下線部は溶融合金中成分を示す。)
また、上記スラグの成分組成は、スラグサンプルを取鍋から採取し、粉砕してタブレットにして蛍光X線分析装置を用いて分析した値である。なお、表3に示したスラグ組成の合計が100mass%に満たない理由は、微量のCrやFe等が含まれているためである。
また、スラブ中のNb濃度を測定し、添加したNbの歩留りを100%と仮定したときのスラブ中のNb濃度に対する比を求め、その結果は、後述する表4中に、Nbの歩留りとして示した。
<非金属介在物組成>
上記合金板から切り出したサンプルのL方向断面を鏡面研摩し、観察された介在物からランダムに20点(n=20)選択し、EDSを用いて定量分析した。
<表面疵の発生有無>
上記合金板表面を目視で観察し、0.1mm幅以上の線状疵の発生が確認されなかった場合は表面性状が良好(○)、確認された場合は表面性状に劣る(×)と判定した。
<耐硫酸腐食性>
上記合金板から板厚×25mm×20mmの試験片を採取し、全面をSiC研摩紙(#400)で湿式研摩し、乾燥し、試験片の質量を測定した後、フラスコ内の40mass%H2SO4沸騰水溶液中に24hr浸漬する腐食試験を行い、試験終了後、試験片を取り出し、洗浄し、乾燥し、再び試験片の質量を測定し、試験前後における質量減少量から、腐食度(g/m2・hr)を算出した。その結果、上記腐食度が2以下のものは耐硫酸腐食性が良好(○)、2を超えるものは耐硫酸腐食性が劣る(×)と評価した。
<耐粒界腐食性>
上記合金板から板厚×25mm×20mmの試験片を採取し、全面をSiC研摩紙(#80)で湿式研摩し、乾燥し、試験片の質量を測定した。その後、ASTM A262 PracticeBに準じて、236mlのH2SO4と400mlの蒸留水を混合した溶液に25gのFe2(SO4)3を溶解した、フラスコ内のFe2(SO4)3−H2SO4の沸騰水溶液中に120hr浸漬する腐食試験を行った。試験終了後、試験片を取り出して洗浄し、乾燥させた後、試験片を切断し、断面における最大粒界侵食深さを光学顕微鏡にて測定した。その結果、最大粒界侵食深さが50μm以下のものは耐粒界腐食性が良好(○)、50μmを超えるものは耐粒界腐食性が劣る(×)と評価した。
この結果から、本発明の条件にすべて適合するNo.1〜8の発明例の合金は、いずれも表面疵の発生もなく、耐食性も良好であり、また、Nbの歩留まりも100%である。
これに対して、Cu,Nb,Al,Mg,CaおよびOのいずれか1以上の組成が本発明の範囲を逸脱しているNo.9〜14の比較例の合金は、表面疵が発生するか、あるいは、耐食性に劣る結果となっている。
具体的に説明すると、No.9および10は、Alを添加せず、O濃度が高かったため、Nbが、歩留まり低下により0.2mass%に満たず、さらに、Mg,Caも0.0001mass%に満たないため、Nb2O5介在物が生成し、その結果、表面疵が発生し、耐粒界腐食性にも劣っている。No.11は、Alの添加量が少なく、O濃度が高かったため、Nbが、歩留まり低下により0.2mass%に満たず、さらに、Nb2O5介在物が生成したため、表面疵が発生し、耐粒界腐食性にも劣っている。No.12は、同じくAlの添加量が少なく、O濃度が高かったため、Nbが0.2mass%に満たず、さらに、Mg,Caも0.0001mass%に満たないため、CaO−MgO−Al2O3系介在物中のAl2O3が93.7mass%と高く、Al2O3介在物も生成したため、表面疵が発生し、耐粒界腐食性も劣っている。逆に、No.13は、Alが高過ぎたためにO濃度が0.0001mass%よりも低くなり、MgとCaの含有量が本発明の上限を超えたため、CaO−MgO−Al2O3系介在物中のCaOが92.3mass%と高く、CaO主体になったため、連続鋳造時にノズル閉塞を起こし、取鍋に溶鋼を5トン残して鋳込を中断せざるを得なかった。そのため、鋳造できたものも表面疵が発生している。また、No.14は、Cuの添加量が低いため、耐粒界腐食性に劣っている。
Claims (5)
- C:0.001〜0.07mass%、Si:0.1〜1.0mass%、Mn:0.1〜2.0mass%、Ni:30〜40mass%、Cr:18〜23mass%、Mo:1〜5mass%、Cu:1〜5mass%、Nb:0.2〜1mass%、Al:0.01〜0.5mass%、Mg:0.0001〜0.01mass%、Ca:0.0001〜0.01mass%およびO:0.0001〜0.01mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
合金中に含まれる非金属介在物が、CaO−MgO−Al2O3系、MgOおよびMgO・Al2O3のうちのいずれか1種または2種以上のみからなるFe−Ni−Cr系合金。 - 上記成分組成に加えてさらに、B:0.005mass%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載のFe−Ni−Cr系合金。
- 上記CaO−MgO−Al2O3系介在物は、CaO:10〜50mass%、MgO:5〜70mass%およびAl2O3:10〜60mass%の成分組成を有することを特徴とする請求項1または2に記載のFe−Ni−Cr系合金。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の合金の製造方法であって、
Fe−Ni−Cr系合金の粗溶鋼を酸素吹精して脱炭精錬した後、
Siを添加してCr還元および予備脱酸し、次いで、
Alを添加しさらに石灰および蛍石を添加してCaO−SiO2−Al2O3−MgO−F系スラグを生成させて脱酸および脱硫処理を施した後、
Nbを添加することを特徴とするFe−Ni−Cr系合金の製造方法。 - 上記CaO−SiO2−Al2O3−MgO−F系スラグは、CaO:40〜75mass%、SiO2:30mass%以下、Al2O3:2〜25mass%、MgO:2〜20mass%およびF:1〜10mass%の成分組成を有することを特徴とする請求項4に記載のFe−Ni−Cr系合金の製造方法。
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