JP2016115681A - リチウム電池用負極層、リチウム電池 - Google Patents

リチウム電池用負極層、リチウム電池 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウム電池を構成する負極層の充放電時の体積変化を小さくするのに有効な技術を提供する。【解決手段】本発明にかかるリチウム電池用負極層としての負極層110は、リン酸リチウムオキシナイトライド系セラミックス材料からなる固体電解質層107に黒鉛粉末111が結着されることによって形成され、正極層106に含まれるリチウム複合酸化物をリチウム源とし固体電解質層107を通じて移動したリチウムイオンの保持及び放出が可能なリチウム保持部113を含む。【選択図】図2

Description

本発明は、リチウム電池を構成する負極層の構造に関する。
従来から、液系電池よりも高いエネルギー密度が得られ、電池内で可燃性の有機電解液を使用する必要が無く、且つ製造コストや生産性に優れるといった観点から、電解質に固体を用いる種々の電池の開発が進められている。この種の電池の一例が、例えば下記特許文献1に開示されている。この電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO)によって形成された正極層と、リン酸リチウムオキシナイトライドガラス電解質(LiPON)によって形成された固体電解質層と、金属リチウムによって形成された負極層と、を備えたリチウム電池として構成されている。このリチウム電池では、充電時に正極層からリチウムイオンが固体電解質を通じて負極層側へと移動して、固体電解質層と負極層との界面において金属リチウムが析出する。一方で、放電時には、充電時に析出した金属リチウムから生じたリチウムイオン、若しくは負極層を構成する金属リチウムから生じたリチウムイオンが、固体電解質層を通じて正極層側へと移動する。その結果、このような充放電の繰り返しの際のリチウムイオンの移動に伴って、負極層は層厚み方向に膨張したり収縮したりを繰り返すことによって体積変化する。
特開2013−105708号公報
上記構成のリチウム電池の場合、充電時の電流量が増えると固体電解質層と負極層との界面における金属リチウムの析出量が増える。このため、特に電流量が大きい状態で充放電が繰り返されると、負極層の体積変化が大きくなることに起因して負極層が固体電解質層から剥離し易くなる。その結果、充放電サイクル後の電池性能が低下するという問題が生じ得る。そこで本発明者は、この種のリチウム電池の負極構造について鋭意検討した。その検討の結果、本発明者は、充放電時において負極層の体積変化を小さく抑えた状態で多量のリチウムイオンの移動を可能とする負極構造を構築することに成功した。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、リチウム電池を構成する負極層の充放電時の体積変化を小さくするのに有効な技術を提供することである。
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係るリチウム電池用負極層は、リチウム複合酸化物を含む正極層と、酸化物系セラミックス材料からなり前記正極層に被着された固体電解質層と、を備えるリチウム電池において、固体電解質層を挟んで正極層とは反対側の固体電解質層表面に設けられる負極層である。このリチウム電池用負極層は、固体電解質層に、負極活物質である黒鉛粉末(黒鉛粒子)が結着されることによって形成されたリチウム保持部を含む。このリチウム保持部は、正極層に含まれるリチウム複合酸化物をリチウム源として固体電解質層を通じて移動したリチウムイオンの保持及び放出を可能とする。尚、ここでいう「リチウムイオンの保持」には、リチウムイオンを黒鉛粉末の内部での吸蔵によって保持する態様や、リチウムイオンを複数の黒鉛粉末同士の隙間に金属リチウムとして析出させることによって保持する態様が包含される。要するに、本発明では、固体電解質層に結着された黒鉛粉末の内部空間及び外部空間(空隙部分)の双方を利用して、リチウムイオンの保持及び放出が可能なリチウム貯蔵領域を形成することを1つの特徴としている。また、「リチウム保持部を含む負極層」なる態様には、負極層がリチウム保持部のみによって構成される態様や、負極層がリチウム保持部に加えて別の要素を含む複数の要素によって構成される態様が包含される。
上記構成のリチウム電池用負極層によれば、リチウム電池の充電時において、複数の黒鉛粉末同士の隙間に金属リチウムを析出させることができる。一方で、リチウムは黒鉛との化合物を形成して安定化することが知られており、固体電解質層にリチウムイオンとの親和性に優れた黒鉛粉末が結着されていると、充電時において、負極層側の固体電解質層表面から黒鉛粉末に金属リチウムがリチウムイオンとして吸い込まれて吸蔵される。すなわち、本発明では、固体電解質層に結着された黒鉛粉末の内部空間及び外部空間(空隙部分)の双方を利用して、リチウムイオンの保持及び放出が可能なリチウム貯蔵領域を形成することができる。この場合、黒鉛粉末の外部空間をリチウム貯蔵領域として利用することができる。また、負極層の厚み寸法が黒鉛粉末の黒鉛骨格によって規定され、充電時においては、リチウムイオンを吸蔵する黒鉛粉末自体の体積変化が生じるものの、負極層の表面形状は殆ど変化せず、負極層の厚み寸法の範囲内においてリチウムイオンの保持及び放出を行うことができる。従って、充放電時における負極層の体積変化を小さくすることができ、負極層が固体電解質層から剥離し難くすることができるという効果を奏する。特に、リチウム保持部が、負極層の厚み方向における固体電解質層側の一部に形成される場合、すなわち、リチウム保持部が負極層の厚み方向全体にわたって形成されていない場合においてこのような効果が顕著である。
上記のリチウム電池用負極層では、リチウム保持部は、固体電解質層を通じて移動したリチウムイオンを保持するために、空隙率、即ちリチウム保持部の総体積に対する空隙部分の体積の比率が20%から50%までの範囲に属するように構成されるのが好ましい。本構成によれば、黒鉛粉末によって形成されたリチウム保持部の空隙部分を利用することによって、固体電解質層と負極層との界面のみを金属リチウムの析出スペースに利用する場合に比べて、充放電時の負極層の体積変化が小さくなる。
上記のリチウム電池用負極層では、リチウム保持部は、黒鉛粉末による可逆的な充放電量が負極全体での全充放電量の20%から70%までの範囲に属するように構成されるのが好ましい。これにより、全充放電量の20%から70%までに相当する充放電量を、黒鉛粉末におけるリチウムイオンの吸蔵及び放出を利用して賄うことができる。この場合、黒鉛粉末によるリチウムイオンの吸蔵容量が最大容量に達した後あるいは黒鉛粉末によるリチウムイオンの吸蔵と同時に、隙間での金属リチウムの析出を利用してリチウムイオンを保持することができる。その結果、黒鉛粉末のみによってリチウムイオンを保持する場合に比べて、充放電時における負極層の体積変化を小さくすることができる。
上記の固体電解質層は、酸化物系セラミックス材料の1つであるリン酸リチウムオキシナイトライド系セラミックス材料からなるのが好ましい。これにより、固体電解質層がリン酸リチウムオキシナイトライド系セラミックス材料からなるリチウム電池の負極層において、充放電時における負極層の体積変化を小さくすることができ、負極層が固体電解質層から剥離し難くすることができる。
本発明に係るリチウム電池は、リチウム複合酸化物を含む正極層と、酸化物系セラミックス材料からなり正極層に被着された固体電解質層と、固体電解質層を挟んで正極層とは反対側の固体電解質層表面に設けられる負極層と、を備える。このリチウム電池の負極層は、前述の各リチウム電池用負極層によって構成されるのが好ましい。これにより、負極層の充放電時の体積変化を小さくすることが可能なリチウム電池を提供することができる。
以上のように、本発明によれば、リチウム電池を構成する負極層の充放電時の体積変化を小さくすることが可能になった。
図1は、本発明にかかるリチウム電池100の積層構造を示す図である。 図2は、図1中のリチウム電池100のうち負極層110周辺の断面構造を模式的に示す図である。 図3は、図2において充電時にリチウムイオン(Li)が第1移動経路P1を通じて移動する様子を示す図である。 図4は、図2において充電時にリチウムイオン(Li)が第2移動経路P2を通じて移動する様子を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(リチウム電池)
図1に示されるように、板片状に構成されたチップ型のリチウム電池(以下、単に「リチウム電池」ともいう)100は、正極側集電層101、負極側集電層102、外装材103,104、集電板105、正極層106、固体電解質層107及び負極層110を含む。このリチウム電池100では、正極側集電層101、負極側集電層102及び外装材103,104によって区画された領域に、当該リチウム電池100の板厚方向Xについて正極側から順に集電板105、正極層106、固体電解質層107及び負極層110が積層配置されている。このリチウム電池100が本発明の「リチウム電池」に相当する。
(正極層)
正極層106は、主として層状岩塩構造を有するLiCoO(リチウム複合酸化物)からなり、特に複数の結晶面のうちミラー指数hklについての(104)面が板面と平行に配向された、コバルト酸リチウム配向焼結板として構成されるのが好ましい。この正極層106の表面は、Ti、Al及びZrからなる群から選択される少なくとも1種以上の添加元素を含む酸化物で被覆され得る。この正極層106には、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi等の元素が1種以上、更にドーピング又はそれに準ずる形態(例えば結晶粒子の表層への部分的な固溶、又は偏析)で微量添加されていてもよい。この正極層106が、本発明の「正極層」に相当する。
正極層106を製造する場合、先ず、Co原料(典型的には、Co(四酸化三コバルト)粒子)と、その配向促進剤としてのビスマス酸化物(典型的には、Bi粒子)とを含む未焼成のシート状のグリーンシートを作製するのが好ましい。この場合、Bi粒子の添加量は特に限定されないが、Co粒子及びBi粒子の全体量に対して、0.1〜30重量%とするのが好ましく、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。また、Co粒子の体積基準D50粒径は、0.1〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.3〜1.2μmである。Bi粒子の体積基準D50粒径は、0.1〜1.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5μmである。また、グリーンシートの厚さは100μm以下であり、好ましくは1〜60μm、より好ましくは5〜40μmである。なお、グリーンシートは、Co粒子の全部又は一部に代えて、CoO粒子及び/又はCo(OH)粒子を含んでなるものであってもよい。
グリーンシートの作製においては、(i)原料粒子を含むスラリーを用いたドクターブレード法、(ii)熱したドラム上へ原料を含むスラリーを塗布し、乾燥させたものをスクレイパーで掻き取る、ドラムドライヤーを用いた手法、(iii)原料粒子を含む坏土を用いた押出成形法等の方法を採用することができる。特に好ましいシート形成方法はドクターブレード法である。このドクターブレード法を用いる場合、可撓性を有する板(例えばPETフィルム等の有機ポリマー板)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体とし、この成形体と板とを剥離することにより、グリーンシートを作製すればよい。成形前にスラリーや坏土を調製するときには、無機粒子を分散媒に分散させ、バインダーや可塑剤等を適宜加えてもよい。また、スラリーは、粘度が500〜4000cPとなるように調製するのが好ましく、減圧下で脱泡するのが好ましい。
作製したグリーンシートを900〜1350℃で焼成することによって、(h00)面をシート面と平行に配向させたCo配向焼成板を得ることができる。焼成前のCo粒子は等方的な形態を有し、それ故グリーンシートは配向性を当初は有しないが、焼成によりCo粒子がCoOに相変態して粒成長する段階で配向が生じる(以下、CoOの配向粒成長という)。その際、Co粒子が、(h00)面(hは任意の整数、例えばh=2である)をシート面と平行に配向したCoOに変化した焼成中間体を一時的に経ることとなる。Coの酸化物は、900℃以上(例えば920℃以上)では、室温におけるCoで表されるスピネル構造からCoOの岩塩構造に相変態する。この焼成によりCoが還元されてCoOに相変態するとともに、シートが緻密化される。
そして、焼成後に焼成中間体の温度が下がる過程でCoOがCoに酸化される。その際、CoOの配向方位がCoに引き継がれることで、(h00)面がシート面と平行となるように配向された多数のCo粒子からなる配向焼成板が形成される。特に、ビスマス酸化物(典型的にはBi)の共存下ではCoOの配向粒成長が促進される。もっとも、グリーンシートがビスマス酸化物を含む場合には、この焼成時にビスマスは揮発してシートから除去される。グリーンシートの焼成温度は900〜1350℃であり、好ましくは1000〜1300℃、より好ましくは1100〜1300℃である。グリーンシートは上記焼成温度で1〜20時間焼成されるのが好ましく、より好ましくは2〜10時間である。例えば、焼成後の降温速度は、好ましくは10〜200℃/hであり、より好ましくは20〜100℃/hである。
CoOの配向粒成長には、100μm以下というグリーンシートの厚さが寄与している。厚さ100μm以下のグリーンシートにおいては、シート面内方向(厚さ方向と直交する方向)に比べて、厚さ方向に存在する材料の量が極めて少ない。このため、厚さ方向に複数個の粒子がある初期段階には、ランダムな方向に粒成長する。一方、粒成長が進行して厚さ方向の材料が消費されると、粒成長方向はシート面内の二次元方向(以下、面方向という)に制限されることになる。これにより、面方向への粒成長が確実に促進される。特に、グリーンシートを可能な限り薄く形成したり(例えば数μm以下)、あるいはグリーンシートが比較的厚め(最大で100μm程度、例えば20μm程度)の場合であっても粒成長を可能な限り大きく促進したりすることで、面方向への粒成長を確実に促進させることができる。
いずれにしても、焼成の際、表面エネルギーの最も低い結晶面をグリーンシートの面内に持つ粒子のみが選択的に面方向へ扁平状(板状)に粒成長することになる。その結果、グリーンシートの焼成により、アスペクト比が大きく、(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向したCoO板状結晶粒子を、その(h00)面をシート面と平行に配向して含む焼成中間体が得られる。その後、焼成中間体の温度が下がる過程でCoOがCoに酸化され、(h00)面がシート面と平行となるように配向された多数のCo粒子からなる配向焼成板が形成されるのは、前述したとおりである。
多数のCo粒子からなる配向焼成板は、独立した板状のシートである。「独立した」シートとは、焼成後に他の支持体から独立して単体で取り扱い可能なシートのことをいう。「独立した」シートには、焼成により他の支持体(基板等)に固着されて当該支持体と一体化された(分離不能あるいは分離困難となった)ものは含まれない。こうして(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向した多数の粒子が結合した自立した配向焼成板が得られる。この自立板は、上述のような多数の粒子が隙間なく結合した、緻密なセラミックスシートとなり得る。
上記のCo配向焼成板をリチウム源の共存下で焼成してリチウムを導入し、それにより主としてLiCoOからなるコバルト酸リチウム配向焼結板を形成する。リチウム導入は、Co配向焼成板をリチウム化合物と反応させることにより行われるのが好ましい。
リチウム導入のためのリチウム化合物の例としては、(i)水酸化リチウム、(ii)炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム、クエン酸リチウム等の各種リチウム塩、(iii)リチウムメトキシド、リチウムエトキシド等の各種リチウムアルコキシド等が挙げられ、特に好ましくは水酸化リチウムである。リチウム導入する際の条件、例えば、混合比、加熱温度、加熱時間、雰囲気等は、リチウム源として用いる材料の融点や分解温度、反応性等を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、Co配向焼成板に、LiOH粉末の分散したスラリーを所定量塗布して乾燥させた後、加熱することにより、Co粒子にリチウムを導入することができる。このときの加熱温度は600〜880℃が好ましく、この範囲内の温度で2〜20時間加熱を行うのが好ましい。また、Co配向焼成板に付着させるリチウム化合物の量はLi/Co比で1.0以上とするのが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5である。Liが多すぎる場合であっても余剰分のLiは加熱に伴い揮発して消失するため問題は無い。
こうして得られるコバルト酸リチウム配向焼結板は、リチウム複合酸化物であるLiCoOを含み、LiCoOの(104)面が板面と平行に配向してなるものである。リチウムイオンの出入りが良好に行われる(104)面が配向焼結板の板面と平行となるように配向する。このため、この配向焼結板を正極活物質として用いて電池を構成した場合に、電解質に対する当該面の露出(接触)がより多くなるとともに、当該粒子や板の表面における(003)面(リチウムイオンの出入りに適さない面)の露出割合が極めて低くなる。従って、例えば、コバルト酸リチウム配向焼結板を固体型リチウム二次電池の正極材料として用いた場合に、高容量と高レート特性とを同時に達成することができる。
コバルト酸リチウム配向焼結板の厚さは、好ましくは5〜75μmであり、より好ましくは10〜60μmであり、さらに好ましくは20〜50μm、特に好ましくは20〜40μmである。また、コバルト酸リチウム配向焼結板のサイズは、好ましくは5mm×5mm平方以上、より好ましくは10mm×10mm〜100mm×100mm平方であり、さらに好ましくは10mm×10mm〜50mm×50mm平方であり、別の表現をすれば、好ましくは25mm以上、より好ましくは100〜10000mmであり、さらに好ましくは100〜2500mmである。
(固体電解質層)
固体電解質層107は、酸化物系セラミックス材料の1つであるリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)系セラミックス材料からなるのが好ましい。前記のコバルト酸リチウム配向焼結板の表面にこのセラミックス材料からなる固体電解質層107をスパッタリングにより形成して電池化するのが好ましい。このコバルト酸リチウム配向焼結板は、表面にLiPONからなる固体電解質層をスパッタリングにより形成して(被着されて)電池化した場合であっても電池性能の不具合を生じにくい。LiPONは、Li2.9PO3.30.46の組成によって代表されるような化合物群であり、例えばLiPO(式中、aは2〜4、bは3〜5、cは0.1〜0.9である)で表される化合物群である。従って、スパッタリングによるLiPON系固体電解質層の形成は、Li源、P源及びO源としてリン酸リチウム焼結体ターゲットを用いて、N源としてのガス種としてNを導入することにより公知の条件に従って行えばよい。スパッタリング方式は特に限定されないが、RFマグネトロン方式が好ましい。この固体電解質層107が本発明の「固体電解質層」に相当する。
固体電解質層107は、LiPON系セラミックス材料以外のその他の酸化物系セラミックス材料によって構成されてもよい。その他の酸化物系セラミックス材料としては、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、及びリン酸系セラミックス材料、ゼオライト系材料からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。ガーネット系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLaZr12など)、Li−La−Ta−O系材料も用いることができる。ペロブスカイト系セラミックス材料の例としては、Li−La−Ti−O系材料(具体的には、LiLa1−xTi(0.04≦x≦0.14)など)が挙げられる。リン酸系セラミックス材料の例としては、Li−Al−Ti−P−O,Li−Al−Ge−P−O、及びLi−Al−Ti−Si−P−O(具体的には、Li1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)など)が挙げられる。
(負極層)
図2に示されるように、負極層110は、リチウム電池100のうち、リン酸リチウムオキシナイトライド系セラミックス材料からなる固体電解質層107を挟んで正極層106とは反対側に設けられる。この負極層110は、層構造の積層体として構成されるのが好ましい。ここでいう負極層110が、本発明における「リチウム電池用負極層」に相当する。
この負極層110は、固体電解質層107のうち正極層106とは反対側の表面に複数の黒鉛粉末(黒鉛粒子)111が結着されることによって形成されたリチウム保持部113のみによって構成されている。リチウム保持部113は、負極層110のうち、正極層106に含まれるリチウム複合酸化物をリチウム源として固体電解質層107を通じて移動したリチウムイオンの保持及び放出が可能である。
複数の黒鉛粉末111には、結着部111aにおいて固体電解質層107の表面に結着された黒鉛粉末111が含まれる。それ以外の1又は複数の黒鉛粉末111は、固体電解質層107の表面に結着されている黒鉛粉末111に直接的或いは間接的に接続されている。この場合、複数の黒鉛粉末111が鎖形状或いは塊形状をなすことによって、固体電解質層107から長尺状に延びる、リチウムイオンのための移動経路が形成される。尚、結着部111aにおける黒鉛粉末111の結着について、黒鉛粉末111は、バインダーの接着力によって固体電解質層107に結着されてもよいし、或いは固体電解質層107との間の直接的な結合によって固体電解質層107に結着されてもよい。
黒鉛粉末111をバインダーの接着力によって固体電解質層107に結着させる場合、バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)などを用いることができる。黒鉛粉末111に対するバインダーの添加量は特に制限されないが、1wt%〜10wt%とすることができる。この場合、黒鉛粉末111どうしもバインダーの接着力によって結着される。
黒鉛粉末111を固体電解質層107に直接的に結着させるには、固体電解質107上に黒鉛粉末111を形成後、加圧することで圧密化し、固体電解質107と黒鉛粉末111の間に生じるアンカー効果を利用して結着させる手法を用いることができる。この場合、黒鉛粉末111どうしはバインダーによらず直接的に結着される。
ここでいうリチウム保持部113が本発明の「リチウム保持部」に相当する。
ところで、リチウムは黒鉛との化合物を形成して安定化することが知られている。このため、固体電解質層107にリチウムイオンの親和性に優れた黒鉛粉末111が結着されていると、充電時において、負極層110側の固体電解質層表面から黒鉛粉末111に金属リチウムがリチウムイオンとして吸い込まれて吸蔵される。
図3が参照されるように、リチウムイオン(Li)は、充電時において、例えば第1移動経路P1を通じて黒鉛粉末111の内部へと移動して吸蔵される。その結果、黒鉛粉末111は、結着部111aを通じて固体電解質層107から移動したリチウムイオン(Li)を粉末内部での吸蔵によって保持することができる。また、複数の黒鉛粉末111同士の隙間112は、リチウムイオン(Li)が金属リチウムとなって析出する析出空間として構成されている。このため、図4が参照されるように、リチウムイオン(Li)は、充電時において、例えば第2移動経路P2を通じて移動して隙間112において金属リチウム114となって析出する。その結果、リチウムイオンが隙間112にて保持される。
上述のように、本実施の形態のリチウム保持部113によれば、黒鉛粉末111によるリチウム吸蔵機能を利用することによって、充電時において隙間112に析出する金属リチウム114の析出量を少なく抑えることができる。また、黒鉛粉末111によって吸蔵しきれなかった過剰なリチウムイオンあるいは黒鉛粉末111によって吸蔵されなかったリチウムイオンは、隙間112に金属リチウム114となって析出する。一方で、放電時には、黒鉛粉末111に吸蔵されたリチウムイオン(Li)、若しくは隙間112に析出している金属リチウム114から生じたリチウムイオン(Li)が、固体電解質層107を通じて正極層106側へと移動する。要するに、負極層110は、固体電解質層107に結着された黒鉛粉末111の内部空間及び外部空間(空隙部分)の双方を利用して、リチウムイオンの保持及び放出が可能なリチウム貯蔵領域を形成している。この場合、黒鉛粉末111の外部空間をリチウム貯蔵領域として利用することができる。
また、負極層110の厚み寸法が黒鉛粉末111の黒鉛骨格によって規定されるため、充電時においては、リチウムイオンを吸蔵する黒鉛粉末111自体の体積変化が生じるものの、負極層110の表面形状は殆ど変化せず、負極層110の厚み寸法の範囲内においてリチウムイオン(Li)の保持及び放出を行うことができる。その結果、多量のリチウムイオン(Li)が移動する場合、即ち電流量が大きい状態(例えば、電流量が1.5mAh/cm)で充放電が繰り返された場合でも負極層110の体積変化を小さくすることができ、負極層110が固体電解質層107から剥離し難くすることができるという効果を奏する。特に、リチウム保持部113が、負極層110の厚み方向における固体電解質層107側の一部に形成される場合、すなわち、リチウム保持部113が負極層110の厚み方向全体にわたって形成されていない場合には、負極層110のうち固体電解質層107側だけにリチウムが吸蔵及び析出されるので、このような効果が顕著である。
尚、負極層110(リチウム保持部113)は、固体電解質層107を通じて移動したリチウムイオンを保持するために、空隙率が20%から50%までの範囲に属するように構成されるのが好ましい。この場合、空隙率は、負極層110(リチウム保持部113)の総体積に対する空隙部分(典型的には、黒鉛粉末111の外部空間)の体積の比率として定められる。本構成によれば、黒鉛粉末111によって形成されたリチウム保持部113の空隙部分を利用することによって、固体電解質層107と負極層110との界面のみを金属リチウムの析出スペースに利用する場合に比べて、充放電時の負極層110の体積変化が小さくなる。負極層110の空隙率は、負極層110形成時の加圧圧力や黒鉛粉末111の粒子径によって調整することができる。
負極層110の空隙率は、負極層110の厚み方向に平行な断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影し、画像解析を行うことによって算定することができる。具体的には、負極層110の断面における任意の5箇所(各箇所;縦20μm×横25μm)をSEMで5000倍に拡大して撮影した画像において、1枚の画像の総ピクセル数に対する空隙部分の総ピクセル数の比率を測定し、測定した5つの比率の算術平均値を空隙率とすることができる。
上述のように、負極層110を構成する黒鉛粉末111は、リチウムイオンの吸蔵及び放出によって可逆的な充放電を行うことができる。この場合、負極全体での全充放電量を、黒鉛粉末111による可逆的な充放電量によって賄うような負極構造(以下、「第1の負極構造」ともいう)を採用してもよいし、或いは全充放電量の一部を黒鉛粉末111による可逆的な充放電量によって賄うような負極構造(以下、「第2の負極構造」ともいう)を採用してもよい。
第1の負極構造の場合、黒鉛粉末111による吸蔵のみを利用してリチウムイオンが保持され、隙間112に金属リチウムは析出しない。これに対して、第2の負極構造の場合、黒鉛粉末111によって吸蔵しきれなかった過剰なリチウムイオンあるいは黒鉛粉末111によって吸蔵されなかったリチウムイオンは、隙間112に金属リチウムとなって析出する。また、この第2の負極構造の場合、黒鉛粉末111による可逆的な充放電量が負極全体での全充放電量の20%から70%までの範囲に属するように構成されるのが好ましい。これにより、全充放電量の20%から70%までに相当する充放電量を、黒鉛粉末111におけるリチウムイオンの吸蔵及び放出を利用して賄うことができる。黒鉛粉末111によるリチウムイオンの吸蔵容量が最大容量に達した後あるいは黒鉛粉末によるリチウムイオンの吸蔵と同時に、隙間112での金属リチウムの析出を利用してリチウムイオンをリチウム保持部113に保持することができる。その結果、第1の負極構造の場合に比べて、充放電時における負極層110の体積変化を小さくすることができる。
負極全体での全充放電量に対する黒鉛粉末111による可逆的な充放電量の割合は、黒鉛粉末111の量と負極層110の空隙率を調整することによって制御することができる。
負極全体での全充放電量に対する黒鉛粉末111による可逆的な充放電量の割合は、充電時および放電時の電位の変化によって測定することができる。
尚、上記構成のリチウム電池100の未使用状態(初期状態)では、リチウム保持部113の黒鉛粉末111が既にリチウムイオンを吸蔵していてもよいし、或いは黒鉛粉末111がリチウムイオンを全く吸蔵していなくてもよい。また、この未使用状態では、リチウム保持部113の隙間112に予め金属リチウムが存在してもよいし(図4に示される状態を参照)、或いは隙間112に金属リチウムが全く存在しなくてもよい(図3に示される状態を参照)。隙間112に金属リチウムが全く存在しない状態から充電が開始されることによって、負極層110から固体電解質層107を通じて移動したリチウムイオンが金属リチウム(図4中の金属リチウム114)となって隙間112に析出する。
また、負極層110の隙間112にイオン液体が含有されていてもよい。この場合、イオン液体は難燃性の液体電解質であるので、リチウム電池の安全性を損なうことなく負極層110内でのリチウムイオンの移動速度を高めることができる。
イオン液体は、イオン液体カチオンとイオン液体アニオンと電解質を含む。イオン液体カチオンには、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムカチオン(EMI)、1‐メチル‐1‐プロピルピロリジニウムカチオン(P13)、1‐メチル‐1‐プロピルピペリジニウムカチオン(PP13)、これらの誘導体、及びこれらの任意の組み合わせを用いることができる。イオン液体アニオンには、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(FSI)、及びこれらの組み合わせを用いることができる。電解質には、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム塩(LiTFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩(LiFSI)、及びこれらの組み合わせを用いることができる。
イオン液体としては、イオン液体カチオンとしての1‐メチル‐1‐プロピルピロリジニウムカチオン(P13)及びイオン液体アニオンとしてのビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(FSI)を含むイオン液体に対して、電解質としてビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム塩(LiTFSI)を0.8mol/Lの濃度となるように溶解させることで調整したものが好ましい。
尚、負極層110の隙間112に含有されるイオン液体は、隙間112のうち、開気孔の総体積に対して、50%から100%までの範囲に属するように構成されることが望ましい。この場合、開気孔は、負極層110の中に存在する隙間112のうち、負極層110の表面に存在する気孔と連続して繋がっている気孔のことをいう。含有されるイオン液体が、開気孔の総体積に対して50%より少ない場合、負極層110内のリチウムイオンの移動速度を十分に高めることができない。一方、100%より多い場合、余分なイオン液体により、電池の体積エネルギー密度が低下してしまう。
本発明の一態様及びその作用効果は、以下に説明する実施例によってより明確化される。この実施例によれば、リチウム電池の作製方法、及びリチウム電池の電池性能の評価結果が明確になる。尚、以下の説明では、各処理を実際に実施した実施主体(即ち、発明者)の記載を便宜上省略している。
(1)サンプルNo.1〜7に係るリチウム電池
以下のようにして、サンプルNo.1〜7に係るリチウム電池を作製した。
(グリーンシートの作製)
先ず、Co原料粉末(体積基準D50粒径0.3μm、正同化学工業株式会社製)に10wt%の割合でBi(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加した混合粉末を得た。次に、この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した混合物を得た。この混合物を減圧下での撹拌によって脱泡するとともに、4000cPの粘度に調製した。なお、調製時の粘度をブルックフィールド社製のLVT型粘度計で測定した。上記の調製で得られたスラリーをドクターブレード法によってPETフィルムの上に供給して乾燥し、乾燥後の厚さが24μmとなるようにシート状に成形することによって、未焼成のグリーンシートを作製した。
(Co配向焼成板の作製)
前記のPETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで50mm角に切り出し、突起の大きさが300μmのエンボス加工が施されたジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、1300℃で5時間焼成後、降温速度50℃/hにて降温し、セッターに溶着していない部分をCo配向焼成板として取り出した。
(コバルト酸リチウム配向焼結板の作製)
LiOH・HO粉末(和光純薬工業株式会社製)をジェットミルで1μm以下に粉砕し、エタノールに分散したスラリーを作製した。このスラリーを前記のCo配向焼成板にLi/Co=1.3になるように塗布し、乾燥した。その後、この乾燥体を大気中にて840℃で10時間加熱処理してCo配向焼成板にリチウムを導入することによって、LiCoOからなるコバルト酸リチウム配向焼結板を作製した。
(コバルト酸リチウム配向焼結板の評価)
前記のコバルト酸リチウム配向焼結板において、複数の結晶面のうちLiCoOの(104)面が板面に平行に配向していることを確認すべく、XRD(X線回折)測定を行った。この測定では、XRD装置(株式会社リガク製、ガイガーフレックスRAD−IB)を用い、焼結板の表面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを測定した。測定されたこのXRDプロファイルから(104)面による回折強度(ピーク高さ)に対する(003)面による回折強度(ピーク高さ)の比率I[003]/I[104]を求めたところ、この比率I[003]/I[104]が0.3であった。一方、同じ板を乳鉢で十分に粉砕して粉末状にしたうえで、粉末XRDのプロファイルを測定したところ、比率I[003]/I[104]は1.6であった。このことから、LiCoOの(104)面が板面に平行に多数存在している、即ち高容量のリチウム二次電池に適した所望の配向性を有することが確認できた
(正極板の作製)
前記のコバルト酸リチウム配向焼結板を、導電性カーボンを分散させたエポキシ系の導電接着剤でステンレス集電板(図1中の集電板105)に固定することによって、平板状の正極板(図1中の正極層106)を作製した。
(固体電解質層の形成)
直径4インチ(約10cm)のリン酸リチウム焼結体ターゲットを準備した。このターゲットに対して、スパッタリング装置(キャノンアネルバ製、SPF−430H)を用いてRFマグネトロン方式にてガス種Nを0.2Pa、出力0.2kWの条件にて衝突させて前記の正極板の板表面に薄膜を設けるスパッタリングを行なった。その結果、正極板上に、膜厚2μmのLiPON(リン酸リチウムオキシナイトライドガラス電解質)系の固体電解質スパッタ膜(図1中の固体電解質層107)を形成した。
(負極層の形成)
10重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解したN−メチル−2−ピロリドン溶液を調製した。この溶液と球状の黒鉛粉末(体積基準D50粒径2μm以上10μm以下)とを、PVDFと黒鉛粉末との重量比が6:100になるように混合し、ペースト状の負極合剤を得た。この負極合剤を、前記の固体電解質層107の表面(固体電解質スパッタ膜上)にスクリーン印刷し加圧処理することによって、黒鉛粉末(図1中の黒鉛粉末111)からなる負極層(図1中の負極層110)を形成した。この際、負極層の加圧処理における加圧圧力を調整することによって、負極層の空隙率を調整した。また、黒鉛粉末の体積基準D50粒径を調整することによって、後述する全充放電量Q1に対する充放電量Q2の比率R2を調整した。
(負極層の空隙率)
上記の負極層110を走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影し、画像解析を行うことによって負極層110の空隙率を算定した。この場合、SEM画像(×5000)1枚の総ピクセル数に対する空隙部分の総ピクセル数の比率を空隙率とした。算定した空隙率を表1にまとめて示す。
(リチウム電池の作製)
上記の負極層110上に負極側集電層(図1中の負極側集電層102)としてのCu箔を載置した。これにより、正極層106と負極層110との間に固体電解質層107が介在するように構成された単位電池(サイズ:10mm×10mm平方)を得た。こうして得られた単位電池を、Ar雰囲気中でAlラミネートフィルムからなる外装材によって封止することによって、サンプルNo.1〜7に係るリチウム電池(図1中のリチウム電池100)を作製した。
(2)サンプルNo.8に係るリチウム電池
負極層として金属リチウムを用いた以外はサンプルNo.1〜7と同じ工程にて、サンプルNo.8に係るリチウム電池を作製した。なお、サンプルNo.8では、負極層として金属リチウムを用いたため空隙率を測定しなかった。
(リチウム電池の性能評価)
上記のサンプルNo.1〜8に係るリチウム電池を、0.1mAの定電流で4.2Vまで充電し、その後に定電圧で電流が0.005mAになるまで充電した。10分間の休止後、リチウム電池を、0.1mAの定電流で2.5Vまで放電した。リチウム電池のこのような充電及び放電を組み合わせた操作を1回の充放電操作とし、この充放電操作を50回繰り返した。
このとき、各回の放電終了後に負極界面抵抗を交流インピーダンス法(Bio-Logic社 VMP3)で測定し、その測定値が50回目までに1000Ω・cmを超えた場合に負極層が固体電解質層から剥離したと判断した。なお、インピーダンス法による負極界面抵抗の測定では、負極層とLi金属との間に固体電解質層を形成した所謂ハーフセルにおいて負極層と固体電解質層の界面抵抗の時定数を見積もり、サンプルNo.1〜8に係るリチウム電池において、見積もった時定数と同等の時定数で得られる抵抗を負極界面抵抗とした。
表1に示すように、サンプルNo.1〜7に係るリチウム電池では剥離発生を抑制することができた。これは、固体電解質層に結着された黒鉛粉末の内部及び間隙を利用してリチウムイオンの保持及び放出が可能なリチウム貯蔵領域を形成したことによって、充放電時における負極層の体積変化を小さくすることができたためである。
また、0.1mAの定電流での充放電時の、充電電圧と充電量の関係から、負極全体での全充放電量Q1、及び黒鉛粉末111による可逆的な充放電量Q2をそれぞれ計測し、全充放電量Q1に対する充放電量Q2の比率R2(=(Q2/Q1)×100)を算出した。
表1に示すように、比率R2を20%以上70%以下にしたサンプルNo.1〜5に係るリチウム電池では、比率R1が70%以上であった。すなわち、比率R2を20%以上70%以下とすることによって、充放電操作を繰り返しても放電容量を高いレベルに維持できることが確認された。
また、1回目の充放電操作時の放電容量C、50回目の充放電操作時の放電容量C50をそれぞれ計測し、放電容量Cに対する放電容量C50の比率R1(=(C50/C)×100)を算出した。
表1に示すように、負極層の空隙率を20%以上50%以下にしたサンプルNo.1〜3に係るリチウム電池では、比率R1が90%以上であった。すなわち、負極層の空隙率を20%以上50%以下とすることによって、充放電操作を繰り返しても放電容量をより高いレベルに維持できることが確認された。
Figure 2016115681
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記の実施形態では、負極層110がリチウム保持部113のみによって構成される場合について記載したが、本発明では、負極層110がリチウム保持部113に加えて別の要素を含む複数の要素によって構成されてもよい。また、固体電解質として、例えばLi−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLaZr12など)、Li−La−Ta−O系材料(具体的には、LiLaTa12など)を用いてもよい。
100…リチウム二次電池、101…正極側集電層、102…負極側集電層、103,104…外装材、105…集電板、106…正極層(コバルト酸リチウム配向焼結板)、107…固体電解質層、110…負極層(リチウム電池用負極層)、111…黒鉛粉末、112…隙間、113…リチウム保持部、114…金属リチウム、P1…第1移動経路、P2…第2移動経路

Claims (5)

  1. リチウム複合酸化物を含む正極層と、酸化物系セラミックス材料からなり前記正極層に被着された固体電解質層と、を備えるリチウム電池において、前記固体電解質層を挟んで前記正極層とは反対側の固体電解質層表面に設けられるリチウム電池用負極層であって、
    黒鉛粉末によって構成され、前記固体電解質層に結着されたリチウム保持部を含み、
    前記リチウム保持部は、前記正極層に含まれる前記リチウム複合酸化物をリチウム源として前記固体電解質層を通じて移動したリチウムイオンの保持及び放出が可能である、リチウム電池用負極層。
  2. 請求項1に記載のリチウム電池用負極層であって、
    前記リチウム保持部は、前記固体電解質層を通じて移動したリチウムイオンを保持するために、空隙率が20%から50%までの範囲に属するように構成されている、リチウム電池用負極層。
  3. 請求項1又は2に記載のリチウム電池用負極層であって、
    前記リチウム保持部は、前記黒鉛粉末による可逆的な充放電量が負極全体での全充放電量の20%から70%までの範囲に属するように構成されている、リチウム電池用負極層。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のリチウム電池用負極層であって、
    前記固体電解質層は、前記酸化物系セラミックス材料の1つであるリン酸リチウムオキシナイトライド系セラミックス材料からなる、リチウム電池用負極層。
  5. リチウム複合酸化物を含む正極層と、酸化物系セラミックス材料からなり前記正極層に被着された固体電解質層と、前記固体電解質層を挟んで前記正極層とは反対側の固体電解質層表面に設けられる負極層と、を備えたリチウム電池であって、
    前記負極層は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のリチウム電池用負極層によって構成されている、リチウム電池。
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